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特許異議申立

2022-701116

ポリエステル樹脂およびその製造方法

審判番号
2022-701116
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-502190
登録番号
7067730
請求日
2022年11月15日
審決日
2023年02月16日
公報発行日
2023年03月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ユニチカ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人森本国際特許事務所
  • 【権利者】日本エステル株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人森本国際特許事務所
  • 【権利者】ユニチカトレーディング株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人森本国際特許事務所
  • 【異議申立人】平居 博美
審判長/審判官
  • 審判長 細井 龍史
  • 審判官 小出 直也
  • 審判官 海老原 えい子
分類
P1652.113-Y (C08G) / P1652.121-Y (C08G) / P1652.537-Y (C08G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7067730号発明「ポリエステル樹脂およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7067730号の請求項2ないし12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7067730号(請求項の数14。以下、「本件特許」という。)は、令和3年2月24日(優先権主張 令和2年2月27日、日本国(JP))を国際出願日とする特願2022-502190号に係る特許であって、令和4年5月6日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行日は同年同月16日である。)。 その後、令和4年11月16日(受付日)に、本件特許の請求項2~12に係る特許に対して、特許異議申立人である平居 博美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~14に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、請求項1~14に係る発明を「本件発明1」~「本件発明14」といい、そのうち本件発明2~12をまとめて「本件発明」ということもある。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。) 「【請求項1】 ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂であって、 グリコール成分が、エチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含み、 グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であり、 触媒由来の金属成分の含有量が1ppm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。 【請求項2】 ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂であって、 グリコール成分が、エチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含み、 グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であり、 硫黄成分の含有量が1~500ppmであることを特徴とするポリエステル樹脂。 【請求項3】 グリコール成分におけるジエチレングリコールの含有量が2.5モル%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂。 【請求項4】 グリコール成分がテトラエチレングリコールを含み、グリコール成分におけるテトラエチレングリコールの含有量が2.0モル%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリエステル樹脂。 【請求項5】 グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量とテトラエチレングリコールの含有量の合計が7.0モル%以下であることを特徴とする請求項4に記載のポリエステル樹脂。 【請求項6】 ジカルボン酸成分が、テレフタル酸を主たる成分として含むことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のポリエステル樹脂。 【請求項7】 厚さ2mmの成形体のヘイズが5%以下であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のポリエステル樹脂。 【請求項8】 請求項1~7のいずれかに記載のポリエステル樹脂からなる成形体。 【請求項9】 請求項1~7のいずれかに記載のポリエステル樹脂からなる繊維。 【請求項10】 請求項1~7のいずれかに記載のポリエステル樹脂からなるフィルム。 【請求項11】 請求項1~7のいずれかに記載のポリエステル樹脂を含む接着剤。 【請求項12】 請求項1~7のいずれかに記載のポリエステル樹脂と溶媒とを含有する樹脂溶液。 【請求項13】 請求項1~7のいずれかに記載のポリエステル樹脂を製造する方法であって、 ポリエステル樹脂の原料に有機スルホン酸系化合物を添加し、常圧または加圧下において、240℃以上の温度で5~120分加熱して、グリコール成分のエーテル化反応を行う工程を含むことを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。 【請求項14】 有機スルホン酸系化合物が、2-スルホ安息香酸無水物、o-スルホ安息香酸、m-スルホ安息香酸、p-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、ベンゼンスルホン酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸メチル、5-スルホイソフタル酸、および、これらの塩から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項13に記載のポリエステル樹脂の製造方法。」 第3 特許異議申立書に記載された申立理由の概要及び証拠方法 1 特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載された申立理由の概要は、以下のとおりである。 申立理由1(サポート要件) 本件発明2~12は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、本件発明2~12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (具体的な不備の概要) 本件発明2では「硫黄成分の含有量が1~500ppmである」と規定されており、硫黄成分は触媒由来の硫黄成分に限定されておらず、触媒由来でない硫黄成分を含有する場合であっても本件発明2の範囲内となるが、本件明細書には触媒として有機スルホン酸系化合物を用いていない場合については何ら記載されていない。よって、本件発明2及びそれを直接的又は間接的に引用する本件発明3~12は、出願時の技術常識に照らしても、発明の詳細な説明に開示された内容を本件発明2~12の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。 申立理由2(新規性) 本件発明2、3、6、8~12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、本件発明2、3、6、8~12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 申立理由3(進歩性) 本件発明2、3、6、8~12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2、3、6、8~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 証拠方法 甲第1号証:特表2007-502909号公報 甲第2号証:特開2003-206336号公報 甲第3号証:特開2004-306281号公報 (以下、これらを「甲1」~「甲3」という。) 第4 当審の判断 当審は、以下に述べるとおり、申立書に記載した理由によっては、本件発明2~12に係る特許を取り消すことはできないと判断する。 1 本件明細書の記載 本件明細書には、本件発明について、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ポリエステル樹脂およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステル樹脂は、機械的特性、化学的特性に優れており、広範な分野、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用等のフィルムまたはシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等において使用されている。 【0003】 従来から、ポリエステル樹脂の製造には、固相重縮合時に重縮合触媒として、アンチモン系またはゲルマニウム系等の金属系触媒を用いられている。 アンチモン系触媒は、安価で触媒活性に優れるが、実用的な重合速度が発揮される程度の量で使用すると、重縮合時に金属アンチモンが析出することがある。したがって、製造されたポリエステル樹脂には、黒ずみまたは異物が発生し、加工品の表面欠点の原因となる。また、透明性に優れた中空成形品を得ることが困難である。 【0004】 一方、ゲルマニウム系触媒は非常に高価であり、さらに重合中に反応系外へ留出しやすく、系内の触媒濃度が変化してしまい、重合の制御が困難になるという問題がある。 【0005】 そこで、アンチモン系またはゲルマニウム系触媒に代わる重縮合触媒が検討されており、テトラアルコキシチタネート等のチタン化合物が提案されているが、これらを用いて製造されたポリエステルは溶融成形時に熱劣化を受けやすく、着色し易いという問題がある。 【0006】 金属系触媒に代わる有機系触媒も検討されており、例えば、p-トルエンスルホン酸等のスルホン酸系化合物が提案されている(例えば、特許文献1)。スルホン酸系化合物は優れた重合活性を有するうえに、これらを用いて製造されたポリエステルは、色調も良好である。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0007】 【特許文献1】特公昭63-033489号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 近年では、成形体としたときの機械的特性をさらに高めたポリエステル樹脂が望まれている。 本発明の目的は、成形体とした場合に、透明性に優れるとともに機械的特性にも優れるポリエステル樹脂を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討の結果、グリコール成分としてエチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールを含み、トリエチレングリコール含有量が特定範囲であるポリエステル樹脂は、成形体の透明性に優れ、成形体とした場合の機械的特性に優れることを見出し、本発明に到達した。」 「【0012】 以下、本発明のポリエステル樹脂を詳細に説明する。 本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂である。 【0013】 <グリコール成分> 本発明のポリエステル樹脂を構成するグリコール成分は、エチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールを含み、グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であることが必要である。 【0014】 本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分がエチレングリコールとジエチレングリコールと所定量のトリエチレングリコールとを同時に含有することで、機械的特性に優れる成形体を得ることができる。 本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であることが必要であり、0.2~4.0モル%であることが好ましい。ポリエステル樹脂は、トリエチレングリコールの含有量が0.1モル%以下であると、機械的特性の向上効果が十分に得られず、一方、5.5モル%を超えると、熱特性、耐候性が低下する。 【0015】 本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分におけるエチレングリコールの含有量が、20モル%以上であることが好ましく、エチレングリコールを主たるグリコール成分とすること、すなわち、グリコール成分におけるエチレングリコールの含有量が、50モル%以上であることがより好ましく、70モル%以上であることがさらに好ましく、80モル%以上であることが特に好ましい。ポリエステル樹脂は、エチレングリコールの含有量が20モル%以上であることにより機械的特性にいっそう優れる成形体を得ることができる。 【0016】 本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分におけるジエチレングリコールの含有量が2.5モル%以上であることが好ましく、3.0モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることがさらに好ましく、10モル%以上であることが特に好ましい。ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコールの含有量が上記範囲であることにより、機械的特性がいっそう向上することができる。グリコール成分におけるジエチレングリコールの含有量の上限は、30モル%であることが好ましい。 【0017】 また、本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分におけるジエチレングリコールの含有量とトリエチレングリコールの含有量の合計は、2.6モル%を超えることが好ましく、2.6モル%を超え35モル%以下であることがより好ましく、3.2~34モル%であることがさらに好ましい。 【0018】 本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分がテトラエチレングリコールを含むことが好ましく、グリコール成分におけるテトラエチレングリコールの含有量が2.0モル%以下であることが好ましく、0.1~0.5モル%であることがより好ましい。ポリエステル樹脂は、グリコール成分におけるテトラエチレングリコールの含有量が2.0モル%を超えると、熱特性、耐候性が低下する場合がある。 【0019】 本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量とテトラエチレングリコールの含有量の合計が7.0モル%以下であることが好ましく、0.2~7.0モル%であることがより好ましく、0.4~6.0モル%であることがさらに好ましい。ポリエステル樹脂は、グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量とテトラエチレングリコールの含有量の合計が7.0モル%を超えると、機械的特性に劣る場合がある。 【0020】 本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分がエチレングリコールを含むとともに、グリコール成分におけるジエチレングリコールの含有量、トリエチレングリコールの含有量、テトラエチレングリコールの含有量、ジエチレングリコールとトリエチレングリコール合計含有量、またはトリエチレングリコールとテトラエチレングリコールの合計含有量を、上記範囲とすることで、成形体の機械的特性をいっそう向上させることができる。 【0021】 本発明のポリエステル樹脂において、グリコール成分にジエチレングリコールとトリエチレングリコールを同時に含有させたり、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールのそれぞれの含有量や、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールの合計含有量や、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールの合計含有量を上記範囲とする方法としては、例えば、後述のポリエステル樹脂の製造方法において、重合触媒として有機スルホン酸系化合物を用いて、特定の温度と時間でグリコール成分のエーテル化反応を行う工程を含ませる方法が挙げられる。 【0022】 本発明のポリエステル樹脂は、エチレングリコールを含み、さらにジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールを含み、好ましくはテトラエチレングリコールを含むものであるが、それら以外のグリコール成分を含んでいてもよい。その具体例としては、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジエタノール、1,10-デカメチレングリコール、1,12-ドデカンジオール等に例示される脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビスフェノール、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)メタン、1,2-ビス(p-ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールC、2,5-ナフタレンジオール、これらのグリコールにエチレンオキシドが付加したグリコール等に例示される芳香族グリコールが挙げられる。中でも、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノールが好ましい。」 「【0037】 <ポリエステル樹脂の製造方法> 本発明のポリエステル樹脂の製造方法は、ポリエステル樹脂の原料に有機スルホン酸系化合物を添加し、常圧または加圧下において、240℃以上の温度で5~120分加熱して、グリコール成分のエーテル化反応を行う工程を含む。 【0038】 本発明においては、重縮合反応を行う前に、特定条件でのエーテル化反応を行う工程を含むことで、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールを同時に含有させたうえで、トリエチレングリコールの含有量を上記範囲とすることができる。さらに、ジエチレングリコールの含有量、テトラエチレングリコールの含有量、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの含有量を好ましい範囲とすることができる。その結果、成形体とした場合の透明性に優れ、さらに破断伸度等の機械的特性にも優れるポリエステル樹脂を得ることができる。 【0039】 (原料) ポリエステル樹脂の原料としては、例えば、エチレングリコールを含むグリコール成分、ジカルボン酸成分、グリコール成分とジカルボン酸成分とからなる低次縮合物としてのエステル化物等が挙げられる。 【0040】 上記エステル化物を得る手法としては、例えば、ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレートを製造する場合は、テレフタル酸、エチレングリコ-ル、および必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去し、エステル化して、ポリエステル樹脂の原料としてのエステル化物を得る。または、テレフタル酸ジメチル、エチレングリコ-ル、および必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコ-ルを留去し、エステル交換させてエステル化物を得る。エステル化反応、エステル交換反応は1段階で行ってもよいし、多段階に分けて行ってもよい。 【0041】 以下、エステル化物の調製方法について、具体的に説明する。 ジカルボン酸、またはそのエステル誘導体1モルに対して、好ましくは1.02~2.5モル、より好ましくは1.03~1.8モルのエチレングリコ-ルが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応器に連続的に供給し、エステル化物を得る。 エステル化反応は、例えば1~3個のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用い、エチレングリコ-ルが還流する条件下で、反応によって生成した水またはアルコ-ルを、精留塔で系外に除去しながら行う。 第1段階目のエステル化反応の温度は、240~270℃であることが好ましく、245~265℃であることがより好ましい。圧力は、0.2~3kg/cm2Gであることが好ましく、0.5~2kg/cm2Gであることがより好ましい。 最終段階目のエステル化反応の温度は、250~290℃であることが好ましく、255~275℃であることがより好ましい。圧力は、0~1.5kg/cm2Gであることが好ましく、0~1.3kg/cm2Gであることがより好ましい。 エステル化反応を3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段階目の反応条件と最終段階目の反応条件の間の条件であることが好ましい。 多段階でのエステル化反応の反応率は、各段階で滑らかに上昇させることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上に達することが好ましく、93%以上に達することがより好ましい。これらのエステル化反応によりエステル化物を得ることができ、その好ましい分子量は500~5000程度である。 エステル化反応においてテレフタル酸を用いる場合、テレフタル酸の酸としての触媒作用により無触媒で反応させることができる。 【0042】 上記のようにして得られたエステル化物に対し、有機スルホン酸系化合物を添加した後、エーテル化反応を行う。その後、重縮合反応を進行させて、本発明のポリエステル樹脂を得る。 【0043】 (触媒) 本発明においては、重合触媒として有機スルホン酸系化合物を用いることで、得られるポリエステル樹脂中のトリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの含有量を本発明の範囲とすることができる。有機スルホン酸系化合物としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、m-またはp-ベンゼンジスルホン酸、1,3,5-ベンゼントリスルホン酸、o-、m-またはp-スルホ安息香酸、ベンズアルデヒド-o-スルホン酸、アセトフェノン-p-スルホン酸、アセトフェノン-3,5-ジスルホン酸、o-、m-またはp-アミノベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、2-アミノトルエン-3-スルホン酸、フェニルヒドロキシルアミン-3-スルホン酸、フェニルヒドラジン-3-スルホン酸、1-ニトロナフタレン-3-スルホン酸、チオフェノール-4-スルホン酸、アニソール-o-スルホン酸、1,5-ナフタレンジスルホン酸、o-、m-またはp-クロルベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-ブロモベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-ニトロベンゼンスルホン酸、ニトロベンゼン-2,4-ジスルホン酸、ニトロベンゼン-3,5-ジスルホン酸、ニトロベンゼン-2,5-ジスルホン酸、2-ニトロトルエン-5-スルホン酸、2-ニトロトルエン-4-スルホン酸、2-ニトロトルエン-6 -スルホン酸、3-ニトロトルエン-5-スルホン酸、4-ニトロトルエン-2-スルホン酸、3-ニトロ-o-キシレン-4-スルホン酸、5-ニトロ-o-キシレン-4-スルホン酸、2-ニトロ-m-キシレン-4-スルホン酸、5-ニトロ-m-キシレン-4 -スルホン酸、3-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、5-ニトロ-p-キシレン -2-スルホン酸、6-ニトロ-p-キシレン-2-スルホン酸、2,4-ジニトロベンゼンスルホン酸、3,5-ジニトロベンゼンスルホン酸、o-、m-またはp-フルオロベンゼンスルホン酸、4-クロロ-3-メチルベンゼンスルホン酸、2-クロロ-4-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、4-スルホフタル酸、2-スルホ安息香酸無水物、3,4-ジメチル-2-スルホ安息香酸無水物、4-メチル-2-スルホ安息香酸無水物、5-メトキシ-2-スルホ安息香酸無水物、1-スルホナフトエ酸無水物、8-スルホナフトエ酸無水物、3,6-ジスルホフタル酸無水物、4,6-ジスルホイソフタル酸無水物、2,5-ジスルホテレフタル酸無水物、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、メチオン酸、シクロペンタンスルホン酸、1,1-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸無水物、3-プロパンジスルホン酸、β-スルホプロピオン酸、イセチオン酸、ニチオン酸、ニチオン酸無水物、3-オキシ-1-プロパンスルホン酸、2-クロルエタンスルホン酸、フェニルメタンスルホン酸、β-フェニルエタンスルホン酸、α-フェニルエタンスルホン酸、クロルスルホン酸アンモニウム、ベンゼンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸エチル、5-スルホサリチル酸ジメチル、4-スルホフタル酸トリメチル等、およびこれらの塩が挙げられる。中でも、汎用性の観点から、2-スルホ安息香酸無水物、o-スルホ安息香酸、m-スルホ安息香酸、p-スルホ安息香酸、5-スルホサリチル酸、ベンゼンスルホン酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸メチル、5-スルホイソフタル酸、これらの塩などが好ましい。 【0044】 有機スルホン酸系化合物は、例えば固体状、スラリー状、または水、グリコール等に溶解させた溶液として、ポリエステル原料に添加することができる。 【0045】 有機スルホン酸系化合物の添加量は、その種類にもよるが、ポリエステル樹脂を構成する酸成分1モルに対して0.5×10-4~40×10-4モルとすることが好ましく、1.0×10-4~20.0×10-4モルであることがより好ましい。添加量が上記範囲より少ないと、重合度の高いポリエステル樹脂を短時間で得ることができない場合、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールを同時に含有することができない場合がある。またトリエチレングリコールの含有量が少なくなりすぎる場合がある。一方、上記範囲を超えると、副反応物の生成、またはポリエステル樹脂の着色の原因となる場合がある。 【0046】 有機スルホン酸系化合物の添加量を上記の範囲とすることで、得られるポリエステル樹脂の硫黄成分の含有量を、好ましくは1~500ppm、より好ましくは2~250ppm、さらに好ましくは2~50ppmとすることができる。硫黄成分の含有量が1ppm未満であると、機械的特性に劣る場合がある。一方、500ppmを超えると、副反応物の生成またはポリエステルの着色の原因となる場合がある。 【0047】 重合触媒として、金属系触媒を用いない場合には、得られる本発明のポリエステル樹脂中の、金属系触媒由来の金属成分の含有量を少なくすることができる。金属成分の含有量が多いと、透明性に劣ったり、溶融加工時に異物が発生したりする場合がある。金属成分の含有量は、1ppm以下であることが好ましく、0.5ppm以下であることがより好ましく、0ppmであることがさらに好ましい。金属系触媒としては、例えばアンチモン、ゲルマニウム、スズ、チタン、亜鉛、アルミニウム、鉄、マグネシウム、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マンガン、ニッケル、コバルト等の化合物が挙げられる。 【0048】 (エーテル化反応) エーテル化反応の温度は240℃以上であることが好ましく、240~300℃であることがより好ましく、250℃~280℃であることがさらに好ましい。240℃未満であると、反応が十分に進行せず、ポリエステル樹脂のグリコール成分に、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールを同時に含有させることができない場合がある。また、ジエチレングリコールの含有量、テトラエチレングリコールの含有量、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの合計の含有量が、好ましい範囲から外れることがある。エーテル化反応の温度が300℃を超えると、反応中にエステル化物の分解が進行し、得られるポリエステル樹脂は、成形体としたときの破断伸度等の機械的特性が低下することがある。 【0049】 エーテル化反応の時間(加熱時間)は、5~120分間が好ましく、10~60分間であることがより好ましい。反応時間が5分未満であると、エーテル化反応が十分に進行せず、ポリエステル樹脂のグリコール成分は、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールを同時に含有することができない場合があり、また、トリエチレングリコールの含有量を特定範囲とすることができない場合がある。また、ジエチレングリコールの含有量、テトラエチレングリコールの含有量、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールの合計の含有量が、好ましい範囲から外れることがある。反応時間が120分を超えると、反応中にエステル化物の分解が進行し、得られるポリエステル樹脂は、機械的特性が低下することがある。 【0050】 エーテル化反応は、常圧または加圧下において進行させることが好ましく、その圧力は、0~3.0kg/cm2Gであることが好ましい。 【0051】 エーテル化反応に供される原料における、グリコール成分(G)と酸成分(A)とのモル比(G/A)を調整することにより、ポリエステル樹脂中にジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールを同時に含有させることができ、さらに、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの生成量を調整することができる。G/Aは1.05~3.00であることが好ましく、1.10~2.00であることがより好ましい。G/Aを調整するために、必要に応じて、ポリエステル樹脂の原料に、エチレングリコール等のグリコール成分を追加で添加してもよい。G/Aが1.05未満であると、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの生成量が少なくなり過ぎる場合があり、一方、G/Aが3.00を超えると、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールの生成量が多くなり過ぎる場合がある。 【0052】 (重合反応) エーテル化反応の後に、重縮合反応を行って、本発明のポリエステル樹脂を得ることができる。重縮合反応としては、例えば溶融重縮合反応が挙げられる。重縮合反応は1段階で行ってもよいし、多段階に分けて行ってもよい。 重縮合反応条件としては、特に限定されるものではないが、第1段階目の重縮合反応においては、温度が250~290℃であることが好ましく、260~280℃であることがより好ましい。圧力は500~20Torrであることが好ましく、200~30Torrであることがより好ましい。」 「【実施例】 【0095】 以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、測定、評価は以下の方法により行った。 【0096】 (1)極限粘度[η] フェノールと四塩化エタンとの等重量混合液を溶媒として、温度20℃で測定した。 【0097】 (2)ポリエステル樹脂の組成 重水素化クロロホルム/重水素化トリフルオロ酢酸=9/1(質量比)の混合溶媒1mLに10mgの試料を溶解し、日本電子社製のLA-400型NMRにて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピーク積分強度からジカルボン酸成分と、トリエチレングリコ―ルおよびテトラエチレングリコールの合計の成分と、それ以外の各グリコール成分とのモル比を算出した。 また、ポリエステル樹脂を濃度0.75規定の水酸化カリウム/メタノール溶液中で加水分解した後、テレフタル酸を添加して中和した。次に、濾過して得られた濾液についてガスクロマトグラフによる測定を行い、あらかじめ作成した検量線を用いて定量し、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールとのモル比を算出し、これらのモル比と、前述の1H-NMRの測定結果(トリエチレングリコ―ルおよびテトラエチレングリコールの合計の成分と、それ以外の各グリコール成分とのモル比)とから、全グリコール成分中の、トリエチレングリコールのモル比、テトラエチレングリコールのモル比を算出した。 【0098】 (3)融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg) パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC-7を用い、窒素気流中、温度範囲25~280℃、昇温速度20℃/分で測定した。 【0099】 (4)硫黄成分の含有量、金属成分の含有量 ポリエステル樹脂を300℃で溶融成形して、直径3cm×厚み1cmの円盤状の成形板を得て、リガク社製蛍光X線分析装置 ZSX Primusを用いて、検量線法により定量分析を行った。 【0100】 (5)成形体の引張特性 ポリエステル樹脂から一般物性測定用試験片(ISO型)を得て、ISO527に従って、引張弾性率、引張降伏強度、引張伸度は、5mm/分の引張速度で測定し、引張弾性率は、1mm/分の引張速度で測定し、それぞれ算出した。 【0101】 (6)ヘイズ ポリエステル樹脂を日精樹脂社製NEX110型射出成形機に投入し、シリンダ温度285℃、金型温度40℃で、長さ90mm、幅50mm、厚さ2mmのプレートを作製した。得られたプレートの濁度を日本電色工業社製の濁度系MODEL 1001DPで評価した。この値が小さいほど透明性が良好であり、例えば、空気のヘイズは0%である。 【0102】 [エステル化物Aの作製] エステル化反応缶に、テレフタル酸とエチレングリコール(テレフタル酸:エチレングリコール=1:1.6(モル比))のスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.2MPaの条件で反応させ、滞留時間を8時間として、エステル化物A(テレフタル酸:エチレングリコール=100:111(モル比))を得た。 【0103】 [エステル化物Bの作製] エステル化反応缶に、イソフタル酸とエチレングリコール(イソフタル酸:エチレングリコール=1:3.5(モル比))のスラリーを供給し、温度200℃、圧力0.2MPaの条件で4時間反応させ、エステル化物B(イソフタル酸:エチレングリコール=100:332(モル比))を得た。 【0104】 実施例1 加熱溶融したエステル化物Aを280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、2-スルホ安息香酸無水物(OSB)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、280℃で10分間エーテル化反応を行った。 次に、反応缶の温度を280℃に維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は12ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.8モル%であった。 【0105】 実施例2~6 有機スルホン酸系化合物を、それぞれ5-スルホサリチル酸二水和物(SS)、o,m,p-アミノベンゼンスルホン酸(o,m,p-ABS)、p-トルエンスルホン酸メチル(p-TSMe)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂を得た。すべてのポリエステル樹脂は、硫黄成分を1~32ppm含んでおり、トリエチレングリコール量は0.2~0.9モル%であった。 【0106】 実施例7 加熱溶融したエステル化物Aを250℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、250℃で60分間のエーテル化反応を行った。 次に、反応缶の温度を10分間で280℃に昇温し、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を4時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、12ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は1.1モル%であった。 【0107】 実施例8 エーテル化反応時間を120分間に変更した以外は、実施例7と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、12ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は1.2モル%であった。 【0108】 実施例9 加熱溶融したエステル化物Aを250℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、250℃で180分間のエーテル化反応を行った。 次に、反応缶の温度を10分間で280℃に昇温し、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を5時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、21ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は1.8モル%であった。 【0109】 実施例10 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)を、250℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、さらにエチレングリコール(EG)(6質量部)を投入して、G/Aを1.31としたのち、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、250℃で30分間のエーテル化反応を行った。 次に、反応缶の温度を10分間で280℃に昇温し、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を4時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、12ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は2.8モル%、テトラエチレングリコール量は0.1モル%であった。 【0110】 実施例11 エーテル化反応時間を60分間に変更する以外は実施例10と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、15ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は3.4モル%、テトラエチレングリコール量は0.2モル%であった。 【0111】 実施例12 エチレングリコールを12質量部投入して、G/Aを1.51にした以外は実施例11と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、14ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は2.8モル%、テトラエチレングリコール量は0.2モル%であった。 【0112】 実施例13 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)を、250℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、さらにエチレングリコール(62質量部)を投入して、G/Aを3.11としたのち、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、250℃で60分間のエーテル化反応を行った。 次に、反応缶の温度を10分間で280℃に昇温し、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を5時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、25ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は5.3モル%、テトラエチレングリコール量は0.4モル%であった。 【0113】 実施例14 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)とエステル化物B(19質量部)とを、260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、260℃で10分間エーテル化反応を行った。 次に、反応缶の温度を10分間で280℃に昇温し、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を4時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、10ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は1.6モル%、テトラエチレングリコール量は0.1モル%であった。 【0114】 実施例15~20 エステル化物Bの投入量を、それぞれ表2に示したように変更する以外は、実施例14と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、すべて10~15ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は1.9~3.6モル%、テトラエチレングリコール量は0.1~0.3モル%であった。 【0115】 実施例21 加熱溶融したエステル化物A100質量部、テレフタル酸(TPA)5.3質量部、および1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)4.6質量部を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。 次に、反応管の温度を280℃に昇温したのち、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、10分間のエーテル化反応を行った。 その後、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。 共重合ポリエステル樹脂は、16ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.7モル%であった。 【0116】 実施例22 テレフタル酸を9.3質量部、1,4-シクロヘキサンジメタノールを8.1質量部に変更する以外は、実施例21と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、18ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.7モル%であった。 【0117】 実施例23 加熱溶融したエステル化物A100質量部、テレフタル酸5.8質量部、およびビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(BAEO)11.1質量部を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。 次に、反応管の温度を280℃に昇温したのち、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、10分間のエーテル化反応を行った。 その後、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、14ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.6モル%であった。 【0118】 実施例24 テレフタル酸を14.8質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を28.1質量部に変更する以外は実施例23と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、15ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.6モル%であった。 【0119】 実施例25 テレフタル酸に代えてイソフタル酸(IPA)を3.5質量部、エチレングリコール(EG)を0.7質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を3.3質量部に変更する以外は実施例23と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、8ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.8モル%であった。 【0120】 実施例26 テレフタル酸を2.2質量部、イソフタル酸を3.6質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を11.1質量部に変更する以外は実施例23と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、12ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.6モル%であった。 【0121】 実施例27 加熱溶融したエステル化物A100質量部、テレフタル酸4.4質量部、およびネオペンチルグリコール(NPG)2.8質量部を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。 次に、反応管の温度を280℃に昇温したのち、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、10分間のエーテル化反応を行った。 その後、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、11ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.6モル%であった。 【0122】 実施例28 テレフタル酸を14.8質量部、ネオペンチルグリコールを9.2質量部に変更する以外は実施例27と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、16ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.5モル%であった。 【0123】 実施例29 加熱溶融したエステル化物A100質量部、テレフタル酸4.4質量部、および3-メチル-1,5-ペンタンジオール(MPD)2.4質量部を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。 次に、反応管の温度を280℃に昇温したのち、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、10分間のエーテル化反応を行った。 その後、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、19ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.6モル%であった。 【0124】 実施例30 テレフタル酸を9.3質量部、3-メチル-1,5-ペンタンジオールを5.0質量部に変更する以外は実施例29と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、9ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.5モル%であった。 【0125】 実施例31 加熱溶融したエステル化物A100質量部、テレフタル酸4.4質量部、および1,4-ブチレングリコール(BD)2.4質量部を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。 次に、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、10分間のエーテル化反応を行った。 その後、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、17ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.6モル%であった。 【0126】 実施例32 テレフタル酸を27.9質量部、1,4-ブチレングリコールを15.1質量部、加熱混合時間を2時間に変更する以外は実施例31と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、18ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.5モル%であった。 【0127】 実施例33 テレフタル酸を83.6質量部、1,4-ブチレングリコールを45.4質量部、加熱混合時間を4時間に変更する以外は実施例31と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、14ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.3モル%であった。 【0128】 実施例34 加熱溶融したエステル化物A100質量部、テレフタル酸133.8質量部、ε-カプロラクトン(ε-CL)9.1質量部、および1,4-ブチレングリコール72.6質量部を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を5時間行った。 次に、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、10分間のエーテル化反応を行った。 その後、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、23ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.2モル%であった。 【0129】 実施例35 テレフタル酸を98.4質量部、ε-カプロラクトンを24.1質量部、1,4-ブチレングリコールを53.4質量部に変更する以外は実施例34と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、14ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.3モル%であった。 【0130】 実施例36 テレフタル酸を167.2質量部、ε-カプロラクトンを31.5質量部、1,4-ブチレングリコールを90.7質量部に変更する以外は実施例34と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂は、27ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.2モル%であった。 【0131】 比較例1 加熱溶融したエステル化物Aを280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、2-スルホ安息香酸無水物(OSB)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、エーテル化反応を行わずに、反応缶の温度を280℃に維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は10ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0132】 比較例2 有機スルホン酸系化合物を、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)に変更した以外は、比較例1と同様の操作を行って、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は15ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0133】 比較例3 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)を、280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、さらにエチレングリコール(12質量部)を投入して、G/Aを1.51としたのち、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加した。エーテル化反応を行わずに、反応缶の温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を4時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は13ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.1モル%であった。 【0134】 比較例4 加熱溶融したエステル化物Aを230℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、230℃で10分間のエーテル化反応を行った。 次に、反応缶の温度を10分間で280℃に昇温し、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を2時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、17ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0135】 比較例5 加熱溶融したエステル化物Aを280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にして、重縮合反応を1時間行った。その後常圧に戻し、得られたエステル化物のG/Aは、1.03であった。 このエステル化物に対して、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、280℃で10分間のエーテル化反応を行った。 温度を維持したまま、再び、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を1時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、30ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0136】 比較例6 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)とエステル化物B(42質量部)を280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、5-スルホサリチル酸二水和物(SS)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加した。エーテル化反応を行わずに、反応缶の温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を4時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、20ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.1モル%であった。 【0137】 比較例7 エステル化物Bの投入量を113質量部に変更する以外は、比較例6と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は19ppmの硫黄成分を含んでおり、トリエチレングリコール量は0.1モル%であった。 【0138】 比較例8 加熱溶融したエステル化物Aを280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、三酸化アンチモン(Sb)を2.3×10-4モル/酸成分モル添加し、エーテル化反応を行わずに反応缶の温度を280℃に維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を2時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0139】 比較例9 加熱溶融したエステル化物Aを280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、三酸化アンチモン(Sb)を2.3×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、280℃で60分間のエーテル化反応を行い、反応缶の温度を280℃に維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を2時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0140】 比較例10 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)と、エステル化物B(113質量部)とを、280℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、三酸化アンチモン(Sb)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加した。エーテル化反応を行わずに、反応缶の温温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、ポリエステル樹脂を得た。ポリエステル樹脂は、硫黄成分を含んでおらず、トリエチレングリコールの含有量が0.1モル%であった。 【0141】 比較例11 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)、テレフタル酸(5.3質量部)、および1,4-シクロヘキサンジメタノール(4.6質量部)を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。次に、反応管の温度を280℃に昇温したのち、二酸化ゲルマニウム(Ge)を2.5×10-4モル/酸成分モル添加し、エーテル化反応を行わずに系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を2時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0142】 比較例12 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)、テレフタル酸(4.4質量部)、およびネオペンチルグリコール(2.8質量部)を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。次に、反応管の温度を280℃に昇温したのち、二酸化ゲルマニウム(Ge)を2.5×10-4モル/酸成分モル添加し、エーテル化反応を行わずに、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0143】 比較例13 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)、テレフタル酸(4.4質量部)、および3-メチル-1,5-ペンタンジオール(2.4質量部)を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。次に、反応管の温度を280℃に昇温したのち、二酸化ゲルマニウム(Ge)を2.5×10-4モル/酸成分モル添加し、エーテル化反応を行わずに、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0144】 比較例14 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)、テレフタル酸(5.8質量部)、およびビスフェノールAのエチレンオキシド付加物(11.1質量部)を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を1時間行った。次に、反応管の温度を280℃に昇温したのち、三酸化アンチモン(Sb)を2.0×10-4モル/酸成分モル添加し、エーテル化反応を行わずに、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0145】 比較例15 テレフタル酸を2.2質量部、イソフタル酸を3.6質量部、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物を11.1質量部に変更する以外は比較例14と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0146】 比較例16 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)、テレフタル酸(27.9質量部)、および1,4-ブチレングリコール(15.1質量部)を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を2時間行った。次に、テトラ-n-ブチルチタネート(Ti)を4.0×10-4モル/酸成分モル添加し、常圧下、10分間のエーテル化反応を行わずに、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0147】 比較例17 テレフタル酸を83.6質量部、1,4-ブチレングリコールを45.4質量部、加熱混合時間を4時間に変更する以外は比較例16と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0148】 比較例18 加熱溶融したエステル化物A(100質量部)、テレフタル酸(133.8質量部)、ε-カプロラクトン(9.1質量部)および1,4-ブチレングリコール(72.6質量部)を260℃に加熱した重縮合反応缶に投入し、0.05MPaの窒素雰囲気下において加熱混合を5時間行った。次に、テトラ-n-ブチルチタネート(Ti)を4.0×10-4モル/酸成分モル添加し、エーテル化反応を行わずに、温度を維持したまま、系の圧力を徐々に減じて60分後に0.5hPa以下にした。この条件で撹拌しながら重縮合反応を3時間行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0149】 比較例19 テレフタル酸を98.4質量部、ε-カプロラクトンを24.1質量部、1,4-ブチレングリコールを53.4質量部に変更する以外は比較例18と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0150】 比較例20 テレフタル酸を167.2質量部、ε-カプロラクトンを31.5質量部、1,4-ブチレングリコールを90.7質量部に変更する以外は比較例19と同様の操作を行い、共重合ポリエステル樹脂を得た。共重合ポリエステル樹脂からは、硫黄成分、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールは検出されなかった。 【0151】 上記実施例1~8にて得られたポリエステル樹脂を常法により乾燥・結晶化した後に、エクストルーダー型紡糸機に投入し、紡糸温度290℃、0.2mmφ、36ホールを有するノズルから押し出し、冷却した後に、1400m/分の速度で巻き取った。得られた未延伸糸をローラー温度80℃、熱セット温度150℃で延伸することで、56dtex36フィラメントの長繊維を得た。 さらに、上記実施例1~8にて得られたポリエステル樹脂を常法により乾燥・結晶化した後に、ダイスリット幅150mm×0.5mのエクストルーダー型製膜機に投入し、成膜温度290℃、巻取りロール温度30℃、およそ2m/minの速度で膜厚が0.2mmになるように製膜し巻き取った。得られた未延伸フィルムを、バッチ式延伸装置にセットし、80℃でMD×TD方向に4.0×4.0倍に延伸しフィルムを得た。 【0152】 実施例1~20、比較例1~10にて得られたポリエステル樹脂の重合条件、樹脂組成、樹脂特性、成形体評価を、表1~3に示す。また実施例21~36、比較例11~20にて得られたポリエステル樹脂の重合条件、樹脂組成、樹脂特性、成形体評価を表4~7に示す。 【0153】 【表1】 [図:0001395261000001.jpg] 【0154】 【表2】 [図:0001395261000002.jpg] 【0155】 【表3】 [図:0001395261000003.jpg] 【0156】 【表4】 [図:0001395261000004.jpg] 【0157】 【表5】 [図:0001395261000005.jpg] 【0158】 【表6】 [図:0001395261000006.jpg] 【0159】 【表7】 [図:0001395261000007.jpg] 【0160】 実施例1~36で得られた本発明のポリエステル樹脂は、成形体とした場合の各種性能に優れていた。 比較例1~3、6~7においては、エーテル化反応を行わなかったために、また比較例4においてはエーテル化反応の温度が低かったために、また比較例5においては、グリコール成分(G)と酸成分(A)とのモル比(G/A)が低い原料を用いてエーテル化反応を行ったために、得られたポリエステル樹脂は、いずれも、トリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を満足せず、成形体は、破断伸度が低いものであった。 比較例8~10、14~20においては、触媒として有機スルホン酸系化合物ではなく金属系触媒(アンチモン系触媒、またはチタン系触媒)を用いてポリエステル樹脂を製造したために、得られた成形体は、いずれもヘイズに劣るものとなった。比較例11~13において、ゲルマニウム系触媒を用いて製造したポリエステル樹脂は、ヘイズに優れるが、トリエチレングリコールの含有量が本発明で規定する範囲を満足せず、成形体は、破断伸度が低いものであった。」 2 甲1~甲3に記載された事項 (1)甲1に記載された事項 本件特許の優先日前に公知となった甲1には、次の記載がある。 「【請求項1】 酸成分、グリコール成分、および酸成分100モル%を基準にして0~約5.0モルパーセントの、多官能性酸、グリコール、またはその混合物から選択される多官能性分枝剤を含むスルホン化脂肪族-芳香族コポリエーテルエステルであって、 前記酸成分が a.全酸成分100モルパーセントを基準にして約97.95~約20.0モルパーセントの芳香族ジカルボン酸成分と、 b.全酸成分100モルパーセントを基準にして約2.0~約79.95モルパーセントの脂肪族ジカルボン酸成分と、 c.全酸成分100モルパーセントを基準にして約0.05~約0.75モルパーセントのスルホネート成分と を含み、 前記グリコール成分が a.全グリコール成分100モルパーセントを基準にして約100~約95.0モルパーセントの第1のグリコール成分としてのエチレングリコールと、 b.全グリコール成分100モルパーセントを基準にして0~約5.0モルパーセントの1つまたは複数の第2のグリコール成分とを含むことを特徴とするスルホン化脂肪族-芳香族コポリエーテルエステル。」 「【0016】 芳香族ジカルボン酸成分は、8個の炭素~20個の炭素を有する無置換および置換芳香族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸のグリコレートエステル、および芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルから選択される。望ましいジカルボン酸の例には、テレフタル酸類、イソフタル酸類、ナフタル酸類および二安息香酸類(bibenzoate)から誘導されたものが含まれる。芳香族ジカルボン酸成分として使用するのに望ましいジカルボン酸の具体例には、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタル酸ジメチル、2,7-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタル酸ジメチル、3,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸ジメチル、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸ジメチル、3,4’-ジフェニルスルフィドジカルボン酸、3,4’-ジフェニルスルフィドジカルボン酸ジメチル、4,4’-ジフェニルスルフィドジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルフィドジカルボン酸ジメチル、3,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、3,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸ジメチル、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸ジメチル、3,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸ジメチル、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンジカルボン酸ジメチル、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタル酸ジメチル、4,4’-メチレンビス(安息香酸)、4,4’-メチレンビス(安息香酸)ジメチル、およびそれから誘導される混合物が含まれる。芳香族ジカルボン酸成分は、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタル酸ジメチル、またはその混合物から選択されることが好ましい。本質的に任意の芳香族ジカルボン酸を使用することができる。スルホン化ポリエステル組成物は、約80~約50モルパーセントの芳香族ジカルボン酸成分を含むことが好ましい。」 「【0019】 本発明のスルホン化脂肪族-芳香族コポリエステルのグリコール成分の第1のグリコール成分は、主として、かつ好ましくは実質的にエチレングリコールである。」 「【0177】 (実施例2) 250ミリリットルのガラスフラスコに、テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)(88.86グラム)、エチレングリコール(6.27グラム)、イソフタル酸ジメチル -3-スルホン酸ナトリウム(0.15グラム)、グルタル酸ジメチル(24.03グラム)、酢酸マンガン(II)四水和物(0.042グラム)、および三酸化アンチモン(III)(0.034グラム)を添加した。反応混合物を、緩やかな窒素パージ下で撹拌し、180℃に加熱した。180℃に到達した後、反応混合物を、緩やかな窒素パージ下で撹拌しながら3.6時間にわたって275℃に加熱した。得られた反応混合物を、わずかな窒素パージ下に275℃で1時間撹拌した。無色の留出液12.8グラムをこの加熱サイクルで収集した。次いで、反応混合物を、撹拌しながら275℃で完全真空にした。得られた反応混合物を、完全真空下(圧力100mトール未満)で2.4時間撹拌した。次いで、真空を窒素で解除し、反応塊を放置して室温まで冷却した。留出液をさらに7.0グラム回収し、固体生成物64.0グラムを回収した。 【0178】 試料を、上記に記述するように実験室相対粘度(LRV)について測定し、LRV32.7であることが判明した。この試料を計算すると、0.84dL/gの内部粘度を有していた。 【0179】 試料は、示差走査熱分析(DSC)分析を行った。ガラス転移温度(Tg)は、開始温度35.8℃、中点温度37.6℃、および終点温度39.5℃であると判明した。幅の広い結晶融点(Tm)が185.1℃(16.8J/g)で観察された。」 (2)甲2に記載された事項 本件特許の優先日前に公知となった甲2には、次の記載がある。 「【請求項1】 主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる繰り返し単位を有する芳香族系ポリエステルであって、共重合したTEG含有量が前記ポリエステルの重量に対して0.01~10000ppmであり、かつアセトアルデヒドの含有量が30ppm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。 【請求項2】 芳香族系ポリエステルが主としてテレフタル酸成分とエチレングリコール成分とからなる繰り返し単位を有するものであることを特徴とする請求項1記載のポリエステル樹脂組成物。」 「【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明のポリエステル樹脂組成物の実施の形態を具体的に説明する。すなわち、本発明は、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる繰り返し単位を有する芳香族系ポリエステルとトリエチレングリコールが0.01ppmから10000ppmでなおかつアセトアルデヒドの含有量が50ppm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物で、好ましくはトリエチレングリコールが0.05ppm以上、、さらに好ましくは0.1ppm以上、最も好ましくは0.5ppm以上であり、また、上限は好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは500ppm以下、最も好ましくは100ppm以下である。トリエチレングリコールが0.01ppm未満では中空成形品の口栓部結晶化速度が遅くなる傾向にあり、AAの含有量が増大する傾向にり、また、10000ppmを越えると耐熱性が低下する傾向にある。トリエチレングリコールを適正量にすることにより、分子の流動性が改善されるためか、結晶化速度が適正な範囲となり、また、溶融粘度の低下等のためか、溶融時のアセトアルデヒドの発生が抑えられる。」 「【0029】また、ジエチレングリコール(以下「DEG」という)とトリエチレングリコール(以下「TEG」という)については、重合反応中にエチレングリコールより一部副生してくるため、DEG及び/又はTEGとそのエステル形成性誘導体の所定量を重合原料として用いる場合のほか、反応条件、添加剤などを適宜選択することのみでDEG成分及び/又はTEG成分の含有量を制御することができる。特に、本発明の共重合ポリエステルの場合、TEGを添加した効果によって、溶融重合温度を下げることができ、DEG成分副生量やAA成分副生物を低く抑えることが容易である。また、添加剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムおよび炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加し、DEG及び/又はTEGの生成を抑制することができる。一方、硫酸などの無機酸を重合原料中に少量添加すれば、DEG及び/又はTEGの生成を促進し、含有量を増加させることもできる。これらのDEG及び/又はTEGの生成量をコントロールする添加剤は、必要ならば、通常、全重合原料の0.001~10重量%、好ましくは、0.005~1重量%の範囲で使用してもよい。」 (3)甲3に記載された事項 本件特許の優先日前に公知となった甲3には、次の記載がある。 「【0101】 (9)ポリエステル合成例 ポリエステル樹脂(A)の合成例 攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にジメチルテレフタル酸 9700部、エチレングリコール 6067部、ネオペンチルグリコール 207部、三酸価アンチモン 4.365部、酢酸コバルト 1.05部を仕込み、160℃から240℃まで3時間かけてエステル交換反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、50分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、250℃にて60分間重縮合反応を行った。このポリエステル樹脂を真空中(760mmHg)で125℃で2時間結晶化後、208℃まで温度を上げ、16時間、固相重合を実施した。得られたポリエステル樹脂(A)はNMR等の組成分析の結果、酸成分がモル比でテレフタル酸=100であり、グリコール成分がモル比でエチレングリコール/ネオペンチルグリコール/ジエチレングリコール/トリエチレングリコール=95.00/3.00/1.85/0.15で数平均分子量17000 重量平均分子量1000以下が1.0wt%であった。特性値を表1に示した。」 「【0103】 【表1】 [図:0001395261000008.jpg] 」 3 申立理由1について (1)サポート要件の考え方 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである(知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照)。 (2)本件発明が解決しようとする課題 本件発明が解決しようとする課題は、本件明細書の【0008】の記載からみて、「成形体とした場合に、透明性に優れるとともに機械的特性にも優れるポリエステル樹脂を提供すること」であると認められる。 (3)本件発明2~12についてのサポート要件の検討 上記(1)の考え方にしたがって、本件発明2~12がサポート要件を満たすか否かについて検討する。 本件明細書の【0009】には、「グリコール成分としてエチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコールを含み、トリエチレングリコール含有量が特定範囲であるポリエステル樹脂は、成形体の透明性に優れ、成形体とした場合の機械的特性に優れることを見出し、本発明に到達した。」と記載されており、それに関して、【0014】には、「本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分がエチレングリコールとジエチレングリコールと所定量のトリエチレングリコールとを同時に含有することで、機械的特性に優れる成形体を得ることができる。本発明のポリエステル樹脂は、グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であることが必要であり、0.2~4.0モル%であることが好ましい。ポリエステル樹脂は、トリエチレングリコールの含有量が0.1モル%以下であると、機械的特性の向上効果が十分に得られず、一方、5.5モル%を超えると、熱特性、耐候性が低下する。」と記載されている。 また、【0046】には、「硫黄成分の含有量が1ppm未満であると、機械的特性に劣る場合がある。一方、500ppmを超えると、副反応物の生成またはポリエステルの着色の原因となる場合がある。」と記載されている。 そして、本件明細書には、実施例1~36として、 「ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂であって、 グリコール成分が、エチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含み、 グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であり、」 という要件(以下、「要件1」という。)を満たし、かつ、金属成分の含有量が0ppmで、硫黄成分の含有量が1~32ppmであるポリエステル樹脂が、成形体の破断伸度(機械的特性)及びヘイズ(透明性)の評価が良好となっていることが示されている。 一方、比較例1~20として、要件1を満たさないポリエステル樹脂が記載され、それらは成形体の破断伸度が劣ることが示されている。 ここで、金属成分の含有量について検討すると、本件明細書の【0003】~【0005】の記載から、金属成分の有無が透明性に関与することは理解できるものの、ポリエステル樹脂の原料組成が同じで、かつ金属成分を含んでいない実施例1と比較例1を比較すると、要件1を満たす実施例1の方が、要件1を満たさない比較例1よりヘイズが小さくなっている(すなわち透明性が優れている)ことが理解できる。そうすると、金属成分を含まないことだけが透明性に寄与するのではなく、要件1により、機械的特性だけではなく、透明性が向上されることが理解できる。 また、硫黄成分の含有量について検討すると、硫黄成分を含んでいない比較例8~20は破断伸度、ヘイズの評価が劣っているものの、比較例8~20は硫黄成分に加えて、要件1も満たしていないものである。そして、硫黄成分を10~30ppm含んでいても、要件1を満たさない比較例1~7も、破断伸度の評価が劣っている。加えて、上記のとおり、本件明細書の【0046】には「硫黄成分の含有量が1ppm未満であると、機械的特性に劣る場合がある。一方、500ppmを超えると、副反応物の生成またはポリエステルの着色の原因となる場合がある。」と記載されているものの、この記載は、機械的特性の劣化や着色を避けるために、より好ましい事項を述べているに過ぎないのであって、上記実施例・比較例の対比からも理解できるように、要件1に加えて、「硫黄成分の含有量を1ppm~500ppm」という要件がないと、本件発明の課題が解決できないとまではいえない。 以上の事項をふまえると、当業者は 「ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂であって、 グリコール成分が、エチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含み、 グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であり」 という要件1を満たす特定事項により、本件発明の課題を解決できると認識するものである。 そうすると、本件発明2は上記特定事項を含むものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できると認識するものである。 よって、本件発明2及びそれを引用する本件発明3~12が、発明の詳細な説明に記載したものでないとすることはできない。 (4)申立人の主張について 申立人は、申立書5頁16~22行において、「触媒由来ではない硫黄成分を含有する場合であっても本件特許発明2の範囲内となっている・・・。しかし、本件明細書には触媒として有機スルホン酸系化合物を用いていない場合については何ら記載されておらず、換言すると、触媒由来ではない硫黄成分を含有するポリエステルについては記載されていない。」と主張している。 しかし、本件明細書の【0046】には、上記のとおり「硫黄成分の含有量が1ppm未満であると、機械的特性に劣る場合がある。一方、500ppmを超えると、副反応物の生成またはポリエステルの着色の原因となる場合がある。」と記載されているところ、本件発明2のポリエステル樹脂に含まれる硫黄成分のうち、触媒由来のもののみが、ポリエステル樹脂の機械的特性や着色に関係し、その他の硫黄成分はこれらに関与しないとする合理的理由はない。 また、申立人は、硫黄成分が触媒由来でなければ本件発明の課題を解決することができないとする具体的な根拠を挙げていない。 なお、本件明細書の【0022】には、ポリエステルを構成するグリコール成分として「1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン」等の硫黄を含有する成分も例示されているから、これを用いて製造されたポリエステルは「触媒由来ではない硫黄成分を含有するポリエステル」になるから、触媒由来でない硫黄成分を含有するポリエステルについて記載されていない、ということもできない。 そして、本件明細書【0021】には「本発明のポリエステル樹脂において、グリコール成分にジエチレングリコールとトリエチレングリコールを同時に含有させたり、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコールのそれぞれの含有量や、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールの合計含有量や、トリエチレングリコールとテトラエチレングリコールの合計含有量を上記範囲とする方法としては、例えば、後述のポリエステル樹脂の製造方法において、重合触媒として有機スルホン酸系化合物を用いて、特定の温度と時間でグリコール成分のエーテル化反応を行う工程を含ませる方法が挙げられる。」と記載され、その方法についての記載である【0046】に「有機スルホン酸系化合物の添加量を上記の範囲とすることで、得られるポリエステル樹脂の硫黄成分の含有量を、好ましくは1~500ppm・・・とすることができる。」と記載され、実施例1~36のポリエステル樹脂は、全て上述の「重合触媒として有機スルホン酸系化合物を用いて、特定の温度と時間でグリコール成分のエーテル化反応を行う工程を含ませる方法」によって製造されている。 これらの記載と、上記(3)で言及したこと考慮すると、ポリエステル中の硫黄成分の存在自体が、本件発明の課題の解決に貢献するというよりは、 「ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂であって、 グリコール成分が、エチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含み、 グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であり」 という条件を満たすポリエステル樹脂を製造するために有機スルホン酸系化合物を触媒として使用する必要があり、それに由来する硫黄成分が樹脂中に残渣として残ってしまう、という程度にすぎないことが理解できる。 そうすると、申立人の主張するように、触媒成分でない硫黄成分を含有する場合であっても、そのポリエステル樹脂が 「ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂であって、 グリコール成分が、エチレングリコールを含むとともに、ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含み、 グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下であり、」という要件を満たすものであれば、上記(3)で指摘したように、本件発明の課題を解決できるものと認められる。 したがって、申立人の主張は採用することができない。 (5)小括 よって、本件発明2及びそれを直接または間接的に引用する本件発明3~12は、発明の詳細な説明に記載したものといえるから、本件発明2~12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない発明に対して特許されたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。 4 申立理由2、3について (1)甲1に記載された発明 甲1には、「スルホン化脂肪族-芳香族コポリエーテルエステル」についての発明が記載されており(請求項1)、その具体例として実施例2が記載されている。 実施例2及び請求項1に着目すると、甲1には次の発明が記載されている。 「250ミリリットルのガラスフラスコに、テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)(88.86グラム)、エチレングリコール(6.27グラム)、イソフタル酸ジメチル -3-スルホン酸ナトリウム(0.15グラム)、グルタル酸ジメチル(24.03グラム)、酢酸マンガン(II)四水和物(0.042グラム)、および三酸化アンチモン(III)(0.034グラム)を添加し、反応混合物を、緩やかな窒素パージ下で撹拌し、180℃に加熱し、180℃に到達した後、反応混合物を、緩やかな窒素パージ下で撹拌しながら3.6時間にわたって275℃に加熱し、得られた反応混合物を、わずかな窒素パージ下に275℃で1時間撹拌し、無色の留出液12.8グラムをこの加熱サイクルで収集し、次いで、反応混合物を、撹拌しながら275℃で完全真空にし、得られた反応混合物を、完全真空下(圧力100mトール未満)で2.4時間撹拌し、次いで、真空を窒素で解除し、反応塊を放置して室温まで冷却し、留出液をさらに7.0グラム回収し、固体生成物64.0グラムの形態であるスルホン化脂肪族-芳香族コポリエーテルエステル」(以下「引用発明」という。) (2)本件発明2の対比・判断について ア 本件発明2と引用発明との対比 本件発明2と引用発明を対比する。 引用発明の「スルホン化脂肪族-芳香族コポリエーテルエステル」は、本件発明2の「ポリエステル樹脂」に相当する。そして、引用発明の「テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)」、「グルタル酸ジメチル」は、甲1の【0016】に「芳香族ジカルボン酸成分として使用するのに望ましいジカルボン酸の具体例には、・・・テレフタル酸ビス(2-ヒドロキシエチル)」、【0017】に「脂肪族ジカルボン酸成分は・・・グルタル酸ジメチル」と記載されていることからみて、いずれも本件発明2の「ジカルボン酸成分」に相当する。 また、引用発明の「イソフタル酸ジメチル-3-スルホン酸ナトリウム」は、「イソフタル酸ジメチル」に「スルホン酸ナトリウム」という基が置換した化合物であり、その置換基が存在しても「イソフタル酸ジメチル」構造は残っており、甲1の【0016】に芳香族ジカルボン酸成分の例として「イソフタル酸ジメチル」が挙げられていることからみて、引用発明の「イソフタル酸ジメチル-3-スルホン酸ナトリウム」も本件発明2の「ジカルボン酸成分」に相当する。 また、引用発明の「エチレングリコール」は、本件発明2の「グリコール成分」に相当する。 そうすると、両者は、 「ジカルボン酸成分とグリコール成分とを含むポリエステル樹脂であって、 グリコール成分が、エチレングリコールを含む、 ポリエステル樹脂」 である点において一致し、以下の点で相違する。 (ア)相違点1 グリコール成分が、本件発明2では(エチレングリコールに加えて)「ジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含み、グリコール成分におけるトリエチレングリコールの含有量が0.1モル%を超え5.5モル%以下」であるのに対し、引用発明ではそのことが明らかでない点 (イ)相違点2 ポリエステル樹脂が、本件発明2では「硫黄成分の含有量が1~500ppmである」のに対し、引用発明ではそのことが明らかでない点 イ 相違点についての判断 相違点1について検討する。 甲1には、グリコール成分がジエチレングリコールとトリエチレングリコールとを含むことについて記載がない。 一方、甲2には、ポリエステル樹脂の製造に関して、「ジエチレングリコール(以下「DEG」という)とトリエチレングリコール(以下「TEG」という)については、重合反応中にエチレングリコールより一部副生してくる」(【0029】)ことが記載されている。 しかし、甲2には、引用発明と同一条件下でポリエステルを製造した際に、DEGとTEGが副生することまでは記載されていない。この点について、甲2の【0029】には、反応条件、添加剤などを適宜選択することでDEG、TEGの含有量を制御することができることが記載されていることからみると、むしろTEGが副生するか否かは、反応条件や添加剤に依存するものと理解すべきであり、このことは、本件明細書の比較例8~10ではジエチレングリコールは副生しても、トリエチレングリコールは必ずしも副生しないことによっても裏付けられる。 そうすると、甲2の上記記載をもって、引用発明においてトリエチレングリコールが副生するとはいえず、ましてやその量が「0.1モル%を超え5.5モル%以下」であるなどということはできない。 また、甲3の【0103】【表1】に、ジカルボン酸成分がテレフタル酸で、グリコール成分の組成が、エチレングリコール95モル%、ネオペンチルグリコール3モル%、ジエチレングリコール1.85モル%、トリエチレングリコール0.15モル%である、ポリエステル樹脂(A)が記載されており、その合成例として、【0101】には「攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にジメチルテレフタル酸 9700部、エチレングリコール 6067部、ネオペンチルグリコール 207部、三酸価アンチモン 4.365部、酢酸コバルト 1.05部を仕込み、160℃から240℃まで3時間かけてエステル交換反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、50分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、250℃にて60分間重縮合反応を行った。このポリエステル樹脂を真空中(760mmHg)で125℃で2時間結晶化後、208℃まで温度を上げ、16時間、固相重合を実施した。」ことが記載されている。 甲3のポリエステル樹脂(A)は、本件発明2における相違点1に係る構成要件を満たすものであるが、甲3のポリエステル樹脂(A)の製造方法は、引用発明のポリエステルの製造方法と原料、反応温度、反応時間が異なるものであるし、上述したように、甲2の記載からみて、TEGが副生するかやその程度は、反応条件や添加剤に依存するものと理解すべきであり、このことは、本件明細書の比較例8~10ではジエチレングリコールは副生しても、トリエチレングリコールは必ずしも副生しないことによっても裏付けられる。 よって、甲3のポリエステル樹脂(A)が本件発明2における相違点1に係る構成要件を満たすものであるとしても、そのことをもって、それとは異なる条件で製造された引用発明のコポリエーテルエステルが本件発明2における相違点1に係る構成要件を満たすものであるとはいえない。 したがって、甲2、甲3の記載を考慮しても、引用発明が相違点1に係る構成要件を満たすものであるとはいえないし、また、引用発明と甲2、甲3の記載により、引用発明が相違点1を満たすようにすることが当業者にとって容易に想到することであるともいえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、申立書9頁下から8行~12頁下から2行において、甲1の2発明(引用発明に相当)では重合反応中にジエチレングリコールとトリエチレングリコールがエチレングリコールにより一部副生していることは甲2及び甲3より技術常識であること、甲1(引用発明)でも甲3でも同程度の時間及び温度でエステル化反応を行っており、引用発明でも相違点1の構成要件を満足している蓋然性が高い旨主張する。 しかし、甲2及び甲3の記載をみても、引用発明において、相違点1を満足している蓋然性が高いといえないことは上記のとおりであるから、申立人の主張は採用することができない。 エ 小括 よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとも、また、甲1~甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえず、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 (3)本件発明3、6、8~12について 本件発明3、6、8~12は、本件発明2を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明3、6、8~12についても、本件発明2と同様に、甲1に記載された発明であるとも、また、甲1~甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 よって、本件発明3、6、8~12に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当するものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、申立書に記載した理由によっては、本件発明2~12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明2~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701116

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