特許異議申立
2022-701249
機能性フィルム
- 審判番号
- 2022-701249
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-526725
- 登録番号
- 7097359
- 請求日
- 2022年12月15日
- 審決日
- 2023年03月08日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】リンテック株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人大谷特許事務所
- 【異議申立人】岡本 敏夫
- 審判長/審判官
- 審判長 藤原 直欣
- 審判官 中野 裕之
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1652.161-Y (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7097359号発明「機能性フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7097359号の請求項1~4、7~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7097359号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4、7~11に係る特許についての出願は、平成30年5月30日(優先権主張 平成29年6月30日)を国際出願日とする出願であって、令和4年6月29日にその特許権の設定登録がなされ、同年7月7日に特許掲載公報が発行され、同年12月15日にその特許に対し、特許異議申立人岡本敏夫(以下「申立人」という)により、請求項1~4、7~11に対して本件特許の異議申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~4、7~11に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4、7~11に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
なお、本件特許異議の申立ての対象となっていない請求項であっても、例えば請求項5のように、本件特許異議の申立ての対象となっている請求項7~11に引用される請求項もあるところ、一覧性を確保するために、本件特許の特許請求の範囲に記載された全ての請求項を以下に記載する。
「【請求項1】
非晶性フィルムと支持フィルムとの積層体である機能性フィルム、又は非晶性フィルムと粘着剤層と支持フィルムとをこの順で直接積層した積層体である機能性フィルムであって、前記支持フィルムが下記条件(I)を満たす、機能性フィルム。
条件(I):引張荷重50g/5mm条件下、25℃から150℃まで5℃/分の昇温速度で昇温した後、続けて、150℃から25℃まで5℃/分の降温速度で降温させた後に測定される熱膨張率の絶対値が0.50%以下
【請求項2】
前記支持フィルムのガラス転移温度(Tg)が、前記非晶性フィルムのガラス転移温度(Tg)未満である、請求項1に記載の機能性フィルム。
【請求項3】
前記支持フィルムがポリエステル系フィルムである、請求項1又は2に記載の機能性フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル系フィルムが、延伸応力を解消する処理を施されたポリエステル系フィルムである、請求項3に記載の機能性フィルム。
【請求項5】
前記支持フィルムのガラス転移温度(Tg)が、前記非晶性フィルムのガラス転移温度(Tg)以上である、請求項1に記載の機能性フィルム。
【請求項6】
前記支持フィルムがポリイミド系フィルムである、請求項5に記載の機能性フィルム。
【請求項7】
前記支持フィルムの厚さが10μm以上300μm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項8】
前記非晶性フィルムが、シクロオレフィン系フィルム及びポリカーボネート系フィルムからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項9】
前記非晶性フィルムを形成する非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)が、130℃以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項10】
前記非晶性フィルムの厚さが1μm以上100μm以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の機能性フィルム。
【請求項11】
光学用デバイスに用いる請求項1~10のいずれか1項に記載の機能性フィルム。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は以下のとおりである。
1 申立理由(甲第1号証に係る特許出願に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~4、7~11に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた甲第1号証に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願の日前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また、本願の出願の時にその出願人と上記特許出願の出願人とが同一でもないから、同発明に係る特許は特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:特願2016-6860号(特開2017-127980号)
甲第2号証:徳満勝久、「ポリシラン添加によるポリオレフィン材料の物性改質効果について」、マテリアルライフ学会誌、マテリアルライフ学会、2012年、Vol24、No.2、p.56~59
甲第3号証:小原禎二、「シクロオレフィンポリマーの開発と応用」、2008年、高分子57巻8月号、p.613~616
甲第4号証:木津巧一、「環状オレフィン系樹脂「アペル○R(当審注:○の中にアルファベットのRを代用。以下同様。)」の特徴と用途展開」、日本画像学会誌、日本画像学会、2016年、第55巻第2号、p.236~242
甲第5号証:本間精一、「ポリカーボネート樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、1992年8月28日、p.190~193
第4 当審の判断
1 先願
(1)先願明細書等に記載された事項
先願明細書等(甲第1号証)には、以下の記載がある。なお、下線は参考のため当審が付した。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
非晶性樹脂からなる透明導電基板に貼り合わせて用いるポリエステルフィルムであって、以下(1)~(3)を満たすポリエステルフィルム。
(1)MD、TD方向の150℃30分熱処理後の熱収縮率が、いずれも-0.3%以上0.3%以下であること。
(2)50℃から150℃の線膨張係数が、MD、TD方向の平均値で35ppm/℃以上60ppm/℃以下であること。
(3)フィルムヘイズが2.0%以下であること。
【請求項2】
MD方向とTD方向の120℃におけるヤング率の和が1.0GPa以上2.0GPa以下である請求項1に記載の非晶性樹脂からなる透明導電基板に貼り合わせて用いるポリエステルフィルム。
【請求項3】
非晶性樹脂からなる透明導電基板の少なくとも一方の表面に請求項1または請求項2に記載のポリエステルフィルムを積層した積層体。
【請求項4】
非晶性樹脂からなる透明導電基板の50℃から150℃の線膨張係数が、MD、TD方向の平均値で50ppm/℃以上120ppm/℃以下である、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
非晶性樹脂が、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)より選ばれる少なくとも1種を含む請求項3または4に記載の積層体。
【請求項6】
透明導電基板に設ける透明導電膜が酸化インジウムスズ(ITO)からなる請求項3から5のいずれかに記載の積層体。」
イ 課題など
「【背景技術】
【0002】
ポリエステル樹脂、特にポリエチレンテレフタレート(以下PETと略すことがある)や、ポリエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレート(以下PENを略すことがある)などは機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その優れた機械的特性、加工性から、透明電極基板を加工工程中に傷つきなどから保護する工程フィルムとして使用されている。
【0003】
一般的に、ディスプレイなどで用いられる透明導電膜の製膜基板(ITO(Indium Tin Oxide)蒸着基板など)においては、ITO膜の導電性を上げるために一定温度での基板のキュア工程が必要となる。この工程では、該基板を保護フィルムにも同時に熱がかかる。そのため、透明導電膜の製膜基板と保護フィルムの熱特性、とくに熱収縮率に差があると、透明導電膜の製膜基板の平面性が悪化したり、保護フィルムが剥がれて保護機能が低下する場合があるため、透明導電膜の製膜基板と保護フィルムの熱収縮率差は0%に近しい値をとることが好ましい。そのため、従来、透明導電膜の製膜基板には二軸配向したPETフィルムが用いられていたため、保護フィルムにPETフィルムを用いても問題が無い場合が多かった(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、近年では、ディスプレイの性能向上、薄膜化の観点から、透明導電膜の製膜基板に非晶性樹脂からなるフィルムが用いられる検討がなされている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-174933号公報
【特許文献2】特開2013-114344号公報
【特許文献3】特開2014-112510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
透明導電膜の製膜基板に二軸配向したPETフィルムが用いられる場合、該基板の保護フィルムには二軸配向したPETフィルムを用いると、透明導電膜の製膜基板と保護フィルムの熱収縮率差は0%に近しい値とできるため好適に使用することができる。しかしながら、透明導電膜の製膜基板に非晶性樹脂からなるシートが用いられる場合、非晶性樹脂からなるシートはキュア工程で加えられる温度領域の熱収縮率の値が0%に近しいため、二軸配向PETフィルムを保護フィルムとして用いると、透明導電膜の製膜基板と保護フィルムの熱収縮率に差が生じる。透明導電膜の製膜基板と保護フィルムの熱収縮率に差が生じると、透明導電膜の製膜基板の平面性が悪化したり、保護フィルムに剥がれが発生するという問題が発生する。
【0007】
本発明の課題は、かかる従来技術の背景に鑑み、透明導電膜の製膜基板などの用途に用いられる非晶性樹脂からなるフィルムに貼り合せて用いるフィルムとして好適に用いられる二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。」
ウ ポリエステルフィルムについて
「【0010】
以下に具体例を挙げつつ、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムは、機械特性の観点から、ポリエステルフィルムであることが必要である。ここでいうポリエステルは、ジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を有してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。本発明のポリエステルフィルムは、機械特性の観点から、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンテレフタレートの共重合体からなることが好ましい。
【0011】
本発明の1つの態様は、フィルム幅方向(TD方向)と、それと直角をなす方向(MD方向)それぞれにおける、150℃30分の熱処理後の熱収縮率が、いずれも-0.3%以上0.3%以下であり、また50℃から150℃の線膨張係数が、MD方向、TD方向の平均値で35ppm/℃以上60ppm/℃以下であり、フィルムヘイズが2.0%以下であるポリエステルフィルムである。
【0012】
一般的に、透明導電膜は、室温よりも温度が高い状態で基板上に製膜され、その後室温よりも温度が高い状態でキュアする工程を経て、室温まで冷却される降温過程を経る。つまり、透明導電膜の製膜後に、該基板の平面性を保つことが、透明導電膜が欠損して導電性が損なわれることを防ぐために重要である。該基板の保護用フィルムも、該工程を経ることになる。つまり、該基板の平面性を良好に保つためには、室温からキュア工程が実施される温度近傍における該基板の保護用フィルムの熱収縮率を該基板に近しい値とすることが重要となる。
【0013】
近年になって透明導電膜の製膜基板として用いられるようになった非晶性樹脂の熱収縮率は、その樹脂のガラス転移温度(Tg)以下の温度であれば、ほぼ0%となることが一般的である。透明導電膜の製膜基板として用いられる非晶性樹脂は、透明性の観点から、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリカーボネート(PC)が好適に用いられる。これらの樹脂のTgは、樹脂の分子量や分子構造に依るが、150℃以下であることが一般的である。そのため、非晶性樹脂からなる透明導電基板に貼り合せて用いる本発明のポリエステルフィルムの熱収縮率は、上述の通り基板の平面性を良好に保つため、150℃30分の熱処理後において、MD、TD方向いずれも-0.3%以上0.3%以下であることが必要である。-とは、膨張することを意味する。上述の範囲を超えて膨張または収縮する場合には、非晶性樹脂からなる透明導電基板と本発明のポリエステルフィルムが剥がれて保護機能が低下したり、透明導電膜の製膜基板の平面性が悪化する。より好ましい熱収縮率は、-0.1%以上0.1%以下である。」
「【0026】
本発明のフィルムの厚みは、30μm以上150μm以下であることが好ましい。30μmに満たないと、保護フィルムとして用いた場合に破れが発生しやすく、150μmを超える場合は、ハンドリング性に劣る。より好ましくは、50μm以上100μm以下である。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムを用い、非晶性樹脂からなるフィルムの少なくとも片面に該ポリエステルフィルムを貼り合わせた積層体を用いることで、透明性、導電性が良好な透明電極基板を作成することが可能となる。非晶性樹脂は、上述の通り、透明性の観点から、COP、COC、PCからなる群より選択される。透明導電基板に設ける透明導電膜は、酸化インジウムスズ(ITO)を用いることが好ましい。ITOを蒸着し、透明電極基板を得るためには、搬送工程、導電性を付与するために100℃以上の温度をかけるキュア工程が必要となる。該工程において本発明のポリエステルフィルムを用いた積層体を用いることで、搬送工程で非晶性樹脂からなるフィルムにキズが入るのを防ぎ、透明性が悪化するのを防ぐことができる。また、ITOの蒸着、キュア工程において、積層体に熱がかかる状況下においても、非晶性樹脂からなるフィルムの平面性を損なうことが無いため、透明性、導電性が良好な透明電極基板を作成することが可能となるのである。」
エ フィルムの熱収縮率
「【0031】
C.フィルムの熱収縮率(%)
JIS C 2318(1997)に準じて、フィルムの熱収縮率を測定する。フィルムを幅10mm、長さ150mmの短冊状に切り出す。測長部分がおおよそ100mmになるようにフィルムに標線をつけて標線の長さを23℃の条件下にて測定し、L0とする。その後、所定の温度(150℃)に熱した熱風オーブン内に2gのおもりをつけてフィルムを吊し、30分間放置する。フィルムをオーブンから取りだして23℃まで冷却した後、標線の長さを測定し、L1とする。下記(vi)式によりフィルムの収縮率を求める。測定は、フィルム長手方向またはフィルム幅方向が150mmの長さになるようにランダムに5箇所切り出して測定する。長手方向、幅方向それぞれに平均値を算出し、フィルムの熱収縮率とする。
(vi)(フィルム熱収縮率)=(L0-L1)/L0×100
D.フィルムの厚み(μm)
フィルム厚みは、ダイヤルゲージを用い、JISK7130(1992年)A-2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定した。その平均値を10で除してフィルム厚みとした。」
オ 実施例
「【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
[PET-Aの製造]テレフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、常法により重合を行い、溶融重合PETを得た。得られた溶融重合PETのガラス転移温度は80℃、融点は255℃、固有粘度は0.62であった。
[PET-Bの製造]テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、イソフタル酸共重合量がジガルボン酸成分全量に対して5mol%となるように常法により重合を行い、共重合PETを得た。得られた共重合PETのガラス転移温度は77℃、融点は243℃、固有粘度は0.62であった。
[PET-Cの製造]テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、イソフタル酸共重合量がジガルボン酸成分全量に対して10mol%となるように常法により重合を行い、共重合PETを得た。得られた共重合PETのガラス転移温度は76℃、融点は235℃、固有粘度は0.62であった。
[PET-Dの製造]テレフタル酸、イソフタル酸およびエチレングリコールから、三酸化アンチモンを触媒として、イソフタル酸共重合量がジガルボン酸成分全量に対して15mol%となるように常法により重合を行い、共重合PETを得た。得られた共重合PETのガラス転移温度は74℃、融点は230℃、固有粘度は0.62であった。
[PET-Fの製造]PET-Aを製造する際、平均粒径0.8μmの炭酸カルシウム粒子(屈折率1.6)を5000ppm添加し、PET-Fを得た。
[PET-Gの製造]PET-Aを製造する際、平均粒径0.2μmの二酸化チタン(屈折率2.5)の添加量が、二酸化チタンを含むポリエステル組成物全体に対して5質量%となるように添加し、PET-Gを得た。
【0039】
(実施例1)
PET-Aを、160℃で2時間真空乾燥した後押出機に投入し、押出機内で溶融させ、表面温度25℃のキャスティングドラム上に押し出し、未延伸シートを作製した。続いて該シートを加熱したロール群で予熱した後、90℃の温度で幅方向に直角な方向(MD方向)に3.2倍延伸を行った後、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の100℃の温度の加熱ゾーンでフィルム幅方向(TD方向)に3.5倍延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで235℃の温度で10秒間の熱固定を施し、さらに2%の弛緩率でMD、TD方向とも弛緩処理を行った。次いで、冷却ゾーンで均一に徐冷後、巻き取って、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。さらに、得られたフィルムをフィルム巻きだしロールとフィルム巻き取りロールの間に設置された熱風オーブンにて、200℃の温度にて、フィルムが熱処理される時間が5分となるようにアニール処理を施し、厚さ50μmのフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの特性を表に示す。CTEはMD方向、TD方向の平均値で35ppm/℃以上50ppm/℃以下であり、150℃の熱収縮率はMD方向TD方向とも0.5%以下であり、ヘイズも2.0%以下であった。このフィルムをCOPと貼り合わせて積層体とした場合にも、積層体として良好なものであった。
【0040】
(実施例2-7、比較例1-6)
フィルムを構成する樹脂、製膜条件を表の通りに変えた以外は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。ポリエステルフィルムの特性を表に示す。実施例2から7では、熱収縮率、CTE、ヘイズが好適な範囲にあり、非晶性樹脂からなるフィルムと貼り合わせ積層体とした場合でも、積層体として良好なものであった。比較例1、4、5では、熱固定処理工程での弛緩処理が無いため、CTEが低い。比較例2では、用いる樹脂の共重合量が多いため熱収縮率が大きく、また比較例6では熱収縮率、CTEとも大きい。比較例3では、フィルムに含有される無機粒子の屈折率が大きいため、フィルムヘイズが高い。比較例で得られたフィルムを非晶性樹脂からなるフィルムと貼り合わせて積層体とした場合、非晶性樹脂からなるフィルムと比較例のフィルムの間にシワが生じたり、視認性が悪くなり、積層体として劣るものであった。
【0041】
【表1】
[図:0001396324000001.jpg]
【0042】
【表2】
[図:0001396324000002.jpg]
」
(2)先願明細書等に記載された発明
以上の記載を総合し、特に実施例2に着目すると、先願明細書等には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。
「非晶性樹脂からなる透明導電基板とポリエステルフィルムとの積層体であって、
前記ポリエステルフィルムが、
ガラス転移温度が80℃のPET-Aから得た二軸配向ポリエステルフィルムにアニール処理を施して作製した厚さ50μmのフィルムであって、
フィルムを幅10mm、長さ150mmの短冊状に切り出し、測長部分がおおよそ100mmになるように前記フィルムに標線をつけて23℃の条件下にて標線の長さL0を測定し、150℃に熱した熱風オーブン内に2gのおもりをつけて前記フィルムを吊し、30分間放置し、前記フィルムをオーブンから取りだして23℃まで冷却した後、前記標線の長さL1を測定し、(L0-L1)/L0×100により求めた前記フィルムの収縮率が、0.0%であり、
前記非晶性樹脂が、シクロオレフィンポリマー(COP)を含む、積層体。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1を先願発明とを対比する。
先願発明の「非晶性樹脂からなる透明導電基板」は、「非晶性層」である限りにおいて、本件発明1の「非晶性フィルム」に相当する
先願発明の「ポリエステルフィルム」は、「フィルム」である限りにおいて、本件発明1の「支持フィルム」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で一致し、相違する。
<一致点>
「非晶性層とフィルムとの積層体。」
<相違点1>
非晶性層について、本件発明1は「非晶性フィルム」であるのに対し、先願発明は「非晶性樹脂からなる透明導電基板」である点。
<相違点2>
「フィルム」について、本件発明1は「支持フィルム」であるのに対し、先願発明は「ポリエステルフィルム」である点。
<相違点3>
本件発明1は、「非晶性フィルムと支持フィルムとの積層体である機能性フィルム」であって、「支持フィルムが下記条件(I)を満たす、機能性フィルム。
条件(I):引張荷重50g/5mm条件下、25℃から150℃まで5℃/分の昇温速度で昇温した後、続けて、150℃から25℃まで5℃/分の降温速度で降温させた後に測定される熱膨張率の絶対値が0.50%以下」であるのに対し、
先願発明は、「非晶性樹脂からなる透明導電基板とポリエステルフィルムとの積層体」における「ポリエステルフィルム」について、
「測長部分がおおよそ100mmになるようにフィルムに標線をつけて23℃の条件下にて標線の長さL0を測定し、150℃に熱した熱風オーブン内に2gのおもりをつけてフィルムを吊し、30分間放置し、フィルムをオーブンから取りだして23℃まで冷却した後、前記標線の長さL1を測定し、(L0-L1)/L0×100により求めた前記フィルムの収縮率が、0.0%であ」る点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点3から検討する。
引張荷重に関して、本件発明1の「50g/5mm」について、本件明細書を参照すると、横5mm×縦15mmの試験片を縦方向に50gの引張荷重をかけるものであるところ(【0047】)、先願発明は、幅10mm×長さ150mmの短冊状に切り出し、測長部分がおおよそ100mmになるように前記フィルムに標線をつけて23℃の条件下にて標線の長さL0を測定し、2gのおもりをつけて前記フィルムを吊すものであるから、両者は、測定に係る試験片の縦横の寸法の違いに加えて標線を用いた測定態様、並びに引張荷重に係るおもりの重さについても異なる。さらに、先願発明は、昇温の起点となる温度及び降温の終点となる温度が本件発明1とは異なり、昇温速度及び降温速度については特定がない。そうすると、先願発明の当該測定に係る収縮率をもって、相違点3に係る本件発明1に係る熱膨張率の絶対値と同等であるとはいえない。
申立人は、熱膨張率は一般的にフィルムの厚さ、樹脂の種類、及び加熱温度に依存するところ、先願発明では厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートからなるポリエステルフィルムを150℃まで加熱しており、この点において本件特許明細書の実施例1と同じであるから、本件発明1の条件で熱膨張率を測定すれば引用発明のポリエステルフィルムも同じ値を得られる旨主張している(申立書22、23ページ)。
しかしながら、先願発明は、上記のように収縮率の測定条件が本件発明1とは異なるものであり、共通する一部の事項により同じ値を得られるとする根拠が不明であり、申立人の主張は採用できるものではない。
また、申立人が提出した他の証拠を参照しても、上記申立人の主張を裏付けるものはない。
以上のことから、相違点3は実質的な相違点である。
したがって、相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明1は先願発明と同一とはいえない。
3 本件発明2~4、7~11について
本件発明2~4、7~11は、上記第2で示したとおり、本件発明1の発明特定事項を全て含むものである。したがって、本件発明2~4、7~11は、上記2で示した理由と同じ理由により、先願発明と同一ではない。
4 小括
したがって、本件発明1~4、7~11は、先願発明と同一であるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~4、7~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~4、7~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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