特許異議申立
2022-701049
共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体、ゴム組成物、及び空気入りタイヤ
- 審判番号
- 2022-701049
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-517013
- 登録番号
- 7082658
- 請求日
- 2022年10月24日
- 審決日
- 2023年06月15日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ブリヂストン
- 【権利者代理人】杉村 憲司
- 【権利者代理人】杉村 光嗣
- 【権利者代理人】齋藤 恭一
- 【権利者代理人】柿沼 公二
- 【権利者代理人】冨田 和幸
- 【異議申立人】藤央 弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 藤井 勲
- 審判官 小出 直也
- 分類
- P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.16 -YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条の2、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7082658号発明「共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体、ゴム組成物、及び空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7082658号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7082658号の請求項1及び4ないし6に係る特許を維持する。
特許第7082658号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7082658号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月13日(優先権主張 2018年(平成30年)5月1日 日本国)を国際出願日として出願人株式会社ブリヂストンにより出願されたものであって、令和4年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月8日に特許掲載公報が発行された。その後、同年10月24日に、特許異議申立人である藤央弁理士法人(以下「申立人」という。)により、「特許第7082658号の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた(以下、当該申立てを「申立て」という。)。
申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和5年 1月31日付け 取消理由通知
同年 3月27日提出 意見書及び訂正の請求(特許権者)
同年 3月30日付け 通知書(申立人宛て)
なお、申立人に対して、令和5年3月30日付け通知書により、訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。
第2 訂正の可否についての判断
1 訂正の内容
以下、当該訂正請求書により請求された訂正を「本件訂正」という。また、設定登録時の本件特許の明細書を「本件明細書」という。
本件訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は当審にて付与した。)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、当該請求項1に記載の「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」について、「前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位が、4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせであ」る旨の限定を加えるよう、訂正する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計に対する前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、50質量%以上である」旨の限定を加えるよう、訂正する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載の共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体。」とあるのを、「請求項1に記載の共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体。」に訂正する。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれかに記載の共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体を含む」とあるのを、「請求項1又は4に記載の共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体。」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~6について、請求項2~6は、請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1及び訂正事項2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無について
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」が式(I):
[図:0001401668000001.jpg]
[式中、Rはアルキル基を表す。]で示される芳香族ビニル単位であったものを、本件訂正後の請求項1では、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」について、式(I)で示される芳香族ビニル単位として、「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせ」であることを更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらない。
また、訂正事項1において、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」として「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせ」を特定しているところ、この特定に関しては、本件訂正前の請求項3や本件明細書の段落【0023】において記載されていることから、上述の「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」は本件明細書に開示されているものである。
よって、訂正事項1は、本件明細書に記載された事項であって、新規事項の追加に該当しない。
イ 訂正事項2
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1において、「前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計に対する前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、50質量%以上である」ことを、更に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらない。
また、訂正事項2において、「前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計に対する前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、50質量%以上であることを特定しているところ、この特定に関しては、本件明細書の段落【0024】において記載されていることから、上述の「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合」は本件明細書に開示されているものである。
よって、訂正事項1は、本件明細書に記載された事項であって、新規事項の追加に該当しない。
ウ 訂正事項3及び訂正事項4
訂正事項3は、請求項2を削除するものであり、訂正事項4は、請求項3を削除するものである。これらはいずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらない。
また、訂正前の請求項2、3を削除するものであるから、本件明細書に記載した事項の範囲内でされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
エ 訂正事項5
訂正事項5は、請求項4が引用する請求項を減らすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらない。
また、訂正前の請求項4が引用していた請求項のうち、上記ウにより削除された訂正前の請求項を除くものであるから、本件明細書に記載した事項の範囲内でされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
オ 訂正事項6
訂正事項6は、請求項5が引用する請求項を減らすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更に当たらない。
また、訂正前の請求項5が引用していた請求項のうち、上記ウにより削除された訂正前の請求項を除くものであるから、本件明細書に記載した事項の範囲内でされたものであり、新規事項の追加に該当しない。
3 独立特許要件の規定について
本件においては、本件訂正前の請求項1~6について特許異議の申立てがされているので、本件訂正に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
よって、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~請求項6に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、これらをまとめて、「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
共役ジエン単位と、式(I):
[図:0001401668000002.jpg]
[式中、Rはアルキル基を表す]で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位とを有し、任意に、前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位を有し、
ジビニルベンゼン単位、トリビニルベンゼン単位及びテトラビニルベンゼン単位を有さず、
前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であり、
ガラス転移温度が-65~-22℃であり、
前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位が、4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせであり、
前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計に対する前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、50質量%以上である、ことを特徴とする、共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
重量平均分子量が125,000~2,000,000である、請求項1に記載の共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体。
【請求項5】
請求項1又は4に記載の共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体を含むゴム成分と、充填剤と、加硫剤とを含有する、ことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、空気入りタイヤ。」
第4 特許異議申立書の申立理由と当審が通知した取消理由
1 特許異議申立書(以下「申立書」ということがある。)の申立理由
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1~6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
記
本件の請求項1~6に係る発明が、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及びアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であり」と規定されているところ、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」のみの含有割合における特定がなされておらず、本件特許の課題が解決し得ない範囲をも含むものである。
2 証拠方法
(1)申立人が、申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。
・甲第1号証:特開昭58-206614号公報
・甲第2号証:藤本勝也、「高分子物質のレジリエンスに関する研究」、日本ゴム協会誌 第34巻 第4号(1961)、第36頁~第43頁
・甲第3号証:特開2009-179754号公報
(以下、甲第1号証~甲第3号証をそれぞれ「甲1」~「甲3」という。)
3 当審が通知した令和5年1月31日付け取消理由通知の理由
(1)取消理由1、取消理由2(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)理由3(先願Bに基づく拡大先願)
本件特許の請求項1ないし6に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付した明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願Bの当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)当審が職権調査により発見した証拠方法
・科学研究費助成事業 研究成果報告書 平成30年5月30日現在、研究課題名(和文)モデルポリアルキルスチレン類を利用した分子構造と粘弾性パラメータの相関解析(https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-16K14079/16K14079seika.pdf)(以下、「参考文献1」という。)
・特開2016-125050号公報(以下、「引用文献A」という。)
・特願2018-62321号(特開2019-172806号;以下、「先願B」という。)
第5 当審の判断
1 取消理由1、取消理由2(甲1に基づく新規性・進歩性)について
取消理由1、取消理由2は、本件申立ての申立理由1と同じであるから、併せて検討する。
(1)証拠に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項及び甲1発明
(ア)甲1に記載された事項
甲1には、以下の記載がある。
「2.特許請求の範囲
(1)炭化水素溶媒中、エーテル又は第3級アミンの存在下で、有機リチウム開始剤を用いて得られる分岐状メチルスチレンブタジエン共重合体において、
(イ)分岐状共重合体の割合が少くとも20重量%であり、
(ロ)該共重合体の結合メチルスチレン含量が5~40重量%、
(ハ)該共重合体のブタジエン部分のビニル結合が30%以上、
であることを特徴とする分岐状メチルスチレンブタジエン共重合体。
(2)メチルスチレンが実質的にパラ-メチルスチレンからなる特許請求の範囲第1項記載の分岐状メチルスチレンブタジエン共重合体。」(第1頁左下欄第4行~同右下欄第2行)
「3.発明の詳細な説明
本発明は、分岐状メチルスチレンブタジエン共重合体に関し、さらに詳しくはヒステリシスロス、ウエツトスキツド抵抗、破壊強さの改良されたタイヤ用ゴムに適する分岐状メチルスチレンブタジエン共重合体に関する。
近年、自動車の低燃費化の要求と走行安全性の要求から自動車タイヤ用ゴムとしてヒステリシスロスが小さく、ウエツトスキツド抵抗の大きいゴム材料が望まれるようになつた。
・・・
本発明の目的はヒステリシスロスが小さく、ウエツトスキツド抵抗が大きくかつ破壊強さが改良された単一ゴム材料を提供することにある。
従来、分岐状のスチレンブタジエン共重合体は、分岐を含まない直鎖状のスチレンブタジエン共重合体に比べ、加工性、加硫物の破壊強度、およびヒステリシスロスにおいて改良されることは知られている。またスチレンブタジエン共重合体中の結合スチレン含量とブタジエン部分のビニル含量を一定の範囲にコントロールすることによつて、加硫物のヒステリシスロス、ウエツトスキツド抵抗などが改良できることは知られている。
本発明はこれら知見に加え、モノマーとしてスチレンの代りにメチルスチレンを用いることによつて共重合体の加硫物の性質はヒステリシスロス特性を損うことなくウエツトスキツド抵抗、破壊強さの点で優れるという知見に基くものである。」(第1頁右下欄第3行~第2頁右上欄第3行)
「なお、本発明の目的を阻害しない範囲でスチレンを重合体成分に導入することは、もちろん可能である。そのさいのスチレン含量は、メチルスチレン含量の半分以下である。」(第2頁右下欄第15行~第19行)
「本発明のメチルスチレンブタジエン共重合体は、通常の加硫ゴム用配合剤を加え、混練、加硫してタイヤトレツド、タイヤサイドウオールをはじめ防振ゴム、ゴルフボール用ゴム、ベルト、ホースその他工業用品等の用途に用いられる。」(第3頁左下欄第7行~第12行)
「実施例1,2,3 比較例1,2
内容積7lの反応器に窒素雰囲気下で第1表に示すように所定量のシクロヘキサン、1,3-ブタジエン、テトラヒドロフラン、p-メチルスチレン、スチレン、ビニルトルエン(p-メチルスチレン33.0%、m-メチルスチレン66.7%、o-メチルスチレン0.3%)を仕込み、40℃に調節した後、n-ブチルリチウムを添加し、40℃で1時間、重合を行なつた。次に1,3-ブタジエンを添加して10分間さらに重合を続けた後四塩化スズを添加して40℃30分間カツプリング反応を行なつた。
重合体は重合体溶液に2,6-ジターシヤリーブチル-p-クレゾール2.5gを添加後、スチームストリツピングにより脱溶媒し、110℃熱ロールで乾燥して得た。
重合体は第2表に示す配合に従つてブラベンダーとロールによつて混合、配合し145℃40分加硫を行なつた。
重合体の性質及び加硫物の性質を第3表に示す。
第3表の結果から実施例1,2,3の重合体は比較例2の重合体に比べ、ヒステリシスロスが小さく(反撥弾性が大きく)、引張強さ、引裂き強度が大きい。また、比較例1の重合体に比ベウエツトスキツド抵抗、引張強さ、引裂き強度の点で優れている。
[図:0001401668000003.jpg]
[図:0001401668000004.jpg]
[図:0001401668000005.jpg]
」(第3頁右下欄第7行~第5頁末行)
(イ)甲1発明
甲1の第1表、第2表を踏まえて実施例2に着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。
「内容積7lの反応器に窒素雰囲気下でシクロヘキサン2500g、1,3-ブタジエン345g、テトラヒドロフラン1.25g、p-メチルスチレン150gを仕込み、40℃に調節した後、n-ブチルリチウム0.335gを添加し、40℃で1時間、重合を行ない、次に1,3-ブタジエン5gを添加して10分間さらに重合を続けた後四塩化スズ0.2gを添加して40℃30分間カップリング反応を行なって、重合体溶液に2,6-ジターシヤリーブチル-p-クレゾール2.5gを添加後、スチームストリツピングにより脱溶媒し、110℃熱ロールで乾燥して得た重合体であって、ムーニー粘度(ML1+4 100℃)が62、結合メチルスチレン量が30重量%、ミクロ構造(%)であるシス/ビニル/トランスが20/45/35、共重合体中の分岐重合体の割合が55重量%である前記重合体。」(以下、「甲1発明」という。)
イ 甲2に記載された事項
甲2には、以下の記載がある。
「要旨 粘弾性の温度依存性をしらべる目的で、ブタジエン系重合体のレジリエンスを-70~250℃の温度範囲で測定した。ポリブタジエンのTgは-70℃で、部分的に結晶化していた。加硫ゴムの1次転移は約15℃でおこる。ブタジエン・スチレン共重合体のTgにはFoxの式が成立する。」(第246(36)頁第5行~第7行)
「3.5 共重合体のガラス化温度
Fox7)、Mandelkern11)、Wood12)らは共重合体のTgを、その組成の相対濃度の単調関数として一般式を導いている。Foxの式
[図:0001401668000006.jpg]
を、ブタジエン・スチレン共重合体に適用してTgを推定し、実測値と比較した。(表2、図10)
若干の誤差を考慮すれば、実測値は論理式によくあっていると云える。」(第256(40)頁左欄第9行~第17行)
「
[図:0001401668000007.jpg]
」(第256(40)頁中段)
「
[図:0001401668000008.jpg]
」(第256(40)頁右欄)
ウ 甲3に記載された事項
甲3には、以下の記載がある。
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのベーストレッドを構成するために用いられるベーストレッド用ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、低燃費性タイヤのベーストレッドとして好適に用いられる、特に低発熱性に優れたベーストレッド用ゴム組成物に関する。」
「【0005】
本発明は、特に低発熱性に優れるベーストレッド用ゴム組成物と、それを用いて得られるタイヤを提供することを目的とする。」
「【0025】
変性共役ジエンゴムを得るために用いる活性末端を有する共役ジエン重合体鎖は、その重量平均分子量が、50,000~1,500,000であることが好ましく、100,000~600,000であることがより好ましく、150,000~400,000であることが特に好ましい。」
「【実施例】
【0087】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0088】
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
〔重量平均分子量、分子量分布およびカップリング率〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下の通りである。
測定器 :HLC-8020(東ソー社製)
カラム :GMH-HR-H(東ソー社製)を二本を直列に連結した
検出器 :示差屈折計RI-8020(東ソー社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
〔スチレン単位含有量およびビニル結合含有量〕
1H-NMRにより測定した。
〔ムーニー粘度(ML1+4,100℃)〕
JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製)を用いて測定した。
〔ガラス転移温度〕
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製)を用いて、23℃から120℃まで昇温、120℃を10分間保持、-120℃まで降温(冷却速度100℃/分)、-120℃を10分間保持、23℃まで昇温(加熱速度10℃/分)の順で測定試料の温度を変化させ、オンセット値の2回平均値をガラス転移温度の測定値とした。
〔低発熱性〕
GABO社製粘弾性測定装置EPLEXORを用い、初期歪み0.5%、動的歪み1%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。この特性については、比較例1のサンプルの測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
【0089】
〔製造例1〕
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、1,3-ブタジエン600g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.10ミリモルを仕込んだ後、n-ブチルリチウムをシクロヘキサンと1,3-ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加し、さらに、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として8.8ミリモルを加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから20分経過後、1,3-ブタジエン400gを30分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は80℃であった。連続添加終了後、さらに15分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。この試料(活性末端を有する共役ジエン重合体鎖)について、重量平均分子量および分子量分布を測定した。これらの測定結果を表1に示す。少量の重合溶液をサンプリングした直後に、下記の式(VIII)で表されるポリオルガノシロキサンA0.29ミリモルを20重量パーセント濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して変性ブタジエンゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、変性ブタジエンゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性ブタジエンゴムIを得た。このゴムについて、重量平均分子量、分子量分布、カップリング率、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量、ムーニー粘度およびガラス転移温度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0090】
【化7】
[図:0001401668000009.jpg]
【0091】
【表1】
[図:0001401668000010.jpg]
【0092】
〔製造例2〕
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、1,3-ブタジエン600g、およびテトラメチルエチレンジアミン1.3ミリモルを仕込んだ後、n-ブチルリチウムをシクロヘキサンと1,3-ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加し、さらに、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として7.4ミリモルを加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから20分経過後、1,3-ブタジエン400gを30分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は80℃であった。連続添加終了後、さらに15分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。この試料(活性末端を有する共役ジエン重合体鎖)について、重量平均分子量および分子量分布を測定した。これらの測定結果を表1に示す。少量の重合溶液をサンプリングした直後に、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン1.1ミリモルを20重量パーセント濃度のシクロヘキサン溶液の状態で添加し、15分間反応させた後、さらに、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン5.2ミリモルを添加し、30分間反応させた後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して変性ブタジエンゴムを含有する重合溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、変性ブタジエンゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性ブタジエンゴムIIを得た。このゴムについて、重量平均分子量、分子量分布、カップリング率、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量、ムーニー粘度およびガラス転移温度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0093】
〔製造例3〕
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、スチレン60g、1,3-ブタジエン440g、およびテトラメチルエチレンジアミン2.1ミリモルを仕込んだ後、n-ブチルリチウムをシクロヘキサンと1,3-ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加し、さらに、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として7.3ミリモルを加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから10分経過後、1,3-ブタジエン400gを50分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は70℃であった。連続添加終了後、さらに15分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。この試料(活性末端を有する共役ジエン重合体鎖)について、重量平均分子量および分子量分布を測定した。これらの測定結果を表1に示す。少量の重合溶液をサンプリングした直後に、下記の式(IX)で表されるポリオルガノシロキサンB0.025ミリモルを20重量パーセント濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して変性スチレンブタジエン共重合ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、変性スチレンブタジエン共重合ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性スチレンブタジエン共重合ゴムIIIを得た。このゴムについて、重量平均分子量、分子量分布、カップリング率、スチレン単位含有量、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量、ムーニー粘度およびガラス転移温度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0094】
【化8】
[図:0001401668000011.jpg]
【0095】
〔製造例4〕
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン4000g、スチレン120g、1,3-ブタジエン480g、およびテトラメチルエチレンジアミン2.1ミリモルを仕込んだ後、n-ブチルリチウムをシクロヘキサンと1,3-ブタジエンとに含まれる重合を阻害する不純物の中和に必要な量を添加し、さらに、n-ブチルリチウムを重合反応に用いる分として7.1ミリモルを加え、50℃で重合を開始した。重合を開始してから10分経過後、スチレン30gと1,3-ブタジエン370gを50分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は70℃であった。連続添加終了後、さらに15分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、少量の重合溶液をサンプリングした。サンプリングした少量の重合溶液は、過剰のメタノールを添加して反応停止した後、風乾して、重合体を取得し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ分析の試料とした。この試料(活性末端を有する共役ジエン重合体鎖)について、重量平均分子量および分子量分布を測定した。これらの測定結果を表1に示す。少量の重合溶液をサンプリングした直後に、上記の式(VIII)で表されるポリオルガノシロキサンA0.12ミリモルを20重量パーセント濃度のキシレン溶液の状態で添加し、15分間反応させた後、次いで、N,N-ビス(トリメチルシリル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン4.5ミリモルを20重量パーセント濃度のシクロヘキサン溶液の状態で添加し、30分間反応させた後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して変性スチレンブタジエン共重合ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、変性スチレンブタジエン共重合ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより、溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の変性スチレンブタジエン共重合ゴムIVを得た。このゴムについて、重量平均分子量、分子量分布、カップリング率、スチレン単位含有量、ブタジエン単位部分のビニル結合含有量、ムーニー粘度およびガラス転移温度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。」
エ 参考文献1に記載された事項
参考文献1には、以下の記載がある。
「1.研究開始当初の背景
これまで数多くの高分子について粘弾性データの蓄積がなされ、分子構造と粘弾性パラメータ(絡み合い分子量、パッキング長、およびガラス転移温度など)の相関が議論されている。例えば、Fettersらによるパッキング長理論では数多くの高分子種についてパッキング長と絡み合い分子量の関係が求められ、その普遍性が報告されている。(Macromoleclues, 1999)」
「2.研究の目的
上記の研究背景を踏まえ、本研究では側鎖として炭素数の異なるn-アルキル基(C数:1~8)を持つ一連の4-n-アルキルスチレンを合成した。そしてこれらモノマーのリビングアニオン重合を行うことにより、単分散試料群の精密合成を行い、さらにそれら試料群を用いた粘弾性測定、ガラス転移温度測定を行うことにより分子構造と粘弾性パラメータ(特にガラス転移温度と絡み合い分子量)の相関関係を詳しく調査した。」
「3.研究の方法
本研究では、(1)2系列の単分散ポリ(n-アルキルスチレン)試料群の精密合成と(2)それらモデル試料群を用いた粘弾性測定、ならびにガラス転移温度測定が研究の二本柱となる。
(1)試料の合成
まず、Figure1に示すような一連の試料群を合成した。これらのモノマー合成は、Scheme1のように、いずれも4-ブロモスチレンのグリニャール試薬とn-アルキルブロマイドのカップリング反応を塩化銅リチウムを触媒として行い、合成した。また、合成されたモノマー類はScheme2にしたがい、高真空下、sec-ブチルリチウムを開始剤、溶媒をTHFとしてリビングアニオン重合により重合を行った。
[図:0001401668000012.jpg]
Figure 1 The molecular structure of the polymers used in this study.
Scheme 1. Synthesis of 4-n-alkylstyrenes.(m=2,3,4,6,8)
[図:0001401668000013.jpg]
Scheme 2. Synthesis of poly(4-n-alkyl styrene)s.
[図:0001401668000014.jpg]
(2)キャラクタリゼーション
モノマーの同定には、NMR、ならびにガスクロマトグラフィーを用いた。・・・ポリマー試料の分子量は少なくとも絡み合い分子量(Me)の5倍以上の分子量を有する高分子量試料まで調製した。」
「4.研究発表
合成した試料のうち、最も分子量の大きい試料の分子特性をTable1に示す。いずれの試料もMw>200k、DP>1000の高分子量体であり、かつMw/Mn≦1.1の狭い分子量分布を有する試料であることが確認された。
Table 1. Molecular characteristics of samples.
Polymer Mw Mw/Mn Tg(℃)
-------------------------
PC2St 362,000 1.03 86.2
PC3St 246,000 1.05 56.9
PC4St 464,000 1.05 31.7
PC6St 974,000 1.09 -2.7
PC8St 717,000 1.06 -20.6
-------------------------
Determined by MALS. 2)Determined by SEC. 3) Estimated from DSC.
まず各ポリマーのTgの分子量依存性を調べたところ、Tgと分子量の関係はFox-Floryの経験式により概ね既述できることが確認された。
Tg(Mn)=Tg,∞-X/Mn
ここでTg,∞は分子量無限のときのTg、Xは高分子固有の値である.その結果、Table1に示した分子量の最も高い試料のTgはほとんど分子量には依存しない値に達していると考えられる。Tgとアルキル炭素数の関係をFigure2に示す。
[図:0001401668000015.jpg]
Figure 2 Tgs of Poly(4-n-alkylstyrene)s.」
オ 引用文献Aに記載された事項
引用文献Aには、以下の記載がある。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体であって、
共役ジエン系モノマー単位と、ビニル芳香族炭化水素系モノマー単位とを含み、
前記ビニル芳香族炭化水素系モノマー単位は、スチレン系モノマー単位と、化学式(1)で表されるモノマー単位とを含み、
【化1】
[図:0001401668000016.jpg]
(式中、Rは、炭素数3~7のアルキル基である。)
前記スチレン系モノマー単位と前記化学式(1)で表されるモノマー単位との総和を100重量%として、前記スチレン系モノマー単位が5重量%~90重量%であり、前記化学式(1)で表されるモノマー単位が10重量%~95重量%であり、前記共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体のガラス転移温度が-17.6℃~-21.5℃である、共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体。
【請求項2】
前記スチレン系モノマー単位と前記化学式(1)で表されるモノマー単位との総和を100重量%として、前記スチレン系モノマー単位が20重量%~90重量%であり、前記化学式(1)で表されるモノマー単位が10重量%~80重量%である、請求項1に記載の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体。
【請求項3】
前記スチレン系モノマー単位と前記化学式(1)で表されるモノマー単位との総和を100重量%として、前記スチレン系モノマー単位が30重量%~80重量%であり、前記化学式(1)で表されるモノマー単位が20重量%~70重量%である、請求項1に記載の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体。
・・・
【請求項6】
前記化学式(1)で表されるモノマーが、4-tert-ブチルスチレンである、請求項1に記載の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体。
【請求項7】
前記共役ジエン系モノマー単位と前記ビニル芳香族炭化水素系モノマー単位との総和を100重量%として、前記ビニル芳香族炭化水素系モノマー単位が16重量%~26重量%である、請求項1に記載の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体。
【請求項8】
ビニル(1,2)構造が前記共役ジエン系モノマー単位の10%~90%を占めている、請求項1に記載の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体。
【請求項9】
変性剤と共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体の活性末端とが反応して得られる末端変性構造を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体。
・・・
【請求項12】
前記共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体のムーニー粘度が、48~65である、請求項9に記載の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体を含む、タイヤ。」
「【発明の概要】
【0004】
本発明は、共役ジエン-水素共重合体は、転がり抵抗と耐ウェットスキッド性とのバランスが良く、タイヤ製造への適用は、エネルギー節減における市場のニーズに合致したものであり、より優れた走行安全性を有している。」
「【0033】
本発明の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体は、重量平均分子量が400000~600000であることが好ましい。
・・・
【0039】
本発明の実施形態では、末端変性共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体のムーニー粘度は、48~65とすることができ、別の実施形態では、例えば51~63であり、又は53~61である。」
「【実施例】
【0045】
<実施例1>
まず、溶媒として800gのシクロヘキサンを反応槽に添加し、45℃に維持する。続いて、ミクロ構造調整剤として2,2-ジテトラヒドロフリルプロパンを反応槽に添加する。その後、高分子重合反応の開始剤として0.2gのn-ブチルリチウムを反応槽に添加する。ここで、開始剤に対するミクロ構造調整剤のモル比は実質的に約2:1である。続いて、40.3g(0.387モル)のスチレン及び4.46gの4-tert-ブチルスチレンと、168.3g(3.11モル)の1,3-ブタジエンとを反応槽に添加し、高分子重合反応を行う。高分子重合反応後、活性末端を有する共重合体を得ることができる。このときサンプリングし、抗酸化剤を添加して反応を終了させ、溶媒を除去した後に、本発明の共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体を得る。赤外(IR)分光法又は核磁気共鳴(NMR)分光法によって測定された、ブタジエンモノマー単位におけるシス型、トランス型及びビニル構造に占めるこの高分子のビニル(1,2)構造の割合は66.3%である。この高分子のビニル芳香族炭化水素モノマー単位は、共役ジエン系モノマー単位及びビニル芳香族炭化水素モノマー単位全体の約21重量%を占めていた。NMRによって測定された、この高分子におけるスチレンモノマー単位と4-tert-ブチルスチレンモノマー単位との割合は90:10(wt%)である。
【0046】
上記活性末端を有する共重合体に高分子型のジメチルポリシロキサン系変性剤(BY-16-876、Dow-corning社製)を添加した(変性剤の使用量は共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体100重量部に対して0.5重量部である)。最後に、抗酸化剤を用いて反応を終了させた。反応後に、アルコール類(メタノール、エタノール又はイソプロピルアルコール)を用いて析出するか、又は、水蒸気で溶媒を除去し、乾燥後に、末端変性共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体を得ることができた。
【0047】
<実施例2~9、比較例1及び2>
実施例2~9並びに比較例1及び2の製造方法は実施例1と同様であり、4-tert-ブチルスチレンの使用量に違いがある。なお、実施例1~9で製造したものは4-tert-ブチルスチレンが添加されている共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体及び末端変性共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体であり、比較例1は4-tert-ブチルスチレンなしの共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体及び末端変性共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体であり、比較例2はスチレンなしの共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体及び末端変性共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体である。各実施例及び比較例で製造された共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体及び末端変性共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体におけるスチレンモノマー単位及び4-tert-ブチルスチレンモノマー単位の重量百分率を表1に示している。
【0048】
次に、上記実施例1~9並びに比較例1及び2で製造された共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体及び末端変性共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体のガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度の測定は、示差走査熱量計(Differential scanning calorimeter)DSC2910(TA instruments社)を用いた。実施例1~9並びに比較例1及び2で製造された共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体及び末端変性共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体の試料3mg~5mgをアルミニウムトレーに置き、窒素雰囲気下において、窒素の流速80mL/分、温度上昇率20℃/分、走査温度範囲-40℃~200℃に制御し、ガラス転移温度は2回目の走査曲線で決定した。同様に、各実施例及び比較例のガラス転移温度を表1に示している。
【0049】
【表1】
[図:0001401668000017.jpg]
」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明と対比する。
(ア)甲1発明の「重合体」は、「1,3-ブタジエン」と「p-メチルスチレン」とをn-ブチルリチウムを重合開始剤として重合してなるものであるから、「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位と「p-メチルスチレン」に由来する構成単位とを有するものである。
ここで、本件発明1の「式(I)
[図:0001401668000018.jpg]
(当審注:以下、式(1)及びその説明は省略する。)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族単位」は、さらに「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせであ」ることが定義されていることから、甲1発明の「p-メチルスチレン」に由来する構成単位と、本件発明1の「式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」とは、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)」である限りにおいて一致する。
そうすると、甲1発明の「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位と、「p-メチルスチレン」に由来する構成単位とを有する「共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体」と、本件発明1の「共役ジエン単位」と、「式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」であって、「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせ」である「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」を有する「共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体」とは、「共役ジエン単位」と、「アルキルベンゼン系芳香族単位(α)」とを有する「共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体」である限りにおいて一致する。
(イ)甲1発明は、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位」を有さないものであるから、本件発明1における、「任意に、前記アルキルベンゼン系芳香族単位以外の芳香族ビニル単位を有」するという、発明特定事項を満たしている。
(ウ)甲1発明の「p-メチルスチレン」に由来する構成単位は30重量%含まれるものであることと、本件発明1の「前記アルキルベンゼン系芳香族単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であ」ることとは、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)及び前記アルキルベンゼン系芳香族単位(α)以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%である」限りにおいて一致する。
(エ)甲1発明の「重合体」が、「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位と「p-メチルスチレン」に由来する構成単位とから構成されるものであるから、「ジビニルベンゼン単位、トリビニルベンゼン単位及びテトラビニルベンゼン単位を有さ」ないことは明らかである。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「共役ジエン単位と、式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)とを有し、任意に、前記アルキルベンゼン系芳香族単位(α)以外の芳香族ビニル単位を有し、
ジビニルベンゼン単位、トリビニルベンゼン単位及びテトラビニルベンゼン単位を有さず、
前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%である、ことを特徴とする、共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。
<相違点1-1>
共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体のガラス転移温度が、本件発明1では、「-65~-22℃であ」るのに対し、甲1発明では、不明である点
<相違点1-2>
アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)が、本件発明1では、「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせ」であるのに対し、甲1発明では、「p-メチルスチレン単位」である点
<相違点1-3>
アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)以外の芳香族ビニル単位の合計に対する前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(α)の割合が、本件発明1では、50質量%以上であるのに対し、甲1発明では、30質量%である点
イ 判断
事案に鑑み、上記相違点1-2から検討する。
本件発明1では、式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位として、「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせ」(以下、「本件発明1のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」という。)からなることが特定されているのに対し、甲1発明では、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位が「p-メチルスチレン単位」であることから、相違点1-2は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明ではない。
ついで、相違点1-2の容易想到性について、さらに検討する。
甲1には、分岐状メチルスチレンブタジエン共重合体であって、従来のスチレンブタジエン共重合体にかえて、分岐状メチルスチレンブタジエン共重合体を用いることによって共重合体の加硫物の性質はヒステリシスロス特性を損なうことなくウェットスキッド抵抗、破壊強さの点で優れることが記載されているものの、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位として、メチルスチレン以外は記載されていない。
ここで、甲1発明のメチルスチレン単位は、「本件発明1のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」に該当しないものであるし、甲1には、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位として「本件発明1のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」が記載されていないものであるから、該「本件発明1のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」を用いようとする動機付けがないものである。
さらに、取消理由1、取消理由2を検討する際に、甲2、甲3、参考文献1、引用文献Aを用いたところ、甲2、甲3には、上記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位として「本件発明1のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」が記載されていないし、参考文献1には、共役ジエン単位との共重合体については記載されていないし、引用文献Aには、本件発明1と同様の共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体が記載されているものの、該共重合体のガラス転移温度が本件発明1と重複しないものであるから、これらに接した当業者が、甲1発明に「本件発明1のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」を適用しようとすることは想定しがたいものといえる。
そうすると、相違点1-2に係る構成、つまり「本件発明1のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
してみると、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明ではない。さらに、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明4~6について
本件発明4~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらの発明も、本件発明1について上記(2)で述べたのと同様に、甲1に記載された発明ではないし、甲1に記載された発明及び甲1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 取消理由3(先願Bに基づく拡大先願)について
(1)証拠に記載された事項等
ア 先願Bに記載された事項及び先願B発明1、先願B発明2
(ア)先願Bに記載された事項
先願Bの当初明細書等には、次の記載がある。
「【請求項1】
共役ジエン単量体単位と、下記一般式(1)で表される直鎖アルキル置換芳香族ビニル単量体の単位とを含む共役ジエン系ゴム。
【化7】
[図:0001401668000019.jpg]
(上記一般式(1)中、R1~R5は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、R1~R5のうち少なくとも1つは、炭素数3以上の直鎖アルキル基である。)
【請求項2】
前記直鎖アルキル置換芳香族ビニル単量体の単位の含有割合が、0.5~35.0重量%である請求項1に記載の共役ジエン系ゴム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の共役ジエン系ゴムを製造する方法であって、
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物および前記一般式(1)で表される直鎖アルキル置換芳香族ビニル単量体を含む単量体混合物を重合する工程を備える共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカとを含有するゴム組成物。
【請求項5】
架橋剤をさらに含有する請求項4に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項7】
請求項6に記載のゴム架橋物を含むタイヤ。」
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系ゴムに関し、より詳しくは、シリカなどの充填剤を配合した際における加工性に優れ、かつ、低発熱性、ウエットグリップ性、および耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与えることができる、共役ジエン系ゴムに関する。」
「【0077】
本発明のゴム架橋物は、その優れたウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、ウエットグリップ性、低発熱性および耐摩耗性に優れることから、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができ、トレッド用途に最適である。」
「【実施例】
【0078】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0079】
[重量平均分子量、分子量分布]
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、得られたチャートに基づいて求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定機:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC-8220」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH-HR-H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0080】
[芳香族ビニル単量体単位含有量およびビニル結合含有量]
芳香族ビニル単量体単位の含有量、およびビニル結合の含有量は、FT-NMR装置(ブルカー・バイオスピン社製、製品名「ADVANCEIII 500」)を用いて、1H-NMRにより測定した。なお、本測定により測定される芳香族ビニル単量体単位の含有量は、スチレン単位と、アルキル置換スチレン単位との合計の含有量である。
【0081】
[アルキル置換スチレン単位含有量]
アルキル置換スチレン単位の含有量は、FT-NMR装置(ブルカー・バイオスピン社製、製品名「ADVANCEIII 500」)を用いて13C-NMRにより測定した。
【0082】
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]
架橋性ゴム組成物のムーニー粘度は、JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製、製品名「SMV-300」)を用いて測定した。ムーニー粘度が低いほど、加工性に優れる。
【0083】
[シリカ分散性]
架橋性ゴム組成物中におけるシリカ分散性は、架橋性ゴム組成物を用い、粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、製品名「RPA-2000」)により、60℃、1Hzの条件で、動的歪み1%および動的歪み10%における貯蔵弾性率G’を測定し、動的歪み1%における貯蔵弾性率G’(1%)と動的歪み10%における貯蔵弾性率G’(10%)との差分(ΔG’=G’(1%)-G’(10%))を算出することにより求めた。得られた差分ΔG’について、比較例3を基準サンプルとして100とする指数で示した。この指数が小さいほど、シリカなどの充填剤の分散性に優れるため、加工性に優れる。
【0084】
[低発熱性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、25分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を得た。そして得られた試験片について、ティー・エイ・インスツルメント社製ARES-G2を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。このtanδの値について、比較例3を基準サンプルとして100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際の低発熱性に優れる。
【0085】
[ウエットグリップ性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、25分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を得た。そして得られた試験片について、ティー・エイ・インスツルメント社製ARES-G2を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。このtanδの値について、比較例3を基準サンプルとして100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際のウエットグリップ性に優れる。
【0086】
[耐摩耗性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、30分間プレス架橋することで、外径50mm、内径15mm、厚さ10mmの試験片を作製し、この試験片について、FPS摩耗試験機(商品名「AB-2012」、上島製作所製)を用い、路面温度40℃、荷重10N、スリップ率15%で測定した。得られた摩耗速度(mm/1000km)について、比較例3を基準サンプルとして100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際の耐摩耗性に優れる。
【0087】
[合成例1]
削り屑状マグネシウム22gおよび活性化剤として少量のヨウ素を添加した無水ジエチルエーテル125mlに対し、4-(クロロメチル)スチレン125gを無水ジエチルエーテル375mlに溶解させたものを0℃で2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、1時間撹拌した後、室温で30分間温め、さらに1時間撹拌して4-ビニルベンジルマグネシウムクロライド溶液を得た。次に、1-ブロモヘプタデカン428gを無水テトラヒドロフラン0.8Lに加え撹拌した溶液に、上記にて得られた4-ビニルベンジルマグネシウムクロライド溶液を0℃で滴下した。滴下終了後、溶液を室温下で12時間攪拌した。次いで、得られた反応混合物にメタノール25mLを加えてクエンチし、次いで、ろ過した後、減圧濃縮した。さらに、混合物を0℃で250mLの塩酸(1M)を用いて1回洗浄した後、250mLの酢酸エチルで3回抽出した。続いて、得られた有機層を250mLの水で2回洗浄した後、250mLのブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。さらに、単離した生成物を減圧下で蒸留し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、無色油状物である4-n-オクタデシルスチレン(4位がn-オクタデシル基で置換されてなるスチレン)を得た。
【0088】
[合成例2]
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン770g、テトラメチルエチレンジアミン0.94mmol、1,3-ブタジエン70.0g、スチレン30.0g、および4-n-オクチルスチレン(4位がn-オクチル基で置換されてなるスチレン、東京化成工業社製)5.0gを仕込んだ後、n-ブチルリチウム0.39mmolを加え、60℃で重合を開始した。重合を開始してから60分経過後、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤(製品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴム(A-1)を得た。13C-NMR測定の結果、4-n-オクチルスチレン単位に由来するシグナルが観測され、共役ジエン系ゴム(A-1)中に4-n-オクチルスチレン単位が導入されていることが確認された。また、共役ジエン系ゴム(A-1)の重量平均分子量(Mw)は419,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量は31.3重量%、ビニル結合の含有量は53.3重量%、4-n-オクチルスチレン単位の含有量は3.6重量%であった。
【0089】
[合成例3]
4-n-オクチルスチレンに代えて、合成例1で得られた4-n-オクタデシルスチレン5.0gを用いたこと以外は、合成例2と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴム(A-2)を得た。得られた共役ジエン系ゴム(A-2)の重量平均分子量(Mw)は444,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.13であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量は30.5重量%、ビニル結合の含有量は57.0重量%、4-n-オクタデシルスチレン単位の含有量は3.7重量%であった。
【0090】
[合成例4]
スチレンの使用量を30.0gから10.0gに、また4-n-オクチルスチレンの使用量を5.0gから25.0gに変更した以外は、合成例2と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴム(A-3)を得た。得られた共役ジエン系ゴム(A-3)の重量平均分子量(Mw)は411,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.16であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量は29.8重量%、ビニル結合の含有量は55.3重量%、4-n-オクチルスチレン単位の含有量は19.5重量%であった。
【0091】
[合成例5]
4-n-オクチルスチレンを使用しなかった以外は、合成例2と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴム(A-4)を得た。得られた共役ジエン系ゴム(A-4)の重量平均分子量(Mw)は395,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量は30.4重量%、ビニル結合の含有量は56.2重量%であった。
【0092】
[合成例6]
4-n-オクチルスチレンに代えて、4-メチルスチレン(東京化成工業社製)1.0gを用いたこと以外は、合成例2と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴム(A-5)を得た。得られた共役ジエン系ゴム(A-5)の重量平均分子量(Mw)は400,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.08であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量は29.2重量%、ビニル結合の含有量は58.0重量%、4-メチルスチレン単位の含有量は0.8重量%であった。
【0093】
[合成例7]
4-n-オクチルスチレンに代えて、4-tert-ブチルスチレン(4位がtert-ブチルで置換されてなるスチレン、東京化成工業社製)3.0gを用いたこと以外は、合成例2と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴム(A-6)を得た。得られた共役ジエン系ゴム(A-6)の重量平均分子量(Mw)は406,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.09であり、芳香族ビニル単量体単位の含有量は29.2重量%、ビニル結合の含有量は57.2重量%、4-tert-ブチルスチレン単位の含有量は2.2重量%であった。
【0094】
[実施例1]
容量250mlのバンバリーミキサーを用いて、合成例2で得られた共役ジエン系ゴム(A-1)を85.1部と、油展スチレンブタジエンゴム(商品名「NIPOL NS460」、ZSエラストマー社製)42.5部とを素練りした。次いで、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ソルベイ社製、窒素吸着比表面積(BET法):160m2/g)46.4部およびシランカップリング剤(商品名「Si69」、エボニック社製)5.6部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。この混練物に、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ソルベイ社製、窒素吸着比表面積(BET法):160m2/g)23.2部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3.5部、ステアリン酸(商品名「ビーズステアリン酸つばき」、日油社製)2.3部、および老化防止剤(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2.3部を添加し、3分間混練して、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。この混練物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練し、その後、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールを用いて、得られた混練物と、硫黄1.9部および架橋促進剤(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ-G」、大内新興化学工業社製)1.6部と、ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.6部との混合物)3.2部とを混練した後、シート状の架橋性ゴム組成物を取り出した。得られた架橋性ゴム組成物を用いて、ムーニー粘度、シリカ分散性、低発熱性、ウエットグリップ性、および耐摩耗性の測定・評価を行なった。結果を表1に示す。
【0095】
[実施例2]
共役ジエン系ゴム(A-1)に代えて、合成例3で得られた共役ジエン系ゴム(A-2)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
[実施例3]
共役ジエン系ゴム(A-1)に代えて、合成例4で得られた共役ジエン系ゴム(A-3)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
[比較例1]
共役ジエン系ゴム(A-1)に代えて、合成例5で得られた共役ジエン系ゴム(A-4)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
[比較例2]
共役ジエン系ゴム(A-1)に代えて、合成例6で得られた共役ジエン系ゴム(A-5)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
[比較例3]
共役ジエン系ゴム(A-1)に代えて、合成例7で得られた共役ジエン系ゴム(A-6)を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
【表1】
[図:0001401668000020.jpg]
【0101】
表1に示すように、共役ジエン単量体単位と、上記一般式(1)で表される直鎖アルキル置換芳香族ビニル単量体の単位とを含む共役ジエン系ゴムは、シリカや架橋剤などを配合して架橋性ゴム組成物とした場合における、ムーニー粘度が低く、シリカの分散性に優れ、そのため、加工性に優れるものであり、さらには、これを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および耐摩耗性に優れるものであった(実施例1~3)。
一方、上記一般式(1)で表される直鎖アルキル置換芳香族ビニル単量体の単位を含有しない場合や、上記一般式(1)で表される直鎖アルキル置換芳香族ビニル単量体の単位の代わりに、4-メチルスチレン単位や4-tert-ブチルスチレン単位を含有する場合には、シリカや架橋剤などを配合して架橋性ゴム組成物とした場合における、ムーニー粘度が高く、シリカの分散性も不十分であり、さらには、これを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、および耐摩耗性に劣るものであった(比較例1~3)。」
(イ)先願B発明1及び先願B発明2
先願Bの当初明細書等の合成例2に着目すると、先願Bの当初明細書等には次の発明が記載されていると認める。
「攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン770g、テトラメチルエチレンジアミン0.94mmol、1,3-ブタジエン70.0g、スチレン30.0g、および4-n-オクチルスチレン(4位がn-オクチル基で置換されてなるスチレン、東京化成工業社製)5.0gを仕込んだ後、n-ブチルリチウム0.39mmolを加え、60℃で重合を開始し、重合を開始してから60分経過後、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得、この溶液に、老化防止剤(製品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して得られた、固形状の共役ジエン系ゴムであって、重量平均分子量(Mw)が419,000、芳香族ビニル単量体単位の含有量が31.3重量%、ビニル結合の含有量が53.3重量%、4-n-オクチルスチレン単位の含有量が3.6重量%である共役ジエン系ゴム。」(以下、「先願B発明1」という。)
また、先願Bの当初明細書等の合成例7に着目すると、先願Bの当初明細書等には次の発明が記載されていると認める。
「攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン770g、テトラメチルエチレンジアミン0.94mmol、1,3-ブタジエン70.0g、スチレン30.0g、および4-t-ブチルスチレン(4位がtert-ブチル基で置換されてなるスチレン、東京化成工業社製)3.0gを仕込んだ後、n-ブチルリチウム0.39mmolを加え、60℃で重合を開始し、重合を開始してから60分経過後、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得、この溶液に、老化防止剤(製品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して得られた、固形状の共役ジエン系ゴムであって、重量平均分子量(Mw)が406,000、芳香族ビニル単量体単位の含有量が29.2重量%、ビニル結合の含有量が57.2重量%、4-tert-ブチルスチレン単位の含有量が2.2重量%である共役ジエン系ゴム。」(以下、「先願B発明2」という。)
イ 本件発明1について その1
(ア)先願B発明1との対比
本件発明1と先願B発明1と対比する。
a 先願B発明1の「共役ジエン系ゴム」は、「1,3-ブタジエン」、「スチレン」、及び「4-n-オクチルスチレン」とをn-ブチルリチウムを重合開始剤として重合してなるものであるから、「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位、「スチレン」に由来する構成単位、及び「4-n-オクチルスチレン」に由来する構成単位とを有するものである。
ここで、本件発明1の「式(1)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」は、さらに「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせであ」ることが定義されていることから、先願B発明1の「4-オクチルスチレン」に由来する構成単位と、本件発明1の「式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」とは、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)」である限りにおいて一致する。
そうすると、甲1発明の「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位、「スチレン」に由来する構成単位、「4-n-オクチルスチレン」に由来する構成単位とを有する「共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体」と、本件発明1の「共役ジエン単位」、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位」、「式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」であって、「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせ」である「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」を有する「共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体」とは、「共役ジエン単位」、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)以外の芳香族ビニル単位」と、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)」とを有する「共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体」である限りにおいて一致する。
b 先願B発明1の「共役ジエン系ゴム」は、「スチレン」に由来する構成単位、「4-n-オクチルスチレン」に由来する構成単位を、それぞれ31.3重量%、3.6重量%で含有するものであるから、「スチレン」に由来する構成単位と「4-n-オクチルスチレン」に由来する構成単位の合計は34.9重量%である。
そうすると、「スチレン」に由来する構成単位及び「4-n-オクチルスチレン」に由来する構成単位の合計の割合が34.9重量%であることと、本件発明1の「前記アルキルベンゼン系芳香族単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であ」ることとは、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であ」る限りにおいて一致する。
c 先願B発明1の「共役ジエン系ゴム」が、「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位、「スチレン」に由来する構成単位、及び「4-n-オクチルスチレン」に由来する構成単位とから構成されるものであるから、「ジベニルベンゼン単位、トリビニルベンゼン単位及びテトラビニルベンゼン単位を有さ」ないことは明らかである。
そうすると、本件発明1と先願B発明1とは、
「共役ジエン単位と、式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)以外の芳香族ビニル単位とを有し、
ジビニルベンゼン単位、トリビニルベンゼン単位及びテトラビニルベンゼン単位を有さず、
前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%である、ことを特徴とする、共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体のガラス転移温度が、本件発明1では、「-65~-22℃である」のに対し、先願B発明1では、不明である点
<相違点2-2>
アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)が、本件発明1では、「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせ」であるのに対し、先願B発明1では、「4-n-オクチルスチレン単位」である点
<相違点2-3>
アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)以外の芳香族ビニル単位の合計に対する前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(β)の割合が、本件発明1では、50質量%以上であるのに対し、先願B発明1では、約10質量%(=3.6/(31.3+3.6)×100)である点
(イ)判断
事案に鑑み、上記相違点2-2から検討する。
本件発明1では、式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位として、「4-tert-ブチルスチレン単位、4-イソブチルスチレン単位及び4-シクロヘキシルスチレン単位から選択される一種単独または二種以上の組み合わせ」(以下、「本件発明1のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」という。)からなることが特定されているのに対し、先願B発明1では、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位が「4-n-オクチルスチレン単位」であることから、相違点2-2は実質的な相違点である。
そうすると、本件発明1は、先願Bの当初明細書等に記載された発明ではない。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、先願Bの当初明細書等に記載された発明ではない。
(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、先願Bの当初明細書等に記載された発明ではない。
(エ)本件発明4~6について
本件発明4~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらの発明も、本件発明1と同様に、先願Bの当初明細書等に記載された発明ではない。
ウ 本件発明1について その2
(ア)先願B発明2との対比
本件発明1と先願B発明2と対比する。
a 先願B発明2の「共役ジエン系ゴム」は、「1,3-ブタジエン」、「スチレン」、及び「4-tert-ブチルスチレン」とをn-ブチルリチウムを重合開始剤として重合してなるものであるから、「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位、「スチレン」に由来する構成単位、及び「4-tert-ブチルスチレン」に由来する構成単位とを有するものである。
そして、先願B発明2の「4-tert-ブチルスチレン単位」は、本件発明1の「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位」である「4-tert-ブチルスチレン単位」に相当する。
そうすると、先願B発明2の「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位、「スチレン」に由来する構成単位、及び「4-tert-ブチルスチレン」に由来する構成単位は、それぞれ、本件発明1の「共役ジエン単位」、「アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位」、及び「式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族単位」に相当する。
してみれば、先願B発明2の「共役ジエン系ゴム」は、本件発明1の「共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体」に相当する。
b 先願B発明2における、「スチレン」に由来する構成単位、「4-tert-ブチルスチレン」に由来する構成単位を、29.2重量%、2.2重量%で含有するものであるから、「スチレン」に由来する構成単位と「4-tert-ブチルスチレン」に由来する構成単位の合計は31.4重量%であり、本件発明1の「前記アルキルベンゼン系芳香族単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であ」ることに相当する。
c 先願B発明2の「共役ジエン系ゴム」が、「1,3-ブタジエン」に由来する構成単位、「スチレン」に由来する構成単位、及び「4-tert-ブチルスチレン」に由来する構成単位とから構成されるものであるから、「ジベニルベンゼン単位、トリビニルベンゼン単位及びテトラビニルベンゼン単位を有さ」ないことは明らかである。
そうすると、本件発明1と先願B発明2とは、
「共役ジエン単位と、式(I)で示される芳香族ビニル単位であるアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位とを有し、
ジビニルベンゼン単位、トリビニルベンゼン単位及びテトラビニルベンゼン単位を有さず、
前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位が、4-tert-ブチルスチレン単位であり、
前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%である、ことを特徴とする、共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3-1>
共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体のガラス転移温度が、本件発明1では、「-65~-22℃である」のに対し、先願B発明2では、不明である点
<相違点3-2>
アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計に対する前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、本件発明1では、50質量%以上であるのに対し、先願B発明2では、約7質量%(=2.2/(31.4+2.2)×100)である点
(イ) 判断
事案に鑑み、上記相違点3-2から検討する。
アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計に対する前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、本件発明1では、50質量%以上であるのに対し、先願B発明2では、約7質量%であることから、相違点3-2は実質的な相違点である。
そうすると、本件発明1は、先願Bの当初明細書等に記載された発明ではない。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、先願Bの当初明細書等に記載された発明ではない。
(ウ) 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、先願Bの当初明細書等に記載された発明ではない。
(エ) 本件発明4~6について
本件発明4~6は、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、これらの発明も、本件発明1と同様に、先願Bの当初明細書等に記載された発明ではない。
3 取消理由通知書において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3に記載のとおりである。
(3)本件発明の課題
本件明細書の段落【0007】によると、本件発明の解決しようとする課題は、「低燃費性及びウェットグリップ性のバランスに優れるゴム組成物を得ることができる共重合体を提供すること、低燃費性及びウェットグリップ性のバランスに優れるゴム組成物、並びに、低燃費性及びウェットグリップ性のバランスに優れる空気入りタイヤを提供すること」であると認められる。
(4)サポート要件の判断
本件発明1では、共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体において、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であって、かつ、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及びアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計に対するアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、50質量%以上であることが特定されている。
そこで、共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体中の、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及びアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計量、及び該合計量中のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、それぞれ特定の数値範囲とすることによって、本件発明の課題を解決するものであるかを検討する。
まず、本件明細書には、以下の記載がある。
本件明細書の段落【0008】には、スチレン-ブタジエンゴム等の共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体の構造に着目して、スチレン等の芳香族ビニルに代え、アルキル基を有する嵩高い芳香族ビニル誘導体を所定の割合で導入することで得られる共重合体が、低燃費性を良好に保持しつつ、高いウェットグリップ性を発現できることを発見したこと、同【0015】には、本実施形態の共重合体は、上記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び上記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であることを一特徴とすること、同【0024】には、本実施形態の共重合体において、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び芳香族ビニル単位の合計に対するアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合は、50質量%以上であることが好ましいこと、上記割合が50質量%以上であることにより、ウェットグリップ性をより効果的に向上させることができることが記載されている。
そして、実施例の表1には、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位(4-tert-ブチルスチレン単位)が100質量%(アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外を含まないこと)であって、該アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位を28質量%又は36質量%である共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体を用いたゴム組成物とすることで、低燃費性とウェットグリップ性のバランスに優れることが理解できる。そうすると、本件発明1は、共役ジエン-芳香族ビニル系共重合体中のアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及び前記アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計の割合が27~50質量%であることに加えて、アルキルベンゼン系芳香族ビニル単位及びアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位以外の芳香族ビニル単位の合計に対するアルキルベンゼン系芳香族ビニル単位の割合が、50質量%以上であることで、本件発明の課題を解決することができるものと認められる。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件発明の課題を解決できるといえるから、本件発明1に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
また、本件発明4~6は、本件発明1を直接的または間接的に引用するものであるから、同様の理由によりサポート要件に適合する。
よって、当該異議申立ての理由には理由がない。
第6 まとめ
以上のとおり、本件特許に対する訂正は適法であるから、これを認める。
また、本件の請求項2、3に係る特許に対しての申立人からの特許異議の申立ては、請求項2、3が訂正により削除され、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下する。
そして、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、4~6に係る特許を取り消すことはできない。
他に本件請求項1、4~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701049