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特許異議申立

2023-701124

ショベル及びショベル用のシステム

審判番号
2023-701124
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-079854
登録番号
7263289
請求日
2023年10月20日
審決日
2025年03月24日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】住友重機械工業株式会社
  • 【権利者代理人】伊東 忠重
  • 【権利者代理人】伊東 忠彦
  • 【異議申立人】▲徳▼田 久子
  • 【異議申立人】高橋 詔男
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 西田 秀彦
  • 審判官 有家 秀郎
分類
P1651.841-ZB (E02F) / P1651.537-ZB (E02F) / P1651.536-ZB (E02F) / P1651.113-ZB (E02F) / P1651.121-ZB (E02F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7263289号発明「ショベル及びショベル用のシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7263289号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7263289号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、 平成25年3月19日(以下、「最初の原出願日」という。)に出願された特願2013-57399号(以下、「最初の原出願」という。)の一部を、平成28年11月29日(以下、「第1の分割出願日」という。)に新たな特許出願(特願2016-231735号。以下、「第1の分割出願」という。)とし、 その第1の分割出願の一部を平成30年8月23日(以下、「第2の分割出願日」という。)に新たな特許出願(特願2018-156226号。以下、「第2の分割出願」という。)とし、 その第2の分割出願の一部を令和2年4月28日(以下、「現実の出願日」という。)に新たな特許出願(特願2020-79854号。以下、「本件特許出願」という。)としたものであって、 令和5年4月14日にその特許権の設定登録がされ、同月24日に特許掲載公報が発行され、 その後、その特許に対し、令和5年10月20日に下記(1)の、同月24日に下記(2)の特許異議の申立てがされたものである。 (1)特許異議申立人徳田久子(「徳」は旧字体)による特許異議の申立て(以下「申立人A」および「申立A」といい、申立人Aが提出した特許異議申立書を「申立書A」という。)。 (2)特許異議申立人高橋詔男による特許異議の申立て(以下「申立人B」および「申立B」とい、申立人Bが提出した特許異議申立書を「申立書B」という。)。 その後の経緯は、次のとおりである。 令和6年 1月 5日付け: 取消理由通知書 同年 3月11日 : 特許権者による意見書の提出 同年 5月16日付け: 取消理由通知(決定の予告) 同年 7月22日: 特許権者による訂正請求書及び意見書の提 出 同年 8月28日: 申立人Aによる意見書(以下「意見書A」 という)の提出 同年 9月 2日: 申立人Bによる意見書(以下「意見書B」 という)の提出 同年10月21日付け: 取消理由通知(決定の予告) 同年12月23日: 特許権者による訂正請求書及び意見書の提 出 令和7年 1月27日付け: 訂正拒絶理由通知 同年 3月 3日: 特許権者による意見書の提出 なお、令和6年7月22日にされた訂正の請求は、同年12月23日に新たな訂正の請求がされたことにより、取り下げられたものとみなす(特許法120条の5第7項)。 第2 願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の記載及び図示 1 特許請求の範囲 本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。 なお、当審において分説を付した。また分説に付した記号は、後記第3の2に示す訂正特許請求の範囲に付した記号と対応させた。 「【請求項1】 1A: 下部走行体と、 1B: 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、 1C: 前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルであって、 1D: 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 1E: 前記制御部は、前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する、 1F: ショベル。 【請求項2】 2A: 前記作業可能状態とは、作動油が連通されて前記操作レバーが有効な状態であり、 2B: 前記作業可能状態ではない状態である作業不可状態とは、作動油が連通されておらず前記操作レバーが無効な状態である、 2C: 請求項1に記載のショベル。 【請求項3】 3A: 前記制御部は、前記ショベルが前記作業不可状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する、 3B: 請求項2に記載のショベル。 【請求項4】 4A: 下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルに用いられるショベル用のシステムであって、 4B: 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 4C: 前記制御部は、前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する、 4D: ショベル用のシステム。」 2 明細書 本件特許の願書に添付した明細書には、次の記載がある。 なお、後記第3で検討する訂正の請求において、明細書の訂正は請求されていない。 (1)「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、特許文献1~3の技術は何れも、所定範囲内に進入した作業者を確実に検出できることを前提としており、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合を想定していない。そのため、ショベル等の操作者は、警報音が止めば、所定範囲内で作業していた作業者が所定範囲外に退出したものと判断し、操作者自身による確認を行うことなくショベル等による作業を開始してしまうおそれがある。 【0005】 本発明は、より安全なショベルを提供することを目的とする。」 (2)「【0011】 画像生成装置100は、作業機械の周辺を監視する作業機械用周辺監視装置の1例であり、制御部1、カメラ2、入力部3、記憶部4、表示部5、人検出センサ6、警報出力部7、ゲートロックレバー8、及びイグニッションスイッチ9で構成される。具体的には、画像生成装置100は、作業機械に搭載されたカメラ2が撮像した入力画像に基づいて出力画像を生成しその出力画像を操作者に提示する。また、画像生成装置100は、人検出センサ6の出力に基づいて、提示すべき出力画像の内容を切り換える。 【0012】 図2は、画像生成装置100が搭載される作業機械としてのショベル60の構成例を示す図であり、ショベル60は、クローラ式の下部走行体61の上に、旋回機構62を介して、上部旋回体63を旋回軸PVの周りで旋回自在に搭載している。 【0013】 また、上部旋回体63は、その前方左側部にキャブ(運転室)64を備え、その前方中央部に掘削アタッチメントEを備え、その右側面及び後面にカメラ2(右側方カメラ2R、後方カメラ2B)及び人検出センサ6(右側方人検出センサ6R、後方人検出センサ6B)を備えている。なお、キャブ64内の操作者が視認し易い位置には表示部5が設置されている。また、キャブ64内には、警報出力部7(右側方警報出力部7R、後方警報出力部7B)、ゲートロックレバー8、イグニッションスイッチ9が設置されている。 【0014】 次に、画像生成装置100の各構成要素について説明する。 【0015】 制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)等を備えたコンピュータである。本実施例では、制御部1は、例えば、後述する座標対応付け手段10、画像生成手段11、人存否判定手段12、警報制御手段13、及び作業機械状態判定手段14のそれぞれに対応するプログラムをROMやNVRAMに記憶し、一時記憶領域としてRAMを利用しながら各手段に対応する処理をCPUに実行させる。 ・・・ 【0021】 人検出センサ6は、ショベル60の周囲に存在する人を検出するための装置である。本実施例では、人検出センサ6は、例えば、キャブ64にいる操作者の死角となる領域に存在する人を検出できるよう上部旋回体63の右側面及び後面に取り付けられる(図2参照。)。 ・・・ 【0025】 ゲートロックレバー8は、ショベル60の状態を切り換える装置である。本実施例では、ゲートロックレバー8は、ショベル60を作業不可状態とするロック状態と、ショベル60を作業可能状態とするロック解除状態とを有する。なお、「作業可能状態」は、操作者がショベル60を操作できる状態を意味し、「作業不可状態」は、操作者がショベル60を操作できない状態を意味する。ゲートロックレバー8は、自身の現在の状態を表す信号を所定周期で繰り返し制御部1に対して出力する。 ・・・ 【0029】 より具体的には、ゲートロックレバー8は、ロック状態においてゲートロック弁を閉状態とし、ロック解除状態においてゲートロック弁を開状態とする。ゲートロック弁は、コントロールバルブ(図示せず。)と操作レバー等との間の油路の間に設けられる切換弁である。また、コントロールバルブは、図示しない油圧ポンプと各種油圧アクチュエータとの間の作動油の流れを制御する流量制御弁である。ゲートロック弁は、閉状態において、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にする。また、ゲートロック弁は、開状態において、コントロールバルブと操作レバー等との間で作動油を連通させて操作レバー等を有効にする。 【0030】 イグニッションスイッチ9は、ショベル60の状態を切り換える装置である。本実施例では、イグニッションスイッチ9は、ショベル60を作業不可状態とするオフ状態と、ショベル60を作業可能状態とするオン状態とを有する。イグニッションスイッチ9は、自身の現在の状態を表す信号を所定周期で繰り返し制御部1に対して出力する。 ・・・ 【0033】 一方、オフ状態において、イグニッションスイッチ9は、エンジンを停止させることによって、コントロールポンプを停止させる。そして、イグニッションスイッチ9は、キャブ64内の操作レバー等による操作を無効にして操作者がショベル60を操作できないようにする。」 (3)「【0201】 次に、図22~図25を参照して、警報制御手段13が人存否判定手段12の判定結果と、作業機械状態判定手段14の判定結果とに基づいて警報出力部7を制御する処理(以下、「第2警報制御処理」とする。)について説明する。なお、図22は、第2警報制御処理の流れを示すフローチャートであり、図23は、第2警報制御処理中に表示される出力画像の推移の一例を示す。また、図24は、作業機械状態判定手段14が作業機械の状態を判定する処理(以下、「作業機械状態判定処理」とする。)の流れを示すフローチャートであり、図25は、作業不能状態から作業可能状態への切り替わり時に警報制御手段13が警報出力部7を制御する処理(以下、「作業開始時警報制御処理」とする。)の流れを示すフローチャートである。なお、警報制御手段13は、所定周期で繰り返し第2警報制御処理を実行し、作業機械状態判定手段14は、所定周期で繰り返し作業機械状態判定処理を実行する。また、警報制御手段13は、作業不能状態から作業可能状態への切り替わり時に作業開始時警報制御処理を実行する。 【0202】 最初に、人存否判定手段12は、ショベル60の周囲に人が存在するか否かを判定する(ステップS21)。このとき、画像生成手段11は、表示部5が起動している場合には、例えば、図23の出力画像D31に示すような路面高さ基準の周辺監視用仮想視点画像を生成して表示する。 【0203】 ショベル60の周囲に人が存在すると判定した場合(ステップS21のYES)、人存否判定手段12は、作業機械状態判定手段14による判定の結果(後述の図24参照。)を参照する(ステップS22)。この場合、人存否判定手段12は、ゲートロックレバー8をロック状態に固定してもよい。具体的には、人存否判定手段12は、操作者がゲートロックレバー8を引き上げることができないようにしてもよく、ゲートロックレバー8が引き上げられたとしてもロック解除状態とならないようにしてもよい。 【0204】 作業機械状態判定手段14によりショベル60が作業可能状態にあると判定された場合(ステップS22のYES)、人存否判定手段12は、検出信号を警報制御手段13に対して出力する。検出信号を受けた警報制御手段13は、警報を出力させるための警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させる(ステップS23)。 【0205】 本実施例では、警報出力部7は、警報音を出力する。具体的には、人存否判定手段12は、左側方監視空間ZLに人(ここでは作業者P10~P12である。)が存在すると判定した場合に警報制御手段13に対して左側方検出信号を通知する。・・・。この場合、警報制御手段13は、警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にしてもよい。 【0206】 また、作業機械状態判定手段14によりショベル60が作業可能状態にないと判定された場合(ステップS22のNO)、人存否判定手段12は、検出信号を警報制御手段13に対して出力せず、NVRAM等に用意された人検出フラグの値を「1」(オン)に設定する(ステップS24)。なお、人検出フラグは、初期値として値「0」(オフ)が設定されており、検出フラグの値「1」(オン)は人を検出したことを表し、検出フラグの値「0」(オフ)は人を検出していないことを表す。・・・。 ・・・・ 【0212】 次に、図24を参照して、作業機械状態判定手段14による作業機械状態判定処理について説明する。 【0213】 最初に、作業機械状態判定手段14は、イグニッションスイッチ9の出力に基づいて、イグニッションスイッチ9がオン状態にあるか否かを判定する(ステップS31)。 【0214】 イグニッションスイッチ9がオン状態にあると判定した場合(ステップS31のYES)、作業機械状態判定手段14は、ゲートロックレバー8の出力に基づいてゲートロックレバー8がロック解除状態にあるか否かを判定する(ステップS32)。 【0215】 ゲートロックレバー8がロック解除状態にあると判定した場合(ステップS32のYES)、作業機械状態判定手段14は、ショベル60が作業可能状態にあると判定する(ステップS33)。 【0216】 一方、イグニッションスイッチ9がオン状態にないと判定した場合(ステップS31のNO)、或いは、ゲートロックレバー8がロック解除状態にないと判定した場合(ステップS32のNO)、作業機械状態判定手段14は、ショベル60が作業可能状態にない、すなわち、ショベル60が作業不可状態にあると判定する(ステップS34)。 ・・・ 【0219】 次に、図25を参照して、警報制御手段13による作業開始時警報制御処理について説明する。 【0220】 最初に、警報制御手段13は、人検出フラグの値を参照する(ステップS41)。そして、人検出フラグの値が「1」オンであると判定した場合(ステップS41のYES)、警報制御手段13は、警報開始信号を警報出力部7に対して出力し、警報出力部7から警報を出力させる(ステップS42)。具体的には、警報制御手段13は、人存否判定手段12により、現時点においてショベル60の周囲に人が存在しないと判定された場合であっても警報を出力させる。本実施例では、警報制御手段13は、左側方警報出力部7L、後方警報出力部7B、及び右側方警報出力部7Rに対して警報開始信号を出力し、3つ全ての警報出力部から警報音を出力させる。この場合、警報制御手段13は、警報の出力が停止されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、警報制御手段13は、ゲートロック弁を閉状態にし、コントロールバルブと操作レバー等との間の作動油の流れを遮断して操作レバー等を無効にしてもよい。 ・・・・ 【0226】 また、上述の作業開始時警報制御処理では、警報制御手段13は、人検出フラグの値が「1」(オン)でありさえすれば警報を出力させる。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、警報制御手段13は、人検知フラグの値が「1」(オン)に設定された時点からの経過時間が所定時間以上であれば警報を出力させないようにしてもよい。或いは、人存否判定手段12は、人検知フラグの値を「1」(オン)に設定した時点からの経過時間が所定時間に達した場合に人検知フラグの値を「0」(オフ)にリセットしてもよい。あまりにも古い検出記録に基づいて警報を出力させてしまうのを防止するためである。 【0227】 また、画像生成装置100は、人存否判定手段12が動体検出センサに基づいて作業者(動体)の存否を判定する場合、ショベル60が作業不可状態にあるときに監視空間内に進入して静止している作業者を、ショベル60が作業可能状態になったときに検出し損ね、ショベル60の操作者がその作業者に気付かないままショベル60による作業を開始してしまうのを防止できる。 【0228】 また、画像生成装置100は、人存否判定手段12がオプティカルフローを用いて作業者(動体)の存否を判定する場合に、ショベル60が作業不可状態にあるときに監視空間内に進入して静止している作業者を、ショベル60が作業可能状態になったときに検出し損ね、ショベル60の操作者がその作業者に気付かないままショベル60による作業を開始してしまうのを防止できる。」 3 図面 本件特許の願書に添付された図面には、次の図示がある。 なお、後記第3で検討する訂正の請求において、図面の訂正は請求されていない。 【図24】のS34に記載される「作業不可能状態」は、明細書及び特許請求の範囲に記載される「作業不可状態」を指すことが明らかであるから、以下に文章で言及する際には、「作業不可状態」と表記する。 (1)【図22】 「 [図:0001423439000001.jpg] 」 (2)【図24】 「 [図:0001423439000002.jpg] 」 (3)【図25】 「 [図:0001423439000003.jpg] 」 第3 訂正の請求について 1 訂正の内容 特許権者は、令和6年12月23日に訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)を提出し、本件訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行っている。 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7263289号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」というものである。 本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルであって、前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、前記制御部は、前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する、ショベル。」と記載されているのを、「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルであって、前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、前記制御部は、前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、操作者が操作レバーを操作しているか否かにかかわらず、操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検出しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる、ショベル。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2及び3も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記作業可能状態とは、作動油が連通されて前記操作レバーが有効な状態であり、前記作業可能状態ではない状態である作業不可状態とは、作動油が連通されておらず前記操作レバーが無効な状態である、請求項1に記載のショベル。」と記載されているのを、「前記作業可能状態とは、作動油が連通されて操作レバーが有効な状態であり、前記作業可能状態ではない状態である作業不可状態とは、作動油が連通されておらず操作レバーが無効な状態である、請求項1に記載のショベル。」に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記制御部は、前記ショベルが前記作業不可状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する、請求項2に記載のショベル。」と記載されているのを、「前記制御部は、前記ショベルが前記作業不可状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる、請求項2に記載のショベル。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルに用いられるショベル用のシステムであって、前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、前記制御部は、前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する、ショベル用のシステム。」と記載されているのを、「下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルに用いられるショベル用のシステムであって、前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、前記制御部は、前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、操作者が操作レバーを操作しているか否かにかかわらず、前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検出しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる、ショベル用のシステム。」に訂正する。 2 訂正特許請求の範囲の記載 本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。 なお、当審において分説を付した。また分説に付した記号は、上記第2の1に示す願書に添付した特許請求の範囲に付した記号と対応させた。下線は、訂正箇所を示す。 「【請求項1】 1A: 下部走行体と、 1B: 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、 1C: 前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルであって、 1D: 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 1E’: 前記制御部は、 前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、 操作者が操作レバーを操作しているか否かにかかわらず、操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検知しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる、 1F: ショベル。 【請求項2】 2A’: 前記作業可能状態とは、作動油が連通されて操作レバーが有効な状態であり、 2B’: 前記作業可能状態ではない状態である作業不可状態とは、作動油が連通されておらず操作レバーが無効な状態である、 2C: 請求項1に記載のショベル。 【請求項3】 3A’: 前記制御部は、前記ショベルが前記作業不可状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる、 3B: 請求項2に記載のショベル。 【請求項4】 4A: 下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルに用いられるショベル用のシステムであって、 4B: 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 4C’: 前記制御部は、 前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、 操作者が操作レバーを操作しているか否かにかかわらず、操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検知しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる、 4D: ショベル用のシステム。」 3 訂正拒絶理由の概要 本件訂正について、当審において令和7年1月27日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 訂正事項1-3に係る訂正は、一群の請求項1-3についてするものであるところ、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載も示唆もされておらず、自明とも言えないから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。 また、訂正事項4に係る訂正は、請求項4についてするものであるところ、訂正事項1に係る訂正と同様に、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。 したがって、一群の請求項〔1-3〕についてする訂正、及び請求項4についてする訂正は、いずれも認めることができない。 よって、本件訂正は、拒絶すべきものである。 4 訂正拒絶理由についての、当審の判断 (1)訂正の単位(一群の請求項)について 訂正前の請求項2及び3は、直接的または間接的に引用する請求項1の記載を訂正する訂正事項1によって連動して訂正されるから、請求項1-3は、特許法120条の5第4項に規定される「一群の請求項」である。 訂正前の請求項4は、訂正前の請求項1-3を引用するものではなく、訂正前の請求項1-3と訂正前の請求項4とを共通して引用する請求項もないから、訂正前の請求項1-3からなる「一群の請求項」と、訂正前の請求項4とが、組み合わされて、一つの一群の請求項となるものではない。 したがって、本件訂正は、訂正事項1-3により一群の請求項1-3について訂正を行い、訂正事項4により請求項4について訂正を行うものである。 (2)訂正事項1について ア 新規事項の有無について 訂正事項1において、「前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、操作者が操作レバーを操作しているか否かにかかわらず、操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検出しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる」と特定したことは、訂正拒絶理由に示したとおり、本件明細書等に記載も示唆もされておらず、自明とも言えない。 その理由は、下記イに示すとおりである。 イ 具体的判断 (ア)訂正事項1に係る訂正後の請求項1の内容 訂正事項1に係る訂正後の請求項1には、「操作レバー」が「無効」な状態に関し、構成1E’の前半部に「前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、」と記載されている(以下、当該記載に係る「操作レバー」が「無効」な状態を、「無効状態1」という。)。 そのうえで、訂正事項1に係る訂正後の請求項1には、構成1E’の後半部に、「操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検出しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる」と記載されている(以下、当該記載に係る処理を「継続処理1」という。)。 上記請求項1の記載から、上記「継続処理1」は、上記「無効状態1」について継続を行う処理であると理解することが自然である。 これに対し、訂正事項1に係る訂正後の請求項1において、「操作レバー」が「無効」な状態として、上記「無効状態1」とは別の状態があることは特定されていない。また、訂正事項1に係る訂正後の請求項1において、上記「無効状態1」とは別の「操作レバー」が「無効」な状態について、上記「継続処理1」を行うことは、特定されていない。そして、訂正事項1に係る訂正後の請求項1において、上記「継続処理1」を行う「操作レバー」が「無効」な状態として、上記「無効状態1」を除外することは、特定されていない。 したがって、訂正事項1に係る訂正後の請求項1は、少なくとも上記「無効状態1」について上記「継続処理1」を行うことを含む。 (イ)本件明細書等における記載及び図示 ショベルの周囲における人の検出、ショベルの周囲における人を検出しなくなった後でのショベルの状態の切り換え操作、及び、操作レバーが無効な状態を継続させることに関し、本件明細書等には、上記第2に示した記載及び図示がある。 (ウ)本件明細書等に記載される処理内容 a 作業可能状態及び作業不可状態について 本件明細書等の段落【0212】-【0216】の記載、及び【図24】の図示より、「イグニッションスイッチ」が「オン」かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除」の状態であれば「作業可能状態」と判定され(S31のYES、かつS32のYES→S33)、「イグニッションスイッチがオン状態」でない、または「ゲートロックレバーがロック解除状態」でないときは、「作業不可状態」と判定される(S31のNOまたはS32のNO→S34)ことが、示されている。 b 作業可能状態で人を検出した場合の処理 本件明細書等の段落【0204】、【0205】の記載、及び【図22】の図示より、ショベルの周囲に人が存在すると判定され、かつ「作業可能状態」である場合(S21のYESかつS22のYES)に、警報を出力させる(S23)とともに、「警報停止ボタンG1が押下されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、・・・操作レバー等を無効にしてもよい。」(段落【0205】)ことが、示されている。 c 作業不可状態で人を検出した場合の処理 本件明細書等の段落【0206】の記載、及び【図22】の図示より、ショベルの周囲に人が存在すると判定され、かつ「作業可能状態」でない場合(S21のYESかつS22のNO)に、「人検出フラグ」が「オンに設定」される(S24)ことが示されている。 d 作業開始時警報処理の実行について 本件明細書等の【0201】の記載より、「作業不能状態から作業可能状態への切り替わり時」に、「作業開始時警報処理」(図25)が実行されることが示されている。 e 作業開始時警報処理において人検出フラグがオンであった場合の処理 本件明細書等の段落【0219】、【0220】の記載、及び【図25】の図示より、「作業開始時警報処理」において「人検出フラグがオン」である場合(S41のYES)には、警報が出力される(S42)とともに、「現時点においてショベル60の周囲に人が存在しないと判定された場合であっても・・・警報の出力が停止されるまで、ショベル60による作業を禁止してもよい。具体的には、・・・操作レバー等を無効にしてもよい。」(段落【0220】)という処理が行われることが示されている。 f 人検出フラグを用いた作業開始時警報処理の目的及び効果 本件明細書等の段落【0227】の記載より、人検出フラグを用いて上記eの作業開始時警報処理を行う目的及び効果について、「ショベル60が作業不可状態にあるときに監視空間内に進入して静止している作業者を、ショベル60が作業可能状態になったときに検出し損ね、ショベル60の操作者がその作業者に気付かないままショベル60による作業を開始してしまうのを防止できる」ことが、示されている。 g 無効処理1 上記a及びbより、当初明細書等には、「イグニッションスイッチ」が「オン」かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除」の状態である「作業可能状態」で、「ショベルの周囲に人が存在すると判定」された場合に、操作レバーを無効とする処理(以下「無効処理1」という。)が、記載されている。 h 無効処理2 また、上記a及びc~fより、当初明細書等には、作業不可状態でショベルの周囲に侵入した作業者を、作業可能状態とする際に検出し損ねてショベルの作業を開始してしまうのを防止するために、「人検出フラグ」を用い、「イグニッションスイッチ」が「オフ」または「ゲートロックレバー」が「ロック」である「作業不可状態」の時に「ショベルの周囲に人が存在すると判定」すると「人検出フラグ」を「オン」に設定しておき、「イグニッションスイッチ」が「オン」及び「ゲートロックレバー」が「ロック解除」である「作業可能状態」への切り換え操作が行われた時に行う「作業開始時警報処理」において、「人検出フラグ」が「オン」であれば、切り換え操作時にはショベルの周囲に人が存在しないと判定されても、操作レバーを無効とする処理(以下「無効処理2」という。)が、記載されている。 (エ)訂正事項1による訂正後の内容が、本件明細書等に記載され、または本件明細書等の記載から導出されるか 訂正事項1による訂正後の請求項1は、上記(ア)に示したとおり、少なくとも、「前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出する」ことで「操作レバーを無効」にした「無効状態1」について、「操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検出しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる」という「継続処理1」を行うことを含む。 これに対し、本件明細書等に記載された処理のうち、上記(ウ)gに示した無効処理1により操作レバーが無効とされた状態、すなわち、「イグニッションスイッチ」が「オン」かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除」の状態である「作業可能状態」で、「ショベルの周囲に人が存在すると判定」された場合に、操作レバーを無効とする処理がされた状態は、訂正事項1による訂正後の請求項1における「無効状態1」に、概略対応する。 また、本件明細書等に記載された処理のうち、上記(ウ)hに示した無効処理2、すなわち、「人検出フラグ」を用い、「イグニッションスイッチ」が「オフ」または「ゲートロックレバー」が「ロック」である「作業不可状態」の時に「ショベルの周囲に人が存在すると判定」すると「人検出フラグ」を「オン」に設定しておき、「イグニッションスイッチ」が「オン」及び「ゲートロックレバー」が「ロック解除」である「作業可能状態」への切り換え操作が行われた時に行う「作業開始時警報処理」において、「人検出フラグ」が「オン」であれば、切り換え操作時にはショベルの周囲に人が存在しないと判定されても操作レバーを無効とする処理は、切り換え操作の前に「作業不可状態」であるために無効であった操作レバーの状態を、切り換え操作の後にも無効とすることに着目すると、操作レバーが無効な状態を継続すると言い得るから、訂正事項1による訂正後の請求項1における「継続処理1」に、概略対応する。 しかしながら、本件明細書等に記載された処理のうち、上記(ウ)gに示した無効処理1で操作レバーが無効となった状態(「無効状態1」に対応する状態)に着目すると、無効処理1で操作レバーが無効となった状態は、「イグニッションスイッチ」が「オン」かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除」の状態である「作業可能状態」で操作レバーを無効としているから、操作レバーを無効とした時には既に「イグニッションスイッチ」が「オン」かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除」の「作業可能状態」である。そのため、無効処理1で操作レバーが無効となった、「無効状態1」に対応した状態について、さらに「作業不可状態」から「作業可能状態」への切り換え時に行われる【図25】の「作業開始時警報制御処理」に入ることや、「作業不可状態」で「人検出フラグをオンに設定」したことに依拠した、上記(ウ)hに示した無効処理2による継続を行うことは、【図22】、【図24】及び【図25】に示される処理のフローを考慮しても、本件明細書等に記載されているものではない。 また、本件明細書等に記載された処理のうち、上記(ウ)hに示した無効処理2(「継続処理1」に対応する処理)に着目すると、無効処理2は、「作業不可状態」から「作業可能状態」への切り換え操作が行われる時に「作業開始時警報処理」として実行される処理であるから、切り換え操作の前に操作レバーが無効である状態は、「イグニッションスイッチ」が「オフ」または「ゲートロックレバー」が「ロック」の「作業不可状態」であることに依拠して操作レバーが無効となっているものである。そのため、「継続処理1」に対応する無効処理2が行われる、操作レバーが無効である状態は、上記(ウ)gに示した無効処理1により操作レバーが無効とされた状態とは異なり、無効処理2による「継続処理1」に対応する処理を、無効処理1により操作レバーが無効となった状態について行うことは、【図22】、【図24】及び【図25】に示される処理のフローを考慮しても、本件明細書等に記載されているものではない。 そして、本件明細書等において、上記(ウ)gに示した無効処理1により操作レバーが無効となった状態は、もともと「イグニッションスイッチ」が「オン」かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除」の状態である「作業可能状態」において操作レバーを無効とした状態であるから、当該無効処理1により操作レバーが無効となった状態について、さらに「作業不可状態」から「作業可能状態」への切り換え時のための、上記(ウ)hに示した無効処理2を組み合わせて行うことは、本件明細書等における全ての記載を総合しても、導出されるものではない。 さらに、その他の本件明細書等の記載を検討しても、「前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出する」ことで「操作レバーを無効」にした「無効状態1」について、「操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検出しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる」という「継続処理1」を行うことは、本件明細書等に記載されていたとはいえず、本件明細書等における全ての記載を総合しても導出できたとはいえない。 したがって、訂正事項1による訂正後の請求項1が少なくとも含む、「無効状態1」について「継続処理1」を行うことは、当初明細書等に記載されたものではなく、本件明細書等における全ての記載を総合すれば導出できた事項でもない。 (オ)本件訂正請求書における特許権者の主張について a 特許権者の主張 訂正事項1に係る訂正の根拠に関し、特許権者は、訂正事項1による訂正後の内容は、本件明細書等の段落【0201】、【0205】、【0220】、【図22】及び【図25】に示される実施形態に基づいて導出されるから、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である旨を主張している(本件訂正請求書の第6頁第2行-同頁最終行)。 b 特許権者の主張についての検討 上記aの特許権者の主張について、検討する。 特許権者が訂正事項1に係る訂正の根拠と主張する、本件明細書等の実施形態に関する記載と図示とは、上記第2に示したとおりであり、本件明細書等の記載に基づく判断は、上記(ウ)及び(エ)に示したとおりであるから、特許権者の上記主張は採用することができない。 (カ)令和7年3月3日提出の意見書における特許権者の主張について a 特許権者の主張 特許権者は、令和7年3月3日提出の意見書においてする主張は、整理すると、概略以下のとおりである(同意見書第2頁第17行~第4頁第18行)。 (a)人を「検出」という語は、それまで見つけ出していなかった人を新たに(初めて)見つけ出すことを意味し、既に見つけている人を繰り返して見つけることを意味するものではないことが自明である。 (b)訂正事項1に係る訂正後の請求項1において、「継続処理1」に関して、「操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、」と記載している。「継続処理1」が行われる「操作レバーが無効な状態」は、「人を検出すると」と記載していることにより、それまで見つけていなかった人を初めて見つけ出す「検出」が行われる状態であることが特定されている。なお、初めて人を見つけ出す状態に限られないのであれば、少なくとも「人を検出すると」ではなく、「人を検出していると」と記載しているはずである。 (c)請求項1に先行して記載されている、「前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし」た状態(「無効状態1」)は、「人を検出」したうえで「操作レバーを無効」としているから、「無効状態1」においては、それまで見つけていなかった人を初めて見つけ出す「検出」は行われない。 (d)「継続処理1」が行われる「操作レバーが無効な状態」は、「人を検出すると」の記載により、「無効状態1」とは異なる状態であることが特定されている。 (e)訂正事項1に係る訂正後の請求項1は、「無効状態1」について「継続処理1」を行うことを含まないから、新たな技術的事項を導入するものではない。 b 特許権者の主張についての検討 上記aの特許権者の主張について、検討する。 訂正事項1に係る訂正後の請求項1において、構成1E’の後半部で「前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検出しなくなった後で操作レバーが無効な状態を・・・」と記載されていることから、「人を検出」という語は、一度人の「検出」がされてから、その後に「人を検出しなく」なる場合や、その後にあらためて「人を検出」することがあり得る意味で用いられており、それまで見つけていなかった人を初めて見つけることのみを意味するものではないことが明らかである。これに対し、「検出」の語が初めて見つける意味を持つから、少なくとも「人を検出していると」という記載を用いていない限り、構成1E’の後半部で言及される「操作レバーが無効な状態」として、構成1E’の前半部で言及する「操作レバーを無効にし」た状態は除外される旨をいう、上記特許権者の主張は、妥当なものではない。 また、本件明細書等を考慮しても、「検出」という語について、たとえば「検知」という語と明確に異なる意味を持たせるような特段の定義は記載されておらず、発明の詳細な説明において、「検出」と「検知」の語が異なる意味を持つものとして使い分けられている様子もない。加えて、たとえば上記第2の2(3)に示した段落【0226】において、「人検出フラグ」「人検知フラグ」という語が区別なく用いられていることからしても、本件明細書等において、「検出」の語について、たとえば「検知」という語と異なる特別な意味を持つということはできない。 そのため、本件明細書等の記載を考慮しても、訂正事項1に係る訂正後の請求項1において、「検出」という語を用いていることに依拠して、「人を検出すると」という記載について、それまで見つけ出していなかった人を新たに(初めて)見つけ出すことのみを意味するということはできない。また、訂正事項1に係る訂正後の請求項1において、構成1E’の後半部に係る「継続処理1」が行われる「操作レバーが無効な状態」として、「人を検出すると」の記載により同構成1E’の前半部に係る「操作レバー」が「無効」とされた「無効状態1」が除外され、「無効状態1」とは異なる同請求項1中に記載のない「操作レバーが無効な状態」に限って「継続処理1」を行うことが特定されているということはできない。 そして、訂正事項1に係る訂正後の請求項1が、少なくとも「無効状態1」について「継続処理1」を行うことを含むことは、上記(ア)に示したとおりである。 また、訂正事項1による訂正後の請求項1が少なくとも含む、「無効状態1」について「継続処理1」を行うことが、当初明細書等に記載されたものではなく、本件明細書等における全ての記載を総合すれば導出できた事項でもないことは、上記(イ)~(エ)に示したとおりである。 したがって、特許権者の上記主張は採用することができない。 ウ 小括 上記イのとおり、訂正事項1に係る訂正は、「無効状態1」について「継続処理1」を行うことを導入する点で、本件明細書等に記載された事項の範囲内において訂正するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合するものではなく、認めることができない。 (3)一群の請求項1-3に係る訂正について 本件訂正のうち、訂正事項1-3に係る訂正は、上記(1)のとおり、一群の請求項1-3についてするものであるところ、上記(2)のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではない。 したがって、訂正事項1を含む、一群の請求項1-3についてする訂正は、訂正事項2及び訂正事項3について検討するまでもなく、認めることができない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4に係る訂正は、訂正事項1に係る訂正と同様の訂正を、「ショベル用のシステム」である請求項4について、行うものである。 そして、訂正事項4において、「操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検出しなくなった後で操作レバーが無効な状態を操作レバーが有効な状態に切り換える操作が行われたとしても、操作レバーが無効な状態を変化させずに継続させる」と特定したことは、上記(2)において訂正事項1について指摘したのと同じ理由で、本件明細書等に記載された事項の範囲内において訂正するものではない。 したがって、本件訂正のうち、訂正事項4により請求項4についてする訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合するものではなく、認めることができない。 5 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正について、一群の請求項〔1-3〕についてする訂正、及び請求項4についてする訂正は、いずれも認めることができない。 よって、本件訂正は、拒絶すべきものである。 第4 本件発明 上記第3のとおり、本件訂正は認められないので、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、各々を「本件発明1」等といい、請求項1ないし4に係る発明をまとめて「本件発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の、請求項1ないし4に記載された事項により特定される、上記第2の1のとおりのものである。 第5 証拠方法、及び特許異議申立理由の要旨、及び先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨 1 証拠方法 申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。 (1)申立人Aの提出した証拠一覧 (以下、申立人Aの提出した甲第1号証を、甲第A1号証あるいは甲A1という。甲第2号証以下についても同様。) ア 申立書Aに添付して提出 ・甲A1:特開2014-181509号公報(最初の原出願の公開公 報) ・甲A2:特開平6-18661号公報 イ 意見書Aに添付して提出 ・甲A3:特開2012-170182号公報 ・甲A4:特開2010-215003号公報 ・甲A5:特開2012-162956号公報 (2)申立人Bの提出した証拠一覧 (以下、申立人Bの提出した甲第1号証を、甲第B1号証あるいは甲B1という。甲第2号証以下についても同様。) ・甲B1:特開2011-17258号公報 ・甲B2:特開2010-198519号公報 ・甲B3:特開平8-121205号公報 ・甲B4:特開平5-93431号公報 ・甲B5:特開2012-138080号公報 ・甲B6:特開平10-49799号公報 2 申立人Aによる特許異議申立理由の要旨 申立人Aが申立書Aにおいて主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。 (1)サポート要件違反 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、この発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである(申立書A第7頁第7行~第10頁第7行)。 (2)明確性要件違反 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、発明が明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである(申立書A第10頁第8行~第18行)。 (3)甲A1を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如 本件出願は分割の要件を満たしておらず、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、その現実の出願日である令和2年4月28日よりも前に頒布された甲A1に記載された発明であり、または、甲A1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書A第10頁第19行~第14頁第5行)。 (4)甲A2を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、最初の原出願日である平成25年3月19日よりも前に頒布された甲A2に記載された発明であり、または、甲A2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書A第14頁第6行~第23頁第9行)。 3 申立人Bによる特許異議申立理由の要旨 申立人Bが申立書Bにおいて主張する申立理由の要旨は、次のとおりである。 (1)甲B1を主たる証拠とした進歩性欠如 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、最初の原出願日である平成25年3月19日よりも前に頒布された甲B1に記載された発明、及び、甲B2ないし甲B6に記載される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書B第15頁第4行~第41頁第3行、第62頁第3行~第63頁第27行)。 (2)甲B2を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、最初の原出願日である平成25年3月19日よりも前に頒布された甲B2に記載された発明であり、または、甲B2に記載された発明、甲B1及び甲B3ないし甲B6に記載される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである(申立書B第41頁第4行~第63頁第27行)。 4 先の取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の要旨 本件の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和6年10月21日付けの取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由(以下、単に「取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由」という。)の概要は、次のとおりである。 (1)明確性要件違反 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、これらの発明に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)サポート要件違反 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、これらの発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)甲A1を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如 本件出願は分割の要件を満たしておらず、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、その現実の出願日である令和2年4月28日よりも前に頒布された甲A1に記載された発明であり、または、甲A1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)甲A2を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、最初の原出願日である平成25年3月19日よりも前に頒布された甲A2に記載された発明であり、または、甲A2に記載された発明及び甲B4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は、特許法29条1項または同条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 第6 当審の判断 事案に鑑み、まず取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(上記第5の4)について、下記1~4で判断し、その後下記5において、申立人A及び申立人Bによる特許異議申立理由(上記第5の2及び3)について、検討する。 1 明確性要件について (1)判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から、判断されるべきものである。 (2)判断基準に基づく判断 ア 本件発明1について (ア)構成1Eにおける「検出」と「検知」について 特許請求の範囲の請求項1には、構成1Eにおいて、「検出」と「検知」という、表記が異なる2つの語が用いられている。 そして特許権者は、令和6年3月11に提出した意見書において、本件発明1ないし4における「検出」と「検知」とは、異なる語を用いているから同じ事項を特定するものではないとし、「検出」と「検知」とが異なる事項を特定するものとして本件発明が認定されるべきであり、本件発明は新規性及び進歩性を有する旨を主張している(同意見書第10頁第22行~第13頁第22行)。 このように、特許を受けようとする発明を特定する特許請求の範囲の請求項1の記載において、表記が異なる「検出」と「検知」という2つの語が用いられており、かつ、特許権者により、上記2つの語が異なる事項を特定するものとして本件発明1が認定されるべき旨が主張されることを考慮すると、本件発明1において、「検出」及び「検知」という語によって、どのように異なる事項が特定されるのかが明確に理解可能でなければ、第三者に不測の不利益を及ぼすことが明らかである。 しかしながら、特許請求の範囲の請求項1の記載において、「検出」と「検知」という表記の異なる2つの語が、互いにどのように異なる事項を特定しているのかは、請求項1の記載自体によっては、明確でない。 この点について、本件明細書の記載及び図面を考慮しても、「検出」と「検知」について、明確に異なる意味を持たせるような特段の定義は記載されておらず、発明の詳細な説明において、「検出」と「検知」の語が異なる意味を持つものとして使い分けられている様子もない。加えて、たとえば上記第2の2(3)に示した段落【0226】において、「人検出フラグ」「人検知フラグ」という語が区別なく用いられていることからしても、本件明細書等において、「検知」の語と「検出」の語とが、互いに区別して用いられているということはできない。 そして、用語の一般的な意味からしても、「検知」の語に用いられる「知」という字と「検出」の語に用いられる「出」という字が異なる、というだけの事情から、本件明細書及び特許請求の範囲において、「検知」の語と「検出」の語とが互いに異なる意味を有するものとして、各々の語が特定する事項が明確に理解されるものとはならない。 したがって、特許請求の範囲の記載における請求項1の記載は、「検出」と「検知」という表記の異なる2つの語を用いており、特許権者により、上記2つの語が同じ事項を特定するものではないとして本件発明1が認定されるべき旨が主張されるにもかかわらず、願書に添付した明細書の記載及び図面、並びに技術常識を考慮しても、上記2つの語の特定する事項が互いに区別して明確に理解できないから、本件発明1を特定する請求項1の記載は、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (イ)構成1Eの中ほどにおける「前記操作レバーが無効な状態のときに」について 特許請求の範囲の請求項1には、構成1Eの中ほどに、「前記操作レバーが無効な状態のときに」と記載されている。また、同請求項1の構成1Eには、上記記載に先立ち、「前記制御部は、前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にし、」と記載されている。 ここで、構成1Eの中ほどの上記「前記操作レバーが無効な状態のときに」の記載について、 a1 「操作レバーが無効な状態」に「前記」がかかっており、「前記操作レバーが無効な状態のときに」は、同記載に先立つ構成1Eの前半部の記載の全体を受けて、「前記制御部」が「前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出」して「操作レバーを無効にし」たときを指すのか、 それとも、 a2 「操作レバー」のみに「前記」がかかっており、「前記操作レバーが無効な状態のときに」は、同記載に先立つ構成1Eの前半部の記載の全体を受けるのではなく、構成1Eの前半部の記載で言及される「操作レバー」について「無効な状態」のときを指すのか、 請求項1の記載からは明確ではない。 そして、構成1Eの中ほどの「前記操作レバーが無効な状態のときに」が、どのような状態を指すかに応じて、構成1Eの後半部の記載により特定される内容が大きく異なることとなるから、第三者に不測の不利益を及ぼすことが明らかである。 この点に関し、本件明細書及び図面には、操作レバーが無効となる状態として、次の3つの状態が記載されている。 b1 「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」(【図24】の「S31→NO」の状態)、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」(【図24】の「S32→NO」の状態)である、「作業不可状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態(段落【0029】、【0033】、【0201】) b2 「イグニッションスイッチ」が「オン状態」(【図24】の「S31→YES」の状態)、かつ、「ゲートロックレバー」が「ロック解除状態」(【図24】の「S32→YES」の状態)である、「作業可能状態」において、人存否判定手段12が人が存在すると判定したことにより、警報を出力するとともに警報停止ボタンG1が押下されるまで、操作レバーを無効にする状態(段落【0202】-【0205】) b3 「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」(【図24】の「S31→NO」の状態)、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」(【図24】の「S32→NO」の状態)である、「作業不可状態」において、人存否判定手段12が人が存在すると判定したことにより、「人検出フラグ」を「オン」に設定しておき、「作業不可状態」から「作業可能状態」への切り替わり時に、「人検出フラグ」が「オン」であれば操作レバーを無効にする状態(段落【0201】、【0206】-【0220】) ここで、構成1Eの中ほどの「前記操作レバーが無効な状態のときに」について、上記a1の意味である場合には、本件明細書及び図面に記載される上記b2の状態と対応すること、及び、上記a2の意味である場合には、本件明細書及び図面に記載される上記b1~b3のいずれの状態にも対応することが、理解される。 しかしながら、操作レバーが無効となる状態に関し、本件明細書及び図面に記載される上記b1~b3の状態を考慮しても、請求項1における構成1Eの中ほどに記載される「前記操作レバーが無効な状態のときに」について、結局のところどのような状態を指すのかは、明確となるものではない。 したがって、特許請求の範囲の記載における請求項1の記載は、構成1Eの中ほどに記載される「前記操作レバーが無効な状態のときに」について、どのような状態のときを指すのか、願書に添付した明細書の記載及び図面、並びに技術常識を考慮しても明確に理解できないから、本件発明1を特定する請求項1の記載は、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (ウ)構成1Eの末尾における「・・・前記操作レバーが無効な状態を継続する」について 特許請求の範囲の請求項1には、構成1Eの末尾に、「・・・前記操作レバーが無効な状態を継続する」と記載されている。 上記記載について、 c1 「操作レバーが無効な状態」が、当該記載の前に記載された条件のみでは変化しないことを指すのか、 それとも、 c2 「操作レバーが無効な状態」について、何らかの時点を起点として、その時点より先まで延長するような処理を行う趣旨であるのか、 明確でない。 また、上記c2の場合には、いつの時点を起点として延長するような処理を行う趣旨であるのか、明確でない。 そして、後記(エ)にも指摘するように、願書に添付した明細書の記載及び図面、並びに技術常識を考慮しても、構成1Eの末尾の「・・・前記操作レバーが無効な状態を継続する」の意味を特定することができず、また、構成1Eの末尾の意味に応じて本件発明1が示す技術内容は異なるものとなるから、本件発明1を特定する請求項1の記載は、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (エ)構成1Eの後半部の処理について 上記(ア)~(ウ)と関連し、結局のところ、構成1Eにおける中ほどから後半部の、「前記操作レバーが無効な状態のときに・・・前記操作レバーが無効な状態を継続する」について、どのような処理内容を特定しているのか、明確ではない。 上記(ア)に示した「検知」と「検出」とについて、特段の意味の相違はないと解したとしても、構成1Eの中ほどから後半部に記載される技術内容は、不明確である。 この点に関し、本件明細書及び図面には、操作レバーが無効となる状態として、上記(イ)b1~b3に示した状態が、記載されている。 以下、上記(イ)b1~b3に示した状態について、順次検討する。 また、事案に鑑み、上記(イ)b1と上記(イ)b3とを部分的に組み合わせて考慮した場合についても、検討する。 a 上記(イ)b1に示した状態について 上記(イ)b1に示した、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」(【図24】の「S31→NO」の状態)、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」(【図24】の「S32→NO」の状態)である、「作業不可状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態(段落【0029】、【0033】、【0201】)については、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、操作レバーが有効な状態に切り替わるものではないことが、技術常識である。 また、その余の本件明細書及び図面の記載を考慮しても、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」である「作業不可状態」について、人の検知の有無によって、操作レバーが有効な状態へと切り替えることは、記載されていない。 そうすると、上記(イ)b1に示される、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態について、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、人の検知の有無によらず当該状態が変わらない、ということは、一応のところ理解される。 しかしながら、請求項1における構成1Eの記載は、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態について、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、人の検知の有無によらず当該状態が変わらないことを、明確に示す記載とはなっていない。構成1Eの末尾についても、上記(ウ)に指摘したとおり、上記(ウ)c1及びc2のいずれとも特定できない記載となっているから、構成1Eの末尾の記載から、構成1Eの特定する内容が明確に定まるものではない。 また、本件明細書及び図面の記載、並びに技術常識を考慮しても、請求項1における構成1Eについて、後記b及びcに検討する上記(イ)b2及び上記(イ)b3についての特定事項ではなく、上記(イ)b1の状態が「イグニッションスイッチ」及び「ゲートロックレバー」を切り替えない限り変わらないことを特定する特定事項であると、明確に理解することはできない。 なお、構成1Eの中ほどの「前記操作レバーが無効な状態のときに」の記載について、上記(イ)a1の意味とすれば、単に「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」である状態は、構成1Eの前半部に記載される「前記制御部」が「前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出」して「操作レバーを無効にし」たとき(当審注:操作レバーは無効であっても、「作業可能状態」として「イグニッションスイッチ」は「オン状態」、「ゲートロックレバー」は「ロック解除状態」である)には該当しないから、上記(イ)a1の意味で「前記操作レバーが無効な状態のとき」に上記(イ)b1の状態が単に維持されることは、互いに整合しないという不備も有している。 b 上記(イ)b2に示した状態について 上記(イ)b2に示した、「イグニッションスイッチ」が「オン状態」(【図24】の「S31→YES」の状態)、かつ、「ゲートロックレバー」が「ロック解除状態」(【図24】の「S32→YES」の状態)である、「作業可能状態」において、人存否判定手段12が人が存在すると判定したことにより、警報を出力するとともに警報停止ボタンG1が押下されるまで、操作レバーを無効にした状態(段落【0202】-【0205】)について、既に警報を出力して操作レバーを無効としている状態においてさらに人を検知し、その後に人を検知しなくなった場合の処理に関して、本件明細書及び図面の記載を考慮しても、具体的な説明は記載されていない。 そして、上記(イ)b2に示した状態においては、「イグニッションスイッチ」が「オン状態」、かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除状態」であるから、上記aに検討した「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」である状態と異なり、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、操作レバーが有効な状態に切り替わらないという技術常識はない。 そうであるところ、上記(イ)b2に示した、「イグニッションスイッチ」が「オン状態」、かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除状態」である「作業可能状態」において、人存否判定手段12が人が存在すると判定したことにより、警報を出力するとともに警報停止ボタンG1が押下されるまで操作レバーを無効にした状態のときに、「前記ショベルの周囲における人を検知すると、その後に前記ショベルの周囲における人を検知しなくなったとしても、前記操作レバーが無効な状態を継続する」とは、人の検知との関係でどの時点を起点としてどのような「継続する」処理を行うのか、本件明細書及び図面に何ら具体的な説明もないから、本件明細書及び図面の記載、並びに技術常識を考慮しても、構成1Eにより特定される内容を明確に理解することができない。構成1Eの末尾について、上記(ウ)c1及びc2のいずれと解した場合についても、全体としての処理内容が明確に理解されるものではない。 また、本件明細書及び図面の記載、並びに技術常識を考慮しても、請求項1における構成1Eについて、上記aに検討した上記(イ)b1、及び後記cに検討する上記(イ)b3についての特定事項ではなく、上記(イ)b2の状態に関する特定事項であると、明確に理解することもできない。 c 上記(イ)b3に示した状態について 上記(イ)b3に示した、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」(【図24】の「S31→NO」の状態)、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」(【図24】の「S32→NO」の状態)である、「作業不可状態」において、人存否判定手段12が人が存在すると判定したことにより、「人検出フラグ」を「オン」に設定しておき、「作業不可状態」から「作業可能状態」への切り替わり時に、操作レバーを無効にした状態(段落【0201】、【0206】-【0220】)のときに、さらに人を検出し、その後に人を検知しなくなった場合に関して、本件明細書及び図面の記載を考慮しても、具体的な説明は記載されていない。 ここで、上記(イ)b3に示した状態について、「作業不可状態」から「作業可能状態」への切り替わり時に、操作レバーを無効にする具体的手法として、段落【0203】に記載されるように「ゲートロックレバー8を引き上げることができないようにした」場合には、「ゲートロックレバー」が「ロック状態」のままの状態における処理となるから、構成1Eに係る処理の全体として、上記aにおいて上記(イ)b1の状態について指摘したのと同じ点で、明確に理解できないこととなる。 また、上記(イ)b3に示した状態について、「作業不可状態」から「作業可能状態」への切り替わり時に、操作レバーを無効にする手法として、「ゲートロックレバー」が「ロック解除状態」となるが「操作レバー」は無効とした場合については、「イグニッションスイッチ」は「オン状態」かつ「ゲートロックレバー」は「ロック解除状態」で操作レバーが無効となっている状態における処理となるから、構成1Eに係る処理の全体として、上記bにおいて上記(イ)b2の状態について指摘したのと同じ点で、明確に理解できないこととなる。 d 上記(イ)b1と上記(イ)b3とを部分的に組み合わせた場合について 構成1Eについて、中ほどの「前記操作レバーが無効な状態のときに」の部分は、上記(イ)b1に示した状態、かつ上記(イ)b3に示した状態の前段階である、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」(【図24】の「S31→NO」の状態)、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」(【図24】の「S32→NO」の状態)である、「作業不可状態」を指す趣旨であり、構成1Eの末尾の「前記操作レバーが無効な状態を継続する」については、上記(イ)b3に示した状態のうち、人の検知によって「人検出フラグ」を「オン」に設定しておき、作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に、「人検出フラグ」が「オン」であることによって操作レバーを無効にする、という趣旨である場合について、検討する。 そのように解するには、構成1E中に記載される「前記操作レバーが無効な状態」を、それぞれ異なる意味と解することを要し、請求項1に全く記載のない「人検出フラグ」を用いた処理であることを解釈で補い、構成1E文末の「継続する」について、請求項1に記載のない、作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時を起点とした処理として、上記(ウ)c2をさらに限定して解する必要がある。また、構成1Eの中ほどの「前記操作レバーが無効な状態のときに」と、当該記載に先立つ構成1Eの前半部の記載の関係についても、上記(イ)a1の解釈では整合しないこととなるから、上記(イ)a2の趣旨と解する必要がある。 しかしながら、そのように解するためには、特許請求の範囲の請求項1の記載にない多数の事項を補って、解釈を重ね、請求項1の記載を離れる必要がある。 そして、特許請求の範囲の請求項1の記載に戻れば、たとえ本件明細書及び図面の記載、並びに技術常識を考慮しても、請求項1の構成1Eについて、上記aないしcの意味ではなく、請求項1の記載を離れてここで解釈を重ねたとおりの意味であると、当業者に明確に理解されるものではない。 e 小括 上記a~dのとおり、特許請求の範囲の記載における請求項1の記載は、構成1Eの後半部に記載される「・・・・前記操作レバーが無効な状態を継続する」について、願書に添付した明細書の記載及び図面、並びに技術常識を考慮しても明確に理解できないから、本件発明1を特定する請求項1の記載は、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (オ)まとめ よって、本件発明1を特定する請求項1の記載は、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 イ 本件発明2について (ア)本件発明1が有する構成について 本件発明2が有する本件発明1の構成について、上記アで指摘したとおり、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (イ)本件発明2において付加された構成について 本件発明2において付加された構成について、「前記作業可能状態」、「前記作業可能状態ではない状態である作業不可状態」、「作業不可状態」について言及される「前記操作レバーが無効な状態」と、上記アで本件発明1について言及した「前記操作レバーが無効な状態」、及び本件明細書中に記載される「イグニッションスイッチ」の「オン状態」及び「オフ状態」、「ゲートロックレバー」の「ロック解除状態」及び「ロック状態」との対応及び区別について、整合して理解可能な記載がされておらず、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (ウ)まとめ よって、本件発明2を特定する請求項2の記載は、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 ウ 本件発明3について (ア)本件発明2が有する構成について 本件発明3が有する本件発明2の構成について、上記イで指摘したとおり、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (イ)本件発明3において付加された構成について 本件発明3において付加された構成について、「前記作業不可状態」、「前記操作レバーが無効な状態」、及び「前記操作レバーが無効な状態を継続する」が特定する事項について、上記ア及び上記イで指摘したのと同様な点が、明確でない。 また、本件発明3において付加する構成について、本件発明1の構成1Eとは異なるさらなる処理を特定する趣旨であるのか、それとも、本件発明3において付加する構成と本件発明1における構成1Eとは、同じ処理について若干表現を変えて重複的に特定する趣旨であるのか、明確でない。たとえば、本件発明1の構成1Eが、上記ア(エ)a~dに検討したいずれかの具体的処理を指す趣旨である場合、本件発明3において付加する構成は、上記ア(エ)a~dに検討した他の具体的処理を指す趣旨であるのか、それとも、同じ具体的処理について表現を変えて重複的に言及しているのか、明確でない。 (ウ)まとめ よって、本件発明3を特定する請求項3の記載は、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 エ 本件発明4について 本件発明4は、「ショベル」に係る発明である本件発明1に対応する、「ショベル用のシステム」に係る発明であるところ、本件発明1を特定する請求項1の記載について上記アで指摘した点は、本件発明4を特定する請求項4の記載についても、同様に不明確である。 よって、本件発明4を特定する請求項4の記載は、上記(1)の基準に照らして、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (3)特許権者の意見書における主張について 特許権者は、令和6年12月23日提出の意見書において、本件発明1ないし4が特許法36条6項2号の規定を満たすことに関し、本件訂正によって、請求項1ないし4の記載により特定される事項は、明確となった旨を主張している(同意見書第5頁第2行~第8頁最終行)。 しかしながら、上記第3に示したとおり、本件訂正は認めることができない。 そして、本件発明1ないし4について、上記(1)に示した明確性要件に関する判断基準に基づく判断は、上記(2)のとおりである。 したがって、特許権者の意見書における主張を考慮しても、上記(2)の判断を変更すべき事情は見いだせない。 (4)明確性についてのまとめ よって、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 サポート要件について (1)判断基準 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 (2)判断基準に基づく判断 ア 解決すべき課題 解決すべき課題に関し、本件明細書の段落【0004】及び【0005】には、上記第2の2(1)に示した記載がある。 上記段落【0004】及び【0005】の記載より、本件明細書において解決すべき課題は、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合にも、操作者自身による確認を行うことなくショベルによる作業を開始してしまうことを防止し、より安全なショベルを提供することであると、認められる。 イ 本件明細書における課題の解決 上記課題の解決に関し、上記第2の2及び3に示した記載及び図示がある。 上記本件明細書等の記載及び図示より、本件明細書等には、ショベルの周囲に人が存在すると判定し(【図22】のステップ21のYES)、イグニッションスイッチがオフ状態またはゲートロックレバーがロック状態である作業不可状態であった場合に(【図22】のステップ22のNO及び【図24】)、人検出フラグをオンに設定しておき(【図22】のステップ24)、後の作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に人検出フラグがオン設定であれば(【図25】のステップ41のYES)、操作レバー等を無効にすることによって(段落【0220】)、ショベルが作業不可状態にあるときに監視空間内に進入して静止している作業者を、ショベルが作業可能状態になったときに検出し損ねても、ショベルによる作業を開始してしまうのを防止する(段落【0227】及び【0228】)という形で、上記アの課題を解決することが、記載されている。 ウ 本件発明1ないし4が、課題を解決すると合理的に理解されるか否か (ア)本件発明1について 本件発明1を特定する、特許請求の範囲における請求項1の記載は、上記第2の1の【請求項1】に示したとおりである。 請求項1において、構成1Eが記載されている。 構成1Eは、上記1(2)アに指摘したとおり不明確であるところ、構成1Eの後半部に係る処理が上記1(2)ア(エ)dの処理内容を含むことが特定され、イグニッションスイッチがオフ状態またはゲートロックレバーがロック状態である作業不可状態であるときに、人検出フラグをオンに設定しておき、後の作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に人検出フラグがオン設定であれば、操作レバーが無効な状態を継続することが特定されるのでなければ、上記アの課題を解決することができると、合理的に理解されるものではない。 これに対し、上記1(2)ア(エ)aに示したように、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態について、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、人の検知の有無によらず当該状態が変わらない、という処理、または、上記1(2)ア(エ)b及びcに示したように、「イグニッションスイッチ」が「オン状態」かつ「ゲートロックレバー」が「ロック解除状態」であるが何らかの事情で操作レバーが無効となっている状態で、その状態に変わりがないことが人の検知との関係で何らか特定されているが、具体的な内容は不明という処理、等と区別がつかず、漠然と不明確な処理によって、所定範囲内で作業する作業者を検出し損ねる場合にも、操作者自身による確認を行うことなくショベルによる作業を開始してしまうことを防止するという、上記アの課題が解決されるということはできない。 したがって、本件発明1は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものということができず、特許法36条6項1号の規定を満たさない。 (イ)本件発明2及び本件発明3について 本件発明2は、本件発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。 本件発明3は、本件発明2の構成を有し、さらに構成を付加したものである。 本件発明2及び本件発明3において付加された構成を考慮しても、本件発明1について上記(ア)で示した判断を、本件発明2及び本件発明3について変更すべき事情はない。 したがって、本件発明2及び本件発明3は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものということができず、特許法36条6項1号の規定を満たさない。 (ウ)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1に係るショベルの発明に対応する、ショベル用のシステムの発明である。 そして、本件発明1について上記(ア)に示したのと同様の理由から、本件発明4も、人を検出し損ねる場合に対応してショベルによる作業を開始してしまうことを防止する、という課題を解決することができると、合理的に理解されるものではない。 したがって、本件発明4は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものということができず、特許法36条6項1号の規定を満たさない。 (3)特許権者の意見書における主張について 特許権者は、令和6年12月23日提出の意見書において、本件発明1ないし4が特許法36条6項1号の規定を満たすことに関し、本件訂正によって、請求項1ないし4の記載により特定される事項から、人を検出し損ねる場合に対応してショベルの安全性を高める、という課題を解決できることを明確にした旨を主張している(同意見書第9頁第1行~第10頁第5行)。 しかしながら、上記第3に示したとおり、本件訂正は認めることができない。 そして、本件発明1ないし4について、上記(1)に示したサポート要件に関する判断基準に基づく判断は、上記(2)のとおりである。 したがって、特許権者の意見書における主張を考慮しても、上記(2)の判断を変更すべき事情は見いだせない。 (4)サポート要件についてのまとめ よって、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 甲A1を主たる証拠とした新規性及び進歩性 (1)分割の適否について ア 構成1Eに関する記載の有無 最初の原出願、第1の分割出願、第2の分割出願、及び本件特許に係る出願の、それぞれ願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面を、以下、それぞれ「当初明細書等」という。 また、最初の原出願、第1の分割出願及び第2の分割出願を、以下、まとめて「一連の原出願」という。 (ア)本件特許に係る出願の当初明細書等について 本件特許に係る出願の、当初明細書等における、特許請求の範囲の請求項1には、「前記制御部は、前記ショベルが作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にする」と記載され、請求項1を引用する請求項5には、「前記制御部は、前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する」と記載されている。 本件特許に係る出願の、当初明細書等における上記請求項1及び請求項5の記載は、「作業可能状態」の前に「作業を開始する前の」という記載が追加されているか否かを別として、本件発明1における構成1Eの記載に、対応する。 (イ)一連の原出願の当初明細書等について 一連の原出願の当初明細書等には、特許請求の範囲の記載を含め、本件発明1における構成1Eの記載に対応する記載はない。 また、一連の原出願の当初明細書等には、本件発明1の構成1Eの一部であり、本件特許に係る出願の当初明細書等における上記請求項1及び請求項5の記載をまとめた構成である、「前記制御部は、前記ショベルが作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効に」し、「前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する」という記載はない。 (ウ)一連の原出願の当初明細書等の記載から導出できたか 本件発明1の構成1Eの一部であり、本件特許に係る出願の当初明細書等における上記請求項1及び請求項5の記載をまとめた構成である、「前記制御部は、前記ショベルが作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効に」し、「前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する」という構成について、一連の原出願の当初明細書等の記載から導出できたか、以下に判断する。 一連の原出願の当初明細書等の段落【0029】、【0033】、【0201】-【0231】及び【図22】-【図25】には、本件明細書等の段落【0029】、【0033】、【0201】-【0231】及び【図22】-【図25】に対応する記載及び図示がある。 そうすると、「操作レバー」が「無効」な状態について、本件明細書等の記載から上記1(2)ア(イ)で検討したb1~b3の状態は、一連の原出願の当初明細書等に記載されていたということができる。 b1 「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」(【図24】の「S31→NO」の状態)、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」(【図24】の「S32→NO」の状態)である、「作業不可状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態(段落【0029】、【0033】、【0201】) b2 「イグニッションスイッチ」が「オン状態」(【図24】の「S31→YES」の状態)、かつ、「ゲートロックレバー」が「ロック解除状態」(【図24】の「S32→YES」の状態)である、「作業可能状態」において、人存否判定手段12が人が存在すると判定したことにより、警報を出力するとともに警報停止ボタンG1が押下されるまで、操作レバーを無効にする状態(段落【0202】-【0205】) b3 「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」(【図24】の「S31→NO」の状態)、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」(【図24】の「S32→NO」の状態)である、「作業不可状態」において、人存否判定手段12が人が存在すると判定したことにより、「人検出フラグ」を「オン」に設定しておき、「作業不可状態」から「作業可能状態」への切り替わり時に、「人検出フラグ」が「オン」であれば操作レバーを無効にする状態(段落【0201】、【0206】-【0220】) ここで、「操作レバーが無効な状態」の「継続」に関し、上記1(2)ア(エ)aで、上記b1に示した状態について検討したのと同様に、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」である「作業不可状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態については、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、操作レバーが有効な状態に切り替わるものではないことが技術常識であること、及び、一連の原出願の当初明細書及び図面の記載を考慮しても、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」である「作業不可状態」について、人の検知の有無によって操作レバーが有効な状態へと切り替えることは記載されていないことを踏まえると、次の記載事項C1は、一連の原出願の当初明細書等に記載されていた事項ということができる。 <記載事項C1> 「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態について、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、人の検知の有無によらず当該状態が変わらないこと また、「操作レバーが無効な状態」の「継続」に関し、上記1(2)ア(エ)dで、上記b1と上記b3とを部分的に組み合わせた場合について検討したのと同様に、次の記載事項C2は、一連の原出願の当初明細書等に記載されていた事項ということができる。 <記載事項C2> 「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」(【図24】の「S31→NO」の状態)または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」(【図24】の「S32→NO」の状態)である「作業不可状態」において人を検出すると、「人検出フラグ」を「オン」に設定しておき(段落、段落【0206】、【図22】の「S24」)、作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に、「人検出フラグ」が「オン」であることによって操作レバーを無効にすること(段落【0201】、【0219】-【0220】、【図25】) ここで、本件発明1の構成1Eは、上記1に指摘したとおり不明確であるところ、本件特許に係る出願の当初明細書等の請求項1及び請求項5に記載された構成であり、上記構成1Eが含む構成である、「前記制御部は、前記ショベルが作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効に」し、「前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する」という構成は、前半部について上記b2の状態に係る処理を指すこと、及び後半部について上記記載事項C1の処理または記載事項C2に係る処理であることを適切に特定しておらず、後半部について、上記b1~b3のいずれかの状態に関し、何らかの「継続」が行われる処理を、漠然と含む。 そして、上記b1~b3のいずれかの状態に関し、何らかの「継続」が行われる処理のうち、上記記載事項C1または上記記載事項C2と異なる処理については、上記記載事項C1が前提とする「操作レバー」が「無効」な状態と当該状態が「継続」される処理内容、及び、上記記載事項C2が前提とする「操作レバー」が「無効」な状態と当該状態が「継続」される処理内容とが互いに異なることから、上記記載事項C1及び上記記載事項C2を一般化して導出されるものとはいえない。また、上記b1~b3のいずれかの状態について何らかの「継続」が行われる処理のうち、上記記載事項C1または上記記載事項C2と異なる処理については、一連の原出願の当初明細書等において具体的な記載もないため、一連の原出願の当初明細書等に記載された全ての事項を総合することによって、導出されるものともいえない。 したがって、本件特許に係る出願の当初明細書等の請求項1及び請求項5に記載された構成であり、上記構成1Eが含む構成である、「前記制御部は、前記ショベルが作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効に」し、「前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると前記操作レバーが無効な状態を継続する」という構成は、一連の原出願の当初明細書等に記載された全ての事項を総合することによって導出されるものではない、新たな技術的事項を追加したものである。 よって、本件分割出願は、一連の原出願との関係において、適切な分割出願ということができない。 イ 新規性・進歩性等の判断基準日 上記アに示したとおり、本件分割出願は、一連の分割出願との関係において、適切な分割出願ということができないから、本件発明1ないし4についての新規性・進歩性等の判断基準日は、その現実の出願日である、令和2年4月28日となる。 (2)甲A1に記載された発明 甲A1は、最初の原出願の公開公報であり、本件発明1ないし4についての新規性・進歩性等の判断基準日より前に公開されている。 甲A1には、ショベルの基本構成、及びシステムに関し、段落【0011】-【0033】及び【0233】に、本件明細書の段落【0011】-【0033】及び【0233】と同じ記載がある。 また、ショベルの状態を変化させる処理に関し、段落【0029】、【0033】、【0201】-【0231】及び【図22】-【図25】に、本件明細書等の段落【0029】、【0033】、【0201】-【0231】及び【図22】-【図25】と同じ記載及び図示がある。 上記記載及び図示から、甲A1には、ショベルに着目すると、次の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されている。 また、甲A1には、システムに着目すると、次の発明(以下「甲A1システム発明」という。)が記載されている。 なお、当審で適宜に分説を付し、認定の根拠を括弧書きで付した。 <甲A1発明> A1a: 下部走行体と(【0012】)、 A1b: 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と(【0012】)、 A1c: 前記上部旋回体の前方中央部に搭載される掘削アタッチメントと、を含むショベルであって(【0013】)、 A1d: ショベルの周囲に存在する人を検出する人検出センサ、及び、人存否判定手段、警報制御手段、作業機械状態判定手段を含む制御部を有し(【0015】、【0021】)、 A1e-1: 制御部は、イグニッションスイッチがオン状態、かつ、ゲートロックレバーがロック解除状態である作業可能状態において、人存否判定手段が人が存在すると判定したことにより、警報を出力するとともに警報停止ボタンが押下されるまで、操作レバーを無効にし(上記(1)ア(ウ)に示したb2の状態に係る処理)、 A1e-2: イグニッションスイッチがオフ状態、またはゲートロックレバーがロック状態であることにより、操作レバーが無効となっている状態は、イグニッションスイッチをオン状態、ゲートロックレバーをロック解除状態に切り替えない限り、人の検知の有無によらず当該状態が変わらず(上記(1)ア(ウ)に示した記載事項C1)、 A1e-3: イグニッションスイッチがオフ状態、またはゲートロックレバーがロック状態である作業不可状態において人を検出すると、人検出フラグをオンに設定しておき、作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に、人検出フラグがオンであることによって操作レバーを無効にし(上記(1)ア(ウ)に示した記載事項C2)、 A1f: ゲートロックレバーがロック状態では、コントロールバルブと操作レバーとの間の作動油の流れを遮断して操作レバーを無効とし、ゲートロックレバーがロック解除状態では、コントロールバルブと操作レバーとの間で作動油を連通させて操作レバーを有効とし、イグニッションスイッチがオフ状態では、コントロールバルブと操作レバーとの間に作動油を供給するコントロールポンプを停止させて操作レバーを無効とし、警報の出力が停止されるまで作業を禁止する場合は、コントロールバルブと操作レバーとの間の作動油の流れを遮断して操作レバーを無効としてもよい(【0029】-【0033】、【0220】) A1g: ショベル。 <甲A1システム発明> A1a4: 下部走行体と、前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、前記上部旋回体の前方中央部に搭載される掘削アタッチメントと、を含むショベルに用いられる操作支援システムであって(【0012】、【0013】、【0233】)、 A1b4: ショベルの周囲に存在する人を検出する人検出センサ、及び、人存否判定手段、警報制御手段、作業機械状態判定手段を含む制御部を有し(【0015】、【0021】)、 A1c4-1: 制御部は、イグニッションスイッチがオン状態、かつ、ゲートロックレバーがロック解除状態である作業可能状態において、人存否判定手段が人が存在すると判定したことにより、警報を出力するとともに警報停止ボタンが押下されるまで、操作レバーを無効にし(上記(1)ア(ウ)に示したb2の状態に係る処理)、 A1c4-2: イグニッションスイッチがオフ状態、またはゲートロックレバーがロック状態であることにより、操作レバーが無効となっている状態は、イグニッションスイッチをオン状態、ゲートロックレバーをロック解除状態に切り替えない限り、人の検知の有無によらず当該状態が変わらず(上記(1)ア(ウ)に示した記載事項C1)、 A1c4-3: イグニッションスイッチがオフ状態、またはゲートロックレバーがロック状態である作業不可状態において人を検出すると、人検出フラグをオンに設定しておき、作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に、人検出フラグがオンであることによって操作レバーを無効にする(上記(1)ア(ウ)に示した記載事項C2)、 A1d4: ショベルに用いられる操作支援システム。 (3)本件発明1について 本件発明1と、甲A1発明とを、対比する。 ア 本件発明1の構成1A、1B、1C、1D及び1Fについて 甲A1発明の構成A1a、A1b、A1c、A1d及びA1gは、本件発明1の構成1A、1B、1C、1D及び1Fに、それぞれ相当する。 イ 本件発明1の構成1Eの前半部について 甲A1発明の構成A1e-1は、イグニッションスイッチがオン状態、かつゲートロックレバーがロック解除状態である作業可能状態で、ショベルが実際には作業を開始していない状態でも同様の処理を行うことが明らかであることを踏まえると、本件発明1の構成1Eの前半部の、「前記制御部は、前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効に」する構成に、相当する。 ウ 本件発明1の構成1Eの後半部について (ア)本件発明1の構成1Eの後半部は、上記1(2)ア(エ)に指摘したとおり不明確であるところ、同1(2)ア(エ)aに示した、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態について、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、人の検知の有無によらず当該状態が変わらないことを含む。 (イ)本件発明1の構成1Eの後半部は、同1(2)ア(エ)dに示した、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」である「作業不可状態」において、人の検知によって「人検出フラグ」を「オン」に設定しておき、作業不可状態から作業可能状態への切り替わり時に、「人検出フラグ」が「オン」であることによって操作レバーを無効にすることを、含む。 (ウ)甲A1発明の構成A1e-2は、「イグニッションスイッチがオフ状態、またはゲートロックレバーがロック状態であることにより、操作レバーが無効となっている状態」が、「ゲートロックレバーをロック解除状態に切り替えない限り、・・・・当該状態が変わら」ないことが明らかであることを踏まえると、本件発明1の構成1Eの後半部である「前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると、前記操作レバーが無効な状態を継続する」構成が含む、上記(ア)の場合に、相当する。 (エ)甲1発明の構成A1e-3は、本件発明1の構成1Eの後半部である「前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると、前記操作レバーが無効な状態を継続する」構成が含む、上記(イ)の場合に、相当する。 (オ)したがって、甲A1発明の構成A1e-2、及び、構成A1e-3は、本件発明1の構成1Eの後半部に、相当する。 エ 小括 上記ア~ウより、本件発明1と甲A1発明との間に、相違はない。 また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は当業者が適宜になし得る設計事項程度である。 (4)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。 本件発明2が有する本件発明1の構成については、上記(3)で対比したとおりである。 本件発明2において付加された構成は、上記1(2)イ(イ)に指摘したとおり不明確であるところ、いずれの意味としても、甲A1発明の構成A1fは、本件発明2において付加された構成に相当する。 したがって、本件発明2と甲A1発明との間に、相違はない。 また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は当業者が適宜になし得る設計事項程度である。 (5)本件発明3について 本件発明3は、本件発明2の構成を有し、さらに構成を付加したものである。 本件発明3が有する本件発明1及び本件発明2の構成については、上記(3)及び(4)で対比したとおりである。 本件発明3において付加された構成は、上記1(2)ウ(イ)に指摘したとおり不明確であるところ、本件発明1が有する構成1Eの後半部と同じ処理を、表現を変えて重複して特定する趣旨であれば、甲A1発明との対比において検討すべき新たな相違点を生じるものではない。また、本件発明1が有する構成1Eの後半部と異なる処理を特定する趣旨であれば、甲A1発明の構成A1e-2、及び、構成A1e-3のうち、一方が本件発明1が有する構成1Eの後半部に相当し、他方が本件発明3において付加された構成に相当する。 したがって、本件発明3と甲A1発明との間に、相違はない。 また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は当業者が適宜になし得る設計事項程度である。 (6)本件発明4について 本件発明4と、甲A1システム発明とを、対比する。 ア 本件発明4の構成4A、4B及び4Dについて 甲A1システム発明の構成A1a4、A1b4及びA1d4は、本件発明4の構成4A、4B及び4Dに、それぞれ相当する。 イ 本件発明4の構成4Cについて 甲A1システム発明の構成A1a4-1は、上記(3)イにおいて本件発明1の構成1Eの前半部について示したのと同じ理由で、本件発明4の構成4Cの前半部に、相当する。 甲A1システム発明の構成A1a4-2、及び構成A1a4-3は、上記(3)ウにおいて本件発明1の構成1Eの後半部について示したのと同じ理由で、本件発明4の構成4Cの後半部に、相当する。 ウ 小括 上記ア及びイより、本件発明4と甲A1システム発明との間に、相違はない。 また、仮に若干の相違点があったとしても、当該相違点は当業者が適宜になし得る設計事項程度である。 (7)特許権者の意見書における主張について 特許権者は、令和6年12月23日提出の意見書において、本件訂正によって、分割は適法となり、甲A1を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如の取消理由は解消した旨を主張している(同意見書第12頁第13行~第17行)。 しかしながら、上記第3に示したとおり、本件訂正は認めることができないから、上記特許権者の主張は採用できない。 (8)まとめ 以上のとおり、本件発明1ないし4に係る特許は、甲A1を主たる証拠として、特許法29条1項及び2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 甲A2を主たる証拠とした進歩性 (1)証拠の記載 事案に鑑み、甲A2、甲A3及び甲A5について、記載をみる。 ア 甲A2 (ア)甲A2の記載事項 本件特許出願の分割に係る最初の原出願の出願前に公開された甲A2には、以下の記載がある。(当審で下線を付与した。以下同様。) a 「【0002】 【従来の技術】従来、全旋回型バックホウにおける接触事故防止手段としては、例えば特公平3-48524号公報に示されているように、旋回台に超音波センサーを装備して、旋回台に構造物や人が接近すると警報を出して注意を促すように構成したものが知られている。又、旋回台に構造物や人が接近すると機体の移動や旋回台の旋回作動を自動的に牽制阻止することも容易に考えられる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、このように構造物や人が旋回台に接近すると機体の移動や旋回台の旋回作動を自動的に停止してしまう構成では、外部作業者が接近していることをオペレータが認識した上で安全に作業できる状態であっても、外部作業者が機体から離れるまで作業を中断しなければならず、全体的な作業能率が低下するものであった。本発明は、このような不具合なく安全、かつ、能率的に作業を行うことのできる全旋回型バックホウを提供することを目的とするものである。 ・・・・ 【0005】 【作用】本発明によると、周囲の外部作業者が不用意に本機に接近すると、携帯する送受信器は本機の超音波センサーからの捜査用超音波信号を受けて返信超音波信号を送信し、本機の超音波センサーでこの返信超音波信号を受信すると、返信超音波信号を送信した送受信器までの距離を演算していずれの侵入阻止領域内にあるか否かを判別し、いづれかの侵入阻止エリアに侵入があることが判別されると、本機の作動を停止させる制御が自動的に行われる。この場合、本機のオペレータが侵入した外部作業者の所在を充分認識して、まだ作業ができると判断した時には、作業用の操作具に備えた停止解除スイッチを操作しながら操作具を操作して作業を行うことができ、又、停止解除スイッチを離せば作業停止機構の働きで作業は不能となる。 【0006】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によると、周囲の外部作業者が侵入阻止領域に不用意に立ち入ったとしても、外部作業者の侵入を認識した上での作業を行うことも可能となり、全体的な能率を落とすこと少なく作業を行うことができるようになった。」 b 「【0007】 【実施例】以下、本発明の一実施例を図に基づいて説明する。図1に示すように、全旋回型バックホウは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行車体2の上部に全旋回可能に旋回台3を搭載し、この旋回台2の前部に左右スイング可能に掘削用のフロント装置4を装着するとともに、旋回台2上に原動部5および日除け6付きの運転部7を装備して構成されている。尚、前記フロント装置4は周知のように、ブーム8、アーム9、および、バケット10を順次連結して、夫々をブームシリンダ11、アームシリンダ12、および、バケットシリンダ13で揺動駆動するように構成されたものであり、スイングシリンダ14で左右に揺動されるスイングブラケット15を介して旋回台3の前部に連結されている。図4は、このバックホウの油圧回路を示しており、図においてP1 ,P2 、およびP3はエンジンEによって駆動される油圧ポンプ、V1 およびV2 は左右の走行用油圧モータ(図示せず)に対する制御弁、V3 は旋回台3を駆動する油圧モータ(図示せず)に対する油圧パイロット式制御弁、V4 は機体前部に備えたドーザ16を昇降する油圧シリンダの制御弁、V5 はスイングシリンダ14の油圧パイロット式制御弁、V6 はバケットシリンダ13の油圧パイロット式制御弁、V7はブームシリンダ11の油圧パイロット式制御弁、V8 はブームシリンダ11に対する合流用の油圧パイロット式制御弁、V9 はアームシリンダ12の油圧パイロット式制御弁、V10は油圧取り出し用サービスポートに対する制御弁、V11はパイロット圧の供給先を切り換える旋回/スイング選択用の切換え弁、PV1 ないしPV4 は前記油圧パイロット式制御弁群を遠隔操作するパイロット操作弁、又、P4 はパイロット圧供給用のポンプである。そして、バケット用油圧パイロット式制御弁V6 とブーム用油圧パイロット式制御弁V7 とが十字揺動操作可能な操作レバー17で操作されるパイロット操作弁PV1 ,PV2 に連係され、又、旋回用油圧パイロット式制御弁V3 (あるいはスイング用油圧パイロット式制御弁V5 )とアーム用油圧パイロット式制御弁V9 とが十字揺動操作可能な操作レバー18で操作されるパイロット操作弁PV3 ,PV4 に連係されている。 【0008】前記旋回台3の中心側の高所である日除け6の上部下面に4個の超音波センサーS1 ,S2 ,S3 ,S4 を設置して旋回台3の左右および後方に設定したエリアA1 ,A2 ,A3 およびフロント装置4を含む所定のエリアA4 に向けてそれぞれ異なった周波数f1 ,f2 ,f3 ,f4 の捜査用超音波信号をそれぞれ異なった所定の周期T1 ,T2 ,T3 ,T4 で発信する。 【0009】バックホウの周囲で作業を行う外部作業者は、本機に装備された前記超音波センサーS1 ~S4 からの捜査用超音波信号を受信すると返信用超音波信号を送信する送受信器19を携帯している。この送受信器19からの返信用超音波信号は、第1の超音波センサーS1 からの捜査用超音波信号(周波数f1 、周期T1 )に対しては、異なった周波数f5で同一の周期T1 の返信用超音波信号を送信し、又、第2の超音波センサーS2からの捜査用超音波信号(周波数f2 、周期T2 )に対しては、異なった周波数f6 で同一の周期T2 の返信用超音波信号を送信し、第3の超音波センサーS3からの捜査用超音波信号(周波数f3 、周期T3 )に対しては、異なった周波数f7 で同一の周期T3 の返信用超音波信号を送信し、又、第4の超音波センサーS4 からの捜査用超音波信号(周波数f4 、周期T4 )に対しては、異なった周波数f8 で同一の周期T4 の返信用超音波信号を送信するよう構成されている。図3に示すように、前記超音波センサーS1 ~S4 は侵入検知機構20に接続されている。この侵入検知装置20は、捜査用超音波信号の発信時間と返信用超音波信号の受信時間とに基づいて各超音波センサーS1 ~S4 から送受信器16までの各距離を演算する演算回路21、演算した距離が侵入阻止エリアA1 ~A4 に含まれるかどうかを判別する判別回路22を備えており、いずれかのエリアに侵入があることが検知されると警報機構25が作動するとともに、作業停止機構23が作動するように構成されている。この作業停止機構23は、図5に示すように、前記パイロット操作弁PV1ないしパイロット操作弁PV4 にパイロット圧を供給する油路中に設けた電磁式のアンロード弁24をアンロード作動させることでパイロット操作弁PV1 およびパイロット操作弁PV2 へのパイロット圧を遮断して、旋回作動(又はスイング作動)およびフロント装置4の作動を不能にするように構成されている。 【0010】又、前記パイロット操作弁PV1 ないしパイロット操作弁PV4 の操作レバー17および18の握り部には、作業停止機構23の作動を一時的に解除する停止解除スイッチSW1 およびSW2 が備えられており、この停止解除スイッチSW1 又はSW2 が操作されている間は侵入検知機構20で侵入が検知されていても、アンロード弁24のアンロード作動が行われないようになっている。 【0011】本発明は以上のように構成されており、周囲の外部作業者が不用意に本機に接近すると、携帯する送受信器19は本機の超音波センサーS1 ~S4 のいずれかからの捜査用超音波信号を受けて返信超音波信号を送信し、本機の超音波センサーS1 ~S4 でこの返信超音波信号を受信すると、侵入検知機構20において返信超音波信号を送信した送受信器19までの距離を演算していずれの侵入阻止エリア内にあるか否かを判別し、いづれかの侵入阻止エリアに侵入があることが判別されると、作業停止機構23が働いて本機の作動を停止させる制御が自動的に行われる。この場合、本機のオペレータが侵入した外部作業者の所在を充分認識して、まだ作業ができると判断した時には、操作レバー17および18に備えた停止解除スイッチSW1 又はSW2 の少なくとも一方を操作しながら操作レバー17および18を操作して作業を行うことができ、又、停止解除スイッチを離せば作業停止機構の働きで作業は不能となる。」 (当審注;「旋回台」について、上記段落【0007】中に旋回台「2」と記載されている箇所が2箇所あるが(「・・・この旋回台2の前部に・・・」及び「・・・とともに、旋回台2上に原動部5・・・」。)、同段落中の他の記載及び下記(ウ)a、bの図1、2を参照しても、これらが旋回台「3」の誤記であることは明らかである。 また、上記段落【0009】に「侵入検知機構20」及び「侵入検知装置20」の記載があるが、同じものを指すことは明らかであるから、以下では「侵入検知機構20」に表記を統一する。) c 図面 (a)図1は以下のものである。 「 [図:0001423439000004.jpg] 」 (b)図2は以下のものである。 「 [図:0001423439000005.jpg] 」 (c)図3は以下のものである。 「 [図:0001423439000006.jpg] 」 (d)図4は以下のものである。 「 [図:0001423439000007.jpg] 」 (e)図5は以下のものである。 「 [図:0001423439000008.jpg] 」 (f)上記図面から、以下のことが看取できる。 上記aの段落【0007】の記載を踏まえ、上記(a)、(b)の図1、2から、 ・掘削用のフロント装置4は、旋回台3の前方中央部に備えられていること。 上記bの段落【0008】の記載を踏まえ、上記(a)、(b)の図1、2から、 ・旋回台3の左右および後方に設定したエリアA1 ,A2 ,A3 およびフロント装置4を含む所定のエリアA4は、全旋回型バックホウの周囲にあるエリアであること。 (イ)甲A2発明 上記(ア)より、甲A2には、次の発明(以下「甲A2発明」という。)が記載されていると認める。(便宜のために関連する段落番号等を付した。) (甲A2発明) 「A2a: 全旋回型バックホウであって(【0007】)、 A2b: 左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行車体2の上部に全旋回可能に旋回台3を搭載し、この旋回台3の前部に左右スイング可能に掘削用のフロント装置4を装着するとともに(【0007】)、 A2c: 旋回台3上に原動部5および日除け6付きの運転部7を装備して構成され(【0007】)、 A2d: 前記フロント装置4は、ブーム8、アーム9、および、バケット10を順次連結して、夫々をブームシリンダ11、アームシリンダ12、および、バケットシリンダ13で揺動駆動するように構成されたものであり、スイングシリンダ14で左右に揺動されるスイングブラケット15を介して旋回台3の前部に連結されており(【0007】)、 A2e: エンジンEによって駆動される油圧ポンプP1 ,P2 、およびP3を備える油圧回路を有し、バケット用油圧パイロット式制御弁V6 とブーム用油圧パイロット式制御弁V7 とが十字揺動操作可能な操作レバー17で操作されるパイロット操作弁PV1,PV2 に連係され、又、旋回用油圧パイロット式制御弁V3 (あるいはスイング用油圧パイロット式制御弁V5 )とアーム用油圧パイロット式制御弁V9 とが十字揺動操作可能な操作レバー18で操作されるパイロット操作弁PV3 ,PV4 に連係され(【0007】)、 A2f: 掘削用のフロント装置4は、旋回台3の前方中央部に備えられており、(図1、2) A2g: 前記旋回台3の中心側の高所である日除け6の上部下面に4個の超音波センサーS1 ,S2 ,S3 ,S4 を設置して旋回台3の左右および後方に設定したエリアA1 ,A2 ,A3 およびフロント装置4を含む所定のエリアA4 に向けて異なった周波数f1 ,f2 ,f3 ,f4 の捜査用超音波信号をそれぞれ異なった所定の周期T1 ,T2 ,T3 ,T4 で発信しており(【0008】)、 A2h: エリアA1 ,A2 ,A3 およびエリアA4は、全旋回型バックホウの周囲にあるエリアであり(図1、2)、 A2i: バックホウの周囲で作業を行う外部作業者は、本機に装備された前記超音波センサーS1 ~S4 からの捜査用超音波信号を受信すると返信用超音波信号を送信する送受信器19を携帯しており、この送受信器19からの返信用超音波信号は、第1の超音波センサーS1 からの捜査用超音波信号(周波数f1 、周期T1 )に対しては、異なった周波数f5で同一の周期T1 の返信用超音波信号を送信し、又、第2の超音波センサーS2からの捜査用超音波信号(周波数f2、周期T2 )に対しては、異なった周波数f6 で同一の周期T2 の返信用超音波信号を送信し、第3の超音波センサーS3からの捜査用超音波信号(周波数f3、周期T3 )に対しては、異なった周波数f7 で同一の周期T3 の返信用超音波信号を送信し、又、第4の超音波センサーS4 からの捜査用超音波信号(周波数f4 、周期T4 )に対しては、異なった周波数f8 で同一の周期T4 の返信用超音波信号を送信するよう構成され(【0009】)、 A2j: 前記超音波センサーS1 ~S4 は侵入検知機構20に接続され(【0009】)、 A2k: 侵入検知機構20は、捜査用超音波信号の発信時間と返信用超音波信号の受信時間とに基づいて各超音波センサーS1 ~S4 から送受信器16までの各距離を演算する演算回路21、演算した距離が侵入阻止エリアA1 ~A4 に含まれるかどうかを判別する判別回路22を備えており、いずれかのエリアに侵入があることが検知されると警報機構25が作動するとともに、作業停止機構23が作動するように構成されており(【0009】)、 A2l: 作業停止機構23は、パイロット操作弁PV1 ないしパイロット操作弁PV4 にパイロット圧を供給する油路中に設けた電磁式のアンロード弁24をアンロード作動させることでパイロット操作弁PV1 およびパイロット操作弁PV2 へのパイロット圧を遮断して、旋回作動(又はスイング作動)およびフロント装置4の作動を不能にするように構成されている(【0009】)、 A2m: 全旋回型バックホウ(【0007】)。」 イ 甲A3 本件特許出願の分割に係る最初の原出願の出願前に公開された甲A3には、以下の記載がある。 「【0002】 油圧ショベルやホイールローダ等の作業機械においても、無駄な燃料消費及び騒音の発生を抑制するため、作業の中断時にエンジンを自動的に停止させるアイドルストップ機能が付与されている。作業機械のアイドルストップは、運転室の乗降口に備えられたゲートロックレバーに連動して操作されるゲートロックスイッチが、操作レバーによる油圧機器の駆動が不可能となるロック位置に切り換えられたとき、エンジンを停止させる構成をとることが一般的である。 ・・・・ 【0016】 図1に示すように、実施形態に係る作業機械の電源制御回路は、バッテリ1と、ラジオ等のアクセサリ2と、これらバッテリ1とアクセサリ2とをつなぐ電気回路に備えられたキーシリンダ3と、作業機械の運転室内に備えられた操作レバー4及びゲートロックスイッチ5と、システム全体を制御するメインコントローラ6と、メインコントローラ6からの指令を受けて図示しないエンジンの駆動・停止を制御するエンジンコントローラ7とを備えている。バッテリ1には、エンジンにより駆動されるオルタネータで発電された電力が蓄えられる。また、エンジンは、作業機械の駆動源である油圧ポンプを駆動する。作業機械は、油圧ポンプから吐出され、油圧機器に備えられた油圧アクチュエータに供給される圧油の流れ方向及び流量を操作レバー4の操作によって調整することにより、油圧機器を駆動し、掘削等の所要の作業を行う。操作レバー4からは、その操作方向及び操作量に応じた操作信号が出力され、この操作信号は、メインコントローラ6の操作信号入力部6-Cに取り込まれる。 【0017】 ゲートロックスイッチ5は、運転室への乗降時に、オペレータによって操作されるスイッチで、例えば運転室の乗降口に備えられたゲートロックレバーに連動して操作され、操作レバー4による油圧機器の操作が不可能になるロック位置と、操作レバー4による油圧機器の操作が可能になるロック解除位置とに切り換えられる。即ち、運転室への乗車時には、ゲートロックスイッチ5をロック解除位置に切り換えることによって、油圧機器の操作を可能とし、所望の作業を行う。また、運転室からの降車時には、ゲートロックスイッチ5をロック位置に切り換えることによって、油圧機器の操作を不可能とし、作業停止時の安全を確保する。ゲートロックスイッチ5からは、ロック位置及びロック解除位置に応じたスイッチ信号が出力され、このスイッチ信号は、メインコントローラ6のスイッチ信号入力部6-Dに取り込まれる。 【0018】 キーシリンダ3は、所謂イグニッションスイッチを構成するもので、図1に示すように、OFF(オフ)、H(ヒータ)、ACC(アクセサリ)、ON(オン)、START(スタート)の各切換位置を有しており、OFF位置では全ての接点間が非導通状態となり、H位置ではB(バッテリ)接点とG1(グロー1)接点間が選択的に導通状態となり、ACC位置ではB接点とACC接点間が選択的に導通状態となる。また、ON位置ではB接点とACC接点とM(キーオン)接点間が選択的に導通状態となり、START位置ではB接点とG2(グロー2)接点とM接点とST(スタータ)接点間が選択的に導通状態となる。各切換位置の変更は、オペレータがエンジンキーを操作することによって行われる。エンジンの始動時においては、エンジンキーをOFF位置から、ACC位置、ON位置、START位置へと順次切り替える。START位置では、B接点とST接点間が導通状態となり、エンジンに付設されたセルモータが駆動されて、エンジンが始動される。この状態から、エンジンキーから手を離すと、エンジンキーは内蔵された戻しばねにより自動的にON位置に復帰する。」 ウ 甲A5 本件特許出願の分割に係る最初の原出願の出願前に公開された甲A5には、以下の記載がある。 「【0002】 建設現場等で使用される作業機械の1つである、例えばバックホウなどの油圧ショベルは、クローラ式やタイヤ式の下部走行体上に、旋回軸受にて旋回可能に上部旋回体を軸支した構造をもつ。その上部旋回体に、運転席と、作業装置としてブーム、アーム、バケットとが配設され、運転者の操作に従って運転席が旋回し、ブーム、アーム、バケットが動作する。通常、上部旋回体にエンジンが搭載され、該エンジンにより油圧ポンプが駆動されて、下部走行体の走行用、上部旋回体の旋回用の各油圧モータ、及び作業装置駆動用の油圧シリンダへ、作動油による油圧が供給される。その油圧の供給が、運転席に設けられたレバーやペダルの形態の操作手段により制御される。 ・・・・ 【0009】 図1は、作業機械の一例としてバックホウを概略的に示す。 図示の例のバックホウは、クローラ式の下部走行体1に設けられた旋回軸受2を介して、旋回可能に上部旋回体3を軸支した構造をもつ。上部旋回体3には、運転席4及び作業装置5が配設されると共に、運転席4の後方に、油圧ポンプを駆動するエンジンが搭載される。バックホウの作業装置5は、ブーム5a、アーム5b、バケット5cを垂直方向へ回動可能に組み付けて構成され、これらが油圧シリンダ5d,5e,5fにより駆動される。上部旋回体3を旋回させる旋回用油圧モータ及び作業装置5を動作させる油圧シリンダ5d~5fは、運転席4に着座した運転者のレバー又はペダル操作に従って油圧ポンプから供給される油圧により駆動される。 ・・・・ 【0012】 運転席4には、運転者の乗り降りの際に誤ってレバー及びペダル類に触ってしまっても作業機械が動作することのないように、ロックレバー4cも設けられる。このロックレバー4cは、実線で示す斜めの解除位置と点線で示す直立のロック位置とに回動可能であり、解除位置にあるときには運転者の足元へ突出して乗降の邪魔となるようになっている。したがって、運転者は、乗降に際して必ずロックレバー4cをロック位置としなければならない。ロックレバー4cがロック位置にあると、各油圧モータ及び油圧シリンダへの油圧供給が抑止され、下部走行体1の走行、上部旋回体3の旋回、作業装置5及び排土板6の動作のいずれも抑制される。なお、図1では、走行レバー4a,4b及びロックレバー4c以外の、周知技術であるレバー、ペダルは図示を省略してある。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲A2発明とを対比する。 (ア)甲A2発明の構成A2a及び構成A2mにおける「全旋回型バックホウ」は、本件発明1の構成1A及び構成1Fにおける「ショベル」に相当する。 甲A2発明の構成A2bにおける「走行車体2」は、本件発明1の構成1Aにおける「下部走行体」に相当する。 甲A2発明の構成A2bにおいて「走行車体2の上部に全旋回可能に」「搭載」される「旋回台3」は、本件発明1の構成1Bにおいて「前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体」に相当する。 (イ)甲A2発明の構成A2fにおいて「旋回台3の前方中央部に備えられ」る「掘削用のフロント装置4」は、本件発明1の構成1Cにおいて「前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメント」に相当する。 (ウ)甲A2発明では、構成A2g~A2iにおいて、 「前記旋回台3の中心側の高所である日除け6の上部下面に4個の超音波センサーS1 ,S2 ,S3 ,S4 を設置して旋回台3の左右および後方に設定したエリアA1 ,A2 ,A3 およびフロント装置4を含む所定のエリアA4 に向けて異なった周波数f1 ,f2 ,f3 ,f4 の捜査用超音波信号をそれぞれ異なった所定の周期T1 ,T2 ,T3 ,T4 で発信しており、 エリアA1 ,A2 ,A3 およびエリアA4は、全旋回型バックホウの周囲にあるエリアであり、 バックホウの周囲で作業を行う外部作業者は、本機に装備された前記超音波センサーS1 ~S4 からの捜査用超音波信号を受信すると返信用超音波信号を送信する送受信器19を携帯しており」、 また、構成A2j~A2lにおいて、 「前記超音波センサーS1 ~S4 は侵入検知機構20に接続され、 侵入検知機構20は、捜査用超音波信号の発信時間と返信用超音波信号の受信時間とに基づいて各超音波センサーS1 ~S4 から送受信器16までの各距離を演算する演算回路21、演算した距離が侵入阻止エリアA1 ~A4 に含まれるかどうかを判別する判別回路22を備えており、いずれかのエリアに侵入があることが検知されると警報機構25が作動するとともに、作業停止機構23が作動するように構成されており、 作業停止機構23は、パイロット操作弁PV1 ないしパイロット操作弁PV4にパイロット圧を供給する油路中に設けた電磁式のアンロード弁24をアンロード作動させることでパイロット操作弁PV1 およびパイロット操作弁PV2 へのパイロット圧を遮断して、旋回作動(又はスイング作動)およびフロント装置4の作動を不能にするように構成されている」ことから、 甲A2発明の「侵入検知機構20」は、本件発明1の構成1Dにおける「前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部」に相当する。 さらに、甲A2発明において、 ・構成A2gの「旋回台3の左右および後方に設定したエリアA1 ,A2 ,A3 およびフロント装置4を含む所定のエリアA4」について、構成A2kで「いずれかのエリアに侵入があることが検知」される、構成A2iの「バックホウの周囲で作業を行う外部作業者」は、すなわち、バックホウの周囲において検知された人であること、 ・構成A2lで、「パイロット操作弁PV1 ないしパイロット操作弁PV4 にパイロット圧を供給する油路中に設けた電磁式のアンロード弁24をアンロード作動させることでパイロット操作弁PV1 およびパイロット操作弁PV2 へのパイロット圧を遮断して、旋回作動(又はスイング作動)およびフロント装置4の作動を不能にする」ということは、不能にする前は、「旋回作動(又はスイング作動)およびフロント装置4の作動」が不能でない状態、すなわち作動可能な状態であること、 ・構成A2eより、「バケット用油圧パイロット式制御弁V6 とブーム用油圧パイロット式制御弁V7 とが十字揺動操作可能な操作レバー17で操作されるパイロット操作弁PV1 ,PV2 に連係され、又、旋回用油圧パイロット式制御弁V3 (あるいはスイング用油圧パイロット式制御弁V5 )とアーム用油圧パイロット式制御弁V9とが十字揺動操作可能な操作レバー18で操作されるパイロット操作弁PV3 ,PV4 に連係」されているのであるから、構成A2lで「パイロット操作弁PV1 ないしパイロット操作弁PV4 にパイロット圧を供給する油路中に設けた電磁式のアンロード弁24をアンロード作動」させたならば、「操作レバー17」あるいは「操作レバー18」による操作は無効なものとなることは明らかなこと、 を踏まえると、 甲A2発明における「侵入検知機構20」及び「作業停止機構23」は、本件発明1の構成1Eの前半部における「前記ショベルが作業を開始する前の作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効」にする「制御部」と、「作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効」にする「制御部」である点で共通する。 (エ)上記(ア)ないし(ウ)より、本件発明1と甲A2発明とは、下記一致点1で一致し、相違点1及び2で相違する。 [一致点1] 「下部走行体と、 前記下部走行体に旋回自在に搭載される上部旋回体と、 前記上部旋回体の前方中央部に備えられる掘削アタッチメントと、を含んで構成されるショベルであって、 前記ショベルの周囲における人の存否を判定する制御部を有し、 前記制御部は、前記ショベルが作業可能状態のときに前記ショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にする、 ショベル。」 [相違点1] 本件発明1では、構成1Eの前半部において、ショベルが「作業を開始する前」の作業可能状態のときにショベルの周囲における人を検出すると操作レバーを無効にすると特定されているのに対し、 甲A2発明では、「作業を開始する前」という特定を有しない点。 [相違点2] 本件発明1では、構成1Eの後半部において、「前記操作レバーが無効な状態のときに前記ショベルの周囲における人を検知すると、前記操作レバーが無効な状態を継続する」と特定されているのに対し、 甲A2発明では、そのような特定を有しない点。 イ 判断 (ア)相違点1について、 甲A2発明における侵入検知及び作業停止の実行は、「旋回作動(又はスイング作動)およびフロント装置4の作動」中か否かに関わるものではなく、それら作動がされていない時、すなわち実際の作業を開始する前でも、侵入検知及び作業停止の実行がされていることが明らかであることを踏まえると、上記相違点1は実質的な相違点ではない。 (イ)相違点2について、 a 上記(1)イに摘記した甲A3の記載、及び、上記(1)ウに摘記した甲A5の記載に示されるように、バックホウ等の油圧ショベルの油圧ポンプをエンジンが駆動すること、エンジンを停止するイグニッションスイッチを設けること、ロック位置では操作レバーによる油圧機器の操作を不可能とするゲートロックレバーを設けることは、周知技術である。 b 甲A2発明は、構成A2eより、「エンジンEによって駆動される油圧ポンプP1 ,P2 、およびP3を備える油圧回路を有し」ているところ、油圧回路の不要な動作を防ぐという一般的な観点から、上記甲A3及び甲A5に示される周知技術を採用し、イグニッションスイッチによりエンジンEが停止しているときには油圧回路が駆動されず、またゲートロックレバーがロック位置では油圧機器の操作が不可能となるようにし、イグニッションスイッチがオン及びゲートロックレバーがロック解除位置となるのでなければ、周辺における人の検知の有無によらず、操作レバーによる操作がされない状態のままとすることは、当業者であれば想到容易である。 c 本件発明1Eの後半部は、上記1(2)ア(エ)に指摘したとおり不明確であるところ、同1(2)ア(エ)aに示した、「イグニッションスイッチ」が「オフ状態」、または「ゲートロックレバー」が「ロック状態」であることにより、操作レバーが無効となっている状態について、「イグニッションスイッチ」を「オン状態」、「ゲートロックレバー」を「ロック解除状態」に切り替えない限り、人の検知の有無によらず当該状態が変わらないことを含む。 d 甲A2発明において、本件発明1Eの後半部の構成が含む、上記cに相当する構成とすることは、上記a及びbに示すとおり、当業者であれば想到容易である。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、甲A2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 (3)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の構成を有し、さらに構成を付加したものである。 本件発明2が有する本件発明1の構成については、上記(2)で対比・判断したとおりである。 本件発明2において付加された構成は、上記1(2)イ(イ)に指摘したとおり不明確であるところ、操作レバーが有効な状態または無効な状態となる油圧回路について、甲A2発明がA2e及び構成A2lより当然に有する構成、及び、上記(2)イ(イ)で検討した周知技術から当然に備えることとなる構成と、実質的に相違するとはいえない。 したがって、本件発明2は、甲A2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 (4)本件発明3について 本件発明3は、本件発明2の構成を有し、さらに構成を付加したものである。 本件発明3が有する本件発明1及び本件発明2の構成については、上記(2)及び(3)で対比・判断したとおりである。 本件発明3において付加された構成は、上記1(2)ウ(イ)に指摘したとおり不明確であるところ、本件発明1が有する構成1Eの後半部と同じ処理を、表現を変えて重複して特定する場合を含むから、上記構成1Eの後半部について上記(2)イ(イ)で判断したのと同じ理由で、周知技術に基づいて当業者であれば想到容易である。 したがって、本件発明3は、甲A2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 (5)本件発明4について 上記(2)アにおける対比を踏まえれば、本件特許発明4と甲A2発明とは、上記相違点1及び2と同じ相違点で一応相違し、その余の点において一致する。 そして相違点1及び2については、上記(2)イにおける判断のとおりである。 したがって、本件発明4は、甲A2発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。 (6)特許権者の意見書における主張について 特許権者は、令和6年12月23日提出の意見書において、本件訂正によって、甲A2を主たる証拠とした新規性欠如及び進歩性欠如の取消理由は解消した旨を主張している(同意見書第10頁第6行~第12頁第12行)。 しかしながら、上記第3に示したとおり、本件訂正は認めることができないから、上記特許権者の主張は採用できない。 (7)まとめ よって、本件発明1ないし4に係る特許は、甲A2を主たる証拠として、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 5 申立人A及び申立人Bによる特許異議申立理由について 上記1~4に示したとおり、本件発明1~4は、先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由によって取り消されるべきものであるところ、先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の要旨は、申立人Aによる特許異議申立理由の要旨と同様である(上記第5の2及び4)。 したがって、本件発明1~4に係る特許は、申立人Bによる特許異議申立理由(上記第5の3)について判断するまでもなく、申立人Aによる特許異議申立理由(上記第5の2)、及び、先の取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由(上記第5の4)によって、取り消されるべきものである。 第6 結び 以上のとおり、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件発明1ないし4に係る特許は、特許法29条1項及び2項の規定に違反してされたものであるから、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-701124

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