特許異議申立
2022-701090
ナットウキナーゼを含む食品
- 審判番号
- 2022-701090
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-122373
- 登録番号
- 7066547
- 請求日
- 2022年11月09日
- 審決日
- 2023年02月27日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【権利者代理人】迫田 恭子
- 【異議申立人】宮島 和美
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 三上 晶子
- 分類
- P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7066547号発明「ナットウキナーゼを含む食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7066547号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7066547号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成30年 6月27日に出願され、令和 4年 5月 2日にその特許権の設定の登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 4年11月 9日に,特許異議申立人 宮島 和美(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1ないし4に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、食品。
【請求項2】
前記(C)成分が、グルコン酸銅及び/又はピロリン酸第二鉄である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記(B)成分で形成されたカプセル皮膜を含むカプセル剤である、請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、本件特許に対する異議理由として下記1ないし3を主張し、証拠方法として下記4の甲第1ないし8号証を提示した。
1 異議理由1(甲第1号証による新規性、進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
2 異議理由2(甲第2号証による新規性、進歩性)
本件特許の請求項1,3ないし4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないか、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
3 異議理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。
4 証拠方法
甲第1号証 中国特許出願公開第101810336号明細書(以下「甲1」という。)
甲第2号証 登録実用新案第3196850号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証 特開2013-179905号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証 特開2014-168421号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証 特開2001-309757号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証 特願2018-122371の令和4年7月29日提出の意見書(以下「甲6」という。)
甲第7号証 化学大辞典5 縮刷版第38刷(以下「甲7」という。)
甲第8号証 化学大辞典 第1版第6刷(以下「甲8」という。)
第4 当審の判断
1 異議理由1(甲1による新規性、進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
甲1の記載(特に、特許請求の範囲の請求項1,5,6及び9の記載)よりみて、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。
「ゴム皮とゴム皮に封入された内容物とからなり、ソフトカプセルの皮が次の重量部の原料であり、内容物が健康、補助又は治療機能を有する液体又は懸濁液である咀嚼性ソフトカプセルであって、
ゼラチン25-65部、増粘剤1-25部、可塑剤18-65部、水分4-16部、及び、甘味料0.005-20部、香料エッセンス0.005-2部、色素0.0001-10部、酸味剤0.0001-5部であり、
前記の健康、補助又は治療機能を有する液体又は懸濁液が、健康、補助又は治療機能を有する成分と、補助剤を含み、
前記の健康、補助又は治療機能を有する成分が、動物性抽出物、植物性抽出物、栄養強化剤、薬品の中の一種、二種又は二種以上の任意の比で混合した組成の油相液であり、
前記の栄養強化剤が、グルコン酸銅、ピロリン酸第二鉄を含む、
咀嚼性ソフトカプセル。」
(以下「甲1発明」という。なお、甲1においてナットウキナーゼが記載されている請求項8は、請求項6のみを引用して特定しているところ、甲1においてグルコン酸銅、ピロリン酸第二鉄が記載されている請求項9も、同じく請求項6のみを引用して特定しているから、ナットウキナーゼとグルコン酸銅、ピロリン酸第二鉄を同時に含む発明を引用発明として認定することはできない。)
(2)請求項1に係る発明について
ア 請求項1に係る発明と、甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「ゼラチン」は、請求項1に係る発明の「(B)ゼラチン」に相当する。
(イ)甲1発明の「グルコン酸銅」及び「ピロリン酸第二鉄」は、各々、請求項1に係る発明の「(C)銅の有機塩」及び「鉄の有機塩」に相当する。
(ウ)甲1発明の「咀嚼性カプセル」は、上記ア、イの成分を含み、かつ、経口摂取するものである限りにおいて、請求項1に係る発明の「食品」に相当する。
イ よって、請求項1に係る発明と甲1発明とは,
「(B)ゼラチン、並びに(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、食品。」
において一致するものの、請求項1に係る発明では、食品が「(A)ナットウキナーゼ」を含むものであるのに対し、甲1発明では、咀嚼性ソフトカプセルがナットウキナーゼを含むものであるかどうか明らかでない点(以下「相違点1」という。)で相違する。
ウ ここで、甲1発明がナットウキナーゼを含むものであるかどうかが明らかでない以上、上記相違点1は実質的な相違点である。
よって、請求項1に係る発明は、甲1発明ではない。
エ 次に、上記相違点1について検討する。
(ア)甲1には、植物性抽出物として「ナットウキナーゼ」が例示されているが(請求項8、段落[0015]、[0141])、無数の選択肢の中の一つとして記載されるにすぎず、ゼラチン並びにグルコン酸銅及びピロリン酸第二鉄の組み合わせについても、何ら示されていない。
(イ)甲2には、薬膳サプリメントの変形例として、ナットウキナーゼを添加してもよいことが記載されているに止まり(段落【0047】)、ゼラチンとの組み合わせについては何ら示されていない。
(ウ)甲3ないし甲5には、いずれも、栄養補助食品・サプリメントの分野で食品に添加する鉄として「ピロリン酸第二鉄」が記載されているにすぎず、また、甲6には、本件特許とは別の特許出願に係る意見書で「ナットウキナーゼが水溶性であること」が記載されているにすぎず、さらに、甲7ないし甲8には、いずれも、「ゼラチンが水溶性であること」が記載されているにすぎない。
(エ)本件特許の請求項1に係る発明は、食品がナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチン分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができ、また、ゼラチンをカプセル皮膜やコーティング皮膜として含むカプセル剤や錠剤の場合には、開封後に吸湿した状態で保存されても、ゼラチン皮膜の形状を安定に保持し、保存によってゼラチン皮膜の割れや内容物の漏れが生じるのを抑制することができるという、本件特許の明細書に記載のとおりの格別な作用効果を奏するものである。
(オ)よって、請求項1に係る発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)請求項2,3に係る発明について
請求項2,3に係る発明は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定したものであるから、少なくとも上記(2)イの相違点1において、甲1発明と相違する。そして、相違点1についての判断は上記(2)エのとおりである。
よって、上記(2)と同様の理由により、請求項2,3に係る発明は、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)請求項4に係る発明について
請求項4に係る発明は、食品の配合成分として、請求項1の記載事項と同様の記載によって、ゼラチンの分解抑制方法に係る発明を特定したものである。よって、請求項4に係る発明と、甲1発明により特定された食品を用いる方法に係る発明(以下「甲1方法発明」という。)との対比は、実質的に上記(2)アと同様であって、両者は、少なくとも上記(2)イの相違点1において相違する。そして、相違点1についての判断は上記(2)エのとおりである。
よって、上記(2)と同様の理由により、請求項4に係る発明は、甲1方法発明ではないし、甲1方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)異議理由1(甲1による新規性、進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、請求項1ないし4に係る発明は、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
2 異議理由2(甲2による新規性、進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2の記載(特に、実施形態1に係る段落【0023】、【0027】、図1の記載)よりみて、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。
「生薬成分をカプセルに充填して成る薬膳サプリメント1であって、
植物由来の生薬成分を含む植物系生薬2と、動物由来の生薬成分を含む動物系生薬3と、12種類の所定のビタミン成分41ないしは2種類の所定のミネラル成分42のいずれかを所定量だけ含む栄養補助成分4と、植物系生薬2・動物系生薬3ならびに栄養補助成分4を内包する被膜層であって動物性ゼラチンから成るカプセル5と、を備え、
2種類の所定のミネラル成分として、鉄が該当する、
薬膳サプリメント1。」
(以下「甲2発明」という。なお、甲2におけるナットウキナーゼの記載は、薬膳サプリメントの変形例として添加してもよいことが示されるに止まり(段落【0047】)、ゼラチンとの組み合わせについては何ら示されていないから、ナットウキナーゼを同時に含む発明を引用発明として認定することはできない。)
(2)請求項1に係る発明について
ア 請求項1に係る発明と、甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「動物性ゼラチン」は、請求項1に係る発明の「(B)ゼラチン」に相当する。
(イ)甲2発明のミネラル成分としての「鉄」は、請求項1に係る発明の「(C)」のうち「鉄の有機塩」又は「鉄の無機塩」に相当する。
(ウ)甲2発明の「薬膳サプリメント1」は、上記ア、イの成分を含み、かつ、サプリメントである限りにおいて、請求項1に係る発明の「食品」に相当する。
イ よって、請求項1に係る発明と甲2発明とは,
「(B)ゼラチン、並びに(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、食品。」
において一致するものの、請求項1に係る発明では、食品が「(A)ナットウキナーゼ」を含むものであるのに対し、甲2発明では、薬膳サプリメント1がナットウキナーゼを含むものであるかどうか明らかでない点(以下「相違点2」という。)で相違する。
ウ ここで、甲2発明がナットウキナーゼを含むものであるかどうかが明らかでない以上、上記相違点2は実質的な相違点である。
よって、請求項1に係る発明は、甲2発明ではない。
エ 次に、上記相違点2について検討する。
相違点2は、ナットウキナーゼを含むものであるかどうか明らかでない点において、上記1における相違点1と実質的に同様であるところ、当該相違点が各甲号証に記載ないし示唆されていないこと、及び、請求項1に係る発明が本件特許の明細書に記載のとおりの格別な作用効果を奏するものであることは、上記1(2)エで検討したとおりである。
よって、請求項1に係る発明は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)請求項2,3に係る発明について
請求項2,3に係る発明は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定したものであるから、少なくとも上記(2)イの相違点2において、甲2発明と相違する。そして、相違点2についての判断は上記(2)エのとおりである。
よって、上記(2)と同様の理由により、請求項2,3に係る発明は、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)請求項4に係る発明について
請求項4に係る発明は、食品の配合成分として、請求項1の記載事項と同様の記載によって、ゼラチンの分解抑制方法に係る発明を特定したものである。よって、請求項4に係る発明と、甲2発明により特定された薬膳サプリメント1を用いる方法に係る発明(以下「甲2方法発明」という。)との対比は、実質的に上記(2)アと同様であって、両者は、少なくとも上記(2)イの相違点において相違する。そして、相違点についての判断は上記(2)エのとおりである。
よって、上記(2)と同様の理由により、請求項4に係る発明は、甲2方法発明ではないし、甲2方法発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)異議理由2(甲2による新規性、進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、請求項1ないし4に係る発明は、甲2に記載された発明ではないし、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
3 異議理由3(サポート要件)について
(1)当審の判断
本件特許の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題として、ナットウキナーゼ及びゼラチンを含みながらも、保存によるゼラチンの分解を抑制できる食品を提供すること(段落【0007】)が記載されるとともに、課題を解決するための手段として、銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合すること(段落【0008】)が記載され、また、発明の効果として、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができ、また、ゼラチンをカプセル皮膜やコーティング皮膜として含むカプセル剤や錠剤の場合には、開封後に吸湿した状態で保存されても、ゼラチン皮膜の形状を安定的に保持し、保存によってゼラチン皮膜の割れや内容物の漏れが生じるのを抑制することができる(段落【0010】)と記載されている。
そして、食品組成としてナットウキナーゼ粉末、グルコン酸銅及びピロリン酸第二鉄を用いた実施例では、試験例1として、ゼラチンプレートを作成し、その分解耐性を評価した結果(実施例1~8:表1、比較例1~6)が示されるとともに、製剤例1~8としてソフトカプセル剤(製剤例1~8:表1,2)も示されている。
よって、本件特許の請求項1ないし4に係る発明について、発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題と当該課題を解決するための手段が十分に記載されているといえる。
(2)申立人の主張について
申立人の主張は、概要、当業者は、本件特許の明細書に記載された水系における実施例において示されている本件特許発明の効果が、油系においても当然に得られると、直ちに理解することはできず、また、内容液が油であり、ゼラチンが直接水に触れないソフトカプセルのような食品においても、本件特許の明細書に記載の本件特許発明の効果が当然に得られると、直ちに理解することはできない、というものである。
しかしながら、ゼラチンが水溶性であり、油溶性でないという技術常識を踏まえると、水系において確認できる本件特許発明の効果が、水系よりもゼラチンの分解の可能性がより低い油系においても確認できることは当然に予測されるところ、申立人はこれに反する具体的根拠を示していない。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載によれば、上記課題を解決するための手段が反映されていることは、上記(1)に示したとおりである。よって、申立人の主張は採用できない。
(3)異議理由3(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当するということはできず、この理由によって本件特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記のとおり決定する。
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