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特許異議申立

2022-701276

樹脂積層体及び樹脂積層体の製造方法

審判番号
2022-701276
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-041051外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7087466
請求日
2022年12月20日
審決日
2024年03月26日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7087466号発明「樹脂積層体及び樹脂積層体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第7087466号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、〔12~13〕について訂正することを認める。
特許第7087466号の請求項1~13に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第7087466号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、平成30年3月7日に出願され、令和4年6月13日に特許権の設定登録がされ、令和4年6月21日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和4年12月20日 :特許異議申立人加藤浩志(以下「申立人」という)による請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年 3月22日付け:取消理由通知書
令和5年 5月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 7月 3日 :申立人による意見書の提出
令和5年10月10日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年12月 5日 :特許権者による意見書の提出
令和6年 1月17日 :申立人による上申書の提出

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

令和5年5月25日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7087466号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.0095質量%以上5.0質量%以下含む」とあるのを、

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」に訂正する。

(請求項1の記載を引用する請求項4~11も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2に

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.0095質量%以上5.0質量%以下含む」とあるのを、

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」に訂正する。

(請求項2の記載を引用する請求項3~11も同様に訂正する。)

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項12に

「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)95.0~99.99質量%と表面スリップ剤(B2)0.01~5.0質量%を含む混合物100質量部」とあるのを、

「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)99.25~99.95質量%と表面スリップ剤(B2)0.05~0.75質量%を含む混合物100質量部」に訂正する。

(請求項12の記載を引用する請求項13も同様に訂正する。)

(4)本件訂正請求は、一群の請求項〔1~11〕、〔12~13〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否

(1)訂正事項1、2

訂正事項1、2は、訂正前の請求項1、2に記載の硬化被膜(B)が含むスリップ剤(B2)の含有量の数値範囲をより狭い範囲に限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0025】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

(2)訂正事項3

訂正事項3は、訂正前の請求項12に記載のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)の含有量の数値範囲及び表面スリップ剤(B2)の含有量の数値範囲をより狭い範囲に限定するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件明細書の【0025】~【0026】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。

3 小括

以上のとおりであるから、訂正事項1~3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、〔12~13〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明

上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~13に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であり、
前記樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が1500以上3200以下であり、
続きを表示(全49行)
前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含み、且つ、
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位が、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含み、
表面スリップ剤(B2)が、分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む、樹脂積層体。
【請求項2】
(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であり、
前記樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が1000以上15000以下であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化被膜の引張弾性率が100MPa以上1000MPa以下であり、
表面スリップ剤(B2)が、分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む、樹脂積層体。
【請求項3】
前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含み、且つ、
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位が、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含む、請求項2に記載の樹脂積層体。
【請求項4】
前記(b-2)由来の構造単位が、1,4-ブタンジオール由来の構造単位(X)を含む、請求項1又は3に記載の樹脂積層体。
【請求項5】
前記(b-1)由来の構造単位が、炭素数5~15の脂環式炭化水素基を有するポリイソシアネート由来の構造単位である、請求項1、3、4のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項6】
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位は、前記(b-1)由来の構造単位30~50モル%、前記(b-2)由来の構造単位10~50モル%、及び、前記(b-3)由来の構造単位3~30モル%を含む、請求項1、3~5のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項7】
前記(b-2)由来の構造単位が、少なくとも1,4-ブタンジオール由来の構造単位(X)を含み、
1,4-ブタンジオール由来の構造単位(X)の含有量と、1,6-ヘキサンジオール由来の構造単位(Y)の含有量が、
0.7≦〔(X)/[(X)+(Y)]〕≦1.0
を満足する、請求項1、3~6のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項8】
前記(b-3)由来の構造単位が、(メタ)アクリロイル基と水酸基との間に炭素数2~4のアルキレン基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の構造単位である、請求項1、3~7のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項9】
前記(b-3)由来の構造単位が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応物由来の構造単位、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとカプロラクトンとの付加反応物由来の構造単位、グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との付加反応物由来の構造単位、グリコールのモノ(メタ)アクリレート体由来の構造単位、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート由来の繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1、3~8のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項10】
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.1質量%以上0.75質量%以下含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【請求項11】
表面スリップ剤(B2)が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の樹脂積層体。
【化1】
[図:0001411260000001.jpg]
[式(1)中、Rfはパーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を表す。]
【請求項12】
樹脂積層体の製造方法であって、
下記工程(1)~(3)を順次行うことを含む樹脂積層体の製造方法。
工程(1):ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)99.25~99.95質量%と表面スリップ剤(B2)0.05~0.75質量%を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に塗布する。
工程(2):工程(1)の後、前記樹脂基材(A)に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる液状有機化合物(B3)が、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の総質量100質量%に対して、10質量%以下となるまで加熱する。
工程(3):工程(2)の後、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成し、前記樹脂基材(A)の表面に前記硬化被膜が形成された樹脂積層体を得る。
なお、前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)は、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含有し、かつ、前記(b-1)由来の構造単位、前記(b-2)由来の構造単位及び前記(b-3)由来の構造単位の合計量100モル%に対して、(b-1)由来の構造単位30~50モル%、(b-2)由来の構造単位10~50モル%、及び、(b-3)由来の構造単位3~30モル%を含有する。
【請求項13】
前記液状有機化合物(B3)が、アルコール、エステル、エーテル、ケトンから選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の樹脂積層体の製造方法。」

第4 取消理由通知(決定の予告)について

1 取消理由通知(決定の予告)の概要

取消理由2(進歩性)

本件特許の請求項1~13に係る発明は、引用文献1~3のそれぞれに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>

引用文献1:特開2012-36290号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2014-196430号公報(甲第2号証)
引用文献3:特開2010-222568号公報(甲第3号証)
引用文献4:特開2015-69015号公報(周知技術を示す文献、甲第4号証)
引用文献5:特開2014-106275号公報(周知技術を示す文献、甲第5号証)
引用文献6:特開2013-76029号公報(周知技術を示す文献、甲第6号証)
引用文献7:特開2013-233698号公報(周知技術を示す文献、甲第7号証)

2 当審の判断

(1)引用文献について

ア 引用文献1に記載された発明

引用文献1の特に【0036】、【0040】の表1、【0043】、【0052】及び表3を参照し、特に実施例9について着目すると、引用文献1には以下の2つの発明(以下、それぞれを「引用発明1-1」及び「引用発明1-2」という。)が記載されている。

<引用発明1-1>

「アクリルフィルムに被膜を備えた試料であって、
(b)成分としてイソホロンジイソシアネート(IPDI)399.6g、
(a)成分としてポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業製、商品名:プラクセルCD205PL、数平均分子量500)800g、
(c)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)46.4gを、
(a)成分/(b)成分/(c)成分モル比8/9/2で反応させて作成した、ウレタンアクリレートUA1(メチルエチルケトン30%含有)95重量%と、
ペンタエリスリトールテトラクリレート(PETA、架橋剤)4重量%と、
BYK-UV3570(表面調整剤)1重量%を混合した硬化性組成物を、
1μmのアクリルウレタンプライマー層を有するアクリルフィルム(フィルム厚75μm)にドライ膜厚が10μmになるよう塗布し、
60℃で30分間加熱し溶剤を揮発させた後、窒素雰囲気中で、電子線加速器(岩崎電気製エレクトロカーテンEC250/15/180L)175Kvで5Mrad電子線を照射して被膜を形成した、試料。」

<引用発明1-2>

「アクリルフィルムに被膜を備えた試料の作成方法であって、
(b)成分としてイソホロンジイソシアネート(IPDI)399.6g、
(a)成分としてポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業製、商品名:プラクセルCD205PL、数平均分子量500)800g、
(c)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)46.4gを、
(a)成分/(b)成分/(c)成分モル比8/9/2で反応させて作成した、ウレタンアクリレートUA1(メチルエチルケトン30%含有)95重量%と、 ペンタエリスリトールテトラクリレート(PETA、架橋剤)4重量%と、
BYK-UV3570(表面調整剤)1重量%を混合した硬化性組成物を、
1μmのアクリルウレタンプライマー層を有するアクリルフィルム(フィルム厚75μm)にドライ膜厚が10μmになるよう塗布する工程と、
60℃で30分間加熱し溶剤を揮発させる工程と、窒素雰囲気中で、電子線加速器(岩崎電気製エレクトロカーテンEC250/15/180L)175Kvで5Mrad電子線を照射して被膜を形成する工程とによる、試料の作成方法。」

イ 引用文献2に記載された発明

引用文献2の特に【0125】、【0126】、【0129】、【0137】~【0138】、【0140】の表1を参照し、特に基材の材料として【0113】と、実施例1(滑り剤ありの例)に着目すると、引用文献2には以下の発明(以下、それぞれを「引用発明2-1」及び「引用発明2-2」という。)が記載されている。

<引用発明2-1>

「耐擦傷性評価用積層体であって、
ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(エボニック デグサ ジャパン社製「VESTANAT IPDI」)と、
高分子量ポリカーボネートポリオールとしてポリカーボネートポリオール(旭化成社製「デュラノール T4691」)と、
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機工業社製「HEA」)を、反応させて得たウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの溶液を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とし、
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における、原料化合物の組成比は高分子量ポリカーボネートジオール/イソホロンジイソシアネート/2-ヒドロキシエチルアクリレート=3/4/2.04(モル比)であり、
反応液中の樹脂成分(固形分)の含有量は40質量%であり、固形分におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは100質量%であり、計算網目架橋点間分子量は4300であり、
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に滑り剤(JNC社製「サイラプレーンFM-7711」)を1質量%(固形分換算)添加し、
上記の滑り剤を添加した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上にバーコーターで塗工して塗膜を形成した後、60℃で1分間乾燥させ、高圧水銀ランプにて紫外線を乾燥塗膜に照射し、更に23℃で1日養生して、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上に膜厚約10μmの硬化膜を形成し、
上記硬化膜の引張弾性率が310MPaである、
耐擦傷性評価用積層体。」

<引用発明2-2>

「耐擦傷性評価用積層体の製造方法であって、
ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(エボニック デグサ ジャパン社製「VESTANAT IPDI」)と、
高分子量ポリカーボネートポリオールとしてポリカーボネートポリオール(旭化成社製「デュラノール T4691」)と、
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機工業社製「HEA」)とを、反応させて得たウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの溶液を活性エネルギー線硬化性樹脂組成物とし、
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における、原料化合物の組成比は高分子量ポリカーボネートジオール/イソホロンジイソシアネート/2-ヒドロキシエチルアクリレート=3/4/2.04(モル比)であり、
反応液中の樹脂成分(固形分)の含有量は40質量%であり、固形分におけるウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは100質量%であり、計算網目架橋点間分子量は4300であり、
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に滑り剤(JNC社製「サイラプレーンFM-7711」)を1質量%(固形分換算)添加し、
上記の滑り剤を添加した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上にバーコーターで塗工して塗膜を形成した後、60℃で1分間乾燥させ、高圧水銀ランプにて紫外線を乾燥塗膜に照射し、更に23℃で1日養生して、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上に膜厚約10μmの硬化膜を形成し、
上記硬化膜の引張弾性率が310MPaである、
耐擦傷性評価用積層体の製造方法。」

ウ 引用文献3に記載された発明

引用文献3の特に【0075】~【0076】、【0086】、【0103】~【0104】、【0110】【表1】を参照し、特に基材の材料として【0076】と実施例6に着目すると、引用文献3には以下の発明(以下、それぞれを「引用発明3-1」及び「引用発明3-2」という。)が記載されている。

<引用発明3-1>

「(メタ)アクリル樹脂からなる基材上に硬化膜を備えた積層体であって、
(a-1)としてイソホロンジイソシアネート103g、及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)61g、
(a-2)としてシクロヘキサンジメタノール33g、
(a-5)としてポリカーボネートジオール(クラレポリオールC-1090、数平均分子量980、クラレ社製)225g、
続きを表示(全12行)
(a-3)としてヒドロキシエチレンアクリレート54g、
メチルエチルケトン500g(=422g+54g+24g)、
シリコーン(サイラプレーンFM-7711、チッソ社製)5g、
紫外線吸収剤(チヌビン328、チバスペシャリティケミカルズ製)10g、
HALS(チヌビン144、チバスペシャリティケミカルズ製)10g、を合成して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を作製し、
ウレタンアクリレート系オリゴマーにおける(a-1)成分/(a-2)成分/(a-3)成分/(a-5)成分モル比3/1/2/1であり、
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の計算網目架橋点間分子量は2100であって、
次いで、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上にアプリケーターで得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工して塗膜を形成した後、60℃で1分間乾燥させ、電子線照射装置(CB175、アイグラフィック社製)を用い、加速電圧165kV、照射線量5Mradの条件で電子線を照射して硬化膜を形成してなる、積層体。」

<引用発明3-2>

「(メタ)アクリル樹脂からなる基材上に硬化膜を備えた積層体の作製方法であって、
(a-1)としてイソホロンジイソシアネート103g、及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)61g、
(a-2)としてシクロヘキサンジメタノール33g、
(a-5)としてポリカーボネートジオール(クラレポリオールC-1090、数平均分子量980、クラレ社製)225g、
続きを表示(全12行)
(a-3)としてヒドロキシエチレンアクリレート54g、
メチルエチルケトン500g(=422g+54g+24g)、
シリコーン(サイラプレーンFM-7711、チッソ社製)5g、
紫外線吸収剤(チヌビン328、チバスペシャリティケミカルズ製)10g、
HALS(チヌビン144、チバスペシャリティケミカルズ製)10g、を合成して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を作製し、
ウレタンアクリレート系オリゴマーにおける(a-1)成分/(a-2)成分/(a-3)成分/(a-5)成分モル比3/1/2/1であり、
得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の計算網目架橋点間分子量は2100であって、
次いで、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上にアプリケーターで得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工して塗膜を形成した後、60℃で1分間乾燥させ、電子線照射装置(CB175、アイグラフィック社製)を用い、加速電圧165kV、照射線量5Mradの条件で電子線を照射して硬化膜を形成してなる、積層体の作製方法。」

エ 引用文献4、5

(ア)引用文献4には次の記載がある。

「【0001】
本発明は、光学積層体に関する。」
「【0075】
・・・。反応性シリコーンを添加すれば、ハードコート層表面に滑り性が付与され耐擦傷性が長期間にわたり持続するようになる。上記レベリング剤の含有割合は、ハードコート層形成用組成物中の全硬化性化合物に対して、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは0.01重量%~5重量%である。」
「【0100】
<製造例1>基材フィルムAの作製
・・・、厚み40μmの基材フィルムA((メタ)アクリル系樹脂フィルム)を得た。・・・
【0101】
<実施例1>
硬化性化合物としてのウレタンアクリレートのオリゴマー(ダイセル・オルネクス社製、製品名「KRM8452」、Mw=1200、官能基数:10)80部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(大阪有機化学工業社製、製品名「ビスコート#300」、Mw=298)20部と、ZrO2微粒子含有ゾル(日産化学社製、製品名「ナノユースOZ-S30K」、固形分:30%、平均粒子径:10nm、屈折率:2.2、溶媒:メチルイソブチルケトン)100部と、レベリング剤(DIC社製、商品名:PC4100)0.5部と、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製、商品名:イルガキュア907)3部とを混合し、固形分濃度が50%となるように、メチルイソブチルケトンで希釈して、ハードコート層形成用組成物を調製した。
【0102】
製造例1で得られた基材フィルムA上に、得られたハードコート層形成用組成物を塗布して塗布層を形成し、当該塗布層を100℃で1分間加熱した。加熱後の塗布層に高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させて、[基材層/ハードコート層]の構成を有する光学積層体を得た。」

(イ)上記(ア)の記載から、ハードコート層中にレベリング剤は0.37質量%(=0.5/(80+20+(100×0.3)+0.5+3)×100)含有されているといえる。

(ウ)引用文献5には次の記載がある。

「【0001】
本発明は、干渉縞が少なく、優れた防汚性を有し、かつ耐擦傷性や滑り性に優れ、例えばスマートフォンやタブレットPCなどの各種ディスプレイの保護フィルムなどとして好適に用いられるハードコートフィルムに関する。」
「【0032】
本発明のハードコートフィルムに用いる活性エネルギー線硬化性組成物における前記フッ素化合物(C)の配合量は、十分な耐擦傷性、防汚性及び滑り性を発揮できることから、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)、前記多官能(メタ)アクリレート(B)及び任意で配合したその他の(メタ)アクリレートの合計100質量部に対して、0.05~5質量部の範囲が好ましく、0.1~2質量部の範囲がより好ましい。」
「【0089】
(実施例1)
合成例2で得られたウレタンアクリレート(A2)を含む溶液31.3質量部(ウレタンアクリレート(A2)20質量部、PE4A 5質量部を含む。)、合成例3で得られたウレタンアクリレート(A3)を含む溶液31.3質量部(ウレタンアクリレート(A3)20.1質量部、PE4A 4.9質量部を含む。)、合成例4で得られたウレタンアクリレート(A4)を含む溶液25質量部(ウレタンアクリレート(A4)18質量部、PE4A 2質量部を含む。)、DPHA及びDPPAの混合物(DPHA/DPPA=60/40(質量比))30質量部、フッ素化合物(C1)の20質量%溶液1.5質量部(フッ素化合物(C1)として0.3質量部)及び光重合開始剤(BASFジャパン株式会社製「イルガキュア184」、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;以下、「光重合開始剤(D1)」と略記する。)4.5質量部を均一に攪拌した後、酢酸エチルで希釈して、不揮発分40質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(1)を調製した。
【0090】
前記で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1)を、アクリルフィルム(住友化学株式会社製「S000」、厚さ125μm)上にワイヤーバー(#40)を用いて塗布して、60℃で1分間乾燥後、・・・紫外線を照射して、厚さ10μmの硬化塗膜(ハードコート層)を有する試験片フィルムを得た。」

(エ)上記(ウ)の記載から、

硬化塗膜(ハードコート層)中にフッ素系化合物は0.29質量%(=0.3/(20+5+20.1+4.9+18+2+30+0.3+4.5)×100)含有されているといえる。

(オ)上記(イ)及び(エ)から以下の事項は周知技術(以下「周知技術1」という。)であるといえる。

「アクリル系樹脂フィルム上にウレタンアクリレート系オリゴマーと表面スリップ剤を含むハードコート層を形成したハードコートフィルムにおいて、ハードコート層中に表面スリップ剤を0.29~0.37質量%を含有すること。」

(2)引用文献1を主引例とする取消理由2(進歩性)について

ア 本件発明1

(ア)対比

本件発明1と引用発明1-1を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

<樹脂基材>

引用発明1-1の「アクリルフィルム」は、本件発明1の「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)」に相当する。

<ウレタンアクリレートの成分>

引用発明1-1の「(b)成分としてイソホロンジイソシアネート(IPDI)」、「(a)成分としてポリカーボネートジオール(ダイセル化学工業製、商品名:プラクセルCD205PL、数平均分子量500)」、「(c)成分として2-ヒドロキシエチルアクリレート(2-HEA)」及び(上記(b)、(a)、(c)を反応させて作成した)「ウレタンアクリレートUA1」は、それぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位」、「ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位」、「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位」及び((b-1)~(b-3)由来の構造単位を含む)「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)」に相当する。

<表面スリップ剤>

引用発明1-1の「BYK-UV3570(表面調整剤)」は、引用文献1の【0052】の記載からみてシロキサン結合単位を含むから、本件発明1の「分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含」む「表面スリップ剤(B2)」に相当する。

<樹脂組成物>

そうすると、引用発明1-1の、「ウレタンアクリレートUA1(メチルエチルケトン30%含有)95重量%」と「ペンタエリスリトールテトラクリレート(PETA、架橋剤)4重量%」と「BYK-UV3570(表面調整剤)1重量%」を混合した「硬化性組成物」は、引用文献1の【0042】の記載を踏まえるとエネルギー線で硬化するものであるから、本件発明1の「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)」と「表面スリップ剤(B2)」を含む「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。

<積層体>

そして、引用発明1-1の、「アクリルフィルムに被膜を備えた試料であって、」「硬化性組成物を、1μmのアクリルウレタンプライマー層を有するアクリルフィルム(フィルム厚75μm)にドライ膜厚が10μmになるよう塗布し、60℃で30分間加熱し溶剤を揮発させた後、窒素雰囲気中で、電子線加速器(岩崎電気製エレクトロカーテンEC250/15/180L)175Kvで5Mrad電子線を照射して被膜を形成した、試料」は、本件発明1の「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に」「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜」「を備えた樹脂積層体」に相当する。

<ウレタンアクリレートと表面スリップ剤の配合割合>

引用発明1-1の硬化性組成物と硬化後の被膜の成分は、ウレタンアクリレートUA1中がメチルエチルケトン30%含有であることを踏まえると、以下のとおりとなる(硬化後にメチルエチルケトンは完全に揮発すると仮定。)。

[硬化性組成物] [被膜]

UA1 66.5質量部(=95×0.7) UA1 66.5質量部

PETA(架橋剤)4質量部 PETA(架橋剤)4質量部

表面調整剤 1質量部 表面調整剤 1質量部

メチルエチルケトン28.5質量部(=95×0.3)

そうすると、引用発明1-1の架橋構造を有する硬化樹脂(UA1+PETA)は、UA1を、当該硬化樹脂の総質量100質量%に対して94質量%(=66.5/(66.5+4)×100)含むこととなるから、本件発明1の「前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含む」態様を有するといえる。

また、引用発明1-1の被膜(UA1+PETA+表面調整剤)は、表面調整剤を、当該被膜の総質量100質量%に対して1.4質量%(=1/(66.5+4+1)×100)含むこととなるから、本件発明1の「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」態様と、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」という限りにおいて一致する。

以上を総合すると、本件発明1と引用発明1-1は、以下の点で一致し、相違する。

<一致点1-1>

「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であり、
前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含み、且つ、
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位が、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含み、
表面スリップ剤(B2)が、分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む、樹脂積層体。」

<相違点1-1>

本件発明1は、「前記樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が1500以上3200以下であ」るのに対し、引用発明1-1は、被膜の計算網目架橋点間分子量が不明な点。

<相違点1-2>

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」点について、本件発明1は、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」のに対し、引用発明1-1は、表面調整剤を、当該被膜の総質量100質量%に対して1.4質量%含む点。

(イ)判断

事案に鑑み、<相違点1-2>について検討する。

本件発明の課題は「優れた耐擦傷性と、鉛筆硬度3Hの鉛筆を用いて形成した引掻き傷に対して自己修復性とを有し、且つ、高い延伸加工性を有する樹脂積層体を提供すること」(【0008】)であり、当該課題に関連して「表面スリップ剤(B2)の含有量の上限は、硬化被膜(B)の密着性を良好に維持でき、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性が良好となる観点から、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、5.0質量%以下が好ましい。2.0質量%以下がより好ましく、0.75質量%以下がさらに好ましい。」(【0025】)と記載されており、当該記載に対応して、本件訂正後の請求項1は「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」ことを特定するものである。

そうすると、硬化性組成物に表面調整剤を1重量%混合する引用発明1-1において、引用文献1の「硬化時に、これが表面層に配向、架橋し、長期にわたりスリップ性を維持し、耐擦傷性を向上することができる。その好ましい配合量は、0.1~5重量%である。」(【0027】)との記載があるとしても、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性とが良好となる2つの観点から表面スリップ剤の含有量を「0.05質量%以上0.75質量%以下」とする動機はない。

そして、周知技術1のほか、提出されたほかの証拠にも、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性とが良好となる2つの観点から表面スリップ剤の含有量を「0.05質量%以上0.75質量%以下」とする事項は記載も示唆もされていない。

そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2

(ア)対比

本件発明2と引用発明1-1との対比・相当関係は、上記ア(ア)を参照。

本件発明2と引用発明1-1は、以下の点で一致し、相違する。

<一致点1-2>

「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であり、
表面スリップ剤(B2)が、分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む、樹脂積層体。」

<相違点1-3>

本件発明2は、「前記樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が1000以上15000以下であ」るのに対し、引用発明1-1は、かかる構成を有するか不明な点。

<相違点1-4>

本件発明2は、「前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化被膜の引張弾性率が100MPa以上1000MPa以下であ」るのに対し、引用発明1-1は、硬化膜の引張弾性率が不明な点。

<相違点1-5>

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」点について、本件発明2は「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」のに対し、引用発明1-1は「表面調整剤を、当該被膜の総質量100質量%に対して1.4質量%含む」点。

(イ)判断

事案に鑑み、<相違点1-5>について検討するに、その判断は、上記ア(イ)において示したとおりである。

そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、引用発明1-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明12

(ア)対比

本件発明12と引用発明1-2を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

引用発明1-2の「メチルエチルケトン」は本件発明12の「液状有機化合物(B3)」に相当する。

その余の樹脂基材(A)及び硬化被膜の材料等についての相当関係は上記ア(ア)を参照。

<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの成分モル比>

引用発明1-2のウレタンアクリレートUA1は、(a)成分/(b)成分/(c)成分モル比8/9/2で反応させて作成したものであり、それぞれ本件発明12の(b-2)由来の構造単位、(b-1)由来の構造単位、(b-3)由来の構造単位に相当するから、本件発明12の記載に倣って整理すると、(b-1)由来の構造単位47モル%、(b-2)由来の構造単位42モル%、(b-3)由来の構造単位11モル%をそれぞれ含むものである。

<樹脂組成物の成分割合>

上記アで示した、引用発明1-1の硬化性組成物の成分(引用発明1-2も同様)を、UA1と表面調整剤の混合物が合計100質量部になるように換算すると、以下のとおりとなる。

UA1 98.5質量部

表面調整剤 1.5質量部

メチルエチルケトン 42.2質量部

そうすると、引用発明1-2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と、本件発明12の「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)99.25~99.95質量%と表面スリップ剤(B2)0.05~0.75質量%を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」は、「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」という限りにおいて一致する。

<積層体作成方法>

引用発明1-2の「硬化性組成物を、1μmのアクリルウレタンプライマー層を有するアクリルフィルム(フィルム厚75μm)にドライ膜厚が10μmになるよう塗布する工程」と、「60℃で30分間加熱し溶剤を揮発させる工程」と、「窒素雰囲気中で、電子線加速器(岩崎電気製エレクトロカーテンEC250/15/180L)175Kvで5Mrad電子線を照射する工程」とによる「試料の作成方法」はそれぞれ、本件発明12の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に塗布する」「工程(1)」と、「前記樹脂基材(A)に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる液状有機化合物(B3)が、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の総質量100質量%に対して、10質量%以下となるまで加熱する」「工程(2)」と、「前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成し、前記樹脂基材(A)の表面に前記硬化被膜が形成された樹脂積層体を得る」「工程(3)」を順次行うことを含む「樹脂積層体の製造方法」に相当する。

以上を総合すると、本件発明12と引用発明1-2は、以下の点で一致し、相違する。

<一致点1-3>

「樹脂積層体の製造方法であって、
下記工程(1)~(3)を順次行うことを含む樹脂積層体の製造方法。
工程(1):ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に塗布する。
工程(2):工程(1)の後、前記樹脂基材(A)に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる液状有機化合物(B3)が、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の総質量100質量%に対して、10質量%以下となるまで加熱する。
工程(3):工程(2)の後、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成し、前記樹脂基材(A)の表面に前記硬化被膜が形成された樹脂積層体を得る。
なお、前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)は、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含有し、かつ、前記(b-1)由来の構造単位、前記(b-2)由来の構造単位及び前記(b-3)由来の構造単位の合計量100モル%に対して、(b-1)由来の構造単位30~50モル%、(b-2)由来の構造単位10~50モル%、及び、(b-3)由来の構造単位3~30モル%を含有する。」

<相違点1-6>

「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」について、本件発明12は「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)99.25~99.95質量%と表面スリップ剤(B2)0.05~0.75質量%を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」であるのに対し、引用発明1-2は、UA1を98.5質量部、表面調整剤1.5質量部、及び、メチルエチルケトン42.4質量部を含む硬化性組成物である点。

(イ)判断

<相違点1-6>の特に表面スリップ剤の含有量について検討するに、その判断は上記ア(イ)において示したとおりである。

そうすると、本件発明12は、引用発明1-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明3~11、13

本件発明3~11、13は、本件発明1、2又は12の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア~ウで検討したのと同じ理由により、本件発明3~11、13は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)引用文献2を主引例とする取消理由2(進歩性)について

ア 本件発明1

(ア)対比

本件発明1と引用発明2-1を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

<樹脂基材>

引用発明2-1の「(メタ)アクリル樹脂からなる基材」は、本件発明1の「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)」に相当する。

<ウレタンアクリレートの成分>

引用発明2-1の「ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート(エボニック デグサ ジャパン社製「VESTANAT IPDI」)」、「高分子量ポリカーボネートポリオールとしてポリカーボネートポリオール(旭化成社製「デュラノール T4691」)」、「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機工業社製「HEA」)」、及びこれらを反応させて得た「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー」は、それぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位」、「ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位」、「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位」、及びそれらを含む「前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)」に相当する。

<表面スリップ剤>

引用発明2-1の「滑り剤(JNC社製「サイラプレーンFM-7711」)」は、シロキサン結合単位を含むシリコーン化合物として一般に販売されているものであるから、本件発明1の「分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含」む「表面スリップ剤(B2)」に相当する。

<樹脂組成物>

引用発明2-1の「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの溶液」に「滑り剤(JNC社製「サイラプレーンFM-7711」)を1質量%(固形分換算)添加し」てなる「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)」と「表面スリップ剤(B2)」を含む「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。

<積層体>

引用発明2-1の「耐擦傷性評価用積層体であって、」「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上にバーコーターで塗工して塗膜を形成した後、60℃で1分間乾燥させ、高圧水銀ランプにて紫外線を乾燥塗膜に照射し、更に23℃で1日養生して、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上に膜厚約10μmの硬化膜を形成し、」た「耐擦傷性評価用積層体」は、本件発明1の「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に」「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜」「を備えた樹脂積層体」に相当する。

<ウレタンアクリレートと表面スリップ剤の配合割合>

引用発明2-1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と硬化膜の成分は、反応液中の樹脂成分(固形分)の含有量は40質量%であり、別途、滑り剤を固形分換算1質量%添加することを踏まえると、以下のとおりとなる(硬化後の溶剤は完全に揮発すると仮定。)。

[硬化性樹脂組成物] [硬化膜]

ウレタンアクリレート 40質量部 ウレタンアクリレート 40質量部

滑り剤 0.4質量部 滑り剤 0.4質量部

溶媒 60質量部

引用発明2-1において、架橋構造を有する硬化樹脂(ウレタンアクリレート)は、ウレタンアクリレートを、当該硬化樹脂の総質量100質量%に対して100質量%(=40/40×100)含むこととなるから、本件発明1の「前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含む」態様を有するといえる。

また、引用発明2-1の硬化膜(ウレタンアクリレート+滑り剤)は、滑り剤を、当該硬化膜の総質量100質量%に対して1質量%(=0.4/(40+0.4)×100)含むこととなるから、本件発明1の「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」態様と、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」という限りにおいて一致する。

以上を総合すると、本件発明1と引用発明2-1は以下の点で一致し、相違する。

<一致点2-1>

「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であり、
前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含み、且つ、
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位が、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含み、
表面スリップ剤(B2)が、分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む、樹脂積層体。」

<相違点2-1>

樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が、本件発明1は、「1500以上3200以下であ」るのに対し、引用発明2-1は、「4300」である点。

<相違点2-2>

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」点について、本件発明1は、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」のに対し、引用発明2-1は、滑り剤を、当該硬化膜の総質量100質量%に対して1質量%含む点。

(イ)判断

事案に鑑み、<相違点2-2>について検討する。

上記(2)ア(イ)で示したように、本件発明1は、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性とが良好となる2つの観点から、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」ことを特定するものである。

他方、引用発明2-1は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に滑り剤を1質量%添加するものであるものの、引用文献2には滑り剤の最適な添加量についての記載はないから、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性とが良好となる2つの観点から表面スリップ剤の含有量を「0.05質量%以上0.75質量%以下」とする動機はない。

そして、周知技術1のほか、提出されたほかの証拠にも、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性とが良好となる2つの観点から表面スリップ剤の含有量を「0.05質量%以上0.75質量%以下」とする事項は記載も示唆もされていない。

そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2

(ア)対比

本件発明2と引用発明2-1との対比・相当関係は、上記ア(ア)を参照。

引用発明2-1の「上記硬化膜の引張弾性率が310MPaである」ことは、本件発明2の「前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化被膜の引張弾性率が100MPa以上1000MPa以下であ」ることに相当する。

そうすると、本件発明2と引用発明2-1は、以下の点で一致し、相違する。

<一致点2-2>

「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であり、
前記樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が1000以上15000以下であり、
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化被膜の引張弾性率が100MPa以上1000MPa以下であり、
表面スリップ剤(B2)が、分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む、樹脂積層体。」

<相違点2-3>

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」点について、本件発明2は、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」のに対し、引用発明2-1は、滑り剤を、当該硬化膜の総質量100質量%に対して1質量%含む点。

(イ)判断

<相違点2-3>についての判断は、上記ア(イ)において示したとおりである。

そうすると、本件発明2は、引用発明2-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明12

(ア)対比

本件発明12と引用発明2-2を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

引用発明2-2の反応液中の樹脂成分(固形分)以外の液体分は、本件発明12の「液状有機化合物(B3)」に相当する。

その余の樹脂基材(A)及び硬化被膜の材料等についての相当関係は上記ア(ア)を参照。

<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの成分モル比>

引用発明2-2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その原料化合物の組成比は高分子量ポリカーボネートジオール/イソホロンジイソシアネート/2-ヒドロキシエチルアクリレート=3/4/2.04(モル比)であり、それぞれ本件発明12の(b-1)由来の構造単位、(b-2)由来の構造単位、(b-3)由来の構造単位に相当するから、本件発明12の記載に倣って整理すると、(b-1)由来の構造単位44モル%、(b-2)由来の構造単位33モル%、(b-3)由来の構造単位23モル%をそれぞれ含むものである。

<樹脂組成物の成分割合>

上記アで示した、引用発明2-1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の成分(引用発明2-2も同様)を、ウレタンアクリレートと滑り剤の混合物が合計100質量部になるように換算すると、以下のとおりとなる。

ウレタンアクリレート 99質量部

滑り剤 1質量部

溶媒 149質量部

そうすると、引用発明2-2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と、本件発明12の「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)99.25~99.95質量%と表面スリップ剤(B2)0.05~0.75質量%を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」は、「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」という限りにおいて一致する。

<積層体作成方法>

引用発明2-2の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上にバーコーターで塗工して塗膜を形成」する工程、「60℃で1分間乾燥させ」る工程、「高圧水銀ランプにて紫外線を乾燥塗膜に照射し、更に23℃で1日養生して、(メタ)アクリル樹脂からなる基材上に膜厚約10μmの硬化膜を形成」する工程からなる「耐擦傷性評価用積層体の製造方法」は、それぞれ、本件発明12の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に塗布する」「工程(1)」、「工程(1)の後、前記樹脂基材(A)に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる液状有機化合物(B3)が、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の総質量100質量%に対して、10質量%以下となるまで加熱する」「工程(2)」、「工程(2)の後、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成し、前記樹脂基材(A)の表面に前記硬化被膜が形成された樹脂積層体を得る」「工程(3)」を順次行うことを含む「樹脂積層体の製造方法」に相当する。

以上を総合すると、本件発明12と引用発明2-2は、以下の点で一致し、相違する。

<一致点2-3>

「樹脂積層体の製造方法であって、
下記工程(1)~(3)を順次行うことを含む樹脂積層体の製造方法。
工程(1):ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に塗布する。
工程(2):工程(1)の後、前記樹脂基材(A)に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる液状有機化合物(B3)が、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の総質量100質量%に対して、10質量%以下となるまで加熱する。
工程(3):工程(2)の後、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成し、前記樹脂基材(A)の表面に前記硬化被膜が形成された樹脂積層体を得る。
なお、前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)は、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含有し、かつ、前記(b-1)由来の構造単位、前記(b-2)由来の構造単位及び前記(b-3)由来の構造単位の合計量100モル%に対して、(b-1)由来の構造単位30~50モル%、(b-2)由来の構造単位10~50モル%、及び、(b-3)由来の構造単位3~30モル%を含有する。」

<相違点2-4>

「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」について、本件発明12は「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)99.25~99.95質量%と表面スリップ剤(B2)0.05~0.75質量%を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」であるのに対し、引用発明2-2は、ウレタンアクリレート99質量部、滑り剤1質量部、及び、溶媒149質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である点。

(イ)判断

<相違点2-4>の特に表面スリップ剤の含有量について検討するに、その判断は上記ア(イ)で示したとおりである。

そうすると、本件発明12は、引用発明2-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明3~11、13

本件発明3~11、13は、本件発明1、2又は12の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア~ウで検討したのと同じ理由により、本件発明3~11、13は、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)引用文献3を主引例とする取消理由2(進歩性)について

ア 本件発明1

(ア)対比

本件発明1と引用発明3-1を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

<樹脂基材>

引用発明3-1の「(メタ)アクリル樹脂からなる基材」は、「樹脂フィルム」である限りにおいて、本件発明1の「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)」に相当する。

<ウレタンアクリレートの成分>

引用発明3-1の「(a-1)としてイソホロンジイソシアネート・・・、及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)」、「(a-5)としてポリカーボネートジオール(クラレポリオールC-1090、数平均分子量980、クラレ社製)」、「(a-3)としてヒドロキシエチレンアクリレート」を含む「ウレタンアクリレート系オリゴマー」はそれぞれ、本件発明1の「ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位」、「ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位」、「ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含」む「前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)に相当する。

<表面スリップ剤>

引用発明3-1の「シリコーン(サイラプレーンFM-7711、チッソ社製)」は、シロキサン結合単位を含むシリコーン化合物として一般に販売されているものであるから、本件発明1の「分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含」む「表面スリップ剤(B2)」に相当する。

<樹脂組成物>

そうすると、引用発明3-1の「(a-1)としてイソホロンジイソシアネート103g、及び4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)61g、(a-2)としてシクロヘキサンジメタノール33g、(a-5)としてポリカーボネートジオール(クラレポリオールC-1090、数平均分子量980、クラレ社製)225g、(a-3)としてヒドロキシエチレンアクリレート54g、メチルエチルケトン500g(=422g+54g+24g)、シリコーン(サイラプレーンFM-7711、チッソ社製)5g、紫外線吸収剤(チヌビン328、チバスペシャリティケミカルズ製)10g、HALS(チヌビン144、チバスペシャリティケミカルズ製)10g、を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)」と「表面スリップ剤(B2)」を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」に相当する。

<積層体>

引用発明3-1の「(メタ)アクリル樹脂からなる基材上に硬化膜を備えた積層体であって、」「(メタ)アクリル樹脂からなる基材上にアプリケーターで得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工して塗膜を形成した後、60℃で1分間乾燥させ、電子線照射装置(CB175、アイグラフィック社製)を用い、加速電圧165kV、照射線量5Mradの条件で電子線を照射して、硬化膜を形成してなる、積層体」は、本件発明1の「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、」「前記硬化被膜(B)が、」「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であ」る「樹脂積層体」に相当する。

<ウレタンアクリレートと表面スリップ剤の配合割合>

引用発明3-1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、ウレタンアクリレート系オリゴマー476g(=103g+61g+33g+225g+54g)、メチルエチルケトン500g(=422g+54g+24g)を含むから、当該組成物と硬化膜の成分は、以下のとおりである(硬化後にメチルエチルケトンは完全に揮発すると仮定。)。

[硬化性樹脂組成物] [硬化膜]

ウレタンアクリレート 476g ウレタンアクリレート 476g

シリコーン 5g シリコーン 5g

紫外線吸収材 10g 紫外線吸収材 10g

HALS 10g HALS 10g

メチルエチルケトン 500g

引用発明3-1において、架橋構造を有する硬化樹脂(ウレタンアクリレート、紫外線吸収剤、HALS)は、ウレタンアクリレートを、当該硬化樹脂の総質量100質量%に対して95.6質量%(=476/(476+10+10)×100)含むこととなるから、本件発明1の「前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含む」態様を有するといえる。

また、引用発明3-1の硬化膜(ウレタンアクリレート、シリコーン、紫外線吸収剤、HALS)は、シリコーンを、当該硬化膜の総質量100質量%に対して1質量%(=5/(476+5+10+10)×100)含むこととなるから、本件発明1の「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」態様と、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」という限りにおいて一致する。

<架橋点間分子量>

引用発明3-1の「得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の計算網目架橋点間分子量は2100であ」ることは、本件発明1の「前記樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が1500以上3200以下であ」ることに相当する。

以上を総合すると、本件発明1と引用発明3-1は、以下の点で一致し、相違する。

<一致点3-1>

「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であり、
前記樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が1500以上3200以下であり、
前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含み、且つ、
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位が、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含み、
表面スリップ剤(B2)が、分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む、樹脂積層体。」

<相違点3-1>

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」点について、本件発明1は、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」のに対し、引用発明3-1は、シリコーンを、当該硬化膜の総質量100質量%に対して1質量%含む点。

(イ)判断

上記(2)ア(イ)で示したように、本件発明1は、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性とが良好となる2つの観点から、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」ことを特定するものである。

他方、引用発明3-1は活性エネルギー線硬化性樹脂組成物にシリコーン5g(1質量%)含むものであるものの、引用文献3にはシリコーンの最適な添加量についての記載はないから、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性が良好となる観点から表面スリップ剤の含有量を「0.05質量%以上0.75質量%以下」とする動機はない。

そして、周知技術1のほか、提出されたほかの証拠にも、樹脂積層体の耐擦傷性と自己修復性とが良好となる2つの観点から表面スリップ剤の含有量を「0.05質量%以上0.75質量%以下」とする事項は記載も示唆もされていない。

そうすると、本件発明1は、引用発明3-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2

(ア)対比

本件発明2と引用発明3-1との対比・相当関係は、上記ア(ア)を参照。

そうすると、本件発明2と引用発明3-1は、以下の点で一致し、相違する。

<一致点3-2>

「(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に硬化被膜(B)を備えた樹脂積層体であって、
前記硬化被膜(B)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる、架橋構造を有する樹脂(B1)と表面スリップ剤(B2)とを含む硬化被膜であり、
前記樹脂(B1)の計算網目架橋点間分子量が1000以上15000以下であり、
表面スリップ剤(B2)が、分子内中にシロキサン結合単位を有する化合物、及び、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む、樹脂積層体。」

<相違点3-2>

本件発明2は、「前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化してなる硬化被膜の引張弾性率が100MPa以上1000MPa以下であ」るのに対し、引用発明3-1は、硬化膜の引張弾性率が不明な点。

<相違点3-3>

「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を含む」点について、本件発明2は、「前記硬化被膜(B)が、前記表面スリップ剤(B2)を、該硬化被膜(B)の総質量100質量%に対して、0.05質量%以上0.75質量%以下含む」のに対し、引用発明3-1は、シリコーンを、当該硬化膜の総質量100質量%に対して1質量%含む点。

(イ)判断

事案に鑑み、<相違点3-3>について検討する。

<相違点3-3>についての判断は、上記ア(イ)において示したとおりである。

そうすると、本件発明2は、引用発明3-1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明12

(ア)対比

本件発明12と引用発明3-2を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

引用発明3-2の「メチルエチルケトン」は本件発明12の「液状有機化合物(B3)」に相当する。

その余の樹脂基材(A)及び硬化被膜の材料等についての相当関係は上記ア(ア)を参照。

<ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの成分モル比>

引用発明3-2のウレタンアクリレート系オリゴマーは、その(a-1)成分/(a-2)成分/(a-3)成分/(a-5)成分モル比は3/1/2/1であり、(a-1)成分、(a-3)成分、(a-5)成分はそれぞれ、本件発明12の(b-1)由来の構造単位、(b-3)由来の構造単位、(b-2)由来の構造単位に相当するから、本件発明12の記載に倣って整理すると、(b-1)由来の構造単位43モル%、(b-2)由来の構造単位14モル%、(b-3)由来の構造単位29モル%をそれぞれ含むものである。

<樹脂組成物の成分割合>

上記アで示した、引用発明3-1の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の成分(引用発明3-2も同様)を、ウレタンアクリレートとシリコーンの混合物が合計100質量部になるように換算すると、以下のとおりとなる。

ウレタンアクリレート 99.0質量部

シリコーン 1.0質量部

メチルエチルケトン 104.0質量部

そうすると、引用発明3-2の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物と、本件発明12の「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)99.25~99.95質量%と表面スリップ剤(B2)0.05~0.75質量%を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」は、「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」という限りにおいて一致する。

<積層体の製造方法>

引用発明3-2の「(メタ)アクリル樹脂からなる基材上にアプリケーターで得られた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗工して塗膜を形成」し、「60℃で1分間乾燥させ」、「電子線照射装置(CB175、アイグラフィック社製)を用い、加速電圧165kV、照射線量5Mradの条件で電子線を照射して硬化膜を形成」してなる「積層体の作製方法」は、それぞれ、本件発明12の「活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に塗布する」「工程(1)」、「工程(1)の後、前記樹脂基材(A)に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる液状有機化合物(B3)が、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の総質量100質量%に対して、10質量%以下となるまで加熱する」「工程(2)」、「工程(2)の後、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成し、前記樹脂基材(A)の表面に前記硬化被膜が形成された樹脂積層体を得る」「工程(3)」を順次行うことを含む「樹脂積層体の製造方法」に相当する。

以上を総合すると、本件発明12と引用発明3-2は、以下の点で一致し、相違する。

<一致点3-3>

「樹脂積層体の製造方法であって、
下記工程(1)~(3)を順次行うことを含む樹脂積層体の製造方法。
工程(1):ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、(メタ)アクリル系樹脂からなる樹脂基材(A)の少なくとも一方の面に塗布する。
工程(2):工程(1)の後、前記樹脂基材(A)に塗布された活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる液状有機化合物(B3)が、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の総質量100質量%に対して、10質量%以下となるまで加熱する。
工程(3):工程(2)の後、前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成し、前記樹脂基材(A)の表面に前記硬化被膜が形成された樹脂積層体を得る。
なお、前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)は、ポリイソシアネート(b-1)由来の構造単位、ポリカーボネートポリオール(b-2)由来の構造単位、及び、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(b-3)由来の構造単位を含有し、かつ、前記(b-1)由来の構造単位、前記(b-2)由来の構造単位及び前記(b-3)由来の構造単位の合計量100モル%に対して、(b-1)由来の構造単位30~50モル%、(b-2)由来の構造単位10~50モル%、及び、(b-3)由来の構造単位3~30モル%を含有する。」

<相違点3-4>

「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)と表面スリップ剤(B2)を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」について、本件発明12は「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)99.25~99.95質量%と表面スリップ剤(B2)0.05~0.75質量%を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」であるのに対し、引用発明3-2は、ウレタンアクリレート99.0質量部、シリコーン1.0質量部、メチルエチルケトン104.0質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物である点。

(イ)判断

<相違点3-4>の特に表面スリップ剤の含有量について検討するに、その判断は上記ア(イ)で示したとおりである。

そうすると、本件発明12は、引用発明3-2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明3~11、13

本件発明3~11、13は、本件発明1、2又は12の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記ア~ウで検討したのと同じ理由により、本件発明3~11、13は、引用文献3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由

1 申立理由1~3(新規性)について

申立人は、請求項1、4~6、8~10、13に係る発明は引用文献1に記載された発明であり、請求項1~9、12、13に係る発明は引用文献2に記載された発明であり、請求項1、4~6、8、9、12、13に係る発明は引用文献3に記載された発明である旨主張する。

しかしながら、上記第4の2(2)~(4)において説示したように、本件発明1~13は、引用発明1~3のいずれでもない。

2 申立理由4(サポート要件及び明確性要件)について

(1)申立人は、請求項1、3~11に係る発明は「前記架橋構造を有する樹脂(B1)が、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を、該樹脂(B1)の総質量100質量%に対して40質量%以上含み」と特定しているが、発明の詳細な説明には、当該含有量が95.00~99.99質量%において課題を解決することしか記載されていない、と主張する。

しかしながら、本件明細書の「架橋構造を有する樹脂(B1)は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)由来の構造単位を含むことにより、得られた硬化被膜(B)の延伸加工性が向上する」(【0030】)との記載及び「ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)を含む樹脂組成物に、活性エネルギー線を照射して得られた硬化物は、・・・得られた樹脂積層体の延伸加工性と自己修復性のバランスが良好となる。」(【0038】)との機序についての記載を踏まえると、本件発明1の上記記載における「・・40質量%以上含み」という特定により、本件発明の課題を解決できることを当業者であれば理解できる。

(2)申立人は、請求項1~13に係る発明は、硬化被膜及び樹脂基材の膜厚を特定していないが、発明の詳細な説明には、硬化被膜の膜厚が19~23μm、樹脂基材の厚みが3mm(比較対象のPET系基材の厚みは100μmにすぎない。)で課題を解決することしか記載されていない、と主張する。

しかしながら、本件明細書の【0017】~【0018】、【0025】、【0030】、【0038】等を参酌すると、本件発明1~13はその発明特定事項を具備することで、樹脂基材と硬化被膜の密着性、延伸加工性、耐擦傷性、自己修復性が向上するという本件発明の課題が解決できること、及び、そのために硬化被膜及び樹脂基材の膜厚を特定することを要しないことを、当業者であれば理解できる。

(3)申立人は、請求項1~13に係る発明は、樹脂基材の材料を(メタ)アクリル系樹脂としか特定していないが、発明の詳細な説明には、特定のアクリル系樹脂用いることにより課題を解決することしか記載されていない、と主張する。

しかしながら、本件明細書の発明の詳細な説明の「アクリル樹脂板は、高い透明性を有するものの、・・・耐擦傷性が求められている。」(【0002】)との記載及び「本発明の樹脂積層体は、樹脂基材(A)が(メタ)アクリル系樹脂からなるので、樹脂基材(A)と硬化被膜(B)との密着性に優れている。」(【0017】)との記載を踏まえると、樹脂基材(A)が広く用いられる(メタ)アクリル系樹脂からなるものであれば、本件発明の課題を解決できることを当業者であれば理解できる。

(4)申立人は、請求項1~13に係る発明は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量を特定していないが、発明の詳細な説明には、当該数平均分子量が4300又は11000のもののみが課題を解決することしか記載されていない、と主張する。

しかしながら、本件明細書の「延伸加工性が網目構造における架橋点間の距離に依存しており、この距離が長くなると柔軟で伸びやすい構造となり延伸加工性に優れ、この距離が短くなると網目構造が強固な構造となり耐擦傷性に優れる」(【0088】)との機序についての記載及び「計算網目架橋点間分子量は、網目構造形成時の網目面積と相関があり、計算網目架橋点間分子量が大きいほど架橋密度が小さくなる。」(【0089】)との記載を踏まえると、本件発明1~13は、硬化被膜に用いる樹脂の数平均分子量を調整することにより計算網目架橋点間分子量を適切な範囲に制御することで本件発明の効果を奏するものであるから、本件発明1~13は、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーの数平均分子量の特定を要することなく、本件発明の課題が解決できることを当業者であれば理解できる。

(5)申立人は、請求項12、13に係る発明は「工程(1):ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)95.0~99.99質量%と表面スリップ剤(B2)0.01~5.0質量%を含む混合物100質量部、及び、液状有機化合物(B3)50~1000質量部を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」と特定しているが、本件明細書の【0097】に記載されているように、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が「他の成分」を含む場合において、それが混合物に含まれるのか否か、含まれない場合は硬化性組成物中の他の成分の含有量が特定されないから、発明の範囲が不明確であるとともに、発明の課題を達成しえない態様も含んでいる、と主張する。

しかしながら、本件明細書に「本発明のウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー(C)以外の他の成分をさらに含有していてもよい。」(【0097】)と記載されているように「他の成分」は任意の成分であるから、混合物に含まれるのか否か及びその含有量を特定する必要はなく、発明は明確であるとともに、「他の成分」の有無にかかわらず課題が解決できることを当業者であれば理解できる。

(6)申立人は、請求項12、13に係る発明は、工程(1)において「液状有機化合物(B3)50~1000質量部」を含むことが特定されているが、仮に液状有機化合物が1000質量部である場合、工程(2)では流動性が高すぎて硬化性が悪いことは技術常識から明らかであるから、課題を解決できない範囲を含んでいる、と主張する。

しかしながら、液状有機化合物の量は樹脂製造工程の際の流動性や硬化性等を考慮して適宜調整し得ることであると当業者であれば理解できる。

(7)申立人は、実施例1~17で使用して課題を解決しているオリゴマー(C1)及びオリゴマー(C2)のうち、オリゴマー(C1)の原料化合物は、表1の製造例1より、モル数は(b-1)が12.3、(b-2)が5.1、(b-3)が2.0であり、モル比を計算すると、(b-1)が63モル%、(b-2)が26モル%、(b-3)が10モル%となり、(b-1)の値が本件発明12で規定する範囲に入っていない、と主張する。

しかしながら、本件明細書の実施例1~17で用いているオリゴマー(C1)の原料化合物のモル数は、表1から(b-1)が12.3、(b-2)が5.1、(b-3)が2.0、(b-4)が6.2であり、これよりモル比を計算すると、(b-1)が48モル%(=12.3×100/(12.3+5.1+2.0+6.2))、(b-2)が20モル%(=5.1×100/(12.3+5.1+2.0+6.2))、(b-3)が8モル%(=2.0×100/(12.3+5.1+2.0+6.2))、(b-4)が24モル%(=6.2×100/(12.3+5.1+2.0+6.2))となり、本件発明12で特定する範囲を満たしている。

(8)申立人は、請求項1~11の「計算網目架橋点間分子量」がどのようなパラメータであるのか定義が特定されておらず不明確である、と主張する。

しかしながら、「計算網目架橋点間分子量」は、その文言上、架橋構造の架橋点間における分子量の計算値であることは理解できるし、本件明細書の【0125】には計算式による定義も記載されている。よって本件発明1~11は明確である。

(9)申立人は、請求項1~11の「計算網目架橋点間分子量」について、本件明細書の【0125】には下記の式(2)により求められることが記載されているが、当該式(2)は誤りと考えられ、発明の範囲が不明確となっている、と主張する。

しかしながら、式(2)の末尾において「×2」が欠落していることは、技術常識から明らかである。よって本件発明1~11は明確である。

第6 むすび

以上のとおり、請求項1~13に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。

また、他に請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2022-701276

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