2022-701259
電磁波シールドテープ、その製造方法、及び電磁波シールドケーブル
- 審判番号
- 2022-701259
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-063012外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7104537
- 請求日
- 2022年12月16日
- 審決日
- 2023年03月29日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】JX金属株式会社
- 【権利者代理人】アクシス国際弁理士法人
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 分類
- P1652.121-Y (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
特許第7104537号の請求項1、3、4、6に係る特許についての出願は、平成30年3月28日に出願され、令和4年7月12日にその特許権の設定登録がされ、令和4年7月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年12月16日に特許異議申立人 弁理士法人朝比奈特許事務所(以下、「特許異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7104537号の請求項1、3、4、6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1、3、4、6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、請求項1、3、4、6に係る発明を、請求項の番号に従って「本件発明1」等という。)
「【請求項1】金属層と樹脂層とを備え、前記樹脂層は、ポリイミド以外から構成され、水平定盤上に電磁波シールドテープを置き、電磁波シールドテープの幅方向に、電磁波シールドテープの輪郭曲線を測定し、輪郭曲線の最大値と最小値との差を測定し、当該差分と、テープ幅の比の値であって、樹脂層側が凹の場合を正とし、金属層側が凹の場合を負とした値が0.06以下である電磁波シールドテープ。」
「【請求項3】電線被覆用である請求項1又は2の電磁波シールドテープ。」
「【請求項4】前記金属層が、Cu層若しくはCu合金層を備える、又は、Cu層若しくはCu合金層と、Sn層若しくはSn合金層とを備える、請求項1~3いずれか1項に記載の電磁波シールドテープ。」
「【請求項6】前記樹脂層がPETから構成される、請求項1~5いずれか1項に記載の電磁波シールドテープ。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、主たる証拠として特開昭62-124269号公報(以下、「甲1」という。)及び従たる証拠として特開2011-35213号公報(以下、「甲2」という。)、特開2010-33928号公報(以下、「甲3」という。)、カタログ「極細2心平行ケーブル」、住友電工(株)、2014年2月発行(以下、「甲4」という。)、特開2001-126552号公報(以下、「甲5」という。)、特開2003-257257号公報(以下、「甲6」という。)を提出し、請求項1、3、4、6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、3、4、6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
第4 甲号証の記載
1 甲1(特開昭62-124269号公報)について
(1)甲1には、以下の記載がある。(下線は、当審で付した。以下同じ。)
「2.特許請求の範囲(1)耐熱性プラスチックフイルム基材上に銅の真空蒸着層を有する銅蒸着フイルムにおいて、該銅蒸着フイルムの端部長手方向に、-50V~-1000Vの電荷または+50V~+1000Vの電荷を帯電させることを特徴とする銅蒸着フイルムのカール防止方法。」(第1頁左下欄4行~10行)
「[産業上の利用分野]本発明は、プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルムに生じるカールを防止する方法に関する。[従来の技術]ポリエチレンテレフタレートフイルム、その他のポリエステルフイルム、ボリイミドフイルム、ポリアミドフイルム等のプラスチックフイルムに銅薄板を接着剤で張り付けたものが従来可撓性プリント基板として用いられてきたが、銅薄板が数十μm以上の厚さを有するため可撓性が不十分であったり、曲げによって銅薄板がフイルムから剥離したり、銅薄板に亀裂を生じたりするという欠点がある上、導電回路パターンを印刷した後にエツチング除去する際にエツチングに時間がかかるという問題があった。このためプラスチックフイルムに銅を真空蒸着したものがプリント基板として望まれるが、銅蒸着の難しさに加えて銅蒸着フイルム固有の問題がある。例えば、厚さが50μm以下の薄い帯状の長尺フイルム基材に銅を蒸着する際、蒸着フイルムは銅が蒸着された方の面を内側としてカールする傾向がある。これは、銅が結晶化の際に縮むためと考えられる。このようなカールが生じると連続的にスクリーン印刷を行う際に、印刷機において銅蒸着フイルムが台座上を正確に移動せず、連続的に精密で安定な印刷が不可能となる。このような問題は、基材フイルムが50μm以下程度の薄いフイルムである場合、また、帯状のフイルムの長手方向の端部に銅が蒸着されない非蒸着部が10mm以上存在しない場合に主として生じている。[発明が解決しようとする問題点]本発明においては、上記の銅蒸着フイルムにおけるカールの問題を解決し、薄手の基材フイルムに両端の非蒸着部をわずかしか残さないか又は全く残さないで銅蒸着フイルムとした場合でも、平面上で容易に平坦なフイルムとすることができるような方法を提供すべくなされたものである。」(第1頁左下欄18行~第2頁左上欄15行)
「本発明で、基材として用いられる耐熱性プラスチックフイルムはポリエチレンテレフタレートフイルム、不飽和ポリエステルフイルム、ポリイミドフイルム、ポリアミドフイルム、ポリカーボネートフイルム、ポリフェニレンサルファイドフイルム等であり、これらは予め熱処理して収縮率を小さくしたフイルムでもよいし、熱処理されない生フイルムでもよい。」(第2頁右上欄3行~10行)
「[実施例1]フイルム幅600mm、長さ2000m、厚さが38μのポリエチレンテレフタレートフイルムを基材として用い、蒸着室とフイルム巻取室とに分離され、フイルムが巻き取られながら蒸着室を通過する方式の真空蒸着装置において、このフイルムに対して、真空度3×10-4Torr以下、銅蒸発源温度約1700℃の条件下で銅の真空蒸着を行い、厚さ3000Åの銅の蒸着層を形成して銅蒸着フイルムを得た。以上のようにして得られた銅蒸着フイルムから両端部を50mmずつ切り落とし幅500mmのフイルムとし、長さ700mmの試片として切り出したフイルムを銅蒸着面を上にして机上に静置したところ、両端部が机上から20mmずつ浮き上がり、カールが生じた。この銅蒸着フイルムについて、まず長さ方向に沿っての両端部における自然状態での帯電の状況を100mm間隔で8箇所につき測定したところ、一方の端部で0V、0V、-10V、+10V、-20V、-10V、-20V、+20Vであり、もう一方の端部で0V、-10V、+10V、-20V、0V、0V、0V、-10Vであった。次にこの銅蒸着フイルムの銅の非蒸着面側の両端部にクリアランス0.4mmをとって配置したアルミニウム電極により、印加電圧+4KVを与え銅蒸着フイルムの端部に負の電荷を帯電させた。この処理後の銅蒸着フイルムを机上に静置したところ、両端部のカールはなくフイルムは平坦であった。」(第2頁右下欄11行~第3頁左上欄20行)
(2)上記記載から、甲1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ポリエチレンテレフタレートフイルムを基材として用い、蒸着室とフイルム巻取室とに分離され、フイルムが巻き収られながら蒸着室を通過する方式の真空蒸着装置において、このフイルムに対して、真空度3×10-4Torr以下、銅蒸発源温度約1700℃の条件下で銅の真空蒸着を行い、導電回路パターンを印刷した後にエツチング除去される、厚さ3000Åの銅の蒸着層を形成した銅蒸着フイルムにおいて、銅蒸着フイルムから両端部を50mmずつ切り落とし幅500mmのフイルムとし、長さ700mmの試片として切り出したフイルムを銅蒸着面を上にして机上に静置したところ、両端部が机上から20mmずつ浮き上がり、カールが生じた、プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム。」
2 甲2(特開2011-35213号公報)について
(1)甲2には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】【請求項1】厚さ10~200μmの高分子材料からなるフィルム状の支持体の片面或いは両面に、金、銀、銅、アルミニウム又は錫等の導電金属材料の中から選ばれた少なくとも一種以上の金属を厚さ10~500nmにて蒸着した導電性薄膜を有し、幅が0.1~1.0mm、長さが100mm以上であり、且つ、弾性率が2~4GPa、静摩擦係数が0.2~0.7、真直度が1~60μmであること特徴とする薄板状電磁波シールド材。」
「【技術分野】【0001】本発明は、ワイヤーハーネス、ケーブル、コネクタ等に対する電磁波を遮蔽するために、これらの外側を覆うように巻き付けられる薄板状電磁波シールド材、及び、この電磁波シールド材を巻き付けてなる車載用電磁波シールド部品に関するものである。」
「【発明を実施するための最良の形態】【0019】以下、本発明の実施形態について説明する。この実施形態の電磁波シールド材1は、図1に示すように、高分子材料からなるフィルム状の支持体2の片面に、導電金属材料からなる導電性薄膜3が形成されている。【0020】フィルム状の支持体2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好適であるが、これに限定されるものではなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル等の合成樹脂、ブチルゴムやシリコーンゴムなども適用することができる。この支持体の厚さは、その柔軟性を維持しつつ巻き付け時の機械的強度を有する範囲として、10~200μmが好ましい。【0021】導電金属材料としては、金、銀、銅、アルミニウム、錫等が適用可能であり、支持体2の表面に真空蒸着、スパッタリング、CVD等の蒸着法によって成膜され、その導電性薄膜3の厚さは、10~500nmとされる。これら導電金属材料のうちの少なくとも一種が選択されるが、二種以上を積層した導電性薄膜としてもよい。また、図1にはフィルム状の支持体2の片面にのみ導電性薄膜3を形成したものを示しているが、支持体2の両面に導電性薄膜3を形成したものとしてもよい。」
(2)上記記載から、甲2には次の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。
「ワイヤーハーネス、ケーブル、コネクタ等に対する電磁波を遮蔽するために、これらの外側を覆うように巻き付けられる薄板状電磁波シールド材において、高分子材料からなるフィルム状の支持体2の片面に、導電金属材料からなる導電性薄膜3が形成され、フィルム状の支持体2としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)を、導電金属材料として銅を用いること。」
3 甲3(特開2010-33928号公報)について
(1)甲3には、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】【請求項1】信号線の周囲に絶縁層が設けられ、絶縁材テープの少なくとも一方の面に金属を蒸着した金属蒸着テープを、前記絶縁層の周囲に螺旋状に巻きつけてシールドグランド層が形成される同軸ケーブルであって、金属面を外側に向けた前記金属蒸着テープからなる複数の螺旋ループに対して、金属面を内側に向けた前記金属蒸着テープを重ねて、隣接する前記螺旋ループを巻軸方向に接合することを特徴とする同軸ケーブル。」
「【技術分野】【0001】本発明は、同軸ケーブルに関する。」
「【0003】同軸ケーブルのシールドグランド層20の形成方法としては、編組シールドやテープシールド等が知られている。さらに、テープシールドにおいてはテープの巻き方によって分類され、シガレット巻きや横巻き等の巻き方がある。これらの手法や巻き方を組み合わせて用いて、シールドグランド層が形成される。【0004】図6は、編組シールド、テープシールド(シガレット巻き)およびテープシールド(横巻き)、各々の構成図である。図6(a)が編組シールド、図6(b)がテープシールド(シガレット巻き)、図6(c)がテープシールド(横巻き)を示している。【0005】編組シールドは、絶縁層12の周りに銅線をクロスして編み上げるようにシールドグランド層20aを形成する手法である。適度な柔軟性と強度を持つことが特徴である。【0006】テープシールドは、絶縁層12の周りにアルミニウムや銅等を蒸着した金属蒸着テープを巻きつけてシールドグランド層20b、20cを形成する手法である。金属蒸着テープを絶縁層12に対して縦添えに巻きつける場合をシガレット巻き、金属蒸着テープを絶縁層12に対して横添えにして螺旋状に巻きつける場合を横巻きという。テープシールドは比較的構造が簡単であることが特徴である。」
(2)上記記載から、甲3には、次の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。
「同軸ケーブルのシールドグランド層20の形成方法として、絶縁層12の周りにアルミニウムや銅等を蒸着した金属蒸着テープを巻きつけてシールドグランド層を形成すること。」
4 甲4(カタログ「極細2心平行ケーブル」、住友電工(株)、2014年2月発行)について
(1)甲4には、以下の記載がある。
[図:0001396326000001.jpg]
(2)上記「構造および性能 CONSTRUCTION&TYPICAL PROPERTIES」の表には、以下の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。
「極細2心平行ケーブルにおいて、シールド(2)としてCopper coated PET tape を用いること。」
5 甲5(特開2001-126552号公報)について
(1)甲5には、以下の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、特に超音波診断装置や内視鏡装置等の医療機器の分野で用いられる極細同軸ケーブル及びこれを用いた多芯ケーブルに関するものである。」
「【0010】【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明は、内部導体を被覆する絶縁体上に横巻きシールドを施すと共にその横巻きシールド上に外部ジャケットを施してなる仕上り外径が0.5mm以下の極細同軸ケーブルにおいて、上記横巻きシールド上に、プラスチックテープの両側にそれぞれ0.1μm以上の厚さで銅を蒸着させた銅蒸着テープを重ね巻きしてなるシールド層を備えたものである。【0011】すなわち、プラスチックテープの両側に銅を蒸着させた銅蒸着テープを上記横巻きシールド上に重ね巻きすることにより、10MHz以上の高周波帯域でも高いシールド効果を発揮できると共に、外径増加を極力抑えることができるため、柔軟性や耐屈曲性を損なうことがない。」
(2)上記記載から、甲5には、次の事項(以下、「甲5記載事項」という。)が記載されている。
「内部導体を被覆する絶縁体上に横巻きシールドを施すと共にその横巻きシールド上に外部ジャケットを施してなる仕上り外径が0.5mm以下の極細同軸ケーブルにおいて、上記横巻きシールド上に、プラスチックテープの両側にそれぞれ0.1μm以上の厚さで銅を蒸着させた銅蒸着テープを重ね巻きしてなるシールド層を備えること。」
6 甲6(特開2003-257257号公報)について
(1)甲6には、以下の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、情報通信分野において広く用いられている同軸ケーブルに係り、特に高周波信号を伝送すべく絶縁体外径が1mm以下の細径同軸ケーブル及びこれを用いた同軸多心ケーブルに関するものである。【0002】【従来の技術】従来の同軸ケーブルは、例えば図4(A)に示すように、内部導体aの周囲をポリエチレン等の絶縁体bで覆うと共に、その絶縁体bの周囲に金属編組等からなる外部導体cを備え、その外部導体cの周囲を絶縁性のジャケットdで覆うような構造となっている。そして、一般に1GHz~10GHzの高周波で使用されるいわゆる低減衰同軸ケーブルにあっては、さらに図示するようにこの絶縁体bの周囲に、金属層付きのプラスチックテープeが縦添え又は巻き付けられており、シールド効果や減衰量といった電気特性の向上が図られるようになっている。【0003】この金属層付きのプラスチックテープeは、図4(B)に示すようにポリエステルやテフロン(登録商標)等のプラスチックテープ本体fの表面に、銅やアルミニウム,銀等の金属箔gを接着したものが一般に用いられている。また、その金属箔gの厚さは一般に銅の場合8μm以上であり、アルミニウムや銀の場合4μmよりも厚いものとなっている。」
「【0005】そのため、外径が1mm以下の細径の絶縁体b上に巻き付ける場合には、金属層付きプラスチックテープeとして比較的軟らかいものとするためにその金属層を蒸着によってテープ本体f上に形成したものを用いることも提案されている(例えば、特開平1-232611号公報,米国特許公報第4970352号等)。しかしながら、この金属層を蒸着によって形成した場合には、その金属層の厚さが一般に銅の場合では0.1μm~0.3μm、アルミニウムの場合でも0.05μm~0.5μm程度が限界であり、所望の電気特性を得るための十分な厚さを得ることができない。」
(2)上記記載から、甲6には、次の事項(以下、「甲6記載事項」という。)が記載されている。
「同軸ケーブルにおいて、内部導体aの周囲をポリエチレン等の絶縁体bで覆うと共に、絶縁体bの周囲に、金属層付きのプラスチックテープeが縦添え又は巻き付けられること。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明を対比すると次のことがいえる。
ア 引用発明の「銅の蒸着層」、「基材として用い」た「ポリエチレンテレフタレートフイルム」は、それぞれ本件発明1の「金属層」、「樹脂層」に相当する。
また、「ポリエチレンテレフタレート」は「ポリイミド」ではないから、引用発明の「ポリエチレンテレフタレートフイルム」は、本件発明1の「前記樹脂層は、ポリイミド以外から構成され」ることと同様の構成を備えている。
イ 引用発明の「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」は、「フイルムが巻き収られながら蒸着室を通過する方式の真空蒸着装置において」「銅の蒸着層を形成し」ているから、テープ状であるといえる。
そうすると、引用発明の「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」と、本件発明1の「電磁波シールドテープ」は、「テープ」である点で共通する。
ウ 引用発明は、「銅蒸着フイルムから両端部を50mmずつ切り落とし幅500mmのフイルムとし、長さ700mmの試片として切り出したフイルムを銅蒸着面を上にして机上に静置したところ、両端部が机上から20mmずつ浮き上がり、カールが生じ」ており、この「フイルムを銅蒸着面を上にして机上に静置したところ、両端部が机上から20mmずつ浮き上が」ることは、「銅蒸着フイルム」を「机上に静置し」たときに「銅蒸着面」側が、凹の形になったことを表している。
そして、引用発明の「銅蒸着フイルム」を「机上に静置」すること、及び、「銅蒸着面」側が凹の形となることは、それぞれ、本件発明1の「水平定盤上」に「テープを置」くこと、及び、「金属層側が凹の場合」に対応する。
そうすると、引用発明は、「水平定盤上に」「テープを置き、」「テープの幅方向に、」「テープの輪郭曲線を測定し、輪郭曲線の最大値と最小値との差を測定し、当該差分と、テープ幅の比の値であって、樹脂層側が凹の場合を正とし、金属層側が凹の場合を負とした値」において、負の値を備えているといえる。
してみると、引用発明と本件発明1とは、「水平定盤上にテープを置き、テープの幅方向に、テープの輪郭曲線を測定し、輪郭曲線の最大値と最小値との差を測定し、当該差分と、テープ幅の比の値であって、樹脂層側が凹の場合を正とし、金属層側が凹の場合を負とした値が0.06以下である」点で共通する。
エ 上記ア~ウから、本件発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりとなる。
[一致点]
「金属層と樹脂層とを備え、前記樹脂層は、ポリイミド以外から構成され、水平定盤上にテープを置き、テープの幅方向に、テープの輪郭曲線を測定し、輪郭曲線の最大値と最小値との差を測定し、当該差分と、テープ幅の比の値であって、樹脂層側が凹の場合を正とし、金属層側が凹の場合を負とした値が0.06以下であるテープ。」
[相違点1]
「テープ」について、本件発明1が「電磁波シールドテープ」であるのに対して、引用発明は「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」である点。
(2)相違点についての当審判断
甲1には、「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」を「電磁波シールドテープ」に用いるとの示唆はないことから、引用発明の「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」を「電磁波シールドテープ」とすることには、動機付けが存在ない。
むしろ、引用発明の「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」の銅は、「導電回路パターンを印刷した後にエツチング除去される」ものであるから、引用発明の「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」を、電磁波シールドに用いることには、阻害要因があるといえる。
そうすると、甲2~6記載事項にあるように、金属層付きの樹脂テープを、ケーブルの電磁波シールドとして用いることが周知の技術であったとしても、当業者が、引用発明の「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」を「電磁波シールドテープ」とすることを、容易になしえたものであるということはできない。
したがって、本件発明1は、引用発明及び甲2~6記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本件発明3、4、6について
本件発明3、4、6は、本件発明1を更に減縮した「電磁波シールドテープ」の発明であるから、上記1(2)で判断した理由と同じ理由により、引用発明及び甲2~6記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、
「<構成要件1Dについて>甲第1号証の上記開示によれば、甲1発明の銅蒸着フイルムが電磁波シールドテープに用いられことは、明記されていない。しかしながら、銅蒸着フィルムが電磁波シールドテープに用いられることは、以下のとおり周知である。・・・中 略・・・そうすると、甲第2号証~甲第6号証に記載されているように、銅蒸着フィルムが電磁波シールドとして用いられることは、周知である。当業者が、適宜、たとえば甲第2号証~甲第6号証を参照することにより、周知技術を適用し、甲1発明において、銅蒸着フイルムを電磁波シールドケーブルの用途に用い、構成要件1Dを具備させることに関して、何ら困難ではない。以上、本件特許発明1は、甲第1号証を主たる証拠として進歩性がない。」(第14頁20行~第15頁19行)
旨主張する。
しかしながら、甲1には、「プリント基板等に用いられる銅蒸着フイルム」を、「電磁波シールドテープ」に用いることは記載されていないから、上記1(2)で検討したように、当業者であっても、引用発明を、「電磁波シールドテープ」として用いることが、容易であるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張には理由がない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、3、4、6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3、4、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701259