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特許異議申立

2021-701214

化粧シート及びそれを用いた外装建具用部材

審判番号
2021-701214
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-009735
登録番号
6892031
請求日
2021年12月20日
審決日
2023年01月24日
公報発行日
2023年04月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】凸版印刷株式会社
  • 【権利者代理人】廣瀬 一
  • 【権利者代理人】宮坂 徹
  • 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
  • 【異議申立人】真角 侑子
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 一ノ瀬 覚
  • 審判官 八木 誠
分類
P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.16 -YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B) / P1651.851-YAA(B32B) / P1651.853-YAA(B32B) / P1651.857-YAA(B32B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第41条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第44条第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第6892031号発明「化粧シート及びそれを用いた外装建具用部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6892031号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 特許第6892031号の請求項1、2、4ないし7に係る特許を維持する。 特許第6892031号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第68920131号の請求項1~7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和2年10月15日に出願された特願2020-174111号の一部を、令和3年1月25日に新たな特許出願としたものであって、同年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月18日に特許掲載公報が発行された。 本件特許についての異議申立人真角侑子(以下、「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年12月20日 特許異議の申立て 令和4年 3月30日付け 取消理由通知書 同年 6月 3日 特許権者より意見書、訂正請求書 なお、令和4年6月28日付けで、申立人に対し、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をしたが、その指定期間内に意見書の提出はされなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和4年6月3日の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(6)のとおりである(下線は訂正箇所である。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されていることを特徴とする化粧シート。」と記載されているのを、「前記抗ウイルス添加剤の有効成分が、 無機材料により担持され、前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つことを特徴とする化粧シート。」に訂正する(請求項1の記載を直接ないし間接的に引用する請求項2、4~7も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に、「請求項1~3のいずれか1項に記載の化粧シート。」と記載されているのを、「請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。」に訂正する(請求項4の記載を直接ないし間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に、「請求項1~4のいずれか1項に記載の化粧シート。」と記載されているのを、「請求項1、2、4のいずれか1項に記載の化粧シート。」に訂正する(請求項5の記載を直接ないし間接的に引用する請求項6~7も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1~5のいずれか1項に記載の化粧シート。」と記載されているのを、「請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の化粧シート。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に、「請求項1~6のいずれか1項に記載の化粧シート。」と記載されているのを、「請求項1、2、4~6のいずれか1項に記載の化粧シート。」に訂正する。 (7)一群の請求項 本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~7〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1において、抗ウイルス添加剤の粒度分布の特定がなかったのを、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」との事項の限定をするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、上記事項は、訂正前の請求項3に記載されているから、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3~6 訂正事項3~6は、訂正事項2による請求項3の削除に伴い、請求項4~6において、請求項3を引用しないものとするものであるから、明瞭でない記載の釈明、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、並びに特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1~6による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項におけて準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の本件特許の請求項1、2、4~7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1、2、4~7」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4~7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。 「【請求項1】 着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、 前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、 前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、 前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、 前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され、 前記抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持され、 前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つことを特徴とする化粧シート。 【請求項2】 前記抗ウイルス添加剤の平均粒径を「φ」(μm)とし、最表層の前記表面保護層の厚みを「D」(μm)としたとき、下記の式(1)の関係が成立していることを特徴とする 請求項1に記載の化粧シート。 0.5D≦φ≦2D ・・・式(1) 【請求項4】 前記表面保護層の最表層に、シリコン系成分若しくはフッ素系成分が添加されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧シート。 【請求項5】 前記抗ウイルス添加剤が含まれる前記表面保護層の中に、界面活性剤が添加されていることを特徴とする請求項1、2、4のいずれか1項に記載の化粧シート。 【請求項6】 前記表面保護層の最表層に、エンボス加工が施されていることを特徴とする請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の化粧シート。 【請求項7】 請求項1、2、4~6のいずれか1項に記載された化粧シートと、 前記化粧シートの前記着色熱可塑性樹脂層に、接着層を介して接着される外装建具用基材とを含むことを特徴とする外装建具用部材。」 第4 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~7に係る発明に対して、令和4年3月30日付けで当審が通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、特許法第44条第2項の規定により、本件特許に係る出願は、令和2年10月15日に出願したものとみなす。 ○理由1(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 ○理由2(拡大先願) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 ○理由3(明確性要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。 ○理由4(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許法第36条第6項の規定に違反してされたものである。 記 1 理由1(進歩性) (1)引用文献1が主引例 請求項1、2、4 :引用文献1、引用文献6~8(周知例) 請求項5~7 :引用文献1、引用文献6~9(周知例) (2)引用文献2が主引例 請求項1、2、4 :引用文献2、引用文献6~8(周知例) 請求項5~7 :引用文献2、引用文献6~9(周知例) (3)引用文献3が主引例 請求項1、2、4 :引用文献3、引用文献6~8(周知例) 請求項5~7 :引用文献3、引用文献6~9(周知例) 2 理由2(拡大先願) (1)引用出願4が主引例 請求項1、2、4~7:引用出願4 (2)引用出願5が主引例 請求項1、2、4 :引用出願5 請求項5~7 :引用出願5、引用文献9(周知例) ・引用文献等一覧 引用文献1:特開2018-203897号公報(申立人が提出した甲第1号証) 引用文献2:特開平10-157031号公報(同甲第2号証) 引用文献3:特開2019-18541号公報(同甲第3号証) 引用出願4:特願2020-164058号(国際公開第2021/230386号)(同甲第4-1号証及び甲第4-2号証) 引用出願5:特願2020-129746号(特開2021-181227号)(同甲第5号証) 引用文献6:国際公開第2005/037296号(同甲第9号証) 引用文献7:特開2015-80887号公報(同甲第10号証) 引用文献8:特開2019-25918号公報(同甲第11号証) 引用文献9:特開2018-89970号公報(同甲第18号証) 3 理由3(明確性要件) (1)請求項1~7 請求項1の「抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下」との発明特定事項は、技術常識及び発明の詳細な説明の記載を参酌しても、その技術的範囲を特定することができず、不明確である。 (2)請求項3~7 請求項3に係る発明の「粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」ことの技術的意味が不明確である。 4 理由4(サポート要件) (1)請求項1~7 実施例として記載された「平均粒径が1~10μmの無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)」以外の抗ウイルス添加剤を含む請求項1~7について、出願時の技術常識に照らしても、当該請求項1~7に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないものであって、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識きるように記載された範囲を超えるものである。 第5 当審の判断 事案に鑑み、理由3(明確性)及び理由4(サポート要件)より検討する。 1 理由3(明確性)について (1)平均粒径について 請求項1の記載から、抗ウイルス添加剤の「平均粒径」は、抗ウイルス添加剤の有効成分が担持される無機材料の粒径の平均を意味することは明らかであり、明確である。 抗ウイルス添加剤の形状、すなわち球形か非球形かについて、あるいは抗ウイルス添加剤の粒子の代表径をどのように定義するのかについても、本件の特許請求の範囲や発明の詳細な説明には、 抗ウイルス添加剤の実施例の説明として、段落【0041】に「下塗り後、上塗り最表層として、下塗りに使用した同様のコーティング剤に、平均粒径が1~10μmの無機系材料に銀イオンを担持させたタイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100)を、固形分比率で7重量%配合し、これを3μmで塗工し、化粧シート10を得た」(下線は当審で付した。以下同様。)と記載され、同【0025】に「なお、抗ウイルス添加剤として、タイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤を例示したが、これに限定されず、大日精化工業株式会社製の抗ウイルス剤(PTC-NT ANV添加剤(ST))・・・用いても良い。」と記載されていることからすれば、本件発明の抗ウイルス添加剤の有効成分を担持する無機材料の形状が特定の形状、特定の代表径を採らないと所望の効果が発揮できないという発明ではないことは明らかである。また、「平均粒径」はレーザ回折法等を用いて「測定値」として測定できることが技術常識である。 そうすると、本件発明の「平均粒径」は、一般に流通する製品に用いられ、測定値として示されるものであるから、当業者であれば理解できるものである。 (2)粒度分布について 請求項1の「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つこと」という事項は、抗ウイルス添加剤が、粒径が1~5μmの間のものと、5~10μmとの間のものの、2種類の粒度分布のものからなることを意味するものと理解でき、明確である。 (3)小括 以上のとおりであるから、理由3によっては、本件発明1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 2 理由4(サポート要件)について 本件発明が解決しようとする課題は、「抗ウイルス性に優れ、且つ表面の各種の物性にも優れ、製造が容易な化粧シートを提供すること」(段落【0005】)であり、段落【0020】において「表面保護層50は、第二に、最表層には抗ウイルス添加材を添加している」との記載に照らすと、本件特許の抗ウイルス性は、表面保護層の最表層に添加された抗ウイルス添加剤が担っているものといえる。 そして、上記1(1)で述べたように、有効成分が無機材料により担持された抗ウイルス添加剤として流通している又は通常製造できるものであれば採用可能であることは、当業者によって自明のことであり、その種類が実施例(タイショーテクノス株式会社製の銀系無機添加剤(ビオサイドTB-B100))のものと異なっても、抗ウイルス添加剤が表面保護層の最表層に添加されているのであれば、抗ウイルス性の効果が得られることは、当業者にとって自明なことである。 そうすると、本件発明1、2、4~7は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲のものといえる。 したがって、理由4によっては、本件発明1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 3 理由1(進歩性)、理由2(拡大先願)について 3-1 引用文献等に記載された事項及び引用発明等 (1)引用文献1に記載された事項及び引用発明1 本件特許の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下同様。)。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、粘着フィルムに関する。」 イ「【0019】 図1に示すように、粘着フィルム10は、粘着剤を含む材料で構成された粘着剤層2と、抗菌剤を含む材料で構成された抗菌層3とを有している。そして、粘着フィルム10は、基材51と印刷層(印刷部)52とを有する部材(被着体)50に対して、印刷層52を被覆するように貼着される(図2参照)。 【0020】 このような構成により、印刷が施された部材(被着体)50に対して、抗菌性を好適に付与することができる。」 ウ「【0025】 (フィルム基材) 本実施形態の粘着フィルム10は、粘着剤層(フィルム粘着剤層)2および抗菌層3に加え、これらを支持する機能を有するフィルム基材(基材)1を有している。 【0026】 これにより、粘着フィルム10に適度なコシを持たせることができ、粘着フィルム10の取り扱いのし易さ(例えば、部材50への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)が向上する。 【0027】 そして、フィルム基材1の一方の面である第1の面11側に粘着剤層2を有し、フィルム基材1の他方の面(第1の面11とは反対の面)である第2の面12側に抗菌層3を有している。」 エ「【0029】 フィルム基材(基材)1は、いかなる材料で構成されていてもよく、フィルム基材1の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;アクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ-p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、フィルム基材1は、ポリエステル、ポリオレフィンのうち少なくとも一方を含む材料で構成されているのが好ましい。 【0030】 これにより、粘着フィルム10により好適なコシを持たせることができ、粘着フィルム10の取り扱いのし易さ(例えば、部材50への貼着時における皺や、不本意な部位への付着等の発生のしにくさ等)をより向上させることができる。また、これらの材料は、一般に優れた光の透過性を有するため、粘着フィルム10が部材50に貼着された状態における、印刷層52の視認性を向上させることができる。また、上記のような材料で構成されたフィルム基材1は、一般に、粘着剤層2や後述する材料で構成された抗菌層3との密着性に優れているため、粘着フィルム10の耐久性等を向上させることができ、また、粘着フィルム10を部材50から剥離する際の粘着フィルム10の不本意な破壊等を効果的に防止することができる。 【0031】 また、フィルム基材1は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。」 オ「【0037】 フィルム基材1の厚さは、15μm以上300μm以下であるのが好ましく、20μm以上250μm以下であるのがより好ましく、25μm以上75μm以下であるのがさらに好ましい。」 カ「【0049】 (抗菌層) 抗菌層3は、抗菌剤を含む材料で構成されており、粘着フィルム10が部材50に貼着された状態で、当該部材50に抗菌性を付与する機能を有する。抗菌層3は、粘着フィルム10の使用時(部材50に貼着した状態)において、外部に露出する部位である。 【0050】 抗菌剤としては、例えば、各種無機系抗菌剤、各種有機系抗菌剤やこれらの複合材料(無機・有機ハイブリッド系抗菌剤)等を用いることができる。」 キ「【0056】 また、抗菌剤としては、前記金属やそのイオン(金属イオン)、金属化合物を担体に担持させたものが挙げられる。 【0057】 担体としては、例えば、天然ゼオライト、合成ゼオライト等のゼオライト類;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物;含水酸化チタン、含水酸化ビスマス、含水酸化アンチモン等の水酸化物または含水酸化物;リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸カルシウム、アパタイト(リン灰石)、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸マンガン、リン酸鉄等のリン酸塩;炭酸カルシウム等の炭酸塩;ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩;チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム等のチタン酸類;ハイドロタルサイト類等の塩基性塩や複合含水酸化物;モリブドリン酸アンモニウム等のヘテロポリリン酸類;ヘキサシアノ鉄(III)塩;ヘキサシアノ亜鉛;アルミナ;シリカ;ベントナイト;クレー;タルク;雲母;アミノ酸;ガラス等が挙げられる。 【0058】 より具体的には、金属や金属イオンを担体に担持させた無機系抗菌剤としては、例えば、ゼオライト系抗菌剤、ケイ酸カルシウム系抗菌剤、リン酸ジルコニウム系抗菌剤、リン酸カルシウム系抗菌剤、酸化亜鉛系抗菌剤、溶解性ガラス系抗菌剤、シリカゲル系抗菌剤、活性炭系抗菌剤、酸化チタン系抗菌剤、チタニア系抗菌剤、有機金属系抗菌剤、イオン交換体セラミックス系抗菌剤、層状リン酸塩-四級アンモニウム塩系抗菌剤、抗菌ステンレス等が挙げられる。」 ク「【0060】 特に、抗菌層3は、Agイオンが担持された抗菌剤を含んでいるのが好ましい。 これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。また、抗菌性を向上させつつ、抗菌層3の透明性(光の透過性)を向上させることができ、部材50に貼着した状態での印刷層52の視認性をより向上させることができる。また、抗菌層3中に抗菌剤をより均一に含ませることができ、各部位での抗菌性の不本意なばらつきの発生を効果的に防止することができる。」 ケ「【0063】 特に、抗菌層3中に含まれる抗菌剤は、粒状をなし、その平均粒径が100nm以上5000nm以下であるのが好ましい。 【0064】 これにより、抗菌剤による抗菌性をさらに効果的に発揮させることができる。また、さらに長期間にわたって優れた抗菌性を発揮することができ、粘着フィルム10の耐久性を向上させることができる。 【0065】 このように、粒状をなす抗菌剤の平均粒径は、100nm以上5000nm以下であるのが好ましいが、300nm以上4500nm以下であるのがより好ましく、500nm以上4000nm以下であるのがさらに好ましい。 これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。 【0066】 なお、本明細書において、平均粒径とは、体積基準の平均粒径のことを指す。平均粒径は、例えば、サンプルをメタノールに添加し、超音波分散器で3分間分散した分散液をコールターカウンター法粒度分布測定器(例えば、COULTER ELECTRONICS社製MULTISIZER3)にて、50μmのアパチャーを用いた測定により求めることができる。 【0067】 また、抗菌層3において粒子状の抗菌剤(分散質)が分散媒に分散している場合、抗菌剤の少なくとも一部が抗菌層3の外表面(粘着フィルム10の外表面)に露出、突出しているのが好ましい。 これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。」 コ「【0074】 抗菌層3中における抗菌剤の含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上40質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上20質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以上10質量%以下であるのがさらに好ましい。」 サ「【0076】 また、抗菌層3は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。 【0077】 抗菌層3の厚さは、特に限定されないが、0.05μm以上10μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上5μm以下であるのがより好ましい。 【0078】 これにより、粘着フィルム10の抗菌性を向上させつつ、部材50の表面の形状に対する追従性をより向上させることができ、例えば、部材50の表面(粘着フィルム10が貼着される部位)が曲率半径の小さい曲面等であっても優れた密着性を確保することができる。また、基材1の透明性を好適に向上させることができ、粘着フィルム10を介した印刷層52の視認性を向上させることができる。 【0079】 また、抗菌層3の厚さ(抗菌剤が突出している場合には、それ以外の部位での厚さ)をT[μm]、抗菌剤の平均粒径をD[μm]としたとき、0.3≦T/D≦3.0の関係を満足するのが好ましく、0.4≦T/D≦2.0の関係を満足するのがより好ましく、0.5≦T/D≦0.9の関係を満足するのがさらに好ましい。 これにより、粘着フィルム10の抗菌性をより向上させることができる。」 シ「【0085】 [貼着体] 次に、本発明に係る貼着体について説明する。 図3は、本発明の粘着フィルムが貼着された貼着体の好適な実施形態を示す模式的な縦断面図である。 【0086】 貼着体100は、前述した粘着フィルム10が部材(被着体)50に貼着された構造を有している。そして、部材50は、基材51と、印刷層52とを有しており、粘着フィルム10は、印刷層52を被覆するように貼着されている。 【0087】 また、図3に示すように、本実施形態の貼着体100では、部材50は、基材51の印刷層52が設けられた面とは反対の面側に粘着剤層53を有している。 【0088】 このように、部材50が粘着剤層53を有していることにより、貼着体100を他の部材に貼着することができる。」 ス「【0093】 基材51は、いかなる材料で構成されていてもよく、基材51の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;アクリル系樹脂;酢酸ビニル樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ-p-フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。 【0094】 また、基材51は、前述した材料以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。」 セ「【0098】 印刷層52は、色、模様、文字、記号、図形等の情報を観察者に与える機能を有する部位であり、印刷により形成された部位である。」 ソ 摘記事項エ、スから、フィルム基材1及び基材51は、熱可塑性樹脂からなるものと認められる。 タ 摘記事項キ、クから、抗菌剤は、Agイオンが無機材料に担持されたものと認められる。 以上から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 (引用発明1) 「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1の上に抗菌剤を含む材料で構成された抗菌層3を、熱可塑性樹脂からなる基材51と印刷層(印刷部)52とを有する部材(被着体)50に対して、印刷層52を被覆するように貼着し、 熱可塑性樹脂からなる基材51は、染料、顔料等の着色剤を含み、 抗菌層3中における抗菌剤は、Agイオンが無機材料に担持された抗菌剤であって、抗菌剤の含有率は、0.1質量%以上40質量%以下であり、抗菌層3中に含まれる抗菌剤は、粒状をなし、その平均粒径が100nm以上5000nm以下であり、抗菌層3の厚みは0.05μm以上10μm以下であり、 光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1の厚さは、15μm以上300μm以下であり、 光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1及び抗菌層3は、紫外線吸収剤、光安定剤が添加された、貼着フィルムが貼着された貼着体。」 (2)引用文献2に記載された事項及び引用発明2 本件特許の出願前に、日本国内において頒布された引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、プラスチック、紙、木材、金属板、無機系素材等あらゆる基材に抗菌性能を付与するために使用される化粧シートに関するものである。」 イ「【0009】以下に、本発明の抗菌性化粧シートの製造方法について説明する。先ず、図3(a)に示すように、着色POシート11として高密度ポリエチレン、熱可塑性エラストマー、着色剤及び無機充填剤からなる樹脂シートを用い、これに木目柄等を印刷して模様12を形成する。一方、図3(b)に示すように、透明PPシート14としてアイソタクティックポリプロピレンとアタクティッククポリプロピレンの混合系からなる複合構造を有する無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂シートを用いて、これに接着剤を塗布して接着層13を形成する。 【0010】次に、前記模様を設けた着色POシート11と接着層13を形成した透明PPシート14をドライラミネーション法等により貼り合わせて、図3(c)に示すような積層シート2を作製する。この積層シート2の透明PPシート14面に、図3(d)に示すように、抗菌剤を添加した樹脂組成物を塗布、乾燥し、抗菌性塗膜15を形成する。抗菌性塗膜15の乾燥樹脂固形分は抗菌剤16を0.1~10重量%含有することが好ましく、2~10μmの厚さで形成することが好ましい。」 ウ「【0021】HDPEに、熱可塑性エラストマー、無機充填剤、着色剤を添加した樹脂混合物は、カレンダー法等の公知の方法に従って製膜して、不透明な着色シートを作製する。着色POシートの厚さは50~200μmの範囲が好ましく、より好ましくは100μm程度である。 ・・・ 【0023】一方、本発明に用いられる透明PPシートとしては、アイソタクティックポリプロピレンとアタクティックポリプロピレンの混合系からなる複合構造を有する無色又は着色透明な軟質ポリプロピレン系樹脂が使用される。・・・」 エ「【0031】アタクティックポリプロピレンとアイソタクティックポリプロピレンとの特に好ましい混合比率はは1:1であり、アイソタクティックポリプロピレン成分の比率が高くすると、得られる軟質ポリプロピレンのヤング率が高くなる。このブレンドポリプロピレンには、化粧シートの表面層として求められる機能を補強するために、各種添加剤、補強材、充填剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤等が添加される。 【0032】紫外線吸収剤、光安定剤は、樹脂により耐候性(耐光性)を付与するためのものであり、その添加量は紫外線吸収剤、光安定剤共に、0.5~10重量%程度である。一般的には、紫外線吸収剤と光安定剤とを併用するのが好ましい。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステル等の有機物、又は、0.2μm以下の微粒子状の酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化チタン等の無機物を用いることもできる。安定剤としては、ビス-(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート等のヒンダードアミン系ラジカル補足剤、ピペリジン系ラジカル捕捉剤等のラジカル捕捉剤を用いることができる。」 オ「【0034】装飾処理としては、模様の印刷、エンボス加工(加熱プレス)、ヘアライン加工等による凹凸模様賦型等であってよく、更に凹凸模様の凹部に公知のワイピング法によって着色インキを充填することもできる。模様印刷の模様としては、木目柄、石目柄、布目柄、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、各種抽象模様、或いは全面ベタ印刷等がある。全面ベタ印刷の隠蔽層は化粧シートを貼付する被着体の表面状態によって省略されることがある。」 カ「【0042】抗菌性能を有する抗菌性塗膜は以下のようにして形成される。抗菌性能を有する抗菌性塗膜は、抗菌剤を添加した樹脂組成物を用いて、公知のコート法により抗菌性の樹脂層を形成したものである。抗菌性塗膜の厚さは2~10μmが好ましい。抗菌性塗膜に用いられる樹脂としては、抗菌剤に悪影響を与える物質が含まれないことが必要であり、また、抗菌剤と反応して着色したり、熱、光、電離放射線等で変色したりするものは使用できない。特に熱硬化性樹脂の硬化に用いる酸触媒や抗菌剤の金属イオンを還元する性質を有する化合物等は添加しないようにする。」 キ「【0046】上記抗菌性塗膜、表面シート及びワイピングインキに添加する抗菌剤としては、一般に市販されている工業用抗菌剤が使用できる。抗菌剤には有機系抗菌剤と無機系抗菌剤があるが、下記の抗菌剤が使用できる。 【0047】○1(当審注:○の中に1を記した符号を「○1」という。) 無機系抗菌剤として、特公昭63ー54013号公報、特開平4ー300975号公報、特許第2529574号公報等に開示されているゼオライト、アパタイト、ガラス、シリカゲル、リン酸塩、リン酸ジルコニウム等のイオン交換可能なイオンの一部又は全部を、銀、銅、亜鉛、錫、鉛、水銀、コバルト、アンモニウム等のイオンで置換したイオン交換体がある。中でも、ゼオライト、リン酸ジルコニウムのイオン交換可能なイオンの一部を銀イオンで置換したものが、安全性や実積面から望ましい。ゼオライト、リン酸ジルコニウムに担持させた金属イオンの含有量としては、銀イオンの場合は0.1~15重量%、銅又は亜鉛イオンの場合は0.1~8重量%が好ましい。また、上記金属イオンで置換したイオン交換体を更にアンモニウムイオンで置換したものもある。(特公平4ー28646号公報、特許第2529574号公報等に開示)」 キ「【0051】尚、上記無機系抗菌剤の粒径としては、その添加量が1~10重量%、塗布厚(乾物として)が2~10μmに対しては、0.1~10μmの範囲で適度な粒度分布のものを用いると最小添加量で最大の抗菌作用を与える上で好ましい。特に粒径2~5μmが良好である。 【0052】抗菌剤を添加した樹脂組成物は抗菌剤に悪影響を与える成分は除去する必要があり、樹脂成分、溶媒、抗菌剤の単純系が望ましい。前記樹脂組成物は塗膜を形成したとき、多くは透明性であることが望まれるため、溶媒に溶解しない無機系抗菌剤を添加する場合、その添加量は制限される。更に、銀、ニッケル等の金属は有機化合物に対する変色、変質、劣化の原因となる場合が多く、この点からも過剰の添加は好ましくない。 【0053】上記抗菌剤の場合、樹脂組成物が抗菌性塗膜を形成したときの乾物量として、抗菌剤の含有量は0.1~10重量%の範囲が望ましく、抗菌性効果及び透明性を重視した場合は2~5重量%が好適である。抗菌剤の含有量が10重量%を越える場合は、前記問題点が無視できなくなり、又、0.1重量%未満では十分な抗菌作用が得られない。 【0054】抗菌剤を添加した樹脂組成物を用いて、抗菌性塗膜を形成する方法としては、グラビアコート、ロールコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、ホイラーコート、カーテンフローコート、刷毛塗りもしくはグラビア印刷、グラビアオフセット印刷、凹版印刷、シルクスクリーン印刷法等によって行うことができる。 【0055】抗菌性塗膜は最小添加量で最大の抗菌効果を発揮させるため、抗菌剤粒子の一部が塗膜の表面に露出している必要があり、抗菌剤の添加量0.1~10重量%に対して塗膜の厚さは2~10μm程度で、抗菌剤粒子は好ましくは2~5μm程度にする必要がある。塗布方式により塗布量が足りない場合は、1回コートから2回~3回コート程度の重ね刷りを行う場合もある。しかし、抗菌剤の粒径が大きい場合や添加量を多くした場合は塗膜の厚さを10μm超過しても抗菌作用は発揮できるが、透明性は望まれない。又、塗膜内部に封入され、直接抗菌作用に寄与しない物の比率が増える。塗膜を2μm未満にすると塗膜の十分な耐久性と前記粒径、添加量の無機系抗菌剤を塗膜に膠着させる結合力とが不十分となる。 【0056】 【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。 (実施例1)高密度ポリエチレンをベースにして、これに熱可塑性エラストマーとしてスチレン-ブタジエンゴムを30重量%、無機充填剤として炭酸カルシウム10重量%、着色顔料として弁柄とカーボンブラックを5重量%、熱安定剤及びヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を5重量%、添加したブレンド物をカレンダー製膜法によって製膜し、厚さ100μmの不透明着色シート(以下着色PEシート11aとする)を得た。次いで、図4(a)に示すように、この着色PEシート11aの表面に、ウレタン系2液硬化型プライマー液(昭和インク工業(株)製「AFS メジューム」)を塗布してプライマー層20を形成した後、ポリウレタン系2液硬化型白色インキ(昭和インク工業(株)製「UEベタホワイト着色」) を用いて、白色のベタ印刷層12bを形成し、その上に、塩化ビニルー酢酸ビニル系インキ(昭和インク工業(株)製「化X 」) を用いて、柾目柄をグラビア印刷して絵柄印刷層12aを設けた。 【0057】一方、アイソタクティックポリプロピレン50重量%とアタクティックポリプロピレン50重量%のブレンドポリプロピレンに、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を3000ppm、光安定剤としてヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤を5000ppmを添加し、このブレンドポリプロピレンを溶融押し出し法によりシート化し、厚さ100μmの透明な軟質ポリプロピレンシート(透明PPシート)を得た。次いで、図4(b)に示すように、この透明PPシートに、抗菌剤として粒径分布が2~5μmで、銀含有量が2.5重量%、亜鉛含有量14.5重量%である銀イオン系ゼオライト抗菌剤を5重量%添加したウレタン系2液硬化型インキ(昭和インク工業(株)製「OP-A4 コーキン」)を用いて、グラビアロールコート方式により、抗菌剤16を含有する抗菌性塗膜15を形成した。抗菌性塗膜15は硬化後の厚さが3μmになるようにした。 【0058】次に、前記着色PEシートの印刷面にウレタン系接着剤(大日精化工業(株)製「E-288L」)を塗布し、図4(c)に示すように、前記透明PPシートのPP面をドライラミネートして抗菌性化粧シート1を作製した。」 ク「【0061】(実施例4)図7(a)に示すように、実施例1と同様に、抗菌性化粧シート1を作製した。次に、この抗菌性化粧シート1の抗菌剤16を含有する抗菌性塗膜15面に、実施例2と同様に、エンボス模様を形成して、図7(b)に示すように、表面にエンボス模様を有する抗菌性化粧シート1を作製した。」 以上から、特に実施例1に着目すると、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 (引用発明2) 「着色PEシート11aの上に柾目柄をグラビア印刷して絵柄印刷層12aを設け、透明PPシートに抗菌性塗膜15を形成し、着色PEシートの印刷面に前記透明PPシートのPP面をドライラミネートした抗菌性化粧シート1であって、 抗菌性塗膜には抗菌剤が添加され、 銀含有量が2.5重量%、亜鉛含有量14.5重量%である銀イオン系ゼオライト抗菌剤を5重量%添加したウレタン系2液硬化型インキを用いて、グラビアロールコート方式により、抗菌剤16を含有する抗菌性塗膜15を硬化後の厚さが3μmで形成し、抗菌剤の粒径分布が2~5μmであり、 透明PPシートの厚さが100μmであり、 透明PPシートは、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、光安定剤としてヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が添加されている、抗菌性化粧シート。」 (3)引用文献3に記載された事項及び引用発明3 本件特許の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、抗菌性を有する化粧シートに係り、特に光(紫外線)を必要とせず、抗菌性を有する建装材化粧シート等の好適な技術に関する。」 イ「【0005】 本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、光(紫外線)を必要とせず、長時間にわたって揮発性化合物、悪臭、菌・ウィルスなどの有機物汚染に対して浄化機能を有する化粧シートを提供することを目的とする。」 ウ「【0010】 次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。 ・・・ 本実施形態の化粧シート5は、図1に示すように、シート状の基材1の上に、印刷インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3、表面保護層4がこの順に積層されて構成されている。本実施形態の表面保護層4には、リン酸塩及び酸化還元補助化合物が配合されている。」 エ「【0011】 <基材> 基材1は、例えば樹脂シートからなる。樹脂シートを構成する樹脂には、公知の樹脂が使用可能であるが、その中でも熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイト、ポリエーテルサルファイト、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、ポリフェニレンエーテル等が使用可能であり、これらの共重合体もしくはブレンドでもよい。特に好ましくは耐候性やコストの点でポリプロピレンが好適である。 基材1の厚さとしては30μm~200μmの範囲内が好適である。基材1は、意匠性の観点から、透明もしくは任意に着色されていてもよい。 【0012】 <印刷インキ層> 印刷インキ層2には、公知の各種有機、無機顔料が使えるが、耐候性を考慮した顔料、バインダー樹脂を選定する方が望ましい。 印刷インキのバインダー樹脂としては、公知の樹脂が使用可能であるが、好ましくはウレタン系、アクリル系樹脂が使用される。さらに、塩化ビニル系、酢酸ビニル系樹脂などの樹脂が混合されていてもよい。 特にこれらに限定されるものではないが、顔料としてはカーボンブラック、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジケトピロロピロール系、フタロシアニン系、ジアゾ系等の有機顔料、酸化鉄、酸化チタン系無機顔料が使用可能であり、それらの材料を単体もしくは複数使用可能である。 印刷インキ層2は、周知の任意の印刷方法により、基材1の上に形成可能である。特に、調子再現性、生産コストの点でグラビア印刷法が好適である。 【0013】 <透明熱可塑性樹脂層> 透明熱可塑性樹脂層3には、公知の樹脂であればいずれも使用可能である。熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイト、ポリエーテルサルファイト、ポリエーテルスルホン、トリアセチルセルロース、ポリフェニレンエーテル等が使用可能であり、これらの共重合体もしくはブレンドも使用可能である。その中でも、耐候性の点でポリプロピレンが好適である。 【0014】 透明熱可塑性樹脂層3の厚さとしては30μm~200μmの範囲内が好適である。 印刷インキ層2の上に透明熱可塑性樹脂層3を設ける際に、2液硬化型ウレタン系樹脂などの接着剤や接着助剤を使用しても良い。また、透明熱可塑性樹脂層3は、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法など、周知の任意のラミネート方法により形成しても良く、基材1、印刷インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3の種類により、積層方法は適宜選択される。 特に、透明熱可塑性樹脂層3の表面に、意匠性向上のために表面エンボス加工を施す場合には、押出ラミネート法が好適である。 【0015】 <表面保護層> 表面保護層4は、樹脂材料の主成分として、熱硬化型樹脂及び光硬化型樹脂(紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂)の少なくとも1つが用いられる。本明細書で主成分とは、樹脂材料100質量部に対し70質量部以上、好ましくは80質量部以上含まれる樹脂材料のことを指す。 熱硬化型樹脂としては、特に限定されるものではないが、ウレタン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、シリコーン系樹脂などが好ましく用いられる。これらは単体もしくは混合物として用いてもよい。 光硬化型樹脂としてはアクリル系樹脂が好ましく用いられる。 硬化型樹脂として、熱硬化型樹脂と光硬化型樹脂の両方を混合して使用しても良い。 表面保護層4の厚さとしては0.1μm~20μmの範囲内が好適である。 【0016】 (リン酸塩化合物) 本実施形態の表面保護層4には、リン酸塩化合物が配合されている。 リン酸塩化合物を構成するリン酸塩は、公知のものであれば特に限定されるものではないが、チタン、セリウム、ジルコニウム、ゲルマニウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムおよびガリウムからなる群から選択される金属を一種類以上含むものが好ましい。これらの金属は、その同位体の使用が可能である。コストの点から特に好ましいのはチタンである。 リン酸塩を製造する方法として公知の方法を用いればよい。 また、リン酸塩化合物は平均粒子径で0.1~20μmであることが好ましい。粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定機を用いて測定できる。その粒度分布より平均粒子径が算出できる。 リン酸塩は、表面保護層4の樹脂材料100質量部に対し、1×10-3質量部以上5質量部以下の範囲で配合されていることが好ましい。 【0017】 (酸化還元補助化合物) また、本実施形態の表面保護層4には、酸化還元補助化合物が配合されている。 配合する酸化還元補助化合物は、同様な効果を有するものであれば特に限定されるものではないが、酸化還元力の大きい白金、金、銀、鉄、銅、パラジウム、マンガン、バナジウム、コバルト、イットリウム、ランタン、ニッケルから選択される金属、その酸化物、その配位化合物のうち一種類以上が用いられる。コストの点から特に好ましいのは鉄、その酸化物、その配位化合物である。 【0018】 酸化還元補助化合物は、表面保護層4の樹脂材料100質量部に対し、1×10-4質量部以上1質量部以下の範囲で用いられるのがよい。 ここで、リン酸塩化合物や酸化還元補助化合物は、表面保護層4を構成する樹脂材料に混合攪拌されて、高分散で分散されていることが好ましい。」 オ「【実施例】 【0024】 以下に、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。 <実施例1> 基材1として、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加して押出成形された厚さ70μmのポリプロピレンシートに、接着助剤としてポリエステルポリオール樹脂を10μmの厚さになるようにグラビアコーティング法により塗布した。 この上にベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加したポリプロピレン樹脂を押出ラミネート法により厚さ90μmとなるよう設けた。 更にこの上に、抗菌剤として銀担持リン酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)を0.2質量部添加したウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を表面保護層として6.0μm設けることにより、実施例1の化粧シートを作製した。」 以上から、特に実施例1に着目すると、引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。 (引用発明3) 「基材1の上に、印刷インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3、表面保護層4がこの順に積層されて構成されている化粧シート5であって、 基材1は任意で着色可能なポリプロピレンシートであり、 抗菌剤として銀担持リン酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)を0.2質量部添加したウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を表面保護層として6.0μm設け、 透明熱可塑性樹脂層3としてベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加したポリプロピレン樹脂を押出ラミネート法により厚さ90μmとなるよう設けた化粧シート5。」 (4)引用出願4の当初明細書等に記載された事項及び引用発明4 特許法第41条第2項の規定により本件特許に係る出願の日前の他の出願とみなされる、国際特許出願(優先権主張:2020年9月29日)の先の出願であって、同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により国際公開されたものとみなされる引用出願4は、その出願人及び発明者が本件特許に係る出願の出願人及び発明者と異なる者であって、その当初明細書等には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 本発明は、抗ウイルス性ハードコートフィルム、それを用いた抗ウイルス性粘着加工シート及び抗ウイルス性化粧板に関する。」 イ「【0007】 本発明は、抗ウイルス性を有する化粧シートの材料として有用な、再現性の高い抗ウイルス性を発現させることができる抗ウイルス性ハードコートフィルムを提供することを目的とする。また、前記抗ウイルス性ハードコートフィルムを用いた抗ウイルス性粘着加工シート及び抗ウイルス性化粧板を提供することも目的とする。」 ウ「【0016】 図3は本発明のハードコートフィルムの他の一例を示す断面模式図である。図3では、基材シート2上に、絵柄模様層3、透明性接着剤層4、透明性樹脂層5、プライマー層6及び架橋硬化型樹脂層7が順に積層されており、基材シート2の裏面に更に裏面プライマー層8が更に備えられている。また、エンボス凹凸模様が形成されている。」 エ「【0021】 基材シート 基材シートは、その表面(おもて面)には絵柄模様層等が順次積層される。なお、最表層は架橋硬化型樹脂層(表面保護層)である。 【0022】 基材シートとしては、樹脂製フィルム、紙、樹脂含浸紙等の種々のものを例示することができるが、樹脂製フィルムの中でも樹脂成分として熱可塑性樹脂を含有するものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。本発明では、ポリ塩化ビニル及びポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の少なくとも一種を好適に用いることができる。 【0023】 基材シートは、着色されていてもよい。例えば、熱可塑性樹脂に対して着色剤(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色剤の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すればよい。」 オ「【0027】 絵柄模様層 絵柄模様層は、本発明のハードコートフィルムに所望の絵柄(意匠)を付与する任意層であり、絵柄の種類等は限定的ではない。例えば、木目模様、レザー模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様、草花模様、風景、キャラクター等が挙げられる。」 カ「【0034】 透明性樹脂層 透明性樹脂層は任意に設けることができる層であり、透明性であれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。上記透明性樹脂層の材質は限定されないが、熱可塑性樹脂により形成されたものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等が挙げられる。本発明では、ポリ塩化ビニル及びポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の少なくとも一種を好適に用いることができる。本明細書では、透明性樹脂層が熱可塑性樹脂を含有する場合には、透明性樹脂層を特に「透明性熱可塑性樹脂層」と称する。 ・・・ 【0036】 また、透明性樹脂層は、透明性を有する限り、必要に応じて、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていてもよい。 【0037】 透明性樹脂層の厚さは限定的ではないが、40μm以上300μm以下が好ましく、その中でも60μm以上200μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下が最も好ましい。透明性樹脂層の厚さを上記範囲に設定することにより、深いエンボスを形成することができると共に、傷の発生や絵柄模様層の摩耗による削れ(絵柄取られ)を抑制する効果が得られ易い。」 キ「【0041】 プライマー層 透明性樹脂層の上には、架橋硬化型樹脂層(表面保護層)用のプライマー層を設けてもよい。このプライマー層は透明性樹脂層と後述の架橋硬化型樹脂層との密着性を高める作用に加えて、架橋硬化型樹脂層との組み合わせによりハードコートフィルムの折り曲げ加工性や耐傷性を高めることができる。プライマー層は透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。」 ク「【0043】 プライマー剤には、必要に応じて、添加剤を配合してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤等の耐候剤;シリカ、炭酸カルシウム、クレー等のフィラー;水酸化マグネシウム等の難燃剤;酸化防止剤;滑剤;発泡剤などが挙げられる。添加剤の配合量は、製品特性に応じて適宜設定できる。 【0044】 上記の添加剤のうち、紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が好適である。これらの耐候剤の含有量は限定されないが、紫外線吸収剤、光安定剤のそれぞれについて1000~100000質量ppm程度とすればよい。特に本発明では、トリアジン系紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン系光安定剤を用いることが好ましい。」 ケ「【0046】 架橋硬化型樹脂層(表面保護層) 本発明のハードコートフィルムは、最表層に架橋硬化型樹脂層を備える。前述の通り、本発明のハードコートフィルムは架橋硬化型樹脂層単独(一層)から構成されてもよく、積層体の場合には、架橋硬化型樹脂層は表面保護層としての役割がある。 【0047】 架橋硬化型樹脂層はハードコートフィルムの最表層であり、架橋硬化型樹脂の硬化物に加えて抗ウイルス剤として銀含有無機粒子を含有する。ハードコートフィルムが積層体である場合には架橋硬化型樹脂は透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれであってもよい。」 コ「【0061】 架橋硬化型樹脂層は抗ウイルス剤として銀含有無機粒子を含有する。銀含有無機粒子としては、無機粒子であるゼオライト、アパタイト、ジルコニア、酸化モリブデン等の物質に銀イオンを取り込んで形成した複合材料が使用できる。また、銀担持ガラス粒子も使用でき、ガラス成分としてはリン酸が代表的なものとして挙げられる。銀担持ガラス粒子は、ガラス成分の一つとして銀を含有したものであり溶解性ガラスに位置付けられており、ガラス組成を調整することにより水と接触した際の溶解性を調整することができるため、銀担持ガラス粒子の添加量が比較的少量でも抗ウイルス性能、更には抗菌性能を発現しやすいと考えられる。ここで、銀担持ガラス粒子は水と接触することによりガラスが溶解して銀イオンが溶出されることにより、ウイルス及び細菌を不活性化すると考えられている。 【0062】 これらの銀含有無機粒子としては各種用途で上市されている市販品を使用してもよい。銀含有無機粒子の平均粒子径は限定的ではないが、1μm以上12μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。なお、平均粒子径の下限値は1μm「超過」と設定することもできる。」 サ「【0064】 架橋硬化型樹脂層の厚さは限定的ではないが、1μm以上50μm以下が好ましく、2μm以上35μm以下がより好ましい。なお、架橋硬化型樹脂層の厚さは、エンボス凹凸模様が形成されていない平坦な箇所における測定値を意味する。」 シ「【0066】 また、架橋硬化型樹脂層には、所定の抗ウイルス性に影響を与えない範囲で染料,顔料等の着色剤、無機フィラー等の充填剤、耐候剤、消泡剤,レベリング剤,チクソトロピー性付与剤,難燃剤等の各種添加剤を加えてもよい。また、無機フィラーは主に艶消し剤として用いられる場合が多いが、架橋硬化型樹脂層に無機フィラーを含むことにより表面保護層の硬化収縮を抑制する効果も期待できる。」 ス「【0067】 エンボス加工 エンボス加工は、ハードコートフィルムに木目模様等の所望のテクスチャーを付与するために行い、透明性樹脂層上、及び/又は、架橋硬化型樹脂層上からエンボス加工が施されていてもよい。例えば、架橋硬化型樹脂層を加熱軟化させた後、所望の形の凹凸模様を有するエンボス板で加圧及び賦型し、冷却固定することによりテクスチャーを付与する。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式エンボス機で行える。 【0068】 エンボス加工の凹凸模様としては、例えば、木目導管溝、浮造模様(浮出した年輪の凹凸模様)、ヘアライン、砂目、梨地等が挙げられる。 【0069】 エンボス加工を施した場合には、必要に応じて、エンボス凹部にワイピング加工によりインキを充填してもよい。例えば、エンボス凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する。充填するインキ(ワイピングインキ)としては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。特に木目導管溝凹凸に対してワイピング加工を行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。 【0070】 裏面プライマー層 基材シートの裏面には、必要に応じて裏面プライマー層を設けてもよい。例えば、基材シートと化粧板基材とを接着して化粧板を作製する際に効果的である。」 セ「【0077】 ハードコートフィルムの各層に含まれる各種添加剤のベシクル化 本発明のハードコートフィルムの上述の各層に添加される各種添加剤(プライマー層や表面保護層に添加される無機フィラー等)は、当該各種添加剤がベシクル化されていることが好ましい。各種添加剤をベシクル化する方法としては特に限定されず、公知の方法によりベシクル化することができ、中でも超臨界逆相蒸発法が好ましい。」 ソ「【0078】 以下、超臨界逆相蒸発法について詳細に説明する。・・・一般に、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質等の生体脂質から構成されるものをリポソームと称する。 ・・・ 【0080】 外膜を構成する物質としては、また、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類若しくはトリアシルグリセロールの混合物等の分散剤を用いることができる。」 タ「【0095】 実施例1 基材シートとして、80μm厚の着色ポリ塩化ビニルフィルムを用意した。 【0096】 基材シートのおもて面に厚みが2μmとなるように、ポリ塩化ビニルフィルム用の印刷インキである、アクリルウレタン系樹脂含有印刷インキをグラビア印刷法により塗布し、絵柄模様層を形成した。 【0097】 絵柄模様層上に、透明性樹脂層として、厚さ80μmの透明ポリ塩化ビニル樹脂シートを熱ラミネート方式で積層すると同時に、透明性樹脂層のおもて面からエンボス形状を賦形した。 【0098】 透明性樹脂層のおもて面に、グラビアリバース方式で、下記の架橋硬化型樹脂層形成用組成物を表1に示す塗工量で塗工し、ドライヤーによる風乾により熱風で加熱して硬化させて、厚みが2.8μmの架橋硬化型樹脂層を形成することで、ハードコートフィルムを作製した。 【0099】 (架橋硬化型樹脂層形成用組成物) ・主剤:昭和インク工業製「FW-NT」アクリルポリオール樹脂 100質量部 ・硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート 10質量部 ・抗ウイルス剤:銀担持リン酸系ガラス粒子(興亜硝子製、7.5質量部)。」 チ「【0126】 【表1】 [図:0001396261000001.jpg] 」 以上から、特に実施例1に着目すると、引用出願4の当初明細書等には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。 (引用発明4) 「基材シート2上に、絵柄模様層3、透明性接着剤層4、透明性樹脂層5、プライマー層6及び架橋硬化型樹脂層7が順に積層されているハードコートフィルムであって、 基材シートは80μm厚の着色ポリ塩化ビニルフィルムであり、 下記の架橋硬化型樹脂層形成用組成物を塗工し、ドライヤーによる風乾により熱風で加熱して硬化させて、厚みが2.8μmの架橋硬化型樹脂層とし、 ・主剤:昭和インク工業製「FW-NT」アクリルポリオール樹脂 100質量部 ・硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート 10質量部 ・抗ウイルス剤:銀担持リン酸系ガラス粒子(品番「PG-711」、平均粒子径3μm、興亜硝子製、7.5質量部)(固形分比率:6.4%) 透明性樹脂層は厚さ80μmの透明ポリ塩化ビニル樹脂シートであり、 透明性樹脂層は、透明性を有する限り、紫外線吸収剤、光安定化剤が添加されている、ハードコートフィルム。」 (5)引用出願5の当初明細書等に記載された事項及び引用発明5 特許法第41条第2項の規定により本件特許に係る出願の日前の他の出願とみなされる、特許出願(優先権主張:令和2年7月30日)の先の出願であって、同法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされる引用出願5は、出願人及び発明者が本件特許に係る出願の出願人及び発明者と異なる者であって、その当初明細書等には、以下の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本開示は、抗ウイルス性物品及び抗ウイルス性樹脂組成物に関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、衛生面の観点から、建築物の内装材料、車両の内装材料、OA機器及びタッチパネル等の人が手で触れる物の表面に、抗菌性を有する組成物を塗布し、抗菌処理を施すことが行われていた。 【0003】 抗菌性を有する組成物又は抗菌性物品に関して、例えば、特許文献1~3が提案されている。 しかし、インフルエンザウイルスに代表されるウイルスに対しては、抗菌性を備えるだけでは不十分である。すなわち、特許文献1~3の抗菌性を有する組成物又は物品では、抗ウイルス性を満足できない場合があった。」 イ「【0019】 <硬化性樹脂組成物の硬化物> 硬化物層は、硬化性樹脂組成物の硬化物を含む。本明細書において、「硬化性樹脂組成物の硬化物」のことを「硬化物」と略称する場合がある。 硬化性樹脂組成物の硬化物は、主としてバインダー樹脂としての役割を有する。当該硬化物を含むことにより、抗ウイルス性物品の耐擦傷性が良好となり、抗ウイルス性を長期に渡って持続させやすくできる。」 ウ「【0031】 <担体に銀イオンを担持あるいは含有してなる抗ウイルス剤> 硬化物層は、担体に銀イオンを担持あるいは含有してなる抗ウイルス剤を含む。本明細書において、「担体に銀イオンを担持あるいは含有してなる抗ウイルス剤」のことを「抗ウイルス剤」と略称する場合がある。 【0032】 担体としては、ゼオライト、アパタイト、ガラス、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタン等の無機化合物が好ましく、中でも多孔性の無機化合物が好ましい。」 エ「【0037】 抗ウイルス剤は粒子形状であることが好ましい。 抗ウイルス剤の粒子の形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はない。 【0038】 抗ウイルス剤の平均粒子径は、0.1~10.0μmが好ましく、0.5~5.0μmがより好ましく、1.0~4.0μmがさらに好ましい。 平均粒子径を0.1μm以上とすることにより、硬化物層用インキの安定性が得られやすくなる。また、平均粒子径を10.0μm以下とすることにより、抗ウイルス剤が硬化物層の表面から過度に突出することによる外観不良、耐傷性及び耐汚染性の低下、並びに塗膜の白化を抑制しやすくでき、さらに、塗工装置の部材(コーティングロール、ドクターブレード等)の磨耗を抑制しやすくできる。 【0039】 抗ウイルス剤の平均粒子径をD、硬化物層の厚みをTと定義した際に、D/Tは1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.4以下であることがさらに好ましい。 D/Tを1.0以下とすることにより、抗ウイルス剤が硬化物層の表面から過度に突出することによる耐汚染性の低下及び塗膜の白化を抑制しやすくでき、さらに、塗工装置の部材(コーティングロール、ドクターブレード等)の磨耗を抑制しやすくできる。 D/Tの下限は特に制限されないが、通常は0.01以上であり、好ましくは0.05以上である。」 オ「【0041】 抗ウイルス剤中における銀イオンの量は、担体100質量部に対して0.1~30.0質量部であることが好ましく、0.5~25.0質量部であることがより好ましく、1.0~20.0質量部であることがさらに好ましい。ここで、「銀イオンの量」とは、担持されている銀イオン及び含有されている銀イオンの両方を意味する。 銀イオンの量を0.1質量部以上とすることにより、抗ウイルス性を良好にしやすくできる。また、銀イオンの量を30.0質量部以下とすることにより、光による変色をより抑制しやすくできる。 【0042】 抗ウイルス剤の含有量は、硬化物100質量部に対して0.1~15.0質量部であることが好ましく、0.5~10.0質量部であることがより好ましく、1.0~5.0質量部であることがさらに好ましい。 抗ウイルス剤の含有量を0.1質量部以上とすることにより、抗ウイルス性を良好にしやすくできる。 抗ウイルス剤の含有量を15.0質量部以下とすることにより、光による変色をより抑制しやすくできる。また、抗ウイルス剤の含有量を15.0質量部以下とすることにより、塗膜強度や耐傷性などの塗膜物性の低下を抑えることができる。さらに、抗ウイルス剤の含有量を15.0質量部以下とすることにより、抗ウイルス剤が硬化物層の表面から過度に突出することによる耐汚染性の低下及び塗膜の白化を抑制しやすく、さらに、塗工装置の部材(コーティングロール、ドクターブレード等)の磨耗を抑制しやすくできる。 【0043】 <光安定剤> 硬化物層は、さらに光安定剤を含み、さらに、光安定剤として、NH型ヒンダードアミン系化合物及びNR型ヒンダードアミン系化合物から選ばれる1以上のヒンダードアミン系化合物を含む。光安定剤として、NH型ヒンダードアミン系化合物及びNR型ヒンダードアミン系化合物から選ばれる1以上のヒンダードアミン系化合物を含まない場合、抗ウイルス性物品の光による変色を抑制できない。」 カ「【0068】 <紫外線吸収剤> 硬化物層は、耐候性の観点から、さらに紫外線吸収剤を含むことが好ましい。 紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられ、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。紫外線吸収剤は、1種又は2種以上を用いることができる。」 キ「【0079】 <厚み> 硬化物層の厚みは、加工特性及び耐擦傷性のバランスの観点から、例えば、1.0μm以上10000μm以下とすることができる。 抗ウイルス性物品を硬化物層の単層から構成する場合、硬化物層の厚みは厚めにすることが好ましい。 一方、基材上に硬化物層を塗工(塗布)形成する形態の場合は、自己支持性と外力への耐久性は基材が担うこと、抗ウイルス性はある程度以上の厚みがあればその効果は飽和すること、及び硬化物層の厚みが厚くなるに伴い後加工適性低下や材料費高騰等の不利益も生じること等を勘案すると、硬化物層の厚みは薄膜とすることが好ましい。具体的には、硬化物層の厚みは、加工特性及び耐擦傷性のバランスの観点から、1.5μm以上30μm以下が好ましく、2μm以上20μm以下がより好ましく、3μm以上15μm以下がさらに好ましい。」 ク「【0081】 <積層構成> 本開示の抗ウイルス性物品は、硬化物層の単層でもよいし、硬化物層以外の層を有していてもよい。 硬化物層の単層からなる抗ウイルス性物品は、例えば、離型性を有する基材上に硬化物層を形成してなる積層体を作製した後、当該積層体から離型性を有する基材を剥離することにより得ることができる。 抗ウイルス性物品が有する硬化物層以外の層としては、基材、プライマー層、装飾層、透明性樹脂層、接着剤層等が挙げられる。抗ウイルス性物品の積層構成としては、例えば、下記の(1)~(12)が挙げられる。下記(1)~(12)において、「/」は各層の界面を示す。 なお、抗ウイルス性物品が有する硬化物層以外の層としては、磁気記録用途の磁性体層;回路、電流の銅線、又は電磁波遮蔽層として機能する導電体層;水蒸気、酸素等の気体の透過を抑制するためのガスバリア層;可視光線を高反射率で反射する光反射層;可視光線の反射を抑制するための反射防止層;等の機能性層も挙げられる。これら機能性層は、各層の機能に応じて、下記(1)~(12)の積層構成の何れかの箇所に形成することができる。 【0082】 (1)硬化物層 (2)基材/硬化物層 (3)基材/プライマー層/硬化物層 (4)基材/装飾層/硬化物層 (5)基材/透明性樹脂層/硬化物層 (6)基材/接着剤層/透明性樹脂層/硬化物層 (7)基材/接着剤層/装飾層/透明性樹脂層/硬化物層 (8)基材/装飾層/接着剤層/透明性樹脂層/硬化物層 (9)基材/透明性樹脂層/プライマー層/硬化物層 (10)基材/接着剤層/透明性樹脂層/プライマー層/硬化物層 (11)基材/接着剤層/装飾層/透明性樹脂層/プライマー層/硬化物層 (12)基材/装飾層/接着剤層/透明性樹脂層/プライマー層/硬化物層」 ケ「【0084】 <<基材>> 基材の形態は、フィルム、シート及び板等の平板状のもの、並びに、多面体、多角柱、円柱、球面及び回転楕円体面等の三次元形状のもの等が挙げられ、特に制限はない。 なお、フィルム、シート及び板は、相対的に厚みの薄いものから順にフィルム、シート及び板と呼称される場合が多いが、本明細書においては、特に断りのない限り、これら3者を区別しない。 【0085】 基材の構成材料としては、樹脂、金属、非金属無機材料、繊維質材料及び木質系材料等が挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。」 コ「【0089】 基材として用いられる樹脂としては、各種の合成樹脂又は天然樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、熱可塑性樹脂及び硬化性樹脂が使用できる。」 サ「【0101】 <<透明性樹脂層>> 抗ウイルス性物品は、強度を高めるなどの観点から、基材と硬化物層との間に透明性樹脂層を有していてもよい。特に、基材が樹脂基材の場合、透明性樹脂層を有することが好ましい。 抗ウイルス性物品がプライマー層を有する場合、透明性樹脂層は、基材とプライマー層との間に位置することが好ましい。また、抗ウイルス性物品が装飾層を有する場合、装飾層の保護の観点から、透明性樹脂層は、装飾層と硬化物層との間に位置することが好ましい。 【0102】 透明性樹脂層を構成する樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」とも称する。)、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられ、これらの中でも加工適性の観点からポリオレフィン系樹脂が好ましい。また、これら例示の各種樹脂を2種類以上積層したり或いは混合して使用してもよい。 透明性樹脂層中のポリオレフィン系樹脂の含有量は、加工適性の観点から、透明性樹脂層の全樹脂成分に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。 【0103】 透明性樹脂層のポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体が好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。 【0104】 透明性樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を含有してもよい。 透明性樹脂層の厚みは、耐擦傷性、加工適正及び耐候性のバランスの観点から、20μm以上150μm以下が好ましく、40μm以上120μm以下がより好ましく、60μm以上100μm以下がさらに好ましい。 【0105】 <<装飾層>> 抗ウイルス性物品は、意匠性を向上させる観点から、抗ウイルス性物品の任意の箇所に装飾層を有することが好ましい。 装飾層を形成する箇所は、装飾層の耐候性を高める観点から、基材に近い側であることが好ましい。例えば、抗ウイルス性物品がプライマー層を有する場合、装飾層は、基材とプライマー層との間に位置することが好ましい。また、抗ウイルス性物品が透明性樹脂層を有する場合、装飾層は、基材と透明性樹脂層との間に位置することが好ましい。」 シ「【0117】 <賦形処理> 抗ウイルス性物品は、エンボス加工等の賦形処理で所望の凹凸形状(凹凸模様とも言う)を付与してもよい。 エンボス加工を行う場合、例えば、抗ウイルス性物品を好ましくは80℃以上260℃以下、より好ましくは85℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上180℃以下に加熱し、抗ウイルス性物品にエンボス版を押圧して、エンボス加工を行うことができる。エンボス版を押圧する箇所は、抗ウイルス性物品の硬化物層側とすることが好ましい。 【0118】 <用途> 本開示の抗ウイルス性物品は、各種用途に用いることができる。具体的な用途としては、下記(1)~(12)のものが挙げられる。 (1)住宅、事務所、店舗、病院、診療所等の建築物の壁、床、天井等の内装部分の表面材。 (2)住宅、事務所、店舗、病院、診療所等の建築物の外壁、屋根、軒天井、戸袋等の外装部分の表面材。 (3)窓、窓枠、扉、扉枠等の建具の表面材(内装部分又は外装部分);建具の付随備品(取っ手等)の表面材;建具の治具の表面材。 (4)手すり、腰壁、廻り縁、敷居、鴨井、笠木の造作部材の表面材。 (5)塀、門扉、物干台の柱や手すり等の屋外(外装)部分の表面材。 (6)箪笥、机、椅子、食器棚、厨房の流し台等の家具の表面材;家具の付随備品(取っ手等)の表面材;家具の治具の表面材。 (7)テレビジョン受像機、ラジオ受信機、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、扇風機、空調機等の各種家電製品の筐体等の表面材;家電製品の付随備品(取っ手、スイッチ、タッチパネル等)の表面材;家電製品の治具の表面材。 (8)電子複写機、ファクシミリ、プリンタ、パーソナルコンピュータ等の各種電算機器等のOA機器の表面材;銀行、郵便局等の金融機関のATM装置の各種OA機器類の筐体の表面材;各種OA機器類の付随備品(キーボード鍵盤、タッチパネル等)の表面材;各種OA機器類の治具の表面材。 (9)自動車、鉄道車両等の車輛、船舶、航空機等の乗物の内装又は外装部分(壁、床、天井、手すり、支柱、操作盤、レバー、ハンドル、舵輪等の操縦機器類)の表面材。 (10)各種建築物の間仕切;店舗、事務所、官公庁等の窓口、会計精算場所等におけるウイルスの飛沫感染防止のための遮蔽板又は遮蔽カーテン;保護面(フェイスガード)、保護眼鏡(ゴーグル)等の顔面保護具;あるいはこれらの表面材。 (11)伝票類等のビジネスフォーム;預金通帳;金融機関のキャッシュカード、クレジットカード、ポイントカード等のカード類;あるいはこれらの表面材。 (12)硝子、樹脂等の瓶;金属缶;樹脂レトルト容器等の樹脂軟包装材;各種チューブ類等の包装材料;あるいはこれらの表面材。」 ス「【0125】 1.抗ウイルス性物品の作製及び評価 -抗ウイルス性物品の作製- [実施例1] 下記の組成を混合及び攪拌してなる、実施例1の硬化物層用インキa(抗ウイルス性樹脂組成物a)を調製した。 【0126】 <硬化物層用インキa(抗ウイルス性樹脂組成物a)> ・電離放射線硬化性樹脂組成物 100質量部 (重量平均分子量4000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー) ・担体に銀イオンを含有させてなる抗ウイルス剤 3質量部 (興亜硝子社製の品番「PG711」、担体はガラス、平均粒子径3μm) ・NR型ヒンダードアミン系化合物 2質量部 (BASF社の品番「Tinuvin144」) ・紫外線吸収剤 2質量部 (ヒドロキシフェニルトリアジン、TINUVIN479、BASF社製) ・体質顔料(不定形シリカ) 16質量部 (平均粒子径:10μm) ・溶剤 50質量部 (酢酸エチル) 【0127】 次いで、両面コロナ放電処理を施した基材(厚み60μmの酸化チタン含有ポリプロピレン樹脂シート)の一方の面に、2液硬化型のアクリル-ウレタン樹脂及び着色剤を含む装飾層用インキをグラビア印刷法で塗布、乾燥して、厚み3μmの木目模様の装飾層を形成した。 次いで、装飾層上に、ウレタン樹脂系接着剤からなる厚み3μmの接着剤層を形成し、さらに、接着剤層上に、ポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出し、厚み80μmの透明性樹脂層を形成した。 次いで、透明性樹脂層の表面にコロナ放電処理を施した後、透明性樹脂層上に、下記組成のプライマー層用インキをグラビア印刷法で塗布、乾燥し、厚み2μmのプライマー層を形成した。 次いで、プライマー層上に、上記硬化物層用インキa(抗ウイルス性樹脂組成物a)をロールコート法で塗布して未硬化の硬化物層を形成し、60℃で1分間乾燥させた後、電子線(加速電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射して、硬化性樹脂組成物(電離放射線硬化性樹脂組成物)を架橋硬化して、厚み15μmの硬化物層を形成し、実施例1の抗ウイルス性物品を得た。なお、硬化物層用インキa(抗ウイルス性樹脂組成物a)は、調製した直後にプライマー層上に塗布するようにした。」 以上から、特に実施例1に着目すると、引用出願5の当初明細書等には、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されている。 (引用発明5) 「基材(厚み60μmの酸化チタン含有ポリプロピレン樹脂シート)の一方の面に、2液硬化型のアクリル-ウレタン樹脂及び着色剤を含む装飾層用インキをグラビア印刷法で塗布、乾燥して、厚み3μmの木目模様の装飾層を形成し、ポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出し形成した透明性樹脂層上に、硬化物層用インキa(抗ウイルス性樹脂組成物a)をロールコート法で塗布して未硬化の硬化物層を形成し、60℃で1分間乾燥させた後、電子線(加速電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射して、硬化性樹脂組成物(電離放射線硬化性樹脂組成物)を架橋硬化して、厚み15μmの硬化物層を形成した抗ウイルス性物品であって、 硬化物層用インキaが ・電離放射線硬化性樹脂組成物 100質量部 (重量平均分子量4000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー) ・担体に銀イオンを含有させてなる抗ウイルス剤 3質量部(固形分比率:2.4%) (興亜硝子社製の品番「PG711」、担体はガラス、平均粒子径3μm) ・NR型ヒンダードアミン系化合物 2質量部 (BASF社の品番「Tinuvin144」) ・紫外線吸収剤 2質量部 (ヒドロキシフェニルトリアジン、TINUVIN479、BASF社製) ・体質顔料(不定形シリカ) 16質量部 (平均粒子径:10μm) ・溶剤 50質量部 であり、 透明性樹脂層が厚み80μmであり、 透明性樹脂層は、紫外線吸収剤、光安定剤が添加された抗ウイルス性物品。」 (6)引用文献6に記載された事項 本件特許の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献6には、以下の事項が記載されている。 ア「〇銀リン酸ジルコニウムによるSARSコロナウイルス不活化 上記で決定した 1 0 OTCID50量のSARSコロナウイルスを含む培養液に対して1500μg/mlになるように銀リン酸ジルコニウムを加え、4時間および6時間撹拌した。そして、これらの培養液について、銀リン酸ジルコニウムの濃度が1500~23.4μg/ml相当になるように2倍希釈して検定液を調製した。これらの各検定液をVERO E6単層形成プレートに入れ(各濃度4穴使用)37℃、5%CO2、5~7日間培養した。この培養期間中は、 毎日顕微鏡でウイルスによるCPEを観察し、無処理である対照ウイルスのCPEが51%以上になった時点で試験を終了とした。 そしてSARSコロナウイルスに対する銀リン酸ジルコニウムの100%不活化濃度、50%不活化濃度および25%不活化濃度を求めた。この結果を表1に記載した(μg/ml)。」(第9ページ第4行~第13行) イ「 表1 [図:0001396261000002.jpg] 」 ウ「この結果、銀リン酸ジルコニウムの23.4μg/ml以上の濃度においてSARSコロナウイルスに対する効果が認められた。 このことから、銀リン酸ジルコニウムは、コロナウイルスを無害化する効果があることが分かる。」(第9ページ第14行~第17行) (7)引用文献7に記載された事項 本件特許の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献7には、以下の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は絵柄印刷や表面エンボスなどの施された化粧シートに関するものであり、特には抗ウィルス性が必要とされるドア、窓枠、家具といった日常接触する機会の多い内装箇所に使用される、抗ウィルス性を有する内装用化粧シートに関する。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、抗ウィルス性にすぐれ、かつ表面の各種物性に優れ、製造が容易な抗ウィルス性を有する内装用化粧シートを提供することにある。」 ウ「【発明の効果】 【0009】 本発明はその請求項1記載の発明により、最表面に配合する銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤の真比重と平均粒径と固形分比率を限定することで、抗ウィルス性を有しながらも耐汚染性、耐磨耗性、耐候性など各種耐性にすぐれ、製造が容易な抗ウィルス性を有する内装用化粧シートを得ることができるという作用効果を奏する。」 エ「【0018】 本発明における最表面のコーティング樹脂によるコーティング層4には、真比重が2.5以下であり、かつ平均粒径が1μ以下である銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤を配合してなる。コーティング樹脂としては、即ち塗布液のバインダー樹脂としてエチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、スチレン系樹脂、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、ポリアミド、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂等が使用できるが、基材シート1や絵柄模様層2や透明樹脂層3への密着性の点で優れるエチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステルウレタン、アクリルウレタンが好ましく使用できる。 【0019】 本発明における銀系無機添加剤又は亜鉛系無機添加剤としては、無機化合物のゼオライト、アパタイト、ジルコニアなどの物質に銀イオン、銅イオン、亜鉛イオンのいずれかの金属イオンを取り込んで形成した抗菌性ゼオライト、抗菌性アパタイト、抗菌性ジルコニア等の無機系抗菌剤が使用できる、また有機抗菌剤、有機防カビ剤としてジンクピリジオン、2-(4-チアゾリル)-ベンゾイミダゾール、10、10-オキシビスフェノキサノジン、有機チツソイオウハロゲン系、ピリジン-2-チオール-オキシド等が使用できるが、抗菌効果の点で銀系抗菌剤が優れている。」 (8)引用文献8に記載された事項 本件特許の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献8には、以下の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、抗ウィルス性の化粧板、及び、抗ウィルス性の化粧板の製造方法に関する。」 イ「【0007】 本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、抗ウィルス性に優れ、かつその抗ウィルス性能が経時的に低下しない長期耐久性に優れた化粧板を提供することを目的とする。本発明は、特に、水平向けの建材に好適に用いられる抗ウィルス性の化粧板を提供することを目的とする。」 ウ「【0017】 本発明の化粧板において、上記無機抗ウィルス粒子は、酸化銅(I)、酸化銅(II)、炭酸銅(II)、水酸化銅(II)、塩化銅(II)、銀イオン及び銅イオンの少なくとも一方で交換されたゼオライト、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたアルミナ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたシリカ、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化亜鉛、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持された酸化チタン、並びに、ナノ銀及び銅の少なくとも一方が担持されたリン酸カルシウムから選ばれる少なくとも1種からなる無機粒子であることが望ましい。」 (9)引用文献9に記載された事項 本件特許の出願前に、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献9には、以下の事項が記載されている。 ア「【0011】 本実施形態の化粧シートは、基材層の一方の面側に、透明樹脂層とトップコート層とが表層側の層として、この順に配置された化粧シートである。トップコート層および透明樹脂層は、それぞれ2層以上から構成されていてもよい。トップコート層および透明樹脂層の少なくとも一方の層には、ラジカル捕捉剤を含有している。本実施形態では、そのラジカル捕捉剤は、外膜で包含されてベシクル化したラジカル捕捉剤ベシクルの状態で対象の樹脂層に含有されている。 以下の説明では、トップコート層および透明樹脂層の両方の層にラジカル捕捉剤ベシクルを含有する場合で説明する。 【0012】 ラジカル捕捉剤ベシクルは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞状のカプセル(外膜)内にラジカル捕捉剤が内包された構造を有しているものである。このラジカル捕捉剤ベシクルは、互いの外膜同士が反発し合う作用によって粒子が凝集することがなく、極めて高い分散性を有している。この作用によって、トップコート層および透明樹脂層を構成する樹脂組成物中に対してラジカル捕捉剤を均一に分散させることが可能となる。 ラジカル捕捉剤ベシクルを得る手法(ベシクル化処理方法)としては、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法などが挙げられる。」 イ「【0017】 ベシクルの外膜となるその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ2-ビニルピリジン、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種または2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウムまたはコレカルシフェロール等を使用することができる。」 3-2 理由1(進歩性)についての対比・判断 (1)理由1(1):引用文献1が主引例の場合 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1」は、本件発明1の「透明熱可塑性樹脂層」に相当する。 引用発明1の「抗菌層3」は、本件発明1の「表面保護層」に相当する。 引用発明1の「熱可塑性樹脂からなる基材51」は、「染料、顔料等の着色剤を含」むものであるから、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層」に相当する。 引用発明1の「印刷層52」は、本件発明1の「絵柄模様層」に相当する。 してみると、引用発明1の「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1の上に抗菌剤を含む材料で構成された抗菌層3を、熱可塑性樹脂からなる基材51と印刷層(印刷部)52とを有する部材(被着体)50に対して、印刷層52を被覆するように貼着し」たことは、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた」ことに相当する。 引用発明1の「紫外線吸収剤」は、本件発明1の「紫外線吸収剤」に相当し、引用発明1の「光安定剤」は、「光安定剤」の限りにおいて本件発明1の「ヒンダードアミン系光安定剤」に相当するから、引用発明1の「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1及び抗菌層3は、紫外線吸収剤、光安定剤が添加された」ことは、「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と光安定剤とが添加されている」ことの限りにおいて本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤とが添加され」ていることと一致する。 引用発明1の「貼着フィルムが貼着された貼着体」は、本件発明1の「化粧シート」に相当する。 してみると、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点1で一致し、相違点1~4で相違する。 (一致点1) 「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、 前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、光安定剤とが添加されている化粧シート。」 (相違点1) 本件発明1では、「前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、 前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下」であって「抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されている」のに対して、引用発明1では、「抗菌層3中における抗菌剤は、Agイオンが無機材料に担持された抗菌剤であって、抗菌剤の含有率は、0.1質量%以上40質量%以下であり、抗菌層3中に含まれる抗菌剤は、粒状をなし、その平均粒径が100nm以上5000nm以下」である点。 (相違点2) 本件発明1では、「前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下」であるのに対して、引用発明1では、「光の透過性を有する熱可塑性樹脂からなるフィルム基材1の厚さは、15μm以上300μm以下」である点。 (相違点3) 本件発明1では、光安定剤が「ヒンダードアミン系」であるのに対して、引用発明1では、光安定剤の種類が特定されていない点。 (相違点4) 本件発明1では、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」のに対して、引用発明1では、粒度分布が特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点4について検討する。 取消理由通知において、周知技術を示す文献として例示した引用文献6~9には、上記相違点4に係る事項の開示ないし示唆はなく、本件発明1は、上記相違点4に係る事項を有することにより、「抗ウイルス添加剤との接触面積の拡大、及び抗ウイルス添加剤自体の表面積の拡大でき、抗ウイルス効果の有する」(段落【0027】;なお「の有する」は「を有する」の誤記と認める。)という作用効果を奏するものと認める。 なお、申立人が提出した他の証拠を検討しても、上記相違点4に係る事項の開示ないし示唆はない。 したがって、引用発明1において、上記相違点4に係る本件発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4~7について 本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記アと同様の理由により、引用発明1及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、理由1(1)によっては、請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 (2)理由1(2):引用文献2が主引例の場合 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「着色PEシート11a」、「絵柄印刷層12a」、「透明PPシート」、「抗菌性塗膜15」は、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層」、「絵柄模様層」、「透明熱可塑性樹脂層」、「表面保護層」に相当する。 そして、引用発明2の「着色PEシート11aの上に柾目柄をグラビア印刷して絵柄印刷層12aを設け、透明PPシートに抗菌性塗膜15を形成し、着色PEシートの印刷面に前記透明PPシートのPP面をドライラミネートした抗菌性化粧シート1」は、本件発明1の「 着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シート」に相当する。 引用発明2の「透明PPシートの厚さが100μmであり」ということは、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり」ということに一致する。 引用発明2の「透明PPシートは、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、光安定剤としてヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤が添加されている」は、「前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され」ている限りにおいて、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され」ていることに一致する。 してみると、本件発明1と引用発明2とは、以下の一致点2で一致し、相違点5~7で相違する。 (一致点2) 「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、 前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、 前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている化粧シート。」 (相違点5) 本件発明1では、「前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、 前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下」であって「抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されている」のに対して、引用発明2では、「抗菌性塗膜には抗菌剤が添加され、 銀含有量が2.5重量%、亜鉛含有量14.5重量%である銀イオン系ゼオライト抗菌剤を5重量%添加したウレタン系2液硬化型インキを用いて、グラビアロールコート方式により、抗菌剤16を含有する抗菌性塗膜15を硬化後の厚さが3μmで形成し、抗菌剤の粒径分布が2~5μm」である点。 (相違点6) 本件発明1では、「前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」のに対して、引用発明2では、抗菌性塗膜に紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤が添加されていない点。 (相違点7) 本件発明1では、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」のに対して、引用発明2では、粒度分布が特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点7について検討する。 相違点7は、相違点4と同様内容であり、その判断についても上記(1)ア(イ)で説示したのと同様である。 したがって、引用発明2において、上記相違点7に係る本件発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4~7について 本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記アと同様の理由により、引用発明2及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、理由1(2)によっては、請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 (3)理由1(3):引用文献3が主引例の場合 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「基材1」は、「任意で着色可能なポリプロピレンシート」であるから、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層」に一致する。 引用発明3の「印刷インキ層2」、「透明熱可塑性樹脂層3」、「表面保護層4」は、本件発明1の「絵柄模様層」、「透明熱可塑性樹脂層」、「表面保護層」に相当する。 そして、引用発明3の「基材1の上に、印刷インキ層2、透明熱可塑性樹脂層3、表面保護層4がこの順に積層されて構成されている化粧シート5」は、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シート」に相当する。 引用発明3の「透明熱可塑性樹脂層3」は、「押出ラミネート法により厚さ90μmとなるよう設けた」ものであるから、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下」に一致する。 また、引用発明3の「透明熱可塑性樹脂層3」は、「ベンゾフェノン系紫外線吸収剤0.5質量部、ヒンダードアミン系光安定剤0.5質量部を添加」しているから、「前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され」ている限りにおいて本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され」ていることに一致する。 してみると、本件発明1と引用発明3とは、以下の一致点3で一致し、相違点8~10で相違する。 (一致点3) 「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、 前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、 前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている化粧シート。」 (相違点8) 本件発明1では、「前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、 前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下」であって「抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されている」のに対して、引用発明3では、「抗菌剤として銀担持リン酸カルシウム(平均粒子径2.0μm)を0.2質量部添加したウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂を表面保護層として6.0μm設け」た点。 (相違点9) 本件発明1では、「前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」のに対して、引用発明3では、表面保護層4に紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤が添加されていない点。 (相違点10) 本件発明1では、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」のに対して、引用発明3では、粒度分布が特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点10について検討する。 相違点10は、相違点4と同様内容であり、その判断についても上記(1)ア(イ)で説示したのと同様である。 したがって、引用発明3において、上記相違点10に係る本件発明1の事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明3及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2、4~7について 本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記アと同様の理由により、引用発明3及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、理由1(3)によっては、請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 3-3 理由2(拡大先願)についての対比・判断 (1)理由2(1):引用出願4が主引例の場合 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明4とを対比する。 引用発明4の「基材シート2」は、「80μm厚の着色ポリ塩化ビニルフィルム」であるから、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層」に相当する。 引用発明4の「透明性樹脂層5」は、「厚さ80μmの透明ポリ塩化ビニル樹脂シート」であるから、本件発明1の「透明熱可塑性樹脂層」に相当する。 引用発明4の「絵柄印刷層3」、「架橋硬化型樹脂層7」は、本件発明1の「絵柄模様層」、「表面保護層」に相当する。 そして、引用発明4の「基材シート2上に、絵柄模様層3、透明性接着剤層4、透明性樹脂層5、プライマー層6及び架橋硬化型樹脂層7が順に積層されているハードコートフィルム」は、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シート」に相当する。 引用発明4は、「架橋硬化型樹脂層形成用組成物」として「抗ウイルス剤:銀担持リン酸系ガラス粒子(品番「PG-711」、平均粒子径3μm、興亜硝子製、7.5質量部)(固形分比率:6.4%)」を含むものであるから、引用発明4の「抗ウイルス剤」は、本件発明1の「抗ウイルス添加剤」に相当する。 そして、引用発明4の「抗ウイルス剤」の含有量は、「固形分比率:6.4%」であり、「平均粒子径3μm」であるから、引用発明4の「下記の架橋硬化型樹脂層形成用組成物を塗工し、ドライヤーによる風乾により熱風で加熱して硬化させて、厚みが2.8μmの架橋硬化型樹脂層とし、 ・主剤:昭和インク工業製「FW-NT」アクリルポリオール樹脂 100質量部 ・硬化剤:ヘキサメチレンジイソシアネート 10質量部 ・抗ウイルス剤:銀担持リン酸系ガラス粒子(品番「PG-711」、平均粒子径3μm、興亜硝子製、7.5質量部)(固形分比率:6.4%)」であることは、本件発明1の「前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、 前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり」ということに一致する。 引用発明4の「透明性樹脂層は厚さ80μm」であることは、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下」であることに一致する。 そして、引用発明4の「透明性樹脂層は、透明性を有する限り、紫外線吸収剤、光安定化剤が添加されている」ことは、「前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、光安定剤とが添加され」ている限りにおいて、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加され」ていることに一致する。 引用発明4の「抗ウイルス剤:銀担持リン酸系ガラス粒子(品番「PG-711」、平均粒子径3μm、興亜硝子製、7.5質量部)(固形分比率:6.4%)」は、抗ウイルス剤の有効成分である「銀」が「リン酸系ガラス粒子」に「担持」されているのであるから、本件発明1の「抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されている」ことに一致する。 してみると、本件発明1と引用発明4とは、以下の一致点4で一致し、相違点11、12で相違する。 (一致点4) 「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、 前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、 前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、 前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、 前記透明熱可塑性樹脂層には、紫外線吸収剤と、光安定剤とが添加され、 前記抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されている化粧シート。」 (相違点11) 請求項1に係る発明では、「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」のに対して、引用発明4では、「透明性樹脂層は、透明性を有する限り、紫外線吸収剤、光安定化剤が添加されている」ものであって、架橋硬化型樹脂層7に紫外線吸収剤及び光安定剤が添加されておらず、透明性樹脂層5に添加された光安定剤がヒンダードアミン系か否か不明な点。 (相違点12) 本件発明1では、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」のに対して、引用発明4では、粒度分布が特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点12について検討する。 相違点12は、相違点4と同様内容であり、その判断についても上記3-2(1)ア(イ)で説示したのと同様に、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明4と同一ではない。 イ 本件発明2、4~7について 本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記アと同様の理由により、引用発明4と同一ではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、理由2(1)によっては、請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 (2)理由2(2):引用出願5が主引例の場合 ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と引用発明5とを対比する。 引用発明5の「基材(厚み60μmの酸化チタン含有ポリプロピレン樹脂シート)」は、酸化チタンが白色顔料であることが技術常識であるから、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層」に相当する。 引用発明5の「木目模様の装飾層」は、本件発明1の「絵柄模様層」に相当する。 引用発明5の「ポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出し形成した透明性樹脂層」は、本件発明1の「透明熱可塑性樹脂層」に相当する。 引用発明5の「硬化物層」は、本件発明1の「表面保護層」に相当する。 そして、引用発明5の「基材(厚み60μmの酸化チタン含有ポリプロピレン樹脂シート)の一方の面に、2液硬化型のアクリル-ウレタン樹脂及び着色剤を含む装飾層用インキをグラビア印刷法で塗布、乾燥して、厚み3μmの木目模様の装飾層を形成し、ポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出し形成した透明性樹脂層上に、硬化物層用インキa(抗ウイルス性樹脂組成物a)をロールコート法で塗布して未硬化の硬化物層を形成し、60℃で1分間乾燥させた後、電子線(加速電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射して、硬化性樹脂組成物(電離放射線硬化性樹脂組成物)を架橋硬化して、厚み15μmの硬化物層を形成した抗ウイルス性物品」は、本件発明1の「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シート」に相当する。 引用発明5の「硬化物層」は、「硬化物層用インキa(抗ウイルス性樹脂組成物a)をロールコート法で塗布して未硬化の硬化物層を形成し、60℃で1分間乾燥させた後、電子線(加速電圧:175kV、5Mrad(50kGy))を照射して、硬化性樹脂組成物(電離放射線硬化性樹脂組成物)を架橋硬化して」形成したものであるから、本件発明1の「前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され」たことに一致する。 引用発明5の「担体に銀イオンを含有させてなる抗ウイルス剤 3質量部(固形分比率:2.4%)(興亜硝子社製の品番「PG711」、担体はガラス、平均粒子径3μm)」は、本件発明1の「前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下」であることに一致する。 また、引用発明5の「透明性樹脂層が厚み80μm」であることは、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下」であることに一致する。 引用発明5の硬化物層は、硬化物層用インキaに「・NR型ヒンダードアミン系化合物 2質量部(BASF社の品番「Tinuvin144」)」と「紫外線吸収剤 2質量部(ヒドロキシフェニルトリアジン、TINUVIN479、BASF社製)」が含まれている。 また、引用発明5の透明性樹脂層は、「紫外線吸収剤、光安定剤が添加された」ものである。 してみると、引用発明5の「硬化物層」及び「透明性樹脂層」、「紫外線吸収剤、光安定剤が添加された」ことに限り、本件発明1の「前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定剤とが添加されている」ことに一致する。 引用発明5の「担体に銀イオンを含有させてなる抗ウイルス剤 3質量部(固形分比率:2.4%)(興亜硝子社製の品番「PG711」、担体はガラス、平均粒子径3μm)」は、抗ウイルス剤の有効成分である「銀イオン」が「ガラス」に「担持」されているのであるから、本件発明1の「抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されている」ことに一致する。 してみると、本件発明1と引用発明5とは、次の一致点5で一致し、相違点13、14で相違する。 (一致点5) 「着色熱可塑性樹脂層、絵柄模様層、透明熱可塑性樹脂層、表面保護層を、少なくともこの順に設けられた化粧シートであって、 前記表面保護層には、抗ウイルス添加剤が添加され、 前記抗ウイルス添加剤の添加量が、前記表面保護層の固形分に対して0.2質量%以上10質量%以下であるとともに、前記抗ウイルス添加剤の平均粒径が1μm以上10μm以下であり、 前記透明熱可塑性樹脂層の厚みが、60μm以上200μm以下であり、 前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層には、紫外線吸収剤と、光安定剤とが添加され、前記抗ウイルス添加剤の有効成分が、無機材料により担持されている化粧シート。」 (相違点13) 本件発明1では、前記透明熱可塑性樹脂層及び前記表面保護層に添加された「光安定剤」が「ヒンダードアミン系」であるのに対して、引用発明5では、硬質物層に添加された光安定剤が「NR型ヒンダードアミン系化合物 2質量部(BASF社の品番「Tinuvin144」)」であるが、透明性樹脂層に添加された光安定剤の種類が不明な点。 (相違点14) 本件発明1では、「前記抗ウイルス添加剤の粒度分布が、1~5μmの間と、5~10μmとの間の2つのピークを持つ」のに対して、引用発明5では、粒度分布が特定されていない点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点14について検討する。 相違点14は、相違点4と同様内容であり、その判断についても上記3-2(1)ア(イ)で説示したのと同様に、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないものである。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明5と同一ではない。 イ 本件発明2、4~7について 本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記アと同様の理由により、引用発明5と同一ではない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、理由2(2)によっては、請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、特許法第29条第1項第3号(新規性)についての、以下の理由(1)~(3)である。 ・理由(1)甲第1号証が主引例 訂正前の請求項1、2、4~7 ・理由(2)甲第2号証が主引例 訂正前の請求項1、2、4~7 ・理由(3)甲第3号証が主引例 訂正前の請求項1、2、4~7 2 検討 甲第1~3号証は、それぞれ、取消理由通知で引用した引用文献1~3である。 そして、上記第5の3の3-2で説示したとおり、本件発明1と引用発明1~3との間には、それぞれ、少なくとも実質的な相違点である相違点4、7、10が存在することから、本件発明1は、引用発明1~3であるとはいえない。 また、本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、上記と同様の理由により、引用発明1~3であるとはいえない。 したがって、本件発明1、2、4~7は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないので、理由(1)~(3)によっては、請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 第7 むすび 以上検討したとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-701214

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    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B、851・B32B ほか2件
  • 2022-700957異議申立 / 2024-12-12 / 訂正認容化粧材
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B、851・B32B ほか1件
  • 2022-700907異議申立 / 2023-11-10 / 訂正認容化粧シート及び化粧板
    共通の審決分類: 113・B32B、121・B32B、537・B32B、851・B32B ほか1件
  • 2024-700829異議申立 / 2025-11-18 / 訂正認容放射冷却装置及び冷却方法
    共通の審決分類: 121・B32B、537・B32B、851・B32B、853・B32B
  • 2023-700806異議申立 / 2025-03-27 / 請求成立(取消)プレス成形体、車両用シートバックボード、およびプレス成形体製造方法
    共通の審決分類: 121・B32B、537・B32B、851・B32B、853・B32B

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