特許異議申立
2022-701153
再生ポリエステル樹脂の製造方法
- 審判番号
- 2022-701153
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-059233
- 登録番号
- 7072764
- 請求日
- 2022年11月21日
- 審決日
- 2023年02月09日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ユニチカ株式会社
- 【権利者代理人】藤井 淳
- 【権利者】日本エステル株式会社
- 【権利者代理人】藤井 淳
- 【権利者】ユニチカトレーディング株式会社
- 【権利者代理人】藤井 淳
- 【異議申立人】石川 竜郎
- 審判長/審判官
- 審判長 杉江 渉
- 審判官 藤代 亮
- 審判官 海老原 えい子
- 分類
- P1651.121-Y (C08G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7072764号発明「再生ポリエステル樹脂の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7072764号の請求項1~2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7072764号(以下「本件特許」という。)の請求項1~2に係る特許についての出願は、令和2年3月28日を出願日(優先日1:平成31年3月29日 日本国(JP)、優先日2:令和1年6月17日 日本国(JP))とするものであって、令和4年5月13日に特許権の設定登録がされ、令和4年5月23日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その請求項1~2に係る特許に対し、令和4年11月21日に特許異議申立人石川 竜郎(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7072764号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~2に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~2に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明2」といい、これらをまとめて、「本件発明」という。また、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。)
「【請求項1】
a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、
(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程、
(2)前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程、
(3)前記濾液に重合触媒を添加し、温度 260~285℃及び0.5~1.0hPaの減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う工程
を含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記原料中において、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル樹脂の少なくとも1種を40質量%以上含有する、請求項1に記載の製造方法。」
第3 申立人が申立てた特許異議申立理由
申立人が申立てた特許異議の申立ての理由の概要及び証拠方法は以下のとおりである。
1 特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1-1(進歩性)
本件発明1~2は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由1-2(進歩性)
本件発明1~2は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証:特開2010-6962号公報
甲第2号証:特開昭60-248646号公報
甲第3号証:特開2005-171138号公報
(以下、「甲1」~「甲3」という。)
第4 本件明細書及び各甲号証に記載された事項
1 本件明細書に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。
(本a)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な再生ポリエステル樹脂及び再生ポリエステル樹脂の製造方法に関する。特に、本発明は、使用済ポリエステル製品に由来するリサイクルポリエステル原料のほか、ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルに由来するリサイクルポリエステル原料を用いて製造され、異物の混入量が少なく、バージンポリエステル樹脂と同様に各種の成形品に加工することができる再生ポリエステル樹脂及びその製造方法に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物を十分に除去されており、バージンポリエステル樹脂と同様に各種の製品を得ることができる再生ポリエステル樹脂を得る方法は未だ開発されるに至っていない。
【0012】
特に、ポリエステル樹脂を用いて溶融紡糸を行い、繊維を製造しようとする際には、異物の混入量が生産性に大きく影響を及ぼす。繊維を製造する際には、溶融紡糸工程において孔径の小さいノズルから樹脂を押出し、押し出された多数の糸状物をローラに引き取り、必要に応じて、延伸や熱処理工程を行い、さらに巻き取る工程を経る。この場合、異物が混入した樹脂を使用すると、溶融紡糸、延伸・熱処理、巻取工程のいずれにおいて糸切れのトラブルが生じやすく、安定した生産を実施することが困難となる。
【0013】
この問題は、より細繊度化した繊維を製造しようとする場合により顕著になる。例えば、ポリエステル屑等を原料として用いて製造された再生ポリエステル樹脂において、それを溶融紡糸することにより、特に単糸繊度が0.5デシテックス以下の極細繊維を得ることは未だ実現されていない。
【0014】
従って、本発明の主な目的は、上記の問題点を解決し、使用済みポリエステル製品に由来するリサイクルポリエステル原料、あるいはポリエステル樹脂及び製品を製造する工程で発生する屑等に由来するリサイクルポリエステル原料を原料として、各種の形態のポリエステル製品の製造に利用できる再生ポリエステル樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、リサイクルポリエステル原料を用いて特定の工程で処理することにより得られるポリエステル樹脂が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
・・・
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、使用済みポリエステル製品に由来するリサイクルポリエステル原料、あるいはポリエステル樹脂及び製品を製造する工程で発生するポリエステル屑等に由来するリサイクルポリエステル原料を原料として、各種の形態のポリエステル製品の製造に利用できる再生ポリエステル樹脂を提供することができる。
【0018】
特に、本発明では、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を高比率で利用しつつ、異物の混入量が少なく、かつ、カルボキシル末端基濃度、ジエチレングリコールの含有量が特定の範囲に制御された再生ポリエステル樹脂を提供することができる。その結果、例えば溶融紡糸により繊維を得る工程、製膜によりシート又はフィルムを得る工程、ボトル等の成形品を得る工程において、比較的長期にわたる連続運転が可能となり、生産性良く各種の形態の製品を製造することができる。
【0019】
また、本発明の再生ポリエステル樹脂により得られる製品(繊維、シート、フィルム、ボトル等)は、熱安定性が高く、耐熱性等に優れており、バージンポリエステル樹脂を用いたものと同様の優れた品質を発揮することができる。
【0020】
本発明の再生ポリエステル樹脂の製造方法によれば、上記したような異物の混入量が少なく、かつ、熱安定性が高く、耐熱性に優れた再生ポリエステル樹脂を効率良くかつ確実に製造することが可能となる。」
(本b)
「【0022】
本発明樹脂を構成する樹脂成分としては、a)使用済みポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含む。これらの成分が、本発明樹脂を構成するポリエステルの一部となっている。
【0023】
上記a)の使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維を含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。
【0024】
上記b)のポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルは、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑(ポリエステル屑)、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。」
(本c)
「【0039】
2.再生ポリエステル樹脂の製造方法
本発明樹脂の製造方法は、限定的ではないが、例えば次の製造方法によって本発明樹脂を好適に製造することができる。すなわち、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、
(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程、(解重合工程)
(2)前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程(ろ過工程)、
(3)前記濾液に重合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う工程(重縮合工程)
を含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法を好適に採用することができる。換言すれば、本発明の再生ポリエステル樹脂は、上記の再生ポリエステル樹脂の製造方法によって得られる再生ポリエステル樹脂を好適に採用することができる。
【0040】
解重合工程
解重合工程では、エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る。
【0041】
エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールは、いずれも公知又は市販のものを使用することができる。また、公知の製造方法によって製造することもできる。
【0042】
特に、エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールとテレフタル酸とのエステル化反応物を好適に用いることができる。また、エチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、限定的ではないが、例えば2~20程度とすることができる。
・・・
【0045】
エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの混合に際しては、特に限定されないが、例えばエチレンテレフタレートオリゴマー中にエチレングリコールを添加することが好ましい。また、添加する際は、オリゴマーの固化を防ぐ目的で、攪拌機を回しながら内容物の温度を均一にし、添加することが好ましい。
【0046】
エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの混合物に対し、a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を添加する。上記a)及びb)の具体例としては、前記1.で挙げたものと同様のものを使用することができる。
【0047】
リサイクルポリエステル原料を投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。これによって、酸素の混入を妨げ、色調の悪化をより確実に防ぐことができる。
【0048】
ポリエステル原料は、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加する。前記モル比は、特に1.10~1.33であることが好ましく、その中でも1.12~1.30であることが好ましい。全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、得られる再生ポリエステル樹脂は、本発明で規定するカルボキシル末端基濃度及びジエチレングリコールの含有量の少なくとも一方を満足しないものとなり、また平均昇圧速度も高くなる。これは、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、各種の無機物及び非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われないため、ろ過工程でこれらの異物を効果的に濾過することができず、重縮合工程後に異物が析出しやすくなる結果、平均昇圧速度が高い再生ポリエステル樹脂となる。
【0049】
本発明の製造方法においては、特に解重合工程が重要である。つまり、リサイクルポリエステル原料を利用した従来の方法においては、リサイクルポリエステル原料のみを用いて解重合を行っているのに対し、本発明においてはエチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合反応を行い、かつ、オリゴマー、エチレングリコール及びリサイクルポリエステル原料の全ての成分を全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲内になるようにリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合反応を行う。このようにすることにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われるため、後記のろ過工程において、これらの異物を効果的に濾過することができる。そして、後記の重縮合工程において、ジエチレングリコールの含有量及びカルボキシル末端基濃度が特定量以下のものであり、かつ、異物の混入量が比較的少ない再生ポリエステル樹脂を得ることが可能となる。なお、本発明の製造方法においては、上記の解重合反応により、リサイクルポリエステル原料がモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5~20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。このように制御することにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われる結果、より多くの異物を取り除くことが可能となる。
【0050】
解重合工程において、解重合時の反応温度(特に反応器の内温)を245~280℃の範囲に設定して行うことが好ましく、その中でも255~275℃の範囲に設定して行うことがより好ましい。解重合時の反応温度が245℃未満になる場合には、反応物が固化し、操業性が悪化するとともに、再生ポリエステル樹脂が得られたとしても、ジエチレングリコールの含有量又はカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎる傾向となる。前記反応温度が280℃を超える場合は、得られる再生ポリエステル樹脂のジエチレングリコールの含有量又はカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎるおそれがある。
・・・
【0053】
ろ過工程
ろ過工程では、前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する。
【0054】
前記の解重合工程で得られる反応生成物は、主としてポリエステル原料の解重合体を含む液状体である。ろ過工程では、その液状体を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて異物を濾過するとともに、濾液を回収する。前記の解重合工程では、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率良く行われるため、濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させることにより、析出した異物を濾過し、異物の混入量の少ない解重合体を得ることができる。濾過粒度が25μmより大きいフィルターを使用すると、ポリマー中の異物を十分に除去できず、得られる再生ポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、このような樹脂を用いて紡糸を行うと、ノズルパックの昇圧又は切糸が生じる。一方、濾過粒度が10μmよりも小さいフィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となるほか、操業性も低下するおそれがある。
・・・
【0056】
重縮合工程
重縮合工程では、前記濾液に重縮合触媒を添加し、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う。
・・・
【0064】
重縮合反応において、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。重縮合反応温度が260℃未満である場合、あるいは重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超える場合、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣るものとなる。重縮合反応温度は、その中でも270℃以上とすることがより好ましい。ただし、重縮合反応温度が高過ぎると熱分解によりポリマーが着色し、色調が悪化すること、同じく熱分解により末端基量(COOH)が高くなる。このため、本発明においては、重縮合反応温度の上限は、一般的には285℃以下とすることが好ましい。」
(本d)
「【実施例】
【0081】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0082】
A.再生ポリエステル樹脂について
実施例1
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃及び圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。
エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを10.0質量部投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(ポリエステル樹脂を製造する工程で発生するポリエステル屑のペレット状のもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。
このとき、リサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記することがある。)が1.20となるように投入した。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。そして、得られた解重合体を、エステル化反応器と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.20質量%となるように加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、再生ポリエステル樹脂(極限粘度:0.64)を得た。
・・・
【0098】
試験例1
実施例1~9及び比較例1~7で得られた再生ポリエステル樹脂について以下の特性をそれぞれ調べた。その結果を表1に示す。なお、各特性値等の測定又は評価は、以下のようにして実施した。
【0099】
(a)極限粘度
得られた再生ポリエステル樹脂を用い、フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定するものである。
【0100】
(b)ポリエステル樹脂の組成
得られたポリエステル樹脂を、重水素化ヘキサフルオロイソプロパノールと重水素化クロロホルムとの容量比が1:20の混合溶媒に溶解させ、日本電子社製「LA-400型NMR」装置にて1H-NMRを測定し、得られたチャートの各成分のプロトンのピークの積分強度から、共重合成分の種類と含有量を求めた。
【0101】
(c)カルボキシル末端基濃度
得られた再生ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定して求めた。
【0102】
(d)昇圧試験機により測定した平均昇圧速度
ポリエステル樹脂を、エクストルーダーにて300℃で溶融し、エクストルーダーの先端にフィルターとして、ステンレス鋼製綾畳織フィルター(呼び寸法メッシュ:1400メッシュ、織り方:綾畳織、縦メッシュ:165メッシュ、横メッシュ:1400メッシュ、縦線径:0.07mm、横線径:0.04mm、濾過粒度:12μm、粘性抵抗係数(m-1):2.60×107、慣性抵抗係数:5.14×10、(株)上條精機製)をセットし、さらにその背面(下流側)に補強材(ステンレス鋼製平織金網(呼び寸法メッシュ:40メッシュ、織り方:平織、線径:0.21mm(株)上條精機製)を積層した後、ポリマー吐出量を29.0g/分として、フィルター圧力を昇圧試験機:アサヒゲージ社製「MES-Y44D型」検出器を用いて測定する。前記の昇圧試験機を用いた昇圧試験を12時間連続して行い、昇圧試験を始める際の初期圧力値(MPa)(ポリエステル樹脂がフィルターを通り始めてから5~10分の間の圧力の最小値を初期圧力とする。)と、12時間経過時点の最終圧力値(MPa)の値から、下記計算式により平均昇圧速度を算出する。
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12
【0103】
【表1】
[図:0001395267000001.jpg]
【0104】
表1の結果からも明らかなように、実施例1~9で得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基量、ジエチレングリコールの含有量、平均昇圧速度が本発明で規定する範囲内のものであったため、紡糸操業性に優れていた。
一方、比較例1では、解重合反応時のG/Aが低いため、得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
比較例2では、解重合反応時のG/Aが高いため、得られた再生ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
比較例3では、解重合工程を290℃の熱処理条件下で行ったため、得られた再生ポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度及びジエチレングリコールの含有量が高いものであった。
比較例4では、ES缶とPC缶間に設けたキャンドルフィルターの濾過粒度が30μmであったため、得られた再生ポリエステル樹脂は、平均昇圧速度が高いものとなった。
比較例5では、本発明の製造方法を行わず、解重合反応時のG/Aが高かったため、得られた再生ポリエステル樹脂は、ジエチレングリコールの含有量が高く、平均昇圧速度も高いものであった。
比較例6では、解重合工程を230℃の熱処理条件下で行ったため、反応器内で内容物が固化し、以降の反応続行が不可能となった。
比較例7では、重縮合工程における重縮合反応温度を255℃で行ったため、重合速度が遅く、再生ポリエステル樹脂を得ることができなかった。
・・・」
2 甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(甲1a)
「【請求項1】
酸成分に対するエチレングリコールのモル比が1.3~2.0のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/またはその低重合体を溶融状態で上部に精留塔を有する反応容器に存在させ、その反応容器にポリエステル屑とエチレングリコールを連続的に供給し、205~250℃で、かつ精留塔から実質的にエチレングリコールを留出させることなく、精留塔の塔頂温度がエチレングリコールの沸点より低い温度で解重合反応を行い、次いで該反応物を重縮合反応することを特徴とするポリエステルの製造方法。
【請求項2】
反応容器に連続的に供給するポリエステル屑とエチレングリコールのモル比(エチレングリコール/ポリエステル屑)が0.3~1.0であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
精留塔の塔頂温度が160℃に到達した時点から10~30分で解重合反応を終了させることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステルの製造方法。
【請求項4】
重縮合反応の触媒としてチタン化合物を用いることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のポリエステルの製造方法。
【請求項5】
リン換算で10~200ppmの3価のリン化合物を、得られるポリマーの目標IVに対して85~99%の時点で添加することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載のポリエステルの製造方法。」
(甲1b)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル屑を省エネルギーで、かつ副生成物であるジエチレングリコールの生成量が少ないポリエステルとして再生するポリエステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルはその機能性の有用さから多目的に用いられており、例えば、衣料用、資材用、衣料用に用いられている。その中でも汎用性、実用性の点からポリエチレンテレフタレートが優れ、好適に使用されている。そのため、ポリエチレンテレフタレート製品は年々増加の一途をたどっているため、使用済みポリエチレンテレフタレートのリサイクルは必須の課題となっている。ここで、リサイクル技術にはテレフタル酸やジメチレンテレフタレートなどの原料まで解重合する方法などの他、ビスヒドロキシエチルテレフタレートに代表される低重合体まで解重合する方法などが知られている。
【0003】
ポリエステルのリサイクル技術は古くから検討されており、例えば、ポリエステル屑をエチレングリコールによって解重合するに際し、エチレングリコールを解重合するポリエステル屑に対し1.0~3.0モル倍使用する方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法では解重合に使用するエチレングリコール量が多量に使用されているため、コストアップとなるばかりか、ジエチレングリコールなどの副生成物が多量に発生することで、その後、重縮合反応で得られるポリエステルの品位が劣るという欠点を有している。
【0004】
さらには、酸成分に対するグリコール成分の当量比が1.3~2.0のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を溶融状態で反応容器に生成させ、ポリエステル屑とエチレングリコールを連続的に供給する方法が開示されている(特許文献2)。この方法では、解重合に使用するエチレングリコール量は少なくて済むものの、解重合反応を反応容器上部に取り付けられた精留塔からエチレングリコールを留出および還流させ解重合反応を行っているため、エネルギー使用が多く、さらにはエチレングリコールを留出および還流させるまで加熱する必要があるので、解重合反応に長時間を要し、ジエチレングリコールなどの副生成物が多量に発生してポリエステルの品位が劣るという欠点を有している。
【0005】
その他にもポリエステル屑を解重合させながら、テレフタル酸とエチレングリコールをエステル化反応させる方法も知られている(特許文献3、4)。しかしながらこの方法では、エステル化反応を同時に行っているため、反応容器に添加し、解重合出来るポリエステル屑量が限られてしまうなどの問題点を有している。
【0006】
さらには近年多量に発生しているペットボトルのリサイクル法として、ボトルを回収し、解重合工程、精製工程等、他段階の工程を経ることで、品質の優れたビスヒドロキシエチルテレフタレートを得る方法も知られている(特許文献5)。しかしながらこの方法では、確かに品質の優れたビスヒドロキシエチルテレフタレートを得ることは出来るものの、多額の設備投資が必要となり実用に乏しい。
【0007】
そこで、本発明では上記課題の解決のため鋭意検討した結果、省エネルギーでかつ副生成物であるジエチレングリコールの生成量が少ないポリエステル屑の解重合方法を見出した。この方法は、多額の設備投資も必要なく、その解重合方法によって得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/または低重合体を用いることにより安定したポリエステルの製造方法とすることが出来、本発明の目的を達成できるに至った。
【特許文献1】特開昭48-61447号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開昭60-248646号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特公昭46-15114号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平10-310637号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2000-232701号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は上記従来の問題を解消、すなわち解重合反応の過程で発生するジエチレングリコールの発生を最小限に抑え、さらには省エネルギー化をはかり、かつ設備投資も少ない解重合反応を提供するとともに、その解重合方法によって得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を用いて品位の安定したポリエステルを得ることができる製造方法を提供するにある。」
(甲1c)
「【0011】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明にかかるポリエステル屑の解重合方法は、エチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル屑を解重合することが出来る。ポリエステル屑とは、主成分がエチレンテレフタレートであればよく、プロピレンテレフタレートやブチレンテレフタレートなどのポリエステル屑が目的を損なわない範囲で含まれていてもよい。ポリエステル屑の形態は品質格外になったポリエステルチップ屑、フィルム屑、糸屑のみならず、製品として使用されていたもののいずれであってもよい。それら屑の混率は解重合反応後、重縮合反応によって得られるポリエステルの品位安定を確認しながら適宜変更する必要があるが、基本的には混合して解重合しても何ら問題は無い。しかしながら、得られるポリエステルの品位を安定させるためには、単一のポリエステル屑を使用することが好ましい。ここでいう単一とは、フィルム屑を再利用する場合についての例を挙げると、同一組成のフィルム屑を用いることが最適であるが、実質的に難しいため、数種類のフィルム屑を混合して使用しても良い。
【0012】
本発明にかかる解重合方法は、酸成分に対するエチレングリコールのモル比(エチレングリコール/酸成分)が1.3~2.0のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を予め溶融状態で反応容器に存在させて行うことが必要である。この溶融状態のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を反応容器内に予め存在させておかないと、解重合反応速度が極端に遅くなるばかりか、解重合反応に使用するエチレングリコール量が本願に比べ数倍も必要になる。さらには省エネルギーの観点からも好ましくない。酸成分に対するエチレングリコールのモル比(エチレングリコール/酸成分)は、好ましくは1.3~1.8であり、さらに好ましくは1.4~1.6である。モル比が1.3よりも低いと解重合反応が遅くなるため終了するまでに長時間を要し、ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体が黄味に着色しやすい。さらには解重合反応の効率も悪くなるため、ポリエステル屑の消費が極端に遅くなるため、好ましくない。モル比が2.0よりも高いと解重合反応はスムーズに進行するものの、副生成物であるジエチレングリコールが多量に発生するため、その後の重縮合反応にて得られるポリエステルの品位が悪くなり好ましくない。またエチレングリコールを使用することはコスト面からも好ましくない。この予め溶融状態で反応容器に存在しているビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体の量(A)は、供給するポリエステル屑とエチレングリコール量を足し合わせた量(B)との割合は、A:B=4:6~6:4であることが好ましい。Aの割合が4より少ないと解重合反応に時間を要し、得られるビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体が黄味に着色しやすくなるため好ましくない。Aの割合が6より多いと解重合反応はスムーズに進行するが、副生成物であるジエチレングリコールが発生するため好ましくなく、反応容器の容量が限られているため、ポリエステル屑の消費量が減少して好ましくない。
【0013】
本発明にかかるポリエステル屑の解重合方法は、ポリエステル屑とエチレングリコールを連続的に供給することが必要である。反応容器に一括投入すると溶融状態で存在しているビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体が一気に固化してしまい、解重合反応が進行しなくなるばかりか、攪拌機などに大幅な負荷がかかるため設備を破壊する恐れもある。なお本願でいう連続的とは擬似的に連続的であっても良く、つまり投入するポリエステル屑とエチレングリコールを最低5回程度に分けて反応容器に投入しても良い。
【0014】
それぞれの投入開始時期は実質的に同時に開始することが好ましいが、解重合反応に問題が無ければ同時に供給を開始する必要もなく、同時に供給を終了する必要もなく、特に制限はない。
【0015】
解重合反応温度は205~250℃で行うことにより効率的に解重合反応が進行する。好ましくは215~245℃である。さらに好ましくは、ポリエステル屑とエチレングリコールの連続供給中は215℃~225℃で解重合反応させ、供給終了後は235~245℃まで昇温し、解重合反応を行う。205℃より低いと、熱エネルギーが不足し解重合反応に時間を要し、得られるビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体が黄味に着色しやすくなるため好ましくない。250℃より高いと必要以上の熱エネルギーがかかるため、得られるビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体が黄味に着色しやすくなるため好ましくなく、さらには副生成物であるジエチレングリコールが発生しやすくなり好ましくない。
・・・
【0020】
反応容器に連続的に供給するポリエステル屑とエチレングリコールのモル比(エチレングリコール/ポリエステル屑)が0.3~1.0であることが好ましい。好ましくはモル比が0.3~0.7であり、さらに好ましくは0.4~0.6である。モル比が0.3より小さいと解重合反応が遅くなるため終了するまでに時間を要し、ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体が黄味に着色する。さらには効率も悪くなるため、ポリエステル屑の消費が遅くなるため好ましくない。モル比が1.0よりも大きいと解重合反応はスムーズに進行するものの、副生成物であるジエチレングリコールが多量に発生するため、重縮合反応にて得られるポリエステルの品位が悪くなり好ましくない。またエチレングリコールを多量に使用することはコスト面からも好ましくない。
【0021】
反応容器に連続的に供給するポリエステル屑とエチレングリコールの供給時間は解重合予定時間を1とした場合、その割合として0.4~0.8が好ましく、さらに好ましくは0.5~0.7である。割合が0.4より小さいと溶融状態で存在しているビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体が固化しやすくなり、解重合反応が進行しにくくなるばかりか、攪拌機などに負荷がかかるり設備を破壊する恐れもある。割合が0.8より大きいと解重合反応は順調に進行するものの、副生成物であるジエチレングリコールが生成しやすくなり好ましくない。
・・・
【0023】
さらに本願では、上記解重合方法で得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を用いて重縮合反応することにより品位の優れたポリエステル組成物を得ることが出来る。
【0024】
ポリエステル屑を解重合し得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体は、リサイクルされるため最終的に得られるポリエステルは熱履歴がかかっている。そのため、重縮合反応後に得られるポリマーが黄味になるなどの課題があった。しかしながらポリエステルの着色は、解重合反応とその後の重縮合反応によって得られたポリエステルに限らず、テレフタル酸やジテレフタル酸ジメチル等のカルボン酸類と、エチレングリコールなどに代表されるジオール類からエステル反応、エステル交換反応から得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を用いて重縮合反応を行って得られるポリエステルについても同様に課題となっている。本願は、上記解重合方法で得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を重縮合反応することによって品位の優れたポリエステル組成物を得ることを見出した。」
(甲1d)
「【0038】
本発明にかかるポリエステルは、重縮合触媒として、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物などが用いられる。これらの重縮合触媒は単独、あるいは併用して、あるいはこれらにさらに、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン等の化合物を併用しても良い。これらの重縮合触媒は、得られるポリエステルに対して金属原子換算で1~1000ppm添加することが好ましい。中でもチタン化合物を重縮合触媒として用いると、異物の発生が抑制されるため好ましい。」
(甲1e)
「【実施例】
【0043】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性値は以下の方法で測定した。
(1)ポリマーの固有粘度IV
オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
(2)ポリマーの色調
色差計(スガ試験機社製、SMカラーコンピュータ型式SM-T45)を用いて、ハンター値(L、b値)として測定した。
【0044】
吐出工程の重量換算で半分にあたる時間でサンプリングしたポリマーのL値、b値をそれぞれそのポリマーの代表する色調とする。例えば、2トンのポリマーを吐出する場合は、1000kg時点のポリマーをサンプリングする。
【0045】
得られるポリマーb値を以下の基準で判断した。
【0046】
◎:7.6より低い
○:7.6以上、10.5以下
×:10.5より高い
(3)ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体とポリマーのジエチレングリコール量
ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体およびポリエステルをモノメタノールアミンで加熱分解後、1,6ヘキサンジオール/メタノールで希釈し、テレフタル酸で中和した後、ガスクロマトグラフィーのピーク面積から求めた。
【0047】
得られるビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体のジエチレングリコール量を以下の基準で判断した。なお、ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体のサンプリング方法は特に限定されないが、解重合反応が終了しているものを測定する必要がある、具体例を挙げて説明すると、例えば反応容器下部に取り付けられたサンプリング管からサンプリングしても良い。
【0048】
◎:1.2より低い
○:1.2以上、1.6以下
×:1.6より高い
得られるポリマーのジエチレングリコール量を以下の基準で判断した。
【0049】
◎:1.9より低い
○:1.9以上、2.3以下
×:2.3より高い
(4)ポリマー中のチタン元素、リン元素、アンチモン元素等の含有量
蛍光X線元素分析装置(堀場製作所社製、MESA-500W型)により求めた。
【0050】
実施例1
精留塔、ポリエステル屑供給機、撹拌装置を備えた解重合反応容器に、モル比1.5のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体2000kgを常圧で窒素雰囲気下、220℃で存在させておく。そこへエチレングリコール/ポリエステル屑のモル比が0.5のポリエステル屑2000kgとエチレングリコール325kgを3時間かけて連続的に供給する。供給が終了した後、30分かけて反応容器温度を240℃に昇温し、昇温後は240℃に保持する。精留塔の塔頂温度が160℃に到達した後、20分で解重合反応を終了させ、ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を得た。この時精留塔の塔頂までエチレングリコールは到達していなかった。なお解重合反応工程は4時間20分だった。その得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体をサンプリングし、そのジエチレングリコール量を測定したところ1.2重量%だった。
【0051】
このビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を、フィルター(公称目開き40μm)を介して重縮合反応容器に移液し、リン酸を110g(得られるポリエステル中のリン酸濃度として55ppm)添加した後、6分間攪拌した。その後、三酸化アンチモンを600g(得られるポリエステル中の三酸化アンチモン濃度として300ppm)、酢酸コバルト340g(得られるポリエステル中の酢酸コバルト濃度として170ppm)、酸化チタンを6kg添加する(得られるポリエステル中の酸化チタンで0.3%)。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応温度を240℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。所定の攪拌トルクに到達したら反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させた。ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は2時間55分だった。得られたポリエステルのポリマーL値は60、ポリマーb値は8.5、ジエチレングリコールは1.9重量%だった。
【0052】
実施例2~18
溶融状態で存在している低重合体のモル比、解重合反応温度、精留塔の塔頂温度、精留塔の塔頂温度到達後の時間、ポリエステル屑/エチレングリコールのモル比、ポリエステル屑/エチレングリコールの投入方法、ポリエステル屑の種類、重縮合触媒とリン化合物を表1の通り変更した以外は、実施例1と同条件にて実施した。表1に記載の通り、品位に優れたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体であり、その後、重縮合反応によって得られたポリエステルは品位に優れていた。
【0053】
実施例19
実施例1記載の方法で得られた品位の優れたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を、フィルター(公称目開き40μm)を介して重縮合反応容器に移液し、チタン原子換算で5ppm相当のクエン酸キレートチタン化合物166gを添加し、酢酸コバルト340g(得られるポリエステル中の酢酸コバルト濃度として170ppm)、酸化チタンを6kg添加する(得られるポリエステル中の酸化チタンで0.3%)。その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応温度を240℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げた。所定の攪拌トルク(IV設定値)の95%となった時点(減圧を開始してから2時間45分の時点)で、反応缶上部よりポリマーに対して250ppm(リン原子換算で25ppm)相当のビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト(株式会社ADKA製、アデカスタブPEP-36、融点236℃、予め、ポリエチレンテレフタレートを射出成形により厚さ200μm、内容積500cm3の容器およびその蓋に成形した容器(容器とふたを合わせた重量は30g)に詰めたもの)を500g添加した。その後、反応を継続し、所定の攪拌トルクに到達したら反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得た。なお、減圧開始から所定の撹拌トルク到達までの時間は2時間55分だった。得られたポリエステルのポリマーL値は58、ポリマーb値は9.2、ジエチレングリコールは1.9重量%であり、品位に優れていた。
【0054】
実施例20~28
重縮合触媒や添加するリン化合物、リン化合物の添加量、リン化合物の添加タイミングを表1の通り変更した以外は、実施例19と同条件にて実施した。表1に記載の通り、品位に優れたポリエステルだった。
【0055】
【表1】
[図:0001395267000002.jpg]
【0056】
比較例1~5、7、8、10
溶融状態で存在している低重合体のモル比、解重合反応温度、精留塔の塔頂温度、精留塔の塔頂からのエチレングリコール留出有無、ポリエステル屑/エチレングリコールのモル比、重縮合反応触媒、リン化合物を表2の通り変更した以外は、実施例1と同条件にて実施した。表2に記載の通り、品位に劣ったビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体だったため、その後、重縮合反応によって得られたポリエステルは品位が悪かった。
【0057】
比較例6
解重合反応温度を表2の通り変更した以外は、実施例1と同条件にて実施した。表2に記載の通り、品位に優れたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体だったが、その後、重縮合反応によって得られたポリエステルは色調が悪かった。
【0058】
比較例9
ポリエステル屑/エチレングリコールの供給方法を反応容器に一括して投入したが、予め反応容器に存在していたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体が固化してしまい、攪拌機に負荷がかかったため解重合反応を停止した。
【0059】
比較例11
リン化合物の添加タイミング以外は比較例1に記載の方法で解重合反応とその後の重縮合反応を行った。リン化合物の添加タイミングは、ポリエステルが目標IVに到達したのち、留出管のバルブを閉じ重縮合反応機の系内を減圧状態のまま、リン化合物の添加を行い10分攪拌し混合を行い、その後に吐出を行なった。解重合反応によって得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体の品位が悪く、その後、得られたポリエステルは品位が悪かった。
【0060】
比較例12
リン化合物の添加タイミング以外は比較例3に記載の方法で解重合反応とその後の重縮合反応を行った。解重合反応によって得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体の品位が悪く、リン化合物の添加タイミングを表2に記載の通り実施したが、重縮合触媒が失活してしまい目標IVに到達しなかった。
【0061】
比較例13
リン化合物の添加量以外は比較例4に記載の方法で解重合反応とその後の重縮合反応を行った。解重合反応によって得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体の品位が悪く、その後の重縮合反応で添加したリン化合物のポリエステルへの分散性が不十分であり、吐出が出来なかった。
【0062】
【表2】
[図:0001395267000003.jpg]
」
3 甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(甲2a)
「2. 特許請求の範囲
エチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル屑を解重合するに際し、酸成分に対するグリコール成分の当量比が1.3~2.0のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/またはその低重合体を溶融状態で反応容器に存在させ、エチレングリコールとポリエステル屑を同時かつ連続的に添加し、かつ攪拌しながら解重合反応系を215~250℃で酸成分に対するグリコール成分の当量比を1.3~2.0に維持して解重合した後、反応物の一部を重合反応系に供給することを特徴とするポリエステル屑の解重合方法。」(第1頁左欄第3~15行)
(甲2b)
「〔技術分野〕
本発明はポリエステル屑の解重合方法に関するものである。
更に詳しくはポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル屑を短時間に解重合するとともに高品質のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/またはその低重合体(以下BHTと略す)として回収する方法に関するものである。
〔従来技術とその問題点〕
ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートはその優れた特性により繊維、フィルム、プラスチック等として広く用いられているが、これらの製造工程において繊維状、フィルム状、樹脂状などのポリエステル屑が発生する。発生したポリエステル屑の有効利用はコストなどの点で工業的に極めて重要な問題である。従来、ポリエステル屑の利用法としては例えば、特開昭48-61447号公報にはポリエステル屑を過剰のエチレングリコール(以下EGと略す)により解重合した後得られたBHTを直接縮重合して再生ポリエステルを得る方法が提案されているが、この方法は、解重合工程において、ポリエステル屑とEGを解重合反応系に一括投入して解重合しているため、投入したポリエステル屑が内部で固化し、攪拌ができず、そのため解重合時間が長いこと、また使用するEGの量が多いため、経済的に不利であるばかりでなく反応物にはDEG等の不純物が副生し、その結果得られるポリエステルの物理的性質、特に軟化点を著しく低下させ品位の低いポリエステルしか得られない等の欠点があった。
このように従来の技術においては、ポリエステル屑を効率的に解重合し、かつ品質特性の良好な再重合ポリエステルとする技術は完成されていない状況にある。
〔発明の目的〕
本発明の直接的目的は、ポリエステル屑を解重合してBHTを得るのに際し、EGの使用量を減らし、解重合工程で副生するジエチレングリコール等の不純物の生成を極力抑えると同時に解重合時間の短縮をはかるとともに、かつ高品位のBHTに変換しこのBHTを縮重合して得られるポリエステルの品位を高めることにある。」(第1頁左欄第17~第2頁右上欄第1行)
(甲2c)
「〔発明の構成〕
前記本発明の目的は、
ポリエチレンテレフタレートを主成分とするポリエステル屑を解重合するに際し、酸成分に対するグリコール成分の当量比が1.3~2.0のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/またはその低重合体を溶融状態で反応容器に存在させ、EGとポリエステル屑を同時かつ連続的に添加し、かつ攪拌しながら解重合反応系を215~250℃で、酸成分に対するグリコール成分の当量比を1.3~2.0に維持して解重合した後、反応物の一部を重合反応系に供給することを特徴とするポリエステル屑の解重合方法によって達成できる。
本発明で使用するポリエステル屑とは、反応缶に連続的に添加することが可能であればフィルム状、塊状、繊維状のいずれの形状でも良いが、酸成分に対するグリコール成分の当量比が、1.3~2.0のBHT中にポリエステル屑を連続的に添加しても沈降しない大きさにすることが好ましい。
解重合に際して反応缶内に存在させるBHTとしては芳香族ジカルボン酸とグリコールあるいはジメチルテレフタレートとグリコールから公知の方法で合成されたもの、あるいはポリエステル屑から公知の解重合方法で得られる低重合体であってもよく、更に本発明の解重合を継続して行なう場合には、本発明の方法で得られたBHTを使用することもできる。
解重合反応器に存在させるBHT量は、添加するポリエステル屑に対して重量比で1/4~1/1とするのが好ましい。すなわち、BHT量が1/4未満では解重合速度が不充分で反応が完結するのに長時間を要し、一方BHT量が1/1を越えるとBHTを高温下で長時間滞留させることになるため副反応が起りこのBHTから得られたポリエステルの色調および軟化点が低下する傾向にある。したがって高品位のBHTを得るためには、解重合反応容器に存在させるBHT量は添加するポリエステル屑に対して重量比で1/4~1/1が好ましく、更に好ましくは1/3~1/1の範囲である。
また添加するEGの量はポリエステル屑に対して酸成分に対するグリコール成分の当量比を1.3~2.0とする必要がある。すなわち当量比が1.3未満では解重合後のBHTの品質が劣化し、得られたポリマの色調(b値)が悪化する。
一方、当量比が2.0を越えるとエチレングリコールの使用量が多くなり、経済性を損うばかりでなく、反応中の副反応によりジエチレングリコールが生成し、このBHTから得られるポリエステルの軟化点が低下する。またEGが多いため反応系の沸点が低く、そのため解重合時間が長くなる。したがって、高品位のBHTを効率的に得るためにはEGの当量比は、1.3~2.0とする必要があり、好ましくは1.3~1.6である。
また、解重合反応系は215~250℃の範囲に維持する必要がある。215℃未満ではポリエステル屑が反応系に溶解しにくく、また250℃を越えるとジエチレングリコールの副生が多くなり、そのため得られるポリエステルの軟化点が低下する。解重合反応系の温度は215~250℃とする必要があり、220~240℃が好ましい。
BHTに添加するEGおよびポリエステル屑は酸成分に対するグリコール成分の当量比が貯留されているBHTとほぼ同じ当量比となるように、両者を同時に一定の時間内に添加するが、添加する方法は、両者とも連続式、間欠式のいずれの方法でもよく、またいずれか一方が連続式で他方が間欠式でも良い。なお間欠式に添加する場合は添加全量を5回以上、好ましくは10回以上に分割して添加するのが好ましい。また、添加は一定速度でも順次添加量を増加する逓増方式のいずれの方法でも良い。
本発明で利用することのできるポリエステル屑とはテレフタル酸もしくはその低級アルキルエステルとエチレングリコールとからなるポリエステルであるがその酸成分および/またはグリコール成分の一部を、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、P-ヒドロキシ安息香酸等の二官能性酸、あるいはトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール等のジオール化合物の1種または2種以上で置きかえたポリエステルであってもよい。
また、顔料、耐熱剤などを含んだものであってもよい。」(第2頁右上欄第2行~第3頁右上欄第10行)
(甲2d)
「実施例1
蒸気還流装置、攪拌装置、加熱装置を備えた解重合反応缶容器にテレフタル酸に対するエチレングリコールの当量比が1.5のBHT2142部を仕込み220℃で加熱溶解する。攪拌を行ないながら、約0.5cm3/個の顆粒からなるポリエチレンテレフタレート屑1850部、エチレングリコール292部を同時に40分かかつて連続的に添加し添加終了後蒸気を還流しつつ解重合を終了した。解重合完了まで反応系は220℃で、かつテレフタル酸成分に対するエチレングリコールの当量比を1.5とした。次に得られた反応物の半分量である2142部を、重合反応器に移し、リン酸0.37部、三酸化アンチモン0.555部を加えて60分かけて温度290℃、0.05mmHgとしその後120分重合を行ない固有粘度(25℃におけるオルソクロルフェノール中)0.650でかつ軟化点258℃のポリエステルを得た。
実施例2
実施例1と同方法で、添加するエチレングリコール量をかえてテレフタル酸成分に対するエチレングリコール量の当量比を2.5、2.0、1.6、1.3および1.15と変化させて解重合した時間および得られたポリマの品質を表1に示した。
[図:0001395267000004.jpg]
当量比が本発明範囲内のものはいずれもポリマ特性が良好であった。
実施例3
実施例1と同方法で解重合時の反応温度を、250、240、220および215と変化させ、解重合に要した時間および得られたポリマの品質を表2に示した。
[図:0001395267000005.jpg]
反応系の温度か本発明の範囲内のものはいずれも解重合特性およびポリマ品質が良好であつた。」
4 甲3に記載された事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
(甲3a)
「【請求項1】
アルキレンテレフタレート単位を主体としたポリエステル樹脂であって、樹脂全体におけるポリエステル屑由来のポリエステル成分の比率が10質量%以上であり、本文規定の方法で測定したポリエステル樹脂の濾過圧力の昇圧速度が0.3MPa/h以下であることを特徴とする再生ポリエステル樹脂。
【請求項2】
ポリエステル屑をアルキレングリコールにて解重合した後に、平均目開きが10~50μmのフィルターで濾過して得られるポリエステル解重合反応生成物。
【請求項3】
請求項2記載のポリエステル解重合反応生成物とアルキレンテレフタレートオリゴマーとを100~10/0~90質量%の比率で混合し、溶融重縮合を行うことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法。」
(甲3b)
「【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットボトル等から得られる再生ポリエステルを原料に用いた 高品質ポリエステル樹脂、及びその製造方法に関するものである。
・・・
【0008】
本発明は、ポリエステル屑に由来するポリエステル成分を高比率で含有しても、加工時における操業性が良い再生ポリエステル樹脂、及びその製造方法を提供しようとするものである。」
(甲3c)
「【0021】
なお、良好なポリエステル解重合反応生成物を得るためには、ポリエステル屑を解重合後、平均目開きが10~50μmのフィルターで濾過することが好ましい。濾過操作は、ポリエステル屑の解重合後、重縮合反応を開始するまでの任意の段階で行うことができるが、例えば、エステル反応缶から重縮合反応缶へ送液時にフィルターを設けて通過させることにより行うと、工程の簡便さから好ましい。フィルターの平均目開きが10μm未満であると、目詰まりが早く送液不良となる場合があるため好ましくない。一方、平均目開きが50μmよりも大きいと、異物等がフィルターで十分に捕集できず、得られた再生ポリエステル樹脂を紡糸あるいは製膜する際の濾過昇圧が速く、加工操業性が悪くなるため好ましくない。
【0022】
濾過に用いるフィルターとしては特に限定されないが、キャンドル型フィター、プリーツ型フィルターなど、各種のフィルターを用いることができる。」
(甲3d)
「【0034】
実施例1
平均重合度7のエチレンテレフタレートオリゴマーの存在するエステル化反応缶に、テレフタル酸とEGとの物質量比が1:1.6(モル:モル)であるスラリーを連続的に供給し、温度250℃、圧力0.1MPa、滞留時間8時間の条件で、エステル化反応を行い、反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(平均重合度7)を連続的に得た。このオリゴマーのケン化価は、9.95(meq/g)であった。
一方、このエステル化反応缶とは別の反応缶に、使用済みPETボトルの粉砕品(以下、PETボトルフレークと略記する)28.8kgとEG5.8kg(PETボトルフレーク100質量部に対して20質量部となる量)を入れ、250℃にて4時間解重合反応を行った後、この全量を重縮合反応缶へ移送した。この際に、反応缶から重縮合反応缶への移送路の途中に設置した平均目開きが20μmのキャンドル型フィルターを通過させて濾過を行った。
次いで、先述のエチレンテレフタレートオリゴマー30.2kgを重縮合反応缶へ移送し、先に移送したPETボトルフレークの解重合物と混合した。さらに、触媒として二酸化チタンの濃度が34質量%に調製されたEGスラリー0.68kg(二酸化チタンが生成するポリマーに対し0.4質量%となる量に相当する)および三酸化アンチモンの濃度が2質量%に調製されたEG溶液0.87kg(三酸化アンチモンがポリエステルの全酸成分1モルに対して2×10-4モルとなる量に相当する)をそれぞれ添加し、重縮合反応缶内の温度を30分間で280℃に昇温し、圧力を徐々に減じて60分後に1.2hPa以下とした。この条件で、攪拌しながら3時間重縮合反応を行い、常法により払い出してペレット化することにより、再生ポリエステル樹脂を得た。
【0035】
次に、この再生ポリエステル樹脂のペレットを常法により乾燥した後、通常の溶融紡糸装置を用いて紡糸温度290℃で溶融紡糸し、1400m/分の速度で未延伸糸を捲き取った。この未延伸糸を延伸機に供給し、80℃で予熱した後、温度150℃のヒートプレートに接触させながら3.5倍に延伸、熱処理して捲き取ることにより、83デシテックス/36フィラメントのポリエステルフィラメントヤーンを得た。
【0036】
実施例2~4、比較例1~2
樹脂全体に対するポリエステル屑由来ポリエステル成分の比率が表1の数値となるようにし、また、ポリエステル屑に対するEGの添加量、フィルターの平均目開きを表1に示すように種々変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0037】
実施例5
テレフタル酸ジメチル29.1kg、1,4-ブタンジオール15.8kgに対しエステル交換反応触媒として、テトラブチルチタネート(以下、TBTと略記する)の濃度が4質量%に調製されたBD溶液0.33kg(TBTがポリエステルの全酸成分1モルに対して2.6×10-4モルとなる量に相当する)を加え、常圧にて150℃で撹拌を開始し、温度を210℃まで上昇させながら、副生するメタノールを留去し、180分後、エステル交換反応を終了して、ブチレンテレフタレートオリゴマーを得た。このオリゴマーのケン化価は7.31(meq/g)であった。
一方、これとは別の反応缶に、PBT屑チップ33.0kgとBD9.9kg(PBT屑チップ100質量部に対して30質量部となる量)を添加し、230℃にて4時間解重合反応を行った後、重縮合反応缶へ移送した。この際に、反応缶から重縮合反応缶への移送路の途中に設置した平均目開きが30μmのキャンドル型フィルターを通過させて濾過を行った。
次いで、先述のブチレンテレフタレートオリゴマー全量を重縮合反応缶へ移送して、先に移送したPBT屑の解重合物と混合した。さらに、触媒として二酸化チタンの濃度が34質量%に調製されたBDスラリー0.78kg(二酸化チタンが生成するポリマーに対し0.4質量%となる量に相当する)およびTBTの濃度が4質量%に調製されたBD溶液0.36kg(TBTがポリエステルの全酸成分1モルに対して1.4×10-4モルとなる量に相当する)をそれぞれ添加し、重縮合反応缶内の温度を30分間で250℃に昇温し、圧力を徐々に減じて60分後に1.2hPa以下とした。この条件で、攪拌しながら2時間重縮合反応を行い、常法により払い出してペレット化することにより、再生ポリエステル樹脂を得た。
【0038】
次に、このポリエステル樹脂ペレットを常法により乾燥した後、通常の溶融紡糸装置を用いて紡糸温度270℃で溶融紡糸し、1200m/分の速度で未延伸糸を捲き取った。この未延伸糸を延伸機に供給し、80℃で予熱した後、温度150℃のヒートプレートに接触させながら1.5倍に延伸、熱処理して捲き取ることにより、83デシテックス/36フィラメントのポリエステルフィラメントヤーンを得た。
【0039】
実施例及び比較例で得られたポリエステル樹脂の各特性値と、フィラメントヤーンの各物性値を表1にまとめて示す。
【0040】
【表1】
[図:0001395267000006.jpg]
【0041】
表1から明らかなように、実施例1~5では、濾過圧力の昇圧速度の小さい再生ポリエステルを使用したポリエステル樹脂が得られ、これらを製糸加工する際の操業性は非常に良好であった。
【0042】
一方、比較例1では濾過フィルターの平均目開きが小さすぎたために、再生ポリエステル解重合反応生成物のエステル化反応缶から重縮合反応缶への送液途中に、フィルターが目詰まりを起こし送液不可となり、ポリエステル樹脂が得られなかった。比較例2では濾過フィルターの平均目開きが大きすぎたために、得られたポリエステル樹脂の濾過圧力の昇圧速度は大きく、紡糸加工時の昇圧速度が大きすぎ、操業性は非常に悪いものであった。」
第5 当審の判断
1 申立理由1-1(進歩性)について
(1)甲1に記載された発明について
甲1には、上記第4の2で摘記した事項が記載されているところ、摘記(甲1e)の段落【0050】~【0051】の実施例1に着目すれば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「精留塔、ポリエステル屑供給機、撹拌装置を備えた解重合反応容器に、モル比1.5のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体2000kgを常圧で窒素雰囲気下、220℃で存在させておき、そこへエチレングリコール/ポリエステル屑のモル比が0.5のポリエステル屑2000kgとエチレングリコール325kgを3時間かけて連続的に供給し、供給が終了した後、30分かけて反応容器温度を240℃に昇温し、昇温後は240℃に保持し、精留塔の塔頂温度が160℃に到達した後、20分で解重合反応を終了させ、ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を得て、
このビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を、フィルター(公称目開き40μm)を介して重縮合反応容器に移液し、
リン酸を110g(得られるポリエステル中のリン酸濃度として55ppm)添加した後、6分間攪拌し、その後、三酸化アンチモンを600g(得られるポリエステル中の三酸化アンチモン濃度として300ppm)、酢酸コバルト340g(得られるポリエステル中の酢酸コバルト濃度として170ppm)、酸化チタンを6kg添加し(得られるポリエステル中の酸化チタンで0.3%)、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応温度を240℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げ、所定の攪拌トルクに到達したら反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ、ストランド状に吐出して冷却後、直ちにカッティングしてポリマーのペレットを得る方法。」(以下、「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「ポリエステル屑」は、甲1の段落【0011】及び本件明細書の段落【0023】~【0024】の記載からみて、本件発明1の「使用済みポリエステル製品」または「ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル」のいずれか又は両方に相当するといえる。
(イ)甲1発明の「ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体」のうち、少なくとも「その低重合体」は、甲1の段落【0012】の記載からみて、本件発明1の「エチレンテレフタレートオリゴマー」に相当するといえる。
(ウ)そして、甲1発明では「ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体」を220℃で存在させておき、そこへ「エチレングリコール」及び「ポリエステル屑」を供給し反応容器温度を240℃に昇温し、昇温後は240℃に保持して「解重合反応」を行っているから、ポリエステル屑を熱処理条件下で解重合して解重合体を含む反応生成物を得ているといえ、甲1発明の「精留塔、ポリエステル屑供給機、撹拌装置を備えた解重合反応容器に、モル比1.5のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体2000kgを常圧で窒素雰囲気下、220℃で存在させておき、そこへエチレングリコール/ポリエステル屑のモル比が0.5のポリエステル屑2000kgとエチレングリコール325kgを3時間かけて連続的に供給し、供給が終了した後、30分かけて反応容器温度を240℃に昇温し、昇温後は240℃に保持し、精留塔の塔頂温度が160℃に到達した後、20分で解重合反応を終了させ、ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体を得」る工程は、本件発明1の「(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程」と、「(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールと前記原料を、熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程」の限りにおいて一致する。
(エ)甲1発明では解重合反応で得られたビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体をフィルター(公称目開き40μm)を介して移液しているところ、該フィルターを介した移液は「フィルターによって濾過させて濾液を回収する工程」であるといえるから、本件発明1における「(2)前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程」と「(2)前記反応生成物をフィルターを通過させて濾液を回収する工程」である限りにおいて一致する。
(オ)甲1発明において、重縮合反応容器に移液された「ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/その低重合体」に対し、「リン酸を110g(得られるポリエステル中のリン酸濃度として55ppm)添加した後、6分間攪拌し、その後、三酸化アンチモンを600g(得られるポリエステル中の三酸化アンチモン濃度として300ppm)、酢酸コバルト340g(得られるポリエステル中の酢酸コバルト濃度として170ppm)、酸化チタンを6kg添加し(得られるポリエステル中の酸化チタンで0.3%)、その後、低重合体を30rpmで攪拌しながら、反応温度を240℃から290℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を40Paまで下げ、所定の攪拌トルクに到達したら反応系を窒素パージして常圧に戻して重縮合反応を停止させ」る工程において、添加されている「三酸化アンチモン」、「酢酸コバルト」及び「酸化チタン」は、甲1の段落【0038】の記載を参照すると「重縮合触媒」であるといえ、また、甲1発明の重縮合反応における圧力「40Pa」は、ヘクトパスカル(hPa)に換算すると「0.4hPa」であるところ、甲1発明の当該工程は、上記(エ)も考慮すれば、本件発明1の「(3)前記濾液に重合触媒を添加し、温度 260~285℃及び0.5~1.0hPaの減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う工程」と、「(3)前記濾液に重合触媒を添加し、前記解重合体の重縮合反応を行う工程」の限りにおいて一致する。
(カ)上記(ア)~(オ)を踏まえると、甲1発明ではポリエステル屑等の解重合体が再度重縮合されているから、甲1発明の「ポリマーのペレットを得る方法」は、本件発明1の「再生ポリエステル樹脂の製造方法」に相当するといえる。」
(キ)以上より、本件発明1と甲1発明とは、
「a)使用済ポリエステル製品及びb)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、
(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールと前記原料を、熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程、
(2)前記反応生成物をフィルターを通過させて濾液を回収する工程、
(3)前記濾液に重合触媒を添加し、前記解重合体の重縮合反応を行う工程
を含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
工程(1)における「エチレンテレフタレートオリゴマー」、「エチレングリコール」及び「リサイクルポリエステル原料」の添加順序について、本件発明1では「エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物」に、「リサイクルポリエステル原料」を添加するのに対して、甲1発明ではそれらの添加順序が特定されていない点
<相違点2>
工程(1)における「全グリコール成分/全酸成分のモル比」について、本件発明1では「1.08~1.35」と特定するのに対して、甲1発明では該モル比が不明である点
<相違点3>
工程(1)の解重合を行う熱処理条件について、本件発明1では「245~280℃」であるのに対して、甲1発明では「240℃」である点
<相違点4>
工程(2)の濾液を回収する工程に用いるフィルターについて、本件発明1では「濾過粒度10~25μm」であるのに対し、甲1発明では「公称目開き40μm」である点
<相違点5>
工程(3)の重縮合反応を行う工程における温度、圧力条件について、本件発明1では温度「260~285℃」、圧力「0.5~1.0hPa」であるのに対し、甲1発明では温度「240℃から290℃」、圧力「0.4hPa」である点
イ 相違点2についての判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
(ア)解重合反応に用いる全ての原料の配分量について、甲1の例えば(甲1a)請求項1に「酸成分に対するエチレングリコールのモル比が1.3~2.0のビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/またはその低重合体を溶融状態で上部に精留塔を有する反応容器に存在させ、その反応容器にポリエステル屑とエチレングリコールを連続的に供給し」と、予め「反応容器」に存在させる「ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/またはその低重合体」の「酸成分に対するエチレングリコールのモル比」については記載があるものの、これは、本件発明1のような「解重合反応に用いる全ての原料における「全グリコール成分/全酸成分のモル比」とは異なるものである。
(イ)そして、甲1の他の明細書の記載を参照しても、解重合反応に用いる全ての原料における「全グリコール成分/全酸成分のモル比」を特定するという技術的思想は記載も示唆もされておらず、甲1の記載から甲1発明の解重合反応に用いる原料に関し「全グリコール成分/全酸成分のモル比」を「1.08~1.35」とする動機は存在しない。
(ウ)また、上記第4の4にて摘記した甲3の明細書の記載および甲3のその他の記載を参照しても、リサイクルポリエステルの解重合反応に用いる原料に関し、「全グリコール成分/全酸成分のモル比」を特定するという技術的思想は記載も示唆もされていないところ、仮に甲1の記載に接した当業者が甲3の記載を参照したとしても、甲1発明の解重合反応に用いる原料に関し「全グリコール成分/全酸成分のモル比」を「1.08~1.35」とすることが導けるとはいえない。
(エ)以上のとおりであるから、相違点2に係る事項は、甲1発明に、甲1及び甲3のいずれの記載を合わせ考えても、容易に想到し得るものではない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、相違点1,3~5を検討するまでもなく、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を直接的に引用するものであり、本件発明1が甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2も同様に、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由1-2(進歩性)について
(1)甲2に記載された発明について
甲2には、第4の3で摘記した事項が記載されているところ、摘記(甲2d)の実施例2のうち、実施例1のテレフタル酸成分に対するEGの当量比を1.3と変更して解重合したものに着目すれば、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。
「蒸気還流装置、攪拌装置、加熱装置を備えた解重合反応缶容器にテレフタル酸に対するエチレングリコールの当量比が1.3のBHT2142部を仕込み220℃で加熱溶解し、攪拌を行ないながら、約0.5cm3/個の顆粒からなるポリエチレンテレフタレート屑1850部、エチレングリコール292部を同時に40分かかって連続的に添加し添加終了後蒸気を還流しつつ解重合を終了し、その際、解重合完了まで反応系は220℃で、かつテレフタル酸成分に対するエチレングリコールの当量比を1.3とし、
次に得られた反応物の半分量である2142部を、重合反応器に移し、
リン酸0.37部、三酸化アンチモン0.555部を加えて60分かけて温度290℃、0.05mmHgとしその後120分重合を行ないポリエステルを得る方法。」(以下、「甲2発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「ポリエチレンテレフタレート屑」は、上記第4の3で摘記した(甲2b)の「〔従来技術とその問題点〕」における「ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートはその優れた特性により繊維、フィルム、プラスチック等として広く用いられているが、これらの製造工程において繊維状、フィルム状、樹脂状などのポリエステル屑が発生する。」なる記載から「ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル」であると解されるので、本件発明1の「ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステル」に相当するといえる。
(イ)甲2発明の「BHT」は、「ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/またはその低重合体」(甲2b)であるところ、少なくとも低重合体は本件発明1の「エチレンテレフタレートオリゴマー」に相当するといえる。
(ウ)甲2発明では、BHT、エチレングリコール及びポリエチレンテレフタレート屑が投入されている解重合系「テレフタル酸成分に対するエチレングリコールの当量比を1.3」としているものであるから、本件発明1と同様にそれらの原料を「全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35」となるように添加しているものといえる。
(エ)そして、甲2発明の「蒸気還流装置、攪拌装置、加熱装置を備えた解重合反応缶容器にテレフタル酸に対するエチレングリコールの当量比が1.3のBHT2142部を仕込み220℃で加熱溶解し、攪拌を行ないながら、約0.5cm3/個の顆粒からなるポリエチレンテレフタレート屑1850部、エチレングリコール292部を同時に40分かかって連続的に添加し添加終了後蒸気を還流しつつ解重合を終了し、その際、解重合完了まで反応系は220℃で、かつテレフタル酸成分に対するエチレングリコールの当量比を1.3」とする工程では、BHTを220℃で存在させておき、そこへ「エチレングリコール」及び「ポリエチレンテレフタレート屑」を供給して「解重合」を行い、解重合完了まで反応系を220℃に保持しているから、ポリエステル屑を熱処理条件下で解重合して解重合体を含む反応生成物を得ているといえ、甲2発明の上記工程は、本件発明1の「(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物に、前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、245~280℃の熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程」と、「(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールと前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程」の限りにおいて一致する。
(オ)甲2発明の「次に得られた反応物の半分量である2142部を、重合反応器に移し、リン酸0.37部、三酸化アンチモン0.555部を加えて60分かけて温度290℃、0.05mmHgとしその後120分重合を行な」う工程において、該「反応物」の「重合」では、解重合された成分のグリコールが有する水酸基部分とテレフタル酸部分とが縮合する「重縮合」が起きていると解され、また、当該工程にて添加されている「三酸化アンチモン」は、例えば甲1にも「本発明にかかるポリエステルは、重縮合触媒として、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、アルミニウム化合物などが用いられる。これらの重縮合触媒は単独、あるいは併用して、あるいはこれらにさらに、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン等の化合物を併用しても良い。」(第4の2摘記(甲1d))とあるとおり、アンチモン化合物はポリエステルの重縮合触媒として用いられるものであることが知られているところ、当該「三酸化アンチモン」は該「重縮合」のための「触媒」であると解される。
また、甲2発明の上記重縮合反応における圧力「0.05mmHg」は、ヘクトパスカル(hPa)に換算すると約「0.067hPa」である。
そうすると、甲2発明の上記工程は、本件発明1の「(3)前記濾液に重合触媒を添加し、温度 260~285℃及び0.5~1.0hPaの減圧下で前記解重合体の重縮合反応を行う工程」と、「(3)反応生成物に重合触媒を添加し、前記解重合体の重縮合反応を行う工程」の限りにおいて一致するといえる。
(カ)そして、上記(ア)~(オ)を踏まえると、甲2発明ではポリエステル屑等の解重合体が再度重縮合されているから、甲2発明の「ポリエステルを得る方法」は、本件発明1の「再生ポリエステル樹脂の製造方法」に相当するといえる。
(キ)以上より、本件発明1と甲2発明とは、
「b)ポリエステル製品を製造する工程で発生する未採用ポリエステルの少なくとも1種のリサイクルポリエステル原料を用いて再生ポリエステル樹脂を製造する方法であって、
(1)エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールと前記原料を、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35となるように添加し、熱処理条件下で解重合を行うことにより解重合体を含む反応生成物を得る工程、
(3)前記反応生成物に重合触媒を添加し、前記解重合体の重縮合反応を行う工程
を含むことを特徴とする再生ポリエステル樹脂の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
工程(1)における「エチレンテレフタレートオリゴマー」、「エチレングリコール」及び「リサイクルポリエステル原料」の添加順序について、本件発明1では「エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物」に「リサイクルポリエステル原料」を添加するのに対して、甲2発明では「エチレンテレフタレートオリゴマー」に対して「エチレングリコール」と「リサイクルポリエステル原料」を同時に添加する点
<相違点2>
工程(1)の解重合を行う熱処理条件について、本件発明1では「245~280℃」であるのに対して、甲2発明では「220℃」である点
<相違点3>
本件発明1では「(2)前記反応生成物を濾過粒度10~25μmのフィルターを通過させて濾液を回収する工程」を有するが、甲2発明ではそのような工程が特定されていない点
<相違点4>
工程(3)の重縮合反応を行う工程における温度、圧力条件について、本件発明1では温度「260~285℃」、圧力「0.5~1.0hPa」であるのに対し、甲2発明では温度「290℃」、圧力「0.067hPa」である点
イ 相違点1についての判断
(ア)「エチレンテレフタレートオリゴマー」、「エチレングリコール」及び「リサイクルポリエステル原料」の添加順序について、甲2の記載を確認すると上記第4の3摘記(甲2a)にあるとおり、特許請求の範囲には「エチレンテレフタレートオリゴマー」である「ビスヒドロキシエチルテレフタレートおよび/またはその低重合体」に対して「エチレングリコール」及び「リサイクルポリエステル原料」を「同時」に添加することが特定されており、甲2のその他の箇所において「エチレングリコール」及び「リサイクルポリエステル原料」を「同時」ではなく添加することについては記載も示唆もされていないところ、それらを「同時」以外の態様で添加することを当業者は想到しないといえる。
(イ)なお、上記摘記(甲2c)には「BHTに添加するEGおよびポリエステル屑は酸成分に対するグリコール成分の当量比が貯蔵されているBHTとほぼ同じ当量比となるように、両者を同時に一定の時間内に添加するが、」という記載に引き続き、「添加する方法は、両者とも連続式、間欠式のいずれの方法でもよく、またいずれか一方が連続式で他方が間欠式でも良い。」とあるが、当該「一方が連続式で他方が間欠式でも良い。」なる記載は「同時」に添加することを前提としたものであると解されるから、当該記載を参照しても、「エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物」に、「リサイクルポリエステル原料」を添加するように順序を変更する動機は存在しない。
(ウ)また、上記第4の4に示した甲3の摘記箇所及び甲3のその他の箇所にも、リサイクルポリエステルの解重合反応に用いる原料に関し、「エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物」に、「リサイクルポリエステル原料」を添加することは記載も示唆もされていないところ、甲2の記載に接した当業者が甲3の記載を参照したとしても、甲2発明において「エチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物」に、「リサイクルポリエステル原料」を添加することが導けるといえるものではない。
(エ)以上のとおりであるから、相違点1に係る事項は、甲2発明に、甲2及び甲3のいずれの記載を合わせ考えても、容易に想到し得るものではない。
ウ 小括
よって、本件発明1は、相違点2~4を検討するまでもなく、甲2に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を直接的に引用するものであり、本件発明1が甲2に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明2も同様に、甲2に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由1-1、1-2(進歩性)に係るまとめ
以上1~2より、本件発明1~2は、甲1及び3の記載または甲2及び3の記載により当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1-1および1-2は、理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許に係る異議の申立てにおいて申立人が主張する申立理由はいずれも理由がないから、本件発明1~2についての特許は、取り消すことができない。
ほかに、本件発明1~2についての特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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