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特許異議申立

2022-701299

希土類磁石、希土類スパッタリング磁石、希土類拡散磁石及びその製造方法

審判番号
2022-701299
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-534243
登録番号
7091562
請求日
2022年12月26日
審決日
2023年09月11日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三環瓦克華(北京)磁性器件有限公司
  • 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
  • 【権利者】北京中科三環高技術股▲ふん▼有限公司
  • 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 山田 正文
  • 審判官 渡辺 努
  • 審判官 山本 章裕
分類
P1652.113-YAA(H01F) / P1652.121-YAA(H01F) / P1652.537-YAA(H01F) / P1652.851-YAA(H01F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7091562号発明「希土類磁石、希土類スパッタリング磁石、希土類拡散磁石及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7091562号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5について訂正することを認める。 特許第7091562号の請求項5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7091562号の請求項1~9に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月29日を国際出願日として出願され、令和4年6月17日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日 令和4年6月27日)がされた。 その後、令和4年12月26日に特許異議申立人齊藤恵美子(以下、「特許異議申立人」という。)により本件の請求項5に係る特許に対する特許異議の申立てがなされ、甲第1号証ないし甲第13号証が提出された。 当審は、令和5年4月20日付けで取消理由を通知した。 特許権者は、その指定期間内である令和5年5月22日に訂正請求書及び意見書の提出を行った。 当審は、令和5年6月12日付けで特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知をし、意見書を提出する機会を与えたが提出されなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年5月22日の訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、特許第7091562号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである(なお、下線は訂正部分を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項5において、 「希土類拡散磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、前記希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH) maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えて、最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、前記固有保磁力Hcjの単位がkOeであり、前記灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であり、前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、R1は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする、希土類拡散磁石。」と記載されているのを、 「希土類拡散磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、前記希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH) maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えて、最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、前記固有保磁力Hcjの単位がkOeであり、前記灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であり、前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、R1は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 前記希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素である、ことを特徴とする、希土類拡散磁石。」に訂正する。 2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の目的 訂正事項1は、請求項5に係る発明における希土類拡散磁石の成分について、 「前記希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素である、」 という限定を付加する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)新規事項の有無 上記(1)の限定に関して、本件特許明細書の【0024】に「本発明はまた、上記の希土類磁石の作製方法によって作製された希土類磁石を提供し、その成分は、質量パーセントで、Rの含有量は28~32重量%であり、Rは、DyおよびTbを含まない希土類元素であり、R中には、Prおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snの少なくとも1つであり、Ga含有量は0.3~0.8wt%、B含有量は0.96~1.0wt%、残りはTであり、TはFeおよび/またはCoおよび不可避の不純物元素である。」と、【0042】に「本発明の実施形態は、希土類磁石を提供し、希土類磁石の組成は、R、M、T、Ga、およびBを含む。各成分の質量百分率は次のとおりです。Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyおよびTbを含まない希土類元素であり、Prおよび/またはNdはRの98~100wt%を占め、Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり; Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snの少なくとも1つであり; Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、好ましくはGaの含有量は0.5~0.8 wt%であり; Bの含有量は0.96~1.0wt%であり;残りはTであり、TはFeおよび/またはCoおよび不可避の不純物元素である。上記の希土類磁石において、MはAlおよびCuであり、希土類磁石中のAlの含有量は0.05~1wt%であり、Cuの含有量は0.05~0.3wt%である。」と記載されている。 したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (3)特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項1は上述のとおり、請求項5に係る発明において、 「前記希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素である、」という限定を付加することによって特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものでもなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 (4)独立特許要件 訂正事項1については「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであるが、本件においては、訂正前の請求項5について特許異議の申立てがなされているので、訂正前の請求項5に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 3 訂正の適否についてのむすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項5について訂正することを認める。 第3 訂正後の請求項5に係る発明 本件訂正請求により訂正された請求項5に係る発明(以下、「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(なお、説明のために、各構成に5A~5Lの符号を当審で付した。以下、「構成5A」~「構成5L」という。)。 「【請求項5】 5A 希土類拡散磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、 5B 灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、 5C 前記希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えて、 5D 最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、 5E 前記固有保磁力Hcjの単位がkOeであり、 5F 前記灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であり、 5G 前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、 5H R1は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、 5I TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、 5J MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 5K 前記希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素である、ことを特徴とする、 5L 希土類拡散磁石。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 令和5年4月20日付け取消理由通知に記載した取消理由(理由1)の概要は、次のとおりである。 1.(サポート要件)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 ●理由1(サポート要件)について 請求項5に係る発明は、希土類拡散磁石に関する発明であって、最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超え、かつ、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占めていることを特徴とするものである。 ここで、【発明を実施するための形態】における各実施例のうち、希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超え、かつ、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占めている実施例は、実施例7のみである。 (中略) そうすると、最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超え、かつ、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占めている希土類拡散磁石は、実施例7のような各元素の質量比である主合金原料と補助合金原料から得られた希土類磁石から得られることが発明の詳細な説明に記載されているものである。 更に、希土類磁石の各成分の質量百分率に関して、【0024】及び【0042】には以下のように記載されている。 (中略) しかし、請求項5に係る発明の希土類拡散磁石は、 白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占めていること、 灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であること、 白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、R1は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであること は限定されているものの、希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の組成が限定されているものではない。 したがって、出願時の技術常識に照らしても、希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の組成の限定がない請求項5に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 よって、請求項5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 2 取消理由についての当審の判断 上記1に記載したとおりの記載不備の指摘に対して、本件訂正請求により、請求項5において、 「前記希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素である、」 という限定が付加された。その結果、請求項5に係る発明は、希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の組成が限定されているものに特定されたといえ、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。 したがって、取消理由で指摘した不備な点は解消され、請求項5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものではない。 3 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、特許異議申立書において、サポート要件違反に関して以下のような主張をしている。 「カ サポート要件違反について 本件特許請求項5においては、「希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超え」ること、「希土類磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め」ること、「灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め」ること、「前記灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であ」ることが規定されている一方で、希土類拡散磁石がB及びGaを含むことやその含有量が規定されていない。 (中略) そうすると、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、Ga及びBの含有量が規定されていない本件特許請求項5の範囲まで、本件特許明細書に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、本件特許発明5は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。」(44頁22行~46頁26行) 上記主張について検討するに、訂正により、請求項5に係る発明は、希土類拡散磁石を得るための希土類磁石のGa及びBの含有量が限定されているものに特定された。 したがって、特許異議申立人の上記主張を採用することはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 (1)進歩性 請求項5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証、周知技術(甲第2号証~甲第9号証)、甲第10号証に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)新規性 ア 請求項5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第10号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 イ 請求項5に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第11号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項5に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2015-119132号公報 甲第2号証:特開2005-175138号公報 甲第3号証:特開2005-210876号公報 甲第4号証:特開2005-11973号公報 甲第5号証:特開2013-236071号公報 甲第6号証:国際公開第2008/123251号 甲第7号証:特開2016-122862号公報 甲第8号証:国際公開第2008/075710号 甲第9号証:特開2012-188761号公報 甲第10号証:特開2018-82145号公報 甲第11号証:特開2018-93202号公報 甲第12号証:「解説 最近の高性能永久磁石とその応用」山元洋、電気学会誌、1997年、117巻3号159~162頁 甲第13号証:Springer Materials,「Nd6Fe13Ga(Nd6Fe12Ga2) Crystal Structure」、[online]、<URL:https://materials.springer.com/isp/crystallographic/docs/sd_1810034> 2 各甲号証について (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載事項 上記甲第1号証には、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。) 「【0022】 図1は、本発明に係る実施形態の希土類磁石の断面構造を示す電子顕微鏡写真である。本実施形態に係る希土類磁石は、R2T14Bを主として含む主相結晶粒子1と、隣接する二つの主相結晶粒子1間に形成される二粒子粒界相2と、三個以上の主相結晶粒子に取り囲まれて構成されている粒界相3を含み、 R:20~40原子%、 T:60~75原子%、 M:1~10原子%、 の範囲でR-T-M元素を少なくとも含有する粒界相を第一粒界相とし、 R:50~70原子%、 T:10~30原子%、 M:1~20原子%、 の範囲でR-T-M元素を少なくとも含有する粒界相を第二粒界相とした場合、少なくともこれら2種の粒界相を含むことを特徴とする。」 「【0026】 本実施形態に係る希土類磁石においては、全質量に対する上記各元素の含有量は、それぞれ以下の通りである。 R:29.5~33質量% B:0.7~0.95質量% M:0.03~1.5質量% Cu:0.01~1.5質量%、及び、 Fe:実質的に残部、及び、 残部を占める元素のうちのFe以外の元素の合計含有量:5質量%以下。 【0027】 本実施形態に係る希土類磁石に含まれるRについて、さらに詳細に説明する。Rとしては、Nd及びPrのいずれか一方を必ず含むが、R中のNd及びPrの割合は、Nd及びPrの合計で80~100原子%であってもよく、95~100原子%であってもよい。このような範囲であると、さらに良好な残留磁束密度及び保磁力が得られる。また、本実施形態に係る希土類磁石においては、RとしてDy、Tb等の重希土類元素を含んでいてもよいが、その場合、希土類磁石の全質量中の重希土類元素の含有量は、重希土類元素の合計で1.0質量%以下であり、0.5質量%以下であると好ましく、0.1質量%以下であるとさらに好ましい。本実施形態に係る希土類磁石では、このように重希土類元素の含有量を少なくしても、他の元素の含有量及び原子比が特定の条件を満たすことによって、良好な高い保磁力を得ることができ、高温減磁率を抑制することができる。」 「【0029】 本実施形態に係る希土類磁石は、さらに微量の添加元素を含む。添加元素としては周知のものを用いることができる。添加元素は、R2T14B主相結晶粒子の構成要素であるR元素と状態図上に共晶点を有するものが好ましい。この点から、添加元素としてはCu等が好ましいが、他の元素であってもよい。Cu元素の添加量としては、全体の0.01~1.5質量%である。添加量をこの範囲とすることで、Cuをほぼ二粒子粒界相および粒界相即ち粒界三重点にのみ偏在させることができる。一方、主相結晶粒子の構成要素であるT元素とCuについては、例えばFeとCuとは状態図が偏晶型のようになると考えられ、この組み合わせは共晶点を形成し難いものと思われる。そこで、R-T-M三元系が共晶点を形成するようなM元素を添加することが好ましい。このようなM元素としては、例えばAl、Ga、Si、Ge、Sn等が挙げられる。M元素の含有量としては、0.03~1.5質量%である。M元素の添加量をこの範囲とすることで、粉末冶金工程中において主相結晶粒子表面の反応を促進し、二粒子粒界相中のT元素との反応により、R-T-M元素を含む粒界相の生成が促進され、二粒子粒界相中のT元素濃度を低下させることができる。 【0030】 本実施形態に係る希土類磁石には、R2T14Bの基本組成におけるTで表される元素として、Feを必須としてFeに加えてさらに他の鉄族元素を含むことができる。この鉄族元素としてはCoであることが好ましい。この場合、Coの含有量は0質量%を超え3.0質量%以下であることが好ましい。希土類磁石にCoを含有させることにより、キュリー温度が向上する(高くなる)ほか、耐食性も向上する。Coの含有量は0.3~2.5質量%であってもよい。」 「【0046】 次に、本発明を具体的な実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。 【実施例】 【0047】 先ず、焼結磁石の原料金属を準備し、これらを用いてストリップキャスティング法により、下記表1及び表2で表される実施例1~31、及び比較例1~3の焼結磁石の組成が得られるように、それぞれ原料合金を作製した。なお、表1に示した各元素の含有量は、T、R、Cu及びMについては蛍光X線分析により、BについてはICP発光分析により測定した。また、Oについては不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法により、Cについては酸素気流中燃焼-赤外吸収法により、Nについては不活性ガス融解-熱伝導度法により測定することができる。また、[O]/([C]+[N])、[B]/([Nd]+[Pr])及び([M]+[C])/[B]については、これらの方法により得た含有量から各元素の原子数を求めることにより算出した。 【0048】 次に、得られた原料合金に水素を吸蔵させた後、Ar雰囲気で600℃、1時間の脱水素を行う水素粉砕処理を行った。その後、得られた粉砕物をAr雰囲気下で室温まで冷却した。 【0049】 得られた粉砕物に粉砕助剤としてオレイン酸アミドを添加、混合した後、ジェットミルを用いて微粉砕を行い、平均粒径が3~4μmである原料粉末を得た。 【0050】 得られた原料粉末を、低酸素雰囲気下において、配向磁場1200kA/m、成形圧力120MPaの条件で成形を行って、成形体を得た。 【0051】 その後、成形体を、真空中で1030~1050℃、2~4時間焼成した後、急冷して焼結体を得た。得られた焼結体に対し、2段階の熱処理を行った。一段目の900℃での熱処理(時効1)については一時間と一定としたが、二段目の熱処理(時効2)については熱処理の温度、時間及び冷却速度を変え、粒界相の生成状況の異なる複数の試料を準備した。尚、上記したように粒界相の生成状況は、原料合金組成、焼結条件によっても変化させることができる。 【0052】 以上のようにして得られた試料につき、B-Hトレーサーを用いて、残留磁束密度及び保磁力をそれぞれ測定した。その後に高温減磁率を測定し、次に磁気特性を測定したそれぞれの実施例および比較例の試料につき、研磨断面をEPMAにより観察し、粒界相の同定を行うとともに、研磨断面における各粒界相の組成とその面積比率を評価した。先ず、各種試料の磁気特性と第一及び第二粒界相の生成の有無と組成の代表値をまとめて表1に示す。組成と面積比率(表2に示す)から判断し、第一粒界相および第二粒界相が観察されたものは○で、観察されなかったものは×で表1に示した。この際、面積比率が0.1%を下回るものは実質上観察されないとし、×に分類した。次に、表2には、磁気特性に併せ、第一粒界相の面積比率の代表値と、第二粒界相の面積率の代表値を示した。」 「【0054】 【表1】 [図:0001404790000001.jpg] 」 「【0055】 表1より、実施例1~18の試料では、高温減磁率の絶対値が4%を下回っており、低く抑えられ、高温環境下での使用にも適した希土類磁石となっていることがわかる。比較例1~3では、高温減磁率の絶対値が4%以上となっており、高温減磁率の抑制効果が出ていない。実施例1~実施例31の任意の断面において観測されたR-T-M系化合物に対し、電子線ホログラフィーによる磁束分布の解析を行ったところ、このR-T-M系化合物の飽和磁化の値はNd2Fe14B化合物の5%以下であり、強磁性を示さない相であることを確認した。これより、実施例1~実施例31での高温減磁率の抑制効果は、第一粒界相と第二粒界相が同時に含まれることによって達成されていることがわかった。」 「【0057】 【表2】 [図:0001404790000002.jpg] 」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アより、以下のことがいえる。 (ア)【0022】より、甲第1号証の「希土類磁石」は、R2T14Bを主として含む主相結晶粒子1と、隣接する二つの主相結晶粒子1間に形成される二粒子粒界相2と、三個以上の主相結晶粒子に取り囲まれて構成されている粒界相3を含み、 R:20~40原子%、 T:60~75原子%、 M:1~10原子%、 の範囲でR-T-M元素を少なくとも含有する粒界相を第一粒界相とし、 R:50~70原子%、 T:10~30原子%、 M:1~20原子%、 の範囲でR-T-M元素を少なくとも含有する粒界相を第二粒界相とした場合、少なくともこれら2種の粒界相を含むものである。 (イ)【0027】、【0029】、【0030】より、甲第1号証の希土類磁石は、Rとしては、Nd及びPrのいずれか一方を必ず含み、M元素としては、Al、Ga、Si、Ge、Sn等が挙げられ、Tで表される元素として、Feを必須としてFeに加えてさらに他の鉄族元素を含むことができるものである。 (ウ)【0052】、【表2】より、甲第1号証の実施例24の試料は、 Nd、Pr、B、Cu、Al、Ga、N、C、Oの組成が、25.0、7.0、0.87、0.1、0.2、0.6、0.04、0.12、0.08質量%であり、Feはbal.すなわち残部であり、 研磨断面における第一粒界相の面積比率が3.4%、第二粒界相の面積比率が2.8%であり、 磁気特性として、Brが13.4kG、Hcjが19.3kOeである。 (エ)【0047】~【0051】、【表2】より、甲第1号証の試料は、 焼結磁石の原料金属を準備し、原料合金を作製し、 得られた原料合金から原料粉末を得て、 得られた原料粉末から成形体を得て、 成形体を、焼成した後、急冷して焼結体を得て、 得られた焼結体に対し、一段目の900℃での熱処理(時効1)については一時間とし、二段目の熱処理(時効2)については650℃、0.5時間として得られるものである。 (オ)上記(ア)~(エ)より、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 (甲1発明) 「R2T14Bを主として含む主相結晶粒子1と、隣接する二つの主相結晶粒子1間に形成される二粒子粒界相2と、三個以上の主相結晶粒子に取り囲まれて構成されている粒界相3を含み、 R:20~40原子%、 T:60~75原子%、 M:1~10原子%、 の範囲でR-T-M元素を少なくとも含有する粒界相を第一粒界相とし、 R:50~70原子%、 T:10~30原子%、 M:1~20原子%、 の範囲でR-T-M元素を少なくとも含有する粒界相を第二粒界相とした場合、少なくともこれら2種の粒界相を含み、 Rとしては、Nd及びPrのいずれか一方を必ず含み、M元素としては、Al、Ga、Si、Ge、Sn等が挙げられ、Tで表される元素として、Feを必須としてFeに加えてさらに他の鉄族元素を含むことができるものであり、 Nd、Pr、B、Cu、Al、Ga、N、C、Oの組成が、25.0、7.0、0.87、0.1、0.2、0.6、0.04、0.12、0.08質量%であり、Feはbal.すなわち残部であり、 研磨断面における第一粒界相の面積比率が3.4%、第二粒界相の面積比率が2.8%であり、 磁気特性として、Brが13.4kG、Hcjが19.3kOeであり、 焼結磁石の原料金属を準備し、原料合金を作製し、 得られた原料合金から原料粉末を得て、 得られた原料粉末から成形体を得て、 成形体を、焼成した後、急冷して焼結体を得て、 得られた焼結体に対し、一段目の900℃での熱処理(時効1)については一時間とし、二段目の熱処理(時効2)については650℃、0.5時間として得られる 希土類磁石。」 (2)甲第2号証 上記甲第2号証には、以下の記載がある。 「【0012】 本発明者らは、Nd-Fe-B系希土類磁石の比抵抗を高めるため上記発明の方法を元に、詳細に調査実験を重ねた結果、磁石内に酸素を導入して比抵抗の高い結晶組織をつくり出すことによって、高い磁気特性を維持した耐熱性希土類磁石の開発に成功した。」 「【0019】 本発明では、M(但し、MはTb及び/又はDy)元素を磁石表面に成膜して拡散することによって、磁石全体においてはM元素を内部に薄く表面部に濃く分布させ、磁石内部組織においては主結晶内よりも結晶粒界部にM元素を富化させることができる。」 「【0041】 各種形状寸法を有する磁石表面の全部又は一部に上記のM元素の均一な膜を形成するには、減圧槽内において複数のターゲットを用いて原子化、分子化させて磁石表面に3次元的にM元素源を成膜させるスパッタリング法、又はM元素をイオン化させて、静電気的な吸引による強被着特性を利用して成膜させるイオンプレーティング法が特に有効である。」 (3)甲第3号証 上記甲第3号証には、以下の記載がある。 「【0014】 本発明は、変質損傷した表面を有する穴のあいた内表面を有する円筒形状のNd-Fe-B系又はPr-Fe-B系の磁石であって、該磁石は、比表面積(表面積/体積)の値が4mm-1以上で、かつ体積が10mm3以下であり、該磁石の最表面に露出している結晶粒子の半径に相当する深さ以上に該磁石内部にR金属(但し、Rは、Y及びNd、Dy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)を、磁石表面から拡散浸透させることによって前記変質損傷部を改質して(BH)maxが280kJ/m3の以上の磁気特性を有することを特徴とする。 本発明は、小型モータ用磁石の製造方法において、変質損傷した表面を有する穴のあいた内表面を有する円筒形状のNd-Fe-B系又はPr-Fe-B系の磁石を、減圧槽内に支持し、該減圧槽内で物理的手法によって蒸気又は微粒子化したR金属又はR金属を含む合金(但し、Rは、Y及びNd、Dy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)を、該磁石の表面の全部又は一部に3次元的に飛来させて成膜しかつ該磁石の最表面に露出している結晶粒子の半径に相当する深さ以上に該磁石内部にR金属を磁石表面から拡散浸透させることによって前記加工による変質損傷部を改質することを特徴とする。 本発明は,小型モータ用磁石の製造方法において、変質損傷した表面を有する穴のあいた内表面を有する円筒形状のNd-Fe-B系又はPr-Fe-B系の磁石を、減圧槽内に支持し、該減圧槽内で物理的手法によって蒸気又は微粒子化したR金属又はR金属を含む合金(但し、Rは、Y及びNd、Dy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)を、該磁石の表面の全部又は一部に3次元的に飛来させて成膜し、かつ該磁石の最表面に露出している結晶粒子の半径に相当する深さ以上に該磁石内部にR金属を磁石表面から、900乃至1000℃で、拡散浸透させることによって前記加工による変質損傷部を改質することを特徴とする。 本発明は、小型モータ用磁石の製造方法において、該磁石内部にR金属を磁石表面から、900℃で、拡散浸透させることによって前記加工による変質損傷部を改質することを特徴とする。 本発明は、小型モータ用磁石の製造方法において、前記物理的手法が、該磁石周辺に配置したR金属又はR金属を含む合金(但し、Rは、Y及びNd、Dy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)から成る複数のターゲットを、イオン衝撃によって微粒子化させて、該磁石表面に膜を形成するスパックリング法であることを特徴とする。 本発明は、小型モータの製造方法において、前記物理的手法が、該希土類磁石周辺に配置したR金属又はR金属を含む合金(但し、Rは、Y及びNd、Dy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類元素の1種又は2種以上)から成る複数のターゲットを、溶融蒸発させて発生した粒子をイオン化させて、該磁石表面に膜を形成するイオンプレーティング法であることを特徴とする。」 「【0024】 変質損傷した表面を有する磁石表面に成膜する金属は、磁石を構成するNd等の希土類金属リッチ相の修復強化を目的とするために、Y及びNdを始めとしてDy、Pr、Ho、Tbから選ばれる希土類金属の一種以上の単独又はY、Nd、Dy、Pr、Ho、Tbなどの希土類金属を相当量含有する合金、例えば、Nd-Fe合金やDy-Co合金等を用いる。 【0025】 磁石表面への成膜法については特に限定されるものではなく、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、レーザーデポジション等の物理的成膜法や、CVDやMO-CVD等の化学的気相蒸着法、及びメッキ法などの適用が可能である。但し、成膜ならびに加熱拡散の各処理においては、10-7Torr以外ならびに酸素、水蒸気等の大気由来ガスが数十ppm以下の清浄雰囲気内で行うことが好適である。」 (4)甲第4号証 上記甲第4号証には、以下の記載がある。 「【0035】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の希土類-鉄-ホウ素系磁石及びその製造方法を更に詳しく説明する。本発明磁石における磁気特性の値は、磁石の成分組成や製法、磁石の体積、M元素の種類等によって影響を受けるが、適正な条件で製作することにより高い保磁力と高い残留磁束密度とが両立したバランスの良い磁石が得られる。」 「【0038】 磁石表面に供給して堆積又は成膜する金属は、Ndよりも磁気異方性が大きく、且つ磁石を構成するNdリッチ粒界相等に容易に拡散浸透することを目的とするため、希土類金属のPr、Dy、Tb、Hoから選ばれるM元素の一種以上の単独又は上記のM元素を相当量含有する合金や化合物、例えば、Tb-Fe合金やDy-Co合金、又はTbH2等を用いることができる。」 「【0048】 各種形状寸法を有する磁石表面の全部又は一部に上記のM元素の均一な膜を形成するには、複数のターゲットを用いて磁石表面に3次元的に金属成分Mを成膜させるスパッタリング法、又はM元素をイオン化させて、静電気的な吸引による強被着特性を利用して成膜させるイオンプレーティング法が特に有効である。」 (5)甲第5号証 上記甲第5号証には、以下の記載がある。 「【0018】 本発明の希土類焼結磁石の製造方法は、Nd2Fe14B型結晶相を主相とし、R1aTbMcSidBe組成(R1はSc及びYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上で、TはFe及びCoから選ばれる1種又は2種、MはAl,Cu,Zn,In,P,S,Ti,V,Cr,Mn,Ni,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Pd,Ag,Cd,Sn,Sb,Hf,Ta,Wの中から選ばれる1種又は2種以上、Siはケイ素、Bはホウ素、a~eは合金の原子%で、12≦a≦17、0≦c≦10、0.3≦d≦7、5≦e≦10、残部がb)からなる異方性焼結体の表面にR2(R2はDy及びTbから選ばれる1種又は2種)又はR2を含む物質を拡散させるようにしたものである。」 「【0025】 得られた焼結ブロックは必要に応じて所定形状に研削された後、粒界拡散工程に供される。その大きさに特に限定はないが、粒界拡散工程において、磁石体に吸収されるDy/Tbは磁石体の比表面積が大きい、即ち寸法が小さいほど多くなるので、上記形状の最大部の寸法は100mm以下、好ましくは50mm以下でかつ磁気異方性化した方向の寸法が30mm以下、好ましくは15mm以下であることが好ましい。なお、上記最大部の寸法及び磁気異方性化した方向の寸法の下限は特に制限されず、適宜選定されるが、上記形状の最大部の寸法は1mm以上、磁気異方性化した方向の寸法は0.5mm以上である。 【0026】 粒界拡散の工程としては、磁石表面にDy及び/又はTb、あるいはこれらを含む物質を存在させ、拡散のための熱処理を施すもので、かかる方法としては公知の方法を採用し得る。 この場合、磁石体表面にDy及び/又はTb、あるいはこれらを含む物質(拡散材料)を存在させる方法としては、拡散材料を磁石体表面にコーティングしたり、拡散材料を蒸気化してこれを磁石体表面に接触させる等の方法が採用される。より具体的には、Dy及び/又はTbの酸化物、フッ化物、酸フッ化物、水素化物等の化合物の粉末、Dy及び/又はTbの粉末、Dy及び/又はTbを含む合金粉末、あるいはDy及び/又はTbのスパッタ膜や蒸着膜、Dy及び/又はTbを含む合金のスパッタ膜や蒸着膜を磁石体表面にコーティングしたり、Dy及び/又はDyのフッ化物と水素化カルシウム等の還元剤を混合して付着させる方法が挙げられ、いずれの手法でも適用可能である。また、DyやDy合金を減圧下で熱処理することでDyを蒸気として磁石体に付着させるなどの方法も好適に採用できる。 この場合、上記表層部に濃化して結晶磁気異方性を高める効果はDy,Tbが大きく寄与することから、上記拡散材料中のDy及び/又はTbの含有量は、30原子%以上が好ましく、より好ましくは50原子%以上、更に好ましくは80原子%以上である。」 (6)甲第6号証 上記甲第6号証には、以下の記載がある。 「[0023] 本実施形態の永久磁石12は、軽希土類元素RL(NdおよびPrの少なくとも1種)を主たる希土類元素Rとして含有するR-Fe-B系希土類焼結磁石である。特徴的な点は、図2(a)および図2(b)に示すように、重希土類元素RH(Dy、Ho、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種)が他の部分よりも相対的に高い濃度で拡散された高保磁力部12aを備えていることにある。本明細書では、永久磁石12のうち、高保磁力部12a以外の部分を低保磁力部12bと称する場合がある。」 「[0076] DyおよびTbの拡散は、前述した方法によって行ってもよいが、Tbについては、スパッタ法やスプレイ法などの薄膜堆積技術を用いて永久磁石の表面にTb膜を堆積した後、Tb膜から永久磁石の内部に拡散することが好ましい。」 (7)甲第7号証 上記甲第7号証には、以下の記載がある。 「【0031】 <希土類永久磁石材料の製造方法> 本発明に記載の永久磁石材料の製造方法はマルチアークイオンプレーティング工程S2)と浸透工程S3)を含む。好ましくは、本発明に係る製造方法は磁石製造工程S1)と時効処理工程S4)をさらに含む。」 「【0045】 <マルチアークイオンプレーティング工程S2> 本発明に記載の製造方法は、マルチアークイオンプレーティングプロセスにより、重希土類元素を含有する金属を、少なくとも1つの方向における厚さが10mm以下である焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の表面に堆積させるマルチアークイオンプレーティング工程S2)を含む。好ましくは、前記厚さが10mm以下となる方向は焼結ネオジム-鉄-ボロン磁石の配向方向ではない。 【0046】 本発明の重希土類元素を含有する金属は、重希土類元素の金属単体又は重希土類元素を含有する合金から選択される。本発明の重希土類元素を含有する合金は、重希土類元素以外にもその他の金属元素をさらに含有する。前記その他の金属元素は好ましくは、アルミニウム、ガリウム、マグネシウム、スズ、銀、銅及び亜鉛のうちから選択される少なくとも1種である。本発明の重希土類元素を含有する金属において、前記重希土類元素はイットリウム族元素から選択され、例えばイットリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムから選択される少なくとも1種が挙げられる。本発明の好ましい実施形態によれば、前記重希土類元素はガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム及びホルミウムのうちの少なくとも1種である。」 (8)甲第8号証 上記甲第8号証には、以下の記載がある。 「[0024] 図1及び図2を参照して説明すれば、本発明の永久磁石Mは、所定形状に加工されたNd-Fe-B系の焼結磁石Sの表面に、Dy、Tbの少なくとも一方を含有する蒸発材料Vを蒸発させて付着させ、この付着した蒸発材料のDyやTbの金属原子を、焼結磁石Sの結晶粒界相に拡散させて均一に行き渡らせる一連の処理 (真空蒸気処理)を同時に行って作製される。」 (9)甲第9号証 上記甲第9号証には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明は、成膜装置に関し、特に、鉄-ホウ素-希土類系の焼結磁石の表面に、Dy、Tbの少なくとも一方を成膜し、所定温度下で熱処理を施してDy、Tbの少なくとも一方を焼結磁石の結晶粒界相に拡散させてなる永久磁石表面にDy、Tbの少なくとも一方を高速で成膜するのに適した成膜装置に関する。」 「【0013】 図1及び図2を参照して説明すれば、1は、例えば鉄-ホウ素-希土類系の焼結磁石である被処理物Sの表面に選択的にDyやTbなどの金属蒸発材料を高速で成膜させるのに適した成膜装置である。成膜装置1は、処理室2と準備室3とを上下方向で連結して構成される。上側に位置する処理室2は、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、拡散ポンプなどの真空排気手段11aを介して所定の真空度に保持できる円筒形状の真空チャンバ11内に配置されている。」 (10)甲第10号証 ア 甲第10号証の記載事項 上記甲第10号証には、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。) 「【0001】 本発明は、R-Fe-B系焼結磁石の製造方法に関し、希土類永久磁石材料の分野に属するものである。」 「【0041】 実施例1~7 ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム、電解鉄、コバルト、銅、ガリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ホウ素を重量比でNd-23.8%、Pr-5%、Dy-0.6%、Tb-0.4%、Fe-68.29%、Co-0.5%、Cu-0.13%、Ga-0.1%、Al-0.1%、Zr-0.12%、B-1%の割合にして、不活性ガス環境下の真空溶解炉に鋳込みを完了して、鋳込温度を1450℃とし、急冷ローラの回転速度を60r/minとすると、得られる鱗片の厚さは約0.3mmとなる。鱗片をHD製粉、ジェットミルにより平均粒度が3.5μmの粉末にする。15KOeの磁場で配向し、プレス成形をして、コンパクトにする。コンパクトにしたものをArガス雰囲気下の焼結炉に入れて、1100℃で5h焼結して圧粉体を得、圧粉体を500℃の温度で5h時効して、焼結する半製品を得る。機械で加工することで、焼結する半製品を寸法が40mm*20mm*4mmの50M磁石に加工して、Moとする。 【0042】 50M焼結磁石(40mm*20mm*4mm)に対して、脱脂、酸洗い、活性化及び脱イオン水洗浄をしてから乾燥処理する。磁石を掛具に掛けて平均粉末粒度が0.8μm、1.2μm、1.6μm、2μm、2.4μm、3μm、5μmのテルビウム粉末を使用して、それぞれエチルアルコール、1,3,5‐トリクロロトルエンと重量比12:7:1でスラリーJ1、J2、J3、J4、J5、J6及びJ7にする。その後、スラリーJ1、J2、J3、J4、J5、J6及びJ7をそれぞれ使用して磁石の表面にスプレーした後で熱風を用いて磁石を乾燥させ、磁石の表面に厚さが25±3μmのテルビウム粉末のコーティング層を形成し、これらの5種類の磁石をそれぞれMl、M2、M3、M4、M5、M6及びM7とする。これらの磁石を真空焼結炉内に置いて、970℃の温度の真空条件下(単位面積当たりの圧力は10-3~10-4Paの範囲)で24h処理し、その後、500℃で5h時効処理をして、Arガスを通して室温まで冷却する。測定・分析をしたところ、その性能は、表1に示す通りとなる。 【0043】 【表1】 [図:0001404790000003.jpg] 」 イ 甲第10号証に記載された発明 上記アより、以下のことがいえる。 (ア)【0001】、【0041】、【0042】より、甲第10号証の「R-Fe-B系焼結磁石」のうちの磁石M2は、 ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム、電解鉄、コバルト、銅、ガリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ホウ素を重量比でNd-23.8%、Pr-5%、Dy-0.6%、Tb-0.4%、Fe-68.29%、Co-0.5%、Cu-0.13%、Ga-0.1%、Al-0.1%、Zr-0.12%、B-1%の割合にして、焼結して得られた圧粉体を500℃の温度で5h時効して得られた焼結する半製品を寸法が40mm*20mm*4mmの50M磁石に加工し、 50M焼結磁石(40mm*20mm*4mm)に対して、脱脂、酸洗い、活性化及び脱イオン水洗浄をしてから乾燥処理し、 平均粉末粒度が1.2μmのテルビウム粉末を使用したスラリーJ2を使用して磁石の表面にスプレーした後で熱風を用いて磁石を乾燥させ、磁石の表面にテルビウム粉末のコーティング層を形成し、 磁石を真空焼結炉内に置いて、970℃の温度の真空条件下で24h処理し、その後、500℃で5h時効処理をして、室温まで冷却することにより得られるものである。 (イ)【0043】の【表1】より、Hcjの単位はkOeで、(BH)maxの単位はMGOeとしたとき、磁石M2は、Hcjと(BH)maxの合計値が76.33(26.70+49.63)である。 (ウ)上記(ア)、(イ)より、甲第10号証には、以下の発明(以下、「甲10発明」という。)が記載されている。 (甲10発明) 「ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム、電解鉄、コバルト、銅、ガリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ホウ素を重量比でNd-23.8%、Pr-5%、Dy-0.6%、Tb-0.4%、Fe-68.29%、Co-0.5%、Cu-0.13%、Ga-0.1%、Al-0.1%、Zr-0.12%、B-1%の割合にして、焼結して得られた圧粉体を500℃の温度で5h時効して得られた焼結する半製品を寸法が40mm*20mm*4mmの50M磁石に加工し、 50M焼結磁石(40mm*20mm*4mm)に対して、脱脂、酸洗い、活性化及び脱イオン水洗浄をしてから乾燥処理し、 平均粉末粒度が1.2μmのテルビウム粉末を使用したスラリーJ2を使用して磁石の表面にスプレーした後で熱風を用いて磁石を乾燥させ、磁石の表面にテルビウム粉末のコーティング層を形成し、 磁石を真空焼結炉内に置いて、970℃の温度の真空条件下で24h処理し、その後、500℃で5h時効処理をして、室温まで冷却することにより得られ、 Hcjの単位はkOeで、(BH)maxの単位はMGOeとしたとき、Hcjと(BH)maxの合計値が76.33(26.70+49.63)である R-Fe-B系焼結磁石。」 (11)甲第11号証 ア 甲第11号証の記載事項 上記甲第11号証には、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付した。) 「【0096】 (実験例1) (R―T-B系焼結磁石の作製) 原料として、Nd、Pr、電解鉄、低炭素フェロボロン合金を準備した。さらに、Al、Ga、Cu、Co、Mn、Zrを、純金属またはFeとの合金の形で準備した。 【0097】 前記原料を用い、ストリップキャスト法により、後述する粒界拡散を経て最終的に得られる磁石組成が表1および表2に示す各試料の組成となるように原料合金を作製した。表1および表2に示したC、N、Oの含有量(ppm)はそれぞれ磁石の総質量に対する含有量を表す。表2にはFeを表示していないが、表1および表2に示したC、N、O以外の各元素の含有量(質量%)はNd、Pr、Tb、B、Al、Ga、Cu、Co、Mn、ZrおよびFeの合計含有量を100質量%としたときの値である。なお、前記原料合金の合金厚みは0.2mm~0.4mmとした。 【0098】 次いで、原料合金に対して室温で1時間、水素ガスをフローさせて水素を吸蔵させた。次いで雰囲気をArガスに切り替え、600℃で1時間、脱水素処理を行い、原料合金を水素吸蔵粉砕した。試料番号81~83については窒素含有量が所定の量となるように脱水素処理時の雰囲気中窒素ガス濃度を調整した。さらに、冷却後にふるいを用いて425μm以下の粒度の粉末とした。なお、水素吸蔵粉砕から後述する焼結工程までは、常に酸素濃度200ppm未満の低酸素雰囲気とした。なお、試料番号74~78については酸素含有量が所定の量となるように酸素濃度を調整した。 【0099】 次いで、水素吸蔵粉砕およびふるいを用いた後の原料合金の粉末に対し、質量比で0.1%のオレイン酸アミドを粉砕助剤として添加し、混合した。試料番号63~68については、炭素含有量が所定の量となるように粉砕助剤の添加量を調整した。 【0100】 次いで、衝突板式のジェットミル装置を用いて窒素気流中で微粉砕し、平均粒径が3.9μm~4.2μmである微粉を得た。試料番号79、80についてはArと窒素との混合ガス気流中で微粉砕し、窒素含有量が所定の量となるように窒素ガス濃度を調整した。なお、前記平均粒径は、レーザ回折式の粒度分布計で測定した平均粒径D50である。 【0101】 得られた微粉を磁界中で成形して成形体を作製した。このときの印加磁場は1200kA/mの静磁界である。また、成形時の加圧力は98MPaとした。なお、磁界印加方向と加圧方向とを直交させるようにした。この時点での成形体の密度を測定したところ、全ての成形体の密度が4.10Mg/m3~4.25Mg/m3の範囲内であった。 【0102】 次に、前記成形体を焼結し、焼結体を得た。焼結条件は、組成等により最適条件が異なるが、1040℃~1100℃の範囲内で4時間保持とした。焼結雰囲気は真空中とした。このとき焼結密度は7.45Mg/m3~7.55Mg/m3の範囲にあった。その後、Ar雰囲気、大気圧中で、第一時効温度T1=850℃で1時間の第一時効処理を行い、さらに、第二時効温度T2=520℃で1時間の第二時効処理を行った。 【0103】 その後、時効処理後の焼結体をバーチカルにより14mm×10mm×4.2mm(磁化容易軸方向厚み4.2mm)に加工して後述するTbの粒界拡散前の焼結体を作製した。 【0104】 さらに、前記した工程で得られた焼結体を、エタノール100質量%に対し硝酸3質量%とした硝酸とエタノールとの混合溶液に3分間浸漬させた後にエタノールに1分間浸漬するエッチング処理を行った。前記混合溶液に3分間浸漬させた後にエタノールに1分間浸漬させるエッチング処理は2回行った。次いで、エッチング処理後の焼結体の全面に対し、TbH2粒子平均粒径D50=10.0μmをエタノールに分散させたスラリーを、磁石の質量に対するTbの質量比で0.2質量%~1.2質量%塗布した。表1および表2に記載のTbの含有量になるように塗布量を変化させた。 【0105】 前記スラリーを塗布、乾燥させた後に大気圧でArをフローしながら930℃、18時間の拡散処理を実施し、続いて520℃、4時間の熱処理を施した。次いで、14×10×4.2mm試料の表面を各面あたり0.1mm削り落とし、表1および表2に示す各試料のR-T-B系焼結磁石を得た。 【0106】 得られた各R-T-B系焼結磁石の平均組成を測定した。各試料をスタンプミルにより粉砕し、分析に供した。各種元素量については、蛍光X線分析により測定した。ホウ素(B)の含有量はICP分析により測定した。酸素の含有量は不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法により、炭素の含有量は酸素気流中燃焼-赤外線吸収法により、窒素の含有量は不活性ガス融解-熱伝導度法により測定した。結果を表1、表2に記す。なお、本実施例では、Rの含有量の合計TREは28.20質量%以上、30.50質量%以下である。 【0107】 得られた各R-T-B系焼結磁石について、BHトレーサーで磁気特性の評価を行った。4000kA/mのパルス磁場により着磁を行ってから磁気特性を評価した。前記焼結磁石の厚みが薄いため、前記焼結磁石を3枚重ねて評価した。結果を表1、表2に記す。」 「【0110】 【表1】 [図:0001404790000004.jpg] 」 「【0111】 【表2】 [図:0001404790000005.jpg] 」 イ 甲第11号証に記載された発明 上記アより、以下のことがいえる。 (ア)【0096】、【0098】~【0105】より、甲第11号証のR-T-B系焼結磁石は、 原料合金から得られた微粉を磁界中で成形して成形体を作製し、 成形体を焼結し、焼結体を得て、 その後、第一時効温度T1=850℃で1時間の第一時効処理を行い、さらに、第二時効温度T2=520℃で1時間の第二時効処理を行い、TbH2粒子をエタノールに分散させたスラリーを、磁石の質量に対するTbの質量比で0.2質量%~1.2質量%塗布し、乾燥させ、 930℃18時間の拡散処理を実施し、続いて520℃、4時間の熱処理を施して得られるものである。 (イ)【0097】には、「表1および表2に示したC、N、O以外の各元素の含有量(質量%)はNd、Pr、Tb、B、Al、Ga、Cu、Co、Mn、ZrおよびFeの合計含有量を100質量%としたときの値である。」と記載されていること、「mass」は質量を意味するものであることから、【表2】の「mass%」との記載は「質量%」のことである。 また、【0097】の「後述する粒界拡散を経て最終的に得られる磁石組成が表1および表2に示す各試料の組成となるように」との記載、【表2】には、「R-T-B系焼結磁石組成(Tb拡散後)」との記載より、【表2】に示されたNd、Pr、Tb、B、Al、Ga、Cu、Co、Mn、Zrの組成は、Tb拡散後のものである。 そうすると、【0096】、【0111】の【表2】より、甲第11号証の「R-T-B系焼結磁石」のうちの試料番号58は、 Brが1461mTであり、 Hcjが1973kJ/mであり、 Tb拡散後のNd、Pr、Tb、B、Al、Ga、Cu、Co、Mn、Zrが、それぞれ、22.2、7.4、0.35、0.93、0.20、0.30、0.20、2.0、0.03、0.15質量%である。 (ウ)上記(ア)、(イ)より、甲第11号証には、以下の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されている。 (甲11発明) 「原料合金から得られた微粉を磁界中で成形して成形体を作製し、 成形体を焼結し、焼結体を得て、 その後、第一時効温度T1=850℃で1時間の第一時効処理を行い、さらに、第二時効温度T2=520℃で1時間の第二時効処理を行い、TbH2粒子をエタノールに分散させたスラリーを、磁石の質量に対するTbの質量比で0.2質量%~1.2質量%塗布し、乾燥させ、 930℃18時間の拡散処理を実施し、続いて520℃、4時間の熱処理を施して得られるものであり、 Brが1461mTであり、 Hcjが1973kJ/mであり、 Tb拡散後のNd、Pr、Tb、B、Al、Ga、Cu、Co、Mn、Zrが、それぞれ、22.2、7.4、0.35、0.93、0.20、0.30、0.20、2.0、0.03、0.15質量%である R-T-B系焼結磁石。」 (12)甲第12号証 上記甲第12号証には、以下の記載がある。 「2.磁石材料の特性と評価 (中略)μ0は磁気定数(真空の透磁率)であり、(中略) 高性能な磁石は残留磁束密度Br(=Jr)、J保持力Hcj、最大磁気エネルギー積(BH)maxがそれぞれ大きく、さらに磁気的な安定性が優れていることである。(中略)特に、磁石の理論値として計算される(BH)max=Js2/4μ0の式より飽和磁化の高い材料の開発が高性能磁石を生む要因になる。」(159頁左欄17行~160頁左欄9行) (13)甲第13号証 上記甲第13号証には、以下の記載がある。 「Density:ρ=7.40Mg・m-3」 3 当審の判断 (1)進歩性について ア 本件発明5と甲1発明との対比 (ア)構成5Lについて 甲1発明と本件発明5は、「希土類の磁石」である点で共通するが、本件発明5は、「希土類拡散磁石」であるのに対し、甲1発明は「希土類磁石」であり拡散がなされていない点で相違する。 (イ)構成5A、5B、5F~5Jについて 甲1発明の「第二粒界相」は、「R:50~70原子%」「の範囲でR-T-M元素を少なくとも含有する粒界相」であり、「研磨断面における」「面積比率が2.8%であり、」「Rとしては、Nd及びPrのいずれか一方を必ず含み、M元素としては、Al、Ga、Si、Ge、Sn等が挙げられ、Tで表される元素として、Feを必須としてFeに加えてさらに他の鉄族元素を含むことができるものであり、Nd、Pr、B、Cu、Al、Ga、N、C、Oの組成」である。 そうすると、甲1発明の「第二粒界相」と本件発明5の「白色結晶粒界相」とは、「希土類の磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、」「前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、R1は、希土類元素であり、Nd及びPrを含み、TはFeならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cuのうちの少なくとも1つ」である点で共通する。 また、甲1発明の「第一粒界相」は、「研磨断面における」「面積比率が3.4%」である。 そうすると、甲1発明の「第一粒界相」と本件発明5の「灰色結晶粒界相」とは、「灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%」を占める点で共通する。 しかし、希土類の磁石の結晶粒界相における希土類の磁石に関して、上記(ア)と同様に、本件発明5は「希土類拡散磁石」であるのに対し、甲1発明は「希土類磁石」であり拡散がなされていない点で相違する。 また、本件発明5の「灰色結晶粒界相」は、「Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相」であるのに対し、甲1発明は、その旨特定されていない点で相違する。 (ウ)構成5C~5Eについて 本件発明5と甲1発明は、「固有保磁力Hcjの単位がkOe」である点で一致する。 また、最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであることは周知である。 しかし、本件発明5は、「前記希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75」を超えるのに対し、甲1発明の希土類磁石は、「Brが13.4kG、Hcjが19.3kOe」であるが、最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値は特定されていない点で相違する。 (エ)構成5Kについて 甲1発明の希土類磁石の成分は、「Nd、Pr、B、Cu、Al、Ga、N、C、Oの組成が、25.0、7.0、0.87、0.1、0.2、0.6、0.04、0.12、0.08質量%であり、Feはbal.すなわち残部」である。 そうすると、甲1発明の希土類磁石の成分は、 NdとPrの含有量は、32.0質量%であり、 Bの含有量は、0.87質量%であり、 CuとAlの含有量は、0.3質量%であり、 Gaの含有量は、0.6質量%であり、 残りは、FeとN、C、Oである。 それに対して、本件発明5の希土類磁石は、「質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素」である。 甲1発明と本件発明5の構成5Kとを対比すると、 「希土類の磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよびNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cuのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bを含有し、 残りはTであり、TはFeならびに不可避の不純物元素」である点で共通する。 しかし、希土類の磁石に関して、上記(ア)と同様に、本件発明5は「希土類拡散磁石を得るための希土類磁石」であるのに対し、甲1発明は「希土類磁石」である点で相違する。 また、本件発明5のBの含有量は「0.96~1.0wt%」であるのに対し、甲1発明は「0.87質量%」である点で相違する。 イ 一致点・相違点 以上より、本件発明5と甲1発明との一致点・相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 希土類の磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、 灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、 最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、 固有保磁力Hcjの単位がkOeであり、 前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、 R1は、希土類元素であり、Nd及びPrを含み、 TはFeならびに不可避の不純物元素であり、 MはAl、Cuのうちの少なくとも1つであり、 前記希土類の磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよびNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cuのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bを含有し、 残りはTであり、TはFeならびに不可避の不純物元素である、ことを特徴とする、 希土類の磁石。」 (相違点) (相違点1) 「希土類の磁石」に関して、本件発明5は、「希土類拡散磁石」であるのに対し、甲1発明は「希土類磁石」であり拡散がなされていない点。 (相違点2) 本件発明5の「灰色結晶粒界相」は、「Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相」であるのに対し、甲1発明は、その旨特定されていない点。 (相違点3) 本件発明5は、「前記希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75」を超えるのに対し、甲1発明の希土類磁石は、「Brが13.4kG、Hcjが19.3kOe」であるが、最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値は特定されていない点。 (相違点4) 本件発明5のBの含有量は「0.96~1.0wt%」であるのに対し、甲1発明は「0.87質量%」である点。 ウ 判断 事案に鑑みて、上記相違点3、4について先に判断する。 (ア)相違点3について 甲第12号証には、磁石の理論値として、(BH)max=Js2/4μ0の式が記載されている。 しかし、甲1発明におけるJsとμ0が不明であるから、甲1発明の(BH)maxの値は不明である。また、甲1発明におけるJsとμ0が求められたとしても、甲第12号証の式は理論式であるから、甲1発明の(BH)maxの値が当該理論式どおりの値になるか不明である。 そして、甲第2号証~甲第9号証には、希土類磁石にTbを拡散させることが周知技術であることが記載され、甲第10号証には、Tbを拡散することにより、HcjやBrの値が変化することが記載されているにすぎず、当該周知技術(甲第2号証~甲第9号証)、甲第10号証をみても、甲1発明において、希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えるようにすることが、当業者が容易に想到しうると認めることができない。 特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下の主張をしている。 「要件5C~5Eについて、甲第10号証の段落【0043】の【表1】では、磁石にTbを堆積してTbを拡散することでHcjが11.5kOe高くなり、Brが0.10低下することがM0とM2との比較により示されている。 そうすると、甲1発明においてTbを堆積してTbを拡散した場合には、磁石の残留磁束密度Brが13.3kG(1330mT)となり、保磁力Hcjが、30.8kOeとなると推認される。 ここで、「(シ)甲第12号証・・・について」の「c 最大磁気エネルギー積(BH)max(単位:MGOe)の算出について」で示したとおり、最大磁気エネルギー積(BH)max(単位:MGOe)は下記式(2)により算出される。 Jr2/4(1+α)μ0・・・式(2) ここで、α=0.03とすると、μ0=1より、最大磁気エネルギー積(BH)maxは、式(2)より42.9MGOeと算出される。 なお、α=0.03は、ネオジム磁石として一般的な値である。この点は、例えば、甲第10号証の段落【0043】の【表1】の実施例2の磁石M2(甲10発明)の残留磁束密度の測定値14.30kGと上記式(2)から算出される最大磁気エネルギー積(BH)maxが49.63となり、測定値と一致することからも明らかである。 つまり、甲1発明においてTbを堆積してTbを拡散した場合には、磁石の保磁力Hcj(単位:kOe)と最大磁気エネルギー積(BH)max(単位:MGOe)の合計値が73.7となる。 (中略) したがって、本件特許発明5は、甲第1号証に基づいて容易に想到できるものであり、進歩性を有しない。」(39頁4行~40頁12行) 上記主張について検討するに、甲第10号証において、磁石M0にTbを堆積及び拡散することで得られる磁石M2のHcjが11.5kOe高くなり、Brが0.10低下することが記載されているとしても、甲1発明の希土類磁石の組成と甲第10号証に示された磁石M0の組成とは、異なるものであるから、甲1発明の希土類磁石において、Tbを堆積及び拡散することで、甲第10号証に示された数値と同じだけ変化するかは不明である。 また、特許異議申立書の「(シ)甲第12号証・・・について」の「c 最大磁気エネルギー積(BH)max(単位:MGOe)の算出について」(36頁1~14行)において、(BH)max=Jr2/4(1+α)μ0としているが、当該式はH=0~Hcjまでは磁気分極Jと磁界Hとの関係式がαμ0という傾きを持つ直線(J=αμ0H+Jr)と仮定した場合の式であり、さらに、α=0.03、μ0=1と仮定して、当該式から42.9MGOeと算出したものであり、甲1発明において、そのような仮定が成立するか否かは不明であるし、異議申立人が主張するような仮定が全て成立するとしても、甲1発明においてTbを堆積してTbを拡散した場合には、磁石の保磁力Hcj(単位:kOe)と最大磁気エネルギー積(BH)max(単位:MGOe)の合計値が73.7にしかならず、合計値が75を超えるものではない。 したがって、特許異議申立人の上記主張を認めることはできない。 (イ)相違点4について 甲1発明は、実施例24の試料に係る発明であるが、甲第1号証の【表1】、【表2】の実施例1~31をみても、Bは、0.70(実施例1、2、18)~0.92(実施例14)質量%であり、【0026】には、「B:0.7~0.95質量%」と記載されている。 そして、Bが1.00質量%である比較例1、2は、【0055】に「比較例1~3では、高温減磁率の絶対値が4%以上となっており、高温減磁率の抑制効果が出ていない。」と記載しているように、実施例と比較して適切でない例であり、甲1発明において、Bを0.95質量%以上とすることには、阻害要因がある。また、周知技術(甲第2号証~甲第9号証)、甲第10号証をみても、Bの含有量を「0.96~1.0wt%」にする動機がない。 そうすると、甲1発明において、Bの含有量を「0.96~1.0wt%」とすることは、当業者が容易に想到しうると認めることができない。 以上より、相違点1、2について判断するまでもなく、本件請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、周知技術(甲第2号証~甲第9号証)、甲第10号証に記載された技術から、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (2)新規性について ア 甲10発明に基づく本件発明5の新規性について (ア)本件発明5と甲10発明との対比 a 構成5Lについて 甲10発明のR-Fe-B系焼結磁石は、焼結磁石の表面にテルビウム粉末のコーティング層を形成し、970℃の温度の真空条件下で24h処理し、その後、500℃で5h時効処理をして得られたものであって、希土類であるテルビウムを拡散処理した磁石といえるので、本件発明5の「希土類拡散磁石」に相当する。 b 構成5A、5B、5F~5Jについて 本件発明5は、「希土類拡散磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、」「前記灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であり、前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、R1は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つ」であるのに対し、甲10発明は、そのような特定がない点で相違する。 c 構成5C~5Eについて 甲10発明の希土類拡散磁石は、「Hcjと(BH)maxの合計値が、76.33であり、Hcjの単位はkOeであり、(BH)maxの単位はMGOeである」から、本件発明5の「前記希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えて、最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、前記固有保磁力Hcjの単位がkOe」であることに相当する。 d 構成5Kについて 甲10発明の磁石の成分(拡散前の磁石の成分であるから希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分といえる。)は、「ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム、電解鉄、コバルト、銅、ガリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ホウ素を重量比でNd-23.8%、Pr-5%、Dy-0.6%、Tb-0.4%、Fe-68.29%、Co-0.5%、Cu-0.13%、Ga-0.1%、Al-0.1%、Zr-0.12%、B-1%の割合」である。 そうすると、甲10発明の希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、 NdとPrの含有量は28.8%であり、 DyとTbの含有量は1%であり、 CuとAlとZrの含有量は0.35%であり、 Gaの含有量は0.1%であり、 Bの含有量は1%であり、 残りはFeとCoである。 それに対して、本件発明5の希土類磁石は、「質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素」である。 甲10発明と本件発明5の構成5Kとを対比すると、 「希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよびNdの割合は98~100wt%であり、 DyおよびTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Zrのうちの少なくとも1つであり、 Gaを含有し、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよびCoならびに不可避の不純物元素」である点で共通する。 ただし、Gaの含有量が本件発明5は「0.3~0.8wt%」であるのに対し、甲10発明は「0.1%」である点で相違する。 (イ)一致点・相違点 以上より、本件発明5と甲10発明との一致点・相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えて、 最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、 前記固有保磁力Hcjの単位がkOeであり、 前記希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよびNdの割合は98~100wt%であり、 DyおよびTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Zrのうちの少なくとも1つであり、 Gaを含有し、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよびCoならびに不可避の不純物元素である、ことを特徴とする、 希土類拡散磁石。 (相違点) (相違点5) 本件発明5は、「希土類拡散磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、」「前記灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であり、前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、R1は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つ」であるのに対し、甲10発明は、そのような特定がない点。 (相違点6) Gaの含有量が本件発明5は「0.3~0.8wt%」であるのに対し、甲10発明は「0.1%」である点。 (ウ)判断 本件発明5と甲10発明とを対比すると、少なくとも、Gaの含有量が異なるという相違点6を有する。 したがって、相違点5について判断するまでもなく、請求項5に係る発明は、甲第10号証に記載された発明でない。 イ 甲11発明に基づく本件発明5の新規性について (ア)本件発明5と甲11発明との対比 a 構成5Lについて 甲11発明のR-T-B系焼結磁石は、焼結体に、TbH2粒子をエタノールに分散させたスラリーを塗布し、乾燥させ、930℃18時間の拡散処理を実施し、続いて520℃、4時間の熱処理を施して得られるものであって、希土類であるTbを拡散処理した磁石といえるので、本件発明5の「希土類拡散磁石」に相当する。 b 構成5A、5B、5F~5Jについて 本件発明5は、「希土類拡散磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、」「前記灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であり、前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、R1は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つ」であるのに対し、甲11発明は、そのような特定がない点で相違する。 c 構成5C~5Eについて 本件発明5は「希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えて、最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、前記固有保磁力Hcjの単位がkOe」であるのに対し、甲11発明は、「Brが1461mTであり、Hcjが1973kJ/m」であるが、最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えるとは特定されていない点で相違する。 d 構成5Kについて 本件発明5は、「希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素」であるのに対し、甲11発明は、「Tb拡散後のNd、Pr、Tb、B、Al、Ga、Cu、Co、Mn、Zrが、それぞれ、22.2、7.4、0.35、0.93、0.20、0.30、0.20、2.0、0.03、0.15質量%」であるが、Tb拡散前の希土類磁石の成分が明らかでない点で相違する。 (イ)一致点・相違点 以上より、本件発明5と甲11発明との一致点・相違点は、以下のとおりである。 (一致点) 希土類拡散磁石。 (相違点) (相違点7) 本件発明5は、「希土類拡散磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、」「前記灰色結晶粒界相は、Nd6Fe13Ga相、すなわち、6:13:1相であり、前記白色結晶粒界相は、R1~T~M相であり、R1の原子百分率は30at%を超え、R1は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つ」であるのに対し、甲11発明は、そのような特定がない点。 (相違点8) 本件発明5は「希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えて、最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、前記固有保磁力Hcjの単位がkOe」であるのに対し、甲11発明は、「Brが1461mTであり、Hcjが1973kJ/m」であるが、最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えるとは特定されていない点。 (相違点9) 本件発明5は、「希土類拡散磁石を得るための希土類磁石の成分は、質量百分率で、 Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、 Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、 Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、 Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、 Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、 残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素」であるのに対し、甲11発明は、「Tb拡散後のNd、Pr、Tb、B、Al、Ga、Cu、Co、Mn、Zrが、それぞれ、22.2、7.4、0.35、0.93、0.20、0.30、0.20、2.0、0.03、0.15質量%」であるが、Tb拡散前の希土類磁石の成分が明らかでない点。 (ウ)判断 事案に鑑みて、上記相違点9について先に判断する。 甲11発明のTb拡散後の成分は、 NdとPrの含有量は29.6質量%(22.2+7.4)であり、 Tbの含有量は0.35質量%であり、 CuとAlとZrの含有量は0.55質量%(0.20+0.20+0.15)であり、 Gaの含有量は0.30質量%であり、 Bの含有量は0.93質量%であり、 残りはFeとCoとMnである。 ここで、甲第11号証の【0096】によれば、「原料として、Nd、Pr、電解鉄、低炭素フェロボロン合金を準備した。さらに、Al、Ga、Cu、Co、Mn、Zrを、純金属またはFeとの合金の形で準備した。」と記載されていることから、原料すなわち甲11発明のTb拡散前の希土類磁石にTbは含まれない。 そうすると、甲11発明において、Tb拡散前とTb拡散後とのTbの含有量は、それぞれ0質量%と0.35質量%である。 ここで、Tb拡散前の各成分の質量百分率を考えると、Bの含有量は、Tb拡散後である0.93質量%よりは大きくなるものの、0.96質量%より少ないことは明らかである。 すなわち、本件発明5と甲11発明とを対比すると、少なくとも、Bの含有量が異なるという相違点を有する。 したがって、相違点7、8について判断するまでもなく、請求項5に係る発明は、甲第11号証に記載された発明でない。 なお、甲第11号証の【表1】において、試料番号1*、8*、14*、21*、28*、35*については、Tb拡散後のBの含有量が0.96質量%であるから、Tb拡散前のBの含有量は本件発明5のBの含有量の範囲内となるが、Tb拡散後のGaの含有量がいずれの試料番号も0.20質量%であり、Tb拡散前のGaの含有量は本件発明5と異なる値となるから、甲第11号証の他の試料番号を見ても、本件発明5と同一のものはない。 第6 むすび したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701299

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