特許異議申立
2022-701052
積層不織布
- 審判番号
- 2022-701052
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-140069
- 登録番号
- 7059850
- 請求日
- 2022年10月25日
- 審決日
- 2023年09月29日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【異議申立人】笠原 佳代子
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 森本 哲也
- 審判官 久保 克彦
- 分類
- P1651.121-YAA(D04H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7059850号発明「積層不織布」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7059850号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
特許第7059850号の請求項1に係る特許を維持する。
特許第7059850号の請求項2~3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7059850号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成30年7月26日に出願され、令和4年4月18日にその特許権の設定登録がされ、令和4年4月26日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和4年10月25日 :特許異議申立人笠原佳代子(以下「申立人」という。)による本件特許に対する特許異議の申立て
令和4年12月23日付け:取消理由通知書
令和5年 2月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 4月 6日 :申立人による意見書の提出
令和5年 4月 7日 :申立人による意見書の提出
令和5年 4月18日付け:手続補正指令書(方式)
令和5年 5月 9日 :手続補正書(方式)
令和5年 6月 9日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 7月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和5年7月26日に訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、先にした令和5年2月20日にした訂正請求は取り下げられたものとみなす。
また、合議体は申立人に対し、令和5年8月16日付けで期間を指定して、特許法第120条の5第5項に規定される通知をしたが、申立人からの意見書の提出はなかった。
第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
令和5年7月26日に提出された訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。また、訂正自体を、「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1) 訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1における「ポリエステル系樹脂(A)からなる繊維で構成されるメルトブロー不織布層が内層を形成し、ポリエチレンテレフタラートにポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル系樹脂(B)からなる繊維で構成されるスパンボンド不織布層が表層に積層されてなる、積層不織布。」との記載を、「ポリエステル系樹脂(A)からなる繊維で構成されるメルトブロー不織布層が内層を形成し、ポリエチレンテレフタラートにポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル系樹脂(B)からなる繊維(ただし、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するものを除く)で構成されるスパンボンド不織布層が表層に積層されてなる、積層不織布であって、前記共重合ポリエステル系樹脂(B)のポリエチレングリコール共重合量が2質量%以上20質量%以下であり、前記積層不織布のΔMRが0.5%以上15%以下である、積層不織布。」と訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
そして、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~3〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に記載の「ポリエチレンテレフタラートにポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル系樹脂(B)からなる繊維」について、「シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するもの」を除くとともに、「共重合ポリエステル系樹脂(B)のポリエチレングリコール共重合量が2質量%以上20質量%以下」と限定し、「積層不織布」について、「ΔMRが0.5%以上15%以下」と限定するものであるから、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2~3及び本件特許明細書の【0027】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した範囲内の訂正である。
また、訂正事項1は、上記のとおり特許請求の範囲を減縮するものであり、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2) 訂正事項2~3について
訂正事項2~3は、本件訂正前の請求項2~3をそれぞれ削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること、カテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことは、明らかである。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、本件訂正請求に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
ポリエステル系樹脂(A)からなる繊維で構成されるメルトブロー不織布層が内層を形成し、ポリエチレンテレフタラートにポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル系樹脂(B)からなる繊維(ただし、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するものを除く)で構成されるスパンボンド不織布層が表層に積層されてなる、積層不織布であって、前記共重合ポリエステル系樹脂(B)のポリエチレングリコール共重合量が2質量%以上20質量%以下であり、前記積層不織布のΔMRが0.5%以上15%以下である、積層不織布。」
第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和5年2月20日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~2に係る特許に対して、当審が令和5年6月9日付けの取消理由通知(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性) 請求項1~2に係る発明は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消すべきものである。
<申立人が提出した証拠方法>
甲第1号証:特開2006-299425号公報
甲第2号証:特開2001-329429号公報
なお、申立人は以下の甲第3号証及び甲第4号証も証拠方法として提出した。
甲第3号証:特開平7-62118号公報
甲第4号証:S. Mishra Veena, I. K. Varma, and D. S. Varma, “Polyester Fibres with Improved Dye Uptake”, Die Angewandte Makromolekulare Chemie, (独), 1979, 82(Nr. 1251), p.63-78
(以下、申立人が提出した甲第1号証等を「甲1」等という。)
2 甲各号証に記載された事項、発明
(1) 甲1
ア 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、強調のため当審で付したものである。)。
(ア) 「【請求項1】
ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維からなる不織布層から形成される積層体であり、該吸水性繊維が積層体の全重量に対して1~99重量%含まれることを特徴とする吸水性不織布積層体。」
(イ) 「【請求項3】
前記熱可塑吸水性樹脂が、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリアルキレングリコールとの共重合体であり、ポリアルキレングリコールの共重合量が5~90重量%である共重合ポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1又は2に記載の吸水性不織布積層体」
(ウ) 「【請求項6】
前記吸水性不織布層がスパンボンド法あるいはメルトブロー法で形成されることを特徴とする請求項1~5のいずれかにに(当審注:「いずれかに」の誤記であると認める。)記載の吸水性不織布積層体。」
(エ) 「【請求項9】
熱可塑性繊維からなる不織布層が、スパンボンド法あるいはメルトブロー法で形成された不織布であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の吸水性不織布積層体。」
(オ) 「【0023】
本発明の吸水性不織布積層体は、公知の方法を用いて得られるものであり、製造方法、および積層方法としては従来公知の方法が任意に採用でき、特に制限はない。
吸水性不織布層、および熱可塑性樹脂からなる不織布層としては、短繊維あるいは長繊維のいずれを用いてもよく、その形成方法としても、スパンボンド法とメルトブロー法に代表される紡糸直結法や、カーディングやエアレイなどの乾式法、抄紙法などの湿式法などのいずれの方法を用いても良い。」
(カ) 「【0025】
本発明における不織布積層体の構造として、吸水性繊維からなる不織布層と熱可塑性樹脂からなる基材が少なくとも各1層づつ積層されておればよく、積層するする層(当審注:「積層する層」の誤記であると認める。)の数は特に限定されるものではないが、設備の制約や生産性を考慮した場合、3~5層であることが好ましい。
さらには、両外層を熱可塑性樹脂からなる長繊維不織布で構成し、かつ中間層として吸水繊維からなる不織布層を配置した、3層以上の不織布がオンラインで積層してなる不織布積層体であることが好ましい。」
(キ) 「【0062】
[実施例15]
固有粘度が0.77のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が30g/m2のウェブを形成した。
次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用の溶融紡糸装置に供給し、230℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して3.0dtexの吸水性繊維からなる目付が30g/m2のウェブを得た。
【0063】
得られた吸水性ウェブを目付が30g/m2のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブを165℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して60g/m2の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。
吸水性繊維の含有比率は50%であり、後述の比較例6に対して、吸水速度は0.8秒と大幅に早くなり、保水率は比較例6の約8倍の48%に増加し、保水性が大幅に向上した。」
(ク) 「【0077】
【表1】
[図:0001404772000001.jpg]
」
イ 上記(ウ)及び(オ)から、甲1には、吸水性不織布層がスパンボンド法で形成されたものが記載されている。
ウ 同様に、上記(エ)及び(オ)から、甲1には、熱可塑性繊維からなる不織布層がメルトブロー法で形成されたものが記載されている。
エ さらに、上記(ア)及び(キ)から、甲1には、吸水性不織布層について、ポリアルキレングリコールとしてポリエチレングリコールを採用したものが記載されている。
オ 上記ア~エを総合すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「ポリアルキレングリコールを共重合した熱可塑吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層と、熱可塑性繊維からなる不織布層から形成される積層体であり、
前記熱可塑吸水性樹脂が、ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリエチレングリコールとの共重合体であり、ポリエチレングリコールの共重合量が5~90重量%であり、
吸水性不織布層がスパンボンド法で形成され、
熱可塑性繊維からなる不織布層がメルトブロー法で形成され、
吸水性繊維からなる不織布層と熱可塑性樹脂からなる基材が少なくとも各1層づつ積層された構造の不織布積層体。」
(2) 甲2
甲2に記載されている事項(特に、【請求項1】、【請求項4】及び段落【0020】、【0031】、【0051】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲2には、以下の事項(以下「甲2に記載された事項1」という。)が記載されている。
「不織布に用いられる、ポリエステルにポリエチレングリコールを共重合したポリエステル繊維において、前記ポリエステルは、アルキレンテレフタレートの繰り返し単位として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(ポリテトラメチレンテレフタレート)、ポリプロピレンテレフタレートが好適で、中でも、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエステル系重合体は強度、耐候性が良好である点。」
また、甲2に記載されている事項(特に、【請求項1】及び段落【0026】、【0051】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲2には、以下の事項(以下「甲2に記載された事項2」という。)が記載されている。
「ポリエステル繊維に以下のA~Dを満足するシリカ系無機粒子を1~20重量%含有させ、該繊維の吸湿パラメーター(ΔMR)を2%以上とする点。
A.シリカ系無機粒子の細孔容積(ml/g)が0.9以上であり、かつ該粒子の比表面積(m2/g)との関係が 次式を満足すること。
300≦(粒子の比表面積/粒子の細孔容積)<1500
B.シリカ系無機粒子の平均粒径(μm)が0.01~10であること。
C.シリカ系無機粒子の表面に存在するシラノール基の数が3個/nm2以上であること。
D.シリカ系無機粒子の吸湿パラメーター(ΔMR)が7%以上であること。」
(3) 甲3及び甲4
ア 甲3
甲3に記載されている事項(特に、【請求項1】及び段落【0004】、【0009】の記載を参照されたい。)を総合すると、甲3には、以下の事項が記載されている。
「ポリエステルにポリエチレングリコールを共重合することで柔軟性を付与できる点。」
イ 甲4
甲4に記載されている事項(特に、70ページの表4、71ページ第1~11行目の記載を参照されたい。また、令和5年5月9日提出の申立人による手続補正書(方式)の甲4の訳文も参照されたい。)を総合すると、甲4には、以下の事項が記載されている。
「PET(ポリエチレンテレフタレート)にPEG(ポリエチレングリコール)を共重合することで初期弾性率が低下する点。」
ウ 技術常識
初期弾性率は物体の硬さを表す尺度であることであることを勘案すれば、上記ア及びイに記載した通り、ポリエステルにポリエチレングリコールを共重合することで柔軟性が向上することは、技術常識(以下「技術常識」という。)である。
3 当審の判断
(1) 対比
本件発明と甲1発明とを、その構成や機能、及び技術上の意義を考慮して対比すると、甲1発明の「スパンボンド法で形成され」、「ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリエチレングリコールとの共重合体であ」る「熱可塑吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維から構成される吸水性不織布層」と本件発明の「ポリエチレンテレフタラートにポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル系樹脂(B)からなる繊維(ただし、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するものを除く)で構成されるスパンボンド不織布層」とは、「ポリエチレングリコールを共重合した」「ポリエステル系樹脂」からなる「繊維(ただし、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するものを除く)で構成されるスパンボンド不織布層」である限りにおいて一致する。
同様に、甲1発明の「メルトブロー法で形成され」、「熱可塑性繊維からなる不織布層」と本件発明の「ポリエステル系樹脂(A)からなる繊維で構成されるメルトブロー不織布層」とは、「繊維で構成されるメルトブロー不織布層」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「繊維で構成されるメルトブロー不織布層と、ポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル系樹脂からなる繊維(ただし、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するものを除く)で構成されるスパンボンド不織布層とが積層されてなる、積層不織布。」
<相違点1>
「メルトブロー不織布層」を構成する繊維の樹脂について、本件発明は、「ポリエステル系樹脂(A)」であるのに対して、甲1発明は、「熱可塑性繊維」であるものの、「ポリエステル系樹脂」からなっているか不明な点。
<相違点2>
「ポリエチレングリコールを共重合した」「ポリエステル系樹脂」からなる「繊維(ただし、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するものを除く)」及び当該繊維を含む「積層不織布」について、本件発明は、前者が「ポリエチレンテレフタラートにポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル系樹脂(B)からなる繊維(ただし、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するものを除く)」であって、「ポリエチレングリコール共重合量が2質量%以上20質量%以下であ」り、後者の「ΔMRが0.5%以上15%以下」であるのに対して、甲1発明は、前者が「ポリテトラメチレンテレフタレートを主成分とするポリエステルとポリエチレングリコールとの共重合体」である「熱可塑吸水性樹脂を用いて得られる吸水性繊維」であって、シリカ系無機粒子を含有しておらず、「ポリエチレングリコールの共重合量が5~90重量%であ」り、後者の「ΔMR」が不明である点。
<相違点3>
メルトブロー不織布層と、スパンボンド不織布層とが積層されてなることについて、本件発明は、「メルトブロー不織布層が内層を形成し」、「スパンボンド不織布層が表層に積層されてなる」構成であるのに対して、甲1発明は、メルトブロー不織布層とスパンボンド不織布層が少なくとも各1層づつ積層されているものの具体的な層の配置構成が不明な点。
(2) 判断
まず、相違点2について検討する。
甲2には、ポリエステル繊維に特定のシリカ系無機粒子を含有させることで、ΔMRを2%以上とする点は記載されている(上記2(2)の「甲2に記載された事項2」)。
ここで、甲2の【0013】に「本発明に於いてシリカ系無機粒子は繊維に吸湿性を付与するための必須成分である。」と記載されているように、甲2には、特定のシリカ系無機粒子を1~20重量%含有させることで、ポリエステルの優れた特性を維持しながら高い吸湿特性を有するポリエステル繊維を提供するという課題解決手段が記載されている。
そうしてみると、甲2に記載された事項1及び2を参照し、甲1発明への適用を検討するとしても、甲2は特定のシリカ系無機粒子を1~20重量%含有させることを前提とするものであるから、甲1発明の「吸水性繊維」について、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有させない構成とし、「不織布積層体」のΔMRを2%以上とすることには、阻害要因が存在するといえる。
よって、甲1発明を、本件発明のように、「ポリエチレンテレフタラートにポリエチレングリコールを共重合した共重合ポリエステル系樹脂(B)からなる繊維(ただし、シリカ系無機粒子を1~20重量%含有するものを除く)で構成されるスパンボンド不織布層」を有した「積層不織布」であって、「ΔMRが0.5%以上15%以下」とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
以上のとおりであるから、相違点1及び3を検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明並びに甲2に記載された事項1及び2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項2~3に係る特許は、上記のとおり、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項2~3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701052