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特許異議申立

2022-700929

不燃性シート、該不燃性シートを含む防煙垂壁

審判番号
2022-700929
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-074835
登録番号
7090885
請求日
2022年09月22日
審決日
2023年06月30日
公報発行日
2023年08月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ユニチカ株式会社
  • 【異議申立人】奥村 真由
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 久保 克彦
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1652.121-Y (D06M) / P1652.537-Y (D06M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7090885号発明「不燃性シート、該不燃性シートを含む防煙垂壁」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7090885号の請求項2~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許7090885号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成29年12月5日に出願された特願2017-233105号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成30年4月9日に新たな特許出願である特願2018-74835号として出願され、令和4年6月17日にその特許権の設定登録がされ、同年6月27日に特許掲載公報が発行された。 その後、その請求項2~6に係る特許に対し、令和4年9月22日に、特許異議申立人 奥村真由(以下「申立人」という。)から、本件特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項2~6の各々に係る発明(以下、「本件特許発明2」等といい、これらを総称して「本件特許発明」という場合がある。)は、本件特許の願書に添付された特許請求の範囲の請求項2~6の各々に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(なお、請求項1は、本件特許異議が申し立てられていないが、請求項1を引用する請求項があるので、便宜上記載する。) 「【請求項1】 ガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂組成物層とを含む、不燃性シートであって、 前記不燃性シートの使用時に表面層となるように金属又は金属酸化物を含む帯電防止層を備え、 前記不燃性シートの下記ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下である、不燃性シート。 <ヒートサイクル試験条件> 前記不燃性シートを100mm×100mmの大きさに切り出してサンプルとし、該サンプルを、予め温度23℃、相対湿度50%RHに初期設定しておいた恒温恒湿器(エスペック株式会社製商品名PSL-2KPH)に入れて、以下(1)~(5)を1サイクルとし、計10サイクルおこなう。 (1)温度23℃、相対湿度50RHから、温度60℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を14分として、移行させる。 (2)上記温度60℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。 (3)上記温度60℃、相対湿度50%RHから、温度20℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を45分として、移行させる。 (4)上記温度20℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。 (5)上記温度20℃、相対湿度50%RHから、温度23℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を1分として、移行させる。 【請求項2】 ガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂組成物層とを含む、不燃性シートであって、 前記不燃性シートの使用時に表面層となる層として、前記硬化性樹脂組成物層、又はポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むフィルム層、を含み、 前記不燃性シートの下記ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下である、不燃性シート。 <ヒートサイクル試験条件> 前記不燃性シートを100mm×100mmの大きさに切り出してサンプルとし、該サンプルを、予め温度23℃、相対湿度50%RHに初期設定しておいた恒温恒湿器(エスペック株式会社製商品名PSL-2KPH)に入れて、以下(1)~(5)を1サイクルとし、計10サイクルおこなう。 (1)温度23℃、相対湿度50RHから、温度60℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を14分として、移行させる。 (2)上記温度60℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。 (3)上記温度60℃、相対湿度50%RHから、温度20℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を45分として、移行させる。 (4)上記温度20℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。 (5)上記温度20℃、相対湿度50%RHから、温度23℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を1分として、移行させる。 【請求項3】 前記不燃性シートの使用時に表面層となる層に界面活性剤を含み、 前記不燃性シート中の前記界面活性剤の質量(g/m2)が0.5~2.0g/m2である、請求項2に記載の不燃性シート。 【請求項4】 全光線透過率が90%以上、ヘーズが20%以下、である、請求項1~3のいずれか1項に記載の不燃性シート。 【請求項5】 防煙垂壁用である、請求項1~4のいずれか1項に記載の不燃性シート。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項に記載の不燃性シートを備える、防煙垂壁。」 第3 申立理由の概要 申立人は、本件特許異議申立書に以下に記載の甲第1号証~甲第6号証を提出して、大要、次の申立理由を主張している。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許発明2~6は、本件特許の原出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の原出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許発明2~6に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 本件特許発明2~6は、「前記不燃性シートの使用時に表面層となる層」として、「前記硬化性樹脂組成物層、又はポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むフィルム層」を含むものであることを特定している。しかし、本件特許の明細書には、「前記不燃性シートの使用時に表面層となる層」が「ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むフィルム層」である場合の実施例はなく、実施例1~3は、不燃性シートの使用時に表面層となる層が帯電防止層6である場合の例である。本件特許明細書においては、不燃性シートの使用時に表面層となる層として、ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むフィルム層である場合において、ヒートサイクル試験の前後において表面抵抗率が1×1011Ω以下であるものが記載されていない。 3 申立理由3(明確性) 本件特許の請求項2ないし6に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (1) 本件特許発明2~6は、「前記不燃性シートの使用時に表面層となる層」としてポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むフィルム層を含むものであることを特定している。そして、本件特許の明細書には、「前記不燃性シートの使用時に表面層となる層」が「ポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むフィルム層」である場合として、「ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂」(段落【0043】)が例示されているが、本件特許発明2~6は、これら以外の樹脂も含まれる記載となっており、どのような熱可塑性樹脂が含まれるのかその範囲が明らかではない。 (2) 上記(1)に記載した当該場合において、ヒートサイクル試験の前後において、表面抵抗率がいずれも1×1011Ω以下であるか否か、不明確である。 4 証拠方法 甲第1号証:特開2015-30253号公報 甲第2号証:再公表特許WO2014/125827号 甲第3号証:信越ポリマー株式会社,「ポリチオフェン系導電性ポリマー 導電性ポリマー塗料 セプルジーダ○R SEPLEGYDA○R」(当審注:「○R」は、登録商標を示すRを○囲みして上付き文字としたたものの代用表記である)。 甲第4号証:信越ポリマー株式会社 技術生産本部 プロジェクト統括部 CPプロジェクト,“有機導電性高分子塗料 セプルジーダ○R HC-R06B”,2014年9月3日,信越ポリマー株式会社 甲第5号証:特開2014-76563号公報 甲第6号証:特開2015-42794号公報 なお、証拠の表記はおおむね異議申立書の記載に従った。以下、「甲1」のようにいう。 第4 当審の判断 以下検討するとおり、申立人の申立理由には理由がないと判断する。記載不備の申立理由である、申立理由3、申立理由2、そして、進歩性の理由である申立理由1の順に検討する。 1 申立理由3(明確性)について (1) 本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載自体に不明確な記載はなく、明確である。そして、特に、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0010】、【0029】及び【0043】記載とも整合する。よって、上記段落の記載と整合するから、そのことによって、本件特許の特許請求の範囲の請求項2の記載が不明確なものであるとはいえない。 また、本件特許発明3ないし6に関しても同様であり、本件特許発明3~6は、明確である。 よって、本件特許発明2~6は明確である。 (2) 申立人の上記第3 3の主張について検討する。 ア 主張(1)について 申立人は、本件特許発明2の「熱可塑性樹脂」には、「ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂」以外の樹脂も含まれる記載となっており、どのような熱可塑性樹脂が含まれるのか、その範囲が明らかでない旨主張する。 しかし、「熱可塑性樹脂」として、「ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂」自体は、周知のものであるから、当該特許発明2の「熱可塑性樹脂」自体は明確であるといえるので、上記申立人の主張は失当である。 イ 主張(2)について 本件特許発明2~6は、いずれも、それぞれの請求項の記載にて、「ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下である」と特定されたものであるから、「表面抵抗率がいずれも1×1011Ω以下」でないものは、本件特許の請求項2~6に包含されないから、申立人の主張は採用できない。 (3) 申立理由3についてのむすび 以上のとおりであるから、申立理由3には理由がない。 2 申立理由2(サポート要件)について (1) 本件発明の課題について 本件特許明細書には、以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明者等が検討した結果、特許文献1~3に記載された不燃性シートは、例えば、防煙垂壁として長期間使用した場合、防煙垂壁として設置する建築物内の空気中に存在する塵埃が該不燃性シート表面に付着し、外観が悪くなるという問題があることが判明した。このような状況下、本発明は、ガラス布と樹脂との不燃性シートにおいて、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減させる不燃性シート及び該不燃性シートを備える防煙垂壁を提供することを目的とする。」 これより、本件発明の課題は、「ガラス布と樹脂との不燃性シートにおいて、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減させる不燃性シート及び該不燃性シートを備える防煙垂壁を提供すること」である。 (2) 課題の解決手段に係る記載ついて 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0008】 上記問題を解決すべく、本発明者等が検討したところ、例えば特許文献1~3に開示されたような不燃性シートは、表面抵抗率が、1×1015Ω程度であり、これに起因して、空気中に存在する塵埃の付着を十分防止できないものであることが判明した。そこで、本発明者等が鋭意検討したところ、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下とすることにより、上記塵埃の付着を低減できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。」 「【0013】 例えば図1~4に示すように、本発明の不燃性シート1は、ガラス繊維布2と、ガラス繊維布2に含浸された樹脂組成物層3と、を含む積層構造を有する。不燃性シート1において、ガラス繊維布2は、少なくとも1層含まれていればよく、複数層含まれていてもよい。 【0014】 また、図2~4に示すように、本発明の不燃性シート1は、ガラス繊維布2と、ガラス繊維布2に含浸された樹脂組成物層3と、該樹脂組成物層3の少なくとも片面上、好ましくは両面上に、フィルム層4を含む積層構造とすることもできる。また、図3及び図4に示すように、本発明の不燃性シート1は、樹脂組成物層3又はフィルム層4の少なくとも片面上、好ましくは両面上に、例えば防煙垂壁として、使用時に剥離される、剥離可能な保護フィルム5を含むことができる。」 「【0037】 後述するように、本発明の不燃性シートにおいて、例えば防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着を低減するために、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下であることが必要である。当該表面抵抗率は、上記したような、フィルム層4を積層しない場合は樹脂組成物層3、又はフィルム層4を積層する場合はフィルム層4に界面活性剤のみを含有させる等により、達成可能となる。」 「【0055】 本発明者等が検討したところ、例えば特許文献1~3に開示されたような不燃性シートは、上記特定のヒートサイクル試験前後の表面抵抗率が、1×1015程度であり、これに起因して、空気中に存在する塵埃の付着を十分防止できないものであることが判明した。そこで、本発明者等が鋭意検討したところ、上記特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下とすることにより、上記塵埃の付着を低減できることが見出された。上記表面抵抗率として、より好ましくは、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1.0×1010Ω以下、5.0×109Ω以下が挙げられる。下限については特に制限されないが、例えば、1×105Ω以上が挙げられ、透明性をより一層向上する観点から、1.0×107Ω以上、より好ましくは1.0×108Ω以上、さらに好ましくは1.0×109Ω以上が挙げられる。」 そして、具体的な実施例及び比較例として、段落【0068】~【0102】が記載されており、その結果として以下の【表1】が記載されている。 「【0100】 【表1】 [図:0001400474000001.jpg] 」 (3) 判断 発明の詳細な説明の段落【0008】には「上記問題を解決すべく、本発明者等が検討したところ、例えば特許文献1~3に開示されたような不燃性シートは、表面抵抗率が、1×1015Ω程度であり、これに起因して、空気中に存在する塵埃の付着を十分防止できないものであることが判明した。そこで、本発明者等が鋭意検討したところ、特定のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下とすることにより、上記塵埃の付着を低減できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。」と記載され、具体的な実施例及び比較例の記載において、帯電防止層を備えていない実施例4及び5のヒートサイクル試験の前後の表面抵抗率がいずれも1×1011Ω以下の場合は、「(防煙垂壁として長期間使用した場合の塵埃の付着程度の確認)」(【0097】)で、「3点・・・紙片が全く吸い付かなかった」との効果を発揮したことが【表1】に示されており、表面抵抗率が所定の条件を満たしていない比較例は、「1点・・・吸い付いた紙片が10枚以上」であることが示されている。 そうすると、当業者は、本件発明2の「ガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂組成物層とを含む、不燃性シート」であって、「<ヒートサイクル試験条件>」で具体化される特定の「ヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下」である「不燃性シート」とすることで、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明3~6は、上記「不燃性シート」をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明2~6は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明2~6に関して、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の規定に適合する。 (4) 申立理由2についてのむすび 以上のとおりであるから、申立理由2には理由がない。 3 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について (1) 甲1に記載された事項と甲1に記載された発明 ア 甲1に記載された事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【0002】 建物の天井に設置され、火災時の煙の流動や拡散を防止する防煙垂壁として、金属線がガラスの間に配置された線入磨き板ガラスが用いられてきた。防煙垂壁を構成するこのようなガラスは、落下によるけが等が発生する場合や、また、衝撃を受けた場合に割れる場合が生じる恐れがある。さらに、線入磨き板ガラスは、設置されるオフィスや店舗の美観を損なうことのないよう両面が平面となるように研磨されているため、高価であると云う問題点があった。 【0003】 このような線入磨き板ガラス製の防煙垂壁の問題点を解消するものとして、ガラス繊維織物を硬化性樹脂板の内部に配置した透明不燃性シートが提案されている(特許文献1及び2)。 【0004】 このようなガラス繊維織物を硬化性樹脂板の内部に配置した透明不燃性シートは、例えば次のようにして得られている。ポリエチレンテレフタレート製フィルムなどのプロセスフィルムの片方の面に硬化性樹脂を塗布し、形成された硬化性樹脂層上にガラス繊維織物を重ね、さらにこのガラス繊維織物の上に新たなプロセスフィルムを重ね、加圧して硬化性樹脂層の硬化性樹脂をガラス繊維織物に含浸させる。次いで硬化性樹脂を熱や光などにより硬化させた後、両面のプロセスフィルムを剥離し、その後、例えば難燃性の塩化ビニル樹脂から構成された補強シートを両面にウレタン系接着剤を用いて貼り付ける。 【0005】 このようにして得られた従来の透明不燃シートは、製造においては、上述のように工程数が多く、また、プロセスフィルムを用いるために、製造コスト、及び、廃棄コストが必要となると云う問題があり、また、得られる透明不燃シートは平滑度が低くゆがみがあり、また、また、(当審注:ママ)材料の屈折率の差異により、見る角度によって光の干渉による虹状の縞が見えると云う問題点があった。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、製造が容易で、製造過程に廃棄物が発生せず、平滑度が高く、虹状の縞の発生がない透明不燃シートを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の透明不燃シートは上記課題を解決するため、透明熱可塑性樹脂シート層、内部にガラス繊維により構成された繊維組織体が配された紫外線硬化樹脂層、及び、透明熱可塑性樹脂シート層がこの順で積層されて形成されたことを特徴とする透明不燃シートである。 【0009】 本発明の防煙垂壁は上記の透明不燃シートを有する防煙垂壁である。」 「【0012】 【図1】図1は、本発明にかかる透明不燃シートの一例の断面を示すモデル図である。 【図2】図2は、図1に示す透明不燃シートの製造方法の一例を示すモデル図である。 【発明を実施するための形態】 【0013】 本発明にかかる透明不燃シートの一例Aの断面を示すモデル図を図1に示す。 この透明不燃シートの一例Aでは、第一の透明熱可塑性樹脂シート層1の上に、内部にガラス繊維から構成された繊維組織体3(この例ではガラス繊維織物)が配された紫外線硬化樹脂層(エポキシアクリレート樹脂層)2、さらにその上に、第二の透明熱可塑性樹脂シート層4がこの順で積層されて形成されている。 【0014】 すなわち、本発明の透明不燃シートでは、2つの透明熱可塑性樹脂シート層の間に樹脂が含浸されたガラス繊維から構成された繊維組織体を配している。このような構造により、防煙垂壁を構成したときに、両面の平滑度が極めて高くなり、透視される物品に歪みが生じず、かつ、虹状の縞の発生がない。さらに、従来技術にかかる透明不燃シートに比べ、両面が透明熱可塑性樹脂シート層から構成されているので強度が高く、剛性が高いので防煙垂壁として設置するときの施工が容易となる。 【0015】 本発明において透明熱可塑性樹脂シートとして使用できるものとして、紫外線透過性が優れている紫外線透過性透明熱可塑性樹脂シートが好ましく、このようなものとして、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、あるいは、ポリスチレン系樹脂等からなるシートが挙げられ、透明性、剛性、耐衝撃性に優れるポリカーボネート系樹脂からなるポリカーボネートシートを用いることが好ましい。 【0016】 このような透明熱可塑性樹脂シートを用いることで、透視される物品に歪みが生じず、かつ、虹状の縞の発生がない、強度及び剛性の高い透明不燃シートを得ることができる。 【0017】 ポリカーボネートシートを用いる場合、たとえば、住友化学社製テクノロイ、帝人社製パンライト、三菱ガス化学社製ユーピロン等を用いることができる。 【0018】 用いる透明熱可塑性樹脂シートの厚さとしては、30μm以上150μm以下であることが好ましい。厚すぎると建築基準法の評価法に基づく発熱性試験において不燃性が低下する場合があり、薄すぎるとシート剛性が不十分となり垂壁等への加工性、施工性を損なう場合がある。より好ましい範囲としては50μm以上100μm以下である。 【0019】 また、透明熱可塑性樹脂シートとしては通常、無色のものを用いるが、必要に応じて着色されたものを用いることができ、また、ヘアライン処理、エンボス処理、ハードコート処理、防汚処理、帯電防止処理等各種表面処理などが施されたものを用いることができる。」 「【図1】 [図:0001400474000002.jpg] 」 イ 甲1に記載された発明 上記アに記載した摘記事項や図示を総合し、特に甲1の段落【0013】~【0016】、【0027】、【実施例】【0038】~【0040】に着目すると、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。 <甲1発明> 「ガラス繊維から構成されたガラス繊維織物(南亜プラスチック社製、♯1067)と、前記ガラス繊維から構成されたガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる紫外線硬化型エポキシ樹脂、または紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂組成物とを含む、透明不燃シートAであって、 前記透明不燃シートAの使用時に表面層となる層として、無色のポリカーボネートシート(住友化学社製、テクノロイC000)を含む、透明不燃シートA。」 (2) 甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 (a)π共役系導電性高分子と、 (b)上記(a)π共役系導電性高分子にドープしたポリアニオンと、 (c)上記(b)ポリアニオン中のドープに要した以外のアニオンと、オキシラン基および/またはオキセタン基含有有機化合物との反応生成物と、 を含み、有機溶剤を主とする溶媒に分散可溶な導電性組成物。 【請求項2】 前記溶媒が、重量比にて有機溶剤:水=90:10~100:0の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。 【請求項3】 (d)有機溶剤をさらに添加してなる請求項1または請求項2に記載の導電性組成物。 【請求項4】 有機溶剤に可溶な(e)樹脂をさらに含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の導電性組成物。 【請求項5】 前記(a)π共役系導電性高分子が、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、およびこれらの内の2以上の共重合体からなる群から選択される少なくとも1種以上の繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の導電性組成物。」 「【0069】 <実施例1~109及び比較例1,2の導電性組成物とそれらを用いて形成した皮膜の評価方法> (1)表面抵抗率 各1%溶液をメチルエチルケトンにて倍量に希釈し、PETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)T60)上に#4バーコーターで上記希釈した液を塗布した後、熱風乾燥機を用いて100℃×1分間の条件で乾燥した。得られたフィルムの表面抵抗値は、ハイレスタ(三菱化学アナリテック社製: ハイレスタGP MCP-HT450)を用いて、印加電圧10Vの条件で測定した。・・・」 「【0071】 【表1】 [図:0001400474000003.jpg] 」 (3) 甲3に記載された事項 甲3には、ポリチオフェン系導電性ポリマー塗料である「セプルジーダ○R」、「SEPLEGYDA○R」の「帯電防止塗料」のグレードAS-D、H、M、Q、S、の表面抵抗率(Ω/sq)の下限値がいずれも1×1011Ω以下である旨、記載されている。 (4) 甲4に記載された事項 甲4には、セプルジーダHC-R06B:塗布膜物性(PET 188μm、塗布膜厚3~4μm)の表面抵抗率が、2×108Ω/sqである旨、記載されている。(3ページ、表3) (5) 甲5に記載された事項 甲5には、ガラスクロスを基本として樹脂を含浸させた防煙垂壁において、帯電防止剤として界面活性剤を配合した防汚層を設けることにより、煤塵付着を抑制できる旨、記載されている。(【請求項1】、【0028】) (6) 甲6に記載された事項 甲6の段落【0066】【表1】に記載された実施例1~10は、ガラス繊維織物を用いた透明不燃性シートであり、ヘーズが2%、全光線透過率が90%以上であった旨、記載されている。 (7) 当審の判断 ア 本件特許発明2について (ア) 対比 本件特許発明2と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ガラス繊維」及び「ガラス繊維織物(南亜プラスチック社製、♯1067)は、本件特許発明2の「ガラス繊維」及び「ガラス繊維織物」にそれぞれ相当する。 甲1発明の「ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる紫外線硬化型エポキシ樹脂、または紫外線硬化型エポキシアクリレート樹脂組成物」は、織物に含浸され形状が層状であるといえるから、本件特許発明2の「硬化性樹脂組成物層」に相当する。 甲1発明の「透明不燃シートA」は、本件特許発明2の「不燃性シート」に相当する。 甲1発明の「無色のポリカーボネートシート(住友化学社製、テクノロイC000)」は、甲1の【0015】の、ポリカーボネートが「透明熱可塑性樹脂」の一種であって、ポリ塩化ビニル樹脂以外の樹脂であることを踏まえると、本件特許発明2の「前記硬化性樹脂組成物層、またはポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含む、フィルム層4」に相当する。 そうすると、本件特許発明2と甲1発明とは、以下の点で一致し、かつ、相違する。 <一致点> ガラス繊維織物と、前記ガラス繊維織物に含浸された状態で含まれる硬化性樹脂組成物層とを含む、不燃性シートであって、 前記不燃性シートの使用時に表面層となる層として、前記硬化性樹脂組成物層、又はポリ塩化ビニル樹脂以外の熱可塑性樹脂を含むフィルム層を含む、不燃性シート。 <相違点1> 本件特許発明2の不燃性シートは、以下のヒートサイクル試験前後において、表面抵抗率が1×1011Ω以下であるのに対し、甲1発明の「透明不燃シートA」の表面抵抗率が不明な点。 <ヒートサイクル試験条件> 前記不燃性シートを100mm×100mmの大きさに切り出してサンプルとし、該サンプルを、予め温度23℃、相対湿度50%RHに初期設定しておいた恒温恒湿器(エスペック株式会社製商品名PSL-2KPH)に入れて、以下(1)~(5)を1サイクルとし、計10サイクルおこなう。 (1)温度23℃、相対湿度50RHから、温度60℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を14分として、移行させる。 (2)上記温度60℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。 (3)上記温度60℃、相対湿度50%RHから、温度20℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を45分として、移行させる。 (4)上記温度20℃、相対湿度50%RHで、8時間保持する。 (5)上記温度20℃、相対湿度50%RHから、温度23℃、相対湿度50%RHまで、移行時間を1分として、移行させる。 (イ) <相違点1>についての判断 「不燃性シート」において、上記<ヒートサイクル試験>前後における表面の表面抵抗率に着目し、その値を1×1011Ω以下とすることは、甲1~6には記載されていないし、示唆する記載もない。 そうすると、甲1発明において、<相違点1>に係る本件発明2の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に成し得たものであるとはいえない。 申立人は、特許異議申立書において、甲1発明の「第一の透明熱可塑性樹脂シート層1」および「第二の透明熱可塑性樹脂層4」を、甲2~4のポリチオフェン系導電性ポリマーを用いた導電性塗膜を塗布して得られる層とすることで容易に想到し得る旨主張するが、甲1発明の「第一の透明熱可塑性樹脂シート層1」および「第二の透明熱可塑性樹脂層4」を甲2~4に記載のポリチオフェン系導電性ポリマーを用いた導電性塗膜を塗布して得られる層とすることの動機がない。さらにいえば、甲2~4に記載のポリチオフェン系導電性ポリマーを用いた導電性塗膜を塗布して得られる層が、相違点1におけるヒートサイクル試験前後でその表面抵抗率が1×1011Ω以下となる蓋然性が高いことを裏付ける証拠が示されていない(ヒートサイクル試験の前後においてどの程度表面抵抗率が変化するのを示す証拠は提示されていないし、具体的な実験結果等も提示されていない。)。 よって、申立人の主張は採用できない。 (ウ) 本件特許発明2についての小括 上記(イ)に記載したように、本件特許発明2は、甲1発明並びに、甲2~6に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたとはいえない。 (エ) 本件特許発明3~6について 本件特許発明3~6は、直接あるいは間接的に本件特許発明2を引用する発明である。そして、上記(ウ)に記載したように、本件特許発明2は、甲1発明並びに、甲2~6に記載した事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件特許発明2の発明特定事項を全て含み、さらに構成を付加し限定した発明である本件特許発明3~6についても、甲1発明並びに、甲2~6に記載した事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (オ) 申立理由1のまとめ 以上のとおりであるから、申立理由1には理由がない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項2~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項2~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700929

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