2022-701016
ジルコニア焼結体
- 審判番号
- 2022-701016
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-109189外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7061514
- 請求日
- 2022年10月14日
- 審決日
- 2023年06月21日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】クラレノリタケデンタル株式会社
- 【権利者代理人】加藤 朝道
- 【異議申立人】松永 健太郎
- 分類
- P1651.537-YAA(C04B) / P1651.55 -YAA(C04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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特許第7061514号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成25年5月2日に出願された特願2013-97058号(以下、「原出願」という。)の一部を平成30年6月7日に新たな特許出願としたものであって、令和4年4月20日にその特許権の設定登録がされ、同年4月28日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1、2に係る特許に対し、特許異議申立人である松永健太郎(以下、「申立人」という)より、令和4年10月14日に特許異議の申立てがされた。
以降の手続の経緯は、次のとおりである。
同年 4月 6日 :意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否についての判断
令和5年2月21日に特許権者より請求された訂正(以下「本件訂正」といい、この訂正の請求を「本件訂正請求」という。)は適法になされたものと判断する。
以下、その理由につき詳述する。
1 訂正の内容
本件訂正請求は、本件特許請求の範囲を訂正することを求めるものであって、特許法第120条の5第4項の規定に従い、本件訂正前の一群の請求項を構成する請求項1~2を訂正の単位として訂正することを求めるものであるところ、その訂正の内容(訂正事項)は、次のとおりである(下線は訂正箇所)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化せず、前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である、ことを特徴とするジルコニア焼結体。」と記載されているのを、
「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化せず、前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%の位置にある第1点と、前記他端から全長の25%の位置にある第2点との色差ΔE*abが30以下であり、前記一端から他端に向かって、薄黄色、薄オレンジ又は薄茶色から白色へ、若しくは、薄黄色から黄白色へと変化している、ことを特徴とするジルコニア焼結体。」に訂正する(請求項1の記載を直接的に引用する請求項2も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点から、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点に向かってL*値は増加傾向にあり、a*値及びb*値は減少傾向にあることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア焼結体。」
と記載されているのを、
「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記第1点から、前記第2点に向かってL*値は増加傾向にあり、a*値及びb*値は減少傾向にあることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア焼結体。」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%の位置にある第1点と、前記他端から全長の25%の位置にある第2点との色差ΔE*abが30以下であり」とする訂正事項について
願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0059】には、「第1点Aと第4点Dの色差をΔE*ab4としたとき、第1点A、第2点B、第3点C及び第4点Dの色度に上記関係がある場合、例えば、ΔE*ab4は30以下であると好ましい。」と記載されている。
同段落【0059】の記載における「上記関係」は、同段落【0046】~【0058】の記載をふまえると、同段落【0048】に記載されている「ジルコニア焼結体10の一端Pから他端Qに向かう第2方向Yに延在する直線上において、L*値、a*値及びb*値の増加傾向又は減少傾向は逆方向に変化しない」ことを意味していると解釈するのが自然である。
そして、このような関係は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1において、「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化しない」と記載されている。
また、同段落【0059】の記載における「第1点A」及び「第4点D」について、同段落【0050】に「第1点Aは、一端Pから、一端Pと他端Q間の長さ(以下、「全長」という)の25%~45%までの区間にあると好ましい。・・・第4点Dは、他端Qから、全長の25%~45%までの区間にあると好ましい。」と記載されており、この記載は、「第1点A」が「一端Pから全長の25%までの区間」乃至「一端Pから全長の45%までの区間」にあることや、「第4点D」が「他端Qから全長の25%までの区間」乃至「他端Qから全長の45%までの区間」にあることを示していることから、標記の訂正事項における「前記一端から全長の25%の位置にある第1点」及び「前記他端から全長の25%の位置にある第2点」は、本件明細書に記載されたものである。
上記検討を併せ考えると、「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%の位置にある第1点と、前記他端から全長の25%の位置にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」との訂正事項は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載されていたといえる。
そして、当該訂正事項は、訂正前の請求項1における「第1点」及び「第2点」の位置を、明確化又は限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」又は同第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないといえる。
イ 「前記一端から他端に向かって、薄黄色、薄オレンジ又は薄茶色から白色へ、若しくは、薄黄色から黄白色へと変化している」とする訂正事項について
訂正前の請求項1に記載された「色」の「変化」に対し、本件明細書の段落【0049】の「一端Pから他端Qに向かって、薄黄色、薄オレンジ又は薄茶色から白色へと変化する」との記載、及び、同段落【0096】の「実施例1~10のいずれの焼結体も、組成物の第1層に相当する領域から第4層に相当する領域に向かって、薄黄色から黄白色へと変化するグラデーションが形成され、天然歯と同様の外観を呈していた」との記載に基づいて限定したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないといえる。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2について、上記(1)アで検討した訂正に伴って、重複する記載を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないといえる。
(3)独立特許要件について
本件特許の訂正前の請求項1、2の全ての請求項について特許異議の申立てがされたものであるから、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。
第3 本件特許請求の範囲の記載(本件発明)
上記第2のとおり本件訂正請求は適法になされたものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」といい、纏めて「本件発明」という)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(下線は訂正箇所)。
「【請求項1】一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており、前記一端から前記他端に向かう直線上においてL*a*b*表色系による色度の増減傾向が変化せず、前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%の位置にある第1点と、前記他端から全長の25%の位置にある第2点との色差ΔE*abが30以下であり、前記一端から前記他端に向かって、薄黄色、薄オレンジまたは薄茶色から白色へ、若しくは、薄黄色から黄白色へと変化している、ことを特徴とするジルコニア焼結体。【請求項2】前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記第1点から、前記第2点に向かってL*値は増加傾向にあり、a*値及びb*値は減少傾向にあることを特徴とする請求項1に記載のジルコニア焼結体。」
第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審が特許権者に通知した、令和4年12月20日付けの取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(明確性要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記2(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)取消理由2(サポート要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記3(1)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 取消理由1(明確性要件違反)について
(1)具体的な指摘事項
取消理由1は、要するに、(i)本件明細書には、焼結体を直径14mm、厚さ1.2mmの円板に加工し、その両面を研磨した後、オリンパス社製の測定装置CE100-DC/USを用いてL*a*b*表色系による色度測定をしたことが記載されているが(【0017】)、測定装置CE100-DC/USでは測定対象として円板状の試料は想定されていないため、その色度の測定方法が不明であり、してみると、本件発明における「L*a*b*表色系による色度」「色差ΔE*ab」を明確に把握できないこと、(ii)本件発明1の「前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*ab」は、それぞれの区間に含まれる全ての第1点と第2点との色差ΔE*ab、あるいは、任意の第1点と第2点との色差ΔE*abのいずれを示しているのかが定かでないことを論拠として、設定登録時の特許請求の範囲の記載は明確でないから、その特許は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件(明確性要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものである。
(2)明確性要件違反についての検討
ア 上記(i)の点について
甲第2号証には、撮影部位として「歯牙、歯列、顔貌」と記載されているとおり(下記第5の2(1)参照)、歯のような形だけを測定対象とせず、「顔貌」のような「平坦な面」を有する円板状の資料を測定することが可能であることが理解される。
そうすると、直径14mm、厚さ1.2mmの円板状に加工された試料も測定装置CE100-DC/USの測定対象であり、測定を行うことができるため、その色度の測定方法が不明であるとはいえず、してみれば、本件発明における「L*a*b*表色系による色度」「色差ΔE*ab」を明確に把握できないとはいえない。
イ 上記(ii)の点について
本件訂正によって「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%の位置にある第1点と、前記他端から全長の25%の位置にある第2点」との特定がされたため、第1点、第2点はそれぞれ特定の位置にある1点であることが明確となった。
(3)申立人の主張の検討
ア 申立人は、令和5年4月6日に提出した意見書において、ジルコニア焼結体は、通常、透光性を有し、透過光の反射・散乱が測定値に与える影響が大きく、色度の測定は背景色の影響を強く受けるものであるが、本件明細書には背景色について何ら記載はないし、光を透過する試料を測定する際の背景色が技術常識であるとみなしうる根拠もないため、色度の測定条件が不明であり、色度は一義的に定まらないため、本件発明は不明確である旨主張している。
ここで、「色度」という絶対値は、甲第4号証、甲第5号証の記載(下記第5の2(2)、(3)参照)によれば、背景色の影響を受ける場合があるといえるが、本件発明1の「L*a*b*表色系による色度の増減傾向」及び「色差ΔE*ab」といった相対値が背景色の影響を受けることについては、いずれの甲号証に記載されていないし、このことが技術常識であることを示す証拠もない。したがって、本件明細書に「オリンパス社製の測定装置CE100-DC/US」で色度を測定するための条件が具体的に記載されていないとしても、そのことが本件発明を第三者に不測の不利益を生じさせるほどに不明確としているとはいえない。
イ また、申立人は、同意見書において、本件訂正で追加された「前記一端から他端に向かって、薄黄色、薄オレンジ又は薄茶色から白色へ、若しくは、薄黄色から黄白色へと変化している」との特定事項について、「色の情報を正確に伝達するためには、言葉による表現」では「正確に伝えることはほとんど不可能である」ため、「薄黄色」等の意味は明確ではない旨主張している。
しかしながら、「薄黄色、薄オレンジ又は薄茶色から白色」「薄黄色から黄白色」との記載は、焼結体が天然歯と同様の色変化を示す人工歯として用いるのに適したものであることを明確にするために加えられた訂正である。そうすると、「薄黄色」などの色がL*a*b*表色系で具体的にどのような値を示すものであるのかまで明確にする必要はなく、天然歯と同様の色変化を示す人工歯として用いるのに適していると当業者が通常認識しうる範囲の色であることが理解できれば十分であるといえる。
ウ したがって、申立人の上記主張はいずれも採用できない。
(4)取消理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。
3 取消理由2(サポート要件違反)について
(1)具体的な指摘事項
取消理由2は、要するに、設定登録時の請求項1、2に係る発明は、ジルコニア焼結体において、天然歯と同様の色の変化を再現することを課題としているところ、当該発明ではジルコニア焼結体がどのような色であるかが特定されておらず、用途も特定されていないため、課題を解決しない色を呈するものを含むことを論拠として、当該発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえず、その特許は、特許法第36条第6項第1項に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである、というものである。
(2)サポート要件違反についての検討
本件訂正によって、本件発明1、2は、ジルコニア焼結体が「前記一端から前記他端に向かって、薄黄色、薄オレンジまたは薄茶色から白色へ、若しくは、薄黄色から黄白色へと変化している」という色変化を有することが規定された。ここで、本件明細書には「実施例1~10のいずれの焼結体も、組成物の第1層に相当する領域から第4層に相当する領域に向かって、薄黄色から黄白色へと変化するグラデーションが形成され、天然歯と同様の外観を呈していた。」(【0096】)と記載されており、「薄黄色から黄白色へと変化」するグラデーションを有する場合、天然歯と同様の外観となることが示されている。そして、「薄黄色、薄オレンジまたは薄茶色から白色へ」のグラデーションは薄黄色から黄白色と同様のグラデーションであるといえるため、「薄黄色、薄オレンジまたは薄茶色から白色へ」のグラデーションを有する場合についても天然歯と同様の外観となることが理解できる。
したがって、本件発明1、2は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、発明の詳細な説明に記載されたものである。
(3)取消理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由2に理由はない。
第5 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
標記の特許異議申立理由(以下、「申立理由」という)は、概略、以下のとおりである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第2号証:「オリンパスニュースリリース:歯科関連機器市場へ参入、歯科用測色装置「Crystaleye(クリスタルアイ)」を国内より発売」、[online]、2006年、オリンパス株式会社、インターネット<https://www.olympus.co.jp/jp/news/2006b/nr061113crystalj.html>
(以下、上記甲第1号証~甲第7号証をそれぞれ「甲1」~「甲7」という。)
(1)申立理由1(新規事項の追加)
令和1年6月27日提出の手続補正書でした補正が下記3(1)アの点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないため、設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
(2)申立理由2(明確性要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記3(2)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)申立理由3(サポート要件違反)
設定登録時の請求項1、2に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記3(3)アの点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 甲号証記載の事項
(1)甲2記載事項
「主な仕様撮影部位 歯牙、歯列、顔貌」
(2)甲4記載事項
「【0006】しかしながら、歯科充填材料自体は半透明であるため、背景色によって、見え方が異なる。例えば、白色の練和紙上で確認した色調と口腔内という暗い環境における色調とでは、見え方が大きく異なる。このため、白色の練和紙上で確認した色調が口腔内で使用した際の色調を必ずしも反映しているとは言えない。」
(3)甲5記載事項
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「【0021】上記L*、a*およびb*の測定は、試料厚さ7mmで行う。本発明の歯科用結晶性ガラスは通常透明~半透明であり、表面反射に加えて、透過光の反射・散乱がL*、a*およびb*の測定値に大きく影響を与えるため一定の厚さで測定する必要がある。試料厚さが薄い場合には背景色の影響をつよく受けるため、切端部や漂白歯の色調を良好に再現できないような色調のガラスでも前記式(1)および(2)を満たす場合がある。また、試料厚さが厚い場合には吸収が大きすぎて一般に測定が困難である。」
3 申立理由についての検討
(1)申立理由1(新規事項の追加)について
ア 具体的な指摘事項
申立理由1は、要するに、審査段階における令和1年6月27日提出の手続補正書によって追加された、本件発明1の「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」との発明特定事項は、願書に最初に添付した明細書(以下、「本件当初明細書」という。)には記載されておらず、本件当初明細書の段落【0059】に「第1点Aと第4点Dの色差をΔE*ab4としたとき、第1点A、第2点B、第3点C及び第4点Dの色度に上記関係がある場合、例えば、ΔE*ab4は30以下であると好ましい。」との記載はあるものの、それが当然に「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」を意味するということはできないため、前記発明特定事項を追加する補正は新規事項を追加するものである、というものである。
イ 当審の判断
上記第2の2(1)アにおいて検討したとおり、段落【0059】の上記記載は、「第1点A」が「一端Pから全長の25%までの区間」乃至「一端Pから全長の45%までの区間」にあることや、「第4点D」が「他端Qから全長の25%までの区間」乃至「他端Qから全長の45%までの区間」にあることを示していることから、「前記一端と前記他端とを結ぶ直線上において、前記一端から全長の25%までの区間にある第1点と、前記他端から全長の25%までの区間にある第2点との色差ΔE*abが30以下である」との発明特定事項を追加する補正は、本件当初明細書に記載された事項の範囲内においてしたものであって、当該補正は新規事項を追加するものであるということはできない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、申立理由1には理由がない。
(2)申立理由2(明確性要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
(ア)本件明細書には、第1粉末、第2粉末、第3粉末、第4粉末についてそれぞれ単独の焼結体を作成してL*a*b*表色系による色度を測定することは記載されているが、「一端から他端に向かう第1方向に向かった色が変化」する「ジルコニア焼結体」自体についての色差ΔE*abの具体的な測定方法はどこにも記載されておらず、「一の単独の焼結体」の色度を測定することにより得られる色差と「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化」する「ジルコニア焼結体」との色差が等価であるとみなせる証拠も技術常識もない。したがって、本件発明の色差ΔE*abがどのような方法で測定されたのか不明であり、本件発明は不明確である。
(イ)色差ΔE*abは「30以下である」と記載されているが、色差ΔE*abが0であってもよいのか不明である。
イ 当審の判断
(ア)本件明細書の実施例においては、第1粉末35g、第2粉末15g、第3粉末15g、第4粉末35gを混ぜることなく積層し、焼結体を得ることが記載されている(【0091】~【0106】)。そうすると、一端からおよそ35%の位置までは第1粉末の組成を有する焼結体となり、他端からおよそ35%の位置までは第4粉末の組成を有する焼結体が作成されるといえる。
ここで、この焼結体の第1点及び第2点の色を測定する場合について検討する。一端Pから25%の位置の第1点は、他の色を示す第2粉末の焼結体部分までは全長の10%という十分な距離があるため、第1点の色を測定すれば、第1粉末単独の焼結体の色を測定した場合と同じとみなせる値となることが理解される。同様に、他端Qから25%の位置にある第2点の色を測定すれば、第4粉末単独の焼結体の色を測定した場合と同じとみなせる値となることも理解される。
そうすると、本件明細書では「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化」する「ジルコニア焼結体」について色差を測定することは記載されていないが、第1粉末、第4粉末の焼結体をそれぞれ作成し、色を測定することによって、「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化」する「ジルコニア焼結体」を測定した場合と等価な値が得られているといえる。したがって、本件発明の色差ΔE*abの測定方法は明確であり、本件発明は明確である。
(イ)本件発明1では「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており」とされているところ、色差ΔE*abが0であるものが含まれないことは明確である。
ウ 小括
以上のとおりであるから、申立理由2には理由がない。
(3)申立理由3(サポート要件違反)について
ア 具体的な指摘事項
色差ΔE*abが0、あるいは、極めて小さく、色度がほとんど変化しないような場合、「天然歯のような外観」を示すという、本件発明の課題は解決されないため、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
イ 当審の判断
本件発明1では「一端から他端に向かう第1方向に向かって色が変化しており」、「一端から他端に向かって、薄黄色、薄オレンジ又は薄茶色から白色へ、若しくは、薄黄色から黄白色へと変化している」と記載されている。
そうすると、色差ΔE*abが0、あるいは、極めて小さく、色度がほとんど変化しないような場合は、本件発明に含まれていない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、申立理由3には理由がない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に当該請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する
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2022-701016