特許異議申立
2022-701272
化粧料の使用触感を評価する方法、及び化粧料の使用触感を評価する装置
- 審判番号
- 2022-701272
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-537633
- 登録番号
- 7088940
- 請求日
- 2022年12月20日
- 審決日
- 2023年10月30日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社 資生堂
- 【権利者代理人】伊東 忠重
- 【権利者代理人】伊東 忠彦
- 【異議申立人】青木 耕一
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 哲
- 審判官 伊藤 幸仙
- 審判官 松本 隆彦
- 分類
- P1651.121-YAA(G01N) / P1651.113-YAA(G01N) / P1651.851-YAA(G01N) / P1651.857-YAA(G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第126条第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7088940号発明「化粧料の使用触感を評価する方法、及び化粧料の使用触感を評価する装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7088940号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11,13〕、〔12〕について」訂正することを認める。
特許第7088940号の請求項2ないし13に係る特許を維持する。
特許第7088940号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7088940号の請求項1ないし13に係る特許についての出願(以下、「本願」という。)は、2018年(平成30年)8月21日(優先権主張 平成29年8月25日)を国際出願日とする出願であり、令和4年6月13日にその特許権の設定登録がされ、同年6月21日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年12月20日 : 特許異議申立人 青木耕一(以下「申立人」
という。)による請求項1ないし13に係る
特許に対する特許異議の申立て
令和5年 3月 6日付け: 取消理由通知書
同年 5月 8日 : 特許権者による意見書の提出
同年 5月30日付け: 取消理由通知書<決定の予告>
同年 7月31日 : 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
同年 9月26日 : 申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)ないし(5)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
許請求の範囲の請求項2に「前記評価ステップにおいて、予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する、請求項1に記載の方法。」と記載されているのを、「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら当該動作体を動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップと、前記検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成ステップと、前記生成されたデータを用いて、 前記化粧料の使用触感を評価する評価ステップとを含み、前記評価ステップにおいて、予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する、化粧料の使用触感を評価する方法。」に訂正する(請求項2を直接的及び間接的に引用する請求項3~11及び13も同様に訂正する)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に「前記振動検出ステップにおいて、前記被塗布面及び/又は前記動作体に伝達する振動を検出する、請求項1に記載の方法。」と記載されているのを、「前記振動検出ステップにおいて、前記被塗布面及び/又は前記動作体に伝達する振動を検出する、請求項2に記載の方法。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1に記載の化粧料の使用触感を評価する方法を用いて化粧料の使用触感を評価する第1評価ステップと」と記載されているのを、「請求項2に記載の化粧料の使用触感を評価する方法を用いて化粧料の使用触感を評価する第1評価ステップと」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項12に「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら当該動作体を動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出手段と、前記検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成手段と、 前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の使用触感を評価する評価手段とを含む、化粧料の使用触感を評価する装置。」と記載されているのを、「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら当該動作体を動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出手段と、前記検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成手段と、前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の使用触感を評価する評価手段とを含み、前記評価手段が、予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する、化粧料の使用触感を評価する装置。」に訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項、独立特許要件
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であるところ、当該訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面(以下「明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項9に係る「請求項1」と記載されているのを、「請求項2」に訂正する訂正であるところ、上記「1.(1)」の訂正事項1の訂正により請求項1が削除されたことに伴い、訂正後の請求項9が、削除された請求項1を引用する記載となることを回避する訂正であり、かつ、上記「1.(2)」の訂正事項2の訂正により請求項2が、請求項1の発明特定事項を書き下して独立形式請求項とされたことに伴い、訂正後の請求項9が請求項2を引用する記載に変更する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項13に係る「請求項1」と記載されているのを、「請求項2」に訂正する訂正であるところ、上記「1.(1)」の訂正事項1の訂正により請求項1が削除されたことに伴い、訂正後の請求項13が、削除された請求項1を引用する記載となることを回避する訂正であり、かつ、上記「1.(2)」の訂正事項2の訂正により請求項2が、請求項1の発明特定事項を書き下して独立形式請求項とされたことに伴い、訂正後の請求項13が請求項2を引用する記載に変更する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項12に係る「前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の使用触感を評価する評価手段」を、「前記評価手段が、予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する」評価手段に限定する訂正であるところ、当該訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
次に、「評価手段」の具体例として「評価手段が、予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変ヒに関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する」評価手段は、訂正前の請求項2,明細書の段落【0052】等から自明な事項であるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(6)一群の請求項及び独立特許要件について
訂正前の請求項2ないし11及び13は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、請求項1ないし11および13は一群の請求項である。そして、上記訂正事項1ないし4は、全て一群の請求項に対してされるものである。
また、訂正前の請求項12は独立形式の請求項であるから、別の一群の請求項である。そして、上記訂正事項5は、前記別の一群の請求項に対してされるものである。
したがって、訂正事項1ないし5よりなる本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。
また、本件においては、訂正前の全ての請求項1ないし13について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1ないし13に係る訂正事項1ないし5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし13について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2ないし13に係る発明(以下「本件発明2ないし13」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項2】
被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら当該動作体を動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップと、
前記検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成ステップと、
前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の使用触感を評価する評価ステップと
を含み、
前記評価ステップにおいて、予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する、化粧料の使用触感を評価する方法。
【請求項3】
前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータが、化粧料の塗布後の所定の経過時間及び所定の周波数に対応する振動の大きさに関する値を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記振動の大きさに関する値が、化粧料の塗布後の所定の経過時間帯域及び所定の周波数帯域におけるパワースペクトル密度の統計量を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記統計量が、化粧料の塗布後の所定の経過時間帯域及び所定の周波数帯域における前記パワースペクトル密度の算術平均値、幾何平均値、中央値、最大値、及び合計値の少なくとも1つである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記関係が回帰式によって与えられ、前記回帰式において、独立変数が、前記振動の大きさに関する値を含み、従属変数が、化粧料の使用触感の官能評価を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記振動の大きさに関する値が、化粧料の塗布後の第1の所定の経過時間及び第1の所定の周波数に対応する振動の大きさに関する第1の値と、化粧料の塗布後の第2の所定の経過時間及び第2の所定の周波数に対応する振動の大きさに関する第2の値とを含み、
前記独立変数が、前記第1の値及び前記第2の値を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記独立変数が、前記化粧料の粘度、第一法線応力差、前記動作体の変形量、及び前記化粧料の摩擦に関する値の少なくとも1つをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記振動検出ステップにおいて、前記被塗布面及び/又は前記動作体に伝達する振動を検出する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記化粧料の使用触感の官能評価は、時系列官能評価を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記化粧料の使用触感の官能評価は、前記時系列官能評価の所定期間における評価の代表値である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら当該動作体を動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出手段と、
前記検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成手段と、
前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の使用触感を評価する評価手段と
を含み、
前記評価手段が、予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する、化粧料の使用触感を評価する装置。
【請求項13】
請求項2に記載の化粧料の使用触感を評価する方法を用いて化粧料の使用触感を評価する第1評価ステップと、
前記第1評価ステップで用いられた化粧料の使用触感を評価する方法を用いて、前記化粧料とは別の、複数の選択対象化粧料の使用触感をそれぞれ評価する第2評価ステップと、
前記化粧料の使用触感と、前記複数の選択対象化粧料のそれぞれの使用触感とを比較する比較ステップと、
前記化粧料の使用触感に最も近い使用触感を有する化粧料を、前記複数の選択対象化粧料の中から選択する選択ステップと
を含む、化粧料を選択する方法。」
第4 特許異議の申立ての概要について
1.特許異議の申立てにおける証拠
(1)令和4年12月20日付け特許異議申立書に添付された甲1ないし14号証は以下のとおりである。
甲1号証 Shuyang Ding and Bharat Bhushan,“Tactile perception of skin and skin cream by friction induced vibrations”,Journal of Colloid and Interface Science,2016年,Vol.481,p.131-143
甲2号証 Keita HORIUCHI and Ken NAKANO,“Sliding Test by Using an Apparatus Imitating a Human Finger for Estimating the Tactile Sensation of Cosmetic Foundation”, Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing,2007年,Vol.1,No.5,p.726-736
甲3号証 米国特許出願公開第2016/0025615号明細書
甲4号証 Keita Horiuchi, Akio Kashimoto, Ryuta Tsuchiya, Masahito Yokoyama, Ken Nakano,“Relationship Between Tactile Sensation and Friction Signals in Cosmetic Foundation”,Tribology Letters,2009年,Vol.36,p.113-123
甲5号証 土屋竜太、中野健,「パウダーファンデーションの情緒的な肌触りを客観的に評価するシステム-ニューラルネットワークを利用したアプローチ-」,FRAGRANCE JOURNAL,2009年12月15日発行,Vol.37,No.12,p.39-48
甲6号証 水野(松本)由子 他4名,「情動ストレス刺激による脳波の時空間的変化」,臨床神経生理学,2012年,Vol.40,No.2,p.61-72
甲7号証 宅間正則 他3名,「AE法による摩耗状態の評価(第1報,ウェーブレット変換結果の適用)」,日本機械学会論文集(A編),2004年6月,第70巻第694号p.802-809
甲8号証 N.Wettels et al.,"Multi-modal Synergistic Tactile Sensing",Tactile Sensing in Humanoids-Tactile Sensors and Beyond Workshop--9th IEEE-RAS International Conference on Humanoid Robots,2009年12月7-10日開催
甲9号証 Yoshihiro TANAKA, Yuichiro UEDA and Akihito SANO,”Roughness evaluation by wearable tactile sensor utilizing human active sensing,Mechanical Engineering Journal,2016年,Vol.3,No.2,p.1-12
甲10号証 仲谷正史 他4名,「触感表現の一般普及に向けた方法論とテクタイルワークショップを通したその実践」,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,2014年,Vol.19,No.4,p.593-603
甲11号証 正木功一、戸谷永生,「摩擦感テスターを用いた油性剤の性能評価」,日本化粧品技術者会誌,1998年,Vol.32,No.1,p.59-64
甲12号証 科学研究費補助金研究成果報告書(機関番号:14401、研究種目:若手研究(B)、研究機関:2009~2010、課題番号:21700239、研究課題名:皮膚―材料間相互作用の評価による触感の定量化と触感設計、研究代表者:秋山庸子、研究者番号:50452470),2011年
甲13号証 特開2010-127871号公報
甲14号証 曽我部 敦,「レオロジーによる使用感触の定量化と製品開発への応用」,オレオサイエンス,2011年,第11巻第8号,p.269-275
(2)令和5年9月26日付け意見書に添付された甲15号証は以下のとおりである。
甲15号証 齋藤直輝 他3名,「ファンデーション塗布動作時の摩擦および振動特性評価システム」,ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集,2015年5月17日,2A1-A01(1)-(3)
2.特許異議の申立ての理由について
申立人によりなされた特許異議の申立ての理由の要旨は次のとおりである。
(1)取消理由1
本件訂正前の請求項1,9及び12に係る発明は、甲1号証に開示された発明、又は甲2号証に開示された発明と同一であるから、その特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2
本件訂正前の請求項1ないし13に係る発明は、甲1号証に開示された発明、又は甲2号証に開示された発明と甲4ないし14号証に開示された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
また、本件訂正前の請求項1ないし6及び8ないし12に係る発明は、甲3号証に開示された発明と甲4ないし14号証に開示された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
第5 取消理由通知に記載した取消理由
1.取消理由の概要
本件訂正前の請求項1ないし13に係る特許に対して、当審が令和5年5月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(進歩性)本件訂正前の請求項1,9,12及び13に係る発明は、甲2号証に記載された発明を基礎として、甲3号証に開示された技術及び甲13及び14号証にも開示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。したがって、本件特許の本件訂正前の請求項1,9,12及び13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2.甲号証の記載
(1)甲1号証
本願の優先日前に頒布された、甲1号証には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。(下線は当審で付与した。以下同様。)(当審訳は、甲1号証写しに添付された訳文を参考に作成した。)
ア 「In this study, frequency spectra of friction force and friction induced vibration signals were carried out to investigate tactile perception by an artificial finger sliding on skin. The influence of normal load, velocity, and cream treatment time were studied. Coherence between friction force and vibration signals were found. The amplitude of vibration decreased after cream treatment, leading to smoother perception. Increasing normal load or velocity between contacting surfaces generated a smoother perception with cream treatment, but rougher perception without treatment. As cream treatment time increases, skin becomes smoother.」(第131頁ABSTRACTの章の5-11行)
(当審訳: 本研究では、摩擦力と摩擦誘導振動信号の周波数スペクトルを行い、皮膚に滑り込む人工指による触覚を調べた。正常な負荷、速度、およびクリーム処理時間の影響を検討した。摩擦力と振動信号の一貫性が見つかった。クリーム処理後の振動の振幅が減少し、よりスムーズな知覚につながった。接触面間の正常な負荷または速度を増加させることは、クリーム処理で滑らかな知覚を生み出したが、治療なしではより粗い知覚を生み出した。クリームの治療時間が長くなるほど 肌が滑らかになる。)
イ 「1.3. Objective of the paper
In this paper we study vibration characteristics during rubbing of pig skin and a synthetic skin with and without cream treatment. Correlation between friction force and vibration in skin is sought in order to understand how cream treatment leads to perception of skin smoothness and softness by the brain. Here rubbing is conducted using an artificial finger and a low frequency acceleration sensor relevant for skin sliding is used to measure vibration characteristics. (第132頁 右欄第9-17行)
(当審訳:1.3 論文の目的
本論文では、豚の皮膚と合成皮膚の擦れ時の振動特性をクリームの治療の有無にかかわらず研究する。皮膚の摩擦力と振動の相関関係は クリーム治療が脳の肌の滑らかさと柔らかさの知覚につながる方法を理解するために求められている。ここで、摩擦は、人工指を用いて行われ、振動特性を測定するために皮膚摺動に関する低周波加速度センサが用いられる。)
ウ 「Fig.4
[図:0001406692000001.jpg]
Fig.4 (a)Schematic of an artificial finger, and (b)schematic of accelerated tribometer apparatus with a crossed I-beam strain-gauge transducer and accelerometer.」
」(第134頁)
(当審訳:Fig.4 (a)人工指の概略図、および(b)交差したIビームひずみゲージ変換器と加速度計を備えた加速トライボメータ装置の概略図。)
エ 「2.3 Experimental apparatus and procedure
A tribotest apparatus was used to rub the artificial finger on a skin sample surface in reciprocating mode [5]. During the rubbing experiments, normal load and friction force were measured using semiconductor strain gauges mounted to a crossed I-beam configuration. An accelerometer sensor was used to measure vjbration.」(第137頁左欄第3-8行)
(当審訳:2 .3.実験装置と手順
トリボテスト装置を使用して、往復モード[5]で皮膚サンプル表面に人工指をこすりつける。摩擦実験の間、通常の負荷および摩擦力は、交差Iビーム構成に取り付けられた半導体歪みゲージを用いて測定した。加速度計センサーを使用して振動を測定した。)
オ 「The space between the skin and core is filled with an incompressible, conductive fluid to give it a compliance that mimics human finger pads. Vibrations in the skin propagate through the fluid and are detected as dynamic (AC) signals by the hydroacoustic pressure sensor.」(第137頁左欄第24-28行)
(当審訳: 皮膚とコアの間の空間は、人間の指パッドを模倣するコンプライアンスを与えるために、非圧縮性、導電性流体で満たされている。皮膚の振動は流体を通して伝播し、流体音響圧カセンサによって動的(AC)信号として検出される。)
カ 「2.3.2. Description of tribotest apparatus and procedure
A schematic of the experimental set-up is shown in Fig. 4(b). The artificial finger was fixed io a stationary holder and mounted at the end of a flexible cantilever beam, It was loaded against a reciprocating skin sample. The skin samples were mounted on a steel base. The normal load was applied by a microactuator. A Velmax reciprocating stage was used to provide the reciprocating motion. A Newport RSX-1M sample stage was installed on top of the reciprocating stage. It was installed on a 2-axis tilt platform (Newport 36 series), which has position resolution of 2 μm in both the horizontal and vertical directions. The reciprocating sliding device can provide linear motion with adjustable stroke length up to 50mm and variable frequency up to 1.5Hz (velocity 30 mm/s and stroke is 10 mm). Normal load and friction forces are measured with strain gauges mounted on the cantilever beam on a crossed I-beam structure.」(第137頁左欄第35行-右欄第6行)
(当審訳: 2.3.2. トライボテスト装置の説明と手順
実験セットアップの概略を図4(b)に示す。人工指を固定したホルダーに固定し、柔軟な片持ち梁の端に取り付けた。これは、往復皮膚サンプルに対してロードされた。皮膚サンプルは、鋼製ベースに取り付けた。通常の負荷はマイクロアクチュエータによって適用された。ヴェルマックス往復ステージは、往復運動を提供するために使用された。ニューポートRSX-1Mサンプルステージは、往復ステージの上に設置された。それは水平および縦方向の両方の2μmの位置の決断がある2軸の傾きプラットホーム(ニューポート36シリーズ)に取り付けられた。往復スライディングデバイスは、最大50mmのストローク長を調整できる直線運動と、1.5Hzまでの可変周波数(速度30mm/sおよびストロークは10mm)を実現する。通常の負荷と摩擦力は、交差したIビーム構造上の片持ち梁ビームに取り付けられた歪みゲージで測定される。)
キ 「Skin cream is absorbed through the skin surface with time. Therefore, it is of interest how treatment time affects tactile perception. Fig.10 shows data for cream treatment time from 0 to 3h. The vibration spectra remains within the same frequency range, but the amplitudes of the peaks generally drop as a function of cream treatment time. This suggests that skin cream provides smoother tactile perception after 3 h treatment.」(第141頁右欄第1-8行)
(当審訳: スキンクリームは、時間とともに皮膚表面を通して吸収される。したがって、治療時間が触覚に与える影響が興味深い。図10は、クリーム処理時間0~3時間のデータを示す。振動スペクトルは同じ周波数範囲内に残るが、ピークの振幅は一般的にクリーム処理時間の関数として低下する。これは、スキンクリームが3時間の治療後に滑らかな触覚を提供することを示唆している。)
ク 「Fig.10
[図:0001406692000002.jpg]
Fig.10 Effect of cream treatment time on FFT acceleration data on pig skin with cream treatment with normal load of 50 mN, scanning velocity of 20 mm/s and film thickness of 1μm.」(第142頁)
(当審訳: Fig.10 クリーム治療をした豚の皮膚の、通常負荷50mN、走査速度20mm/s、クリームフィルム厚さ1μmの条件でのFFT加速度データにおける、クリーム治療時間の効果)
ケ 上記「ウ」、「エ」及び「カ」より、「トリボテスト装置において、皮膚サンプルを載せたサンプルステージを往復ステージの上にのせて皮膚サンプルに往復運動を提供し、人工指を片持ち梁ビームの端に取り付け、往復モードで皮膚サンプル表面に人工指をこすりつけ、交差したIビーム構造上の片持ち梁ビームに取り付けられた歪みゲージと加速度計センサーで、人工指にかかる負荷と摩擦力と振動を測定する」ことが読み取れる。
コ 上記「キ」には、0h,1h,3hにおけるFFT加速度データが示されていることが看てとれることから、上記「キ」及び「ク」より、「クリーム治療をした豚の皮膚のFFT加速度データをクリーム処理時間0時間、1時間、3時間でデータを取得し」たと認められる。
サ 上記甲1号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「トリボテスト装置において、皮膚サンプルを載せたサンプルステージを往復ステージの上にのせて皮膚サンプルに往復運動を提供し、人工指を片持ち梁ビームの端に取り付け、往復モードで皮膚サンプル表面に人工指をこすりつけ、交差したIビーム構造上の片持ち梁ビームに取り付けられた歪みゲージと加速度計センサーで、人工指にかかる負荷と摩擦力と振動を測定し、
スキンクリームでクリーム治療をした豚の皮膚のFFT加速度データをクリーム処理時間0時間、1時間、3時間でデータを取得し、
クリーム治療をした豚の皮膚の摩擦誘導振動信号の周波数スペクトルを求めて、皮膚に滑り込む人工指による触覚を調べる方法及び装置。」
(2)甲2号証
本願の優先日前に頒布された、甲2号証には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。(当審訳は、甲2号証写しに添付された訳文を参考に作成した。)
ア 「When a surface with a grooved pattern that imitates fingerprints is used in the sliding test, two types of frictional vibrations are observed. If an adequate sliding
velocity is selected, the slight difference between the four types of commercial cosmetic foundations is discriminable by using the signals of these vibrations.」(第726頁Abstractの章第10-14行)
(当審訳:指紋を模した溝状のパターンを持つ表面を摺動試験に使用すると、2種類の摩擦振動が観察される。適切な滑り速度を選択した場合、4種類の化粧品ファンデーションのわずかな違いは、これらの振動の信号を使用して識別可能である。)
イ 「Therefore, in the present study, friction signals involved in the rubbing of the cosmetic foundation with an apparatus that imitates a human finger have been investigated. In the sliding test with the apparatus under the frictional condition of humans acquiring the tactile sensation, a frictional vibration is observed, which should be related to the tactile sensation associated with the cosmetic foundation. 」(第727頁第14-18行)
(当審訳:そこで、本研究では、人間の指を模した装置による化粧ファンデーションの擦れに関与する摩擦信号を調査した。触感を得る人間の摩擦条件下での装置による摺動試験では、摩擦振動が観察され、これは化粧ファンデーションに関連する触感に関連するはずである。)
ウ 「2.1 Apparatus
An apparatus has been constructed for the purpose described above. It imitates the rubbing action of a human finger, through which the tactile sensation is acquired. The image and schematic diagram of the experimental apparatus are shown in Fig. 1.
In the apparatus, silicon rubber surfaces are employed for imitating human skin. The upper surface is a hemisphere of silicone rubber ( diameter: 16 mm, rubber hardness: A20), and the lower surface is a plate of silicone rubber (thickness: 1 mm, rubber hardness: A50).」(第727頁第24-30行)
(当審訳:2.1装置
以上の目的のために装置が構成された。それは触感を得る人間の指の擦れ動作を模倣する。実験装置の画像及び模式図を図1に示す。
この装置では、シリコーンゴム表面が人間の皮膚を模倣するために採用されている。上面はシリコーンゴムの半球(直径:16mm、ゴム硬度:A20)、下面はシリコーンゴムの板(厚さ :1mm、ゴム硬度:A50)である。)
エ 「Fig.1
[図:0001406692000003.jpg]
」
オ 「2.3 Procedure
After cleaning the upper and lower surfaces with ethanol, a sample was applied homogeneously on the lower surface by a cosmetic powder-puff. Then, the lower surface was pushed up onto the upper surface by a manual stage in the Y direction. After the contact load was adjusted with the deflection of the Y-directional spring, the lower surface was moved in the X direction by the motorized stage, and the signals from the two displacement sensors were stored in the digital data recorder.
The contact load and sliding velocity for imitating the human action of rubbing the surfaces were 0.05-0.25 N and 1-20 mm/s, respectively. The sampling frequency of the data recorder was 5000 Hz.」(第728頁第23-32行)
(当審訳:2.3 手順
上面と下面をエタノールで洗浄した後、化粧用パウダーパフにより下面にサンプルを均一に塗布した。そして、下面を手動ステージによりY方向に上面に押し上げた。Y方向ばねのたわみで接触荷重を調整した後、電動ステージで下面をX方向に移動させ、2つの変位センサからの信号をデジタルデータレコーダに保存した。
表面をこする人間の動作を模倣するための接触荷重と摺動速度は、それぞれ0.05-0.25 N と1-20 mm/sであった。データレコーダのサンプリング周波数は5000Hzとした。)
カ 「Fig.9
[図:0001406692000004.jpg]
Fig. 9 Time evolutions of sliding velocity (top), spring deflection in X direction (middle), and contour plots obtained from spring deflection with wavelet analysis (bottom) when a grooved-pattern surface is used; stiffness: 685 N/m (X direction) and 615 N/m (Y direction) and contact load: 0.20 N.」(第732頁)
(当審訳:Fig.9 溝パターンサーフェスを使用した場合の、滑り速度の時間変化 (上)、X 方向のばねのたわみ (中)、ウェーブレット解析によるばねのたわみから得られたコンタープロット (下)。 剛性: 685 N/m (X 方向) および 615 N/m (Y 方向) および接触荷重: 0.20 N.
キ 「The time evolutions of the sliding velocity and the spring deflection in the X direction are shown in Fig.9. The signal of the spring deflection was analyzed by wavelet analysis by using the Gabor wavelet as the mother wavelet.The results are shown in Fig. 9 as contour plots, where the dark area in the lots implies the largeness of the vibration amplitude.」(第733頁第2-5行)
(当審訳:x 方向の摺動速度とばねたわみの時間変化を図9に示す。ばねたわみの信号を、 マザーウェーブレットとしてガボールウェーブレットを用いたウェーブレット解析により解析した。結果は等高線図として図 9に示されており、プロット内の暗い領域は振動振幅の大きさを意味する。)
ク 「The sliding velocity increases from O to 20 mm/s in the period 0-1.5s. In the period 0-1.0s, vibration II is generated primarily. At 1.0s, the frequency of vibration II corresponds to that of vibration I, and the amplitude increases. In the period 1.0-1.5s, vibrations I and II are observed simultaneously. Further, in the period of decreasing sliding velocity, i.e., the period 1.5-3.0s, the same trend is recognized; in other words, the most characteristic phenomenon, i.e., the simultaneous generation of the two vibrations, is observed clearly with a sliding velocity of more than 10 mm/s.」(第733頁第13-19行)
(当審訳:摺動速度は、0~1.5 秒の期間に 0~20 mm/s に増加する。0~1.0秒の期間では、主に振動 II が発生する。1.0秒では、振動 IIの周波数は振動Iの周波数に対応し、振幅は大きくなる。1.0~1.5秒の周期では、振動lとll が同時に観測される。さらに、摺動速度が低下する期間、すなわち1.5~3.0秒の期間においても、同じ傾向が認識される。
つまり、最も特徴的な現象、すなわち2つの振動の同時発生は、10mm/s以上の摺動速度ではっきりと観察される。)
ケ 「If the two types of vibrations are detected by different types of tactile receptors and recognized as the different information, humans can discriminate the slight difference in the tactile sensation by using the amplitudes of the vibrations, as shown in Fig. 10 (b).」(第734頁第36-39行)
(当審訳:異なる種類の触覚受容体によって2種類の振動が検出され、異なる情報として認識された場合、人間は図10(b)に示すように、振動の振幅を用いて触感のわずかな違いを区別することができる。)
コ 「Fig.10
[図:0001406692000005.jpg]
Fig.10 Relationship between amplitudes of vibrations I and II; stiffness:685 N/m(X direction) and 615 N/m(Y direction) and contact load: 0.20N; (a)sliding velocity: 10 mm/s and (b)sliding velocity:20 mm/s.」(第733頁)
(当審訳:Fig.10 振動IとIIの振幅の関係;剛性:685 N/m(X方向)および615 N/m(Y方向)および接触荷重:0.20 N;(a)摺動速度:10mm/s、(b)摺動速度:20mm/s)
サ 上記「イ」ないし「オ」より、「上面はシリコーンゴムの半球で指紋を模した溝模様の面があり、下面はシリコーンゴムの板で4種類の市販の化粧ファンデーションをそれぞれ均一に塗布して、下面を手動ステージによりY方向に上面に押し上げ、電動ステージで下面をX方向に移動させ、上面を支えるホルダを測定する2つの変位センサからの信号をデジタルデータレコーダに保存して2種類の摩擦振動を観察する装置」が読み取れる。
シ 上記「カ」より、ウェーブレット解析によるばねのたわみから得られたコンタープロット (下)が、0~4秒の間で測定されたことが看てとれることから、上記「カ」及び「キ」より、「ウェーブレット解析によりX 方向の変位から得られた、0~4秒の間の周波数毎の振動振幅の大きさを示すコンタープロットは、プロット内の暗い領域は振動振幅の大きさを意味すること」が認められる。
ス 上記甲2号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「上面はシリコーンゴムの半球で指紋を模した溝模様の面があり、下面はシリコーンゴムの板で4種類の市販の化粧ファンデーションをそれぞれ均一に塗布して、下面を手動ステージによりY方向に上面に押し上げ、電動ステージで下面をX方向に10mm/s以上の摺動速度で移動させ、上面を支えるホルダを測定する2つの変位センサからの信号をデジタルデータレコーダに保存し、X方向の変位をウェーブレット解析により解析して、0~4秒の間の周波数毎の振動振幅の大きさを示すコンタープロットを得て2種類の摩擦振動を観察する装置を用いて、触感を得る人間の摩擦条件下での装置による摺動試験により、人間の指を模した装置による化粧ファンデーションの擦れに関与する摩擦信号を調査し、これらの振動の信号を用いて4種類の市販の化粧ファンデーション間の触感のわずかな差を識別可能とした装置および方法。」
(3)甲3号証
本願の優先日前に頒布された刊行物である甲3号証には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。(当審訳は、甲3号証写しに添付された訳文を参考に作成した。)
ア 「FIG.2A
[図:0001406692000006.jpg]
」
イ 「FIG.2B
[図:0001406692000007.jpg]
」
ウ 「[0097] Still referring to FIG. 2A, an apparatus including one or more linear actuators 330 capable of moving a biomimetic tactile sensor 341 to perform humanlike exploratory movements may include a base 335, gantry 336, linear actuators 330, mechanical adapter 337 and a biomimetic tactile sensor 341. The gantry 336 may be attached to the base 335 to hold a series of linear actuators 330 coupled together with mechanical adapters 337 that position the biomimetic tactile sensor 341 over a tactile surface 320. Other assembly arrangements including all or some of these components which permit for positioning and moving the biomimetic tactile sensor 341 over the tactile surface 320 may be possible as familiar to those skilled in the arts of mechanical system design. The gantry 336, base 335, and mechanical adapters 337 may be made of any family of engineering materials suitable as structural materials, including, but not limited to, metals, plastics, ceramics, or any other family of materials as familiar to those skilled in the art of engineering design. The base 335 may have a high mass to dampen vibrations from external sources. The linear actuators 330 may be any type of device capable of creating movement in a straight line such as hydraulic actuators, pneumatic actuators, piezoelectric actuators, electro-mechanical actuators, or any other type of actuator capable of creating motion in a straight line as familiar to those skilled in the art of actuation. Other actuators that do not necessarily produce motion in a straight line may be used, provided that the assembled system imitates humanlike exploratory movements, such as those that incorporate tendons or pulleys and other actuation technology familiar to those skilled in the art of mechatronic design. The linear actuators 330 may be programmed to move the biomimetic tactile sensor 341 over the tactile surface 320 with a movement profile that resembles a humanlike exploratory movement. These humanlike exploratory movements may be similar to the movements humans make when exploring objects by touch and may include, but are not limited to, pressing the biomimetic tactile sensor 341 into the tactile surface 320 with a predetermined profile of force, velocity, displacement, or combination of force, velocity, and displacement, sliding the biomimetic tactile sensor 341 over the tactile surface 320 with a predetermined trajectory of velocities in one or more directions, or any of the above movements using sensory data from the biomimetic tactile sensor 341 to control force, displacement or velocity as described below.」
(当審訳:まだ図 2A を参照すると、人間様探索動作を行うために生体模倣触覚センサ341を動かすことができる1つ以上の線形アクチュエータ330を含む装置は、ベース335、ガントリー336、線形アクチュエータ330、機械アダプタ337及び生体模倣触覚センサ341を含むことができる。 ガントリー336は、 触覚表面320上に生体模倣触覚センサ341を配置する機械的アダプタ337と一緒に結合された一連のリニアアクチュエータ330を保持するために、ベース335に取り付けられてもよい。生体模倣触覚センサ341を触覚表面320上に位置決め及び移動させることを可能にするこれらの構成要素の全て又は一部を含む他の組立配置は、機械システム設計の技術分野における当業者に周知のように可能であり得る。ガントリー336、ベース335、及び機械的アダプタ 337は、金属、プラスチック、セラミック、又は工学設計の当業者に馴染み深い他の材料群を含むがこれらに限定されない、構造材料として適した工学材料の任意の系列で作られてもよい。ベース335は、外部ソースからの振動を減衰させるために、高い質量を有していてもよい。リニアアクチュエータ330 は、油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、圧電アクチュエータ、電気機械アクチュエータ、またはアクチュエーションの技術分野における当業者に馴染みのある直線で運動を作り出すことのできる任意のタイプの装置であってもよい。組み立てられたシステムが、腱または滑車およびメカトロニクス設計の技術分野の当業者に馴染みのある他の作動技術を組み込んだものなど、人間のような探索的な動きを模倣することを条件に、必ずしも直線での動きを生成しない他のアクチュエータが使用されてもよい。リニアアクチュエータ330は、生体模倣触覚センサ341を触覚表面320上で人間のような探索動作に類似した動作プロファイルで動かすようにプログラムされてもよい。これらの人間らしい探索動作は、人間が触覚によって物体を探索するときに行う動作に類似していてもよく、力、速度、変位、又は力の組み合わせの所定のプロファイルで生体模倣触覚センサ341を触覚表面320に押し込むこと、速度、および変位、1つ以上の方向における速度の所定の軌道で触覚表面320上を生体模倣触覚センサ341をスライドさせること、または以下に述べるように力、変位または速度の制御を行うために生体模倣触覚センサ341からの感覚データを用いて上記のいずれかの動きを行うことを含んでもよいが、これらに限定されない。)
エ 「[0098] A biomimetic tactile sensor 341 whose sensory capabilities, sensitivity, resolution, and mechanical properties and interactions with objects being explored are similar to those of human fingertip may be a device such as the BioTac (SynTouch LLC, Los Angeles, Calif.). The ability of the biomimetic tactile sensor 341 to produce interactions between the tactile surface 320 that are similar to those that would be produced when interacting with a human fingertip may benefit from the biomimetic tactile sensor 341 having similar mechanical properties as the human fingertip such as similar compliance, shape, size and may also benefit from the biomimetic tactile sensor 341 having similar features as the human fingertip such as a fingernail that facilitates the transduction of tangential forces applied to the fingerpad, and fingerprints that enhance vibrations induced and sensed when sliding the biomimetic tactile sensor 341 over a textured surface.」
(当審訳:感覚能力、感度、解像度、および機械的特性、および探索されるオブジェクトとの相互作用が人間の指先のものと類似している生体模倣触覚センサ341は、BioTac(SynTouch LLC、 Los Angeles、 California) などのデバイスであってもよい。)人間の指先と相互作用するときに生じるであろうものに類似する触覚表面 320 間の相互作用を生じさせる生体模倣触覚センサ341 の能力は、生体模倣触覚センサ341が類似のコンプライアンス、形状などの人間の指先と類似の機械的特性を有することから利益を得ることができる。サイズであり、また、生体模倣触覚センサ341が、指板に加えられる接線力の伝達を容易にする爪、および生体模倣触覚センサ341をテクスチャ表面上でスライドさせるときに誘発され感知される振動を高める指紋などの人間の指板と同様の特徴を有することから利益を得ることができる。)
オ 「[0123] Macrotexture coarseness may be derived from the frequency of vibrations that naturally occur due to relative sliding between the biomimetic tactile sensor 341 and the object 120. The vibrations are caused by structural features that can be of various spatial wavelengths on the object 120, but have a spatial wavelength that is larger than the spacing between neighboring human fingerprint ridges, i.e., larger than about 0.3 mm. Other thresholds may be possible and the minimum spatial wavelength for a macrotexture feature may be between 0.2-2 mm. In the human fingertip when sliding with velocities between 0.5-10 cm/s, these vibrations, which are highly dependent on the complex interactions between the fingerprints and object 120, can be between 5-100 Hz and may be captured by Meissner corpuscles in the skin that may be responsible for perceiving vibrations in these frequency ranges. To elicit these vibrations from the relative sliding between the biomimetic tactile sensor 341 and the object 120 so they may be sensed by a biomimetic tactile sensor 341, sliding movements may be used with forces that may be in, but not limited to, the range of 0.2-2N of force and sliding velocities that may be in, but not limited to, the range of 0.5-10 cm/s. The value of the macrotexture coarseness may be computed by an analytical function 160 that determines a measure of vibration frequency in a frequency band that is within 5-100 Hz as detected by the biomimetic tactile sensor. For example, the macrotexture coarseness may be computed from the spectral centroid by first computing a discrete Fourier transform of the vibration time signal, squaring the magnitude of each bin in the discrete. ・・・」
(当審訳:マクロテクスチャーの粗密は、生体模倣触覚センサ341と物体120との間の相対的な摺動により自然に発生する振動の周波数から導出することができる。振動は、物体120上の様々な空間波長であり得る構造的特徴によって引き起こされるが、隣接する人間の指紋隆線間の間隔よりも大きい空間波長を有する、すなわち、約0.3mmよりも大きい空間波長を有する。他の閾値も可能であり、マクロテクスチャフィーチャの最小空間波長は、0.2-2mmの間であってもよい。0.5~10cm/s の間の速度で摺動するときの人問の指先では、指紋と物体120との間の複雑な相互作用に大きく依存するこれらの振動は、5~100Hzとなり、これらの周波数範囲における振動の知覚を担当し得る皮膚中のマイスナー体によって捕えられる可能性がある。生体模倣触覚センサ341によって感知され得るように、生体模倣触覚センサ341と物体120との間の相対的な摺動からこれらの振動を引き出すために、0.2~2Nの範囲の力であってよく、0.5~1Ocm/sの範囲であってよく、これに限定されない摺動速度で摺動運動が使用され得る。マクロテクスチャーの粗密の値は、生体模倣触覚センサによって検出される5~1OOHzの範囲内にある周波数帯域における振動周波数の尺度を決定する解析関数160によって計算されてもよい。例えば、マクロテクスチャーの粗密は、まず振動時間信号の離散フーリエ変換を計算し、振動時間信号の離散フーリエ変換における各ビンの大きさを二乗してパワーを決定し、各ビンにそれぞれの周波数を乗じて重み付けし、すべての成分を合計し、その合計をすべての二乗離散フーリエ変換ビンの合計で割ってその中心周波数を決定してスペクトルセントロイドから計算されてもよい。・・・)
カ 「[0153] In addition to computing the above tactile properties of an object 120, variants of these tests may exist. For example, many objects have surfaces properties that change one or more tactile properties with repeated exploration, such as the nap of a compressible fabric or skin lotion applied to the skin. To evaluate how these changes, a surface may be tested repeatedly while tactile properties are measured as the surface wears or otherwise changes over time. In another example surfaces may have time dependent properties such as a wet floor that is drying. To evaluate how these properties change over time, a surface may be tested repeatedly over time at a preset interval to measure how these properties change over time.・・・」
(当審訳:オブジェクト120の上記の触覚特性を計算することに加えて、これらのテストの変形が存在してもよい。例えば多くの物体は、圧縮可能な布の綿毛や皮膚に塗布されたスキンローションのように、繰り返しの探査によって1つ以上の触覚特性を変化させる表面特性を有する。これらの変化を評価するために、表面は繰り返し試験され、触覚特性は表面の磨耗やその他の経時変化に応じて測定されることがある。別の例では、濡れた床が乾いていくように、表面は時間依存の特性を持つことがある。これらの特性が時間とともにどのように変化するかを評価するために、表面を予め設定された間隔で繰り返し試験して、これらの特性が時間とともにどのように変化するかを測定することができる。・・・)
キ 「[0154] These tactile exploration, measurement, and perception technologies may be used in quality control and product design and in other fields. The object investigation and classification system 100 may be used in product development applications to determine if one product has a similar feel to another product. In order to determine the tactile properties of a given object 120 under test, the object investigation and classification system 100 may perform humanlike exploratory movements over the object 120 and compute its tactile properties including, but not limited to, those described above. These tactile properties may then be added to an experience database 113 that may be accumulated by performing many humanlike exploratory movements and computing many tactile properties over many objects 120. Design and manufacturing industries for garments, paper goods, consumer electronics, cosmetics, skin and hair care products, prepared foods, and other products commonly employ humans with expertise in classifying objects and materials according to their tactile attributes. ・・・」
(当審訳:これらの触覚探索・計測・知覚技術は、品質管理・製品設計などの分野で利用することができる。物体調査・分類システム100は、ある製品が他の製品と類似した感触を有するかどうかを判断するために、製品開発用途で使用されてもよい。テスト中の所定の物体 120の触覚特性を決定するために、物体調査及び分類システム100は、物体120の上で人間のような探索動作を行い、上述したものに限定されないが、その触覚特性を計算してもよい。これらの触覚特性は、次に、多くの人間的な探索動作を行い、多くの物体120にわたって多くの触覚特性を計算することによって蓄積され得る経験データベース113に追加されてもよい。 衣服、紙製品、家電製品、化粧品、スキンケア製品、ヘアケア製品、 調理済み食品、および他の製品の設計および製造産業は、一般に、物体および材料をその触覚属性に従って分類する専門知識を有する人間を採用している。物体調査及び分類システム100によって測定された触覚特性による分類は、他の製品の感触を模倣しようとする製品を設計するとき、又は損傷した物体の感触を復元するときに有用であり得る。 ・・・)
ク 上記甲3号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「ベース335、ガントリー336、線形アクチュエータ330、機械アダプタ337及び生体模倣触覚センサ341を含む装置を用い、
生体模倣触覚センサ341をテスト中の所定の物体 120の触覚表面320上に位置決めし、速度、および変位、1つ以上の方向における速度の所定の軌道で触覚表面320上を生体模倣触覚センサ341をスライドさせ、生体模倣触覚センサ341と物体120との間の相対的な摺動からこれらの振動を引き出し、
生体模倣触覚センサ341によって検出される5~1OOHzの範囲内にある周波数帯域における振動周波数の尺度を決定する解析関数160によって、マクロテクスチャーの粗密の値を計算し、
マクロテクスチャーの粗密は、まず振動時間信号の離散フーリエ変換を計算し、振動時間信号の離散フーリエ変換における各ビンの大きさを二乗してパワーを決定し、各ビンにそれぞれの周波数を乗じて重み付けし、すべての成分を合計し、その合計をすべての二乗離散フーリエ変換ビンの合計で割ってその中心周波数を決定してスペクトルセントロイドから計算されるものであり、
皮膚に塗布されたスキンローションのように、繰り返しの探査によって1つ以上の触覚特性を変化させる表面特性を有する物体を測定し、表面を予め設定された間隔で繰り返し試験して、これらの特性が時間とともにどのように変化するかを測定することを行う、
テスト中の所定の物体 120の触覚特性を決定する方法及び装置。」
(4)甲4号証
本願の優先日前に頒布された、甲4号証には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。(当審訳は、甲4号証写しに添付された訳文を参考に作成した。)
ア 「Abstract A tribometer was developed to simulate friction phenomena occurring when human fingers are rubbed together in order to acquire the tactile sensation of applying cosmetic foundation. The tribometer utilizes silicone-rubber surfaces with compliance comparable to that of human fingerpads; these surfaces are lubricated by 1O types of samples simulating cosmetic foundation. To characterize the samples, seven types of feature quantities are introduced from friction signals acquired in three types of sliding tests. The relationship between feature quantities and tactile sensation was investigated using a multiple regression analysis; resulting equations show some level of agreement with the score of a sensory assessment vis-d-vis five types of tactile sensation. The results indicate that static and kinetic frictions are not always dominant factors in determining the comfort of tactile sensation in applying cosmetic foundation.」(第113頁左欄第1-17行)
(当審訳:要約 トライボメータは、人の指をこすり合わせたときに生じる摩擦現象をシミュレートして、ファンデーションをつけたときの触感をつかむために開発された。トライボメータは、シリコーンゴムの表面を使用しており、コンプライアンスは人間の指腹に匹敵する。これらの表面は、化粧品のファンデーションをシミュレートする10種類のサンプルによって潤滑される。サンプルを特徴付けるために、3種類の摺動試験で取得した摩擦信号から7種類の特徴量が導入される。特徴量と触感の関係は、重回帰分析を用いて調べた。得られた方程式は、5つの触感と比較して、官能評価のスコアとある程度の一致を示している。結果は、静的および動的摩擦が、化粧品ファンデーションを適用する際の触感の快適さを決定する際の必ずしも主要な要因ではないことを示している。)
イ 「2 Samples
・・・
To determine the target values of our system, a sensory assessment of tactile sensation was carried out.We selected five types of tactile sensation, as shown in Table 3: smoothness (y1), silky feeling (y2), velvety feeling (y3), softness (y4), and skin-adhesion ability (y5). These tactile sensations are often used in the cosmetics industry; for each one, three experts of cosmetic foundation determined a score from -2 to +2, based on the tactile sensation felt when applying a sample to the back of the hand or the inner surface of the wrist with an index finger. The results are listed in Table 4, where a higher value represents greater tactile sensation.」(第114頁左欄第26行-右欄第3行)
(当審訳:我々のシステムの目標値を決定するために、触感の官能評価を行った。表3に示すように、触感にはのびのよさ(y1)、さらさら感(y2)、なめらかさ(y3)、やわらかさ(y4)、肌へのつきの良さ(y5)の5種類を選定した。これらの触感は化粧品業界でよく使われており、化粧品ファンデーションの専門家3人がそれぞれについて、人差し指で手の甲や手首の内面にサンプルを塗布したときに感じる触感に基づいて、-2から+2までのスコアを決定した。結果を表4に列挙し、ここで、より高い値はより良い触感を表す。)
ウ 「Fig.1
[図:0001406692000008.jpg]
Fig.1 Image and schematic diagram of tribometer」(第115頁左欄)
(当審訳:図1 トライボメータのイメージと模式図)
エ 「4.2 Results
4.2.1 Sliding Test 1(ST1)
Figure 2 shows examples of the friction signals, i.e., the time-evolving signals of the X-directional spring deflection, with and without samples A, H, and I acquired in ST1, where the lower surface moved in the X-direction for approximately 1 s from O s. The stored discrete data of 4,096 (=212) points from 0.3 to 1.1 s were analyzed with a fast Fourier transformation; the resulting spectra are shown in Fig. 3.」(第116頁右欄第1-10行)
(当審訳:4.2 結果
4.2.1 摺動試験1(ST1)
図2は、ST1で取得されたサンプルA、H、および I がある場合とない場合の摩擦信号、つまりX方向のばねたわみの時間発展信号の例を示している。ここで、下面が 0秒から 約1秒間x方向に移動した。格納された0.3~1.1秒の4,096 (= 212)ポイントの離散データは、高速フーリエ変換で分析された。結果のスペクトルを図3に示す。)
オ 「5 Multiple Regression Analysis
It has been found that the friction signals acquired in the three types of sliding tests varied among the different samples. Considering that all signals were characterized by some feature quantities, it is reasonable to believe that we can estimate the tactile sensation of the samples from the friction signals acquired by the tribometer, via a determination of the proper feature quantities of the signals. Consequently, in what follows, seven types of feature quantities obtained from the friction signals are introduced; a multiple regression analysis is applied, to investigate the relationship between the feature quantities (xj) and the tactile sensations of the samples(yi).」(第118頁右欄第1行-119頁左欄第2行)
(当審訳:5 重回帰分析
3種類の摺動試験で取得した摩擦信号は、サンプルによって異なることが分かっている。すべての信号がいくつかの特徴量によって特徴付けられたことを考慮すると、信号の適切な特徴量の決定を介して、摩擦計によって取得された摩擦信号からサンプルの触感を推定できると考えるのが妥当である。そこで、以下では、摩擦信号から得られる7種類の特徴量を紹介する。重回帰分析を適用して、特徴量(xj)とサンプルの触感(yi)との関係を調査する。)
カ 「5.1 Feature Quantities of Friction Signals
To characterize the friction signals acquired in the three types of sliding tests, seven types of feature quantities (Table 6) were introduced.
From the friction signals in STl, we chose four types of feature quantities (x1-x4). The first is the static friction coefficient (x1); the maximum static friction was estimated as the product of the X-directional stiffness and the maximum spring deflection, and x1 was defined as the ratio of the maximum static friction and the contact load. The second is the kinetic friction coefficient (x2); the kinetic friction was estimated as the product of the X-directional stiffness and the mean spring deflection of 0.7-1.1 s, and x2 was defined as the ratio of the kinetic friction and the contact load. The third is the time for decrease in kinetic friction (x3), defined as the time to decrease from the maximum to asymptotic spring deflections-for example, 0.07 s (0.23-0.30 s) for sample A and 0.44 s (0.26--0.70 s) for sample H, from the signals in Fig. 2 The fourth is the amplitude of vibration at natural frequency (x4), defined as the peak value around fn = 22 Hz in the spectrum of the friction signal, shown in Fig. 3. From the friction signals in ST2, we chose two types of feature quantities, x5 and x6. The former is the asymptotic spring deflection (x5), defined as the mean spring deflection of 1.3-1.6 s. The latter is the time for increase in kinetic friction (x6), defined as the time to increase from the maximum to asymptotic spring deflections-for example, 0.9 s (0.2-1.1 s) for sample A and 0.3 s (0.2-0.5 s) for sample H, from the signals in Fig. 4. From the friction signals in ST3, we chose a feature quantity x7; it is the amplitude of vibration caused by grooves (x7), defined as the peak value around fg = 50 Hz in the spectrum of the friction signal. shown in Fig. 6.・・・」(第119頁左欄第3行-右欄第9行)
(当審訳:5.1摩擦信号の特徴量
3種類の摺動試験で取得した摩擦信号を特徴付けるために、7種類の特徴量(表6)を導入しました。
ST1の摩擦信号から、4種類の特徴量(x1~x4)を選択した。1つ目は静摩擦係数(x1)で、最大静摩擦は X方向の剛性と最大ばねたわみの積として推定され、x1は最大静摩擦と接触荷重の比として定義される。2つ目は動摩擦係数 (x2)で、動摩擦はX方向の剛性と 0.7~1.1秒の平均ばねたわみの積として推定され、x2は動摩擦と接触荷重の比として定義された。3つ目は動摩擦の減少時間(x3)で、図2の信号から、サンプルAでは0.07秒(0.23~0.30秒)、サンプルHでは0.44秒(0.26~0.70秒)と、最大ばねたわみから漸近的なばねたわみまで減少する時間として定義される。4つ目は固有振動数(x4) における振動の振幅であり、図3に示す摩擦信号のスペクトルにおけるfn=22Hz付近のピーク値として定義される。ST2の摩擦信号から、x5とx6の2種類の特徴量を選択しました。前者は漸近的なばねたわみ(x5)で、1.3~1.6 秒の平均ばねたわみとして定義される。後者は、図4の信号から、最大ばねたわみから漸近的なばねたわみ(たとえば、サンプルAでは0.9秒(0.2~1.1秒)、サンプルHでは0.3秒(0.2~0.5秒)に増加する時間として定義される、動摩擦の増加時間(x6)である。ST3の摩擦信号から特徴量x7を選択し、溝による振動の振幅(x7)を、図6に示す摩擦信号のスペクトルにおけるfg=50Hz付近のピーク値として定義した。)
キ 上記「ウ」より、「サンプルをX方向にスライドさせ、サンプル上面に接触するシリコーンゴムのX方向変位を測定するトライボメータ」が看てとれる。
ク 上記甲4号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲4号証には、次の技術(以下「甲4開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「サンプルをX方向にスライドさせ、サンプル上面に接触するシリコーンゴムのX方向変位を測定するトライボメータを用い、
サンプルにシリコーンゴムを化粧品のファンデーションをシミュレートする10種類のサンプルによって潤滑されたものを用い、
3種類の摺動試験で取得した摩擦信号を高速フーリエ変換で分析し、静摩擦係数(x1)、動摩擦係数 (x2)、動摩擦の減少時間(x3)、固有振動数(x4)、漸近的なばねたわみ(x5)、動摩擦の増加時間(x6)、溝による振動の振幅(x7)という、7種類の特徴量を求め、
のびのよさ(y1)、さらさら感(y2)、なめらかさ(y3)、やわらかさ(y4)、肌へのつきの良さ(y5)の5種類の触感と、上記7種類の特徴量との関係を重回帰分析を用いて、摩擦計によって取得された摩擦信号からサンプルの触感を推定する技術。」
(5)甲5号証
本願の優先日前に頒布された、甲5号証には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。
ア 「開発した感触評価装置を利用して、モデルパウダーファンデーションに対する種々の摩擦・加振試験を行い、そこで得られた時系列信号の複数の特徴量と、専門パネラーによる官能評価スコアとの関係を、ニューラルネットワークで学習・推定している。」(第40頁左欄第17行-第22行)
イ 「市販のパウダーファンデーションは、主に粉体と油剤で構成されており、一般的には90%程度が粉体である。用いる粉体は主に板状粒子(5~50μm程度)と球状粒子(~20μm程度)であり、感触を調整する場合には、これらの比率や粒子径、材質などを変化させる。本研究で用いたモデルパウダーファンデーション(以後「試料」と呼ぶ)は、それら板状粒子と球状粒子の配合比率を変えたもの、粒径を変えたもの、油剤の粘度を変えたものである(表1)。実験に先立ち、各試料について専門評価者による官能評価を行った(表2)。評価項目は,ファンデーションの肌触りを評価する際によく用いられる「のびのよさ(y1)」,「さらさら感(y2)」,「なめらかさ(y3)」,「やわらかさ(y4)」,「肌へのつきのよさ(y5)」の5項目とした。」(第40頁右欄第7-22行)
ウ 「開発した感触評価装置(図1)は、ヒトの手指を模擬するために、低ヤング率(0.5MPa)のシリコンゴムを用いて摩擦面を構成し、直径16mmの半球(上面)と厚さ5mmの平板(下面)の点接触を利用している。すべり摩擦計測(ST:sliding test)では、 バフを用いて試料を接触面に塗布した後、下面を支持するばねの復元力によりZ方向の接触荷重(0.2N)を与えて、自動ステージによりX方向へ駆動(20mm/s)する。このとき、柔軟に支持した上面は、接触と摩擦によるトライボロジー現象の影響下で運動し、そのX方向の運動を非接触変位計が計測して、後の解析に必要な時系列信号を得る構造になっている。」(第41頁左欄第2行目~第42頁左欄第6行)
エ 「
[図:0001406692000009.jpg]
図1 感触評価装置」
オ 「試料なしの場合,最大静止摩擦力によるたわみの極大値が現れた後に,動摩擦力による一定のたわみが現れるという,典型的なすべり摩擦信号が得られている(上段)。それに対して試料を塗布すると,試料の潤滑効果によりばねのたわみ量(すなわち摩擦力)が1桁程度減少し,すべり摩擦時には,系の固有振動数(23Hz)での振動が発生している(中下段)。」(第42頁左欄第16行-右欄第2行)
カ 「試料の違いや条件の違いによって多様に変化する時系列信号(前節参照)を、試料の感触の官能評価スコア(表2)と結びつける非線形写像を求めることが、我々が開発するシステムのソフトウェアの役割である。現状では、得られた時系列信号から複数の特徴量を抽出して、次節で紹介するニューラルネットワークに適用している。例えばST1からは, 静止摩擦係数 (x1), 動摩擦係数 (x2)をはじめとして,動摩擦減少時間(x3)ならびにスティックスリップ振幅(x4)を特徴量として挙げることができるし,ST2からは,最終たわみ量(x5)と動摩擦増加時間(x6)を特徴量として挙げることができる。また,ST3からは,強制振動振幅(x7:得られた時系列信号からスペクトルを求めて強制外力により生じる振動成分(50Hz)の振幅を算出)を特徴量として挙げることができるし,ST4からは,ST1との差として,静止摩擦係数差(x8) と動摩擦係数差(x9)を特徴量として挙げることができる。すべり摩擦計測から得られた以上9種類の特徴量 (x1~x9) について,全試料の値を図4に示す。特徴量の値は10回の計測の平均値であり,エラーバーはその標準偏差を示している。」(第43頁左欄第23行~右欄第4行)
キ 「図4と図5に示した11種類の特徴量 (x1~x11)を入力,表2に示した5種類の感触(y1~y5)を出力とみなし,両者を結びつける入出力関係(非線形写像)を求めるために,ニューラルネットワークを利用した試みについて紹介したい。ニューラルネットワークは,人間の脳のメカニズムをヒントに考案された数学モデルであり,一見暖昧な入出力関係を定量化する際に有効な,高い汎化能力を備えた手法である。」(第43頁右欄第18行-第26行)
ク 「同図の横軸は,官能評価から得た感触のスコア,縦軸はニューラルネットワークが出力した感触のスコアである。学習用に用いた15種類の試料に対する結果(○印)が,いずれも図中の破線付近に位置していることは,本ニューラルネットワークの学習が良好になされたことを意味している。また,学習に用いなかった残り5種類の試料の特徴量を学習済みのニューラルネットワークに入力して,それらの感触を推定した。「肌へのつきのよさ(y5)」については,いくらか比較的大きな誤差(0.52)が認められるものの,感触の推定結果(●印)は総じて図中の破線付近に分布するという,当初の期待通りのシステム性能が得られた。」(第45頁右欄第6行-第46頁右欄第1行)
ケ 「
[図:0001406692000010.jpg]
図7 ニューラルネットワークの学習結果(○)と推定結果(●)」(第46頁)
コ 上記甲5号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲5号証には、次の技術(以下「甲5開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「平板(下面)に塗布されたファンデーションに半球(上面)を接触させながら平板をX方向へ駆動させ、上面は接触と摩擦によるトライボロジー現象の影響下で運動し、そのX方向の運動を非接触変位計が計測する感触評価装置を利用して、20種類のファンデーションを用い、11種類の特徴量 (静止摩擦係数 (x1), 動摩擦係数 (x2),動摩擦減少時間(x3),スティックスリップ振幅(x4),最終たわみ量(x5),動摩擦増加時間(x6),強制振動振幅(x7:得られた時系列信号からスペクトルを求めて強制外力により生じる振動成分(50Hz)の振幅を算出),静止摩擦係数差(x8) ,動摩擦係数差(x9)を含む特徴量) を求め、専門パネラーによる5種類の感触(のびのよさ(y1),さらさら感(y2),なめらかさ(y3),やわらかさ(y4),肌へのつきのよさ(y5)) との関係を15種類のファンデーションの結果からニューラルネットワークの学習により求め、学習に用いなかった5種類のファンデーションの特徴量を求めた関係に入力して感触を推定する技術。」
(6)甲6号証
本願の優先日前に頒布された甲6号証には、「脳波をウェーブレット解析によって解析し、周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータが図2に示されており、周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータから特定の時間、特定の周波数帯域の平均信号強度を求める技術」(以下「甲6開示技術」という。)が記載されている(特に、第63頁左欄第4-31行、及び 図2参照)。
(7)甲7号証
本願の優先日前に頒布された甲7号証には、「AE信号をウェーブレット解析によって解析し、周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータが図2に示されており、 周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータから、 特定の周波数成分の重心を求める技術」(以下「甲7開示技術」という。)が記載されている(特に、第803頁左欄第3行-右欄第12行及び図2参照)。
(8)甲8号証
本願の優先日前に頒布された甲8号証には、「所定の物体に対し動作体を動かすことによって発生する振動を検出し、検出した振動の周波数スペクトルを用いて、所定の物体に対し動作体を動かすときの触感を評価する場合に、経時的に検出した振動から振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成する技術」(以下「甲8開示技術」という。)が記載されている(特に、図4参照)。
(9)甲9号証
本願の優先日前に頒布された甲9号証には、以下の技術事項が記載されている。(当審訳は、甲9号証写しに添付された訳文を参考に作成した。)
ア 「Vibrations based on the normal displacement of the skin and sound caused by the mechanical interaction between the user's finger and the object surface are collected by the microphone in contact with the user's skin.」(第3頁17-18行)
(当審訳:皮膚に接触したマイクロホンは、皮膚の正常な変位に基づく振動と、ユーザの指と物体表面との機械的相互作用によって生じる音を収集する。)
イ 「During our experiments, power spectrum density (PSD) was calculated for evaluation using 2048 points of the obtained sensor output signals every 5.125 ms.」(第4頁第11-12行)
(当審訳:実験では, 得られたセンサ出力信号の 5.125ms ごとに 2048 点のパワースペクトル密度(PSD) を算出して評価した。)
ウ 「Therefore, the sum of PSD from 20 to 5k Hz was calculated as a single feature presenting the intensity of the sensor output for the roughness evaluation in this paper. The sum of PSD was given using the following equation:」(第4頁第19-20行)
(当審訳:そこで、20Hzから5kHzまでのPSDの和を、粗さ評価のためのセンサ出力の強度を示す1つの特徴量として算出した。PSDの和は以下の式で与えられる。)
エ 上記甲9号証の記載事項を総合勘案すると、甲9号証には、次の技術(以下「甲9開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「皮膚の正常な変位に基づく振動と、ユーザの指と物体表面との機械的相互作用によって生じる音を皮膚に接触したマイクロホンで収集し、得られたセンサ出力信号の 5.125ms ごとに 2048 点のパワースペクトル密度(PSD) を算出し、20Hzから5kHzまでのPSDの和を、粗さ評価のためのセンサ出力の強度を示す1つの特徴量として算出する技術。」
(10)甲10号証
本願の優先日前に頒布された甲10号証には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
ア 「図6に,紙コップの底面にマイクロフォンを貼付し,紙コップに入れられたモノがもたらす触感を記録した例(図6左)について,解析した事例を示す.音声信号処理で広く利用されるスペクトラム解析を利用して検討を行ったところ(図6中央),(1)振動の基本周波数(2)基本周波数の最大振幅(3) 振動刺激の時間間隔の3要素によって触感を区別しうることが示唆された(図6右).このことは,観察者が受けている主観的な触感を,記録したデータから客観的に推測し得ることを示す.」(第601頁左欄第13-22行)
イ 「
[図:0001406692000011.jpg]
図6 記録した触感性の音声信号の解析例」(第601頁)
ウ 上記甲10号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲10号証には、次の技術(以下「甲10開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「摩擦振動のスペクトグラムの所定の時間帯(時間間隔)および所定の周波数の統計量(最大振幅)を用いて観察者が受けている触感を評価する技術」
(11)甲11号証
本願の優先日前に頒布された甲11号証には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。
ア 「2.実験
2.1 MIU測定方法
・・・
摩擦感テスター(KES-SEカトーテック(株))による平均摩擦係数(MIU)の測定は,温度20℃,湿度40%下で,擬似皮膚である人口皮革(出光石油化学(株)製サプラーレ)の上に,サンプルを塗布して測定した(Fig.-1)。サンプル量は通常顔に塗布するクリームの量,即ち0.005 g/cm2を目安とした。
塗布中及び塗布後のなめらかさを調べるため,Fig.-2のようにサンプル0.1mlの塗布状態をかえて測定した。Fig.-2のa)は,人口皮革上にサンプルを滴下して,その上にセンサーを置きMIUを測定する。これは塗布時にクリーム等を手にとり肌に塗り始める最初の感触であると考えられる。 b)は(3×4)cm2の面積にあらかじめサンプルを伸ばしMIUを測定するため,塗布時にクリームを次第に伸ばしているときの感触である。この時のサンプルの塗布量は0.008 g/ cm2であった。c) は更に(3×8)cm2の面積(サンプル塗布量は0.004g/cm2)に伸ばしてクリームを塗り終わろうとする時の感触のモデルとした。そして最後に,c)の状態から30分経過しMIUを測定することにより塗布後の感触d)とした。」(第59頁右欄第3行-第60頁左欄最終行)
イ 「
[図:0001406692000012.jpg]
」(第60頁)
ウ 「2.2 官能評価法
1) サンプル0.1 mlを上腕の内側にスポットし,人差し指で5往復する間に(3×4)cm2の面積に塗布する。
2)サンプルを同様に更に5往復する間に(3×8)cm2の面積にひろげて塗布する。
3)塗布後30分後。
各ステップにおける「なめらかさ」を評価した。よく教育訓練した女性5名,男性5名のパネラーで5段階評価により採点し,10人の評点の平均値を求めた。尚最もなめらかさが高い場合を5とし,低い場合を1とした。」(第60頁右欄第1-12行)
エ 「これらの値と連続的に行われる塗布との相関を観るため,官能評価でサンプルを(3×4)cm2の面積にひろげるまでの評点は塗布モデルa)-b) の平均値と,また(3×8) cm2の面積にひろげるまでの評点は塗布モデルb)-c)の平均値との関係を調べた。これによると「なめらかさ」について判定された評点とMIUには相関関係が認められた(Fig.-6)。MIUは低い値のほうが官能評価でなめらかと感じとられる。」(第62頁右欄下から3行-第63頁左欄第6行)
オ 「
[図:0001406692000013.jpg]
」(第63頁左欄)
カ 上記甲11号証の記載事項及び図面を総合勘案すると、甲11号証には、次の技術(以下「甲11開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「塗布中及び塗布後のなめらかさを調べるため、サンプル0.1mlの塗布状態を、a:適用初期(サンプル滴下)、b:適用中期((3×4)cm2の面積に伸ばす)、c:適用終期((3×8)cm2の面積に伸ばす)、d:30分後とかえて、摩擦感テスターで平均摩擦係数(MIU)を測定し、一方同条件でパネラー10名でなめらかさの感の評価を行い、それらの関係から「なめらかさ」について判定された評点とMIUの相関関係を求める技術。」
(12)甲12号証
本願の優先日前に公開された甲12号証には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「塗布時,塗布後,塗布30分後の各サンプルの触感に関する官能評価を行った。」(第3頁左欄第5-6行)
イ 「そこで,実際の皮膚におけるサンプル塗布時の摩擦係数とその変動を調べた。前腕内側に0.1mlのサンプルを塗布し,塗布直後および塗布30分後の摩擦係数の測定を行った。」(第4頁右欄第21-22行)
ウ 上記甲12号証の記載事項を総合勘案すると、甲12号証には、次の技術(以下「甲12開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「塗布時,塗布後,塗布30分後の各サンプルの触感に関する官能評価と、前腕内側に0.1mlのサンプルを塗布し,塗布直後および塗布30分後の摩擦係数の測定を行い実際の皮膚におけるサンプル塗布時の摩擦係数とその変動を調べる技術。」
(13)甲13号証
本願の優先日前に頒布された刊行物である甲13号証には、以下の技術事項が記載されている。
「【0032】
本発明の評価方法は、例えば新しい口唇化粧料の設計、開発、製品の製造工程における品質管理、製品の店頭でのデモンストレーション等に用いることができる。本発明の評価方法を例えば製品の品質管理に用いる場合には、製品の製造工程において製品をランダムに抜き取って本発明の評価方法に付し、所望の使用感とその持続性が得られる製品であるか否かを判断する。所望の使用感とその持続性が得られないと判断した場合には、使用感とその持続性を得るのに必要ないし有効な所定の成分の配合量を増加又は減少させたり、製造プロセス条件を変更させたりするといったフィードバック操作を行う。これによって、使用感とその持続性にばらつきの無い口唇化粧料製品を製造することができる。」
(14)甲14号証
本願の優先日前に頒布された甲14号証には、以下の技術事項が記載されている。
「これまで官能評価によって経験的に行っていた順位付けを,物性値を求めることで定量化し数値で順位付けできるため,処方開発における指針として応用が可能であり,開発の効率化に有効な手段であると言える。」(第273頁右欄第7-11行)
(15)甲15号証
本願の優先日前に頒布された甲15号証には、以下の技術事項が記載されている。
ア 「そこで本研究では,ファンデーション塗布時に指で感じる振動刺激と摩擦特性から使用感触を定量評価するシステムを提案する.本報告ではスポンジで塗布した際の「のびのなめらかさ」と「のびの軽さ」において使用感触が異なる3種類のファンデーションを対象として提案システムを用いて塗布時の使用感触評価試験を行った.」(第1頁左欄第32行~右欄第2行)
イ 「本研究では市販の3種類のファンデーション(サンプルA~C)を対象として,スポン ジ塗布時の使用感触を提案システムによって評価した.各ファンデーションの使用感触の特徴を把握するため,専門技術者による官能評価を実施した.本報告ではファンデーションの嗜好に重要とされるスポンジで肌に塗布するときの「のびの軽さ」と「のびのなめらかさ」を使用感触の評価項目として用いた.官能評価によって得られた各ファンデーションの使用感の特徴を表1に示した. 」(第1頁右欄第5行~第12行)
ウ 「図1に触感計測システムの概要を示す. 本計測システムでは単に基剤特性を計測するのではなく,ファンデーションの実際の塗布動作を考慮した上で評価することを目的としているため,ファンデーション塗布はヒトが行うこととした.そして塗布行為中に使用感触に関連すると考えられる物理指標を計測することで使用感評価を目指している.本システムではファンデーションを厚さ0.5mmのシリコンシートに塗布することで塗布対象が及ぼす影響を一定にしている. 塗布中に指で感じる振動刺激を計測することを目的とし,被験者の中指の爪に3軸加速度センサ(A3AX:テック技販)を設置した.また,塗布中の力および摩擦状態を計測することを目的とし塗布面の直下にフォースプレート(TF1212G :テック技販)を設置している. フォースプレートは4柱が3軸ロードセル,天面がアクリル板で構成されており6分力計測が可能である.計測には同一種のスポンジを用いており,あらかじめ各ファンデーションをスポンジに0.05gとったものを用いた.触覚受容器の周波数応答性を考慮し,3軸加速度センサとフォースプレートのサンプリング周波数は1000Hzとした.」(第1頁右欄第18行-第2頁左欄第10行)
エ 「本計測システムで取得した3軸加速度データから指で感じる振動刺激を評価した.塗布中のZ方向の加速度データに対して高速フーリエ変換を行い,パワースペクトル密度(以下、 PSD)を算出した.本システムでは塗布中の微細な振動刺激に着目し,50~250Hzの周波数域のPSDの総和から各ファンデーション塗布時に指で感じる振動刺激の違いを調べた」(第2頁左欄第22-27行)
オ 「3軸加速度センサで計測した塗布中に感じる振動刺激の結果を図4に示す.50~250Hzの周波数域のPSDの総和はサンプルAが他の2品と比較して有意に大きい値であった。また,サンプルAはサンプルBとサンプルCと比較すると「のびのなめらかさ」を感じないファンデーションであった.したがって,スポンジ塗布中の振動刺激を計測することで「のびのなめらかさ」を定量的に評価できると考えられる.」(第2頁左欄第34-40行)
カ 「本研究では使用感触の異なる3種のファンデーションを用いて提案システムによるスポンジ塗布時の使用感触評価を行った.その結果,本計測システムを用いて「のびのなめらかさ」および「のびの軽さ」を定量的に評価できる可能性が示唆された.」(第3頁左欄第10-14行)
キ 上記甲15号証の記載事項を総合勘案すると、甲15号証には、次の技術(以下「甲15開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「官能評価で得られたファンデーション(サンプルAからサンプルC)をシリコンシートに指で塗布する際に指で感じる振動刺激を計測し、加速度データに対して高速フーリエ変換を行い、パワースペクトル密度を算出し、算出したパワースペクトル密度と官能評価で得られたファンデーションの種類との関係から、「のびのなめらかさ」および「のびの軽さ」を定量的に評価できる技術。」
3.取消理由について
取消理由1(進歩性)について検討する。
(1)本件訂正後の請求項1に係る発明について
請求項1は、本件訂正により削除されたので、本件訂正後の請求項1に係る発明に対する取消理由は解消された。
(2)本件発明9及び13について
本件発明9及び13は、本件訂正後の請求項2を引用する発明である。よって、まずは本件発明2について検討する。
ア 対比
本件発明2と甲2発明とを比較する。
(ア)甲2発明の「シリコーンゴムの板」でできた「下面」は、「4種類の市販の化粧ファンデーションをそれぞれ均一に塗布」されるものであるから、本件発明2の「被塗布面」に相当する。
(イ)甲2発明の「4種類の市販の化粧ファンデーション」は、本件発明2の「化粧料」に相当する。
(ウ)甲2発明の「シリコーンゴムの半球で指紋を模した溝模様の面があ」る「上面」は、「4種類の市販の化粧ファンデーションをそれぞれ均一に塗布」された「下面」の移動に伴い、「4種類の市販の化粧ファンデーション」に対して相対的に動くものであるから、本件発明2の「動作体」に相当する。
(エ)甲2発明は、「上面はシリコーンゴムの半球で指紋を模した溝模様の面があり、下面はシリコーンゴムの板で4種類の市販の化粧ファンデーションをそれぞれ均一に塗布して、下面を手動ステージによりY方向に上面に押し上げ、電動ステージで下面をX方向に10mm/s以上の摺動速度で移動させ、上面を支えるホルダを測定する2つの変位センサからの信号をデジタルデータレコーダに保存し、X方向の変位をウェーブレット解析により解析して、0~4秒の間の周波数毎の振動振幅の大きさを示すコンタープロットを得て2種類の摩擦振動を観察する」ことから、甲2発明と本件発明2とは「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら」「動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップ」を備える点で共通する。
(オ)甲2発明の「X方向の変位をウェーブレット解析により解析して」得られた「0~4秒の間の周波数毎の振動振幅の大きさを示すコンタープロット」は、本件発明2の「振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータ」に相当する。
(カ)甲2発明は、「0~4秒の間の周波数毎の振動振幅の大きさを示すコンタープロットを得て2種類の摩擦振動を観察する装置を用いて、触感を得る人間の摩擦条件下での装置による摺動試験により、人間の指を模した装置による化粧ファンデーションの擦れに関与する摩擦信号を調査し、これらの振動の信号を用いて4種類の市販の化粧ファンデーション間の触感のわずかな差を識別可能とした」ものであり、触感を得る人間の摩擦条件下での人間の指を模した装置による化粧ファンデーションの擦れは、ファンデーションを触った人の触感つまり使用触感であることから、甲2発明と本件発明2とは、「検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成ステップと、前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の使用触感を評価する評価ステップ」を備える点で共通する。
(キ)甲2発明は、「触感を得る人間の摩擦条件下での装置による摺動試験により、人間の指を模した装置による化粧ファンデーションの擦れに関与する摩擦信号を調査し、これらの振動の信号を用いて4種類の市販の化粧ファンデーション間の触感のわずかな差を識別可能とした装置および方法」であり、化粧ファンデーション間の触感の違いを識別することは、化粧ファンデーションの触感の違いを評価することと等価であることから、本件発明2とは「化粧料の使用触感を評価する方法」である点で共通する。
すると、本件発明2と甲2発明とは、
「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら、動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップと、
前記検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成ステップと、
前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の使用触感を評価する評価ステップと
を含む、化粧料の使用触感を評価する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら、動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップにおいて、本件発明2は、当該動作体を動かすのに対し、甲2発明は4種類の市販の化粧ファンデーションをそれぞれ均一に塗布したシリコーンゴムの板である下面を電動ステージでX方向に10mm/s以上の摺動速度で移動させる点。
<相違点2>
評価ステップにおいて、本件発明2は、「予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する」のに対し、甲2発明は、「0~4秒の間の周波数毎の振動振幅の大きさを示すコンタープロットを得て2種類の摩擦振動を観察する装置を用いて、触感を得る人間の摩擦条件下での装置による摺動試験により、人間の指を模した装置による化粧ファンデーションの擦れに関与する摩擦信号を調査し、これらの振動の信号を用いて4種類の市販の化粧ファンデーション間の触感のわずかな差を識別可能とした」点。
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
(ア)甲2発明は、「0~4秒の間の周波数毎の振動振幅の大きさを示すコンタープロットを得て2種類の摩擦振動を観察する装置を用いて、触感を得る人間の摩擦条件下での装置による摺動試験により、人間の指を模した装置による化粧ファンデーションの擦れに関与する摩擦信号を調査し、これらの振動の信号を用いて4種類の市販の化粧ファンデーション間の触感のわずかな差を識別可能とした」発明であるが、上記「2.(2)ケ」及び「2.(2)コ」にも開示されているように、4種類の市販の化粧ファンデーション間の触感のわずかな差は、図10(b)に示された2種類の振動(I及びII)の振幅の組み合わせの集合位置により識別ができるものの、その集合位置が化粧料の使用触感の官能評価の何を示すものかについては識別していない。
(イ)すなわち、甲2発明は、化粧料の使用触感を評価するための振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータは測定しているものの、当該データと化粧料の使用触感の官能評価との関係を求めておらず、かつその関係をあらかじめ求めておくこともしていない。
(ウ)さらに、上記相違点2に係る構成である「予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する」技術事項は、甲1発明、甲3発明、甲4ないし12及び15開示技術、及び甲13及び14号証にも開示された周知技術には開示されていないことから、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められない。
(エ)そうすると、他の甲号証を参照しても、上記相違点2の構成が記載されていないのであるから、甲2発明に、甲1,3ないし15号証に開示された技術事項を組み合わせても、上記相違点2に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとはならない。したがって、本件訂正後の請求項2を引用する発明である本件発明9及び13についても、甲2発明に、甲1,3ないし15号証に開示された技術事項を組み合わせても、上記相違点2に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとはならない。
(3)本件発明12について
本件発明12は、上記「(2)」で検討した本件発明2の方法の発明を装置のカテゴリーに変更した発明であるから、甲2発明と本件発明12も、上記「(2)」で検討したとおり、少なくとも上記相違点2で相違し、甲2発明に、甲1,3ないし15号証に開示された技術事項を組み合わせても、上記相違点2に係る本件発明12の発明特定事項を有するものとはならない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人は、令和5年9月26日付け意見書(以下「申立人意見書」という。)において、本件訂正後の請求項2に係る発明である本件発明2及び12は、甲2号証、甲3号証及び甲4号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、甲2号証、甲3号証及び甲15号証にも開示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張する。
イ しかしながら、上記「(2)」で述べたとおり、甲2発明に、甲1,3ないし15号証に開示された技術事項を組み合わせても、上記相違点2に係る本件発明2の発明特定事項を有するものとはならないし、上記「(3)」で述べたとおり、甲2発明に、甲1,3ないし15号証に開示された技術事項を組み合わせても、上記相違点2に係る本件発明12の発明特定事項を有するものとはならない。
ウ したがって、上記申立人の主張は採用することができない。
(5)小括
したがって、本件発明9,12及び13は、甲2発明に、甲1,3ないし15号証に開示された技術事項を組み合わせても、上記相違点2に係る発明特定事項を有するものとはならず、当業者が容易になしえたものであるとはいえないから、本件特許の請求項9,12及び13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
4.取消理由についてのまとめ
以上のことから、当審が令和5年5月30日付けで特許権者に通知した取消理由1は解消されており、本件特許の請求項9,12及び13に係る特許を取り消す理由とはならない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.甲号証について
申立人が特許異議申立書及び申立人意見書において証拠として提示した甲号証は、上記「第4 1.」で整理し、その内容は「第5 2.」に示したとおりである。
2.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人が特許異議申立書において申し立てた理由のうち、上記「第5 1.」の取消理由通知で採用した理由以外の特許異議申立理由の概要は以下のとおりである。
(1)特許異議申立理由1(新規性違反)
本件訂正前の請求項1,9及び12に係る発明は、甲1号証に開示された発明、又は甲2号証に開示された発明と同一であるから、その特許は特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)特許異議申立理由2-1(甲1号証を主引例とする進歩性違反)
本件訂正前の請求項1ないし13に係る発明は、甲1号証に開示された発明に、甲4ないし14号証に記載された技術及び周知技術を適用して、当業者が容易に想到しうる発明であるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)特許異議申立理由2-2(甲2号証を主引例とする進歩性違反)
本件訂正前の請求項2ないし8,10および11に係る発明は、甲2号証に開示された発明に、甲4ないし14号証に記載された技術及び周知技術を適用して、当業者が容易に想到しうる発明であるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4)特許異議申立理由2-3(甲3号証を主引例とする進歩性違反)
本件訂正前の請求項1ないし6及び8ないし12に係る発明は、甲3号証に開示された発明に、甲4ないし14号証に記載された技術及び周知技術を適用して、当業者が容易に想到しうる発明であるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
3.当審の判断
本件訂正により本件訂正前の請求項1は削除され、本件発明2及び本件発明2の方法の発明を装置のカテゴリーに変更した発明である本件発明12が、他の請求項を引用しない発明である。よって、まずは本件発明2を甲1ないし3号証に開示された発明と対比し、その後で上記「2.(1)ないし(4)」の特許異議申立理由について検討することとする。
(1)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを比較する。
ア 甲1発明の「豚の皮膚」は、本件発明2の「被塗布面」に相当する。
イ 甲1発明の「スキンクリーム」は、本件発明2の「化粧料」に相当する。
ウ 甲1発明の「人工指」は、本件発明2の「動作体」に相当する。
エ 甲1発明は、「トリボテスト装置において、」「クリーム治療をした豚の皮膚」「を載せたサンプルステージを往復ステージの上にのせて」豚の「皮膚サンプルに往復運動を提供し、人工指を片持ち梁ビームの端に取り付け、往復モードで」豚の「皮膚サンプル表面に人工指をこすりつけ、交差したIビーム構造上の片持ち梁ビームに取り付けられた歪みゲージと加速度計センサーで、人工指にかかる負荷と摩擦力と振動を測定」することから、甲1発明と本件発明2とは「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら」「動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップ」を備える点で共通する。
オ 甲1発明の「クリーム処理時間0時間、1時間、3時間でデータを取得し」た「スキンクリームでクリーム治療をした豚の皮膚のFFT加速度データ」は「クリーム処理時間0時間、1時間、3時間」毎の「クリーム治療をした豚の皮膚の摩擦誘導振動信号の周波数スペクトル」であることから、本件発明2の「振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータ」に相当する。
カ 甲1発明は、「クリーム処理時間0時間、1時間、3時間」毎の「クリーム治療をした豚の皮膚の摩擦誘導振動信号の周波数スペクトルを求めて、皮膚に滑り込む人工指による触覚を調べる」ことから、本件発明2とは、「検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成ステップと、前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の」「触感を評価する評価ステップ」を備える点で共通する。
キ 甲1発明は、「トリボテスト装置」を用い「スキンクリームでクリーム治療をした豚の皮膚」の「人工指による触覚を調べる方法」であるから、本件発明2とは「化粧料の」「触感を評価する方法」である点で共通する。
すると、本件発明2と甲1発明とは、
「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら、動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップと、
前記検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータを生成するデータ生成ステップと、
前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の触感を評価する評価ステップと
を含む、化粧料の触感を評価する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら、動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップにおいて、本件発明2は、当該動作体を動かすのに対し、甲1発明はスキンクリームでクリーム治療をした豚の皮膚である皮膚サンプルを往復ステージで往復運動させる点。
<相違点4>
本件発明2は、評価ステップが「予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する」ことを含む「化粧料の使用触感を評価する」方法であるのに対し、甲1発明は、「スキンクリームでクリーム治療をした豚の皮膚」の「人工指による触覚を調べる方法」である点。
(2)本件発明2と甲2発明との対比
本件発明2と甲2発明との対比は、上記「第5 3.(2)ア」のとおりである。
(3)本件発明2と甲3発明との対比
本件発明2と甲3発明とを比較する。
ア 甲3発明の「テスト中の所定の物体 120の触覚表面320」は、本件発明2の「被塗布面」に相当する。
イ 甲3発明の「スキンローション」は、本件発明2の「化粧料」に相当する。
ウ 甲3発明の「生体模倣触覚センサ341」は、本件発明2の「動作体」に相当する。
エ 甲3発明は、「生体模倣触覚センサ341をテスト中の所定の物体 120の触覚表面320上に位置決めし、速度、および変位、1つ以上の方向における速度の所定の軌道で触覚表面320上を生体模倣触覚センサ341をスライドさせ、生体模倣触覚センサ341と物体120との間の相対的な摺動からこれらの振動を引き出し」、「皮膚に塗布されたスキンローションのように、繰り返しの探査によって1つ以上の触覚特性を変化させる表面特性を有する物体を測定し、表面を予め設定された間隔で繰り返し試験して、これらの特性が時間とともにどのように変化するかを測定する」ことから、甲3発明と本件発明2とは「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら当該動作体を動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップ」を備える点で共通する。
オ 甲3発明は、「生体模倣触覚センサ341と物体120との間の相対的な摺動からこれらの振動を引き出し」て得られた振動信号から「振動時間信号の離散フーリエ変換を計算し、振動時間信号の離散フーリエ変換における各ビンの大きさを二乗してパワーを決定」する工程を含む「マクロテクスチャーの粗密の値を計算」することを行うことから、本件発明2とは、「検出された振動から、前記振動の周波数スペクトル」「に関するデータを生成するデータ生成ステップ」を備える点で共通する。
カ 甲3発明は、「マクロテクスチャーの粗密の値を計算し」、「皮膚に塗布されたスキンローション」の「繰り返しの探査によって1つ以上の触覚特性」が「時間とともにどのように変化するかを測定」して「触覚特性を決定」することから、本件発明2とは、「前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の」「触感を評価する評価ステップ」を備える点で共通する。
キ 甲3発明は、「テスト中の所定の物体 120の触覚特性を決定する方法」であり、「皮膚に塗布されたスキンローション」を測定することから、本件発明2とは「化粧料の」「触感を評価する方法」である点で共通する。
すると、本件発明2と甲3発明とは、
「被塗布面に塗布された化粧料に動作体を接触させながら当該動作体を動かすことによって発生する振動を経時的に検出する振動検出ステップと、
前記検出された振動から、前記振動の周波数スペクトルに関するデータを生成するデータ生成ステップと、
前記生成されたデータを用いて、前記化粧料の触感を評価する評価ステップと
を含む、化粧料の触感を評価する方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点5>
化粧料の触感を評価するのに用いられる、検出された振動から生成する振動の周波数スペクトルに関するデータが、本件発明2は、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータであるのに対し、甲3発明は、まず振動時間信号の離散フーリエ変換を計算し、振動時間信号の離散フーリエ変換における各ビンの大きさを二乗してパワーを決定し、各ビンにそれぞれの周波数を乗じて重み付けし、すべての成分を合計し、その合計をすべての二乗離散フーリエ変換ビンの合計で割ってその中心周波数を決定してスペクトルセントロイドから計算して求めるマクロテクスチャーの粗密の値であり、振動の周波数スペクトルに関するデータではあるものの経時的な変化に関するデータであるか不明な点。
<相違点6>
本件発明2は、評価ステップが「予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する」ことを含む「化粧料の使用触感を評価する」方法であるのに対し、甲3発明は、「振動時間信号」から求めた「マクロテクスチャーの粗密の値」を用いて求められる「1つ以上の触覚特性」が「時間とともにどのように変化するかを測定」して「触覚特性を決定」する方法である点。
(4)相違点2,4及び6についての判断
ア 上記相違点2,4及び6は、本件発明2は評価ステップが「予め求めておいた、振動の周波数スペクトルの経時的な変化に関するデータと化粧料の使用触感の官能評価との関係に基づき、前記化粧料の使用触感を評価する」構成(以下「評価ステップ相違点に係る構成」という。)を備えるのに対し、甲1ないし3発明は、そのような構成を備えていないことを示すものである。
イ そして、上記評価ステップ相違点に係る構成は、上記「第5 3.(2)イ(ウ)」で検討したとおり、甲4ないし12及び15開示技術、及び甲13及び14号証にも開示された周知技術には開示されていないことから、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められない。
ウ したがって、上記評価ステップ相違点に係る構成の点において、本件発明2と甲1発明、甲2発明及び甲3発明とはそれぞれ相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲1ないし3発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
(5)本件発明12と甲1ないし3発明との対比・判断
本件発明12は、本件発明2の方法の発明を装置のカテゴリーに変更した発明であり、本件発明2の評価ステップが備える上記評価ステップ相違点に係る構成は、本件発明12の評価手段が備える構成となっている。
よって、上記「(4)」と同様の理由により、本件発明12と甲1発明、甲2発明及び甲3発明とは、上記評価ステップ相違点に係る構成の点においてそれぞれ相違しており、甲1ないし3発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
(6)本件訂正前の請求項1に対する特許異議申立理由1及び2-1ないし2-3について
本件訂正前の請求項1は、本件訂正により削除された。よって、本件訂正前の請求項1に対する特許異議申立理由1及び2-1ないし2-3による特許異議申立ては却下されることとなる。
(7)本件発明9及び12に対する特許異議申立理由1(新規性違反)について
ア 本件発明9は、請求項2を引用する発明であることから、本件発明2が備える上記評価ステップ相違点に係る構成を備える発明である。したがって、上記「(4)」で検討したとおり、本件発明2と甲1発明及び甲2発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成の点においてそれぞれ相違しており、同一ではない。
イ また、本件発明12は、本件発明2の方法の発明を装置のカテゴリーに変更した発明であり、本件発明2の評価ステップが備える上記評価ステップ相違点に係る構成は、本件発明12の評価手段が備える構成となっている。したがって、上記「(5)」で検討したとおり、本件発明12と甲1発明及び甲2発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成の点においてそれぞれ相違しており、同一ではない。
ウ したがって、本件発明9及び12は甲1発明または甲2発明と同一であるとはいえないことから、本件発明9及び12に対する特許異議申立理由1は理由がない。
(8)本件発明2ないし13に対する特許異議申立理由2-1(甲1号証を主引例とする進歩性違反)について
ア 上記「(1)及び(4)」で検討したとおり、本件発明2と甲1発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲1発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
イ 本件発明3ないし11及び13は、請求項2を直接または間接的に引用する発明であるから、本件発明2が備える上記評価ステップ相違点に係る構成を備えた発明である。よって、上記「ア」で検討したとおり、本件発明3ないし11及び13と甲1発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲1発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
ウ 本件発明12は、本件発明2の方法の発明を装置のカテゴリーに変更した発明であり、本件発明2の評価ステップが備える上記評価ステップ相違点に係る構成は、本件発明12の評価手段が備える構成となっている。したがって、上記「(5)」で検討したとおり、本件発明12と甲1発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成の点において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲1発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
エ 申立人は、特許異議申立書第28-29頁において本件発明2は、甲1号証に記載された発明に甲4号証又は甲5号証に記載された技術を適用し、当業者が容易に想到しうるものである旨主張する。しかしながら、上記「ア」で検討したとおり、本件発明2と甲1発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲1発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。よって、上記申立人の主張は採用することはできない。
オ したがって、本件発明2ないし13は、甲1発明並びに甲1ないし15号証に記載された技術及び周知技術から当業者が容易に想到し得た発明であるとはいえないから、本件発明2ないし13に対する特許異議申立理由2-1は理由がない。
(9)本件発明2ないし8,10及び11に対する特許異議申立理由2-2(甲2号証を主引例とする進歩性違反)について
ア 上記「第5 3.(2)」で検討したとおり、本件発明2と甲2発明とは相違点2,すなわち上記評価ステップ相違点に係る構成(上記「(4)」参照。)において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲2発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
イ 本件発明3ないし8,10及び11は、請求項2を直接または間接的に引用する発明であるから、本件発明2が備える上記評価ステップ相違点に係る構成を備えた発明である。よって、上記「ア」で検討したとおり、本件発明3ないし8,10及び11と甲2発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲2発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
ウ 申立人は、特許異議申立書第29-30頁において本件発明2は、甲2号証に記載された発明に甲4号証又は甲5号証に記載された技術を適用し、当業者が容易に想到しうるものである旨主張する。しかしながら、上記「ア」で検討したとおり、本件発明2と甲2発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲2発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。よって、上記申立人の主張は採用することはできない。
エ また、申立人の申立人意見書における主張は、上記「第5 3.(4)」で検討したとおり、採用することはできない。
オ したがって、本件発明2ないし8,10及び11は、甲2発明並びに甲1ないし15号証に記載された技術及び周知技術から当業者が容易に想到し得た発明であるとはいえないから、本件発明2ないし8,10及び11に対する特許異議申立理由2-2は理由がない。
(10)本件発明2ないし6及び8ないし12に対する特許異議申立理由2-3(甲3号証を主引例とする進歩性違反)について
ア 上記「(1)及び(4)」で検討したとおり、本件発明2と甲3発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲3発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
イ 本件発明3ないし6及び8ないし11は、請求項2を直接または間接的に引用する発明であるから、本件発明2が備える上記評価ステップ相違点に係る構成を備えた発明である。よって、上記「ア」で検討したとおり、本件発明3ないし6及び8ないし11と甲3発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲3発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
ウ 本件発明12は、本件発明2の方法の発明を装置のカテゴリーに変更した発明であり、本件発明2の評価ステップが備える上記評価ステップ相違点に係る構成は、本件発明12の評価手段が備える構成となっている。したがって、上記「(5)」で検討したとおり、本件発明12と甲3発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成の点において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲3発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
エ 申立人は、特許異議申立書第30-31頁において本件発明2は、甲3号証に記載された発明に甲4号証又は甲5号証に記載された技術、および甲1,2及び8号証にも記載された周知技術を適用し、当業者が容易に想到しうるものである旨主張する。しかしながら、上記「ア」で検討したとおり、本件発明2と甲3発明とは上記評価ステップ相違点に係る構成において相違しており、上記評価ステップ相違点に係る構成については、甲1ないし15号証には開示されていない技術事項であり、かつ本願の優先日前において周知の技術であるとも認められないことから、甲3発明において、上記評価ステップ相違点に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。よって、上記申立人の主張は採用することはできない。
オ したがって、本件発明2ないし6及び8ないし12は、甲3発明並びに甲1ないし15号証に記載された技術及び周知技術から当業者が容易に想到し得た発明であるとはいえないから、本件発明2ないし6及び8ないし12に対する特許異議申立理由2-3は理由がない。
4.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についてのまとめ
以上のことから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由である、特許異議申立理由1及び2-1ないし2-3については、本件発明2ないし13に対しいずれも理由はない。
なお、本件訂正前の請求項1に対する特許異議申立理由1及び2-1ないし2-3による特許異議申立ては却下されることとなる。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由1及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由1及び2-1ないし2-3によっては、本件請求項2ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項1に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701272