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特許異議申立

2021-700062

ポリプロピレン樹脂組成物及びその製造方法、二軸延伸フィルム及びその製造方法、並びにフィルムコンデンサ用キャパシタフィルム

審判番号
2021-700062
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-510097
登録番号
6725496
請求日
2021年01月20日
審決日
2022年09月22日
公報発行日
2022年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社プライムポリマー
  • 【権利者代理人】宮崎 昭夫
  • 【権利者代理人】緒方 雅昭
  • 【異議申立人】栗 暢行
  • 【異議申立人】吉田 文雄
審判長/審判官
  • 審判長 近野 光知
  • 審判官 土橋 敬介
  • 審判官 小出 直也
分類
P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.16 -YAA(C08F) / P1651.536-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F) / P1651.55 -YAA(C08F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第184条の12第2項、特許法第120条の5第1項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項、特許法第36条第6項
データ出所
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特許第6725496号発明「ポリプロピレン樹脂組成物及びその製造方法、二軸延伸フィルム及びその製造方法、並びにフィルムコンデンサ用キャパシタフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6725496号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第6725496号の請求項1、3~10に係る特許を維持する。 特許第6725496号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許異議の申立ての経緯 特許第6725496号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)は、平成28年3月30日の国際出願(特願2017-510097号、優先権主張 平成27年3月31日、日本国(JP)2件。以下、「本件出願」といい、当該優先権主張の日を「本件優先日」という。)であって、令和2年6月29日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和2年7月22日である。)。 その後、令和3年1月20日に、本件特許の請求項1~3、8及び9に係る特許に対して、特許異議申立人である栗暢行(以下、「申立人A」という。)により、特許異議の申立てがされ、また、令和3年1月21日に、本件特許の請求項1~10に係る特許に対して、特許異議申立人である吉田文雄(以下、「申立人B」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。 手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 1月20日 特許異議申立書(申立人A) 同年 同月21日 特許異議申立書(申立人B) 同年 6月10日付け 取消理由通知書 同年 8月13日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 9月 2日付け 通知書(申立人A及びBあて) 同年10月 8日 意見書(申立人B) 令和4年 1月27日付け 取消理由通知書(決定の予告) 同年 3月28日 意見書・訂正請求書(特許権者) 同年 4月 5日付け 通知書(申立人A及びBあて) なお、令和4年4月5日付け通知書に対して申立人A及びBからは意見書の提出はなかった。 2 証拠方法 (1)申立人Aが提出した証拠方法は、以下のとおりである。 ・甲第1号証 John C.Chadwick 外6名著、「Influence of Ziegler-Natta Catalyst Regioselectivity on Polypropylene Molecular Weight Distribution and Rheological and Crystallization Behavior」、Macromolecules Vol.37 No.26、2004年、第9722~9727頁 ・甲第2号証 ネロ・パスクイーニ編、横山裕 外1名 翻訳監修 「新版 ポリプロピレンハンドブック」、日刊工業新聞社 2012年9月28日 初版1刷発行、第21頁 ・甲第3号証 国際公開第2013/111779号 ・参考文献1 MITSUYOSHI FUJIYAMA 外2名著、「Rheological Properties of Polypropylenes with Different Molecular Weight Distribution Characteristics」、Journal of Applied Polymer Science、Vol.84、2002年、第2128~2141頁 ・参考文献2 特表2008-542460号公報 (以下、「甲第1号証」~「甲第3号証」を「甲1A」~「甲3A」といい、「参考文献1」~「参考文献2」を「参1A」~「参2A」という。) (2)申立人Bが提出した証拠方法は、以下のとおりである。 ・甲第1号証 特開2015-201610号公報(特願2014-132997号の公開特許公報、出願日 平成26年6月27日、発行日 平成27年11月12日) ・甲第2号証 特表2005-534761号公報 ・甲第3号証 特開2004-175932号公報 ・甲第4号証 特開2006-143975号公報 ・甲第5号証 再公表特許WO2013/105552号 ・甲第6号証 再公表特許WO2014/065331号 ・甲第7号証 特表2014-518306号公報 ・甲第8号証 特開平8-336884号公報 ・甲第9号証 特表2010-501712号公報 ・甲第10号証 High Purity PP for Capacitor Filmのカタログ、大韓油化のウエブページに掲載、2020年10月27日(印刷日)(http://www.kpic.co.kr/hp/en/product/polymer/pol_grp.asp?pm_cd=1411) ・甲第11号証 Announcement KPIC was awarded World-class product award 2009、大韓油化のウエブページに掲載、2020年10月27日(印刷日)(http://www.kpic.co.kr/hp/en/cs/cs_noticeView.asp?item_no=2000000016&page=1) ・甲第12号証 High Purity PP for Capacitor Film YUHWA POLYPRO 5014L HPTのカタログ、大韓油化のウエブページに掲載、2020年10月27日(印刷日)(http://www.kpic.co.kr/hp/en/product/polymer/pol_grade.asp?grade=5014L HPT&pm_cd1411) ・甲第13号証 High Purity PP for Capacitor Film YUHWA POLYPRO 5014L HPT-1のカタログ、大韓油化のウエブページに掲載、2020年10月27日(印刷日)(http://www.kpic.co.kr/hp/en/product/polymer/pol_grade.asp?grade=5014L HPT-1&pm_cd1411) ・甲第14号証 High Purity PP for Capacitor Film YUHWA POLYPRO 5014L HPT-Hのカタログ、大韓油化のウエブページに掲載、2020年10月27日(印刷日)(http://www.kpic.co.kr/hp/en/product/polymer/pol_grade.asp?grade=5014L HPT-H&pm _cd1411) ・甲第15号証 High Purity PP for Capacitor Film YUHWA POLYPRO 5014L HPT-Rのカタログ、大韓油化のウエブページに掲載、2020年10月27日(印刷日)(http://www.kpic.co.kr/hp/en/product/polymer/pol_grade.asp?grade=5014L HPT-R&pm_cd1411) ・甲第16号証 本件出願の優先基礎出願(特願2015-72149号)の明細書及び特許請求の範囲 ・甲第17号証 本件出願の優先基礎出願(特願2015-72150号)の明細書及び特許請求の範囲 (以下、「甲第1号証」~「甲第17号証」を「甲1B」~「甲17B」という。) 第2 訂正の適否についての判断 特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和4年3月28日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1~10について訂正することを求めた(以下「本件訂正」といい、また、本件設定登録時の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件明細書等」という。)。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1にある「以下の要件(1)~(4)を満たすポリプロピレン樹脂組成物」の後に、「(ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く)」を加入し(以下「訂正事項1-1」という。)、また、「(2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930以上である。」とあるのを、「(2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。」に訂正する(以下「訂正事項1-2」という。)。 (2)訂正事項2 訂正前の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3に「請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」とあるのを、「請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」に訂正する。 (4)訂正事項4 訂正前の請求項4に「請求項1から3のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」とあるのを、「請求項1又は3に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」に訂正する。 (5)訂正事項5 訂正前の請求項5に「請求項1から4のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」とあるのを、「請求項1、3又は4に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」に訂正する。 (6)訂正事項6 訂正前の請求項6に「請求項1から5のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」とあるのを、「請求項1、3、4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物。」に訂正する。 (7)訂正事項7 訂正前の請求項7に「請求項1から5のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物」とあるのを、「請求項1、3、4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物」に訂正する。 (8)訂正事項8 訂正前の請求項8に「請求項1から6のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物」とあるのを、「請求項1、3、4、5又は6に記載のポリプロピレン樹脂組成物」に訂正する。 (9)訂正事項9 訂正前の請求項9に「請求項1から6のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物」とあるのを、「請求項1、3、4、5又は6に記載のポリプロピレン樹脂組成物」に訂正する。 (10)訂正事項10 訂正前の請求項10に「請求項1から6のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物」とあるのを、「請求項1、3、4、5又は6に記載のポリプロピレン樹脂組成物」に訂正する。 (11)一群の請求項 訂正事項1~10に係る訂正前の請求項1~10について、請求項2~10はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1-1による訂正は、ポリプロピレン樹脂組成物から特定の組成物を除く訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 訂正事項1-2による訂正は、ペンタッドアイソタクティック分率の上限を0.999と限定するから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項1-1による訂正は、訂正前の請求項1におけるポリプロピレン樹脂組成物において、特定のポリプロピレン樹脂組成物を除く訂正であるから、実質上特許請求の範囲の拡張・変更に該当せず、また、新規事項の追加に当たらないことは明らかである。 訂正事項1-2による訂正に関して、本件明細書等の【0023】には、「本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物の、13C-NMRを用いて測定したアイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)は・・・、好ましくは0.930~0.999であり」と記載されているから本件明細書等に記載した事項の範囲内であり新規事項の追加に当たらず、また、実質上特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、請求項2を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更 訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲の拡張・変更に該当せず、また、新規事項の追加に当たらないことは明らかである。 (3)訂正事項3~10について 訂正事項3~10による訂正は、それぞれの請求項が引用する請求項のうち、請求項2の引用を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲の拡張・変更に該当せず、また、新規事項の追加に当たらないことは明らかである。 (4)独立特許要件について 本件においては,訂正前の全ての請求項1~10について特許異議の申立てがされているので,特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1~10による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。 第3 特許請求の範囲の記載 上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6725496号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1~10に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明10」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の明細書を「本件明細書」という。) 「【請求項1】 以下の要件(1)~(4)を満たすポリプロピレン樹脂組成物(ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く): (1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。 (2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。 (3)Mnが4万以上であり、Mw/Mnが7.0~10.0である。 (4)Mzが93万~140万であり、Mz/Mwが3.2~5.0である。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 以下の要件(5)を満たす請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。(5)角周波数ωにおける貯蔵弾性率G’と、角周波数ωにおける損失弾性率G”とから求められる緩和時間G’/G”/ωが、ω=0.01ラジアン/秒において4~14秒である。 【請求項4】 以下の要件(6)を満たす請求項1又は3に記載のポリプロピレン樹脂組成物。(6)灰分含有量が50質量ppm以下である。 【請求項5】 以下の要件(7)を満たす請求項1、3又は4に記載のポリプロピレン樹脂組成物。(7)塩素含有量が10質量ppm以下である。 【請求項6】 過酸化物により処理されている請求項1、3、4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物。 【請求項7】 請求項1、3、4又は5に記載のポリプロピレン樹脂組成物の製造方法であって、ポリプロピレン樹脂組成物の原料を過酸化物により処理する工程を含むポリプロピレン樹脂組成物の製造方法。 【請求項8】 請求項1、3、4、5又は6に記載のポリプロピレン樹脂組成物を、延伸面倍率(縦×横)が30~80倍で延伸させて得られる二軸延伸フィルム。 【請求項9】 請求項1、3、4、5又は6に記載のポリプロピレン樹脂組成物を、延伸面倍率(縦×横)が30~80倍で延伸する工程を含む、二軸延伸フィルムの製造方法。 【請求項10】 請求項1、3、4、5又は6に記載のポリプロピレン樹脂組成物を含むフィルムコンデンサ用キャパシタフィルム。」 第4 特許異議の申立ての理由と当審が通知した取消理由 1 申立人Aによる特許異議の申立ての理由の概要 (1)申立理由A1(新規性) 訂正前の請求項1~3に係る発明は、本件優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、請求項1~3に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由A2(進歩性) 訂正前の請求項8、9に係る発明は、本件優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1Aに記載された発明及び甲3Aに記載された事項に基いて、本件優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項8、9に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 2 申立人Bによる特許異議申立理由の概要 (1)申立理由B1(拡大先願) 訂正前の請求項1~10に係る発明は、本件特許の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた特許出願(特願2014-132997号、甲1B)の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下、「先願明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、上記特許出願に係る上記の発明をした者が本件出願の発明者と同一の者ではなく、また本件出願の時にその出願人と上記特許出願の出願人とが同一の者でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 よって、請求項1~10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (2)申立理由B2(甲1Bを主引例とする新規性(優先権主張の効果が及ばない場合)) 訂正前の請求項1、3~10に係る発明は、本件出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、請求項1、3~10に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (3)申立理由B3(甲1Bを主引例とする進歩性(優先権主張の効果が及ばない場合)) 訂正前の請求項1、3~10に係る発明は、本件出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1Bに記載された発明に基いて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1、3~10に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (4)申立理由B4(甲2Bを主引例とする進歩性(優先権主張の効果が及ばない場合)) 訂正前の請求項1、3~10に係る発明は、本件出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲2Bに記載された発明及び甲1Bに記載された事項に基いて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1、3~10に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (5)申立理由B5(甲3Bを主引例とする進歩性) 訂正前の請求項1~10に係る発明は、本件優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲3Bに記載された発明並びに甲5B又は甲2Bに記載された事項に基いて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1~10に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (6)申立理由B6(甲4Bを主引例とする進歩性) 訂正前の請求項1~10に係る発明は、本件優先日前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲4Bに記載された発明及び甲5B又は甲2Bに記載された事項に基いて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1~10に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 (7)申立理由B7(新規事項) 令和1年7月10日付けでした手続補正は、概略、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用する同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 よって、訂正前の請求項1~10に係る発明の特許は、同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し取り消されるべきものである。 記 上記手続補正後の請求項1における「Mnが4万以上であり」との規定に対して、当初明細書等には実施例1~4のMn値(4.8万、4.6万、4.0万、4.1万)が離散的に記載されているに過ぎず、これらと比べて大きな値(例えば5万あるいは20万)が実質的に記載されているとはいえない。 (8)申立理由B8(サポート要件) 訂正前の特許請求の範囲の請求項1~10の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、概略、下記の点で発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 よって、訂正前の請求項1~10に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 発明の詳細な説明には本件発明の課題を解決できるMnの範囲について何も説明されておらず、実施例において4.1万~4.8万の4つのポリプロピレン樹脂組成物のMn値が記載されているに過ぎない。そして、実施例と比べて相当大きなMn値(例えば20万のようなMn値)を有する場合においても、実施例と同様に上記課題を解決できることを当業者が理解できるとはいえない。 (9)申立理由B9(明確性要件) 訂正前の特許請求の範囲の請求項1~10の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、概略、下記の点で明確であるとはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものではない。 よって、訂正前の請求項1~10に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。 記 本件発明で規定する各要件のうち「Mn」の数値範囲には上限がなく、例えばMnが10万のときには、本件発明1で特定されるMw/Mn及びMz/Mwの数値範囲から計算されるMzは224万~500万でなければならないことになる。 このように、本件発明は実施不可能な範囲を含んでいることが明らかであり、技術的な矛盾を含んでいるから、不明確である。 3 当審が通知した取消理由の概要 (1)令和3年6月10日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。 ア 取消理由1(新規性) 請求項1~10に係る発明は、本件出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、請求項1~10に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 イ 取消理由2(進歩性) 請求項1~10に係る発明は、本件出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1Bに記載された発明に基いて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、請求項1~10に係る発明の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 ウ 取消理由3(新規事項) 令和1年7月10日付けでした手続補正は、概略、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第184条の12第2項の規定により読み替えて適用する同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 よって、請求項1~10に係る発明の特許は、同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1号に該当し取り消されるべきものである。 記 上記手続補正後の請求項1における「Mnが4万以上であり」との特定は、上限の特定がなく無制限と解される。そこで当初明細書等の記載をみると、Mnの値については実施例1~4に4.0万~4.8万の場合の記載があるが、4.8万を超えることは記載されているとはいえない。 (2)令和4年1月27日付け取消理由通知(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 ア 取消理由4(拡大先願) 令和3年8月13日提出の訂正請求書による訂正後の請求項1、3~10に係る発明は、その出願の優先権主張日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた特許出願(特願2014-132997号、甲1B)の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 よって、請求項1、3~10に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 第5 本件明細書並びに各甲号証及び参考文献に記載された事項 1 本件明細書に記載された事項 本件明細書には、以下の事項が記載されている。 「【発明が解決しようとする課題】 ・・・ 【0007】 本発明は、押出し特性が良好であり、フィルムにした際に外観が良好であり、かつ厚みのムラが少なく、力学的特性のバランスに優れ、高い耐熱性を示すポリプロピレン樹脂組成物を提供することを目的とする。」 「【0021】 [ポリプロピレン樹脂組成物] 本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、以下の要件(1)~(3)を満たす。本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物が以下の要件(1)~(3)を満たすことにより、押出し特性が良好であり、フィルムにした際に外観が良好であり、かつ厚みのムラが少なく、力学的特性のバランスに優れ、高い耐熱性を示す。すなわち、本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、製膜性、機械物性、耐熱性に優れる。また、前記ポリプロピレン樹脂組成物は、以下の要件(4)~(7)を満たすことが好ましい。 【0022】 (要件(1)) 本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物の、ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)は1~10g/10分であり、好ましくは1.5~8.0g/10分であり、より好ましくは2.0~5.0g/10分であり、更に好ましくは2.5~4.5g/10分である。該MFRが1~10g/10分の範囲内であるとき、押出性、延伸性が良好である。一方、該MFRが1g/10分未満である場合、成形時の樹脂圧の上昇によりフィルムの成形が困難となり、かつ、延伸が容易でない。また、該MFRが10g/10分を超えると、フィルムの延伸時に破断が生じやすい。これは、延伸応力が不足していることが原因と考えられる。 【0023】 (要件(2)) 本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物の、13C-NMRを用いて測定したアイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)は0.930以上であり、好ましくは0.930~0.999であり、より好ましくは0.940~0.995であり、更に好ましくは0.950~0.990であり、特に好ましくは0.960~0.985である。該mmmm分率が0.930未満では、結晶性が低いため所望の力学的物性が得られない。また、高い絶縁破壊電圧を有するフィルムコンデンサ用キャパシタフィルムが得られない。これは、mmmm分率が低いため、電気を通しやすい非晶部が多いことが原因と推定される。一方、該mmmm分率が0.999以下であることにより、延伸時におけるボイドの発生を抑制でき、所望の力学的物性が得られやすい。 【0024】 なお、mmmm分率は、A.zambelliらのMacromolecules,8,687(1975)に示された帰属により定められた値であり、13C-NMRを使用して測定される分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示している。具体的には、mmmm分率は以下の式で表される。 【0025】 mmmm分率=(21.7ppmでのピーク面積)/(19~23ppmでのピーク面積)。 【0026】 (要件(3)) 後述する方法によりGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定されるMzは、z平均分子量と言われ、Mw(重量平均分子量)よりもさらに分子量の高い領域に関する情報を与えるものである。本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物のMzは60万~140万であり、好ましくは70万~140万であり、より好ましくは80万~135万であり、更に好ましくは95万~135万である。該Mzが60万~140万の範囲内であるとき、押出性、原反形成性が良好である。該Mzが60万未満であると、樹脂の粘度が不足して成形時にネッキングが生じ、原反の成形ができない。また、該Mzが140万を超えると、押出成形時に押出量の低下が見られ、原反の外観が不良となり、結果として良好な延伸フィルムを得ることができない。 【0027】 また、本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物の、分子量分布を示すMwとMn(数平均分子量)との比(Mw/Mn)は6.5~14.0であり、好ましくは6.6~12.0であり、より好ましくは6.8~10.0であり、更に好ましくは7.0~8.0である。該Mw/Mnが6.5~14.0の範囲内であるとき、延伸性が良好である。該Mw/Mnが6.5未満であると、厚み精度の良好なフィルムが得られない。また、該Mw/Mnが14.0を超えると、樹脂内部での粘度差が大きく、シートを延伸する時に破断が生じやすくなる。また延伸後の残存応力が高くなり、熱収縮率が大きくなる。なお、Mz、MwおよびMnは後述する方法により測定した値である。 【0028】 (要件(4)) 本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物のMzとMwとの比(Mz/Mw)は、好ましくは2.0~5.0であり、より好ましくは2.5~4.5であり、さらに好ましくは3.0~4.0である。該Mz/Mwが2.0以上であることにより、良好な延伸性が得られる。また、該Mz/Mwが5.0以下であることにより、押出特性、原反外観および厚み精度が良好な延伸フィルムが得られる。」 「【0032】 本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレンを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことがさらに好ましい。本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、ポリプロピレンからなってもよい。」 「【実施例】 【0083】 以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。実施例、比較例において各物性は以下のように測定した。 【0084】 (1)メルトフローレート(MFR) MFRは、ASTM D 1238に準拠して、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。 【0085】 (2)アイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率) mmmm分率は、A.zambelliらのMacromolecules,8,687(1975)に示された帰属に基づき、下記条件で13C-NMRを用いて測定した。なお、mmmm分率は以下の式で表される値である。 【0086】 mmmm分率=(21.7ppmでのピーク面積)/(19~23ppmでのピーク面積) <測定条件> 装置:JNM-Lambada400(商品名、日本電子(株)製) 分解能:400MHz 測定温度:125℃ 溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=7/4(質量比) パルス幅:7.8μsec パルス間隔:5sec 積算回数:2000回 シフト基準:TMS=0ppm モード:シングルパルスブロードバンドデカップリング。 【0087】 (3)緩和時間(G’/G”/ω(τ)) 粘弾性測定装置(レオロジカ社製)を用いて、以下の条件で測定した。 【0088】 試料:φ25mm、厚さ1mmの円板をプレス成形機にて作製 (230℃、981N(100kgf)にて3分間加圧後、30℃、981N(100kgf)にて3分間冷却) 測定条件:温度175℃、歪み5%、測定角周波数10-2~102s-1。 【0089】 (4)エチレン含有量 プロピレン系重合体中のエチレンから導かれる単位の含有量は、13C-NMRスペクトルのチャートを用いて算出した。すなわち、プロピレン系重合体中のエチレンから導かれる単位の含有量は、まず、ポリマー(Polymer)1988年、第29巻、p.1848に記載された方法により、ピークの帰属を決定し、次にマクロモレキュールズ(Macromolecules)1977年、第10巻、p.773に記載された方法により、プロピレン系重合体中のエチレンから導かれる単位の含有量を算出した。 【0090】 (5)灰分含有量 試料100gを磁性ルツボに入れ、電熱器上で加熱して該試料を燃焼させた。さらに、該磁性ルツボを800℃の電気炉に30分間入れ、該試料を完全灰化させた。該磁性ルツボをデシケーター中で1時間冷却した後、精密天秤で灰分の質量を0.1mg単位まで測定し、灰分含有量を算出した。本測定の検出限界は、1ppmである。 【0091】 (6)塩素含有量 試料0.8gを、燃焼装置(三菱化成社製)を用いてアルゴン/酸素気流下で、400~900℃で燃焼した。その後、燃焼ガスを超純水で捕捉し、濃縮した後の試料液について、DIONEX-DX300型イオンクロマト装置(商品名、日本ダイオネック(株)製)、および陰イオンカラムAS4A-SC(商品名、日本ダイオネック(株)製)を用いて、塩素含有量を測定した。なお、本測定の検出限界は、1ppmである。 【0092】 (7)Mz、Mw、Mn、Mw/Mn、Mz/MwおよびMz/Mn GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を使用して以下の条件で測定した。 【0093】 測定装置:150CVtype(商品名、Waters社製) 試料濃度:7.5mg/4ml カラム:Shodex AD-806ms(商品名、昭和電工(株)製) 測定温度:135℃ 溶媒:o-ジクロロベンゼン ポリスチレン換算 得られたクロマトグラムを解析することで、Mz、Mw、Mn、Mw/Mn、Mz/MwおよびMz/Mnを算出した。ユニバーサルキャリブレーション法により、ポリスチレン換算の値を算出した。GPCクロマトグラムのベースラインは、溶出曲線の立ち上がる保持時間を起点とし、分子量1000に相当する保持時間を終点とした。 【0094】 (8)厚み精度2σ 評価用の二軸延伸フィルムについて、MD方向に5ヶ所、TD方向に6ヶ所、合計30ヶ所の厚みを測定し、その標準偏差(σ)を求め、2σを厚み精度の指標とした。 【0095】 (9)引張弾性率(MD、TD) 評価用の二軸延伸フィルムを幅10mm、長さ150mmの短冊状に切出し、JIS K6781に準拠し、チャック間距離100mmで長さ方向に5mm/分の速度で試験を行い、引張弾性率(MD、TD)を測定した。 【0096】 (10)熱収縮率(MD、TD) 評価用の二軸延伸フィルムを幅10mm、長さ150mmの短冊状に切出し、距離100mmの間隔で評点を記載した。120℃オーブン中に15分間放置した後に評点の間隔を計測(l(mm))し、熱収縮率を以下の式より算出した。 【0097】 熱収縮率(%)=100-l。 【0098】 (11)押出吐出量 以下の条件にて試料を押し出した際の吐出量を測定した。 【0099】 押出機:35mmφシート成形機 押出機温度:250℃ スクリュー回転数:120rpm。 【0100】 (12)原反外観 原反の外観を以下の基準で目視にて評価した。 ◎:外観が全体的に均一であり、厚みムラも殆どない。 ○:厚みムラは殆どないが、外観が一部不均一である。 △:外観が一部不均一であり、厚みムラがある。 ×:外観が全体的に不均一であり、厚みムラがある。 【0101】 〔実施例1〕 (1)固体触媒の製造 内容積2リットルの高速撹拌装置(商品名:TKホモミクサーM型、特殊機化工業製)内を十分窒素置換した。その後、該装置に精製デカン700ml、塩化マグネシウム10g、エタノール24.2gおよびレオドールSP-S20(商品名、花王(株)製、ソルビタンジステアレート)3gを入れた。この懸濁液を撹拌しながら昇温し、120℃にて800rpmで30分間撹拌した。次いで、該懸濁液を、沈殿物が生じないように高速撹拌しながら、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブを用いて、予め-10℃に冷却された精製デカン1リットルを張り込んである2リットルのガラスフラスコ(攪拌機付)内に移した。移液により生成した固体を濾過し、精製n-ヘプタンで十分洗浄することにより、塩化マグネシウム1モルに対してエタノールが2.8モル配位した固体状付加物を得た。 【0102】 前記固体状付加物をデカンで懸濁状にして、マグネシウム原子に換算して23ミリモルの前記固体状付加物を、-20℃に保持した四塩化チタン100ml中に、攪拌下、導入して混合液を得た。該混合液を5時間かけて80℃に昇温した。温度が80℃に達したところで、3,6-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル(シス体、トランス体混合物)を、前記固体状付加物のマグネシウム原子1モルに対して0.085モルの割合の量で添加し、40分間かけて110℃まで昇温した。温度が110℃に到達したところで、更にシクロヘキサン1,2-ジカルボン酸ジイソブチル(シス体、トランス体混合物)を、前記固体状付加物のマグネシウム原子1モルに対して0.0625モルの割合の量で添加し、攪拌しながら90分間110℃で保持することにより、これらを反応させた。 【0103】 前記反応終了後、熱濾過にて固体部を採取した。該固体部を100mlの四塩化チタンにて再懸濁させた後、昇温して110℃に達したところで、45分間撹拌しながら保持することによりこれらを反応させた。該反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、100℃のデカンおよびヘプタンで、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで十分に洗浄した。 【0104】 以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分を、デカン懸濁液として保存した。固体状チタン触媒成分の組成は、チタン3.2質量%、マグネシウム17.0質量%、塩素57.0質量%、3,6-ジメチルシクロヘキサン1,2-ジカルボン酸ジイソブチル10.6質量%、シクロヘキサン1,2-ジカルボン酸ジイソブチル8.9質量%およびエチルアルコール残基0.6質量%であった。 【0105】 (2)予備重合触媒の製造 前記(1)で調製した固体状チタン触媒成分130g、トリエチルアルミニウム71mL、ヘプタン65Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入した。内温を10~18℃に保ちながら、プロピレンを1300g挿入し、60分間攪拌しながら反応させることで、予備重合触媒を得た。該予備重合触媒は前記固体状チタン触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。 【0106】 (3)本重合 内容量1000Lの攪拌器付きベッセル重合器に、プロピレンを138kg/時間、前記予備重合触媒を1.7g/時間、トリエチルアルミニウムを12mL/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを22mL/時間連続的に供給した。さらに、水素を気相部の水素濃度が2.5mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.0MPa/Gの条件で重合を行った。 【0107】 得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを33kg/時間、水素を気相部の水素濃度が1.8mol%になるように供給した。重合温度67℃、圧力2.9MPa/Gの条件で重合を行った。 【0108】 得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを13kg/時間、水素を気相部の水素濃度が1.5mol%になるように供給した。重合温度65℃、圧力2.7MPa/Gの条件で重合を行った。 【0109】 得られたスラリーを液体プロピレンによる洗浄槽に送液し、プロピレン単独重合体パウダーを洗浄した。得られたスラリーの溶媒を気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体を得た。得られたプロピレン単独重合体は、コニカル乾燥機に導入して、80℃で真空乾燥を行った。次いで生成物100キログラムに対し、純水60グラムとプロピレンオキサイド0.54リットルとを添加して、90℃で2時間脱塩素処理を行った。その後、80℃にて真空乾燥を行い、プロピレン単独重合体(以下、PP1とも示す)のパウダーを得た。 【0110】 (4)プロピレン単独重合体ペレットの作製 得られたプロピレン単独重合体(PP1)100質量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.2質量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.5質量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.01質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.003質量部配合した。この混合物を、単軸押出機を用いて、230℃で溶融混練してプロピレン単独重合体(PP1)の造粒を行った。造粒機には、GMZ50-32(商品名、(株)ジーエムエンジニアリング製、L/D=32、50mmφ単軸)を使用した。得られたプロピレン単独重合体ペレット(以下、PP1Aとも示す)の物性を表1に示す。 【0111】 (5)二軸延伸フィルムの作製 前記プロピレン単独重合体ペレット(PP1A)を、30mmφのTダイ((株)ジーエムエンジニアリング製)で250℃に溶融後、押出し、30℃の温度に保持された1個の冷却ロールにより、引張り速度1.0m/分で冷却し、厚さが0.5mmの原反シートを得た。得られた原反シートを85mm×85mmにカットし、以下の条件で二軸延伸し、評価用の二軸延伸フィルムを得た。 【0112】 延伸装置:KAROIV(商品名、ブルックナー社製) 予熱温度:154℃ 予熱時間:60秒 延伸倍率:5×7倍(MD方向5倍、TD方向7倍)の逐次二軸延伸 延伸速度:6m/分。 【0113】 〔実施例2〕 前記(3)本重合を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。 【0114】 (3)本重合 内容量500Lの攪拌器付きベッセル重合器に、プロピレンを136kg/時間、前記予備重合触媒を1.3g/時間、トリエチルアルミニウムを8.8mL/時間、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを1.7mL/時間連続的に供給した。さらに、水素を気相部の水素濃度が0.9mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.1MPa/Gの条件で重合を行った。 【0115】 得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が0.8mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.9MPa/Gの条件で重合を行った。 【0116】 得られたスラリーを液体プロピレンによる洗浄槽に送液し、プロピレン単独重合体パウダーを洗浄した。得られたスラリーの溶媒を気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体を得た。得られたプロピレン単独重合体は、コニカル乾燥機に導入して、80℃で真空乾燥を行った。次いで生成物100キログラムに対し、純水60グラムとプロピレンオキサイド0.54リットルを添加して、90℃で2時間脱塩素処理を行った。その後、80℃にて真空乾燥を行い、プロピレン単独重合体(以下、PP2とも示す)のパウダーを得た。 【0117】 PP2の造粒後に得られたプロピレン単独重合体ペレット(以下、PP2Aとも示す)の物性を表1に示す。 【0118】 〔実施例3〕 前記(3)本重合を以下のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で行った。 【0119】 (3)本重合 内容量500Lの攪拌器付きベッセル重合器に、プロピレンを136kg/時間、前記予備重合触媒を1.2g/時間、トリエチルアルミニウムを8.8mL/時間、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを1.6mL/時間連続的に供給した。さらに、水素を気相部の水素濃度が1.5mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.1MPa/Gの条件で重合を行った。 【0120】 得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを14kg/時間、水素を気相部の水素濃度が1.2mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力2.9MPa/Gの条件で重合を行った。 【0121】 得られたスラリーを液体プロピレンによる洗浄槽に送液し、プロピレン単独重合体パウダーを洗浄した。得られたスラリーの溶媒を気化後、気固分離を行い、プロピレン単独重合体を得た。得られたプロピレン単独重合体は、コニカル乾燥機に導入して、80℃で真空乾燥を行った。次いで生成物100キログラムに対し、純水60グラムとプロピレンオキサイド0.54リットルを添加して、90℃で2時間脱塩素処理を行った。その後、80℃にて真空乾燥を行い、プロピレン単独重合体(以下、PP3とも示す)のパウダーを得た。 【0122】 PP3の造粒後に得られたプロピレン単独重合体ペレット(以下、PP3Aとも示す)の物性を表1に示す。 【0123】 〔実施例4〕 H-100M(商品名、(株)プライムポリマー製、プロピレン単独重合体、MFR:0.5)80質量部と、H-50000(商品名、(株)プライムポリマー製、プロピレン単独重合体、MFR:500)20質量部とを、ヘンシェルミキサーにより混合した。さらに、酸化防止剤として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.2質量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.5質量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.01質量部、過酸化物を0.003質量部混合し、プロピレン単独重合体(以下、PP4とも示す)を得た。 【0124】 PP4を実施例1と同様に造粒して得られたプロピレン単独重合体ペレット(以下、PP4Aとも示す)の物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 【0125】 〔比較例1〕 (1)固体触媒の製造 無水塩化マグネシウム300グラム、灯油1.6リットル、2-エチルヘキシルアルコール1.5リットルを140℃で3時間加熱して均一溶液とした。この溶液に無水フタル酸70グラムを添加し、130℃で1時間攪拌して溶解した後、室温まで冷却した。さらに上記の溶液を-20℃に冷却した四塩化チタン8.5リットル中にゆっくり滴下した。滴下終了後110℃まで昇温し、フタル酸ジイソブチル215ミリリットルを加え、さらに2時間攪拌した。熱時ろ過により固体を分離し、得られた固体を再度四塩化チタン10リットル中に懸濁させ、再び110℃で2時間攪拌した。熱時ろ過により固体を分離し、得られた固体をn-ヘプタンで、洗浄液にチタンが実質上検出されなくなるまで洗浄した。得られた固体触媒はチタン2.2質量%、フタル酸ジイソブチル11.0質量%を含有していた。 【0126】 (2)重合 内部を十分に乾燥し、窒素で置換した内容積70リットルのオートクレーブを準備し、トリエチルアルミニウム2ミリリットルをヘプタン1000ミリリットルで希釈した混合物、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.8ミリリットル、前記固体触媒150ミリグラムを加え、プロピレン20kg、水素17Nリットルを加え、70℃で2時間重合した。重合後未反応のプロピレンをデカンテーションにより分離し、重合生成物を液化プロピレンで3回洗浄した。次いで、生成物に水0.2グラムとプロピレンオキサイド10ミリリットルを添加して、さらに90℃で15分間処理し、減圧下で5分間乾燥した。このプロピレンオキサイドによる処理を3回繰り返し、生成ポリマーを取り出すことで、プロピレン単独重合体(以下、PP5とも示す)を得た。 【0127】 (3)プロピレン単独重合体ペレットの作製 PP5 100質量部に対して、カルシウムステアレート0.002質量部、イルガノックス-1330(商品名、チバガイギー社製)0.2質量部を混合し、250℃でペレット化することで、プロピレン単独重合体ペレット(以下、PP5Bとも示す)を得た。PP5Bの物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 【0128】 〔比較例2〕 (1)固体触媒の製造 内容積10リットルのガラス製容器に、無水塩化マグネシウム(フレーク状にしたものをさらに粉砕したもの)952g、デカン4420mlおよび2-エチルヘキシルアルコール3906gを添加し、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。 【0129】 このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却し10時間放置した後、この均一溶液の液面から10cmの位置から上澄みを50ml/分で750ml抜き出した。別の10リットルの容器に入れられた-20℃の四塩化チタン2000ml中に上記塩化マグネシウムの溶液を1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、温度が110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱時濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。 【0130】 加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。上記のように調製された固体状チタン触媒成分は、チタンを3質量%、塩素を58質量%、マグネシウムを18質量%およびDIBPを21質量%含有していた。 【0131】 (2)予備重合触媒の製造 10リットルの攪拌機付きオートクレーブ中に、窒素雰囲気下、精製ヘプタン7リットル、トルエチルアルミニウム0.16mol、および上記で得られた固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.053mol装入した後、プロピレンを900g導入し、温度を5℃以下に保ちながら、1時間反応させた。 【0132】 重合終了後、反応器内を窒素で置換し、上澄み液の除去および精製ヘプタンによる洗浄を3回行った。得られた予備重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して触媒供給槽に移し、固体状チタン触媒成分濃度で1g/Lとなるよう、精製ヘプタンにより調整を行った。この予備重合触媒は固体状チタン触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。 【0133】 (3)本重合 内容積140リットルの攪拌機付き重合槽1に液化プロピレンを20リットル装入し、この液位を保ちながら、液化プロピレン80kg/hr、予備重合触媒18g/hr、トリエチルアルミニウム47mmol/hr、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン9mmol/hrを連続的に供給し、温度73℃で重合した。また水素は重合槽1には供給しなかった。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽2にスラリー状のまま送液した。 【0134】 重合槽2では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン70kg/hrを連続的に供給し、温度71℃で重合した。また、水素も重合槽2の気相部の濃度を0.4mol%に保つように連続的に供給した。得られた重合体を内容積500リットルの攪拌機付き重合槽3にスラリー状のまま送液した。 【0135】 重合槽3では液位300リットルを保ちながら、新たに液化プロピレン56kg/hrを連続的に供給し、温度70℃で重合した。また水素も重合槽2と同様に、気相部の濃度を0.4mol%に保つように連続的に供給した。得られたスラリーに10mlのメタノールを加えた後、液体プロピレンによる洗浄槽に送液し、攪拌、静止、上澄みの除去、液状プロピレンの追加(1回当たり100リットル)からなる操作を7回繰り返して、プロピレン単独重合体のパウダーを洗浄した。その後、プロピレンを蒸発させてプロピレン単独重合体(以下、PP6とも示す)のパウダーを得た。 【0136】 (4)プロピレン単独重合体ペレットの作製 PP6 100質量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.1質量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2質量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム0.01質量部を配合した。これを、単軸押出機を用いて、230℃で溶融混練してペレット化を行い、プロピレン単独重合体ペレット(以下、PP6Bとも示す)を得た。造粒機には、GMZ50-32(商品名、(株)ジーエムエンジニアリング製、L/D=32、単軸)を使用した。PP6Bの物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 【0137】 〔比較例3〕 (1)固体触媒の製造 内容積2リットルの高速撹拌装置(特殊機化工業製)内を十分窒素置換した後、該装置に精製デカン700ml、塩化マグネシウム10g、エタノール24.2gおよびレオドールSP-S20(商品名、花王(株)製、ソルビタンジステアレート)3gを入れた。この懸濁液を撹拌しながら昇温し、該懸濁液を120℃にて800rpmで30分撹拌した。次いで、該懸濁液を、沈殿物が生じないように高速撹拌しながら、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブを用いて、予め-10℃に冷却された精製デカン1リットルを張り込んである2リットルのガラスフラスコ(攪拌機付)に移した。移液により生成した固体を濾過し、精製n-ヘプタンで十分洗浄することにより、塩化マグネシウム1モルに対してエタノールが2.8モル配位した固体状付加物を得た。 【0138】 デカン60mlで懸濁状にして、マグネシウム原子に換算して92.4ミリモルの前記固体状付加物を、-20℃に保持した四塩化チタン400ml中に、攪拌下、全量導入した。該混合液を5時間かけて80℃に昇温した。温度が80℃に達したところで、3,6-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジイソブチル(トランス体)を、前記固体状付加物のマグネシウム原子1モルに対して0.15モルの割合の量で添加し、40分間かけて120℃まで昇温した。その後、90分間攪拌しながら温度を120℃に保持して反応させた。 【0139】 前記反応終了後、熱濾過にて固体部を採取した。該固体部を200mlの四塩化チタンにて再懸濁させた後、昇温して130℃に達したところで、45分間撹拌しながら保持することで反応させた。該反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、100℃のデカンおよびヘプタンで、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで十分に洗浄した。以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分をデカンスラリーとして保存した。 【0140】 (2)重合 内容積600リットルの重合器に、室温で200リットルのプロピレンおよび水素550NLを加えた。その後、トリエチルアルミニウムを100ミリモル、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを20ミリモル、および前記固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.8ミリモル加え、速やかに重合器内を70℃まで昇温した。70℃で1時間重合した後、少量のエタノールにて反応を停止し、プロピレンをパージした。その後、窒素気流下にて1質量%のイソブチルアルコールを含むヘプタン300リットルに、得られた生成物を窒素気流下で投入し、攪拌洗浄を行った。次いで固液分離を行い、得られたプロピレン単独重合体のパウダーを80℃で一晩、減圧乾燥した。これにより、プロピレン単独重合体(以下、PP7とも示す)のパウダーを得た。 【0141】 (3)プロピレン単独重合体ペレットの作製 PP7を100質量部、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.3質量部、テトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.6質量部、ステアリン酸カルシウムを0.02質量部配合した。その後、これを230℃で溶融し、GMZ50-32(商品名、(株)ジーエムエンジニアリング製、L/D=32)単軸押出機でペレット化した。得られたプロピレン単独重合体ペレット(以下、PP7Bとも示す)の物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 【0142】 〔比較例4〕 プロピレン単独重合体ペレットとしてF-300SP(商品名、(株)プライムポリマー製)を用いた。該プロピレン単独重合体ペレット(以下、PP8Bとも示す)の物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 【0143】 〔比較例5〕 (1)マグネシウム化合物の調製 内容積12リットルの撹拌機付きのガラス製反応器を窒素ガスで充分に置換したのち、エタノール約4,860g、ヨウ素32g及び金属マグネシウム320gを投入し、撹拌しながら還流条件下で反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応生成物を含む反応液を減圧下で乾燥させることにより、マグネシウム化合物(固体生成物)を得た。 【0144】 (2)固体触媒成分の調製 窒素ガスで充分に置換した内容積5リットルのガラス製三つ口フラスコに、上記(1)で得られたマグネシウム化合物(粉砕していないもの)160g、精製ヘプタン800ミリリットル、四塩化珪素24ミリリットル及びフタル酸ジエチル23ミリリットルを加えた。系内を90℃に保ち、撹拌しながら四塩化チタン770ミリリットルを投入して110℃で2時間反応させたのち、固体成分を分離して80℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタン1,220ミリリットルを加え、110℃で2時間反応させたのち、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分を得た。 【0145】 (3)重合前処理 内容積500リットルの撹拌翼付き反応槽に、n-ヘプタン230リットルを投入し、さらに、前記(2)で得られた固体触媒成分25kgを加えた。次いで、この固体触媒成分中のTi1g原子に対し、トリエチルアルミニウムを0.6モル及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.4モルの割合で加えたのち、プロピレンをプロピレン分圧で0.3kg/cm2Gになるまで導入し、20℃で4時間反応させた。反応終了後、固体触媒成分をn-ヘプタンで数回洗浄し、二酸化炭素を供給し24時間撹拌した。 【0146】 (4)プロピレンの重合 内容積200リットルの撹拌翼付き重合槽に、上記(3)の処理済の固体触媒成分をTi原子に換算して3ミリモル/hrで、トリエチルアルミニウムを0.37ミリモル/hrで、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを95ミリモル/hrでそれぞれ供給し、重合温度80℃、プロピレン圧力28kg/cm2Gで反応させた。この際、所定の分子量になるように水素ガスを供給し、ポリプロピレン樹脂を得た。 【0147】 (5)プロピレン単独重合体ペレットの作製 前記(4)で得られたポリプロピレン樹脂に対し、質量基準でフェノール系酸化防止剤1,000ppm、リン系酸化防止剤1,500ppm、ステアリン酸カルシウム(中和剤)1,500ppm、シリカ系アンチブロッキング剤2,500ppmを配合し、神戸製鋼(株)製2FCM連続混練造粒機を用いて、樹脂温度220℃でペレット化した。得られたプロピレン単独重合体ペレット(以下、PP9Bとも示す)の物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 【0148】 〔比較例6〕 (1)プロピレン単独重合体の製造 (a)固体状チタン触媒成分の調製 無水塩化マグネシウム7.14kg(75モル)、デカン37.5リットルおよび2-エチルヘキシルアルコール35.1リットル(225モル)を130℃で2時間加熱反応を行い、均一溶液とした。その後、この溶液中に無水フタル酸1.67kg(11.3モル)を添加し、130℃にてさらに1時間撹拌混合を行い、無水フタル酸を前記均一溶液に溶解させた。このようにして得られた均一溶液を室温まで冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200リットル(1800モル)中に1時間かけて全量滴下した。滴下後、得られた溶液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでジイソブチルフタレート5.03リットル(18.8モル)を添加した。さらに前記温度で2時間撹拌を続け、その後、熱時濾過にて固体部を回収し、この固体部を275リットルのTiCl4にて再懸濁させ、再び110℃で2時間加熱反応を行った。反応終了後、再び熱時濾過によって固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンを用いて洗浄した。この洗浄操作を、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで行った。これにより、固体状チタン触媒成分を得た。 【0149】 (b)予備重合触媒の製造 攪拌機を取付けた500リットルの反応器に、窒素ガス雰囲気下、前記固体状チタン触媒成分3.5kgおよびn-ヘプタン300リットルを入れ、攪拌しながら-5℃に冷却した。次にトリエチルアルミニウムのn-ヘプタン溶液(2.0モル/リットル)およびジシクロペンチルジメトキシシランのn-ヘプタン溶液(0.01モル/リットル)をそれぞれ60(ミリモル/リットル)および10(ミリモル/リットル)になるように添加し、5分間攪拌を続けた。 【0150】 次いで系内を減圧にした後プロピレンを連続的に供給し、プロピレンを4時間重合させた。重合終了後、プロピレンを窒素ガスでパージし、固相部を各10リットルのn-ヘキサンで3回、室温にて洗浄した。さらに、固相部を室温で1時間減圧乾燥して予備重合触媒を調製した。 【0151】 (c)本重合 攪拌機を備えた500リットルのステンレス製オートクレーブに、窒素ガス雰囲気下、トリイソブチルアルミニウムのn-ヘプタン溶液(0.1モル/リットル)6リットルとジシクロペンチルジメトキシシランのn-ヘプタン溶液(0.01モル/リットル)0.6リットルを混合し5分間保持したものを入れた。次いで、分子量制御剤としての水素ガス100リットルおよび液体プロピレン300リットルを圧入した後、反応系を70℃に昇温した。前記予備重合触媒4.2gを反応系に装入した後、1時間プロピレンの重合を行った。重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、50.1kgのプロピレン単独重合体を得た。 【0152】 (2)プロピレン・エチレンランダム共重合体の製造 前記(1)(c)の本重合において、オートクレーブに液体プロピレン300リットルの代わりに液体プロピレン300リットルとエチレン0.5kgとを圧入した以外は、前記(1)と同様に操作してプロピレン・エチレンランダム共重合体を製造した。 【0153】 (3)プロピレン重合体組成物ペレットの作製 前記プロピレン単独重合体と、前記プロピレン・エチレンランダム共重合体とをパルスNMRで測定した60℃におけるハード成分量Hが63%、160℃におけるハード成分量Hが29%になる様に混合した。さらに、酸化防止剤としてのテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(日本チバガイギー社製品、商品名:イルガノックス 1010)1000質量ppm、およびステアリン酸カルシウム1000質量ppmとをヘンシェルミキサーで混合した。その後二軸押出機(65mmφ)に投入して200℃およびスクリュー回転数200rpmで混練し、プロピレン重合体組成物のペレット(以下、PP10Bとも示す)を得た。得られたPP10Bの物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 なお、前記パルスNMRで測定したハード成分量Hは、以下の条件にて測定した。 【0154】 測定装置:JNM-MU25(日本電子(株)製) 測定手法:Solid echo法(90pulse 2.0μs、PD4s、Time8) セグメントをハード(H)、ミドル(M)、ソフト1(S1)、ソフト2(S2)の4つに分割し、そのハード成分量Hを測定した。 〔比較例7〕 比較例1で製造したPP5B 50質量部と、比較例3で製造したPP7B 50質量部とを混合して、プロピレン単独重合体ペレット(以下、PP11Bとも示す)を得た。PP11Bの物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 【0155】 〔比較例8〕 比較例1で製造したPP5をペレット化する際に、PP5 100質量部に対して、さらに2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.002質量部添加した以外は比較例1と同様にプロピレン単独重合体ペレット(以下、PP12Bとも示す)を得た。PP12Bの物性を表1に示す。また、これら以外は実施例1と同様の方法で行った。 【0156】 【表1】 [図:0001391980000001.jpg] 」 2 各甲号証及び参考文献に記載された事項 (1)甲1A 甲1Aには以下の事項が記載されている。なお、甲1Aは英文であるため、申立人Aが提出した翻訳文を用いて引用箇所を摘記した。 「 [図:0001391980000002.jpg] [図:0001391980000003.jpg] [図:0001391980000004.jpg] [図:0001391980000005.jpg] [図:0001391980000006.jpg] [図:0001391980000007.jpg] [図:0001391980000008.jpg] 」 (2)甲2A 甲2Aには、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001391980000009.jpg] 」 (3)甲3A 甲3Aは、延伸ポリプロピレンフィルムに係る発明の特許文献であり、概略、所定の倍率で二軸延伸された延伸ポリプロピレンフィルムが記載され(請求項1~3)、延伸ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂の分子量に関する事項が記載されている(段落[0018]、[0021]-[0022]、[0025])。 (4)参1A 参1Aには、以下の事項が記載されている。なお、参1Aは英文であるため、申立人Aが提出した翻訳文を用いて引用箇所を摘記した。 「 [図:0001391980000010.jpg] [図:0001391980000011.jpg] [図:0001391980000012.jpg] [図:0001391980000013.jpg] [図:0001391980000014.jpg] [図:0001391980000015.jpg] [図:0001391980000016.jpg] 」 (5)参2A 参2Aには、以下の事項が記載されている。 「【0054】 [実施例1及び2] 混合液体-気体重合技術に従い連続的に運転されるプラントにおいて、Table 1に示す条件下で実験を行った。 【0055】 重合は、触媒系の存在下で、1個の反応器からすぐ隣の反応器に生成物を搬送する装置を具備する3個の反応器の列で行った [固体触媒成分の調製] 窒素パージされた500mlの4首丸底フラスコに、250mlのTiCl4を0℃で導入する。撹拌しながら、10.0gの微小球形MgCl2・1.9C2H5OH(米国特許USP4,399,054号明細書の実施例2に記載されている方法に従って、ただし10000rpmの代わりに3000rpmで運転して調製した)及び9.1mmolのジエチル2,3-(ジイソプロピル)サクシネートを添加する。温度を100℃に昇温し、120分間維持する。次いで、撹拌を止めて、固体生成物を沈殿させ、上澄み液をサイフォンで除く。次に、250mlの新鮮なTiCl4を添加する。混合物を120℃で60分間反応させ、次いで上澄み液をサイフォンで除く。固体を60℃の無水ヘキサン(6×100ml)で6回洗浄する。 【0056】 [触媒系及び予備重合処理] 上述の固体触媒成分をアルミニウムトリエチル(TEAL)及び外部電子供与体成分としてのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)と12℃で24分間接触させた。TEALと固体触媒成分との間の質量比及TEALとDCPMSとの間の質量比はTable 1に示す。 【0057】 次いで、触媒系を第1重合反応器に導入する前に、液体プロピレン中に、20℃で約5分間、懸濁させ続けることによって予備重合する。 [重合] 重合実験は、1個の反応器からすぐ隣の反応器に生成物を搬送する装置を具備する3個の反応器の一列において連続的に行う。第1反応器は液相反応器であり、第2及び第3反応器は流動床気相反応器である。重合体(a)は第1反応器内で調製され、重合体(b)及び(c)はそれぞれ第2及び第3反応器内で調製される。 【0058】 温度及び圧力は、反応経路全体にわたり一定に維持する。水素は分子量調節剤として用いられる。 気相(プロピレン、エチレン及び水素)は、ガスクロマトグラフィーによって連続的に分析する。 【0059】 実験の最後に、粉末を排出し、窒素流下で乾燥させる。 次いで、重合体粒子をツインスクリューエクストルーダー(Wernerタイプエクストルーダー)に導入し、635ppmのIrganox 1010、635ppmのIrgafos 168、2450ppmのジステアリルチオ-ジプロピオネート及び270ppmの合成ヒドロタルサイトと混合する。Irganox 1010はペンタエリトリチルテトラキス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートであり、Irgafos 168はトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトであり、いずれもCiba-Geigyから上市されている。重合体粒子は、ツインスクリューエクストルーダー内で、回転速度250rpm、溶融温度200~250℃、窒素雰囲気下で押し出される。」 「【0061】 【表1】 [図:0001391980000017.jpg] 【0062】 【表2】 [図:0001391980000018.jpg] 」 (6)甲1B 甲1Bの特許請求の範囲の請求項1には、 「コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、該ポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂は、 ・数平均分子量が4万以上10万以下、 ・Z平均分子量が95万以上150万以下、 ・分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が-15%以上11%以下である、ポリプロピレンフィルム。」 が記載され、明細書の段落【0007】には、発明が解決しようとする課題として、「本発明の目的は、高温下での耐電圧性を有する、絶縁破壊特性に優れたコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することである」ことが記載され、同【0008】には、「本発明者等は、鋭意検討の結果、以下に記載する手段により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。」と記載の上、上記した請求項1と同じ内容のポリプロピレンフィルムが記載されている。 また、ポリプロピレン樹脂として、明細書の段落【0023】には、「ポリプロピレン樹脂組成物に含まれるポリプロピレン樹脂は、本発明のポリプロピレンフィルムを構成するポリプロピレン樹脂が、上記の数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)および微分分布値の差を有する限り特に限定されず、・・・2種以上のポリプロピレン樹脂を組み合わせて得たポリプロピレン樹脂のブレンドであってもよい」ことが記載され、同【0029】には、「樹脂のブレンドによって、上記の数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)および微分分布値の差を調整する場合、異なる分子量を有する少なくとも2種以上の樹脂を、ドライあるいは溶融状態で混合してポリプロピレン樹脂組成物を得ることが、調整の容易さの観点から好ましい。」ことが記載されている。 そして、ポリプロピレン樹脂組成物に含まれる成分として、同【0030】には、「樹脂のブレンドによってポリプロピレン樹脂組成物を得る本発明の一実施形態においてポリプロピレン樹脂組成物は、以下に記載するポリプロピレン樹脂Aを含むことが好ましい。ポリプロピレン樹脂Aの重量平均分子量は、25万以上45万以下であることが好ましく、・・・このようなポリプロピレン樹脂Aを含むポリプロピレン樹脂組成物を用いると、樹脂流動性が適度であり、キャスト原反シートの厚さの制御が容易であり、薄い延伸フィルムを作製することが容易になり得る。更に、シートおよびフィルムの厚みにムラを発生し難くなり、シートが適度な延伸性を有し得るので、好ましい。」ことが記載され、同【0031】には、「ポリプロピレン樹脂Aの、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比として算出される分子量分布(Mw/Mn)は、7.0以上12.0以下であることが好ましい。」ことが記載され、同【0033】には、「ポリプロピレン樹脂Aの重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz)は、上記のポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)等と同様にして、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。」ことが記載され、同【0034】には、「ポリプロピレン樹脂AのMFRは、延伸性の観点から7g/10分以下であることが好まし」いことが記載され、同【0035】には、「ポリプロピレン樹脂Aのメソペンタッド分率([mmmm])は、94.0%以上98.0%以下であることが好ましい。」ことが記載されている。 さらに、ポリプロピレン樹脂組成物に含まれる他の成分として、甲1Bの段落【0040】には、「ポリプロピレン樹脂組成物は、結晶子サイズを小さくし、耐電圧性の高いコンデンサフィルムを得る観点から、数平均分子量(Mn)が4万以上15万以下であり、Z平均分子量が120万以上260万以下であるポリプロピレン樹脂B1を含有することが好ましい。」ことが記載され、同【0041】には、「ポリプロピレン樹脂B1の数平均分子量(Mn)は、延伸性の観点から、4万以上15万以下であることが好ましく、・・・ポリプロピレン樹脂B1のZ平均分子量は、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの精度を高める観点から、120万以上260万以下であることが好まし」いことが記載され、同【0043】には、「ポリプロピレン樹脂組成物は、結晶子サイズを小さくし、耐電圧性の高いコンデンサフィルムを得る観点からメルトフローレートが4g/10分以下であるポリプロピレン樹脂B2を含むことが好ましい。」ことが記載され、同【0044】には、「ポリプロピレン樹脂B2のメルトフローレートは、結晶子サイズを小さくし、耐電圧性の高いコンデンサフィルムを得る観点から4g/10分以下であることが好ましく、・・・本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの精度を高める観点から0.1g/10分以上であることが好まし」いことが記載されている。 加えて、樹脂組成物の成分の含有量について、同【0046】には、樹脂のブレンドによって高分子量成分の含有量を調整する場合には、上記のポリプロピレン樹脂Aに対して、より高い分子量を有するポリプロピレン樹脂B1、または、より低いMFRを有するポリプロピレン樹脂B2を、ドライあるいは溶融状態で混合してポリプロピレン樹脂組成物を得ることが好ましいこと、例えば、主成分としてのポリプロピレン樹脂A100質量%に対して、ポリプロピレン樹脂B1またはB2を好ましくは1~70質量%で混合する方法が記載されている。 この上で、甲1Bには、段落【0100】、表1に、実施例で使用するポリプロピレン樹脂としてMnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1及びMnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2が記載され、実施例1として、ポリプロピレン樹脂PP-1を80質量部、ポリプロピレン樹脂PP-2を20質量部の量で含み、Mnが4.2万、Mwが33万、Mzが120万、Mw/Mnが7.9であるポリプロピレン樹脂組成物が記載され、数平均分子量は4.2万、Z平均分子量は120万、分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が3.1%であり、結晶子サイズが11.6nmであることが記載されている。また、実施例2には、ポリプロピレン樹脂PP-1を65質量部、ポリプロピレン樹脂PP-2を35質量部の量で含み、Mnが4.6万、Mwが37万、Mzが130万、Mw/Mnが8.0であるポリプロピレン樹脂組成物が記載され、数平均分子量は4.6万、Z平均分子量は130万、分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差が-4.5%であり、結晶子サイズが11.2nmであることが記載されている。 (7)甲2B 甲2Bの特許請求の範囲の請求項1には、 【請求項1】 次の特徴: 1)97%より高い、NMRにより測定されたアイソタクチックペンタド(mmmm)の含量; 2)6と等しいか、または6より高い、 [図:0001391980000019.jpg] 比で表される分子量分布;および 3)5.5と等しいか、または5.5より低い、 [図:0001391980000020.jpg] 比の値を有するプロピレンポリマー。」 が記載され(以下、式(a)は「Mw/Mn」、式(b)は「Mz/Mw」とも表記する。)、明細書の段落【0001】には、本発明が「溶融状態での加工性が改良された、高レベルの鎖の立体規則性を有する結晶性プロピレンポリマーおよびその製造方法に関する」と記載され、同【0005】には「高い剛性およびその他の機械的特性によって依然として特徴付けられるだけでなく、中程度に広い分子量分布であるにもかかわらず改良された作業性によってもまた特徴付けられるプロピレンポリマーを得る」という発明の解決すべき課題について記載され、同【0006】には本発明のプロピレンポリマーからなる2軸配向フィルムまたはシートは特に包装用途とすることが記載され、同【0007】、【0009】には、プロピレンポリマーのMFR、アイソタクチックペンタド(mmmm)の含量、Mw/Mn及びMz/Mwの好ましい範囲について記載され、実施例1~3で得られたプロピレンポリマーの測定値が表2に 「 [図:0001391980000021.jpg] 」と示されており、同【0061】には実施例1~3で得られたプロピレンポリマーを延伸して二軸配向フィルムを製造したことが記載されている。 (8)甲3B 甲3Bの特許請求の範囲の請求項1、8には 「【請求項1】 担持型チタン系触媒を用いた重合で得られ、ASTM D-1238(230℃、2.16kg荷重)で測定したメルトフローレート(MFR)が0.5~10g/10分、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法で測定したMnが100000以下、Mw/Mnが5.4以上、Mz/Mnが20以上のポリプロピレン樹脂であって、13C-NMRスペクトルにおけるPmmmm、Pwの吸収強度から下記式(Eq-1)により求められる立体規則性指標[M5]の値が0.950~0.995の範囲にあることを特徴とするポリプロピレン樹脂。 [図:0001391980000022.jpg] (式中、[Pmmmm]はプロピレン単位が5単位連続してイソタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度を示し、[Pw] はプロピレン単位のメチル基に由来する吸収強度を示す。) ・・・ 【請求項8】 請求項6記載のポリプロピレンシートを延伸して得られる延伸フィルムからなるキャパシターフィルム。」 が記載され、明細書の段落【0004】には、「コンデンサー用のキャパシターフィルムのように電気絶緑性が要求される用途には電気特性を損なうスリップ剤やアンチブロッキング剤の配合が制限されている。・・・溶融したポリプロピレン樹脂を徐冷してβ晶を生成させ、それを延伸することでβ晶→α晶転移を引き起こしフィルム表面に凹凸を形成してアンチブロッキング性を持たせることが行われている。」こと、同【0007】には、発明が解決しようとする課題として、「シートを成形した際にβ晶の含有率の高いシートを、β晶核剤を配合しなくても容易に製造可能な高立体規則性ポリプロピレン樹脂、およびそれから得られるシートを提供すること」が記載され、ポリプロピレン樹脂について、同【0011】、【0014】には、MFR、立体規則性指標[M5]の好ましい範囲が記載され、同【0012】には、「本発明のポリプロピレン樹脂は、GPC法で測定した数平均分子量(Mn)が100000以下、好ましくは80000以下、さらに好ましくは80000~10000、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が5.4以上、好ましくは5.5以上、さらに好ましくは5.8~15、Z平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn)が20以上、好ましくは21以上、さらに好ましくは21~40である。Mnが100000以下であるので、押出し特性に優れるとともに、β晶の生成量も多い。またMw/Mnが5.4以上、かつMz/Mnが20以上であるので、超高分子量成分が存在し、それが溶融状態から固化する過程でβ晶生成に優位に働き、β晶の生成量が多くなる。Mw/MnおよびMz/Mnが大きくなるほどβ晶の生成量が多くなる。また、Mw/Mnが15以下であり、Mz/Mnが40以下の場合は、フィッシュアイの発生が少なく、成形性が向上するとともに外観に優れる。」と記載されている。 そして、同【0072】~【0087】には、実施例1~3について、担持型チタン系触媒を用いた触媒組成物を調製し、プロピレンを重合してポリプロピレンパウダーを得たこと、「得られたポリプロピレン樹脂100重量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.1重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.01重量部を配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してポリプロピレン樹脂のペレット化を行った」こと、さらにペレットから2軸延伸フィルムを成形したことが記載され、得られたペレットについて測定した結果が同【0101】に 「 [図:0001391980000023.jpg] 」 と示されている。 (9)甲4B 甲4Bの特許請求の範囲の請求項1には、 「下記要件[1]~[3]を同時に満たす電気材料用ポリプロピレン。 [1] メルトフローレートが0.1~30g/10分である。 [2] 13C-NMRスペクトルより算出したメソペンタッド分率が0.90~0.99である。 [3] 焼成残分がポリプロピレンに対し50重量ppm以下、焼成残分から検出されるチタニウム分および鉄分がポリプロピレンに対し各々1重量ppm以下および0.1重量ppm以下であり、しかも塩素含量がポリプロピレンに対し5重量ppm以下である。」 が記載されており、明細書の段落【0001】には、技術分野について「電気材料、特に高度な電気絶縁性が要求される用途に好適に使用されるポリプロピレン」と記載され、ポリプロピレンについて同【0013】にはMFR、メソペンタッド分率[M5] の好ましい範囲が記載され、同【0021】には「本発明のポリプロピレンが好んで使用される延伸フィルム用途、特に粗面化フィルムにおいては、Mw/Mnが5以上、好ましくは6以上、Mz/Mnが15以上、好ましくは20以上のポリプロピレンが使用される。このような広分子量分布を示すポリプロピレンの成形性は、押出成形体を徐冷した場合にβ晶・・・を多く生成することから、特定の温度範囲で延伸することによって粗面化フィルムを得ることができる。このような粗面化フィルムは、フィルム表面に多数の凹凸が生起するので、シリカのような無機物やβ晶核剤を配合しなくても、フィルムのブロッキングを防止することができ、操業性および取り扱いが極めて優れる。」と記載され、同【0033】には、「本発明のポリプロピレンから得られるシートは電気的絶縁特性が優れているので、キャパシターフィルム用の原反シートとして優れている。それを延伸、好ましくは二軸延伸した場合、表面凹凸の数が多く、粗面化されているためアンチブロッキング効果が優れている。このように電気的絶縁特性に優れ、表面凹凸が多くアンチブロッキング効果に優れているフィルムはコンデンサー用のキャパシターフィルムとして好適に利用することができる。」と記載されている。 そして、実施例において、同【0036】~【0037】に「なお、実施例に記載した物性の測定方法は次の通りである。」として 「[m1] メルトフローレート(MFR) ASTM D-1238の方法により230℃、荷重2.16kgで測定した。シリンダーには特に窒素は導入せず、直接ペレットをシリンダーに投入し溶融させた。」と記載され、 同【0054】~【0084】には、実施例1~5について、触媒を調製し、プロピレンを重合してポリプロピレンパウダーを得たこと、「得られたポリプロピレン100重量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.1重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム 0.01重量部を配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練してポリプロピレンのペレット化を行った」こと、さらにペレットから二軸延伸フィルムを成形したことが記載され、得られたペレットについて測定した物性が同【0092】~【0093】に 「【0092】 【表2】 [図:0001391980000024.jpg] 【0093】 【表3】 [図:0001391980000025.jpg] 」 と示されている。 (10)甲5B 甲5Bの請求項1には、 「アイソタクチックポリプロピレンを含むコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、 前記アイソタクチックポリプロピレンの、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が25万以上45万以下であり、 分子量分布Mw/Mnが7以上12以下で、Mz/Mnが20以上40以下であり、 且つ、分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6のときの微分分布値を引いた差の値が、Log(M)=4.5のときの微分分布値に対して、8%以上20%以下であることを特徴とする、コンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム。」 が記載され、明細書の段落【0017】には、「本発明の目的は、高温条件下で高い絶縁破壊電圧特性を有する極薄のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムと、そのコンデンサー用金属化ポリプロピレンフィルムを提供することにある。」と記載され、同【0052】には、「<2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂>」について「GPC法により得られる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比から計算される分子量分布は、7以上12以下であり、7.5以上12以下がより好ましく、7.5以上11以下であることが更に好ましい。」と記載され、同【0054】には、「分子量分布が広い、すなわち、Mw/Mn値が高いポリプロピレン原料樹脂は、成形性や剛性に優れることが当業者においては常識とされている。」と記載され、同【0139】~【0140】の表1~2には、実施例1~4で得られたポリプロピレンフィルムの測定結果について、 「【表1】 [図:0001391980000026.jpg] 」及び 「【表2】 [図:0001391980000027.jpg] 」 と示されている。 (11)甲6B 甲6Bの明細書の段落【0011】には「本発明は、原反フィルムの成形条件幅及び原反フィルムの延伸加工条件幅が広く、フィルム強度と通気性のバランスに優れた微多孔フィルム用ポリプロピレン、およびその用途を提供することを目的とする。」と記載され、同【0096】、【0097】には当該ポリプロピレンの用途としてコンデンサー用セパレータが記載され、同【0033】~【0039】にはポリプロピレンのMw、Mz/Mw、Mw/Mnの範囲について記載され、同【0040】には、13C-NMR(核磁気共鳴法)で測定したメソペンタッド分率の範囲について記載され、実施例において得られたポリプロピレンの測定値が表1に記載されている。 (12)甲7B 甲7Bの明細書の段落【0002】~【0004】には、ポリプロピレンのアイソタクティシティについて記載され、同【0044】にポリプロピレンの触媒残渣含有量について記載されている。 (13)甲8B 甲8Bの特許請求の範囲の請求項1には、二軸配向ポリプロピレンフィルムの製造方法について記載され、明細書の段落【0021】~【0022】にはポリプロピレンの過酸化物分解について記載されている。 (14)甲9B 甲9Bの特許請求の範囲の請求項1には、ポリプロピレンP1及び異なるポリプロピレンP2の混合物を含有する二軸延伸電気絶縁フィルムについて記載され、明細書の段落【0018】、【0022】には上記フィルムのコンデンサフィルムとしての使用目的に関して、上記ポリプロピレンP1、P2の塩素分及び灰分の数値範囲が記載されている。 (15)甲10B 甲10Bには、以下の事項が記載されている。なお、甲10Bは英文であるため、申立人Bが提出した翻訳文を用いて引用箇所を摘記した。 「 [図:0001391980000028.jpg] 」 (16)甲11B 甲11Bには、以下の事項が記載されている。なお、甲11Bは英文であるため、申立人Bが提出した翻訳文を用いて引用箇所を摘記した。 「 [図:0001391980000029.jpg] 」 (17)甲12B 甲12Bには、以下の事項が記載されている。なお、甲12Bは英文であるため、申立人Bが提出した翻訳文を用いて引用箇所を摘記した。 「 [図:0001391980000030.jpg] 」 (18)甲13B 甲13Bには、以下の事項が記載されている。なお、甲13Bは英文であるため、申立人Bが提出した翻訳文を用いて引用箇所を摘記した。 「 [図:0001391980000031.jpg] 」 (19)甲14B 甲14Bには、以下の事項が記載されている。なお、甲14Bは英文であるため、申立人Bが提出した翻訳文を用いて引用箇所を摘記した。 「 [図:0001391980000032.jpg] 」 (20)甲15B 甲15Bには、以下の事項が記載されている。なお、甲15Bは英文であるため、申立人Bが提出した翻訳文を用いて引用箇所を摘記した。 「 [図:0001391980000033.jpg] 」 (21)甲16B 甲16Bには、以下の事項が記載されている。 「【0054】 (ポリプロピレン原料の過酸化物処理) 本明細書において、過酸化物処理とはポリプロピレン原料を過酸化物により処理することを示す。また、ポリプロピレン原料に過酸化物を混合して造粒してもよい。例えば、ポリプロピレン原料のパウダーを押出機により造粒する際、有機過酸化物等を配合してポリプロピレン原料の分子鎖を切断することにより、分子量(粘度)を調整することができる。」 「【0062】 また、本発明に係るフィルムコンデンサ用キャパシタフィルムは、例えば、前記ポリプロピレン樹脂組成物を、好ましくは延伸面倍率(縦×横の面倍率)30~80倍で、より好ましくは35~75倍で、更に好ましくは35~70倍で、特に好ましくは35~50 倍で延伸して得ることができる。該延伸面倍率が30倍以上であることにより、フィルム 内部の結晶サイズが小さくなり、より高い絶縁破壊強度を有するフィルムを得ることができる。」 「【0074】 (6)Mz、Mw、Mn、Mw/Mn、Mz/MwおよびMz/Mn GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を使用して以下の条件で測定した。 【0075】 測定装置:150CVtype(商品名、Waters社製) 試料濃度:7.5mg/4ml カラム:Shodex AD-806ms(商品名、昭和電工(株)製) 測定温度:135℃ 溶媒:o-ジクロロベンゼン ポリスチレン換算 得られたクロマトグラムを解析することで、Mz、Mw、Mn、Mw/Mn、Mz/MwおよびMz/Mnを算出した。ユニバーサルキャリブレーション法により、ポリスチレン換算の値を算出した。GPCクロマトグラムのベースラインは、溶出曲線の立ち上がる保持時間を起点とし、分子量1000に相当する保持時間を終点とした。」 「 【0130】 【表1】 [図:0001391980000034.jpg] 」 「【請求項1】 以下の要件(1)~(5)を満たすポリプロピレン樹脂組成物を含むフィルムコンデンサ用キャパシタフィルム。 (1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。 (2)13C-NMRを用いて測定したアイソタクティックペンタッド分率が、0.930~0.999である。 (3)灰分含有量が50質量ppm以下である。 (4)塩素含有量が10質量ppm以下である。 (5)Mzが60万~140万であり、Mw/Mnが6.5~14.0である。 【請求項2】 前記ポリプロピレン樹脂組成物が、以下の要件(6)を満たす請求項1に記載のフィルムコンデンサ用キャパシタフィルム。 (6)Mz/Mwが2.0~5.0である。 【請求項3】 前記ポリプロピレン樹脂組成物が、以下の要件(7)を満たす請求項1又は2に記載のフィルムコンデンサ用キャパシタフィルム。 (7)角周波数ωにおける貯蔵弾性率G’と、角周波数ωにおける損失弾性率G”とから求められる緩和時間G’/G”/ωが、ω=0.01ラジアン/秒において4~14秒である。」 (22)甲17B 甲17Bには、以下の事項が記載されている。 「 【0053】 (ポリプロピレン原料の過酸化物処理) 本明細書において、過酸化物処理とはポリプロピレン原料を過酸化物により処理することを示す。また、ポリプロピレン原料に過酸化物を混合して造粒してもよい。例えば、ポリプロピレン原料のパウダーを押出機により造粒する際、有機過酸化物等を配合してポリプロピレンの分子鎖を切断することにより、分子量(粘度)を調整することができる。」 「 【0061】 また、本発明に係る二軸延伸フィルムは、前記ポリプロピレン樹脂組成物を、延伸面倍率(縦×横の面倍率)30~80倍で、好ましくは35~75倍で、更に好ましくは35~70倍で、特に好ましくは35~50倍で延伸して得られる。該延伸面倍率が30倍未満である場合、所望の強度や厚み精度を得ることが困難である。また、該延伸面倍率が80倍を超える場合、延伸時に破断が生じやすくなり、生産性に劣る場合がある。」 「【0066】 (1)メルトフローレート(MFR) MFRは、ASTM D 1238に準拠して、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。」 「【0139】 【表1】 [図:0001391980000035.jpg] 」 「【請求項1】 以下の要件(1)~(3)を満たすポリプロピレン樹脂組成物。 (1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。 (2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。 (3)Mzが60万~140万であり、Mw/Mnが6.5~14.0である。 【請求項2】 以下の要件(4)を満たす請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。 (4)Mz/Mwが2.0~5.0である。 【請求項3】 以下の要件(5)を満たす請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。 (5)角周波数ωにおける貯蔵弾性率G’と、角周波数ωにおける損失弾性率G”とから求められる緩和時間G’/G”/ωが、ω=0.01ラジアン/秒において4~14秒である。 【請求項4】 過酸化物により処理されている請求項1から3のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂組成物を、延伸面倍率(縦×横)が30~80倍で延伸させて得られる二軸延伸フィルム。」 第6 当審の判断 以下に述べるように、当審が通知した取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1、3~10に係る特許は取り消すことはできない。 そして、本件発明2に係る特許に対する申立ては、本件訂正により請求項2が削除されたから却下する。 1 本件発明2に係る特許に対する申立ての却下 第2及び第3で示したとおり、本件特許の請求項2は本件訂正により削除され、この特許に対する申立ては、申立ての対象を欠くこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により決定をもって却下すべきものである。 2 取消理由について (1)取消理由1、2について 申立理由B2、B3は、甲1Bを主引例とする新規性・進歩性の理由であるので、取消理由1、2と併せて判断する。 ア 本件発明の優先権主張について 甲1Bの発行日(平成27年11月12日)は、本件特許における優先権主張の日(平成27年3月31日)よりも後であるから、まず、本件発明において優先権主張が認められるかについて検討する。 (ア)本件発明について 本件発明は、上記「第3」で示したとおりである。 (イ)本件発明1に関する優先権主張について 本件発明1に係るポリプロピレン樹脂組成物の下記のa及びbの事項が、本件出願の優先基礎出願である特願2015-72149号(甲16B。以下「優先基礎出願1」という。)及び同じく特願2015-72150号(甲17B。以下「優先基礎出願2」という。)に記載されているか否かを検討する。 a 「13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率」について 甲16B(優先基礎出願1)の特許請求の範囲の請求項1及び甲17B(優先基礎出願2)の特許請求の範囲の請求項1には、「(2)13C-NMRを用いて測定したアイソタクティックペンタッド分率が、0.930~0.999である。」と記載されている。そして、本件発明1は、本件訂正により、「(2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。」と限定されたので、甲16B(優先基礎出願1)及び甲17B(優先基礎出願2)に記載された範囲内になった。 b 「Mnが4万以上であり」について (a)甲16B(優先基礎出願1)及び甲17B(優先基礎出願2)に記載されたMnの値の範囲について 甲16B(優先基礎出願1)の発明の詳細な説明の段落【0074】及び【0075】、並びに甲17B(優先基礎出願2)の発明の詳細な説明の段落【0066】には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を使用してポリプロピレン樹脂組成物のMnを測定したこと及びその条件が記載されており、優先基礎出願1の【0130】の表1及び優先基礎出願2の【0139】の表1において、実施例1~4及び比較例1~6で製造したポリプロピレン樹脂組成物のMnが記載され、本件発明1の具体例である実施例1~4では、Mnが4.0~4.8万であったことが記載されている。また、甲16Bの特許請求の範囲の請求項1(甲17Bの特許請求の範囲の請求項1)には、Mzが60万~140万であり、Mw/Mnが6.5~14.0であることが記載され、同請求項2には、Mz/Mwが2.0~5.0であることが記載されている。 上記Mn、Mz、Mw/Mn及びMz/Mwの値から、Mwは12万~70万(=60万/5.0~140万/2.0)と算出され、Mnは0.86万~10.77万(=12万/14.0~70万/6.5)と算出される。 そうすると、優先基礎出願1及び2には、Mnが0.86万~10.77万の範囲であることが記載されているといえる。 (b)本件発明1におけるMnの値の範囲について 本件発明1のポリプロピレン樹脂組成物は、Mw/Mnが7.0~10.0、Mzが93万~140万、Mz/Mwが3.2~5.0である。 これらの値と関係式から、ポリプロピレン樹脂組成物におけるMwは18.6万~43.75万(=93万/5.0~140万/3.2)と算出され、同じくMnは1.86万~6.25万(=18.6万/10.0~43.75万/7.0)と算出される。 そうすると、本件発明1のMnの上限は、6.25万であり、これは、優先基礎出願1及び2に記載された0.86万~10.77万の範囲内である。 (c)申立人Bの主張について 申立人Bは、令和3年10月8日に提出した意見書の第3頁において、「優先基礎出願1には、Mnが10.77万を越える場合は記載されていないので、Mnが10.77万を越える場合を含む本件発明1は優先権の主張の効果は認められない」と主張している。 しかしながら、上記(b)で述べたように、本件発明1におけるMnの上限は6.25万であるから、申立人Bの上記主張は採用できない。 c 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は優先基礎出願1及び2に基づく優先権主張が認められる。 (ウ)本件発明3~10についての判断 本件発明3~10の各発明特定事項も、甲16Bの特許請求の範囲、段落【0054】、【0062】(甲17の特許請求の範囲、段落【0053】、【0061】)に記載されているから、本件発明1と同様、本件発明3~10も優先権主張の効果が認められる。 (エ)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1、3~10について優先権主張の効果を認める。 当審において本件発明1、3~10について新規性及び進歩性を判断するための基準日は、優先権主張の日である平成27年3月31日とする。 イ 甲1Bについて 上記アで示したとおり、甲1Bの発行日は本件発明の優先日よりも後であり、本件発明1、3~10の新規性及び進歩性を否定するための引例となりうるものではない。 ウ まとめ よって、甲1Bの記載内容について検討するまでもなく、取消理由1、2及び申立理由B2、B3は理由がない。 (2)取消理由3(新規事項)について 申立理由B7は、「Mn」の範囲に関する新規事項の理由であり、取消理由3と同内容の理由であるので併せて検討する。 ア 令和1年7月10日付けで手続補正された請求項1について 令和1年7月10日付けで手続補正された請求項1には、以下の発明特定事項が記載されている。 「以下の要件(1)~(4)を満たすポリプロピレン樹脂組成物: (1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。 (2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930以上である。 (3)Mnが4万以上であり、Mw/Mnが7.0~10.0である。 (4)Mzが93万~140万であり、Mz/Mwが3.2~5.0である。」 イ 判断の対象とする補正事項について 上記第4の2(7)及び第4の3(1)ウに記載のとおり、取消理由3及び申立理由B7はいずれも、「Mnが4万以上であり」との補正事項が新規事項の追加に該当するという主旨であるから、当該補正事項について、以下に検討する。 ウ 検討 Mnの値について、本件特許出願の当初明細書等の表1の実施例3には「Mn(×10-4)」が「4.0」と記載されており、当該実施例のポリプロピレン樹脂組成物のMnは4.0×104、すなわち4万であるから、当該記載に基づいてMnの下限を4万とすることは、当初明細書等に記載された事項の範囲内といえる。 一方、上記補正事項は「Mnの値が4万以上であり」と特定し、Mnの上限は明示されていない。しかしながら、上記補正後の請求項1では、Mw/Mnが7.0~10.0、Mzが93万~140万、Mz/Mwが3.2~5.0であると特定され、これらの値と関係式から、本件発明1に係るポリプロピレン樹脂組成物のMwは18.6万~43.75万(=93万/5.0~140万/3.2)と算出され、同じくMnは1.86万~6.25万(=18.6万/10.0~43.75万/7.0)と算出される。そうすると、上記補正後の請求項1において、Mnの上限は明示的に特定されていないが、実質的に6.25万であるということができる。 それに対して、当初明細書等の請求項1、3には、Mzが60万~140万、Mw/Mnが6.5~14.0、Mz/Mwが2.0~5.0であることが記載されており、これらの値と計算式からポリプロピレン樹脂組成物のMwは12万~70万(=60万/5.0~140万/2.0)と算出され、Mnは0.86万~10.77万(=12万/14.0~70万/6.5)と算出される。そうすると、本件発明1に係るポリプロピレン樹脂組成物のMnの値の上限が10.77万であることは、本件特許出願の当初明細書等に記載された事項であるといえる。 そうすると、本件発明1において、「Mnの値が4万以上であり」とする補正事項は、本件特許出願の当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであるといえる。 エ 申立人Bの主張について 申立人Bは令和3年10月8日付け意見書の第32~33頁において、 「実施例で示された最も大きいMn値(4.8万)と比べて相当大きなMn値(例えば20万のようなMn値)が、本件の当初明細書等に実質的に記載されているということはできない。」 として取消理由3は解消していない旨主張している。 しかしながら、上記ウで述べたとおり、上記補正後の請求項1の記載によれば、Mnの上限の値は実質的に6.25万であることが特定されており、例えば20万のような大きなMnの値は、補正後の請求項1に記載のMnの範囲外である。 したがって、申立人Bの上記主張は、採用できない。 オ まとめ よって、取消理由3及び申立理由B7は理由がない。 (3)取消理由4(拡大先願)について 申立理由B1は、特願2014-132997号(甲1B)に基づく拡大先願の理由であり、取消理由4と同様の理由であるので、併せて検討する。 ア 先願明細書等の記載事項及び先願明細書等に記載された発明 先願明細書等に記載された事項は、上記第5の2(6)で示した甲1Bの記載事項のとおりである。 そして、甲1Bにおいて、実施例1及び2は、請求項1に記載された発明を満足する具体例であって、甲1Bの段落【0031】~【0046】の記載に従って、実施例1は、ポリプロピレン樹脂Aの具体例であるポリプロピレン樹脂PP-1を80質量部及びポリプロピレン樹脂B2の具体例であるポリプロピレン樹脂PP-2を20質量部含むポリプロピレン樹脂組成物によって製造されている。また、実施例2は、ポリプロピレン樹脂Aの具体例であるポリプロピレン樹脂PP-1を65質量部及びポリプロピレン樹脂B2の具体例であるポリプロピレン樹脂PP-2を35質量部含むポリプロピレン樹脂組成物によって製造されている。 ここで、甲1Bの段落【0046】には、樹脂のブレンドによって調整する場合には、ポリプロピレン樹脂Aに対して、ポリプロピレン樹脂B2をドライあるいは溶融状態で混合してポリプロピレン樹脂組成物を得ること、ポリプロピレン樹脂A100質量%に対してポリプロピレン樹脂B2を好ましくは1~70質量%で混合することが記載されており、実施例1及び2は、この記載に従ってポリプロピレン樹脂B2の配合割合を変えて製造された2つの具体例であるということができる。 以上の記載から、実施例1と実施例2は、甲1Bの段落【0046】のポリプロピレン樹脂B2を1~70質量%で混合する点で共通する具体例であるということができ、甲1Bには、実施例1及び2から、ポリプロピレン樹脂B2の配合割合として、実施例1の20質量部を下限とし、実施例2の35質量部を上限とするポリプロピレン樹脂組成物の発明が記載されているといえる。 よって、先願明細書等(甲1B)には、実施例1及び2に着目して、以下の発明が記載されているといえる。 「Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1を80~65質量部、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2を20~35質量部の量で含むポリプロピレン樹脂組成物」(以下「甲1B発明」という。) イ 本件発明1について a 対比 甲1B発明は、上記アで示したとおりのものであり、本件発明1におけるただし書きで除かれる「ポリプロピレン樹脂組成物A」である。 そうすると、甲1B発明と本件発明1とは、「ポリプロピレン樹脂組成物」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1B-1> ポリプロピレン樹脂組成物が、本件発明1では「ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く」と特定されているのに対し、甲1B発明では「Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1を80~65質量部、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2を20~35質量部の量で含む」点 <相違点1B-2> ポリプロピレン樹脂組成物が、本件発明1では「(1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である」のに対し、甲1B発明では、そのようなメルトフローレート(MFR)を有するか明らかでない点 <相違点1B-3> ポリプロピレン樹脂組成物が、本件発明1では「(2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。」のに対し、甲1B発明では、そのようなペンタッドアイソスタクティック分率であるか明らかでない点 <相違点1B-4> ポリプロピレン樹脂組成物が、本件発明1では「(3)Mnが4万以上であり、Mw/Mnが7.0~10.0である。」のに対し、甲1B発明では、そのようなMn及びMw/Mnであるか明らかでない点 <相違点1B-5> ポリプロピレン樹脂組成物が、本件発明1では「(4)Mzが93万~140万であり、Mz/Mwが3.2~5.0である。」のに対し、甲1B発明では、そのようなMz及びMz/Mwであるか明らかでない点 b 判断 まず、相違点1B-1について検討する。 上記(ア)でも述べたとおり、甲1B発明の「Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1を80~65質量部、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2を20~35質量部の量で含む」という組成は、本件発明1において、ただし書きで除かれるポリプロピレン樹脂組成物の「ポリプロピレン樹脂組成物A」であるから、甲1B発明は本件発明1から除かれたものといえる。 そうすると、相違点1B-1は実質的な相違点であるし、もし樹脂組成物の組成を変更すると樹脂に依存するMFRやMn等の値も当然変わってしまうから、そのような変更は、課題解決のための手段における微差とはいえない。 c 小括 したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1B発明、すなわち先願明細書等に記載の発明と同一または実質同一であるとはいえない。 、 (イ)本件発明3~10について 本件発明3~10は、請求項1を引用するものであり、本件発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件発明1と同様の理由で、先願明細書等に記載の発明と同一または実質同一であるとはいえない。 ウ まとめ よって、取消理由4及び申立理由B1は理由がない。 3 当審が取消理由通知で採用しなかった申立理由について (1)申立理由A1、A2について ア 甲1Aに記載された発明 甲1Aの記載事項は上記第5 2(1)で摘記した翻訳文のとおりであるが、原文のsuccinateの訳語として申立人Aが提出した翻訳文の中で用いられる「コハク酸塩」は、技術的にみてコハク酸のエステルを包含する「サクシネート」の意と解することが妥当である。それを踏まえて、甲1Aの要約部、実験部の記載及び表2のサンプル7に着目して、以下の発明が記載されているといえる。 「内部/外部ドナーがサクシネート/ジシクロペンチルジメトキシシランであり、AlEt3/外部ドナーのモル比が20である、MgCl2担持型Ziegler-Natta触媒を用いたプロペン重合により得られた、Mnが45×103であり、Mwが341×103であり、Mw/Mnが7.6であり、Mzが1200×103であり、Mz/Mwが3.5であるポリプロピレン。」(以下、「甲1A発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 対比 甲1A発明の「Mnが45×103であり」「Mw/Mnが7.6であり」は、本件発明1の「(3)Mnが4万以上であり、Mw/Mnが7.0~10.0である。」に相当し、甲1A発明の「Mzが1200×103であり、Mz/Mwが3.5である」は、本件発明1の「(4)Mzが93万~140万であり、Mz/Mwが3.2~5.0である。」に相当する。 甲1A発明の「内部/外部ドナーがサクシネート/ジシクロペンチルジメトキシシランであり、AlEt3/外部ドナーのモル比が20である、MgCl2担持型Ziegler-Natta触媒を用いたプロペン重合により得られた」「ポリプロピレン」は、本件発明1の「ポリプロピレン樹脂組成物(ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く)」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1A発明とは、 「以下の要件(3)、(4)を満たすポリプロピレン樹脂組成物(ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く): (3)Mnが4万以上であり、Mw/Mnが7.0~10.0である。 (4)Mzが93万~140万であり、Mz/Mwが3.2~5.0である。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1A-1> 本件発明1では、「(1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。」と特定しているのに対して、甲1A発明では、当該MFRの値が不明である点。 <相違点1A-2> 本件発明1では、「(2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。」と特定しているのに対して、甲1A発明では、当該ペンタッドアイソタクティック分率の値が不明である点。 b 判断 事案に鑑みて、相違点1A-2について検討する。 甲1Aには、当該ペンタッドアイソタクティック分率について明示されていないし、甲1Aの記載からその値を直接導き出すことができるともいえない。 この点について、申立人Aが、甲2A及び参2Aの記載に基づいて実質的な相違点でないことを主張している(申立人Aの特許異議申立書の15頁参照)ことを踏まえ、これらの文献の記載内容について順次検討する。 甲2Aは、その書籍名からポリプロピレン(PP)に関する技術書の抜粋であり、摘示箇所には重合用のZiegler-Natta触媒について、「サクシネート系触媒が非常に分子量分布の広いPPを作り出す」との言及があり、表2.1の「各種Ziegler-Natta触媒の性能」において、サクシネートを含む触媒系として「MgCl2/TiCl4/Succinate + AlR3/Silane」が記載され、その「mmmm(%)」が「95~99」、分子量分布の指標である「Mw/Mn」が「10~15」であると記載されている。 ここで、甲2A記載の当該触媒系と、甲1A発明の「内部/外部ドナーがサクシネート/ジシクロペンチルジメトキシシランであり、AlEt3/外部ドナーのモル比が20である、MgCl2担持型Ziegler-Natta触媒」とを見比べると、両者の構成成分は類似するものの、甲2Aでは「Succinate」や「Silane」としての具体的な化合物名、各成分の比率を特定していないため、当該記載だけで甲1A発明の触媒系が甲2A記載の上記触媒系に該当すると直ちに断定できるものではない。むしろ、これらの触媒系を用いて得られるポリプロピレンのMw/Mnに着目すると、甲1A発明は「7.6」であって、甲2Aに記載の「10~15」よりも有意に小さいから、甲1A発明の触媒系は、甲2A記載の上記触媒系よりも狭い分子量分布をもたらすものである。そして、甲2Aでは上記触媒系について「非常に分子量分布の広いPPを作り出す」ことを特徴として挙げていることも踏まえると、甲1A発明の触媒系は、甲2A記載の上記触媒系に該当しないと解する合理的な根拠があるといえる。 したがって、甲2Aの上記触媒系に関する記載をそのまま甲1A発明に当てはめて、ペンタッドアイソタクティック分率の値を推定することが妥当であるとはいえない。 参2Aには、実施例においてTiCl4とMgCl2・1.9C2H5OHとジエチル2,3-(ジイソプロピル)サクシネートとを用いて固体触媒成分を調製し、それとアルミニウムトリエチル(TEAL)及び外部電子供与体成分としてのジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)とを接触させて触媒系を得たこと、それを重合に用いてプロピレンホモポリマーを調製したことが記載されている(段落【0055】~【0057】、【0061】、【0062】、表1~2)。ここで、表1の記載によれば、実施例1及び2で重合に用いたTEAL/DCPMS質量比が2.8及び3.4であり、AlEt3の分子量114、DCPMSの分子量228をもとにモル比に換算すると5.6及び6.8である。一方、甲1A発明ではAlEt3/外部ドナーのモル比が20である。してみると、両者の触媒系は、少なくとも当該モル比の点で3倍程度と大きく乖離しており、同等の触媒系であるとはいえないから、それによって得られるポリプロピレンの物性も同等と認めることはできない。 したがって、参2Aの実施例の記載をそのまま甲1A発明に当てはめて、ポリプロピレンのペンタッドアイソタクティック分率の値を推定することが妥当であるとはいえない。 また、他の甲号証及び参考文献の記載を見ても、甲1A発明のペンタッドアイソタクティック分率の値を推定するための十分な根拠を見いだせない。 よって、相違点1A-2は実質的な相違点であるから、相違点1A-1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1A発明、すなわち甲1Aに記載された発明でない。 (イ)本件発明3、8~9について 本件発明3、8~9はいずれも本件の請求項1を引用して発明を特定するものであるから、甲1A発明と対比すると、少なくとも上記相違点1A-2と同様の点で相違し、その判断については上記(ア)bで述べたとおりである。 よって、本件発明3は甲1Aに記載された発明でないし、本件発明8~9は甲1Aに記載された発明及び甲3Aに記載された事項から容易に発明をすることができたものでない。 ウ まとめ よって、申立理由A1、A2は理由がない。 (2)申立理由B4について ア 甲1Bについて 申立理由B4は、甲2Bを主引例とし、甲1Bを副引例とする進歩性欠如の理由である。 しかしながら、上記2(1)イでも述べたとおり、甲1Bの発行日は本件発明の優先日よりも後であり、本件発明1、3~10の進歩性を否定するための引例となりうるものではない。 そうすると、甲2B及び甲1Bの具体的な記載内容を検討するまでもなく、これらの文献によって本件発明1、3~10の進歩性を否定することはできない。 イ まとめ よって、申立理由B4は理由がない。 (3)申立理由B5について ア 甲3Bに記載された発明 甲3Bには、請求項1、段落【0079】、【0085】~【0086】、表1の記載から、実施例3に着目して、以下の発明が記載されているといえる。 「担持型チタン系触媒を用いた重合で得られたポリプロピレン樹脂100重量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.1重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.01重量部を配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練して得られた、以下の測定された物性を有するポリプロピレン樹脂のペレット: ASTM D-1238(230℃、2.16kg荷重)で測定したメルトフローレート(MFR)が3.2g/10minである。 13C-NMRスペクトルにおけるPmmmm、Pwの吸収強度から [図:0001391980000036.jpg] (式中、[Pmmmm]はプロピレン単位が5単位連続してイソタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度を示し、[Pw] はプロピレン単位のメチル基に由来する吸収強度を示す。)により求められる立体規則性指標[M5]が98.2%である。 Mnが54,000であり、Mwが355,000であり、Mzが1,350,000であり、Mw/Mnが6.6である。」(以下、「甲3B発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 対比 甲3B発明の「担持型チタン系触媒を用いた重合で得られたポリプロピレン樹脂100重量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.1重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウムを0.01重量部を配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練して得られた」「ポリプロピレン樹脂のペレット」は、本件発明1の「ポリプロピレン樹脂組成物(ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く)」に相当する。 甲3B発明の「ASTM D-1238(230℃、2.16kg荷重)で測定したメルトフローレート(MFR)が3.2g/10minである。」は、本件発明1の「(1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。」に相当する。 甲3B発明の「13C-NMRスペクトルにおけるPmmmm、Pwの吸収強度から [図:0001391980000037.jpg] (式中、[Pmmmm]はプロピレン単位が5単位連続してイソタクチック結合した部位における第3単位目のメチル基に由来する吸収強度を示し、[Pw] はプロピレン単位のメチル基に由来する吸収強度を示す。)により求められる立体規則性指標[M5]が98.2%である。」は、本件明細書の段落【0024】~【0025】の記載からみて、本件発明1の「(2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。」に相当する。 甲3B発明の「Mnが54,000であり」、「Mzが1,350,000であり」は、それぞれ、本件発明1の「(3)Mnが4万以上であり」、「(4)Mzが93万~140万であり」に相当する。 甲3B発明の「Mwが355,000であり、Mzが1,350,000であり」について、Mz/Mwの値は1,350,000/355,000=約3.8と計算されるから、本件発明1の「Mz/Mwが3.2~5.0である」を満たす。 そうすると、本件発明1と甲3B発明とは、 「以下の要件(1)~(4)を満たすポリプロピレン樹脂組成物(ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く): (1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。 (2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。 (3)Mnが4万以上である。 (4)Mzが93万~140万であり、Mz/Mwが3.2~5.0である。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3B> ポリプロピレン樹脂組成物のMw/Mnについて、本件発明1では「7.0~10.0である」のに対し、甲3B発明では「6.6」である点。 b 判断 相違点3Bについて検討するにあたって、はじめに本件発明1におけるパラメータ同士の相関性を確認し、次いで、申立理由B5で主引例である甲3B、副引例である甲5B、甲2Bの順に、記載内容に基づく検討を進める。 (a)本件発明1におけるパラメータ同士の相関性について 相違点3Bは、Mw/Mnという1つのパラメータについての相違点であり、一見、Mw/Mnの値についての容易想到性さえ検討すればよいように思われる。しかしながら、Mw/Mnは分子量の分布(すなわち、各分子量ごとのポリマー分子の数の分布)に依存するパラメータの1つであって、Mw/Mnを変えようとすればそれに伴って、分子量の単純な算術平均であるMnや分子量の加重平均であるMw、さらには、分子量の2乗を重みとして用いた加重平均であるMzの値やMzとMwの比Mz/Mwといった、分子量の分布に依存する他のパラメータも当然変動することとなる。すなわち、Mw/Mnを変えるということは、その樹脂の分子量分布を変えることを意味し、分子量分布の変化に伴って、Mn,Mw,Mzの各値も、それらの値に基づくMz/Mwの値も同時に変化するといえる。 そして、本件発明1では「Mnが4万以上」、「Mzが93万~140万」及び「Mz/Mwが3.2~5.0」というMn、Mz及びMz/Mwの範囲も要件として課されていることを併せて考慮すると、相違点3Bの検討においては、単純にMw/Mnの値だけに着目した容易想到性ではなく、Mn、Mz及びMz/Mwについて上記範囲内に維持しつつ(すなわち新たな相違点を生じさせずに)Mw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を変更することの容易想到性を検討する必要がある。 その点を念頭に置いて、以下に検討を進める。 (b)甲3Bについて まず、Mw/Mnの範囲について、甲3Bでは、段落【0012】に「5.4以上、好ましくは5.5以上、さらに好ましくは5.8~15」と記載され、その効果について「Mw/Mnが5.4以上・・・であるので、超高分子量成分が存在し、それが溶融状態から固化する過程でβ晶生成に優位に働き、β晶の生成量が多くなる。」と記載されている。そして、甲3Bにおいて実際にポリプロピレン樹脂を製造した実施例のうち最大のMw/Mnが、甲3B発明として着目した実施例3の「6.6」である。 してみると、甲3BではMw/Mnの値について、本件発明1の「7.0~10.0」よりも広い範囲が記載されているにとどまり、「7.0~10.0」の範囲内とした具体例の記載もない。 次に、Mw/Mn以外の分子量に関する事項について甲3Bの記載をみていくと、Mnの範囲について、段落【0012】には、「数平均分子量(Mn)が100000以下、好ましくは80000以下、さらに好ましくは80000~10000」と記載され、本件発明1の「Mnが4万以上」よりも大幅に小さい値まで許容されている。また、甲3BではMz及びMz/Mwのとりうる範囲については直接記載がないものの、同段落の「重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)が5.4以上、好ましくは5.5以上、さらに好ましくは5.8~15、Z平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn)が20以上、好ましくは21以上、さらに好ましくは21~40」との記載から、Mz=(Mz/Mn)×Mnにより算出されるMzの下限が20×10000=20万、上限が40×80000=320万、Mz/Mw=(Mz/Mn)/(Mw/Mn)により算出されるMz/Mwの下限が20/15=1.33、上限が40/5.4=7.4となるから、いずれも本件発明1の「Mzが93万~140万」及び「Mz/Mwが3.2~5.0」の範囲より大幅に広い範囲が許容されている。 してみると、甲3Bには、Mn、Mz及びMz/Mwについて本件発明1で特定される範囲内に維持しつつMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を変更することは何ら動機付けられないといえるから、甲3Bの記載からでは、甲3B発明において、Mn、Mz及びMz/Mwの値についての新たな相違点を生じさせずにMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように、分子量の分布を変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (c)甲5Bについて 甲5Bには、「高温条件下で高い絶縁破壊電圧特性を有する極薄のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム」を提供することを目的として(段落【0017】)、「分子量分布Mw/Mnが7以上12以下」であるアイソタクチックポリプロピレンが記載されており(請求項1)、さらに「分子量分布が広い、すなわち、Mw/Mn値が高いポリプロピレン原料樹脂は、成形性や剛性に優れることが当業者においては常識とされている。」と記載され(同【0054】)、表1~2には、実施例1~4のポリプロピレンフィルムのMw/Mnが最小「7.5」、最大「8.4」であることが示されている。このように、甲5Bには、ポリプロピレンのMw/Mnについて、本件発明1の規定する「7.0~10.0」の範囲内の数値自体は記載されている。 しかしながら、甲5Bの実施例のMnの値を表1~2のMw、Mw/Mnの数値からMn=Mw/(Mw/Mn)に基づき計算すると、最小で3.3万(実施例3、4)、最大で3.7万(実施例2)と算出され、いずれも本件発明1で規定する「Mnが4万以上」という範囲を外れてしまっている。 そうすると、甲5Bには、少なくともMnについて本件発明1の規定する範囲内に維持しつつMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を制御するという技術思想は何ら示されていないといえるから、甲3B発明において、さらに甲5Bに記載された事項を加味しても、Mn、Mz及びMz/Mwの値について新たな相違点を生じさせずにMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (d)甲2Bについて 甲2Bには、高い剛性およびその他の機械的特性に加えて作業性も改良されたプロピレンポリマー(段落【0005】)として、 「次の特徴: 1)97%より高い、NMRにより測定されたアイソタクチックペンタド(mmmm)の含量; 2)6と等しいか、または6より高い、 [図:0001391980000038.jpg] 比で表される分子量分布;および 3)5.5と等しいか、または5.5より低い、 [図:0001391980000039.jpg] 比の値を有するプロピレンポリマー。」 が記載され(請求項1)、表2には、実施例1~3として、Mw/Mnが最小で「8.7」、最大で「9.6」、Mz/Mwが最小で「4.1」、最大で「4.8」であるポリマーが記載されている。。このように、甲2Bには、プロピレンポリマーのMw/Mnについて、本件発明1の規定する「7.0~10.0」の範囲内の数値自体は記載されている。 しかしながら、甲2Bには、Mw/Mn及びMz/Mwという比が記載されているにとどまり、Mn及びMzそのものの値については何ら記載されておらず、上記の比だけではこれらの値を算出することもできない。 そうすると、甲2Bには、少なくともMn及びMzについて本件発明1の規定する範囲内に維持しつつMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を制御するという技術思想は何ら示されていないといえるから、甲3B発明において、さらに甲2Bに記載された事項を加味しても、Mn、Mz及びMz/Mwの値について新たな相違点を生じさせずにMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (e)本件発明1の効果について あわせて、本件発明1の奏する効果についても確認する。 本件明細書の表1に示された実施例及び比較例の評価結果から、本件発明1はMw/Mnを「7.0~10.0」とすることによって、特にTD方向の熱収縮率に優れるという有利な効果を奏することが確認できるところ、当該効果は上記のいずれの甲号証にも記載されておらず、当業者が予測し得ない異質な効果といえる。 c 小括 よって、本件発明1は、甲3B発明、すなわち甲3Bに記載された発明及び甲5B、甲2Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (イ)本件発明3~10について 本件発明3~10はいずれも本件の請求項1を引用して発明を特定するものであるから、甲3B発明と対比すると、少なくとも上記(ア)aの相違点3Bと同様の点で相違し、その判断については上記(ア)bで述べたとおりである。 よって、本件発明3~10は甲3Bに記載された発明並びに甲5B又は甲2Bに記載された事項から容易に発明をすることができたものでない。 ウ まとめ よって、申立理由B5は理由がない。 (4)申立理由B6について ア 甲4Bに記載された発明 甲4Bには、請求項1、段落【0063】、【0077】~【0079】、表2~3の記載から、実施例4に着目して、以下の発明が記載されているといえる。 「ポリプロピレン100重量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.1重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム 0.01重量部を配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練して得られた、以下の測定された物性を有するポリプロピレンのペレット: ASTM D-1238の方法により230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が2.6g/10分である。 13C-NMRスペクトルより算出したメソペンタッド分率が0.942である。 Mnが51,000であり、Mwが349,000であり、Mzが1,381,000であり、Mw/Mnが6.8である。 灰分含有量が19wtppmであり、塩素含有量が1wtppmであり、鉄分含有量が0.05wtppm以下である。」(以下、「甲4B発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件発明1について a 対比 甲4B発明の「ポリプロピレン100重量部に対して、酸化防止剤として3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを0.1重量部、酸化防止剤としてテトラキス[メチレン-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを0.2重量部、中和剤としてステアリン酸カルシウム 0.01重量部を配合し、単軸押出機を用いて、樹脂温度230℃で溶融混練して得られた」「ポリプロピレンのペレット」は、本件発明1の「ポリプロピレン樹脂組成物(ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く)」に相当する。 甲4B発明の「ASTM D-1238の方法により230℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が2.6である。」は、本件発明1の「(1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。 」に相当する。 甲4B発明の「13C-NMRスペクトルより算出したメソペンタッド分率が0.942である。」は、本件発明1の「(2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。」に相当する。 甲4B発明の「Mnが51,000であり」、「Mzが1,381,000であり」は、それぞれ、本件発明1の「(3)Mnが4万以上であり」、「(4)Mzが93万~140万であり」に相当する。 甲4B発明の「Mwが349,000であり、Mzが1,381,000であり」について、Mz/Mwの値は1,381,000/349,000=約4.0と計算されるから、本件発明1の「Mz/Mwが3.2~5.0である」を満たす。 そうすると、本件発明1と甲4B発明とは、 「以下の要件(1)~(4)を満たすポリプロピレン樹脂組成物(ただし、Mnが3.6×104、Mwが31×104、Mzが120×104、MFRが4.6g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-1の80~65質量部と、Mnが12×104、Mwが58×104、Mzが180×104、MFRが0.35g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-2の20~35質量部を含み、Mnが4.2×104~4.6×104、Mwが33×104~37×104、Mzが120×104~130×104、Mw/Mnが7.9~8.0、Mz/Mnが28.3~28.6であるポリプロピレン樹脂組成物A、前記ポリプロピレン樹脂PP-1の65質量部と、Mnが4.5×104、Mwが34×104、Mzが130×104、MFRが3.1g/10分であるポリプロピレン樹脂PP-3の35質量部を含み、Mnが4.0×104、Mwが29×104、Mzが98×104、Mw/Mnが7.3、Mz/Mnが24.5であるポリプロピレン樹脂組成物B、及び前記ポリプロピレン樹脂PP-3である場合を除く): (1)ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が、1~10g/10分である。 (2)13C-NMRを用いて測定したペンタッドアイソタクティック分率が、0.930~0.999である。 (3)Mnが4万以上である。 (4)Mzが93万~140万であり、Mz/Mwが3.2~5.0である。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4B> ポリプロピレン樹脂組成物のMw/Mnについて、本件発明1では「7.0~10.0である」のに対し、甲4B発明では「6.8」である点。 b 判断 相違点4Bは、上記(3)イ(ア)aの相違点3Bと同様に、Mw/Mnについての相違点であるから、上記(3)イ(ア)b(a)で説明したように、単純にMw/Mnの値だけに着目した容易想到性ではなく、Mn、Mz及びMz/Mwについて上記範囲内に維持しつつ(すなわち新たな相違点を生じさせずに)Mw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を変更することの容易想到性を検討する必要がある。 それを踏まえて、申立理由B6で主引例である甲4B、副引例である甲5B、甲2Bの順に、記載内容に基づく検討を進める。 (a)甲4Bについて まず、Mw/Mnの範囲について、甲4Bには、段落【0021】に「Mw/Mnが5以上、好ましくは6以上」と記載され、その効果について「このような広分子量分布を示すポリプロピレンの成形性は、押出成形体を徐冷した場合にβ晶・・・を多く生成する」ことが記載されている。そして、甲4Bにおいて実際にポリプロピレンを製造した実施例のうち最大のMw/Mnが、甲4B発明として着目した実施例4の「6.8」である。 してみると、甲3BではMw/Mnの範囲について下限のみ規定され、実施例の値も最大で6.8までであるから、本件発明1で規定する「7.0~10.0」の範囲内とすることが記載されているとはいえない。 次に、Mw/Mn以外の分子量に関する事項について甲4Bの記載をみていくと、同【0021】に「Mz/Mnが15以上、好ましくは20以上」と記載されているほかは、MnやMzについて、どの程度の範囲が好ましいのか(或いは許容されるのか)といった事項は何ら記載されていない。 してみると、甲4Bには、Mn、Mz及びMz/Mwについて本件発明1で特定される範囲内に維持しつつMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を変更することは何ら動機付けられていないといえるから、甲4Bの記載からでは、甲4B発明において、Mn、Mz及びMz/Mwの値についての新たな相違点を生じさせずにMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように、分子量の分布を変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (b)甲5B、甲2Bについて Mw/Mnやその他の分子量に関する甲5B、甲2Bの記載内容の検討は、既に上記(3)イ(ア)b(c)及び(d)で述べたとおりである。 したがって、甲4B発明において、さらに甲5B又は甲2Bに記載された事項を加味しても、Mn、Mz及びMz/Mwの値について新たな相違点を生じさせずにMw/Mnが「7.0~10.0」の範囲内となるように分子量の分布を変更することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (c)本件発明1の効果について 本件発明1の奏する効果については、上記(3)イ(ア)b(e)で述べたとおりであり、この効果は上記のいずれの甲号証にも記載されておらず、当業者が予測し得ない異質な効果といえる。 c 小括 よって、本件発明1は、甲4B発明、すなわち甲4Bに記載された発明及び甲5B、甲2Bに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。 (イ)本件発明3~10について 本件発明3~10はいずれも本件の請求項1を引用して発明を特定するものであるから、甲4B発明と対比すると、少なくとも上記(ア)aの相違点4Bと同様の点で相違し、その判断については上記(ア)bで述べたとおりである。 よって、本件発明3~10は甲4Bに記載された発明並びに甲5B又は甲2Bに記載された事項から容易に発明をすることができたものでない。 ウ まとめ よって、申立理由B6は理由がない。 (5)申立理由B8について ア サポート要件の考え方 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 以下、この観点に立って検討する。 イ 本件発明の課題 本件発明の課題は、本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0007】によれば、「押出し特性が良好であり、フィルムにした際に外観が良好であり、かつ厚みのムラが少なく、力学的特性のバランスに優れ、高い耐熱性を示すポリプロピレン樹脂組成物を提供すること」と認められる。 ウ 発明の詳細な説明の記載 上記課題に関連した本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみてみると、段落【0021】に「本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物は、以下の要件(1)~(3)を満たす。本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物が以下の要件(1)~(3)を満たすことにより、押出し特性が良好であり、フィルムにした際に外観が良好であり、かつ厚みのムラが少なく、力学的特性のバランスに優れ、高い耐熱性を示す。」と記載されている。 そして、要件(1)につき、段落【0022】には、「該MFRが1~10g/10分の範囲内であるとき、押出性、延伸性が良好である。」ことが記載されており、上記課題のうち「押出し特性が良好であ」ることが示されている。 また、要件(2)につき、段落【0023】には、「該mmmm分率が0.930未満では、結晶性が低いため所望の力学的物性が得られない。また、高い絶縁破壊電圧を有するフィルムコンデンサ用キャパシタフィルムが得られない。これは、mmmm分率が低いため、電気を通しやすい非晶部が多いことが原因と推定される。一方、該mmmm分率が0.999以下であることにより、延伸時におけるボイドの発生を抑制でき、所望の力学的物性が得られやすい。」と記載され、上記課題のうち「力学的特性のバランスに優れ」ていることが示されている。 そして、要件(3)につき、段落【0026】には、「該Mzが60万~140万の範囲内であるとき、押出性、原反形成性が良好である。該Mzが60万未満であると、樹脂の粘度が不足して成形時にネッキングが生じ、原反の成形ができない。また、該Mzが140万を超えると、押出成形時に押出量の低下が見られ、原反の外観が不良となり、結果として良好な延伸フィルムを得ることができない。」と記載されており、上記課題のうち「押出し特性が良好であり、フィルムにした際に外観が良好であ」ることが示されている。また、段落【0027】には「該Mw/Mnが6.5~14.0の範囲内であるとき、延伸性が良好である。該Mw/Mnが6.5未満であると、厚み精度の良好なフィルムが得られない。また、該Mw/Mnが14.0を超えると、樹脂内部での粘度差が大きく、シートを延伸する時に破断が生じやすくなる。また延伸後の残存応力が高くなり、熱収縮率が大きくなる。」と記載されており、所定の範囲内の該Mw/Mnによって上記課題のうち「厚みのムラが少な」いことが示されている。 さらに、要件(4)につき、段落【0028】には、「該Mz/Mwが2.0以上であることにより、良好な延伸性が得られる。また、該Mz/Mwが5.0以下であることにより、押出特性、原反外観および厚み精度が良好な延伸フィルムが得られる。」と記載されており、上記課題のうち「厚みのムラが少な」いことが示されている。 そして、実施例において、表1に示すとおりの12種類のペレットを作製し、PP1A~PP4Aの4つの実施例及びPP5A~PP12Aの8つの比較例について、各種物性及び上記課題に対応する各評価項目の評価結果が開示されている。 エ 判断 上記ウで示した段落【0021】の「以下の要件(1)~(3)を満たすことにより、押出し特性が良好であり、フィルムにした際に外観が良好であり、かつ厚みのムラが少なく、力学的特性のバランスに優れ、高い耐熱性を示す。」との記載について、上記イで示した本件発明の課題を併せて考えると、「以下の要件(1)~(3)を満たすことにより」本件発明の課題が解決することが示されているといえる。そして、当該段落でいう「以下の要件(1)~(3)」は、それに続く段落【0022】~【0027】に記載の「要件(1)」、「要件(2)」、「要件(3)」を指すものと解されるので当該段落の記載を順次みていく。 まず、「要件(1)」として段落【0022】では「ASTM D1238に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)は1~10g/10分」であること、すなわち本件発明の要件(1)と同じ要件が記載され、それによって押出性、延伸性が良好となるといえる。 次に、「要件(2)」として段落【0023】では「13C-NMRを用いて測定したアイソタクティックペンタッド分率(mmmm分率)は」「好ましくは0.930~0.999であり」であること、すなわち本件発明の要件(2)と同じ要件が記載され、それによって所望の力学的物性が得られるといえる。 そして、「要件(3)」として段落【0026】では「本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物のMzは60万~140万であり、」と記載され、表1によれば実施例で最もMzの小さい実施例3のMzが93万であることも踏まえると、当該要件におけるMzの範囲は、本件発明の要件(4)におけるMzの範囲である「93万~140万」を包含するものといえる。さらに、「要件(3)」について段落【0027】では「本発明に係るポリプロピレン樹脂組成物の、分子量分布を示すMwとMn(数平均分子量)との比(Mw/Mn)は6.5~14.0であり、・・・より好ましくは6.8~10.0であり、更に好ましくは7.0~8.0である。」と記載され、好ましい上限及びさらに好ましい下限が本件発明の要件(3)のMw/Mnの範囲である「7.0~10.0」と一致している。そして、段落【0026】~【0027】の記載によれば、Mz及びMw/Mnを特定の範囲内とする「要件(3)」(すなわち本件発明の要件(3)、(4)におけるMz及びMw/Mnの範囲条件)によって、押出性、原反形成性、厚み精度、熱収縮率が良好となるといえる。 そして、表1の記載内容から、実施例1~4が本件発明の発明特定事項をすべて充足し、いずれの評価項目も良好である一方、比較例1~8が本件発明の発明特定事項の少なくとも1つを満たさず、評価結果で劣っていることも踏まえると、少なくとも本件発明における要件(1)、要件(2)、要件(3)のMw/Mnの範囲条件、及び要件(4)のMzの範囲条件という特定事項によって、本件発明は上記課題を解決することができるように、発明の詳細な説明に記載されているといえる。 オ 申立人Bの主張の検討 申立人Bは特許異議申立書の第105頁において、概略、発明の詳細な説明には本件発明の課題を解決できるMnの範囲について何も説明されておらず、実施例において4.1万~4.8万の4つのポリプロピレン樹脂組成物のMn値が記載されているに過ぎないことを指摘し、実施例と比べて相当大きなMn値(例えば20万のようなMn値)を有する場合においても、実施例と同様に上記課題を解決できることを当業者が理解できるとはいえない旨を主張している。 しかしながら、上記エで示したとおり、発明の詳細な説明には、Mnの範囲以外の事項によって上記課題を解決することができると記載されているのであるから、課題の解決とMnの範囲の関係が発明の詳細な説明に記載されていないからといって、それだけでサポート要件を充足しないといえるものではない。また、本件発明においてMnの上限は明示されていないものの、Mw/Mnが7.0~10.0、Mzが93万~140万、Mz/Mwが3.2~5.0であり、ポリプロピレン樹脂組成物のMwは18.6万~43.75万(=93万/5.0~140万/3.2)と算出され、同じくMnは1.86万~6.25万(=18.6万/10.0~43.75万/7.0)と算出され、間接的に規定されるMnの上限は、6.25万であるといえるから、申立人Bの主張する20万という過大なMnの値はそもそも本件発明に包含されるものではない。 さらに、Mnの範囲を特定しなければ上記課題を解決できないことを技術的に裏付ける実験成績証明書等の具体的な証拠も、申立人Bから提示されていない。 よって、上記主張は採用することができない。 カ まとめ よって、申立理由B8は理由がない。 (6)申立理由B9について ア 概要 申立理由B9については、申立人Bの特許異議申立書の第105~106頁の「サ 取消理由8」において、概略、以下のように述べられている。 本件発明1で規定する各要件のうち「Mn」の数値範囲には上限がなく、例えばMnが10万のときには、本件発明1で特定されるMw/Mn及びMz/Mwの数値範囲から計算されるMzは224万~500万でなければならないことになる。 このように、本件発明1は実施不可能な範囲を含んでいることが明らかであり、技術的な矛盾を含んでいるから、不明確である。本件発明2~10についても、本件発明1と同様に不明確である。 イ 検討 本件発明1では、ポリプロピレン樹脂組成物について、Mnの上限は明示的に規定されていないものの、Mw/Mnが7.0~10.0、Mzが93万~140万、Mz/Mwが3.2~5.0であり、ポリプロピレン樹脂組成物のMwは18.6万~43.75万(=93万/5.0~140万/3.2)と算出され、同じくMnは1.86万~6.25万(=18.6万/10.0~43.75万/7.0)と算出されるから、間接的に規定されるMnの上限は、6.25万であるということができる。 してみると、本件発明1は、Mnが例えば10万のような過大な値をとることはなく、技術的に矛盾を含んでいないといえる。 よって、上記アで示す申立人Bの主張は採用できず、本件発明1は明確である。 また、本件発明3~10についても、同様に明確である。 ウ まとめ よって、申立理由B9は理由がない。 第7 むすび 特許第6725496号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 本件発明2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 当審が通知した取消理由及び特許異議申立人が申し立てた申立理由によっては、本件発明1、3~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、3~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700062

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