特許異議申立
2022-700859
銅粉
- 審判番号
- 2022-700859
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-077728
- 登録番号
- 7029341
- 請求日
- 2022年09月01日
- 審決日
- 2023年10月31日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】JX金属株式会社
- 【権利者代理人】アクシス国際弁理士法人
- 【異議申立人】古河ケミカルズ 株式会社
- 【異議申立人代理人】速水 進治
- 審判長/審判官
- 審判長 池渕 立
- 審判官 土屋 知久
- 審判官 佐藤 陽一
- 分類
- P1651.113-YAA(B22F) / P1651.121-YAA(B22F) / P1651.536-YAA(B22F) / P1651.537-YAA(B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7029341号発明「銅粉」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7029341号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第7029341号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7029341号の請求項1~12に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年4月13日の出願であって、令和4年2月22日にその特許権の設定登録がなされ、同年3月3日に特許掲載公報が発行された。
本件は、その後、同年9月1日に特許異議申立人古河ケミカルズ株式会社(以下、「申立人」という。)より請求項1~12(全請求項)に係る特許に対してなされた特許異議申立事件であって、同年12月6日付けで取消理由が通知されるとともに、申立人に対して審尋がなされ、審尋に対して、同年12月22日に申立人より回答書が提出され、また、取消理由に対して、令和5年1月27日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求がなされ、同年3月23日差出で申立人より意見書が提出され、その後、同年5月23日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、これに対して、同年7月25日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、同年8月30日差出で申立人より意見書が提出されたものである。
なお、令和5年1月27日になされた訂正請求は、本件訂正請求がなされたため、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正請求について
1 訂正の趣旨、及び、訂正の内容
本件訂正請求は、特許第7029341号の特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
なお、訂正箇所には、当審で下線を付した。
(1)訂正事項1
請求項1について、本件訂正請求に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)前の「(ただし、銀被覆銅粉を除く)」を「(ただし、銀被覆銅粉、及び福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3の表面に防錆層が設けられた銅粉を除く)」に訂正する。
請求項1を引用する請求項2~12も同様に訂正する。
2 当審の判断
2-1 訂正の目的、特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否、及び、新規事項追加の有無
(1)訂正事項1
訂正事項1は、本件訂正前には、「銀被覆銅粉を除く」とあったものが、「銀被覆銅粉、及び福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3の表面に防錆層が設けられた銅粉を除く」と除くものの範囲を広げたものである。
そうすると、訂正事項1は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないし、本件特許の願書に添付された明細書、特許請求の範囲または図面に記載された事項の範囲内の訂正である。
2-2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~12は、請求項1を引用するものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~12は一群の請求項であり、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
そして、本件訂正は、特定の請求項に係る訂正事項について別の訂正単位とする求めがないから、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1~12〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。
2-3 独立特許要件について
本件訂正請求に係る請求項はいずれも特許異議の申立てがなされているので、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならないとの、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定される要件は課されない。
3 訂正請求についてのむすび
以上のとおりであるから、令和5年7月25日に特許権者が行った訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~12〕についての訂正を認める。
第3 本件発明
令和5年7月25日に特許権者が行った請求項1~12についての訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~12に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明12」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
表面の明度L*が46.3以上であり、空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*が35.0以上であり、防錆層を有する銅粉(ただし、銀被覆銅粉、及び福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3の表面に防錆層が設けられた銅粉を除く)。
【請求項2】
前記銅粉が電解銅粉である請求項1に記載の銅粉。
【請求項3】
レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50が0.001~300μmである請求項1又は2に記載の銅粉。
【請求項4】
レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50が120μm以下である請求項1~3のいずれかに記載の銅粉。
【請求項5】
レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50が50μm以下である請求項1~4のいずれかに記載の銅粉。
【請求項6】
レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50が40μm以下である請求項1~5のいずれかに記載の銅粉。
【請求項7】
レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50が30μm以下である請求項1~6のいずれかに記載の銅粉。
【請求項8】
レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50が20μm以下である請求項1~7のいずれかに記載の銅粉。
【請求項9】
レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50が15μm以下である請求項1~8のいずれかに記載の銅粉。
【請求項10】
前記防錆層が有機物を含む請求項1に記載の銅粉。
【請求項11】
前記有機物がトリアゾール化合物を含む請求項10に記載の銅粉。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の銅粉を用いて焼結製品を製造する方法。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由
1 特許異議申立理由
申立人は、証拠方法として次の甲第1~6号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲6」という。)を提出し、以下の申立理由1~5により、請求項1~12に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2006-117959号公報
甲第2号証:古河ケミカルズ株式会社 大阪工場 開発課 製品開発係 滝口聡志作成 実験成績証明書
甲第3号証:特開2016-145404号公報
甲第4号証:古河ケミカルズ株式会社 大阪工場 開発課 製品開発係 滝口聡志作成 実験成績証明書
甲第5号証:国際公開第2018/062527号
甲第6号証:特開平5-179302号公報
1-1 申立理由1(甲1を主たる引用例とした新規性・進歩性)
本件訂正前の請求項1~12に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、または、甲1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、同発明に係る特許は、特許を受けることができず、取り消されるべきものである(取消理由に一部採用)。
1-2 申立理由2(甲3を主たる引用例とした新規性・進歩性)
本件訂正前の請求項1~12に係る発明は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、または、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、同発明に係る特許は、特許を受けることができず、取り消されるべきものである(取消理由に一部採用)。
1-3 申立理由3(サポート要件)
本件特許は、次の(1)~(4)の理由により特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
(1)本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)の実施例において、「酸化による変色」の判断基準が不明であるため、実施例1の銅粉が課題を解決し得るか否かが不明である(取消理由に不採用)。
(2)本件明細書の実施例において、電解銅粉を用いた実施例があるだけであり、電解銅粉以外の銅粉を用いた場合に、本件特許の課題を解決し得るか否かが不明である(取消理由に不採用)。
(3)本件明細書の実施例において、「表面の明度L*」が46.6であり、かつ、「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*」が44.8である実施例が示されているに過ぎず、本件訂正前の請求項1~12に係る発明の全範囲において課題を解決し得るか否かが不明である(取消理由に不採用)。
(4)本件明細書の実施例において、防錆層の素材として、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと1,2,3-ベンゾトリアゾールを用いた実施例があるだけであり、これら以外の素材を用いた場合に、本件特許の課題を解決し得るか否かが不明である(取消理由に不採用)。
1-4 申立理由4(明確性要件)
本件訂正前の請求項1に記載された「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*が35.0以上であ」る事項について、銅粉をどのような状態でどのような空間に「放置した」のかが不明であるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである(取消理由に採用)。
1-5 申立理由5(実施可能要件)
本件特許は、次の理由により明細書の発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
(1)本件発明1の「表面の明度L*が46.3以上であり、空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*が35.0以上であ」る事項は、公知の課題を数値に置き換えたものに過ぎず、本件明細書には、極めて限られた材料の実施例のみしか実施可能に記載されていない(取消理由に不採用)。
(2)本件明細書の実施例において、電解銅粉を用いた実施例があるだけであり、電解銅粉以外の銅粉を用いた場合に、本件訂正前の請求項1~12に係る発明をどのように製造できるのかが不明である(取消理由に不採用)。
(3)本件明細書の実施例において、「表面の明度L*」が46.6であり、「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*」が44.8である実施例が示されているに過ぎず、本件訂正前の請求項1~12に係る発明の全範囲において実施可能であるといえない(取消理由に不採用)。
(4)本件明細書の実施例において、防錆層の素材として、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと1,2,3-ベンゾトリアゾールを用いた実施例があるだけであり、本件訂正前の請求項1~12に係る発明の全範囲において実施可能であるといえない(取消理由に不採用)。
2 令和4年12月6日付けで通知された取消理由の概要
令和4年12月6日付けで通知された取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由1(明確性要件)
上記1の1-4の申立理由4と同じ。
(2)取消理由2(甲1を主たる引用例とした新規性・進歩性:上記1の1-1の申立理由1の一部)
本件訂正前の請求項1、3~12に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、または、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、同発明に係る特許は、特許を受けることができず、取り消されるべきものである。
(3)取消理由3(甲3を主たる引用例とした新規性・進歩性:上記1の1-2の申立理由2の一部)
本件訂正前の請求項1、3~12に係る発明は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、または、甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反するものであるから、同発明に係る特許は、特許を受けることができず、取り消されるべきものである。
3 令和5年5月23日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要
令和5年5月23日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。
(1)取消理由4(明確性:職権で採用)
令和5年1月27日になされた訂正請求に係る訂正後の請求項1の「福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3を基材とするものを除く」との記載について、「基材」がどのようなものを意味するのかが不明であるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである
第5 当審の判断
当審では、次に示すとおり、上記第4の特許異議申立理由及び取消理由によっては、本件請求項1~12に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 取消理由4について(明確性要件:職権で採用)
(1)「基材」について
ア 令和5年1月27日になされた訂正請求に係る訂正後の請求項1に記載された「福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3を基材とするものを除く」との記載は、「基材」が何を特定しているかが不明であった。
イ しかしながら、本件訂正により、上記アの記載は、「福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3の表面に防錆層が設けられた銅粉を除く」と訂正された。
ウ そして、上記イの記載は明確である。
エ よって、請求項1及びそれを引用する請求項2~12の記載は、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。
2 取消理由1及び申立理由4(明確性要件)について
(1)加速試験について
ア 請求項1には、「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*が35.0以上であ」ることが記載されている。
イ しかし、銅粉を「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置」する具体的な方法について、本件明細書には、「上記銅粉を空気雰囲気下(大気下)において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間(96時間)放置した(表1の「加速試験」を意味する。)後、再度上記の方法により銅粉表面の明度L*を測定した」(【0040】)と記載されているのみである。
ウ 一方、上記加速試験について、特許権者は、令和5年1月27日提出の意見書(「5 意見の内容」の「(4) 取消理由1について)において、次のとおり釈明している。
「本件特許明細書の段落0040には、「さらに、上記銅粉を空気雰囲気下(大気下)において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間(96時間)放置した(表1の「加速試験」を意味する。)後、再度上記の方法により銅粉表面の明度L*を測定した」と記載されている。本件特許発明の課題が「酸化による変色が起こりにくい銅粉を提供すること」(段落0005)であることに照らすと、上記「加速試験」は、銅粉の表面酸化を加速させることを趣旨とする試験であると理解できる。当該趣旨を考慮すると、銅粉の酸化のしにくさを適切に評価できないような条件は、本件特許明細書に特に指定されていない以上、自ずと排除されると理解すべきである。
本件特許発明において、上記「加速試験」は、120×150mmのステンレストレイに、銅粉10~20mm敷き詰めたうえで実施できる。10~20mmの厚さであれば、銅粉の酸化のしにくさを適切に評価することができる。
また、「加速試験」の間には、意図的な空気のフローや入れ替えはない。例えば、エスペック株式会社製の恒温恒湿器(幅900×奥行800×高さ1,500mm)又はこれに同等の恒温恒湿器内に、銅粉を敷き詰めたステンレストレイを 放置することができる。放置の間には空気の入れ替えを行わない。」
エ そして、上記ウの釈明は、本件明細書の記載と何ら矛盾するものではなく、むしろ妥当なものであり、上記ウの釈明を参照することによって上記アの記載の意味は明確となった。
オ よって、請求項1及びそれを引用する請求項2~12の記載は、特許を受けようとする発明が、明確でないとはいえない。
3 取消理由2及び申立理由1(甲1を主たる引用例とした新規性・進歩性)について
(1) 甲1の記載事項
本件特許の出願日前に公開された甲1には、次の記載がある。なお、各甲号証に記載された発明の認定に関する箇所に、当審で下線を付した。以下、同じ。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、高温焼成用の銅粉に関するものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題点を解決すべく、高い焼結開始温度を有する銅粉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、含窒素複素環化合物又は水溶性高分子で銅粉を表面被覆することにより、不活性雰囲気中又は還元性雰囲気中において、かつ、昇温速度が10℃/min以上の条件下において、銅粉の焼結開始温度が700℃以上になることを見出し、本発明を完成させた。」
「【0011】
本発明で使用する原料となる銅粉の種類は、限定されず、一般に使用されているものを使用することができる。この銅粉は、通常市販されているものを使用することも可能で、また、常法により製造したものでもよい。銅粉の製造方法としては、たとえば、電解法、粉砕法、アトマイズ法、化学還元法などがあり、特に、アトマイズ法、化学還元法が好ましい。
【0012】
銅粉の粒形も特に限定しないが、球状又は球状に近い粒状のものを使用することが好ましい。銅粉の平均粒径も特に限定しないが、使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、平均粒径が0.01μm~0.1mm程度、より好ましくは0.1μm~10μm程度の銅粉がよい。なお、平均粒径の測定方法は、たとえば、銅粉を市販のレーザー回折装置にて測定し、測定した粒度分布の50%積算平均粒径を銅粉の平均粒径とすることができる。
【0013】
本発明において、上記の原料としての銅粉を表面被覆するためには、含窒素複素環化合物又は水溶性高分子を使用する。
【0014】
含窒素複素環化合物としては、限定しないが、特に、ベンゾトリアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、プリン系化合物、ピリミジン系化合物などが好ましい。」
「【0021】
本発明において使用する水溶性高分子としては、天然の水溶性高分子である、ゼラチンが挙げられる。本発明で用いられるゼラチンは特に制限はなく、例えば原料として牛、豚、鯨等の骨、皮等から造られた、アルカリ処理、酸処理、酵素処理ゼラチンのいずれでも用いることができる。また、化学修飾、グラフト共重合などによって部分的に改質を行ったゼラチン誘導体を用いることができる。」
「【0043】
(実施例1)
原料となる銅粉として、アトマイズ法で製造された平均粒径約3μmの球形の銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:Cu-HWQ-3)を用いた。平均粒径は、島津製作所(株)レーザー回折装置SALD-3000にて粒度分布を測定し、その粒度分布の積算50%粒径を平均粒径とした。該銅粉10gを、約500mLの5容量%硫酸水溶液中に浸漬し、1分程度攪拌して酸洗浄した。酸洗浄は3回繰り返した。酸洗浄後、硫酸水溶液を吸引濾過し、0.01mol/Lに調製した水酸化ナトリウム水溶液約250mLにて中和した。洗浄した銅粉を、0.04容量%に調製したベンゾトリアゾール(C.V.I.リキッド、キレスト(株))のメタノール溶液中に浸漬し、
1分程度攪拌して表面被覆を行った。表面被覆は、常温で行った。表面被覆後、上記の溶液を吸引濾過して除き、オーブンにて約80℃で1時間乾燥させた。
【0044】
得られた銅粉を用いて焼結開始温度を測定した。焼結開始温度の測定は、表面被覆銅粉に圧力をかけて圧粉体を製作し、この圧粉体を測定炉中に設置し、100ml/minの流量の窒素雰囲気の下、10℃/minで温度を上昇させた時の圧粉体の長さと温度の関係を記録することにより行った。
【0045】
(実施例2)
表面被覆液の濃度を0.1%とした他は実施例1と同様にして、表面被覆した銅粉を作製し、実施例1と同様に焼結開始温度の測定をした。」
「【0049】
実施例1、2及び比較例1の測定結果を図1に示す。
実施例1、2においては、焼結開始温度が700℃以上になっていることがわかる。これに対し、比較例1では焼結開始温度が、520℃にしかならなかった。」
「【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の電子材料用銅粉は、同時焼成型銅回路セラミック基板用として実用可能であり、この電子材料用銅粉を用いることによって、従来の電子材料用銅粉よりも非常に高い焼結開始温度を有し、安価にかつ容易な工程にて得ることができる。」
「【図1】
[図:0001406676000001.jpg]
」
(2) 甲1に記載された発明
ア 甲1の実施例1及び実施例2の銅粉に注目すると、甲1(特に、上記(1)の【0043】、【0044】、【0051】参照。)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「同時焼成型銅回路セラミック基板用の電子材料用銅粉であって、
原料となる銅粉として、アトマイズ法で製造された平均粒径約3μmの球形の銅粉(福田金属箔粉工業(株)製:Cu-HWQ-3)を用い、
平均粒径は、島津製作所(株)レーザー回折装置SALD-3000にて粒度分布を測定し、その粒度分布の積算50%粒径を平均粒径とし、
該銅粉10gを、約500mLの5容量%硫酸水溶液中に浸漬し、1分程度攪拌して酸洗浄し、酸洗浄は3回繰り返し、
酸洗浄後、硫酸水溶液を吸引濾過し、0.01mol/Lに調製した水酸化ナトリウム水溶液約250mLにて中和し、
洗浄した銅粉を、0.04容量%または0.1容量%に調製したベンゾトリアゾール(C.V.I.リキッド、キレスト(株))のメタノール溶液中に浸漬し、1分程度攪拌して表面被覆を行い、表面被覆は、常温で行い、
表面被覆後、上記の溶液を吸引濾過して除き、オーブンにて約80℃で1時間乾燥させて得られた銅粉。」
(3) 甲第2号証の記載事項
申立人が提出した実験成績証明書である甲2には、次の記載がある。
「
[図:0001406676000002.jpg]
[図:0001406676000003.jpg]
[図:0001406676000004.jpg]
」
(4)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも次の相違点1で相違する。
(相違点1)
「防錆層が設けられた銅粉」として、本件発明1は、「福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3」を除くのに対し、甲1発明は、「福田金属箔粉工業(株)製:Cu-HWQ-3」である点。
イ 以下、上記相違点1について検討する。
ウ 本件発明1は、「防錆層が設けられた銅粉」として、「福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3」を除くのに対し、甲1発明は、「福田金属箔粉工業(株)製:Cu-HWQ-3」を用いているから、上記相違点1は実質的な相違点である。
エ 一方、甲1には、「原料となる銅粉の種類は、限定されず、一般に使用されているものを使用することができる。この銅粉は、通常市販されているものを使用することも可能で」(【0011】)あることが記載されている。
オ しかしながら、甲1の上記エの記載によれば、原料となる銅粉として、一般に使用されている通常市販されているものを使用可能であったとしても、多くの市販品の中から、「防錆層」を設けた際に、「表面の明度L*が46.3以上であり、空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*が35.0以上」となる銅粉を選択する動機がない。
カ また、仮に、甲1発明において原料となる銅粉として「通常市販されているもの」を用いて、偶然「表面の明度L*が46.3以上であり、空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*が35.0以上」となる銅粉が得られたとしても、甲1に記載された事項から、「酸化による変色が起こりにくい銅粉を提供する」(本件明細書【0005】)ことができるという本件発明の効果まで予測することはできない。
キ よって、本件発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
ク なお、申立人は、令和5年8月30日差出の意見書において、次の主張をしている。
「本件特許発明における、酸化による変色が起こりにくい銅粉を提供するという課題は、銅粉における一般的な課題(例えば、甲第3号証の【0002】など)であり、本件特許発明の出願時において、当業者にとって自明な課題又は当業者が容易に着想し得る課題である。
さらに甲第1号証の【0034】には「・・・しかし、pHが中性からアルカリ性になると、薬液中の溶解酸素によって銅粉が酸化されやすくなるため、速やかに表面被覆の工程に移るのが好ましい。・・・」と記載されていることから、甲第1号証には、銅粉の表面酸化の課題が記載されており、かかる課題を解決する観点から、銅粉に対して「表面被覆の工程」をおこなうという技術的思想が開示されている。」
ケ しかしながら、甲1や甲3には、酸化が起こりにくい銅粉を提供することが記載されているものの、本件発明は、「造形加工方法AM」(【0002】)に用いる銅粉において「酸化による変色が起こりにくい」(【0005】)ものを提供するものであって、甲1や甲3には、銅粉の「変色」について何ら記載されていないから、申立人の主張は採用できない。
(5)本件発明2~12について
ア 請求項2~12は請求項1を引用するものであって、本件発明2~12は本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~12と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1と同様の相違点で相違する。
イ そうすると、上記(4)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2~12は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
4 取消理由3及び申立理由2(甲3を主たる引用例とした新規性・進歩性)について
(1) 甲3の記載事項
本件特許の出願日前に公開された甲3には、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、主に導電性ペーストに用いられる銅粉およびその製造方法に関する。」
「【0008】
本発明は上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、耐酸化性が高く、導電性も高い導電性ペースト用銅粉、および、当該導電性ペースト用銅粉の製造方法を提供することである。」
「【0014】
1.原料銅粉
本発明を実施するための原料銅粉としては、所謂還元銅粉やアトマイズ銅粉を好ましく用いることが出来る。
本発明において、湿式還元銅粉とは、銅塩水溶液を種々の反応工程により還元剤で還元して得られた銅粉のことである。また、アトマイズ銅粉とは、ガスアトマイズ、水アトマイズなどのアトマイズ製法によって得られた銅粉のことである。
これらの銅粉の粒径は、50%の累積粒径(D50)において、0.1~30μm程度が好ましい。」
「【0017】
3.表面処理工程
上述した酸化膜除去によって酸化膜が除去された銅粉の表面が再酸化され、導電性ペーストにおいて銅粉が発揮する初期の導電性が低下する事態を回避する為の工程である。具体的には、酸化膜が除去された銅粉の表面へ表面処理膜を設け、当該酸化膜が除去された銅粉に耐酸化性を付与する工程である。表面処理剤としては、イミダゾール、シランカップリング剤、有機酸アミン塩、ベンゾトリアゾール誘導体、脂肪酸等、から選択される1種以上が好ましい。
表面処理操作が実施された銅粉は、窒素ガス等の不活性雰囲気中にて加熱乾燥、または、減圧状態で加熱乾燥して、乾燥物とすることが好ましい。」
「【実施例】
【0022】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
実施例に係る工程のフロー図である図1を参照しながら、実施例1に係る操作を説明する。
〈酸化膜除去工程〉
原料銅粉として粒子形状が球状の湿式還元銅粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製、TypeT-5.5μm)を準備した。
【0023】
当該原料銅粉のBET値、TAP密度、酸素濃度、炭素濃度、10%の累積粒径(D10)、50%の累積粒径(D50)、および90%の累積粒径(D90)を測定した。当該測定値を表1に記載した。
本実施例においてBET値は、BET比表面積測定装置(ユアサイオニクス株式会社製 4ソーブUS)を用いてBET法により求めた。
TAP密度は、所定のホルダーに測定対象の粉体を充填して粉体層を形成し、当該粉体層へ、0.14N/m2以上、0.18N/m2以下の圧力を加えた後、粉体層の高さを測定し、当該粉体層の高さの測定値と、充填された粉体の重量とから測定対象の粉体の密度を求めた(詳細は、特開2007-263860号公報参照。)。
酸素濃度は、酸素・窒素分析装置(LECO社製 TC-436型)により測定した。
炭素濃度は、炭素・硫黄分析装置(堀場製作所製:EMIA-220V)により測定した。
累積粒径は、レーザー回折式粒度分布装置(SYMPATEC社製のヘロス粒度分布測定装置(HELOS&RODOS))により測定して、累積10%粒子径(D10)、累積50%粒子径(D50)、累積90%粒子径(D90)を求めた。
【0024】
純水691.7gを仕込み、その液温を35℃に温調した。そこへエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(EDTA・4Na・4H2O)50質量%溶液50.5gを添加し10分間撹拌、炭酸アンモニウム(一級)4.7gを添加し10分間撹拌して溶液とした。
当該溶液を攪拌しながら、ここへ準備した原料銅粉168gを添加した。
原料銅粉添加後、30分間攪拌を保持して銅粉表面の酸化膜除去を実施した。
【0025】
当該表面の酸化膜が除去された銅粉を、125mmのろうとを用いて吸引ろ過した。そして、当該吸引ろ過後の銅粉をイオン交換水で水洗して洗浄を実施した。当該水洗は、水洗に伴って発生するろ液の導電率が0.2mS/m以下になるまで実施して洗浄を完了し、銅粉のウェットケーキを得た。
【0026】
ここで、洗浄を実施した銅粉をサンプリングし、当該ウェットケーキを窒素雰囲気中において120℃で9時間乾燥し、実施例1に係る酸化膜除去後における銅粉の酸素濃度を測定した。当該測定値を表1に記載した。
【0027】
〈表面処理工程〉
一方、イミダゾール(和光純薬工業株式会社製)0.87gをイオン交換水691.7gに溶解して表面処理溶液を準備した。
【0028】
洗浄を実施した銅粉のウェットケーキへ表面処理溶液を通液して表面処理した。そして、当該ウェットケーキを窒素雰囲気中において120℃で9時間乾燥し、実施例1に係る導電性ペースト用銅粉を得た。
【0029】
ここで、実施例1に係る導電性ペースト用銅粉をサンプリングし、実施例1に係る表面処理後における銅粉の酸素濃度および体積抵抗率を測定した。当該測定値を表1に記載した。
【0030】
本実施例において体積抵抗率は、圧粉体抵抗測定方法によって測定した。具体的には、銅粉6.5gを、粉体抵抗測定システム(株式会社三菱化学アナリテック製、MCP-PD51型)の円筒状の容器に入れて、プレス圧20kNで圧縮成型してサンプルとした。当該サンプルの体積抵抗率を、当該粉体抵抗測定システムと接続した体積抵抗率測定装置(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスタGP MCP-T610型)を用いて測定した。尚、測定プローブは、粉体専用プローブ(4探針、リング電極)を使用した。
【0031】
〈耐熱試験〉
3L/minで大気を供給できるオーブンを準備した。
当該オーブン中に、実施例1に係る導電性ペースト用銅粉を設置し、3L/minで大気を供給しながら温度を100℃として、24時間の耐熱試験を実施した。
【0032】
ここで、耐熱試験を実施した実施例1に係る導電性ペースト用銅粉をサンプリングし、上述した方法と同様の方法で、耐熱試験後における銅粉の酸素濃度および体積抵抗率を測定した。当該測定値を表1に記載した。
【0033】
〈測定結果の処理〉
以下の評価項目の値を求めた。当該算定値を表1に記載した。
(1)銅粉の内部酸素濃度(質量%)、(2)原料銅粉の表面酸素濃度(質量%)、(3)表面処理後における銅粉の表面酸素濃度(質量%)、(4)表面処理後における銅粉の単位表面積あたりの表面酸素濃度(質量%・g/m2)、(5)耐熱試験後における銅粉の酸素濃度増加量(質量%)、(6)耐熱試験後における銅粉の単位表面積あたりの酸素濃度増加量(質量%・g/m2)。」
「【0037】
(実施例4)
ベンゾトリアゾール誘導体(大和化成株式会社製、VERZONE TT250A)13.8gを、イオン交換水691.7gに溶解して表面処理溶液を準備した以外は、実施例1と同様に操作して、実施例4に係る導電性ペースト用銅粉を得た。
また、実施例4に係る導電性ペースト用銅粉に対して、実施例1と同様に測定を実施した。そして測定値を求め、さらに算定値を求めて表1に記載した。
【0038】
(実施例5)
〈酸化膜除去工程〉
原料銅粉として粒子形状が球状のアトマイズ銅粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製、アトマイズ銅粉)を準備した。
当該原料銅粉のBET値、TAP密度、酸素濃度、炭素濃度、10%の累積粒径(D10)、50%の累積粒径(D50)、および90%の累積粒径(D90)を測定した。当該測定値を表1に記載した。
【0039】
純水1037.6gを仕込み、その液温を35℃に調整した。そこへエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(EDTA・4Na・4H2O)50質量%溶液81.1gを添加し撹拌、炭酸アンモニウム6.6gを添加し撹拌して溶液とした。
当該溶液を攪拌しながら、ここへ準備した原料銅粉252gを添加した。
原料銅粉添加後、30分間攪拌を保持して原料銅粉表面の酸化膜除去を実施した。
【0040】
当該表面の酸化が除去された銅粉を、125mmのろうとを用いて吸引ろ過した。そして、当該吸引ろ過後の銅粉をイオン交換水で洗浄した。当該洗浄は、洗浄に伴って発生するろ液の導電率が0.2mS/m以下になるまで実施し、洗浄を完了した。
【0041】
ここで、洗浄を実施した銅粉をサンプリングし、実施例5に係る酸化膜除去後における銅粉の酸素濃度を測定した。そして測定値を求め、さらに算定値を求めて表1に記載した。
【0042】
〈表面処理工程〉
一方、イミダゾール(和光純薬工業株式会社製)1.31gをイオン交換水1037.6gに溶解して表面処理溶液を準備した。
【0043】
上述した洗浄を実施した銅粉へ、上記表面処理溶液を通液して表面処理し、ウェットケーキを得た。そして、当該ウェットケーキを、窒素雰囲気中において120℃で乾燥を行なって、乾燥物を得た。当該得られた乾燥物の乾燥凝集を、目開き32μmの試験篩いを用いて篩いがけし、実施例5に係る導電性ペースト用銅粉を得た。
【0044】
ここで、実施例5に係る導電性ペースト用銅粉をサンプリングし、実施例1にて説明したものと同様の方法で、実施例5に係る表面処理後における銅粉の酸素濃度および体積抵抗率を測定した。当該測定値を表1に記載した。
【0045】
〈耐熱試験〉
上述した実施例5に係る導電性ペースト用銅粉へ、実施例1で説明した耐熱試験を実施した。
そして、耐熱試験を実施した実施例5に係る導電性ペースト用銅粉をサンプリングし、実施例1にて説明したものと同様の方法で、耐熱試験後における酸素濃度量および体積抵抗率を測定した。当該測定値を表1に記載した。」
「【0072】
【表1】
[図:0001406676000005.jpg]
」
(2) 甲3に記載された発明
ア 甲3の【0072】の表1には、原料銅粉のD50について、実施例4及び5はいずれも5.5μmであり(当審注:表1の「←」は左に同じと解釈した。)、また、表面処理後における銅粉の単位表面積あたりの表面酸素濃度について、実施例4は-0.05質量%・g/m2であり、実施例5は-0.03質量%・g/m2であり、さらに、耐熱試験後における銅粉の単位表面積あたりの酸素濃度増加量について、実施例4は0.57質量%・g/m2であり、実施例5は0.31質量%・g/m2であることが示されている。
イ そうすると、甲3の実施例4の銅粉に注目すると、甲3(特に、上記(1)の【0022】、【0024】~【0028】、【0037】、【0072】参照。)には、次の発明(以下、「甲3発明1」いう。)が記載されていると認められる。
「原料銅粉として粒子形状が球状の湿式還元銅粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製、TypeT-5.5μm)を準備し、
純水691.7gを仕込み、その液温を35℃に温調し、そこへエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(EDTA・4Na・4H2O)50質量%溶液50.5gを添加し10分間撹拌、炭酸アンモニウム(一級)4.7gを添加し10分間撹拌して溶液とし、
当該溶液を攪拌しながら、ここへ準備した原料銅粉168gを添加し、原料銅粉添加後、30分間攪拌を保持して銅粉表面の酸化膜除去を実施し、
当該表面の酸化膜が除去された銅粉を、125mmのろうとを用いて吸引ろ過し、そして、当該吸引ろ過後の銅粉をイオン交換水で水洗して洗浄を実施し、当該水洗は、水洗に伴って発生するろ液の導電率が0.2mS/m以下になるまで実施して洗浄を完了し、銅粉のウェットケーキを得て、
ベンゾトリアゾール誘導体(大和化成株式会社製、VERZONE TT250A)13.8gを、イオン交換水691.7gに溶解して表面処理溶液を準備し、
洗浄を実施した銅粉のウェットケーキへ表面処理溶液を通液して表面処理し、当該ウェットケーキを窒素雰囲気中において120℃で9時間乾燥して得た、導電性ペースト用銅粉であって、
原料銅粉のD50が5.5μmであり、また、表面処理後における銅粉の単位表面積あたりの表面酸素濃度が-0.05質量%・g/m2であり、さらに、耐熱試験後における銅粉の単位表面積あたりの酸素濃度増加量が0.57質量%・g/m2である銅粉。」
ウ また、甲3の実施例5の銅粉に注目すると、甲3(特に、上記(1)の【0038】~【0043】、【0072】参照。)には、次の発明(以下、「甲3発明2」いう。)が記載されていると認められる。
「原料銅粉として粒子形状が球状のアトマイズ銅粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製、アトマイズ銅粉)を準備し、
純水1037.6gを仕込み、その液温を35℃に調整し、そこへエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩四水和物(EDTA・4Na・4H2O)50質量%溶液81.1gを添加し撹拌、炭酸アンモニウム6.6gを添加し撹拌して溶液とし、
当該溶液を攪拌しながら、ここへ準備した原料銅粉252gを添加し、原料銅粉添加後、30分間攪拌を保持して原料銅粉表面の酸化膜除去を実施し、
当該表面の酸化が除去された銅粉を、125mmのろうとを用いて吸引ろ過し、そして、当該吸引ろ過後の銅粉をイオン交換水で洗浄し、当該洗浄は、洗浄に伴って発生するろ液の導電率が0.2mS/m以下になるまで実施し、洗浄を完了し、
イミダゾール(和光純薬工業株式会社製)1.31gをイオン交換水1037.6gに溶解して表面処理溶液を準備し、
上述した洗浄を実施した銅粉へ、上記表面処理溶液を通液して表面処理し、ウェットケーキを得て、そして、当該ウェットケーキを、窒素雰囲気中において120℃で乾燥を行なって、乾燥物を得て、
当該得られた乾燥物の乾燥凝集を、目開き32μmの試験篩いを用いて篩いがけして得た導電性ペースト用銅粉であって、
原料銅粉のD50が5.5μmであり、また、表面処理後における銅粉の単位表面積あたりの表面酸素濃度が-0.03質量%・g/m2であり、さらに、耐熱試験後における銅粉の単位表面積あたりの酸素濃度増加量が0.31質量%・g/m2である銅粉。」
(3) 甲第4号証の記載事項
申立人が提出した実験成績証明書である甲4には、次の記載がある。
「
[図:0001406676000006.jpg]
[図:0001406676000007.jpg]
[図:0001406676000008.jpg]
[図:0001406676000009.jpg]
[図:0001406676000010.jpg]
[図:0001406676000011.jpg]
」
(4)甲4の実験成績証明書についての検討
ア 甲4は、甲3の実施例4、5の銅粉についての再現実験を行って、当該銅粉及びその銅粉を「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後」の明度L*を測定したものである。
イ ここで、甲3の実施例4では、ベンゾトリアゾール誘導体を含む表面処理液を準備し(甲3の【0037】)、洗浄を実施した銅粉へ該表面処理液を通液して表面処理している(甲3の【0028】)。
ウ しかしながら、甲3には、上記イの表面処理液の通液時間が記載されておらず、不明である。
エ そして、次の参考文献(「1 はじめに(Introduction)」の欄参照。)には、「ベンゾトライアゾール(BTA)」(甲3の「ベンゾトリアゾール」に相当。)について、「CuBTA皮膜の厚さは、BTA濃度、温度、pHおよび浸せき時間に依存することが明らかにされた」と、通液時間によって表面処理膜の厚さが変化することが記載されている。
<参考文献>
能登谷武紀他2名、「銅ベンゾトライアゾレイト皮膜および下地酸化皮膜の形態」 電気化学および工業物理化学、1977年45巻1号、p.49-51(特許権者による令和5年1月27日提出の意見書に添付された参考文献3)
オ さらに、甲3に次のように記載されているとおり、上記イの表面処理は、銅粉に耐酸化性を付与するものである。
「【0017】
3.表面処理工程
上述した酸化膜除去によって酸化膜が除去された銅粉の表面が再酸化され、導電性ペーストにおいて銅粉が発揮する初期の導電性が低下する事態を回避する為の工程である。具体的には、酸化膜が除去された銅粉の表面へ表面処理膜を設け、当該酸化膜が除去された銅粉に耐酸化性を付与する工程である。表面処理剤としては、イミダゾール・・・(略)・・・ベンゾトリアゾール誘導体・・・(略)・・・から選択される1種以上が好ましい。」
カ そうすると、表面処理膜の膜厚により、特に、「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後」の酸化の度合いが異なることは自明であり、それにより表面の明度L*が変化すると考えられる。
キ したがって、甲3の実施例4は、表面処理の通液時間が不明であるから、甲4の再現実験において、甲3の実施例4と同一の銅粉を得ることができているとはいえず、甲3の実施例4の銅粉の明度L*や「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後」の明度L*を正確に測定しているとはいえない。
ク また、これは、甲3の実施例5の銅粉についても同様である。
ケ よって、甲3の実施例4、5の銅粉についての再現実験を行った甲4の実験成績証明書は採用できない。
(5)本件発明1について
本件発明1と甲3発明1及び甲3発明2とを対比する。
ア 甲3発明1及び甲3発明2の「導電性ペースト用銅粉」は、本件発明1の「銅粉」に相当する。
イ 甲3には、「表面処理工程」は、「酸化膜が除去された銅粉の表面へ表面処理膜を設け、当該酸化膜が除去された銅粉に耐酸化性を付与する工程である。表面処理剤としては、イミダゾール・・・(略)・・・ベンゾトリアゾール誘導体・・・(略)・・・から選択される1種以上が好ましい」(【0017】)と記載されているところ、甲3発明1は、「ベンゾトリアゾール誘導体(大和化成株式会社製、VERZONE TT250A)」で「銅粉のウェットケーキへ」「表面処理し」て耐酸化性を付与したものであり、また、甲3発明2は、「イミダゾール(和光純薬工業株式会社製)」で「銅粉へ」「表面処理し」て耐酸化性を付与したものである。
そうすると、甲3発明1及び甲3発明2は、本件発明1の「防錆層を有する」事項を含むものである。
ウ 甲3発明1と甲3発明2の原料銅粉は、DOWAエレクトロニクス株式会社製の銅粉であるから、福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3の銅粉でないことは明らかである。
エ 上記ア~ウより、本件発明1と甲3発明1及び甲3発明2とは、
「防錆層を有する銅粉(ただし、銀被覆銅粉、及び福田金属箔粉工業株式会社製Cu-HWQ-3の表面に防錆層が設けられた銅粉を除く)。」で一致し、次の相違点2で相違する。
(相違点2)
「表面の明度L*」及び「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後」の「表面の明度L*」が、本件発明1は、それぞれ「46.3以上」及び「35.0以上」であるのに対し、甲3発明1及び甲3発明2は、これらがいずれも不明である点。
オ 以下、上記相違点2について検討する。
カ 甲3には、銅粉の明度L*について何ら記載されていないから、上記相違点2は実質的な相違点である。
キ そして、甲3には、「表面の明度L*」及び「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後」の「表面の明度L*」を、それぞれ「46.3以上」及び「35.0以上」とする動機もない。
ク よって、本件発明1は、甲3発明1または甲3発明2ではないし、甲3発明1または甲3発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
(6)本件発明2~12について
ア 請求項2~12は請求項1を引用するものであって、本件発明2~12は本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~12と甲3発明1または甲3発明2とは、少なくとも上記相違点2と同様の相違点で相違する。
イ そうすると、上記(5)で検討した理由と同様の理由により、本件発明2~12は、甲3発明1または甲3発明2であるとはいえないし、甲3発明1または甲3発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
5 申立理由3について(サポート要件)
(1)申立理由3の(1)~(4)について
ア 本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書の記載によれば、「酸化による変色が起こりにくい銅粉を提供すること」(【0005】)であると認められる。
イ ここで、例えば、国際公開2015/152380号に「キャリア剥離後の銅箔の剥離面が酸化した場合には、黒色の度合いが高く、色差測定による明度L*値は低くなる」([0019])と記載されているように、銅が酸化すると明度L*が低くなることは、周知である。
ウ そして、本件明細書【0004】、【0005】等の記載によれば、銅粉の変色は酸化によって起こることが理解できる。
エ 一方、請求項1には、「表面の明度L*が46.3以上であり、空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*が35.0以上であ」る事項が特定されている。
オ そうすると、上記イの周知の事項及び上記エの事項により、本件発明1は酸化しにくい銅粉であることが理解でき、さらに、上記ウのとおり、変色は銅粉の酸化によって起こるから、本件発明1の「銅粉」は、酸化により変色しにくいものであり、上記アの課題を解決し得ることが理解できる。
カ よって、請求項1及びそれを引用する請求項2~12に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
キ なお、申立人は、特許異議申立書において、本件明細書の実施例では、「酸化による変色」の判断基準が不明であること、原料銅粉として電解銅粉を用いたものが例示されているに過ぎないこと、「表面の明度L*」が46.6であり、かつ、「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*」が44.8である実施例が示されているに過ぎないこと、及び、防錆層の素材として、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと1,2,3-ベンゾトリアゾールを用いた実施例が示されているに過ぎないから、本件発明はその全範囲において本件発明の課題を解決し得るものとはいえないと主張している。
ク しかしながら、上記ア~カで検討したとおり、本件発明1~12は、実施例の記載の有無にかかわらず、本件発明の課題を解決し得るものであるから、申立人の主張は採用できない。
6 申立理由5について(実施可能要件)
(1)申立理由5の(1)~(4)について
ア 本件明細書には、次の記載がある。
「【0037】
(実施例1)
銅濃度:7g/L、硫酸濃度:100g/L、塩素イオン濃度:20mg/L以下の電解液を用い、陽極に電気銅地金板、陰極に圧延銅板を用いて、電流密度:80A/dm2、液温:35℃として、24時間電解を行い、銅粉を製造した。
生成した銅粉を水洗処理した後、アンモニア濃度が0.0095wt%であるアンモニア水を300L/minの流量で供給して中和処理をし、中和処理槽中の液の表面pHが8.7に達した時点でアンモニア水の供給を停止した。なお、中和処理槽の容積は375Lとした。その後、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと1,2,3-ベンゾトリアゾールとを合計で0.0025wt%含む防錆処理液(水溶液)を280L/minの流量で10分間添加して防錆処理をし、脱脂、乾燥を経て銅粉を得た。なお、防錆処理槽の容積は375Lとした。」
「【0039】
[レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50の測定]
各実施例及び比較例の銅粉について、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製SALD-2100)を用いて、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定により得られた体積基準の積算分率における50%粒子径(レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50)を測定した。なお、レーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50の測定に当たっては、10ccビーカーに銅微粉をスパチュラで1さじ(約0.1g)加え、さらに純水(分散媒)を加えて懸濁液を調製した。この懸濁液を、測定装置の分散槽に投入し、まず、超音波照射なしで測定を実施した。次に、超音波を照射し、1分ごとに測定を実施し、10分までの測定を行った。超音波照射開始後10分のときの測定値をレーザー回折・散乱法で測定した積算体積百分率径D50の値として採用した。
【0040】
[銅粉表面の明度L*の測定]
各実施例及び比較例の銅粉をポリエチレン製の無色の透明なビニール袋(株式会社生産日本社製、セイニチグリップス ユニパック 0.04タイプ、品番:E-4、チャック付、厚み0.04mm、幅100mm、チャック下長さ:140mm)に袋の約半分の量を入れた。
まず、スガ試験機株式会社製の測色計であるCOLOUR TESTER(カラーテスター)を白色板を用いて校正した。その後、前述のCOLOUR TESTER(カラーテスター)を用いて銅粉表面の明度L*の測定を行った。なお、前述のCOLOUR TESTER(カラーテスター)の校正には以下の白色板を用いた。
・白色板
スガ試験機株式会社製
Colour Standard
三刺激値:X=76.26、Y=78.78、Z=90.84
TEST NO864141 STANDARD NO1
LIGHT SOURCE -C
VISUAL FIELD -2°
TEST 1996.12.16.
さらに、上記銅粉を空気雰囲気下(大気下)において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間(96時間)放置した(表1の「加速試験」を意味する。)後、再度上記の方法により銅粉表面の明度L*を測定した。また、各実施例及び比較例について、目視により変色の有無を確認した。目視において、変色がないものは「〇」、変色があるものは「×」と評価した。測定結果は表1に示す。また、加速試験後の銅粉の外観写真を図1に示す。図1中の1(中丸に1)が実施例1の銅粉の外観を示す。また、図1中の2(中丸に2)が比較例1の銅粉の外観を示す。
図1からわかるように、実施例1の銅粉の方が、比較例1の銅粉より明らかに明度が高かった。
【0041】
[防錆層の有無の確認]
実施例1および比較例1の銅粉について、防錆層の有無を以下の様に確認した。
下記の、XPS(X線光電子分光法)のsurvey測定で防錆剤である化合物が有する元素が検出された場合には、当該銅粉は防錆層を有すると判定した。
まず、直径0.5mmの円筒状の容器に銅粉0.5gをそれぞれ充填して、底面が隙間なく覆われるように敷きつめた。円筒容器に敷きつめられた銅粉の上面をXPS survey測定(銅粉の上半分の表面に付着した元素の半定量分析)を、以下の装置と条件で行い、銅粉表面に存在する元素を特定した。
装置:アルバックファイ社製5600MC
到達真空度:5.7×10-9Torr
励起源:単色化 AlKα
出力:210W
検出面積:800μmφ
入射角、取出角:45°
中和銃使用
その結果、実施例1の銅粉および比較例1の銅粉共に、防錆剤である5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと1,2,3-ベンゾトリアゾールが有する元素であるC及びNが検出されたため、実施例1および比較例1の銅粉は防錆層を有していることが確認された。
【0042】
【表1】
[図:0001406676000012.jpg]
」
イ そして、上記アの実施例1の「銅粉」は、「防錆層を有していることが確認された」(【0041】)ものであるし、【0042】の表1によれば、「表面の明度L*」46.6であり、「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*」が44.8であるから、本件発明1の「銅紛」である。
ウ そうすると、上記アの【0037】の手順により、本件発明1の「銅紛」を製造することが可能であるといえる。
エ よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、請求項1及びそれを引用する請求項2~12に係る発明について、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないとはいえない。
オ なお、申立人は、特許異議申立書において、本件明細書の実施例には、極めて限られた材料を用いたものしか記載されていないこと、銅粉として電解銅粉を用いたものしか記載されていないこと、「表面の明度L*」が46.6であり、かつ、「空気雰囲気下において、40℃、相対湿度(RH)85%で4日間放置した後に、表面の明度L*」が44.8であるものが示されているに過ぎないこと、及び、防錆層の素材として、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと1,2,3-ベンゾトリアゾールを用いた実施例が示されているに過ぎないことから、本件発明1~12の全範囲で実施可能ではないことを主張している。
カ しかしながら、本件明細書の実施例1の「銅紛」が実施可能であり、一般に、特許請求の範囲の範囲内の特定のものが実施可能であれば、所謂実施可能要件を満たしているといえるから、申立人の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本件の請求項1~12に係る特許は、令和5年5月23日付けで通知された取消理由通知書に記載した取消理由(決定の予告)、令和4年12月6日付けで通知された取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできず、また、他に本件の請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700859