特許異議申立
2023-700740
ナットウキナーゼを含む食品
- 審判番号
- 2023-700740
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-122371
- 登録番号
- 7207877
- 請求日
- 2023年07月18日
- 審決日
- 2024年02月19日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【権利者代理人】迫田 恭子
- 【異議申立人】山内 慶子
- 【異議申立人】宮島 和美
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 淺野 美奈
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.4 -YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第39条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7207877号発明「ナットウキナーゼを含む食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7207877号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕及び4について訂正することを認める。
特許第7207877号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7207877号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成30年6月27日の出願であって、令和5年1月10日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月18日に特許異議申立人 山内 慶子(以下、「特許異議申立人A」という。)及び特許異議申立人 宮島 和美(以下、「特許異議申立人B」という。)それぞれにより特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされ、同年9月29日付けで取消理由(以下、「取消理由」という。)が通知され、同年12月1日に特許権者 小林製薬株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月14日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、令和6年1月17日に特許異議申立人Bから意見書が提出され、同年同月18日に特許異議申立人Aから意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和5年12月1日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(C)ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種」と記載されているのを、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;並びにイチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合を除く)。」と記載されているのを、「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に「前記(C)成分が、チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である」と記載されているのを、「前記(C)成分が、チアミン塩酸塩、葉酸、シアノコバラミン、及びメチルヘスペリジンよりなる群から選択される少なくとも1種である」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;並びにイチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合を除く)に、」と記載されているのを、「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に「(C)ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種を配合する」と記載されているのを、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「(C)」成分を具体的に特定すると共に、その具体的に特定されたものが、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、「食品」から除外する場合を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び2による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1及び2による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項2についての訂正は、「(C)」成分をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項3についての訂正について
訂正事項1及び2による請求項3についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項3についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし3による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項4についての訂正について
訂正事項4による請求項4についての訂正は、「食品」から除外する場合を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5による請求項4についての訂正は、「(C)」成分を具体的に特定すると共に、その具体的に特定されたものが、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除外するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4及び5による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし3による請求項1ないし3についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
訂正事項4及び5による請求項4についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし5による請求項1ないし4についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし3は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1ないし3による請求項1ないし3についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項4及び5による請求項4についての訂正は、請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし4に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕及び4について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。
【請求項2】
前記(C)成分が、チアミン塩酸塩、葉酸、シアノコバラミン、及びメチルヘスペリジンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記(B)成分で形成されたカプセル皮膜を含むカプセル剤である、請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
1 特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和5年7月18日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由A1(甲第A1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由A2(甲第A3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由A3(甲第A4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし4は、甲第A4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由A4(甲第A5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし4は、甲第A5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)申立理由A5(甲第A6号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし4は、甲第A6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(6)申立理由A6(甲第A7号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし4は、甲第A7号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(7)申立理由A7(甲第A8号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A8号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(8)申立理由A8(甲第A9号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし4は、甲第A9号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(9)申立理由A9(甲第A10号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A10号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A10号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(10)申立理由A10(甲第A11号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A11号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし4は、甲第A11号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(11)申立理由A11(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明の課題は、「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含みながらも、保存によるゼラチンの分解を抑制できる食品の提供」といえる(本件明細書・[0001]、[0007]、[0010])。
本件明細書の実施例には、ビタミンCを含む食品において、ゼラチンの分解耐性は実証されていない。
また、本件明細書の他の記載においても、ビタミンCがゼラチンの分解抑制に寄与するメカニズム等について全く記載されていない。また、そもそも、ビタミンCがゼラチンの分解抑制に寄与するという技術常識なども存在しない。
さらに、本件特許発明はビタミンP類を含む食品、またはビタミンPを配合する分解抑制方法である。
しかしながら、本件明細書の比較例には、ビタミンP(ルチン)にゼラチンの分解抑制効果がないことが実証され、明細書にもそのように明記されている。
したがって、当業者は、技術常識および本件明細書の記載に基づき、本件発明の「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含みながらも、保存によるゼラチンの分解を抑制できる食品の提供」という課題を解決できると認識することはできない。
同様のことが本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし4にも当てはまる。
よって、本件特許発明1ないし4はサポート要件を満たさない。
(12)証拠方法
甲第A1号証:特開2016-13976号公報
甲第A2号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)第2章 日本食品標準成分表(https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm)(6 野菜類、17 調味料及び香辛料類)
甲第A3号証:小林製薬株式会社が「ナットウキナーゼ EPA DHA」を販売していたウェブページのアーカイブ(http://web.archive.org/web/20170425153741/http://www.kobayashi.co.jp/seihin/dha_epa/index.html)
甲第A4号証:Amazon.co.jpのオンラインショップにおいて、「野口医学研究所 納豆キナーゼプレミアム4000FU 120粒×6個セット」を販売するウェブページ(https://www.amazon.co.jp/%E9%87%8E%E5%8F%A3%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80-%E7%B4%8D%E8%B1%86%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC-%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%9F%E3%82%A2%E3%83%A0-4000FU-x%EF%BC%96%E5%80%8B%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88/dp/B07DMV5K7K)
甲第A5号証:オトコーポレーションが、納豆菌培養エキス含有食品である「Nattokinase 春の小川Q10」を紹介するウェブページのアーカイブ(https://web.archive.org/web/20161028023238/https://oto-corporation.com/supplement/nattokinase-%E6%98%A5%E3%81%AE%E5%B0%8F%E5%B7%9D-q10)
甲第A6号証:「ゆりちゃんねるのブログ」というブログにおいて「きなり」を紹介するウェブページ(https://jyoseihormon-kami.com/kinari-seibun-hyouka)
甲第A7号証:Amazon.co.jpのオンラインショップにおいて、」ディアナチュラスタイル ナットウキナーゼ×α-リノレン酸・EPA・DHA 20粒 (20日分)」 を販売するウェブページ(https://www.amazon.co.jp/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%A9-%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%AB-%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC%C3%97%CE%B1-%E3%83%AA%E3%83%8E%E3%83%AC%E3%83%B3%E9%85%B8%E3%83%BBEPA%E3%83%BBDHA-20%E7%B2%92-20%E6%97%A5%E5%88%86/dp/B06XC219MW/ref=sr_1_6?adgrpid=127782996949&hvadid=658918471568&hvdev=c&hvlocphy=1009430&hvnetw=g&hvqmt=b&hvrand=16973199686663087248&hvtargid=kwd-43406762856&hydadcr=29047_14730526&jp-ad-ap=0&keywords=%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC+%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA&qid=1688448122&s=hpc&sr=1-6)
甲第A8号証:Amazon.co.jpのオンラインショップにおいて、「ポリアミンを含むナットウキナーゼサプリ 【ナトフェミン】」を販売するウェブページ(https://www.amazon.co.jp/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%BC-%E3%83%9D%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%92%E5%90%AB%E3%82%80%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA-%E3%80%90%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%80%91/dp/B003FMJF38/ref=sr_1_248?adgrpid=127782996949&hvadid=658918471568&hvdev=c&hvlocphy=1009430&hvnetw=g&hvqmt=b&hvrand=16973199686663087248&hvtargid=kwd-43406762856&hydadcr=29047_14730526&jp-ad-ap=0&keywords=%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC+%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA&qid=1688453764&s=hpc&sr=1-248)
甲第A9号証:Amazon.co.jpのオンラインショップにおいて、「ユーワ 鹿児島黒酢DHA+EPA納豆キナーゼ入り150カプセル」を販売するウェブページ(https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%AF-%E9%B9%BF%E5%85%90%E5%B3%B6%E9%BB%92%E9%85%A2DHA-EPA-150%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB/dp/B006ZSL6W2/ref=sr_1_81?adgrpid=127782996949&hvadid=658918471568&hvdev=c&hvlocphy=1009430&hvnetw=g&hvqmt=b&hvrand=16973199686663087248&hvtargid=kwd-43406762856&hydadcr=29047_14730526&jp-ad-ap=0&keywords=%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC+%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA&qid=1688450495&s=hpc&sr=1-81)
甲第A10号証:Amazon.co.jpのオンラインショップにおいて、「薬王製薬 納豆精(ナットウセイ) 270粒 373」を販売するウェブページ(https://www.amazon.co.jp/%E8%96%AC%E7%8E%8B%E8%A3%BD%E8%96%AC-%E8%96%AC%E7%8E%8B%E8%A3%BD%E8%96%AC-%E7%B4%8D%E8%B1%86%E7%B2%BE%EF%BC%88%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%BB%E3%82%A4%EF%BC%89-270%E7%B2%92-373/dp/B005VDPYE8/ref=sr_1_134?adgrpid=127782996949&hvadid=658918471568&hvdev=c&hvlocphy=1009430&hvnetw=g&hvqmt=b&hvrand=16973199686663087248&hvtargid=kwd-43406762856&hydadcr=29047_14730526&jp-ad-ap=0&keywords=%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC%2B%E3%82%B5%E3%83%97%E3%83%AA&qid=1688451551&s=hpc&sr=1-134&th=1)
甲第A11号証:Amazon.co.jpのオンラインショップにおいて、「ナットウキナーゼソフト【3本セット】ミナミヘルシーフーズ」を販売するウェブページ(https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%9F%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%BC%E3%82%BA-%E3%83%8A%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%AD%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88%E3%80%90%EF%BC%93%E6%9C%AC%E3%82%BB%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%91%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%9F%E3%83%98%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%95%E3%83%BC%E3%82%BA/dp/B003UMG02C)
甲第A12号証:特開2018-95634号公報
甲第A13号証:特開2018-87156号公報
甲第A14号証:特開2018-76315号公報
甲第A15号証:特開2018-62495号公報
甲第A16号証:特開2017-31139号公報
甲第A17号証:特開2013-103879号公報
甲第A18号証:特開2015-163048号公報
甲第A19号証:特開昭63-117761号公報
甲第A20号証:特開平9-154549号公報
甲第A21号証:納豆おろしジュレ,cookpad[online],レシピID:1442296,2011年05月18日,retrieved from the internet<URL:https://cookpad.com/recipe/1442296>
甲第A22号証:シードコムス菌のチカラ サプリメント、Amazon [online]、2017年6月12日、retrieved from the internet<URL:https://www.amazon.co.jp/seedcoms-菌のチカラ-約3ヶ月分-90粒-乳酸菌ビフィズス菌・納豆菌・紅麹菌・酵母菌/dp/B072KG99SJ>
甲第A23号証:シャンとヘッド 90粒×3瓶(イチョウ葉エキス、ナットウキナーゼ、DHA、EPA含有サプリメント)、Amazon[online]、2013年10月6日、retrieved from the internet<URL:https://www.amazon.co.jp/寿物産株式会社-シャンとヘッド-90粒×3瓶-イチョウ葉エキス、ナットウキナーゼ、DHA、EPA含有サプリメント/dp/B00F0F88KA>
甲第A21ないし23号証は、令和6年1月18日に特許異議申立人Aから提出された意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書A及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲A1」のようにいう。
2 特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和5年7月18日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由B1(甲第B1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由B2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
ア 本件特許の明細書に記載の課題における妥当性の欠如
本件特許発明1は、(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種を含む食品であって、かっこ書きで除外されている食品以外のあらゆる食品を権利範囲とするものである。
本件特許発明1には、水分量が少ない食品、すなわち、(C)成分を添加しなくとも、ゼラチンの分解という問題がそもそも発生しない食品(本件特許の明細書において課題とされているゼラチンの分解の抑制という課題が存在しない食品)も包含される。本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載を、このような食品にまで拡張一般化することはできない。
以上より、本件特許発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
本件特許発明2ないし4も同様に本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
イ 本件特許の明細書の試験例の方法や判定基準等が不適格であること
本件特許の明細書には、試験例1においてゼラチンの分解試験に供したゼラチンプレートの作成について、「ゼラチンを20重量%、メチルパラベン(防腐剤)を0.2重量%となるように添加して混合し、ゼラチン溶液を調製した。得られたゼラチン溶液10gをシャーレ(内径9cm)に広げ、シャーレ内のゼラチンの厚みを均ーにした後に、4℃で1時間以上冷却し、ゼラチンをゲル化させ、シャーレ内にゼラチンプレート形成させた。」(段落【0046】)とある。
ゼラチン溶液は79.8重量%が水であることから、ゼラチン溶液の比重を1.0g/cm3としてゼラチンプレートの厚みを計算すると、4.5×4.5×3.14×[ゼラチンプレートの厚み]=10の計算式から、ゼラチンプレートの厚みの理論値は、約0.16cm(約1.6mm)と極めて薄いことが分かる。
一方、甲第7号証にて、本件特許の明細書と同様にゼラチンプレートを作製し、ゼラチンプレートの厚みを計測したところ、実測の平均値が約1.4mmとなり、厚みの最大値と最小値の差が約0.5mmと、厚みの差異が大きいものであった。
ここで、本件特許の明細書のゼラチン分解耐性の判定基準(段落【0047】)では、例えば、「3:ゼラチンプレートの厚さ半分程度が溶解している。」との判定基準があり、実施例6(段落【0049】)でのゼラチン分解耐性が「3」となっている。この場合、ゼラチンプレートの厚みは0.7mm程度と相当な薄さであることを意味する。また、上述の厚みの最大値と最小値の差(約0.5mm)を含めて考えると、上記判定基準「3」のゼラチンプレートの厚みの幅は、0.2~1.2mmになりうる。つまり、上記判定基準「3」は、他の判定基準、例えば、「1:ゼラチンプレートが僅かに溶解している。」、「2:ゼラチンプレートが少し溶解しており滴下していない部分との差が明らか。」、「4:ゼラチンプレートの大部分が溶解しており一部シャーレの底が露出する。」の範囲を含みうる。
更に、甲第7号証では、シャーレに流し込むゼラチン溶液の重量を多くすればするほど、ゼラチンプレートの厚みは増し、厚みの最大値と最小値の差は小さい、つまり、均ーな厚みを得やすいことが示されている。該シャーレの高さは10mm程度あることは常識であるため、上記判定基準に合わせたゼラチンプレートを準備することは可能であり、科学的常識である。
すなわち、試験例1は、ゼラチン分解耐性の判定基準があいまいとなりやすいような条件下で試験を実施しており、試験例1の方法や判定基準は不適格である。
そして、このような不適格な試験例1に基づいている本件特許発明1の食品が、本件特許の明細書に記載のゼラチンの分解の抑制という課題を解決できることを当業者は認識することができない。
以上より、本件特許発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、あいまいさや疑念の余地を残す内容に基づいたものであり、本件特許の特許権者により本件特許発明が科学的に真であることが証明されるまで、認められるべきものではない。
本件特許発明2ないし4も同様である。
ウ (C)成分がビタミンP類である場合について
本件特許の明細書の試験例1では、水系において、ゼラチンの分解耐性の検討が行われており、ナットウキナーゼとルチンを含有する比較例6の試験液を使用した場合、ゼラチンの分解耐性は、最も悪い「5」となっている。
すなわち、ルチンには、ナットウキナーゼと共存させた場合のゼラチンの分解抑制効果はないといえる。
ここで、本件特許の明細書の段落【0029】には、「ビタミンP類とは、ビタミンP及びその配糖体を指す。ビタミンPとは、ビタミン様物質であり、具体的には、ヘスペリジン、メチルヘスペリジン、エリオシトリン、ケルセチン等が挙げられる。ビタミンPの配糖体において、配位している糖としては、具体的には、グルコール、ガラクトース、マンノース等の単糖;ルチノース、スクロース、マルトース、ラクトース、セロビオース等の二糖;マルトトリオース、メレジトース、ラフィノース等の三糖;その他のオリゴ糖(四糖~十糖等)が挙げられる。」と記載されている。
そして、甲第B9号証によれば、「ルチン」とは、クエルセチンの3位にルチノースが結合した配糖体である(「クエルセチン」は「ケルセチン」と同義)。段落【0029】の記載を鑑みると、「ルチン」は、本件特許における「ビタミンP類」に該当する。
また、甲第B9号証によれば、「ルチン」はビタミンPの代表であるとされている。
以上より、「ルチン」は、本件特許発明1の(C)成分である「ビタミンP類」の下位概念であるといえるので、ナットウキナーゼ、ゼラチン及びルチンを含む食品は、本件特許発明1の要件を満たす。
それにもかかわらず、本件特許の明細書によれば、ルチンには、ナットウキナーゼと共存させた場合のゼラチンの分解抑制効果はないとされている。
すなわち、本件特許発明1は、本件特許の明細書の【0007】に記載の課題を明らかに解決できない食品を包含している。
したがって、本件特許発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
本件特許発明2ないし4も同様に本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
エ (C)成分がビタミンC類である場合について
本件特許の明細書の実施例において、ビタミンC類によるゼラチンの分解抑制効果は実証されていない。
本件特許発明1において、(C)成分として列挙されているのは、「ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類及びビタミンC類」であるところ、これらの共通点は、ビタミン又はビタミン様物質であることだけであり、それぞれの化学構造は大きく異なっている。
更に、本件特許の明細書において、(C)成分を配合することによる、ゼラチンの分解の抑制に関するメカニズムについて何ら記載はない。
以上より、本件特許発明1のうち、(C)成分がビタミンC類である発明については、ゼラチンの分解の抑制という課題を解決できることを当業者は認識することができない。
したがって、本件特許発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
本件特許発明2ないし4も同様に本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
(3)申立理由B3(同日出願)
本件特許発明1ないし4は、本件特許に係る出願と同日に出願された下記の特許出願(甲第B10号証)に係る発明と同一であり、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)証拠方法
甲第B1号証:登録実用新案第3196850号公報
甲第B2号証:異議2022-701090の異議の決定
甲第B3号証の1:医療薬学,Vol.34,No.6,p.530-537(2008)
甲第B3号証の2:膜,Vol.36,No.4,p.177-182(2011)
甲第B3号証の3:「日本薬局方」ホームページ 第十七改正日本薬局方p.637、平成28年3月7日
甲第B3号証の4:薬剤学,Vol.68,No.1,p.37-41 (2008)
甲第B3号証の5:薬剤学,Vol.70,No.3,p.198-201 (2010)
甲第B4号証:日本未病システム学会雑誌,Vol.8, No.2,p.204-205 (2002)
甲第B5号証の1:化学大辞典8 縮刷版第38刷、平成15年10月1日
甲第B5号証の2:J. Am. Chem. Soc.,Vol.118,No.26,p.6105-6109 (1996)
甲第B5号証の3:化学と生物,Vol.30,No.12,p.792-798 (1992)
甲第B6号証:特開2014-101318号公報
甲第B7号証:実験報告書、令和5年7月13日
甲第B8号証:MEDCHEM NEWS,Vol.12,No.4, p.14-19 (2002)
甲第B9号証:化学大辞典 第1版第6刷、平成13年6月1日
甲第B10号証:特願2023-417号(特開2023-30200号公報)
甲第B11号証:生産研究、63巻、3号、350-353頁(2011)、平成23年(2011年)、東京大学生産技術研究所
甲第B12号証:生物物理、25巻、5号、192-202頁(1985)、昭和60年(1985年)、一般社団法人日本生物物理学会
甲第B13号証:Handbook of Food Preservation, Second Edition、平成19年(2007年)、Taylor&Francis Group、p465及び466
甲第B14号証:特開2005-200372号公報
甲第B15号証:第2版 標準化学用語辞典、平成17年(2005年)3月31日、丸善(株)、p341及び707
甲第B11ないしB15号証は、令和6年1月17日に特許異議申立人Bから提出された意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書B及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲B1」のようにいう。
3 特許権者から提出された証拠方法
特許権者から、令和5年12月1日に提出された意見書に添付して以下の証拠が提出されている。
乙第1号証:特許第4065321号公報
乙第2号証:東京大学生産技術研究所 白樫研究室[生体中の結合水の測定]のウェブサイトのコピー、[令和5年11月29日検索]、インタネット<https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/seikenkoukai/2012/virtual/pdf/02_shirakashi_j.pdf>
乙第3号証:三菱ガス化学株会社の「エージレス○R(当審注:Rを○で囲んだ記号である。)コラム 水分活性値とは? 食品と水分活性の関係について」のウェブサイトのコピー[令和5年11月29日検索]、インタネット<https://www.mgc.co.jp/special/column/water-activity/)>
乙第4号証:あいち産業科学技術総合センターの「食品の水分活性について」のウェブサイトのコピー、あいち産業科学技術総合センターニュース、2014年11月号、[令和5年11月29日検索]、インタネット<https://www.aichi-inst.jp/other/up_docs/no152_03.pdf>
乙第5号証:実験成績証明書、令和5年11月27日、小林製薬株式会社、作成者:西川 理恵
証拠の表記は、上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「乙1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
取消理由の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲A1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由A1とおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲A3に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由A2とおおむね同旨である。
3 取消理由3(甲A4に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由3は申立理由A3を包含する。
4 取消理由4(甲A5に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A5に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由4は申立理由A4を包含する。
5 取消理由5(甲A6に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A6に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由5は申立理由A5を包含する。
6 取消理由6(甲A7に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A7に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A7に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由6は申立理由A6を包含する。
7 取消理由7(甲A8に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A8に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A8に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由7は申立理由A7とおおむね同旨である。
8 取消理由8(甲A9に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A9に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由8は申立理由A8を包含する。
9 取消理由9(甲A10に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A10に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A10に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由9は申立理由A9とおおむね同旨である。
10 取消理由10(甲A11に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲A11に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲A11に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由10は申立理由A10を包含する。
11 取消理由11(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由11は申立理由A11並びに申立理由B2のア、ウ及びエとおおむね同旨である。
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には、本件特許発明における「(C)成分」である「ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種」の如何なる作用機序により、保存によるゼラチンの分解を抑制できるのかについての理論的な説明はない。
また、タンパク質の分解には水が関与すると認められる(甲B5の1ないし3参照。)ところ、発明の詳細な説明の【0046】ないし【0050】には、精製水を多量に含有するゼラチンプレートに、ナットウキナーゼ粉末と共にチアミン塩酸塩、ビタミンB9、ビタミンB12又はメチルヘスペリジン及び多量の精製水からなる試験液(実施例1ないし7)を摘下し、室温で一晩静置して、これらの試験液が、チアミン塩酸塩、ビタミンB9、ビタミンB12及びメチルヘスペリジンのいずれも使用しない試験液(比較例1)及びチアミン塩酸塩、ビタミンB9、ビタミンB12又はメチルヘスペリジンに代えてアルギニン、リジン、シトルリン、難消化性デキストリン又はルチンを使用した試験液(比較例2ないし6)と比べ、ゼラチンプレートの分解に対する抑制効果を奏することを確認する試験結果の記載があるものの、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品全般において、ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることを実証する実施例はない(製造例1ないし12はソフトカプセル剤を製造できたことを示すに止まり、製造例13ないし17はゼラチンを含まない錠剤を製造できたことを示すに止まり、製造例18ないし22はゼラチンを含まない顆粒剤を製造できたことを示すに止まる。)。
そして、上記試験結果の条件は、カプセル剤、錠剤及び顆粒剤等の水を殆ど含まないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品を保存する場合の条件とは著しく異なる(特に、ゼラチンプレート及び試験液の両方に多量の精製水が使用されている点。)。
そうすると、上記試験結果からは、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品全般において、「ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種」を配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることを当業者といえども理解することはできない。
他方、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品全般において、「ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種」を配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることが当業者の技術常識であったともいえない。
したがって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
仮に、上記試験結果に、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品全般において、チアミン塩酸塩、ビタミンB9、ビタミンB12又はメチルヘスペリジンを配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることが示されているとして、さらに検討する。
上記のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明における「(C)成分」である「ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種」の如何なる作用機序により、保存によるゼラチンの分解を抑制できるのかについての理論的な説明はないし、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品全般において、「ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種」を配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることが当業者の技術常識であったともいえない。
そして、本件特許発明における「(C)成分」が「ビタミンC類」の場合に、保存によるゼラチンの分解を抑制できることを実証する実施例はない。
また、本件特許発明における「(C)成分」が「ルチン」(甲A20及び甲B9によると、「ルチン」は「ビタミンP類」である。)の場合は、比較例6として、ゼラチンの分解を抑制できないことを実証している。
そうすると、当業者は、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品全般において、「(C)成分」が「チアミン塩酸塩、ビタミンB9、ビタミンB12又はメチルヘスペリジン」である場合に限り、保存によるゼラチンの分解を抑制でき、発明の課題を解決できると認識できる。
しかし、本件特許発明1ないし4においては、「(C)成分」が「チアミン塩酸塩、ビタミンB9、ビタミンB12又はメチルヘスペリジン」であることに特定されていない。
したがって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
よって、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるとはいえない。
第6 取消理由についての当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲A1に記載された事項等
ア 甲A1に記載された事項
甲A1には、「経口組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は予め付されたものと当審で付したものである。他の証拠についても同様。
・「【請求項1】
(A)ナットウキナーゼ、(B)野菜粉砕物、並びに(C)エイコサペンタエン酸及び/又はドコサヘキサエン酸を含有することを特徴とする、経口組成物。」
・「【0001】
本発明は、ナットウキナーゼを含む経口組成物。より具体的には、ナットウキナーゼの活性低下を抑制でき、優れたフィブリン分解作用を発揮できる経口組成物に関する。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、ナットウキナーゼを経口組成物に製剤化すると、活性の低下が不可避的に生じるという欠点があることを見出した。このような製剤化に伴うナットウキナーゼの活性低下は、フィブリン分解作用の低減をきたすため、ナットウキナーゼの製剤化において活性低下を見越したナットウキナーゼの配合量の増大が必要になり、ひいては服用量やコストの増加によって摂取者に負担を強いることになる。
【0008】
そこで、本発明は、ナットウキナーゼの活性低下を抑制でき、優れたフィブリン分解作用を発揮できる経口組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ナットウキナーゼと共に、野菜粉砕物、並びにエイコサペンタエン酸及び/又はドコサヘキサエン酸を組み合わせて経口組成物に製剤化することによって、ナットウキナーゼの活性低下を抑制でき、優れたフィブリン分解作用を発揮させ得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。」
・「【0032】
他の含有成分
本発明の経口組成物は、前記(A)~(C)成分の他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、飲食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、リコペン等のビタミン類;塩酸ベタイン、塩化カルニチン、塩化ベタネコール等の健胃剤;カルシウム、イオウ、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄等のミネラル類;大豆タンパク、卵白粉末、乳清タンパク等のタンパク質;グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、フェニルアラニン、タウリン、トリプトファン等のアミノ酸;リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸等の脂肪酸類;カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、フラボノイド色素、コチニール色素、アマランス、エリスロシン、アルラレッドAC、ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、アシッドレッド、タートラジン、サンセットイエローFCF、ファストグリーンFCF、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン等の色素;各種フルーツのフレーバーやエッセンス等の香料;クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、食塩、グルタミン酸及びその塩、みりん、食酢、天然果汁、植物抽出エキス、果実・海産物等の裁断物又は粉末化物等の調味剤;アガリクス、シイタケエキス、レイシ、ヤマブシタケ等のキノコ類又はそのエキス;食物繊維、ローヤルゼリー、プロポリス、ハチミツ、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、セラミド、ヒアルロン酸等のその他機能性素材等が挙げられる。これらの添加成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加成分の含有量については、使用する添加成分の種類や経口組成物の用途等に応じて適宜設定される。」
・「【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
なお、以下に示す実施例、比較例及び製剤例において、使用した成分の入手元、組成等については、以下の通りである。
ナットウキナーゼ粉末:「納豆菌培養エキス末BNK4000」(株式会社日本生物化学研究所製);1g当たりのナットウキナーゼの活性は43300FU
玉葱乾燥粉末1:「さらさらレッドパウダー(タマネギ乾燥粉末)」(こだま食品株式会社製);玉葱の乾燥粉末
玉葱乾燥粉末2:「玉葱パウダーS」(こだま食品株式会社製);玉葱の乾燥粉末
野菜ミックス乾燥粉末:「野菜ミックスパウダー」(こだま食品株式会社製);人参、キャベツ、ニンニク、大麦若葉、ブロッコリー、生姜、玉葱、ウコン、ムラサキイモ、ケール、赤キャベツ、セロリ、南瓜、トマト、モロヘイヤ、ほうれん草、及びパセリの乾燥粉末の混合物
サツマイモ乾燥粉末:「アヤムラサキパウダー」(こだま食品株式会社製);アヤムラサキの乾燥粉末
魚油1:「精製魚油 EPA-28」(日本水産株式会社製);イワシから得られた魚油、エイコサペンタエン酸26.74重量%及びドコサヘキサエン酸11.8重量%含有
魚油2:「DDオイル DHA-46」(日本水産株式会社製);マグロの頭部から得られた魚油、エイコサペンタエン酸5.12重量%及びドコサヘキサエン酸41.56重量%含有
魚油3:「TUNA OIL 25DHA」(Polaris nutritional lipids製);マグロから得られた魚油、エイコサペンタエン酸5.12重量%及びドコサヘキサエン酸25.51重量%含有
魚油4:「OMEGAVIE DHA70TG」(Polaris nutritional lipids製);
マグロから得られた魚油を精製し得られた魚油。エイコサペンタエン酸5.35重量%及びドコサヘキサエン酸65.52重量%含有
魚油5:「OMEGAVIE EPA70TG」(Polaris nutritional lipids製);
イワシ、サバから得られた魚油を精製し得られた魚油。エイコサペンタエン酸62.49重量%及びドコサヘキサエン酸4.98重量%含有
【0047】
試験例1
表1及び2に示す組成の経口組成物を調製し、各経口組成物1g当たりのナットウキナーゼの活性値(FU/g)を以下の方法で測定した。測定したナットウキナーゼの活性値から、以下の算出式に従って、ナットウキナーゼの活性維持率(%)、及びナットウキナーゼの活性向上率(%)を算出した。」
・「【0059】
製剤例(ソフトカプセル剤)
下記組成の内容液及び剤皮を用いて、ソフトカプセル剤(1剤当たり、内容液300mg、剤皮150mg含有)を調製した(製剤例1~14)。得られたソフトカプセル剤を前記試験例1と同様の方法で試験したところ、いずれも、ナットウキナーゼの活性低下を十分に抑制できていた。
【0060】
【表3】
[図:0001410221000001.jpg]
【0061】
【表4】
[図:0001410221000002.jpg]
」
イ 甲A1に記載された発明
甲A1に記載された事項を、特に製造例14に関して整理すると、甲A1には次の発明(以下、順に「甲A1発明」及び「甲A1製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A1発明>
「ナットウキナーゼ粉末、
人参、キャベツ、ニンニク、大麦若葉、ブロッコリー、生姜、玉葱、ウコン、ムラサキイモ、ケール、赤キャベツ、セロリ、南瓜、トマト、モロヘイヤ、ほうれん草、及びパセリの乾燥粉末の混合物、
魚油1(イワシから得られた魚油、エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸含有)、魚油2(マグロの頭部から得られた魚油、エイコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸含有)、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、を含み、
剤皮がゼラチン及びグリセリン、を含む
ソフトカプセル剤。」
<甲A1製法発明>
「甲A1発明の製造方法。」
(2)甲A3に記載された事項等
ア 甲A3に記載された事項
甲A3には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000003.jpg]
」(第1ページ)
イ 甲A3に記載された発明
甲A3に記載された事項を整理すると、甲A3には次の発明(以下、順に「甲A3発明」及び「甲A3製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A3発明>
「ナットウキナーゼ含有納豆菌培養エキス、
カプセル被包材としてゼラチン及びグリセリン、
EPA含有精製魚油、DHA含有精製魚油、サラサラレッド(たまねぎ)、ケルセチン配糖体、ビタミンE含有植物油、難消化性デキストリン、サフラワー油、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、微粒酸化ケイ素、を含む、
カプセル。」
<甲A3製法発明>
「甲A3発明の製造方法。」
(3)甲A4に記載された事項等
ア 甲A4に記載された事項
甲A4には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000004.jpg]
」(第1ページ)
・「
[図:0001410221000005.jpg]
」(第2ページ)
イ 甲A4に記載された発明
甲A4に記載された事項を整理すると、甲A4には次の発明(以下、順に「甲A4発明」及び「甲A4製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A4発明>
「ナットウキナーゼ含有納豆菌エキス(大豆を含む)、
ゼラチン、
トウモロコシデンプン(国内製造)、デキストリン、ビール酵母、黒コショウエキス、ケルセチン含有タマネギ外皮末、ステアリン酸Ca、微粒酸化ケイ素、セルロース、を含む、
カプセルタイプのサプリメント。」
<甲A4製法発明>
「甲A4発明の製造方法。」
(4)甲A5に記載された事項等
ア 甲A5に記載された事項
甲A5には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000006.jpg]
」(第1ページ)
イ 甲A5に記載された発明
甲A5に記載された事項を整理すると、甲A5には次の発明(以下、順に「甲A5発明」及び「甲A5製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A5発明>
「納豆菌培養エキス末、
ゼラチン、
DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、葉酸、グリセリンエステル、ミツロウ、を含む
ナットウ菌培養エキス含有食品。」
<甲A5製法発明>
「甲A5発明の製造方法。」
(5)甲A6に記載された事項等
ア 甲A6に記載された事項
甲A6には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000007.jpg]
」(第2ページ)
・「
[図:0001410221000008.jpg]
」(第4ページ)
イ 甲A6に記載された発明
甲A6に記載された事項を整理すると、甲A6には次の発明(以下、順に「甲A6発明」及び「甲A6製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A6発明>
「納豆菌培養エキス、
ゼラチン、
DHA・EPA含有精製魚油、クリルオイル、ビタミンE含有植物油(大豆由来)、グリセリン、ミツロウ、オレンジ香料、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、を含む、
ソフトカプセル。」
<甲A6製法発明>
「甲A6発明の製造方法。」
(6)甲A7に記載された事項等
ア 甲A7に記載された事項
甲A7には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000009.jpg]
」(第1ページ)
・「
[図:0001410221000010.jpg]
」(第3ページ)
・「
[図:0001410221000011.jpg]
」(第5ページ)
イ 甲A7に記載された発明
甲A7に記載された事項を整理すると、甲A7には次の発明(以下、順に「甲A7発明」及び「甲A7製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A7発明>
「ナットウキナーゼ含有納豆菌培養エキス末(納豆菌培養エキス(大豆を含む)、難消化性デキストリン)、
ゼラチン、
玉ねぎエキス末(デキストリン、たまねぎエキス)、EPA含有精製魚油、α-リノレイン酸含有アマニ油、α-リノレイン酸含有えごま油、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ビタミンE、を含む、
カプセル。」
<甲A7製法発明>
「甲A7発明の製造方法。」
(7)甲A8に記載された事項等
ア 甲A8に記載された事項
甲A8には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000012.jpg]
」(第1ページ)
・「
[図:0001410221000013.jpg]
」(第3ページ)
イ 甲A8に記載された発明
甲A8に記載された事項を整理すると、甲A8には次の発明(以下、順に「甲A8発明」及び「甲A8製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A8発明>
「納豆抽出末、
被包材として、ゼラチン、グリセリン、ペクチン(原料の一部に大豆を含む)、
葉酸、精製魚油、グリセリン脂肪酸エステル、貝カルシウム、ビタミンE、イカスミ色素、ミツロウ、ビタミンB6、を含む、
カプセル。」
<甲A8製法発明>
「甲A8発明の製造方法。」
(8)甲A9に記載された事項等
ア 甲A9に記載された事項
甲A9には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000014.jpg]
」(第1ページ)
・「
[図:0001410221000015.jpg]
」(第3ページ)
イ 甲A9に記載された発明
甲A9に記載された事項を整理すると、甲A9には次の発明(以下、順に「甲A9発明」及び「甲A9製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A9発明>
「精製ナットウ菌培養物、
ゼラチン、
黒酢粉末、サフラワー油、黒酢もろみ末、食用精製魚油(EPA/DHA含有)、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ミツロウ、カラメル色素、ビタミンE、着色料(青2、青5)、(原材料の一部にさば、大豆、を含む)、を含む、
カプセル。」
<甲A9製法発明>
「甲A9発明の製造方法。」
(9)甲A10に記載された事項等
ア 甲A10に記載された事項
甲A10には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000016.jpg]
」(第1ページ)
・「
[図:0001410221000017.jpg]
」(第3ページ)
イ 甲A10に記載された発明
甲A10に記載された事項を整理すると、甲A10には次の発明(以下、順に「甲A10発明」及び「甲A10製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A10発明>
「ナットウキナ-ゼ含有納豆菌培養エキス、
被包剤としてのゼラチン、グリセリン、
黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン(エビ、カニ由来)、植物抽出物(ビタミンE)、無臭ニンニク末、乳糖、デンプン、ショ糖脂肪酸エステル、を含む、
カプセル。」
<甲A10製法発明>
「甲A10発明の製造方法。」
(10)甲A11に記載された事項等
ア 甲A11に記載された事項
甲A11には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001410221000018.jpg]
」(第1ページ)
・「
[図:0001410221000019.jpg]
」(第2ページ)
・「
[図:0001410221000020.jpg]
」(第3ページ)
イ 甲A11に記載された発明
甲A11に記載された事項を整理すると、甲A11には次の発明(以下、順に「甲A11発明」及び「甲A11製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲A11発明>
「ナットウ菌培養エキス末(大豆由来)、
ゼラチン、
ビタミンB1、ビタミンB12、EPA含有精製魚油、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、グリセリン、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、ビタミンE、ナイアシン、ビタミンB2を含む、
カプセル。」
<甲A11製法発明>
「甲A11発明の製造方法。」
2 取消理由1(甲A1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、及び(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A1a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」と特定されているのに対し、甲A1発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A1aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A1発明であるとはいえない。
また、甲A1には、甲A1発明において、相違点A1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A1発明において、相違点A1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」(発明の詳細な説明の【0010】)という効果は、甲A1発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A1発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第4ないし8ページ)(以下、順に「主張A1a」のようにいう。)。
主張A1a 甲A1には、実施例以外の発明の詳細な説明において、以下の記載がある。
「【0032】他の含有成分
本発明の経口組成物は、前記(A)~(C)成分の他に、必要に応じて、他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、飲食品や医薬品に使用可能なものであれば特に制限されないが、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、・・・等が挙げられる。これらの添加成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加成分の含有量については、使用する添加成分の種類や経口組成物の用途等に応じて適宜設定される。」
このように、甲A1には、(A)ナットウキナーゼ、(B)野菜粉砕物、(c)エイコサペンタエン酸及び/又はドコサヘキサエン酸とは別に、チアミン(ビタミンB1)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸(ビタミンB9)等の添加成分を添加してよいことが記載されているから、甲A1発明のソフトカプセル剤において、さらに、チアミン(ビタミンB1)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸(ビタミンB9)等の添加成分とは別に、さらに添加することは容易に想到できる。
主張A1b 「ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を含有させること」は周知慣用技術であり、このような周知慣用技術に基づき、甲A1発明のソフトカプセル剤を構成する乾燥粉末にも含まれるチアミン(ビタミンB1)及び葉酸(ビタミンB9)等を添加することは容易に想到できる。
主張A1c 甲A1発明では、ゼラチンの分解抑制作用を奏することができないという主張は成り立たない。
(イ)検討
そこで、検討する。
<主張A1aについて>
甲A1の【0032】には、必要に応じて、含有していてもよいとされる成分として、「ビタミンB1」、「ビタミンB12」及び「葉酸」が、他の多くの成分とともに例示されているにすぎず、甲A1発明において、「チアミン」、「シアノコバラミン」又は「葉酸」を添加することは記載も示唆もされていない。
また、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果を当業者に予測させるような記載は、甲A1を含めいずれの証拠にもない。
したがって、「甲A1発明のソフトカプセル剤において、さらに、チアミン(ビタミンB1)、シアノコバラミン(ビタミンB12)、葉酸(ビタミンB9)等の添加成分とは別に、さらに添加することは容易に想到できる」とはいえず、特許異議申立人Aの上記主張A1aは採用できない。
<主張A1bについて>
仮に、「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であったとしても、甲A1発明において、該周知慣用技術を適用する動機付けとなる記載は、甲A1を含めいずれの証拠にもない。
また、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果を当業者に予測させるような記載も、甲A1を含めいずれの証拠にもない。
したがって、「甲A1発明のソフトカプセル剤を構成する乾燥粉末にも含まれるチアミン(ビタミンB1)及び葉酸(ビタミンB9)等を添加することは容易に想到できる」とはいえず、特許異議申立人Aの上記主張A1bも採用できない。
<主張A1cについて>
甲A1発明において、相違点A1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することを当業者が容易に想到し得たことであるといえない以上、甲A1発明において、ゼラチンの分解抑制作用を奏することができないという主張が成り立つかどうかは、甲A1に基づく新規性・進歩性の判断に影響を与えるものではない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
エ 特許異議申立人Bの主張について
(ア)特許異議申立人Bの主張
特許異議申立人Bは、令和6年1月17日に提出された意見書において、取消理由1ないし10に関して、おおむね以下の主張をする(上記意見書第1及び2ページ)。
・甲第A1号証、甲第A3号証~甲第A11号証に示されたナットウキナーゼを含む食品は、セルフメデイケーションの上で有益であること、錠剤やカプセル剤の形態が多く用いられていること、そして、それら該食品の組成物が健康食品として人の健康に対して有益で、多くの製品が販売されていることは、公然の事実であり、特許権者も承知している事実と言える。このような公知の組成物に、本件特許発明が主張するような新規性や進歩性があるとは到底考えられない。
また、食品や医薬品の製品化には、必ず安定性試験が実施される。該試験には例えば40℃、75%相対湿度の条件下で製品を数カ月間保存する加速試験があり、該加速試験によって、製品の物理的な安定性や有効成分の減衰、賞味期限等を確認されることは、当業者の常識である。該ナットウキナーゼを含む食品においても、他の食品と同様に、加速試験は実施される。そもそも、本件特許が正当なものであるならば、上記のように多くのナットウキナーゼ関連製品が販売される前に、本件特許発明に相当する内容の特許出願が為されていたはずである。このように多くのナットウキナーゼ関連製品が社会に定着化した後に、恰も課題が存在するかのように見せかけ、科学的根拠に乏しい内容に基づいて権利を取得し、市場を独占しようとする本件特許は、特許制度の悪用の上に成り立っており、産業の発展を妨害するものである。到底許容できるものではない。当業者にも消費者にも理解できる、合理的な説明が特許権者から為されない限り、権利化されるべきではない。
本異議申立人は、上記甲A各号証に基づく審判官殿の取消理由の本質は上記の如くであると認識し、審判官殿の「取り消すべき」との評価は当然であると信じる。
(イ)検討
そこで、検討する。
特許異議申立人Bの上記主張は、本件訂正後の本件特許発明1ないし4が新規性・進歩性を有しないことを具体的に主張するものではなく、単に意見を述べるに止まるものであるから、採用することはできない。
なお、後述の取消理由2ないし10についても同様であり、特許異議申立人Bの上記主張は採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A1発明であるとはいえないし、甲A1発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A1製法発明を対比する。
甲A1製法発明は「甲A1発明の製造方法」であるから、本件特許発明4と「食品において」「ナットウキナーゼ及びゼラチンを配合する方法」という限りにおいて一致する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「食品において
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンを配合する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A1b>
本件特許発明4においては、「(C) チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点A1c>
「食品において」「ナットウキナーゼ及びゼラチンを配合する方法」に関して、本件特許発明4においては、「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法」と特定されているのに対し、甲A1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A1bは、相違点A1aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A1bは実質的な相違点であるから、相違点A1cについて検討するまでもなく、本件特許発明4は甲A1製法発明であるとはいえない。
また、甲A1には、甲A1製法発明において、相違点A1bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A1製法発明において、相違点A1bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A1製法発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、相違点A1cについて検討するまでもなく、本件特許発明4は甲A1製法発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
3 取消理由2(甲A3に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A3発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、及び(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A3a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」と特定されているのに対し、甲A3発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A3aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A3発明であるとはいえない。
また、甲A3には、甲A3発明において、相違点A3aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A3発明において、相違点A3aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A3発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A3発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第10及び11ページ)。
・「ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」は周知慣用技術であり、このような周知慣用技術に基づき、甲A3発明にチアミン(ビタミンB1)及び葉酸(ビタミンB9)等を添加することは容易である。
(イ)検討
そこで、検討する。
仮に、「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であったとしても、甲A3発明において、該周知慣用技術を適用する動機付けとなる記載は、甲A3を含めいずれの証拠にもない。
また、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果を当業者に予測させるような記載も、甲A3を含めいずれの証拠にもない。
したがって、「甲A3発明にチアミン(ビタミンB1)及び葉酸(ビタミンB9)等を添加することは容易である。」とはいえず、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A3発明であるとはいえないし、甲A3発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A3製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンを配合する、ゼラチンの分解を抑制する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A3b>
本件特許発明4においては、「(C) チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A3製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A3bは、相違点A3aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A3bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A3製法発明であるとはいえない。
また、甲A3には、甲A3製法発明において、相違点A3bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A3製法発明において、相違点A3bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A3製法発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A3製法発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。
4 取消理由3(甲A4に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A4発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、及び(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A4a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」と特定されているのに対し、甲A4発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A4aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A4発明であるとはいえない。
また、甲A4には、甲A4発明において、相違点A4aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A4発明において、相違点A4aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A4発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A4発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第14ないし17ページ)(以下、順に「主張A4a」のようにいう。)。
主張A4a ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)や葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させることは周知慣用技術であり、このような周知慣用技術に基づき、甲A4発明にチアミン(ビタミンB1)や葉酸(ビタミンB9)等を添加することは容易に想到し得る。
主張A4b 甲A4発明では、ゼラチンの分解抑制作用を奏することができないという主張は成り立たない。
(イ)検討
そこで、検討する。
<主張A4aについて>
仮に、「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であったとしても、甲A4発明において、該周知慣用技術を適用する動機付けとなる記載は、甲A4を含めいずれの証拠にもない。
また、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果を当業者に予測させるような記載も、甲A4を含めいずれの証拠にもない。
したがって、「甲A4発明にチアミン(ビタミンB1)や葉酸(ビタミンB9)等を添加することは容易に想到し得る」とはいえず、特許異議申立人Aの上記主張A4aは採用できない。
<主張A4bについて>
甲A4発明において、相違点A4aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することを当業者が容易に想到し得たことであるといえない以上、甲A4発明において、ゼラチンの分解抑制作用を奏することができないという主張が成り立つかどうかは、甲A4に基づく新規性・進歩性の判断に影響を与えるものではない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A4発明であるとはいえないし、甲A4発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A4製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンを配合する、ゼラチンの分解を抑制する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A4b>
本件特許発明4においては、「(C) チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A4製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A4bは、相違点A4aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A4bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A4製法発明であるとはいえない。
また、甲A4には、甲A4製法発明において、相違点A4bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A4製法発明において、相違点A4bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A4製法発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A4製法発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由3によっては取り消すことはできない。
5 取消理由4(甲A5に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲A5発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A5a>
本件特許発明1においては、「食品」が「DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合を除く」と特定されているのに対し、甲A5発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
甲A5発明は、「DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む」もの、すなわち、本件特許発明1で除かれるものである。そうすると、相違点A5aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A5発明であるとはいえない。
また、甲A5には、甲A5発明において、相違点A5aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A5発明において、相違点A5aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A5発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A5発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第22及び23ページ)
・甲A5に記載されていると認定できる発明は甲A5発明に限られない。すなわち、甲A5が紹介する商品の名称は「Nattokinase 春の小川Q10」であるから、甲A5に接した当業者は、納豆菌培養エキス末およびコエンザイムQ10が前記商品の必須成分と認識する。
また、甲A5の原材料名には、納豆菌培養エキス末、葉酸、ゼラチン等が記載されている。さらに、「ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を含有させること」は周知慣用技術である。
したがって、甲A5の記載から納豆培養菌エキス末およびコエンザイムQ10に加えて、ゼラチンおよび葉酸を含む食品の発明も開示されていると認定できる。
甲A5-1発明
納豆培養菌エキス末、
ゼラチン、
コエンザイムQ10、葉酸、を含む
ナットウ菌培養エキス含有食品。
甲A5-1製法発明
甲A5-1発明の製造方法
甲A5-1発明は本件訂正で除かれた発明に該当しない。したがって、訂正発明1は甲A5-1発明と同一であり、また、甲A5-1発明から容易に想到できる。
(イ)検討
そこで、検討する。
甲A5に記載された発明は、甲A5全体の記載から認定すべきであって、「Nattokinase 春の小川Q10」としか記載されていない商品の名称から都合良く認定することはできない。すなわち、甲A5の原材料名に、DHA、EPA及びビタミンEが記載されているにもかかわらず、それらを都合良く抜いて認定することはできない(なお、含有量から見ても、甲A5に記載された「Nattokinase 春の小川Q10」には、納豆菌培養エキス末(200mg)に匹敵する量(200mg)でDHA・EPA眼窩油が入っているので、DHA及びEPAを抜くことは考えられない。)。
また、いわゆる引用発明の認定は、通常、引用された一つの証拠に実際に記載又は開示された事項及び記載又は開示されているに等しい事項のみから行うものであって、周知慣用技術を適用して認定するものではない。なお、この点は、甲A6、甲A8、甲A9、甲A10及び甲A11に記載された発明を認定する場合も同様である。
したがって、 「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であるかどうかにかかわらず、特許異議申立人Aの主張するような上記「甲A5-1発明」及び「甲A5-1製法発明」を認定することはできない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A5発明であるとはいえないし、甲A5発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A5製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A5b>
本件特許発明4においては、「食品」が「DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合を除く」と特定されているのに対し、甲A5製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A5bは、相違点A5aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A5bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A5製法発明であるとはいえない。
また、甲A5には、甲A5製法発明において、相違点A5bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A5製法発明において、相違点A5bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A5製法発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A5製法発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由4によっては取り消すことはできない。
6 取消理由5(甲A6に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A6発明を対比する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点6a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む食品」と特定された上に、「食品」が「DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合を除く」と特定されているのに対し、甲A6発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
甲A6発明は、「DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む」もの、すなわち、本件特許発明1で除かれるものである。そうすると、相違点A6aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A6発明であるとはいえない。
また、甲A6には、甲A6発明において、相違点A6aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A6発明において、相違点A6aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A6発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A6発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第25ないし27ページ)
・甲A6に記載されていると認定できる発明は甲A6発明に限られない。すなわち、甲A6の1頁には、商品の包装の写真(当審注:摘記は省略する。)があり、主要な有効成分について記載されている。
このように、甲A6には、きなりは、ナットウキナーゼ、DHA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2およびビタミンB6を含むことが記載されている。また、甲A6の原材料名には、納豆菌培養エキス、クリルオイル、ゼラチン、ビタミンB1等が記載されている。
さらに、「ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を含有させること」は周知慣用技術である。
したがって、甲A6の記載からナットウキナーゼ、DHA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2およびビタミンB6に加えて、ゼラチンを含む食品の発明も開示されていると認定できる。
甲A6-1発明
納豆培養菌エキス末、
ゼラチン、
DHA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2およびビタミンB6を含む
ソフトカプセル。
甲A6-1製法発明
甲A6-1発明の製造方法
甲A6-1発明は本件訂正で除かれた発明に該当しない。したがって、訂正発明1は甲A6-1発明と同一であり、また、甲A6-1発明から容易に想到できる。
(イ)検討
そこで、検討する。
甲A6に記載された発明は、甲A6全体の記載から認定すべきであって、主要な成分のみが記載された写真だけから都合良く認定することはできない。すなわち、甲A6の原材料名に、EPAが記載されているにもかかわらず、それを都合良く抜いて認定することはできない。
したがって、 「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であるかどうかにかかわらず、特許異議申立人Aの主張するような上記「甲A6-1発明」及び「甲A6-1製法発明」を認定することはできない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A6発明であるとはいえないし、甲A6発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A6製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A6b>
本件特許発明4においては、「食品」が「DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合を除く」と特定された上に、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A6製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A6bは、相違点A6aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A6bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A6製法発明であるとはいえない。
また、甲A6には、甲A6製法発明において、相違点A6bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A6製法発明において、相違点A6bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A6製法発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A6製法発明並びに甲A6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 取消理由6(甲A7に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A7発明を対比する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、及び(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A7a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」と特定されているのに対し、甲A7発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A7aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A7発明であるとはいえない。
また、甲A7には、甲A7発明において、相違点A7aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A7発明において、相違点A7aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A7発明並びに甲A7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A7発明並びに甲A7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第19及び20ページ)。
・ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を含有させることは周知慣用技術であり、このような周知慣用技術に基づき、甲A7発明にチアミン(ビタミンB1)及び葉酸(ビタミンB9)を添加することは容易である。
(イ)検討
そこで、検討する。
仮に、 「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であったとしても、甲A7発明において、該周知慣用技術を適用する動機付けとなる記載は、甲A7を含めいずれの証拠にもない。
また、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果を当業者に予測させるような記載も、甲A7を含めいずれの証拠にもない。
したがって、「甲A7発明にチアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を添加することは容易である」とはいえない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A7発明であるとはいえないし、甲A7発明並びに甲A7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A7製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンを配合する、ゼラチンの分解を抑制する方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A7b>
本件特許発明4においては、「(C) チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A7製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A7bは、相違点A7aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A7bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A7製法発明であるとはいえない。
また、甲A7には、甲A7製法発明において、相違点A7bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A7製法発明において、相違点A7bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A7製法発明並びに甲A7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A7製法発明並びに甲A7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由6についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由6によっては取り消すことはできない。
8 取消理由7(甲A8に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A8発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は以下の点で相違又は一応相違する。
<相違点8a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む食品」と特定された上に、「食品」が「葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合を除く」と特定されているのに対し、甲A8発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
甲A8発明は、「葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む」もの、すなわち、本件特許発明1で除かれるものである。そうすると、相違点A8aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A8発明であるとはいえない。
また、甲A8には、甲A8発明において、相違点A8aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A8発明において、相違点A8aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A8発明並びに甲A8及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A8発明並びに甲A8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第29ないし31ページ)
・甲A8に記載されていると認定できる発明は甲A8発明に限られない。すなわち、甲A8には、商品の包装の写真(当審注:摘記は省略する。)があり、「納豆力」、「凝縮納豆加工食品」と記載され、また、商品写真の上部に「ドラッグストア>栄養補助食品>サプリメント・ビタミン>酵素>ナットウキナーゼ」と記載されている。
このように、甲A8には、ナトフェミンは、ナットウキナーゼとビタミン類を含むことが記載されている。また、甲A8の原材料名の欄には、納豆抽出末、ビタミン類である葉酸(ビタミンB9)、被包材としてのゼラチン等が含まれることも記載されている。さらに、「ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を含有させること」は周知慣用技術である。
したがって、甲A8の記載からナットウキナーゼと葉酸(ビタミンB9)に加えて、ゼラチンを含む食品の発明も開示されていると認定できる。
甲A8-1発明
納豆抽出末、
被包材として、ゼラチン、
葉酸を含む
カプセル。
甲A8-1製法発明
甲A8-1発明の製造方法
甲A8-1発明は本件訂正で除かれた発明に該当しない。したがって、訂正発明1は甲A8-1発明と同一であり、また、甲A8-1発明から容易に想到できる。
(イ)検討
そこで、検討する。
甲A8に記載された発明は、甲A8全体の記載から認定すべきであって、甲A8の写真や「ドラッグストア>栄養補助食品>サプリメント・ビタミン>酵素>ナットウキナーゼ」という検索されたページの階層の表示欄の記載だけから都合良く認定することはできない。すなわち、甲A8の原材料名に、魚油、ビタミンE及びビタミンB6が記載されているにもかかわらず、それらを都合良く抜いて認定することはできない(特に、魚油は、原材料名の筆頭に記載されており、それを除くことは考えられない。)。
したがって、 「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であるかどうかにかかわらず、特許異議申立人Aの主張するような上記「甲A8-1発明」及び「甲A8-1製法発明」を認定することはできない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A8発明であるとはいえないし、甲A8発明並びに甲A8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A8製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンを配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A8b>
本件特許発明4においては、「食品」が「葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合を除く」と特定された上に、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A8製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A8bは、相違点A8aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A8bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A8製法発明であるとはいえない。
また、甲A8には、甲A8製法発明において、相違点A8bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A8製法発明において、相違点A8bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A8製法発明並びに甲A8及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A8製法発明並びに甲A8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由7についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由7によっては取り消すことはできない。
9 取消理由8(甲A9に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A9発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A9a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む食品」と特定された上に、「食品」が「黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合を除く」と特定されているのに対し、甲A9発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
甲A9発明は、「黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む」もの、すなわち、本件特許発明1で除かれるものである。そうすると、相違点A9aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A9発明であるとはいえない。
また、甲A9には、甲A9発明において、相違点A9aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A9発明において、相違点A9aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A9発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A9発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第33及び34ページ)
・甲A9に記載されていると認定できる発明は甲A9発明に限られない。すなわち、甲A9が紹介する商品の名称は「コーワ 鹿児島黒酢DHA+EPA納豆キナーゼ入り150カプセル」であるから、甲A9に接した当業者は、黒酢粉末、黒酢もろみ末、納豆キナーゼ、DHAおよびEPAが前記商品の必須成分と認識する。また、甲A9の原材料の項には、黒酢もろみ末、黒酢粉末、食用精製油(EPA/DHA含有)、精製ナットウ菌培養物、ゼラチン等が記載されている。さらに、「ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を含有させること」は周知慣用技術である。
したがって、甲A9の記載から、黒酢粉末、黒酢もろみ末、納豆キナーゼ、DHAおよびEPAに加えて、ゼラチンを含む食品の発明も開示されていると認定できる。
甲A9-1発明
納豆キナーゼ、
ゼラチン、
黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHAおよびEPAを含む
カプセル。
甲A9-1製法発明
甲A9-1発明の製造方法
甲A9-1発明は本件訂正で除かれた発明に該当しない。したがって、訂正発明1は甲A9-1発明と同一であり、また、甲A9-1発明から容易に想到できる。
(イ)検討
そこで、検討する。
甲A9に記載された発明は、甲A9全体の記載から認定すべきであって、商品の名称だけから都合良く認定することはできない。すなわち、甲A9の原材料名に、ビタミンEが記載されているにもかかわらず、それを都合良く抜いて認定することはできない。
したがって、 「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であるかどうかにかかわらず、特許異議申立人Aの主張するような上記「甲A9-1発明」及び「甲A9-1製法発明」を認定することはできない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A9発明であるとはいえないし、甲A9発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A9製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンを配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A9b>
本件特許発明4においては、「食品」が「黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合を除く」と特定された上に、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A9製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A9bは、相違点A9aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A9bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A9製法発明であるとはいえない。
また、甲A9には、甲A9製法発明において、相違点A9bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A9製法発明において、相違点A9bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A9製法発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A9製法発明並びに甲A9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由8についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
10 取消理由9(甲A10に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲A10発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A10a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む食品」と特定された上に、「食品」が「黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合を除く」と特定されているのに対し、甲A10発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
甲A10発明は、「黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む」もの、すなわち、本件特許発明1で除かれるものである。そうすると、相違点A10aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A10発明であるとはいえない。
また、甲A10には、甲A10発明において、相違点A10aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A10発明において、相違点A10aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A10発明並びに甲A10及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A10発明並びに甲A10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第36ないし38ページ)
・甲A10に記載されていると認定できる発明は甲A10発明に限られない。すなわち、甲A10が紹介する商品の名称は「製薬 納豆精(ナットウセイ) 270粒 373」であり、また、商品写真(当審注:摘記は省略する。)の上部に「ドラッグストア>栄養補助食品>サプリメント・ビタミン>酵素>ナットウキナーゼ」と記載されている。
このように、甲A10には、薬王製薬 納豆精(ナットウセイ) 270粒 373は、ナットウキナーゼとビタミン類を含むことが記載されている。また、甲A10の原材料名の欄にはビタミン類であるチアミン(ビタミンB1)およびシアノコバラミン(ビタミンB12)が含まれることも記載されている。さらに、甲A10にはナットウキナーゼ含有納豆菌培養エキス、被包材(ゼラチン、グリセリン)等が記載されている。
加えて、「ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を含有させること」は周知慣用技術である。
したがって、甲A10の記載からナットウキナーゼ、チアミン(ビタミンB1)およびシアノコバラミン(ビタミンB12)に加えて、ゼラチンを含むカプセルの発明も開示されていると認定できる。
甲A10-1発明
納豆キナーゼ、
ゼラチン、
チアミン(ビタミンB1)およびシアノコバラミン(ビタミンB12)、を含む
カプセル。
甲A10-1製法発明
甲A10-1発明の製造方法
甲A10-1発明は本件訂正で除かれた発明に該当しない。したがって、訂正発明1は甲A10-1発明と同一であり、また、甲A10-1発明から容易に想到できる。
(イ)検討
そこで、検討する。
甲A10に記載された発明は、甲A10全体の記載から認定すべきであって、甲A10の商品の名称や「ドラッグストア>栄養補助食品>サプリメント・ビタミン>酵素>ナットウキナーゼ」という検索されたページの階層の表示欄の記載だけから都合良く認定することはできない。すなわち、甲A10の原材料名に、ビタミンE及びニンニク末が記載されているにもかかわらず、それらを都合良く抜いて認定することはできない。
したがって、 「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であるかどうかに関わらず、特許異議申立人Aの主張するような上記「甲A10-1発明」及び「甲A10-1製法発明」を認定することはできない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A10発明であるとはいえないし、甲A10発明並びに甲A10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A10製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンを配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点A10b>
本件特許発明4においては、「食品」が「黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合を除く」と特定された上に、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A10製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A10bは、相違点A10aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A10bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A10製法発明であるとはいえない。
また、甲A10には、甲A10製法発明において、相違点A10bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A10製法発明において、相違点A10bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A10製法発明並びに甲A10及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A10製法発明並びに甲A10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由9についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由9によっては取り消すことはできない。
11 取消理由10(甲A11に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲A11発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチンを含む、食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合を除く)。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A11a>
本件特許発明1においては、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む食品」と特定された上に、「食品」が「ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く」と特定されているのに対し、甲A11発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
甲A11発明は、「ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む」もの、すなわち、本件特許発明1で除かれるものである。そうすると、相違点A11aは実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲A11発明であるとはいえない。
また、甲A11には、甲A11発明において、相違点A11aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A11発明において、相違点A11aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A11発明並びに甲A11及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲A11発明並びに甲A11及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 特許異議申立人Aの主張について
(ア)特許異議申立人Aの主張
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、おおむね以下の主張をする(上記意見書第40ないし42ページ)
・甲A11に記載されていると認定できる発明は甲A11発明に限られない。すなわち、甲A11が紹介する商品の名称は「ナットウキナーゼソフト【3本セット】ミナミヘルシーフーズ」であるから、甲A11に接した当業者は納豆キナーゼが必須成分と認識する。また、商品写真(当審注:摘記は省略する。)の上部に「ドラッグストア>栄養補助食品>サプリメント・ビタミン>酵素>ナットウキナーゼ」と記載されている。
このように、甲A11には、ナットウキナーゼソフト【3本セット】ミナミヘルシーフーズは、ナットウキナーゼとビタミン類を含むことが記載されている。また、甲A11の原材料名の欄には納豆菌培養エキス末(大豆由来)、ゼラチン、ビタミン類であるチアミン(ビタミンB1)およびシアノコバラミン(ビタミンB12)が含まれることも記載されている。
さらに、「ナットウキナーゼを含む食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)を含有させること」は周知慣用技術である。
したがって、甲A11の記載からナットウキナーゼ、チアミン(ビタミンB1)およびシアノコバラミン(ビタミンB12)に加えて、ゼラチンを含む食品の発明も開示されていると認定できる。
甲A11-1発明
納豆キナーゼ、
ゼラチン、
チアミン(ビタミンB1)およびシアノコバラミン(ビタミンB12)、を含む
カプセル。
甲A11-1製法発明
甲A11-1発明の製造方法
甲A11-1発明は本件訂正で除かれた発明に該当しない。したがって、訂正発明1は甲A11-1発明と同一であり、また、甲A11-1発明から容易に想到できる。
(イ)検討
そこで、検討する。
甲A11に記載された発明は、甲A11全体の記載から認定すべきであって、甲A11の商品の名称や「ドラッグストア>栄養補助食品>サプリメント・ビタミン>酵素>ナットウキナーゼ」という検索されたページの階層の表示欄の記載だけから都合良く認定することはできない。すなわち、甲A18の原材料名に、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン及びビタミンB2が記載されているにもかかわらず、それらを都合良く抜いて認定することはできない。
したがって、 「ナットウキナーゼを含有する食品組成物において、ゼラチン、チアミン(ビタミンB1)および/または葉酸(ビタミンB9)等の成分を含有させること」が周知慣用技術であるかどうかにかかわらず、特許異議申立人Aの主張するような上記「甲A11-1発明」及び「甲A11-1製法発明」を認定することはできない。
(ウ)まとめ
したがって、特許異議申立人Aの上記主張は採用できない。
なお、本件特許発明2ないし4についての特許異議申立人Aの主張も同様に採用できない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲A11発明であるとはいえないし、甲A11発明並びに甲A11及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
ア 対比
本件特許発明4と甲A11製法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンを配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点A11b>
本件特許発明4においては、「食品」が「ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く」と特定された上に、「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」と特定されているのに対し、甲A11製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点A11bは、相違点A11aと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、相違点A11bは実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲A11製法発明であるとはいえない。
また、甲A11には、甲A11製法発明において、相違点A11bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲A11製法発明において、相違点A11bに係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4の「(C)」成分を配合することにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲A11製法発明並びに甲A11及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明4の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明4は甲A11製法発明並びに甲A11及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由10についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由10によっては取り消すことはできない。
12 取消理由11(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そして、サポート要件を充足するには、発明の詳細な説明に接した当業者が、特許請求された発明が発明の詳細な説明に記載されていると合理的に認識できれば足り、また、課題の解決についても、当業者において、技術常識も踏まえて課題が解決できるであろうとの合理的な期待が得られる程度の記載があれば足りるのであって、厳密な科学的な証明に達する程度の記載までは不要であると解される。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
イ 発明の課題
発明の詳細な説明の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明1ないし3の解決しようとする課題は「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含みながらも、保存によるゼラチンの分解を抑制できる食品を提供すること」であり、本件特許発明4の解決しようとする課題は「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品において保存によるゼラチンの分解を抑制する方法を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。
ウ 判断
(ア)発明の詳細な説明の【0008】には「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品において、ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することによって、ゼラチンの分解を抑制できることを見出した。」と記載され、同【0009】には、本件特許発明1ないし4に対応する記載がある。
発明の詳細な説明の【0011】ないし【0040】には、本件特許発明1ないし3の各発明特定事項について具体的な記載があり、同【0041】及び【0042】には、本件特許発明4の各発明特定事項について具体的な記載がある。
発明の詳細な説明の【0043】ないし【0056】には、本件特許発明の実施例について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0046】ないし【0050】には、精製水を多量に含有するゼラチンプレートに、ナットウキナーゼ粉末と共にチアミン塩酸塩、葉酸、ビタミンB12(シアノコバラミン)又はメチルヘスペリジン及び多量の精製水からなる試験液(実施例1ないし7)を摘下し、室温で一晩静置して、これらの試験液が、チアミン塩酸塩、葉酸、ビタミンB12(シアノコバラミン)及びメチルヘスペリジンのいずれも使用しない試験液(比較例1)及びチアミン塩酸塩、葉酸、ビタミンB12(シアノコバラミン)又はメチルヘスペリジンに代えてアルギニン、リジン、シトルリン、難消化性デキストリン又はルチンを使用した試験液(比較例2ないし6)と比べ、ゼラチンプレートの分解に対する抑制効果を奏することを確認する試験結果の記載がある。
(イ)タンパク質の分解には水が関与すると認められる(甲B5の1ないし3参照。)ところ、下記の乙1及び2に記載された事項(乙2と同様の事項が甲B11にも記載されている。)から、カプセル剤におけるゼラチン剤皮の水分含有量は通常12~16%程度であり、水分活性は0.4程度以上であり、また、保存による吸湿や温度上昇によって、水分活性がさらに高くなることは出願時の技術常識であるといえ、下記の乙3及び4に記載された事項から、水分活性とは自由水の含有量を示す尺度であり、水分活性が0.4以上であれば、酵素活性があることも出願時の技術常識であるといえる。
したがって、通常のゼラチン皮膜には、酵素であるナットウキナーゼが活性を示す程度の水分が含まれているといえるし、また、保存による吸湿や温度上昇によって、水分活性がさらに高まる可能性があるといえる。
<乙1に記載された事項>
・「カプセル剤の品質、即ち、構造上及び内容薬剤の薬理活性、外観等の安定性は水分活性と密接な関係にある。例えば、適切な条件で製造されたゼラチンカプセル剤であっても、それを密閉状態で、特に加温下に、保存するとカプセル剤皮や内容薬剤中の水分が蒸発し、カプセル内部が高湿度状態(高水分活性)となることが知られている。内容薬剤が水分の影響を受けて変化を起こし易い活性物質からなる場合、或いは、水分と活性物質との分離が困難で、水分に不安定な不純物を含有する場合、カプセル内部の自由水と該内容薬剤とが接触し、経時的に不安定化され、着色等の外観の変化のみならず、有効成分の活性の低下などを起こす可能性がある。またゼラチンカプセル自体も不溶化や軟化、変形などを起こす可能性がある。通常、水分活性の調節、特に減少のためには、シリカゲル等の乾燥剤をカプセル包装容器内に封入してカプセル剤中の水分を減ずる方法がとられているが、この方法では、カプセル剤皮中の水分含量を適切に調節することが困難である。特にゼラチンカプセルの場合、剤皮の水分含量が低くなり過ぎると亀裂やひび割れが生じ、変形したり、破損する可能性がある。即ち、ゼラチン剤皮中には通常、12~16%の水分が含まれているが、水分含量が10%以下、特に7~8%以下になると軽度な衝撃等によってひび割れ等が生じる。」(第2ページ第12ないし25行)
・「試験例1 ゼラチンの水分活性に対する温度の影響
カプセル剤の剤皮として用いるゼラチンの密閉系での水分活性を上記の条件下で測定した。単独結果を第1図に示す。」(第4ページ第27ないし29行)
・「
[図:0001410221000021.jpg]
」
<乙2に記載された事項>
・「
[図:0001410221000022.jpg]
」(第1ページ左下)
<乙3に記載された事項>
・「水分活性値とは?
食品中の水分は食品成分と結合した”結合水”と、微生物が利用可能な結合していない”自由水”とから成っています。
水分活性はこの自由水の含有量を示す尺度で、水分活性が高い程、微生物が増殖しやすくなるのでその保存性は低下します。」(1/5ページ下欄)
・「水分活性値と品質保持の関係について
水分活性値と品質保持やカビの予防は密接な関係があります。
水分活性と真菌(カビ)や細菌増殖の関係
[図:0001410221000023.jpg]
」
<乙4に記載された事項>
・「1.食品中の水
水はほとんどの食品中に存在し、多量に含まれています。・・・(略)・・・
食品中の水は、「結合水」と「自由水」という2種類の形態で存在しています。「結合水」は、・・・(略)・・・微生物の生育や酵素反応には利用されません。「自由水」は、食品成分と結合していない遊離の状態にあり、環境や温度・湿度の変化により容易に移動が起こります。
・・・(略)・・・
2.水分活性
水分活性は自由水の割合を表す尺度であり、次式で表されます。
・・・(略)・・・水分活性が高いほど自由水が多いということになります。
水分活性は微生物の生育や脂質の酸化、褐変、色素の分解などの品質変化と相関があることが示されており、例えば、食品中の酵素活性や非酵素的褐変反応は水分活性が0.4以下になるとほぼ停止し、また、脂質の酸化反応は水分活性が0.3付近で最低となることが知られています。」(第5ページ左欄)
(ウ)また、ある化合物が有する作用は、その化合物がフリー体であるか塩の形態であるかに影響されないことは当業者に周知である。
(エ)そうすると、当業者であれば、発明の詳細な説明に記載された事項及び出願時の技術常識から、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においても、保存をする場合、ナットウキナーゼによりゼラチンが分解されるという課題が発生することを理解し、「チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種」を配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることを理解することができる。
(オ)すなわち、当業者は、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らし、「ナットウキナーゼ、ゼラチン、並びにチアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、食品」及び「食品に、ナットウキナーゼ及びゼラチンと共に、チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合する工程、を含む方法」は、発明の課題を解決できると認識できる。
(カ)そして、本件特許発明1ないし3は、発明の課題を解決できると認識できる上記食品をさらに限定したものであり、本件特許発明4は、発明の課題を解決できると認識できる上記方法をさらに限定したものであるから、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らし、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(キ)したがって、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるといえる。
(ク)特許異議申立人Bは、令和6年1月17日に提出された意見書において、「乙第1号証の図1の解釈が不適切であること」、「乙第2号証の図2に基づく特許権者の主張が不適切であること」、「ゼラチンの水分活性は酵素活性の発現の尺度として不適切なこと」、「乙第1号証や乙第2号証のゼラチンの水分活性が普遍的なものではないこと」、「乙第3号証、及び、乙第4号証に基づく特許権者の主張が不適切であること」及び「乙第5号証が水分含有量の少ない系における課題の解決を実証していないこと」を主張している(上記意見書第3ないし11ページ)。
また、特許異議申立人Aも、令和6年1月18日に提出された意見書において、同様の主張をしている(上記意見書第43ないし45ページ)。
そこで、検討するに、いずれの主張も、以下の理由により採用できない。
・いずれの主張も、通常のゼラチンを含有する食品を保存する場合において、ナットウキナーゼが活性を示さないことを示す具体的な証拠を伴うものではなく、通常のゼラチンを含有する食品においては、保存によるゼラチンの分解という課題が生じないとまでは断定できない。
・上記(ウ)ないし(カ)のとおり、厳密な科学的な証明に達する程度の記載であるかどうかは別にして、当業者が発明の課題を解決できると合理的に期待できる程度には、本件特許発明1ないし4が発明の詳細な説明に記載されているといえる。
(ケ)なお、取消理由11の(ウ)で指摘した理由は、本件訂正により、本件特許発明1ないし4における「(C)成分」が「ビタミンC類」及び「ルチン」を含まないものとなったことから、解消した。
(3)取消理由11についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由11によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性)、申立理由B2(サポート要件)のイ及び申立理由B3(同日出願)である。
以下、順に検討する。
(1)申立理由B1(甲B1に基づく新規性・進歩性)について
ア 甲B1に記載された事項等
(ア)甲B1に記載された事項
甲B1には、「薬膳サプリメント」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0014】
本考案は上記の問題に鑑みてなされたものであり、通常の薬膳料理を食するよりも少ない摂取量であっても薬膳による健康増進効果を享受できるようにすることを目的とする。」
・「【0023】
本例の薬膳サプリメント1は、生薬成分をカプセルに充填して成るサプリメントである。
同サプリメント1は、植物由来の生薬成分を含む植物系生薬2と、動物由来の生薬成分を含む動物系生薬3と、12種類の所定のビタミン成分41ないしは2種類の所定のミネラル成分42のいずれかを所定量だけ含む栄養補助成分4と、植物系生薬2・動物系生薬3ならびに栄養補助成分4を内包する被膜層であって動物性ゼラチンないしは植物性セルロースから成るカプセル5と、を備えている。」
・「【0025】
日本国においてサプリメントは食品に分類されるものの一般的にサプリメントは服用者に対し何らかの健康促進効果をもたらすと認識されている以上、栄養補助食品たるサプリメントの該当性を担保するために、保健機能食品制度により規定される「保健機能食品」の条件を充足することが妥当と思われる。
ここで上記「保健機能食品」に該当するためには「12種類の所定のビタミンないしは2種類の所定のミネラルの最低1種類」を「所定量」含んでいることが必要となる。なお、この条件を充たしている場合には、厚生労働省に対して何ら届出や申請することなく、その栄養素の機能を表示することが認められている。
【0026】
そのため本実施形態に係る薬膳サプリメント1は、栄養補助食品たるサプリメントの品質(服用者に所定の健康増進効果をもたらすこと)を保証すべく、通常の保健機能食品と同様に「12種類の所定のビタミン成分41」または「2種類の所定のミネラル成分42」を「所定量」だけ栄養補助成分4として含んでいる。
ここでいう「所定量」とは、ミネラル類2種類ないしはビタミン類12種類のうちの最低1種類の「栄養補助成分」について同栄養補助成分4の1日当たりの摂取目安量に含まれる成分量が規定の基準上限値と基準下限値との範囲内にあることを指す。
【0027】
なお上記保健機能食品制度で規定される12種類の「所定のビタミン成分」としては、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEもしくは葉酸が該当する。」
・「【0047】
[変形例]
本考案に係る薬膳サプリメント1では、穀物や豆類・野菜・果物・ハーブその他の植物や動物・魚に由来する任意の天然成分をさらに添加してもよい。
このような天然成分の例としては、玄米・麦・トウモロコシなどの「穀類」、イソフラボンを含有する大豆・黒豆などの「豆類」が挙げられる。
また薬膳サプリメント1には大豆加工品として、フリーズドライ処理を施した納豆や豆腐、納豆に由来するナットウキナーゼを添加してもよい。」
(イ)甲B1に記載された発明
甲B1に記載された事項を、特に【0023】に関して整理すると、甲B1には次の発明(以下、「甲B1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲B1発明>
「植物由来の生薬成分を含む植物系生薬2と、動物由来の生薬成分を含む動物系生薬3と、12種類の所定のビタミン成分41ないしは2種類の所定のミネラル成分42のいずれかを所定量だけ含む栄養補助成分4と、植物系生薬2・動物系生薬3ならびに栄養補助成分4を内包する被膜層であって動物性ゼラチンないしは植物性セルロースから成るカプセル5と、を備えている薬膳サプリメント1。」
なお、特許異議申立人Bは、特許異議申立書Bにおいて、「以上より、甲第1号証には、下記の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「ナットウキナーゼ、動物性ゼラチン及びビタミンB1、葉酸、ビタミンB12及びビタミンCよりなる群から選択される少なくとも一種を含む薬膳サプリメント。」」と主張する(特許異議申立書B第6ページ)が、甲B1においては、「ナットウキナーゼ」、「動物性ゼラチン」並びに「ビタミンB1」、「葉酸」、「ビタミンB12」及び「ビタミンC」は、それぞれ、選択肢として記載されているにすぎず、「ナットウキナーゼ」、「動物性ゼラチン」並びに「ビタミンB1」、「葉酸」、「ビタミンB12」及び「ビタミンC」から選択される少なくとも一種の全てを含む「薬膳サプリメント」が記載されている訳ではないので、特許異議申立人Bの主張するような発明を甲B1発明として直ちには認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲B1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点B1>
本件特許発明1においては、「ゼラチン」、「ナットウキナーゼ」及び「チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)」「を含み」と特定された上で、「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)」と特定されているのに対し、甲B1発明においては、「12種類の所定のビタミン成分41ないしは2種類の所定のミネラル成分42のいずれかを所定量だけ含む栄養補助成分4と、植物系生薬2・動物系生薬3ならびに栄養補助成分4を内包する被膜層であって動物性ゼラチンないしは植物性セルロースから成るカプセル5と、を備えている」「薬膳サプリメント1」と特定されている点。
両者の間には、相違点B1があることから、本件特許発明1は甲B1発明であるとはいえない。
また、甲B1及び他の証拠には、甲B1発明において、「動物性ゼラチンないしは植物性セルロース」から「動物性ゼラチン」、すなわち「ゼラチン」を選択し、「ナットウキナーゼ」を含むようにした上で、「チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)」を含むようにする動機付けとなる記載はないし、当然、「納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く」ようにする動機付けとなる記載もない。
したがって、甲B1発明において、相違点B1に係る本件特許発明B1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「(C)」成分を含むことにより奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」という効果は、甲B1発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲B1発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲B1発明であるとはいえないし、甲B1発明並びに甲B1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(ウ)本件特許発明4について
甲B1には、通常の薬膳料理を食するより少ない摂取量であっても健康増進効果を享受できるようにすることを目的とする薬膳サプリメントが記載されているに止まり、「ゼラチンの分解抑制方法」については何ら記載も示唆もない。
そうすると、甲B1に記載された事項からは、本件特許発明4と対比・判断することができる発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明4は甲B1に記載された発明であるとはいえないし、甲B1に記載された発明並びに甲B1及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 申立理由B1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由B1によっては取り消すことはできない。
(2)申立理由B2(サポート要件)のイについて
ア サポート要件の判断
上記第6 12(2)ウのとおり、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるといえる。
イ 特許異議申立人の主張について
申立理由B2のイにおける特許異議申立人Bの主張(上記第3 2(2)イ参照。)について検討する。
ゼラチンプレートの分解試験を行う際に、ゼラチンプレートの厚みを揃えておくことは当業者であれば当然行うことである。
したがって、発明の詳細な説明に記載された試験例の方法や判定基準等が不適格であるとはいえず、特許異議申立人Bの主張は採用できない。
なお、甲B7は、発明の詳細な説明に記載された試験例を正確に再現したものではないし、誰がどこで行った実験の報告書なのかも不明であるから、甲B7に基づく主張は、そもそも採用することができない。
ウ 申立理由B2のイについてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由B2のイによっては取り消すことはできない。
(3)申立理由B3(同日出願)について
ア 本件特許に係る出願と同日に出願された特願2023-417号(特開2023-30200号公報、甲B10)に係る発明
本件特許に係る出願と同日に出願された特願2023-417号(特開2023-30200号公報、甲B10)の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「同日出願発明1」のようにいう。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、食品。
【請求項2】
前記(C)成分が、チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記(B)成分で形成されたカプセル皮膜を含むカプセル剤である、請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)ビタミンB1類、ビタミンB9類、ビタミンB12類、ビタミンP類、及びビタミンC類よりなる群から選択される少なくとも1種を配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3を対比するに、本件特許発明1は「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」という発明特定事項及び「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)」という発明特定事項を有する点で同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と相違するので、本件特許発明1は同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と同一であるとはいえない。
本件特許発明1と同日出願発明4を対比するに、本件特許発明1は「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」という発明特定事項及び「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)」という発明特定事項を有する「食品」の発明であるから、上記発明特定事項を有さない「分解抑制方法」の発明である同日出願発明4と同一であるとはいえない。
(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2と同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3を対比するに、少なくとも、本件特許発明2は「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」という特定事項及び「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)」という発明特定事項を有する点で同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と相違するので、本件特許発明2は同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と同一であるとはいえない。
本件特許発明2と同日出願発明4を対比するに、少なくとも、本件特許発明2は「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」という特定事項及び「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)」という発明特定事項を有する「食品」の発明であるから、上記発明特定事項を有さない「分解抑制方法」の発明である同日出願発明4と同一であるとはいえない。
(ウ)本件特許発明3について
本件特許発明3と同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3を対比するに、少なくとも、本件特許発明3は「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」という特定事項及び「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)」という発明特定事項を有する点で同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と相違するので、本件特許発明3は同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と同一であるとはいえない。
本件特許発明3と同日出願発明4を対比するに、少なくとも、本件特許発明3は「(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を含む」という特定事項及び「食品(但し、納豆自体を含む場合;乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA,EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンB1、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)」という発明特定事項を有する「食品」の発明であるから、上記発明特定事項を有さない「分解抑制方法」の発明である同日出願発明4と同一であるとはいえない。
(エ)本件特許発明4について
本件特許発明4と同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3を対比するに、本件特許発明4は「食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」という発明特定事項を有する「分解抑制方法」の発明であるから、上記発明特定事項を有さない「食品」の発明である同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と同一であるとはいえない。
本件特許発明4と同日出願発明4を対比するに、本件特許発明4は、「食品(但し、乳酸菌末、紅麹末及びビフィズス菌末を含む場合;イチョウ葉エキス、DHA、及びEPAを含む場合;DHA、EPA、コエンザイムQ10、ビタミンE、及び葉酸を含む場合;DHA、EPA、クリルオイル、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、及びビタミンB6を含む場合;葉酸、魚油、ビタミンE、及びビタミンB6を含む場合;黒酢粉末、黒酢もろみ末、DHA、EPA、及びビタミンEを含む場合;黒酢もろみ末、ヘスペリジン、紅麹エキス、キトサン、ビタミンE、及びニンニク末を含む場合;並びに、ビタミンBl、ビタミンB12、EPA、紅麹粉末、イチョウ葉エキス末、ビタミンE、ナイアシン、及びビタミンB2を含む場合を除く)に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)チアミン、葉酸、シアノコバラミン、メチルヘスペリジン、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種(但し、植物素材又はその抽出物の含有成分として含まれている場合を除く)を配合する」という発明特定事項を有する点で同日出願発明4と相違するので、本件特許発明4は同日出願発明4と同一であるとはいえない。
ウ 申立理由B3についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は、本件特許に係る出願と同日に出願された特願2023-417号(特開2023-30200号公報、甲B10)に係る発明と同一であるとはいえず、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由B3によっては取り消すことはできない。
第8 新たな申立理由について
1 特許異議申立人Aの主張する新たな申立理由
特許異議申立人Aは、令和6年1月18日に提出された意見書において、本件訂正により、おおむね次のとおりの新たな理由(明確性要件)が存在することになった旨主張する(上記意見書第45及び46ページ)。
(1)訂正で追加された「植物素材」とは、具体的にどのような植物をどのような方法で処理した素材を意味するのか理解できず、また、「植物素材」を正確に理解できないから、「その抽出物」も理解することができない。本件特許の技術分野において「植物素材」及び「その抽出物」は通常使用される用語ではない。また、上記記載はいわゆる除くクレームで追加された記載であり、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲及び明細書にも記載されていない。さらに、上記記載は甲A1、甲A3、甲A4及び甲A7との差別化のために設けられた訂正だが、これらの証拠にも植物素材という用語は登場せず、その意味は不明である。
このように、訂正発明1、それを引用する訂正発明2及び3並びに訂正発明4は植物素材又はその抽出物という用語を使用するためにその範囲を確定できないから、第三者に不測の不利益を与えるものである(当審注:「訂正発明1」ないし「訂正発明4」はそれぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」のことと解される。)。
(2)訂正発明は、甲A1、甲A3~甲A11に記載された10もの発明をピンポイントで除いた発明である(当審注:「訂正発明」は「本件特許発明」のことと解される。)。
このように、請求項1には除かれる部分(発明)が多数存在し、技術的一体性がないから、当業者は具体的な1の発明を把握することはできない。このことは特許庁審査基準「第II部第2章第3節の2.1(1)」及び「第IV部第2章の3.31(4)」にも示されるとおりである。
よって、本願発明は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさない(当審注:「本願発明」は「本件特許発明」のことと解される。)。
2 判断
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
ア 本件訂正で追加された「植物素材」が、その字句どおり、素材が植物であるという意味であることは当業者に明らかであり、また、「その抽出物」の意味も当業者に明らかである。
したがって、特許異議申立人Aの上記1(1)の主張は採用できない。
イ また、特許を受けようとする発明に、除かれる部分(発明)が多数存在し、除かれる部分(発明)に技術的一体性が無かったとしても、それだけでは、特許を受けようとする発明が不明確ということにはならない。
したがって、特許異議申立人Aの上記1(2)の主張も採用できない。
ウ 以上を踏まえて、本件特許の請求項1ないし4の記載を検討すると、本件特許の請求項1ないし4にそれ自体不明確な記載はなく、また、本件特許の請求項1ないし4の記載は発明の詳細な説明の記載とも整合している。
エ したがって、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件特許発明1ないし4は明確である。
3 新たな申立理由についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、特許異議申立人Aの主張する新たな申立理由によっては取り消すことはできない。
第9 結語
上記第6ないし8のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取消理由並びに特許異議申立書A及びBに記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700740