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特許異議申立

2021-701186

分子キャラクタリゼーション方法およびシステム

審判番号
2021-701186
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-507517
登録番号
6887562
請求日
2021年12月15日
審決日
2022年09月07日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】アスペン テクノロジー インコーポレイテッド
  • 【権利者代理人】杉本 修司
  • 【権利者代理人】堤 健郎
  • 【権利者代理人】小林 由佳
  • 【権利者代理人】金子 大輔
  • 【権利者代理人】谷口 洋樹
  • 【権利者代理人】中田 健一
  • 【権利者代理人】中尾 真二
  • 【権利者代理人】笹沼 崇
  • 【異議申立人】加藤 純子
審判長/審判官
  • 審判長 石井 哲
  • 審判官 伊藤 幸仙
  • 審判官 渡戸 正義
分類
P1652.121-YAA(G01N) / P1652.113-YAA(G01N) / P1652.537-YAA(G01N) / P1652.536-YAA(G01N) / P1652.851-YAA(G01N) / P1652.853-YAA(G01N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6887562号発明「分子キャラクタリゼーション方法およびシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6887562号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~62〕について訂正することを認める。 特許第6887562号の請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59,61及び62に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6887562号(以下「本件特許」という。)に係る出願(以下「本願」という。)は、2018年(平成30年)4月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年4月24日(以下「優先日」という。) 米国)を国際出願日とする特許出願であって、令和3年5月20日にその請求項1ないし62に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年6月16日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議申立の経緯は次のとおりである。 令和3年12月15日 : 特許異議申立人 加藤純子(以下「申立人」 という。)による請求項1ないし21, 25ないし32,34,38,41ないし 43,45ないし53,55ないし59, 61及び62に係る特許に対する特許異議の 申立て 令和4年3月 2日付け: 取消理由通知書 令和4年5月31日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和4年7月15日 : 申立人による意見書及び甲第8ないし16号証 の写しの提出 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 令和4年5月31日付け訂正請求書による訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(3)のとおりである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「(i)前記試料の分子レベル分析データを含むか又は前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取る過程であって」 と記載されているのを 「(i)前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取る過程であって、」 に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~62も、同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の(ii)に 「かつ、前記試料の前記伝統的な分析データを受け取っている場合に、c)当該伝統的な分析データの少なくとも一部に基づいて、第2の化合物群および第2の化合物群重量、第2の概念的セグメントタイプ、ならびに第2のセグメント分布を設定する過程と」 と記載されているのを 「かつ、c)当該伝統的な分析データの少なくとも一部に基づいて、第2の化合物群および第2の化合物群重量、第2の概念的セグメントタイプ、ならびに第2のセグメント分布を設定する過程と」 に訂正する。 また、同項の(iii)に 「かつ、前記試料の前記伝統的な分析データを受け取っている場合に、c)当該伝統的な分析データに基づいて設定された、前記第2のセグメント分布および前記第2の化合物群重量を表す第2のセグメント分布パラメータから第2の化合物組成を決定する過程と」 と記載されているのを 「かつ、c)当該伝統的な分析データに基づいて設定された、前記第2のセグメント分布および前記第2の化合物群重量を表す第2のセグメント分布パラメータから第2の化合物組成を決定する過程と」 に訂正する。 また、同項の(iv)に 「b)前記第1の化合物組成および、前記試料の前記伝統的な分析データを受け取っている場合に、c)前記第2の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と」 と記載されているのを 「b)前記第1の化合物組成および、c)前記第2の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と」 に訂正する。 また、同項の(v)に 「かつ、受け取った分析データが前記伝統的な分析データを含むものである場合、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第2の化合物群重量および前記第2のセグメント分布パラメータを調節する過程と」 と記載されているのを 「かつ、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第2の化合物群重量および前記第2のセグメント分布パラメータを調節する過程と」 に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~62も、同様に訂正する。) (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に 「(2)前記伝統的な分析データは、蒸留曲線データ、密度曲線データ、硫黄曲線データ、塩基性窒素曲線データ、総窒素曲線データ、CH比曲線データ、全酸価曲線データ、PIONA(パラフィン群、イソパラフィン群、オレフィン群、ナフテン群および芳香族群)分曲線データ、粘度曲線データ、ニッケル分曲線データ、およびバナジウム分曲線データのうちの少なくとも1つを含む、過程と」 と記載されているのを 「(2)前記伝統的な分析データは、蒸留曲線データ、密度曲線データ、硫黄曲線データ、塩基性窒素曲線データ、総窒素曲線データ、CH比曲線データ、全酸価曲線データ、粘度曲線データ、ニッケル分曲線データ、およびバナジウム分曲線データのうちの少なくとも1つを含む、過程と」 に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~62も、同様に訂正する。) 2. 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項、独立特許要件 (1)訂正事項1について ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明の「分析データ」を「前記試料の分子レベル分析データを含むか又は前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」ものから「前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」ものに限定するものである。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、令和4年3月2日付け取消理由通知の理由3(明確性)で指摘された明瞭でない記載を明瞭にしようとするものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正後の請求項2~62は、訂正後の請求項1における上記記載を引用することにより限定される。 イ 上記「ア」に示したとおり、訂正事項1は、請求項1~62に係る発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ そして、訂正前の請求項1には、「分析データ」として「前記試料の分子レベル分析データを含む」分析データと、「前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」分析データが記載されていることから「分析データ」が「前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」ことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項である。よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明の「前記試料の前記伝統的な分析データを受け取っている場合に、」との記載および「受け取った分析データが前記伝統的な分析データを含むものである場合」との記載を削除するものであり、訂正事項1との整合を図るものである。したがって、訂正事項2は、訂正事項1と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正後の請求項2~62は、訂正後の請求項1における上記記載を引用することにより限定される。 イ 上記「ア」に示したとおり、訂正事項2は、請求項1~62に係る発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ そして、訂正事項1の訂正後の請求項1において「前記試料の前記伝統的な分析データ」を必ず受け取っているところ、訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「前記試料の前記伝統的な分析データを受け取っている場合に、」との記載及び「受け取った分析データが前記伝統的な分析データを含むものである場合」との記載を削除するものであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正事項3は、訂正前の請求項1に係る発明の「前記伝統的な分析データ」を「蒸留曲線データ、密度曲線データ、硫黄曲線データ、塩基性窒素曲線データ、総窒素曲線データ、CH比曲線データ、全酸価曲線データ、PIONA(パラフィン群、イソパラフィン群、オレフィン群、ナフテン群および芳香族群)分曲線データ、粘度曲線データ、ニッケル分曲線データ、およびバナジウム分曲線データのうちの少なくとも1つを含む」から「蒸留曲線データ、密度曲線データ、硫黄曲線データ、塩基性窒素曲線データ、総窒素曲線データ、CH比曲線データ、全酸価曲線データ、粘度曲線データ、ニッケル分曲線データ、およびバナジウム分曲線データのうちの少なくとも1つを含む」と「PIONA(パラフィン群、イソパラフィン群、オレフィン群、ナフテン群および芳香族群)分曲線データ」を伝統的な分析データの候補から削除するものである。よって、当該訂正は、伝統的な分析データの集合をより限定的に規定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、令和4年3月2日付け取消理由通知の理由3(明確性)で指摘された明瞭でない記載の釈明をするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正後の請求項2~62は、訂正後の請求項1における上記記載を引用することにより限定される。 イ 上記「ア」に示したとおり、訂正事項3は、請求項1~62に係る発明を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。 ウ そして、訂正事項3は、訂正前の請求項1の記載に基づいているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。 (4)訂正事項1ないし3の一群の請求項及び独立特許要件について 本件訂正前の請求項1ないし62について、請求項2ないし62は請求項1を直接又は間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし62は、一群の請求項に該当する。 さらに、訂正事項1ないし3によって記載が訂正される請求項1及び請求項1に連動して訂正される請求項2ないし62とは、訂正事項1ないし3に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正前の請求項1ないし62に対応する本件訂正後の請求項1ないし62は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。 そして、本件においては、訂正前の請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53、55ないし59,61及び62について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1に係る訂正事項1ないし3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 また、訂正前の請求項22ないし24,33,35ないし37,39,40,44,54,60については、特許異議の申立てがされていないが、それら訂正前の請求項22ないし24,33,35ないし37,39,40,44,54,60は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件訂正前の請求項1に係る訂正事項1ないし3の訂正に連動して訂正されることから、訂正後の請求項22ないし24,33,35ないし37,39,40,44,54,60に係る発明は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件が課される発明であるが、下記「第5及び第6」で述べるように、本件訂正後の請求項1に係る発明は特許異議申立理由及び当審の取消理由により取り消されるものではなく、特許を維持することができる発明であることから、本件訂正後の請求項1を引用する本件訂正後の請求項22ないし24,33,35ないし37,39,40,44,54,60に係る発明は、特許出願の際独立して特許することができる発明である。 3.令和4年7月15日提出の意見書における申立人の主張について 申立人は、令和4年7月15日提出の意見書において、本件訂正請求における訂正事項2及び3は、訂正要件を満たしておらず、これら訂正要件2及び3を含む本件訂正は拒絶されるべき旨主張している。 (1)訂正事項2について ア 申立人は、訂正事項2による訂正により、「前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第1の化合物群重量を調節し、かつ、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第2の化合物群重量および前記第2のセグメント分布パラメータを調節する過程」という工程が、訂正前は分析データが伝統的な分析データを含む場合に実施されていたのに対し、訂正後は分析データが伝統的な分析データを含まない場合においても上記工程が実施されるものへと実質的に変更になっており、そのため訂正事項2は本件特許発明1を実質的に変更するものである旨主張する。 イ しかしながら、訂正事項2は、訂正事項1により、訂正前の請求項1に係る発明の「分析データ」が「前記試料の分子レベル分析データを含むか又は前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」ものから「前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」ものに限定されたため、それに伴い「前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」「分析データ」に対する過程のみを記載して訂正事項1との整合を図るためのものである。 ウ すなわち、訂正前の請求項1において既に「試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」「分析データ」に対しては「前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第1の化合物群重量を調節し、かつ、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第2の化合物群重量および前記第2のセグメント分布パラメータを調節する」ことは記載されており、「分析データ」を「試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」ものとする訂正事項1との整合を図るために「前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第1の化合物群重量を調節し、かつ、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第2の化合物群重量および前記第2のセグメント分布パラメータを調節する」ことを「試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む」「分析データ」に行うとする訂正事項2は、申立人の主張するような本件特許発明を実質的に変更するものではない。 エ したがって、上記申立人の主張は採用することができない。 (2)訂正事項3について ア 申立人は、訂正事項3による訂正は、「PIONA(パラフィン群、イソパラフィン群、オレフィン群、ナフテン群および芳香族群)分曲線データ」を伝統的な分析データの候補から削除するものであり、「分子レベル分析データ」に「PIONA(パラフィン群、イソパラフィン群、オレフィン群、ナフテン群および芳香族群)分曲線データ」が含まれる事態ともなりえ、その場合は、特許請求の範囲の記載を実質的に拡張又は変更するものであるし、本願の出願当初の明細書等には「PIONA(パラフィン群、イソパラフィン群、オレフィン群、ナフテン群および芳香族群)分曲線データ」が「分子レベル分析データ」であることまでは記載されていないのであるから、本願の出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものであると認定することができない旨主張する。 イ しかしながら、訂正事項3は、伝統的な分析データの集合をより限定的に規定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、令和4年3月2日付け取消理由通知の理由3(明確性)で指摘された明瞭でない記載を明瞭にしようとするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 ウ さらに、申立人が提示した甲第7号証には、PONA分析は、ガスクロマトグラフを用いてパラフィン、オレフィン、ナフテン、芳香族を分離定量することが開示されていることより、本願のPIONA分曲線データが、分子レベル分析データに含まれるものであるとしても、本願の明細書には、分子レベル分析データにはガスクロマトグラフィーを用いて得られるデータが含まれることと、PIONA分曲線データが伝統的な分析データに含まれることとの、両方が記載されており、ガスクロマトグラフを用いたPIONA分曲線データは分子レベル分析データに含まれると解されるから、訂正事項3により訂正後の請求項1に係る発明において、その一方であるPIONA分曲線データが伝統的な分析データに含まれることを削除することは、本願の明細書に記載された事項の範囲内のものでの、特許請求の範囲の減縮と認められる。 エ したがって、上記申立人の主張は採用することができない。 4.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、請求項〔1ないし62〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし62に係る発明(以下「本件発明1ないし62」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし62に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 コンピュータに実装される、原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする方法であって、プロセッサにより、 (i)前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取る過程であって、(1)前記分子レベル分析データは、ガスクロマトグラフィーデータおよび質量分析法データのうちの少なくとも1つを含み、(2)前記伝統的な分析データは、蒸留曲線データ、密度曲線データ、硫黄曲線データ、塩基性窒素曲線データ、総窒素曲線データ、CH比曲線データ、全酸価曲線データ、粘度曲線データ、ニッケル分曲線データ、およびバナジウム分曲線データのうちの少なくとも1つを含む、過程と、 (ii)a)前記試料の前記分子レベル分析データに基づいて、絶対的な化合物組成を設定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて、第1の化合物群および第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、ならびに第1のセグメント分布を設定し、かつ、c)当該伝統的な分析データの少なくとも一部に基づいて、第2の化合物群および第2の化合物群重量、第2の概念的セグメントタイプ、ならびに第2のセグメント分布を設定する過程と、 (iii)a)前記設定された絶対的な化合物組成である絶対的な化合物組成を決定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて設定された、前記第1のセグメント分布および前記第1の化合物群重量を表す第1のセグメント分布値から第1の化合物組成を決定し、かつ、c)当該伝統的な分析データに基づいて設定された、前記第2のセグメント分布および前記第2の化合物群重量を表す第2のセグメント分布パラメータから第2の化合物組成を決定する過程と、 (iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成および、c)前記第2の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と、 (v)前記調和済みの化合物組成を、原油または石油留分を含む前記試料の前記化学組成のキャラクタリゼーション結果である洗練化された化合物組成として決定し、受け取った前記分子レベル分析データが定性的な分子レベル分析データを含むものである場合、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第1の化合物群重量を調節し、かつ、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第2の化合物群重量および前記第2のセグメント分布パラメータを調節する過程と、 を備える、方法。 【請求項2】 請求項1に記載の方法において、前記絶対的な化合物組成が絶対的な信号群組成であり、前記第1の化合物組成が第1の信号群組成であり、前記第2の化合物組成が第2の信号群組成であり、前記化合物組成が信号群組成である、方法。 【請求項3】 請求項1または2に記載の方法において、前記分子分析データが、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)データ、ガスクロマトグラフィー時間飛行型質量分析法(GC-ToF)データ、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析法(FT ICR-MS)データを含む、方法。 【請求項4】 請求項1または2に記載の方法において、前記分子分析データが、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC-MS)データ、ガスクロマトグラフィー時間飛行型質量分析法(GC-ToF)データ、またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析法(FT ICR-MS)データである、方法。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、前記FT ICR-MSデータが、大気圧光イオン化法(APPI)FT ICR-MSデータ、エレクトロスプレー負イオン化法(ESI-)FT ICR-MSデータ、またはエレクトロスプレー陽イオン化法(ESI+)FT ICR-MSデータである、方法。 【請求項6】 請求項1から5のいずれか一項に記載の方法において、前記GC-MSデータが、水素炎イオン化検出器ガスクロマトグラフィー(GC-FID)データである、方法。 【請求項7】 請求項1から6のいずれか一項に記載の方法において、前記分子レベル分析データがGC-MSデータを含み、当該方法が、さらに、 前記GC-MSデータに基づいて、化合物ライブラリから純粋化合物を選択する過程、 を備える、方法。 【請求項8】 請求項1から7のいずれか一項に記載の方法において、GC-MSデータから、化合物の素性および前記絶対的な化合物組成が決定される、方法。 【請求項9】 請求項1から8のいずれか一項に記載の方法において、前記分子レベル分析データが直接的なデータを含み、当該方法は、さらに、 (1)前記直接的なデータに基づいて、化合物ライブラリから純粋化合物を選択する過程と、 (2)絶対的な化合物組成を設定する過程と、 (3)絶対的な化合物組成を算出する過程と、 を備える、方法。 【請求項10】 請求項1から9のいずれか一項に記載の方法において、前記分子レベル分析データがGC-ToFデータを含み、当該方法は、さらに、 GC-ToF信号強度データ、および/または、GC-ToFデータから導き出された炭素数、および/または、GC-ToFデータから導き出された二重結合当量(DBE)を、所定の分布に変換する過程であって、前記所定の分布がセグメント数の離散整数値での同セグメントの確率を表す分布である過程、 を備える、方法。 【請求項11】 請求項1から10のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 GT-ToFデータから求められた所定の分布に基づいて、第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、および第1のセグメント分布を設定する過程であって、前記所定の分布がセグメント数の離散整数値での同セグメントの確率を表す分布である過程、 を備える、方法。 【請求項12】 請求項1から11のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 GC-ToFデータから導き出された化合物群重量、GC-ToFデータから導き出されたセグメントタイプ、およびGC-ToFデータから導き出されたセグメント分布値から、GC-ToFベースの化合物組成を決定する過程、 を備える、方法。 【請求項13】 請求項1から12のいずれか一項に記載の方法において、前記第1の化合物組成が、GC-ToFデータから決定された化合物組成、つまり、GC-ToFベースの化合物組成を含む、方法。 【請求項14】 請求項12または13に記載の方法において、前記GC-ToFベースの化合物組成が、前記洗練化された化合物組成の、受け取った対応する分析データと比べての物理的特性および/または化学的特性の違いに基づいて調節されない、方法。 【請求項15】 請求項1から14のいずれか一項に記載の方法において、前記分子レベル分析データが定量的な分子レベル分析データを含み、当該方法は、さらに、 (1)前記定量的な分子レベル分析データから導き出された信号強度データ、および/または、定量的な分子レベル分析データから導き出された炭素数、および/または、定量的な分子レベル分析データから導き出された二重結合当量(DBE)を、所定の分布に変換する過程と、 (2)前記定量的な分子レベル分析データから求められた所定の分布に基づいて、第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、および第1のセグメント分布を設定する過程と、 (3)定量的な分子レベル分析データから導き出された化合物群重量、定量的な分子レベル分析データから導き出されたセグメントタイプ、および定量的な分子レベル分析データから導き出されたセグメント分布値から、化合物組成を算出する過程と、 を備え、前記所定の分布がセグメント数の離散整数値での同セグメントの確率を表す分布である、方法。 【請求項16】 請求項1から15のいずれか一項に記載の方法において、前記分子レベル分析データがFT ICR-MSデータを含み、当該方法は、さらに、 FT ICR-MS信号強度データ、および/または、FT ICR-MSから導き出された式、および/または、FT ICR-MSから導き出された炭素数、および/または、FT ICR-MSから導き出された二重結合当量(DBE)を、所定の分布および/またはガンマ分布および/または一様なセグメント分布に変換する過程、 を備える、方法。 【請求項17】 請求項1から16のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 FT ICR-MSデータから導き出された所定の分布および/またはガンマ分布および/または一様なセグメント分布に基づいて、前記第1の化合物群重量、前記第1の概念的セグメントタイプ、および前記第1のセグメント分布を設定する過程、 を備え、前記所定の分布がセグメント数の離散整数値での同セグメントの確率を表す分布である、方法。 【請求項18】 請求項1から17のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 FT ICR-MSデータから導き出された化合物群重量、FT ICR-MSデータから導き出されたセグメントタイプ、ならびにFT ICR-MSデータから導き出されたセグメント分布値および/またはセグメント分布パラメータから、FT ICR-MSベースの化合物組成を決定する過程、 を備える、方法。 【請求項19】 請求項1から18のいずれか一項に記載の方法において、前記分子レベル分析データが定性的な分子レベル分析データを含み、当該方法は、さらに、 (1)前記定性的な分子レベル分析データから導き出された信号強度データ、および/または、定性的な分子レベル分析データから導き出された式、および/または、定性的な分子レベル分析データから導き出された炭素数、および/または、定性的な分子レベル分析データから導き出された二重結合当量(DBE)を、所定の分布および/またはガンマ分布および/または一様なセグメント分布に変換する過程と、 (2)定性的な分子レベル分析データから導き出された所定の分布および/またはガンマ分布および/または一様なセグメント分布に基づいて、第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、および第1のセグメント分布を設定する過程と、 (3)定性的な分子レベル分析データから導き出された化合物群重量、定性的な分子レベル分析データから導き出されたセグメントタイプ、ならびに定性的な分子レベル分析データから導き出されたセグメント分布値および/またはセグメント分布パラメータから、化合物組成を算出する過程と、 を備え、前記所定の分布がセグメント数の離散整数値での同セグメントの確率を表す分布である、方法。 【請求項20】 請求項1から19のいずれか一項に記載の方法において、前記第1の化合物組成が、FT ICR-MSデータから決定された化合物組成、つまり、FT ICR-MSベースの化合物組成を含む、方法。 【請求項21】 請求項18または20に記載の方法において、前記FT ICR-MSベースの化合物組成が、前記洗練化された化合物組成の、受け取った対応する分析データと比べての物理的特性および/または化学的特性の違いに基づいて調節される、方法。 【請求項22】 請求項1から21のいずれか一項に記載の方法において、前記第1の化合物組成がFT ICR-MSベースの化合物組成であり、前記第2の化合物組成が前記伝統的な分析データから決定される、方法。 【請求項23】 請求項22に記載の方法において、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで、前記FT ICR-MSベースの化合物組成および前記第2の化合物組成のみが調節される、方法。 【請求項24】 請求項1から23のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分析データが、前記伝統的な分析データを含む、方法。 【請求項25】 請求項1から24のいずれか一項に記載の方法において、前記第1および/または第2の化合物群が、互いに独立して、パラフィン群、ナフテン群、芳香族群、オレフィン群、メルカプタン群、1個の硫黄原子を有するチオフェン・スルフィド群、2個の硫黄原子を有するチオフェン・スルフィド群、スルホキシド群、硫黄-酸素群、1個のピロールを有する中性窒素群、2個のピロール窒素を有する中性窒素群、中性窒素-硫黄群、中性窒素-酸素群、1個のピリジンを有する塩基性窒素群、ピリジンと別のピリジン又はピロールを有する塩基性窒素群、塩基性窒素-硫黄群、塩基性窒素-酸素群、フェノール群、パラフィン酸群、芳香族酸・ナフテン酸群、ニッケルポルフィリン群、およびバナジウムポルフィリン群のうちの少なくとも1つを含む、方法。 【請求項26】 請求項1から25のいずれか一項に記載の方法において、前記第1および/または第2の化合物群が、パラフィン群、ナフテン群、芳香族群、オレフィン群、メルカプタン群、1個の硫黄原子を有するチオフェン・スルフィド群、2個の硫黄原子を有するチオフェン・スルフィド群、スルホキシド群、硫黄-酸素群、1個のピロールを有する中性窒素群、2個のピロール窒素を有する中性窒素群、中性窒素-硫黄群、中性窒素-酸素群、1個のピリジンを有する塩基性窒素群、ピリジンと別のピリジン又はピロールを有する塩基性窒素群、塩基性窒素-硫黄群、塩基性窒素-酸素群、フェノール群、パラフィン酸群、芳香族酸・ナフテン酸群、ニッケルポルフィリン群、およびバナジウムポルフィリン群を含む、方法。 【請求項27】 請求項25または26に記載の方法において、前記パラフィン群の概念的セグメントタイプが、総炭素数、一分岐メチレン、および二分岐メチレンを含む、方法。 【請求項28】 請求項25または26に記載の方法において、前記ナフテン群の概念的セグメントタイプが、総炭素数、ナフテン側環、および六員環-対-五員環のモル比を含む、方法。 【請求項29】 請求項25または26に記載の方法において、前記芳香族群の概念的セグメントタイプが、総炭素数、芳香族側環、およびナフテン側環を含む、方法。 【請求項30】 請求項1から29のいずれか一項に記載の方法において、前記分子レベル分析データが、前記試料全体から得られたものである、方法。 【請求項31】 請求項1から30のいずれか一項に記載の方法において、前記分子レベル分析データが、前記試料の少なくとも1つのカットから得られたものである、方法。 【請求項32】 請求項1から31のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 原油又は石油留分を含む前記試料の前記化学組成の前記キャラクタリゼーション結果を出力する過程、 を備える、方法。 【請求項33】 請求項1から32のいずれか一項に記載の方法において、FT ICR-MSデータと前記伝統的な分析データとを受け取る、方法。 【請求項34】 請求項1から33のいずれか一項に記載の方法において、GC-MSデータ、GC-ToFデータ、FT ICR-MSデータ、および前記伝統的な分析データのうちの少なくとも2つを受け取る、方法。 【請求項35】 請求項1から34のいずれか一項に記載の方法において、GC-MSデータ、GC-ToFデータ、FT ICR-MSデータ、および前記伝統的な分析データのうちの少なくとも3つを受け取る、方法。 【請求項36】 請求項1から35のいずれか一項に記載の方法において、GC-MSデータとGC-ToFデータとFT ICR-MSデータと前記伝統的な分析データとを受け取る、方法。 【請求項37】 請求項1から36のいずれか一項に記載の方法において、定性的な分子レベル分析データと前記伝統的な分析データとを受け取る、方法。 【請求項38】 請求項1から37のいずれか一項に記載の方法において、直接的な分析データ、定量的な分子レベル分析データ、定性的な分子レベル分析データ、および前記伝統的な分析データのうちの少なくとも2つを受け取る、方法。 【請求項39】 請求項1から38のいずれか一項に記載の方法において、直接的な分析データ、定量的な分子レベル分析データ、定性的な分子レベル分析データ、および前記伝統的な分析データのうちの少なくとも3つを受け取る、方法。 【請求項40】 請求項1から39のいずれか一項に記載の方法において、直接的な分析データと定量的な分子レベル分析データと定性的な分子レベル分析データと前記伝統的な分析データとを受け取る、方法。 【請求項41】 請求項1から40のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 前記試料の物理的特性又は化学的特性を、当該試料の前記化学組成の前記キャラクタリゼーションの関数として推定する過程、 を備える、方法。 【請求項42】 請求項41に記載の方法において、前記試料の、推定される前記物理的特性が、標準沸点、液体密度、液体粘度、コンラドソン残留炭素、リサーチ法オクタン価、モーター法オクタン価、セタン価、およびリード蒸気圧のうちの少なくとも1つを含む、方法。 【請求項43】 請求項41に記載の方法において、前記試料の化学的特性を推定する過程が、硫黄分、塩基性窒素分、総窒素分、炭素分、水素分、CH比、ニッケル分、バナジウム分、酸素分、パラフィン分、イソパラフィン分、オレフィン分、ナフテン分、および芳香族分を含む、化学式,化学構造および化学組成を算出することを含む、方法。 【請求項44】 請求項1から43のいずれか一項に記載の方法において、前記伝統的な分析データを受け取る、方法。 【請求項45】 請求項1から44のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 モデル化合物のライブラリを用意する過程、 を備える、方法。 【請求項46】 請求項45に記載の方法において、さらに、 モデル化合物の前記ライブラリからの1つ又は複数のモデル化合物に対して信号群を割り当てる過程、 を備える、方法。 【請求項47】 請求項1から44のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 モデル化合物のライブラリからの1つ又は複数のモデル化合物に対して信号群を割り当てる過程、 を備える、方法。 【請求項48】 請求項46または47に記載の方法において、モデル化合物の前記ライブラリからの、一つの信号群に該当する前記モデル化合物同士が、同じ化合物群、同じ炭素数および同じ二重結合当量を有する、方法。 【請求項49】 請求項1から48のいずれか一項に記載の方法において、前記試料が、i)1~100の様々な炭素数とii)0~50の様々な二重結合当量数とを有する化合物を含む、方法。 【請求項50】 請求項1から49のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分子レベル分析データが、直接的なデータを含み、当該方法は、さらに、 前記直接的なデータに基づいて、一つのモデル化合物を、特定の一つの信号群に割り当てる過程、 を備える、方法。 【請求項51】 請求項1から50のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分子レベル分析データが、直接的な集合データを含み、当該方法は、さらに、 前記直接的な集合データに基づいて、同じ化合物群及び同じ炭素数である複数のモデル化合物を、一つの信号群に割り当てる過程、 を備える、方法。 【請求項52】 請求項1から51のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分子レベル分析データが定量的な分子レベル分析データを含み、当該方法は、さらに、 前記定量的な分子レベル分析データに基づいて、同じ化合物群、同じ炭素数及び同じ二重結合当量である複数のモデル化合物を、一つの信号群に割り当てる過程、 を備える、方法。 【請求項53】 請求項1から52のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分析データが定性的な分子レベル分析データを含み、当該方法は、さらに、 前記定性的な分子レベル分析データの少なくとも一部を表すのに所定の分布が用いられた場合、当該データに基づいて、同じ化合物群、同じ炭素数及び同じ二重結合当量である複数のモデル化合物を、一つの信号群に割り当てる過程と、 前記定性的な分子レベル分析データの少なくとも一部を表すのにガンマ分布又は一様な分布が用いられた場合、当該データに基づいて、同じ化合物群、同じ炭素数、同じ一分岐メチレン数、同じ二分岐メチレン数、同じ芳香族側環数及び同じナフテン側環数である複数のモデル化合物を、一つの信号群に割り当てる過程と、 を備え、前記所定の分布がセグメント数の離散整数値での同セグメントの確率を表す分布である、方法。 【請求項54】 請求項1から53のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分析データが前記伝統的な分析データを含み、当該方法は、さらに、 前記伝統的な分析データに基づいて、同じ化合物群、同じ炭素数、同じ一分岐メチレン数、同じ二分岐メチレン数、同じ芳香族側環数及び同じナフテン側環数である複数のモデル化合物を、一つの信号群に割り当てる過程、 を備える、方法。 【請求項55】 請求項1から54のいずれか一項に記載の方法において、一つ又は複数のモデル化合物を一つの信号群に割り当てる過程にて、直接的なデータは直接的な集合データよりも優先度が高く、直接的な集合データは定量的な分子レベル分析データよりも優先度が高く、定量的な分子レベルデータは定性的な分子レベル分析データよりも優先度が高く、定性的な分子レベル分析データは前記伝統的な分析データよりも優先度が高く、モデル化合物を信号群に各自割り当てることのできる様々な優先度の分析データが存在している場合、モデル化合物を信号集団に割り当てるのには、最も高い優先度の分析データが用いられる、方法。 【請求項56】 請求項1から55のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分子レベル分析データが、直接的なデータを含み、当該方法は、さらに、 前記直接的なデータに基づいて、第1のモデル化合物を第1の信号群に割り当てる過程、 を備える、方法。 【請求項57】 請求項1から56のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分子レベル分析データが、直接的な集合データを含み、当該方法は、さらに、 前記直接的な集合データに基づいて、複数のモデル化合物を、直接的なデータに基づくモデル化合物の振当てが行われていない信号群へと割り当てる過程であって、これらのモデル化合物は、同じ化合物群及び同じ炭素数の信号群へと割り当てられる、過程、 を備える、方法。 【請求項58】 請求項1から57のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分子レベル分析データが定量的な分子レベル分析データを含み、当該方法は、さらに、 前記定量的な分子レベル分析データに基づいて、複数のモデル化合物を、直接的なデータ及び直接的な集合データのいずれに基づいてもモデル化合物の振当てが行われていない信号群へと割り当てる過程であって、これらのモデル化合物は、同じ化合物群、同じ炭素数及び同じ二重結合当量の信号群へと割り当てられる、過程、 を備える、方法。 【請求項59】 請求項1から58のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分子レベル分析データが定性的な分子レベル分析データを含み、当該方法は、さらに、 前記定性的な分子レベル分析データの少なくとも一部を表すのに所定の分布が用いられた場合、当該定性的な分子レベル分析データに基づいて、複数のモデル化合物を、直接的なデータ、直接的な集合データ及び定量的な分子レベル分析データのいずれに基づいてもモデル化合物の振当てが行われていない信号群へと割り当てる過程であって、これらのモデル化合物は、同じ化合物群、同じ炭素数及び同じ二重結合当量の信号群へと割り当てられる、過程と、 前記定性的な分子レベル分析データに基づいて、同じ化合物群、同じ炭素数、同じ一分岐メチレン数、同じ二分岐メチレン数、同じ芳香族側環数及び同じナフテン側環数である複数のモデル化合物を、直接的なデータ、直接的な集合データ、定量的な分子レベル分析データ、及び前記定性的な分子レベル分析データのうちの所定の分布を用いた少なくとも一部のいずれに基づいてもモデル化合物の振当てが行われていない信号群へと割り当てる過程と、 を備え、前記所定の分布がセグメント数の離散整数値での同セグメントの確率を表す分布である、方法。 【請求項60】 請求項1から59のいずれか一項に記載の方法において、受け取った前記分析データが前記伝統的な分析データを含み、当該方法は、さらに、 前記伝統的な分析データに基づいて、複数のモデル化合物を、直接的なデータ、直接的な集合データ、定量的な分子レベル分析データ及び定性的な分子レベル分析データのいずれに基づいてもモデル化合物の振当てが行われていない信号群へと割り当てる過程であって、これらのモデル化合物は、同じ化合物群、同じ炭素数、同じ一分岐メチレン数、同じ二分岐メチレン数、同じ芳香族側環数及び同じナフテン側環数の信号群へと割り当てられる、過程、 を備える、方法。 【請求項61】 請求項1から60のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 前記試料のカットに属する信号群内における構成化合物の構造密度指数を表した確率分布関数を用いて、信号群内の化合物組成を算出する過程、 を備える、方法。 【請求項62】 請求項1から61のいずれか一項に記載の方法において、さらに、 前記試料の全信号群内における構成化合物の構造密度指数を表した確率分布関数を用いて、信号群内の化合物組成を算出する過程、 を備える、方法。」 第4 特許異議申立理由の概要 申立人は、証拠として甲第1号証ないし甲第7号証を提出し、以下の異議申立理由(以下「異議申立理由1ないし5」という。)によって、請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。 <証拠一覧> 甲第1号証:山中潤二 他2名、化石燃料油の品質管理手法の検討【飛行時間型質量分析法(TOF-MS)の適応について】、環境管理、平成26年7月1日発行、第43号,75-78頁 甲第2号証:Alan G. Marshall et al.,"Petroleomics: Chemistry of the underworld",PNAS,2008年11月25日発行,Vol.105,No.47,p.18090-18095 甲第3号証:寺谷彰悟、”新たな重質油物性値推算アプローチの提案-ペトロリオミクスに立脚した物性値推算-”、第24回「化学工学物性定数の最近の動向」講演会講演予稿集、2015年3月13日発行、第16-19頁 甲第4号証:特表2016-524781号公報 甲第5号証の1:国際公開第2016/037034号 甲第5号証の2:特表2017-527078号公報 甲第6号証: 特表2015-507747号公報 甲第7号証:「株式会社島津製作所ウェブサイト」(URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/apl/chemical/fuel_battery0403020.htm) (1)異議申立理由1(実施可能要件違反) 本件特許権の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件特許発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62を実施可能なように、明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号の規定に適合せず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 (2)異議申立理由2(サポート要件違反) 本件特許発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定に適合せず、同法第113条第4項の規定により取り消されるべきである。 (3)異議申立理由3(明確性要件違反) 本件特許発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62は、特許を受けようとする発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号の規定に適合せず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。 (4)異議申立理由4(新規性違反) 本件特許発明1ないし5,16ないし21,25,32,41,45,46,49,53及び59は、本件特許権の優先日前に当業者に利用可能であった、甲第2号証及び甲第3号証のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号の規定により、取り消されるべきである。 (5)異議申立理由5(進歩性違反) 本件特許発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62は、本件特許権の優先日前に当業者に利用可能であった、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号の規定により、取り消されるべきである。 第5 取消理由通知に記載した取消理由について 1.取消理由の概要 訂正前の請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る特許に対して、当審が令和4年3月2日(起案日)に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 ●取消理由1(実施可能要件) 本件特許出願の発明の詳細な説明は、請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る本件特許発明を実施可能なように、明確かつ十分に記載されたものではないから、上記請求項に係る特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●取消理由2(サポート要件) 本件特許出願の請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●取消理由3(明確性) 本件特許出願の請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る特許は、その発明が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●取消理由4(進歩性) 本件特許出願の請求項1ないし21,25ないし32,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る発明は、甲第1ないし6号証に記載された発明に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <引用文献等一覧> 甲第1号証:山中潤二 他2名、化石燃料油の品質管理手法の検討【飛行時間型質量分析法(TOF-MS)の適応について】、環境管理、平成26年7月1日発行、第43号,75-78頁 甲第2号証:Alan G. Marshall et al.,"Petroleomics: Chemistry of the underworld",PNAS,2008年11月25日発行,Vol.105,No.47,p.18090-18095 甲第3号証:寺谷彰悟、”新たな重質油物性値推算アプローチの提案-ペトロリオミクスに立脚した物性値推算-”、第24回「化学工学物性定数の最近の動向」講演会講演予稿集、2015年3月13日発行、第16-19頁 甲第4号証:特表2016-524781号公報 甲第5号証の1:国際公開第2016/037034号 甲第5号証の2:特表2017-527078号公報 甲第6号証: 特表2015-507747号公報 甲第7号証:「株式会社島津製作所ウェブサイト」(URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/apl/chemical/fuel_battery0403020.htm) 2.甲号証の記載 (1)甲第1号証 本件特許の優先日前である平成26年(2014年)7月1日に発行された「山中潤二 他2名、化石燃料油の品質管理手法の検討【飛行時間型質量分析法(TOF-MS)の適応について】、環境管理、平成26年7月1日発行、第43号,75-78頁」(以下「甲第1号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与。以下同様。) ア 「ペトロリオミクスは、原油や石油製品を分子の集合体として捉え、その詳細な化学構造の分布に基づいて物性や反応性を解析・予測する技術で、詳細組成構造解析、分子反応モデリング、インフォマティクス(情報科学)の3つの要素技術で研究が進められている。そのひとつである詳細組成構造解析は、原油の組成や分子構造を明らかにしていくことを目的とする。一般的に原油は、ガス成分を除くと、沸点の低い順から、ナフサ、灯軽油、減圧軽油及び減圧残油の4種類に大きく分類される(表2)。現在、詳細な化学構造を決定する方法として、比較的沸点の低いナフサ及び灯軽油では、すべての元素を対象とすることはできないが、ガスクロマトグラフ原子発光法(GC-AED)法が有効である。このほか、包括的2次元ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析法(GC×GC-TOF-MS法)が分子式の同定に極めて有効とされている。それに対して、減圧軽油及び減圧残油等の重質油は沸点が350℃以上と高いため、GC-AED法等で分析することが困難であり、これまで、核磁気共鳴(NMR)法等によって化学構造の特定が試みられてきた。その後、高速液体クロマトグラム(HPLC)と超高分解能質量分析装置(FT-ICR-MS法)を組み合わせることで、高精度・高感度な原油中重質成分(重質油)の構造式の解析が進められているが、FT-ICR-MS法は、高額な機器のため、簡単に利用できないという制約を持ち合わせている。 そこで、本研究では、沸点の高い重質油の構造解析のための分析方法として、FT-ICR-MSよりも比較的安価なマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析器(MALDI-TOF-MS)を用いる分析手法の適応性を検討することとした。」(第75頁右欄第15行-第76頁左欄第22行) イ 甲第1号証の上記記載事項を総合勘案すると、甲第1号証には、次の技術(以下「甲1開示技術」という。)が記載されていると認められる。 「原油の組成や分子構造を明らかにしていく詳細組成構造解析を行うペトロリオミクスにおいて、詳細な化学構造を決定する方法として、ガスクロマトグラフ原子発光法(GC-AED)法、包括的2次元ガスクロマトグラフ飛行時間型質量分析法(GC×GC-TOF-MS法)、超高分解能質量分析法(FT-ICR-MS法)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析器(MALDI-TOF-MS)を用いる分析手法を用いる技術。」 (2)甲第2号証 本件特許の優先日前である2008年(平成20年)11月25日に発行された「Alan G. Marshall et al.,"Petroleomics: Chemistry of the underworld",PNAS,2008年11月25日発行,Vol.105,No.47,p.18090-18095」(以下「甲第2号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 ア 「Each different molecular elemental composition - e.g., CcHhNnOoSs - has a different exact mass. With sufficiently high mass resolving power (m/Δm50% ~ 400,000, in which m is molecular mass and Δm50% is the mass spectral peak width at half-maximum peak height) and mass accuracy (<300 ppb) up to ~800 Da, now routinely available from high-field (≧ 9.4 T) Fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometry, it is possible to resolve and identify uniquely and simultaneously each of the thousands of elemental compositions from the most complex natural organic mixtures, including petroleum crude oil. It is thus possible to separate and sort petroleum components according to their heteroatom class (NnOoSs), double bond equivalents (DBE = number of rings plus double bonds involving carbon, because each ring or double bond results in a loss of two hydrogen atoms), and carbon number.」(第18090頁左欄第1-14行) (当審訳:異なる各分子元素組成(CcHhNnOoSsなど)は、それぞれ、異なる正確な質量を有している。十分に高い質量分解力(m/Δm50% ~ 400,000,ここで、mは分子量および Δm50% は最大ピーク高さの半分での質量スペクトルピーク幅)および最大~800 Daの質量精度(<300 ppb)で、現在は高フィールド(≧ 9.4 T)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析により日常的に利用可能であり、石油原油を含む最も複雑な天然有機混合物から、数千の元素組成のそれぞれを一意かつ同時に分離および同定することができる。したがって、ヘテロ原子クラス(NnOoSs)、二重結合当量(DBEの環数と炭素を含む二重結合、各環または二重結合は2つの水素原子の損失をもたらすため)、及び炭素数に従って、石油成分を分離し、分類することができる。) イ 「Fourier transform ion cyclotron resonance mass spectrometry (FT-ICR MS) offers the highest available broadband mass resolution, mass resolving power, and mass accuracy (2). It was first applied to petroleum via electron ionization of petroleum distillates (3, 4). However, the relatively low magnetic field (3.0 T) limited the m/z range, the need to volatilize the sample limited the molecular weight range (especially for heteroatom- containing species), and electron ionization produced extensive fragmentation (especially of alkyl chains). Electrospray ionization (ESI) (5) is most efficient for polar molecules and typically generates positive ions by protonating (basic) neutrals and negative ions by deprotonating (acidic) neutrals. Because many heteroatom-containing components (NnOoSs) of petroleum are highly polar, ESI is specific and especially efficient in generating their gas-phase ions.」(第18090頁左欄第45行-右欄第3行) (当審訳:フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)は、利用可能な最高の広帯域質量分解能、質量分解力、及び質量精度を提供する(2)。これは、石油留出物の電子イオン化を介して石油に最初に適用された(3,4)。ただし、比較的低い磁場(3.0 T)はそのm/z範囲を制限し、サンプルを揮発させる必要性は、分子量範囲を制限し(特にヘテロ原子含有種の場合)、電子イオン化は(特にアルキル鎖の)広範囲のフラグメンテーションを生成した。 エレクトロスプレーイオン化(ESI)(5)は極性分子に対して最も効率的であり、通常、(塩基性)中性物質をプロトン化することによって正イオンを生成し、(酸性)中性物質を脱プロトン化することによって負イオンを生成する。石油の多くのヘテロ原子含有成分(NnOoSs)は極性が高いため、ESIは特異的であり、気相イオンの生成に特に効率的である。) ウ 「Access to many of the remaining 90% of petroleum components is afforded by field desorption/ionization (FD) and atmospheric pressure photoionization (APPI). Continuous-flow FD FT-ICR MS yields abundant ions from several species not observed by ESI, including benzo- and dibenzothiophenes, furans, cycloalkanes, and polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) (8).」(第18090頁右欄第14-20行) (当審訳:石油成分の残りの90%の多くへのアクセスは、フィールド脱離/イオン化(FD)及び大気圧光イオン化(APPI)によって提供される。連続フローFDFT-ICR MSは、ベンゾ及びジベンゾチオフェン、フラン、シクロアルカン、多環芳香族炭化水素など、ESIでは観察されないいくつかの種から豊富なイオンを生成する(PAH)(8)。) エ 「Elemental Composition Assignment from Accurate Mass Measurement. Once the thousands of peaks in an FT-ICR mass spectrum of a petroleum sample have been resolved and converted from ion cyclotron frequency to mass, the next step is to assign each mass to a unique elemental composition. Even with ultrahigh mass resolving power (e.g., m/Δm50% = 400,000 up to 800 Da), such assignments may not be possible based on mass measurement alone.」(第18091頁右欄下から第3行-第18092頁左欄第5行) (当審訳:正確な質量測定からの元素組成の割り当て。 石油サンプルのFT-ICRマススペクトルの数千のピークが分離され、イオンサイクロトロン周波数から質量に変換されたら、次のステップは、各質量を固有の元素組成に割り当てることである。超高質量分解能(例:m/Δm50%=400,000~800Da)でも、質量測定のみに基づいてこのような割り当てができない場合がある。) オ 甲第2号証の上記記載事項を総合勘案すると、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「石油原油を含む最も複雑な天然有機混合物から、数千の元素組成のそれぞれを一意かつ同時に分離および同定するために、利用可能な最高の広帯域質量分解能、質量分解力、及び質量精度を提供するフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)を用いて、ヘテロ原子クラス(NnOoSs)、二重結合当量(DBEの環数と炭素を含む二重結合、各環または二重結合は2つの水素原子の損失をもたらすため)、及び炭素数に従って、石油成分を分離し、分類する方法であって、 フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)に導入する石油留出物の電子イオン化において、 エレクトロスプレーイオン化(ESI)(5)は極性分子に対して最も効率的であり、 石油成分の残りの90%の多くへのアクセスは、フィールド脱離/イオン化(FD)及び大気圧光イオン化(APPI)によって提供されるものである、 方法。」 (3)甲第3号証 本件特許の優先日前である2015年(平成27年)3月13日に発行された「寺谷彰悟、”新たな重質油物性値推算アプローチの提案-ペトロリオミクスに立脚した物性値推算-”、第24回「化学工学物性定数の最近の動向」講演会講演予稿集、2015年3月13日発行、第16-19頁」(以下「甲第3号証」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 ア 「我々、一般財団法人石油エネルギー技術センター (Japan Petroleum Energy Center, JPEC)ペトロリオミクス研究室では、国内に先駆けて、2011年度よりペトロリオミクス技術開発を開始した。当研究室では、重質油を分子のレベルまで分析し、重質油分子の組成と構造を明らかにすることを目的とした「詳細組成構造解析技術開発」、重質油分子の各種石油精製プロセスにおける反応挙動を明らかにすることを目的とした「分子反応モデリング技術開発」、さらには、重質油分子の組成・構造・反応性に関する膨大な情報(ビッグデータ)を効率的にハンドリングし、新たな知見を創出することを目的とした「ペトロ・インフォマティクス技術開発」の3つの技術開発を推進している。中でも、詳細組成構造解析技術は、ペトロリオミクス技術の核であり、超高分解能質量分析装置であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS、 図2)による重質油の分析と、測定された重質油分子の精密質量に基づく構造解析技術開発を担い、これまでに残油脱硫プロセスの原料油および生成油中に含まれる含窒素化合物の組成分布解析2)やスラリー床水素化分解プロセスの反応前後における重質油分子の炭素数分布変化の解析3)ついて本技術の活用結果を報告している。こうした分子レベルの重質油分析、解析技術の開発に伴い、重質油分子の組成と構造が解明されつつある。」(第16頁右欄第12行-第17頁左欄第5行) イ 「3.新規重質油物性値推算アプローチの提案 図3に示すように、これまで、重質油を含む各種石油留分の物性値は、蒸留曲線に基づいて石油留分を複数の留分へとさらに分画し、各分画分を擬似的に単一成分(擬似成分)と定義して推算されてきた。最も基本的な物性値の一つである擬似成分の臨界定数の推算にはTwuの推算法4),5)がこれまで広く用いられてきており、汎用プロセスシミュレーターなどにおいても、本法もしくは本法を改良した方法が搭載されているものが多い。」(第17頁左欄第6-13行) ウ 「4.1方法 (1)FT-ICR MSによる重質油試料の分析7) 本検討では重質油試料としてオイルサンド.ビチューメンのVR (Bitumen-VR) を使用した。試料は溶剤分画8)によりマルテン分とアスファルテン分(As)に分画した後、マルテンをカラムクロマトグラフィーにより、飽和分(Sa)、1環芳香族分(1A)、2環芳香族分(2A)、3環以上芳香族分(3A+)、極性レジン分(Po)および多環レジン分(PA)にさらに分画し9)、分画された各留分をFT-ICR MSにより分析した。Bitumen-VRの分画結果を図5に示す。FT-ICR MSによる分析では、イオン化法として大気圧光イオン化(Atmospheric Pressure Photo Ionization、APPI)法またはレーザー脱離イオン化(Laser Desorption Ionization、LDI)法を採用した。」(第18頁左欄第14-26行) エ 「(2)コア構造解析 コア構造解析の実施に当たり、重質油分子中に含まれると想定されるコア構造を以下の仮定に基づいてあらかじめ構築、リスト化した。そして、CIDを用いたFT-ICR MS分析により得られたコア構造の精密質量とリスト化された各コア構造の精密質量を比較照合することで、コア構造を帰属した11)。」(第18頁左欄第38-43行) オ 「 [図:0001392037000001.jpg] 図11コア構造解析により帰属された重質油分子のコア構造 (存在割合上位10コア構造、Bitumen-VR、1A) 」(第19頁右上) カ 甲第3号証の上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「重質油を分子のレベルまで分析し、重質油分子の組成と構造を明らかにすることを目的とした詳細組成構造解析技術における、超高分解能質量分析装置であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS)による重質油の分析と、測定された重質油分子の精密質量に基づく構造解析技術の方法であって、 重質油試料としてオイルサンド.ビチューメンのVR (Bitumen-VR) を使用し、試料は溶剤分画によりマルテン分とアスファルテン分(As)に分画した後、マルテンをカラムクロマトグラフィーにより、飽和分(Sa)、1環芳香族分(1A)、2環芳香族分(2A)、3環以上芳香族分(3A+)、極性レジン分(Po)および多環レジン分(PA)にさらに分画し、分画された各留分をFT-ICR MSにより分析し、 FT-ICR MSによる分析では、イオン化法として大気圧光イオン化(Atmospheric Pressure Photo Ionization、APPI)法またはレーザー脱離イオン化(Laser Desorption Ionization、LDI)法を採用し、 コア構造解析の実施に当たり、重質油分子中に含まれると想定されるコア構造を以下の仮定に基づいてあらかじめ構築、リスト化し、CIDを用いたFT-ICR MS分析により得られたコア構造の精密質量とリスト化された各コア構造の精密質量を比較照合することで、コア構造を帰属した、 方法。」 (4)甲第4号証 本件特許の優先日前である2016年(平成28年)8月18日に発行された「特表2016-524781号公報」(以下「甲第4号証」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。 「【背景技術】 【0002】 フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS)は、利用可能な最も高いスペクトル性能の質量分析器の代表である。高質量分解能、高質量精度、及び高ダイナミックレンジは、小分子からインタクトプロテインまで高性能質量分析を可能にしている。多くのタンデム式MSの能力は、衝突誘起解離(CID、外部及びインセルの両方)、赤外多光子吸収解離(IRMPD)、電子捕獲解離(ECD)、及び電子移動解離(ETD)を含む、FT-ICR MSに従う。FT-ICR MSは、精度プロテオミクス、トップダウンプロテオミクス、質量分析イメージング、及びペトロリオミクスに最適な分析器である。」 (5)甲第5号証の1及び甲第5号証の2 本件特許の優先日前である2016年3月10日に発行された「国際公開第2016/037034号」(以下「甲第5号証の1」という。)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。なお、日本語訳については、甲第5号証の1で国際公開された国際出願であるPCT/US2015/048501の日本国内段階での出願である特願2017-507970号の公表特許公報である「特表2017-527078号公報」(以下「甲第5号証の2」という。)の対応箇所の記載を用いた。 「BACKGROUND [0002] Development of soft ionization methods, like Electrospray (ESI) and Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization (MALDI) have extended the field of mass spectrometric analysis to wide class of labile compounds-such as peptides, nucleotides, proteins, and lipids-and have triggered the development of wide range of biological and medical applications. The methods are known to be limited to compounds which readily produce ions in liquid, such as ionic salts, and to polar compounds, readily producing protonated MH+ and deprotonated ions (M-H)-. The range of soft ionized compounds was extended to semi-polar compounds with introduction of Atmospheric Pressure Chemical Ionization (APCI) and Atmospheric Pressure Photo Ionization methods (APPI) methods. One shortcoming, however, is that these soft ionizing methods are not fully quantitative because the nature of the analyzed compounds define and vary both the ionization efficiency and the gas-phase stability against competitive ion molecular reactions.」 (甲第5号証の2による訳: 背景技術 [0002] エレクトロスプレイ(ESI)およびマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)などのソフトイオン化法の開発によって、質量分光分析の分野は、幅広い種類の不安定化合物(ペプチド、ヌクレオチド、タンパク質、および脂質など)まで拡大することになり、幅広い範囲の生物学的応用および医学的応用の開発の引き金となった。この方法は、イオン性塩などの液体のイオンを容易にもたらす化合物と、プロトン化イオンMH+および脱プロトン化イオン(M-H)-を容易にもたらす極性化合物とに限定されることが知られている。ソフトイオン化された化合物の範囲は、大気圧化学イオン化(APCI)および大気圧光イオン化法(APPI)の方法を導入することで半極性化合物まで拡大された。しかしながら、欠点の1つは、分析された化合物の性質がイオン化効率と競合的イオン分子反応に対する気相安定性との両方を定めかつ変化させるので、これらのソフトイオン化法が完全には定量的でないことである。) (6)甲第6号証 本件特許の優先日前である2015年(平成27年)3月12日に頒布された刊行物である「特表2015-507747号公報」(以下「甲第6号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 原油の化学組成をキャラクタリゼーションする方法であって、 プロセッサにより、特定の原油特性データを有する所与の原油について、 i)各構成炭化水素分子種におけるセグメントの種類及びセグメント数の範囲を、各構成炭化水素分子の物理的特性及び化学的特性についてのデータならびに原油の物理的特性及び化学的特性についてのデータに基づいて決定する過程と、 ii)前記特定の原油特性データに基づいて、前記所与の原油を代表する化学組成を構成する各種類の構成炭化水素分子の相対割合を決定し、これによって、その所与の原油の化学組成をキャラクタリゼーションする過程と、 エンドユーザに対する出力として、前記所与の原油のキャラクタリゼーションされた化学組成を表示する過程と、 を含む、原油の化学組成のキャラクタリゼーション方法。 【請求項2】 請求項1に記載の原油の化学組成のキャラクタリゼーション方法において、前記セグメントの種類が:メチルセグメント;ゼロ分岐メチレンセグメント;一分岐メチレンセグメント;二分岐メチレンセグメント;シクロヘキサンセグメント;シクロヘキサン側環セグメント;シクロペンタンセグメント;シクロペンタン側環セグメント;芳香族セグメント;および芳香族側環セグメント;から選択される少なくとも一種を含む、原油の化学組成のキャラクタリゼーション方法。」 イ 「【請求項7】 請求項6に記載の原油の化学組成のキャラクタリゼーション方法において、前記所与の原油の推定される物理的特性が:沸点;比重;および粘度;から選択される少なくとも一種を含む、原油の化学組成のキャラクタリゼーション方法。」 ウ 「【請求項22】 請求項21に記載の原油のブレンド方法において、さらに、 特定された前記確率分布関数および各種類の構成炭化水素分子の前記相対割合に基づいて、前記所与の原油の化学組成を推定する副過程、および この推定された化学組成に基づいて、前記所与の原油の物理的特性及び化学的特性を推定する副過程、 を含む、原油のブレンド方法。」 エ 「【請求項25】 請求項22に記載の原油のブレンド方法において、各種類の構成炭化水素分子の前記相対割合を決定する副過程が、前記所与の原油の推定された物理的特性及び化学的特性を、前記特定の原油特性データにマッチングさせることにより、前記所与の原油中の各種類の構成炭化水素分子の前記相対割合を決定することを含む、原油のブレンド方法。」 オ 「【0005】 入手可能なデータが限られているため、原油アッセイの専門家は、石油精製工場のプランニングとスケジューリング、石油精製プロセスのシミュレーションなどのビジネス上の様々な需要に応えるために、データの不足する特性を予測又は推定によって補う必要がある。 一般的に、・・・(以下省略)」 カ 「【0009】 原油のアッセイを基にして、限定的な数の「疑似成分」(理論的成分)を定め、石油混合物の組成をこれらの成分で表して、これをプランニングやスケジューリングやプロセスシミュレーションに利用する方法もある。真沸点(TBP)特性曲線から「ミクロ沸点カット分」として導き出される前記の「疑似成分」は、石油混合物中に実在する炭化水素(又は炭化水素分子)の成分を示すものではない(M. R. Riazi, Characterization and Properties of Petroleum Fractions, 1st Ed., ASTM, West Conshohocken, PA, USA, 2005, p. 111-112参照)。これらの「疑似成分」は、原油のアッセイのうちの所定の留分を模擬するために定義される。すなわち、前記「疑似成分」は、特定の沸点範囲及び比重範囲によって定義されたり、炭素数が特定の範囲となる炭化水素ファミリーから選択された複数の純成分の組合せとして定義されたりする。石油の留分(例えば、燃料油など)とは、これとは対照的に、原油の分留によって得られる実在の炭化水素分子の混合物である。「疑似成分」を使用する場合、その「疑似成分」の物理的特性及び化学的特性を推定する際に、ときに不確かな経験的方法に頼らざるを得ないことが難点となる。」 キ 「【0015】 前記方法は、さらに:特定された前記確率分布関数および各種類の構成炭化水素分子の前記相対割合に基づいて、前記所与の原油の化学組成を推定する過程と;この推定された化学組成に基づいて、前記所与の原油の物理的特性及び化学的特性を推定する過程と;を含んでもよい。 【0016】 前記所与の原油の推定される物理的特性には:沸点;比重;および粘度;から選択される少なくとも一種が含まれ得るが、必ずしもこれらに限定されない。前記所与の原油の推定される化学的特性には:パラフィン含有量;ナフテン含有量;芳香族含有量;炭素含有量;水素含有量;C/H比;アスファルテン含有量;残留炭素;硫黄含有量;窒素含有量;および全酸価;から選択される少なくとも一種が含まれ得るが、必ずしもこれらに限定されない。各種類の構成炭化水素分子の前記相対割合を決定する過程は、前記所与の原油の推定された物理的特性及び化学的特性を、前記特定の原油特性データにマッチングさせることにより、前記所与の原油中の各種類の構成炭化水素分子の前記相対割合を決定することを含み得る。前記構成炭化水素分子の種類(複数の種類)には:パラフィン類(直鎖パラフィン類およびイソパラフィン類の両方を含む);ナフテン類;および芳香族類;の構成炭化水素分子が含まれ得るが、必ずしもこれらに限定されない。構成炭化水素分子の物理的特性についての前記データには:蒸気圧;比重;および粘度;から選択される少なくとも一種が含まれ得る。構成炭化水素分子の化学的特性についての前記データには:炭素含有量;水素含有量;硫黄含有量;窒素含有量;および酸素分;から選択される少なくとも一種が含まれ得る。前記特定の原油特性データには:沸点;比重;および粘度;から選択される少なくとも一種が含まれ得る。一部の他の構成では、前記特定の原油特性データに、さらに:パラフィン含有量;ナフテン含有量;芳香族含有量;炭素含有量;水素含有量;C/H比;アスファルテン含有量;残留炭素;硫黄含有量;窒素含有量;および全酸価;から選択される少なくとも一種が含まれ得る。この一部の他の構成では、一部の沸点カット分についてのみ、前記特定の原油特性データが入手可能な場合もある。前記方法は、さらに:コンピュータにより、前記所与の原油のキャラクタリゼーションされた化学組成を用いて、当該所与の原油の物理的特性及び化学的特性を予測する過程;を含み得る。前記方法は、さらに:コンピュータにより、前記所与の原油のキャラクタリゼーションされた化学組成および/または当該所与の原油の予測された物理的特性及び化学的特性を用いて、石油精製作業をプランニングおよび/またはスケジューリングおよび/またはシミュレートおよび/または設計および/または最適化および/または制御する過程;を含み得る。」 ク 甲第6号証の上記記載事項を総合勘案すると、甲第6号証には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。 「原油の化学組成をキャラクタリゼーションする方法において、 プロセッサにより、特定の原油特性データを有する所与の原油について、 i)各構成炭化水素分子種におけるセグメントの種類及びセグメント数の範囲を、各構成炭化水素分子の物理的特性及び化学的特性についてのデータならびに原油の物理的特性及び化学的特性についてのデータに基づいて決定する過程と、 ii)前記特定の原油特性データに基づいて、前記所与の原油を代表する化学組成を構成する各種類の構成炭化水素分子の相対割合を決定し、これによって、その所与の原油の化学組成をキャラクタリゼーションする過程と、 エンドユーザに対する出力として、前記所与の原油のキャラクタリゼーションされた化学組成を表示する過程と、 コンピュータにより、前記所与の原油のキャラクタリゼーションされた化学組成を用いて、当該所与の原油の物理的特性及び化学的特性を予測する過程と、 コンピュータにより、前記所与の原油のキャラクタリゼーションされた化学組成および/または当該所与の原油の予測された物理的特性及び化学的特性を用いて、石油精製作業をプランニングおよび/またはスケジューリングおよび/またはシミュレートおよび/または設計および/または最適化および/または制御する過程と を含み、 各構成炭化水素分子種におけるセグメントの種類は、 メチルセグメント;ゼロ分岐メチレンセグメント;一分岐メチレンセグメント;二分岐メチレンセグメント;シクロヘキサンセグメント;シクロヘキサン側環セグメント;シクロペンタンセグメント;シクロペンタン側環セグメント;芳香族セグメント;および芳香族側環セグメント;から選択される少なくとも一種を含み、 前記所与の原油の推定される物理的特性には:沸点;比重;および粘度;から選択される少なくとも一種が含まれ得、 前記所与の原油の推定される化学的特性には:パラフィン含有量;ナフテン含有量;芳香族含有量;炭素含有量;水素含有量;C/H比;アスファルテン含有量;残留炭素;硫黄含有量;窒素含有量;および全酸価;から選択される少なくとも一種が含まれ得、 特定された前記確率分布関数および各種類の構成炭化水素分子の前記相対割合に基づいて、前記所与の原油の化学組成を推定する副過程、および この推定された化学組成に基づいて、前記所与の原油の物理的特性及び化学的特性を推定する副過程を含み、 前記所与の原油の推定された物理的特性及び化学的特性を、前記特定の原油特性データにマッチングさせることにより、前記所与の原油中の各種類の構成炭化水素分子の前記相対割合を決定することを含む、 方法。」 (7)甲第7号証 令和3年12月1日に申立人により検索表示された、インターネット上のホームページである「株式会社島津製作所ウェブサイト」(URL: https://www.an.shimadzu.co.jp/apl/chemical/fuel_battery0403020.htm)(以下「甲第7号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 「PONA分析/GC 石油製品の一次原料であるナフサや自動車燃料であるガソリンおよびガソリンの基材としての改質ガソリン(リフォメート),接触分解ガソリン(FCCガソリン)などの炭化水素の混合物をそれらの炭素数別,タイプ別に分離定量する分析をPONA分析といいます。 ここでPはParaffins,OはOlefins,NはNaphthenes,AはAromaticsの略です。 分析規格としてはFIA法(JIS K-2536)のS(飽和),O,Aのタイプ分析がありますが,分析時間が長い,個人誤差が入りやすいという欠点があります。キャピラリGCによるPONA分析は高理論段数を持つ無極性の化学結合型キャピラリカラムを使用して構成炭化水素類をできるだけ多くのピークに分離した後に各ピークを同定し,炭素数別,タイプ別に定量値をまとめる方法で,%以下のオレフィンの定量ができる,タイプ別以外に個々の成分ごとに定量できる,平均密度,平均分子量などの計算もできるなどの長所があります。」 (8)甲第8号証 令和4年6月30日にプリントアウトされた、ENEOS社のウェブページURL;https://www.eneos.co.jp/binran/part01/chapter01/section01.htmlに掲載された「石油便覧 第1編第1章第1節 石油の組成と性質」(以下「甲第8号証」という。)には、以下のように記載されている。 ア 「2. 石油の化合物組成 炭化水素成分 石油は、無数の化合物から成る混合物である。ガソリンのような軽質の留分でさえ成分数は100種を超え、灯油より沸点が高い化合物では同じ炭素数の異性体が飛躍的に増加するので、個々の化合物の確認が著しく困難になる。そのため、石油の炭化水素成分は、分子構造のタイプによって一般にパラフィン系、オレフィン系、ナフテン系および芳香族系に類別される。ここでは、これら4タイプの炭化水素の基本構造を説明する。」 イ 「4. 石油の性質 物理的性質 石油炭化水素の物理的および熱力学的諸性質は、API Project 44が集成したデータ集“Selected Values of Physical and Thermodynamic Properties of Hydrocarbons and Related Compounds”(1952年および1961年)に詳しい。さらに、APIが石油に関するデータをまとめた“Technical Data Book-Petroleum Refining”(1982年)には、石油炭化水素と石油の物理的性質がまとめられている。 ここでは、石油の物理的な性質の主なものを紹介する。 (1)沸点 原油に含まれる炭化水素の沸点は、常温以下から1,000℃以上にわたっており、炭素数が多いほど沸点は高い。同一炭素数の炭化水素では、パラフィン、ナフテン、芳香族の順に沸点が高くなり、同じパラフィンでは、ノルマルパラフィンの沸点がイソパラフィンより高い。」 (9)甲第9号証 本件特許の優先日前である2000年(平成12年)3月7日に頒布された刊行物である「特開2000-73074号公報」(以下「甲第9号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 「【0126】 ・・・ 【表2】 [図:0001392037000002.jpg] 」 (10)甲第10号証 本件特許の優先日前である2000年(平成12年)3月7日に頒布された刊行物である「特開2000-73073号公報」(以下「甲第10号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 「【0127】 ・・・ 【表2】 [図:0001392037000003.jpg] 」 (11)甲第11号証 本件特許の優先日前である2007年(平成19年)7月に頒布された刊行物である「高橋豊、川畑慎一郎,”有機質量分析”,ぶんせき、2007年7月号、第328-335頁」(以下「甲第11号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 「2・3 試料調製 2・3・1 精製 MALDIは夾雑物に比較的寛容なイオン化法であるが,それでもイオン化を阻害するような物質の共存は好ましくない。高分子量化合物のピークがうまく観測できないという測定の失敗は, 共存する低分子量成分, 特に塩類によってイオン化が阻害されているためであることが多い。精製法として最も確度が高いのはLCによる分取である。逆相モードやサイズ排除モードなど,試料に応じて検討されている。特に,サイズ排除モードによって幅広い分子量分布の試料をあらかじめ狭い分子量範囲に制限しておく手法は,イオン化の段階での成分相互のサプレッション効果を避けるために有効である。また,手間をかけずにペプチドやタンパク質を精製(主として脱塩)するために,ピペットチップ型マイクロカラム製品が市販されており,水系溶液からの精製に適している。」(第333頁右欄下から7行-第334頁左欄第9行) (12)甲第12号証 令和4年7月14日に出力した、株式会社東レリサーチセンター制作ウェブサイト(URL;https://cs2.toray.co.jp/news/trc/news_rd01.nsf/0/e58b97eeb6a1dfce4925858800146f87/$FILE/P01988.pdf)「超高質量分解能なFT-ICR-MSの受託分析が可能に!!」(以下「甲第12号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 「 [図:0001392037000004.jpg] 」 (13)甲第13号証 2020年(令和2年)10月8日に発行された「特開2020-165928号公報」」(以下「甲第13号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 「【0005】 しかしながら、原油の蒸留による留出分のような低分子量の炭化水素を多く含む分画について、FT-ICR-質量分析を用いて精度高い分析を実施することは難しい。また、原油の蒸留による留出分と残油分は物性や解析適性が大きく異なることから、留出分と残油分とを合わせた原油の全組成分析は行うことは困難であった。」 (14)甲第14号証 2017年に日本電子株式会社が作成した「JEOL Applications note MS MSTips 234:GCxGC-PI-TOFMSを用いた石油試料中のバイオマーカー分析」(以下「甲第14号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 ア 「【はじめに】 GC-MSのソフトイオン化法としては化学イオン化(CI) 法が広く知られているが、CI法を有効に使うには、適切な反応ガスを選択しなければならず、また反応ガスの種類によっては付加イオンが生成し得られるマススペクトルの解釈が複雑になるなど、いくつか乗り越えなければならない障壁がある。これに対して電解イオン化(FI) 法や光イオン化(PI) 法では、イオン化に際するパラメータが単純な上に得られるマススペクトルもシンプルであることが知られている。弊社では既に、GC-QMS用、及びGC-TOFMS用オプションイオン源として光イオン化イオン源を販売している。今回は、包括的2次元ガスクロマトグラフ(GCxGC)法と、GC-TOFMSシステムのPIイオン化法を組み合わせた測定例を紹介する。 GC-TOFMSにPIイオン源を搭載したシステムの特徴は以下の通りである。なお、GCxGC法は、直列に接続した分離モードの異なる2種類のキャピラリカラムと、1段目のカラムと2段目カラムの間に設置されたクライオトラップシステム(モジュレータ)により構成されており、一度の測定で2種類の分離モードでの分離分析を行うことが可能となり、複雑な混合系の測定対象サンプルをより詳細にクロマト分離することができる。」 イ 「【結果】 ・・・ Fig.3に原油留分BのGCxGC/PI TICクロマトグラムを示す。GCxGC測定を行うことで、n-AlkanesやCycloalkanesから分離してAdamantanes、Iceanes、Diamantanesを検出することができた。Fig.4上段にはC10H16,C12H18,C14H20のEICクロマトグラムを、下段にはCnH2n-4,CnH2n-6,CnH2n-8における各成分の合算EICクロマトグラムを示す。AdamantanesとIceanesは類似した構造を有しており、2次元目カラムでの分離挙動に大きな差はなかった。そのため、幾つかの成分は共溶出しており、2次元TICクロマトグラム上で各成分を確認することは困難であった。このような場合においても、各分子イオンの精密質量に応じたEICクロマトグラムを作成することで、目的成分を確認することが可能であった。」 (15)甲第15号証 本願の優先日前の平成27年(2015年)8月1日発行の刊行物である「山中潤二,他2名、”油試料におけるMALDI-TOF-MS法による分子組成の解析”,環境管理,一般財団法人九州環境管理協会,平成27年8月1日発行,第44号、第82-86頁」」(以下「甲第15号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 ア 「昨年、本誌において、4つの地域から産出した原油中の減圧残油(AR)を測定対象とし、その中に含まれる分子組成及び構造式の推定を試みた。しかし、全ての試料において1000本以上のピークが認められ、そのピーク解析は非常に煩雑だったため、AR試料中の化合物を個別に同定することは困難であった5)。 そこで、本研究では、一つのAR試料について分画を行い、特定の化合物群に分けた後にそれぞれをMALDI-TOF-MS法で測定することで、分子組成及び構造式の推定を試みた。」(第82頁右欄第13-22行) イ 「本研究では、 減圧残油に含まれる化合物の構造解析手段として、MALDI-TOF-MS法の可能性を検討するために、AR試料及びその分画試料の測定及びその解析を実施した。その結果、AR試料及び各分画試料中の成分の質量分布を確認することができたが、複雑な組成をもつAR試料中の化合物の構造を特定するまでには至らなかった。分画を施した試料であれば、分子組成の推定が可能であると考えていたが、処理後の試料でも組成推定は困難だった。」(第85頁右欄第8-16行) (16)甲第16号証 本件特許の優先日前である2016年(平成28年)2月8日に発行された「特表2016-503884号公報」(以下「甲第16号証」という。)には、以下の技術事項が記載されている。 ア 「【0011】 (実施形態の詳細な説明) 概要-飽和物の特徴づけ 石油ストリームは、多数の異なる分子種を含有する炭化水素の複雑な混合物である。石油は純炭化水素およびヘテロ原子含有炭化水素を含有する。ヘテロ原子としては一般にS、N、O、Ni、およびVが挙げられる。石油および炭化水素という用語は、この研究の状況において交換可能に使用される。石油ストリームとしては、石油の分子組成を変化させるプロセスから得られるあらゆる炭化水素ストリームが挙げられるが、これに限定され るものではない。特に、重質石油は、減圧軽油または減圧残油に相当する石油留分の部分などの石油留分のより重質の部分を意味し、それらの多数の異なる化合物のために、石油留分の正確な特徴づけの難しさが増加する。化学的および分子的な特徴づけを容易にするために、重質石油は、典型的には、類似の種類の分子の留分に分離される。複数の留分への分離のための一般的な選択の1つでは、重質石油が飽和物、1環芳香族、2環芳香族、3環芳香族、4環+芳香族、硫化物、極性分、および/またはアスファルテン類に分割される。飽和物としては、ノルマルパラフィン類、イソパラフィン類、1~6+環の環状パラフィン類、またはナフテン類が挙げられる。VGOナフテン類は大部分が1~6環である。VRナフテンは1~14環構造を有することができる。石油飽和物は、潤滑油基油および石油ワックスの主成分である。石油飽和物の組成および構造は、最終製品の性能特性に関して重要な意味を有する。たとえば、多環式環分布は、潤滑剤の低温流動特性に大きな影響を与えうる。高沸点石油飽和物、たとえば残油抽出プロセスで得られるブライトストックは、その高分子量のために高粘性を有する。燃料用途では、飽和物は高価値の分子と見なされる。現在、石油飽和物は、VGO分子の場合は電界イオン化質量分析(FIMS)によって、またはVR分子の場合は電界脱離イオン化質量分析(FDMS)によって分析される。しかし、FDMSの低イオン収量と、データ収集中にFDエミッター温度を上昇させる必要性とのため、長時間にわたるスペクトルの共追加が必要となる、FDMSと高分解能MS操作との連結は困難であった。したがって、FDMSではVR分子の多環式環分布を求めることができない。」 イ 「【0022】 大気圧光イオン化(APPI)、大気圧化学イオン化(APCI)、およびエレクトロスプレーイオン化(ESI)は、飽和物分子上には荷電部位がないため、石油飽和物のイオン化には有効ではない。APPIは、石油芳香族に好ましいイオン化方法である。ESIは、石油極性分に好ましいイオン化方法である。」 ウ 「【0057】 レーザー脱離イオン化は、異なる種類の化合物に対して異なるイオン化性能も有すると思われる。図9は、類似の分子量を有する3つの種類の化合物のレーザー脱離イオン化FTICR MSスペクトルを示している。スペクトルは、信号ピークがC24n-パラフィン(飽和アルカン)、ノナデシルシクロヘキサン(nonedecylcyclohexane)(C25飽和ナフテン)、およびノナデシルベンゼン(nonedecyl benzene)(C25芳香族)に対応することを示している。初期試料中、各化合物を同等の量で使用した。図9に示されるように、芳香族のピーク強度は、飽和物分子のピーク強度よりもはるかに大きい。図9は、レーザー脱離イオン化FTICR MSを全石油(原油)試料に使用すると、芳香族が優先的に検出されるので、問題が生じることがあることを示している。これによって、より多い見掛けの芳香族含有量およびより少ない見掛けの飽和物含有量の形で相対組成に誤差が生じる。」 エ 「【0067】 APPIによる不飽和物のソフトイオン化 以下は、APPIを用いて試料または試料の一部(HPLCを使用して分離した組成物グループなど)のソフトイオン化をどのように行うかの一例である。APPIを用いて行った本明細書に記載のソフトイオン化の場合、通常、約4mgの石油(すなわち、重質炭化水素)試料を20mlのトルエン中に溶解させて、200ppmの溶液を形成する。Cole-Palmerシリンジポンプおよび250μlシリンジを使用して、この溶液をAPPI源に導入した。流量は通常は120μl/時に制御した。このイオン源は、Syagen製造のものであり、加熱キャピラリーニードルおよびクリプトンUVランプで構成され、イオン化エネルギーは10.6eVであった。ネブライジングガスおよび乾燥用ガスの両方に窒素を使用した。ネブライジングガス流量は通常1~3L/分の間であり、乾燥用ガス流量は通常2~7L/分の間であった。APPI-FTICR信号を最大化するために流量を調節した。一部の測定では、ネブライジングガス温度を350℃から450℃まで変化させた。減圧残油の特徴づけの場合、高沸点分子の信号を最大化するために、一般に450℃を使用した。溶媒および化学イオン化剤の両方としてトルエンが使用される。イオン化のためのAPPI中に、熱化学反応も観測されなかった。これは、主として試料イオンの滞留時間が短いことによると考えられる。 【0068】 図11は、APPIの基本原理を示している。試料溶液は、微小な液滴で分散され、加熱ステンレスニードルからネブライジングガスとともにスプレーされることによって気化される。試料分子は、乾燥用ガスの向流によりさらに脱溶媒される。気相の溶媒および検体分子はUV光イオン化によってイオン化される。検体分子は、はるかに少ない量(200ppm)で存在するので、気相は主として溶媒分子を含有する。したがって、直接光イオン化によって、大部分が溶媒分子イオンと、非常にわずかの検体イオンが生成する。後者は、イオン源領域中の二次イオン-分子反応によって大部分がイオン化される。今の用途では、アスファルテンを含むほとんどの種類の試料を溶解させることができるので、トルエンが溶媒として使用される。トルエンは、イオン化電位(IP)が8.8eVであり、クリプトンフォトン源(10.6eV)によって直接イオン化することができる。他方、トルエンのIPは、ほとんどの芳香族分子のIPよりも高い(イオン化電位が9.2eVであるベンゼンは、数少ない例外の1つである)。トルエン分子イオンは、イオン-中性衝突によって検体分子と反応する。ほとんどの芳香族分子の場合、最初にトルエン分子のイオン化によって電子移動が起こり、次に、標的分子とイオン化したトルエンとの間の衝突中に、標的分子の次のイオン化が起こる。ほとんどすべての芳香族分子の場合、このエネルギー付与方法は、フラグメンテーションを引き起こすことなく標的(検体)分子イオンが形成されるのに十分な低さである。このソフトイオン化は、試料組成が複雑なためにVR分析の場合に重要である。低分子量極性分子の場合は、観察されるプロトン化が少ない。より極性の高い溶媒(メタノールおよびアセトニトリルなど)を使用すると、プロトン化を促進することができる。 【0069】 ESIによる極性分のソフトイオン化 以下は、ESIを用いて試料または試料の一部(HPLCを使用して分離された組成物グループなど)のソフトイオン化をどのように行うことができるかの一例である。ESIを使用して行った本明細書に記載のソフトイオン化の場合、最適な試料濃度は窒素および酸の量に依存する。典型的な正イオンESIでは、最初に約20mgの試料を20mlのトルエン中に溶解させた。この溶液3mlを17mlのトルエン/ACN混合物(15%トルエン)で希釈した。最終検体濃度は約150ppmであった。最終トルエン濃度は約30%であった。液体導電率を高めるために溶液に20~100μlのギ酸を加えた。スプレー安定性を維持するために、10μAを超えるエレクトロスプレー電流を維持した。負イオンモードの典型的なESIでは、最初に約20mgのVR試料を20mlのトルエン中に溶解させた。この溶液3mlを17mlのトルエン/メタノール混合物(15%トルエン)で希釈した。最終試料濃度は約150ppmであった。液体導電率を高め、>10μAの所望のエレクトロスプレー電流を達成するために溶液に20~100μlのNH4OHを加えた。この液体試料は、シリンジポンプによって120μl/時の流量でESI源に供給した。ネブライジングおよび乾燥器ガスの両方で窒素を使用した。ネブライジング温度は周囲温度であり、乾燥用ガス温度は200℃に設定した。」 3.当審の判断 (1)取消理由1及び2について ア 取消理由1及び2は、訂正前の請求項1に係る発明は、(i)の分析データを受け取る過程において、「分析データ」が「伝統的なデータを受け取って」いない場合も含むものであり、その場合の訂正前の請求項1に係る発明は、 「コンピュータに実装される、原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする方法であって、プロセッサにより、 (i)前記試料の分子レベル分析データを含む、分析データを受け取る過程であって、(1)前記分子レベル分析データは、ガスクロマトグラフィーデータおよび質量分析法データのうちの少なくとも1つを含む、過程と、 (ii)a)前記試料の前記分子レベル分析データに基づいて、絶対的な化合物組成を設定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて、第1の化合物群および第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、ならびに第1のセグメント分布を設定する過程と、 (iii)a)前記設定された絶対的な化合物組成である絶対的な化合物組成を決定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて設定された、前記第1のセグメント分布および前記第1の化合物群重量を表す第1のセグメント分布値から第1の化合物組成を決定する過程と、 (iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と、 (v)前記調和済みの化合物組成を、原油または石油留分を含む前記試料の前記化学組成のキャラクタリゼーション結果である洗練化された化合物組成として決定し、受け取った前記分子レベル分析データが定性的な分子レベル分析データを含むものである場合、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第1の化合物群重量を調節する過程と、 を備える、方法。」 という発明(以下「訂正前本件特許発明1-1」という。)となり、この訂正前本件特許発明1-1においてさらに「試料の分子レベル分析データ」が「1つ」のみの場合について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、訂正前本件特許発明1-1を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない(取消理由1)し、訂正前本件特許発明1-1を含む訂正前の請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、そのため訂正前の請求項1に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものでない(取消理由2)というものである。 イ しかしながら、本件訂正により、本件発明1は、(i)の分析データを受け取る過程において、「分析データ」はすべて「伝統的なデータを受け取って」いるものとなり、上記訂正前本件特許発明1-1を含まない発明となったことから、取消理由1及び2は解消した。また、本件訂正後の請求項1の記載を引用する本件発明2ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62についても、同様の理由により取消理由1及び2は解消した。 ウ なお、申立人は、令和4年7月15日提出の意見書において、甲第8ないし16号証に開示された技術事項に基づき、「ア.原油成分の沸点が極めて広範な範囲に及んでいること」、「イ.質量分析の種類により測定できる分子量の範囲が決まっていること」及び「ウ.単一の質量分析装置により原油の全範囲に及ぶ分子レベルでの分析が困難であったこと」の3点が、本願の出願当初における当業者の技術水準であることを主張し、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された、GC-MS測定、GC-ToF測定、及びFT-ICR MS測定の3種の測定方法から得られた分子レベル分析データを統合し、最終的に分子キャラクタリゼーションを実施する方法と同様に、本件発明1が原油中の各種化合物の分析ができるか明らかではないし、実施するには過度の試行錯誤を強いられることとなるから、取消理由1及び2を解消していない旨主張するが、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、段落【0191】ないし【0233】に、分子レベルデータ及び伝統的な分析データをコンピュータシステムに入力し、コンピュータシステムにてそれらデータと化合物ライブラリを用いて、反復的過程を行い計算結果を収束させることにより、化合物組成を求めることが開示されていることから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1を実施可能なように、明確かつ十分に記載されたものであり、かつ、本件発明1は発明の詳細な説明に記載されたものである。よって、上記申立人の主張は採用することができない。 エ 以上のことから、取消理由1及び2は、本件発明1並びに本件訂正後の請求項1の記載を引用する本件発明2ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る特許を取り消す理由とはならない。 (2)取消理由3について ア 取消理由3は、訂正前の請求項1に係る発明が明確でない点として、以下の2つを指摘している。 (ア)訂正前の請求項1に係る発明が訂正前本件特許発明1-1であり、かつ「試料の分子レベル分析データ」が「1つ」のみの場合に、(iv)の過程((iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程)がどのような過程となるのか不明であり、かつその過程がどのような技術的意義を持つのか分からない。 (イ)訂正前の請求項1に係る発明において、PIONA(パラフィン群、イソパラフィン群、オレフィン群、ナフテン群および芳香族群)分曲線データがガスクロマトグラフィーで得られたデータから作成されることもあることから、ガスクロマトグラフィーデータは、「分子レベル分析データ」であるのか、「分子レベル分析データ」と「伝統的な分析データ」を兼ねることができるデータであるのか不明である。 イ 本件訂正により、本件発明1は、「分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取る」ものとなり、(iv)の過程も分子レベル分析データに基づく絶対的な化合物組成と、伝統的な分析データに基づく第2の化合物組成とを調和させて調和済みの化合物組成を決定する過程となったことから、上記「ア(ア)」の指摘については解消された。 ウ また、本件訂正により、本件発明1は、伝統的な分析データの候補から「PIONA(パラフィン群、イソパラフィン群、オレフィン群、ナフテン群および芳香族群)分曲線データ」が排除されたものとなり、ガスクロマトグラフィーデータが伝統的な分析データではないことが明確となったことから、上記「ア(イ)」の指摘については解消された。 エ 以上のことから、本件発明1については取消理由3を解消しており、したがって取消理由3は、本件発明1並びに本件訂正後の請求項1の記載を引用する本件発明2ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る特許を取り消す理由とはならない。 (3)取消理由4について ア 取消理由4は、訂正前の請求項1に係る発明が訂正前本件特許発明1-1である場合に、訂正前本件特許発明1-1は、甲2発明と甲6発明開示技術から、または甲3発明から当業者が容易になしえたことであるから、訂正前の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるという理由を含むものである。 イ 本件訂正により、本件発明1は、「(i)前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取る過程」を備えるものとなり、訂正前本件特許発明1-1を含まないものとなった。 ウ 甲2発明と本件発明1との対比・判断 (ア)対比 甲2発明と本件発明1を対比する。 a 甲2発明における「石油原油を含む最も複雑な天然有機混合物から、数千の元素組成のそれぞれを一意かつ同時に分離および同定するために、利用可能な最高の広帯域質量分解能、質量分解力、及び質量精度を提供するフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)を用いて、ヘテロ原子クラス(NnOoSs)、二重結合当量(DBEの環数と炭素を含む二重結合、各環または二重結合は2つの水素原子の損失をもたらすため)、及び炭素数に従って、石油成分を分離し、分類する方法」は、本件発明1における「原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする方法」に相当する。 b 甲2発明における「フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)」は、本件発明1における「質量分析法」に相当する。 c 甲2発明は「石油留出物」を「フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)」に「導入」していることから、本件発明1とは「(i)前記試料の分子レベル分析データ」「を含む、分析データを受け取る過程であって、(1)前記分子レベル分析データは、」「質量分析法データ」「を含む、過程」「を備える」点で共通する。 d 甲2発明は、「石油原油を含む最も複雑な天然有機混合物から、数千の元素組成のそれぞれを一意かつ同時に分離および同定するために、利用可能な最高の広帯域質量分解能、質量分解力、及び質量精度を提供するフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)を用いて、ヘテロ原子クラス(NnOoSs)、二重結合当量(DBEの環数と炭素を含む二重結合、各環または二重結合は2つの水素原子の損失をもたらすため)、及び炭素数に従って、石油成分を分離し、分類する方法」であり、それら質量分析で得られるデータは、ヘテロ原子クラス、二重結合当量、炭素数のそれぞれの分布量を示すデータであることは当業者において技術常識な事項であることから、本件発明1とは「(ii)a)前記試料の前記分子レベル分析データに基づいて、絶対的な化合物組成を設定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて、第1の化合物群および第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、ならびに第1のセグメント分布を設定」「する過程と、(iii)a)前記設定された絶対的な化合物組成である絶対的な化合物組成を決定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて設定された、前記第1のセグメント分布および前記第1の化合物群重量を表す第1のセグメント分布値から第1の化合物組成を決定」「する過程と、(iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成」「を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と、(v)前記調和済みの化合物組成を、原油または石油留分を含む前記試料の前記化学組成のキャラクタリゼーション結果である洗練化された化合物組成として決定」する「過程と」「を備える」点で共通する。 すると、甲2発明と本件発明1とは、 「原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする方法であって、 (i)前記試料の分子レベル分析データを含む、分析データを受け取る過程であって、前記分子レベル分析データは、質量分析法データを含む、過程と、 (ii)a)前記試料の前記分子レベル分析データに基づいて、絶対的な化合物組成を設定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて、第1の化合物群および第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、ならびに第1のセグメント分布を設定する過程と、 (iii)a)前記設定された絶対的な化合物組成である絶対的な化合物組成を決定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて設定された、前記第1のセグメント分布および前記第1の化合物群重量を表す第1のセグメント分布値から第1の化合物組成を決定する過程と、 (iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と、 (v)前記調和済みの化合物組成を、原油または石油留分を含む前記試料の前記化学組成のキャラクタリゼーション結果である洗練化された化合物組成として決定する過程と、 を備える、方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明1は、「原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする方法」をコンピュータに実装しプロセッサで行うのに対し、甲2発明は、石油原油を含む最も複雑な天然有機混合物から、数千の元素組成のそれぞれを一意かつ同時に分離および同定するために、利用可能な最高の広帯域質量分解能、質量分解力、及び質量精度を提供するフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)を用いて、ヘテロ原子クラス(NnOoSs)、二重結合当量(DBEの環数と炭素を含む二重結合、各環または二重結合は2つの水素原子の損失をもたらすため)、及び炭素数に従って、石油成分を分離し、分類する方法をコンピュータで行うか不明な点。 <相違点2> 本件発明1は、「受け取った前記分子レベル分析データが定性的な分子レベル分析データを含むものである場合、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第1の化合物群重量を調節する」のに対し、甲2発明では、上記調節を行うのか不明な点。 <相違点A> 本件発明1は、「(i)前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取る過程であって」、「(2)前記伝統的な分析データは、蒸留曲線データ、密度曲線データ、硫黄曲線データ、塩基性窒素曲線データ、総窒素曲線データ、CH比曲線データ、全酸価曲線データ、粘度曲線データ、ニッケル分曲線データ、およびバナジウム分曲線データのうちの少なくとも1つを含む、過程」を備え、「(ii)」「c)当該伝統的な分析データの少なくとも一部に基づいて、第2の化合物群および第2の化合物群重量、第2の概念的セグメントタイプ、ならびに第2のセグメント分布を設定する過程と、」「(iii)c)当該伝統的な分析データに基づいて設定された、前記第2のセグメント分布および前記第2の化合物群重量を表す第2のセグメント分布パラメータから第2の化合物組成を決定する過程と、」「(iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成および、c)前記第2の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と、(v)前記調和済みの化合物組成を、原油または石油留分を含む前記試料の前記化学組成のキャラクタリゼーション結果である洗練化された化合物組成として決定し、」「前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第2の化合物群重量および前記第2のセグメント分布パラメータを調節する過程と、を備える」のに対し、甲2発明は、伝統的な分析データを用いず、試料の分子レベル分析データ(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)のデータ)のみから、石油成分を分離、分類する点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点Aについて検討する。 「分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取」り「分子レベル分析データと伝統的な分析データを用いて原油又は石油留分を含む試料の化学組成を決定する」技術は、甲第1ないし7号証に開示されておらず、本件特許の優先日前において周知の技術であるとも認められない。 よって、他の相違点である相違点1及び2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲第1ないし7号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 甲3発明と本件発明1との対比・判断 (ア)対比 甲3発明と本件発明1とを対比する。 ア 甲3発明における「重質油を分子のレベルまで分析し、重質油分子の組成と構造を明らかにすることを目的とした詳細組成構造解析技術における、超高分解能質量分析装置であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS)による重質油の分析と、測定された重質油分子の精密質量に基づく構造解析技術の方法」は、本件発明1における「原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする方法」に相当する。 イ 甲3発明における「超高分解能質量分析装置であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS)」は、本件発明1における「質量分析法」に相当する。 ウ 甲3発明は、「重質油」を「超高分解能質量分析装置であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS)」により「分析」していることから、本件発明1とは、「(i)前記試料の分子レベル分析データ」「を含む、分析データを受け取る過程であって、(1)前記分子レベル分析データは、」「質量分析法データ」「を含む、過程」「を備える」点で共通する。 エ 甲3発明は、「重質油を分子のレベルまで分析し、重質油分子の組成と構造を明らかにすることを目的とした詳細組成構造解析技術における、超高分解能質量分析装置であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS)による重質油の分析と、測定された重質油分子の精密質量に基づく構造解析技術の方法」であって、「コア構造解析の実施に当たり、重質油分子中に含まれると想定されるコア構造をあらかじめ構築、リスト化し、CIDを用いたFT-ICR MS分析により得られたコア構造の精密質量とリスト化された各コア構造の精密質量を比較照合することで、コア構造を帰属」するものであり、それら質量分析で得られるデータは、コア構造のそれぞれの分布量を示すデータであることは当業者において技術常識な事項であることから、本件発明1とは、「(ii)a)前記試料の前記分子レベル分析データに基づいて、絶対的な化合物組成を設定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて、第1の化合物群および第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、ならびに第1のセグメント分布を設定」「する過程と、(iii)a)前記設定された絶対的な化合物組成である絶対的な化合物組成を決定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて設定された、前記第1のセグメント分布および前記第1の化合物群重量を表す第1のセグメント分布値から第1の化合物組成を決定」「する過程と、(iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成」「を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と、(v)前記調和済みの化合物組成を、原油または石油留分を含む前記試料の前記化学組成のキャラクタリゼーション結果である洗練化された化合物組成として決定し、受け取った前記分子レベル分析データが定性的な分子レベル分析データを含むものである場合、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性」「が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第1の化合物群重量を調節」「する過程と、」「を備える」点で共通する。 すると、甲3発明と本件発明1とは、 「原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする方法であって、 (i)前記試料の分子レベル分析データを含む、分析データを受け取る過程であって、(1)前記分子レベル分析データは、質量分析法データを含む、過程と、 (ii)a)前記試料の前記分子レベル分析データに基づいて、絶対的な化合物組成を設定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて、第1の化合物群および第1の化合物群重量、第1の概念的セグメントタイプ、ならびに第1のセグメント分布を設定する過程と、 (iii)a)前記設定された絶対的な化合物組成である絶対的な化合物組成を決定し、b)前記分子レベル分析データの少なくとも一部に基づいて設定された、前記第1のセグメント分布および前記第1の化合物群重量を表す第1のセグメント分布値から第1の化合物組成を決定する過程と、 (iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と、 (v)前記調和済みの化合物組成を、原油または石油留分を含む前記試料の前記化学組成のキャラクタリゼーション結果である洗練化された化合物組成として決定し、受け取った前記分子レベル分析データが定性的な分子レベル分析データを含むものである場合、前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第1の化合物群重量を調節する過程と、 を備える、方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 本件発明1は、「原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする方法」をコンピュータに実装しプロセッサで行うのに対し、甲3発明は、重質油を分子のレベルまで分析し、重質油分子の組成と構造を明らかにすることを目的とした詳細組成構造解析技術における、超高分解能質量分析装置であるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析装置(FT-ICR MS)による重質油の分析と、測定された重質油分子の精密質量に基づく構造解析技術の方法をコンピュータで行うか不明な点。 <相違点B> 本件発明1は、「(i)前記試料の分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取る過程であって」、「(2)前記伝統的な分析データは、蒸留曲線データ、密度曲線データ、硫黄曲線データ、塩基性窒素曲線データ、総窒素曲線データ、CH比曲線データ、全酸価曲線データ、粘度曲線データ、ニッケル分曲線データ、およびバナジウム分曲線データのうちの少なくとも1つを含む、過程」を備え、「(ii)」「c)当該伝統的な分析データの少なくとも一部に基づいて、第2の化合物群および第2の化合物群重量、第2の概念的セグメントタイプ、ならびに第2のセグメント分布を設定する過程と、」「(iii)c)当該伝統的な分析データに基づいて設定された、前記第2のセグメント分布および前記第2の化合物群重量を表す第2のセグメント分布パラメータから第2の化合物組成を決定する過程と、」「(iv)a)前記絶対的な化合物組成,b)前記第1の化合物組成および、c)前記第2の化合物組成を調和させることにより、調和済みの化合物組成を決定する過程と、(v)前記調和済みの化合物組成を、原油または石油留分を含む前記試料の前記化学組成のキャラクタリゼーション結果である洗練化された化合物組成として決定し、」「前記洗練化された化合物組成について求められた物理的特性および/または化学的特性が受け取った対応する分析データと合致するまで前記第2の化合物群重量および前記第2のセグメント分布パラメータを調節する過程と、を備える」のに対し、甲3発明は、伝統的な分析データを用いず、試料の分子レベル分析データ(フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)のデータ)のみから、石油成分を分離、分類する点。 (イ)判断 事案に鑑み相違点Bについて検討する。 「分子レベル分析データおよび伝統的な分析データの両方を含む、分析データを受け取」り「分子レベル分析データと伝統的な分析データを用いて原油又は石油留分を含む試料の化学組成を決定する」技術は、甲第1ないし7号証に開示されておらず、本件特許の優先日前において周知の技術であるとも認められない。 よって、他の相違点である相違点3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲第1ないし7号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ よって、本件発明1は、甲第1ないし7号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ また、申立人は、令和4年7月15日提出の意見書において、異議申立書に添付して提出した甲各号証拠に基づく特許法第29条第2項違反の取消理由が、依然として存在していることを付言しているが、上記「ウ及びエ」の相違点A及びBに関する具体的な主張はなされておらず、上記付言における主張を採用することができない。 キ したがって、本件発明1は、甲第1ないし7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。そして、本件訂正後の請求項1の記載を引用する本件発明2ないし21,25ないし32,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62も同様の理由により、甲第1ないし7号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。 ク 以上のことから、取消理由4は、本件発明1並びに本件訂正後の請求項1の記載を引用する本件発明2ないし21,25ないし32,41ないし43,45ないし53,55ないし59、61及び62に係る特許を取り消す理由とはならない。 4.小括 以上のことから、当審が令和4年3月2日付けで特許権者に通知した取消理由1ないし4は解消されており、本件発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53、55ないし59,61及び62に係る特許を取り消す理由とはならない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由 上記「第4」及び「第5」より、令和4年3月2日付け取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由については、以下のとおりとなる。 (1)異議申立理由3の一部 「本件訂正前の請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59,61及び62に係る発明は、請求項1の「キャラクタリゼーション」と「セグメント分布値」が不明であることから、明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に適合せず、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきである。」 (2)異議申立理由4 「本件訂正前の請求項1ないし5,16ないし21,25,32,41,45,46,49,53及び59に係る発明は、甲第2号証または甲第3号証のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に適合せず、同法第113条第2号の規定により、取り消されるべきである。」 2.当審の判断 (1)異議申立理由3の一部について ア 本件発明1の「キャラクタリゼーション」は、本願の国際出願であるPCT/US2018/029135の明細書(国際公開第2018/200521号を参照のこと。)に記載されている「Characterizing」をキャラクタリゼーションすると訳したものであり、Characterizeという動詞は特徴付けるという意味であるから、キャラクタリゼーションするという言葉は、特徴付けるという意味であり、本件発明1の「原油又は石油留分を含む試料の化学組成をキャラクタリゼーションする」という記載は、原油又は石油留分を含む試料の化学組成を特徴付けること、すなわち原油又は石油留分を含む試料の化学組成がどのようなものであるかを明らかにして特徴が分かるようにすることであることは理解できる。 イ また、本件発明1の「セグメント分布値」については、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0142】、【0143】及び【図3】に 「【0142】 セグメント分布は、セグメントタイプの確率をセグメント数の関数として表したものである。「総炭素数」の分布は、炭素原子数=1、2、3、4、…の化合物を含む確率である。図3に示すように、総炭素数=30の化合物を含む確率は約0.0413である。この概念的セグメントは化合物中の炭素数を管理し、他のセグメントは影響を及ぼさない。 「一分岐メチレン」セグメントおよび「二分岐メチレン」セグメントは、パラフィン類の、イソパラフィンとしての分岐度を管理する。 「芳香族側環」セグメントおよび「ナフテン側環」セグメントは、環数の分布を管理する。図4に芳香族側環の分布の例を示し、図5にナフテン側環の分布の例を示す。例示のために、様々なセグメント数を含めている。ナフテン側環値=0は、化合物がナフテン環を持たないことを指す。値=1は、化合物が1個のナフテン環を持っていることを指す。表5に、化合物の例、ならびに化合物の選択過程で使われる対応する概念的セグメント及び値を示す。 【0143】 【表5】 [図:0001392037000005.jpg] 」(下線は当審が付与した。) 「【図3】 [図:0001392037000006.jpg] 」 と記載されている。よって、本件発明1の「セグメント分布値」は、セグメントタイプの確率をセグメント数の関数として表したものの値(図3の例でいえば、総炭素数=30の化合物を含む確率は約0.0413)であると理解できる。 ウ 以上のことから、本件発明1並びに本件訂正後の請求項1の記載を引用する本件発明2ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59,61及び62は明確でないとはいえない。したがって、本件訂正後の請求項1並びに本件訂正後の請求項1の記載を引用する請求項2ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59,61及び62の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しており、取り消すことはできない。 (2)異議申立理由4について 上記「第5 3.(3)ウ及びエ」で検討したとおり、本件発明1と甲2発明とは相違し、本件発明1と甲3発明も相違していることから、本件発明1は、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と同一ではないし、本件訂正後の請求項1の記載を引用する本件発明2ないし5,16ないし21,25,32,41,45,46,49,53及び59も同様の理由により、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と同一ではない。したがって、本件発明1並びに本件訂正後の請求項1の記載を引用する本件発明2ないし5,16ないし21,25,32,41,45,46,49,53及び59は特許法第29条第1項各号の発明ではなく、取り消すことはできない。 3.申立人の意見について 申立人は、本件発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53、55ないし59,61及び62について、令和4年7月15日提出の意見書では、異議申立書の記載をここに全て援用する旨の主張を行い、異議申立理由3及び4については、特段新たな意見を述べていない。 また、令和3年12月15日付け特許異議申立書における申立人の主張は、訂正前の請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53、55ないし59,61及び62に係る発明に対する主張であり、訂正後の本件特許である本件発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53、55ないし59,61及び62に対する主張ではないが、その主張が本件発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53、55ないし59,61及び62に対する主張であるとしても、異議申立理由3の一部についての主張は、上記「2(1)」で検討したとおり採用することができないし、異議申立理由4についての主張は、本件訂正後の請求項1ないし5,16ないし21,25,32,41,45,46,49,53及び59に係る発明には当てはまらない主張であり採用することができない。したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。 なお、申立人は同意見書の「4(5)」で原文新規事項や、新たな特許法第36条第4項第1号違反及び同法同条第6項第1号違反を付言しているが、これらは特許異議申立書に記載した異議申立理由ではなく、新たな特許異議申立理由を提起するものであり、特許異議申立理由の要旨の変更と認められるから、本件発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53、55ないし59,61及び62を取り消す理由であるかどうかは検討しない。 4.小括 以上のことから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の取消理由は本件発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59,61及び62に係る特許を取り消す理由とはならない。したがって、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の取消理由については、本件発明1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59,61及び62に対しいずれも理由はない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59,61及び62に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし21,25ないし32,34,38,41ないし43,45ないし53,55ないし59,61及び62に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701186

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