特許異議申立
2022-700974
隔壁形成用感光性組成物、隔壁および表示素子
- 審判番号
- 2022-700974
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-132147
- 登録番号
- 7047642
- 請求日
- 2022年10月04日
- 審決日
- 2024年01月26日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】JSR株式会社
- 【権利者代理人】天野 一規
- 【権利者代理人】藤本 勝誠
- 【権利者代理人】池田 義典
- 【異議申立人】弁理士法人 朝日奈特許事務所
- 【異議申立人】田上 浩
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 大▲瀬▼ 裕久
- 審判官 宮澤 浩
- 分類
- P1651.121-ZAA(H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条、特許法第120条の3第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7047642号発明「隔壁形成用感光性組成物、隔壁および表示素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7047642号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
特許第7047642号の請求項1ないし12に係る特許を取り消す。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7047642号の請求項1~請求項12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2018-132147号)は、平成30年7月12日(優先権主張 平成29年9月5日)の出願であって、令和4年3月28日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許について、令和4年4月5日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和4年10月4日に、特許異議申立人 弁理士法人朝日奈特許事務所(以下「申立人1」という。)から全請求項に対して特許異議の申立て(以下「特許異議申立1」という。)がされ、また、同じく6月以内である令和4年10月5日に、特許異議申立人 田上 浩(以下「申立人2」という。)から全請求項に対して特許異議の申立て(以下「特許異議申立2」という。)がされた。
特許異議申立1及び特許異議申立2は、特許法120条の3第1項の規定により、異議2022-700974号事件として併合して審理されることとなったところ、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和5年 2月20日付け:取消理由通知書
令和5年 4月25日 :訂正請求書の提出
令和5年 4月25日 :意見書(特許権者)の提出
令和5年 6月16日 :意見書(申立人1)の提出
令和5年 6月19日 :意見書(申立人2)の提出
令和5年 7月25日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和5年 9月22日 :訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)の提出
令和5年 9月22日 :意見書(特許権者)の提出
令和5年11月17日 :意見書(申立人1)の提出
令和5年11月27日 :意見書(申立人2)の提出
なお、令和5年4月25日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7047642号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項
特許請求の範囲の請求項1において、
「隔壁を有する有機EL素子またはマイクロLED素子である表示素子の上記隔壁の形成に用いられ、
(A)白色顔料、
(B)アルカリ可溶性樹脂、
(C)重合性化合物、
(D)光重合開始剤、
(E)溶剤
を含有する隔壁形成用感光性組成物であって、
上記(A)白色顔料の含有量が、(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30~90質量%であり、
上記隔壁形成用感光性組成物から形成される硬化膜の表面のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角が15°以上である、隔壁形成用感光性組成物。」
という記載を、
「隔壁を有する有機EL素子またはマイクロLED素子である表示素子の上記隔壁の形成に用いられ、
(A)白色顔料、
(B)アルカリ可溶性樹脂、
(C)重合性化合物、
(D)光重合開始剤、
(E)溶剤、
分散剤、および
シランカップリング剤
を含有する隔壁形成用感光性組成物であって、
上記(A)白色顔料の含有量が、(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30~90質量%であり、
上記(B)アルカリ可溶性樹脂の含有量が、上記(A)白色顔料100質量部に対して、10質量部以上であり、
上記分散剤の含有量が、上記(A)白色顔料100質量部に対して、2質量部以上30質量部以下であり、
上記(B)アルカリ可溶性樹脂および上記分散剤の合計含有量が、上記(A)白色顔料100質量部に対して150質量部以下であり、
上記シランカップリング剤の含有量が上記(B)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部以下であり、
上記隔壁形成用感光性組成物から形成される硬化膜の表面のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角が15°以上である、隔壁形成用感光性組成物。」
に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~12も同様に訂正する。
(2)本件訂正請求は、一群の請求項である、請求項1~請求項12を対象として請求されたものである。
3 訂正の適否についての判断
訂正事項に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書の【0093】、【0094】及び【0132】の記載に基づいて、特許請求の範囲の請求項1の「隔壁形成用感光性組成物」の組成に関して、「シランカップリング剤」を含有し、「上記シランカップリング剤の含有量が上記(B)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部以下」であることを特定して、「隔壁形成用感光性組成物」の組成を限定するものであり、また、本件特許の願書に添付した明細書の【0054】、【0082】、【0087】及び【0088】の記載に基づいて、特許請求の範囲の請求項1に記載の「隔壁形成用感光性組成物」について、「分散剤」を含有するものに限定し、かつ、「アルカリ可溶性樹脂」、「分散剤」及び「アルカリ可溶性樹脂および分散剤」の「含有量」を、「白色顔料100質量部に対して」それぞれ、「10質量部以上」、「2質量部以上30質量部以下」及び「150質量部以下」であることを特定して、「隔壁形成用感光性組成物」の組成を限定するものである。
したがって、いずれの訂正も特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。
また、請求項2~12についてみても、同じである。
4 まとめ
したがって、上記の訂正請求による訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論に記載のとおり、特許第7047642号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
前記「第2」のとおり、本件訂正請求に係る訂正は認められた。
そうしてみると、特許異議の申立ての対象とされる、請求項1~請求項12に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」などという。)は、本件訂正請求に係る訂正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項12に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「【請求項1】
隔壁を有する有機EL素子またはマイクロLED素子である表示素子の上記隔壁の形成に用いられ、
(A)白色顔料、
(B)アルカリ可溶性樹脂、
(C)重合性化合物、
(D)光重合開始剤、
(E)溶剤、
分散剤、および
シランカップリング剤
を含有する隔壁形成用感光性組成物であって、
上記(A)白色顔料の含有量が、(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30~90質量%であり、
上記(B)アルカリ可溶性樹脂の含有量が、上記(A)白色顔料100質量部に対して、10質量部以上であり、
上記分散剤の含有量が、上記(A)白色顔料100質量部に対して、2質量部以上30質量部以下であり、
上記(B)アルカリ可溶性樹脂および上記分散剤の合計含有量が、上記(A)白色顔料100質量部に対して150質量部以下であり、
上記シランカップリング剤の含有量が上記(B)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部以下であり、
上記隔壁形成用感光性組成物から形成される硬化膜の表面のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角が15°以上である、隔壁形成用感光性組成物。
【請求項2】
(F)界面活性剤をさらに含有し、
(B)アルカリ可溶性樹脂、(C)重合性化合物、および(F)界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種には、Si原子またはF原子が含まれる、請求項1に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項3】
(B)アルカリ可溶性樹脂には、Si原子またはF原子が含まれる、請求項1または請求項2に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項4】
(B)アルカリ可溶性樹脂には、下記式(1)で表される基が含まれる、請求項3に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【化1】
[図:0001411242000001.jpg]
(式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子であり、Aはエステル結合またはエーテル結合であり、nは1~10の整数である。nが2以上である場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよく、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。*は結合部位を表す。)
【請求項5】
(B)アルカリ可溶性樹脂には、上記式(1)で表される基を有する構造単位が含まれ、
上記構造単位の含有量が、(B)アルカリ可溶性樹脂100質量%に対して1~70質量%である、請求項4に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項6】
(B)アルカリ可溶性樹脂には、カルボキシル基およびフェノール性水酸基からなる群より選択される少なくとも1種が含まれる、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項7】
(B)アルカリ可溶性樹脂には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、オキシラニル基およびオキセタニル基からなる群より選択される少なくとも1種が含まれる、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項8】
(B)アルカリ可溶性樹脂には、環構造が含まれる、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項9】
(A)白色顔料が、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機物を含む、請求項1乃至請求項8いずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物を用いて形成された隔壁。
【請求項11】
光学濃度(OD)が0.2~5.0/μmである、請求項10に記載の隔壁。
【請求項12】
隔壁を有する有機EL素子またはマイクロLED素子である表示素子であって、
上記隔壁が請求項10または請求項11に記載の隔壁である表示素子。」
第4 当合議体が通知した取消しの理由及び特許異議申立人の証拠方法
1 取消しの理由の概要
令和5年7月25日付け取消理由通知書(決定の予告)により通知した取消しの理由の概要は、下記のとおりである。
記
(進歩性)本件特許の請求項1~12に係る発明は、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
ア 申立人1が特許異議申立書に添付して提出した証拠方法
甲第1号証:特開2014-225323号公報 (甲11)
甲第2号証:特開2007-322546号公報 (甲12)
甲第3号証:特開2008-211036号公報 (甲13)
甲第4号証:特開2011- 66267号公報 (甲14)
甲第5号証:特開2014-199267号公報 (甲15)
甲第6号証:特開2009- 69589号公報 (甲16)
甲第7号証:国際公開第2008/146855号(甲17)
イ 申立人2が特許異議申立書に添付して提出した証拠方法
甲第1号証:国際公開第2015/190294号(甲21)
甲第2号証:特開2014-225323号公報 (甲11)
甲第3号証:特開2007-322546号公報 (甲12)
甲第4号証:国際公開第2013/069789号(甲24)
ウ 申立人1が令和5年6月16日付けの意見書に添付して提出した証拠方法
甲第25号証:特開2001-27802号公報 (甲1-25)
甲第26号証:特開2017-21346号公報 (甲1-26)
甲第27号証:特開2016-27384号公報 (甲1-27)
甲第28号証:特開2015-34961号公報 (甲1-28)
甲第29号証:特開2015-67794号公報 (甲1-29)
甲第30号証:最新顔料分散技術、株式会社技術情報協会、1995年12月8日発行、第1版、第3刷、p.101,103-112、表紙、奥付、写し(甲1-30)
エ 申立人2が令和5年6月19日付けの意見書に添付して提出した証拠方法
甲第25号証:特開2016-110003号公報 (甲2-25)
甲第26号証:特開2011-170049号公報 (甲2-26)
甲第27号証:特開2010-229221号公報 (甲2-27)
甲第28号証:特開2016- 27384号公報 (甲1-27)
甲第29号証:特開2017- 21346号公報 (甲1-26)
(当合議体注:甲11、甲15及び甲21は主引用例であるとともに、副引用例でもある。甲12~甲14、甲2-25は副引用例である。甲16、甲17、甲21、24、甲1-26、甲1-27、甲2-25、甲2-27は、周知技術を示す文献である。)
第5 取消しの理由についての当合議体の判断
1 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
(1)甲15について
ア 甲15に記載された事項及び甲15発明
(ア)甲15に記載された事項
甲15には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当合議体が付したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。
a「【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、前記基板と対向して配置された基板の外部から入射した励起光により蛍光を生じる蛍光体層と、
前記蛍光体層の側面を囲む隔壁と、を含み、
前記隔壁の少なくとも前記蛍光体層と接する部分が光散乱性を有することを特徴とする蛍光体基板。
【請求項2】
前記隔壁の少なくとも前記蛍光体層と接する部分が樹脂と光散乱性粒子とを含む材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光体基板。
【請求項3】
前記隔壁の少なくとも前記蛍光体層と接する部分が白色であることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光体基板。
・・・(中略)・・・
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の蛍光体基板と、前記蛍光体層に照射する励起光を射出する光源と、を備えたことを特徴とする表示装置。
・・・(中略)・・・
【請求項8】
前記光源は、前記複数の画素に対応して設けられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子をそれぞれ駆動する複数の駆動素子と、を備えたアクティブマトリクス駆動方式の光源であることを特徴とする請求項6または7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記光源が、発光ダイオード、有機エレクトロルミネセンス素子、無機エレクトロルミネセンス素子のいずれかであることを特徴とする請求項5ないし8のいずれか一項に記載の表示装置。」
b「【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体基板、表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
・・・(中略)・・・
【0004】
また、蛍光体色変換ディスプレイにおいては、黒色隔壁を設けた場合、蛍光体からの発光が隔壁に吸収されたり、蛍光体層に閉じ込められたりして外部光取出し効率を高くできないという問題がある。
この問題に対して、PDPの隔壁に白色ペーストを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
・・・(中略)・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の蛍光体基板は、異なる画素に対応した蛍光体層とカラーフィルターとの間にブラックマトリクスが形成されている。そのため、蛍光体層で生じた蛍光がブラックマトリクスに吸収されてしまい、外部に蛍光を十分に取り出すことができない、という問題がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、蛍光体層で生じた蛍光を外部に十分に取り出すことが可能な蛍光体基板、表示装置および電子機器を提供することを目的とする。
・・・(中略)・・・
【0034】
隔壁7は、内部に光散乱性粒子7aが分散されて構成されている。具体的には、隔壁7は、樹脂と光散乱性粒子とを含む材料で形成されている。なお、本実施形態においては、隔壁7全体が樹脂と光散乱性粒子とを含む材料で形成されているが、これに限らない。例えば、隔壁7の蛍光体層3R,3G,3Bと接する部分のみが樹脂と光散乱性粒子とを含む材料で形成されていてもよい。すなわち、隔壁7の少なくとも蛍光体層3R,3G,3Bと接する部分が光散乱性を有していればよい。
【0035】
隔壁7は白色であってもよい。具体的には、隔壁7は白色レジストを含んで形成されていてもよい。なお、隔壁7全体が白色レジストを含んで形成されていてもよいし、隔壁7の蛍光体層3R,3G,3Bと接する部分のみが白色レジストを含んで形成されていてもよい。すなわち、隔壁7の少なくとも蛍光体層3R,3G,3Bと接する部分が白色であればよい。これにより、隔壁が黒色である場合に比べて、蛍光L2が隔壁7に吸収されにくくすることができる。
・・・(中略)・・・
【0044】
「蛍光体層」
・・・(中略)・・・
【0054】
光散乱粒子として、無機材料を用いる場合には、例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、およびアンチモンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物を主成分とした粒子(微粒子)等が挙げられる。
【0055】
また、光散乱粒子として、無機材料により構成された粒子(無機微粒子)を用いる場合には、例えば、シリカビーズ(屈折率:1.44)、アルミナビーズ(屈折率:1.63)、酸化チタンビーズ(屈折率アナタース型:2.50、ルチル型:2.70)、酸化ジルコニアビーズ(屈折率:2.05)、酸化亜鉛ビーズ(屈折率:2.00)、チタン酸バリウム(BaTiO3)(屈折率:2.4)等が挙げられる。
・・・(中略)・・・
【0058】
「隔壁」
本実施形態の隔壁7は、樹脂と光散乱性粒子7aとを含む材料で形成されている。上述した光散乱層同様、低屈折率の樹脂中に樹脂よりも高屈折率の光散乱微粒子を分散するものであることが好ましい。また、青色光が光散乱性隔壁によって効果的に散乱するためには、光散乱性粒子の粒径がミー散乱の領域にあることが必要であるので、光散乱性粒子の粒径として100nm~500nm程度が好ましい。
樹脂としては、例えば[0056]に挙げたような樹脂材料を用いることができる。また、光散乱性粒子7aとしては、例えば[0053]、[0054]、[0055]に挙げたような光散乱性粒子を用いることができる。
隔壁材料の構成樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を選択し、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶剤を添加することによって隔壁材料をフォトレジスト化することができ、フォトリソグラフィーによってパターニングすることが可能となる。
【0059】
なお、隔壁7の開口部(蛍光体層一区画)の縦横サイズは、20μm×20μm程度~500μm×500μm程度が好ましい。また、隔壁7は、CIE1976L*a*b表示系において80%以上の反射率を有することが好ましい。
・・・(中略)・・・
【0061】
「隔壁への撥液性の付与」
蛍光体層をディスペンサー法、インクジェット法などによってパターニングする場合、隔壁より蛍光体溶液が溢れ出て隣接画素間での混色を防止するために隔壁に撥液性を付与することが必須である。隔壁に撥液性を付与する方法としては例えば以下のような方法がある。
(1)フッ素プラズマ処理
例えば、特開2000-76979号公報に開示されているように、隔壁を形成した基板に対して導入ガスをフッ素系とした条件下でプラズマ処理を行うことによって隔壁に撥液性を付与することができる。
(2)フッ素系表面改質剤の添加
光散乱性隔壁の材料にフッ素系表面改質剤を添加することによって隔壁に撥液性を付与することができる。フッ素系表面改質剤としては、例えばUV硬化型表面改質剤ディフェンサ(DIC株式会社製)やメガファックなどが使用できる。
【0062】
「隔壁の形状」
隔壁の形状としては、バックライト光が本来入射すべき画素の隣接画素に入射しないように、出射基板側よりも入射側で隔壁の開口部が広くなるような、テーパー形状が望ましい。
また、基板と隔壁との密着性を十分に高めるためには、隔墜の横幅に対する隔堅の高さの比率(アスペクト比)が1以上であることが望ましい。」
c「【0169】
(実施例1)
図18(A)に示すように、比較例1と同様に、基板101として、0.7mmのガラスを用いた。これを水洗後、純水超音波洗浄10分、アセトン超音波洗浄10分、イソプロピルアルコール蒸気洗浄5分を行い、100℃にて1時間乾燥させた。
まず、隔壁103の材料として、エポキシ系樹脂(屈折率:1.59)、アクリル系樹脂(屈折率:1.49)、ルチル型酸化チタン(屈折率:2.71、粒径250nm)、光重合開始剤、芳香族系溶剤からなる白色感光性組成物を攪拌混合してネガ型レジストとした。
次に、基板101上に、ネガ型レジストをスピンコーターを用いて塗布した。その後、80℃で10分間プリベークして膜厚50μmの塗膜を形成した。この塗膜に所望の画像パターンが形成できるようなマスク(画素ピッチ500μm、線幅50μm)を被せてi線(300mJ/cm2)を照射し、露光した。次いで、アルカリ現像液を用いて現像して画素パターン状の構造物を得た。引き続き、熱風循環式乾燥炉を用い、140℃で60分間ポストベークしてドットを仕切る隔壁103を作製した。なお、隔壁103の反射率を測定したところ96.5%であった。」
(イ)甲15発明
上記(ア)に摘記した事項から、甲15には、甲15の請求項1,2,3,5,8を引用する請求項9に記載された「表示装置」の「隔壁」の材料として用いられる、実施例1に記載された「白色感光性組成物」に係る発明として、次の発明(以下「甲15発明」)が記載されているといえる。
「基板と、前記基板上に設けられ、前記基板と対向して配置された基板の外部から入射した励起光により蛍光を生じる蛍光体層と、前記蛍光体層の側面を囲む隔壁と、を含み、前記隔壁の少なくとも前記蛍光体層と接する部分が光散乱性を有する蛍光体基板と、蛍光体層に照射する励起光を射出する光源とを備える表示装置であって、前記隔壁は、少なくとも前記蛍光体層と接する部分が樹脂と光散乱性粒子とを含み、白色である隔壁であり、前記光源は、複数の画素に対応して設けられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子をそれぞれ駆動する複数の駆動素子と、を備えたアクティブマトリクス駆動方式の光源であり、発光ダイオード、有機エレクトロルミネセンス素子、無機エレクトロルミネセンス素子のいずれかである表示装置において、前記隔壁の材料としての、エポキシ系樹脂(屈折率:1.59)及びアクリル系樹脂(屈折率:1.49)、ルチル型酸化チタン(屈折率:2.71、粒径250nm)、光重合開始剤、芳香族系溶剤からなる白色感光性組成物。」
(ウ)甲15隔壁発明
上記(ア)に摘記した事項から、甲15の請求項1,2,3,5,8を引用する請求項9に記載された「表示装置」の「隔壁」に係る発明として、実施例1に記載された「白色感光性組成物」を用いた次の発明(以下「甲15隔壁発明」)が記載されているといえる。
「甲15発明を用いた隔壁。」
(エ)甲15装置発明
上記(ア)に摘記した事項から、甲15の請求項1,2,3,5,8を引用する請求項9に記載された「表示装置」に係る発明として、実施例1に記載された「白色感光性組成物」を用いた「隔壁」を有する「表示装置」に係る次の発明(以下「甲15装置発明」)が記載されているといえる。
「甲15隔壁発明を有する表示装置。」
(2)甲12~甲13、甲16、甲17、甲21、甲1-26、甲1-27について
ア 甲12について
(ア)甲12に記載された事項
甲12には、以下の事項が記載されている。
a「【請求項1】
(A)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂、(B)光重合開始剤、(C)エポキシ化合物、(D)ルチル型酸化チタン、および(E)希釈剤を含むことを特徴とする白色の光硬化性・熱硬化性ソルダーレジスト組成物。」
b「【発明を実施するための最良の形態】
・・・(中略)・・・
【0027】
本発明では、白色顔料として、ルチル型酸化チタン(D)を用いることを特徴としている。・・・これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、安定したソルダーレジスト膜を得ることができる。ルチル型酸化チタン(D)としては、公知のルチル型のものを使用することができる。
・・・(中略)・・・
【0028】
ルチル型酸化チタン(D)の配合量は、芳香環を有さないカルホキシル基含有樹脂(A)100質量部に対して・・・より好ましくは60~260質量部である。配合量が300質量部を超えると、光硬化性が低下し、硬化深度が低くなり好ましくない。一方、50質量部未満であると、隠ぺい力が小さく、高反射率のソルダーレジスト膜を得ることができない。」
c「【実施例】
【0039】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
(A)芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂の合成
合成例1
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットルセパラブルフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールジメチルエーテル900g、および重合開始剤としてtーブチルパーオキシ2ーエチルヘキサノエート(日本油脂(株)製パーブチル0)21.4gを加えて90℃に加熱した。加熱後、ここに、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、およびラクトン変性2ーヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製プラクセルFMl)109.8gを、重合開始剤であるビス(4-L_ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日本油脂(株)製パーロイルTCP)21.4gと共に3時間かけて滴下して加え、さらに6時間熟成することにより、カルボキシル基含有共重合樹脂を得た。なお、反応は、窒素雰囲気下で行った。
【0041】
次に、得られたカルボキシル基含有共重合樹脂に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学(株)製サイクロマーA200)363.9g、開環触媒としてジメチルベンジルアミン3.6g、重合抑制剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に加熱し、攪拌することによりエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、固形分の酸価が108.9mgKOH/g、重量平均分子量が25,000の、芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を53.8重量%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液をA-1ワニスと呼ぶ。
【0042】
合成例2
温度計、攪拌機、滴下ロート、および還流冷却器を備えたフラスコに、溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃に加熱し、メタアクリル酸とメチルメタアクリレートを0.40:0.60のモル比で混合したモノマーを約2時間かけて滴下した。さらに1時間攪拌した後、温度を115℃にまで上げ、失活させて樹脂溶液を得た。
【0043】
この樹脂溶液を冷却後、触媒として臭化テトラブチルアンモニウムを用い、95~105℃で30時間の条件で、ブチルグリシジルエーテルを0.40のモル比で、得られた樹脂のカルボキシル基の等量と付加反応させ、冷却した。
【0044】
さらに得られた樹脂のOH基に対して、95~105℃で8時間の条件で、無水テトラヒドロフタル酸を0.26のモル比で付加反応させた。冷却後取り出して、固形分の酸価が78.1mgKOH/g、重量平均分子量が35,000の芳香環を有さないカルボキシル基含有樹脂を50質量%(不揮発分)含む溶液を得た。以下、この反応溶液をA-2ワニスと呼ぶ。
・・・(中略)・・・
【0046】
実施例1~7、比較例1~2表1に従って各成分を配合・攪拌して3本ロールにて分散させてそれぞれソルダーレジスト組成物とした。表中の数字は、質量部を示す。
【表1】
[図:0001411242000002.jpg]
【0047】
A-1:カルボキシル基およびアクリロイル基含有共重合樹脂(合成例1)
A-2:カルボキシル基含有共重合樹脂(合成例2)
R-1:カルボキシル基およびアクリロイル基含有樹脂(比較合成例1)
R820:石原産業社製ルチル型酸化チタン
KA-15(富士)チタン製アナターゼ型酸化チタン
TEPIC-H:日産化学(株)製β体トリグリシジルイソシアヌレート
TEPIC-S:日産化学(株)製α体およびβ体混合トリグリシジルイソシアヌレート
2021P:ダイセル化学工業製脂環式エポキシ樹脂
HBPA:丸善石油化学製水添ビスフェノール型エポキシ樹脂
HBPA-DGE828:ジャパンエポキシレジン製ビスフェノール型エポキシ樹脂
SO-E5:アドマテック製球状シリカ
開始剤:チバスペシャルティケミカルズ製イルガキュア907
増感剤:日本化薬製
DETXモノマー:ジペンタエリスリトルヘキサアクリレート
KS-66:信越シリコーン製シリコーンオイル溶剤:カルビトールアセテート。」
(イ)甲12の記載等から導かれる技術的事項
a 甲12の実施例1には、「ソルダーレジスト組成物」が記載されている。当該組成物における、「R820:石原産業社製ルチル型酸化チタン」、「A-1ワニス」の「カルボキシル基含有樹脂」、「モノマー:ジペンタエリスリトルヘキサアクリレート」、「開始剤:チバスペシャルティケミカルズ製 イルガキュア907」、「A-1ワニス」に含まれる「溶媒」が、それぞれ、本件特許発明1の「(A)白色顔料」、「(B)アルカリ可溶性樹脂」、「(C)重合性化合物」、「(D)光重合開始剤」、「(E)溶剤」に相当することは、明らかである。
そして、甲12の実施例1の「R820:石原産業社製ルチル型酸化チタン」の「溶剤を除く成分全量を100質量%としたとき」の含有量は、以下の計算式より、54質量%であると算出される。
(計算式)
180/(186×0.538+180+19+19+0.3+15+3)×100
b 上記aの記載と甲11の「バンク(絶縁層)15を、例えば、特開2007-322546号公報(甲12)、特開2008-211036号公報(甲13)、特開2011-66267号公報など開示されている高反射率の白色ソルダーレジストを利用して形成することができる。あるいは・・・アクリル系などの感光性樹脂にTiO2などの粒子を分散させて、光反射性、光散乱性、白色性などの機能を付与することも有効な手段である。」(【0057】、公報番号に続く甲号証番号は合議体が付加したものである。)との記載によれば、甲12には、以下の技術的事項が記載されており、当該事項は先の出願当時においてよく知られた事項であったと認められる。
「バンク(隔壁)を構成する感光性樹脂組成物の白色顔料の含有量として、溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30~90質量%とすること」
なお、甲12の実施例2~7からも、上記事項を認定することができる。
イ 甲13について
(ア)甲13に記載された事項
甲13には、以下の事項が記載されている。
a「【請求項1】
(A)脂環骨格エポキシ樹脂から得られ、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、
(B)チオール系化合物、
(C)光重合開始剤、
(D)希釈剤、
(E)ルチル型酸化チタン、および
(F)エポキシ系熱硬化性化合物
を含有することを特徴とする、感光性樹脂組成物。」
b「【0012】
以下、本発明の組成物の各成分について述べる。
[(A)脂環骨格エポキシ樹脂から得られ、1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂]
【0013】
(A)は、脂環骨格エポキシ樹脂から得られた、分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する硬化性樹脂であれば、特に限定されない。例えば分子中にエポキシ基を2個以上有する脂環骨格エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させた後、生成した水酸基に多塩基酸無水物を反応させたものを挙げることができる。
・・・(中略)・・・
【0032】
[(E)ルチル型酸化チタン]
ルチル結晶構造を有する酸化チタン粒子であり、塗膜を白色化する。この粒子の平均粒径は特に限定されないが、1~0.01μmであってよい。また、ルチル型酸化チタン粒子の表面処理剤も限定されるものではない。
・・・(中略)・・・」
c「【実施例】
【0050】
(実施例1)
下記の重量比で各成分を混合してソルダーレジスト組成物を作製した。以下に詳細な成分量を示す。
(A)脂環骨格エポキシ(ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」)から反応させた活性エネルギー線硬化性樹脂の含有量 15重量%
(B)トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート 0.1重量%
(C)チオキサントン系光重合開始剤(チバガイギー社製「CGI-325」) 0.2重量%
(D)希釈剤(DPHA) 7重量%
(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」) 35重量%
(F)エポキシ系熱硬化性化合物(メラミン) 1重量%
以下残部
着色顔料、リオノールブルーFG‐7351(東洋インキ製造社製)
消泡剤、KS‐66(信越シリコーン社製)
チクソ剤、AEROSILR‐97(日本アエロジル社製)
CO‐01(昭和高分子社製)
ダイソーダップA(ダイソー株式会社製)
DICY‐7(ジャパンエポキシレジン社製)
アーコソルブDPM(協和発酵工業社製)
EDGAC(ダイセル化学工業社製)
ソルベッソ150(エクソンモービル社製)
タルク
硫酸バリウム
メラミン
【0051】
(実施例2)
実施例1と同様にして以下の組成の組成物を作製した。ただし、(A)~(F)以外は実施例と同じである。
(A)脂環骨格エポキシ(ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」)から反応させた活性エネルギー線硬化性樹脂 15重量%
(B)トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート 0.5重量%
(C)チオキサントン系光重合開始剤(チバガイギー社製「CGI-325」) 0.2重量%
(D)希釈剤(DPHA) 7重量%
(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」) 35重量%
(F)エポキシ系熱硬化性化合物(メラミン) 1重量%
【0052】
(実施例3)
実施例1と同様にして以下の組成の組成物を作製した。ただし、(A)~(F)以外は実施例と同じである。
(A)脂環骨格エポキシ(ダイセル化学工業社製、EHPE-3150)から反応させた活性エネルギー線硬化性樹脂 15重量%
(B)トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート 1重量%
(C)チオキサントン系光重合開始剤(チバガイギー社製「CGI-325」) 0.2重量%
(D)希釈剤(DPHA) 7重量%
(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」) 35重量%
(F)エポキシ系熱硬化性化合物(メラミン) 1重量%
【0053】
(実施例4)
実施例1と同様にして以下の組成の組成物を作製した。ただし、(A)~(F)以外は実施例と同じである。
(A)脂環骨格エポキシ(ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」)から反応させた活性エネルギー線硬化性樹脂の含有量 15重量%
(B)トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート 3重量%
(C)チオキサントン系光重合開始剤(チバガイギー社製「CGI-325」) 0.2重量%
(D)希釈剤(DPHA) 7重量%
(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」) 35重量%
(F)エポキシ系熱硬化性化合物(メラミン) 1重量%
【0054】
(実施例5)
実施例1と同様にして以下の組成の組成物を作製した。ただし、(A)~(F)以外は実施例と同じである。
(A)脂環骨格エポキシ(ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」)から反応させた活性エネルギー線硬化性樹脂の含有量 15重量%
(B)トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート 3重量%
(C)チオキサントン系光重合開始剤(チバガイギー社製「CGI-325」) 0.2重量%
(D)希釈剤(DPHA) 7重量%
(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」) 45重量%
(F)エポキシ系熱硬化性化合物(メラミン) 1重量%
・・・(中略)・・・
【0059】
感度:
21段ステップタブレットをテスト板にしてスクリーン印刷法により、上記各例の感光性樹脂組成物を約35μmの厚さ(乾燥前)に塗工し、乾燥させてそれぞれの塗工基板を作製し、400mJ/cm2の照射量で紫外線露光を行い、1重量%の炭酸ナトリウム水溶液を用い、0.1MPa.sのスプレー圧で60秒現像を行い、塗工膜が完全に残った最大のステップ数で評価した。ステップ数が大きいほど感光特性が良好であることを示す。」
(イ)甲13の記載等から導かれる技術的事項
a 甲13の実施例1には、「(A)脂環骨格エポキシ(ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」)から反応させた活性エネルギー線硬化性樹脂」が記載されており、当該樹脂が「アルカリ可溶性」であることは、甲13の【0013】の「(A)は、脂環骨格エポキシ樹脂から得られた、分子中に複数のエチレン性不飽和基を有する硬化性樹脂であれば、特に限定されない。例えば分子中にエポキシ基を2個以上有する脂環骨格エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させた後、生成した水酸基に多塩基酸無水物を反応させたものを挙げることができる。」との記載、及び、同【0059】の「1重量%の炭酸ナトリウム水溶液を用い、0.1MPa.sのスプレー圧で60秒現像を行い」との記載からみて明らかである。したがって、当該成分が、本件特許発明1の「(B)アルカリ可溶性樹脂」に相当する。また、甲13の実施例1の「(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」)」、「(D)希釈剤(DPHA)」、「(C)チオキサントン系光重合開始剤(チバガイギー社製「CGI-325」)」、「ソルベッソ150(エクソンモービル社製)」は、それぞれ、本件特許発明1の「(A)白色顔料」、「(C)重合性化合物」、「(D)光重合開始剤」、「(E)溶剤」に相当することも明らかである。
そして、甲13の実施例1の「(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」)」の含有量は「35重量%」と記載されている。当該「35重量%」は「溶剤を除く成分全量を100質量%としたとき」の含有量であるか否かは定かでないものの、仮に、「溶剤を除く成分全量を100質量%としたとき」の含有量である場合は、「(A)白色顔料の含有量が、(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30~90質量%」であるものであるといえる。
また、当該「35重量%」が溶剤を含んだ値であったとしても、甲13の実施例1は、少なくとも、「(A)脂環骨格エポキシ(ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」)から反応させた活性エネルギー線硬化性樹脂の含有量 15重量%」、「(B)トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート 0.1重量%」、「(C)チオキサントン系光重合開始剤(チバガイギー社製「CGI-325」) 0.2重量%」、「(D)希釈剤(DPHA) 7重量%」、「(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」) 35重量%」、「(F)エポキシ系熱硬化性化合物(メラミン) 1重量%」を含んでいるから、以下の計算式により、当該「(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」)」の「溶剤を除く成分全量を100質量%としたとき」の含有量は、多くとも60重量%となる。
(計算式)
35/(15+0.1+0.2+7+35+1)×100
よって、甲13の実施例1の「(E)ルチル型酸化チタン(石原産業社製「CR-80」)」の「溶剤を除く成分全量を100質量%としたとき」の含有量は、35質量%~60質量%の範囲内であるといえる。
b 上記aの記載と甲11の【0057】の記載(上記ア(イ)b参照)によれば、甲13には、以下の技術的事項が記載されており、当該事項は先の出願当時においてよく知られた事項であったと認められる。
「バンク(隔壁)を構成する感光性樹脂組成物の白色顔料の含有量として、溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30~90質量%とすること」
なお、甲13の実施例2~5も同様である。
ウ 甲16について
(ア)甲16に記載された事項
甲16には、以下の事項が記載されている。
a「【請求項1】
撥インク性化合物を含有する感光性樹脂組成物を用いて基板上に感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、
形成された感光性樹脂層を露光する露光工程と、
前記露光後の感光性樹脂層を、JISR3257に記載の方法に準拠し測定された前記露光後の感光性樹脂層上面との接触角Aが80°以下である現像液を用いて現像してパターン画像を得る現像工程と、を有する画像形成方法。
【請求項2】
前記現像して得られたパターン画像を熱処理する熱処理工程を更に有し、JISR3257に記載の方法に準拠し測定された前記熱処理工程後のパターン画像上面とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの接触角Bが30°以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。」
b「【0022】
(接触角B)
本発明の画像形成方法においては、熱処理後のパターン画像の上面と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、の接触角Bが30°以上であることが好ましい。ここで、熱処理後とは、後述の熱処理工程における熱処理後、さらに1時間放冷した後を指す。
前記接触角Bが30°以上であると、例えば、パターン画像として離画壁を形成し、該離画壁を用いてインクジェット法によりカラーフィルタを作製した際、インクの溢れをより効果的に抑制できる。また、カラーフィルタを作製した際の混色をより効果的に抑制する観点からは、前記接触角Bは、40~80°であることが好ましく、45~80°であることがより好ましい。
・・・(中略)・・・
【0024】
<感光性樹脂組成物>
本発明における感光性樹脂組成物は撥インク性化合物を少なくとも1種含有する。
撥インク性化合物の例としては、含フッ素化合物、含ケイ素化合物が挙げられる。中でも、含フッ素化合物が好ましい。
本発明における感光性樹脂組成物は、パターン形成性等の観点から、前記含フッ素化合物以外にも、開始剤、バインダー、エチレン性不飽和化合物、及び色材を含有することが好ましい。
以下、含フッ素化合物、開始剤、バインダー、エチレン性不飽和化合物、色材、及び、その他の成分について説明する
【0025】
(含フッ素化合物)
本発明における含フッ素化合物は、少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位を含み、該フッ素化合物中のフッ素原子含有率が36~70質量%であることが好ましい。該フッ素原子含有率は、36~65質量%が好ましく、36~60質量%がより好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物に、上記構成の含フッ素化合物を含有することで、該感光性樹脂組成物をパターン画像(例えば、離画壁)とした際、該パターン画像上面(基板と接する面の反対側の露出面)の撥水性及び撥インク性を保持しつつ、該パターン画像と該パターン画像が形成される基板との密着性をより良好に保つことができる。
また、前記フッ素原子含有率が36質量%以上であれば、画素部形成のためのインク打適時に離画壁上へのインク乗り上げる現象を、より効果的に抑制でき、70質量%以下であれば、合成時に含フッ素化合物が析出したり、樹脂の組成物への溶解が困難になる現象をより効果的に抑制できる。
また、本発明による効果をより効果的に奏する観点からは、本発明における含フッ素化合物は、下記(a)少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位と、下記(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位と、を含むことが好ましく、下記(a)少なくともフッ素原子を側鎖に有する繰り返し単位と、下記(b)ポリエーテル構造を側鎖に有する繰り返し単位と、下記(c)カルボン酸基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことがより好ましい。
・・・(中略)・・・
【0056】
また、上記含フッ素化合物の添加量は、感光性樹脂組成物中の全固形分に対し0.01~30質量%が好ましく、より好ましくは0.05~20質量%であり、0.1~10質量%が最も好ましい。含フッ素化合物の添加量が、感光性樹脂固形分に対し0.01質量%以上であれば、画素部形成のためのインク打適時に離画壁上へのインク乗り上げが発生する現象をより効果的に抑制できる。前記添加量が30質量%以下であれば、塗布密着性や離画壁濃度が低くなり、望みの離画壁を作製できなくなる現象をより効果的に抑制できる。」
c「【実施例】
【0132】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、機器、操作等は本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0133】
≪含フッ素化合物の合成例≫
本発明における含フッ素化合物の例示化合物のうち、具体的な含フッ素化合物を例に合成例を示す。なお、例示化合物以外の本発明に係る含フッ素化合物についても同様の方法により合成することが可能である。
特にことわりのない限り、数値は質量部、質量%での表記である。また、分子量はゲルパーミッションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であり、含フッ素化合物中のフッ素原子含有率は、構造式から想定されるフッ素量を表す。
【0134】
<含フッ素化合物(1)の合成例>
窒素気流下、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート〔MMPG-Ac、ダイセル(株)製〕30gを、冷却管を設置した300mlの三つ口フラスコに入れ、パラフィン入りのウォーターバスで70℃まで加熱した。これに、MMPG-Ac35gにアクリル酸〔AA、東京化成工業(株)製〕2.5gと2-(パーフルオロヘキシル)-エチルアクリレート〔FAAC6、NOK(株)製〕25gと末端メチルポリエチレンオキシドモノマー〔PME1000、日本油脂(株)製、PEOの繰り返し数(23)末端Me〕22.5gとラウリルメルカプタン〔LM、東京化成工業(株)製〕0.70gとを溶解させた溶液及び、MMPG-Ac10gに2,2’-アゾビス(イソバレロニトリル)〔V65、和光純薬工業(株)製〕0.285gを溶解させた溶液をそれぞれプランジャーポンプで2時間かけて滴下した。滴下終了後、5時間攪拌した。
以上のようにして、2-(パーフルオロヘキシル)-エチルアクリレート〔FAAC6〕、アクリル酸〔AA〕、及びポリエチレンオキシドモノマー〔PME1000〕を共重合させて、FAAC6/AA/PME1000=50/5/45(質量比)の含フッ素化合物(1)を合成した。重量平均分子量は、1.3万であった。含フッ素化合物(1)中のフッ素原子含有率は、36質量%であった。
なお、含フッ素化合物(1)は、前述の例示化合物(1)に属する化合物である。
【0135】
<含フッ素化合物(2)、(3)、(8)の合成例>
前記含フッ素化合物(1)の合成例に従い、含フッ素化合物(2)FAAC6/AA/PME1000=65/5/25(質量比)、含フッ素化合物(3)FAAC6/AA/PME1000=80/5/15(質量比)、含フッ素化合物(8)FAAC6/AA/PME1000=36/5/59(質量比)、の合成を行った。それぞれの共重合成分、含フッ素化合物(2)、(3)、(8)中のフッ素原子含有率に関しては、表1のとおりである。
なお、上記含フッ素化合物(2)、(3)、(8)は、前述の例示化合物(1)に属する化合物である。
【0136】
<含フッ素化合物(4)の合成例>
前記含フッ素化合物(1)の合成例において、末端メチルポリエチレンオキシドモノマー〔PME1000、日本油脂(株)製、PEOの繰り返し数(23)末端Me〕を日本油脂(株)製のブレンマーANE1300、PEOの繰り返し数(30)末端ノニルPhに変更し、その他の成分を表1に記載の添加量に変更した以外は、前記含フッ素化合物(1)の合成例に従い、含フッ素化合物(4)FAAC6/AA/ANE1300=50/5/45(質量比)の合成を行った。
なお、含フッ素化合物(4)は、前述の例示化合物(20)に属する化合物である。
【0137】
<含フッ素化合物(5)の合成例>
前記含フッ素化合物(1)の合成例において、末端メチルポリエチレンオキシドモノマー〔PME1000、日本油脂(株)製、PEOの繰り返し数(23)末端Me〕を新中村化学(株)製のNK-エステルM90G、PEOの繰り返し数(9)末端Meに変更し、その他の成分を表1に記載の添加量に変更した以外は、前記含フッ素化合物(1)の合成例に従い、含フッ素化合物(5)FAAC6/AA/M90G=50/5/45(質量比)の合成を行った。
なお、含フッ素化合物(5)は、前述の例示化合物(2)に属する化合物である。
【0138】
<含フッ素化合物(6)の合成例>
前記含フッ素化合物(1)の合成例において、アクリル酸〔AA、東京化成工業(株)製〕2.5gを添加しない以外は、前記含フッ素化合物(1)の合成例に従い、含フッ素化合物(6)FAAC6/PME1000=50/50(質量比)の合成を行った。
なお、含フッ素化合物(6)は、前述の例示化合物(24)に属する化合物である。
【0139】
<含フッ素化合物(7)の合成例>
前記含フッ素化合物(1)の合成例において、末端メチルポリエチレンオキシドモノマー〔PME1000、日本油脂(株)製、PEOの繰り返し数(23)末端Me〕を日本油脂(株)製のブレンマ-PE350、PEOの繰り返し数(8)末端Hに変更し、その他の成分を表1に記載の添加量に変更した以外は、前記含フッ素化合物(1)の合成例に従い、含フッ素化合物(7)FAAC6/AA/PE350=50/5/45(質量比)の合成を行った。
なお、含フッ素化合物(7)は、前述の例示化合物(35)に属する化合物である。
【0140】
前記で合成したそれぞれの共重合成分、含フッ素化合物(1)~(8)中のフッ素原子含有率に関しては、表1のとおりである。また、各含フッ素化合物の固形分濃度は25%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加し調整している。
【0141】
[図:0001411242000003.jpg]
【0142】
(表1中の記号の説明)
・PME1000:ブレンマーPME1000、PEOの繰り返し数(23)末端Me〔日本油脂(株)製〕
・AA:アクリル酸〔東京化成工業(株)製〕
・FAAC6:2-(パーフルオロヘキシル)-エチルアクリレート〔NOK(株)製〕
・M90G:NK-エステルM90G、PEOの繰り返し数(9)末端Me〔新中村化学(株)製〕
・ANE1300:ブレンマーANE1300、PEOの繰り返し数(30)末端ノニルPh〔日本油脂(株)製〕
・PE350:ブレンマーPE350、PEOの繰り返し数(8)末端H〔日本油脂(株)製〕
・V65:2,2’-アゾビス(イソバレロニトリル)〔和光純薬工業(株)製〕
・LM:ラウリルメルカプタン〔東京化成工業(株)製〕
・MMPG-Ac:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート〔ダイセル(株)製〕
【0143】
〔実施例1〕
≪感光性樹脂組成物K1の調製≫
感光性樹脂組成物K1は、まず表2に記載の量のK顔料分散物1、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートをはかり取り、温度24℃(±2℃)で混合して150RPM10分間攪拌し、次いで、表2に記載の量のメチルエチルケトン、バインダー2、ハイドロキノンモノメチルエーテル、DPHA液、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[4’-(N,N-ビス(エトキシカルボニルメチル)アミノ)-3’-プロモフェニル]-s-トリアジン、界面活性剤1、含フッ素化合物(1)をはかり取り、温度25℃(±2℃)でこの順に添加して、温度40℃(±2℃)で150RPM30分間攪拌することによって得られる。なお、表2に記載の量は質量部であり、詳しくは以下の組成となっている。
・・・(中略)・・・
【0149】
<界面活性剤1>
・下記構造物1・・・30%
・メチルエチルケトン・・・70%
・・・(中略)・・・
【0168】
(接触角Bの測定)
上記離画壁の形成において、マスクを用いてパターン露光する工程を、マスクを用いずに全面露光する工程に代えた以外は上記離画壁の形成と同様の操作をポストベーク完了まで行い、その後1時間放冷し、テスト用感光性樹脂組成物層Bを得た。
得られたテスト用感光性樹脂組成物層Bの上面と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、の接触角Bを、前記接触角Aと同様の方法により測定した。
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートは、和光純薬(株)製のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いた。
測定結果は表9に示す。
・・・(中略)・・・
【0205】
【表9】
[図:0001411242000004.jpg]
」
(イ)(ア)の記載から導かれる技術的事項(周知技術)
a 甲16の請求項2には、「プロプレングリコールモノメチルエーテルアセテートとの接触角Bが30°以上である」こと、同【0025】には「含フッ素化合物を含有することで、該感光性樹脂組成物をパターン画像(例えば、離画壁)とした際、・・・撥インク性を保持」すること、同【0056】には「含フッ素化合物の添加量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して・・・中略・・・0.1~10質量%が最も好ましい」こと、実施例1~21には、「含フッ素化合物(1)」~「含フッ素化合物(8)」を用い、「プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」の接触角は「23」°~「45」°であることが、それぞれ記載されている。
甲16の「含フッ素化合物(1)」~「含フッ素化合物(8)」は、「撥インク性を保持」するので、撥インク剤であるといえる。
b 上記aによれば、甲16には、以下の技術的事項が記載されており、当該事項は先の出願当時において周知であったと認められる。
「隔壁に撥液性を付与する技術として、隔壁の形成に用いる組成物に撥インク剤を用いて高い接触角とすること」
エ 甲17について
(ア)甲17に記載された事項
甲17には、以下の事項が記載されている。
a「[0016] 本発明の感光性組成物に含まれる重合体(A)は、基(1)または基(2)を有する側鎖を有するため表面移行性を有し、組成物の塗膜を加熱乾燥するときに塗膜表面近傍に移行する。よって、塗膜硬化物からなる隔壁の上面は撥液性を発現し、インクジェット法で注入されるインクはドット(画素となる箇所)からあふれ出ることがなく、隣接画素間での混色が起きにくい。また、重合体(A)はエチレン性二重結合を有する側鎖を有しているため、露光時に重合体(A)の硬化反応が行われ、隔壁上面に固定化されやすい。よって、露光・現像後のポストベーク時に未反応の残存分子がドットにマイグレートしてドットを汚染することが起こりにくい。
・・・(中略)・・・
[0059] 本発明の感光性組成物の全固形分における重合体(A)の割合は0.01~30質量%が好ましい。該割合が高いと、形成される隔壁の表面張力を下げる効果に優れ、撥液性に優れた隔壁が得られる。一方、該割合が高すぎると、隔壁と基材との密着性が低くなるおそれがある。組成物の全固形分における重合体(A)の割合は、下限は0.05質量%がより好ましく、上限は20質量%がより好ましい。
・・・(中略)・・・
[0101] 感光性組成物から形成される塗膜硬化物の撥水撥油性は、水およびプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(以下、PGMEAともいう。)の接触角で見積もることができ、水の接触角は90度以上が好ましく、95度以上がより好ましい。また、PGMEAの接触角は20度以上が好ましく、25度以上がより好ましい。塗膜硬化物の撥水撥油性は、水の接触角が90度以上であり、かつPGMEAの接触角が20度以上であるのが特に好ましい。」
b「[0115] [例5~12]感光性組成物の調製、隔壁の形成と評価
表3および表4に示す割合(質量部)で、重合体(A)、黒色着色剤(B)、光重合開始剤(C)、感光性樹脂(D)、ラジカル架橋剤(E)、微粒子、希釈剤を配合して感光性組成物を得た。
ガラス基板上にスピンナーを用いて、感光性組成物を塗布した後、100℃で2分間ホットプレート上で乾燥させ、膜厚2.0μmの塗膜を形成した。次に、マスク(光透過部100μm×200μm、遮光部20μmの格子状パターン)を通して、塗膜に超高圧水銀灯により表3および表4に示す所定露光量を照射した。
[0116] 次いで、未露光部分を無機アルカリタイプ現像液(横浜油脂工業社製、商品名セミクリーンDL-A4の10倍希釈水溶液)に浸漬して現像し、未露光部を水により洗い流し、乾燥させた。
次いで、ホットプレート上、220℃で1時間加熱することにより、パターンが形成されたガラス基板(1)を得た。また、上記のマスクを用いずに露光した以外は上記と同様にして、塗膜硬化物が形成されたガラス基板(2)を得た。これらについて、現像性、基材密着性、撥水撥油性、隔壁インク残渣を以下に示す方法で測定、評価した。評価結果を表3および表4に示す。
・・・(中略)・・・
[0120][表3]
[図:0001411242000005.jpg]
[0121][表4]
[図:0001411242000006.jpg]
」
(イ)(ア)の記載から導かれる技術的事項(周知技術)
a 甲17の[0101]には、「PGMEAの接触角は20度以上が好ましく」ということ、同[0016]には、「本発明の感光性組成物に含まれる重合体(A)は、基(1)または基(2)を有する側鎖を有するため表面移行性を有し、組成物の途膜を加熱乾燥するときに塗膜表面近傍に移行する。よって、塗膜硬化物からなる隔壁の上面は撥液性を発現し、インクジェット法で注入されるインクはドット(画素となる箇所)からあふれ出ることがなく、隣接画素間での混色が起きにくい」こと、同[0059]には、「組成物の全固形分における重合体(A)の割合は、下限は0.05質量%がより好ましく、上限は20質量%がより好ましい」こと、実施例における例5~10には、「重合体」である「A-1」~「A-4」を組成物の全固形分に対して「0.30」又は「1.2」%用い、「PGMEAの接触角」は「20度以上」であることが、それぞれ記載されている。
甲17の「A-1」~「A-4」は、「撥液性を発現」するので、撥インク剤であるといえる。
b 上記aによれば、甲17には、以下の技術的事項が記載されており、当該事項は先の出願当時において周知であったと認められる。
「隔壁に撥液性を付与する技術として、隔壁の形成に用いる組成物に撥インク剤を用いて高い接触角とすること」
オ 甲21について
(ア)甲21に記載された事項
甲21には、以下の事項が記載されている。
a「技術分野
[0001]本発明は、撥インク剤、ネガ型感光性樹脂組成物、隔壁および光学素子に関する。
背景技術
[0002]有機EL(Electro-Luminescence)素子等の光学素子の製造においては、発光層等の有機層をドットとして、インクジェット(IJ)法にてパターン印刷する方法を用いることがある。かかる方法においては、形成しようとするドットの輪郭に沿って隔壁を設け、該隔壁で囲まれた区画(以下、「開口部」ともいう。)内に、有機層の材料を含むインクを注入し、これを乾燥や加熱等を行うことにより所望のパターンのドットを形成する。
・・・(中略)・・・
[0004]そこで、上面に撥インク性を有する隔壁を得るために、撥インク剤を含ませた感光性樹脂組成物を用いてフォトリソグラフィ法によりドットのパターンに対応する隔壁を形成する方法が知られている。
・・・(中略)・・・
[0005]このような撥インク剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物を用いて隔壁を形成する場合、該組成物の塗膜の隔壁相当部分を露光した後、現像により開口部に相当する組成物が除去される。この際、開口部からネガ型感光性樹脂組成物を完全に除去することは困難であり、通常、開口部には若干の残漆が存在する。このネガ型感光性樹脂組成物の残漆の存在により開口部の親インク性が低下して、インクの均一塗布に支障をきたすことが問題であった。
・・・(中略)・・・
[0008]そこで、上記開口部における親インク性を良好とする観点からネガ型感光性樹脂組成物に配合する撥インク剤を選択すると、該撥インク剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物においては貯蔵安定性が充分でないことが問題になった。また、同様の問題がポジ型感光性樹脂組成物にも存在した。
[0009]本発明は、これを含有する感光性樹脂組成物の貯蔵安定性が充分であるとともに、上面に良好な撥インク性を有する隔壁と親インク性が良好な開口部を形成可能な感光性樹脂組成物の作製が可能な撥インク剤の提供を目的とする。
本発明は、貯蔵安定性が良好であり、上面の撥インク性が良好な隔壁と親インク性が良好な開口部の形成が可能なネガ型感光性樹脂組成物の提供を目的とする。
本発明は、上面に良好な撥インク性を有する隔壁の提供を目的とする。
本発明は、また、隔壁で仕切られた開口部にインクが均一塗布され精度よく形成されたドットを有する光学素子の提供を目的とする。
・・・(中略)・・・
[0023]本明細書における「撥インク性」とは、上記インクをはじく性質であり、撥水性と撥油性の両方を有する。撥インク性は、例えば、インクを滴下したときの接触角により評価できる。「親インク性」は撥インク性と相反する性質であり、撥インク性と同様にインクを滴下したときの接触角により評価できる。または、インクを滴下したときのインクの濡れ広がりの程度(インクの濡れ広がり性)を所定の基準で評価することにより親インク性が評価できる。
・・・(中略)・・・
[0026][撥インク剤]
本発明の撥インク剤は、基板表面をドット形成用の複数の区画に仕切る形に形成される隔壁の上面に撥インク性を付与する撥インク剤であって、フッ素原子含有単位と、加熱により脱ブロックしてイソシアネート基を生成しうるブロックイソシアネート基含有単位とを有し、フッ素原子の含有率が1~40質量%の重合体からなる。
なお、本明細書において、本発明の撥インク剤を撥インク剤(C)ともいう。また、撥インク剤(C)として使用される上記特性を有する重合体を重合体(C)という。
・・・(中略)・・・
[0107]重合体(C2)の主鎖を構成する炭化水素鎖として、具体的には、エチレン性二重結合を有する単呈体の重合で得られる主鎖、一Ph-CH2―(ただし、「Ph」はベンゼン骨格を示す。)の繰り返し単位からなるノボラック型の主鎖等が挙げられる。
重合体(C2)を、エチレン性二重結合を有する単量体の重合で得る場合には、エチレン性二重結合を有するとともにフルオロアルキル基を有する単量体とエチレン性二重結合を有するとともにブロックイソシアネート基を有する単量体を、または必要に応じて、その他のエチレン性二重結合を有する単量体と重合させればよい。
・・・(中略)・・・
[0113]重合体(C2)は、フッ素原子含有単位とブロックイソシアネート基含有単位に加えて、さらに、酸性基を有する単位、エチレン性二重結合を有する単位、水酸基を有する単位およびポリオキシアルキレン鎖を有する単位からなる群から選ばれる少なくとも1種の単位を有していてもよい。
[0114]重合体(C2)は、アルカリ可溶性が良好となる点で、酸性基を有する重合体であることが好ましい。
酸性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの酸性基またはその塩が好ましい。
重合体(C2)は、光架橋性を有し、感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜の製造過程において、硬化膜の上層部において、互いにあるいは感光性樹脂組成物が含有するエチレン性二重結合を有する他成分と結合するごとで、重合体(C2)の定着性を向上できる点で、エチレン性二重結合を有する重合体であることが好ましい。
エチレン性二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルフェニル基、アリル基、ビニル基、ノルボルニル基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基が特に好ましい。
エチレン性二重結合は重合体形成後に導入して重合体(C2)とすることが好ましい。エチレン性二重結合は単量体の重合の際に反応することより、通常エチレン性二重結合を有する重合体を単量体の重合のみによっては製造できない。この場合、単量体の重合で水酸基などの反応部位を有する重合体を製造し、次いでエチレン性二重結合を有しかつ重合体の反応部位に結合しうる化合物を反応させて、エチレン性二重結合を有する重合体が製造される。具体的には、たとえば、フッ素原子を含む側鎖を有する単位とブロックイソシアネート基を有する単位と水酸基を有する単位とを含む重合体を製造し、次にイソシアネートアルキル(メタ)アクリレートを反応させて、エチレン性二重結合を有する重合体(C2)を製造できる。
・・・(中略)・・・
[0123][ネガ型感光性樹脂組成物]
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、光硬化性を有するアルカリ可溶性樹脂(以下、樹脂(AP)ともいう)または光硬化性を有するアルカリ可溶性単量体(以下、単量体(AM)ともいう)と、光重合開始剤と、上記撥インク剤(C)と、を含有する。本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、撥インク剤として撥インク剤(C)を含有することで、貯蔵安定性が良好であり、かつ、これを用いて隔壁を製造した場合に、隔壁上面は優れた撥インク性を有し、開口部は良好な親インク性を有する。
[0124]本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、黒色着色剤、架橋剤、溶媒およびその他の任意成分を含有する。
以下、本発明のネガ型感光性樹脂組成物が含有する各成分について説明する。
[0125]樹脂(AP)としては、1分子中に酸性基とエチレン性二重結合とを有する感光性樹脂が好ましい。樹脂(AP)が分子中にエチレン性二重結合を有することで、ネガ型感光性樹脂組成物の露光部は、光重合開始剤から発生したラジカルにより重合して硬化する。
[0126]このようにして硬化した露光部はアルカリ現像液にて除去されない。また、樹脂(AP)が分子中に酸性基を有することで、アルカリ現像液にて、硬化していないネガ型感光性樹脂組成物の非露光部を選択的に除去できる。その結果、硬化膜を、所定の領域を複数の区画に仕切る形の隔壁の形態とすることができる。
[0127]酸性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホ基およびリン酸基等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
エチレン性二重結合としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルオキシ基およびビニルオキシアルキル基等の付加重合性を有する二重結合が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、エチレン性二重結合が有する水素原子の一部または全てが、メチル基等のアルキル基で置換されていてもよい。
・・・(中略)・・・
[0130]樹脂(AP-2)としては、エポキシ樹脂と、カルボキシ基とエチレン性二重結合とを有する化合物とを反応させた後に、多価カルボン酸またはその無水物とを反応させて得られる樹脂等が挙げられる。用いるエポキシ樹脂としては、特に限定されず、ネガ型感光性樹脂の主鎖として用いられる従来公知のエポキシ樹脂、例えば、国際公開第2010/013816号などに記載のエポキシ樹脂が使用できる。
・・・(中略)・・・
[0139]ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の撥インク剤(C)の含有割合は、0.01~15質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.03~1.5質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、ネガ型感光性樹脂組成物から形成される硬化膜の上面は優れた撥インク性を有する。上記範囲の上限値以下であると、硬化膜と基板との密着性が良好になる。
[0140](黒色着色剤)
本発明のネガ型用感光性組成物は、用途に応じて、隔壁に遮光性を付与する場合に、黒色着色剤を含有する。従来の撥インク剤を含有するネガ型用感光性組成物に、着色剤を配合すると、隔壁上面の撥インク性が充分でなくなったり、開口部の親インク性が充分でなくなったりした。本発明の撥インク剤(C)を用いることで、着色剤を配合した場合であっても、上記問題を起こすことなく、隔壁上面の良好な撥インク性と開口部の親インク性を両立させることができる。
特に、主鎖が炭化水素鎖でありフッ素原子を含む側鎖を有する重合体を撥インク剤とした場合には、着色剤を含有するネガ型用感光性組成物を用いて隔壁を作製すると開口部の親インク性が充分と言えないことが多かった。本発明の撥インク剤(C)として重合体(C2)を用いてネガ型用感光性組成物を調製すれば、この開口部の親インク性の問題を解決し、充分な親インク性を有する開口部と上面に充分な撥インク性を有する隔壁を得ることができる。
・・・(中略)・・・
[0143]ネガ型用感光性組成物における全固形分中の黒色着色剤の含有割合は、20~65質量%が好ましく、25~60質量%がより好ましく、30~60質量%が特に好ましい。含有割合が上記範囲の下限値以上であると、得られる隔壁の光の遮光性を示す値である光学濃度が充分になる。上記範囲の上限値以下であると、ネガ型用感光性組成物の硬化性が良好になり、良好な外観の硬化膜が得られ、撥インク性も良好になる。」
b「実施例
・・・(中略)・・・
[0189](アルカリ可溶性樹脂(Ap))
アルカリ可溶性樹脂(AP1)組成物;クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をアクリル酸、次いで1,2,3,6ーテトラヒドロ無水フタル酸を反応させて、アクリロイル基とカルボキシ基とを導入した樹脂をヘキサンで精製した樹脂(アルカリ可溶性樹脂(A1)、酸価60mgKOH/g)の組成物(固形分70質量%、PGMEA30質星%)。
・・・(中略)・・・
[0209]
[表2]
[図:0001411242000007.jpg]
[0210] [ネガ型感光性樹脂組成物の製造および隔壁の製造]
(例10;ネガ型感光性樹脂組成物の製造)
アルカリ可溶性樹脂(AP1)組成物の12.66g、IR907の1.12g、EABの1.00g、重合体(C1-1)溶液の1.61g、A9530の8.96g、PGMEAの74.7gを200cm3の撹拌用容器に入れ、3時間撹拌してネガ型感光性樹脂組成物1を製造した。
・・・(中略)・・・
[0215]<隔壁の撥インク性>
上記で得られた隔壁上面のPGMEA接触角を下記の方法で測定し、撥インク性の評価とした。
静滴法により、JIS R3257「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、硬化膜上面3ヶ所にPGMEA滴を載せ、各PGMEA滴について測定した。液滴は2μL/滴とし、測定は20℃で行った。接触角は、3測定値の平均値から求めた。
・・・(中略)・・・
[0220] (例11~19)
表3に示す組成により例10と同様にして、例11~例19のネガ型感光性樹脂組成物を製造した。得られたネガ型感光性樹脂組成物を用いて、例10と同様にして隔壁を製造した。得られたネガ型感光性樹脂組成物、隔壁、開口部について例10と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
[0221]
[表3]
[図:0001411242000008.jpg]
産業上の利用可能性
[0222]本発明の撥インク剤は、例えば、感光性樹脂組成物等に含有して用いて、有機EL素子、液晶素子のカラーフィルタおよびTFTアレイ等の光学素子において、IJ法によるパターン印刷を行う際の隔壁を形成するのに好適である。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、有機EL素子、液晶素子のカラーフィルタおよびTFTアレイ等の光学素子において、IJ法によるパターン印刷を行う際の隔壁形成用等の組成物として好適に用いることができる。
本発明の隔壁は、有機EL素子において、発光層等の有機層をIJ法にてパターン印刷するための隔壁(バンク)、あるいは液晶素子においてカラーフィルタをIJ法にてパターン印刷するための隔壁(この隔壁はブラックマトリックス(BM)を兼ねることができる。)等として利用できる。」
(イ)(ア)の記載から導かれる技術的事項(周知技術)
a 甲21の[0023]には、「本明細書における「撥インク性」とは、上記インクをはじく性質であり、撥水性と撥油性の両方を有する。撥インク性は、例えば、インクを滴下したときの接触角により評価できる」ということ、同[0026]には、「本発明の撥インク剤は、基板表面をドット形成用の複数の区画に仕切る形に形成される隔壁の上面に撥インク性を付与する撥インク剤であって、フッ素原子含有単位と、加熱により脱ブロックしてイソシアネート基を生成しうるブロックイソシアネート基含有単位とを有し、フッ素原子の含有率が1~40質量%の重合体からなる」こと、同[0139]には、「ネガ型感光性樹脂組成物における全固形分中の撥インク剤(C)の含有割合は、・・・中略・・・0.03~1.5質星%が特に好ましい」こと、実施例における例10~16には、「重合体(撥インク剤)」である「C1-1」~「C2-4」を組成物の全固形分に対して「0.35」又は「0.80」質量%用い、「PGMEA接触角」は「44.0」~「47.8」度であることが、それぞれ記載されている。
b 上記aによれば、甲21には、以下の技術的事項が記載されており、当該事項は先の出願当時において周知であったと認められる。
「隔壁に撥液性を付与する技術として、隔壁の形成に用いる組成物に撥インク剤を用いて高い接触角とすること」
カ 甲1-26について
(ア)甲1-26に記載された事項
甲1-26には、以下の事項が記載されている。
a「【0014】
本発明の硬化性組成物を用いれば、美感に優れ、かつ耐薬品性と耐熱性に優れるベゼルを形成することができる。
【0015】
したがって、本発明の硬化性組成物は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯デジタル表示装置をはじめとする表示装置の作製に極めて好適に使用することができる。
・・・(中略)・・・
【0018】
次に、本発明について詳細に説明する。
硬化性組成物
・・・(中略)・・・
【0034】
-(B)樹脂-
本発明における(B)樹脂としては、バインダー樹脂を含むことが好ましい。
バインダー樹脂としては、酸性官能基及び環状エーテル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂であることが好ましい。酸性官能基としては、例えば、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、フェノール性水酸基等を挙げることができる。また、環状エーテル基としては、ヘテロ環を構成するヘテロ原子として酸素原子を有する飽和複素環基であって、環を構成する原子数が3~7個の飽和複素環基が好ましく、例えば、オキシラニル基、オキセタニル基、脂環式エポキシ基、テトラヒドロフラニル基等を挙げることができる。ここで、「脂環式エポキシ基」とは、脂環式構造を構成する炭素原子のうち、隣接する2個の炭素原子に酸素原子1個が結合して形成されるエポキシ基をいい、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシル基、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル基、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-9-イル基等が挙げられる。
【0035】
中でも、(B)バインダー樹脂としては、カルボキシル基を有する重合体、カルボキシル基及び環状エーテル基を有する重合体が好ましい。
【0036】
カルボキシル基を有する重合体は、例えば、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(b1)」とも称する。)と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(b2)」とも称する。)との共重合体、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を単量体単位として有する重合体に多塩基酸無水物を反応させて得られる重合体、カルボキシル基を有するシランモノマーを含むシラン化合物の加水分解縮合物を挙げることができる。
【0037】
不飽和単量体(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、p-ビニル安息香酸等を挙げることができる。
不飽和単量体(b1)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
・・・(中略)・・・
【0066】
本発明において、バインダー樹脂の含有量は、白色顔料及び任意に使用する他の着色剤の合計100質量部に対して、通常1~100質量部、好ましくは5~50質量部である。このような態様とすることで、遮光性、耐熱性、耐薬品性に優れるベゼルを形成することができる。
・・・(中略)・・・
【0072】
本発明において、分散剤の含有量は、白色顔料及び他の着色剤の合計100質量部に対して、通常0.5~50質量部、好ましくは2~30質量部である。このような態様とすることで、保存安定性に優れる硬化性組成物を形成することができる。
【0073】
本発明の硬化性組成物は、(B)樹脂としてバインダー樹脂および分散剤を含むことが好ましく、バインダー樹脂および分散剤の合計含有量は、(A)着色剤の合計100質量部に対して2~150質量部、好ましくは10~70質量部である。」
(イ)(ア)の記載から導かれる技術的事項(技術常識)
a 甲1-26には、ディスプレイに用いられる遮光層(ベゼル)を構成する感光性組成物の「白色顔料」、「分散剤」、「アルカリ可溶性樹脂」の通常用いられる含有量について、「白色顔料」「100質量部」に対して「分散剤の含有量」を、「通常0.5~50質量部、好ましくは2~30質量部」(甲1-26の【0072】)の値とすること、「白色顔料」「100質量部」に対してアルカリ可溶性樹脂である「バインダー樹脂の含有量」を「通常1~100質量部、好ましくは5~50質量部」(甲1-26の【0066】)の値とすること、「白色顔料」「100質量部」に対してアルカリ可溶性樹脂である「バインダー樹脂および分散剤の合計含有量」を「2~150質量部、好ましくは10~70質量部」の値とすること(甲1-26の【0073】)で、顔料の分散性や保存安定性、隔壁の遮光性、耐熱性、耐薬品性を向上できることが記載されている。
b 上記aの記載によれば、甲1-26には、以下の技術的事項が記載されており、当該事項は先の出願当時における技術常識であったと認められる。
「表示素子における隔壁やベゼルを構成する感光性組成物といった、樹脂中に顔料を分散させた組成物において、分散剤を添加して顔料の分散性や沈降性を改善すること」
キ 甲1-27について
(ア)甲1-27に記載された事項
甲1-27には、以下の事項が記載されている。
a「【請求項1】
(A)白色顔料、(B)バインダー樹脂、(C)重合性化合物、(D)光重合開始剤を含むベゼル形成用感光性組成物であって、
(D)光重合開始剤が、O-アシルオキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤及びチタノセン系光重合開始剤から選ばれる少なくとも1種の光重合開始剤を含む、ベゼル形成用感光性組成物。」
b「【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性組成物を用いれば、白色度が高く、かつ耐薬品性と遮光性に優れるベゼルを形成することができる。
したがって、本発明の感光性組成物は、スマートフォンやタブレット端末等の携帯デジタル表示装置をはじめとする表示装置の作製に極めて好適に使用することができる。
・・・(中略)・・・
【0027】
本発明において、分散剤の含有量は、白色顔料及び任意に使用する他の着色剤の合計100質量部に対して、通常0.5~50質量部、好ましくは2~30質量部、より好ましくは3~20質量部である。このような態様とすることで、保存安定性に優れる感光性組成物を形成することができる。
・・・(中略)・・・
【0030】
-(B)バインダー樹脂-
本発明における(B)バインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、酸性官能基及び環状エーテル基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する樹脂であることが好ましい。酸性官能基としては、例えば、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基、フェノール性水酸基等を挙げることができる。また、環状エーテル基としては、ヘテロ環を構成するヘテロ原子として酸素原子を有する飽和複素環基であって、環を構成する原子数が3~7個の飽和複素環基が好ましく、例えば、オキシラニル基、オキセタニル基、脂環式エポキシ基、テトラヒドロフラニル基等を挙げることができる。ここで、「脂環式エポキシ基」とは、脂環式構造を構成する炭素原子のうち、隣接する2個の炭素原子に酸素原子1個が結合して形成されるエポキシ基をいい、例えば、3,4-エポキシシクロヘキシル基、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル基、3,4-エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-9-イル基等が挙げられる。
中でも、(B)バインダー樹脂としては、カルボキシル基を有する重合体、カルボキシル基及び環状エーテル基を有する重合体が好ましい。
【0031】
カルボキシル基を有する重合体は、例えば、1個以上のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(b1)」とも称する。)と他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体(以下、「不飽和単量体(b2)」とも称する。)との共重合体、水酸基を有するエチレン性不飽和単量体を単量体単位として有する重合体に多塩基酸無水物を反応させて得られる重合体、カルボキシル基を有するシランモノマーを含むシラン化合物の加水分解縮合物を挙げることができる。
【0032】
不飽和単量体(b1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイロキシエチル〕、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、p-ビニル安息香酸等を挙げることができる。
不飽和単量体(b1)は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
・・・(中略)・・・
【0056】
本発明において、(B)バインダー樹脂の含有量は、白色顔料及び任意に使用する他の着色剤の合計100質量部に対して、通常5~300質量部、好ましくは10~200質量部、より好ましくは20~100質量部である。このような態様とすることで、遮光性、耐熱性、耐薬品性に優れるベゼルを形成することができる。」
(イ)(ア)の記載から導かれる技術的事項(技術常識)
a 甲1-27には、ディスプレイに用いられる遮光層(ベゼル)を構成する感光性組成物の「白色顔料」、「分散剤」、「アルカリ可溶性樹脂」の通常用いられる含有量について、「白色顔料」「100質量部」に対して「分散剤の含有量」を、「通常0.5~50質量部、好ましくは2~30質量部、より好ましくは3~20質量部」(甲1-27の【0027】)の値とすること、また、「白色顔料」「100質量部」に対してアルカリ可溶性樹脂である「バインダー樹脂の含有量」を「通常5~300質量部、好ましくは10~200質量部、より好ましくは20~100質量部」の値とすること(甲1-27の【0056】)で、顔料の分散性や保存安定性、隔壁の遮光性、耐熱性、耐薬品性を向上できることが記載されている。
b 上記aの記載によれば、甲1-27には、以下の技術的事項が記載されており、当該事項は先の出願当時における技術常識であったと認められる。
「表示素子における隔壁やベゼルを構成する感光性組成物といった、樹脂中に顔料を分散させた組成物において、分散剤を添加して顔料の分散性や沈降性を改善すること」
2 甲15に記載された発明を主引用発明とした場合の対比・判断
(1)対比
本件特許発明1と甲15発明を対比する。
ア 用途
甲15発明は、「光源が」「有機エレクトロルミネセンス素子」「である」「表示装置」の「隔壁」の形成に用いられるので、本件特許発明1の「隔壁を有する有機EL素子」「である表示素子の上記隔壁の形成に用いられ」とする要件を満たす。
また、甲15発明は、「光源が」「発光ダイオード」であって、「前記光源は、」「複数の画素に対応して設けられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子をそれぞれ駆動する複数の駆動素子と、を備えたアクティブマトリクス駆動方式の光源である」「表示装置」の「隔壁」の形成に用いられる。「発光ダイオード」である「光源」が「複数の画素に対応して設けられた複数の発光素子と、前記複数の発光素子をそれぞれ駆動する複数の駆動素子と、を備えたアクティブマトリクス駆動方式の光源である」場合は、当該表示素子は、本件特許発明1の「マイクロLED素子」であることが技術的にみて明らかである。
よって、甲15発明は、本件特許発明1の「隔壁を有する」「マイクロLED素子である表示素子の上記隔壁の形成に用いられ」とする要件も満たす。
イ (A)白色顔料
甲15発明の「ルチル型酸化チタン(屈折率:2.71、粒径250nm)」は、その粒径からみて、本件特許発明1の「(A)白色顔料」に相当する。
ウ (D)光重合開始剤
甲15発明の「光重合開始剤」は、本件特許発明1の「(D)光重合開始剤」に相当する。
エ (E)溶剤
甲15発明の「芳香族系溶剤」は、本件特許発明1の「(E)溶剤」に相当する。
(2)一致点及び相違点
本件特許発明1と甲15発明は、下記アの点で一致し、下記イの点で相違する。
ア 一致点
「隔壁を有する有機EL素子またはマイクロLED素子である表示素子の上記隔壁の形成に用いられ、
(A)白色顔料、
(D)光重合開始剤、および
(E)溶剤
を含有する隔壁形成用感光性組成物。」
イ 相違点
(相違点1)
「(A)白色顔料の含有量」に関して、本件特許発明1においては、「(A)白色顔料の含有量が、(E)溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30~90質量%」であるのに対して、
甲15発明は、「(A)白色顔料の含有量」が不明である点。
(相違点2)
「(B)アルカリ可溶性樹脂」及び「(C)重合性化合物」に関して、本件特許発明1においては、「(B)アルカリ可溶性樹脂」及び「(C)重合性化合物」を含有するのに対して、
甲15発明においては、「(B)アルカリ可溶性樹脂」及び「(C)重合性化合物」を含有するのか否か不明である点。
(相違点3)
「接触角」に関して、本件特許発明1においては、「隔壁形成用感光性組成物から形成される硬化膜の表面のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角が15°以上である」のに対して、
甲15発明は、当該「接触角」が「15°以上である」か否かが不明である点。
(相違点4)
「分散剤」に関して、本件特許発明1においては、感光性組成物に「分散剤」を含み、「(B)アルカリ可溶性樹脂の含有量が、(A)白色顔料100質量部に対して、10質量部以上であり、分散剤の含有量が、(A)白色顔料100質量部に対して、2質量部以上30質量部以下であり、(B)アルカリ可溶性樹脂および分散剤の合計含有量が、(A)白色顔料100質量部に対して150質量部以下であ」るのに対して、
甲15発明は分散剤を含有することが特定されていない点。
(相違点5)
「シランカップリング剤」に関して、本件特許発明1においては、感光性組成物に「シランカップリング剤」を含み、「上記シランカップリング剤の含有量が上記(B)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部以下であ」るのに対して、
甲15発明はシランカップリング剤を含有するのか否か不明である点。
(3)判断
ア 相違点1について
甲15発明は、蛍光体基板における「蛍光体層で生じた蛍光を外部に十分に取り出す」(甲15の【0008】)という課題を解決するためになされた発明であって、かかる課題を解決するために、「隔壁7は、CIE1976L*a*b表示系において80%以上の反射率」(同【0059】)を有することが好ましいとされているものである。そして、白色顔料であるルチル型酸化チタンは、甲15の段落【0055】に示されるとおり、光散乱粒子として典型的なものであって、かかる光散乱粒子の含有量を増加させれば、反射率が向上することは当業者の技術常識といえるから、甲15発明の「白色顔料の含有量」には、上記の課題解決に資する程度の下限値が設定されるべきことは当業者に自明である。他方で、反射率を向上させるために含有量を大きく設定するにしても、「白色感光性組成物」に求められる感光性、すなわち、光硬化性(パターン成形性)の観点から当該含有量には自ずと限界(上限値)が設定されるべきことも、当業者の技術常識である(必要ならば、例えば甲12の【0028】参照。)。
そうすると、反射率の向上及びパターン成形性の観点から、甲15発明において、「ルチル型酸化チタン(屈折率:2.71、粒径250nm)」の含有量を最適化することは、上記技術常識を心得た当業者が適宜なし得る設計事項といえる。
そして、相違点1に係る本件特許発明1の構成が設計事項であることは、具体的な白色顔料の含有量として、溶剤を除く成分全量を100質量%としたときに、30~90質量%とすることは、例えば甲12~13に記載された技術的事項(上記1(2)ア~イを参照)として先の出願当時の当業者によく知られた事項であること(上記1(2)のア(イ)及びイ(イ))からも確認できることでもある。
したがって、甲15発明に基づいて、相違点1に係る本件特許発明1に想到することは、当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について
(ア)(B)アルカリ可溶性樹脂について
甲15発明は「ネガ型レジスト」に係る発明であり、「所望の画像パターンが形成できるようなマスク・・・中略・・・を被せて・・・中略・・・を照射し、露光した。次いで、アルカリ現像液を用いて現像して画素パターン状の構造物を得た。」とされているものであるところ、「光重合開始剤」及び「ルチル型酸化チタン」は、「アルカリ現像液」に通常は溶解しないものであるから、他に、アルカリ可溶となる成分が含まれることが必要であることは、当業者の技術常識に照らし明らかである。
このことは、甲15の【0058】に、「隔壁材料の構成樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を選択し、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶剤を添加することによって隔壁材料をフォトレジスト化することができ、フォトリソグラフィーによってパターニングすることが可能となる。」と記載されていることとも符合し、甲15発明の「エポキシ系樹脂」と「アクリル系樹脂」は、いずれか一方又はその両方が「アルカリ可溶性」であるといえる。
(イ)(C)重合性化合物について
甲15発明は、「ネガ型レジスト」に係る発明であって、上記1(2)で認定したとおり、実施例1の「白色感光組成物」を用いる態様であるところ、当該「白色感光組成物」には「光重合開始剤」を含有することが記載されている。そうすると、たとえ明示の記載がなくとも、「光重合開始剤」による作用で重合する化合物が含まれていることは技術的にみて明らかである。
(ウ)そうすると、甲15発明の「エポキシ系樹脂」又は「アクリル系樹脂」は、本件特許発明1の「(B)アルカリ可溶性樹脂」に相当し、また、甲15発明は、本件特許発明1の「(C)重合性化合物」を含有しているといえるので、相違点2は実質的な相違点ではない。
あるいは、甲15発明において、甲15の【0058】を参照して、「アルカリ可溶性樹脂」を用いることや、本件特許発明1の「(C)重合性化合物」に相当する「光重合性モノマー」を用いることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点3について
甲15の【0061】には、「隔壁への撥液性の付与」と題して、「(2)フッ素系表面改質剤の添加」が記載されている。そして、隔壁に撥液性を付与する技術として、隔壁の形成に用いる組成物に撥インク剤を用いて高い接触角とすることは、例えば甲16、甲17、甲21(上記1(2)ウ、エ、オを参照)に示されるとおり、先の出願当時における当業者によく知られた技術的事項であることから(上記1(2)のウ(イ)、エ(イ)及びオ(イ))、甲15発明において、これら甲16、甲17、甲21の、いずれかの実施例に記載された撥インク剤を適量添加して、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対する接触角を15°以上とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
エ 相違点4について
甲15の【0034】、【0055】には、「光散乱粒子として」「酸化チタン」が挙げられ、「隔壁7は、内部に光散乱性粒子7aが分散されて構成され」ること及び【0035】には、「隔壁7の少なくとも蛍光体層3R,3G,3Bと接する部分が白色であればよい。これにより・・・中略・・・蛍光L2が隔壁7に吸収されにくくすることができる。」と記載されている。そして、上記「吸収されにくくする」という効果は、隔壁の蛍光体層と接する部分において偏り無く奏されるのが好ましいことは技術的に明らかであるから、甲15発明の「白色の」「光散乱性粒子」である「ルチル型酸化チタン」は、隔壁の材料中において可能な限り均一に分散されることを要するものといえる。
ここで、一般に、表示素子における隔壁やベゼルを構成する感光性組成物といった、樹脂中に顔料を分散させた組成物において、分散剤を添加して顔料の分散性や沈降性を改善することは、例えば甲1-26、甲1-27(上記1(2)カ、キを参照)に示されるように、技術常識といえるから、甲15発明における白色顔料である「光散乱性粒子」の「ルチル型酸化チタン」を均一に分散させるために、分散剤を添加すること、及び、甲1-26、甲1-27に記載された組成比を参考にして、各成分の含有量を実験的に最適化することは、当業者が容易に想到し得たことであるといえ、また、本件明細書を参酌しても、本件特許発明1の相違点4に係る数値限定に臨界的意義を認めることはできない。
オ 相違点5について
甲15の【0062】には、「隔壁」について、「基板と隔壁との密着性を十分に高める」という課題認識が記載されている。ここで、隔壁を形成する感光性組成物において、密着性を向上させるためにシランカップリング剤を用いることや、シランカップリング剤の含有量としてアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して3~15質量部添加させることは先の出願当時における周知技術であり、例えば申立人1が令和5年11月17日に提出した意見書に添付して提出した甲1-34の[0001]、[0096]、[0127]及び[表1] (例1のアルカリ可溶感光性樹脂(B)とシランカップリング剤(I)を参照)、甲1-35の【0001】、【0054】(共重合体[A]と官能性シランカップリング剤を参照)や、申立人2が令和5年11月27日に提出した意見書に添付して提出した甲32の【0001】、【0054】、【0067】(実施例1の共重合体[A-1]とγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを参照)、甲33の[0001]、[0055]、[0132]、[0138]、[0148]、[0161]及び[表1](実施例2の感光性樹脂とシランカップリング剤を参照)、甲34の[2]、[124]、[126]、[140]~[154] 及び表1(バインダー1,2と密着促進剤を参照)にも記載されている。
したがって、甲15発明により形成される隔壁と基板との密着性を向上させるために、シランカップリング剤を添加すること、及び、上記証拠に記載された組成比の近傍で、各成分の含有量を実験的に最適化し、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部以下の範囲の含有量とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえ、本件特許発明1の相違点5に係る数値範囲に臨界的意義を認めることはできない。
カ 本件特許発明1についての小括
したがって、本件特許発明1は、甲15に記載された発明と、甲12~13、甲16~17、甲21、甲1-26、甲1-27、甲1-34、甲1-35、甲32~34に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)その他の本件特許発明について
ア 本件特許発明2について
甲16、甲17、甲21のいずれかの実施例に記載された撥インク剤は、甲24の[0190]の「撥インク剤(E)は、通常、界面活性剤としての作用も有する。」との記載を踏まえると、本件特許発明2の「(F)界面活性剤」に相当する。
また、撥水性を付与するために、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤を用いることは、例えば、甲16の【0149】、甲24の[0190]などに記載のとおり周知の技術的事項であって、甲15発明において、撥水性を付与すべく、これらの界面活性剤を添加することは当業者が容易に想到し得たことである。
イ 本件特許発明3~5について
甲16の実施例における「含フッ素化合物(1)」~「含フッ素化合物(5)」、「含フッ素化合物(7)」~「含フッ素化合物(8)」は、同【0141】【表1】によると、「AA:アクリル酸」に由来する酸基を有しているので、本件特許発明3の「F原子が含まれる」という条件を満たす「アルカリ可溶性樹脂」である。また、これらは、本件特許発明4~5の条件も満たす「アルカリ可溶性樹脂」である。
また、甲17の実施例における「重合体」である「A-1」~「A-4」は、同[0114][表2]によると、「Si原子」又は「F原子」を含有しており、かつ、「酸価(mgKOH/g)」が「29.6」~「38.0」であるので、いずれも、本件特許発明3の「Si原子またはF原子が含まれる」という条件を満たす「アルカリ可溶性樹脂」である。また、当該「A-2」~「A-4」は、本件特許発明4~5の条件も満たす「アルカリ可溶性樹脂」である。
さらに、甲21の実施例における「重合体(撥インク剤)」である「C2-4」は、同[0209][表2]によると、「フッ素原子」を含有しており、かつ、「酸価[mgKOH/g]」が「26.1」であるので、同[0114]の「重合体(C2)は、アルカリ可溶性が良好となる点で、酸性基を有する重合体であることが好ましい。」との記載も併せて考慮すると、本件特許発明3の「F原子が含まれる」という条件を満たす「アルカリ可溶性樹脂」である。また、これは、本件特許発明4~5の条件も満たす「アルカリ可溶性樹脂」である。
ウ 本件特許発明6~8について
甲16の実施例における「含フッ素化合物(1)」~「含フッ素化合物(5)」、「含フッ素化合物(7)」~「含フッ素化合物(8)」は、本件特許発明6の「カルボキシル基」を含有する。
甲17の実施例における「A-1」~「A-4」も、本件特許発明6~7の「カルボキシル基」、「(メタ)アクリロイル基」、「ビニル基」をいずれも含有する。当該「A-1」は、本件特許発明8の「環構造」も含有する。
甲21の実施例における「C2-4」は、本件特許発明6~8の「カルボキシル基」、「(メタ)アクリロイル基」、「ビニル基」、「環構造」をいずれも含有する。
甲1-26の【0034】における「バインダー樹脂」は、本件特許発明6の「カルボキシル基」を含有する。また、同【0034】-【0037】の記載に基づくと、本件特許発明7~8の「(メタ)アクリロイル基」、「ビニル基」、「環構造」をいずれも含有する。
甲1-27の【0030】における「バインダー樹脂」は、本件特許発明6の「カルボキシル基」を含有する。また、同【0030】~【0032】の記載に基づくと、本件特許発明7~8の「(メタ)アクリロイル基」、「ビニル基」、「環構造」をいずれも含有する。
また、アルカリ可溶性樹脂が、酸性基として、「カルボキシル基」又は「フェノール性水酸基」を有することは、例えば、甲21の[0113]~[0114]や[0125]~[0127]などの記載のとおり周知である。
さらに、芳香環などの「環構造」を有するアルカリ可溶性樹脂は、例えば、甲21の[0107]、[0130]、[0189]などに記載のとおり周知である。
エ 本件特許発明9について
甲15発明は「ルチル型酸化チタン(屈折率:2.71、粒径250nm)」を含む。また、甲15の【0055】には、「アルミナビーズ」及び「酸化ジルコニアビーズ」を用いることが記載されており、これらを用いることは当業者が容易になし得たことである。
オ 本件特許発明10について
甲15隔壁発明は、「隔壁」に係る発明であるから、この点で異なるところはない。
カ 本件特許発明11について
上記(3)アで述べたとおり、隔壁の反射率を向上させることは当業者が容易になし得たことであるところ、反射率を向上させた結果として、甲15隔壁発明の「光学濃度(OD)」を「0.2~5.0/μm」程度にすることは当業者が適宜なし得たことである。
キ 本件特許発明12について
甲15素子発明は、「表示素子」に係る発明であるから、この点で異なるところはない。
(5)小括
本件特許発明1~12は、甲15に記載された発明と、甲12~13、甲16~17、甲21、甲1-26、甲1-27、甲1-34、甲1-35、甲32~34に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 特許権者の主張について
特許権者は、令和5年9月22日付け意見書において、「(2-2-2-2)甲15を主引例とする取消理由について」として、本件特許発明1に関して、「甲15発明、甲16、甲17、甲21、甲1-26及び甲1-27のいずれにも、密着促進剤であるシランカップリング剤のアルカリ可溶性樹脂に対する含有量についての開示や示唆が」ないこと、また、「本件特許発明1が、白色顔料による反射機能と白色顔料を含む微細な隔壁パターンの形成との両立を図りやすくなるという効果と共に、密着促進剤としての効果を十分に発揮することができることを当業者が予測することは困難である」旨主張するので以下、検討する。
上記2(3)オで検討したように、隔壁を形成する感光性組成物において、密着性を向上させるためにシランカップリング剤を用いることや、シランカップリング剤の含有量としてアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して3~15質量部添加させることは先の出願当時における周知技術(例えば、甲1-34、甲1-35、甲32~34等参照)である。
また、シランカップリング剤の技術的意義(臨界的意義)について検討するに、本件特許の明細書には、「本組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を含有することもできる。・・・中略・・添加剤としては、・・・中略・・・シランカップリング剤等の密着促進剤・・・中略・・を挙げることができる。」(【0093】)、「上記添加剤の中でも、シランカップリング剤等の密着促進剤の含有量としては、(B)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、3~15質量部がより好ましい。・・・中略・・・添加剤の含有量を上記範囲とすることで、本発明の効果と共に添加剤を添加する効果を十分に発揮することができる。」(【0094】)と記載されるにとどまり、本件特許の主要な課題である「高い光反射機能と微細なパターン形状とを両立する硬化膜の形成」との関連性については何ら記載されていない。また、本件特許の明細書の実施例(【0121】~【0143】及び表1)では、密着性の評価が行われていないことに加え、実施例及び比較例は、いずれもシランカップリング剤が7質量部である場合のみを検証していることから、「シランカップリング剤の含有量が上記(B)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して3質量部以上15質量部以下であ」ることの技術的意義(臨界的意義)を立証するものではないため、技術的意義(臨界的意義)を有するということはできない。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
第7 まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1~12に係る特許は、いずれも、甲15に記載された発明と、甲12~13、甲16~17、甲21、甲1-26、甲1-27、甲1-34、甲1-35、甲32~34に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、請求項1~12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700974