特許異議申立
2022-700927
毛髪を処置するためのキットおよび方法
- 審判番号
- 2022-700927
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-553559
- 登録番号
- 7041165
- 請求日
- 2022年09月22日
- 審決日
- 2022年12月23日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ロレアル
- 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
- 【異議申立人】大橋 宏基
- 【異議申立人】高橋 良和
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 野田 定文
- 審判官 木村 敏康
- 分類
- P1652.113-Y (A61K) / P1652.121-Y (A61K) / P1652.537-Y (A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7041165号発明「毛髪を処置するためのキットおよび方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7041165号の請求項16及び18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7041165号の請求項1~40に係る特許についての出願は、2018年3月30日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年3月31日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、令和4年3月14日にその特許権の設定登録がされ、同年同月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項16及び18に係る特許に対し、同年9月22日に特許異議申立人 大橋 宏基(ほか1名)(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
特許第7041165号の請求項16及び18の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項16及び18に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項16】
(A)
(a)少なくとも0.5から25重量%の少なくとも1種のアミノ酸もしくはアミノスルホン酸および/またはこれらの塩、
(b)500g/mоl未満の分子量を有する、少なくとも0.5重量%から25重量%の少なくとも1種の非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩、
(c)0.1から10重量%の、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤、ならびに
(d)水
を含むブースター組成物と、
(B)
(a)1から25重量%の、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤またはこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤、および
(b)水
を含むシャンプーであるヘアトリートメント組成物と、
(C)
(a)1から15重量%の1種以上のカチオン性界面活性剤、および
(b)水
を含むコンディショナーであるヘアトリートメント組成物と
を含むキットであって、
ブースター組成物、シャンプーおよびコンディショナーが別々に含まれている、キット。」
「【請求項18】
ブースター組成物、シャンプーおよびコンディショナーが、順次、別々に毛髪へ適用される、請求項16に記載のキット。」
(以下、請求項16及び18に係る発明を、それぞれ「本件発明16」及び「本件発明18」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)
第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証~甲第4号証を提出して、以下の申立ての理由1~4を主張している。
(1) 理由1(新規性)(特許異議申立書[5](1):42頁)
請求項16に係る発明は、本件出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2) 理由2(進歩性)(特許異議申立書[5](2):43頁(周知技術の甲号証については[4](2)(2-2)~(2-4):23~25頁))
請求項16及び18に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明、甲第1号証に記載された発明並びに甲第3及び4号証に記載された周知技術、又は、甲第1号証に記載された発明、甲2号証に記載された事項並びに甲第3及び4号証に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項16及び18に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(3) 理由3(サポート要件)(特許異議申立書[4](4):38~42頁)
請求項16及び18に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記(A1)~(A4)の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、請求項16及び18に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(4) 理由4(明確性要件)(特許異議申立書[4](5):42頁)
請求項16に係る発明は、特許請求の範囲の記載が下記(B)の点で、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないから、請求項16に係る特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
記
(A1) 特許異議申立書[4](4)(4-1)(ブースター組成物の記載)(ア)及び(ウ)
本件発明16では、3組成物を必須の構成要素と規定しているが、本件明細書には、2組成物の混合物についての試験のみが実施例4において記載されるだけで、別々に3組成物を適用する試験がされていない。
よって、3組成物を別々に適用する場合については、その効果の確認がなく、本件発明16の範囲まで拡張ないし一般化することはできないから、本件発明16は、サポート要件違反である。
(A2) 特許異議申立書[4](4)(4-1)(ブースター組成物の記載)(イ)
本件発明16のブースター組成物について、本件明細書には、タウリン3%、クエン酸3%及び水を含み、界面活性剤を含まない実施例1のみが記載され、タウリン以外の「アミノ酸もしくはアミノスルホン酸および/またはこれらの塩」、クエン酸以外の「非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩」又は「界面活性剤」を含むものについての試験がなく、タウリン3%以外の含有量についても試験がなく、それらの効果が確認されていない。
よって、ブースター組成物の成分(a)~(c)それぞれについて、本件発明16の範囲まで拡張ないし一般化することはできないから、本件発明16は、サポート要件違反である。
(A3) 特許異議申立書[4](4)(4-1)(シャンプーであるヘアートリートメント組成物の記載)
本件明細書に記載の実施例4では、そのシャンプー組成について記載がなく、本件発明16の(B)の「シャンプーであるヘアトリートメント組成物」に含まれる「1から25重量%の、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤またはこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤」について、効果が確認されていない。
よって、シャンプーにおける界面活性剤の含有量や種類について、効果が確認されていない実施例の内容を、本件発明16の範囲まで拡張ないし一般化することはできないから、本件発明16は、サポート要件違反である。
(A4) 特許異議申立書[4](4)(4-2)
本件発明18では、3組成物が特定の順序で別々に使用されるものであるが、この順序にしたがって別々に使用している試験例や、そのためのキットについて試験例は記載されていないし、本件明細書【0044】を含めてその順序の説明の記載はない。
よって、本件発明18は、極めて不明瞭であり、サポート要件違反である。
(B) 請求項16の「少なくとも0.5から25重量%」及び「少なくとも0.5重量%から25重量%」の記載について、「少なくとも」という修飾語が、それぞれ「0.5」及び「0.5重量%」の下限のみに係るのか、「0.5から25重量%」及び「0.5重量%から25重量%」における下限及び上限に係るのか不明であるところ、上限にも係る場合、その上限値を明確に把握することはできないから、請求項16の記載は不明瞭である。
甲第1号証:米国特許出願公開第2008/0118458号明細書
甲第2号証:特開2008-169183号公報
甲第3号証:特開平4-108725号公報
甲第4号証:特開2017-43565号公報
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。)
第4 甲号証の記載
1 甲1の記載(訳文にて示す。以下「・・・」は記載の省略を表す。)
(1a) 「発明の背景
[0004] (1)発明の属する技術分野
[0005] 本発明は、特に毛髪又は皮膚の組成物の処理のための組成物であって、L-カルニチン又はL-カルニチン誘導体から選択された少なくとも一つの化合物、及びエキナセア属の植物から得られる活性成分から形成される群から選択される少なくとも一つの物質を含み、そして、タウリン及びその誘導体を含むものに関する。」
(1b) 「[0016] さらに、驚くべきことに、本発明による組成物は、成長因子の放出を刺激したり、毛髪ケラチノサイトの増殖の刺激によって、毛髪を強化し太くしたりすることに適していることが見いだされた。」
(1c) 「[0019] L-カルニチン誘導体は、特に、アセチルL-カルニチン、L-カルニチンフマル酸、L-カルニチンクエン酸、ラウロイルL-カルニチン、特に好ましくは、L-カルニチン酒石酸から選択される。所定のL-カルニチン化合物は、例えば、Lonza GmbH (Wuppertal, Germany)から入手できる。」
(1d) 「[0039] 特に好ましいのは、フェンネル種子抽出物、L-カルニチン及び/又はL-カルニチン誘導体、好ましくはL-カルニチン酒石酸塩、並びにエキナセアの抽出物、好ましくはエキナセア・プルプレアの搾汁も含む本発明による組成物である。」
(1e) 「[0043] 本発明による組成物は、毛髪上に残留させるか、10秒から60時間の接触の後にすすぎ、洗い流すことが好ましい。このすすぎは、純水または一般的な市販のシャンプーで行うことができる。ほとんどの場合、1分から15分の接触時間で十分であることが分かっている。
[0044] 処理の正確な経過とは無関係に、本発明による組成物を20~55℃、特に35~40℃の温度で使用することが有利であることが分かっている。
[0045] 本発明による組成物に由来する特性が毛髪に適用される限り、原則として制限はない。
[0046] 本発明によるものとして特に興味深いのは、特にリーブオン製剤としてのヘアトニックである。これらは、好ましくは室温で使用される。アルコール含量は、好ましくは約30%~約35%の範囲である。pHは約7程度とすべきである。特にヘアトニックの場合、リポソームにカプセル化されたL-カルニチン又はL-カルニチン誘導体の使用が有利であることが分かっている。」
(1f) 「[0051] 本発明による組成物は、同様に、皮膚の処置に適している。本発明の文脈では、「皮膚」という用語は、特に、ヒトの皮膚及び粘膜を意味するものと理解される。
[0052] 本発明による組成物は、同様に、特に皮膚上の上皮細胞及び細胞層の肥厚、皮膚の強度の改善、表皮の強化、特に皮膚の老化現象による皮膚の非薄化の減少をもたらし、皮膚の経表皮水分損失の減少、皮膚の水分の改善、感染症、スモッグやタバコの煙などの外来因子、有害物質や刺激物質、特に界面活性剤や頻繁な水との接触によるストレスに対する皮膚の保護をもたらす。
[0053] 本発明による組成物からなる製剤の処方として好適なものは、例えば、クリーム、ローション、溶液、トニック、乳化液、例えば、W/O、O/W、PITエマルション(転相乳化手法によるエマルションで、PITと称される。)、マイクロエマルション及び多重エマルション、ゲル、スプレー、エアロゾル及び泡状エアロゾルがある。これらは一般に、水性または水性アルコールベースで配合される。
・・・
[0054] 組成物は、1室システム又は2室システムとして処方することができる。」
(1g) 「[0055] 本発明による必須とされる活性成分に加えて、その組成物は、原則として、そのような化粧品組成物として、当業者に知られている全てのさらなる成分を含むことができる。
・・・
[0061] さらなる有効成分、助剤、添加剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
・・・
[0095] さらに、本発明による組成物は、界面活性剤を含むことができる。これらは、アニオン性、両性、双性イオン性若しくは非イオン性界面活性剤、又はカチオン性界面活性剤のいずれであってもよい。
[0096] 本発明の好ましい実施形態では、アニオン性及ぴ非イオン性界面活性剤の組み合わせ、又はアニオン性及ぴ両性界面活性剤の組み合わせが、例えば、シャンプーにおいて使用される。しかしながら、ヘアトニックにおいて、当業者は、界面活性剤の使用を大部分または完全に省くこともできる。」
(1h) 「例1
ヘアリンス
[0136]
---------------------------------------------------------------
L-カルニチン 2.0
タウリン 1.0
エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.1
Eumulgin○R B21 0.3
セチル/ステアリルアルコール 3.3
ミリスチン酸イソプロピル 0.5
パラフィン油ペリクイドウム15 cSt. DAB9 0.3
Dehyquart ○R A-CA2 2.0
Gluadin WQ 0.2
Gluadin WLM 0.5
パントラクトン 0.5
サブチリシン又はパパイン 0.5
Phenonip○R3 0.8
水 加えて100に
---------------------------------------------------------------
(当審注:原文では、上記「○R」は○の中にR、以下同様)
pH=7.0
1 ・・・
2トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド(水中の有効成分約25%、INCI名:Aqua, Cetrimonium Chloraide)
3メチルヒドロキシベンゾエート/エチルヒドロキシベンゾエート/プロピルヒドロキシベンゾエート/ブチルヒドロキシベンゾエート/フェノキシエタノール混合物(有効成分約28%;INCI名:フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン)(NIPA)」
(1i) 「例4
ヘアトリートメント(リンスオフ)
[0139]
---------------------------------------------------------------
L-カルニチンフマル酸 4.0
N-モノメチルタウリン 1
エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.25
Dehyguart○R F757 4.0
セチル/ステアリルアルコール 4.0
パラフィン油ペリクイドウム15 cSt. DAB9 1.5
Dehyquart ○R A-CA 4.0
Salcare○R SC96 0.5
Gluadin WQ 1.0
Gluadin WLM 1.0
パントラクトン 0.5
サブチリシン又はパパイン 0.2
クエン酸 0.15
Phenonip○R3 0.8
水 加えて100に
---------------------------------------------------------------
pH=7.0
7脂肪アルコール/メチルトリエタノールアンモニウム硫酸ジアルキルエステル混合物(INCI名:Distearoylethyl Hydroxyethylmonium Methosulfate, Cetearyl Alcohol)(Cognis)」
(1j) 「例5
ヘアトリートメント(リンスオフ)
[0140]
---------------------------------------------------------------
L-カルニチンクエン酸 2.0
エキナセア・アングスティフォリアの抽出物 0.2
タウリン 1.5
Dehyguart○R L 80 4.0
セチル/ステアリルアルコール 6.0
パラフィン油ペリクイドウム15 cSt. DAB9 2.0
Rewoquat○R W 759 2.0
Sepigel○R 305 0.5
Gluadin WQ 0.2
Gluadin WLM 0.5
パントラクトン 0.5
サブチリシン又はパパイン 0.5
クエン酸 0.15
Phenonip○R3 0.8
水 加えて100に
---------------------------------------------------------------
pH=7.0
91-メチル-2-nor獣脂質アルキル-3-獣脂肪酸アミドエチルイミダゾリニウムメタ硫酸塩(プロピレングリコール中の有効成分約75%、INCI名:Quatemium-27、プロピレングリコール)(WITCO)」
(1k) 「例7
ヘアトリートメント(リーブイン)
[0142]
---------------------------------------------------------------
L-カルニチン酒石酸 3.0
タウリン 0.9
エキナセア・プルプレアエタノール抽出, 固体 0.2
Sepigel○R 305 5.0
Dow Cornig○R Q2-5220 5 cSt.13 1.5
Genamin○R DSAC14 0.3
Phenonip○R 0.8
Gluadin WQ 0.5
Gluadin WLM 0.8
サブチリシン又はパパイン 1.0
クエン酸 0.8
香油 0.25
水 加えて100に
---------------------------------------------------------------
pH=7.0
13シリコーン-グリコール共重合体(INCI名:Dimethicone Copolyol)(DOW CORNING)
14ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド(INCI名:Distearyldimonium Chloride)(CLARANT)」
(1l) 「例8
ヘアトリートメント
[0143]
---------------------------------------------------------------
L-カルニチン酒石酸 2.0
N,N-ジメチルタウリン 1.0
エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.2
セテアリルアルコール 5.00
プロピルパラベン 0.20
ステアラミドプロビルジメチルアミン 1.50
Dehyguart F 7515 1.50
パラフィナム液化石油ガス 1.00
Quatemium-87プロピレングリコール溶液 1.50
ミリスチン酸イソプロビル 2.00
Cutina GMS16 1.00
メチルパラベン 0.20
水 加えて100に
クエン酸 0.45
Dehyquart A-CA 5.00
Rheocare CTH(E) 0.50
ポリマーJR 400 0.20
パントラクトン 0.20
ニコチンアミド 0.10
フェノキシエタノール(高純度) 0.40
D-パンテノール75% 0.20
Dow Cornig 1403液体 1.50
香料 0.20
---------------------------------------------------------------
15Dehyguart F 75=ジステアロイルエチルヒドロキシエチルアンモニウムメトサルフェート」
(1m) 「例10
シャンプー
[0145]
---------------------------------------------------------------
L-カルニチンクエン酸 2.0
エキナセア・ペダ抽出物 0.2
N,N-ジメチルタウリン 1.3
ラウレス硫酸25%(アルカリ性希釈液) 25.0
クエン酸モノレギュラー 0.3
TIMIRON 0.5
安息香酸ナトリウム 0.5
パンテノール75 L 0.2
EUPERLAN PK 3000 8.0
PLANTACARE 818 UP 2.0
UVINUL MS40 1.0
サリチル酸 0.2
AJIDEW NL-50 2.0
CUTINA HR GROUND 0.5
CETIOL HE 1.0
クエン酸モノレギュラー 0.03
JAGUAR EXCEL 0.3
Gluadin WQ 0.2
Gluadin WLM 0.5
パントラクトン 0.5
サブチリシン又はパパイン 0.5
塩化ナトリウム 0.3
水 加えて100に
---------------------------------------------------------------」
(1n) 「例17
例1と同様のヘアリンス、2室システムとして
[0152]
---------------------------------------------------------------
第1室
エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.6
Eumulgin○R B21 0.3
セチル/ステアリルアルコール 3.3
ミリスチン酸イソプロピル 0.5
パラフィン油ペリクイドウム15 cSt. DAB9 0.3
Dehyquart ○R A-CA2 2.0
Gluadin WQ 0.2
Gluadin WLM 0.5
パントラクトン 0.5
Phenonip○R3 0.8
水 加えて100に
pH=4.0
第2室
L-カルニチン 2.0
タウリン 1.0
水 加えて100に
---------------------------------------------------------------」
(1o) 「例18
例7と類似のヘアートリートメント、ただし2つの適用ステップ
[0153]
---------------------------------------------------------------
L-カルニチン酒石酸と酵素による前処理
L-カルニチン酒石酸 3.0
サブチリシン又はパパイン 0.5
又はパパイヤ抽出物 1.0
水 加えて100に
後処理
Sepigel○R 305 5.0
Dow Cornig○R Q2-5220 5 cSt.13 1.5
Genamin○R DSAC14 0.3
Phenonip○R 0.8
Gluadin WQ 0.5
Gluadin WLM 0.8
パントラクトン 1.0
香油 0.25
タウリン 1
エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.5
水 加えて100に
---------------------------------------------------------------」
(1p) 「例19
ヘアトリートメント(リーブオン)
[0154]
---------------------------------------------------------------
モノオレイン酸グリセリル 0.50
メチルパラベン 0.30
乳酸80%強度 0.20
Dehyquart A-CA 4.00
Dehyguart L 80 5.00
パントラクトン 0.40
フェノキシエタノール(高純度) 0.50
D-パンテノール75% 0.20
Nutrilan Keratin W17 0.50
Dow Cornig 1403液体18 1.50
Gluadin WLM 0.50
香料 0.20
水 加えて100に
L-カルニチン酒石酸 2.0
タウリン 1.0
エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.05
---------------------------------------------------------------」
(2) 甲2の記載
(2a) 「【請求項1】
下記の(A)成分~(C)成分を含有することを特徴とする毛髪処理剤組成物。
(A)成分:デンプンリン酸(スターチホスフェート)類
(B)成分:カチオン性化合物
(C)成分:酸性又は中性アミノ酸類
【請求項2】
前記毛髪処理剤組成物が、更に以下の(D)成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の毛髪処理剤組成物。
(D)成分:有機酸及び有機アルカリからなるpH緩衝成分
【請求項3】
前記毛髪処理剤組成物が以下の(1)~(3)の1項目以上に該当することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の毛髪処理剤組成物。
(1)前記(A)成分の配合量が0.1質量%~3.0質量%の範囲内である。
(2)前記(B)成分の配合量が0.1質量%~5.0質量%の範囲内である。
(3)前記(C)成分の配合量が0.01質量%~3.0質量%の範囲内である。
【請求項4】
前記(A)成分が、少なくともヒドロキシプロピルデンプンリン酸が包含されるヒドロキシアルキルデンプンリン酸から選ばれる少なくとも1種のデンプンリン酸であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、以下の(4)及び(5)から選ばれる少なくとも1種のカチオン性化合物であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか記載の毛髪処理剤組成物。
(4)カチオン性界面活性剤及びカチオン性オリゴマー
(5)カチオン化糖誘導体
【請求項6】
前記(C)成分が、グリシン、アラニン、タウリン、L-テアニン、L-フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸から選ばれる少なくとも1種の酸性又は中性アミノ酸類であることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項7】
前記(D)成分における有機酸が、少なくともグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸及びコハク酸を包含するカルボン酸から選ばれる少なくとも1種の有機酸であることを特徴とする請求項2~請求項6のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
【請求項8】
前記毛髪処理剤組成物が以下(6)~(8)のいずれかの用途に用いられるものであることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物。
(6)パーマネントウエーブ処理の後処理剤。
(7)毛髪脱色処理又は酸化染毛処理の後処理剤。
(8)シャンプー剤、リンス剤又はスタイリング剤。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれかに記載の毛髪処理剤組成物をダメージ毛に適用することを特徴とする毛髪処理方法。」
(2b) 「【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪処理剤組成物及び毛髪処理方法に関する。更に詳しくは本発明は、デンプンリン酸(スターチホスフェート)を配合した毛髪処理剤におけるデンプンリン酸配合の本来の効果を確保したもとで、その問題点(とりわけダメージ毛への適用時の問題点)を良好に解決した毛髪処理剤組成物と、この毛髪処理剤組成物を用いて行う毛髪処理方法とに関する。」
(2c) 「【実施例】
【0018】
以下に、本発明の実施例を比較例と共に説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例及び比較例によって限定されない。
〔第1実施例:ダメージ毛を対象とする実施例及び比較例〕
末尾の表1に示す実施例1~実施例15、表2に示す比較例1~比較例11、表3に示す実施例16~実施例28、表4に示す実施例29~実施例36に係る組成の毛髪処理剤(ヘアトリートメント)を常法に従って調製した。これらの毛髪処理剤の剤型はクリーム状であり、pHはいずれも3.0~8.0の範囲内である。
【0019】
各表の「成分」の欄において「A」、「B」、「C」と表記した成分はそれぞれ本発明の(A)成分、(B)成分、(C)成分であることを示し、「A比」、「B比」と表記した成分はそれぞれ(A)成分、(B)成分ではないが、これらの成分に対する比較用の成分であることを示す。又、「Dac」と表記した成分は(D)成分の内の有機酸成分であることを、「Dal」と表記した成分は(D)成分の内の有機アルカリ成分であることを、それぞれ示す。各表において、それぞれの成分量を数値で表記しているが、これらの数値は全て「質量%」単位である。
・・・
【0021】
次に、脱色(ブリーチ)処理を3回繰り返した、長さ20cmのヒト直毛の毛束を所要の本数だけ準備した。なお、後述の「毛髪の根元の軽さ」の評価においては、同様の脱色処理を3回繰り返したモデルウィッグの毛髪を準備した。第1実施例において、以下、これらを「毛髪試料」と言う。これらの毛髪試料をシャンプー処理した後、それぞれ50g入り軟膏容器に充填しておいた上記各実施例及び比較例に係るヘアトリートメントを、これらの毛髪試料に対してそれぞれ均一に塗布した。そして各例に係るヘアトリートメントについて、容器からすくい取る際の取り易さ、塗布時のなじみ易さ、塗布時の伸びの良さ、毛髪試料の仕上がり感、毛髪矯正効果、効果の持続性等を評価するため、以下の評価項目を以下の評価方法によって評価した。
・・・
【0023】
10名のパネラーの採点結果について各実施例及び比較例ごとに平均点を算出し、平均点が3.6以上である場合を◎(優れている)、平均点が2.6~3.5である場合を○(良好)、平均点が1.6~2.5である場合を△(やや悪い)、平均点が1.5以下である場合を×(悪い)とした。その結果を各表の「評価」欄における「クリームのコク」の項に表記した。
・・・
【0025】
10名のパネラーの採点結果について各実施例及び比較例ごとに平均点を算出し、平均点が3.6以上である場合を◎(優れている)、平均点が2.6~3.5である場合を○(良好)、平均点が1.6~2.5である場合を△(やや悪い)、平均点が1.5以下である場合を×(悪い)とした。その結果を各表の「評価」欄における「毛髪の柔らかさ」の項に表記した。
・・・
【0027】
10名のパネラーの採点結果について各実施例及び比較例ごとに平均点を算出し、平均点が3.6以上である場合を◎(優れている)、平均点が2.6~3.5である場合を○(良好)、平均点が1.6~2.5である場合を△(やや悪い)、平均点が1.5以下である場合を×(悪い)とした。その結果を各表の「評価」欄における「弾力」の項に表記した。
・・・
【0029】
10名のパネラーの採点結果について各実施例及び比較例ごとに平均点を算出し、平均点が3.6以上である場合を◎(優れている)、平均点が2.6~3.5である場合を○(良好)、平均点が1.6~2.5である場合を△(やや悪い)、平均点が1.5以下である場合を×(悪い)とした。その結果を各表の「評価」欄における「毛髪の根元の軽さ」の項に表記した。
【0030】
(評価結果)
表1、表3及び表4に示す評価結果から分かるように、実施例1~実施例36はいずれの評価項目においても非常に高い評価結果であった。
又、表2に示す評価結果から分かるように、実質的に本発明の実施例である比較例2、3、5、6、9、10は、必須成分のいずれかの配合量が過少あるいは過剰であるため、必須成分のいずれかの配合を欠く比較例1、4、7、8、11との比較では全体として高い評価結果であるものの、表1、表3及び表4に示す各実施例との比較では相対的に低い評価に止まっている。
更に、表2に示す評価結果の全体から、以下の諸点を指摘することができる。
1)(A)成分の配合量が過少であると、クリームのコク、仕上がり後の毛髪の必要な弾力性を確保できず、過剰であると、クリームのコクは多少得られるが、適切な弾力性とならずに毛髪の柔らかさが失われる。(A)成分を配合しない場合や、(A)成分に代えて「A比」成分を配合した場合は、仕上がり後の毛髪の弾力は得られない。
【0031】
2)(B)成分の配合量が過少であると、クリームのコク、仕上がり後の毛髪の弾力性がいずれも得られず、過剰であると、クリームが水っぽくなってコクが感じられず適切な弾力性も得られない。(B)成分に代えて「B比」成分を配合した場合も、(B)成分の配合量が過少である場合と同等の結果である。
3)(C)成分の配合量が過少であると、クリームのコクは多少得られるが、仕上がり後の毛髪の弾力性が全く得られず、過剰であると、適切な弾力性とならずに毛髪の柔らかさが失われ、クリームのコクも得られない。(C)成分を配合しない場合は、クリームのコク、仕上がり後の毛髪の弾力は、いずれも得られない。
・・・
【表1】
[図:0001393135000001.jpg]
」
(3) 甲3の記載
(3a) 「[産業上の利用分野]
本発明は、毛髪化粧料に関し、更に詳細には、のびが良く、平滑性に優れ、低刺激性で、乳化安定性の良いヘアリンス、ヘアコンディショナー、へアトリートメント等のアフターシャンプー用の毛髪化粧料に関する。
[従来の技術及び発明が解決しようとする課題]
従来、毛髪に柔軟性、平滑性等を付与する目的で、洗髪後、陽イオン性界面活性剤を含有するりンス、トリートメント等の毛髪化粧料か使われている。これらを用いた毛髪処理方法としては、シャンプー後、これらを毛髪に直接塗布した後洗い流す方法が一般的である。」(1頁左下欄12行~右上欄4行)
(3b) 「[実施例]
・・・
(試験方法)
(1)官能評価
今までにコールドパーマ、ブリーチ等の美容処理を行ったことのない日本人女性の毛髪20g(長さ15cm)を束ね、この毛髪束に2gのヘアリンス剤組成物を塗布し、次いで30秒流水ですすぎ洗いし、タオルドライを行った後ドライヤーで乾燥した。この毛髪束についてその柔軟性及び平滑性を官能評価し、特に優れている場合は◎、良好の場合は○、普通の場合は△、劣るものは×とした。
(2)くし通り力
上記(1)のようにしてヘアリンス剤組成物を塗布した毛髪束を、そのまま(約0.7g/g毛髪 の水分を含む)、あるいはドライヤー乾燥した後、ストレンゲージでくし通り荷重を測定した。測定は温度20℃、相対湿度65%の恒温室で20回繰り返し、その平均値(g)をくし通り力とした。」(3頁右下欄下から5行~4頁右上欄4行)
(4) 甲4の記載
(4a) 「【0004】
一方、従来から、シャンプー後の毛髪の感触を向上させるために、リンス、コンディショナー、トリートメントなどの毛髪処理剤が使用されている。」
(4b) 「【実施例】
【0133】
(実施例1、2および比較例1~7)
表1に示す組成のシャンプーおよび表2および表3に示す組成のヘアコンディショナーを調製し、以下の方法および基準に従って、その評価をおこなった。
・・・
【0143】
(毛髪トレスの前処理)
ビューラックス社製の中国人毛1gのトレスを用い、1条件につきこのトレスを3本用いて以下の手順で健常毛およびダメージ毛を準備した。
・健常毛:トレスをクロロホルムに浸漬して10分間の超音波処理(エスエヌディ社製 超音波洗浄器US-2)を2回行った後、後述する標準シャンプーで2回洗浄することで、表面の吸着物を除去した。
・ダメージ毛:ブリーチ処理(プリティアハイブリーチ、花王社製を用いて浴比1/1、/40分放置後、すすぐ処理)を2回行った後に、クロロホルムに浸漬して10分間の超音波処理を2回行い、さらに後述する標準シャンプーで2回洗浄することで、表面の吸着物を除去した。
【0144】
(処理方法)
上述した前処理を行った1gのトレスを、表4に記載の各シャンプーサンプルの20倍希釈溶液に30秒間浸漬した。
そして、500mLビーカーに水道水を500mLはり、その中でトレスを10秒間振とう(5cm幅、2往復/秒)してシャンプーを洗い流した。
シャンプーを洗い流したトレスを、引き続き各コンディショナーサンプルの10倍希釈溶液に浸漬して30秒間浸漬した。
そして、500mLビーカーに水道水を500mLはり、その中でトレスを10秒間振とう(5cm幅、2往復/秒)し、コンディショナーを洗い流した。
以上の処理を行ったトレスを自然乾燥で完全に乾燥させた。
・・・
【0150】
(官能評価)
毛髪の「コンディショナーすすぎ時のなめらかさ」「乾燥仕上げ後のなめらかさ」「根元など健常部のベタツキのなさ」「毛先などダメージ部のしっとり感」を評価した。
評価は、ヘアカラー、パーマなどの化学処理を施しているものの、最後に化学処理を行ってから3ヵ月以上経っており、毛髪の根元と毛先のダメージレベルにギャップがあり、髪の長さが肩よりも長い日本人女性5人の専門パネラーにておこない、自分の頭髪に使用して評価をおこなった時の5人の評価の合計値を算出した。
なお、前処理として専門パネラーは前述した標準シャンプーで頭髪を洗ってスタイリング剤等の汚れや、前に評価した実施例・比較例による吸着物を除去してから、各実施例または比較例のシャンプーおよびコンディショナーで普段通りに毛髪を処理し、各項目について評価をおこなった。これを繰り返し、各実施例と比較例計9種類のシャンプーおよびコンディショナーの評価をおこなった。」
第5 特許異議申立理由についての当審合議体の判断
1 特許異議申立の理由1(新規性)及び2(進歩性)について
(1) 甲1に記載された発明について
ア 摘記(1k)及び(1o)によると、例18には、例7(へートリートメント(リーブイン))と類似のヘアートリートメントであり、2つの適用ステップで用いる組成物に関し、
「L-カルニチン酒石酸と酵素による前処理」の組成物として、「L-カルニチン酒石酸3.0部、サブチリシン又はパパイン0.5部、又はパパイヤ抽出物1.0部と、水を加えて100部」、
「後処理」の組成物として、「Sepigel○R 305 5.0部、Dow Cornig○R Q2-5220 5 cSt.1.5部、Genamin○R DSAC0.3部、Phenonip○R 0.8部、Gluadin WQ 0.5部、Gluadin WLM 0.8部、パントラクトン1.0部、香油0.25部、タウリン1部及びエキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.5部と、水を加えて100部」
が記載されているから、水の含有量(残部)を計算すると、甲1には以下の発明が記載されている。
「2ステップのリーブインのヘアートリートメント組成物において、前処理組成物として、L-カルニチン酒石酸3.0部、サブチリシン又はパパイン0.5部、パパイヤ抽出物1.0部、及び、水95.5部を含有し、後処理組成物として、Sepigel○R 305 5.0部、Dow Cornig○R Q2-5220 5 cSt.1.5部、Genamin○R DSAC0.3部、Phenonip○R 0.8部、Gluadin WQ 0.5部、Gluadin WLM 0.8部、パントラクトン1.0部、香油0.25部、タウリン1部、エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.5部、及び水88.35部を含有する組成物。」(以下「甲1A発明」という。)
イ 摘記(1i)の例4には、へートリートメント(リンスオフ)の組成物に関し、
「L-カルニチンフマル酸4.0部、N-モノメチルタウリン1部、エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.25部、Dehyguart○R F75 4.0部、セチル/ステアリルアルコール4.0部、パラフィン油ペリクイドウム15 cSt. DAB9 1.5部、Dehyquart ○R A-CA 4.0部、Salcare○R SC96 0.5部、Gluadin WQ 1.0部、Gluadin WLM 1.0部、パントラクトン0.5部、サブチリシン又はパパイン0.2部、クエン酸0.15部、及びPhenonip○R 0.8部と、残部水で100部」
が記載されているから、水の含有量を計算すると、甲1には以下の発明が記載されている。
「L-カルニチンフマル酸4.0部、N-モノメチルタウリン1部、エキナセア・プルプレア搾汁(Flachsmann) 0.25部、Dehyguart○R F75 4.0部、セチル/ステアリルアルコール4.0部、パラフィン油ペリクイドウム15 cSt. DAB9 1.5部、Dehyquart ○R A-CA 4.0部、Salcare○R SC96 0.5部、Gluadin WQ 1.0部、Gluadin WLM 1.0部、パントラクトン0.5部、サブチリシン又はパパイン0.2部、クエン酸0.15部、Phenonip○R 0.8部、及び水77.1部を含有するリンスオフのヘアートリートメント組成物。」(以下「甲1B発明」という。)
(2) 対比・判断
ア 本件発明16について
(ア) 本件発明16と甲1A発明とを対比する。
甲1A発明の「前処理組成物」と「後処理組成物」は、2つの組成物を毛髪に適用することでリーブインのトリートメント効果を発揮するものであるから、キットとして組み合わせて用いるものである。そして、甲1A発明の「後処理組成物」は、「Genamin○R DSAC」を含有し、摘記(1k)によると、当該化合物は、「ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド」であるから、長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩の「カチオン性界面活性剤」に相当する。そして、甲1A発明のカチオン性界面活性剤は、「後処理組成物」において、0.3重量%含有するものである。(なお、その他の成分がカチオン性界面活性剤ではないことは、摘記(1i)~(1k)の注釈などを参照すれば明らかである。)
通常、ヘアートリートメントのコンディショナーはカチオン性界面活性剤を含有することを考慮すると、甲1A発明の「後処理組成物」は、本件発明16の「コンディショナーであるヘアートリートメント組成物」に相当する。
次に、本件特許明細書【0007】には、「ブースター組成物と併せて使用されるヘアトリートメント組成物は、毛髪を処置するための多種類の組成物に関連する。例えば、ヘアトリートメント組成物には、シャンプー、コンディショナー、ヘアジェル、ヘアスプレー、ヘアリンス、ヘアローション、リンスアウトヘアマスクなどが挙げられる。」と記載され、「ブースター」自体が「増強・補強」という意味を有しているから、「ブースター組成物」は、他の「ヘアートリートメント組成物」と併用するためのものであって、その効果を増強又は補強するものと認められる。
よって、甲1A発明の「前処理組成物」は、「後処理組成物」と併用して、リーブインのトリートメント効果を発揮するものであって、「後処理組成物」に対する増強又は補強効果を付与するものといえるから、本件発明16の「ブースター組成物」に相当する。
また、甲1A発明の「L-カルニチン酒石酸」は、「アミノ酸もしくはアミノスルホン酸」である「L-カルニチン」と「非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸」である「酒石酸」の塩であり、「前処理組成物」において、3.0重量%含有するものである。
そうすると、本件発明16と甲1A発明とは、
「(A)(d)水を含むブースター組成物と、(C)(a)1種以上のカチオン性界面活性剤、および(b)水を含むコンディショナーであるヘアトリートメント組成物とを含むキットであって、ブースター組成物およびコンディショナーが別々に含まれている、キット。」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明16は、ブースター組成物に、(a)少なくとも0.5から25重量%の少なくとも1種のアミノ酸もしくはアミノスルホン酸および/またはこれらの塩、および(b)500g/mоl未満の分子量を有する、少なくとも0.5重量%から25重量%の少なくとも1種の非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩を含有しているのに対して、甲1A発明は、ブースター組成物に、3.0重量%の「アミノ酸もしくはアミノスルホン酸」である「L-カルニチン」と「非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸」である「酒石酸」の塩を含有している点
相違点2:本件発明16は、ブースター組成物に、(c)0.1から10重量%の、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤を含有させているのに対して、甲1A発明は、ブースター組成物に界面活性剤を含有させていない点
相違点3:本件発明16は、コンディショナーであるヘアトリートメント組成物における1種以上のカチオン性界面活性剤の含有量が1から15重量%であるのに対して、甲1A発明は当該含有量が0.3重量%である点
相違点4:本件発明16は、(B)(a)1から25重量%の、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤またはこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤、および(b)水を含むシャンプーであるヘアトリートメント組成物を、キットに別に含んでいるのに対して、甲1A発明はシャンプーであるヘアートリートメントをキットに含んでいない点
まず、相違点2について検討すると、甲1A発明のブースター組成物が界面活性剤を含有しないことは明らかであるから、相違点2は実質的な相違点であり、相違点1、3及び4について検討するまでもなく、本件発明16は甲1A発明ではない。
相違点2に関し、甲1A発明の前処理組成物(ブースター組成物)に界面活性剤を含有させることは、当業者が容易に想到することであるかについて、更に検討する。
甲1は、毛髪又は被覆の処理のための組成物に関するものであり(摘記(1a)及び(1f))、毛髪の組成物については、「特にリーブオン製剤としてのヘアトニック」であることが記載され(摘記(1e))、「組成物は、1室システム又は2室システムとして処方することができる」と記載されている((1f))。
そうすると、甲1の一般記載における「組成物」は、毛髪だけでなく、皮膚に対する処理も対象としており、毛髪の場合、1室又は2室を含む種々の方式の組成物を対象としているものと解される。
一方、摘記(1g)には、一般記載として、「さらに、本発明による組成物は、界面活性剤を含むことができる。これらは、アニオン性、両性、双性イオン性若しくは非イオン性界面活性剤、又はカチオン性界面活性剤のいずれであってもよい。」と記載されているものの、当該界面活性剤の添加対象は、甲1に記載の多様な方式の組成物一般であり、特に「前処理」の組成物に対して界面活性剤を添加するとの記載ではない。また、甲1には、「前処理」、「後処理」などの2種の組成物を処方する場合についての一般的な説明の記載はなく、併用してある種の機能を発揮すると認められる具体的な例は、例17と例18のみである(摘記(1n)及び(1o))。しかしながら、例17の2種の組成物では水のみが共通する材料であり、例18の2種の組成物についても水のみが共通する材料であって、水以外の同じ材料(例えば、界面活性剤)を、重複して2種の組成物それぞれに添加するものではない。
さらに、摘記(1g)によると、「ヘアトニックにおいて、当業者は、界面活性剤の使用を大部分または完全に省くこともできる」と記載されていることから、リーブオン製剤の1種であるリーブイン製剤の「ヘアトニック」については、界面活性剤の使用を抑制することが好ましいものと理解され、ヘアトニックであるリーブインのヘアートリートメントに対して界面活性剤を添加することには、積極的な動機付け自体があるとはいえない。
また、甲2~4には、リーブインのヘアートリートメント組成物の2室システムに関し、2種の組成物それぞれに界面活性剤を添加することの記載も示唆もなく(摘記(2a)~(2c)、(3a)及び(3b)並びに(4a)及び(4b))、そのような周知技術も認められない。
そうすると、甲1A発明の「後処理組成物」は、既にカチオン性界面活性剤を0.3重量%含有しているから、甲1A発明の「前処理組成物」にも界面活性剤を添加するという動機付けがあるとは認められない。
したがって、甲1A発明において、相違点2に係る本件発明16の特定事項を採用することは、甲1及び2の記載事項並びに甲3及び4に記載の周知技術を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。
よって、本件発明16は、相違点1、3及び4について検討するまでもなく、甲1A発明、甲1及び2に記載された事項並びに甲3及び4に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることをできたものではない。
(イ) 本件発明16と甲1B発明とを対比する。
甲1B発明の「リンスオフのヘアートリートメント組成物」は、毛髪に適用後に洗い流すタイプのヘアートリートメント組成物であって、毛髪の状態を整えるものであるから、「コンディショナーであるヘアトリートメント組成物」に相当する。そして、甲1B発明は「Dehyquart ○R A-CA」を含有し、摘記(1h)によると、当該化合物は、「トリメチルヘキサデシルアンモニウムクロリド」であるから、長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩の「カチオン性界面活性剤」に相当し、その含有量は4重量%であって、1から15重量%の含有量に含まれるものである。(なお、その他の成分がカチオン性界面活性剤ではないことは、摘記(1h)及び(1i)の注釈などを参照すれば明らかである。)
そうすると、本件発明16と甲1B発明とは、
「(C)(a)1から15重量%の1種以上のカチオン性界面活性剤、および(b)水を含むコンディショナーであるヘアトリートメント組成物。」に関するものである点で一致し、以下の点で相違する。
相違点5:本件発明16は、(A)(a)少なくとも0.5から25重量%の少なくとも1種のアミノ酸もしくはアミノスルホン酸および/またはこれらの塩、(b)500g/mоl未満の分子量を有する、少なくとも0.5重量%から25重量%の少なくとも1種の非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩、(c)0.1から10重量%の、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤、ならびに(d)水を含むブースター組成物と、(B)(a)1から25重量%の、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤またはこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤、および(b)水を含むシャンプーであるヘアトリートメント組成物も別々に含んでいるキットであるのに対して、甲1B発明はそのような特定がない点
相違点5について検討すると、甲1B発明は、ブースター組成物、シャンプーおよびコンディショナーが別々に含まれているキットではないから、相違点5は実質的な相違点であり、ブースター組成物及びシャンプーの材料組成を検討するまでもなく、本件発明16は甲1B発明ではない。
相違点5について、更に検討する。
甲1B発明は、リンスオフのトリートメントに関する発明であるところ、摘記(1f)、(1n)及び(1o)には、リンスオフ形態のリンス効果の発揮のために、併用する別の組成物、すなわち対応するブースター組成物についての具体的な記載はない。また、甲2には、シャンプーとともにヘアートリートメントを用いること(摘記(2a)~(2c))、甲3には、シャンプーとともにヘアリンス剤組成物を用いること(摘記(3a)及び(3b))、甲4には、シャンプーとともにヘアコンディショナーを用いること(摘記(4a)及び(4b))が記載されているものの、リンスオフ形態のヘアートリートメント組成物の2室システムの組成物に関する記載も示唆はなく、そのような周知技術も認められない。
そうすると、甲1B発明において、ブースター組成物を、リンスオフの「コンディショナーである組成物」とともに用いるキットとして別々に含むことの動機付けがあるとは認められない。
したがって、甲1B発明において、ブースター組成物を、リンスオフの「コンディショナーである組成物」とともに用いるキットとして別々に含むことは、甲1及び2の記載事項並びに甲3及び4に記載の周知技術を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。
したがって、甲1B発明において、ブースター組成物をキットに採用することは、甲1及び2の記載事項並びに甲3及び4に記載の周知技術を考慮しても、当業者が容易に想到することではない。
よって、本件発明16は、ブースター組成物及びシャンプーの材料組成を検討するまでもなく、甲1B発明、甲1及び2に記載された事項並びに甲3及び4に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることをできたものではない。
(ウ) まとめ
本件発明16は、上記(ア)及び(イ)において述べたとおり、甲1A発明及び甲1B発明ではないから、甲1に記載された発明ではない。
また、本件発明16は、甲1A発明又は甲1B発明、甲1及び2の記載事項並びに甲3及び4に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることをできたものではない。
(エ) 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、
a 甲1には、例18の前処理剤及び例17の第2室に「界面活性剤」を含ませることが記載されている旨、及び
b 甲1には、例4、例19及び例10を一揃えに組み合わせたものが記載されていること、
c 例4、例8及び例19は、ブースター組成物であり、かつ、コンディショナーである旨
を主張している。
まず、上記aについて検討すると、甲1に記載の例18の前処理剤や例17の第2室は、界面活性剤を含有しておらず(摘記(1n)及び(1o))、上記(ア)において述べたとおり、当該事項は、甲1及び周知技術から当業者が容易に想到するものでもないから、申立人のaの主張は採用できない。
つぎに、上記bについて検討すると、甲1には、例4を、例19及び例10と併用してキットとすることについての記載はなく、さらに、例4のリンスオフのトリートメントとともに、例10のシャンプーだけでなく、例19のリーブオンのトリートメントを併用してキットとすることの動機付けの記載はなく、上記(イ)において述べたとおり、当該事項は周知技術でもないから、例4、例19及び例10を一揃えに組み合わせたキットとすることは、甲1及び2の記載事項並びに甲3及び4に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をするものではなく、申立人のbの主張は採用できない。
最後に、上記cについて検討すると、例4、例8及び例19は、それぞれ、「ヘアトリートメント(リンスオフ)」、「ヘアトリートメント」及び「ヘアトリートメント(リーブオン)」であって、他のトリートメント組成物と併用して、その効果を増強又は補強するものではないことから、ブースター組成物ではなく、申立人のcの主張は採用できない。
イ 本件発明18について
本件発明18は、請求項16の記載を直接的に引用するものであって、本件発明16を更に限定するものである。
そうすると、上記アで述べたとおり、本件発明16が甲1に記載された発明及び甲1~4の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、本件発明18も、甲1に記載された発明及び甲1~4の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 小括
よって、申立人が主張する理由1及び2によっては、本件発明16及び18に係る特許を取り消すことはできない。
2 特許異議申立の理由3(サポート要件)について
(1) サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) 特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲には、上記第2に示したとおり、請求項16及び18の記載がある。
(3) 本件特許明細書の記載
(A) 「【技術分野】
【0001】
本開示は、毛髪を損傷から修復し、強化し、保護するために有用な、毛髪を処置するためのキットおよび方法に関する。キットおよび方法は、ブースター組成物の使用を伴う。ブースター組成物は、毛髪繊維を再構築し、結果として滑らかさ、艶、櫛通り、強度および弾力性などの特性が改善された毛髪をもたらす成分を含む。」
(B) 「【0010】
ブースター組成物およびヘアトリートメント組成物は、追加の成分を含んでもよく、その成分は、該成分が取り入れられるヘアトリートメント組成物の種類によってさまざまであり得る。追加の成分の非限定的な例としては、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性(両性イオン性)、およびこれらの混合物);脂肪族化合物;シリコーン;カチオン性ポリマーなどのポリマー;増粘剤;防腐剤;水溶性溶媒などが挙げられる。」
(C) 「【0015】
アミノ酸は、カルボン酸基(-COOH)およびアミノ基(-NH2)の両方を含有する単純な有機化合物である。アミノスルホン酸は、スルホン酸基(-SO2OH)およびアミノ基(-NH2)の両方を含有する単純な有機化合物である。これに応じて、アミノ酸および/またはアミノスルホン酸は、式(I)の化合物および式(II)の化合物から選択することができる。
[図:0001393135000002.jpg]
式中、Rは、水素原子、直鎖状または分枝状、好ましくは直鎖状のC1~C5アルキル基を表し、前記アルキル基は、ヒドロキシル、-C(O)-OH、-S(O)2-OH、-C(O)-O-およびM+、ならびにS(O)2-O-およびM+(式中、M+は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはアンモニウムなどのカチオン性対イオンを表す)から選択される少なくとも1つの基で置換されていてもよく、nは0または1である。これらを含有するヘアトリートメント組成物中、アミノ酸および/またはアミノスルホン酸は、非イオン化型(I)および(II)またはイオン化形もしくはベタイン型(I’)および(II’)であってもよい。
[図:0001393135000003.jpg]
(式中、「R」および「n」は、上記の通りである)。アミノ酸および/またはアミノスルホン酸はまた、コンジュゲート塩基型(Ib)および(IIb)であってもよい。
[図:0001393135000004.jpg]
(式中、「R」および「n」は、上記の通りである)。
【0016】
周知のアミノ酸には、生存生物のタンパク質を形成する20個のアミノ酸(標準のタンパク質を構成するアミノ酸):アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが挙げられる。しかし、本開示のアミノ酸は、標準のタンパク質を構成するアミノ酸に限定されない。
【0017】
アミノスルホン酸の非限定的な例としては、アミノメタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸(タウリン)、アミノプロパンスルホン酸、アミノブタンスルホン酸、アミノヘキサンスルホン酸、アミノイソプロピルスルホン酸、アミノドデシルスルホン酸、アミノベンゼンスルホン酸、アミノトルエンスルホン酸、スルファニル酸、クロロスルファニル酸、ジアミノベンゼンスルホン酸、アミノフェノールスルホン酸、アミノプロピルベンゼンスルホン酸、およびアミノヘキシルベンゼンスルホン酸が挙げられる。
【0018】
いくつかの場合では、荷電アミノ酸を使用してもよい。荷電アミノ酸の非限定的な例としては、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸が挙げられる。いくつかの場合では、極性アミノ酸が有用である。極性アミノ酸の非限定的な例としては、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、メチオニン、およびトリプトファンが挙げられる。
【0019】
いくつかの場合では、疎水性アミノ酸を用いてもよい。疎水性アミノ酸の非限定的な例としては、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、およびグリシンが挙げられる。
【0020】
いくつかの場合では、ブースター組成物は、グリシン、アラニン、セリン、β-アラニン、タウリン、グリシン酸ナトリウム、アラニンナトリウム、セリンナトリウム、リチウムβ-アラニン、タウリンナトリウム、これらの塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のアミノ酸および/もしくはアミノスルホン酸ならびに/またはこれらの塩を含む。
【0021】
いくつかの場合では、ブースター組成物は、1種以上のアミノ酸および/またはその塩、1種以上のスルホン酸および/またはその塩、またはアミノ酸とスルホン酸の両方の混合物および/またはその塩、例えば、アスパラギン酸、システイン、グリシン、リジン、メチオニン、プロリン、チロシン、フェニルアラニン、カルニチン、タウリン、ベタイン、これらの塩、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のアミノ酸および/またはアミノスルホン酸を含む。
【0022】
いくつかの例では、ブースター組成物は、タウリン(2-アミノエタンスルホン酸)および/またはその塩、を含む。
【0023】
1種以上のアミノ酸および/もしくはアミノスルホン酸ならびに/またはこれらの塩の総量は、ブースター組成物の総重量に基づいて少なくとも0.5重量%である。例えば、少なくとも1種のアミノ酸もしくはアミノスルホン酸および/またはこれらの塩の総量は、少なくとも0.5重量%から約50重量%、少なくとも0.5重量%から約40重量%、少なくとも0.5重量%から約30重量%、少なくとも0.5重量%から約20重量%、少なくとも0.5重量%から約10重量%、少なくとも0.5重量%から約5重量%、約1重量%から約50重量%、約1重量%から約40重量%、約1重量%から約30重量%、約1重量%から約20重量%、約1重量%から約10重量%、または約1重量%から約5重量%であってもよい。いくつかの場合では、少なくとも1種のアミノ酸またはアミノスルホン酸の総量は、約2から約10重量%、約2から約8重量%、約2から6重量%、または約2から5重量%である。
【0024】
ブースター組成物は、典型的には、少なくとも1種の非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩も含む。非高分子モノ、ジまたはトリカルボン酸は、1つ(モノ)、2つ(ジ)または3つ(トリ)のカルボン酸基(-COOH)を有する有機化合物である。非高分子モノ、ジおよびトリカルボン酸ならびにこれらの塩は、典型的には、約500g/mol未満、約400g/mol未満、または約300g/mol未満の分子量を有する。
【0025】
非高分子モノ、ジおよびトリカルボン酸ならびにこれらの塩の非限定的な例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、グルタル酸、シトラコン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸、これらの塩、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
ブースター組成物は、1種以上のモノカルボン酸および/またはその塩を含んでもよい。モノカルボン酸および/またはそれらの塩の非限定的な例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、乳酸、これらの塩、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
ブースター組成物は、1種以上のジカルボン酸および/またはその塩を含んでもよい。ジカルボン酸および/またはその塩の非限定的な例としては、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、グルタル酸、シトラコン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの混合物が挙げられる。いくつかの例では、ヘアトリートメント組成物は、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、シュウ酸、これらの塩、およびこれらの混合物を含む。
【0028】
ブースター組成物は、1種以上のトリカルボン酸および/またはその塩を含んでもよい。トリカルボン酸および/またはこれらの塩の非限定的な例としては、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、ベンゼン-1,3,5
-トリカルボン酸、これらの塩、およびこれらの混合物が挙げられる。いくつかの例では、ヘアトリートメント組成物は、少なくともクエン酸および/またはその塩を含む。
【0029】
少なくとも1種の非高分子モノ、ジ、またはトリカルボン酸、および/またはこれらの塩の総量は、ヘアトリートメントブースター組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.5重量%である。いくつかの場合では、少なくとも1種の非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩の総量は、少なくとも0.6、0.7、0.8、0.9、または1重量%から最大約15、20、25または30重量%である。さらに、少なくとも1種の非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩の総量は、少なくとも0.5重量%から約50重量%、少なくとも0.5重量%から約40重量%、少なくとも0.5重量%から約30重量%、少なくとも0.5重量%から約20重量%、少なくとも0.5重量%から約10重量%、少なくとも0.5重量%から約5重量%、少なくとも0.8重量%から約50重量%、少なくとも0.8重量%から約40重量%、少なくとも0.8重量%から約30重量%、約0.8重量%から約20重量%、約0.8重量%から約10重量%、約0.8重量%から約5重量%、約1重量%から約50重量%、約重量%から約40重量%、約1重量%から約30重量%、約1重量%から約20重量%、約1重量%から約10重量%、約1重量%から約5重量%、約2重量%から約50重量%、約2重量%から約40重量%、約2重量%から約30重量%、約2重量%から約20重量%、約2重量%から約10重量%、または約2重量%から約5重量%であってもよい。」
(D) 「【0032】
「ヘアトリートメント組成物」は、特定の美容効果を実現するために毛髪に適用される組成物である。ヘアトリートメント組成物の非限定的な例としては、シャンプー、コンディショナー、ヘアジェル、ヘアスプレー、ヘアリンス、ヘアローション、リンスアウトヘアマスクなどが挙げられる。本開示のブースター組成物は、ヘアトリートメント組成物の一種とも考えられる。ヘアトリートメント組成物は、多くの場合、一定期間の後、例えば、ヘアトリートメント組成物が、毛髪に所望の美容効果を付与するのに十分な時間を経た後、毛髪からすすぎ落とされ、したがって、これらの例において、「リンスアウト組成物」(または「リンスアウト製品」)と呼ばれ得る。「リンスアウト」組成物は、所望のトリートメント(例えば、洗浄、コンディショニング、再構築、艶出し、平滑化、整形など)を施すが、いつまでも毛髪上に残留させることを目的としないように毛髪に適用される組成物である。典型的には、リンスアウト組成物は、毛髪をスタイリングする前に、毛髪からすすぎ落とされる。シャンプーおよびコンディショナーがリンスアウト組成物の周知の例であるが、本開示のリンスアウト組成物は、シャンプーおよびコンディショナーに限定されない。例として、リンスアウト組成物には、追加的に、例えば、ジェル、スプレー、リンス、ローション、リンスアウトヘアマスクなどを挙げることができる。」
(E) 「【0034】
ヘアトリートメント組成物は、1種以上の界面活性剤を含んでもよい。カチオン性、アニオン性、両性/両性イオン性、および非イオン性界面活性剤、ならびにこれらの組み合わせを使用してもよい。いくつかの場合では、特にヘアトリートメント組成物がシャンプーである場合、アニオン性界面活性剤が、ヘアトリートメント組成物中に含まれる。1種以上の両性界面活性剤は、1種以上のアニオン性界面活性剤と一緒に使用してもよい。いくつかの場合では、特にヘアトリートメント組成物がコンディショナーである場合、カチオン性界面活性剤が有用である。
【0035】
ヘアトリートメント組成物中に含まれる1種以上の界面活性剤の総量は、これらが含まれるヘアトリートメント組成物の種類によってさまざまであり得る。それにもかかわらず、いくつかの場合では、全界面活性剤の総量は、ヘアトリートメント組成物の総重量に基づいて約0.1から約40重量%(これらの間の全ての範囲および部分的な範囲を含む)である。いくつかの場合では、1種以上の界面活性剤の総量は、約0.1から約35重量%、約0.1から約30重量%、約0.1から約25重量%、約0.1から約20重量%、約0.1から約15重量%、約0.1から約10重量%、約0.1から約5重量%、約0.5から約40重量%、約0.5から約35重量%、約0.5から約30重量%、約0.5から約25重量%、約0.5から約20重量%、約0.5から約15重量%、約0.5から約10重量%、約0.5から約5重量%、約1重量%から約40重量%、約1重量%から約30重量%、約1重量%から約20重量%、約1重量%から約15重量%、約1重量%から約10重量%、または約1重量%から約5重量%である。」
(F) 「【0044】
ブースター組成物は、シャンプーおよび/またはコンディショナーを使用する前に、シャンプーと混合しても、コンディショナーと混合しても、またはシャンプーおよびコンディショナーと混合してもよい。あるいは、ブースター組成物を、順次、別々に毛髪へ適用してもよい。例えば、(前処置としての)シャンプーの前、シャンプー後だが(中間処置としての)コンディショナーの前、または(後処置としての)コンディショニングの後、ブースター組成物を毛髪へ適用してもよい。また、ブースター組成物を、シャンプーおよび/またはコンディショナーと同時に適用してもよく、すなわち、毛髪へ適用する前にブースター組成物をシャンプーおよび/またはコンディショナーと混合する必要はなく、シャンプーおよび/またはコンディショナーも毛髪上にある間に毛髪に適用される。これは、毛髪上にブースター組成物をシャンプーおよび/またはコンディショナーと共に積層させることを要し得る。」
(G) 「【0201】
本開示は、以下の実施例によって実行される。これらの実施例は、本質的に制限せずに技術を例示する役割を果たす。
[図:0001393135000005.jpg]
[図:0001393135000006.jpg]
[図:0001393135000007.jpg]
【0202】
実施例4
(インビボ試験)
実施例1のブースター組成物を、栄養、艶、ボディー、密度、および修復利益を毛髪に与えるものとして市販されている市販のベンチマークブースター組成物と比較した。各ブースター組成物を個別に実施例2のコンディショナーおよび実施例3のコンディショナーと、1:2の比率(ブースター組成物:コンディショナー)で混合した。3グラムのブースター組成物を6グラムのコンディショナーに添加して混合した。
【0203】
第1の比較試験において、6名のボランティアの毛髪を市販のシャンプーで洗浄した。洗浄した毛髪がまだ湿っている間、6名のボランティアの頭部の半分を、実施例1のブースター組成物と混合した実施例2のコンディショナーで処置した。これらの6名のボランティアの頭部のもう半分を、市販のブースター組成物と混合した実施例2のコンディショナーで処置した。
【0204】
別途、第2の比較試験において、6名のボランティアの毛髪を市販のシャンプーで洗浄した。洗浄した毛髪がまだ湿っている間、他の6名のボランティアの頭部の半分を、実施例1のブースター組成物と混合した実施例3のコンディショナーで処置した。これらの6名のボランティアの頭部のもう半分を、市販のブースター組成物と混合した実施例3のコンディショナーで処置した。混合コンディショナーを、毛髪からすすぎ落とされる前、5分間、残留させた。次いでさらに製品および毛髪の性質を評価した専門家によって毛髪を乾燥させた。専門家は、混合コンディショナーの適用、混合コンディショナーのすすぎ落とし、および乾燥プロセスの間、製品および毛髪を評価した。結果を以下の表に示す。表中、数は以下の定義を有する。
「+2」は、実施例1のブースターによる有意な改善を示す
「+1」は、実施例1のブースターによる中程度の改善を示す
[図:0001393135000008.jpg]
[図:0001393135000009.jpg]
【0205】
表に示すように、全体的に、実施例1のブースター組成物は、市販のベンチマークより性能が優れている。実施例1のブースター組成物は、さまざまな重要な特性に関して中程度のおよび有意なより優れた結果を出した。
【0206】
先の記述は、本開示を例示し、説明している。加えて、本開示は、好ましい実施形態のみを示し、説明しているが、前述の通り、さまざまなその他の組み合わせ、修正、および環境において使用することができ、本明細書において表される本発明の概念の範囲内で、上記の教示および/または関連技術の技能もしくは知見に相応の変更または修正が可能であることを理解されたい。上記の本明細書に記載の実施形態は、さらに、本出願人に知られる最良の様式を説明し、他の当業者が、該実施形態またはその他の実施形態において、特定の応用例またはその使用に必要とされる種々の修正を加えて、本開示を利用できるようにすることを目的とする。これに応じて、本記述は、本発明を、本明細書で開示する形態に限定されることを意図しない。また、添付の特許請求の範囲に代替の実施形態が含まれると解釈されることを意図する。」
(4) サポート要件の判断
ア 本件発明の解決すべき課題について
摘記(A)によると本件発明の課題は、「毛髪を損傷から修復し、強化し、保護するために有用な、毛髪を処置するためのキット」を提供することであると認める。
イ 判断
(ア) シャンプー組成と、ブースター組成物の界面活性剤について
摘記(B)には、「ブースター組成物およびヘアトリートメント組成物は、追加の成分を含んでもよく」、「追加の成分の非限定的な例としては、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、両性(両性イオン性)、およびこれらの混合物)」と記載され、摘記(D)には、「本開示のブースター組成物は、ヘアトリートメント組成物の一種とも考えられる。」と記載され、摘記(E)には、「ヘアトリートメント組成物は、1種以上の界面活性剤を含んでもよい。カチオン性、アニオン性、両性/両性イオン性、および非イオン性界面活性剤、ならびにこれらの組み合わせを使用してもよい。」及び「いくつかの場合では、1種以上の界面活性剤の総量は、・・・、約0.1から約10重量%、・・・である。」と記載されている。
そうすると、「ブースター組成物」に「0.1から10重量%の、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤」を含ませることは、一般的な記載として記載されている。
一方、摘記(G)によると、具体的な記載である実施例として、実施例4では、「毛髪」に対して、「市販のシャンプーで洗浄」し、その後、「実施例1のブースター組成物と混合した実施例2のコンディショナーで処置」したこと、同様に、「毛髪」に対して、「市販のシャンプーで洗浄」し、その後、「実施例1のブースター組成物と混合した実施例3のコンディショナーで処置」したことが記載され、それらの処置結果が、市販のブースター組成物を用いた場合より、使用品質等の種々の特性に優れていることが記載されている。
よって、具体的な記載として、「市販のシャンプー」、「実施例1のブースター組成物」及び「実施例2又は3のコンディショナー」という3種の組成物を別々に含んでいるキットが記載されているといえるところ、当該キットは、「市販のシャンプー」が本件発明16の「(a)1から25重量%の、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤またはこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤、および(b)水」を含むかどうか不明であり、「実施例1のブースター組成物」が「(c)0.1から10重量%の、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤」を含むものではないものの、優れた効果が得られることが確認できるといえる。
ここで、シャンプーが、「(a)1から25重量%の、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン性界面活性剤またはこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤、および(b)水」を含むことは周知慣用事項又は技術常識であり、上記一般的な記載を考慮すると、「実施例1のブースター組成物」が「(c)0.1から10重量%の、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の界面活性剤」含む場合でも、市販のブースター組成物を用いた場合より、使用品質等の種々の特性がある程度優れ、本件発明の課題を解決できることは、当業者が十分理解できる事項である。
(イ) ブースター組成物のアミノ酸もしくはアミノスルホン酸および/またはこれらの塩、並びに非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩について
摘記(C)には、「アミノ酸もしくはアミノスルホン酸」について、式(I)又は式(II)の化合物が一般式で示され、かつ、アラニン等を始めとするアミノ酸や、アミノメタスルホン酸を始めとするアミノスルホン酸が種々示され、それらの塩も含めた含有量の範囲を複数示している一般的な記載があり、「非高分子モノ、ジおよびトリカルボン酸」について、ギ酸を始めとするモノカルボン酸や、シュウ酸を始めとするジカルボン酸や、クエン酸を始めとするトリカルボン酸が示され、それらの塩も含めた含有量の範囲を複数示している一般的な記載がある。
一方、摘記(G)によると、具体的な記載である実施例1において、アミノスルホン酸であるタウリンを3重量%及びトリカルボン酸であるクエン酸を3重量%含有するブースター組成物が示され、実施例4において、その処置結果が、市販のブースター組成物を用いた場合より、使用品質等の種々の特性に優れていることが記載されている。
そうすると、一般的な記載及び具体的な記載から、ブースター組成物において、タウリンが3%以外の含有量である場合、又は、クエン酸が3%以外の含有量である場合だけでなく、タウリン以外の「アミノ酸もしくはアミノスルホン酸および/またはこれらの塩」である場合、又は、クエン酸以外の「非高分子モノ、ジもしくはトリカルボン酸および/またはこれらの塩」である場合についても、市販のブースター組成物を用いた場合より、使用品質等の種々の特性がある程度優れ、本件発明の課題を解決できることは、当業者が十分理解できる事項である。
(ウ) コンディショナーについて
摘記(E)には、「特にヘアトリートメント組成物がコンディショナーである場合、カチオン性界面活性剤が有用である」と記載され、摘記(G)には、具体的な記載である実施例2及び3において、カチオン性界面活性剤を3.5及び1.6重量%含有するコンディショナーが示され、実施例4において、本件発明のブースター組成物と当該コンディショナーを併用した処置結果が、市販のブースター組成物と当該コンディショナーを併用した場合より、使用品質等の種々の特性に優れていることが記載されている。
そうすると、本件発明のコンディショナーが、本件発明の課題を解決できる組成物であることは、当業者が十分理解できる事項である。
(エ) キットの各組成物の使用順序について
摘記(F)には、(a)ブースター組成物は、シャンプー又はコンディショナー使用前に、シャンプー又はコンディショナーと混合してもよく、(b)ブースター組成物を、順次、別々に毛髪へ適用してもよく、(c)ブースター組成物を、シャンプー又はコンディショナーと同時に適用してもよいとする一般的な記載がある。
一方、摘記(G)によると、具体的な記載である実施例として、実施例4では、「毛髪」に対して、「市販のシャンプーで洗浄」し、その後、「実施例1のブースター組成物と混合した実施例2のコンディショナーで処置」したこと、同様に、「毛髪」に対して、「市販のシャンプーで洗浄」し、その後、「実施例1のブースター組成物と混合した実施例3のコンディショナーで処置」したこと、すなわち、一般的な記載における上記(a)の例が示されており、それらの結果が、市販のブースター組成物を用いた場合より、使用品質等の種々の特性に優れていることが理解される。
そうすると、混合手順が異なることで、本件発明の課題を解決できないとする特段の理由はないから、上記(b)及び(c)においても、市販のブースター組成物を用いた場合より、使用品質等の種々の特性がある程度優れ、本件発明の課題を解決できることは、当業者が十分理解できる事項である。
(オ) まとめ
上記(ア)~(エ)において述べたとおり、本件発明16及び18は、キットの各組成物の各材料組成について、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
(5) 申立人の主張について
申立人は、上記(A1)~(A4)の点で、サポート要件違反であることを主張しているが、上記(ア)、(イ)及び(エ)において述べたとおり、本件発明16及び18は、ブースター組成物、シャンプー及びキットの各組成物の使用順序について、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立人の主張は採用できない。
(6) 小括
本件発明の特許請求の範囲の請求項16及び18に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立人が主張する理由3によっては、本件発明16及び18に係る特許を取り消すことはできない。
3 特許異議申立の理由4(明確性要件)について
申立人は、「少なくとも」という修飾語が、それぞれ「0.5」及び「0.5重量%」の下限のみに係るのか、「0.5から25重量%」及び「0.5重量%から25重量%」における下限及び上限に係るのか不明であるところ、上限にも係る場合、その上限値を明確に把握することはできないから、請求項16の記載は不明瞭である旨の主張をしている。
しかしながら、下限と上限を有する数値範囲の前に「少なくとも」という修飾語が記載されている場合、技術的な意味から、下限のみを修飾することは明らかであり、本件発明16は明確である。
よって、申立人が主張する理由4によっては、本件発明16に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項16及び18に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに請求項16及び18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700927