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特許拒絶査定不服審判

2015-019466

清浄性をもたらす方法および組成物

審判番号
2015-019466
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-511219
請求日
2015年10月29日
審決日
2018年09月19日
公報発行日
2019年03月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ザ ルブリゾル コーポレイション
  • 【請求人代理人】山本 秀策
  • 【請求人代理人】森下 夏樹
審判長/審判官
  • 審判長 冨士 良宏
  • 審判官 日比野 隆治
  • 審判官 佐々木 秀次
分類
P18 .113-WZ (C10L) / P18 .121-WZ (C10L) / P18 .537-WZ (C10L) / P18 .55 -WZ (C10L) / P18 .572-WZ (C10L) / P18 .574-WZ (C10L) / P18 .575-WZ (C10L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第4号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-511219「清浄性をもたらす方法および組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月24日国際公開、WO2011/146289、平成25年 6月24日国内公表、特表2013-526646〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成23年5月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2010年5月18日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、出願後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成24年12月21日  翻訳文提出 平成27年 3月 6日付 拒絶理由通知 同年 6月10日  意見書・手続補正書・手続補足書提出 同年 6年26日付 拒絶査定 同年10月29日  審判請求書・手続補正書提出 同年11月19日付 前置報告 平成29年 4年13日付 当審拒絶理由通知 同年 8月14日  意見書・手続補正書提出 同年10年 6日付 当審拒絶理由通知 平成30年 4月10日  意見書・手続補正書提出 同年 4年17日付 当審拒絶理由通知(最後) 同年 7月18日  意見書・手続補正書提出 第2 平成30年7月18日付け手続補正についての補正の却下の決定 1 補正の却下の決定の結論 平成30年7月18日付け手続補正を却下する。 2 理由 (1) 請求項1、9、10についてする補正の内容 平成30年7月18日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1、9、10についてする補正を含むところ、本件補正前後の請求項1、9、10の記載は、次のとおりである(なお、下線は、補正箇所を示す。)。 ア 本件補正前の請求項1、9、10の記載(先になされた平成30年4月10付け手続補正後の記載) 「【請求項1】 I.ポリイソブチレンおよびモノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤を燃料組成物に添加する工程であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する工程;および II.前記燃料組成物を内燃エンジンに供給する工程 を含む、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損を用いて測定される向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、 ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、 方法。 【請求項9】 (a)燃料と、 (b)ポリイソブチレンおよびモノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する窒素不含添加剤と、 (c)1つ以上の任意選択の追加の性能添加剤と を含む、直接噴射ディーゼルエンジン用燃料組成物であって、 ここで、前記燃料組成物は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損を用いて測定される清浄性を燃料系にもたらすために使用され、 ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、 組成物。 【請求項10】 燃料が供給される直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系に清浄性をもたらすための、ポリイソブチレンおよびジカルボン酸から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含燃料添加剤の、燃料組成物における使用であって、前記エンジンは、35MPaよりも大きい燃料インジェクタ圧力で動作し、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有し、ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、使用。」 イ 本件補正後の請求項1、9、10の記載(平成30年7月18付け手続補正後の記載) 「【請求項1】 向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され、ここで、前記方法は、 I.ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤を燃料組成物に添加する工程であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する工程;および II.前記燃料組成物を内燃エンジンに供給する工程を含み、 ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、 方法。 【請求項9】 (a)燃料と、 (b)ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する窒素不含添加剤と、 (c)1つ以上の任意選択の追加の性能添加剤と を含む、直接噴射ディーゼルエンジン用燃料組成物であって、 ここで、前記燃料組成物は、向上した清浄性を燃料系にもたらすために使用され、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され、 ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、 組成物。 【請求項10】 燃料が供給される直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系に向上した清浄性をもたらすための、ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含燃料添加剤の、燃料組成物における使用であって、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され、前記エンジンは、35MPaよりも大きい燃料インジェクタ圧力で動作し、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有し、ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、使用。」 (2) 目的要件の検討 ア 請求項10についてする補正について 請求項10についてする補正のうち、本件補正前の「ジカルボン酸」を「イタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物」とする補正は、「ジカルボン酸」には属さない「その無水物」を追加するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものとはいえない。また、当該補正は、補正前の誤記や明瞭でない記載を改めるためのものでもないから、同項第1号、第3号及び第4号の「請求項の削除」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明」のいずれの目的にも該当しないことは明らかである。 したがって、当該補正は、目的要件に違反するものである。 イ 請求項1、9、10についてする補正について (ア) 請求項1、9、10についてする補正のうち、直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系に向上した清浄性をもたらすことに関連する補正は、平成30年4月17日付けの当審拒絶理由通知(最後)において指摘した明確性要件についての拒絶理由を解消するためになされたものと解されるが、以下に示すとおり、当該補正は、指摘した明確性要件違反を正すことを目的とするものとは認められない(当該補正により、不明瞭さが正されて、その記載本来の意味内容が明らかにされたとは認められない)。 したがって、当該補正の目的を、特許法第17条の2第5項第4号の「明りようでない記載の釈明」と解することはできない。 また、当該補正が、同項第1号、第2号及び第3号の「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」及び「誤記の訂正」のいずれかの目的に該当するものであるともいえない。 よって、当該補正は、目的要件に違反するものである。 以下、当該補正後の記載をみても、その記載本来の意味内容が明らかにされたとは認められないと判断した理由について詳述する。 (イ) 本件補正後の請求項1は、「向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され」る点を発明特定事項として記載するものである。 そうすると、本件補正後の請求項1の上記発明特定事項は、(i)「向上した清浄性」を、直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす点、及び、(ii)当該「向上した清浄性」は、「SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され」る点を記載したものといえる。 そして、上記(ii)により測定される「向上した清浄性」とは、具体的には、本件明細書の【0102】に記載された「SG-F-098と呼ばれるCEC DW10ディーゼル燃料インジェクタ汚損試験」により測定されるものであり、同【0103】【表2】に記載された「実施例2-B」及び「実施例2-E」などの「32時間の時点でのパワー損失」の数値そのもの、あるいは、同数値から評価されるパワー損失の低減やパワーゲインの度合(以下、当該数値あるいは当該数値から評価されるパワー損失の低減やパワーゲインのことを単に「DW10による測定結果」ということがある。)を指すものと解されるから、当該「向上した清浄性」(「DW10による測定結果」)は、上記(i)の「直接噴射ディーゼルエンジン」(DW10以外のエンジンをも含む、直接噴射ディーゼルエンジン全般を指す。)を実際に用いて得た測定結果ではないことは明らかである。 そうすると、上記(i)は、言い換えると、「DW10による測定結果」を、DW10とは異なるエンジンを含む「直接噴射ディーゼルエンジン」の燃料系にもたらすという意味になるが、一般に、試験方法や当該試験に供されるエンジン、さらには使用される燃料(本件明細書の【0103】【表2】においてもバイオディーゼル燃料を用いるだけで「32時間の時点でのパワー損失」の数値や傾向が、ディーゼル燃料とは異なるものとなっている。)が異なれば、当然、得られる「32時間の時点でのパワー損失」の測定結果も異なるであろうから、仮に、「DW10による測定結果」として、「32時間の時点でのパワー損失」についての特定の測定結果(本件明細書に記載された上記【表2】の「実施例2-B」や「実施例2-E」において測定されたような、特定の数値、あるいは、特定のパワー損失の低減やパワーゲインの度合)が得られたからといって、この特定の測定結果が、厳密に見てそのまま、これとはエンジンが異なる「直接噴射ディーゼルエンジン」の燃料系において、しかも、当該「直接噴射ディーゼルエンジン」の燃料系に対して直接行う試験方法や使用燃料を特定していない、あらゆる状況下において、発現することなど、現実的にはあり得ないというほかない。 そうである以上、上記(i)の「向上した清浄性」は、上記(ii)により、外見上は、なにがしかの特定が加えられたようにみえるものの、その実は、当該(ii)によって、当該「向上した清浄性」の内容がどのように限定されることになるのかが定かでないため(例えば、当該(ii)の測定により、上記「実施例2-B」及び「実施例2-E」と同じ「32時間の時点でのパワー損失」の数値が測定された場合、(i)の記載とは、直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系に対して、これと全く同じ数値をもたらすことを意味するとも、「実施例2-B」の数値から評価されるパワー損失の低減度合と同じ低減度合をもたらすことを意味するとも、「実施例2-E」の数値から評価されるパワーゲインの度合と同じ度合をもたらすことを意味するとも、解釈できるが、そのような状況は、上記のとおり、現実的にはあり得ないから、当該(ii)により外見上の特定が加えられた当該(i)の記載は、単に、当該(ii)により測定された数値にかかわらず、特定の添加剤を添加しない場合に比べて向上した清浄性をもたらすことを漠然と意味するとも、その他のことを意味するとも、多様に解釈され、その内容を正確に捉えることができないため)、本件補正後の請求項1に記載された、上記「向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され」る点という発明特定事項、ひいては、当該請求項1の記載全体は、不明瞭であるといわざるを得ない。 したがって、上記請求項1についての上記補正は、当審拒絶理由通知(最後)において指摘した不明瞭な記載を明瞭化するものとは認められない。 そして、本件補正後の請求項9、10も同様の記載を有することから、これらの請求項についての補正も同様に、当審拒絶理由通知(最後)において指摘した不明瞭さを正して、その記載本来の意味内容を明らかにしたものとはいえない。 (3) 独立特許要件の検討 ア 仮に、本件補正が目的要件違反にはあたらないとしても、本件補正後の請求項1、9についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、独立特許要件に違反するものと認められる。 その理由は、以下のとおりである。 イ 請求項1、9についてする補正は、上記(2)イにおいて検討した補正のほかに、本件補正前の請求項1、9に記載された発明を特定するために必要な事項である「モノ不飽和C4からC10ジカルボン酸」を「イタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸」に限定する補正を含むものであり、この補正は、請求項1、9に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではないから、仮に、上記(2)イにおいて検討した補正を特許法第17条の2第5項第4号に掲げる「明りようでない記載の釈明」を目的とするものと解釈すると、請求項1、9についてする補正は、全体として、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するということができる。 ウ そこで、本件補正後の請求項1、9に記載された発明(以下、それぞれ「本願補正発明1」及び「本願補正発明9」といい、まとめて「本願補正発明」ということがある。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)に適合するか否かについて検討する(以下では、独立特許要件のうち、エにおいてサポート要件を、オにおいて新規性・進歩性について検討をする。)。 なお、当審拒絶理由通知(最後)では、これらの要件についての判断は留保している。 エ サポート要件についての検討 (ア) 特許請求の範囲の記載 本件補正後の請求項1、9の記載(本願補正発明)は、再掲すると、次のとおりである。 「【請求項1】 向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され、ここで、前記方法は、 I.ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤を燃料組成物に添加する工程であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する工程;および II.前記燃料組成物を内燃エンジンに供給する工程を含み、 ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、 方法。 【請求項9】 (a)燃料と、 (b)ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する窒素不含添加剤と、 (c)1つ以上の任意選択の追加の性能添加剤と を含む、直接噴射ディーゼルエンジン用燃料組成物であって、 ここで、前記燃料組成物は、向上した清浄性を燃料系にもたらすために使用され、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され、 ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、 組成物。」 なお、上記(2)イにおいて検討したとおり、上記本件補正後の請求項1の「向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され」るという発明特定事項及び同請求項9の「前記燃料組成物は、向上した清浄性を燃料系にもたらすために使用され、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され」るという発明特定事項の意味するところは不明瞭であるといわざるを得ないことから、これらの請求項の発明特定事項にいう「向上した清浄性」とは、本件明細書の【0102】の記載(「この試験は、32時間のエンジン運転時間後のエンジンパワー損失を報告する。エンジン損失値が低いほど、低いインジェクタ汚損レベルを示す。インジェクタ汚損レベルが低いほど、良好な清浄性を示す。」)を踏まえて、単に、インジェクタ汚損レベルが低く、良好な清浄性を示すことを意味するものと解して(後記オの新規性・進歩性についての検討においても同じ。)、以下検討をする。 (イ) 発明の詳細な説明の記載 発明の詳細な説明には、本願発明(本願補正発明)の【技術分野】及び【背景技術】(【0001】~【0006】)、【課題を解決するための手段】(【0007】~【0009】)、【発明を実施するための形態】(【0010】~【0097】)及び【実施例】(【0098】~【0104】)についての記載がある。 特に、【0006】、【0039】~【0063】及び【0098】~【0104】には、それぞれ本願発明(本願補正発明)の課題、置換炭化水素添加剤及び実施例について、以下のように記載されている。 ・「【0006】 ICEの動作の際に燃料添加剤組成物および燃料組成物に使用することができる、窒素を含有しない、有効な燃料添加剤が必要とされている。今日一般に使用されている窒素含有添加剤と比較して匹敵するおよび/または向上した性能をもたらすような窒素不含添加剤が必要とされている。これらの添加剤が、向上した腐食防止をもたらすこと、および/またはそれらが使用される燃料との相溶性の問題点を回避することも必要である。これらの相溶性の問題点の一部は、燃料と該燃料中の1つ以上の添加剤との望ましくない反応をもたらすことがあり、その結果、エンジン性能を妨げることがある、デポジットを形成することがある、およびフィルタを詰まらせることさえある副生成物を生じさせる。これらの問題の1つ以上に対処する添加剤および燃料組成物、ならびにそれらの使用方法が必要とされている。」 ・「【0039】 置換炭化水素添加剤 本発明の方法は、酸の形態または無水物の形態の少なくとも2つのカルボキシ官能基を有する置換炭化水素を含むデポジット制御用添加剤を利用する。一部の実施形態において、前記添加剤は、酸または無水物の形態の少なくとも2つのカルボキシ官能基で置換された炭化水素である。他の実施形態において、前記添加剤は、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤である。他の実施形態において、前記置換炭化水素添加剤は、二量体酸化合物である。さらに他の実施形態において、本発明の置換炭化水素添加剤は、この項で説明する2つ以上の添加剤の組み合わせを含む。記載材料の部分エステルも本発明により考えられ、ここに含まれる。 【0040】 本発明の置換炭化水素添加剤は、本明細書に記載する組成物および方法で使用されると、それらが使用されるエンジンの内部で形成するデポジットの量を低減させる、および/または該エンジン内部からのデポジット除去量を増加させる。一部の実施形態において、前記添加剤は、インジェクタデポジットの形成を低減させる、および/またはインジェクタデポジットを除去する。前記添加剤は、燃料の腐食防止を向上させることができ、および/またはそれらが使用される燃料組成物の、金属をピックアップする傾向を低減させることができる。 【0041】 前記置換炭化水素添加剤は、一般に、窒素不含であると考えられる(それらは、窒素原子を含有しない)が、少量の窒素が該添加剤中に存在することがあり、少数の窒素原子が一部の添加剤分子中に存在することさえあると考えられる。これらの少量の窒素は、添加剤を調製するために使用される材料または類似の源において見いだされる不純物に由来し得る。そのような少量の窒素の可能性は予期されたものであり、本発明の範囲内であると考える。一部の実施形態において、本発明の置換炭化水素添加剤は、100ppm未満の窒素、および他の実施形態において50、20またはさらに10ppm未満の窒素を含有する。さらに他の実施形態において、本発明の置換炭化水素添加剤は、5ppm未満、100ppb未満の窒素を含有し、または測定可能な窒素が本当にないことさえある。 【0042】 前記置換炭化水素添加剤は、二量体酸を含む。一部の実施形態において、本発明で使用される二量体酸は、C10からC20脂肪不飽和カルボン酸、C12からC18不飽和酸、および/またはC16からC18不飽和酸から誘導される。 【0043】 前記置換炭化水素添加剤としては、コハク酸、ハロゲン化物、無水物およびそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、前記剤は、酸または無水物であり、他の実施形態において、前記剤は、無水物であり、およびさらに他の実施形態において、前記剤は、加水分解無水物である。前記置換炭化水素添加剤の炭化水素、および/または前記ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤の第一級ヒドロカルビル基は、一般に、平均して少なくとも約8個、または約30個、または約35個から約350個まで、または約200個まで、または約100個までの炭素原子を含有する。1つの実施形態において、前記ヒドロカルビル基は、ポリアルケンから誘導される。言い換えると、前記窒素不含添加剤は、ヒドロカルビル置換コハク酸、ヒドロカルビル置換コハク酸無水物、加水分解ヒドロカルビル置換コハク酸無水物、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。 【0044】 前記ポリアルケンは、少なくとも約300のMn(数平均分子量)を特徴とし得る。一般に、前記ポリアルケンは、約500、または約700、または約800、またはさらに約900から約5000まで、または約2500まで、または約2000まで、またはさらに約1500までのMnを特徴とし得る。もう1つの実施形態において、nは、約300、または約500、または約700から約1200まで、または約1300までの間で変動する。 【0045】 前記ポリアルケンは、炭素原子数2から約16まで、または約6まで、または約4までの重合性オレフィンモノマーのホモポリマーおよび共重合体を含む。前記オレフィンは、モノオレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテンおよび1-オクテン;またはポリオレフィン系モノマー、例えば、ジオレフィン系モノマー、例えば1,3-ブタジエンおよびイソプレンであり得る。1つの実施形態において、前記共重合体は、ホモポリマーである。ポリマーの一例は、ポリブテンである。1つの事例では、前記ポリブテンの約50%はイソブチレンから誘導される。前記ポリアルケンは、従来の手順によって調製される。 【0046】 1つの実施形態において、前記ヒドロカルビル基は、少なくとも約1300、または約1500、または約1600から約5000まで、または約3000まで、または約2500まで、または約2000まで、または約1800までのnを有するポリアルケンから誘導され、そのMw/Mnは、約1.5、または約1.8、または約2、または約2.5から約3.6まで、または約3.2までである。一部の実施形態において、前記ポリアルケンは、800から1200の分子量を有するポリイソブチレンである。炭化水素および/または置換基がそのようなポリアルケンから誘導される置換炭化水素および/または置換コハク酸アシル化剤の調製および使用は、米国特許第3,172,892号および同第4,234,435号に記載されており、これらの開示内容は参照により本明細書に援用されている。 【0047】 もう1つの実施形態において、前記置換炭化水素および/またはコハク酸アシル化剤は、置換基の1当量あたりのコハク酸基の数が少なくとも1.3、または約1.5まで、または約1.7まで、または約1.8までである置換コハク酸アシル化剤を生じさせるように上記ポリアルケンと過剰なマレイン酸無水物を反応させることによって調製される。最大数は、一般に、4.5を超えず、または約2.5まで、または約2.1まで、または約2.0までであろう。ここでのポリアルケンは、上に記載したもののうちのいずれであってもよい。 【0048】 もう1つの実施形態において、前記炭化水素および/またはヒドロカルビル基は、平均約8個、または約10個、または約12個から約40個まで、または約30個まで、または約24個まで、または約20個までの炭素原子を含有する。1つの実施形態において、前記ヒドロカルビル基は、平均約16から約18個の炭素原子を含有する。もう1つの実施形態において、前記ヒドロカルビル基は、テトラプロペニル基である。1つの実施形態において、前記ヒドロカルビル基は、アルケニル基である。 【0049】 前記炭化水素および/またはヒドロカルビル基は、約2個から約40個の炭素原子を有する1つ以上のオレフィンまたはそれらのオリゴマーから誘導することができる。これらのオレフィンは、好ましくは、アルファ-オレフィン(ときとして、モノ-1-オレフィンと呼ばれる)または異性化アルファ-オレフィンである。アルファ-オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ヘニコセン、1-ドコセン、1-テトラコセンなどが挙げられる。使用することができる市販のアルファ-オレフィン留分としては、C15~18アルファ-オレフィン、C12~16アルファ-オレフィン、C14~16アルファ-オレフィン、C14~18アルファ-オレフィン、C16~18アルファ-オレフィン、C16~20アルファ-オレフィン、C22~28アルファ-オレフィンなどが挙げられる。1つの実施形態において、前記オレフィンは、C16およびC16~18アルファ-オレフィンである。加えて、C30+アルファ-オレフィン留分を使用することができる。1つの実施形態において、オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレンおよび1-ブテンが挙げられる。 【0050】 異性化アルファ-オレフィンは、内部オレフィンに転化されたアルファ-オレフィンである。ここでの使用に適する異性化アルファ-オレフィンは、通常、アルファ-オレフィンが多少存在する内部オレフィンの混合物の形態である。アルファ-オレフィンを異性化する手順は、当業者に周知である。簡単に言うと、これらの手順は、アルファ-オレフィンとカチオン交換樹脂とを約80℃から約130℃の範囲の温度で、所望の異性化度が達成されるまで、接触させることを含む。これらの手順は、例えば、参照により本明細書に援用されている米国特許第4,108,889号に記載されている。 【0051】 前記モノ-オレフィンは、パラフィンワックスの分解から得ることができる。ワックス分解プロセスは、85%から90%が直鎖1-オレフィンである偶数および奇数両方のC6~20液体オレフィンを生じさせる。分解ワックスオレフィンの残余は、内部オレフィン、分岐オレフィン、ジオレフィン、芳香族および不純物で構成される。ワックス分解プロセスから得たC6~20液体オレフィンの蒸留は、コハク酸アシル化剤の調製に有用である留分(例えば、C15~18アルファ-オレフィン)を生じさせる。 【0052】 他のモノ-オレフィンは、エチレン鎖成長プロセスから得ることができる。このプロセスは、制御されたチーグラー重合から偶数の直鎖1-オレフィンを生じさせる。モノオレフィンの他の調製方法としては、パラフィンの塩素化-脱塩化水素およびパラフィンの接触脱水素が挙げられる。 【0053】 モノ-オレフィンの調製のための上記プロセスは当業者に周知であり、Encyclopedia of Chemical Technology、第2版、KirkおよびOthmer、付録、632、657頁、Interscience Publishers、Div. of John Wiley and Son、1971年において表題「Olefins」のもとに詳細に説明されており、これは、モノ-オレフィンの調製方法に関係するその関連開示内容について参照により本明細書に援用されている。 【0054】 コハク酸アシル化剤は、上記オレフィン、異性化オレフィンまたはそれらのオリゴマーと、不飽和カルボン酸アシル化剤、例えばイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤、とを、約160℃、または約185℃から約240℃まで、または約210℃までの温度で反応させることによって調製される。マレイン酸アシル化剤は、好ましい不飽和アシル化剤である。アシル化剤の調製手順は当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,412,111号;およびBenら、「The Ene Reaction of Maleic Anhydride With Alkenes」、J.C.S.Perkin II(1977年)、535-537頁に記載されている。これらの参考文献は、上記アシル化剤の製造手順に関するそれらの開示について参照により援用されている。1つの実施形態において、アルケニル基は、低級オレフィン、すなわち、2から約6個、または約4個の炭素原子を含有するオレフィン、のオリゴマーから誘導される。これらのオレフィンの例としては、エチレン、プロピレンおよびブチレンが挙げられる。 【0055】 前記オレフィン、オレフィンオリゴマーまたはポリアルケンをカルボン酸試薬と、オレフィン、オレフィンオリゴマーまたはポリアルケンの1モルあたり少なくとも1モルのカルボン酸試薬が反応するように、反応させることができる。好ましくは、過剰なカルボン酸試薬を使用する。1つの実施形態において、この過剰は、約5%から約25%の間である。もう1つの実施形態において、前記過剰は、40%より大きく、または50%より大きく、および70%より大きいことさえある。 【0056】 ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤を形成するための条件、すなわち、温度、攪拌、溶媒およびこれらに類するものは、当業者に公知である。有用なアシル化剤を調製するための様々な手順を記載している特許の例としては、米国特許第3,172,892号(Le Suerら);同第3,215,707号(Rense);同第3,219,666号(Normanら);同第3,231,587号(Rense);同第3,912,764号(Palmer);同第4,110,349号(Cohen);および同第4,234,435号(Meinhardtら);ならびに英国特許第1,440,219号が挙げられる。これらの特許の開示内容は、参照により本明細書に援用されている。 【0057】 一部の実施形態において、本発明での使用に適する置換炭化水素添加剤および/またはヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤は、二酸官能基を含有する。単独で用いることができるまたは上で説明した実施形態と併用することができる他の実施形態において、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤のヒドロカルビル基は、ポリイソブチレンから誘導され、該剤の二酸官能基は、カルボン酸基、例えばヒドロカルビル置換コハク酸、によって与えられる。 【0058】 一部の実施形態において、前記ヒドロカルビル置換アシル化剤は、1つ以上のヒドロカルビル置換コハク酸無水物基を含む。一部の実施形態において、前記ヒドロカルビル置換アシル化剤は、1つ以上の加水分解ヒドロカルビル置換コハク酸無水物基を含む。 【0059】 一部の実施形態において、上で説明したアシル化剤のヒドロカルビル置換基は、2から10個の炭素原子を含有するホモポリマーおよび/またはコポリマーから誘導される。一部の実施形態において、上で説明したアシル化剤のいずれについてもそのヒドロカルビル置換基はイソブチレンから誘導される。 【0060】 本発明のデポジット制御添加剤は、それらの調製に使用される特定のアルコール(単数もしくは複数)および/またはアミン(単数もしくは複数)に依存して、固体であることもあり、半固体であることもあり、または液体(油)であることもある。潤滑および燃料組成物を含む油性組成物における添加剤としての使用のために、燃料添加剤は、有利には、そのような油性組成物に可溶性である、および/または安定して分散できる。したがって、例えば、燃料での使用が意図された組成物は、概して、それらが使用されることとなる燃料に可溶性であり、および/または安定して分散することができる。本明細書および添付のクレームにおいて用いる場合の用語「燃料可溶性」は、問題の組成物すべてが、すべての燃料中にすべての割合で混和性または可溶性であることを必ずしも意味しない。どちらかと言えば、組成物が、燃料(炭化水素、非炭化水素、混合物など)に可溶性であることを意図しており、この場合、その溶液が、所望の特性の1つ以上を呈示することができる程度に機能することを意図している。同様に、そのような「溶液」は、厳密な物理的または化学的意味で真溶液であるとは限らない。それよりむしろ、それらは、本発明の目的のために、実際には本発明の文脈の中では真溶液と交換可能であるような真溶液のものに十分近い特性を呈示する、マイクロエマルジョンまたはコロイド分散液であり得る。 【0061】 前に述べたように、本発明の添加剤は、燃料用の添加剤として有用である。本発明の燃料添加剤は、燃料組成物中に1から10,000ppm(この場合のppmは、重量:重量ベースで計算される)で存在し得る。さらなる実施形態において、前記燃料添加剤は、燃料組成物中に、1、3、5、10、50、100、150および200ppmの下限、ならびに10,000、7,500、5,000および2,500の上限を有する範囲で存在し、この場合、任意の上限と任意の下限を組み合わせて、燃料組成物中に存在する燃料添加剤の範囲を得ることができる。 【0062】 一部の実施形態において、本発明の窒素不含燃料清浄添加剤は、少なくとも約300、500、700、800またはさらに少なくとも900で、5000、2500、2000までまたはさらに1500までのMnを有する。もう1つの実施形態において、Mnは、300、または500、または700から1200または1300までの間で変動する。 【0063】 本発明の添加剤は、それらが使用される組成物の他の成分と相互作用すると、塩または他の複合体および/もしくは誘導体を形成し得ることが予期される。これらの添加剤のそのような形態も本発明の一部分であり、本明細書に記載する実施形態に含まれる。本発明のコハク酸アシル化剤の一部およびそれらを製造するためのプロセスは、参照により本明細書に援用されている、米国特許第5,739,356号;同第5,777,142号;同第5,786,490号;同第5,856,524号;同第6,020,500号;および同第6,114,547号に開示されている。ヒドロカルビル置換アシル化剤の他の製造方法は、参照により本明細書に援用されている、米国特許第5,912,213号;同第5,851,966号;および同第5,885,944号において見いだすことができる。一部の実施形態において、本発明のコハク酸アシル化剤は、参照により本明細書に援用されている欧州特許第0355895号に記載されているような、熱的プロセスおよび/または無塩素プロセスだけによって調製される。」 ・「【実施例】 【0098】 特に有利な実施形態を示す以下の実施例によって、本発明をさらに例証する。これらの実施例は、本発明を例証するために提供するものであり、本発明を限定するためのものではない。 【0099】 実施例セット1 1セットの実施例を調製し、XUD9ノズルコーキング試験で試験する。この試験には、1.9L 4気筒Peugeot XUD 9エンジンを使用し、それを58Nmの負荷下で6時間、3000RPMで運転する。試験開始時、新しいノズルに空気を流し、0.1mmのリフト点で測定を行う。ノズルをエンジン上で再び組み立てて、試験条件まで温めて、6時間運転する。その後、ノズルに空気を再び流し、初期流量と比較する。指定合格/不合格限度はないが、0.1mm測定値での15%残存インジェクタ流量の結果が一般に最低合格成果であると考えられる。実施例セット1における各実施例を従来の無硫黄ディーゼル燃料で運転する。これらの実施例の配合および得られた結果を下の表にまとめる: 【0100】 【表1】 1 - 窒素含有清浄剤は、1000数平均分子量(Mn)ポリイソブチレンから誘導したスクシンイミド分散剤である。 2 - 窒素不含清浄剤は、1000数平均分子量(Mn)ポリイソブチレンおよびジカルボン酸から誘導したポリオレフィン酸である。 【0101】 実施例セット1での結果は、上で説明した窒素不含清浄剤およびそれらの使用方法が、XUD9エンジン試験におけるより高い残存流量率(reaming percent flow)によって実証されるように、XUD9などのポート噴射エンジンに多少のレベルの清浄性をもたらすことを示している。具体的には、窒素不含清浄剤は、添加剤無添加基礎燃料と比較して清浄性をもたらす。さらに、窒素不含清浄剤は、対応する窒素含有清浄剤と比較して、高い処理率でだが、少なくとも匹敵する清浄性をもたらす。これらの結果は、窒素含有添加剤が一般に燃料清浄性の必要条件と考えられていることからして、予想外である。 【0102】 実施例セット2 1セットの実施例を調製し、SG-F-098と呼ばれるCEC DW10ディーゼル燃料インジェクタ汚損試験で試験する。この試験には、2.0L、4気筒Peugeot DW10直接噴射、ターボチャージャー付き、コモン・レール・エンジンを使用する。試験手順は、新しいインジェクタの16時間の初期なじみ期間(bedding-in period)、続いて8時間のサイクル運転期間、次いで4時間の浸漬期間を含み、この順路を32時間の運転時間にわたって繰り返す。この試験は、32時間のエンジン運転時間後のエンジンパワー損失を報告する。エンジン損失値が低いほど、低いインジェクタ汚損レベルを示す。インジェクタ汚損レベルが低いほど、良好な清浄性を示す。実施例2-A、2-Bおよび2-Cを無硫黄ディーゼル燃料で運転する。少量の亜鉛(2ppm)も各試料に添加する。実施例2-Dおよび2-Eを、実施例2-A、2-Bおよび2-Cで使用するディーゼル燃料と追加のバイオディーゼルの90:10ブレンドであるブレンドで運転する。これらの実施例には亜鉛を添加しない。それらの実施例の配合およびおよび得られた結果を下の表にまとめる: 【0103】 【表2】 1 - 窒素不含清浄剤は、1000数平均分子量(Mn)ポリイソブチレンおよびジカルボン酸から誘導したポリオレフィン酸である。 2 - 窒素含有清浄剤は、1000数平均分子量(Mn)ポリイソブチレンから誘導したスクシンイミド分散剤である。 【0104】 実施例セット2の結果は、上で説明した窒素不含清浄剤およびそれらの使用方法が、直接噴射エンジンに有意な清浄性をもたらすことを示しており、これは、DW 10エンジン試験で見られる低減されたパワー損失によって実証される。具体的には、窒素不含清浄剤は、添加剤無添加基礎燃料ならびに対応する窒素含有清浄剤を添加剤として添加した燃料と比較して、同じ処理率であっても、有意に向上した清浄性をもたらす。さらに、この恩恵は、バイオディーゼル含有量がより高い燃料での実施例2-Eにおいても見られる。これらの結果は、窒素含有添加剤が一般に燃料清浄性の必要条件と考えられていることからして予想外であり、窒素不含添加剤がもたらした有意な向上である。」 (ウ) 発明の詳細な説明の記載から、当業者において、本願発明(本願補正発明)の課題が解決できると認識できる範囲 (i) 本願発明(本願補正発明)の課題 本件明細書の【0006】などの記載によれば、本願発明(本願補正発明)の課題の一つは、燃料清浄添加剤として、「今日一般に使用されている窒素含有添加剤と比較して匹敵するおよび/または向上した性能をもたらすような窒素不含添加剤」を提供することであるということができる。 (ii) 添加剤に関連する記載 上記窒素不含添加剤に着目してみると、発明の詳細な説明の【0039】~【0063】には、当該窒素不含添加剤に係る「置換炭化水素添加剤」について記載され、なかでも、当該置換炭化水素添加剤(窒素不含添加剤)の効果については、「本発明の置換炭化水素添加剤は、本明細書に記載する組成物および方法で使用されると、それらが使用されるエンジンの内部で形成するデポジットの量を低減させる、および/または該エンジン内部からのデポジット除去量を増加させる。一部の実施形態において、前記添加剤は、インジェクタデポジットの形成を低減させる、および/またはインジェクタデポジットを除去する。前記添加剤は、燃料の腐食防止を向上させることができ、および/またはそれらが使用される燃料組成物の、金属をピックアップする傾向を低減させることができる。」(【0040】)と記載され、その具体的な化合物については、「ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤」を中心に詳述されている(特に【0054】には、「コハク酸アシル化剤は、上記オレフィン、異性化オレフィンまたはそれらのオリゴマーと、不飽和カルボン酸アシル化剤、例えばイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤、とを、約160℃、または約185℃から約240℃まで、または約210℃までの温度で反応させることによって調製される。」と記載されている。)。 しかしながら、当該記載をみても、置換炭化水素添加剤(窒素不含添加剤)と、清浄性との関係(例えば、窒素不含添加剤の特定の化学構造が清浄性をもたらす、といった作用機序)を示唆する記載は見当たらない。 また、【実施例】(【0098】~【0104】)には、実際に種々の燃料添加剤を用いた具体例が記載され、【0100】【表1】には、XUD9エンジン(直接噴射式ではないディーゼルエンジン:平成29年8月14日付け意見書においては、「約13MPaのインジェクタ圧力で動作する間接噴射エンジン」である旨説明されている。)において使用した場合の実験結果が、また、【0103】【表2】には、DW10エンジン(コモンレール式直接噴射ディーゼルエンジン:同意見書においては、「約160MPaのインジェクタ圧力で動作する直接噴射エンジン」である旨説明されている。)において使用した場合の実験結果が、それぞれまとめられている。そして、当該実験結果には、本願発明(本願補正発明)の課題に係る燃料清浄添加剤の性能(清浄性)を、「残存流量」あるいは「32時間の時点のパワー損失」として評価し、「実施例1-C」、「実施例2-B」、「実施例2-E」において、窒素含有添加剤(あるいは無添加)と比較して、良好な清浄性が得られたことが示されている。 しかしながら、当該「実施例1-C」、「実施例2-B」、「実施例2-E」において使用されている窒素不含清浄剤については、上記各表の脚注に「1000数平均分子量(Mn)ポリイソブチレンおよびジカルボン酸から誘導したポリオレフィン酸である」と説明されるにとどまり、当該ジカルボン酸にあたる化合物は明らかにされていないから、結局、これらの実施例の窒素不含清浄剤は、不明であるといわざるを得ない。さらにいうと、燃料添加剤により発現される清浄性は、使用するエンジンの特性(種類)にも影響されるところ(例えば、上記XUD9エンジンとDW10エンジンにおける実験結果を比べただけでも結果に差が生じていることからすると、燃料添加剤のみならず、エンジンの型式、さらには、インジェクタ圧力といったエンジン関連の事項も影響因子と解される。)、上記の実験では、間接噴射ディーゼルエンジンとしてのXUD9エンジン、直接噴射ディーゼルエンジンとしてのDW10エンジンという特定のエンジンについてしか検証されていないのであるから、それ以外のエンジン(特に、直接噴射ディーゼルエンジンに限れば、DW10エンジンとは形態が異なる、コモンレール式でないエンジンや、DW10エンジンよりインジェクタ圧力がはるかに低く、上記XUD9エンジンのインジェクタ圧力に近いようなエンジン)においても、所期の清浄性(上記「実施例2-B」、「実施例2-E」にみられるようなパワー損失の低減やパワーゲインなど)を得ることができるのかは定かでないと解するのが合理的である。 (iii) 発明の詳細な説明の記載(特に添加剤に関連する記載)から、当業者において、本願発明(本願補正発明)の課題が解決できると認識できる範囲 上記のとおり、発明の詳細な説明のうちの実施例以外の記載箇所には、燃料添加剤と清浄性との因果関係(作用機序)について何ら説明されておらず、また、当該因果関係(作用機序)を当業者が認識するに足りる技術常識も見当たらない。そのため、当該記載箇所において、広範な化合物を範疇とする燃料添加剤(置換炭化水素添加剤)が、インジェクタデポジットの形成の低減をはじめとする清浄性の向上に寄与する旨、形式的に記載されているとしても(【0040】などを参照した。)、そのような形式上の記載だけでは、当業者は、当該燃料添加剤が、実際上、燃料清浄添加剤として、窒素含有添加剤と同等か、これを上回る性能(良好な清浄性)をもたらすと認識することはできないというべきである。 そうすると、当業者が、当該清浄性に関わる本願発明(本願補正発明)の課題(燃料清浄添加剤として、「今日一般に使用されている窒素含有添加剤と比較して匹敵するおよび/または向上した性能をもたらすような窒素不含添加剤」を提供すること)を解決することができることを認識するためには、実際に当該課題が解決できたを示す実験結果を頼りにするほかないところ、上記(ii)で説示したとおり、発明の詳細な説明に記載された実施例は、使用した窒素不含清浄剤を具体的に示すものとはなっていないから、当業者は、当該実施例の測定結果を、特定の窒素不含清浄剤によるものとして認識することは到底できない(当業者は、当該実施例の測定結果をみても、特定の窒素不含清浄剤を使用することにより、上記課題が解決できたとは認識できない。)。さらにいうと、当該実施例の測定結果と同等の清浄性に係る効果が、実験に供されたエンジンとは形態大きく異なる直接噴射ディーゼルエンジンにおいても発現すると認めるに足りる事実は見当たらないのであるから、当該実施例(測定結果)は、実際に上記課題が解決できたを示す根拠(直接噴射ディーゼルエンジン全般にまで拡張ないし一般化するために核となる事実)というには、程遠いものといわざるを得ない。 そうである以上、結局、上記のような発明の詳細な説明の記載(実施例及びそれ以外の記載)からでは、技術常識に照らしても、当業者は、本願発明(本願補正発明)の課題が解決できることにつき(とりわけ直接噴射ディーゼルエンジン全般にわたって当該課題が解決できることにつき)、実質的に、何ら認識することはできないというほかない。 (エ) 特許請求の範囲と、発明の詳細な説明の記載から、当業者において、本願発明(本願補正発明)の課題が解決できると認識することができる範囲との対比 上記(ウ)のとおり、当業者は、発明の詳細な説明の記載に接しても、実質的に、本願発明の課題が解決できることについて認識することができないのであるから、上記(ア)の特許請求の範囲は、発明の詳細な説明の記載から、当業者において、本願発明(本願補正発明)の課題が解決できると認識することができる範囲内にないものと認められる。 (オ) サポート要件についての小括 以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1、9の記載は、サポート要件に適合するものではない。 オ 本件補正後の請求項1、9に記載された発明(本願補正発明)の新規性・進歩性についての検討 上記(2)イ(イ)における明確性要件の検討のとおり、直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系に向上した清浄性をもたらすことに関連する発明特定事項の内容は不明瞭であるから、本願補正発明における「向上した清浄性」とは、上記エ(ア)において述べたとおり、単に、インジェクタ汚損レベルが低く、良好な清浄性を示すといった程度のことを意味するものと解するのが相当であり、また、上記本件補正後の請求項1、9の記載は、上記エにおいて検討したとおりサポート要件に適合しないものであるから、本願補正発明の向上した清浄性に係る効果(特定の添加剤と特定のエンジンを組み合わせることによって奏される清浄性に関する効果)については、本願補正発明全体にわたって奏されるものとして受け入れることはできない。 このような事情を前提に、以下、本願補正発明の新規性及び進歩性について検討をする。 (ア) 引用文献 A.国際公開第2010/042378号 (特表2012-505291号公報参照) (イ) 引用文献Aの記載事項 引用文献Aには、次の事項が記載されている。 なお、摘記にあたっては、便宜上、引用文献Aのパテントファミリーである特表2012-505291号公報を訳文として使用し、段落番号等についても当該訳文の該当箇所を示すこととする。また、以降、引用文献Aの該当箇所を示す際にも、当該訳文における段落番号等により代用することとする。 ・(特許請求の範囲の記載事項) 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 燃料組成物中に酸化金属が溶出する量を減少させる方法であって: 酸型の少なくとも2つのカルボキシ官能基、または無水物型の少なくとも1つのカルボキシ官能基で置換された炭化水素を含む添加剤を前記燃料組成物に加える工程 を含む、方法。 【請求項2】 前記置換炭化水素はヒドロカルビル置換アシル化剤であり、二酸官能性を有する、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記置換炭化水素はコハク酸アシル化剤である、請求項1に記載の方法。 【請求項4】 溶出が減少される前記酸化金属は銅、亜鉛、鉄またはこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の方法。 【請求項5】 前記置換炭化水素の前記ヒドロカルビル基はポリイソブチレンを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。 【請求項6】 前記置換炭化水素剤は: (a)ヒドロカルビル置換コハク酸無水物; (b)加水分解されたヒドロカルビル置換コハク酸無水物; (c)これらの組み合わせ からなる群から選択される、請求項1~5のいずれかに記載の方法。 【請求項7】 前記燃料組成物は抗乳化剤、消泡剤、低温流動剤(cold flow agent)、分散剤/清浄剤添加剤またはこれらの組み合わせをさらに含み; 前記燃料は、酸化金属を含む固体材料に長時間接触させたままにしておくと、前記金属が0.5ppmを超えるレベルまで溶出しやすい 請求項1に記載の方法。 【請求項8】 前記分散剤/清浄剤添加剤はスクシンイミド分散剤、第四級アンモニウム塩またはこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載の方法。 【請求項9】 前記燃料組成物はディーゼル燃料、バイオディーゼルまたはこれらの組み合わせを含む、請求項1~8のいずれかに記載の方法。 【請求項10】 前記燃料組成物は燃料添加剤組成物である、請求項1~9のいずれかに記載の方法。 【請求項11】 前記方法はさらに、前記方法の前記燃料組成物が使用されるエンジンのインジェクターデポジットを減少させる、請求項1~10のいずれかに記載の方法。 【請求項12】 燃料組成物であって: (a)燃料; (b)酸型の少なくとも2つのカルボキシ官能基、または無水物型の少なくとも1つのカルボキシ官能基で置換された炭化水素を含む添加剤;および (c)任意の他の性能添加剤 を含む、燃料組成物。」 【請求項13】 燃料添加剤組成物であって: (a)任意の溶剤; (b)酸型の少なくとも2つのカルボキシ官能基、または無水物型の少なくとも1つのカルボキシ官能基で置換された炭化水素を含む添加剤;および (c)任意の他の性能添加剤 を含む、燃料添加剤組成物。 【請求項14】 燃料組成物中に酸型の少なくとも2つのカルボキシ官能基、または無水物型の少なくとも1つのカルボキシ官能基で置換された炭化水素を含ませて前記燃料組成物に酸化金属が溶出する量を減少させる、燃料添加剤の使用であって、前記添加剤を含む燃料組成物が使用されるエンジンのインジェクターデポジットの形成をさらに任意に減少させる、使用。」 ・(背景技術に関する記載事項) 「【0002】 燃料によるある種の酸化金属の溶出、すなわち可溶化がエンジン性能に及ぼす影響については、これまでやや不明な部分があった。こうした問題は一般に、腐食制御の観点から評価されてきた。しかしながら、金属溶出、たとえば亜鉛溶出がエンジン性能に影響を及ぼす恐れがある問題であることを示す証拠が増えている。 【0003】 亜鉛(Zn)および銅(Cu)などディーゼル燃料等の燃料中に溶解したまたは可溶性の微量の金属が、インジェクターの汚れを増大させることが明らかになっている。このような微量金属は、燃料が接触する燃料分配系の一部を構成する金属部分から、燃料による汚染、すなわち燃料による金属の溶出(溶解)を介して燃料分配系に入り込む。たとえば、ディーゼル燃料が燃料タンクの亜鉛メッキ鋼表面の亜鉛を溶出させ、燃料中の亜鉛レベルを上昇させる場合があり、これが上記で論じたインジェクターの汚れを促進する恐れがある。また、亜鉛および他の金属は、こうした金属を含有する、自動車の燃料噴射系表面と接触することにより燃料に溶出することもある。」 ・(置換炭化水素系添加剤に関する記載事項) 「【0017】 置換炭化水素系添加剤 本発明の置換炭化水素系添加剤は、酸型の少なくとも2つのカルボキシ官能基、または無水物型の少なくとも1つのカルボキシ官能基で置換された炭化水素を含む。いくつかの実施形態では、この添加剤は、酸型または無水物型の少なくとも2つのカルボキシ官能基で置換された炭化水素である。他の実施形態では、添加剤は、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤である。他の実施形態では、置換炭化水素系添加剤は、ダイマー酸化合物である。なお他の実施形態では、本発明の置換炭化水素系添加剤は、このセクションに記載する2種以上の添加剤の組み合わせを含む。 ・・・ 【0020】 この置換炭化水素系添加剤は、コハク酸、ハロゲン化物、無水物およびこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、本剤は酸または無水物であり、他の実施形態では、本剤は無水物であり、なお他の実施形態では、本剤は加水分解された無水物である。置換炭化水素系添加剤の炭化水素および/またはヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤の第一級ヒドロカルビル基は一般に、少なくとも平均約8個または約30個または約35個から約350個または約200個または約100個の炭素原子を含む。一実施形態では、ヒドロカルビル基はポリアルケンから誘導される。 【0021】 このポリアルケンは、Mn(数平均分子量)が少なくとも約300であることを特徴としてもよい。一般に、ポリアルケンは、Mnが約500または約700または約800またはさらには約900から約5000または約2500または約2000またはさらには約1500であることを特徴とする。別の実施形態では、nは約300または約500または約700から約1200または約1300までの幅がある。 【0022】 ポリアルケンは、炭素原子2から約16または約6または約4までの重合性オレフィンモノマーのホモポリマーおよびインターポリマーを含む。このオレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテンおよび1-オクテンなどのモノオレフィンでも;または1,3-ブタジエンおよびイソプレンのようなジオレフィンモノマーなどのポリオレフィンモノマーでもよい。一実施形態では、インターポリマーはホモポリマーである。ポリマーの例としてポリブテンがある。一例ではポリブテンの約50%は、イソブチレンから誘導される。ポリアルケンは、従来の手順により調製される。 【0023】 一実施形態では、ヒドロカルビル基は、nが少なくとも約1300または約1500または約1600から約5000または約3000または約2500または約2000または約1800でのポリアルケンから誘導され、Mw/Mnは約1.5または約1.8または約2から約2.5または約3.6または約3.2までである。いくつかの実施形態では、ポリアルケンは、分子量が800~1200のポリイソブチレンである。こうしたポリアルケンから炭化水素および/または置換基が誘導される置換炭化水素および/または置換コハク酸アシル化剤の調製および使用については、米国特許第4,234,435号に記載されており、その開示内容を参照によって本明細書に援用する。 【0024】 別の実施形態では、上述のポリアルケンを過剰量のマレイン酸無水物と反応させて、置換基1当量当たりのコハク酸基の数が少なくとも1.3から約1.5または約1.7または約1.8までである置換コハク酸アシル化剤を得ることにより、置換炭化水素および/またはコハク酸アシル化剤を調製する。最大数は一般に4.5または約2.5または約2.1または約2.0を超えないものとする。この場合のポリアルケンは、上述のポリアルケンのいずれであってもよい。 ・・・ 【0031】 コハク酸アシル化剤は、上記のオレフィン、その異性化オレフィンまたはオリゴマーをイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤などの不飽和カルボン酸アシル化剤と約160℃または約185℃から約240℃または約210℃までの温度で反応させて調製する。マレイン酸アシル化剤は不飽和アシル化剤が好ましい。アシル化剤の調製手順は、当業者によく知られており、たとえば米国特許第3,412,111号;およびBen et al,「The Ene Reaction of Maleic Anhydride With Alkenes」,J.C.S.Perkin II(1977),pages 535-537に記載されている。これらの参考文献は、上記のアシル化剤の製造手順の開示内容について参照によって援用する。一実施形態では、アルケニル基を低級オレフィン、すなわち、2から約6個までまたは約4個の炭素原子を含むオレフィンのオリゴマーから誘導する。こうしたオレフィンの例としては、エチレン、プロピレンおよびブチレンがある。」 ・(追加の性能添加剤に関する記載事項) 「【0059】 追加の性能添加剤 本発明の添加剤組成物および燃料組成物は、1種または複数種の他の性能添加剤をさらに含んでいてもよい。追加の性能添加剤は、内燃機関の種類およびそのエンジンに使用されている燃料の種類、燃料の品質およびエンジンが運転される使用条件などいくつかの要因に応じて燃料組成物に加えてもよい。 【0060】 いくつかの実施形態では、本明細書に記載の追加の性能添加剤は、燃料組成物が亜鉛などの金属を溶出する性質を助長する恐れがある。そうした状況で本発明を使用すれば、こうした追加の添加剤の影響を減少および/または排除することができる。 【0061】 追加の性能添加剤として、ヒンダードフェノールまたはその誘導体および/またはジアリールアミンまたはその誘導体などの酸化防止剤;腐食抑制剤;および/または、たとえば以下に限定されるものではないが、PIBアミン分散剤、第四級塩分散剤、およびその第四級アンモニウム塩などのスクシンイミド分散剤の誘導体を含むスクシンイミド分散剤といったポリエーテルアミンまたは窒素を含む清浄剤など本発明の燃料添加剤以外の清浄剤/分散剤添加剤を挙げることができる。 【0062】 追加の性能添加剤としてさらに、マレイン酸無水物とスチレンとのエステル型コポリマーおよび/またはエチレンと酢酸ビニルとのコポリマーなどの低温流動性向上剤(cold flow improver);シリコーン油などの抑泡剤および/または消泡剤;ポリアルコキシル化アルコールなどの抗乳化剤;脂肪カルボン酸などの潤滑剤;以下に限定されるものではないが、ベンゾトリアゾールなどの芳香族トリアゾールまたはその誘導体のような金属活性低下剤;および/またはスルホコハク酸アルカリ金属塩などのバルブシートリセッション添加剤を挙げることができる。 【0063】 好適な消泡剤としてさらに、ポリジメチルシロキサン、ポリエチルシロキサン、ポリジエチルシロキサンなどの有機シリコーン、ポリアクリラートおよびポリメタクリラート、トリメチル-トリフルオロ(triflouro)-プロピルメチルシロキサンおよび同種のものがある。 【0064】 追加の添加剤としてさらに、殺生剤;帯電防止剤、氷結防止剤、鉱油および/またはポリ(α-オレフィン)および/またはポリエーテルなどの流動性付与剤、およびオクタン価またはセタン価向上剤などの助燃剤が挙げられる。 【0065】 本発明の燃料添加剤組成物および燃料組成物中に存在してもよい追加の性能添加剤としてさらに、任意に周知のエステル化触媒の存在下でジカルボン酸(酒石酸など)および/またはトリカルボン酸(クエン酸など)をアミンおよび/またはアルコールと反応させて調製するジ-エステル、ジ-アミド、エステル-アミドおよびエステル-イミド摩擦調整剤が挙げられる。これらの摩擦調整剤は、多くの場合、酒石酸、クエン酸またはその誘導体から得られるが、摩擦調整剤自体がその(it)構造内にかなりの量の分枝ヒドロカルビル基を持つように分枝アミンおよび/またはアルコールから得てもよい。こうした摩擦調整剤の調製に使用するのに好適な分枝アルコールの例として、2-エチルヘキサノール、イソトリデカノール、ゲルベアルコールまたはこれらの混合物が挙げられる。 【0066】 追加の性能添加剤として、ヒドロカルビル置換されたコハク酸無水物とポリ(アルキレンアミン)との縮合生成物であるスクシンイミド分散剤などTBNが高い窒素含有分散剤が挙げられる。スクシンイミド(succnimide)分散剤は、潤滑剤製造の技術分野においてよく知られている。こうした分子は一般にアルケニルアシル化剤とポリアミンとの反応から誘導され、この2つ部分間では単純なイミド構造のほか、様々なアミドおよび第四級アンモニウム塩など種々の結合が可能である。スクシンイミド分散剤については、米国特許第4,234,435号および同第3,172,892号により詳細に記載されている。こうした材料は、エステル結合またはエステル官能性を含んでいてもよい。 【0067】 窒素を含む分散剤のもう1つのクラスはマンニッヒ塩基である。これは、高分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミンとホルムアルデヒドなどのアルデヒドとの縮合により形成される材料である。こうした材料については米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。 【0068】 他に窒素を含む分散剤として、一般に炭化水素系ポリマーであって、ポリマーに分散性特性を与える窒素(nintrogen)含有極性官能基を含む、高分子分散剤添加剤が挙げられる。 【0069】 TBNが高い窒素含有分散剤の調製にはアミンを使用するのが一般的である。1種または複数種のポリ(アルキレンアミン)を使用してもよく、3~5つのエチレン単位および4~6個の窒素を持つ1種または複数種のポリ(エチレンアミン)を挙げることができる。こうした材料として、トリエチレンテトラミン(TETA:triethylenetetramine)、テトラエチレンペンタミン(TEPA:tetraethylenepentamine)およびペンタエチレンヘキサミン(PEHA:pentaethylenehexamine)がある。こうした材料は典型的には、一定数のエチレン単位および窒素原子を含む様々な異性体の混合物、および種々の環状構造など様々な異性体構造の混合物として市販されている。ポリ(アルキレンアミン)としては、業界ではエチレンアミンの蒸留残渣油として知られる比較的高分子量のアミンを同様に挙げることができる。 【0070】 追加の性能添加剤として、(i)(a)ヒドロカルビル置換アシル化剤と、前記アシル化剤と縮合可能な酸素または窒素原子を持つ化合物との縮合生成物であって、第三級アミノ基をさらに持つ縮合生成物;(b)少なくとも1つの第三級アミノ基を持つポリアルケン置換アミン;および(c)第三級アミノ基を持つマンニッヒ反応生成物であって、ヒドロカルビル置換(subsituted)フェノール、アルデヒドおよびアミンの反応から調製されるマンニッヒ反応生成物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物;と、(ii)化合物(i)の第三級アミノ基を第四級窒素に変換するのに好適な四級化剤であって、ジアルキルスルファート、ベンジルハロゲン化物、ヒドロカルビル置換カルボナート;酸と組み合わせたヒドロカルビルエポキシドまたはこれらの混合物からなる群から選択される四級化剤との反応生成物を含む第四級塩を挙げることができる。 ・・・ 【0089】 第四級アンモニウム塩およびその調製方法の例については、参照によって本明細書に援用する以下の特許、米国特許第4,253,980号、米国特許第3,778,371号、米国特許第4,171,959号、米国特許第4,326,973号、米国特許第4,338,206号および米国特許第5,254,138号に記載されている。」 ・(産業上の利用性に関する記載事項) 「【0092】 産業上の利用性 一実施形態では、本発明は液体燃料に、および/または圧縮点火機関または火花点火式機関のいずれの内燃機関の運転に有用である。内燃機関は、ガソリン、ディーゼル、天然ガス、混合ガソリン/アルコールまたは上記のセクションに記載した燃料のいずれかを供給する2サイクルまたは4サイクル機関を含む。圧縮点火機関は、ライトデューティーディーゼルエンジンとヘビーデューティーディーゼルエンジンとを含む。火花点火式機関は、ポート噴射ガソリンエンジンおよび直接噴射ガソリンエンジンを含む。」 ・(実施例に関する記載事項) 「【実施例】 【0099】 本発明について、特に有利な実施形態を記載する以下の実施例によりさらに説明する。実施例は本発明の説明のために提供するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。 【0100】 実施例セット1-スクシンイミド分散剤で処理する燃料。RF-06として知られるEU認証ディーゼル燃料を市販されているスクシンイミド分散剤200ppmで処理する。500MLの目盛付きシリンダー7個を試験用に準備し、それぞれに長さ200mmおよび直径2.0mmのGoodfellow Zn棒ZN007902の4cm切片を入れる。各棒の切片の重量を記録し、一定量の燃料を各シリンダーに加え、燃料組成物と亜鉛棒とを合わせた混合物を1重量%亜鉛とする。各シリンダーに量が若干異なる燃料を充填して各サンプルの亜鉛含有量が同じなるようにする。7つのサンプルのうち1つ(1-1)をベースラインとして保管する。下記表に示すように他の7つのサンプル(1-2~1-7)を各々独立に追加の添加剤200ppmで処理する。 【0101】 【表1】 【0102】 容器は、試験場所の暗所で周囲条件にて14日間保存する。各サンプルを7日目および14日目に誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)解析で試験して、亜鉛含有量を判定する。実施例セット1の結果を下記表にまとめてある。 【0103】 【表2】 【0104】 実施例セット2-バイオディーゼル。ディーゼル燃料の代わりに市販されているバイオディーゼル燃料B100をスクシンイミド分散剤で処理する以外は、実施例セット1と同様にする。また、サンプル2-2~2-7中の追加の添加剤はそれぞれ燃料組成物中に500ppmで存在する。サンプル2-1~2-7を上述と同じ要領で試験し、その結果を下記表にまとめてある。 【0105】 【表3】 」 (ウ) 引用文献Aに記載された発明(「方法A」、「燃料組成物A」) 引用文献Aの訳文の【請求項1】~【請求項11】の記載をまとめると、方法に係る次の発明を認めることができる。 「燃料組成物中に酸化金属が溶出する量を減少させ(請求項1)、さらに、前記燃料組成物が使用されるエンジンのインジェクターデポジットを減少させる(請求項11)方法であって: 特定の置換炭化水素剤を前記燃料組成物に加える工程を含み(請求項1)、 前記置換炭化水素剤は、ポリイソブチレンコハク酸無水物、加水分解されたポリイソブチレンコハク酸無水物またはこれらの組み合わせからなる群から選択され(請求項5、6)、 前記燃料組成物はディーゼル燃料、バイオディーゼルまたはこれらの組み合わせを含み(請求項9)、 抗乳化剤、消泡剤、低温流動剤(cold flow agent)、分散剤/清浄剤添加剤またはこれらの組み合わせをさらに含み、前記分散剤/清浄剤添加剤はスクシンイミド分散剤、第四級アンモニウム塩またはこれらの組み合わせを含む(請求項7、8)、 方法。」 そして、これらの請求項には、ポリイソブチレンの数平均分子量についての記載はないが、訳文の【0021】及び【0101】【表1】などに記載された具体的な置換炭化水素剤をみると、当該数平均分子量として、1000や550程度のものを予定していることが分かる。 また、訳文の【0024】及び【0031】には、「上述のポリアルケンを過剰量のマレイン酸無水物と反応させて、置換基1当量当たりのコハク酸基の数が少なくとも1.3から約1.5または約1.7または約1.8までである置換コハク酸アシル化剤を得ることにより、置換炭化水素および/またはコハク酸アシル化剤を調製する」こと(【0024】)、及び、「コハク酸アシル化剤は、上記のオレフィン、その異性化オレフィンまたはオリゴマーをイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤などの不飽和カルボン酸アシル化剤と約160℃または約185℃から約240℃または約210℃までの温度で反応させて調製する」こと(【0031】)が記載されているから、上記請求項に記載された方法の、ポリイソブチレンコハク酸無水物あるいは加水分解されたポリイソブチレンコハク酸無水物(以下、これらをまとめて「ポリイソブチレンコハク酸」という。)は、ポリイソブチレンとイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤などの不飽和カルボン酸アシル化剤を反応させて調製したものであるということができる。 そうすると、引用文献Aには、方法に関する発明として、次の発明(以下、「方法A」という。)が記載されているといえる。 「燃料組成物中に酸化金属が溶出する量を減少させ、さらに、前記燃料組成物が使用されるエンジンのインジェクターデポジットを減少させる方法であって: 特定の置換炭化水素剤を前記燃料組成物に加える工程を含み、 前記置換炭化水素剤は、ポリイソブチレンとイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤などの不飽和カルボン酸アシル化剤を反応させて調製した、ポリイソブチレンコハク酸であって、ポリイソブチレンの数平均分子量として1000、550などを予定したものであり、 前記燃料組成物はディーゼル燃料、バイオディーゼルまたはこれらの組み合わせを含み、 抗乳化剤、消泡剤、低温流動剤(cold flow agent)、分散剤/清浄剤添加剤またはこれらの組み合わせをさらに含み、前記分散剤/清浄剤添加剤はスクシンイミド分散剤、第四級アンモニウム塩またはこれらの組み合わせを含む、 方法。」 また、訳文の【請求項12】には、燃料組成物に関する発明が記載され、当該発明は、上記方法において使用されるものと解されるから、引用文献Aには、燃料組成物に関する発明として、次の発明(以下、「燃料組成物A」という。)が記載されているといえる。 「燃料組成物中に酸化金属が溶出する量を減少させ、さらに、前記燃料組成物が使用されるエンジンのインジェクターデポジットを減少させる方法において使用される燃料組成物であって、 (a)ディーゼル燃料、バイオディーゼルまたはこれらの組み合わせ、 (b)ポリイソブチレンとイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤などの不飽和カルボン酸アシル化剤を反応させて調製した、ポリイソブチレンコハク酸であって、ポリイソブチレンの数平均分子量として1000、550などを予定した置換炭化水素剤、 (c)任意に添加される、抗乳化剤、消泡剤、低温流動剤(cold flow agent)、分散剤/清浄剤添加剤またはこれらの組み合わせをさらに含み、前記分散剤/清浄剤添加剤はスクシンイミド分散剤、第四級アンモニウム塩またはこれらの組み合わせを含む追加の性能添加剤、 を含む、燃料組成物。」 (エ) 本願補正発明1の新規性・進歩性について(方法Aとの対比・検討) (i) 対比 方法Aは、燃料として「ディーゼル燃料、バイオディーゼルまたはこれらの組み合わせ」を用いるものであるから、対象エンジンとしては、ディーゼルエンジンを予定したものといえ、また、当該方法Aは、「燃料組成物が使用されるエンジンのインジェクターデポジットを減少させる方法」であり、ディーゼルエンジンの燃料系にインジェクタ汚損レベルが低く、良好な清浄性をもたらすものといえるから、本願補正発明1でいう「向上した清浄性」をディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であるということができる(冒頭の前提事項参照。)。 また、方法Aにおいて、燃料組成物に加えられる置換炭化水素剤は、「ポリイソブチレンとイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤などの不飽和カルボン酸アシル化剤を反応させて調製した、ポリイソブチレンコハク酸であって、ポリイソブチレンの数平均分子量として1000、550などを予定したもの」であるから、方法Aは、本願補正発明1の「I.ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤を燃料組成物に添加する工程であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する工程」を有するものといえる。 さらに、方法Aにも、当然、燃料組成物をディーゼルエンジンに供給する工程が必要であるから、方法Aは、本願補正発明1の「II.前記燃料組成物を内燃エンジンに供給する工程」を具備するものといえる。 そうすると、両者は、次の点で一致するといえる。 「向上した清浄性をディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、ここで、前記方法は、 I.ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤を燃料組成物に添加する工程であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する工程;および II.前記燃料組成物を内燃エンジンに供給する工程 を含む、 方法。」 他方、両者は次の点で相違するといえる。 ・相違点1:本願補正発明1は、対象とするディーゼルエンジンが、直接噴射式であるのに対して、方法Aには、この点の明示がない点。 ・相違点2:本願補正発明1は、「向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され」るのに対して、方法Aには、この点の明示がない点。 ・相違点3:本願補正発明1は、第四級アンモニウム塩を含まないのに対して、方法Aには、この点の明示がない点。 (ii) 相違点1についての検討 確かに、方法Aは、ディーゼルエンジンの型式までを明示するものではないが、引用文献Aには、ディーゼルエンジンに関して、「圧縮点火機関は、ライトデューティーディーゼルエンジンとヘビーデューティーディーゼルエンジンとを含む。」(訳文の【0092】)と記載され、さらに、当該ライトデューティーディーゼルエンジン(本件明細書【0015】の軽量エンジンと同じ。)は、乗用車ディーゼルエンジンなどを代表的なものとするところ、本願優先日当時には既に、当該乗用車ディーゼルエンジンとして、コモンレール形燃料噴射装置の直接噴射ディーゼルエンジンが主流となっていたこと(平成29年4月13日付け当審拒絶理由通知などにおいて提示した「日本機械学会論文集B編 70(698)、2670-2678、2004、特に、2670頁の冒頭」を参照した。)からみて、引用文献Aには、本願補正発明1が対象とする直接噴射ディーゼルエンジンについても十分に示唆されているということができる。 そうである以上、冒頭に述べたとおり、本願補正発明1の向上した清浄性に係る効果(特定の添加剤と特定のエンジンを組み合わせることによって奏される清浄性に関する効果)は、本願補正発明1全体にわたって奏されるものとして受け入れることはできないという前提下にあっては、方法Aは既に、当該相違点1に係る構成を具備するか、仮にそうでないとしても、当該引用文献Aが示唆するエンジンを採用して、当該相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得るものというべきである。 また、当該前提がなくとも、つまり、本願補正発明1の向上した清浄性に係る効果を認めたとしても、以下の理由により、本願補正発明1は進歩性を有するものとはいいがたい。 すなわち、方法Aは、「燃料組成物が使用されるエンジンのインジェクターデポジットを減少させる方法」であり、既に、ディーゼルエンジンの燃料系にインジェクタ汚損レベルが低く、良好な清浄性をもたらすものであるといえ、かつ、対象とするディーゼルエンジンとして直接噴射型をも予定しているのであるから、本願補正発明1の向上した清浄性に係る効果は、方法Aからみて予測の範疇のものにすぎず、進歩性を認め得る程の格別顕著なものとは認められない。また、平成29年10月6日付けの拒絶理由通知(進歩性)においても説示したとおり、当業者は既に技術常識として、「亜鉛(Zn)および銅(Cu)などディーゼル燃料等の燃料中に溶解したまたは可溶性の微量の金属が、インジェクターの汚れを増大させること」(引用文献Aの上記【0003】を参照した。)、及び、「アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属またはこれらの混合物を含有する燃料により、堆積物を形成する傾向が高くなり、したがってコモンレールインジェクターが汚染するかまたは詰まること」(特表2008-544043号公報の【0017】を参照した。)を認識しているのであるから、当業者は、インジェクターの汚れ(インジェクターデポジット)の抑制に有用な方法Aの特定の窒素不含添加剤は、特に、当該インジェクターの汚れ(インジェクターデポジット)が生じやすいことが分かっているコモンレール式エンジンにおいて、顕著な効力を発揮するであろうと容易に予測することができるから、このような当業者の知識レベルを考慮すると、方法Aの特定の窒素不含添加剤とコモンレール式ディーゼルエンジンのような直接噴射ディーゼルエンジンとを組み合わせる動機付けは十分に存在するといえるとともに、その組合せによる向上した清浄性に係る効果についても、当業者の予測の範疇の事項ということができる。 したがって、本願補正発明1の効果等を考慮しても、なお本願補正発明1に進歩性を認めることはできない。 (iii) 相違点2についての検討 冒頭で説示したとおり、本願補正発明1が具備する、「向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、ここで、前記向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され」るという発明特定事項における、「向上した清浄性」とは、単に、インジェクタ汚損レベルが低く、良好な清浄性を示すといった程度のことを意味すると解するのが相当であるから、これを踏まえると、当該相違点2は、実質的な相違点であるとはいえない。 (iv) 相違点3についての検討 方法Aは、「抗乳化剤、消泡剤、低温流動剤(cold flow agent)、分散剤/清浄剤添加剤またはこれらの組み合わせをさらに含み、前記分散剤/清浄剤添加剤はスクシンイミド分散剤、第四級アンモニウム塩またはこれらの組み合わせを含む」ところ、これらの追加の性能添加剤は、そもそも任意で添加されるものであって、必須の添加剤ではないし(引用文献Aの上記【0059】~【0089】などの追加の性能添加剤に関する記載事項も参照した。)、仮に、これらの追加の性能添加剤のいずれかが添加されるとしても、必ずしも「第四級アンモニウム塩」である必要はないから(引用文献Aの上記【請求項8】には、「スクシンイミド分散剤」と「第四級アンモニウム塩」とが別個のものとして記載されているし、引用文献Aの上記【0070】~【0089】に記載された「第四級アンモニウム塩」についても追加の性能添加剤の一つとして記載されたものにすぎないことに照らした。)、当該相違点3は、実質的な相違点であるとはいえない。 ここで、当該相違点3に関する審判請求人の主張について触れておく。 審判請求人は、当該相違点3に関して、方法Aは、引用文献Aの実施例にみられるように、「第四級アンモニウム塩」を必須の成分とするものであるから、当該相違点3は実質的なものである旨主張するが、方法Aは、実施例に拘束されるものではないから、仮に実施例が「第四級アンモニウム塩」を含んでいるからといって、これを方法Aの必須の成分とまでいうことはできない。したがって、当該主張は当を得たものとはいえない。 また、引用文献Aの実施例は、確かに、「スクシンイミド分散剤で処理する燃料」(【0100】)を用いるものであるから、実施例の燃料組成物は、「スクシンイミド分散剤」を含有するものであると認められ、さらに、引用文献Aの【0061】には、「その第四級アンモニウム塩などのスクシンイミド分散剤の誘導体を含むスクシンイミド分散剤」と記載され、引用文献Aにおいて、「スクシンイミド分散剤」とは、スクシンイミド分散剤の誘導体である「スクシンイミド分散剤の第四級アンモニウム塩」をも含む広義の意味として定義されたものと解される。しかし、当該定義は、引用文献Aでいう「スクシンイミド分散剤」は、必ず「スクシンイミド分散剤の第四級アンモニウム塩」を含むものでなければならないと意味付けたものではないし、潤滑剤製造の技術分野においてよく知られている、単純イミド構造の化合物(引用文献Aの【0066】を参照した。)を排除するものでもないから、上記引用文献Aの実施例の「スクシンイミド分散剤で処理する燃料」は、必ずしも「スクシンイミド分散剤の第四級アンモニウム塩」を含むものには限らないと解すべきである。したがって、当該実施例が「スクシンイミド分散剤の第四級アンモニウム塩」を含むことを前提とする上記主張は採用できない。 (v) 本願補正発明1の新規性・進歩性についての小括 以上のとおりであるから、本願補正発明1は、方法Aと同じであるか、当該方法Aから容易想到のものというべきであるから、当該本願補正発明1に新規性及び進歩性を認めることはできない。 (オ) 本願補正発明9の新規性・進歩性について(燃料組成物Aとの対比・検討) (i) 対比 燃料組成物Aの(a)~(c)の成分は、それぞれ本願補正発明9における「(a)燃料」、「(b)ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する窒素不含添加剤」及び「(c)1つ以上の任意選択の追加の性能添加剤」に相当するものといえる。 また、燃料組成物Aは、燃料として「ディーゼル燃料、バイオディーゼルまたはこれらの組み合わせ」を用いるものであるから、対象エンジンとしては、ディーゼルエンジンを予定したものといえ、また、当該燃料組成物Aは、「燃料組成物中に酸化金属が溶出する量を減少させ、さらに、前記燃料組成物が使用されるエンジンのインジェクターデポジットを減少させる方法において使用される燃料組成物」であり、ディーゼルエンジンの燃料系にインジェクタ汚損レベルが低く、良好な清浄性をもたらすために使用されるものといえるから、本願補正発明9でいう「向上した清浄性」を燃料系にもたらすために使用されるものといえる。 そうすると、両者は、次の点で一致するといえる。 「(a)燃料と、 (b)ポリイソブチレンおよびイタコン酸、シトラコン酸およびマレイン酸からなる群から選択されるジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する窒素不含添加剤と、 (c)1つ以上の任意選択の追加の性能添加剤と を含む、ディーゼルエンジン用燃料組成物であって、 ここで、前記燃料組成物は、向上した清浄性を燃料系にもたらすために使用される、組成物。」 他方、両者は次の点で相違するといえる。 ・相違点4:本願補正発明9は、対象とするディーゼルエンジンが、直接噴射式であるのに対して、燃料組成物Aには、この点の明示がない点。 ・相違点5:本願補正発明9は、「向上した清浄性は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損に従って、DW10エンジンを用いて、低減されたパワー損失として測定され」るのに対して、燃料組成物Aには、この点の明示がない点。 ・相違点6:本願補正発明9は、第四級アンモニウム塩を含まないのに対して、燃料組成物9には、この点の明示がない点。 (ii) 相違点についての検討 そこで、当該相違点4~6について検討すると、これらの相違点は、上記(エ)において検討した相違点1~3と実質的に変わりはないから、当該相違点4~6に係る構成についても、上記検討と同様、実質的なものとはいえないか、容易想到の事項というべきである。 したがって、本願補正発明9についても、燃料組成物Aからみて、新規性及び進歩性を有するとは認められない。 カ 独立特許要件の検討のまとめ 以上の検討のとおり、本件補正後の請求項1、9の記載は、サポート要件に適合するものではないし、本願補正発明は、引用文献Aに記載された発明であるか、当該発明から容易に発明をすることができたものであるから、特許法第36条第6項第1号並びに同法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正却下についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項に規定される目的要件に違反するものであるか、仮に当該目的要件に違反するものではないとしても、同法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に規定される独立特許要件に違反するものであるから、いずれにしても同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明 平成30年7月18日付けでなされた上記本件補正は、上記「第2」のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10の記載は、同年4月10日付け手続補正後の特許請求の範囲の記載のとおりであるところ、そのうちの請求項1、9の記載(以下、これらの請求項に記載された発明をそれぞれ「本願発明1」、「本願発明9」といい、まとめて「本願発明」という。)は、上記「第2 2(1)ア」に示した本件補正前のものであって、再掲すると次のとおりである。 「【請求項1】 I.ポリイソブチレンおよびモノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤を燃料組成物に添加する工程であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する工程;および II.前記燃料組成物を内燃エンジンに供給する工程 を含む、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損を用いて測定される向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす方法であって、 ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、 方法。 【請求項9】 (a)燃料と、 (b)ポリイソブチレンおよびモノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤であって、前記ポリイソブチレンが500から2000の数平均分子量を有する窒素不含添加剤と、 (c)1つ以上の任意選択の追加の性能添加剤と を含む、直接噴射ディーゼルエンジン用燃料組成物であって、 ここで、前記燃料組成物は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損を用いて測定される清浄性を燃料系にもたらすために使用され、 ここで、前記燃料組成物は第四級アンモニウム塩を含まない、 組成物。」 第4 当審の判断 当審は、平成30年4月17日付け、平成29年10月6日付け及び平成29年4月13日付け拒絶理由通知において通知した拒絶理由により、本願は拒絶すべきものであると判断する。 1 平成30年4月17日付け、平成29年10月6日付け及び平成29年4月13日付け拒絶理由通知において通知した拒絶理由の概要 標記拒絶理由は、要するに、次のとおりである。 (1) (新規事項)平成30年4月10日付けでした手続補正は、国際出願日における国際特許出願の明細書の翻訳文又は国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。 (2) (明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (3) (サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (4) (新規性・進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないか、当該発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2 理由(1)(新規事項)について (1) 補正事項 平成30年4月10日付けでした手続補正(以下、「先の補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1、9についてする、次の補正(以下、単に「補正事項」という。)を含むものである。 ・補正事項:先の補正前に記載されていた「ポリイソブチレンおよびジカルボン酸から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤」を、「ポリイソブチレンおよびモノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物から誘導されたポリオレフィン酸を含む窒素不含添加剤」とする。 (2) 先の補正の適否(新規事項の有無)について 上記「補正事項」は、窒素不含添加剤としての「ポリオレフィン酸」が、どのような化合物から誘導されたものであるか(起源)について補正するものであり、具体的には、その起源たる「ジカルボン酸」を、「モノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物」に補正するものである。 そこで、窒素不含添加剤に関する記載のうち、特に、当該「ジカルボン酸」に関連する記載に着目しながら、平成24年12月21日に提出された国際特許出願の明細書の翻訳文及び国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(以下、前者を「本件明細書」、後者を「本件特許請求の範囲」といい、併せて「本件明細書等」という。翻訳文の内容については特表2013-526646号公報に記載されたとおり。)を精査する。 ア 本件特許請求の範囲の記載 本件特許請求の範囲には、「酸の形態の少なくとも2つのカルボン酸官能基または無水物の形態の少なくとも1つのカルボン酸官能基を有する置換炭化水素を含む窒素不含添加剤」(【請求項1】)、「前記窒素不含添加剤が、(a)ヒドロカルビル置換コハク酸無水物;(b)加水分解ヒドロカルビル置換コハク酸無水物;(c)それらの組み合わせから成る群より選択される」(【請求項3】)、「前記置換炭化水素が、二酸官能基を有するヒドロカルビル置換アシル化剤である」(【請求項4】)などの記載がある。 しかしながら、これらの記載が、上記「ポリオレフィン酸」が「モノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物」から誘導されたことを意味するものとして記載されていたとは認められない。 イ 本件明細書の記載 (ア) 本件明細書の【0039】~【0062】には、「置換炭化水素添加剤」について記載され、上記「ジカルボン酸」に関連する記載として、以下の記載を認めることができるが、これらの記載が、上記「ポリオレフィン酸」が「モノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物」から誘導されたことを意味するものとして記載されていたとは認められない。 ・「【0039】 置換炭化水素添加剤 本発明の方法は、酸の形態または無水物の形態の少なくとも2つのカルボキシ官能基を有する置換炭化水素を含むデポジット制御用添加剤を利用する。一部の実施形態において、前記添加剤は、酸または無水物の形態の少なくとも2つのカルボキシ官能基で置換された炭化水素である。他の実施形態において、前記添加剤は、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤である。他の実施形態において、前記置換炭化水素添加剤は、二量体酸化合物である。さらに他の実施形態において、本発明の置換炭化水素添加剤は、この項で説明する2つ以上の添加剤の組み合わせを含む。記載材料の部分エステルも本発明により考えられ、ここに含まれる。」 ・「【0042】 前記置換炭化水素添加剤は、二量体酸を含む。一部の実施形態において、本発明で使用される二量体酸は、C10からC20脂肪不飽和カルボン酸、C12からC18不飽和酸、および/またはC16からC18不飽和酸から誘導される。」 ・「【0043】 前記置換炭化水素添加剤としては、コハク酸、ハロゲン化物、無水物およびそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、前記剤は、酸または無水物であり、他の実施形態において、前記剤は、無水物であり、およびさらに他の実施形態において、前記剤は、加水分解無水物である。前記置換炭化水素添加剤の炭化水素、および/または前記ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤の第一級ヒドロカルビル基は、一般に、平均して少なくとも約8個、または約30個、または約35個から約350個まで、または約200個まで、または約100個までの炭素原子を含有する。1つの実施形態において、前記ヒドロカルビル基は、ポリアルケンから誘導される。言い換えると、前記窒素不含添加剤は、ヒドロカルビル置換コハク酸、ヒドロカルビル置換コハク酸無水物、加水分解ヒドロカルビル置換コハク酸無水物、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。」 ・「【0054】 コハク酸アシル化剤は、上記オレフィン、異性化オレフィンまたはそれらのオリゴマーと、不飽和カルボン酸アシル化剤、例えばイタコン酸、シトラコン酸またはマレイン酸アシル化剤、とを、約160℃、または約185℃から約240℃まで、または約210℃までの温度で反応させることによって調製される。マレイン酸アシル化剤は、好ましい不飽和アシル化剤である。アシル化剤の調製手順は当業者に周知であり、例えば、米国特許第3,412,111号;およびBenら、「The Ene Reaction of Maleic Anhydride With Alkenes」、J.C.S.Perkin II(1977年)、535-537頁に記載されている。これらの参考文献は、上記アシル化剤の製造手順に関するそれらの開示について参照により援用されている。1つの実施形態において、アルケニル基は、低級オレフィン、すなわち、2から約6個、または約4個の炭素原子を含有するオレフィン、のオリゴマーから誘導される。これらのオレフィンの例としては、エチレン、プロピレンおよびブチレンが挙げられる。」 ・「【0057】 一部の実施形態において、本発明での使用に適する置換炭化水素添加剤および/またはヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤は、二酸官能基を含有する。単独で用いることができるまたは上で説明した実施形態と併用することができる他の実施形態において、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤のヒドロカルビル基は、ポリイソブチレンから誘導され、該剤の二酸官能基は、カルボン酸基、例えばヒドロカルビル置換コハク酸、によって与えられる。」 ・「【0058】 一部の実施形態において、前記ヒドロカルビル置換アシル化剤は、1つ以上のヒドロカルビル置換コハク酸無水物基を含む。一部の実施形態において、前記ヒドロカルビル置換アシル化剤は、1つ以上の加水分解ヒドロカルビル置換コハク酸無水物基を含む。」 (イ) また、本件明細書の【実施例】(【0098】~【0104】)には、具体的なポリオレフィン酸として、「1000数平均分子量(Mn)ポリイソブチレンおよびジカルボン酸から誘導したポリオレフィン酸」(【0100】【表1】及び【0103】【表2】の脚注参照)が記載されているが、当該記載が、上記「ポリオレフィン酸」が「モノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物」から誘導されたことを意味するものとして記載されていたとは認められない。 ウ 技術常識 技術常識を参酌しても、本件明細書等から、上記「ポリオレフィン酸」が「モノ不飽和C4からC10ジカルボン酸もしくはその無水物」から誘導されたことを、自明な事項として把握することはできない。 エ 新規事項の有無についての判断 以上の点を踏まえると、上記「補正事項」は、当業者によって、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものといわざるを得ない。 なお、審判請求人は、平成30年4月10日提出の意見書において、当該「補正事項」の根拠を、【0079】などと説明するが、当該段落は、「追加の性能添加剤」に関する説明(【0064】~【0095】)のうちの、「第四級塩」に関する説明(【0076】~【0093】)に属するものであり、上記「ポリオレフィン酸」の起源について説明するものではないから、当該審判請求人の説明は当を得たものとはいえない。 したがって、先の補正は、本件明細書等に記載された範囲内においてするものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。 3 理由(2)(明確性要件)について 請求項1、9の記載(先の補正後の請求項1、9の記載)についても、上記「第2 2(2)イ(イ)」において指摘した明確性要件違反が存すると認められる。 すなわち、請求項1、9には、「SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損を用いて測定される向上した清浄性を直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらす」(請求項1)及び「前記燃料組成物は、SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損を用いて測定される清浄性を燃料系にもたらす」(請求項9)という事項が発明特定事項として記載されている。 しかしながら、上記「第2 2(2)イ(イ)」においても指摘したとおり、「SG-F-098:直接噴射ディーゼルエンジンにおけるインジェクタ汚損」という試験により測定される「(向上した)清浄性」を、直接噴射ディーゼルエンジンの燃料系にもたらすという発明特定事項の内容は不明瞭であるといわざるを得ないから、これらの請求項の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合しない。 4 理由(3)(サポート要件)及び理由(4)(新規性・進歩性)について 上記「第2 2(3)エ」におけるサポート要件についての検討結果及び上記「第2 2(3)オ」における新規性・進歩性についての検討結果は、先に検討した請求項の記載よりも、実質的にその範囲が広い、請求項1、9の記載(先の補正後の請求項1、9の記載:本願発明)についても当てはまるものであるから、同様の理由により、当該記載はサポート要件に適合するものとはいえないし、当該請求項1、9に係る発明(本願発明)に新規性・進歩性を認めることはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願は、特許法第17条の2第3項の規定、同法第36条第6項第2号の規定、同法第36条第6項第1号の規定、並びに、同法第29条第1項第3号及び同条第2項の規定に違反するものであるから、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2015-019466

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    共通の審決分類: 113・C10L、121・C10L、537・C10L
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    共通の審決分類: 113・C10L、121・C10L、537・C10L
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    共通の審決分類: 113・C10L、121・C10L、537・C10L

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