特許異議申立
2023-700924
積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
- 審判番号
- 2023-700924
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-186034
- 登録番号
- 7236046
- 請求日
- 2023年09月06日
- 審決日
- 2025年01月28日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】浅野 真理
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】赤松 智信
- 【異議申立人】後藤 麻衣子
- 審判長/審判官
- 審判長 金丸 治之
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.161-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7236046号発明「積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7236046号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第7236046号の請求項1~3、8~11に係る特許を維持する。
特許第7236046号の請求項4~7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7236046号の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成30年9月28日の出願であって、令和5年3月1日にその特許権の設定登録がされ、令和5年3月9日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 9月 6日 :特許異議申立人赤松智信(以下「申立人1」という。)による請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立1」という。)
令和5年 9月 7日 :特許異議申立人後藤麻衣子(以下「申立人2」という。)による請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立2」という。)
令和6年 1月19日付け:取消理由通知書
令和6年 3月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 4月10日 :特許権者による手続補正書の提出
令和6年 5月22日 :申立人1による意見書の提出
令和6年 5月23日 :申立人2による意見書の提出
令和6年 5月31日付け:訂正拒絶理由通知書
令和6年 7月 8日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和6年 7月31日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 9月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年10月 8日 :特許権者による手続補正書の提出(以下、この手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和6年11月19日 :申立人1による意見書の提出
また、令和6年4月10日に提出された手続補正書で補正された同6年3月25日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
なお、当審から令和6年10月17日付けで申立人1、2に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人2からは応答がなかった。
第2 本件訂正について
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7236046号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求める。」というものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上である」を、
「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であり、
前記基材及び/又は前記中間層の基材本体が、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する、」に訂正する。(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、8~11も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項6を削除する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項7を削除する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項8に記載された「請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体」を、
「請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する。(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項9に記載された「請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体」を、
「請求項1~3及び8のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項10に記載された「請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体」を、
「請求項1~3及び8のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項11に記載された「請求項1~8のいずれか一項に記載の積層体」を、
「請求項1~3及び8のいずれか一項に記載の積層体」に訂正する。
(10)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~11は、請求項2~11が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~11〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「基材」及び/又は「中間層の基材本体」の層構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0033】、【0035】、【0066】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2~5について
訂正事項2~5は、本件訂正前の請求項4~7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項6~9について
訂正事項6~9は、本件訂正前の請求項8~11について、訂正事項2~5によって請求項4~7が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項2~5によって削除された請求項4~7を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6~9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求が認められたことから、本件特許の請求項1~3、8~11に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3、8~11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~3、8~11の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
基材と、中間層と、ヒートシール層とを備え、
前記中間層が、蒸着膜および基材本体を備え、
前記基材が、延伸樹脂フィルムであり、
前記基材本体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記基材が、ポリエチレンにより構成されており、
前記基材本体が、ポリエチレンにより構成されており、
前記ヒートシール層が、ポリエチレンにより構成されており、
前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であり、
前記基材及び/又は前記中間層の基材本体が、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する、
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記基材と前記中間層との間に接着層を備える、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記蒸着膜が、アルミニウム蒸着膜であり、
前記接着層が、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物により構成される、請求項2に記載の積層体。
【請求項8】
包装材料用途に用いられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~3及び8のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製された包装材料。
【請求項10】
包装袋であって、
請求項1~3及び8のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、20μm以上60μm以下であることを特徴とする、包装袋。
【請求項11】
スタンドパウチであって、
請求項1~3及び8のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製され、
前記ヒートシール層の厚さが、50μm以上200μm以下であることを特徴とする、スタンドパウチ。
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
本件特許に対して、当審が令和6年7月31日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由1(新規性)
本件特許の請求項1、2、8~11に係る発明は、申立人1が提出した下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1、2、8~11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1~4、6、8~11に係る発明は、申立人1が提出した下記甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~4、6、8~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
申立人1が提出した甲第1号証:実願昭54-110159号(実開昭56-27928号)のマイクロフィルム(以下「申立1甲1」という。)
申立人1が提出した甲第3号証:特開2018-16012号公報(以下「申立1甲3」という。)
第5 当審の判断
1 引用文献に記載された事項、発明
(1)申立1甲1
ア 申立1甲1に記載された事項
申立1甲1には次の記載がある。
(ア)明細書2ページ10行~3ページ4行
「以下本考案の具体例を図面によって説明すると、厚さl0~70μ程度の一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1の外面に該フイルム1の延伸方向と45~90度好ましくは75~90度で交叉する延伸方向を有する厚さ10~70μ程度の一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2を積層すると共に一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1の内面に金属材バリア層3を積層し、該バリア層3の表面に厚さ30~300μ程度の無延伸ポリエチレン内層フイルム4を積層してなる熱接着性包装材5である。」
(イ)明細書4ページ5行~5ページ4行
「また、本考案に適用される金属材、バリア層3としては厚さ5~30μ程度のアルミニウム箔a、厚さ100~800オングストローム程度のアルミニウム蒸着膜3bの如きものであり、アルミニウム蒸着膜3bを適用するときは一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1に直接該蒸着膜3bを成層するか、あるいは適宜の基膜3cに該蒸着膜3bを成層して適用するものである。
本考案に於ける一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1、一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2、アルミニウム箔3a、既製の無延伸ポリエチレン内層フイルム4等は例えば反応系接着剤を介するドライラミネート工法、あるいは押出溶融ポリエチレン樹脂を介するフイルムサンドイツチ工法の如き接着剤層6を介して積層するものであるが、・・・」
(ウ)明細書6ページ13行~7ページ4行
「さらに、本考案は一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2が外層となっているので、延伸処理により熱接着性が喪失するので、製袋時の熱板刃型への粘着がなく良好な製袋適性を有すると共に内層には熱接着性の良好な無延伸ポリエチレン内層フイルム4が積層されているので、内面の熱接着性能は十分に保持され熱接着性包装材として好適なものである。」
(エ)明細書8ページ2~9行
「本考案は上記のように耐折強度が強く、伸張強度も強く、外層は熱板刃型に粘着しないので、これらの性能面について苛酷な状態の使用がなされ、これらの条件に耐えることが要求される特公昭40-9704号公報に開示されているような自立性包装袋7の包材として有用であり、特に該自立性包装袋7の底壁包材8として有用なものである。矢標X、Yは延伸方向を示す。」
(オ)図面
「
[図:0001422388000001.jpg]
」(第3図)
「
[図:0001422388000002.jpg]
」(第4図、第5図)
「
[図:0001422388000003.jpg]
」(第6図、第7図)
イ 申立1甲1に記載された発明
上記アによると、申立1甲1には、次の発明が記載されている。
「厚さ10~70μ程度の一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1の外面に、厚さ10~70μ程度の一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2を積層すると共に、一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1の内面に厚さ100~800オングストローム程度のアルミニウム蒸着膜3bの金属材バリア層3を積層し、金属材バリア層3の表面に厚さ30~300μ程度の熱接着性の良好な無延伸ポリエチレン内層フイルム4を積層してなり、
一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1と一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2は、反応系接着剤を介するドライラミネート工法の如き接着剤層6を介して積層した、熱接着性包装材5。」(以下「甲1発明」という。)
(2)申立1甲3
申立1甲3には次の記載がある。
「【0024】
[接着剤層]
本発明の接着剤層は、酸素バリア性を有する接着剤層であることが必要である。
酸素バリア性を有する接着剤層を形成する接着剤用樹脂組成物としては、例えば、官能基として1分子中に水酸基を2個以上有する樹脂(A)、官能基として1分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネート化合物(B)、及び特定のリン酸変性化合物(C)を含有する樹脂であって、主骨格が、ポリエステル、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテル、又はポリエーテルポリウレタンを含有してなることに特徴を有しており、更に板状無機化合物を含有することに特徴を有している接着剤用樹脂組成物があげられる。」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1」は本件発明1の「延伸樹脂フィルムであ」り、「ポリエチレンにより構成されて」いる「基材本体」に相当し、甲1発明の「一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2」は本件発明1の「延伸樹脂フィルムであ」り、「ポリエチレンにより構成されて」いる「基材」に相当し、甲1発明の「アルミニウム蒸着膜3b」の「金属材バリア層3」は本件発明1の「蒸着膜」に相当し、甲1発明の「熱接着性の良好な無延伸ポリエチレン内層フイルム4」は本件発明1の「ポリエチレンにより構成されて」いる「ヒートシール層」に相当し、甲1発明の「熱接着性包装材5」は「積層体」に相当する。
甲1発明における「一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1」と「アルミニウム蒸着膜3b」の「金属材バリア層3」とを合わせたものは本件発明1の「中間層」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「基材と、中間層と、ヒートシール層とを備え、
前記中間層が、蒸着膜および基材本体を備え、
前記基材が、延伸樹脂フィルムであり、
前記基材本体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記基材が、ポリエチレンにより構成されており、
前記基材本体が、ポリエチレンにより構成されており、
前記ヒートシール層が、ポリエチレンにより構成されている、積層体。」
[相違点1]
本件発明1は「前記積層体全体におけるポリエチレンの含有量が、90質量%以上であ」るのに対して、甲1発明は「熱接着性包装材5」のポリエチレンの含有量が不明である点。
[相違点2]
本件発明1は、「前記基材及び/又は前記中間層の基材本体が、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する」のに対して、甲1発明は、「一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2」及び/又は「一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1」がそのような構成ではない点。
(2)判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
相違点2は、実質的な相違点である。
また、申立1甲1及び申立人1、2が提出した他の証拠には、積層体において、「一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2」及び/又は「一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1」を、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する構成とすることについて、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明の「一軸延伸ポリエチレン外装フイルム2」及び/又は「一軸延伸ポリエチレン中間フイルム1」を、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する構成とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
なお、申立人1は、令和6年11月19日に提出した意見書において、令和6年5月22日に提出した意見書に添付した特開2018-144483号公報(参考資料1)の【0023】、【0038】、【0046】、【0049】、【0084】【表1】の記載、及び令和6年11月19日に提出した意見書に添付した特表2018-538169号公報(参考資料2)の【請求項8】の記載を参照すれば、積層体に高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルム用いることは周知技術である旨主張する。
しかしながら、参考資料1の【0084】【表1】に記載されたラミネートフィルムは、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層の構成ではない。よって、積層体に高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルム用いることが周知技術とはいえず、申立人1の上記主張を採用することはできない。
また、参考資料2の【請求項8】の記載からは、「高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との多層ポリエチレンフィルム(三層共押フィルム)」が把握できるものであるが、甲1発明が、「熱接着性包装材5を包材として用いた自立性包装袋7」であるところ、参考資料2に記載された「多層ポリエチレンフィルム」は、衛生用吸収性製品において使用されるものであって(【0002】)、それぞれ用いられる技術分野が異なるものである。よって、甲1に発明に参考文献2に記載の事項を適用する動機付けは存在しない。
(3)小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、申立1甲1に記載された発明ではなく、また、申立1甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
3 本件発明2、3、8~11について
本件発明2、3、8~11は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記2と同様の理由により、本件発明2、8~11は申立1甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明2、3、8~11に係る発明は、申立1甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1(新規性・進歩性)(申立2)
本件特許の請求項1、8、9、11に係る発明は、申立人2が提出した下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるため、請求項1、8、9、11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
本件特許の請求項1~11に係る発明は、申立人2が提出した下記甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(進歩性)(申立2)
本件特許の請求項1~5、8~11に係る発明は、申立人2が提出した下記甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許を受けることができないものであるため、請求項1~5、8~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)申立理由3(拡大先願)(申立2)
本件特許の請求項1~3、8~11に係る発明は、その出願の日前を優先日とする特許出願であって、本件特許の出願後に国際公開がされた特許出願(特願2019-560136号。申立人2が提出した下記甲第3号証に係る特許出願。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許を受けることができないものであるため、本件特許の請求項1~3、8~11に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである(同法第184条の13)。
<引用文献等一覧>
申立人2が提出した甲第1号証:国際公開第2017/102704号(以下「申立2甲1」という。)
申立人2が提出した甲第2号証:国際公開第2017/087809号(以下「申立2甲2」という。)
申立人2が提出した甲第3号証:国際公開第2018/202479号(以下「申立2甲3」という。)
2 申立理由1についての当審の判断
(1)申立2甲1に記載された発明
申立2甲1(明細書31ページ1行~34ページ16行)には、特に実施例のIE4に着目すると、次の発明が記載されている。
「5層構造(A~E層)のPE層を有する厚さ25μmの延伸フィルム(25μmPE)に、10nmの厚さでSiOxが設けられた第1フィルムである25μmPE-10nmSiOxに、第2フィルムである70μmPEが積層されてなる、25μmPE-10nmSiOx/70μmPEであって、
5層構造(A~E層)は、
A層は、Hostalen 7740F 2(LyondellBaseにより提供される高密度ポリエチレン、948kg/m3の密度)を96.5wt%含み、
B~D層は、Borshape FX1001(二峰性 Ziegler Natta 製ターポリマー(C2/C4/C6) グレードBorShapeTM(Borealis AG製)。931kg/m3の密度)を98.5wt%含み、
E層は、Borshape FX1001(二峰性 Ziegler Natta 製ターポリマー(C2/C4/C6) グレードBorShapeTM(Borealis AG製)。931kg/m3の密度)を80.0wt%含む、
25μmPE-10nmSiOx/70μmPE。」(以下「引用発明A」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明Aとを対比すると、引用発明Aの「5層構造(A~E層)のPE層を有する厚さ25μmの延伸フィルム(25μmPE)」は本件発明1の「基材本体」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明Aとは、少なくとも次の点で相違する。
[相違点A]
本件発明1は、「基材」を備え、「前記中間層が、基材本体」を備え、「前記基材及び/又は前記中間層の基材本体が、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する」のに対して、引用発明Aは、「厚さ25μmの延伸フィルム(25μmPE)」が「5層構造(A~E層)のPE層を有」し、「5層構造(A~E層)は、A層は、Hostalen 7740F 2(LyondellBaseにより提供される高密度ポリエチレン、948kg/m3の密度)を96.5wt%含み、B~D層は、Borshape FX1001(二峰性 Ziegler Natta 製ターポリマー(C2/C4/C6) グレードBorShapeTM(Borealis AG製)。931kg/m3の密度)を98.5wt%含み、E層は、Borshape FX1001(二峰性 Ziegler Natta 製ターポリマー(C2/C4/C6) グレードBorShapeTM(Borealis AG製)。931kg/m3の密度)を80.0wt%含」み、「基材」を備えていない点。
イ 判断
相違点Aは、実質的な相違点である。
また、申立人1、2が提出した証拠には、「基材」及び/又は「中間層の基材本体」を、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する構成とするものとすることについて、記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明Aにおいて、「5層構造(A~E層)のPE層を有する厚さ25μmの延伸フィルム(25μmPE)」を高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有するものとすることや、引用発明Aにおいて、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する基材を備えるものとすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
ウ 小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、申立2甲1に記載された発明ではなく、また、申立2甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)本件発明2、3、8~11について
本件発明2、3、8~11は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、本件発明8、9、11は申立2甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明2、3、8~11に係る発明は、申立2甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由2についての当審の判断
(1)申立2甲2に記載された発明
申立2甲2には、特に実施例1(【0061】~【0063】)に着目すると、次の発明が記載されている。
「m-LLDPE(金属化可能層:1μm)/m-LLDPE(コア層:23μm)/m-LLDPE(シーラント層:1μm)の構造を有する二軸延伸ポリエチレンフィルムの金属化可能層上にアルミニウム蒸着を行って得られた、
アルミニウム蒸着/m-LLDPE(金属化可能層)/m-LLDPE(コア層)/m-LLDPE(シーラント層)の構造を有する多層フィルム。」(以下「引用発明B」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明Bとを対比すると、引用発明Bの「m-LLDPE(金属化可能層)」は本件発明1の「基材本体」に相当し、同様に、「m-LLDPE(コア層)」は「基材」に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明Bとは、少なくとも次の点で相違する。
[相違点B]
本件発明1は、「前記基材及び/又は前記中間層の基材本体が、高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有する」のに対して、引用発明Bは、「m-LLDPE(金属化可能層)」と「m-LLDPE(コア層)」がそのような構成を有するものではない点。
イ 判断
申立2甲2における「m-LLDPE(金属化可能層)」と「m-LLDPE(コア層)」は、いずれも直鎖状低密度ポリエチレンであり、これらの層の一方又は両方を高密度ポリエチレン層と、中密度ポリエチレン層と、高密度ポリエチレン層との三層共押フィルムの構成を有するものとすることについて、記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明Bにおいて、相違点Bに係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
ウ 小括
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、申立2甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(3)本件発明2、3、8~11について
本件発明2、3、8~11は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記(2)と同様の理由により、申立2甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 申立理由3についての当審の判断
本件訂正により、本件発明1~3、8~11は、本件訂正前の請求項5及び/又は請求項7の発明特定事項を有するものとなった。
申立理由3は、本件訂正前の請求項5、請求項7を対象としていないため、拡大先願についての理由は当たらないものとなった。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1~3、8~11に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできない。また、他に請求項1~3、8~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項4~7は、本件訂正により削除されたため、請求項4~7に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700924