特許異議申立
2022-701184
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物
- 審判番号
- 2022-701184
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-039194
- 登録番号
- 7077673
- 請求日
- 2022年11月30日
- 審決日
- 2024年04月23日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東亞合成株式会社
- 【権利者代理人】山田 強
- 【権利者代理人】日野 京子
- 【異議申立人】田中 理紗
- 審判長/審判官
- 審判長 塩見 篤史
- 審判官 関根 裕
- 審判官 門前 浩一
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7077673号発明「活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7077673号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
特許第7077673号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7077673号の請求項1~11の発明に係る特許についての出願は、平成30年3月6日を出願日とするものであって、令和4年5月23日に特許権の設定登録がなされ(請求項の数11)、同年同月31日にその特許掲載公報が発行された。
その後、令和4年11月30日に特許異議申立人である田中 理紗(以下「申立人」ともいう。)によって、請求項1~11(全請求項)に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、当審は、令和5年5月31日付けで取消理由を通知し(発送は同年6月5日)、この取消理由通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年8月1日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を「本件訂正」という。)を行った。
当審は、同年同月10日付けで申立人に訂正請求があった旨を通知したが(発送は同年同月15日)、この通知に対し、申立人からの意見書の提出はなかった。
第2 本件訂正について
1 請求の趣旨
本件訂正の請求の趣旨は、「特許第7077673号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11について訂正することを求める。」というものである。
2 本件訂正
(1)本件訂正は、次の訂正事項1~10からなるものである。下線は、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有し、分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤」
と記載されているのを、
「下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有し、分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含み、
前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含む、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」に訂正する。
また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~11についても同様に訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に、「前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」と記載されているのを、
「下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有し、分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含み、
前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」に訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、「前記(C)成分が、(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤を含む請求項1又は請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」と記載されているのを、
「前記(C)成分が、(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤を含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」に訂正する。
また、請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4~11についても同様に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を5~50重量%及び(B)成分を50~95重量%含み、(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、前記(C)成分を0.1~15重量部含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」と記載されているのを、
「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、前記(C)成分を0.1~15重量部含む請求項1、請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」に訂正する。
また、請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~11についても同様に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に、「さらに、下記(D)成分を含む請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
・(D)成分:前記(B)成分以外のエチレン性不飽和基を1個有する化合物」と記載されているのを、
「さらに、下記(D)成分を含む請求項1及び請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
・(D)成分:前記(B)成分以外のエチレン性不飽和基を1個有する化合物」に訂正する。
また、請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~11についても同様に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に、「前記(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を5~50重量%、(B)成分を50~95重量%、及び(D)成分を45重量%以下で含み、(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量部に対して、前記(C)成分を0.1~15重量部含む請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」と記載されているのを、
「前記(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%、(B)成分を70~90重量%、及び(D)成分を20重量%以下で含み、(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量部に対して、前記(C)成分を0.1~15重量部含む請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」に訂正する。
また、請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8~11についても同様に訂正する。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に、「組成物の硬化膜が、膜厚40μmであって、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム、被着体としてガラス板を用いた時、23℃、50%RHの条件における180°剥離強度(剥離速度:300mm/min)が0.01~5.0N/25mmである請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」と記載されているのを、
「組成物の硬化膜が、膜厚40μmであって、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム、被着体としてガラス板を用いた時、23℃、50%RHの条件における180°剥離強度(剥離速度:300mm/min)が0.01~5.0N/25mmである請求項1及び請求項3~請求項7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」に訂正する。
また、請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~11についても同様に訂正する。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の組成物を含む再剥離用活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」と記載されているのを、
「請求項1及び請求項3~請求項8のいずれか1項に記載の組成物を含む再剥離用活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」に訂正する。
また、請求項9の記載を直接又は間接的に引用する請求項10,11についても同様に訂正する。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に、「基材と、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物の活性エネルギー線硬化膜からなる粘着剤層から構成される粘着フィルム又はシート。」と記載されているのを、
「基材と、請求項1及び請求項3~9のいずれか1項に記載の組成物の活性エネルギー線硬化膜からなる粘着剤層から構成される粘着フィルム又はシート。」に訂正する。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に、「基材に、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射する粘着フィルム又はシートの製造方法。」と記載されているのを、
「基材に、請求項1及び請求項3~9のいずれか1項に記載の組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射する粘着フィルム又はシートの製造方法。」に訂正する。
(2)一群の請求項について
訂正事項1~10に係る訂正前の請求項1~11について、請求項2~11はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正要件についての判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前においては請求項1の(A)成分及び(B)成分の合計量100重量%に対する(A)成分及び(B)成分の含有割合について限定がなかったところ、それぞれ、10~30重量%及び70~90重量%に限定する訂正(以下「訂正事項1-1」ともいう。)、及び、前記(B)成分の種類についても限定がなかったところ、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含むものに限定する訂正(以下「訂正事項1-2」ともいう。)からなるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
本件特許の明細書(以下「本件特許明細書」ともいう。)の段落【0033】には「(A)及び(B)成分の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、後記する(B)成分以外の1個のエチレン性不飽和基を有する化合物〔以下、「(D)成分」という〕を配合する場合は、(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を5~50重量%及び(B)成分を50~95重量%含むことが好ましく、より好ましくは(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%である。
(A)及び(B)成分の含有割合を前記した範囲とすることで、組成物の塗工性及び硬化膜の粘着力に優れるものとすることができる点で好ましい。」と記載されているから、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
また、段落【0031】には「(B)成分としては、オキシアルキレン単位を有する化合物が粘着力に優れる点で好ましい。
当該化合物の具体例としては、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、及びノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
当該化合物のオキシアルキレン単位の繰り返し数としては、1以上が好ましく、繰り返し数1~5の化合物がより好ましい。」と記載されているとともに、段落【0097】の【表1】によれば、その実施例6は(B)成分として「M101A」を用いるものであり、段落【0093】によれば、M101Aは、「フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)アクリレート、液表面張力=44.6mN/m、東亞合成(株)製「アロニックスM-101A」(商品名)」であるから、オキシアルキレン単位の数が2である場合に該当する実施例が記載されている。
したがって、訂正事項1-2も、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1-1は、前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%に対する(A)成分及び(B)成分のそれぞれの含有割合を限定してその範囲を減縮するものであり、また、訂正事項1-2は、前記(B)成分の種類を限定してその範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2の記載が請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正(以下「訂正事項2-1」ともいう。)、及び、前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%に対する(A)成分及び(B)成分の含有割合を、それぞれ、10~30重量%及び70~90重量%に限定する訂正(以下「訂正事項2-2」ともいう。)からなるものである。
また、訂正事項2-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、訂正事項2-2は、実質的に訂正事項1-1と同じものであり、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
訂正事項2-1は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであって、実質的な内容の変更を伴うものではない。また、訂正事項2-2は、実質的に訂正事項1-1と同じものであり、訂正事項1-1は、上記(1)イのとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものである。
したがって、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項2は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「特請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3、5、7~10について
ア 訂正の目的について
訂正事項3、5、7~10は、それぞれ、訂正前の請求項3、6、8~11がそれよりも前の請求項を引用する記載を含むものであるところ、その引用する請求項から請求項2を削除するものであるので、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
上記アのとおり、訂正事項3、5、7~10は、その引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項3、5、7~10は、その引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、請求項5が訂正事項1-1に連動して訂正されるため、請求項5における前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%に対する(A)成分及び(B)成分の含有割合が、それぞれ、10~30重量%及び70~90重量%に限定されることにともない、この限定よりも広い範囲を規定していた請求項5の「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を5~50重量%及び(B)成分を50~95重量%含み」という記載を削除する訂正(以下「訂正事項4-1」ともいう。)、及び、訂正前の請求項5の記載がそれよりも前の請求項を引用する記載を含むものであるところ、その引用する請求項から請求項2を削除する訂正(以下「訂正事項4-2」ともいう。)からなるものである。
そうすると、訂正事項4-1は、実質的に、「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を5~50重量%及び(B)成分を50~95重量%含み」を、前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%に対する(A)成分及び(B)成分の含有割合が、それぞれ、10~30重量%及び70~90重量%であるものに訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4-2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
上記アのとおりであるから、訂正事項4-1は、実質的に訂正事項1-1と同じものであり、訂正事項1-1は、上記(1)イのとおり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
また、訂正事項4-2は、その引用する請求項から請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
したがって、訂正事項4による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記イのとおり、訂正事項4-1は、実質的に訂正事項1-1と同じものであり、訂正事項1-1は、上記(1)ウのとおり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項4-2は、その引用する請求項から請求項2を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正前においては請求項7の(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量%に対する(A)成分、(B)成分、及び、(D)成分の含有割合について、それぞれ、5~50重量%、50~95重量%及び45重量%以下であったものから、それぞれ、10~30重量%、70~90重量%及び20重量%以下に限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無について
本件特許明細書の段落【0033】には「(A)及び(B)成分の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、後記する(B)成分以外の1個のエチレン性不飽和基を有する化合物〔以下、「(D)成分」という〕を配合する場合は、(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を5~50重量%及び(B)成分を50~95重量%含むことが好ましく、より好ましくは(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%である。
(A)及び(B)成分の含有割合を前記した範囲とすることで、組成物の塗工性及び硬化膜の粘着力に優れるものとすることができる点で好ましい。」と記載されており、また、段落【0056】には「(D)成分の含有割合は、硬化性成分の合計量100重量%中に0~45重量%含むことが好ましく、より好ましくは0~20重量%である。
(D)成分の含有割合を45重量%以下とすることで、特に(D)成分が多官能エチレン性不飽和化合物の場合には、硬化膜が脆くなることを防止することができる。」と記載されている。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項6は、請求項7の(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量%に対する(A)成分、(B)成分、及び、(D)成分の含有割合について、その範囲を減縮する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(6)独立特許要件について
本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~11に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。
(7)本件訂正の適否についての小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
また、請求項2の引用関係を解消する訂正事項において、別の訂正単位とする求めはない。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~11に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~11に記載された以下のとおりのものである(請求項1~11に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)。
「【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有し、分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含み、
前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含む、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項2】
下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有し、分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含み、
前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(C)成分が、(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤を含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(C-1)成分が、α-ヒドロキシケトン系化合物を含む請求項3に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(A)及び(B)成分の合計量100重量部に対して、前記(C)成分を0.1~15重量部含む請求項1、請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項6】
さらに、下記(D)成分を含む請求項1及び請求項3~請求項5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
・(D)成分:前記(B)成分以外のエチレン性不飽和基を1個有する化合物
【請求項7】
前記(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%、(B)成分を70~90重量%、及び(D)成分を20重量%以下で含み、(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量部に対して、前記(C)成分を0.1~15重量部含む請求項6に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項8】
組成物の硬化膜が、膜厚40μmであって、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム、被着体としてガラス板を用いた時、23℃、50%RHの条件における180°剥離強度(剥離速度:300mm/min)が0.01~5.0N/25mmである請求項1及び請求項3~請求項7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項1及び請求項3~請求項8のいずれか1項に記載の組成物を含む再剥離用活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。
【請求項10】
基材と、請求項1及び請求項3~9のいずれか1項に記載の組成物の活性エネルギー線硬化膜からなる粘着剤層から構成される粘着フィルム又はシート。
【請求項11】
基材に、請求項1及び請求項3~9のいずれか1項に記載の組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射する粘着フィルム又はシートの製造方法。」
第4 特許異議の申立ての概要
申立人は、下記2の証拠方法(以下、甲第1号証を「甲1」などという。)により、下記1を申立ての理由とする特許異議の申立てをしている。
1 申立ての理由
(1)申立ての理由1(甲1を主引例とした新規性及び進歩性)
本件発明1、2、6、8、10及び11は、甲1に記載された発明であるか、又は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明3及び4は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明5及び7は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明9は、甲1に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1~11は、特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~11に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立ての理由2(甲2を主引例とした新規性及び進歩性)
本件発明1、5~8、10及び11は、甲2に記載された発明であるか、又は、甲2に記載された発明若しくは甲2に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明2は、甲2に記載された発明及び甲6に記載された事項又は甲2に記載された発明並び甲2及び甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明3及び4は、甲2に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明9は、甲2に記載された発明及び甲5に記載された事項又は甲2に記載された発明並び甲2及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1~11は、特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~11に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立ての理由3(甲3を主引例とした新規性及び進歩性)
本件発明1、2、5、6、8、10及び11は、甲3に記載された発明であるか、又は、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明3及び4は、甲3に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明7は、甲3に記載された発明及び甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明9は、甲3に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1~11は、特許法29条1項3号又は同条2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~11に係る特許は、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立ての理由4(明確性)
本件発明8~11は、特許を受けようとする発明が明確でないから、本件特許の請求項8~11に係る特許は、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立ての理由5(サポート要件)
本件発明1~11は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、本件特許の請求項1~11に係る特許は、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲1:特開2005-255844号公報
甲2:特開2000-63767号公報
甲3:特開2007-84727号公報
甲4:特開2007-23147号公報
甲5:国際公開第2013/031678号
甲6:「TOAGOSEI 光硬化型樹脂 Special Monomers and Oligomers アロニックス(R)(当審注(R)はマル内にRを上付き文字としたもの、以下同様。)Mシリーズ、アロンオキセタン(R)シリーズ ARONIX M Series ARON OXETANE Series」、東亞合成株式会社、H23.4.2000(K)(当審注(K)はマル内にK)(平成23年4月)
甲7:特開2016-98308号公報
第5 証拠の記載事項
1 甲1
甲1には、次の記載がある。
「【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)数平均分子量が10000~40000であるウレタン(メタ)アクリレート 30~70重量%
(B)環状エーテルを持つエチレン性不飽和モノマー 0.1~70重量%を含有する放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、ホモポリマーのガラス転移温度が60℃以上であるエチレン性不飽和モノマー(C)を含有する請求項1に記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(D)を含有する請求項1又は2記載の放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
粘・接着剤用である請求項1~3のいずれか1項記載の放射線硬化性樹脂組成物。」
「【0001】
本発明は、放射線硬化性樹脂組成物に関し、詳細にはガラス、プラスチック基板、特にスチレン-メタクリル酸メチル共重合体(MS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)や各種環状オレフィンポリマー製フィルムに対し優れた接着性を有し、かつ耐熱性、耐水性及び成形加工性に優れるため、各種建装材料、包装材料、印刷材料、表示材料、電気電子部品材料、光学部品材料、液晶パネル等の分野において粘・接着剤として有用な放射線硬化性樹脂組成物に関する。」
「【0028】
本発明の成分Aであるウレタン(メタ)アクリレート化合物は本発明の組成物中に30~70重量%、特に45~70重量%の範囲で配合するのが、組成物の塗工性、硬化させた後の粘・接着剤の接着特性、加工性、柔軟性、長期信頼性の点で好ましい。」
「【0039】
本発明においては上記必須成分(A)、(B)、(C)、(D)の他に必要により以下の様な(B)、(C)及び(D)以外の単官能、多官能重合性モノマーも併用することができる。
【0040】
単官能モノマーとしては、例えばベンジル(メタ)アクリレート・・・下記の式(5)で表される(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。
【0041】
【化4】
[図:0001413285000001.jpg]
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R5は炭素数2~6、好ましくは2~4のアルキレン基を示し、R6は炭素数1~12、好ましくは1~9のアルキル基を示し、lは0~12、好ましくは1~8である。)
【0042】
これらの式(5)で示される化合物のうち市販品としては、・・・アロニックスM111、M113、M114、M117、M120(以上、東亜合成化学(株)製)、KAYARAD TC110S、R629、R644(以上、日本化薬(株)製)、SARTOMER506(ソマール製)等が挙げられる。」
「【0045】
これらの(A)、(B)、(C)、(D)成分以外の単官能、多官能重合性モノマーの配合量は、接着力等の観点から、好ましくは組成物中0~70重量%であり、さらに好ましくは0~40重量%である。」
「【0047】
本発明の放射線硬化性樹脂組成物は、放射線で硬化させることができる。ここで、放射線とは、可視光、紫外線、電子線、X線等活性エネルギー線等をいう。紫外線で硬化させる場合には、紫外線感応型光重合開始剤を用いることが好ましい。紫外線感応型光重合開始剤としては、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、4,4′-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。また、市販品としてはIRUGACURE184、651、500、907、CG1369、CG24-61(以上、チバガイギー(株)製)、LucirineTPO(BASF(株))、Darocure1116、1173(以上、メルク(株)製)、ユベクリルP36(UCB(株)製)等を挙げることができる。・・・
【0049】
その他増感作用を有する添加剤を加えて光重合の感度を向上することもできる。その光増感剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等があり、市販品としてはユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB(株)製)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、組成物中に0.1~10重量%配合することが好ましい。」
「【0052】
ウレタン(メタ)アクリレートの合成例1
撹拌機を備えた反応容器に、数平均分子量が4000のポリプロピレングリコール1552g、イソホロンジイソシアネート114.8g、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール0.41g、フェノチアジン0.14gを仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃となるまで冷却した。ジブチル錫ジラウレート1.4gを添加した後、撹拌しながら液温度を1時間かけて35℃まで徐々に上げた。その後、液温度を50℃に上げて反応させた。残留イソシアネート基濃度が1.63重量%(仕込量に対する割合;以下同じ)以下となった後、2-ヒドロキシエチルアクリレート30.0gを添加し、液温度約60℃にて撹拌し、反応させた。残留イソシアネート基濃度が0.1重量%以下になった時を反応終了とし、数平均分子量13120のウレタン(メタ)アクリレートを得た(これをUA-1とする)。」
「【0056】
実施例1~7及び比較例1~3
表1の配合処方(重量部)で上記ウレタンアクリレートオリゴマー、以下に示す成分B,成分C、成分D、反応性希釈剤、重合開始剤等を、撹拌機を備えた反応容器に仕込み、撹拌温度50~60℃で撹拌して実施例1~7のサンプル、比較例1~3のサンプルのそれぞれを調製した。使用した成分は以下の通りである。
【0057】
(成分B)
Vis150:テトラヒドロフルフリルアクリレート
Vis150D:テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル
(成分C)
ACMO:N-アクリロイルモルホリン(Tg 145℃)
N-ビニルカプロラクタム(Tg 178℃)
IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)(Tg 94℃)
(成分D)
SH6062:γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)
(重合開始剤)
LUCIRIN TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製)
Irg.184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
(反応希釈剤)
M113:ノニルフェニルEO変性アクリレート(東亞合成(株)製)
(その他の成分)
GP:リン系酸化防止剤 Sumilizer GP(住友化学工業(株)製)GA-80:フェノール系酸化防止剤 Sumilizer GA-80 (住友化学工業(株)製)
【0058】
【表1】
[図:0001413285000002.jpg]
【0059】
以上の様にして得た液状組成物を用いて、下記の様にして試験片を作成し、評価を行った。結果を表1に合わせて示す。
【0060】
1.試験片作成
254μm厚のアプリケーターバーを用いて100μm厚のPETフィルム又は100μm厚のTACフィルム又は3mm厚のアートン板上に液状物を塗布した上に100μm厚の透明なPETフィルムを気泡が入らぬように貼り合わせた。これに1.0J/cm2の紫外線を透明PETフィルム側から照射し硬化した。各試験片を硬化後23℃、相対湿度50%で24時間状態調整し、接着力評価用試験片とした。また、上記試験片のうちアートンを用いた試験片については、100℃のドライオーブンに5日間静置した後、23℃、相対湿度50%で24時間状態調整し、耐熱試験後の接着力評価用試験片とした。」
「【0063】
本発明の放射線硬化性樹脂組成物は、優れた接着性を有し、耐熱性、耐水性に優れかつ成形加工性にも優れ、粘・接着剤用組成物として有用である。特にガラス、プラスチック基板、中でもTACやアートンフィルムに対し優れた接着性を有しており、各種光学用ガラス、光学用プラスチック基板にPET、TACやアートンフィルムをラミネートするのに特に好適に用いることができる。それだけでなく各種、表示材料、電気電子部品材料、光学部品材料、液晶パネル、建装材料、包装材料、印刷材料等の分野においても有用なものである。」
2 甲2
甲2には、次の記載がある。
「【請求項1】(A)ウレタン(メタ)アクリレート、(B)下記一般式(1)又は/及び式(2)で表される(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物、(C)下記一般式(2)で表される化合物以外の水酸基及び1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、並びに(D)光重合開始剤からなる組成物であって、(A)、(B)及び(C)成分の割合が、該組成物中の硬化性成分の合計量当たり、それぞれ5~60重量%、10~90重量%及び5~60重量%であり、(D)成分の割合が、硬化性成分の合計量100重量部に対して0.1~10重量部である光硬化型接着剤組成物。
【化1】
[図:0001413285000003.jpg]
〔式(1)において、R1 は水素原子又はメチル基であり、R2 は炭素数1~4のアルキレン基であり、nは1~10の整数である。〕
【化2】
[図:0001413285000004.jpg]
〔式(2)において、R3 は水素原子又はメチル基である。〕
【請求項2】線膨張係数が異なる基材同士を請求項1記載の組成物を用いて貼り合わせ、その後当該基材に光照射することを特徴とする接着方法。
【請求項3】樹脂基材とガラス基板とを請求項1記載の組成物で接着してなる電磁波及び/又は近赤外線遮断フィルター。
【請求項4】蛍光体を含み2枚のガラス基板から構成されてなる表示本体と樹脂基材を請求項1記載の組成物で接着してなるディスプレイ。」
「【0013】○(B)成分
(B)成分は、下記一般式(1)又は/及び式(2)で表される(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物であり、硬化物に柔軟性及び伸び率を付与する成分である。
【0014】
【化3】
[図:0001413285000005.jpg]
【0015】〔式(1)において、R1 は水素原子又はメチル基であり、R2 は炭素数1~4のアルキレン基であり、nは1~10の整数である。〕
R2 の好ましい例は、エチレン基及びプロピレン基であり、より好ましくはエチレン基である。」
「【0018】(B)成分の組成物中の配合割合は、硬化性成分の合計量当り10~90重量%であり、好ましくは20~80重量%である。この割合が10重量%より少ない場合は、(B)成分に起因する硬化物の柔軟性及び伸び率が不充分となる。他方、90重量%を超えると、耐久性及び接着性が低下する。」
「【0021】○(D)成分
(D)成分である光重合開始剤は、紫外線又は可視光線を照射することにより、ラジカルを発生する化合物であれば良い。具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとそのアルキルエーテル;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-メチル-1-[ 4-(メチルチオ)フェニル] -2-モルフォリノプロパン-1-オン等のアセトフェノン;2-メチル-アントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等のアントラキノン;2,4-ジメチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール;ベンゾフェノン及びo-ベンゾイル安息香酸メチル等のベンゾフェノン;カンファーキノン、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-1-カルボン酸、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-1-カルボキシ-2-ブロモエチルエステル、7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-1-カルボキシ-2-メチルエステル及び7,7-ジメチル-2,3-ジオキソビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン-1-カルボン酸クロライド等のカンファーキノン系化合物;ベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジメトキシフェニルホスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジエトキシフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド;並びにビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4-,4-トリメチルフェニル-ホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド化合物等を挙げることができる。これらの光重合開始剤は、単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。」
「【0032】本発明の光硬化型接着剤組成物の使用方法としては、片方の基材、又は基材の両方に組成物を塗布し、これらを貼り合わせた後、基材の一方の面又は両面から光を照射すれば良い。光照射の方法としては、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ及び高圧水銀灯等を使用し、常法の条件に従えば良い。
【0033】本発明の接着剤組成物は、上記の通り線膨張係数の異なる基材に対して好ましく適用できるものであるが、この様な基材を組み合わせて製造される具体的な用途としては、樹脂基板とガラス基板から構成される電磁波及び/又は近赤外線の遮断フィルターの製造における樹脂基材とガラス基板の接着や、プラズマディスプレイ等といった蛍光体を含み2枚のガラス基板から構成されてなる表示本体と、樹脂基材から構成されるディスプレイの製造における、樹脂基材と表示本体の接着に好ましく使用される。
【0034】本発明の接着剤組成物を使用した電磁波及び/又は近赤外線の遮断フィルターにおいて、これを構成する樹脂基材としては、ポリメチルメタクリレート等のメタクリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びトリアセチルセルロース樹脂等が挙げられる。樹脂基材としては、樹脂フィルム及び樹脂基板のいずれも使用可能である。近赤外線遮断フィルターの場合には、樹脂基材として、近赤外線を吸収させるためのニッケル系、アルミニウム系、ジイモニウム系、アンチモン系及びフタロシアニン系の色素を樹脂板に分散させたものを使用することが好ましい。当該樹脂基材として樹脂基板を使用する場合には、樹脂基板は樹脂に色素を配合し溶融押出法等により成形して製造することができる。又、樹脂基板と、樹脂フィルムに色素を分散させた近赤外線遮断フィルムを併用して使用することもできる。近赤外線遮断フィルムを使用する場合は、当該フィルムを樹脂基板とガラス基板間、又は樹脂板の前面に、光硬化型接着剤組成物を使用して接着すれば良い。本発明の接着剤組成物を使用した近赤外線遮断フィルターの例としては、色素を分散した樹脂基板/接着剤組成物硬化物層/ガラス基板から構成されるもの等が挙げられる。又、電磁波遮断フィルターの場合には、銅、金、銀、アルミニウム及び錫等の金属、当該金属の塩、並びにITO等の酸化物等を、ポリエチンレテレフタレート等の樹脂フィルム又は樹脂メッシュに、蒸着又はスパッタリングした電磁波遮断材を使用する。当該電磁波遮断材は、樹脂基材とガラス基板の間、又は樹脂基材の前面に、光硬化型接着剤組成物を使用して接着すれば良い。本発明の接着剤組成物を使用した電磁波遮断遮断フィルターの例としては、樹脂基板/接着剤組成物硬化物層/金属蒸着メッシュ層/ガラス基板から構成されるもの等が挙げられる。さらに、本発明の接着剤組成物を使用した電磁波及び近赤外線遮断フィルターの例としては、色素を分散した樹脂基板/接着剤組成物硬化物層/金属蒸着メッシュ層/ガラス基板から構成されるもの等が挙げられる。
【0035】本発明の接着剤組成物を使用した、蛍光体を含み2枚のガラス基板から構成されてなる表示本体と、樹脂基材から構成される、前面からの耐衝撃性に優れるディスプレイにおいて、樹脂基材としては、アクリル樹脂及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂基材としては、近赤外線遮断を遮断するために、前記色素が分散したものも使用できる。樹脂基材としては、樹脂フィルム及び樹脂基板のいずれも使用できる。
【0036】
【実施例】以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、各例において、「部」は重量部を意味する。
○実施例1~同5
表2に示す種類及び量の(A)~(D)成分を常法に従い配合して組成物を製造した。得られた組成物の粘度を測定した。又、得られた組成物を、下記試験方法に従い評価した。それらの結果を表3に示す。
【0037】
【表2】
[図:0001413285000006.jpg]
【0038】但し、表2中の数字は部数を意味し、又記号は以下の意味を示す。
・UN9200A:アートレジンUN9200A、ウレタンアクリレート、根上工業(株)製
・M1310:アロニックスM1310、ウレタンアクリレート、東亞合成(株)製
・M110:アロニックスM110、パラクミルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート〔式(1)において、R1 が水素原子で、R2 がエチレン基で、nが1の化合物〕、東亞合成(株)製
・化合物A:下記式(3)で表される化合物〔式(2)において、化合物R3 が水素原子である化合物〕
【0039】
【化5】
[図:0001413285000007.jpg]
【0040】・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、三菱ガス化学(株)製
・HOP-A:ライトエステルHOP-A、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、共栄社油脂(株)製
・M5700:アロニックスM5700、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、東亞合成(株)製
・Irg651:イルガキュア651、ベンジルジメチルケタール、チバガイギー社製
・ルシリンTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製
【0041】○試験方法
得られた組成物をテストピースに塗布し、もう一方のテストピースと貼り合わせた。これに、ウシオ電機製コンベア型80W高圧水銀灯を使用して、2000mJ/cm2 の条件で照射し、テストピースの接着を行った。これを試験体とした。使用したテストピースは、3cm角であり、厚みが2mmであるアクリル樹脂(以下Aと略す)、厚みが3mmであるポリカーボネート樹脂(以下Pと略す)、厚みが1mmであるソーダガラス(以下Gと略す)、厚みが1mmである鉄板(以下Fと略す)を用いた。耐熱性試験は、試験体を80℃のオーブンに500時間入れた後の接着面の状態を目視により観察した。耐湿熱性試験は、試験体を恒温恒湿器(50℃、湿度95%)に500時間放置した後の接着面の状態を目視により観察した。冷熱サイクル試験は、試験体を-40℃と85℃で、各30分放置し、これを100サイクル繰り返した後の接着面の状態を目視により観察した。表4において、例えばA/Gはアクリルとガラスを貼り合せたことを意味する。又、○、△、×は以下の意味を示す。
○:はがれ無し
△:一部はがれ有り
×:大部分にはがれ有り
-:初期未接着(ポリカーボネート板により紫外線が吸収されたため)」
「【0049】
【発明の効果】本発明の光硬化型接着剤組成物は、線膨張係数の異なる基材の接着においても良好な耐熱性及び耐久性を有するため、各種基材の接着に有用なものであり、特に電磁波及び/又は近赤外線遮断フィルター、及び表示本体と樹脂基材を貼り合せたディスプレイの製造に有用なものである。」
3 甲3
甲3には、次の記載がある。
「【請求項1】
下記(A)~(D)からなる、光学シート形成用紫外線硬化型接着剤。
(A)ポリエーテルポリオール(a1)、脂環式ポリイソシアネート(a2)および水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)から形成されるウレタン(メタ)アクリレート
(B)脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレート
(C)下記一般式(1)で示される単官能(メタ)アクリレート
R-Ph-O(CH2CH2O)nCOCR’=CH2 (1)
(式中、RはHまたは炭素数1~12の1価の脂肪族炭化水素基、R’はHまたはメチル基、Phはフェニレン基、nは1~4の整数を表す。)
(D)1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよびメチルフェニルグリオキシエステルからなる群から選ばれる1種または2種以上の光重合開始剤
【請求項2】
(A)が、有機ビスマスウレタン化触媒を用いて形成されるウレタン(メタ)アクリレートである請求項1記載の接着剤。
【請求項3】
(A)~(D)の合計重量に基づく重量割合が、(A)20~69%、(B)10~50%、(C)20~60%および(D)0.3~0.9%である請求項1または2記載の接着剤。
【請求項4】
(B)/(C)の重量比が0.3/1~1.5/1である請求項1~3のいずれか記載の接着剤。
【請求項5】
表面に微細な突起を有する樹脂層(I)、請求項1~4のいずれか記載の接着剤を硬化させてなる接着剤中間層(II)および剛性、平滑性を付与する透明基材層(III)の3層からなる光学シート。
【請求項6】
剛性、平滑性を付与する透明基材層(III)上に、請求項1~4のいずれか記載の接着剤を塗工し、表面に微細な突起を有する樹脂層(I)の裏面をその上に貼り合せ、その後、紫外線照射により前記接着剤を硬化させて接着剤中間層(II)を形成させることを特徴とする、(I)、(II)および(III)の3層からなる光学シートの製造方法。」
「【0025】
本発明における(C)は、下記一般式(1)で示される単官能(メタ)アクリレートである。
R-Ph-O(CH2CH2O)nCOCR’=CH2 (1)
式中、RはHまたはC1~12(好ましくはHまたはC1~9)の1価の脂肪族炭化水素基(メチル、エチル、ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシルおよびドデシル基等)、R’はHまたはメチル基、Phはフェニレン基、nは1~4(好ましくは1~2)の整数を表す。
Rが炭化水素基の場合、Cが12を超えると樹脂の強靭性が悪化する。また、nが4を超えると接着性が悪くなる。
また、(C)の一般式(1)で示される単官能(メタ)アクリレートは、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。」
「【0028】
本発明の接着剤における(A)、(B)、(C)および(D)の重量割合は、(A)~(D)の合計重量に基づいて、上記各成分の特性の観点から、好ましくは(A)が20~69%、(B)が10~50%、(C)が20~60%、および(D)が0.3~0.9%(さらに好ましくは0.4~0.8%、とくに好ましくは0.5~0.7%)である。」
「【0030】
本発明の接着剤には、必要により本発明の効果を阻害しない範囲でさらに(A)、(B)および(C)以外のその他の(メタ)アクリレート(E)を含有させてもよい。(E)には下記のものが含まれ、これらは1種単独でも2種以上の併用でもいずれでもよい。」
「【0061】
樹脂層(I)の樹脂としては、特に限定されないが、通常Mn100,000~10,000,000の透明樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、プロピル化またはブチル化アセチルセルロース、シクロオレフィン共重合体(エチレン-ノルボルネン共重合体等)およびポリメチルメタクリレート-スチレン共重合樹脂等が挙げられる。
これらの形状は、板状またはフィルム状のいずれでもよいが、生産性の観点から好ましいのは0.05~5mm厚のフィルム状である。
(I)の形成方法としては、例えば、型の全面に亘って微細凹部を有する金型に上記の樹脂を注入して射出成形または押出成形する方法;微細凹部を有する金型に、例えばUV硬化樹脂(後述の実施例で用いたもの等が挙げられる)を注型した後、その上に上記(I)用の樹脂の透明樹脂フィルムを載せ、その上側からUV照射する方法等が挙げられる。なお、後者の場合は、透明樹脂フィルム側[樹脂層(I)の裏面]を接着剤と貼り合せるのが好ましい。
【0062】
透明基材層(III)の材質としては、前記(I)の樹脂およびガラス、石英等が挙げられる。(III)の形状は、光学シートに剛性と平滑性を付与するとの観点から好ましいのは1~50mm厚の板状である。
【0063】
本発明の接着剤の塗工に際しては、通常用いられる装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。
塗工後膜厚(乾燥後膜厚)は、通常0.5~300μm、乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μm、硬化性、透明性の観点から好ましい下限は1μmである。」
「【0066】
本発明の光学シートは、例えば、プリズムシート、コリメーターレンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、光反射レンズ、ホログラム、ARシート、AGシート、LRシート等に用いることができる。また、本発明の接着剤は、上記光学シートの作製に有用である。」
「【0068】
製造例1
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器にPTMG[Mn1,000、三菱化学(株)製、商品名:PTMG-1000]100部、IPDI33.3部および触媒としてビスマストリ(2-エチルヘキサノエート)(2-エチルヘキサン酸50%溶液)0.05部を仕込み、100℃で4時間反応させ、その後2-ヒドロキシエチルアクリレート11.6部を加え、100℃で6時間反応させてウレタンアクリレート(A-1)を得た。」
「【0075】
実施例1~5、比較例1~6
(1)接着剤の作成
上記で得られた(A-1)~(A-5)、および他の成分を表2に示す重量比に従って配合し、接着剤を得た。
【0076】
(2)光学シートの製造
上記で得られた接着剤を用い、下記の手順で光学シートを製造した。
1)表面に微細な突起を有する樹脂層(I)の製造
撹拌装置を備えた配合容器に、(A-1)50部、3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピルアクリレート[東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM-5710]30部、EO変性(付加モル数4)ビスフェノールAジアクリレート[三洋化成工業(株)製、商品名:ネオマーBA-641]17部および2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン[チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュアー1173]3部を仕込み均一混合し、UV硬化樹脂を作成した。これを、微細凹部を有する金型上に塗工し、その上にPETフィルム[厚み75μm、東レ(株)製、商品名:ルミラーU12 #75]を載せ、ニップローラーで挟んで泡を押し出した後、紫外線照射装置[アイグランデージ、アイグラフィック(株)製。照射ランプはメタルハライドランプ。以下同じ。]を用いて、PETフィルム表面側から紫外線を1,000mJ/cm2照射した後、金型から離型して、微細な突起を有するPETフィルム[樹脂層(I)]を得た。
2)光学シートの製造
メチルメタクリレート-スチレン共重合板[厚さ2mm、大日本インキ化学工業(株)製、商品名:クリアパクトTI-300][透明基材層(III)]上に、上記で得られた接着剤を塗工後(乾燥後)の厚さが100μmになるように塗工した後、塗工側に1)で製造した微細な突起を有するPETフィルム[樹脂層(I)]を平らな面を接着面として張り合わせ、ニップローラーで挟んで空気を押し出した。その後、紫外線照射装置を用いて、該共重合板側から紫外線を1,000mJ/cm2照射して接着剤中間層(II)を形成させて、光学シートを得た。」
「【0080】
【表2】
[図:0001413285000008.jpg]
」
「【0083】
本発明の接着剤を硬化させてなる接着剤中間層は、透明性が良好で、耐光性に優れ、プラスチック、ガラス等との接着性が良好であることから、透明性および耐光性の要求される光学シート等の用途に好適に用いられる。また、本発明の光学シートの製造法は、硬化が速いことから、生産性に優れ工業的に極めて有用であり、得られる光学シートは、光学特性に優れることから映像の微細化が可能であり、さらに機械強度に優れ強靭であることから液晶ディスプレイやプロジェクションTVの軽量化および薄型化が実現できる。」
4 甲4
甲4には、次の記載がある。
「【0019】
本発明における(C)成分としては、種々の化合物を使用することができる。
紫外線硬化型組成物として使用する場合の好ましい具体例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製ダロキュアー1173)、ジエトキシアセトフェノン(ファーストケミカル製ファーストキュアーDEAP)、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー2959)、オリゴ〔2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン〕(Lamberti社製ESACURE KIP150及びESACURE ONE等)、メチルベンゾイルフォルメート(LAMBSON社製SPEEDCURE MBF)、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー754等が挙げられる。
又、可視光硬化型組成物として使用する場合の好ましい具体例としては、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド(LAMBSON社製SPEEDCURE TPO)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー819)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製CGI403)等が挙げられる。
その他、2-メチル-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー907)、ベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー651)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー369)、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル〕-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製イルガキュアー127)、1-〔4-(4-ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕-2-メチル-2-(4-メチルフェニルスルホニル)プロパン-1-オン(Lamberti社製ESACURE 1001M)、ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド(LAMBSON社製SPEEDCURE BMS)、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、カンファーキノン等も使用可能である。」
5 甲5
甲5には、次の記載がある。
「[0058] 本実施形態の硬化性樹脂組成物にて接着した硬化体は、完全硬化させた後にリワーク(再利用)することが可能である。リワークの方法としては特に制限は無いが、貼り合わされた1種又は2種の被着体間に0.01~100Nの荷重を負荷することにより被着体同士を解体し、解体後の被着体を再利用することが可能となる。」
6 甲6
甲6には、次の記載がある。
(1)2頁
「
[図:0001413285000009.jpg]
」
(2)3頁
「
[図:0001413285000010.jpg]
」
7 甲7
甲7には、次の記載がある。
「【0102】
(C)成分
・UN9200:ポリカーボネートジオール系の二官能のウレタンアクリレート、根上工業(株)製の"アートレジンUN-9200A"。」
第6 当審合議体の判断
1 令和5年5月31日付けで通知した取消理由について
当審が令和5年5月31日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(新規性)本件発明1、2、5、6、8~11は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号の規定により特許を受けることができないものである。
(進歩性)本件発明1~11は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
2 甲1を主引用例とする場合について
(1)甲1に記載された発明
甲1の実施例7(【0058】の【表1】、【0052】、【0056】~【0057】及び【0059】)の液状組成物に着目するとともに、当該液状組成物について、【0001】の記載により「粘・接着剤として有用な放射線硬化性樹脂組成物」であることからすると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「成分Aとして、ウレタン(メタ)アクリレートであるUA-1を50重量部、
成分Bとして、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステルであるVis150Dを20重量部、
成分Cとして、N-ビニルカプロラクタムを5重量部、
重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製)であるLUCIRIN TPOを3重量部、
反応性希釈剤として、ノニルフェニルEO変性アクリレート(東亞合成(株)製)であるM113を21.4重量部、
その他として、リン系酸化防止剤 Sumilizer GP(住友化学工業(株)製)であるGPを0.3重量部、フェノール系酸化防止剤 Sumilizer GA-80 (住友化学工業(株)製)であるGA-80を0.3重量部の合計100重量部を配合処方して調整した、
粘・接着剤として有用な放射線硬化性樹脂組成物。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「成分Aとして、ウレタン(メタ)アクリレートであるUA-1」(以下「甲1発明のUA-1」ともいう。)は、甲1の【0052】によると、ポリプロピレングリコール及びイソホロンジイソシアネートを反応させ、次いで2-ヒドロキシエチルアクリレートを残留イソシアネート基濃度が1.63重量%以下から0.1重量%以下になった時まで反応させて得られた化合物であり、ポリプロピレングリコールの両端に、イソホロンジイソシアネート及び2-ヒドロキシエチルアクリレート由来のウレタンアクリレートを有する化合物であるから、本件発明1における「(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」に相当する。
また、甲1発明における「反応性希釈剤として、ノニルフェニルEO変性アクリレート(東亞合成(株)製)であるM113」(以下「甲1発明のM113」ともいう。)は、本件発明1の実施例1等においても用いている(本件特許明細書の段落【0093】、【0098】の【表1】参照。)市販の化合物であって、本件発明1における「(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物」「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含む」に相当する。
さらに、甲1発明における「重合開始剤として、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製)であるLUCIRIN TPO」は、本件発明1における「(C)成分:」「(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤」に相当する。
そして、甲1発明における「粘・接着剤として有用な放射線硬化性樹脂組成物」は、本件発明1における「活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物」に相当する。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。
<一致点>
「下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含む、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」
<相違点1>
本件発明1は、「分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない」ものであるのに対し、甲1発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点2>
本件発明1は、「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含」むものであるのに対し、甲1発明は、「成分Aとして、ウレタン(メタ)アクリレートであるUA-1を50重量部」と「反応性希釈剤として、ノニルフェニルEO変性アクリレート(東亞合成(株)製)であるM113を21.4重量部」を含むものである点
(イ)事案に鑑み相違点2から検討する。
a 甲1発明において、本件発明1の(A)成分に相当する「甲1発明のUA-1」及び本件発明1の(B)成分に相当する「甲1発明のM113」の配合量は、それぞれ、50重量部、21.4重量部であり、両者の合計を100重量%とした場合の前者及び後者の重量%は、それぞれ、50/(50+21.4)≒70重量%及び21.4/(50+21.4)≒30重量%であるから、本件発明1で特定される「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%」を充足せず、相違点2は実質的な相違点である。
b そして、上記(1)のとおり、甲1発明は、甲1の実施例7に基づいて認定した発明であること等を勘案すると、甲1発明のUA-1は、「成分(A)」(【請求項1】)に相当する化合物であり、その好ましい配合量について、甲1の段落【0028】に、組成物中に30~70重量%、特に45~70重量%の範囲で配合するのが、組成物の塗工性、硬化させた後の粘・接着剤の接着特性、加工性、柔軟性、長期信頼性の点で好ましいとされている。
また、甲1発明のUA-1の配合量は、甲1発明の放射線硬化性樹脂組成物の全体が「合計100重量部」であることから、50重量%であり、甲1において塗工性等の観点から最も好ましいと説明されている「45~70重量%」の範囲内で選ばれていることが理解できる。
c 甲1発明のM113は、必須成分(A)、(B)、(C)、(D)の他に必要により併用される成分(段落【0039】)に相当する化合物であり、その好ましい配合量について、甲1の段落【0045】に、接着力等の観点から、好ましくは組成物中0~70重量%であり、さらに好ましくは0~40重量%であることが記載されている。
また、甲1発明のM113の配合量は、甲1発明の放射線硬化性樹脂組成物の全体が「合計100重量部」であることから、21.4重量%であり、甲1において接着力等の観点から最も好ましいと説明されている「0~40重量%」の範囲内で選ばれていることが理解できる。
d 成分(A)と必須成分(A)、(B)、(C)、(D)の他に必要により併用される成分の配合量(以下「任意成分」ともいう。)について、甲1には、それぞれ、組成物全体に対する配合割合に関する記載があるだけで(上記a、b)、成分(A)と任意成分の配合量の合計に対する成分(A)あるいは任意成分の割合に関する記載はない。
e また、甲1発明のUA-1及び甲1発明のM113の配合量が、それぞれ、成分(A)と任意成分の好ましい範囲である「45~70重量%」(上記a)及び「0~40重量%」(上記b)から選ばれていることから、仮に、これらの数値範囲内で甲1発明のUA-1及び甲1発明のM113の配合量を変更したとしても、両者の合計に対する前者あるいは後者の比率の取り得る範囲は、上記aと同様の計算をすると、それぞれ、53~100%、0~47%であり、相違点2に係る事項を充足しえない。
f 以上によれば、甲1には、甲1発明のUA-1及び甲1発明のM113の配合量の合計に対する甲1発明のUA-1の配合量あるいは甲1発明のM113の配合量の割合に着目し、この配合割合を変更することを動機づけるような記載や示唆はないし、仮に、甲1発明のUA-1及び甲1発明のM113の好ましいとされる配合量に基づいて配合量を変更したとしても、相違点2に係る事項を充足しないから、当業者といえども、甲1発明及び甲1の記載に基づいて、UA-1及び甲1発明のM113の配合量を変更して、相違点2に係る事項を充足するものとすることは容易でない。
g また、甲4、5にも、甲1発明のUA-1及び甲1発明のM113の配合量を変更して、相違点2に係る事項を充足するものとすることを動機づけるような記載や示唆はない。
(ウ)そうすると、相違点1について検討するまでもなく、本件件明1は、甲1に記載された発明と甲1、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ)また、本件発明1は、相違点1、2に係る構成を備えることとあいまって、「低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れたものとすることができる。」(本件特許明細書の段落【0011】)という効果を奏するものである。
(オ)したがって、本件件明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明と甲1、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲1発明とを対比する。
本件発明2は、本件発明1において、「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含む」を「前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である」に変更した発明に該当するが、この変更により、上記ア(ア)の<相違点2>が解消するものではない。
(イ)したがって、本件件明2は、上記ア(イ)で検討した本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明と甲1、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明3~11について
本件発明3~11は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当する。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明3~11も上記ア(イ)で検討した本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明と甲1、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~11は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明と甲1、甲4、及び、甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
3 甲2を主引用例とする場合について
(1)甲2に記載された発明
甲2の実施例1及び3(【0037】の【表2】、【0036】、【0038】及び【0040】)には、それぞれ以下の発明(以下、それぞれ「甲2a発明」及び「甲2b発明」という。)が記載されているものと認められる。
<甲2a発明>
「(A)UN9200A:アートレジンUN9200A、ウレタンアクリレート、根上工業(株)製を30重量部、
(B)M110:アロニックスM110、パラクミルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート〔式(1)において、R1 が水素原子で、R2 がエチレン基で、nが1の化合物〕、東亞合成(株)製を40重量部、
[図:0001413285000011.jpg]
(C)HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート、三菱ガス化学(株)製を30重量部、
(D)ルシリンTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製を1重量部を配合して製造した光硬化型接着剤組成物。」
<甲2b発明>
「(A)UN9200A:アートレジンUN9200A、ウレタンアクリレート、根上工業(株)製を20重量部、
(B)M110:アロニックスM110、パラクミルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート〔式(1)において、R1 が水素原子で、R2 がエチレン基で、nが1の化合物〕、東亞合成(株)製を70重量部、
[図:0001413285000012.jpg]
(C)M5700:アロニックスM5700、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、東亞合成(株)製を10重量部、
(D)Irg651:イルガキュア651、ベンジルジメチルケタール、チバガイギー社製を2重量部を配合して製造した光硬化型接着剤組成物。」
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)甲2a発明との対比・判断
a 本件発明1と甲2a発明とを対比する。
(a)甲7の【0102】によれば、「アートレジンUN-9200A」は、ポリカーボネートジオール系の二官能のウレタンアクリレートであるから、甲2a発明における「(A)UN9200A:アートレジンUN9200A、ウレタンアクリレート、根上工業(株)製」(以下「甲2a発明のUN9200A」ともいう。)は、本件発明1における「(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」に相当する。
(b)甲2a発明における「(B)M110:アロニックスM110、パラクミルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート」は、本件発明1における「(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物」に相当する。
(c)甲2a発明における「(D)ルシリンTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、BASF社製」は、本件発明1における「(C)成分:」「(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤」に相当する。
(d)甲2a発明における「光硬化型接着剤組成物」と本件発明1における「活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物」とは、「活性エネルギー線硬化型組成物」である点で共通する。
してみると、本件発明1と甲2a発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。
<一致点>
「下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
を含む、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物。」
<相違点2a-1>
本件発明1は、「分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない」ものであるのに対し、甲2a発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点2a-2>
組成物について、本件発明1は、「粘着剤組成物」であるのに対し、甲2a発明は、「接着剤組成物」である点。
<相違点2a-3>
(B)成分について、本件発明1は、「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物」を含むと特定されているのに対し、甲2a発明はそのような特定を備えていない点
<相違点2a-4>
本件発明1は、「(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」と「(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物」の配合量について、「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含み」と特定されているのに対し、甲2a発明は、(A)UN9200A:アートレジンUN9200A、ウレタンアクリレート、根上工業(株)製を30重量部、(B)M110:アロニックスM110、パラクミルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート〔式(1)において、R1 が水素原子で、R2 がエチレン基で、nが1の化合物〕、東亞合成(株)製を40重量部含むものである点
b 事案に鑑み相違点2a-3から検討する。
(a)上記(1)のとおり、甲2a発明は、甲2の実施例1に基づいて認定した発明であるから、甲2a発明の「(B)M110:アロニックスM110、パラクミルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート〔式(1)において、R1 が水素原子で、R2 がエチレン基で、nが1の化合物〕、東亞合成(株)製
[図:0001413285000013.jpg]
」(以下「甲2a発明のM110」ともいう。)は、甲2の【請求項1】の「(B)下記一般式(1)で表される(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物に対応する化合物
[図:0001413285000014.jpg]
」に相当する化合物である。
(b)一般式(1)で表される化学構造式には、オキシアルキレン単位の繰り返し数について「1~10の整数である」こと(甲2の【請求項1】、段落【0015】)、及び、そのオキシアルキレン単位の繰り返し数が1である場合に該当する実施例1~3が記載されている。
一方、甲2には一般式(1)のオキシレン単位の繰り返し数が2以上である化合物を用いた具体的は配合例が記載されておらず、R1やR2ではなくオキシアルキレン単位の繰り返し数に着目しその値を2以上に限定することを動機づけるような具体的な記載、例えば、オキシアルキレン単位の繰り返し数について、1よりも2以上の方が好ましい旨の記載等はない。また、オキシアルキレン単位の繰り返し数について、2以上とした場合に再剥離用活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物が得られるかどうかも予測できない。
(c)そうすると、当業者といえども、甲2の記載に基づいて甲2a発明において、甲2a発明のM110におけるオキシアルキレン単位の繰り返し数に着目し、これを2以上に変更することによって、相違点2a-3に係る事項を充足するようにすることを容易になし得たとは認められない。
(d)また、甲4~6にも、甲2a発明において、相違点2a-3に係る事項を充足するようにすることを動機づけるような記載や示唆はない。
c 相違点2a-4について検討する。
(a)甲2a発明の(A)UN9200A及び(B)M110の配合量は、それぞれ、30重量部、40重量部であり、両者の合計を100重量%とした場合の前者及び後者の割合は、それぞれ、43%及び57%であるから、本件発明1の「(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%」を充足せず、相違点2a-4は、実質的な相違点である。
(b)上記(1)のとおり、甲2a発明は、甲2の実施例1に基づいて認定した発明であること等を勘案すると、甲2a発明のUN9200Aは、甲2の【請求項1】の「(A)ウレタン(メタ)アクリレート」(以下「甲2の(A)成分」ともいう。)に相当する化合物であり、甲2a発明のM110は、甲2の【請求項1】の「(B)下記一般式(1)又は/及び式(2)で表される(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物」(以下「甲2の(B)成分」ともいう。)に相当する化合物である。
(c)また、甲2の(A)成分の好ましい配合量について、甲2の段落【0012】に、(A)、(B)及び(C)成分の合計量当り、又はこれら以外の後記する光硬化性化合物をさらに配合する場合は、(A)、(B)、(C)成分及び光硬化性化合物(尚、本明細書では、これらを総称して硬化性成分という)の合計量当り、5~60重量%であり、好ましくは10~50重量%である。5重量%未満の場合は、硬化物の架橋割合が少なくなるため耐久性に劣る。又、60重量%を超えると、組成物の粘度が高くなるため塗工等の作業性が悪くなると記載されている。
また、甲2a発明のUN9200Aの配合量は、甲2a発明の硬化性成分の合計が100重量部であることから、30重量%であり、甲1において塗工性等の観点から最も好ましいと説明されている「10~50重量%」の範囲内で選ばれていることが理解できる。
(d)また、甲2の(B)成分の好ましい配合量について、甲2の段落【0018】には、(B)成分の組成物中の配合割合は、硬化性成分の合計量当り10~90重量%であり、好ましくは20~80重量%であり、この割合が10重量%より少ない場合は、(B)成分に起因する硬化物の柔軟性及び伸び率が不充分となり、90重量%を超えると、耐久性及び接着性が低下することが記載されている。
また、甲2a発明のM110の配合量は、甲2a発明の硬化性成分の合計が100重量部であることから、40重量%であり、甲2において柔軟性等の観点から最も好ましいと説明されている「20~80重量%」の範囲内で選ばれていることが理解できる。
(e)甲2の(A)成分と甲2の(B)成分の配合量について、甲2には、それぞれ、硬化性成分((A)、(B)、(C)成分及び光硬化性化合物)の合計量あたりの割合に関する記載があるだけで(上記(b)、(c))、甲2の(A)成分と甲2の(B)成分の配合量の合計に対する甲2の(A)成分あるいは甲2の(B)成分の割合に関する記載はなく、甲2の(A)成分と甲2の(B)成分の配合量を両者の合計に対して特定の配合割合の範囲とする動機付けはない。
(f)また、甲2a発明のUN9200A及び甲2a発明のM110の配合量が、それぞれ、甲2の(A)成分と甲2の(B)成分の好ましい範囲である「10~50重量%」(上記(b))及び「20~80重量%」(上記(c))から選ばれていることから、仮に、これらの数値範囲内で甲2a発明のUN9200A及び甲2a発明のM110の配合量を変更した場合における、両者の合計に対する前者あるいは後者の比率の取り得る範囲を計算すると、それぞれ、11~71重量%、29~89重量%となる。しかしながら、これらの範囲の中から、より狭い範囲を特定する本件発明1の「(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%」の範囲を選択する動機づけとなるような記載や示唆は甲2にない。
(g)以上によれば、甲2には、甲2a発明のUN9200A及び甲2a発明のM110の配合量の合計に対する甲2a発明のUN9200Aの配合量あるいは甲2a発明のM110の配合量の割合に着目し、この配合割合を変更することを動機づけるような記載や示唆はないし、仮に、甲2a発明のUN9200A及び甲2a発明のM110の配合量を、甲2の記載に基づいて変更したとしても、相違点2に係る事項を充足し得るように変更することを動機づけるような記載や示唆はないから、当業者といえども、甲2a発明のUN9200A及び甲2a発明のM110の配合量を変更して、相違点2a-4に係る事項を充足するものとすることを容易になし得たとはいえない。
(h)また、甲4~6にも、甲2a発明のUN9200A及び甲2a発明のM110の配合量を変更して、相違点2a-4に係る事項を充足するものとすることを動機づけるような記載や示唆はない。
d そうすると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件件明1は、甲2a発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
e また、本件発明1は、相違点2a-1~2a-4に係る構成を備えることとあいまって、「低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れたものとすることができる。」(本件特許明細書の段落【0011】)という効果を奏するものである。
f したがって、本件件明1は、甲2a発明ではないし、甲2a発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(イ)甲2b発明との対比・判断
a 本件発明1と甲2b発明とを対比すると、前記(ア)a(a)、(b)及び(d)について同様である。
また、甲2b発明の(A)UN9200A及び(B)M110の配合量は、それぞれ、20重量部、70重量部であり、両者の合計を100重量%とした場合の前者及び後者の割合は、それぞれ、約22%及び約78%であるから、本件発明1の「(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%」を充足する。
また、甲2b発明における「Irg651:イルガキュア651、ベンジルジメチルケタール、チバガイギー社製」は、本件発明1における「(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤」と、光重合開始剤である点で共通する。
してみると、本件発明1と甲2b発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。
<一致点>
「下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:光重合開始剤を含み、
前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含む、活性エネルギー線硬化型組成物。」
<相違点2b-1>
本件発明1は、「分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない」ものであるのに対し、甲2b発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点2b-2>
組成物について、本件発明1は、「粘着剤組成物」であるのに対し、甲2b発明は、「接着剤組成物」である点。
<相違点2b-3>
光重合開始剤について、本件発明1は、「(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む」ものであるのに対し、甲2b発明は、「Irg651:イルガキュア651、ベンジルジメチルケタール、チバガイギー社製」である点。
<相違点2b-4>
(B)成分について、本件発明1は、「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物」を含むと特定されているのに対し、甲2b発明はそのような特定を備えていない点
b 相違点2b-4は、実質的に相違点2a-3と同じものである。
そうすると、上記(ア)で説示したものと同様の理由により、本件件明1は、甲2b発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件件明1は、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件発明2について
(ア)甲2a発明との対比・判断
a 本件発明2と甲2a発明とを対比する。
本件発明2は、本件発明1において、「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含む」を「前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である」に変更した発明に該当することを踏まえると、その一致点、相違点は、上記ア(ア)aの一致点、相違点2a-1、相違点2a-2、及び、下記の相違点2a-3’、相違点2a-4’である。
<相違点2a-3’>
(B)成分について、本件発明2は、「前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物」を含むと特定されているのに対し、甲2a発明はそのような特定を備えていない点
<相違点2a-4’>
本件発明2は、「(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」と「(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物」の配合量について、「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含み」と特定されているのに対し、甲2a発明は、(A)UN9200A:アートレジンUN9200A、ウレタンアクリレート、根上工業(株)製を30重量部、(B)M110:アロニックスM110、パラクミルフェノールエチレンオキサイド1モル変性アクリレート〔式(1)において、R1 が水素原子で、R2 がエチレン基で、nが1の化合物〕、東亞合成(株)製を40重量部含むものである点
b 事案に鑑み相違点2a-3’から検討する。
(a)上記(1)のとおり、甲2a発明は、甲2の実施例1に基づいて認定した発明であるから、甲2a発明のM110は、甲2の【請求項1】の(B)下記一般式(1)で表される(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物に対応する化合物
[図:0001413285000015.jpg]
から選ばれた化合物であるから、仮に、甲2a発明のM110を別の化合物に変更することを着想し得たとしても、その化合物は、当然上記一般式(1)で表される(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物の中から選ぶことを要するものと当業者は理解するが、当該化合物の中には、本件発明2の「(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物」「前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物」(以下「本件発明2の(B)成分」ともいう。)に該当する化合物が1つも含まれていない。
そうすると、当業者といえども、甲2a発明のM110を変更して、相違点相違点2a-3’に係る事項を充足するものとすることを容易になし得たとはいえない。
(b)また、甲4~6にも、甲2a発明のM110を本件発明2の(B)成分に変更することを動機づける記載も示唆もない。
c したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件件明2は、甲2a発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
d また、本件発明2は、相違点2a-1~2a-4’に係る構成を備えることとあいまって、「低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れたものとすることができる。」(本件特許明細書の段落【0011】)という効果を奏するものである。
e したがって、本件件明2は、甲2a発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)甲2b発明との対比・判断
本件発明2は、本件発明1において、「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含む」を「前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である」に変更した発明に該当することを踏まえると、その一致点、相違点は、上記ア(イ)aの一致点、相違点2b-1、相違点2b-2、相違点2b-3、及び、下記の相違点2b-4’である。
<相違点2b-4’>
(B)成分について、本件発明2は、「前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物」を含むと特定されているのに対し、甲2b発明はそのような特定を備えていない点
b 相違点2b-4’は、実質的に相違点2a-3’と同じものである。
そうすると、上記(ア)甲2a発明との対比・判断で説示したものと同様の理由により、本件件明2は、甲2b発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)小括
したがって、本件件明2は、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明3~11について
本件発明3~11は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当する。
また、上記アのとおり、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとも、甲2に記載された発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明3~11も本件発明1と同様の理由により甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~11は、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明と甲2、4~6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
4 甲3を主引用例とする場合について
(1)甲3に記載された発明
甲3の実施例5(【0080】の【表2】、【0068】)に着目し、請求項1の記載に即して表記すると、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲3発明>
「下記(A)~(D)からなる、光学シート形成用紫外線硬化型接着剤。
(A)A-1であるウレタンアクリレートを35重量部、
(B)IBX-Aであるイソボニルアクリレートを20重量部、
(C)M-111であるノニルフェノキシエチレングリコールアクリレートを44.5重量部
(D)光重合開始剤として、TPOである2,4,6―トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを0.5重量部」
(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明における「(A)A-1であるウレタンアクリレート」は、甲3の【0068】、【0074】の【表1】及び【0011】によれば、PTMG(ポリテトラメチレングリコール)及びIPDI(イソホロンジイソシアネート)を反応させ、その後2-ヒドロキシエチルアクリレートを反応させて得られた化合物であって、2個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物であると解されるから、本件発明1における「(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物」に相当する。
さらに、甲3発明における「(D)光重合開始剤として、TPOである2,4,6―トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド」は、本件発明1における「(C)成分:」「(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤」に相当する。
そして、甲3発明における「紫外線硬化型接着剤」は組成物であるといえるから、甲3発明における「紫外線硬化型接着剤」と本件発明1における「活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物」とは、「活性エネルギー線硬化型組成物」である点で共通する。
してみると、本件発明1と甲3発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。
<一致点>
「下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
を含む、活性エネルギー線硬化型組成物。」
<相違点3-1>
本件発明1は、「分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない」ものであるのに対し、甲3発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点3-2>
本件発明1は、「粘着剤組成物」であるのに対し、甲3発明は、「接着剤」である点。
<相違点3-3>
本件発明1は、「(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物」「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物」を含むと特定されているのに対し、甲3発明はそのような特定を備えていない点
<相違点3-4>
本件発明1は、「(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物」「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物」の配合量について、「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含み」と特定されているのに対し、甲3発明はそのような特定を備えていない点
(イ)事案に鑑み相違点3-3から検討する。
a 上記(1)のとおり、甲3発明は、甲3の実施例5に基づいて認定した発明であるから、甲3発明の「(A)A-1であるウレタンアクリレート」(以下「甲3発明のA-1」ともいう。)は、甲3の【請求項1】の「(A)ポリエーテルポリオール(a1)、脂環式ポリイソシアネート(a2)および水酸基含有(メタ)アクリレート(a3)から形成されるウレタン(メタ)アクリレート」(以下「甲3の(A)成分」ともいう。)に相当する化合物であり、また、甲3発明の「(C)M-111であるノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート」(以下「甲3発明のM-111」ともいう。)は、甲3の【請求項1】の「(C)下記一般式(1)で示される単官能(メタ)アクリレート
R-Ph-O(CH2CH2O)nCOCR’=CH2 (1)
(式中、RはHまたは炭素数1~12の1価の脂肪族炭化水素基、R’はHまたはメチル基、Phはフェニレン基、nは1~4の整数を表す。)」(以下「甲3の(C)成分」ともいう。)に該当する物質である。
b 甲3の(C)成分に係る一般式(1)には、そのオキシエチレン単位(CH2CH2O)の繰り返し数(n)の他にもR及びR’の部分にも選択肢が存在する。また、オキシエチレン単位の繰り返し数について「1~4の整数を表す」こと(甲3の【請求項1】)、「好ましくは1~2」であること(段落【0025】)、及び、そのオキシエチレン単位の繰り返し数が1である場合に該当する実施例1~5が記載されている。
また、甲3発明のM-111のオキシエチレン単位の繰り返し数は1であるから、甲3において最も好ましいとされている「1~2」の範囲内で選ばれていることが理解できる。
c 一方、甲3には、甲3発明のM-111のRやR’ではなくオキシエチレン単位の繰り返し数に着目しその値を変更(増加あるいは減少)することを動機づけるような記載や示唆はない。
また、仮に甲3発明のM-111のオキシエチレン単位の繰り返し数を増加して2以上にすることを着想し得たとしても、その値を「1~2」の範囲外、例えば3に変更した態様は、1の場合(甲3発明)よりも劣る態様であると当業者は予測する。そして、「2以上」という範囲には、このような値が含まれている。
d そうすると、当業者といえども、甲3の記載に基づいて甲3発明において、甲3発明のM111におけるオキシアルキレン単位の繰り返し数に着目し、これを2以上に変更することによって、相違点3-3に係る事項を充足するようにすることを容易になし得たとは認められない。
e また、甲4、5にも、甲3発明において、相違点3-3に係る事項を充足するようにすることを動機づけるような記載や示唆はない。
(ウ)相違点3-4について検討する。
a 甲3には、甲3の(A)成分、及び、甲3の(C)成分の配合量について、「(A)~(D)の合計重量に基づく重量割合が、(A)20~69%、(B)10~50%、(C)20~60%および(D)0.3~0.9%である請求項1または2記載の接着剤。」、「本発明の接着剤における(A)、(B)、(C)および(D)の重量割合は、(A)~(D)の合計重量に基づいて、上記各成分の特性の観点から、好ましくは(A)が20~69%、(B)が10~50%、(C)が20~60%、および(D)が0.3~0.9%(さらに好ましくは0.4~0.8%、とくに好ましくは0.5~0.7%)である。」(【請求項3】、段落【0028】)と記載されている。
また、甲3発明では、「(A)A-1であるウレタンアクリレートを35重量部」を配合していることから、「(A)~(D)の合計重量に基づく重量割合」が35重量%であり、好ましいと説明されている「20~69%」の範囲内で選ばれていることが理解でき、また、「(C)M-111であるノニルフェノキシエチレングリコールアクリレートを44.5重量部」を配合していることから、「(A)~(D)の合計重量に基づく重量割合」が44.5重量%であり、好ましいと説明されている「20~60%」の範囲内で選ばれていることが理解できる。
b 甲3発明のA-1及び甲3発明のM-111の配合量は、それぞれ、35重量部、44.5重量部であり、両者の合計に対する前者あるいは後者の割合は、それぞれ、44%、56%である。
c 甲3の(A)成分、及び、甲3の(C)成分の配合量について、甲3には、それぞれ、(A)~(D)の合計重量に基づく重量割合に関する記載があるだけで(上記(a))、(A)成分と(C)成分の配合量の合計に対する(A)成分あるいは(C)成分の割合に関する記載はない。
d また、甲3発明のA-1及び甲3発明のM-111の配合量が、それぞれ、甲3の(A)成分、及び、甲3の(C)成分の好ましい範囲である「20~69%」及び「20~60%」(上記(a))から選ばれていることから、仮に、これらの数値範囲内で甲3発明のA-1及び甲3発明のM-111の配合量を変更した場合における、両者の合計に対する前者あるいは後者の比率の取り得る範囲を計算すると、それぞれ、25~78%、22~75%となるが、その中から相違点3-4に係る事項を充足する範囲を選択する動機づけとなるような記載や示唆は甲3にない。
e 以上によれば、甲3には、甲3発明のA-1及び甲3発明のM-111の配合量の合計に対する甲3発明のA-1の配合量あるいは甲3発明のM-111の配合量の割合に着目し、これを変更することを動機づけるような記載や示唆はないし、仮に、甲3発明のA-1及び甲3発明のM-111の配合量を変更することを着想し得たとしても、相違点3-4に係る事項を充足し得るように変更することを動機づけるような記載や示唆がないといえるから、当業者といえども、甲3発明のA-1及び甲3発明のM-111の配合量を変更して、相違点3-4に係る事項を充足するものとすることを容易になし得たとはいえない。
f また、甲4、5にも、甲3発明のA-1及び甲3発明のM-111の配合量を変更して、相違点3-4に係る事項を充足するものとすることを動機づけるような記載も示唆もない。
(エ)したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件件明1は、甲3発明と甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(オ)また、本件発明1は、相違点3-1~3-4に係る構成を備えることとあいまって、「低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れたものとすることができる。」(本件特許明細書の段落【0011】)という効果を奏するものである。
(カ)したがって、本件件明1は、甲3発明と甲3~5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2について
(ア)本件発明2と甲3発明とを対比する。
本件発明2は、本件発明1において、「前記(B)成分が、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、繰り返し数2以上のオキシアルキレン単位を有する化合物を含む」を「前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である」に変更した発明に該当する。
また、甲3発明における「(C)M-111であるノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート」は、本件発明2における「炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン単位を有する化合物」に相当する。
以上及び上記ア(ア)を踏まえると、本件発明1と甲3発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。
<一致点>
「下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有する活性エネルギー線硬化型組成物であって、
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
前記(B)成分が、炭素数4~12の長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン基を有する化合物である、活性エネルギー線硬化型組成物。」
<相違点3-1>
本件発明2は、「分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない」ものであるのに対し、甲3発明は、そのような特定がされていない点。
<相違点3-2>
本件発明2は、「粘着剤組成物」であるのに対し、甲3発明は、「接着剤」である点。
<相違点3-5>
本件発明2は、「前記(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含」むものであるのに対し、甲3発明は、「(A)A-1であるウレタンアクリレートを35重量部」と「(C)M-111であるノニルフェノキシエチレングリコールアクリレートを44.5重量部」を含むものであるから、本件発明1の(A)成分及び(B)成分に相当する成分の合計量100重量%中に、(A)成分に相当する成分(A-1であるウレタンアクリレート)を44重量%及び(B)成分に相当する成分(甲3発明のM111)を56重量%含むものである点
(イ)事案に鑑み相違点3-5から検討する。
上記ア(イ)aで説示したとおり、甲3発明のA-1は、甲3の(A)成分に相当する化合物であり、また、甲3発明のM-111は、甲3の(C)成分に相当する化合物である。
また、上記ア(ウ)cで説示したとおり、甲3には、甲3の(A)成分、及び、甲3の(C)成分の配合量について、これらの合計に対する(A)成分あるいは(C)成分の割合に関する記載はない。に着目しこれを特定することについても記載も示唆もない。
そうすると、当業者といえども甲3発明のM111の配合量について、甲3発明のA-1との合計に対する甲3発明のM-111の割合に着目し、その値を相違点3-5に係る事項を充足するようにすることを容易になし得たとはいえない。
(ウ)したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件件明2は、甲3発明と甲3、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(エ)また、本件発明2は、相違点3-1、3-2、3-5に係る構成を備えることとあいまって、「低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れたものとすることができる。」(本件特許明細書の段落【0011】)という効果を奏するものである。
(オ)したがって、本件件明2は、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明と甲3、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件発明3~11について
本件発明3~11は、本件発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に該当する。
そして、上記アのとおり、本件発明1は、甲3に記載された発明はないし、甲3に記載された発明と甲3、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明3~11も上記ア又はイと同様の理由により甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明と甲3、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明1~11は、甲3に記載された発明ではないし、甲3に記載された発明と甲3、4、5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
第7 取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由について
取消理由通知で採用しなかった特許異議の申立理由は、申立ての理由4(明確性)及び申立ての理由5(サポート要件)に係る特許である(上記第4参照。)。
1 申立ての理由4(明確性)について
(1)申立ての理由の概要
申立ての理由4は、請求項8~11に係る特許を対象とするものであり、その概要は、本件発明8の発明を特定するための事項である「組成物の硬化膜が、膜厚40μmであって、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム、被着体としてガラス板を用いた時、23℃、50%RHの条件における180°剥離強度(剥離速度:300mm/min)が0.01~5.0N/25mmである」は、達成すべき結果を特定するものであり、これを実現するために、本件特許発明8に係る活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物が具体的にどのような構成を有するのかが不明であるから、本件発明8、及び、これを直接又は間接的に引用する本件発明9~11は、明確ではないというものである。
(2)判断手法
一般に「法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,仮に,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。」とされているところ〔知財高裁平成21年(行ケ)第10434号、平成22年8月31日判決言渡。〕、このような観点に基づいて、本件特許の明確性要件の適否を以下に検討する。
(3)当審の判断
本件発明8は、その請求項8に記載されている事項によって特定されるとおりのものであって、それが仮に申立人の主張する「達成すべき結果」が特定されたものであったとしても、特許請求の範囲の記載としては、その意味を明確に理解することができ、例えば複数の解釈か可能であってそのいずれと解すべきか不明な事項が含まれている等、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえるものはない。
また、請求項8が直接又は間接的に引用する請求項1及び3~7の記載も明確である。
したがって、本件発明8~11に係る特許を、申立理由4によって取り消すべきものとすることはできない。
(4)申立人の主張について
申立人は、「本件特許発明8に係る活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物が具体的にどのような構成を有するのかについては不明である」(特許異議申立書50頁13~14行)と主張するが、本件発明8は、その請求項8に記載された事項によって特定されるとおりのものであり、組成物の構成については、請求項1及び3~7のいずれか1項に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、請求項1及び3~7の記載は明確である。なお、申立人も、請求項1及び3~7に対して明確性要件違反を主張していない。
したがって、主張は採用できない。
2 申立ての理由5(サポート要件)について
(1)申立ての理由の概要
申立ての理由5の概要は、本件発明が解決しようとする課題は、低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れる活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を見出すことである(【0009】)が、具体例は、実施例1~9のみであり、本特許発明に包含される全ての硬化型粘着剤組成物が、本件発明の課題を解決しうるのかどうかは不明であるというものである。
(2)判断手法
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである〔知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。
(3)本件特許明細書の記載
本件特許明細書には以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、組成物が低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れる活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するためには、多官能不飽和化合物、芳香族単官能不飽和化合物及び高分子量光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物が、低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れることを見出し、本発明を完成した。」
「【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、下記(A)、(B)及び(C)成分を必須成分として含有し、分子内にメルカプト基を有する化合物を含有しない活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物(以下、単に「組成物」ということもある)に関する。
・(A)成分:ウレタン(メタ)アクリレートを含む2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物
・(B)成分:芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有し、かつ、オキシアルキレン単位を有する化合物
・(C)成分:(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤又は/及び(C-2)アシルホスフィンオキサイド系化合物を必須成分として含む光重合開始剤
以下、(A)、(B)及び(C)成分、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物及び用途について説明する。
【0013】
1.(A)成分
(A)成分は、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物である。
(A)成分を含むことにより、組成物の硬化膜が再剥離性に優れるものとなる。
・・・
【0020】
(A)成分は、1種のみを使用しても、2種以上を併用しても良い。
(A)成分の単独重合体のガラス転移温度(以下、「Tg」という)としては、-80~60℃の範囲であることが好ましく、-60~40℃の範囲であることがより好ましい。
尚、本発明においてTgとは、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分の昇温速度で測定した値を意味し、△T-温度曲線においてガラス転移温度中間点(Tmg)における値を意味する。
(A)成分としては、ウレタン(メタ)アクリレート〔以下、「(A-1)成分」という〕が、粘着力を向上させることができるという理由で好ましい。
以下、(A-1)成分について詳細に説明する。」
「【0030】
2.(B)成分
(B)成分は、芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物である。
(B)成分を含むことにより、組成物の硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れるものとなる。
(B)成分は、芳香族基と1個のエチレン性不飽和基を有する化合物であれば種々の化合物を使用することができ、単官能(メタ)アクリレートが好ましい。
単官能(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、及びノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記における、アルキレンオキサイド付加物の例としては、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0031】
(B)成分としては、オキシアルキレン単位を有する化合物が粘着力に優れる点で好ましい。
当該化合物の具体例としては、フェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート、及びノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
当該化合物のオキシアルキレン単位の繰り返し数としては、1以上が好ましく、繰り返し数1~5の化合物がより好ましい。
さらに、(B)成分としては、アルキル基及びオキシアルキレン単位を有する化合物が、表面張力が低く、組成物が塗工性に優れるものとなる点でより好ましい。
アルキル基としては、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数4~12の長鎖アルキル基がより好ましい。
さらに又、長鎖アルキル基及び繰り返し数1以上のオキシアルキレン単位を有する化合物が組成物の塗工性に優れる点でより好ましい。当該化合物の具体例としては、ノニルフェノールアルキレンオキサイド付加物の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
(B)成分の単独重合体のTgとしては、-50~40℃の範囲であることが好ましく、-30~20℃の範囲であることがより好ましい。
【0033】
(A)及び(B)成分の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、後記する(B)成分以外の1個のエチレン性不飽和基を有する化合物〔以下、「(D)成分」という〕を配合する場合は、(A)、(B)及び(D)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を5~50重量%及び(B)成分を50~95重量%含むことが好ましく、より好ましくは(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%である。
(A)及び(B)成分の含有割合を前記した範囲とすることで、組成物の塗工性及び硬化膜の粘着力に優れるものとすることができる点で好ましい。
尚、本発明において、硬化性成分とは、活性エネルギー線により硬化する成分であり、(A)成分及び(B)成分を意味し、後記する(D)成分を配合する場合は、(A)成分、(B)成分及び(D)成分を意味する。」
「【0034】
3.(C)成分
(C)成分は、(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物を除く分子量300以上の光重合開始剤〔以下、「(C-1)成分」という〕又は/及び(C-1)アシルホスフィンオキサイド系化合物〔以下、「(C-2)成分」という〕を必須成分として含む光重合開始剤である。
本発明において、(C)成分を使用することにより、組成物の硬化性に優れ、さらに得られる硬化膜の低臭気性に優れる。さらに、硬化膜の光安定性に優れ着色が少ない点で、(C-1)成分が好ましい。」
「【実施例】
【0090】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。
尚、以下において、「部」とは重量部を意味する。
【0091】
1.実施例1~同9、比較例1~同4
1)活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物の製造
表1に示す化合物を表1及び表2に示す割合で撹拌・混合し、活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。
得られた組成物を使用し、後記する評価を行った。それらの結果を表3に示す。
尚、表1及び表2における数字は部数を意味する。
又、表1及び表2における略号は下記を意味する。
【0092】
(1)(A)成分
・M1200:無黄変型ポリエステル骨格ウレタンアクリレート(Mw4,500)、東亞合成(株)製「アロニックスM-1200」(商品名)
・UN6200:無黄変型ポリエーテル骨格ウレタンアクリレート(Mw6,500)、根上工業(株)製「アートレジンUN-6200」(商品名)
・UN353:無黄変型ポリエステル骨格ウレタンアクリレート(Mw5,000)、根上工業(株)製「アートレジンUN-353」(商品名)
・UN7600:無黄変型ポリエステル骨格ウレタンアクリレート(Mw11,500)、根上工業(株)製「アートレジンUN-7600」(商品名)
・OT1001:無黄変型ポリエステル骨格ウレタンアクリレート(Mw40,000)のイソボルニルアクリレート(以下、「IBXA」という)50重量%希釈品、東亞合成(株)製「アロニックスOT-1001」(商品名)。尚、表2においては、(A)成分に該当するウレタンアクリレートと(D)成分に該当するIBXAを分けて記載している。
【0093】
(2)(B)成分
・M111:ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(n=1)アクリレート、液表面張力=35.8mN/m、東亞合成(株)製「アロニックスM-111」(商品名)
・M113:ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(n=4)アクリレート、液表面張力=35.7mN/m、東亞合成(株)製「アロニックスM-113」(商品名)
・M101A:フェノールエチレンオキサイド変性(n=2)アクリレート、液表面張力=44.6mN/m、東亞合成(株)製「アロニックスM-101A」(商品名)
【0094】
(3)(C)成分
・E-ONE:ポリ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン-1-オン}、IGM Resins社製「ESACURE ONE」(商品名)
・KIP160:2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)フェノキシ〕フェニル}-2-メチルプロパノン、IGM Resins社製「ESACURE KIP-160」(商品名)
・SBPI718:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、双邦實業社製「SB-PI 718」(商品名)
・SBPI719:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、双邦實業社製「SB-PI 719」(商品名)
・・・
【0097】
【表1】
[図:0001413285000016.jpg]
・・・
【0106】
【表3】
[図:0001413285000017.jpg]
」
(4)当審の判断
ア 本件発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の段落【0009】の記載によれば、「組成物が低臭気で、低エネルギー照射条件においても硬化性に優れ、得られる硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れる活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物」を提供することであると認められる。
イ また、上記課題を解決するための手段は、本件特許明細書の段落【0010】の記載によれば、「多官能不飽和化合物、芳香族単官能不飽和化合物及び高分子量光重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物」とすることである。
ウ また、上記組成物について、(A)成分(エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物)を含むことにより、組成物の硬化膜が再剥離性に優れるものとなること(段落【0013】)、(A)成分としては、ウレタン(メタ)アクリレートが、粘着力を向上させることができるという理由で好ましいこと(段落【0020】)、(B)成分(芳香族基及び1個のエチレン性不飽和基を有する化合物)を含むことにより、組成物の硬化膜が粘着力及び再剥離性に優れるものとなること(段落【0030】)、(B)成分としては、オキシアルキレン単位を有する化合物が粘着力に優れる点で好ましいこと、(A)及び(B)成分の含有割合としては、(A)及び(B)成分の合計量100重量%中に、(A)成分を10~30重量%及び(B)成分を70~90重量%含むことがより好ましく、このような範囲とすることで、組成物の塗工性及び硬化膜の粘着力に優れるものとすることができること(段落【0033】)、(C)成分を使用することにより、組成物の硬化性に優れ、さらに得られる硬化膜の低臭気性に優れること(段落【0034】)、が記載されている。
エ さらに、これらの記載を裏付ける実施例が9例も記載されているとともに、(A)、(B)及び(C)成分を含有しない場合に対応する比較例1、3、4も記載されている。
オ そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(5)申立人の主張について
申立人の主張は、本件発明に含まれている態様のうち、対応する実施例が存在しないものについて、なんら具体的な立証や根拠を示すことなく、その課題を解決することができない可能性があると主張するものにすぎないところ、上記(4)のとおり、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
したがって、主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701184