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特許異議申立

2022-701295

薬剤組成物、害虫防除用線香、及びそれらを用いた殺虫成分拡散増強方法

審判番号
2022-701295
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-017644
登録番号
7090759
請求日
2022年12月23日
審決日
2023年08月28日
公報発行日
2023年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】大日本除蟲菊株式会社
  • 【権利者代理人】沖中 仁
  • 【権利者代理人】日東 伸二
  • 【異議申立人】合同会社 SAS
審判長/審判官
  • 審判長 井上 典之
  • 審判官 齋藤 恵
  • 審判官 冨永 保
分類
P1651.112-YAA(A01N) / P1651.121-YAA(A01N) / P1651.14 -YAA(A01N) / P1651.536-YAA(A01N) / P1651.537-YAA(A01N) / P1651.851-YAA(A01N) / P1651.853-YAA(A01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7090759号発明「薬剤組成物、害虫防除用線香、及びそれらを用いた殺虫成分拡散増強方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7090759号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~10〕について訂正することを認める。 特許第7090759号の請求項1、3~8、10に係る特許を維持する。 特許第7090759号の請求項2及び9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7090759号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成29年2月14日の出願である特願2017-25335号の一部を、令和3年2月5日に新たな特許出願(特願2021-17644号)としたものであって、令和4年6月16日にその特許権の設定登録がされ、同年同月24日にその特許掲載公報が発行され、その後、本件特許の請求項1~10に係る特許に対し、同年12月23日に特許異議申立人である 合同会社 SAS (以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続の経緯の概要は次のとおりである。 令和5年2月27日付け 取消理由通知 同年4月20日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年5月30日付け 訂正請求があった旨の通知 同年6月30日 意見書の提出(申立人) なお、以下では平成29年2月14日を「本件出願日」という。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和5年4月20日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7、8~10について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下の訂正事項1~8からなるものである(下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 請求項1の 「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物と、 を含有する害虫防除用線香であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合される」 との記載を、 「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物と、 を含有する害虫防除用線香であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合され、 前記トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物が、 [1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 (E)-(R)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタン-1-オール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、 3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3’-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、及び 2-メチル-4-メチレン-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール、 から選ばれた少なくとも1種である」 に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項3~7についても同様に訂正する。 (2)訂正事項2 請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 請求項3の 「請求項2に記載」 との記載を、 「請求項1に記載」 に訂正する。 請求項3の記載を引用する請求項4~7についても同様に訂正する。 (4)訂正事項4 請求項4の 「請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載」 との記載を、 「請求項1または3に記載」 に訂正する。 請求項4の記載を引用する請求項5~7についても同様に訂正する。 (5)訂正事項5 請求項7の 「請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載」 との記載を、 「請求項1、3ないし6のいずれか一項に記載」 に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項8の 「さらにトリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物を含有させる前記ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合される」 との記載を、 「さらにトリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物を含有させる前記ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合され、 前記トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物が、 [1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 (E)-(R)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール)、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタン-1-オール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、 3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3’-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、及び 2-メチル-4-メチレン-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール、 から選ばれた少なくとも1種である」 に訂正する。 請求項8の記載を引用する請求項10についても同様に訂正する。 (7)訂正事項7 請求項9を削除する。 (8)訂正事項8 請求項10の 「請求項8又は9に記載」 との記載を、 「請求項8に記載」 に訂正する。 2 一群の請求項について 訂正事項1~5に係る訂正前の請求項1~7について、請求項2~7は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあり、そのうち請求項3~7は、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正され、請求項3~7において直接的又は間接的に記載が引用される請求項2は、訂正事項2によって削除されるから、本件訂正のうち、訂正事項1~5による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項1~7についてされたものである。 また、訂正事項6~8に係る訂正前の請求項8~10について、請求項9及び10は、請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあり、そのうち請求項10は、訂正事項6によって記載が訂正される請求項8に連動して訂正され、請求項10において記載が引用される請求項9は、訂正事項7によって削除されるから、本件訂正のうち、訂正事項6~8による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である請求項8~10についてされたものである。 3 本件訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1に記載された「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物」を、訂正前の請求項2に列記された具体的な化合物に特定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、上記のとおりの特定をするものであるから、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項1によって訂正前の請求項2に記載されていた事項を訂正後の請求項1において特定したこと及び訂正事項2によって請求項2が削除されて請求項2を引用することができなくなったことに伴い、請求項3で記載を引用していた「請求項2」を「請求項1」と訂正することによって、記載上の整合性を図るものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、かかる訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (4)訂正事項4及び5について 訂正事項4は、請求項4で引用する請求項を「請求項1ないし請求項3のいずれか1項」から「請求項1または3」とすることによって、また、訂正事項5は、請求項7で引用する請求項を「請求項1ないし請求項6のいずれか1項」から「請求項1、3ないし6のいずれか一項」とすることによって、いずれも、訂正事項2により請求項2が削除されるのに伴い、請求項2を引用しないものとするものであり、引用する請求項を減少するものである。 したがって、訂正事項4及び5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記のとおりの訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項4及び5は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (5)訂正事項6について 訂正事項6は、請求項8に記載された「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物」を、訂正前の請求項9に列記された具体的な化合物に特定するものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、上記のとおりの特定をするものであるから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (6)訂正事項7について 訂正事項7は、請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (7)訂正事項8について 訂正事項8は、請求項10で引用する請求項を「請求項8又は9」から「請求項8」とすることによって、訂正事項7により請求項9が削除されるのに伴い、請求項9を引用しないものとするものであり、引用する請求項を減少するものである。 したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記のとおりの訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、かつ、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (8)独立特許要件について 本件特許異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~10に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正事項1~2、4~8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものではあるが、訂正事項2及び7により請求項2及び9は削除されるものであり、訂正後の請求項1、3~8、10に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 4 訂正請求についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、令和5年4月20日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~10〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の請求項1~10の記載は、令和5年4月20日付けの訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~10に記載された以下のとおりのものである(下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。) そして、本件訂正により請求項2及び9が削除されたところ、本件訂正後の本件特許の請求項1、3~8及び10に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3~8及び10に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認める(以下、請求項の番号順に「本件発明1」などといい、また、これらを合わせて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 ピレスロイド系殺虫成分と、 線香基材と、 トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物と、 を含有する害虫防除用線香であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合され、 前記トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物が、 [1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 (E)-(R)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタン-1-オール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、 3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3’-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、及び 2-メチル-4-メチレン-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール、 から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする害虫防除用線香。 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物が、 [1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノールであることを特徴とする請求項1に記載の害虫防除用線香。 【請求項4】 さらに、香料及び/又は刺激緩和剤を含有することを特徴とする請求項1または3に記載の害虫防除用線香。 【請求項5】 前記香料が、ガラクソリド、キャシュメラン、イソ-イースーパー(7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン)、イソロンギホラノン、メチルヨノン、シス-3-ヘキセノール、サンタロール、及びサンダルウッドオイルから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の害虫防除用線香。 【請求項6】 前記刺激緩和剤が、N-フェニルアセトアミド及び/又はN,2-ジメチル-N-フェニルブタンアミドであることを特徴とする請求項4に記載の害虫防除用線香。 【請求項7】 前記線香基材が、植物性粉末としての除虫菊抽出粕粉、柑橘類の表皮粉、茶粉末、ココナッツシェル粉末、白檀粉末、及び/又は植物性粘結剤としてタブ粉から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1、3ないし6のいずれか一項に記載の害虫防除用線香。 【請求項8】 ピレスロイド系殺虫成分、及び線香基材を含有する害虫防除用線香に、 さらにトリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物を含有させる前記ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合され、 前記トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物が、 [1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 (E)-(R)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール)、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタン-1-オール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、 3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3’-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、及び 2-メチル-4-メチレン-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール、 から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする前記ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法。 【請求項9】(削除) 【請求項10】 前記トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物が、 [1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノールであることを特徴とする請求項8に記載の殺虫成分拡散増強方法。」 以下では、請求項1及び8に記載された 「 [1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール、 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 (E)-(R)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタン-1-オール、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、 3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3’-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、及び 2-メチル-4-メチレン-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール」 を「本件9種化合物」ということがある。 第4 申立人が申し立てた理由及び当審において通知した取消理由の概要 1 申立人が申し立てた理由 特許異議申立書の記載によれば、申立人が申し立てた特許異議の申立ての理由の概要は、次のとおりである。 [申立理由1] 本件訂正前の請求項1~7に係る発明は、下記甲第1及び2号証に記載される本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができない。 したがって、本件訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由2] 本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、下記甲第1及び2号証に記載される本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明、及び本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記甲第3~7号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件訂正前の請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由3] 本件訂正前の請求項1~10に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 したがって、本件訂正前の請求項1~10に係る特許は、特許法第29条第1項柱書の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由4] 本件訂正前の請求項1~10に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に適合しない。 よって、本件訂正前の請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由5] 本件訂正前の請求項1~10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しない。 よって、本件訂正前の請求項1~10に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 [申立理由6] 本件訂正前の請求項1及び8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しない。 よって、本件訂正前の請求項1及び8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 また、申立人が提出した証拠方法は、下記のとおりである。 記 甲第1号証:MINTEL、「Sandalwood Scented Mosquito Coil」、掲載時期2014年8月、[Online]、出力日:2022年12月8日、インターネット<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2594275/from_search/yfiloGuR8j/?page=l> 甲第2号証:MINTEL、「Low Smoke Super Power Anti-Mosquito Coils」、掲載時期2012年3月、[Online]、出力日:2022年12月8日、インターネット<URL:https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/1756399/from_search/yfiloGuR8j/?page=l> 甲第3号証:生活衛生、(1988)、32-5、pp.203-222 甲第4号証:特開2008-13547号公報 甲第5号証:特開平10-167903号公報 甲第6号証:特開平10-36298号公報 甲第7号証:特開平10-147547号公報 甲第8号証の1:平成13年(行ケ)第338号判決、東京高等裁判所、平成15年6月5日 甲第8号証の2:平成12年(行ケ)第238号判決、東京高等裁判所、平成13年11月1日 甲第8号証の3:平成12年(行ケ)第312号判決、東京高等裁判所、平成14年3月28日 甲第8号証の4:甲第5号証に係る特許出願(特願平8-326969号)についての平成18年5月8日付け拒絶理由通知書 甲第8号証の5:甲第5号証に係る特許出願(特願平8-326969号)についての平成18年7月27日付け拒絶査定 甲第9号証の1:ウィキペディア、「フィックの法則」、[Online]、出力日:2022年12月21日、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87> 甲第9号証の2:ウィキペディア、「粘度」、[Online]、出力日:2022年12月21日、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B2%98%E5%BA%A6> 甲第10号証:J.Environ.Monit.、(2001)、3、pp.191-193 甲第11号証:特開2015-174822号公報 甲第12号証:特願2008-123825号についての平成23年3月8日付け拒絶理由通知書 甲第13号証:ウィキペディア、「ピレステロイド」、[Online]、出力日:不明、インターネット<URL:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89> 甲第1号証~甲第9号証の2は、特許異議申立書に添付して提出され、令和5年6月30日付け意見書にも添付して再度提出されたものであり、甲第10号証~甲第13号証は、同意見書に添付して提出されたものである。 (なお、甲第12号証について、令和5年6月30日付けの意見書、51頁に「(17)甲12号証:特願2018-123825に対する拒絶理由」と記載されているが、意見書に添付された甲12号証及びその他の意見書の記載内容からみて、甲第12号証を前記のとおり認定した。) 以下、甲第1号証~甲第13号証を「甲1」~「甲13」ということがある。 2 当審合議体が通知した取消理由の概要 当審合議体が令和5年2月27日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 [理由1](サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が、下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項1、4~8に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 [理由2](実施可能要件) 本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではない。 よって、本件訂正前の請求項8に係る発明の特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してなされたものである。 第5 当審合議体の判断 当審合議体は、本件特許の請求項1、3~8及び10に係る特許は、当審合議体が通知した取消理由及び申立人が申し立てた理由により取り消すべきものではないと判断する。 その理由は以下のとおりである。 1 当審合議体が通知した取消理由について (1)理由1(サポート要件)について ア 本件発明が解決しようとする課題 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の全体の記載事項、特に【0004】の記載事項からみて、本件発明1及び3~7の解決しようとする課題は、「殺虫成分の拡散に優れた害虫防除用線香を提供すること」であり、本件発明8及び10の解決しようとする課題は、「害虫防除用線香の殺虫成分拡散増強方法を提供すること」であると認める。 イ 発明の詳細な説明の記載 本件明細書の発明の詳細な説明には、上記課題に関して、以下の記載がある。 a)「【0005】 本発明は、上記目的達成のために配合成分を各種試行検討する中で、トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物を配合することにより、意外にもピレスロイド系殺虫成分の拡散性が高まることを見出したものである。 すなわち本発明は、以下の構成により上記目的を達成し、優れた効果を奏するものである。 (1) ピレスロイド系殺虫成分と、 線香基材と、 トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物と、 を含有する害虫防除用線香。 ・・・」 b)「【発明の効果】 【0006】 本発明の害虫防除用線香は、殺虫成分拡散増強剤の配合効果により、ピレスロイド系殺虫成分の拡散に優れるものである。また該殺虫成分拡散増強剤とともに、所定の香料及び/又は刺激緩和剤の配合により、基材燃焼による低刺激化のみならず害虫防除用線香に相応しい香りが付与され、その実用性は極めて高い。」 c)「【発明を実施するための形態】 【0007】 本発明の害虫防除用線香は、有効成分として殺虫効力と安全性の点からピレスロイド系殺虫成分を使用する。ピレスロイド系殺虫成分としては、ピレトリン、アレスリン、フラメトリン、プラレトリン、エムペントリン、テラレスリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、4-メトキシメチル-2,3,5,6-テトラフルオロベンジル 2,2,3,3-テトラメチルシクロプロパンカルボキシラートなどがあげられるがこれらに限定されない。なお、化学構造中に不斉炭素や二重結合に基づく光学異性体あるいは幾何異性体が存在する場合、本発明はそれぞれの単独ならびに任意の混合物を包含することはもちろんである。 ・・・ 【0009】 線香基材としては、・・・かかる線香基材は、害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%、好ましくは10~80質量%、更に好ましくは20~70質量%の範囲で適宜配合すればよく、後記する殺虫成分拡散増強剤と相まって、殺虫成分の拡散性が更に高まり広範囲の害虫防除が可能となったものである。 ・・・ 【0010】 本発明の害虫防除用線香は、上記成分とともに、殺虫成分拡散増強剤としてトリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物を含有することを特徴とする。 トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格を有する化合物として、具体的には、 [1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノール(ジボダン社「ジャバノール」)が例示される。 トリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物として、具体的には、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ペンタン-2-オール(ジボダン社「サンダロア」)、 2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(IFF社「バクダノール」)、 (E)-(R)-2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(高砂香料工業株式会社「レボサンドール」)、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(花王株式会社、「サンダルマイソルコア」)、 2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタン-1-オール(シムライズ社「ブラマノール」)、 3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール(ジボダン社「エバノール」)、 3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3’-シクロペンテン-1-イル)-4-ペンテン-2-オール(フィルメニッヒ社「ポリサントール」)、 2-メチル-4-メチレン-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-ブタノール(フィルメニッヒ社「フィルサントール」)、等があげられる。 これらから選ばれた少なくとも1種が害虫防除用線香の全体量に対して0.0001~2.0質量%、より好ましくは0.0001~1質量%の範囲で配合される。 これらの化合物は、サンダルウッド様香気を持つ合成香料として用いられるものであり、配合により穏やかな白檀の香りをもたらすが、ピレスロイド系殺虫成分の拡散を高めるという効果は今まで知られていなかったものである。 【0011】 上記、殺虫成分拡散増強剤のうち、[1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノールが特に好適に用いられ、害虫防除用線香の燃焼状態と相まって使用時に効率よく殺虫成分を拡散させる点については、環構造を含めた特有の化学的特性が拡散性に関与しているものと推察される。」 d)「【実施例1】 【0019】 dl,d-T80-アレスリンを0.3部、効力増強剤Aを0.7部、支燃剤・増量剤として、除虫菊抽出粕粉(植物性粉末)を26部、柑橘類の表皮粉(植物性粉末)を15部、及び木粉(モミ由来の植物性粉末)を33.5部、糊剤として、タブ粉(植物性粘結剤)を8部、α-澱粉を12部、及びCMCを4部、殺虫成分拡散増強剤としてジャバノールを0.0001部、刺激緩和剤としてのN-フェニルアセトアミド及びシス-3-ヘキセノールを0.01部、及びサンタロール等を含む香料成分(沸点が250℃以上400℃以下のベースノート成分)を0.1部、とメチルヨノンを含む香料成分(沸点が250℃未満のトップノート及びミドルノート成分)を0.09部含有する混合粉に、防黴剤としてのデヒドロ酢酸ナトリウムを0.3部及び水100部を加えて混練後、押出機にかけて板状シートとし、打抜機によって渦巻型に打抜き、水分率7~10%程度まで乾燥して黄褐色の害虫防除用線香Aを製造した。 【0020】 こうして得られた本発明の害虫防除用線香Aは、使用前に開封した際に、白檀の香りを発散し、異臭、刺激臭は感じられなかった。そして、6畳の部屋で就寝中使用したところ、この白檀の香りは使用最後まで持続し、リラックス感をもたらすとともに、その間蚊に悩まされることがなかった。 【0021】 害虫防除用線香Aと同様にして、殺虫成分拡散増強剤のみをサンダロアに置き換えて製造した害虫防除用線香B、殺虫成分拡散増強剤のみをバグダノールに置き換えて製造した害虫防除用線香C、殺虫成分拡散増強剤のみをレボサンドールに置き換えて製造した害虫防除用線香D、殺虫成分拡散増強剤のみをサンダルマイソルコアに置き換えて製造した害虫防除用線香E、殺虫成分拡散増強剤のみをブラマノールに置き換えて製造した害虫防除用線香Fを作成した。これらの線香を害虫防除用線香Aと同様に6畳の部屋で試験したところ、いずれも同様に白檀の香りが持続し、刺激臭が無く、リラックス感をもたらすとともに、その間蚊に悩まされることがないことが確認出来た。 【実施例2】 【0022】 実施例1に準じて、表1に示す各種の害虫防除用線香(効力増強剤、着色剤、防黴剤及び水の配合は実施例1と同じ)を作製し、以下の項目について性能を評価した。結果を表2に示す。 【0023】 <官能試験> 実施例1~10及び比較例1~5の害虫防除用線香を、6畳の部屋に設置し、着火して燃焼させた。そして、線香から発散される香りを10人のパネラーによって評価した。評価項目は、「刺激緩和性」及び「香りの嗜好性」とし、最高点を10点、最低点を1点とし、各線香について10人のパネラーの平均点を求めた。 【0024】 <拡散速度> 実施例1~10及び比較例1~5の害虫防除用線香を、広さ6畳の部屋の四隅のうちの一角に設置し、着火して燃焼させた。シリカゲルを充填したガラス管を真空ポンプに接続して、線香の設置位置から部屋の対向する角へ伸ばした対角線上の、線香の設置位置から2m及び4m離れた場所の高さ1mの空気を、着火後30分まで10分毎に経時的に採取した。ガラス管内に捕集された殺虫成分を溶剤で溶出し、ガスクロマトグラフィーで分析することによって殺虫成分量を定量し、開始~10分後に2m離れた位置で捕集された量が、4m離れた位置において、開始~10分後に検出された場合を◎、10分後~20分後に検出された場合を○、20分後~30分後に検出された場合を△として評価した。 【0025】 【表1】 [図:0001403672000001.jpg] 【0026】 【表2】 [図:0001403672000002.jpg] 【0027】 試験の結果、殺虫成分拡散増強剤を有する本発明は、それを含まない比較例に比べて殺虫成分の遠方への拡散性が優れることから、より広範囲にわたって高い即効性を有する害虫防除用線香と成り得ることが示された。そして、その殺虫成分拡散増強効果は特にジャバノールを含む場合に顕著であり、有効な成分であると考えられた。 また本発明1と比較例1を対比すると、殺虫成分拡散増強剤の配合は、殺虫成分拡散性の増強効果とともに、刺激緩和剤による燻煙時の刺激性の緩和効果と、香料成分の配合による嗜好性の評価をより高める効果を示しており、その際の香料成分としては、ガラクソリド、キャシュメラン、イソ-イースーパー、イソロンギホラノン、メチルヨノン、サンタロール、サンダルウッドオイル、及びシス-3-ヘキセノールの配合がより有効であった。 このように殺虫成分拡散増強剤のみならず、刺激緩和剤と所定の香料成分が共存することでより各々の効果が高まり優れた害虫防除用線香と成り得ることが示された。」 ウ 判断 発明の詳細な説明の全体の記載事項からみて、本件発明1の害虫防除用線香は、本件発明1で特定される本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を配合することにより、ピレスロイド系殺虫成分の拡散性を高めたものということができる(摘記a、b)。 発明の詳細な説明には、本件発明1で用いられるピレスロイド系殺虫成分についての例示記載がある(摘記c、【0007】)。 また、発明の詳細な説明には、線香基材について、1.0~99質量%等の範囲で適宜配合すればよいこと、殺虫成分拡散増強剤と相まって、殺虫成分の拡散性が更に高まり広範囲の害虫防除が可能となったものであることが記載されている(摘記c、【0009】) さらに、発明の詳細な説明には、本件発明1で用いられるトリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物の例示記載(摘記c、【0010】)があり、発明の詳細な説明の【0010】には、「これらの化合物は、・・・ピレスロイド系殺虫成分の拡散を高めるという効果は今まで知られていなかったものである」と記載されるとともに、同【0011】には、「殺虫成分拡散増強剤のうち、[1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノールが特に好適に用いられ、害虫防除用線香の燃焼状態と相まって使用時に効率よく殺虫成分を拡散させる点については、環構造を含めた特有の化学的特性が拡散性に関与しているものと推察される」と記載されている(摘記c)。 加えて、実施例として、拡散速度の測定試験において、4種のピレスロイド系殺虫成分、本件9種化合物のうち、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール(「サンダルマイソルコア」)を除く全ての化合物からなる殺虫成分拡散増強剤、及び本願発明1で特定される量の線香基材を含有する実施例の害虫防除用線香が、殺虫成分拡散増強剤を含有しない比較例の害虫防除用線香と比較して、ピレスロイド系殺虫成分の遠方への拡散性に優れることが具体的に示されている(摘記d)。 そして、殺虫剤の技術分野において、ピレスロイド系殺虫成分は一群のものとして認識されており(例えば、甲3の207頁、甲4の【0011】、甲5の【0012】を参照。)、実施例において拡散性に優れることが具体的に記載されているもの以外のピレスロイド系殺虫成分が拡散性において同様の挙動を示さないという技術的な理由もないから、当業者はそれら成分についても実施例に具体的に記載されているものと同様に、ピレスロイド系殺虫成分の遠方への拡散性を示すと認識できるといえる。 また、実施例において拡散性に優れることが具体的に示されていない上記サンダルマイソルコアについても、拡散性に優れることが具体的に示されている化合物ときわめて類似した化学構造を有し(いずれの化合物も、シクロペンチル又はシクロペンテニル環(ビシクロ[3.1.0]ヘキサンも当該環の構造を有するといえる。)の所定の位置に3つのメチル基を有する点、鎖部分の環から4つ目の炭素原子に結合するヒドロキシ基を有し、同3つ目の炭素原子に結合するメチル基又はエチル基を有するアルキル又はアルケニル基が前記環の所定の位置に結合する。)、発明の詳細な説明に記載される(摘記c、【0010】)とおり、サンダルウッド様香気を持つという類似の性質を有することに鑑みれば、当業者は、それら化合物と同様に、ピレスロイド系殺虫成分の遠方への拡散性に優れることを認識できるといえる。 してみると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。 本件発明3は、本件発明1について、「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物が、[1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサ-3-イルメチル)シクロプロピル]メタノールである」ことを、 本件発明4は、本件発明1又は3について、「さらに、香料及び/又は刺激緩和剤を含有する」ことを、 本件発明5は、本件発明4について、「香料が、ガラクソリド、キャシュメラン、イソ-イースーパー(7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン)、イソロンギホラノン、メチルヨノン、シス-3-ヘキセノール、サンタロール、及びサンダルウッドオイルから選ばれた少なくとも1種である」ことを、 本件発明6は、本件発明4について、「刺激緩和剤が、N-フェニルアセトアミド及び/又はN,2-ジメチル-N-フェニルブタンアミドである」ことを、 本件発明7は、本件発明1、3~6のいずれか一つについて、「線香基材が、植物性粉末としての除虫菊抽出粕粉、柑橘類の表皮粉、茶粉末、ココナッツシェル粉末、白檀粉末、及び/又は植物性粘結剤としてタブ粉から選ばれた少なくとも1種を含有する」ことを、 それぞれ特定するものであるところ、特定されるいずれの成分についても、本件明細書の実施例において本発明1~10の何れかにおいて配合されている成分であり(なお、実施例における「茶抽出粕粉」は、「茶粉末」に相当するといえる。)、ピレスロイド系殺虫成分の遠方への拡散性に優れることが具体的に示されているから、本件発明3~7は、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。 また、本件発明8は、「ピレスロイド系殺虫成分、及び線香基材を含有する害虫防除用線香に、さらにトリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物を含有させる前記ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法」であって、含有させる上記化合物、及び線香に配合される線香基材の量について本件発明1と同じ特定がされているところ、上述のとおり、本件明細書には、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物を配合することにより、ピレスロイド系殺虫成分の拡散性を高めたことが記載され、当業者は、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物によって、ピレスロイド系殺虫成分の遠方への拡散性を示すと認識できるといえるから、本件発明8は、本件発明1と同様に、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。 エ まとめ したがって、本件発明1、4~8は発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、理由1は理由がない。 (2)理由2(実施可能要件)について 上記(1)で述べたとおりであるから、発明の詳細な説明の記載に基づいて、当業者は、本件発明8で特定される本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を含有させることにより、本件発明8で特定される量の線香基材が配合された害虫防除用線香基材についてピレスロイド系殺虫成分の拡散を増強することができるといえる。 してみると、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。 よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえるから、理由2は理由がない。 2 申立人が主張する申立理由について (1)甲各号証の記載事項 ア 甲1の記載事項(英語で記載された箇所は、当審合議体による訳文で摘記し、必要に応じて原文も併記する。) 1a)「サンダルウッドの匂いのする蚊取線香(原文:Sandalwood Scented Mosquito Coil)」(表題) 1b)「成分・・・ d-アレスリン」(製品情報の項の1~2行) イ 甲2の記載事項(英語で記載された箇所は、当審合議体による訳文で摘記し、必要に応じて原文も併記する。) 2a)「低煙 超強力 蚊取線香(原文:Low Smoke Super Power Anti-Mosquito Coils)」(表題) 2b)「この製品は、モグラ、ローズ及びサンダルウッドの香りの3本入りです。」(商品説明の項の2~3行) 2c)「成分・・・ プラレトリン」(製品情報の項の1~3行) ウ 甲3の記載事項 3a)「また,ピレスロイド系殺虫剤の代表的な製剤は,蚊取線香で,その歴史は古いが,今なお主要な製品である。」(207頁左欄5~7行) 3b)「蚊取線香の組成: 蚊取線香は,有効成分が1%前後で,木粉20~30%,茎粉20~30%,粘結剤20~30%,その他が数%で構成されている。なお,基本的な材料の構成は,次のごとくである。 [図:0001403672000003.jpg] 」(212頁左欄下から3行~213頁左欄) 3c)「蚊取線香の殺虫効力に関係する要因は燃焼温度で,線香の着火点からの距離と温度の関係を示すと図2のごとくである。 [図:0001403672000004.jpg] 」(213頁左欄12~14行及び図2) エ 甲4の記載事項 4a)「【0011】 本発明の蚊取線香には、薬剤として各種の殺虫、忌避成分の1種又は2種以上を組合せて含有することができる。例えば、除虫菊エキス、天然ピレトリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、アレスリン、トランスフルトリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメスリン、エトフェンプロックス、シフルスリン、デルタメスリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、エムペンスリン、シラフルオフェン、メトフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、ジクロルボス等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ等のカーバメート系化合物;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物;フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物;アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物;ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物;メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物;クロルフェナピル等のピロール系化合物;ベンジルアルコール、ハッカ油等の殺虫性精油類;ディート、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、p-メンタン-3,8-ジオール、シトロネラ油、ユーカリ油、ゲラニウム油、月桃油、蚊連草等の忌避剤等を挙げることができる。 これらの中でもピレスロイド系化合物がよく、天然ピレトリン、アレスリン、除虫菊エキス、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エムペンスリンが蚊取線香として用いるのに好ましい。 これらの薬剤は、蚊取線香に0.05~1重量%、好ましくは0.1~0.5重量%となるように含有させればよい。 【0012】 本発明の蚊取線香は、前記のポリアルキレングリコール、木炭粉、薬剤を結合剤等といっしょに均一に練合した後、渦巻状、棒状、螺旋状等の所定の形状に成型して製造すればよい。また予め基材のみで所定の形状を作り、これに薬剤を塗布、含浸させて製造してもよい。この際に必要に応じて、無機及び有機溶剤、乳化剤、可溶化剤等を用いてもよい。 製造時には、パーライト(真珠岩、黒曜岩、松脂岩等を焼成膨張させたもの)、ラジオライト(珪藻土)、ホワイトカーボン(ケイ酸)、炭酸カルシウム等の無機粉末;スギ、クスノキ、モミノキ、ビャクダン、トウヒ、シラカバ等の木粉末;除虫菊抽出粉末(粕粉)、ココナツパウダー等の植物粉末;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類、タブノキ皮抽出粉(タブ粉)、デンプン、スターチ等のデンプン類、アラビアゴム等の天然系高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物等の結合剤;硝酸カリウム、酢酸鉛等の助燃剤;エタノール、ケロシン、水等の溶剤等を用いることができる。 【0013】 この他にも必要に応じて、ピペロニルブトキサイド、N-プロピルイゾーム、MGK-264、サイネピリン500、リーセン384、IBTA、S-421等の効力増強剤;フェネチルイソチオシアネート、ハイミックス酸ジメチル、硝酸カリウム、二酸化マンガン等の揮散率向上剤;POEソルビタン脂肪酸エステル、POEアルキルエーテル、POE硬化ヒマシ油等の界面活性剤;イソプロピルメチルフェノール、パラオキシ安息香酸エステル、PCMX、IPBC、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、およびこれらの塩等の殺菌、防黴剤;メタクリル酸ラウリル、ゲラニルクロリネート、カテキン、ポリフェノール等の消臭剤;マカライドグリーン、各種法定色素等の色素;α-ピネン、β-ピネン、リモネン、リナロール、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、オイゲノール、ラベンダー、シトラール、シトロネラール、キャラ、ビャクダン、緑茶、ミューゲ(すずらん)、竹、リーフィーグリーン、ひのき、梅、ユーカリ、白桃、さくら等の香料等を配合してもよい。」 4b)「【0017】試験例2 渦巻線香製造機を用いて、表2に記載した原料からなる渦巻状の蚊取線香を製造した。・・・ 【0018】 [図:0001403672000005.jpg] 」 オ 甲5の記載事項 5a)「【請求項1】 白檀エキス、伽羅エキス、白檀粉末及び伽羅粉末の少なくとも1つが配合されたことを特徴とする蚊取線香。」 5b)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】周知のように、蚊取線香を燃焼させると、独特の刺激臭が発生するが、これは、主に、支燃剤に含まれる松、杉等の粉末によるところが大きい。支燃剤に含まれる除虫菊抽出粉は上記粉末に比べれば刺激臭は少ないものの、木粉由来の煙の刺激臭は必ずしも緩和できてはいなかった。 【0004】本発明は、上記事情に鑑みて成されたもので、蚊取線香の燃焼時に発生する刺激臭を抑制する蚊取線香を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明に係わる蚊取線香は、白檀エキス、伽羅エキス、白檀粉末及び伽羅粉末の少なくとも1つが配合されたものである。」 5c)「【0007】本発明は、蚊取線香と同じく支燃剤の燃焼により効力を発揮する所謂お香が、白檀、伽羅、桂皮、丁子等の粉末又は香料を含み、特に、白檀及び伽羅が人に対して安心感を与える香りを放出することに着目したものである。そして、白檀及び伽羅のエキス、粉末を蚊取線香に配合することにより、蚊取線香に燃焼時に新たに配合された白檀及び伽羅の香りを放出させることにより、従来の蚊取線香が放出する燃焼時の刺激臭を抑制しようとするものである。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は、支燃剤、有効成分、香料、色素、防カビ剤及び結合剤を含有する蚊取線香に対して、白檀エキス、伽羅エキス、白檀粉末及び伽羅粉末の香料、粉体のうち少なくとも1つを配合したものである。 【0009】これら香料、粉体は、蚊取線香と同じく燃焼により効力を発揮するお香に配合されているものである。本発明は、お香の香りを蚊取線香に持たせるべく、お香の配合成分である上記香料、粉体を蚊取線香に配合させたものである。 【0010】蚊取線香の燃焼時に発生する香りの程度は、配合される香料、粉体に比例するが、蚊取線香はその大きさ、使用形態から、通常一般的に使用されるものを一例とすれば、約7時間に亘って連続燃焼されるため、あまり強い香りでは、不快感を伴う。従って、配合される量は、支燃剤が通常50~80重量%配合されれいることを考慮して、エキスとしては、0.01~1.0重量%、粉末としては、0.1~70重量%、好ましくは、エキスとして、0.02~0.5重量%、粉末として、5~30重量%である。 【0011】なお、蚊取線香の構成のうち、支燃剤としては杉粉、除虫菊粉、タブ粉、木粉、有効成分としてはd1,d-T80-アレスリン、色素としてはマラカイトグリーン、防カビ剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、結合剤としてはコーンスターチ、タブ粉が使用されている。 【0012】上記有効成分は、以下に挙げるアレスリンの異性体であり、さらに他のピレスロイド系化合物を用いることができる。そのようなピレスロイド系化合物としては、フェノトリン(3-フェノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマート)、ペルメトリン(3-フェノキシベンジル dl-シス/トランス-2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロビニル)-シクロプロパンカルボキシレート)、レスメトリン((5-ベンジル-3-フリル)メチル d-シス/トランス-クリサンテマート)、アレスリン(dl-3-アリル-2-メチル-4-オキソ-2-シクロペンテニル dl-シス/トランス-クリサンテマート)、フタルスリン (1,3,4,5,6,7-ヘキサヒドロ-ジオキソ-2-インドリル dl-シス/トランス-クリサンテマート)、エムペントリン(1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル dl-シス/トランス-クリサンテマート)、1-エチニル-2-エチル-2-ペンテニル-2,2,3,3-テトラメチル-シクロプロパンカルボキシレート、1-エチニル-2-メチル-2-ペンテニル-2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロビニル)-シクロプロパンカルボキシレート、プラレトリン((+)-2-メチル-4-オキソ-3-プロパルギルシクロペント-2-エニル d-シス/トランス-クリサンテマート)、テフルスリン(2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メチルベンジル-3-(2’-クロロ-3’,3’,3’-トリフルオロ-1-プロペニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート)、ベンフルスリン(2,3,5,6-テトラフルオロベンジル-3-(2,2-ジクロロビニル)-2,2-ジメチルシクロプロパンカルボキシレート)およびこれらの化合物の異性体、誘導体および類縁体などが用いられ、これらピレスロイド系化合物より選択した一種以上の化合物を、蚊取線香(殺虫線香)に配合できる。 【0013】本発明における蚊取線香には、通常用いられている効力増強剤、揮発率向上剤、消臭剤、香料、着色剤等の各種添加剤を任意に添加することができる。効力増強剤としては、ピペロニルプトキサイド、N-プロピルイゾーム、MGK-264、サイネピリン222、サイネピリン500、リーセン384、IBTA、S-421等が、揮散率向上剤としては、フエネチルイソチオシアネート、ハイミツクス酸ジメチル、硝酸カリ、二酸化マンガン等が、消臭剤としてはラウリル酸メタクリレート(LMA)等が、香料としては、シトラール、シトロネラール等が夫々例示できる。 【0014】本発明において、蚊取線香とは、殺虫、殺ダニ効果を有する殺虫、殺ダニの防除を行うための線香を意味するものであり、蚊の駆除に限定されるものではない。代表的な対象害虫は、ハエ、ノミ、ナンキンムシ、屋内塵埃ダニ、イエダニ、アカイエカ、ヒトスジシマカ、チカイエカ、ユスリカ、ヌカカ、チャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、ヤマトゴキブリ、クロゴキブリを例示しうる。」 5d)「【0015】 【実施例】以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。表1は本発明の蚊取線香(発明品A~E)と従来の蚊取線香(従来品)とを刺激臭において対照比較したものであり、表1に記載の配合割合の蚊取線香(1本当たり約13g)を作成し、直径20cm、高さ40cmのガラスシリンダ内でそれぞれ燻煙させたものである。 【0016】 【表1】 [図:0001403672000006.jpg] 」 カ 甲6の記載事項 6a)「【請求項1】 式、 【化1】 [図:0001403672000007.jpg] 式中、R1からR7は独立してH、メチルあるいはエチルであり、R8+R9はメチレン(-CH2-)あるいは単結合を表わし、またはR1+R2は-(CH2)n-(nは3あるいは4である)も形成することができ、R3+R5あるいはR5+R7はメチレン、単結合あるいは2個の水素も表わすことができ、分子中に必ず少なくとも1個のシクロプロパン環が存在しなければならず、そして側鎖は飽和であることができ、またはα,β位かβ、γ位に一つの二重結合を含むことができる、を有する化合物。」 6b)「【請求項5】 〔1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ〔3.1.0〕ヘキシ-3-イルメチル)シクロプロピル〕メタノール。」 6c)「【0025】カンホレニンアルデヒド誘導体に1個か2個のこのようなシクロプロパン環を付け加えると、特に新規誘導体のにおいおよび実在感(即ち、においの存続)が修飾される。一般式Iの新規アルコールは種々なウッディなにおいの方向を発揮し、その殆どはびゃくだんのにおいを及ぼすが、あるものはまさにウッディ/アンバー様である。 【0026】これら新規化合物のうち、〔1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ〔3.1.0〕ヘキシ-3-イルメチル)シクロプロピル〕メタノールは最も自然で、最も強いかつ最も持続性のあるびゃくだんのにおいを持ち、そしてこれはびゃくだん臭を示す現存の合成(商業上の)未加工原料のいずれよりも勝れている。この化合物の四つの立体異性体のすべてがその全体を通じての自然のクリーム様、花香調、ウッディなにおいに貢献するが、(3″R)-ジアステレオマーの一つは合成された立体異性体の中で二番目に強いものよりもおよそ34倍強力な主臭ベクトルを構成することが分かった。」 キ 甲7の記載事項 7a)「【請求項1】 一般式(1) 【化1】 [図:0001403672000008.jpg] (式中、Rは炭素数1~3の直鎖または分岐したアルキル基を示す)で表される(E)-(R)-2-アルキル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オール誘導体。」 7b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は新規な光学活性化合物である(E)-(R)-2-アルキル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オール誘導体、その製造方法、およびその化合物を含有する香料組成物に関する。 (E)-(R)-2-アルキル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オール誘導体は、白檀様の優れた匂いを有する化合物であり、これを含有する本発明の香料組成物は、各種香粧品類、芳香剤、その他保健衛生材料等に有効に使用できるものである。 【0002】 【従来の技術】サンダルウッド油は、インド東部を主産地とする白檀から得られる精油で、香料成分として珍重されている。しかし、環境や資源保護の観点から、白檀の伐採には制限が加えられ、天然のサンダルウッド油の生産量は限られている。このため、従来より、この代替品として、化学合成により得られるサンダルウッド油香気成分の開発が行われてきた。 【0003】天然のサンダルウッド油の香気に特有な主成分は、α-およびβ-サンタロールであることが知られている。しかし、サンタロールは、その化学構造上、工業的に大量に合成することが困難である。そこで、近年になって、サンタロールと異なる化学構造を有するが、香気は非常によく似ている物質が合成されるようになった。 【0004】このような香気を有する物質の一つとして、2-アルキル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オール誘導体が知られており(特公昭56-361676 号公報、特開昭55-139330 号公報)、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オールは大洋香料(株)からサンタリノールとして、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オールはIFF(International Flavor and Fragrance)社からバクダノール(登録商標)として販売されている。」 ク 甲9の1の記載事項 9の1a)「フィックの第2法則 第2法則は、非定常状態拡散、すなわち、拡散における濃度が時間に関して変わる時に使われる。実際の拡散の状態は、非定常状態がほとんどである。拡散係数Dが定数のとき、濃度cの時間変化は次の拡散方程式で表される: [図:0001403672000009.jpg] これは広義の連続の式と等価である。あるいは1次元なら、 [図:0001403672000010.jpg] 記号は第1法則と同様である。 導出 [図:0001403672000011.jpg] フィックの第2法則導出模式図 位置と濃度の時間変化が、それぞれdxとdcである 第2法則は、第1法則から導く。第1法則で導いたのと同じように、単位面積の断面を持つパイプ状の物体を想定する。xとx+dxにはさまれた体積dxの部分の濃度をcとすると、その中の溶質の量はcdxと書ける。この時間的変化∂c/∂t dxを考える。 この時、x+dxの境界を通して注目している領域に流れ込む溶質の量はJ(x+dx)、この領域からxの境界を通して流れ出る溶質の量はJ(x)である。これより、 [図:0001403672000012.jpg] ここで第1法則より [図:0001403672000013.jpg] [図:0001403672000014.jpg] であるから、これらを式(1)に代入してフィックの第2法則が導き出される。 ・Dが定数の場合は、 [図:0001403672000015.jpg] となり、比較的容易に解くことができる。初期条件および境界条件によって、いくつかの解がある。」(フィックの第2法則の項) 9の1b)「 [図:0001403672000016.jpg] 」(拡散係数の項) 9の1c)「アインシュタイン・ストークスの式 ガス分子などの分子拡散の場合、拡散現象はブラウン運動による説明ができ、拡散係数Dは次式で与えられる[5]。この式をアインシュタイン・ストークスの式(Stokes-Einstein equation)という[3]。 [図:0001403672000017.jpg] ・k :ボルツマン定数 ・T :温度 ・B :移動度 ・μ :粘性 ・a :分子半径」(アインシュタイン・ストークスの式の項) ケ 甲9の2の記載事項 9の2a)「 [図:0001403672000018.jpg] 」(粘度の例の項) (2)引用発明 ア 甲1発明 甲1には、市販の商品に関する事項が記載されているところ、その記載事項(摘記1a)及び1b))からみて、2014年8月の時点において当該商品が販売されることによって、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が公然と実施されていたと認める。 「「Sandalwood Scented Mosquito Coil」と称する、d-アレスリンを含有成分とするサンダルウッドの匂いのする蚊取線香。」 イ 甲2発明 甲2には、市販の商品に関する事項が記載されているところ、その記載事項(摘記2a)~2c))からみて、2012年3月の時点において当該商品が販売されることによって、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が公然と実施されていたと認める。 「「Low Smoke Super Power Anti-Mosquito Coils」と称する、プラレトリンを含有成分とするサンダルウッドの香りのする低煙、超強力の蚊取線香。」 ウ 甲4発明 甲4には蚊取線香についての記載がある(摘記4a及び4b)ところ、試験例2の記載(摘記4b)からみて、以下の二つの発明(以下「甲4発明1」及び「甲4発明2」という。)が記載されていると認める。 「以下の表2に示される実施例11及び12の原料からなる渦巻状の蚊取線香。 [図:0001403672000019.jpg] 」(「甲4発明1」) 「渦巻線香製造機を用いる、以下の表2に示される実施例11及び12の原料からなる渦巻状の蚊取線香の製造方法。 [図:0001403672000020.jpg] 」(「甲4発明2」) エ 甲5発明 甲5には蚊取線香についての記載がある(摘記5a~5d)ところ、実施例の表1の記載(摘記5d)からみて、以下の発明(以下「甲5発明1」という。)が記載されていると認める。 「以下の表1のBに示される配合成分からなる蚊取線香。 [図:0001403672000021.jpg] 」 また、甲5発明1を製造するに際し、配合成分を配合することは自明なので、甲5には、以下の発明(以下「甲5発明2」という。)が記載されていると認める。 「以下の表1のBに示される配合成分を配合する蚊取線香の製造方法。 [図:0001403672000022.jpg] 」 (3)申立理由1及び2について ア 対比・判断 (ア)本件発明1について a 甲1発明について 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「d-アレスリン」は本件発明1の「ピレスロイド系殺虫成分」に相当する。 甲1発明の「蚊取線香」は本件発明1の「害虫防除用線香」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、 「ピレスロイド系殺虫成分を含有する害虫防除用線香」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-1-1> 害虫防除用線香の含有成分について、本件発明1は「線香基材」を含有し、その配合量について、「前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合され」と特定しているのに対し、甲1発明では線香基材を含有すること及びその配合量が不明である点。 <相違点1-1-2> 害虫防除用線香の含有成分について、本件発明1は「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物」を含有し、当該化合物が本件9種化合物「から選ばれた少なくとも1種である」と特定しているのに対し、甲1発明ではかかる特定がされていない点。 事案に鑑み、まず相違点1-1-2について検討する。 甲1発明はサンダルウッドの匂いのする蚊取線香であるが、その匂いがどのような物質によるものであるかは不明であり、サンダルウッドの匂いがすればそれが本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物によるものであるという本件出願日における技術常識もない。 したがって、甲1発明が本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を含有するものであるとはいえない。 よって、相違点1-1-2は実質的な相違点である。 また、甲6には、本件9種化合物のうちの一つである「〔1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ〔3.1.0〕ヘキシ-3-イルメチル)シクロプロピル〕メタノール」等の一般式Iで表される化合物がびゃくだんのにおいを及ぼし、〔1-メチル-2-(1,2,2-トリメチルビシクロ〔3.1.0〕ヘキシ-3-イルメチル)シクロプロピル〕メタノールは、最も自然で、最も強いかつ最も持続性のあるびゃくだんのにおいを持ち、そしてこれはびゃくだん臭を示す現存の合成(商業上の)未加工原料のいずれよりも勝れている旨が(摘記6a~6c)、甲7には、本件9種化合物に該当し、又は当該化合物を包含する2-メチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オール及び一般式(1)で表される(E)-(R)-2-アルキル-4-(2,2,3-トリメチルシクロペント-3-エン-1-イル)-2-ブテン-1-オール誘導体が白檀様の優れた匂い又はサンダルウッド油の香気を有する旨が(摘記7a及び7b)、それぞれ記載されているが、甲1発明のサンダルウッドの匂いがどのような物質によるものであるかは不明であり、すでにサンダルウッドの匂いがする蚊取線香にさらに甲6及び甲7に記載の上記化合物を配合したり、甲1発明のサンダルウッドの匂いの元となる物質は不明であって、仮にそれを特定できたとしてもそれを甲6及び甲7に記載の上記化合物に変更する動機付けはないから、甲1発明において、相違点1-1-2に係る技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 甲3には、ピレスロイド系殺虫剤の代表的な製剤が蚊取線香であること、蚊取線香の組成、基本的な材料の構成、蚊取線香の着火点からの距離と温度の関係等についての記載がある(摘記3a~3c)に過ぎず、かかる記載は上記判断を左右するものではない。 そして、本件発明1は、相違点1-1-2に係る技術的事項を備えたものとすることによって、ピレスロイド系殺虫成分の拡散に優れるという(本件明細書、【0006】、【0026】及び【0027】)、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点1-1-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載される公然実施をされた発明であるとはいえず、当該発明並びに甲3、甲6及び甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 b 甲2発明について 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「プラレトリン」は本件発明1の「ピレスロイド系殺虫成分」に相当する。 甲2発明の「蚊取線香」は本件発明1の「害虫防除用線香」に相当する。 したがって、本件発明1と甲2発明とは、 「ピレスロイド系殺虫成分を含有する害虫防除用線香」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-2-1> 害虫防除用線香の含有成分について、本件発明1は「線香基材」を含有し、その配合量について、「前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合され」と特定しているのに対し、甲2発明では線香基材を含有すること及びその配合量が不明である点。 <相違点1-2-2> 害虫防除用線香の含有成分について、本件発明1は「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物」を含有し、当該化合物が本件9種化合物「から選ばれた少なくとも1種である」と特定しているのに対し、甲2発明ではかかる特定がされていない点。 事案に鑑み、まず相違点1-2-2について検討する。 甲2発明はサンダルウッドの香りのする蚊取線香であるが、その香りがどのような物質によるものであるかは不明であり、サンダルウッドの香りがすればそれが本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物によるものであるという本件出願日における技術常識もない。 したがって、甲2発明が本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を含有するものであるとはいえない。 よって、相違点1-2-2は実質的な相違点である。 また、甲6及び甲7には、上記aで述べた事項が記載されているが、甲2発明のサンダルウッドの香りがどのような物質によるものであるかは不明であり、すでにサンダルウッドの香りがする蚊取線香にさらに甲6及び甲7に記載の上記化合物を配合したり、甲2発明のサンダルウッドの香りの元となる物質は不明であって、仮にそれを特定できたとしてもそれを甲6及び甲7に記載の上記化合物に変更する動機付けはないから、甲2発明において、相違点1-2-2に係る技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 甲3については、上記aで述べたのと同様、上記判断を左右しない。 そして、本件発明1は、相違点1-2-2に係る技術的事項を備えたものとすることによって、ピレスロイド系殺虫成分の拡散に優れるという(本件明細書、【0006】、【0026】及び【0027】)、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点1-2-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載される公然実施をされた発明であるとはいえず、当該発明並びに甲3、甲6及び甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 c 甲4発明1について 本件発明1と甲4発明1を対比する。 甲4発明1の「アレスリン」は本件発明1の「ピレスロイド系殺虫成分」に相当する。 甲4発明1の「木炭粉」、「タブ粉」、「炭酸カルシウムと珪藻土の混合物」、「カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩とコーンスターチの混合物」は、本件発明1の「線香基材」に相当し、甲4発明1の上記各成分の合計含有量は、97.30重量%(実施例11)及び94.30重量%(実施例12)と計算されるところ、本件発明1の「害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合され」ることに相当する。 甲4発明の1「蚊取線香」は本件発明1の「害虫防除用線香」に相当する。 したがって、本件発明1と甲4発明1とは、 「ピレスロイド系殺虫成分と、 線香基材と、 を含有する害虫防除用線香であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合される害虫防除用線香。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-4> 害虫防除用線香の含有成分について、本件発明1は「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物」を含有し、当該化合物が本件9種化合物「から選ばれた少なくとも1種である」と特定しているのに対し、甲4発明1はかかる成分を含有しない点。 上記相違点について検討する。 甲4には、製造時にビャクダン等の木粉末等を用いることができることが記載されており(摘記4a)、蚊取線香に、必要に応じて無機及び有機溶剤、乳化剤、可溶化剤、効力増強剤、揮散率向上剤、界面活性剤、殺菌、防黴剤、消臭剤、色素、香料等を配合してもよいことが記載され、当該香料としてα-ピネン、β-ピネン、リモネン、リナロール、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、オイゲノール、ラベンダー、シトラール、シトロネラール、キャラ、ビャクダン、緑茶、ミューゲ(すずらん)、竹、リーフィーグリーン、ひのき、梅、ユーカリ、白桃、さくら等が例示されている(摘記4a)。 また、甲6及び甲7には、上記aで述べた事項が記載されている。 しかし、そもそも甲4発明1は木粉末及び香料に相当する成分を含有するものではないところ、甲4に記載された必要に応じて配合してもよい成分は多岐にわたり、木粉末及び香料として記載された物質もビャクダン以外にも多数例示されている。してみると、配合してよい成分の中から特にビャクダンの木粉末又は香料を追加成分として選択して、これを加える特段の動機付けがあるとはいえないし、さらに、当該香料として甲6又は甲7に記載の化合物を選択することも当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、甲4発明1において、相違点1-4に係る技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 甲3については、上記aで述べたのと同様、上記判断を左右しない。 そして、本件発明1は、相違点1-4に係る技術的事項を備えたものとすることによって、ピレスロイド系殺虫成分の拡散に優れるという(本件明細書、【0006】、【0026】及び【0027】)、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲3、甲4、甲6及び甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 d 甲5発明1について 本件発明1と甲5発明1を対比する。 甲5発明1の「dl,d-T80 アレスリン」は本件発明1の「ピレスロイド系殺虫成分」に相当する。 甲5発明1の「杉粉」、「除虫菊粉」、「タブ粉」及び「木粉」は、本件発明1の「線香基材」に相当し、甲5発明1の上記各成分の合計含有量は、99.0重量%と計算されるところ、本件発明1の「害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合され」ることに相当する。 甲5発明の1「蚊取線香」は本件発明1の「害虫防除用線香」に相当する。 したがって、本件発明1と甲5発明1とは、 「ピレスロイド系殺虫成分と、 線香基材と、 を含有する害虫防除用線香であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合される害虫防除用線香。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1-5> 害虫防除用線香の含有成分について、本件発明1は「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物」を含有し、当該化合物が本件9種化合物「から選ばれた少なくとも1種である」と特定しているのに対し、甲5発明1はかかる成分を含有しない点。 上記相違点について検討する。 甲5には、白檀エキス、伽羅エキス、白檀粉末及び伽羅粉末の少なくとも1つが配合されたことを特徴とする蚊取線香の発明に関する事項が記載されている(摘記5a~5d)ところ、蚊取線香の燃焼時に発生する刺激臭を抑制する蚊取線香を提供するという課題(摘記5b、【0004】)に対して、白檀及び伽羅のエキス、粉末を蚊取線香に配合することにより、蚊取線香に燃焼時に新たに配合された白檀及び伽羅の香りを放出させることにより、従来の蚊取線香が放出する燃焼時の刺激臭を抑制しようとすることによって、当該課題を解決したものであり(摘記5b、【0005】、摘記5c、【0007】)、したがって、白檀エキス、伽羅エキス、白檀粉末及び伽羅粉末の少なくとも1つが配合されることを必須の事項とするものである(摘記5a)。 してみると、甲5発明1が含有する白檀エキスは、甲5に記載の発明において必須の成分として配合され、それによって甲5に記載の課題を解決したものといえるから、甲6及び甲7に上記aで述べた事項が記載され、さらに、甲7に、サンダルウッド油について、代替品として、化学合成により得られるサンダルウッド油香気成分の開発が行われてきたことが記載されている(摘記7b)としても、甲5発明1が含有する白檀エキスに代えて、甲6及び甲7に記載されたびゃくだんのにおい、白檀様の優れた匂い又はサンダルウッド油の香気を有する化合物を含有するものとすることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 また、甲5に通常用いられている効力増強剤、揮発率向上剤、消臭剤、香料、着色剤等の各種添加剤を任意に添加することができることが記載されている(摘記5c、【0013】)が、当該任意に添加することができる物質は多岐にわたり、その中から、特に香料を選択して、さらに当該香料として甲6又は甲7に記載の化合物を甲5発明1に加えることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、甲5発明1において、相違点1-5に係る技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 甲3については、上記aで述べたのと同様、上記判断を左右しない。 そして、本件発明1は、相違点1-5に係る技術的事項を備えたものとすることによって、ピレスロイド系殺虫成分の拡散に優れるという(本件明細書、【0006】、【0026】及び【0027】)、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明1は、甲3及び甲5~7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件発明3~7について 本件発明3~7は、本件発明1をさらに限定するものである。 したがって、本件発明3~7は、本件発明1と同様に、甲1又は甲2に記載される公然実施をされた発明であるとはいえず、また、甲1又は甲2に記載される公然実施をされた発明及び甲3~甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明8について a 甲4発明2について 上記(ア)cで述べたことを考慮して、本件発明8と甲4発明2を対比すると、両者は、 「ピレスロイド系殺虫成分、及び線香基材を含有する害虫防除用線香に関する方法であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合される方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-4> 本件発明8は「害虫防除用線香に、さらにトリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物を含有させる」、「ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法」であって、当該化合物が本件9種化合物「から選ばれた少なくとも1種である」のに対し、甲4発明2は「渦巻状の蚊取線香の製造方法」である点。 上記相違点について検討するに、甲4、甲6及び甲7には、ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法に関する記載・示唆はなく、ましてや、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を含有させることによって、ピレスロイド系殺虫成分の拡散が増強されることについての記載・示唆はない。 したがって、甲4発明2において、相違点8-4に係る技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 甲3については、上記(ア)aで述べたのと同様、上記判断を左右しない。 そして、本件発明8は、相違点8-4に係る技術的事項を備えたものとすることによって、ピレスロイド系殺虫成分の拡散に優れるという(本件明細書、【0006】、【0026】及び【0027】)、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明8は、甲3、甲4、甲6及び甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 b 甲5発明2について 上記(ア)dで述べたことを考慮して、本件発明8と甲5発明2を対比すると、両者は、 「ピレスロイド系殺虫成分、及び線香基材を含有する害虫防除用線香に関する方法であって、 前記線香基材は、前記害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合される方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8-5> 本件発明8は「害虫防除用線香に、さらにトリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する化合物を含有させる」、「ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法」であって、当該化合物が本件9種化合物「から選ばれた少なくとも1種である」のに対し、甲5発明2は「蚊取線香の製造方法」である点。 上記相違点について検討するに、甲5~甲7には、ピレスロイド系殺虫成分の殺虫成分拡散増強方法に関する記載・示唆はなく、ましてや、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を含有させることによって、ピレスロイド系殺虫成分の拡散が増強されることについての記載・示唆はない。 したがって、甲5発明2において、相違点8-5に係る技術的事項を採用することが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 甲3については、上記(ア)aで述べたのと同様、上記判断を左右しない。 そして、本件発明8は、相違点8-5に係る技術的事項を備えたものとすることによって、ピレスロイド系殺虫成分の拡散に優れるという(本件明細書、【0006】、【0026】及び【0027】)、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものである。 よって、本件発明8は、甲3及び甲5~甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (エ)本件発明10について 本件発明10は、本件発明8をさらに限定するものである。 したがって、本件発明10は、本件発明8と同様に、甲3~甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書において、甲8の1~甲8の5を提示し、甲1~甲7に「殺虫成分拡散増強」という課題及び効果が記載されていなくても、本件発明1、3~8及び10は甲1~甲7に記載された事項に基づき容易に発明をすることができたものであると認定されるべきものである旨、殺虫成分拡散増強という効果自体疑わしい旨主張する。 しかし、本件発明1、3~8及び10が甲1又は甲2に記載される公然実施をされた発明及び甲3~甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないことは上記(ア)~(エ)で述べたとおりであり、ピレスロイド系殺虫成分の拡散増強作用は本件明細書の【0026】及び【0027】の記載によって具体的に確認できるので、その効果が疑わしいとはいえないから、上記主張は採用できない。 ウ まとめ したがって、本件発明1及び3~7は、甲1及び甲2に記載される本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるとはいえず、また、本件発明1、3~8及び10は、甲1及び甲2に記載される本件特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明、及び本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲3~甲7に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立理由1及び2は理由がない。 (4)申立理由3について ア 具体的な根拠の概要 申立人が主張する申立理由3の具体的な根拠の概要は、次のとおりである。 本件明細書並びに上申書において「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格及び/又はトリメチルシクロペンテニル骨格を有する“特定の”化合物を配合することにより、意外にもピレスロイド系殺虫成分の拡散性が高まる」旨主張しているが、かかる効果は自然法則に反する効果である。 本件発明において、ピレスロイド系殺虫成分が拡散するのは空気中であり、実施例によれば(本件明細書、【0024】)その拡散性の違いは燃焼地点(すなわち蚊取線香)から、2m以上離れたところで観測されているが、フィックの第2法則によれば、空気中のブラウン運動による拡散の場合、その分子に依拠しない外部パラメータとして拡散速度を変化させることができるのは、絶対温度だけである。 また、本件明細書において「害虫防除用線香の燃焼状態と相まって使用時に効率よく殺虫成分を拡散させる点については、環構造を含めた特有の化学的特性が拡散性に関与しているものと推察される。」(【0011】)などと書いてあるが、蚊取線香(着火点)から2mも離れた地点で観測できるほどの効果は、蚊取線香に通常内在しうるいかなる分子にも不可能である。 さらに、本件明細書と同様に空気中の殺虫成分をガスクロマトグラフィー(GC)で検出した学術論文である甲10には殺虫成分の定量値が試験ごとに振れていること、また、15分燃焼させただけではガスクロマトグラフィーの検出限界以下(“<0.0001”)であることも示されているから、「開始~10分後に2m離れた位置で捕集された量」(本件明細書、【0024】)を再現性良く測定することは不可能であり、◎、○、△などと正確に評価できるはずもない。 イ 検討 本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を配合することにより、ピレスロイド系殺虫成分の拡散性を高めることが、発明の詳細な説明に記載したものであることは上記(1)ウで述べたとおりである。 申立人の主張は、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を配合することにより、ピレスロイド系殺虫成分の拡散性が高まることが、自然法則であるフィックの第2法則に反するというものと解されるが、線香基材が害虫防除用線香の全体量に対して、1.0~99質量%配合された害虫防除用線香において、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を配合した場合としない場合とで、拡散の状態に違いが生じることがフィックの第2法則に反することが十分に説明されておらず、また、反するということもできない。実際、申立人が提示した甲9の1には、物質の組合せによって拡散係数が異なることが示されており(摘記9の1b)、該拡散係数は、濃度の時間変化を表す拡散方程式の係数である(摘記9の1a)から、少なくとも、物質の組合せが異なれば濃度の時間変化が異なる、すなわち、拡散性が異なるといえる。そして、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を配合した場合としない場合とで拡散性が異なることは、本件明細書に記載の実施例で示されるとおり、実際に生じている現象である。 したがって、本件発明が自然法則に反するとはいえない。 また、甲10に記載された試験結果は、本件発明とは異なる条件下における試験についてのものである上、試験毎に結果に若干のばらつきがあるのは通常であり、本件明細書に記載の実施例における◎、○及び△による評価は、上記(1)イの摘記dで示したとおり、ガスクロマトグラフィーによって殺虫成分量を定量して検出された時間により区分したものであって、そのような評価方法によればピレスロイド系殺虫成分の拡散性を高まることを評価できるといえる。 なお、申立人のその他の主張(蚊取線香の水分量の相違による気化する殺虫成分量の相違)は、具体的な根拠に欠けるから、採用できない。 ウ まとめ したがって、本件発明1、3~8及び10は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないとはいえないから、申立理由3は理由がない。 (5)申立理由4及び5について ア 具体的な根拠の概要 申立人が主張する申立理由4及び5の具体的な根拠の概要は、次のとおりである。 i)「ピレスロイド系殺虫成分の拡散性を高める」という解決すべき課題及び効果そのものが存在しないか、解決すべき課題が自然法則上解決不可能である。 ii)仮になんらかの未知の自然法則の下、拡散性を高めることが可能だとしても、その作用機序が不明であるため、甲13の記載からみて、“すべて”の「ピレスロイド系殺虫成分」の拡散性が高まるとは認められない。 イ 検討 本件発明1、3~8が発明の詳細な説明に記載したものであること、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえることは、上記(1)及び(2)で述べたとおりである。また、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を配合することにより、ピレスロイド系殺虫成分の拡散性を高めることを当業者が認識できるのであるから、本件発明10についても発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、本件発明1、3~7及び10についても、同様に、発明の詳細な説明は当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。 上記申立理由4及び5の具体的根拠のうち、i)については、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物を配合することにより、ピレスロイド系殺虫成分の拡散性を高めることが、発明の詳細な説明に記載したものであることは上記(1)ウで述べたとおりであり、それが自然法則に反するとはいえないことは上記(4)イで述べたとおりであるから、解決すべき課題及び効果そのものが存在しないとか、解決すべき課題が自然法則上解決不可能であるということはできない。 また、同じく、ii)については、特許権者による訂正の請求に付随して生じた事項ではなく、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して実質的に新たな内容を含むものであると認められるから,原則的には特許異議申立理由として採用できないものである。しかし、念のため検討するに、確かに、公知日が不明である甲13に「現在の合成ピレスロイドに、もはや共通の化学構造は存在しない。」との記載があり、拡散性を高める作用機序が不明であるとしても、殺虫剤の技術分野において、ピレスロイド系殺虫成分は一群のものとして認識されており(例えば、甲第3号証の207頁、甲第4号証の【0011】、甲第5号証の【0012】を参照。)、本件明細書に記載の実施例において、いくつかのピレスロイド系殺虫成分について拡散性に優れることが具体的に示されており、拡散性に優れることが具体的に記載されているもの以外のピレスロイド系殺虫成分が拡散性において同様の挙動を示さないという技術的な理由もないから、当業者は、それら成分についても同様に、遠方への拡散性を示すと認識できるといえる。 ウ まとめ したがって、本件発明1、3~8及び10について、発明の詳細な説明は当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえ、また、本件発明1、3~8及び10は発明の詳細な説明に記載したものといえるから、申立理由4及び5は理由がない。 (6)申立理由6について ア 具体的な根拠の概要及び検討 申立理由6の具体的な根拠の概要は、本件訂正前の請求項1及び8の「トリメチルビシクロ[3.1.0]ヘキサン骨格」を有す化合物、及び「トリメチルシクロペンテニル骨格」を有する化合物の意味する範囲が不明確であるというものであるところ、本件訂正によって上記各化合物は、本件9種化合物から選ばれた少なくとも1種である化合物に限定され、上記各化合物が明確でないということはできない。 イ まとめ したがって、本件発明1及び8は特許を受けようとする発明が明確であるから、申立理由6は理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8~10〕について訂正することを認める。 本件特許の請求項1、3~8及び10に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、取り消すことができない。 また、他に本件特許の請求項1、3~8及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項2及び9は、本件訂正により削除されたので、申立人による本件特許の請求項2及び9に係る特許についての特許異議の申立てについては、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701295

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