特許異議申立
2024-700375
土壌改質剤
- 審判番号
- 2024-700375
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-083870
- 登録番号
- 7367252
- 請求日
- 2024年04月19日
- 審決日
- 2025年02月05日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ミヨシ油脂株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人牛木国際特許事務所
- 【異議申立人】相澤 聡
- 審判長/審判官
- 審判長 光本 美奈子
- 審判官 瀬下 浩一
- 審判官 長谷川 真一
- 分類
- P1651.537-Y (C09K) / P1651.113-Y (C09K) / P1651.121-Y (C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7367252号発明「土壌改質剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7367252号の請求項 に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件特許に係る出願は、令和5年5月22日の出願であって、同年10月13日に特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行され、その後、令和6年4月19日に相澤 聡(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、当審は、同年8月27日付けで取消理由を通知し、特許権者は、その指定期間内である同年10月28日に意見書の提出を行い、同年11月12日に手続補正書を提出したものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下「本件特許発明1」等、まとめて「本件特許発明」ともいう。)である。
「【請求項1】
裸地の斜面、盛土、又は埋立地もしくは造成地の裸地に使用される土壌改質剤であって、
生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有し、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.2以上である、土壌改質剤。
【請求項2】
種子を含んだ生育基盤材に使用される、請求項1に記載の土壌改質剤。
【請求項3】
生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有し、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.3以上である、土壌改質剤。」
第3 取消理由通知に記載した取消理由について
令和6年8月27日付けで通知した取消理由の概要は次の理由1~2である。
1 理由1(明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、本件特許の請求項1~3に係る発明に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許の請求項1の「生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有し、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.2以上である」との記載について
本件特許明細書【0015】には、「非イオン界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、・・・、カルボキシメチルセルロース、・・・等が挙げられる」と記載される一方、「生分解性樹脂」に「ポリビニルアルコール」や「カルボキシメチルセルロース」等が含まれることは本願出願時の技術常識である(甲第6~14号証)。
そうしてみると「生分解性樹脂」から「ポリビニルアルコール」や「カルボキシメチルセルロース」等の非イオン界面活性剤が除かれることが明記されていない前記請求項1の記載は不明瞭である。
請求項1の引用形式で記載される請求項2に係る発明、及び、「生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有し、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.3以上である」ことを発明特定事項とする請求項3に係る発明も、同様の理由から、明確でない。
2 理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものである。
(1) 本件特許発明は、「植物の生育促進に優れ、特にゲリラ豪雨など大量の雨水に晒された場合であっても植物の生育を損なわない土壌改質剤を提供すること」(段落【0007】)を解決しようとする課題とするものと認められる。
(2) 本件特許発明1は、「非イオン性界面活性剤」としてあらゆるものを包含するものであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「非イオン性界面活性剤」としてポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン(5モル)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(20モル)オレイルエーテル、または、酸化エチレン(EO)と酸化プロピレン(PO)との共重合体を用いた組成物(実施例)において、生育促進、飛砂防止、侵食防止等の効果が確認できたことが記載されているものの、上記実施例で用いられた各種化合物とは基本骨格や物性等が異なるあらゆる「非イオン性界面活性剤」を用いた場合でも、実施例同様の効果がもたらされることを示す具体的な記載はなされていない。
また、基本骨格や物性等が異なるあらゆる化合物について、非イオン性界面活性剤という性質を有していれば、上記各種化合物と同様の生育促進、飛砂防止、侵食防止等の効果をもたらすことが、本願出願時の技術常識から明らかともいえない。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、あらゆる非イオン界面活性剤が含まれる態様においても、上記実施例同様の効果が奏されることが明らかとはいえない。
(3) 以上のとおりであるから、本件特許明細書の実施例等の記載をもって、本願の発明の詳細な説明に、あらゆる非イオン性界面活性剤を用いた場合について、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が一定以上であることを満たしていれば、生育促進、飛砂防止、侵食防止等の効果が奏されることが記載されていたとはいえず、本件特許発明1は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
請求項1の引用形式で記載される本件特許発明2、及び、「生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有し、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.3以上である」ことを発明特定事項とする本件特許発明3も、同様の理由から、発明の詳細な説明に記載されたものでない。
第4 前記第3 1における理由1(明確性要件)について
特許権者は前記意見書において、本件特許発明1の「生分解性樹脂」は「非イオン性界面活性剤」と組み合わせて用いられるものであるところ、本件特許発明1の「土壌改質剤」は土壌に散布し皮膜を形成して固化するものであるから、土壌改質剤に含まれる樹脂が水分散系の樹脂であることは自明である旨、技術常識を示す文献(乙第1号証)を提示して主張している。そこで、当該主張を踏まえ、以下検討する。
本件特許明細書【0007】、【0008】、【0011】、【0020】及び【0039】には、本件特許発明1の土壌改質剤は皮膜を形成することが記載されており、【0014】の「本発明の土壌改質剤は、土壌表面で皮膜を形成し高い固化性能を発揮する」との記載から、本件特許発明の土壌改質剤は、土壌表面で皮膜を形成し高い固化性能を発揮するものと認められる。そして、乙第1号証(材料 第19巻 第205号 昭和45年10月 pp.865-872 日本材料学会)の第866頁右欄下から第1行~第867頁左欄第5行に、液状物を散布して土壌の表層部を固結し、よって侵食を防止しようとするものである液状硬化性侵食防止剤(合議体注:本件特許発明1の土壌改質剤に相当)の分類として「(a)水分散の樹脂系 水に不溶の樹脂が水中に微粒子となって浮遊する系であって,乾燥した場合,乾燥する時の基台上で水不溶性の連続皮膜を形成する.この系が多孔質の土壌面上に散布され乾燥した時は,固結される土壌層の厚さにより,浸透固結型と皮膜型になる.」と記載されるように、皮膜を形成する土壌改質剤において、「非イオン性界面活性剤」と組み合わせて用いられる「生分解性樹脂」は、皮膜を形成するという性質上、水に不溶性であることは技術常識から明らかといえる。
そうすると、土壌に散布し皮膜を形成する土壌改質剤である本件特許発明1の「生分解性樹脂」は、皮膜を形成するような水に不溶の樹脂であり、水に溶解するポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロース等を含まないことは明らかである。
したがって、本件特許発明1は明確である。
請求項1の引用形式で記載される本件特許発明2、及び、「生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有し、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.3以上である」ことを発明特定事項とする本件特許発明3も、同様の理由から、明確である。
申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において以下のとおり主張する。
(I)本件特許発明1~3は、「生分解性樹脂」を含有する点が特定されているが、明細書の発明の詳細な説明には、生分解性樹脂について定義が記載されておらず、「生分解性樹脂」として周知であるポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロース等が、「生分解性」の特性を有しながら、本件明細書では「生分解性樹脂」ではなく「非イオン性界面活性剤」として記載されており、本件特許発明で特定する「生分解性樹脂」が不明確なものとなっている。
(II)上記(I)に記載したように、本件特許発明1~3における「生分解性樹脂」が不明確であるため、本件発明1、3において特定する「生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比」の値も、不明確なものとなっている。
(III)上記(I)、(II)のような理由があるので、本件発明1~3における「生分解性樹脂」および「生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比の値」の特定は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
申立人の主張についての判断
前記検討したとおり、本件特許発明1~3において「生分解性樹脂」は水に溶解するポリビニルアルコールやカルボキシメチルセルロース等を含まないことは明らかであるから、申立人の主張(I)~(III)は採用できない。
第5 前記第3 2における理由2(サポート要件)について
特許権者は、技術常識を示す文献として乙第2号証を提示しつつ、前記意見書において、本件特許発明の課題は、植物の生育促進に優れ、特にゲリラ豪雨など大量の雨水に晒された場合であっても植物の生育を損なわない土壌改質剤を提供することであり、[1]生育阻害の抑制、[2]土壌での保水性、[3]生分解性樹脂粒子の粒径、[4]浸食防止性能の観点から、非イオン性界面活性剤は、それに共通する基本的特性から、本件特許の課題の解決に適していることを主張している。そこで、以下、当該主張を踏まえて検討する。
本件特許発明の課題及び実施例の記載は、前記第3 2の(1)及び(2)のとおりである。
乙第2号証(植物の化学調節 第19巻 第1号 1984年 pp.34-49 一般社団法人植物化学調節学会(The Japanese Society for Chemical Regulation of Plants))の第36頁右欄第1行~第3行の「一般的には非イオン,陰イオン,陽イオン性活性剤の順で薬害が多発し」、同欄第12行には「非イオン系は薬害が少なく」との記載、乙第3号証(特開2019-71854号公報公開日 令和1年5月16日)の段落【0048】の「・・・ノニオン界面活性剤(B)は植物の生育に影響が少ない。」との記載、及び、乙第4号証(特開2020-162599号公報 公開日 令和2年10月8日)の段落【0014】の「一般的に、アニオン界面活性剤は撥水抑制能に優れ、ノニオン界面活性剤は植物の生育に影響が少ないとされている。」との記載から、非イオン性界面活性剤は植物の生育に与える影響が少ないことは、本願出願時の技術常識であったと認められる。また、乙第5号証(土木学会論文集 第1997巻 第582号 1997年 12月 pp.265-274 公益社団法人土木学会)の第266頁右欄下第3行から第12行の「図-2に代表的な活性剤の構造モデルを示す.・・・土粒子界面の負電荷によって・・・非イオン性活性剤は,疎水基が吸着し親水性を高める.」との記載から、非イオン性界面活性剤が、保水性の向上させることも、本願出願時の技術常識であったと認められる。そして、保水性の向上により植物の生育性が高められるであろうことは、当業者にとって明らかである。
そうしてみると、当業者は、非イオン性界面活性剤はその化学構造によらず、植物の生育促進に優れたものであろうことを理解するといえる。
また、本件特許発明は土壌表面で皮膜を形成して固化する土壌改質剤に係る発明であるところ、本件特許明細書【0008】の「非イオン性界面活性剤を使用する場合、樹脂粒子を安定に分散させる」との記載、及び、同【0036】の「本発明の土壌改質剤は、生分解樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.2以上であることで、粒子径が細かく揃い細かい土粒子間の接着に効果的であり、土壌の団粒化・保水性の向上にも寄与し、植物の生育性が向上する。その保水性によって雨水の土壌への浸透を促進して表層水として流出する雨水の量を減少し、土壌の乾燥による植物の発芽不良と乾燥枯れを防止して性育成が良好となり、浸食防止効果が得られる。」との記載から、本件特許発明は、一定以上の非イオン性界面活性剤の配合による分散安定化により粒子径が微細かく揃うことで浸食防止という土壌改質性能を発揮することを当業者は理解できるといえる。
そうすると、本件特許明細書の実施例に具体的に記載される界面活性剤以外の非イオン性界面活性剤を用いた場合でも植物の生育促進に優れ、大量の雨水に晒された場合であっても植物の生育を損なわない土壌改質剤が提供されることを当業者は理解できるといえるから、本件特許発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、概ね以下のとおり主張する。
「非イオン性界面活性剤」としてポリオキシエチレンアルキルエーテル(花王社製 製品名:エマルゲン1108)が用いられた追加試験例の(試験例1)及びポリオキシエチレン(20モル)オレイルエーテルが用いられた追加試験例の(試験例2)では、「生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有し、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.2(または0.3)以上である」との本件特許発明の発明特定事項を満たす組成物が飛散防止作用を有さないことが確認されているから、本件特許発明は前記課題を解決できない。
申立人の主張についての判断
前記追加試験例の(試験例1)及び(試験例2)は、前記意見書で特許権者も主張するとおり、実験者の署名(中立的な機関によるものか等含め)を伴うものではないため、試験例1及び2の写真(FigC及びFigD等)のみをもって本件特許発明のサポート要件について論じることはできない。
なお、試験例1及び2の写真(FigC及びFigD等)は、真砂土に試験例1及び2の土壌改質剤を散布して養生して20日後に、風速10m/sx5分の条件で風を当てた時に、50%以上飛散したことを示すというものである。当該試験例は、植物の生育促進という前記第3 2(1)の本件特許発明の課題に関する試験例ではなく、土壌改質剤として全く機能しない程飛散したことを示すものでもない。そうしてみると、仮に試験例1及び2の結果を参酌したとしても、これらの結果をもって本件特許発明が前記課題を解決できないことが明らかとはいえない。
よって、申立人の前記主張は採用できない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人の主張のうちは取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由は以下のとおりである。
理由3(新規性)本件特許の請求項1、3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第1号証、甲第2号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
理由4(進歩性)本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第1号証または甲第2号証)及び周知技術(甲第3号証~甲第5号証)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第7 前記第6の理由3(新規性)及び理由4(進歩性)について
1 甲号証について
甲第1号証:韓国公開特許第10-2021-0067465号明細書
甲第2号証:中国特許出願公開第103194240号明細書
甲第3号証:大内誠悟、特集 環境保全と高分子、”土壌と高分子-農業 緑化への応用-”、高分子、47巻、12月号(1998年)第880-883ページ
甲第4号証:志佐 誠 等、Soil conditionerの園芸的利用に関する研究(第9報)-とくにPVAの団粒形成に対する諸条件について-”、
甲第5号証:KOERNER, Robert M. et al, 13985、"Erosion Control of Granular Soils Using PVA"。JOURNAL OF THE CONSTRUCTION DIVISION、1978年9月号、pp.279~294
2 甲号証の記載について
(1)甲第1号証(以下、「甲1」という。)
摘記箇所の後に申立人の翻訳を掲載した。
1a「
[図:0001420326000001.jpg]
」
請求範囲
請求項1
デンプン(Starch) 10~20重量部、ポリビニルアルコール(Polyvinyl lAlcohol) 10~20重量部、キトサン(Kitosan) 1~2重量部を含む複合生分解性高分子水溶液を含む、飛散粉塵抑制用組成物。」
1b「
[図:0001420326000002.jpg]
・・・
[図:0001420326000003.jpg]
」
[0017]また、本明細書では、上記散布段階において、上記組成物中の複合生分解性高分子粒子は、土壌粒子と結合して皮膜を形成する、飛散粉塵抑制方法を提供する。
・・・
[0019]また、本発明による飛散粉塵抑制用組成物は、界面活性の両性特性を有するポリビニルアルコールPVAを特定の重量で含有することにより、疎水性特性を有する土壌内の微粒子によって円滑な土壌内部浸透が困難な従来のデンプンベースの飛散粉塵抑制剤に比べて、土壌内に均一な分散が可能であり、疎水性飛散粉塵粒子の土壌表面浸透及び皮膜効率の向上、及び皮膜耐久性の向上効果が期待できる。
1c「
[図:0001420326000004.jpg]
[図:0001420326000005.jpg]
[0033]デンプン(Starch)は、生分解性に優れ、有毒物を発生させない天然高分子であり、価格が安く、製造資源が豊富で供給が容易であるだけでなく、熱や圧力を加えるとゲル化(gelatinization)して接着性を帯びるため、接着分野に応用が可能な利点がある。本発明の一実施例によって使用されるデンプンは、分子式で(C6H10O5)n-(H2O)を有する、
1d「
[図:0001420326000006.jpg]
」
[0039]ポリビニルアルコー(Polyvinvl Alcohol,PVA)は結晶性の水溶性高分子材料であり、優れた水溶性と皮膜特性(強度、耐油性、造膜性、酸素ガスバリア性)などがあり、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、繊維加工剤、各種バインダー、紙加工剤、接着剤、フィルムなどに広く利用されている。
1e「
[図:0001420326000007.jpg]
[0045]キトサン(Chitosan)は、カニ、エビなどの甲殻類の殻に存在するキチン(Chitin)を高温強アルカリで処理して脱アセチル化させた天然高分子物質であり、毒性がなく、生分解が可能で、生体親和性に優れ、創傷治療剤、人工皮膚、血液凝固剤、免疫増強剤、抗菌及び抗酸化剤などの分野に活用されてきた。
1f「
[図:0001420326000008.jpg]
」
[0092]実験3:風速の変化による飛散粉塵抑制用組成物の効果を測定する。
[0093]現場風速予測変化による飛散粉塵抑制用組成物の適用効果を確認するために、最近5年間のソウル市の平均最大瞬間風速14.2m/sを基準に、4、8、12、14、18m/sの風速条件で、上記実験2で導き出したデンプン:PVA:キトサン1:1:0.1重量部比で混合した飛散粉塵抑制用組成物を土壌に対して0.005%で適用し、風洞実験を行った。
[0094]図10の結果を参照すると、PM10及びPM2.5ともに全風速範囲内で飛散粉塵抑制効果は大きな変化なく安定していることが示され、環境省の微細粉塵基準''良好''の範囲を満足することを確認することができた。
(2)甲第2号証(以下、「甲2」という。)
摘記箇所の後に申立人の翻訳を掲載した。
2a「
[図:0001420326000009.jpg]
」
特許請求の範囲
1.全生分解性機能を有する防塵・防砂用ポリマー乳剤であって、次のことを特徴とする:主成分は脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリエステル、ポリビニルアルコール及び変性澱粉、並びに環抒に優しい溶剤及び乳化剤を含み、異なる散布環境に応じて植物成長促進剤を添加することができる;質量部において、主成分の比は、脂肪族ポリカーボネート:脂肪族ポリエステル:ポリビニルアルコール:変性デンプンは100~0/0~100/0~20/0~20;環境溶剤の質量は脂肪族ポリカーボネートと脂肪族ポリエステルの合計の400~500%、乳化剤の質量は脂肪族ポリカーボネートと脂肪族ポリエステルの合計の2~7%、植物成長促進剤の質量は脂肪族ポリカーボネートと脂肪族ポリエステルの合計の0~10%である。
2b「
[図:0001420326000010.jpg]
」
[0001]本発明は、防塵・砂固定用の生分解性ポリマーエマルジョンに関するものであ上、調製されたポリマーエマルジョンは、防塵、保湿、植物生育促進、士壌侵食防止などの特性を有し、土壌、砂漠、工業用備蓄基地、石炭備蓄基地、建設現場などの粉塵が発生しやすい場所や粉塵発生の状況に適している。
2c「
[図:0001420326000011.jpg]
・・・
[図:0001420326000012.jpg]
」
[0004]本発明は、防塵及び砂固定用の生分解性ポリマーエマルジョン及びその調製方法を提供する。
・・・
[0006]裸地、掘削土、石炭置き場、灰置き場などの粉塵発生源の表面に乳剤を堕霧した後、乳剤は素早く砂と粉塵粒子の間に浸透し、砂の表面に硬化して保護層を形成することができ、噴霧量に応じて、約1~3cmの厚さになり、効果的に次の緩い砂と粉塵に直接気流を隔離することができ、一片に結合し、粉塵防止と砂固定の役割を果たす。また、植物のある生育場では、植物成長促進剤を添加することにより、乳化分解過程で植物に栄養を与えることができ、植物の生育に寄与する。
2d「
[図:0001420326000013.jpg]
」
【実施例】
[0007]まず、炭酸ガス共重合体100kgをポリカーボネートジメチルエステルに溶解して30%水溶液とし、乳化のためにスルホン酸アルキルエステルナトリウムを5kg加えた。さらにポリビニルアルコール10kgを加えて30%水溶液とした。この2つの溶液を5OOOr/minで高速攪拌しながら反応器に加え、10分後に取り出した。エマルジョンを石炭パイルに噴霧し、観察したところ、30分後に硬化が完了し、厚さ1cmの硬い殻が形成され、風塵を効果的に防ぐことができた。
(3)甲第3号証(以下、「甲3」という。)
3a「
[図:0001420326000014.jpg]
」(第880ページ右欄第4~23行)
(4)甲第4号証(以下、「甲4」という。)
4a「
[図:0001420326000015.jpg]
」(第57ページ第6~14行)
(5)甲第5号証(以下、「甲5」という。)
摘記箇所の後に申立人の翻訳を掲載した。
5a「
[図:0001420326000016.jpg]
」(第287ページ第8~17行)
PVA処理した土壌ビンからの侵食速度を予測する試みは行われなかった。土壌侵食量が非常に少なく(おそらく大きなばらつきが生じる)、方程式の修正が必要になるからである。このような修正は、おそらく解に必要な摩擦係数と侵食性係数に生じると思われる。この修正は、図7の未処理とPVA処理の両方の土壌の顕微鏡写真を見ると容易にわかる。そこでは、粒子接触部におけるPVAの結合が容易に確認できる。また、注意すべき点は、PVAが多すぎると空隙が完全に塞がれてしまう可能性があることである。
5b「
[図:0001420326000017.jpg]
[図:0001420326000018.jpg]
」(第288ページ下から第3行~第289ページ第14行)
1.PVAを48g/m2(400ポンド/エーカー)の量で本明細書に記載したタイプの粒状土壌に散布すると、120分間の降雨で3.8cm/hrの強度の降雨に耐え、土壌浸食はごくわずかである。
2.この種の末処理士壌ではPVA処理土に降った雨が士壌に浸透するため、浸食による士壌の損失がほとんどなくなるため、表面水の流出最はPVA処理土壌の約6倍になる。この知見は、25%までの土壌勾配で確認された。
3.3顕微鏡写真から、PVA処理土は結合構造を持ちある程度の凝集力(これらは粒状土である)を持つが、水が流れるのに十分な多孔質であることが示された。
4.末処理土壌とPVA処理士壌におけるエンドウの生育に関する別の研究では、PVA処理土壌では発芽時間が8分の1に短縮されることが判明した。したがって、植物が地表に現れるのがより早くなり、地表水の流出速度とそれに伴う土壌侵食が減少する。しかし、いったん発芽すると、その後の成長速度は未処理土壌もPVA処理土壌もほぼ同じであった。
3 甲号証に記載された発明
(1)甲1に記載された発明
甲1には実験3に用いられた飛散粉塵抑制用組成物として「デンプン:PVA:キトサン1:1:0.1重量部比で混合し、土壌に対して適用する飛散粉塵抑制用組成物。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(摘記1f参照)。
(2)甲2に記載された発明
甲2には実施例のエマルジョンとして「炭酸ガス共重合体100kgをポリカーボネートジメチルエステルに溶解して30%溶液とし、乳化のためにスルホン酸アルキルエステルナトリウムを5kg加えた溶液と、ポリビニルアルコール10kgを加えた30%溶液を5OOOr/minで高速攪拌しながら反応器に加え、10分後に取り出し得た、石炭パイルに噴霧し、硬化が完了し、厚さ1cmの硬い殻が形成され、風塵を効果的に防ぐエマルジョン。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる(摘記2c参照)。
4 対比・判断
(1)甲1発明を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲1発明との対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「PVA」は、界面活性剤であり(摘記1d参照)、非イオン性であるから(摘記3a参照)、本件特許発明1の「非イオン性界面活性剤」に相当する。
甲1発明の「土壌に対して適用する飛散粉塵抑制用組成物」は本件特許発明1の「土壌改質剤」に相当する。
また、甲1発明の「でんぷん」及び「キトサン」は、本件特許発明1の「生分解性樹脂」と、生分解性の高分子という点で共通するものである。
そうすると、本件特許発明1と甲1発明は、「生分解性の高分子及び非イオン性界面活性剤を含有する、土壌改質剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-1>
生分解性の高分子が、本件特許発明1では生分解性樹脂であり、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.2以上であるのに対し、甲1発明では「デンプン」及び「キトサン」であり、デンプン及びキトサンに対する非イオン性界面活性剤の質量比が約0.91(1/(1+0.1))である点。
<相違点1-2>
土壌改質剤が、本件特許発明1では裸地の斜面、盛土、又は埋立地もしくは造成地の裸地に使用されるのに対し、甲1発明ではそのような特定がない点。
(イ)相違点についての検討
<相違点1-1>について
甲1発明の「デンプン」及び「キトサン」は、いずれも樹脂ではなく、甲1には土壌に対して適用する飛散粉塵抑制用組成物に生分解性樹脂を含有させることについて記載も示唆もなされておらず、本願出願時の技術常識から、甲1発明の飛散粉塵抑制用組成物において、デンプン及びキトサンと生分解性樹脂が同様の作用を奏することが明らかともいえない。
また、甲3及び4には土壌の団粒形成促進のための非イオン性ポリマーとしてPVAが記載され、甲5には雨による土壌浸食を抑えるためにPVAを使用することが記載されるように(摘記3a、4a、5a、5b参照)、PVAが土壌改良に用いられること自体は周知技術であるとしても、甲3~甲5はいずれもPVAを単独で土壌改良に使用する技術に関するものであって生分解性樹脂に関する記載はなされていない。
したがって、甲1発明に、甲1に記載の事項及び周知技術(甲3~甲5等)を適用することにより、甲1発明の飛散粉塵抑制用組成物に生分解性樹脂を含有させ、その上で、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比を0.2以上とすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)本件特許発明1の効果について
本件特許明細書の実施例には、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.2未満である比較例に比べて、当該質量比が一定以上である本件特許発明1の土壌改質剤は、植物の生育促進に優れ、特にゲリラ豪雨など大量の雨水に晒された場合であっても植物の生育を損なわないことが開示されており、そのような効果を、本件特許発明1の構成が奏するものとして当業者が予測し得たとはいえない。
(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点1-2>について検討するまでもなく、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び周知技術(甲3~甲5)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲1発明との<相違点1-1>と同じ相違点を有するものであるから、前記アと同様の理由から、本件特許発明2は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲3~甲5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
ウ 本件特許発明3
(ア)甲1発明との対比
本件特許発明3と甲1発明を対比する。
甲1発明の「PVA」は、界面活性剤であり(摘記1d参照)、非イオン性であるから(摘記3a参照)、本件特許発明3の「非イオン性界面活性剤」に相当する。
甲1発明「土壌に対して適用する飛散粉塵抑制用組成物」は、本件特許発明3の「土壌改質剤」に相当する。
また、甲1発明の「でんぷん」及び「キトサン」は、本件特許発明3の「生分解性樹脂」と、生分解性の高分子という点で共通するものである。
そうすると、本件特許発明3と甲1発明は、「生分解性の高分子及び非イオン性界面活性剤を含有する、土壌改質剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-3>
生分解性の高分子が、本件特許発明3では生分解性樹脂を含有し、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.3以上であるのに対し、甲1発明では「デンプン」及び「キトサン」であり、デンプン及びキトサンに対する非イオン性界面活性剤の質量比が約0.91(1/(1+0.1))である点。
(イ)相違点についての検討
<相違点1-3>について
<相違点1-3>と<相違点1-1>は、質量比の値が0.3以上か0.2以上かという点でのみ異なるものであるから、前記アと同様の理由により、本件特許発明3は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び周知技術(甲3~甲5)に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、または、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものではない。
(2)甲2発明を主たる引用発明とする場合
ア 本件特許発明1
(ア)甲2発明との対比
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲2発明の「炭酸ガス共重合体」は本件特許発明1の「生分解性樹脂」に相当する。
甲2発明の「ポリビニルアルコール」は、界面活性剤であり(摘記1d参照)、非イオン性であるから(摘記3a参照)、本件特許発明1の「非イオン性界面活性剤」に相当する。
甲2発明の「石炭パイルに噴霧し、硬化が完了し、厚さ1cmの硬い殻が形成され、風塵を効果的に防ぐエマルジョン」は本件特許発明1の「土壌改質剤」と「剤」の限りにおいて一致する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有する、剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-1>
生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が、本件特許発明1では0.2以上であるのに対し、甲2発明では0.1(10/100)である点。
<相違点2-2>
剤が、本件特許発明1は裸地の斜面、盛土、又は埋立地もしくは造成地の裸地に使用される土壌改質剤であるのに対し、甲2発明では石炭パイルに噴霧し、硬化が完了し、厚さ1cmの硬い殻が形成され、風塵を効果的に防ぐものである点。
(イ)相違点についての検討
<相違点2-1>について
甲2には防塵・防砂用のポリマー乳剤において、脂肪族ポリカーボネート:脂肪族ポリエステル:ポリビニルアルコール:変性デンプンの質量比は100~0/0~100/0~20/0~20と記載されるのみであり(摘記2a参照)、当該比率によれば、本件特許発明1の生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比に相当する脂肪族ポリカーボネートに対するポリビニルアルコールの比率は、0~無限大というあらゆる値となる。甲2には、甲2発明のエマルジョンにおいて脂肪族ポリカーボネートに該当する炭酸ガス共重合体に対するポリビニルアルコールの質量比を0.2以上とすることを記載ないし示唆する記載はないから、その質量比を0.2以上とする動機付けがあるとはいえない。
そして、甲3~甲5にはポリビニルアルコールの使用量やポリビニルアルコールの使用により植物の生育性が優れたものとなることが記載されているが(摘記3a、4a、5b参照)、いずれもポリビニルアルコールのみを土壌改質に用いることが記載されているにすぎず、生分解性樹脂と組み合わせてポリビニルアルコールを用いることについて記載も示唆もなく、さらに、甲5には注意すべき点としてポリビニルアルコールが多すぎると(粒子間の)空隙が完全に密閉される可能性があることが記載されているから(摘記5a参照)、そのような記載をみれば、甲2発明のエマルジョンにおいて、ポリビニルアルコールを増やし、脂肪族ポリカーボネートに該当する炭酸ガス共重合体に対するポリビニルアルコールの質量比を0.2以上とする動機付けがあるとはいえない。
(ウ)本件特許発明1の効果について
甲2には実施例に「風塵を効果的に防ぐことができた」との記載はあるものの、その程度は不明である。一方、本件特許明細書の実施例には、生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が0.2未満である比較例に比べて、当該質量比が一定以上である本件特許発明1の土壌改質剤は、植物の生育促進に優れ、特にゲリラ豪雨など大量の雨水に晒された場合であっても植物の生育を損なわないという効果を奏するものであり、そのような効果を、本件特許発明1の構成が奏するものとして当業者が予測し得たとはいえない。
(エ)小括
したがって、本件特許発明1は、<相違点2-2>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び周知技術(甲3~甲5等)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
イ 本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用し、さらに限定するものであり、前記本件特許発明1と甲2発明との<相違点2-1>と同じ相違点を有するものであるから、本件特許発明2は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び周知技術(甲3~甲5)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
ウ 本件特許発明3
(ア)甲2発明との対比
本件特許発明3と甲2発明を対比する。
甲2発明の「炭酸ガス共重合体」は本件特許発明3の「生分解性樹脂」に相当する。
甲2発明の「ポリビニルアルコール」は、界面活性剤であり(摘記1d参照)、非イオン性であるから(摘記3a参照)、本件特許発明3の「非イオン性界面活性剤」に相当する。
甲2発明の「石炭パイルに噴霧し、硬化が完了し、厚さ1cmの硬い殻が形成され、風塵を効果的に防ぐエマルジョン」は本件特許発明3の「土壌改質剤」と「剤」の限りにおいて一致する。
そうすると、本件特許発明1と甲2発明は、「生分解性樹脂及び非イオン性界面活性剤を含有する、剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点2-3>
生分解性樹脂に対する非イオン性界面活性剤の質量比が、本件特許発明3では生分解性樹脂を含有し、0.3以上であるのに対し、甲2発明では生分解性樹脂を含有していること不明である点。
<相違点2-4>
剤が、本件特許発明3は裸土壌改質剤であるのに対し、甲2発明では石炭パイルに噴霧し、硬化が完了し、厚さ1cmの硬い殻が形成され、風塵を効果的に防ぐものである点。
(イ)相違点についての検討
<相違点2-3>について
<相違点2-3>と<相違点2-1>は、質量比の値が0.3以上か0.2以上かという点のみで異なるものであるから、前記アと同様の理由により、本件特許発明3は、<相違点2-4>について検討するまでもなく、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明及び周知技術(甲3~甲5)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、令和6年8月27日付けの取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって本件特許発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700375