特許異議申立
2023-700741
ナットウキナーゼを含む食品
- 審判番号
- 2023-700741
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-122372
- 登録番号
- 7207878
- 請求日
- 2023年07月18日
- 審決日
- 2024年01月25日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】小林製薬株式会社
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【権利者代理人】迫田 恭子
- 【異議申立人】宮島 和美
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 淺野 美奈
- 分類
- P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L) / P1651.4 -Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第39条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7207878号発明「ナットウキナーゼを含む食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7207878号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7207878号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成30年6月27日の出願であって、令和5年1月10日にその特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月18日に特許異議申立人 宮島 和美(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4)がされ、同年9月29日付けで取消理由が通知され、同年12月1日に特許権者 小林製薬株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出され、同年同月11日付けで特許異議申立人に対し審尋がされ、令和6年1月4日に特許異議申立人から回答書が提出されたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを含み、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる、食品。
【請求項2】
前記(C)成分が、レチノール、トコフェロール、メナキノン、及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記(B)成分で形成されたカプセル皮膜を含むカプセル剤である、請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを配合する工程を含み、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を配合する場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類を31.25~625mg配合し、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を配合する場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和5年7月18日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、3及び4は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許の明細書に記載の課題における妥当性の欠如
本件特許発明1は、(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを含む食品であって、ナットウキナーゼに対するビタミンE類又はビタミンK類との含有量が特定範囲である食品の全てを権利範囲とするものである。
本件特許発明1には、水分量が少ない食品、すなわち、(C)成分を添加しなくとも、ゼラチンの分解という問題がそもそも発生しない食品(本件特許の明細書において課題とされているゼラチンの分解の抑制という課題が存在しない食品)も包含される。本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載を、このような食品にまで拡張一般化することはできない。
以上より、本件特許発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
本件特許発明2ないし4も同様に本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)本件特許の明細書の試験例の方法や判定基準等が不適格であること
本件特許の明細書には、試験例1においてゼラチンの分解試験に供したゼラチンプレートの作成について、「ゼラチンを20重量%、メチルパラベン(防腐剤)を0.2重量%となるように添加して混合し、ゼラチン溶液を調製した。得られたゼラチン溶液10gをシャーレ(内径9cm)に広げ、シャーレ内のゼラチンの厚みを均ーにした後に、4℃で1時間以上冷却し、ゼラチンをゲル化させ、シャーレ内にゼラチンプレート形成させた。」(段落【0042】)とある。
ゼラチン溶液は79.8重量%が水であることから、ゼラチン溶液の比重を1.0g/cm3としてゼラチンプレートの厚みを計算すると、4.5×4.5×3.14×[ゼラチンプレートの厚み]=10の計算式から、ゼラチンプレートの厚みの理論値は、約0.16cm(約1.6mm)と極めて薄いことが分かる。
一方、甲第9号証にて、本件特許の明細書と同様にゼラチンプレートを作製し、ゼラチンプレートの厚みを計測したところ、実測の平均値が約1.4mmとなり、厚みの最大値と最小値の差が約0.5mmと、厚みの差異が大きいものであった。
ここで、本件特許の明細書のゼラチン分解耐性の判定基準(段落【0043】)では、例えば、「3:ゼラチンプレートの厚さ半分程度が溶解している。」との判定基準があり、実施例3(段落【0045】)でのゼラチン分解耐性が「3」となっている。この場合、ゼラチンプレートの厚みは0.7mm程度と相当な薄さであることを意味する。また、上述の厚みの最大値と最小値の差(約0.5mm)を含めて考えると、上記判定基準「3」のゼラチンプレートの厚みの幅は、0.2~1.2mmになりうる。つまり、上記判定基準「3」は、他の判定基準、例えば、「1:ゼラチンプレートが僅かに溶解している。」、「2:ゼラチンプレートが少し溶解しており滴下していない部分との差が明らか。」、「4:ゼラチンプレートの大部分が溶解しており一部シャーレの底が露出する。」の範囲を含みうる。
更に、甲第9号証では、シャーレに流し込むゼラチン溶液の重量を多くすればするほど、ゼラチンプレートの厚みは増し、厚みの最大値と最小値の差は小さい、つまり、均ーな厚みを得やすいことが示されている。該シャーレの高さは10mm程度あることは常識であるため、上記判定基準に合わせたゼラチンプレートを準備することは可能であり、科学的常識である。
すなわち、試験例1は、ゼラチン分解耐性の判定基準があいまいとなりやすいような条件下で試験を実施しており、試験例1の方法や判定基準は不適格である。
そして、このような不適格な試験例1に基づいている本件特許発明1の食品が、本件特許の明細書に記載のゼラチンの分解の抑制という課題を解決できることを当業者は認識することができない。
以上より、本件特許発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明において、あいまいさや疑念の余地を残す内容に基づいたものであり、本件特許の特許権者により本件特許発明が科学的に真であることが証明されるまで、認められるべきものではない。
本件特許発明2ないし4も同様である。
3 申立理由3(同日出願)
本件特許発明1ないし4は、本件特許に係る出願と同日に出願された下記の特許出願(甲第11号証)に係る発明と同一であり、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 証拠方法
甲第1号証:登録実用新案第3196850号公報
甲第2号証:国際公開第2011/118810号
甲第3号証:第2版 標準化学用語辞典、740-741頁、556-557頁、平成17年3月31日、丸善(株)
甲第4号証:異議2022-701090の異議の決定
甲第5号証の1:医療薬学,Vol.34,No.6,p.530-537(2008)
甲第5号証の2:膜,Vol.36,No.4,p.177-182(2011)
甲第5号証の3:「日本薬局方」ホームページ 第十七改正日本薬局方p.637、平成28年3月7日
甲第5号証の4:薬剤学,Vol.68,No.1,p.37-41 (2008)
甲第5号証の5:薬剤学,Vol.70,No.3,p.198-201 (2010)
甲第6号証:日本未病システム学会雑誌,Vol.8, No.2,p.204-205 (2002)
甲第7号証の1:化学大辞典8 縮刷版第38刷、平成15年10月1日
甲第7号証の2:J. Am. Chem. Soc.,Vol.118,No.26,p.6105-6109 (1996)
甲第7号証の3:化学と生物,Vol.30,No.12,p.792-798 (1992)
甲第8号証:特開2014-101318号公報
甲第9号証:実験報告書、令和5年7月13日
甲第10号証:MEDCHEM NEWS,Vol.12,No.4, p.14-19 (2002)
甲第11号証:特願2023-418号(特開2023-26607号公報)
甲第12号証:生産研究、63巻、3号、350―353頁(2011)
甲第13号証:生物物理、25巻、5号、192-202頁(1985)
甲第14号証:Handbook of Food Preservation, Second Edition、2007年、Taylor & Francis Group
甲第15号証:特開2005-200372号公報
甲第16号証:第2版 標準化学用語辞典、340-341頁、706-707頁、平成17年3月31日、丸善(株)
甲第12ないし16号証は、令和6年1月4日に提出された回答書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記回答書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
また、特許権者から、令和5年12月1日に提出した意見書に添付して以下の証拠が提出されている。
乙第1号証:特許第4065321号公報
乙第2号証:東京大学生産技術研究所 白樫研究室[生体中の結合水の測定]のウェブサイトのコピー、[令和5年11月29日検索]、インタネット<https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/seikenkoukai/2012/virtual/pdf/02_shirakashi_j.pdf>
乙第3号証:三菱ガス化学株会社の「エージレス○R(当審注:Rを○で囲んだ記号である。)コラム 水分活性値とは? 食品と水分活性の関係について」のウェブサイトのコピー[令和5年11月29日検索]、インタネット<https://www.mgc.co.jp/special/column/water-activity/)
乙第4号証:あいち産業科学技術総合センターの「食品の水分活性について」のウェブサイトのコピー、あいち産業科学技術総合センターニュース、2014年11月号、[令和5年11月29日検索]、インタネット<https://www.aichi-inst.jp/other/up_docs/no152_03.pdf>
乙第5号証:実験成績証明書、令和5年11月27日、小林製薬株式会社、作成者:西川 理恵
証拠の表記は、上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「乙1」のようにいう。
第4 取消理由の概要
令和5年9月29日付けで通知された取消理由の概要は次のとおりである。
・取消理由(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由は申立理由2の(1)とおおむね同旨である。
発明の詳細な説明には、本件特許発明における「(C)成分」である「ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミン」の如何なる作用機序により、保存によるゼラチンの分解を抑制できるのかについての理論的な説明はない。
また、タンパク質の分解には水が関与すると認められる(甲7の1ないし3参照。)ところ、発明の詳細な説明の【0040】ないし【0045】には、精製水を多量に含有するゼラチンプレートに、ナットウキナーゼ粉末と共に酢酸レチノール、酢酸トコフェロール又はビタミンK2及び多量の精製水からなる試験液(実施例1ないし3)を摘下し、室温で一晩静置して、これらの試験液が、酢酸レチノール、酢酸トコフェロール及びビタミンK2のいずれも使用しない試験液(比較例1)及び酢酸レチノール、酢酸トコフェロール又はビタミンK2に代えてアルギニン、リジン、シトルリン、難消化性デキストリン又はルチンを使用した試験液(比較例2ないし6)と比べ、ゼラチンプレートの分解に対する抑制効果を奏することを確認する試験結果の記載があるものの、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品全般において、ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることを実証する実施例はない(製造例1ないし12はソフトカプセル剤を製造できたことを示すに止まり、製造例13ないし15はゼラチンを含まない錠剤を製造できたことを示すに止まり、製造例16ないし18はゼラチンを含まない顆粒剤を製造できたことを示すに止まる。)。
そして、上記試験結果の条件は、カプセル剤、錠剤及び顆粒剤等の水を殆ど含まないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品を保存する場合の条件とは著しく異なる(特に、ゼラチンプレート及び試験液の両方に多量の精製水が使用されている点。)。
そうすると、上記試験結果からは、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品において、「ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミン」を配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることを当業者といえども理解することはできない。
他方、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品全般において、「ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミン」を配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることが当業者の技術常識であったともいえない。
したがって、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえないし、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。
よって、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるとはいえない。
第5 当審の判断
1 取消理由について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そして、サポート要件を充足するには、発明の詳細な説明に接した当業者が、特許請求された発明が発明の詳細な説明に記載されていると合理的に認識できれば足り、また、課題の解決についても、当業者において、技術常識も踏まえて課題が解決できるであろうとの合理的な期待が得られる程度の記載があれば足りるのであって、厳密な科学的な証明に達する程度の記載までは不要であると解される。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
イ 発明の課題
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0001】ないし【0007】によると、本件特許発明1ないし3の解決しようとする課題は「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含みながらも、保存によるゼラチンの分解を抑制できる食品を提供すること」であり、本件特許発明4の解決しようとする課題は「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品において保存によるゼラチンの分解を抑制する方法を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。
ウ 判断
(ア)発明の詳細な説明の【0008】には「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品において、ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを配合することによって、ゼラチンの分解を抑制できることを見出した。」と記載され、同【0009】には、本件特許発明1ないし4に対応する記載がある。
発明の詳細な説明の【0011】ないし【0036】には、本件特許発明1ないし3の各発明特定事項について具体的な記載があり、同【0037】及び【0038】には、本件特許発明4の各発明特定事項について具体的な記載がある。
発明の詳細な説明の【0039】ないし【0051】には、本件特許発明の実施例について具体的に記載されている。
発明の詳細な説明の【0040】ないし【0045】には、精製水を多量に含有するゼラチンプレートに、ナットウキナーゼ粉末と共に酢酸レチノール、酢酸トコフェロール又はビタミンK2及び多量の精製水からなる試験液(実施例1ないし3)を摘下し、室温で一晩静置して、これらの試験液が、酢酸レチノール、酢酸トコフェロール及びビタミンK2のいずれも使用しない試験液(比較例1)及び酢酸レチノール、酢酸トコフェロール又はビタミンK2に代えてアルギニン、リジン、シトルリン、難消化性デキストリン又はルチンを使用した試験液(比較例2ないし6)と比べ、ゼラチンプレートの分解に対する抑制効果を奏することを確認する試験結果の記載がある。
(イ)タンパク質の分解には水が関与すると認められる(甲7の1ないし3参照。)ところ、下記の乙1及び2に記載された事項(乙2と同様の事項が甲12にも記載されている。)から、カプセル剤におけるゼラチン剤皮の水分含有量は通常12~16%程度であり、水分活性は0.4程度以上であり、また、保存による吸湿や温度上昇によって、水分活性がさらに高くなることは出願時の技術常識であるといえ、下記の乙3及び4に記載された事項から、水分活性とは自由水の含有量を示す尺度であり、水分活性が0.4以上であれば、酵素活性があることも出願時の技術常識であるといえる。
したがって、通常のゼラチン皮膜には、酵素であるナットウキナーゼが活性を示す程度の水分が含まれているといえるし、また、保存による吸湿や温度上昇によって、水分活性がさらに高まる可能性があるといえる。
<乙1に記載された事項>(下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。)
・「カプセル剤の品質、即ち、構造上及び内容薬剤の薬理活性、外観等の安定性は水分活性と密接な関係にある。例えば、適切な条件で製造されたゼラチンカプセル剤であっても、それを密閉状態で、特に加温下に、保存するとカプセル剤皮や内容薬剤中の水分が蒸発し、カプセル内部が高湿度状態(高水分活性)となることが知られている。内容薬剤が水分の影響を受けて変化を起こし易い活性物質からなる場合、或いは、水分と活性物質との分離が困難で、水分に不安定な不純物を含有する場合、カプセル内部の自由水と該内容薬剤とが接触し、経時的に不安定化され、着色等の外観の変化のみならず、有効成分の活性の低下などを起こす可能性がある。またゼラチンカプセル自体も不溶化や軟化、変形などを起こす可能性がある。通常、水分活性の調節、特に減少のためには、シリカゲル等の乾燥剤をカプセル包装容器内に封入してカプセル剤中の水分を減ずる方法がとられているが、この方法では、カプセル剤皮中の水分含量を適切に調節することが困難である。特にゼラチンカプセルの場合、剤皮の水分含量が低くなり過ぎると亀裂やひび割れが生じ、変形したり、破損する可能性がある。即ち、ゼラチン剤皮中には通常、12~16%の水分が含まれているが、水分含量が10%以下、特に7~8%以下になると軽度な衝撃等によってひび割れ等が生じる。」(第2ページ第12ないし25行)
・「試験例1 ゼラチンの水分活性に対する温度の影響
カプセル剤の剤皮として用いるゼラチンの密閉系での水分活性を上記の条件下で測定した。単独結果を第1図に示す。」(第4ページ第27ないし29行)
・「
[図:0001406711000001.jpg]
」
<乙2に記載された事項>
・「
[図:0001406711000002.jpg]
」(第1ページ左下)
<乙3に記載された事項>
・「水分活性値とは?
食品中の水分は食品成分と結合した”結合水”と、微生物が利用可能な結合していない”自由水”とから成っています。
水分活性はこの自由水の含有量を示す尺度で、水分活性が高い程、微生物が増殖しやすくなるのでその保存性は低下します。」(1/5ページ下欄)
・「水分活性値と品質保持の関係について
水分活性値と品質保持やカビの予防は密接な関係があります。
水分活性と真菌(カビ)や細菌増殖の関係
[図:0001406711000003.jpg]
」
<乙4に記載された事項>
・「1.食品中の水
水はほとんどの食品中に存在し、多量に含まれています。・・・(略)・・・
食品中の水は「結合水」と「自由水」という2種類の形態で存在しています。「結合水」は、・・・(略)・・・微生物の成育や酵素反応には利用されません。「自由水」は、食品成分と結合していない遊離の状態にあり、環境や温度・湿度の変化により容易に移動が起こります。
・・・(略)・・・
2.水分活性
水分活性は自由水の割合を表す尺度であり、次式で表されます。
・・・(略)・・・水分活性が高いほど自由水が多いということになります。
水分活性は微生物の成育や脂質の酸化、褐変、色素の分解などの品質変化と相関があることが示されており、例えば、食品中の酵素活性や非酵素的褐変反応は水分活性が0.4以下になるとほぼ停止し、また、脂質の酸化反応は水分活性が0.3付近で最低となることが知られています。」(第5ページ左欄)
(ウ)そうすると、当業者であれば、発明の詳細な説明に記載された事項及び出願時の技術常識から、含水量の特定のないナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においても、保存をする場合、ナットウキナーゼによりゼラチンが分解されるという課題が発生することを理解し、「ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミン」を配合することによって、保存によるゼラチンの分解を抑制できることを理解することができる。
(エ)すなわち、当業者は、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らし、「ナットウキナーゼ、ゼラチン、並びにビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを含む食品」及び「食品に、ナットウキナーゼ及びゼラチンと共に、ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを配合する工程、を含む方法」は、発明の課題を解決できると認識できる。
(オ)そして、本件特許発明1ないし3は、発明の課題を解決できると認識できる上記食品をさらに限定したものであり、本件特許発明4は、発明の課題を解決できると認識できる上記方法をさらに限定したものであるから、本件特許発明1ないし4は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らし、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるいえる。
(カ)したがって、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるといえる。
(キ)特許異議申立人は、令和6年1月4日に提出された回答書において、「乙第1号証の図1の解釈が不適切であること」、「乙第2号証の図2に基づく特許権者の主張が不適切であること」、「ゼラチンの水分活性は酵素活性の発現の尺度として不適切なこと」、「乙第1号証や乙第2号証のゼラチンの水分活性が普遍的なものではないこと」、「乙第3号証、及び、乙第4号証に基づく特許権者の主張が不適切であること」及び「乙第5号証が水分含有量の少ない系における課題の解決を実証していないこと」を主張する(上記回答書第2ないし9ページ)が、いずれの主張も、以下の理由により採用できない。
・いずれの主張も、通常のゼラチンを含有する食品を保存する場合において、ナットウキナーゼが活性を示さないことを示す具体的な証拠を伴うものではなく、通常のゼラチンを含有する食品においては、保存によるゼラチンの分解という課題が生じないとまでは断定できない。
・上記(ア)ないし(エ)のとおり、厳密な科学的な証明に達する程度の記載であるかどうかは別にして、当業者が発明の課題を解決できると合理的に期待できる程度には、本件特許発明1ないし4が発明の詳細な説明に記載されているといえる。
(3)取消理由についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、取消理由によっては取り消すことはできない。
2 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)、申立理由2(サポート要件)の(2)及び申立理由3(同日出願)である。
以下、順に検討する。
(1)申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
ア 甲1に記載された事項等
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、「薬膳サプリメント」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0014】
本考案は上記の問題に鑑みてなされたものであり、通常の薬膳料理を食するよりも少ない摂取量であっても薬膳による健康増進効果を享受できるようにすることを目的とする。」
・「【0023】
本例の薬膳サプリメント1は、生薬成分をカプセルに充填して成るサプリメントである。
同サプリメント1は、植物由来の生薬成分を含む植物系生薬2と、動物由来の生薬成分を含む動物系生薬3と、12種類の所定のビタミン成分41ないしは2種類の所定のミネラル成分42のいずれかを所定量だけ含む栄養補助成分4と、植物系生薬2・動物系生薬3ならびに栄養補助成分4を内包する被膜層であって動物性ゼラチンないしは植物性セルロースから成るカプセル5と、を備えている。」
・「【0025】
日本国においてサプリメントは食品に分類されるものの一般的にサプリメントは服用者に対し何らかの健康促進効果をもたらすと認識されている以上、栄養補助食品たるサプリメントの該当性を担保するために、保健機能食品制度により規定される「保健機能食品」の条件を充足することが妥当と思われる。
ここで上記「保健機能食品」に該当するためには「12種類の所定のビタミンないしは2種類の所定のミネラルの最低1種類」を「所定量」含んでいることが必要となる。なお、この条件を充たしている場合には、厚生労働省に対して何ら届出や申請することなく、その栄養素の機能を表示することが認められている。
【0026】
そのため本実施形態に係る薬膳サプリメント1は、栄養補助食品たるサプリメントの品質(服用者に所定の健康増進効果をもたらすこと)を保証すべく、通常の保健機能食品と同様に「12種類の所定のビタミン成分41」または「2種類の所定のミネラル成分42」を「所定量」だけ栄養補助成分4として含んでいる。
ここでいう「所定量」とは、ミネラル類2種類ないしはビタミン類12種類のうちの最低1種類の「栄養補助成分」について同栄養補助成分4の1日当たりの摂取目安量に含まれる成分量が規定の基準上限値と基準下限値との範囲内にあることを指す。
【0027】
なお上記保健機能食品制度で規定される12種類の「所定のビタミン成分」としては、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEもしくは葉酸が該当する。」
・「【0047】
[変形例]
本考案に係る薬膳サプリメント1では、穀物や豆類・野菜・果物・ハーブその他の植物や動物・魚に由来する任意の天然成分をさらに添加してもよい。
このような天然成分の例としては、玄米・麦・トウモロコシなどの「穀類」、イソフラボンを含有する大豆・黒豆などの「豆類」が挙げられる。
また薬膳サプリメント1には大豆加工品として、フリーズドライ処理を施した納豆や豆腐、納豆に由来するナットウキナーゼを添加してもよい。」
(イ)甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に【0023】に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「植物由来の生薬成分を含む植物系生薬2と、動物由来の生薬成分を含む動物系生薬3と、12種類の所定のビタミン成分41ないしは2種類の所定のミネラル成分42のいずれかを所定量だけ含む栄養補助成分4と、植物系生薬2・動物系生薬3ならびに栄養補助成分4を内包する被膜層であって動物性ゼラチンないしは植物性セルロースから成るカプセル5と、を備えている薬膳サプリメント1。」
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「以上より、甲第1号証には、下記の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「ナットウキナーゼ、動物性ゼラチン及びビタミンAを含む薬膳サプリメント。」」と主張する(特許異議申立書第6ページ)が、甲1においては、「ナットウキナーゼ」、「動物性ゼラチン」及び「ビタミンA」は、それぞれ、選択肢として記載されているにすぎず、「ナットウキナーゼ」、「動物性ゼラチン」及び「ビタミンA」の全てを含む「薬膳サプリメント」が記載されている訳ではないので、特許異議申立人の主張するような甲1発明を直ちには認定することはできない。
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「ゼラチン」、「ナットウキナーゼ」及び「ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミン」「を含み」と特定された上で、「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる」と特定されているのに対し、甲1発明においては、「12種類の所定のビタミン成分41ないしは2種類の所定のミネラル成分42のいずれかを所定量だけ含む栄養補助成分4と、植物系生薬2・動物系生薬3ならびに栄養補助成分4を内包する被膜層であって動物性ゼラチンないしは植物性セルロースから成るカプセル5と、を備えている」と特定されている点。
両者の間には、相違点1があることから、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえない。
また、甲1及び他の証拠には、甲1発明において、「動物性ゼラチンないしは植物性セルロース」から「動物性ゼラチン」、すなわち「ゼラチン」を選択し、「ナットウキナーゼ」を含むようにした上で、「ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミン」を含むようにする動機付けとなる記載はないし、当然、「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる」ようにする動機付けとなる記載もない。
したがって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。」(発明の詳細な説明の【0010】)という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
よって、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(エ)本件特許発明4について
甲1には、通常の薬膳料理を食するより少ない摂取量であっても健康増進効果を享受できるようにすることを目的とする薬膳サプリメントが記載されているに止まり、「ゼラチンの分解抑制方法」については何ら記載も示唆もない。
そうすると、甲1に記載された事項からは、本件特許発明4と対比・判断することができる発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明4は甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3及び4は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし4は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由1によっては取り消すことはできない。
(2)申立理由2(サポート要件)の(2)について
ア サポート要件の判断
上記1(2)のとおり、本件特許発明1ないし4に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合するものであるといえる。
イ 特許異議申立人の主張について
申立理由2の(2)における特許異議申立人の主張(上記第3 2(2)参照。)について検討する。
ゼラチンプレートの分解試験を行う際に、ゼラチンプレートの厚みを揃えておくことは当業者であれば当然行うことである。
したがって、発明の詳細な説明に記載された試験例の方法や判定基準等が不適格であるとはいえず、特許異議申立人の主張は採用できない。
なお、甲9は、発明の詳細な説明に記載された試験例を正確に再現したものではないし、誰がどこで行った実験の報告書なのかも不明であるから、甲9に基づく主張は、そもそも採用することができない。
ウ 申立理由2の(2)についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由2の(2)によっては取り消すことはできない。
(3)申立理由3(同日出願)について
ア 本件特許に係る出願と同日に出願された特願2023-418号(特開2023-26607号公報、甲11)に係る発明
本件特許に係る出願と同日に出願された特願2023-418号(特開2023-26607号公報、甲11)の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「同日出願発明1」のようにいう。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを含む、食品。
【請求項2】
前記(C)成分が、レチノール、トコフェロール、メナキノン、及びこれらの誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記(B)成分で形成されたカプセル皮膜を含むカプセル剤である、請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)ビタミンA類、ビタミンE類、及びビタミンK類よりなる群から選択される少なくとも1種の脂溶性ビタミンを配合する、ゼラチンの分解抑制方法。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3を対比するに、本件特許発明1は「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる」という発明特定事項を有する点で同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と相違するので、本件特許発明1は同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と同一であるとはいえない。
本件特許発明1と同日出願発明4を対比するに、本件特許発明1は「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる」という発明特定事項を有する「食品」の発明であるから、上記発明特定事項を有さない「分解抑制方法」の発明である同日出願発明4と同一であるとはいえない。
(イ)本件特許発明2について
本件特許発明2と同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3を対比するに、少なくとも、本件特許発明2は「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる」という発明特定事項を有する点で同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と相違するので、本件特許発明2は同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と同一であるとはいえない。
本件特許発明2と同日出願発明4を対比するに、本件特許発明2は「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる」という発明特定事項を有する「食品」の発明であるから、上記発明特定事項を有さない「分解抑制方法」の発明である同日出願発明4と同一であるとはいえない。
(ウ)本件特許発明3について
本件特許発明3と同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3を対比するに、少なくとも、本件特許発明3は「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる」という発明特定事項を有する点で同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と相違するので、本件特許発明3は同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と同一であるとはいえない。
本件特許発明3と同日出願発明4を対比するに、本件特許発明3は「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類が31.25~625mg含まれ、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を含む場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg含まれる」という発明特定事項を有する「食品」の発明であるから、上記発明特定事項を有さない「分解抑制方法」の発明である同日出願発明4と同一であるとはいえない。
(エ)本件特許発明4について
本件特許発明4と同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3を対比するに、本件特許発明4は「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を配合する場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類を31.25~625mg配合し、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を配合する場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg配合する」という発明特定事項を有する「分解抑制方法」の発明であるから、上記発明特定事項を有さない「食品」の発明である同日出願発明1、同日出願発明2又は同日出願発明3と同一であるとはいえない。
本件特許発明4と同日出願発明4を対比するに、本件特許発明4は、「前記脂溶性ビタミンとしてビタミンE類を配合する場合、ナットウキナーゼ1000FUに対してビタミンE類を31.25~625mg配合し、
前記脂溶性ビタミンとしてビタミンK類を配合する場合、ナットウキナーゼ1000FUに対するビタミンK類が0.375~250mg配合する」という発明特定事項を有する点で同日出願発明4と相違するので、本件特許発明4は同日出願発明4と同一であるとはいえない。
ウ 申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし4は、本件特許に係る出願と同日に出願された特願2023-418号(特開2023-26607号公報、甲11)に係る発明と同一であるとはいえず、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。
第6 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-700741