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特許異議申立

2022-701034

液状皮膚外用剤

審判番号
2022-701034
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-193631
登録番号
7060936
請求日
2022年10月19日
審決日
2024年02月26日
公報発行日
2024年06月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】花王株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人アルガ特許事務所
  • 【異議申立人】田中 祐子
審判長/審判官
  • 審判長 井上 典之
  • 審判官 齊藤 真由美
  • 審判官 瀬良 聡機
分類
P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7060936号発明「液状皮膚外用剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7060936号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7060936号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7060936号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年10月3日に出願され、令和4年4月19日に特許権の設定の登録がされ、同年同月27日にその特許掲載公報が発行された。その後、同年10月19日に、本件特許の請求項1~4に係る特許に対し、特許異議申立人 田中 祐子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。 その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和 5年 2月20日付け 取消理由通知 同年 4月28日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年 5月15日付け 訂正請求があった旨の通知 同年 6月19日 意見書の提出(申立人) 同年 9月 4日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年11月 1日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) なお、令和5年4月28日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「先の訂正請求」という。)は、令和5年11月1日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 また、申立人には、既に先の訂正請求に対する意見書の提出の機会が与えられており、後記第2の1のとおり、本件訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され(先の訂正請求により訂正された特許請求の範囲に比較してさらに減縮されている。)、後記第5のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても、特許を維持すべきとの結論になると合議体は判断した。 したがって、本件訂正請求については、申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるといえるから(特許法第120条の5第5項ただし書)、申立人に再度の意見書を提出する機会を与えなかった。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、 「特許第7060936号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める。」 というものであり、その訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項1~3からなるものである。 なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、成分(B)の含有量について 「0.01~2.5質量%」 と記載されているのを、 「0.05~2.5質量%」」 に訂正する。 請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、成分(B)について 「N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン、グリシン及びN-アミジノ-L-プロリンから選択される1種又は2種以上」 と記載されているのを、 「N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上」 に訂正する。 請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~4も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、成分(C)について 「ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルカリゲネス レータス B-16 ポリマー及びビオサッカリドガム-1から選択される1種又は2種以上」 と記載されているのを、 「ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルカリゲネス レータス B-16 ポリマー及びビオサッカリドガム-1から選択される1種又は2種以上」 に訂正する。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~4について、請求項2~4は、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用しており、訂正事項1及び2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~4に対応する訂正後の請求項1~4に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してされたものである。 3 訂正要件の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的の適否 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1に「成分(B)」の含有量として「0.01~2.5質量%」と記載されているのを、当該範囲内で下限値を上げて「0.05~2.5質量%」とし、さらに範囲を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の段落【0015】には、「成分(B)は、・・・、含有量は、・・・、全組成中に0.01~2.5質量%であり、・・・0.05~1.5質量%がさらに好ましい。」(摘記中の下線は当審合議体が付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同じ。)と記載されており、当該成分(B)のさらに好ましい含有量の範囲の下限値として「0.05」質量%が記載されているから、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項1に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項1における「成分(B)」の含有量を限定するものであって、当該訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的の適否 訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項1において、「成分(B)」の選択肢として択一的に記載されている、「N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン、グリシン及びN-アミジノ-L-プロリンから選択される1種又は2種以上」の中から、「N-アミジノ-L-プロリン」を削除し、当該選択肢の種類を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項2に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正前の請求項1における「成分(B)」の選択肢の1つを削除して、選択肢の種類を限定するものにすぎないから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項2に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項1における「成分(B)」の選択肢の種類を限定するものであって、当該訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的の適否 訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項4において、「成分(C)」の選択肢として択一的に記載されている、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルカリゲネス レータス B-16 ポリマー及びビオサッカリドガム-1から選択される1種又は2種以上」の中から、「ヒドロキシエチルセルロース」を削除し、当該選択肢の種類を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項3に係る訂正は、上記アで述べたとおり、訂正前の請求項4における「成分(C)」の選択肢の1つを削除して、選択肢の種類を限定するものにすぎないから、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 ウ 実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更の存否 訂正事項3に係る訂正は、上記ア及びイで述べたとおり、訂正前の請求項4における「成分(C)」の選択肢の種類を限定するものであって、当該訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 訂正事項1~3に係る訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的とするものであるが、本件特許異議申立事件においては、本件訂正前の全ての請求項である請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~4に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 4 本件訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するものである。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、令和5年11月1日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件特許に係る発明 前記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の請求項1~4(以下「本件請求項1」~「本件請求項4」ということがある。)の記載は、令和5年11月1日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(下線は本件訂正による記載の変更箇所を示す。)。 そして、本件請求項1~4に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された以下の事項により特定されるとおりのものであると認める(以下「本件発明1」~「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 下記成分(A)~(D): (A)数平均分子量700~40000のポリアルキレングリコール 0.01~3.2質量%、 (B)N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上 0.05~2.5質量%、 (C)ヒドロキシアルキル基を有するセルロース系高分子及び/又はフコースを含む多糖系高分子 0.001~1.2質量%、 (D)水 を含有し、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.1~30である液状皮膚外用剤。 【請求項2】 さらに、(E)多価アルコールを含有する請求項1記載の液状皮膚外用剤。 【請求項3】 さらに、(F)エタノールを含有する請求項1又は2に記載の液状皮膚外用剤。 【請求項4】 成分(C)が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルカリゲネス レータス B-16 ポリマー及びビオサッカリドガム-1から選択される1種又は2種以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の液状皮膚外用剤。」 第4 申立理由及び取消理由の概要 1 申立理由の概要及び証拠方法 申立人は、証拠方法として、下記(2)のとおり、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して甲第1号証~甲第6号証(以下「甲1」~「甲6」という。)を提出し、申立書の全体の記載からみて、下記(1)に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張しているものと認められる。 なお、ここでの「請求項1」及び「本件発明1」等とは、本件特許の設定登録時の請求項1及び当該請求項1に係る発明等のことである。 (1)申立理由の概要 ア 申立理由1(甲1に基づく新規性欠如(甲3~6を援用)) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 イ 申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如(甲3~6を援用)) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 ウ 申立理由3(甲2を主引例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 エ 申立理由4(サポート要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の記載が、下記(ア)及び(イ)の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、請求項1~4に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 (ア)本件発明1~4は、「液状皮膚外用剤」が含有する「成分(A)」として、「数平均分子量700~40000のポリアルキレングリコール 0.01~3.2質量%」と特定しているが、発明の詳細な説明の実施例1~5並びに比較例3及び4の記載をみると、「成分(A)」の「ポリアルキレングリコール」の数平均分子量が多いほど、含有量は少なくてもよいという関係が見てとれるから、少なくとも、数平均分子量の大きい「成分(A)」を多く含有するものと、数平均分子量の小さい「成分(A)」を少し含有するものは、課題を解決することができると認識できず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 (イ)発明の詳細な説明の実施例における、官能試験による評価において、それぞれのパネラーが1点上げるにはどの程度の評価項目の向上が認められたかをパネラー間で共通にする等の手順が踏まれたことや、各パネラーの個別の評点について記載されていないから、少しの変化で加点又は減点の幅を大きく捉えるパネラーや、大きな変化でも加点又は減点の幅を小さくとらえるパネラーが存在する可能性が否定できず、評点を全パネラーの合計値で示すことで各評価項目を客観的に正確に評価したものととらえることも困難であるため、発明の詳細な説明に記載の評価試験からは、本件発明1~4が、課題を解決できたことを当業者は理解できず、発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。 (2)証拠方法 甲1:特開2017-81879号公報(公開日:平成29年5月18日) 甲2:特開2015-98453号公報 甲3:味の素株式会社編著、「トコトンやさしいアミノ酸の本」、2017年3月30日初版1刷発行、日刊工業新聞社発行、p.8 甲4:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「アミノ酸の基本情報・配合目的・安全性」、公開日:2021年5月29日、[online]、[令和4年9月27日印刷]、インターネットURL: https://cosmetic-ingredients.org/skin-conditioning-miscellaneous/amino-acids/ 甲5: 味の素株式会社公式ホームページ、「アミノ酸大百科 カンタン解説!アミノ酸 アミノ酸の名称につく「L」「D」「DL」とは?」、公開日:不明、[online]、[令和4年9月27日印刷]、インターネットURL: https://www.ajinomoto.co.jp/amino/about/aminoacids/kuwashiku1.html 甲6:Lubert Stryer 原著、入村達郎ほか 監訳、田口マミ子ほか 訳、「ストライヤー 生化学 第4版」、1996年11月25日第1刷発行、株式会社トッパン発行、p.18~19 2 当審合議体が通知した取消理由の概要及び引用した文献 (1)先の取消理由通知で通知した取消理由の概要及び追加引用した文献 本件訂正前かつ先の訂正請求の前の請求項1~4に係る特許に対し、当審合議体が令和5年2月20日付け取消理由通知(以下「先の取消理由通知」という。)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記アのとおりであり、当審合議体が、申立人が提出した甲1~4、6に追加して引用した参考文献1~参考文献5(以下「参考1」~「参考5」という。)は、下記イのとおりである。 ア 先の取消理由通知書で通知した取消理由の概要 (ア)取消理由1(甲1に基づく新規性欠如(甲3、4、6を援用)) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 (イ)取消理由2(進歩性欠如) a 甲1を主引例とする進歩性欠如(甲3、4、6を援用) 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 b 甲2を主引例とする進歩性欠如 本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明、並びに、甲3及び参考1~5に記載された技術的事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 イ 当審合議体が追加して引用した文献 参考1:Tara E. Gottschalck, 他1名編、「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook Tenth Edition 2004 Volume 2」、2004年、The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association発行、p.1218、「PEG-32」の項目 参考2:特開2016-222586号公報 参考3:特開2011-63578号公報 参考4:「化粧品成分オンライン」ウェブサイト、「PEG(ポリエチレングリコール)の基本情報・配合目的・安全性」、公開日:2021年9月25日、[online]、[令和5年1月30日検索]、インターネットURL: https://web.archive.org/web/20210925204843/https://cosmetic-ingredients.org/base/polyethylene-glycol/ 参考5:「添加剤ドットコム(R)」ウェブサイト、「三洋化成工業株式会社」「PEG-1540」、公開日:2019年4月26日、[online]、[令和5年1月30日検索]、インターネットURL: https://www.tenkazai.com/product-sanyo-chemical/peg-1540.html(合議体注:「(R)」は上付文字の○内にRを示す。) (合議体注:甲4並びに参考4及び5は、本件特許の出願後に公開された文献であるが、甲4は、L体又はD体アミノ酸について上記出願前後で変わらない化学的事実を示すために引用した。また、参考4及び5は、ポリエチレングリコールについての化粧品表示名称及び医薬部外品表示名称と平均分子量や平均重合度との関連について、本件特許の出願時点においても一定程度確立されていたと理解できる表記上の事実を示すものとして引用した。) なお、上記ア(ア)の取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)は、上記1(1)アの申立理由1(甲1に基づく新規性欠如)に対応するものであり、上記ア(イ)の取消理由2のうち、a(甲1を主引例とする進歩性欠如)は、上記1(1)イの申立理由2(甲1を主引例とする進歩性欠如)に対応するものであり、上記ア(イ)の取消理由2のうち、b(甲2を主引例とする進歩性欠如)は、上記1(1)ウの申立理由3(甲2を主引例とする進歩性欠如)に対応するものである。 (2)取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由の概要 本件訂正前かつ先の訂正請求により訂正された請求項1~4に係る特許に対し、当審合議体が令和5年9月4日付け取消理由通知(決定の予告)(以下「取消理由通知(決定の予告)」という。)で特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 [取消理由] 本件特許の請求項1~4に係る発明は、令和5年2月20日付け取消理由通知(先の取消理由通知)に記載した取消理由の理由2のうち、b(甲2を主引例とする進歩性欠如)が解消していないから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 なお、先の訂正請求により訂正された請求項1~4は、本件訂正後の請求項1~4と比較すると、請求項1に記載の「成分(B)」の選択肢に「N-アミジノ-L-プロリン」が含まれている点、及び、請求項4に記載の「成分(C)」の選択肢に「ヒドロキシエチルセルロース」が含まれている点、が異なるだけである。 第5 当審合議体の判断 当審合議体は、本件請求項1~4に係る特許は、当審合議体が通知した取消理由及び申立人が申し立てた理由によっては、取り消すことはできないと判断する。その理由の詳細は以下のとおりである。 1 当審合議体が通知した取消理由についての判断 (1)甲1~甲6及び参考1~参考5の記載事項 ア 甲1の記載事項 甲1には、次の事項が記載されている。 なお、摘記中の下線は、特に注釈がない限り当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下、他の文献の摘記についても同様である。 甲1a 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記(A)~(C)成分を含有する透明性化粧料。 (A) 二価カルボン酸と、平均重合度2上15以下のポリグリセリンから構成されるオリゴマーエステル 透明化粧料総量に対して0.008質量%以上1.1質量%以下 (B) アスコルビン酸又はその水溶性誘導体 (C) 数平均分子量が600以上200,000以下のポリアルキレングリコール」 甲1b 「【背景技術】 【0002】 近年、アスコルビン酸及びその誘導体は、安全性が確認され、メラニンの生成を抑制し、優れた美白効果を呈する成分として、化粧品や医薬品の成分として広く用いられている。 【0003】 しかしながら、アスコルビン酸及びその誘導体は、水中に溶解した際にべたつきを生じ、透明性化粧料の外観上の清涼感やみずみずしいイメージを損なってしまう場合があった。また、アスコルビン酸及びその誘導体は酸化されやすいため、外観が透明又は半透明の化粧料、例えば化粧水、美容液などに配合すると、経時的な着色(黄変)が生じ、安定に配合することが難しい場合があった。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ・・・、水溶性ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサンを配合してアスコルビン酸及びその誘導体に由来するべたつき感を抑制しようとしても、経時で白濁や変色が生じやすく、改善の余地があった。また、経時での透明性を改善するために界面活性剤を多量に配合して可溶化すると、逆に界面活性剤に由来するべたつき感を強く感じられるようになり、肌馴染みが低下してしまうという問題があった。更に、油剤を含有しないか又は少量しか配合していないため、塗布直後には透明性化粧料中の水性成分により、保湿感を感じられたとしても、時間の経過と共に塗布部から水性成分の蒸散が進み、その保湿感が維持されにくいという問題もあった。 【0008】 したがって、本発明は、外観の透明性が良好で、高温及び低温安定性に優れ、塗布後、角層水分量を長時間維持し、保湿効果の持続性が良好であり、べたつきや刺激感がなく、肌馴染みの良い、使用性にも優れた透明性化粧料に関する。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者は、アスコルビン酸又はその誘導体を含有する透明性化粧料において、水への溶解性を有するオリゴマーエステルを配合することを検討したが、高温時に濁りが生じ、保湿効果の持続性も十分に改善されないことが分かった。そこで、本発明者は更に検討した結果、オリゴマーエステルと併用すると低温安定性の低下が見られたポリアルキレングリコールを、前記のアスコルビン酸及びその誘導体とオリゴマーエステルを含有する透明性化粧料に更に配合したところ、全く意外にも、透明性が良好で、高温及び低温安定性に優れた透明性化粧料となり、かつ、塗布後の保湿効果の持続性が顕著に改善されることを見出した。更に、この透明性化粧料は、べたつきや刺激がなく、肌馴染みも良好であることを見出し、本発明を完成させた。 【0010】 すなわち、本発明は、下記(A)~(C)成分を含有する透明性化粧料を提供するものである。 (A) 二価カルボン酸と、平均重合度2以上15以下のポリグリセリンから構成されるオリゴマーエステル 透明化粧料総量に対して0.008質量%以上1.1質量%以下 (B) アスコルビン酸又はその水溶性誘導体 (C) 数平均分子量が600以上200,000以下のポリアルキレングリコール 【発明の効果】 【0011】 本発明の透明性化粧料は、外観の透明性が高く、高温及び低温安定性、塗布後の保湿効果の持続性に優れ、更にべたつきや刺激がなく、肌馴染みが良好なものである。」 甲1c 「【0026】 [成分(C):数平均分子量が600以上200,000以下のポリアルキレングリコール] 本発明で用いる成分(C)は、数平均分子量が600以上200,000以下のポリアルキレングリコールである。ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が600以上200,000以下であって、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。肌馴染みの良さ、べたつきのなさを向上させる観点から、ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、600以上であって、好ましくは700以上、より好ましくは800以上であり、また、200,000以下であって、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、更に好ましくは30,000以下、更に好ましくは10,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは2,000以下である。 【0027】 成分(C)のポリアルキレングリコールにおけるアルキレン基の炭素数としては、同様の観点から、2~6が好ましく、2~4がより好ましく挙げられ、具体的なアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。 ・・・ 【0031】 成分(C)は、市販品を使用することができ、例えばPEG#1000、PEG#1500、PEG#4000(全て日油社製)を使用することができる。これら成分(C)は、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。 【0032】 透明性化粧料中における成分(C)の含有量は、保湿感と肌馴染みの良さ、べたつきのなさを向上させる観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下である。透明性化粧料中における成分(C)の含有量の具体的範囲は、0.01~5質量%が好ましく、0.1~2.5質量%がより好ましく、0.2~1.5質量%が更に好ましい。 ・・・ 【0034】 [成分(D):多価アルコール] 本発明の透明性化粧料は、保湿性を向上させ、肌馴染みの良さを向上させる観点から、更に成分(D)として、多価アルコールを含有することが好ましい。多価アルコールとしては、2~4価の多価アルコール、単糖類、二糖類及びこれらの糖アルコールが挙げられ、これらのうち、肌馴染みの良さ、保湿性を向上させる観点から、単糖類、二糖類及びこれらの糖アルコールから選択される1種又は2種以上(以下、まとめて糖類と記載する場合がある)が好ましい。 ・・・ 【0037】 更に保湿効果の持続性、べたつき感、きしみ感の抑制効果の観点から、糖類と共に2~4価の多価アルコール(前記糖類を除く)を含有させることが好ましい。 【0038】 2価アルコールとしては、例えば、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール等を、3価アルコールとしては、グリセリ、トリメチロールプロパン等を、4価アルコールとしてはジグリセリン等が挙げられる。 【0039】 これらのうち、保湿効果、肌馴染みの良さ、きしみ感のなさを向上させる観点から、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン及びジグリセリンから選択される1種又は2種以上が好ましく、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上がより好ましく、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及びグリセリンから選択される1種又は2種以上が更に好ましい。また、2~4価の多価アルコールとして1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール及びグリセリンの3種を含むことが更に好ましい。 【0040】 これら成分(D)の多価アルコールは、いずれかを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。透明性化粧料中における成分(D)の含有量は、刺激、べたつきを抑える観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。 【0041】 成分(D)中における糖類の含有量は、外観透明性、保湿を向上させ、べたつきを抑える観点から、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、また、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。 ・・・ [成分(E):炭素数1~3の1価アルコール] 本発明の透明性化粧料は、塗布時の肌馴染みの良さ、べたつきを抑える観点から、更に成分(E)として、炭素数1~3の1価アルコールを含有することが好ましい。炭素数1~3の1価アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ。成分(E)は、同様の観点から、好ましくは炭素数1~3の飽和1価アルコールであり、より好ましくはエチルアルコールである。これらはいずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0044】 透明性化粧料中における成分(E)の含有量は、べたつきのなさ、肌馴染みの良さを向上させる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、また、皮膚刺激性を低減する点から、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下が更に好ましい。透明性化粧料中における成分(E)の含有量の具体的範囲としては、0.1~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~8質量%が更に好ましい。 【0045】 [成分(F):多糖類] 本発明の透明性化粧料には、更に成分(F)として、多糖類を含有することが好ましい。多糖類の具体例としては、グアーガム、ローカストビーンガム、クイーンスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、キサンタンガム、デキストリン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸及び/又はその塩、コンドロイチン硫酸及び/又はその塩等の天然多糖類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、アルギン酸及び/又はその塩、アルギン酸プロピレングリコール、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン等の合成あるいは半合成多糖類が挙げられる。 ・・・ 【0047】 これら多糖類は、いずれかを単独で、又は2種以上を含有することができる。これらのうち、べたつきのなさ、肌馴染みの良さの観点から、ヒアルロン酸又はその塩、カラギーナン及びキサンタンガムから選択される1種又は2種以上が好ましく、これらから選択される少なくとも2種を含有することがより好ましい。 【0048】 透明性化粧料中における成分(F)の含有量は、高温及び低温安定性の向上、べたつきを抑える点から、0.001質量%以上が好ましく、0.005質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、また、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましい。透明性化粧料中における成分(F)の含有量の具体的範囲としては、0.001~1質量%が好ましく、0.005~0.5質量%がより好ましく、0.01~0.3質量%が更に好ましい。 【0049】 [成分(G):水] 本発明の透明性化粧料には、更に成分(G)として、水を含有することが好ましい。透明性化粧料中における成分(G)の含有量は、低温及び高温安定性、保湿感、みずみずしい感触を向上させる観点から、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、また90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。透明性化粧料中における成分(G)の含有量の具体的範囲としては、60~90質量%が好ましく、65~85質量%がより好ましく、70~80質量%が更に好ましい。 【0050】 [その他の成分] 本発明の透明性化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、更に成分(A)以外の油性成分、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、成分(F)以外の増粘剤、防菌剤、防腐剤、香料、成分(C)及び成分(D)以外の保湿剤、塩類、成分(E)及び(G)以外の溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、成分(B)以外の生理活性成分等の成分を使用することができる。」 甲1d 「【実施例】 【0059】 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を詳細に説明する。・・・ ・・・ 【0071】 【表1】 ・・・ 【0072】 【表2】 ・・・ 【0073】 *1 : NeoSolue-Aqua、日本精化社製(グリセリン40質量%溶液、表中の値は純分表示) ・・・ *6 : FCH-120、キッコーマンバイオケミファ社製 *7 : カンゾウ抽出液、丸善製薬社製 ・・・ 【0075】 以下、本発明の処方例を記載する。いずれの処方も本発明の効果を備え、透明性化粧料として優れたものである。 【0076】 処方例1(化粧水) ・・・ 【0077】 ・・・ *16 : LAMINAINE MARINE BG、バイオテックマリーン社製 【0078】 処方例2 (化粧水) 成分 含有量(質量%) (A) (エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル -10(*1) 0.1 (B) L-アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム 0.5 (C) ポリエチレングリコール1000 0.5 (D) マルチトール 3 (D) ソルビトール 2 (D) 1,3-ブチレングリコール 3 (D) グリセリン 4 (D) ジプロピレングリコール 8 (F) ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1 (F) ヒアルロン酸ナトリウム(*6) 0.01 (E) エタノール 1 ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.1 ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(20E.O) 0.05 クエン酸 0.03 クエン酸ナトリウム 0.07 エデト酸二ナトリウム 0.02 水酸化カリウム 0.05 フェノキシエタノール 0.2 チョウジエキス 0.1 褐藻エキス(*16) 0.1 甘草エキス(*7) 0.1 グリシン 0.01 プロリン 0.01 アラニン 0.01 精製水 残量 【0079】 *1、*6、*7は表1、2と同様」 (合議体注:「成分」の行の太字下線は原文のとおり。) イ 甲2の記載事項 甲2には、次の事項が記載されている。 甲2a 「【請求項1】 次の成分(A)、(B)及び(C): (A)(A1)一般式(1)、(2) 【化1】 [図:0001411246000001.jpg] 〔式(1)中、B及びDは同一又は異なって、炭素数2~8のアルキレン基を示し、Lは結合手、-CO-又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基を示し、Mは水素原子、低級アルキル基、アラルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、pは1~6の数を示し、qは0~6の数を示し、R1は水素原子、低級アルキル基又は-(BO)p-(DO)q-L-Mを示す。式(2)中、rは1~10の数を示し、Gは水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基を示し、R1は前記と同じ意味を示す〕 及び (A2)一般式(3) 【化2】 [図:0001411246000002.jpg] アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選ばれる複素環式基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基又はアミジノ基を示す)から選ばれる1種又は2種以上のグアニジン骨格を有する化合物 0.01~3質量%、 (B)マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及び還元パラチノースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール 0.05~5質量%、 (C)水 を含有し、成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)が、0.01~15であり、エタノールを含有しないか、又は、5質量%以下含有する化粧料。」 甲2b 「【背景技術】 【0002】 グアニジン誘導体は、角層に対して柔軟性を付与したり、保湿作用を有することから、これを含有する化粧料が検討されている(・・・)。 また、しわ改善効果を有する化粧料にも応用されている(・・・)。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、これらの化粧料は、十分な保湿効果が得られるものではなかった。 また、角層構成成分と相互作用する水の量に基づいて角層の保湿状態を評価すると、グアニジン誘導体や糖アルコールだけでは角層構成成分と水との相互作用が必ずしも十分に高まらず、保湿持続効果が十分に得られるものではなかった。 本発明は、角層構成成分と水との相互作用を高めることで、保湿効果を高め、さらに保湿持続効果を高める化粧料を得ることを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者らは、特定のグアニジン骨格を有する化合物及び特定の糖アルコールを特定の割合で組み合わせて用いれば、角層と水の相互作用が高く、保湿効果が向上するとともに、高い保湿効果が持続し、しかも塗布後にべたつかない化粧料が得られることを見出した。 【0006】 本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C): (A)(A1)一般式(1)、(2) 【0007】 【化1】 [図:0001411246000003.jpg] 【0008】 〔式(1)中、B及びDは同一又は異なって、炭素数2~8のアルキレン基を示し、Lは結合手、-CO-又は置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキレン基を示し、Mは水素原子、低級アルキル基、アラルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を示し、pは1~6の数を示し、qは0~6の数を示し、R1は水素原子、低級アルキル基又は-(BO)p-(DO)q-L-Mを示す。式(2)中、rは1~10の数を示し、Gは水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、スルホン酸基又はリン酸基を示し、R1は前記と同じ意味を示す〕 及び (A2)一般式(3) 【0009】 【化2】 [図:0001411246000004.jpg] 【0010】 アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン及びモルホリンから選ばれる複素環式基を示し、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基又はアミジノ基を示す) から選ばれる1種又は2種以上のグアニジン骨格を有する化合物 0.01~3質量%、 (B)マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及び還元パラチノースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール 0.05~5質量%、 (C)水 を含有し、成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)が、0.01~15であり、エタノールを含有しないか、又は、5質量%以下含有する化粧料に関する。 【発明の効果】 【0011】 本発明の化粧料は、角層と水の相互作用が高く、保湿効果が向上するとともに、高い保湿効果が持続する。また、塗布後の皮膚のべたつきが少ないものである。」 甲2c 「【0031】 本発明の化粧料は、更に、(D)水溶性ポリマーを含有することができ、塗布時の伸ばしやすさを得ることができる。 水溶性ポリマーとしては、増粘するものであれば、限定されず、アニオン性水溶性ポリマー、ノニオン性水溶性ポリマー等が挙げられる。 アニオン性水溶性ポリマーとしては、具体的には、キサンタンガム、カルボマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられ、ケルデント(DSP五協フード&ケミカル社製)、カーボポール980、カーボポール981、カーボポールETD2020、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2(以上、Lubrizol Advanced Materials,Inc.社製)等の市販品を使用することができる。アニオン性水溶性ポリマーとしては、カルボマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が好ましい。また、アニオン性水溶性ポリマーの場合は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アルギニンなどで中和して使用することが好ましい。 【0032】 ノニオン性水溶性ポリマーとしては、具体的には、ヒドロキシエチルエセルロース、プルラン等が挙げられ、ケルデント(DSP五協フード&ケミカル社製)、HECダイセル SE400(ダイセルファインケム社製)、化粧品用プルラン(林原社製)等の市販品を使用することができる。 ・・・ 【0033】 成分(D)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができ、含有量は、塗布時の伸ばしやすさと塗布後の肌のべたつきのなさの両立の点から、全組成中に0.0005質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.8質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下が更に好ましい。また、成分(D)の含有量は、全組成中に0.0005~0.8質量%が好ましく、0.001~0.5質量%がより好ましく、0.01~0.2質量%が更に好ましい。 ・・・ 【0063】 また、本発明の化粧料は、角層と水の相互作用を高め、保湿効果及び保湿感の持続を確保する点から、エタノールを含有しないか、または含有する場合は、エタノールの含有量は、全組成中に5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。 本発明において、エタノール、成分(A)及び(B)の質量割合(エタノール)/((A)+(B))は、角層と水の相互作用を高め、保湿感及び保湿感の持続の点から、13以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。 【0064】 本発明の化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油性成分、前記以外の界面活性剤、粉体、美白剤、保湿剤、清涼剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、殺菌剤、色素、紫外線吸収剤、発熱剤、冷却剤などを含有することができる。 ・・・ 【0067】 本発明の化粧料は、例えば、化粧水、ジェル、美容液等として適用することができ、化粧水が、より好適である。」 甲2d 「【0088】 実施例11~13 表2~表4に示す組成の化粧料を、実施例1~10と同様にして製造した。成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)は、1.2である。 得られた化粧料は、角層と水の相互作用が高く、保湿効果に優れ、その効果が持続するとともに、塗布後に皮膚がべたつかないものであった。 【0089】 【表2】 [図:0001411246000005.jpg] 」 ウ 甲3の記載事項 甲3には、次の事項が記載されている。 甲3a 「本書で使われている用語について アミノ酸やその種類などについては、以下のように複数の呼び方や表記があるものがありますが、引用元の記載に併せた場合を除き、本書においては原則として下線の用語で記載しました。 ・分岐鎖アミノ酸、分枝アミノ酸 ・・・ またアミノ酸について、L体、D体の表示をしていない場合は、一般にL体のアミノ酸を意味します。」 (8頁「本書で使われている用語について」の項) エ 甲4の記載事項 甲4には、次の事項が記載されている。 甲4a 「1.2. アミノ酸の分類とタンパク質を構成するアミノ酸の種類 アミノ酸は、カルボキシ基に対するアミノ基の相対位置によってα,β,γ,δ-アミノ酸に分類されますが、生体タンパク質を構成するものはα-アミノ酸であり、皮膚、毛髪、爪などの構造を解説する文脈でアミノ酸と記載する場合をはじめ、化粧品成分、栄養剤などの文脈で用いるアミノ酸は一般に立体構造としてはL体のα-アミノ酸を指します(*3)。 *3 近年、皮膚に対するD体アミノ酸の効能が研究されてきていますが、一般に「アミノ酸」というとL体を指し、D体を指す場合は「D-アミノ酸」などL体ではなくD体であることが強調されます。」 (1.2.アミノ酸の分類とタンパク質を構成するアミノ酸の種類の項目 項目の標題及び1~5行) (合議体注:「1.2. アミノ酸の・・・」の行の下線は原文のとおり。) オ 甲5の記載事項 甲5には、次の事項が記載されている。 甲5a 「アミノ酸の名称につく「L」「D」「DL」とは?」(標題) 甲5b 「アミノ酸はその分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)を持つ化合物の総称です(図)。 グリシンを除くアミノ酸には、ちょうど右手と左手の関係のように、互いに鏡に映すと同一になる構造のものが存在し、一方をL体、もう一方をD体とよんで区別します。体たんぱく質を構成するアミノ酸は不思議なことにすべてL体です。」 (標題下の説明文1~6行) カ 甲6の記載事項 甲6には、次の事項が記載されている。 甲6a 「 α炭素原子に4種のそれぞれ異なった基がついて四面体構造をとっているため,アミノ酸には光学活性が生じる。1組の鏡像体のそれぞれをL体,D体と呼ぶ(図2-7)。タンパク質の構成成分となるのは,L-アミノ酸だけである。したがってこの本でタンパク質について取り上げるときには,特に記載のないかぎり光学異性体の区別は省略し,L体を意味するものとする。」 (19頁下から16行~下から12行) キ 参考1の記載事項 参考1には、次の事項が記載されている。英文であるため、当審合議体による訳文にて摘記する。 参考1a 「PEG-32 CAS No.:25322-68-3(一般) JPN 翻訳: PEG-32 定義:PEG-32は、一般に式:H(OCH2CH2)nOH nの平均値は32 で表されるエチレンオキシドのポリマーである。」 (1218頁、「PEG-32」の項目) ク 参考2の記載事項 参考2には、次の事項が記載されている。 参考2a 「【0077】 (配合例1~3) 頭皮用化粧料の配合例を例4に示す。 【0078】 【表4】 [図:0001411246000006.jpg] 【0079】 表4において、前述した*1~*5の成分および以下の成分が用いられる。 *6 セラミドIII:セラミド3、Evonik Industries AG社製 *7 PPG-20 メチルグルコース:マクビオブライドMG-20P、日油社製 *8 ユーカリ葉抽出液:ユーカリ抽出液 EBL、新和物産社製 *9 PEG-32:PEG-1540(-G)、三洋化成工業社製 *10 カルボマー:カーボポール 980 POLYMER、Lubrizol Advanced Materials社製 *11 シクロメチコン:シリコーン TSF405A、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製 *12 キサンタンガム:ケルデントDSP、五協フード&ケミカル社製」 ケ 参考3の記載事項 参考3には、次の事項が記載されている。 参考3a 「【0015】 本発明の整髪用化粧料は、(a)糖アルコール及びそれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上と、(b)ポリアルキレングリコール1種又は2種以上とを必須成分として含有している。 ・・・ 【0017】 本発明で用いられるポリアルキレングリコール、およびその誘導体としては、エチレンオキシド(EO)構成単位が重合したEO重合体・・・が好適例として挙げられる。・・・ 【0018】 本発明で用いられるポリアルキレングリコール類は市販のものを利用することができ、例えば、EO付加重合体:PEG200、PEG300(表示名称:PEG-6)、PEG400(表示名称:PEG-8)、PEG600、PEG1000、PEG1540(表示名称:PEG-32)、PEG2000、PEG4000、PEG6000、PEG11000、PEG20000(日油株式会社または東邦化学社)PO付加重合体:ユニオールD-700、ユニオールD-1000、ユニオールD-1200、ユニオールD-2000(以上日油株式会社)などを挙げることができる。」 コ 参考4の記載事項 参考4には、次の事項が記載されている。 参考4a 「化粧品配合成分「PEG(ポリエチレングリコール)」の総合レポート ・・・ PEG(ポリエチレングリコール)の基本情報・配合目的・安全性 公開日:2021年9月5日 最終更新日:2021年09月07日 慣用名称 PEG、ポリエチレングリコール 配合目的 保水、用剤、結合、増粘など (目次 省略) 1.基本情報 ・・・ 1.2.表示名称一覧 化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)に用いられるPEGは、分子量の大きさによって、 化粧品表示名称 医薬部外品表示名称 PEG-4 ポリエチレングリコール200 PEG-6 ポリエチレングリコール300 PEG-8 ポリエチレングリコール400 PEG-12 ポリエチレングリコール600 PEG-20 ポリエチレングリコール1000 PEG-6,PEG-32 ポリエチレングリコール1500 PEG-32 ポリエチレングリコール1540 PEG-40 ポリエチレングリコール2000 PEG-75 ポリエチレングリコール4000 PEG-150 ポリエチレングリコール6000 PEG-240 ポリエチレングリコール11000 PEG-400 ポリエチレングリコール20000 PEG-2M PEG-5M PEG-7M PEG-9M PEG-14M PEG-20M PEG-23M 高重合ポリエチレングリコール PEG-45M PEG-65M PEG-90M PEG-115M PEG-160M PEG-180M このように表示名称の数字部分が異なっており、化粧品表示名称の数字部分が平均重合度を、医薬部外品表示名称の数字部分が平均分子量を表しています(例:「PEG-8」の場合は平均重合度が8であり、「ポリエチレングリコール200」の場合は平均分子量が200であるという意味です)。 1.3.物性 PEGの物性は(*3)(*4)、 *3 PEGは医薬部外品表示名称の数値がそのまま平均分子量を表しており、わかりやすいことから医薬部外品表示名称であるポリエチレングリコールの数字部分を記載しています。 *4 表中の「1500(ポリエチレングリコール1500)」は「PEG-6」と「PEG-32」の等量混合物であることから、物性が他とは異なります。 PEG 平均分子量 300 285-315 400 380-420 600 570-630 1000 950-1050 1500 500-600 1540 1300-1600 2000 1800-2200 4000 2700-3400 6000 7400-9000 20000 18000-25000 」 (「PEG(ポリエチレングリコール)の基本情報・配合目的・安全性」の1.2.表示名称一覧及び1.3.物性の項目) サ 参考5の記載事項 参考5には、次の事項が記載されている。 参考5a 「PEG-1540 メーカー 三洋化成工業株式会社 製品名 PEG-1540 一般名 ポリエチレングリコール 重合系 化学式 サンプル量 1kg 商品特徴 説明 数平均分子量:1450(水酸基価から求めた値)」 (「PEG-1540」の項目) (2)先の取消理由通知で通知した、取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)、及び、取消理由2a(甲1を主引例とする進歩性欠如)について 先の取消理由通知で通知した取消理由2において、副引例又は周知例として引用しなかった文献(a(甲1を主引例とする場合)では、甲2~甲6及び参考1~参考5、b(甲2を主引例とする場合)では、甲1及び甲3~甲6)についても、ここで、副引例又は周知例として検討した上での判断を、併せて説示する。 ア 甲1に記載された発明 甲1には、請求項1に、アスコルビン酸又はその水溶性誘導体、オリゴマーエステル及びポリアルキレングリコールを含有する透明性化粧料が記載されており(甲1a)、当該「透明性化粧料」の具体例として、処方例2(甲1d【0078】)が記載されている。 当該処方例2の幾つかの成分について、「(A)・・・(*1)」、「(F)ヒアルロン酸ナトリウム(*6)」、「褐藻エキス(*16)」、「甘草エキス(*7)」との注釈が付されており、「*1、*6、*7は表1、2と同様」と記載され、表1、2の注釈の説明(甲1d【0073】)には、 「*1:NeoSolue-Aqua、日本精化社製(グリセリン40質量%溶液、表中の値は純分表示)」、 「*6:FCH-120、キッコーマンバイオケミファ社製」及び 「*7:カンゾウ抽出液、丸善製薬社製」 と記載され、さらに、上記処方例2における注釈「*16」について、「処方例1」の説明(甲1d【0077】)に、 「*16:LAMINAINE MARINE BG、バイオテックマリーン社製」 と記載されている。 そうすると、甲1には、処方例2の化粧水の発明として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「 成分 含有量(質量%) (A)(エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル -10(*1) 0.1 (B)L-アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム 0.5 (C)ポリエチレングリコール1000 0.5 (D)マルチトール 3 (D)ソルビトール 2 (D)1,3-ブチレングリコール 3 (D)グリセリン 4 (D)ジプロピレングリコール 8 (F)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1 (F)ヒアルロン酸ナトリウム(*6) 0.01 (E)エタノール 1 ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 0.1 ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(20E.O)0.05 クエン酸 0.03 クエン酸ナトリウム 0.07 エデト酸二ナトリウム 0.02 水酸化カリウム 0.05 フェノキシエタノール 0.2 チョウジエキス 0.1 褐藻エキス(*16) 0.1 甘草エキス(*7) 0.1 グリシン 0.01 プロリン 0.01 アラニン 0.01 精製水 残量 を含有する、化粧水。 *1 : NeoSolue-Aqua、日本精化社製(グリセリン40質量%溶液、表中の値は純分表示) *6 : FCH-120、キッコーマンバイオケミファ社製 *7 : カンゾウ抽出液、丸善製薬社製 *16 : LAMINAINE MARINE BG、バイオテックマリーン社製」 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明における「(C)ポリエチレングリコール1000 0.5質量%」は、甲1の請求項1に記載の透明性化粧料における「(C)数平均分子量が600以上200,000以下のポリアルキレングリコール」(甲1a【請求項1】)の具体例であるから、甲1発明における「(C)ポリエチレングリコール1000」とは、数平均分子量がおおよそ1000程度のポリアルキレングリコールと理解され、本件発明1における「(A)数平均分子量700~40000」という範囲であれば、該当するものと理解できる。 したがって、甲1発明における「(C)ポリエチレングリコール1000 0.5質量%」は、本件発明1における「(A)数平均分子量700~40000のポリアルキレングリコール 0.01~3.2質量%、」に相当するといえる。 b 甲1発明における「グリシン 0.01質量%」、「プロリン 0.01質量%」及び「アラニン 0.01質量%」について、「プロリン」及び「アラニン」はアミノ酸であるがL体かは明示されておらず、その合計質量%は0.03質量%(=0.01質量%+0.01質量%+0.01質量%)である。 そうすると、甲1発明における「グリシン 0.01質量%」、「プロリン 0.01質量%」及び「アラニン 0.01質量%」と、本件発明1における「(B)N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上 0.05~2.5質量%」とは、「(B)N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上 特定質量%」である点で共通する。 c 甲1発明における「(F)ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1質量%」について、「ヒドロキシプロピルメチルセルロース」は、ヒドロキシアルキル基を有するセルロース系高分子といえるから、本件発明1における「(C)ヒドロキシアルキル基を有するセルロース系高分子及び/又はフコースを含む多糖系高分子 0.001~1.2質量%」に相当する。 d 甲1発明における「精製水」は、本件発明1における「(D)水」に相当する。 e 甲1発明における「化粧水」は、「化粧水」という液体の化粧料であり、成分中の「精製水」の含有量が多量(76,94質量%(=100質量%-23.06質量%(精製水以外の全成分の合計質量%)))であるから、液状といえ、皮膚に適用する製剤であり、液状皮膚外用剤といえるから、本件発明1における「液状皮膚外用剤」に相当する。 f 以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、 「下記成分(A)~(D): (A)数平均分子量700~40000のポリアルキレングリコール 0.01~3.2質量%、 (B)N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上、 (C)ヒドロキシアルキル基を有するセルロース系高分子及び/又はフコースを含む多糖系高分子 0.001~1.2質量%、 (D)水 を含有する液状皮膚外用剤。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1-1: 「プロリン」及び「アラニン」が、本件発明1では、「L」体であるのに対し、甲1発明では、「L」体であるか明らかでない点。 相違点1-2: 本件発明1では、「成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.1~30」であるのに対し、甲1発明では、当該割合が明らかでない点 相違点1-3: 「成分(B)」の含有量が、本件発明1では、「0.05~2.5質量%」であるのに対し、甲1発明では、グリシンとアラニンとプロリンの含有量の合計が0.03質量%であるものの、グリシンとL-アラニンとL-プロリンの含有量の合計が明らかでない点。 (イ)相違点についての判断 a 新規性について 事案に鑑み、相違点1-1、相違点1-3、相違点1-2、の順に検討を進めることとする。 (a)相違点1-1について 甲1発明の化粧水の成分である「プロリン」及び「アラニン」について、生化学の基本書の一つと認められ、生化学における技術常識が記載されていると認められる甲6には、「・・・アミノ酸には光学活性が生じる。1組の鏡像体のそれぞれをL体,D体と呼ぶ・・・。タンパク質の構成成分となるのは,L-アミノ酸だけである。したがってこの本でタンパク質について取り上げるときには,特に記載のないかぎり光学異性体の区別は省略し,L体を意味するものとする。」(甲6a)と記載されている。 また、「トコトンやさしいアミノ酸の本」という題名の書籍で、アミノ酸の技術常識が記載されていると認められる甲3には、「本書で使われる用語について」の項目において、「・・・本書においては原則として下線の用語で記載しました。・・・アミノ酸について、L体、D体の表示をしていない場合は、一般にL体のアミノ酸を意味します」(甲3a)と記載されている。 さらに、本件特許の出願後に公開されたものであるが、化粧品成分の技術常識を示すものと認められる甲4には、「1.2. アミノ酸の分類とタンパク質を構成するアミノ酸の種類」の項目に、「・・・化粧品成分・・・の文脈で用いるアミノ酸は一般に立体構造としてはL体のα-アミノ酸を指します(*3)」、及び、「*3 近年、皮膚に対するD体アミノ酸の効能が研究されてきていますが、一般に「アミノ酸」というとL体を指し、D体を指す場合は「D-アミノ酸」などL体ではなくD体であることが強調され」ることが記載されている(甲4a) これらの甲6、甲3及び甲4の記載によれば、アミノ酸には、光学異性体としてL体とD体があり、L体かD体かの表示をしていない場合は、一般にL体のアミノ酸を意味すること、D体を指す場合は、「D-アミノ酸」などL体ではなくD体であることが強調されることが、本件特許の出願時の技術常識であったと認められる。 そして、上記技術常識を考慮すれば、甲1発明における「プロリン」及び「アラニン」は、共にL体のアミノ酸を意味しているといえる。 したがって、上記相違点1-1は、実質的な相違点ではない。 (b)相違点1-3について 上記(a)で述べたとおり、甲1発明における「プロリン」及び「アラニン」が、共にL体のアミノ酸と記載されているに等しいといえるから、本件発明1における「成分(B)」に対応する、甲1発明における「グリシン」、「プロリン」(L-プロリンを意味する)及び「アラニン」(L-アラニンを意味する)の合計質量%は「0.03質量%」であり、本件発明1における「成分(B)」の含有量の「0.05~2.5質量%」の下限値を下回っている。 そうすると、相違点1-3は、実質的な相違点といえる。 (c)まとめ したがって、相違点1-2を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 b 進歩性について (a)相違点1-3について 上記aより、少なくとも相違点1-3は実質的な相違点であることから、まず、相違点1-3について、以下検討する。 甲1には、アスコルビン酸又はその誘導体を含有する透明性化粧料における、べたつき、経時的な着色(黄変)、保湿感が維持されにくい等の固有の問題点を改善し、外観の透明性が良好で、高温及び低温安定性に優れ、塗布後、角層水分量を長時間維持し、保湿効果の持続性が良好であり、べたつきや刺激感がなく、肌馴染みの良い、使用性にも優れた透明性化粧料を提供すること、を課題とし(甲1b【0002】~【0008】)、下記(A)~(C)成分: 「(A) 二価カルボン酸と、平均重合度2以上15以下のポリグリセリンから構成されるオリゴマーエステル 透明化粧料総量に対して0.008質量%以上1.1質量%以下 (B) アスコルビン酸又はその水溶性誘導体 (C) 数平均分子量が600以上200,000以下のポリアルキレングリコール」 を含有する透明性化粧料とすることにより、当該課題を解決したものであること(甲1b【0009】~【0011】)、が記載されている。 甲1発明の認定の根拠とした処方例2の化粧水は、このような課題を解決した具体例の一つである(甲1d【0075】、【0078】)。 甲1には、「グリシン」、「プロリン」及び「アラニン」について、上記処方例2の他に具体的な記載はなく、甲1全体の記載からみて、甲1発明における「グリシン」、「プロリン」及び「アラニン」は、甲1に記載された当該具体例である処方例2の化粧水において、任意の成分として使用された「その他の成分」のうちの「成分(B)以外の生理活性成分」(甲1c【0050】)に該当するものにすぎない。 この「その他の成分」について、甲1においては、「本発明の透明性化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、更に・・・成分(B)以外の生理活性成分等の成分を使用することができる」(甲1c【0050】)と記載されているにとどまり、その含有量についての具体的な記載はない。 そして、甲1発明の認定の根拠とした処方例2の化粧水において、「グリシン」、「プロリン」及び「アラニン」は、「本発明の効果を損なわない範囲」で使用が許容されている成分であるから、特定の組成の処方において、当該「効果を損なわない範囲」として既に確立さている、これらの三成分の含有量を、敢えて増量し得るものとはいえない。 また、甲2~甲6及び参考1~参考5に記載された事項の全体を検討しても、甲1発明において、「グリシン」、「プロリン」及び「アラニン」の含有量を、「0.03質量%」から増量して、「0.05~2.5質量%」の範囲にすることに関して、本件特許の出願時にそのような技術常識が存在したともいえない。 そうすると、甲1発明において、「グリシン」、「プロリン」及び「アラニン」の含有量を「0.05~2.5質量%」とすることは、当業者といえども容易に想到し得たとはいえない。 (b)まとめ したがって、本件発明1は、相違点1-2及び本件発明1の効果を検討するまでもなく、甲1に記載された発明並びに甲2~甲6及び参考1~参考5に記載された技術的事項及に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 c 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明並びに甲2~甲6及び参考1~参考5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明2~4について 本件発明2は、本件発明1において、「さらに(E)多価アルコールを含有する」ことを特定して、技術的にさらに限定した発明である。 本件発明3は、本件発明1又は2において、「さらに(E)エタノールを含有する」ことを特定して、技術的にさらに限定した発明である。 本件発明4は、本件発明1、2又は3において、「成分(C)が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルカリゲネス レータス B-16 ポリマー及びビオサッカリドガム-1から選択される1種又は2種以上である」ことを特定して、技術的にさらに限定した発明である。 したがって、上記イにおいて本件発明1について説示したのと同様の理由により、本件発明1を技術的にさらに限定した本件発明2~4も、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明並びに甲2~甲6及び参考1~参考5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 エ 申立人の主張について (ア)申立人の主張の概要 申立人は、令和5年6月19日付け意見書の「3 意見の内容」「(1)甲第1号証を主引例とした場合」において、概略、次の主張をしている。 ・甲1と甲2とは、保湿効果の持続性等の点において課題が共通している。・甲2には、先の取消理由通知で認定された「甲2発明」が記載されており、甲2発明は「N-アミジノ-L-プロリン」を「0.1質量%」含むものである。 ・甲2の【0091】【表4】には、同表に示す成分組成を有する化粧料の発明(甲2-2発明)も記載されており、甲2-2発明は、「N-アミジノ-L-プロリン」を「0.6質量%」含むものである。 ・そうすると、甲1発明及び甲2発明又は甲2-2発明に接した当業者にとって、甲1発明の「グリシン、プロリン、アラニン 各0.01質量%(合計0.03質量%)」を、「N-メチル-L-セリン 0.1質量%」又は「N-メチル-L-セリン 0.6質量%」とすることは、容易になし得ることである。 (イ)申立人の主張の検討 申立人が上記意見書で主張する理由(甲1を主引例とし、甲2を副引例とする、進歩性欠如)は、申立書には記載されていなかった、実質的に新たな申立理由であるが、取消理由2a(甲1を主引例とする進歩性欠如)の判断に関連するため、一応検討しておくこととする。 上記イ(イ)b(a)で説示したように、甲1発明は、アスコルビン酸又はその誘導体を含有する透明性化粧料における固有の問題点を改善し、外観の透明性が良好で、高温及び低温安定性に優れ、塗布後、角層水分量を長時間維持し、保湿効果の持続性が良好であり、べたつきや刺激感がなく、肌馴染みの良い、使用性にも優れた透明性化粧料を提供する、という課題を解決した具体例の一つとしての発明である。 これに対して、甲2に記載の発明は、甲1発明のような、アスコルビン酸又はその誘導体を含有する透明性化粧料ではないため、その固有の問題点を改善することを課題としたものではなく、以下の(3)イ(イ)で説示するように、従来グアニジン誘導体や糖アルコールだけでは保湿持続効果が十分に得られなかったという問題点を改善し、角層構成成分と水との相互作用を高めることで、保湿効果を高め、さらに保湿持続効果を高める化粧料を提供する、という課題を解決した発明である。 そして、甲2発明及び申立人が主張する甲2-2発明において、「N-アミジノ-L-プロリン」は、甲2の上記課題を解決するために必須の構成である「成分(A)」のうち、「(A2)」に属するグアニジン骨格を有する化合物の具体例である。 しかも、甲2発明及び申立人が主張する甲2-2発明の化粧料に含まれる成分「N-アミジノ-L-プロリン」は、「N-メチル-L-セリン」とは異なる化合物である。 さらに、甲1発明において、甲1における「その他の成分」のうちの「成分(B)以外の生理活性成分」にすぎない「グリシン」、「プロリン」及び「アラニン」に着目し、その含有量として、甲2の上記課題を解決するために必須の構成である、「成分(A)」のうち「(A2)」に属するグアニジン骨格を有する化合物の含有量を適用しようという動機付けはない。 そうすると、甲1発明において、甲1では、全く触れられていない上に、甲2の必須成分である「N-アミジノ-L-プロリン」とも異なる「N-メチル-L-セリン」に変更し、含有量範囲とともに特定する動機はなく、「グリシン 0.01質量%」、「プロリン 0.01質量%」及び「アラニン 0.01質量%」を、甲2に記載も示唆もされていない、「N-メチル-L-セリン 0.1質量%」又は「N-メチル-L-セリン 0.6質量%」とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 オ 取消理由1(甲1に基づく新規性欠如)、及び、取消理由2a(甲1を主引例とする進歩性欠如)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~4は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明並びに甲2~甲6及び参考1~参考5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1~4に係る特許は、甲1を主引例とした場合に、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものではなく、また、同法同条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえない。 したがって、甲1を主引例とする場合の取消理由1及び2は理由がない。 (3)取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由(甲2を主引例とする進歩性欠如)(先の取消理由通知で通知した取消理由2b(甲2を主引例とする進歩性欠如)に対応)について ア 甲2に記載された発明 甲2には、特定のグアニジン骨格を有する化合物及び特定の糖アルコールを特定の割合で組み合わせた「化粧料」(甲2a【請求項1】、甲2b【0006】~【0010】)が記載されており、当該「化粧料」の具体例として、実施例11~13に、【表2】に示す成分組成を有する化粧料を製造したこと、及び、得られた化粧料は塗布後に皮膚がべとつかないものであったこと、が記載されている(甲2d【0088】~【0089】)。 そうすると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「下記表に示す成分組成を有する、皮膚化粧料。 [図:0001411246000007.jpg] 」 イ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明との対比 a 甲2発明の化粧料の成分の1つである「PEG-32(PEG-1540、三洋化成工業社製)」について、表記の技術的な意味について、技術常識に基づいて検討する。 「PEG-32」とは、化粧料成分についての辞典である「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」(当審合議体による訳:「国際化粧料成分辞典及びハンドブック」)(参考1)に、その定義として、「一般に化学式H(OCH2CH2)nOH(nの平均値は32)で表されるエチレンオキシドのポリマーである。」と記載されており(参考1a)、エチレンオキシドの重合の平均値が32、すなわち、エチレンオキシドの平均重合度が32のポリエチレングリコールであるといえる。 また、化粧料の技術分野における代表的な化粧品成分情報の検索サイトであるといえる「化粧品成分オンライン」における「PEG(ポリエチレングリコール)」の記事である参考4には、PEG(ポリエチレングリコール)の基本情報として、表示名称の数字部分が複数記載され、化粧品表示名称の数字部分が平均重合度を、医薬部外品表示名称の数字部分が平均分子量を表し、実際の平均分子量は一定の数値範囲を有していることが説明されている(化粧品表示名称:PEG-32、医薬部外品表示名称:ポリエチレングリコール1540、実際の平均分子量1300-1600)。このことは、参考4の化粧品表示名称における「PEG」の数字が大きくなるにつれて、医薬部外品表示名称の「ポリエチレングリコール」の数字が大きくなっていることからも理解できる。 そして、参考2、参考3及び参考5の記載(参考2a、参考3a及び参考5a)は、参考4における上記の表示方法の少なくとも一部が使用されたものといえ、当該表現方法と矛盾するところはない。 本件発明1で特定された数平均分子量の値と平均分子量の値とが必ずしも一致するわけではないが、平均分子量については、一般に、ポリマーの分散性が均一であれば、数平均分子量は重量平均分子量等のその他の平均分子量と近似しているといえる(参考5では、製品名がPEG-1540で、数平均分子量が1450であることが示されている(参考5a)。)。 したがって、甲2発明の「PEG-32(PEG-1540、三洋化成工業社製)」が、平均分子量が1300~1600であるとの前提に立てば、数平均分子量もおおよそ1300~1600程度であると理解できるのであるから、少なくとも本件発明1における「(A)数平均分子量700~40000」という範囲であれば、優に該当するものと理解できる。 そうすると、甲2発明における「PEG-32(PEG-1540、三洋化成工業社製) 2.7質量%」は、本件発明1における「(A)数平均分子量700~40000のポリアルキレングリコール 0.01~3.2質量%、」に相当するといえる。 b 甲2発明における「精製水」は、本件発明1における「(D)水」に相当する。 c 本件発明1における「液状皮膚外用剤」と、甲2発明における「皮膚化粧料」とは、「皮膚外用剤」である点で共通する。 d 以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、 「下記成分(A)及び(D): (A)数平均分子量700~40000のポリアルキレングリコール 0.01~3.2質量%、 (D)水 を含有する皮膚外用剤。」 である点で一致し、以下の点で相違点する。 相違点2-1: 皮膚外用剤について、本件発明1は「(C)ヒドロキシアルキル基を有するセルロース系高分子及び/又はフコースを含む多糖系高分子 0.001~1.2質量%」含むのに対し、甲2発明は、「キサンタンガム(ケルデント、DSP五協フード&ケミカル社製)0.02質量%」を含む点。 相違点2-2: 皮膚外用剤において、本件発明1の皮膚外用剤は「液状」であるのに対し、甲2発明の皮膚化粧料は「液状」であるか明らかでない点。 相違点2-3: 皮膚外用剤について、本件発明1は「(B)N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上 0.05~2.5質量%」含むのに対し、甲2発明は、「N-アミジノ-L-プロリン 0.1質量%」を含む点。 相違点2-4: 本件発明1では、「成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)が、0.1~30」であるのに対し、甲2発明では、当該割合が明らかでない点 (イ)相違点についての判断 事案に鑑み、まず相違点2-3から検討する。 a 相違点2-3について 本件訂正前の請求項1に係る発明においては、「成分(B)」の選択肢の1つであった「N-アミジノ-L-プロリン」が、本件訂正により削除されたため、甲2発明における「N-アミジノ-L-プロリン 0.1質量%」は、本件発明1における「成分(B)」に該当しないものとなった。 そうすると、相違点2-3は、実質的な相違点といえる。 甲2には、甲2発明が、本件発明1における「成分(B)」である、「N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上」を「0.05~2.5質量%」含有することについては、記載も示唆もされていない。 甲2に記載されている発明は、角層構成成分と水との相互作用を高めることで、保湿効果を高め、さらに保湿持続効果を高める化粧料を提供することを課題とし(甲2b【0002】~【0004】)、以下の成分(A)、(B)及び(C): 「(A)(A1)一般式(1)、(2) [図:0001411246000008.jpg] (合議体注:置換基等の定義は省略。) 及び (A2)一般式(3) [図:0001411246000009.jpg] (合議体注:置換基等の定義は省略。) から選ばれる1種又は2種以上のグアニジン骨格を有する化合物 0.01~3質量%」、 「(B)マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及び還元パラチノースから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコール 0.05~5質量%」 及び 「(C)水」 を含有し、 「成分(A)及び(B)の質量割合(A)/(B)が、0.01~15であり、エタノールを含有しないか、又は、5質量%以下含有する化粧料」 とすることにより、当該課題を解決したものであることが記載されている(甲2b【0005】~【0010】)。 甲2発明の認定の根拠とした【表2】に示す組成の化粧料は、このような課題を解決した具体例の一つである(甲2d【0088】~【0089】)。 この甲2発明において、本件発明1における「成分(B)」である、「N-メチル-L-セリン」、「L-プロリン」、「L-アラニン」及び「グリシン」は、甲2に記載された、上記の「成分(A)」、「成分(B)」及び「成分(C)」、並びに、「(D)水溶性ポリマー」(甲2a【請求項3】)のいずれにも該当しないものである。 甲2には、上記成分(A)~成分(D)以外に含有することができる成分として、「通常の化粧料に用いられる成分、例えば、前記以外の油性成分、前記以外の界面活性剤、粉体、美白剤、保湿剤、清涼剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、殺菌剤、色素、紫外線吸収剤、発熱剤、冷却剤など」があることが記載されているが(甲2c【0064】)、本件発明1における「成分(B)」である、「N-メチル-L-セリン」、「L-プロリン」、「L-アラニン」及び「グリシン」は、甲2における成分(A)~成分(D)以外に含有することができる成分として上記列挙されている成分のいずれにも該当しない。ましてや、その含有量についても、甲2には記載も示唆もない。 このような状況下、甲2発明において、甲2における成分(A)~成分(D)に該当しないのみならず、それらの成分以外に含有することができる成分にさえも該当しない、本件発明1における「成分(B)」である、「N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上」の成分を含有させようという動機付けがあるとはいえない。ましてや、その含有量を「0.05~2.5質量%」含有させようという動機付けがあるともいえない。 また、甲1及び甲3~甲6並びに参考1~参考5に記載された事項の全体を検討しても、甲2発明において、「N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上」といった成分を含有させ、しかも、その含有量を「0.05~2.5質量%」とすることに関して、本件特許の出願時にそのような技術常識が存在したともいえない。 そうすると、甲2発明において、「N-メチル-L-セリン、L-プロリン、L-アラニン及びグリシンから選択される1種又は2種以上」を「0.05~2.5質量%」の含有量で含有することは、当業者といえども、甲1及び甲3~甲6並びに参考1~参考5に記載された技術的事項から容易に想到し得たとはいえない。 (ウ)小括 したがって、本件発明1は、相違点2-1、相違点2-2、相違点2-4及び本件発明1の効果を検討するまでもなく、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲3~甲6並びに参考1~参考5に記載された技術的事項及に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 本件発明2~4について 前記(2)ウで説示したとおり、本件発明2~4は、本件発明1を技術的にさらに限定した発明である。 したがって、上記イにおいて本件発明1について説示したのと同様の理由により、本件発明1を技術的にさらに限定した本件発明2~4も、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲3~甲6並びに参考1~参考5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 申立人の主張について 申立人は、令和5年6月19日付け意見書の3(II)において、先の取消理由通知における相違点2-1についての説示に対し、特許権者からは一切反論がなされておらず、依然として、本件発明1は、甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである旨を主張している。 しかしながら、上記イ(イ)で説示したとおり、相違点2-1を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲3~甲6並びに参考1~参考5に記載された技術的事項及に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 オ 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由(甲2を主引例とする進歩性欠如)(先の取消理由通知で通知した取消理由2b(甲2を主引例とする進歩性欠如)に対応)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~4は、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲3~甲6並びに参考1~参考5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件発明1~4に係る特許は、甲2を主引例とした場合に、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえない。 したがって、甲2を主引例とする場合の取消理由2は理由がない。 2 取消理由通知において採用しなかった申立理由3(サポート要件違反:本件発明1~4)についての判断 (1)特許法第36条第6項第1号の判断の前提について 特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものとされている。 以下、この観点に立って、判断する。 (2)特許請求の範囲の記載 本件請求項1~4の記載は、前記第3に摘記したとおりである。 (3)発明の詳細な説明の記載 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 ア 「発明が解決しようとする課題」及び「課題を解決するための手段」に関する記載 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1に記載された乳化化粧料では、皮膚上に固形油による油膜を形成することでハリ感を付与しているが、比較的多くの固形状油分を配合する必要があるため、塗布時ののびが重い、被膜が硬いなど、使用感が悪化してしまう。また、使用感を高めるため、液状油分を配合し、固形状油分の配合量を少なくした場合、ハリ感が不十分となるだけでなく、べたつき感を感じる、保湿感に欠けるといった問題も生じていた。 特許文献2に記載された化粧料では、塗布直後には共重合体による皮膜によって、ハリ感が感じられることがあるが、皮膜の柔軟性が低く、肌への密着感が弱いため、目元、口元等の動きの大きい箇所では、皮膚の動きによって皮膜が断裂されやすく、さらには剥離してしまう場合もあった。 また、特許文献3に記載された皮膚化粧料では、高重合ポリエチレングリコールを多く用いることで、ハリ感を演出しているが、ポリエチレングリコールに由来するきしみやべたつき感が強く感じられる場合があり、自然な肌の柔らかさが得られないという問題があった。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者は、ポリアルキレングリコールと、特定のアミノ酸、特定の皮膜感がほとんどない水溶性高分子を併用することにより、ポリアルキレングリコールによる保湿性及び特異なハリ効果を発揮させつつ、肌本来の柔らかさも感じられ、きしみ感やべたつき感がない、心地よい使用感の皮膚外用剤が得られることを見出し、本発明を完成した。 【0006】 本発明は、下記成分(A)~(D)を含有する液状皮膚外用剤に関する。 (A)数平均分子量700~40000のポリアルキレングリコール 0.01~3.2 質量%、 (B)酸性アミノ酸及び/又は中性アミノ酸 0.01~2.5質量%、 (C)ヒドロキシアルキル基を有するセルロース系高分子及び/又はフコースを含む多糖系高分子 0.001~1.2質量%、 (D)水 」 イ 「成分(A)」に関する記載 「【0008】 本発明で用いられる成分(A)は、ポリアルキレングリコールである。 ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、きしみ感のなさ、べたつき感のなさ、ハリ感の良さを向上させる観点から、700~40000であり、800~25000が好ましく、800~15000がより好ましく、900~9000がさらに好ましく、900~4000がよりさらに好ましい。 【0009】 ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、医薬部外品原料規格に記載の平均分子量試験により、末端基定量法によって、具体的には滴定によって得られる水酸基価によって測定される。 【0010】 成分(A)のポリアルキレングリコールにおけるアルキレン基の炭素数は、べたつき感のなさの観点から、2~4が好ましく、2又は3がより好ましく、2がさらに好ましい。具体的なアルキレン基としては、エチレン基又はプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。 成分(A)としては、数平均分子量700~40000のポリエチレングリコールが好ましい。 【0011】 成分(A)は、市販品を使用することができ、例えば、PEG#1000、PEG#1500、PEG#2000、PEG#4000、PEG#6000、PEG#11000、PEG#20000(以上、日油社製)、PEG-1000、PEG-1500,PEG-2000、PEG-6000N、PEG-20000(以上、三洋化成社製)、PEG-1000、PEG-1540、PEG-2000、PEG-4000、PEG-6000(以上、東邦化学社製)等を使用することができる。 【0012】 成分(A)は1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、ハリ感の良さ、保湿効果の持続性、きしみ感のなさ、べたつき感のなさ、肌の柔らかさを向上させる観点から、全組成中に0.01~3.2質量%であり、0.03~2.8質量%が好ましく、0.05~2.3質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。」 ウ 本件発明の実施例に関する記載 「【実施例】 【0046】 実施例1~25及び比較例1~11 表1~表3に示す組成の液状皮膚外用剤を製造し、塗布中のきしみ感のなさ、塗布後のべたつき感のなさ、塗布後の肌の柔らかさ、塗布後のハリ感の良さ及び保湿効果の持続性を評価した。結果を表1~表3に併せて示す。 【0047】 (製造方法) (1)事前に成分(C)又は(C’)を成分(D)の一部に混合溶解し、調製物1を作成する。 (2)残りの成分(D)に成分(A)又は(A’)、(B)又は(B’)を混合溶解し、調製物1を最後に投入してよく撹拌し、均一にして、液状皮膚外用剤を得た。 【0048】 (評価方法) 女性パネル(10名)に対し、洗顔後に各皮膚外用剤(2mL)を顔に塗布したとき、塗布中のきしみ感のなさ、塗布後のべたつき感のなさ、塗布後の肌のやわらかさ、塗布後のハリ感の良さ及び保湿効果の持続性に関して、下記基準に基づき、アンケートを行い、評価を行った。 【0049】 (基準) 2点:明らかに感じた。 1点:やや感じた。 0点:どちらともいえない又は感じない。 (判定) 4:合計点15点以上。 3:合計点10点以上15点未満。 2:合計点5点以上10点未満。 1:合計点5点未満。 【0050】 【表1】 [図:0001411246000010.jpg] 【0051】 【表2】 [図:0001411246000011.jpg] 【0052】 【表3】 [図:0001411246000012.jpg] 」 (4)判断 ア 本件発明が解決しようとする課題 本件明細書の発明の詳細な説明における「発明が解決しようとする課題」の記載(【0004】)、「課題を解決するための手段」の記載(【0005】)、及び、実施例の記載(【0046】~【0052】)からみて、本件発明の解決しようとする課題は、ポリアルキレングリコールによる保湿性及び特異なハリ効果を発揮させつつ、肌本来の柔らかさも感じられ、きしみ感やべたつき感がない、心地よい使用感の液状皮膚外用剤を提供することであると認められる。 イ 発明の詳細な説明の実施例1~25(【0046】~【0051】)には、本件発明の発明特定事項を有する液状皮膚外用剤を作製したこと、その液状皮膚外用剤は、ポリアルキレングリコールによる保湿効果の持続性及び塗布後のハリ感の良さの効果を発揮させつつ、塗布後の肌の柔らかさも感じられ、塗布中のきしみ感や塗布後のべたつき感がないことを具体的に確認したことが記載されている。 さらに、本件発明の「液状皮膚外用剤」における「成分(A)」について、発明の詳細な説明には、「成分(A)」の種類及び含有量に関する実施の態様が詳細に記載されており(【0008】~【0012】)、これらの記載に沿って実施すれば、ポリアルキレングリコールによる保湿性及び特異なハリ効果を発揮させつつ、肌本来の柔らかさも感じられ、きしみ感やべたつき感がない、心地よい使用感の液状皮膚外用剤を提供し得ると理解され、そのことも、実施例の評価結果より裏付けられているといえる。 そうすると、本件発明の発明特定事項を有する液状皮膚外用剤は、ポリアルキレングリコールによる保湿性及び特異なハリ効果を発揮させつつ、肌本来の柔らかさも感じられ、きしみ感やべたつき感がない、心地よい使用感の液状皮膚外用剤を提供できると、当業者は理解できるといえ、本件発明の上記課題を解決し得ると認識できるといえるので、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明といえる。 ウ 申立人の主張(ア)について 上記第4の1(1)エで認定した申立人の主張(ア)は、発明の詳細な説明の実施例に記載されている、数多くの実施例と比較例から選択したものについて、「成分(A)」の「ポリアルキレングリコール」の数平均分子量と含有量に関して実験結果を整理し、「成分(A)」の「ポリアルキレングリコール」の数平均分子量が多いほど、含有量は少なくしたものしか実験結果がないことを指摘しているにすぎない。 そして、「成分(A)」の「ポリアルキレングリコール」の数平均分子量の大きいものを多く含有する場合、及び、数平均分子量の小さいものを少し含有する場合の実験結果がないと指摘しているだけで、課題が解決できないと認識できる根拠は何ら示されていない。 上記イで説示したとおり、具体例に加えて一般記載及び技術常識を考慮すれば、「成分(A)」の「数平均分子量700~40000のポリアルキレングリコール 0.01~3.2質量%」の範囲であれば、一定程度課題が解決できると認識できる。 したがって、本件発明の「液状皮膚外用剤」における「成分(A)」として、数平均分子量の大きいものを多く含有する場合、及び、数平均分子量の小さいものを少し含有する場合、当該課題を解決することができると認識できない、とまではいえない。 エ 申立人の主張(イ)について 上記第4の1(1)エで認定した申立人の主張(イ)について、発明の詳細な説明の実施例1~25及び比較例1~10では、評価方法として、「女性パネル(10名)」(【0048】)が、「(基準)2点:明らかに感じた。1点:やや感じた。0点:どちらともいえない又は感じない。(判定)4:合計点15点以上。3:合計点10点以上15点未満。2:合計点5点以上10点未満。1:合計点5点未満。」(【0049】)に基づき、評価を行っている。判定は、女性パネル(評価員)10名の評価の合計点と理解される。 発明の詳細な説明には、評価基準が示されている上に、パネル「10名」という多数者で行った評価の合計点で判定されていることから、各評価項目の判定結果は、ある程度信頼性のある判定結果と理解される。 そうすると、パネル間の調整の詳細が具体的に示されていないからといって、発明の詳細な説明に記載の評価試験から、本件発明が当該課題を解決できたことを当業者が理解できないとまではいえない。 (5)まとめ したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法第36条第6項に規定する要件を満たすものであるから、本件請求項1~4に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-701034

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