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特許異議申立

2024-700184

フェルト針

審判番号
2024-700184
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-531245
登録番号
7334982
請求日
2024年02月28日
審決日
2025年08月21日
公報発行日
2025年11月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】オルガン針株式会社
  • 【権利者代理人】中島 健
  • 【権利者代理人】瀬川 幹夫
  • 【異議申立人】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
審判長/審判官
  • 審判長 田口 傑
  • 審判官 神山 茂樹
  • 審判官 金丸 治之
分類
P1651.121-YAA(D04H) / P1651.112-YAA(D04H) / P1651.537-YAA(D04H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7334982号発明「フェルト針」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7334982号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第7334982号の請求項1及び5に係る特許を維持する。 特許第7334982号の請求項2~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7334982号の請求項1~5に係る特許についての出願(特願2020-531245号)は、2019年(令和元年)7月5日(優先権主張 平成30年7月18日)を国際出願日とする出願であって、令和5年8月21日にその特許権の設定登録がされ、令和5年8月29日に特許掲載公報が発行された。 本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。 令和6年 2月28日 :特許異議申立人グロッツ-ベッケルト・カーゲー(以下「申立人」という。)による請求項1~5に係る特許に対する本件特許異議の申立て 令和6年 8月 2日付け:取消理由通知書 令和6年 9月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年10月17日 :令和6年9月26日に提出した訂正請求書に対する手続補正書(方式)の提出 令和6年12月 9日 :申立人による意見書の提出 令和7年 2月28日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和7年 5月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 令和7年 7月14日 :申立人による意見書(以下「意見書」という。)の提出 令和6年9月26日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、「特許第7334982号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。 2 請求項1~5に係る訂正について (1)本件訂正の内容 本件訂正のうち、請求項1~5に係る訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 ア 訂正事項1 本件訂正前の請求項1に記載された 「ブレードの表面にバーブが形成されたフェルト針であって、」を、 「ブレードの表面にバーブが形成された粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針であって、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。 イ 訂正事項2 本件訂正前の請求項1に記載された 「固形物を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる固形物の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されている」を、 「粘土状の塑性体を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる粘土状の塑性体の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されており、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。 ウ 訂正事項3 本件訂正前の請求項1に記載された 「ことを特徴とする、フェルト針。」を、 「前記バーブの入隅線は、前記バーブの幅方向の一方の端部から他方の端部に行くに従って、次第に針先から離れるように形成され、前記入隅線は、直線で形成されていることを特徴とする、フェルト針。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項5も同様に訂正する。)。 エ 訂正事項4 請求項2を削除する。 オ 訂正事項5 請求項3を削除する。 カ 訂正事項6 請求項4を削除する。 キ 訂正事項7 本件訂正前の請求項5に記載された 「請求項2記載のフェルト針。」を、 「請求項1記載のフェルト針。」に訂正する。 (2)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~5〕について請求されたものである。 (3)訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について ア 訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「フェルト針」を、粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのものに限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1は、本件特許の明細書の【0019】及び【0021】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1の「フェルト針」を「挿入」する、「交絡対象」としての「固形物」を、粘土状の塑性体粘土状の塑性体に限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2は、本件特許の明細書の【0019】及び【0021】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項4を、本件訂正後の請求項1とし、「一方側から他方側」という記載を「一方の端部から他方の端部」という記載に限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3の、「一方の端部から他方の端部」という記載は、本件特許の【0024】の記載に基づくものであり、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ 訂正事項4~6について 訂正事項4は請求項2を、訂正事項5は請求項3を、訂正事項6は請求項4を、それぞれ削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項4~6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項4~6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 オ 訂正事項7について 訂正事項7は、請求項5の引用請求項を請求項2から請求項1に変更するものであるが、本件訂正後の請求項1は、本件訂正前の請求項2をさらに限定したものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項7は、本件訂正によって削除される請求項2を引用するという不明瞭な状態を解消するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正のうち、請求項1~5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 3 明細書に係る訂正について (1)本件訂正の内容 本件訂正のうち、明細書に係る訂正の内容は、次のとおりである。 ア 訂正事項8について 明細書の段落【0010】を削除する。 (2)明細書の訂正と関係する請求項について 訂正事項8は、一群の請求項〔1~5〕に関係する訂正である。 (3)訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否、明細書の訂正に係る請求項について 訂正事項8は、訂正事項2による請求項3の削除によって、段落【0010】の「曲線で形成されていてもよいし、」という記載に、請求項1及び5の記載とに矛盾が生じたことを正すものであり、明瞭でない記載の釈明の目的とするものである。 訂正事項8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 そして、訂正事項8は、一群の請求項である請求項1~5と関係するものである。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正のうち明細書に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の明細書を、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 4 まとめ 以上、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1及び5に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1及び5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 ブレードの表面にバーブが形成された粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針であって、 前記バーブは、前記フェルト針の軸方向と平行に延設された角部に形成されており、 粘土状の塑性体を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる粘土状の塑性体の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されており、 前記バーブの入隅線は、前記バーブの幅方向の一方の端部から他方の端部に行くに従って、次第に針先から離れるように形成され、 前記入隅線は、直線で形成されていることを特徴とする、フェルト針。」 「【請求項5】 前記入隅線は、段階的に傾斜が変わる折れ線で形成されていることを特徴とする、請求項1記載のフェルト針。」 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1及び5に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由2(進歩性) 本件特許の請求項1及び5に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <取消理由通知(決定の予告)で通知した引用文献> 甲1:米国特許第3464097号明細書(申立人が提出した甲第1号証) 2 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての当審の判断 当審合議体は、上記取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由2によっては、本件発明1及び5に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)甲1及び甲1発明 ア 甲1の記載 甲1には以下の記載がある(翻訳は当審による)。 (ア)「Referring to FIGURE 1, a felting needle of the type embodying the invention is shown therein as comprising a crank 12 connected to a needle shank portion 14 at the uppermost portion thereof, a blade portion 16 connected to the lowermost portion of the shank 14 and a point 18 connected to the bottom portion of the blade 16. The blade portion 16 of the needle shown in FIGURE I is preferably triangular in section and includes a plurality of barbs 20 at the junction of the blade surfaces so that a blade portion having a triangular section, such as shown in FIGURE 4 and at 16a in FIGURE 6A, will have three sets of barbs, there being one set at each edge portion thereof. In the embodiment shown in FIGURE 1, each edge portion of the blade portion 16 is provided with three barbs per set with each of the barbs of each set preferably being offset relative to the barbs of each other set with respect to the longitudinal axis of the needle 10.」(第2欄第47行~同第63行) [翻訳:図1を参照すると、本発明を具体化するタイプのフェルト針が、その最上部で針のシャンク部14に接続されたクランク12、シャンク14の最下部に接続されたブレード部16、およびブレード16の底部に接続されたポイント18を含むものとして示されている。図1に示す針のブレード部16は、好ましくは断面が三角形であり、ブレード面の接合部に複数のバーブ20を含むため、図4および図6Aの16aに示すような三角形の断面を有するブレード部は、その各エッジ部に1セットずつ、3セットのバーブを有することになる。図1に示す実施形態では、ブレード部16の各エッジ部に、セットごとに3つのバーブが設けられ、各セットのバーブは、針10の縦軸に対して、他のセットのバーブに対してオフセットされていることが好ましい。] (イ)「Referring to FIGURES 2 and 3, enlarged views of a single barb 20 are shown in reference to a portion of the needle blade 16. The barb 20 includes a barb groove 22 formed in one edge 24 of the needle blade 16 and a point or kickup portion 26. It will further be seen in FIGURES 2 and 3 that substantially all the edges of the barb 20 are rounded so that no sharp edges are present which may act as a cutting agent for destroying the fibers engaged by the barb 20. It should be particularly noted that the bottom portion 28 of the barb groove is also rounded at the intersection of the point 26 and the bottom wall 30 of the barb groove 22. Further, the bottom portion 28 or the above-identified intersection has a radius or rounded portion 32 which preferably extends in the direction of the longitudinal axis of the needle and towards the point portion 18. More particularly, it may be said that the rounded portion 32 preferably extends in a direction substantially parallel to the axis of the groove 22.」(第2欄第64行~第3欄第12行) [翻訳:図2および図3を参照すると、ニードルブレード16の一部分に関して、単一のバーブ20の拡大図が示されている。バーブ20は、ニードルブレード16の1つのエッジ24に形成されたバーブ溝22と、先端またはキックアップ部分26とを含む。図2および図3ではさらに、バーブ20の実質的にすべてのエッジが丸みを帯びており、バーブ20に係合した繊維を破壊する切断剤として作用する可能性のある鋭いエッジが存在しないことがわかる。バーブ溝の底部28も、バーブ溝22先端26と底壁30との交差点で丸みを帯びていることに特に留意されたい。さらに、底部28または上記交差点には、好ましくは針の長手方向軸の方向に先端部分18に向かつて延びる半径または丸みを帯びた部分32がある。より具体的には、丸みを帯びた部分32は、溝22の軸と実質的に平行な方向に延びることが好ましいと言える。] (ウ)「FIGURES 7-9 illustrate two nevel barb configurations which may be produced with the method of the invention. Variations in barb configuration are often desirable for producing desired effects in the appearance of a felted fabric.」(第4欄第59行~同第65行) [翻訳:図7~9は、本発明の方法によって作製できる2種類のバーブ形状を示している。フェルト生地の外観に所望の効果を与えるためには、バーブ形状にバリエーションを持たせることが望ましい場合が多い。] (エ)「FIGURES 7 and 8 illustrate one other embodiment of the needle of the invention which may be formed by the method described above. In the embodiment of FIGURES 7 and 8 the blade portion 16', again is illustrated as having a triangular shape and the barbs 20' are formed in an edge surface 24' as in the embodiment described above. It will be seen from FIGURE 7, that at least one of the barbs 20' has a point portion 26' which is skewed or slanted relative to the longitudinal axis of the needle blade 16'. It should be, of course, understood that more than one of the needle barbs may be formed in this manner and may be skewed either to the right or the left. Forming a barb with a skewed point 26' may be relatively simply carried out by using the method of the invention by first forming the desired die configuration with a shape to fabricate the barb in the desired manner.」(第4欄第66行~第5欄第5行) [翻訳:図7および図8は、上述の方法によって形成され得る本発明の針の別の実施形態を示す。図7および図8の実施形態では、ブレード部16’は、やはり三角形を有するように示されており、バーブ20’は、上述の実施形態と同様に、エッジ面24’に形成されている。図7から、バーブ20’の少なくとも1つは、ニードルブレード16’の縦軸に対して斜めに傾斜した先端部26’を有することが分かる。もちろん、針バーブの1つ以上をこのように形成することができ、右または左に傾斜させることができることは理解されるべきである。斜めの先端26’を有するバーブの形成は、本発明の方法を使用することによって比較的簡単に実行することができ、まず、所望の方法でバーブを製造するための形状を有する所望のダイ構成を形成する。] (オ)「 [図:0001428987000001.jpg] 」 (カ)「 [図:0001428987000002.jpg] 」 (キ)「 [図:0001428987000003.jpg] 」 (ク)「 [図:0001428987000004.jpg] 」 (ケ)「 [図:0001428987000005.jpg] 」 イ 甲1の記載より明らかな事項 (ア)上記ア(ア)の「図1に示す針のブレード部16は、好ましくは断面が三角形であり、ブレード面の接合部に複数のバーブ20を含む」及び「図1に示す実施形態では、ブレード部16の各エッジ部に、セットごとに3つのバーブが設けられ、各セットのバーブは、針10の縦軸に対して、他のセットのバーブに対してオフセットされていることが好ましい。」の記載より、「ブレード部16の表面にバーブ20が形成された針10であ」ることは明らかである。そして図7で示される態様においても「ブレード部16’の表面にバーブ20’が形成された針であ」ることは明らかである。 (イ)上記ア(ア)の記載、図1及び図7より「前記バーブ20’は、前記針の軸方向と平行に延設されたブレード部16’の接合部の縁24’に形成されて」いることは明らかである。 (ウ)上記ア(エ)の「図7から、バーブ20’の少なくとも1つは、ニードルブレード16’の縦軸に対して斜めに傾斜した先端部26’を有することが分かる。」の記載及び図7より、「前記バーブ20’が前記ブレード部16’の接合部の縁24’の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されている」ことは明らかである。 (エ)上記ア(イ)に記載され、図3に図示された「部分32」は、ア(イ)の「バーブ溝の底部28も、バーブ溝22先端26と底壁30との交差点で丸みを帯びていることに特に留意されたい。さらに、底部28または上記交差点には、好ましくは針の長手方向軸の方向に先端部分18に向かって延びる半径または丸みを帯びた部分32がある。」の記載及び図3より、前記立ち上がり面と底壁30との境界線であることは明らかである。 ウ 甲1に記載の発明 上記ア及びイより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「ブレード部16’の表面にバーブ20’が形成された針であって、 前記バーブ20’は、前記針の軸方向と平行に延設されたブレード部16’の接合部の縁24’に形成されており、 前記バーブ20’が前記ブレード部16’の接合部の縁24’の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成された、針。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「ブレード部16’」、「バーブ20’」及び「針」は、本件発明1の「ブレード」、「バーブ」及び「フェルト針」に相当するから、甲1発明の「ブレード部16’の表面にバーブ20’が形成された針であ」ることは、本件発明1の「ブレードの表面にバーブが形成された粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針であ」ることと、「ブレードの表面にバーブが形成されたフェルト針であ」る限りにおいて一致する。 甲1発明の「ブレード部16’の接合部の縁24’」は、本件発明1の「角部」に相当するから、甲1発明の「前記バーブ20’は、前記針の軸方向と平行に延設されたブレード部16’の接合部の縁24’に形成されて」いることは、本件発明1の「前記バーブは、前記フェルト針の軸方向と平行に延設された角部に形成されて」いることに相当する。 また、甲1発明の「立ち上がり面と底壁との境界線である部分32’」は、本件発明1の「入隅線」に相当し、本件発明1の「立ち上がり面」は、「前記バーブの立ち上がり面」であるから、甲1発明の「前記バーブ20’が前記ブレード部16’の接合部の縁24’の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成され」ていることは、本件発明1の「前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されて」いることと、「前記バーブが前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されて」いる限りにおいて一致する。 以上より、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点1> 「ブレードの表面にバーブが形成されたフェルト針であって、 前記バーブは、前記フェルト針の軸方向と平行に延設された角部に形成されており、 前記バーブが前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されているフェルト針。」 <相違点1> 本件発明1では、フェルト針について、「粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針であ」り、バーブが角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されていることについて、「粘土状の塑性体を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる粘土状の塑性体の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されて」いるのに対して、甲1発明では、このような特定は有しない点。 <相違点2> 本件発明1では、「前記バーブの入隅線は、前記バーブの幅方向の一方の端部から他方の端部に行くに従って、次第に針先から離れるように形成され」ており、「前記入隅線は、直線で形成されている」のに対し、甲1発明では、このような特定は有しない点。 イ 判断 各相違点について検討する。 <相違点1>及び<相違点2>について 上記(1)イ(エ)のとおり、「部分32」は、立ち上がり面と底壁30との境界線であることは明らかであり、上記(1)ア(ク)の図7から、「部分32’」が、バーブ20’の幅方向の一方の端部と他方の端部の針先からの位置に違いがあることが看取されるものの、甲1発明の「バーブ20’」(図7及び8)については「図7~9は、本発明の方法によって作製できる2種類のバーブ形状を示している。フェルト生地の外観に所望の効果を与えるためには、バーブ形状にバリエーションを持たせることが望ましい場合が多い。」(上記(1)ア(ウ))という技術思想に基づくもので、「部分32’」に対して、バーブ20’の幅方向の一方の端部と他方の端部の針先からの位置に違いを生じさせることを特に意図したものではない。そして、甲1発明は「粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針」に関するものではなく、「粘土状の塑性体の流れが一方向に偏る」ことを指向するものでもない。そうすると、パンチングする対象によって、フェルト針に求められる機能や構成に違いがあることが技術常識であることを鑑みると、甲1発明のフェルト針を、粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。さらに、上記のとおり甲1発明は「粘土状の塑性体の流れが一方向に偏る」ことを指向するものではないことから、「前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる粘土状の塑性体の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成」すること、及びバーブ内側に入り込んだ固形物が排出されやすい構成である、「前記バーブの入隅線は、前記バーブの幅方向の一方の端部から他方の端部に行くに従って、次第に針先から離れるように形成」し、「前記入隅線は、直線で形成」すること(本件特許明細書【0024】~【0025】)は、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 小括 よって、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。 したがって、上記に示したことと同様に、本件発明5は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)申立人の主張について ア 甲1を主引用例とする進歩性についての申立人の主張 申立人は意見書にて、以下の甲7~11を提示し、本件発明1は甲1発明及び甲7~甲10に記載された事項に基いて、本件発明5は甲1発明及び甲5~甲11(甲5及び甲6は、後記第5の1<引用文献等一覧>に示す。)に記載された事項に基いて、当業者であれば容易に発明をすることができた旨主張する。 <意見書に添付し提示した引用文献等一覧> 甲7:国際公開第93/15246号(申立人が提出した甲第7号証) 甲8:米国特許第3913189号明細書(同甲第8号証) 甲9:米国特許第3972096号明細書(同甲第9号証) 甲10:米国特許第4131978号明細書(同甲第10号証) 甲11:米国特許第3844004号明細書(同甲第11号証) イ 申立人の主張についての当審の判断 甲7の第1頁第3行~同第8行、第4頁第31行~同第32行、第12頁第7行~同第12行及び第14頁第28行~第32行の記載より、甲7には、「ベントナイトのような粘土を鉱物繊維マットと混成してニードルパンチするフェルト針」が記載されている。 しかしながら上記(2)イにも示したとおり、甲1発明は「粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針」に関するものではなく、「粘土状の塑性体の流れが一方向に偏る」ことを指向するものではない。そして、パンチングする対象によって、フェルト針に求められる機能や構成に違いがあることが技術常識であることを鑑みると、甲1発明のフェルト針を、粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのものとすることは、甲7に示されるような「ベントナイトのような粘土を鉱物繊維マットと混成してニードルパンチするフェルト針」が公知であったとしても、当業者が容易に想到し得たことではない。 そして、このことは提示された他の証拠を参照しても同様である。 よって、申立人の主張は採用することはできない。 (5)まとめ 以上により、本件の請求項1及び5に係る発明は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 また、本件の請求項1に係る発明は甲1発明及び甲7~甲10に記載された事項に基いて、本件の請求項5に係る発明は甲1発明及び甲5~甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立書に記載の申立理由について 1 取消理由通知で採用しなかった申立理由の概要について 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1-1(甲1を引用例とする新規性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は甲1に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由1-2(甲1を主引用例とする進歩性) 本件特許の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由2-1(甲2を引用例とする新規性) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、甲2及び甲3から把握される本件特許出願前に公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第2号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (4)申立理由2-2(甲2を引用例とする進歩性) 本件特許の請求項5に係る発明は、甲2及び甲3から把握される本件特許出願前に公然実施された発明及び甲5又は甲6に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (5)申立理由3(明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 請求項1において、バーブの構成に関して、「固形物を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる固形物の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されている」と記載されているが、当該記載ではバーブの構成が明確でない。 <引用文献等一覧> 甲1:米国特許第3464097号明細書(上記甲1) 甲2: GROZ Beckert社の競合他社フェルト針記録簿(E-QKM Pruefbericht (当審注:「ue」は「u・ウムラウト」) Nr. Q-012-01-00. 0 Pruefauftrag(当審注:「ue」は「u・ウムラウト」) an Massstatistik(当審注:Maに続く「ss」は「エスツェット」) E-QKM) 、2001年1月11日,2001年1月12日(申立人が提出した甲第2号証) 甲3:宣誓供述書、Wladislaw Chrameew(GROZ Beckert社社員)、2024年2月15日(同甲第3号証) 甲4:米国特許第4065955号明細書(同甲第4号証) 甲5:西独国特許出願公開第2444865号明細書(同甲第5号証) 甲6:独国特許発明第2326909号明細書(同甲第6号証) 2 取消理由通知で採用しなかった申立理由についての当審の判断 (1)引用文献について ア 甲2、甲3及び公然実施発明 (ア)甲2について 甲2には以下の記載がある(翻訳は申立書添付の「甲第2号証(抄訳)」による)。 a「 [図:0001428987000006.jpg] 」 [翻訳: [図:0001428987000007.jpg] ] b「 [図:0001428987000008.jpg] 」 c「 [図:0001428987000009.jpg] 」 [翻訳: [図:0001428987000010.jpg] [図:0001428987000011.jpg] ] (イ)甲3について 甲3には以下の記載がある(翻訳は申立書添付の「甲第3号証(翻訳文)」及び「添付文書PPU1(抄訳)」を採用した。)。 a「 [図:0001428987000012.jpg] 」 [翻訳: [図:0001428987000013.jpg] ] b「 [図:0001428987000014.jpg] 」 [翻訳: [図:0001428987000015.jpg] ] c「 [図:0001428987000016.jpg] 」 [翻訳: [図:0001428987000017.jpg] ] d「 [図:0001428987000018.jpg] 」 [翻訳: [図:0001428987000019.jpg] ] e「 [図:0001428987000020.jpg] 」 f「 [図:0001428987000021.jpg] 」 (ウ)甲2及び甲3の採否について 甲2は、民間企業の内部資料であるが、その内容は一部黒塗りがなされているものの、具体的事実を示したものと認められ、民間企業の内部資料であるからといって直ちに信頼できないとすることはできない。したがって、甲2については、その記載から把握し得る事項の限りにおいて採用するに足るものと認める。 また甲3は、私人による宣誓供述書であるが、その内容は具体的内容を詳細に述べたものであり、私人の宣誓書であるからといって直ちに信頼できないとすることはできない。また、他に甲3が信頼できないとするに足る証拠が存在するわけでもない。したがって、甲3については、その記載から把握し得る事項の限りにおいて採用するに足るものと認める。 (エ)上記(ア)及び(イ)より明らかな事項 a 上記(ア)a及びc、並びに(イ)a、d及びeの記載より、Xian Juによって製造された形式「15×18×30×3 M333G 3xxx」の記号で示されるフェルト針(以下、「XianJuフェルト針」という。)は、試験が実施された2001年1月11日には、第三者が入手可能であったものと認められる。 b 上記(エ)aの事項及び上記(イ)bの記載より、「XianJuフェルト針」が、2001年1月11日以前に、公然実施されていたものであると認める。 c 上記(イ)c及びdより、上記(イ)e及びfは、上記(ア)cの項番4のフェルト針を示した写真であることは明らかであるから、上記(イ)eの写真より、上記(ア)cにおいて項番1~6が付され列挙されている「XianJuフェルト針」のうちの項番4(欠陥番号107)のフェルト針が、「ブレードの表面にバーブが形成されたフェルト針であって、前記バーブは、前記フェルト針の軸方向と平行に延設された角部に形成されて」いることは明らかである。そして、上記(イ)eの写真及び上記(イ)fの写真より、バーブが角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されていることが明らかである。 (オ)甲2及び甲3から把握される公然実施発明 上記(ア)、(イ)及び(エ)より、以下の「XianJuフェルト針」のうちの項番4のフェルト針の発明が公然実施されていたと認める(以下「実施発明」という。)。 「ブレードの表面にバーブが形成されたフェルト針であって、 前記バーブは、前記フェルト針の軸方向と平行に延設された角部に形成されており、 前記バーブが前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されている、フェルト針。」 イ 甲4について 甲4の図2には以下の技術事項が記載されている。 「入隅線が直線で形成されたバーブを有するフェルト針。」 ウ 甲5について 甲5の図3には以下の技術事項が記載されている。 「入隅線が段階的に傾斜が変わる折れ線で形成されたバーブを有するフェルト針。」 エ 甲6について 甲6の図3には以下の技術事項が記載されている。 「入隅線が段階的に傾斜が変わる折れ線で形成されたバーブを有するフェルト針。」 (2)申立理由1-1(甲1を引用例とする新規性)について 本件発明1と甲1発明を対比すると、上記第4の2(2)アで示した<相違点1>及び<相違点2>で相違する。 そして、上記第4の2(2)イで検討したとおり、<相違点1>及び<相違点2>は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は甲1発明ではない。 なお、請求項2~3は、本件訂正により削除された。 (3)申立理由1-2(甲1を主引用例とする進歩性)について 請求項4は、本件訂正により削除された。 (4)申立理由2-1(甲2を引用例とする新規性)について ア 対比 本件発明1と実施発明を対比すると、本件発明1と実施発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点2> 「ブレードの表面にバーブが形成されたフェルト針であって、 前記バーブは、前記フェルト針の軸方向と平行に延設された角部に形成されており、 前記バーブが前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されているフェルト針。」 <相違点3> 本件発明1では、フェルト針について、「粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針であ」り、バーブが角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されていることについて、「粘土状の塑性体を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる粘土状の塑性体の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されて」いるのに対して、実施発明では、このような特定は有しない点。 <相違点4> 本件発明1では、「前記バーブの入隅線は、前記バーブの幅方向の一方の端部から他方の端部に行くに従って、次第に針先から離れるように形成され」ており、「前記入隅線は、直線で形成されている」のに対し、実施発明では、このような特定は有しない点。 そして、上記<相違点3>及び<相違点4>は実質的な相違点である。 よって、本件発明1は実施発明ではない。 なお、請求項2~4は、本件訂正により削除された。 (5)申立理由2-2(甲2を引用例とする進歩性)について 本件発明5は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。 したがって、本件発明5と実施発明を対比すると、上記(4)で示した<相違点3>及び<相違点4>で少なくとも相違する。 以下、<相違点3>及び<相違点4>について検討する。 実施発明は「粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針」に関するものではなく、「粘土状の塑性体の流れが一方向に偏る」ことを指向するものではない。そして、「前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる粘土状の塑性体の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成」すること、及びバーブ内側に入り込んだ固形物が排出されやすい構成である、「前記バーブの入隅線は、前記バーブの幅方向の一方の端部から他方の端部に行くに従って、次第に針先から離れるように形成」し、「前記入隅線は、直線で形成」すること(本件特許明細書【0024】~【0025】)は、当業者が容易に想到し得たことではない。そして、このことは甲5及び甲6に記載の技術事項を参酌しても、同様である。 よって、本件発明5は、甲2及び甲3から把握される本件特許出願前に公然実施された発明及び甲5又は甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)申立人の意見書における主張(甲2を主引用例とする進歩性)について 申立人は意見書にて、本件発明1は実施発明及び甲7に記載された事項に基いて、本件発明5は実施発明並びに、甲3、甲5~甲7及び甲11に記載された事項に基いて、当業者であれば容易に発明をすることができた旨主張する。 しかしながら上記(5)にも示したとおり、実施発明は「粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針」に関するものではなく、「粘土状の塑性体の流れが一方向に偏る」ことを指向するものではない。そして、パンチングする対象によって、フェルト針に求められる機能や構成に違いがあることが技術常識であることを鑑みると、実施発明のフェルト針を、粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのものとすることは、上記第4の2(4)イに示したように甲7に「ベントナイトのような粘土を鉱物繊維マットと混成してニードルパンチするフェルト針」が記載されていたとしても、当業者が容易に想到し得たことではない。 そして、このことは提示された他の証拠を参照しても同様である。 よって、申立人の上記主張は採用することはできない。 (7)申立理由3(明確性要件)について 請求項に係る発明が明確に把握されるためには、請求項に係る発明の範囲が明確であること、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。 ここで、本件特許の請求項1の 「ブレードの表面にバーブが形成された粘土状の塑性体を繊維に混成してパンチングするためのフェルト針であって、 前記バーブは、前記フェルト針の軸方向と平行に延設された角部に形成されており、 粘土状の塑性体を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる粘土状の塑性体の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されており、 前記バーブの入隅線は、前記バーブの幅方向の一方の端部から他方の端部に行くに従って、次第に針先から離れるように形成され、 前記入隅線は、直線で形成されていることを特徴とする、フェルト針。」という記載は、フェルト針の構成を規定するものとして明確であり、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。 申立人が請求項1のバーブの構成に関して、「固形物を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる固形物の流れが一方向に偏るように、前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されている」と記載されているが、当該記載ではバーブの構成が明確でないと主張する点については、「フェルト針」の「前記バーブの立ち上がり面」について、「前記立ち上がり面が前記角部の延設方向に伸びる仮想中心面に対して非対称に形成されている」構成を有するものと把握することができ、明確である。また、本件訂正により、請求項1の「フェルト針」が「前記バーブの入隅線は、前記バーブの幅方向の一方の端部から他方の端部に行くに従って、次第に針先から離れるように形成され」る、及び「前記入隅線は、直線で形成されている」と特定されたため、「固形物を含む交絡対象に前記フェルト針を挿入したときに、前記バーブの立ち上がり面に押し付けられて生じる固形物の流れが一方向に偏るよう」な「フェルト針」がさらに明確となった。 よって、申立理由3は理由がない。 (8)まとめ 以上により、本件の請求項1に係る発明は、甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 また、本件の請求項5に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲5又は甲6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 そして、本件の請求項1に係る発明は、甲2及び甲3から把握される本件特許出願前に公然実施された発明ではないから、特許法第29条第1項第2号には該当せず、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 また、本件の請求項1に係る発明は、甲2及び甲3から把握される本件特許出願前に公然実施された発明及び甲7に記載された事項に基いて、本件の請求項5に係る発明は、甲2及び甲3から把握される本件特許出願前に公然実施された発明及び甲5又は甲6に記載された事項に基いて若しくは、甲2及び甲3から把握される本件特許出願前に公然実施された発明並びに、甲3、甲5~甲7及び甲11に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 さらに、本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び5の記載に不備はなく、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 なお、請求項2~4は本件訂正により削除されたため、請求項2~4に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1及び5に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、本件特許の請求項2~4は、本件訂正により削除されたため、請求項2~4に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700184

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