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特許異議申立

2022-701172

自動包装用青果物鮮度保持フィルム及び青果物鮮度保持包装袋

審判番号
2022-701172
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-060890
登録番号
7082153
請求日
2022年11月25日
審決日
2023年08月16日
公報発行日
2023年11月24日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】福岡県
  • 【権利者代理人】加藤 大輝
  • 【権利者】フタムラ化学株式会社
  • 【権利者代理人】加藤 大輝
  • 【権利者代理人】後藤 憲秋
  • 【異議申立人】浅野 幸義
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 山崎 勝司
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.537-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D) / P1651.161-YAA(B65D) / P1651.536-YAA(B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7082153号発明「自動包装用青果物鮮度保持フィルム及び青果物鮮度保持包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7082153号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第7082153号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7082153号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和2年3月30日の出願であって、令和4年5月30日にその特許権の設定登録がされ、令和4年6月7日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年11月25日 :特許異議申立人浅野幸義(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て 令和5年 2月 1日付け:取消理由通知書 令和5年 3月23日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和5年 5月26日 :申立人による意見書の提出 第2 本件訂正 1 本件訂正の内容 訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1) 訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度の温度差が5℃以上であり、前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmであり、酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であることを特徴とする自動包装用青果物鮮度保持フィルム。」 との記載を、 「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度が、外面層となる表面層が高く、かつ、温度差が5℃以上であり、前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmであり、酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であり、弾性率が縦(MD)方向0.7GPa以上、横(TD)方向1.7GPa以上であることを特徴とする自動包装用青果物鮮度保持フィルム。」に訂正する。 (また、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3も同様に訂正する。) (2) 訂正事項2 訂正前の明細書の段落【0011】の「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度の温度差が5℃以上であり、前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmであり、酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であることを特徴とする自動包装用青果物鮮度保持フィルムに係る。」との記載を、 「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度が、外面層となる表面層が高く、かつ、温度差が5℃以上であり、前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmであり、酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であり、弾性率が縦(MD)方向0.7GPa以上、横(TD)方向1.7GPa以上であることを特徴とする自動包装用青果物鮮度保持フィルムに係る。」に訂正する。 (3) 訂正事項3 訂正前の明細書の段落【0014】の「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度の温度差が5℃以上であり、前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmであり、酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であるため、自動包装適性に優れるとともに防曇性を備えるとともに、内容物である青果物の鮮度保持に適した任意の気体透過性、優れた透明性、光沢性、印刷加工性、製袋加工性や充填作業性を備える。」との記載を、 「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度が、外面層となる表面層が高く、かつ、温度差が5℃以上であり、前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmであり、酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であり、弾性率が縦(MD)方向0.7GPa以上、横(TD)方向1.7GPa以上であるため、自動包装適性に優れるとともに防曇性を備えるとともに、内容物である青果物の鮮度保持に適した任意の気体透過性、優れた透明性、光沢性、印刷加工性、製袋加工性や充填作業性を備える。」に訂正する。 なお、訂正前の請求項1~3は、請求項2及び3が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1~3について請求されている。 2 本件訂正の適否 (1) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「ヒートシール温度の温度差が5℃以上であ」ることについて、「ヒートシール温度が、外面層となる表面層が高く、かつ、温度差が5℃以上であ」ると、外面層となる表面層の温度が高いことを限定し、さらに、「自動包装用青果物鮮度保持フィルム」について、「弾性率が縦(MD)方向0.7GPa以上、横(TD)方向1.7GPa以上である」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1は、訂正前の本件特許明細書の段落【0025】、【0053】、【0061】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。 また、訂正事項1は、上記のとおり訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 イ 訂正事項2、3について 訂正事項2、3は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である。 また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、上記アで述べたとおりであり、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2) 小括 上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 自動包装機により青果物を包装し製袋されるとともに、内容物である前記青果物の鮮度を保持する自動包装用青果物鮮度保持フィルムであって、 両表面層にヒートシール性を有する層を備えた3層以上の共押出による積層体よりなるとともに、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基材層を有し、二軸延伸により製膜されてなり、 前記ポリプロピレン系樹脂組成物がプロピレン単独重合体(A)及びプロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)とを含むポリプロピレン系樹脂組成物であって、前記プロピレン単独重合体(A)が3~80重量部と前記プロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)が20~97重量部とする組成であり、 前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度が、外面層となる表面層が高く、かつ、温度差が5℃以上であり、 前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmであり、 酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であり、 弾性率が縦(MD)方向0.7GPa以上、横(TD)方向1.7GPa以上である ことを特徴とする自動包装用青果物鮮度保持フィルム。 【請求項2】 前記青果物が葉ネギ又はラディッシュである請求項1に記載の自動包装用青果物鮮度保持フィルム。 【請求項3】 請求項1又は2に記載の自動包装用青果物鮮度保持フィルムが製袋されてなる青果物鮮度保持包装袋。」 第4 取消理由の概要 当審が通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 (サポート要件) 請求項1~3に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、不備があるため、請求項1~3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 発明の解決しようとする課題は、「本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、自動包装機による青果物の包装が可能であるとともに、内容物である青果物の鮮度保持に適した気体透過性を備えた自動包装用青果物鮮度保持フィルムを提供する」(【0010】)というものである。 本件発明の課題を解決するためには、請求項1に「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度の温度差が5℃以上であり」と特定するだけでなく、外面層となる表面層のヒートシール温度を高くすることを要するといえ、さらに、自動包装機による包装への適性を評価するための指標ともされる弾性率が、特定の範囲であることも課題解決のためには必要であるといえる。 したがって、請求項1~3に係る発明は、本件発明の課題を解決できないものを含むこととなる。 ●(証拠方法) 甲第1号証:再公表特許2017/170330号 甲第2号証:特開2017-196759号公報 甲第3号証:特開2001―106845号公報 甲第4号証:再公表特許2020/158474号 (以下「甲第1号証」~「甲第4号証」をそれぞれ「甲1」~「甲4」という。) 第5 取消理由についての当審の判断 1 サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 2 本件発明の課題 本件特許明細書には、「本発明は、自動包装機により青果物を包装する自動包装用フィルムに関し、特に内容物である青果物の鮮度保持が可能な自動包装用青果物鮮度保持フィルムに関する。」(【0001】)と記載され、発明の解決しようとする課題は、「本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、自動包装機による青果物の包装が可能であるとともに、内容物である青果物の鮮度保持に適した気体透過性を備えた自動包装用青果物鮮度保持フィルムを提供する」(【0010】、以下「本件発明の課題」という。)というものである。 3 本件発明1について (1) 本件発明1の記載 本件発明1は、本件発明の課題解決の手段として、「両表面層にヒートシール性を有する層を備えた3層以上の共押出による積層体よりなるとともに、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基材層を有し、二軸延伸により製膜されてなり」、 「前記ポリプロピレン系樹脂組成物がプロピレン単独重合体(A)及びプロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)とを含むポリプロピレン系樹脂組成物」であって、 「前記プロピレン単独重合体(A)が3~80重量部と前記プロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)が20~97重量部とする組成」であり、 「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度が、外面層となる表面層が高く、かつ、の温度差が5℃以上」であり、 「前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μm」であり、 「酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)」であり、 「弾性率が縦(MD)方向0.7GPa以上、横(TD)方向1.7GPa以上」であることを特定するものである。 (2) 本件特許明細書の記載 ア 上記(1)の各特定事項を備える本件発明1について、本件特許明細書には、「〔結果と考察〕 表1及び表2に示されるように、試作例1~試作例5の包装袋は、比較例1の包装袋と比較して、葉ネギの鮮度が良好に保持された。また、試作例1~試作例5の包装袋は、微孔が形成されたフィルムを用いた比較例2の包装袋や非密封包装である比較例3の包装袋と比較しても、葉ネギの鮮度が良好に保持された。」(【0057】)と記載され、「さらに、試作例4を用いて、自動包装機(大森機械工業株式会社製、「CS-3600X」)により自動包装を行ったところ、52個/分の速度条件にて葉ネギの自動包装が可能であった。このことから、弾性率が試作例4と同等ないしそれ以上である他の試作例についても、自動包装機への適性を有する。」(【0061】)とされている。 イ 以上によれば、当業者は、上記(1)の各特定事項を備える本件発明1は、本件発明の課題を解決できるものであることを認識することができる。ウ なお、申立人は、外面層のヒートシール温度の範囲を限定しない、あらゆる範囲において本件発明の課題を解決できない旨主張している(令和5年5月26日の申立人意見書2~3ページ(4)参照。)。 そこで、検討するに、ヒートシール温度は、「外面層のヒートシール温度を高くすることにより自動包装機のヒートシールバーへのヒートシール層の融着が抑制されて包装速度が上がったり、シール部の外観品質が向上する等、自動包装適性が向上する」(【0025】)ものである。 さらに、「両表面層を形成する樹脂原料として、以下の原料を使用した。また、それぞれの樹脂を層としたときのヒートシール温度を記載した。 ・樹脂(PP1):ホモポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、「FL203D」)、ヒートシール温度196℃ ・樹脂(PP3):ランダムポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、「FX4E」)、ヒートシール温度142℃ ・樹脂(PP4):ランダムポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、「FX4G」)、ヒートシール温度132℃」(【0033】)と記載され、ヒートシール温度は、ヒートシール層の原料として用いる市販の製品に応じて、さらには、使用する自動包装機の種類やヒートシールバーの温度、自動包装速度などを考慮して当業者が適宜定めればよい事項であって、外面層のヒートシール温度の範囲を詳細に定めなければ本件発明の課題を解決できないというものではない。 よって、申立人の係る主張は採用できない。 (3) したがって、本件発明1~3は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に違反するものではない。 第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人は、特許異議申立書において、(1)本件発明1~3について、甲1~甲3により進歩性(特許法第29条第2項)を有しない旨(特許異議申立書53ページ下から4行~59ページ14行)、また、(2)本件発明1、3は、甲4に記載された発明と同一である(特許法第29条の2)旨(特許異議申立書59ページ15行~63ページ下から4行)を主張する。 そこで以下に検討する。 (1) 特許法第29条第2項 ア 甲1には、特許請求の範囲、【0001】、【0007】、【0011】、【0014】、【0019】、【0025】、【0026】、【0034】~【0045】、【0052】表1を総合すると、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「自動包装機により青果物を包装し製袋されるとともに、内容物である前記青果物の鮮度を保持する自動包装用青果物鮮度保持フィルムであって、 両表面層にヒートシール性を有する層を備えた3層以上の共押出による積層体よりなるとともに、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基材層を有し、二軸延伸により製膜されてなるフィルムであり、 ポリプロピレン系樹脂組成物からなる基材層は、前記ポリプロピレン系樹脂組成物がプロピレン単独重合体(A)及びプロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)とを含み、 前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度の温度差が5℃以上であり、 前記自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmである、 自動包装用青果物鮮度保持フィルム。」 イ 本件発明1と、甲1発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点1] ポリプロピレン系樹脂組成物がプロピレン単独重合体(A)及びプロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)とを含むことについて、本件発明1は、「前記プロピレン単独重合体(A)が3~80重量部と前記プロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)が20~97重量部とする組成であり」とされているのに対して、甲1発明は、組成について具体的な特定はなされていない点。 [相違点2] 自動包装用青果物鮮度保持フィルムについて、本件発明1は、「酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であり」とされているのに対して、甲1発明は、酸素透過度について特定されていない点。 ウ そこで、上記相違点1、2について、以下に併せて検討する。 甲1には、ポリプロピレン系樹脂組成物がプロピレン単独重合体(A)及びプロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)とを含むものを用いた具体的な例について記載するところはなく、プロピレン単独重合体(A)及びプロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)の組成の割合を調整することについても記載されていない。 また、甲1には、表面層のシール立ち上がり温度、シール到達強度、防曇性、自動包装適性、溶断シール強度について評価されているものの、自動包装機による青果物の包装が可能であることと、青果物の鮮度保持に適した気体透過性を備えることとの評価については記載されていない。 そして、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の発明特定事項について、甲2をみても、従来の文献についての一例に、青果物や花卉類の鮮度保持包装に適したフィルムについての記載があるものの(甲2【0002】)、甲2に記載された発明が青果物の包装に適したものであるとの記載はなく、さらに、自動包装機による青果物の包装が可能であることと、青果物の鮮度保持に適した気体透過性を備えることの両立を示唆するところもない。 そうすると、甲1発明に、甲2に記載された事項を採用する動機はなく、また、仮に適用したとしても、自動包装機による青果物の包装が可能であることと、青果物の鮮度保持に適した気体透過性を備えることの両立をはかりつつ、相違点1及び相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。 (2) 特許法第29条の2 ア 甲4には、(特許請求の範囲、【0001】、【0008】、【0018】、【0083】~【0095】、【0103】表1を総合すると、以下の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。 「自動包装機により青果物を包装し製袋されるとともに、内容物である前記青果物の鮮度を保持する自動包装用青果物鮮度保持フィルムであって、 両表面層にヒートシール性を有する層を備えた3層以上の共押出による積層体よりなるとともに、ポリプロビレン系樹脂組成物からなる基材層を有し、二軸延伸により製膜されてなるフィルムであり、 前記ポリプロピレン系樹脂組成物がプロビレン単独重合体(A)及びプロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)とを含むポリプロピレン系樹脂組成物であり、 前記プロピレン単独重合体(A)が3~80重量部と前記プロピレンと少なくとも1種以上のα-オレフィンとの共重合体(B)が97重量部~20重量部とする組成であり、 長手方向に4.5倍延伸し、幅方向に9.5倍延伸し、 前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度の温度差が5℃以上であり、 前品自動包装用青果物鮮度保持フィルムの厚みが20~40μmである、 自動包装用青果物鮮度保持包装袋。」 イ 本件発明1と、甲4発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 [相違点3] 自動包装用青果物鮮度保持フィルムについて、本件発明1は、「酸素透過度が2000~5500cm3/(m2・24hr・atm)であり、弾性率が縦(MD)方向0.7GPa以上、横(TD)方向1.7GPa以上である」とされているのに対して、甲4発明は、それらについて不明である点。 ウ そこで、上記相違点3について、以下に検討する。 本件発明1について、その延伸倍率に関し本件特許明細書をみると、延伸倍率として縦方向(巻き取り方向、MD)5倍、横方向(幅方向、TD)8倍とされ(【0031】)、他方、甲4発明は、「長手方向に4.5倍延伸し、幅方向に9.5倍延伸」するもので、その延伸条件は異なるものである。そうすると、延伸倍率の相違が、フィルムが備える物性に影響することは明らかであり、その結果、両者は、酸素透過度、弾性率において同じものであるとはいえない。 したがって、相違点3は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲4発明と同一のものではない。 2 さらに、申立人は、特許異議申立書において、本件発明1~3は、「前記積層体の両表面層の一側の表面層と他側の表面層それぞれのヒートシール温度の温度差が5℃以上であること」を必須とするものであるが、「ヒートシール温度」の定義が規定されていないため実施可能要件に逮反している旨を主張している(特許異議申立書63ページ下から3行~67ページ14行)。 しかしながら、ヒートシール温度について、本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。 「積層体の両表面層に備えられるヒートシール層は、それぞれのヒートシール温度の温度差が5℃以上とされるのがよい。外面層のヒートシール温度を高くすることにより自動包装機のヒートシールバーへのヒートシール層の融着が抑制されて包装速度が上がったり、シール部の外観品質が向上する等、自動包装適性が向上する。」(【0025】) 「両表面層を形成する樹脂原料として、以下の原料を使用した。また、それぞれの樹脂を層としたときのヒートシール温度を記載した。 ・樹脂(PP1):ホモポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製、「FL203D」)、ヒートシール温度196℃ ・樹脂(PP3):ランダムポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、「FX4E」)、ヒートシール温度142℃ ・樹脂(PP4):ランダムポリプロピレン(日本ポリプロ株式会社製、「FX4G」)、ヒートシール温度132℃」(【0033】) 上記記載を踏まえると、ヒートシール温度は、外面層のヒートシール温度を高くすることにより自動包装機のヒートシールバーへのヒートシール層の融着が抑制されるように、フィルムに用いる市販の製品に応じて適宜定め得るものであると理解できるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、かかる事項を手がかりに、当業者が本件発明1~3を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。 3 以上のとおりであるから、上記1及び2についての申立人の主張は、いずれも採用することができない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~3に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701172

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