特許異議申立
2022-700931
エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びエアーバッグ
- 審判番号
- 2022-700931
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-516102
- 登録番号
- 7047901
- 請求日
- 2022年09月26日
- 審決日
- 2023年07月14日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】信越化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人英明国際特許事務所
- 【異議申立人】ダウ・東レ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 杉江 渉
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1652.537-YAA(D06M) / P1652.113-YAA(D06M) / P1652.121-YAA(D06M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7047901号発明「エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物及びエアーバッグ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7047901号の明細書、特許請求の範囲を令和5年3月30日提出の訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第7047901号の請求項1、5、6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7047901号(請求項の数6。以下、「本件特許」という。)は、2019年(平成31年)3月18日(優先権主張 2018年(平成30年)4月27日、日本国(JP))を国際出願日とする特許出願(特願2020-516102号、以下「本願」という。)に係るものであって、令和4年3月28日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、同年4月5日である。)
その後、令和4年9月26日に、本件特許の請求項1、5、6に係る特許に対して、特許異議申立人であるダウ・東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
(1)特許異議の申立て後の経緯
令和5年 1月26日付け 取消理由通知
同年 3月30日 訂正請求書、意見書の提出(特許権者)
同年 4月20日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛)
なお、当該通知に対し、申立人からの応答はなかった。
(2)証拠方法
申立人が、特許異議申立書に添付して提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:再公表特許WO2008/020635号
第2 訂正の適否についての判断
令和5年3月30日にした訂正請求は、以下の訂正事項を含むものである。
(以下、「本件訂正」という。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。以下、下線は当審で付与した。)
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「を必須成分とすることを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」とあるのを、
「を必須成分とする(但し、(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合、(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理されたものである。)ことを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」に訂正する。
(2)訂正事項2
本件特許明細書等の段落【0008】に「を必須成分とすることを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」とあるのを、
「を必須成分とする(但し、(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合、(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理されたものである。)ことを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」に訂正する。
(3)一群の請求項及び明細書の訂正と関係する請求項について
訂正前の請求項2~6は、それぞれ訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~6は一群の請求項である。
そして、明細書の訂正である訂正事項2は、前記明細書の訂正に係る請求項1を含む一群の請求項の全てについて請求されたものといえるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。
2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1による請求項1に係る訂正は、訂正前の請求項1の「エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物」について「(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合」に、「(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理されたものである」とさらに特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1の訂正前の請求項1の「(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合」に、「(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理されたものである」と特定する訂正は、本件特許明細書等の段落【0036】の「本発明では、(D)成分のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する表面処理剤を(C)成分のシリカ微粉末と混合し、60~200℃で加熱処理することにより、(C)成分のシリカ微粉末の表面上に(D)成分の表面処理剤が充分に供給されて、処理される・・・」との記載、段落【0037】の「(D)成分の表面処理剤で(C)成分のシリカ微粉末の表面処理をシリコーンオイル中で行う方法としては、例えば、(A)成分の一部と、(C)成分、(D)成分の全部とを60℃未満の温度で混合した後に60~200℃で熱処理することで表面処理することができる」との記載及び段落【0038】の「(C)成分のシリカ微粉末を、予め粉体の状態で、(D)成分の表面処理剤と混合し、加熱処理する方法は、例えば、常圧で密閉された機械混練装置又は流動層に上記(C)成分のシリカ微粉末と(D)成分の表面処理剤とを入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において、60℃未満の温度で混合した後に60~200℃にて加熱処理することで表面処理することができる」との記載からみて、「(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~200℃の加熱処理」することが記載されている。さらに、段落【0063】の[調製例1]には「下記(4)式で表されるビニル基を有するポリシロキサン(D1)0.8部、水2部、及びBET法による比表面積が約300m2/gであるシリカ微粉末(C)(商品名:アエロジル300、日本アエロジル社製)40部を、ニーダー中で1時間混合した。その後、へキサメチルジシラザン8部を投入し、さらに1時間混合した。次にニーダー内の温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した」ことが記載され、訂正後の請求項1の「上記式(2)で表される有機ケイ素化合物」と段落【0063】の下記(4)式で表されるビニル基を有するポリシロキサン(D1)」とは化学構造からみて同じ化合物であり、[調製例1]には「シリカ微粉末(C)」と「下記(4)式で表されるビニル基を有するポリシロキサン(D1)」とを「150℃」で加熱したことが記載されているといえるから、訂正事項1による訂正は、新規事項の追加に当たらず、また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことも明らかである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2による訂正は、訂正事項1により訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載内容と整合させるために、本件特許明細書等の段落【0008】の記載を訂正後の請求項1と同様に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であるといえる。
イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2による訂正は、上記「(1)訂正事項1について」「イ 新規事項の追加及び実質上の特許請求の範囲の拡張・変更」で述べた理由と同様の理由で、新規事項の追加、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらないことは明らかである。
(3)本件訂正後の独立特許要件について
上記「第1 手続の経緯」で述べたとおり、本件特許異議の申立ては、本件請求項1~6に係る特許のうち請求項1、5、6に係る特許に対して申立てられたものであるから、請求項2~4に係る特許に対しては申立てられていない。
そして、訂正事項1による訂正前の請求項1による訂正は、上記「(1)訂正事項1について」「ア 訂正の目的」で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、同様に、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~4も同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正がなされたといえる。
そこで、訂正後の請求項2~4に係る発明の独立特許要件について検討すると、下記「第5 当審の判断」で述べるように、本件訂正後の請求項1に係る発明には、特許を受けることができないとすべき理由があるとはいえず、本件訂正後の請求項1を直接又は間接的に引用する本件訂正後の請求項2~4に係る発明についても、同様に特許を受けることができないとすべき理由があるとはいえないため、本件訂正後の請求項2~4に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるといえる。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法126条第7項の規定の満たす訂正であるといえる。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1~2による請求項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5~7項の規定に適合するから、本件訂正を認める。
第3 本件発明
上記「第2 訂正の適否についての判断」のとおり、本件訂正は適法であるので、特許第7047901号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載の以下のとおりのものである(以下、請求項1~6に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、設定登録時の本件願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が100~2,000のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:本成分中に含まれるSiH基が、(A)成分及び下記(D)成分中に含まれるケイ素原子結合アルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量、
(C)BET法比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末:1~50質量部、
(D)1分子中にビニル基を1個以上有するクロロシラン類、シラザン類、及び下記式(1)又は(2)で表わされる有機ケイ素化合物から選ばれるものである表面処理剤(但し、(A)成分を除く。また、上記シラザン類のうち、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン及び1,1,3,3-テトラビニル-1,3-ジメチルジシラザンを除く。)
【化1】
[図:0001402755000001.jpg]
(式中、R1は独立して炭素数1~12の1価飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基であり、R2は独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、nは0~50の整数、mは1~50の整数であり、式(2)において、各シロキサン単位の配列はブロックであってもランダムであってもよい。):(C)成分のシリカ微粉末100質量部に対して、0.01~5質量部、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒:(A)~(D)の合計質量に対して、触媒金属元素の質量換算で1~500ppm、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物(但し、(A)、(B)、(D)成分を除く。):0.1~10質量部
を必須成分とする(但し、(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合、(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理されたものである。)ことを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(D)成分の、1分子中にビニル基を1個以上有するクロロシラン類が、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、及びメチルフェニルビニルクロロシランから選ばれるものである請求項1に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(D)成分の、1分子中にビニル基を1個以上有するシラザン類が、1-ビニル-1,1,3,3,3-ペンタメチルジシラザン、及び1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチル-3-ビニルトリシラザンから選ばれるものである請求項1に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(F)成分が、アルケニル基及び/又はSiH基を含む場合、組成物中の(A)成分、(D)成分、及び(F)成分中に含まれるケイ素原子結合アルケニル基の合計1モル当たり、(B)成分及び(F)成分中に含まれるSiH基の合計量が1~10モルとなる量が配合されてなる請求項1~3のいずれか1項に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
更に、(G)成分として、有機チタニウム化合物、有機ジルコニウム化合物、及び有機アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の縮合触媒を、(A)成分100質量部に対して、0.1~5質量部含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
エアーバッグ用基布上に、請求項1~5のいずれか1項に記載のエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物の硬化被膜を有することを特徴とするエアーバッグ。」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が令和5年1月26日付けの取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)取消理由A(サポート要件)
本件訂正前の請求項1、5、6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
本件明細書の段落【0073】の比較例2の「組成物E」は本件発明1の発明特定事項を全て満たすにもかかわらず、本件明細書の段落【0074】の【表1】をみると、実施例1~2及び参考例1の「30秒後の残存圧力」について著しく劣るものとなっており、本件発明の「エアーバッグの展開時にインフレーターガスの洩れを抑え、膨脹時間の持続性に優れた」ものになるとの課題を解決できているとはいえない。
そうすると、本件発明1は、本件発明の課題を解決できない態様も包含しているといえるから、サポート要件を満たしているとはえいない。
(2)取消理由B(新規性)
本件訂正前の請求項1、5、6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)取消理由C(進歩性)
本件訂正前の請求項1、5、6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書に記載した申立て理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1(新規性)
本件訂正前の請求項1、5、6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
本件訂正前の請求項1、5、6に係る発明は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
第5 当審の判断
当審は、当審が通知した取消理由A~C及び申立人がした申立理由1及び2によっては、いずれも、本件発明1、5、6に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。
取消理由B(新規性)と申立理由1(新規性)、取消理由C(進歩性)と申立理由2(進歩性)はそれぞれ同旨であり、また、いずれの理由も甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性に関する理由であるから、以下「2 取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について」において併せて検討する。
なお、特許異議の申立ての対象は、請求項1、5、6のみであるが、上記「第2 訂正の適否についての判断」「2 判断」「(3)本件訂正後の独立特許要件について」の判断に当たり、請求項2~4についての検討も必要となるので、以下、請求項2~4についても併せて判断を行う。
1.取消理由A(サポート要件)について
(1)本件発明1について
本件訂正により、本件発明1の「エアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物」について、「(D)成分」である「表面処理剤」が本件発明1の「式(2)で表される有機ケイ素化合物」である場合に、「(C)成分」である「シリカ微粉末」が「(D)成分」である「表面処理剤」で60~150℃の加熱処理されたものであると特定された。
本件明細書の段落【0073】の比較例2の「組成物E」は、段落【0066】及び【0072】の記載と併せてみると、「・・・分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)60部、へキサメチルジシラザン8部、水2部、・・・シリカ微粉末(C)(・・・)40部を、ニーダー中で1時間混合した。その後、へキサメチルジシラザン8部を投入し、さらに1時間混合した。次にニーダー内の温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。次いで、該温度を100℃まで降温した後、・・・分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)30部を添加し、均一になるまで混合」(段落【0066】)した後に、「上記(4)式で表されるビニル基含有のポリシロキサン(D1)0.8部を25℃で15分混合し」たもので、「シリカ微粉末(C)」を他の成分と混合して「150℃に昇温」した後に、降温した後、「25℃」で、本件発明1の「式(2)で表される有機ケイ素化合物」に相当する「上記(4)式で表されるビニル基含有のポリシロキサン(D1)」と混合したものであり、訂正後の本件発明1の「(但し、(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合、(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理されたものである。)」の発明特定事項を満たすものではない。
一方、本件明細書の段落【0063】、【0067】の調製例1、実施例1の「組成物A」は、「・・・分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)60部、へキサメチルジシラザン8部、下記(4)式で表されるビニル基を有するポリシロキサン(D1)0.8部、水2部、及び・・・シリカ微粉末(C)(・・・)40部を、ニーダー中で1時間混合した。その後、へキサメチルジシラザン8部を投入し、さらに1時間混合した。次にニーダー内の温度を150℃に昇温し、引き続き2時間混合した。次いで、該温度を100℃まで降温した後、・・・分子鎖両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(A1)30部を添加し、均一になるまで混合」したもので、「シリカ微粉末(C)」と、本件発明1の「式(2)で表される有機ケイ素化合物」に相当する「下記(4)式で表されるビニル基を有するポリシロキサン(D1)」とを他の成分とともに混合して「150℃に昇温」したものであり、訂正後の本件発明1の「(但し、(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合、(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理されたものである。)」の発明特定事項を満たすものである。そして、本件明細書の段落【0074】の【表1】をみると、この調製例1、実施例1の「組成物A」を用いたものは、比較例のものに比べて「引張強さ」や「30秒後の残存圧力」について優れたものとなっており、本件発明の「エアーバッグの展開時にインフレーターガスの洩れを抑え、膨脹時間の持続性に優れた」ものになるとの課題を解決できているとはいえる。
そうすると、本件訂正により、本件明細書の段落【0073】の比較例2の「組成物E」は、本件発明1の発明特定事項を満たさないものとなり、訂正後の本件発明1は、本件発明の課題を解決できない態様を除外したといえるから、取消理由Aは解消されたといえる。
(2)本件発明2~6について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明5~6についても、上記「(1)本件発明1について」で述べた理由と同様の理由で、取消理由Aは解消されたといえる。
また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4についても、同様の理由で、取消理由Aは存在しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件訂正により、取消理由A(サポート要件)は解消されたといえる。
2 取消理由B(新規性)、取消理由C(進歩性)、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の段落【0046】~【0047】、【0050】の【表1】~【表2】に記載の実施例1に着目すると、
「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 100部、BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ 40部、ヘキサメチルジシラザン 7部、水 2部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)0.2部をロスミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、減圧下200℃で2時間加熱処理して流動性のあるシリカマスターバッチを調製し、
・シリカマスターバッチ 48部
・(A)(a-1)粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%) 48部
・(B)(b-1)動粘度5.5mm2/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量約0.73質量%) 2.1部
・(C)白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量約4000ppm) 0.3部
・(接着付与剤)(AD-1)として
(E)3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.6部
(F)(f-1)ジルコニウムテトラアセチルアセトネート 0.1部
(G)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 0.5部
・(硬化遅延剤)3,5-ジメチル-1-オクチン-3-オール 0.04部
・(環状シロキサンオリゴマー)粘度3.5mPa・sの環状メチルビニルポリシロキサン(ビニル基含有量約30.7質量%) 0.2部
・(ビニルシロキサンオリゴマー)粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%) 0.3部
を含むシリコーンゴム組成物」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%)」は、「分子鎖両末端」に「ジメチルビニル」基を有するものであるから、本件発明1の「(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する重合度が100~2,000のオルガノポリシロキサン」と、「1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する」「オルガノポリシロキサン」である限りにおいて一致する。
そして、甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%)」は、「シリコーンゴム組成物」全体の100.14部(=48部+48部+2.1部+0.3部+1.2部+0.04部+0.2部+0.3部)中に、80.6部(=48部+48部×100部/(100部+40部+7部+0.2部))含まれているといえる。
なお、「シリカマスターバッチ1」の調整において「水 2部」が添加されているが「減圧下200℃で2時間加熱処理」により除去されるものとして換算した。
甲1発明における「(b-1)動粘度5.5mm2/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量約0.73質量%)」は、本件発明1の「1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」に相当する。
甲1発明における「BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ」は、本件発明1における「(C)BET法比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末」に相当する。
甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ」は、「シリコーンゴム組成物」全体の100.14部中に、13.0部(=48部×40部/(100部+40部+7部+0.2部))含まれている。
そして、甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%)」は80.6部、「BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ」は13.0部含まれているから、本件発明1と同様に、「(A)」成分「100質量部」に対して「1~50質量部」の範囲内で含まれているといえる。
甲1発明における「粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)」は、本件発明1における「(D)」のうち「下記(2)で表わされる有機ケイ素化合物から選ばれるものである表面処理剤(但し、(A)成分を除く。また、上記シラザン類のうち、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン及び1,1,3,3-テトラビニル-1,3-ジメチルジシラザンを除く。)(当審注:式(2)は省略する。(式中、R1は独立して炭素数1~12の1価飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基であり、R2は独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、nは0~50の整数、mは1~50の整数であり、式(2)において、各シロキサン単位の配列はブロックであってもランダムであってもよい。)」と、「下記式(2)で表わされる有機ケイ素化合物から選ばれるものである表面処理剤(但し、(A)成分を除く。また、上記シラザン類のうち、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン及び1,1,3,3-テトラビニル-1,3-ジメチルジシラザンを除く。)(当審注:式(2)は省略する。(式中、R1は独立して炭素数1~12の1価飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基であり、R2は独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基))である限りにおいて一致する。
甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)」は、「シリコーンゴム組成物」全体の100.14部中に、0.4部(=0.3部+48部×0.2部/(100部+40部+7部+0.2部))含まれているといえる。
そして、甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)」は0.4部、「BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ」は13.0部配合されているから、本件発明1と同様に、「(D)」成分が「(C)成分のシリカ微粉末100質量部に対して、0.01~5質量部」の範囲内で含まれているといえる。
甲1発明の「シリカマスターバッチ」に調製においては、「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン 100部、BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ 40部、ヘキサメチルジシラザン 7部、水 2部、粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)0.2部をロスミキサーに投入し、室温で均一になるまで混合した後、減圧下200℃で2時間加熱処理」するものであり、「BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ」と「分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)」は混合した後、「減圧下200℃で2時間加熱処理」されているから、本件発明1の「但し、(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合、(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理されたものである」ことと、「(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合、(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で加熱処理」されたものである限りにおいて、一致する。
甲1発明の「(C)白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量約4000ppm)」の「白金」は、本件明細書の段落【0040】及び甲第1号証の段落【0026】の記載からみて、本件発明1の「ヒドロシリル化反応用触媒」に相当する。
甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「白金」は、「シリコーンゴム組成物」全体の100.14部中に、1200ppm(=4000ppm×0.3部)含まれているといえる。
そして、甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%)」は80.6部、「(b-1)動粘度5.5mm2/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量約0.73質量%)」は2.1部、「BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ」は13.0部、「粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)」は0.4部含まれ、これらの合計は96.1部であるから、「白金」の含有量はこれらの合計質量に対して12.5ppm(=1200ppm/96.1部)であり、本件発明1と同様に、「(A)~(D)の合計質量に対して、触媒金属元素の質量換算で1~500ppm」の範囲内で含まれているといえる。
甲1発明の「(接着付与剤)(AD-1)」を構成する「(E)3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」、「(G)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン」は、「有機ケイ素化合物」であることは明らかであり、また、本件明細書の段落【0045】及び甲第1号証の段落【0014】及び【0016】の記載からみて、本件発明1の「(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物(但し、(A)、(B)、(D)成分を除く。)」に相当する。
そして、甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「(E)3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン」は0.6部、「(G)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン」0.5部、合計で1.1部配合され、「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%)」は80.6部配合されているから、本件発明1と同様に、「(F)」成分は「(A)」成分「100質量部」に対して「0.1~10質量部」の範囲内で含まれているといえる。
甲1発明の「シリコーンゴム組成物」において、「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%)」は80.6部、「粘度20mPa・sの分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)」は0.4部含まれ、「ビニル基含有量」は約0.116部(=80.6部×0.09質量%+0.4部×10.9質量%)である。
一方、「(b-1)動粘度5.5mm2/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量約0.73質量%)」は2.1部含まれており、「ケイ素原子結合水素原子含有量」は約0.015部(=2.1部×0.73質量%)である。
「ビニル基(CH2=CH-)」の質量を約27、「SiH基」の「H基」の質量を約1とすると、甲1発明の「シリコーンゴム組成物」中に、「ビニル基」は0.0043モル含まれ、「SiH基」の「H基」は0.015モル含まれることになり、「ビニル基」1モル当たり「SiH基」の「H基」は約3.5モル含まれることになるから、本件発明1と同様に、「(B)」成分が「本成分中に含まれるSiH基が、(A)成分及び下記(D)成分中に含まれるケイ素原子結合アルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量」で含まれていることになる。
また、甲1発明の「シリコーンゴム組成物」は、「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%)」は80.6部を主成分とし、大部分を占める成分となっており、また本件明細書の段落【0056】の記載からみて、本件発明1と同様に、「液状」になっているといえる。
また、甲1発明の「シリコーンゴム組成物」は、「1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する」「オルガノポリシロキサン」である「粘度40,000mPa・sの分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基含有量約0.09質量%)」、「1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」である「(b-1)動粘度5.5mm2/sの分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(ケイ素原子結合水素原子含有量約0.73質量%)」及び「ヒドロシリル化反応用触媒」である「(C)白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属含有量約4000ppm)」を含むものであるから、本件発明1と同様に、「付加硬化型」の「シリコーンゴム組成物」であることは明らかである。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:本成分中に含まれるSiH基が、(A)成分及び下記(D)成分中に含まれるケイ素原子結合アルケニル基の合計1モル当たり、1~10モルとなる量、
(C)BET法比表面積が50m2/g以上であるシリカ微粉末:1~50質量部、
(D)1分子中にビニル基を1個以上有するクロロシラン類、シラザン類、及び下記式(1)又は(2)で表わされる有機ケイ素化合物から選ばれるものである表面処理剤(但し、(A)成分を除く。また、上記シラザン類のうち、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン及び1,1,3,3-テトラビニル-1,3-ジメチルジシラザンを除く。)
(式(1)及び式(2)は省略する。):(C)成分のシリカ微粉末100質量部に対して、0.01~5質量部、
(E)ヒドロシリル化反応用触媒:(A)~(D)の合計質量に対して、触媒金属元素の質量換算で1~500ppm、
(F)接着性付与官能基を含有する有機ケイ素化合物(但し、(A)、(B)、(D)成分を除く。):0.1~10質量部
を必須成分とすることを特徴とするエアーバッグ用付加硬化型液状シリコーンゴム組成物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「(A)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン」について、本件発明1では「重合度が100~2,000」であるのに対し、甲1発明では「粘度40,000mPa・s」であるものの、重合度は明らかでない点。
相違点2:「下記式(2)で表わされる有機ケイ素化合物から選ばれるものである表面処理剤」「(式中、R1は独立して炭素数1~12の1価飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数6~12の1価芳香族炭化水素基であり、R2は独立して水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、式(2)において、各シロキサン単位の配列はブロックであってもランダムであってもよい。)」について、本件発明1では、重合度を示す「m及びn」が「nは0~50の整数、mは1~50の整数」であるのに対し、甲1発明では「粘度20mPa・s」であるものの、「n」、「m」は不明である点。
相違点3:「液状シリコーンゴム組成物」について、本件発明1では「エアーバッグ用」であるのに対し、甲1発明では、用途の特定がない点。
相違点4:「(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合」の「(C)成分のシリカ微粉末」が「(D)成分」で加熱処理される温度について、本件発明1では、「60~150℃」であるのに対し、甲1発明では、「200℃」である点。
イ 判断
事案に鑑みて、上記相違点4について検討する。
甲1発明の「シリコーンゴム組成物」は、「BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ」と「分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)」は混合した後、「減圧下200℃で2時間加熱処理」したものであり、本件発明1の「(D)成分が上記式(2)で表される有機ケイ素化合物である場合、(C)成分のシリカ微粉末は該(D)成分で60~150℃の加熱処理」したものと、加熱処理温度が異なるものであり、加熱処理温度が異なることにより、「(C)成分のシリカ微粉末」、もしくは、「液状シリコーンゴム組成物」自体に何らかの違いが生じると解されるから、相違点4は実質的な相違点であるといえる。
したがって、甲1発明は、本件発明と実質的に異なるものであり、本件発明1は甲第1号証に記載された発明とはいえない。
次に、上記相違点について、甲1発明及び甲第1号証の記載事項から容易に発明をすることができたか否かについて検討する。
甲第1号証には、「シリコーンゴム組成物を調製する方法」について、以下の記載がある。
「【0035】
本発明のシリコーンゴム組成物を調製する方法は限定されず、(A)成分~(E)成分、および必要に応じてその他任意の成分を混合することにより調製することができるが、予め(A)成分の一部と(D)成分を加熱混合して調製したシリカマスターバッチに、残余の(A)成分と(B)成分、(C)成分、(E)成分を配合することが好ましい。なお、その他任意の成分を配合する必要がある場合、シリカマスターバッチを調製する際に配合してもよく、また、これが加熱混合により変質する場合には、残余の(A)成分と(B)成分、(C)成分、(E)成分を配合する際に配合することが好ましい。また、このシリカマスターバッチを調製する際、前記の有機ケイ素化合物を配合して、(D)成分の表面をin-situ処理してもよい。本発明組成物を調製する際、2本ロール、ニーダーミキサー、ロスミキサー等の周知の混練装置を用いることができる。」
「【0028】
(D)補強性シリカ微粉末は、上記付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化してなるシリコーンゴム成形体の機械的強度を向上させるための成分である。(D)成分としては乾式法シリカ、沈降法シリカ、これらの補強性シリカ微粉末表面が有機ケイ素化合物などで処理された疎水性シリカが例示される。これらの中でも比表面積が50m2/g以上の補強性シリカ微粉末が好ましい。」
「【0033】
また、本発明組成物の硬化物の物理特性を向上するために、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等の1分子中にビニル基を5質量%以上持つオルガノシロキサン化合物を含有してもよい。」
これらの記載をみると、「(D)補強性シリカ微粉末」と「1分子中にビニル基を5質量%以上持つオルガノシロキサン化合物」を混合する際の加熱処理条件について記載されておらず、また、他の記載を参酌しても、当該加熱処理条件に関する記載はない。
そうすると、甲1発明において、「BET比表面積225m2/gのフュームドシリカ」と「分子鎖両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(ビニル基含有量約10.9質量%)」との加熱処理温度について、「200℃」であったのを「60~150℃」とする動機付けとなる記載はないため、相違点4について、甲1発明及び甲第1号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
ウ 小括
そうすると、本件発明1は、上記相違点1~3を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第1号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(3)本件発明2~6について
本件発明1を引用する本件発明5~6についても、上記「(2)本件発明1について」で検討した理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、また、甲1発明及び甲第1号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本件発明1を引用する本件発明2~4についても、同様の理由により、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、また、甲1発明及び甲第1号証に記載された事項から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおりであるから、取消理由A(新規性)、取消理由B(進歩性)、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)によって、本件発明1、5~6に係る特許を取り消すことはできない。
本件発明2~4についても、同様の理由により、新規性及び進歩性の理由で取り消すことはできない。
第6 むすび
特許第7047901号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
当審が通知した取消理由および申立人がした申立理由によっては、請求項1、5、6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、5、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700931