特許異議申立
2022-701205
構造接着剤用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた構造物
- 審判番号
- 2022-701205
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-033723
- 登録番号
- 7080672
- 請求日
- 2022年12月05日
- 審決日
- 2023年05月16日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】旭化成株式会社
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】大貫 敏史
- 【権利者代理人】江口 昭彦
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【異議申立人】大橋 宏基
- 【異議申立人】高橋 良和
- 審判長/審判官
- 審判長 関根 裕
- 審判官 門前 浩一
- 審判官 瀬下 浩一
- 分類
- P1651.113-Y (C09J) / P1651.121-Y (C09J) / P1651.537-Y (C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7080672号発明「構造接着剤用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた構造物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7080672号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7080672号の請求項1~7の特許についての出願は、平成30年2月27日を出願日とするものであって、令和4年5月27日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月6日にその特許掲載公報が発行され、その請求項1~7の発明の特許に対し、令和4年12月5日に特許異議申立人である大橋宏基、及び、高橋良和の2名(以下「申立人ら」ともいう。)によって、特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
特許第7080672号の請求項1~7の発明(以下、請求項の項番により「本件発明1」などといい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、補正箇所を示すために付されていた下線は、当審が削除した。
「【請求項1】
エポキシ樹脂と硬化剤成分とを含む、構造接着剤用エポキシ樹脂組成物であって、
前記構造接着剤用エポキシ樹脂組成物を、30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差が、20個以下であり、
前記エポキシ樹脂が、
ビスフェノール型エポキシ樹脂と、
全塩素量が1000ppm以上であり、且つ粘度が30000mPa・s以下であるエポキシ樹脂と、を含み、
前記硬化剤成分が、
粉末状硬化剤と、
それ以外の潜在性硬化剤と、を含む、
構造接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
30日間経過後のDSC測定による発熱量の変化量が、20%以下である、請求項1に記載の構造接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記粉末状硬化剤が、グアニジン誘導体、芳香族アミン化合物、及びウレア化合物からなる群より選択される1種以上を含み、
前記潜在性硬化剤が、カプセル化した硬化剤成分である、請求項1又は2に記載の構造接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
全塩素量が、1000ppm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化剤成分の割合が、構造接着剤用エポキシ樹脂組成物全量に対し3~50質量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の構造接着剤用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の構造接着剤用エポキシ樹脂組成物と、
さらに少なくとも1つの有機充填剤及び/又は無機充填剤と、を含有する、構造接着剤用樹脂組成物。
【請求項7】
自動車用構造物、鉄道車両構造物、及び航空機構造物からなる群より選択されるいずれかの構造物であって、
請求項1~5のいずれか一項に記載の構造接着剤用エポキシ樹脂組成物、又は、請求項6に記載の構造接着剤用樹脂組成物の硬化物を備える、構造物。」
第3 申立の理由及び証拠方法
申立人らは、全請求項(請求項1~7)に係る発明の特許を取り消すべきであると主張し、その理由として、後記1の申立ての理由を主張し、また、後記2の証拠方法を提出している。
また、申立ての理由1、2は、主たる刊行物等として甲第1号証又は甲第2号証を引用するものである。
1 申立ての理由
(1) 申立ての理由1
本件特許の請求項1~7の発明は、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2) 申立ての理由2
本件特許の請求項1~7の発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 申立ての理由3
本件特許の特許請求の範囲の請求項1、4の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
(4) 申立ての理由4
本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲第1号証 特開2007-91899号公報(以下「甲1」ともいう。)
甲第2号証 特開平5-112698号公報(以下「甲2」ともいう。)
甲第3号証 特開2017-95570号公報(以下「甲3」ともいう。)
甲第4号証 特開2015-113426号公報(以下「甲4」ともいう。)
甲第5号証 「製品案内 2019年8月」、三菱ケミカル エポキシ事業部(以下「甲5」ともいう。)
第4 当審の判断
当審は、申立の理由1~4は、いずれも、採用できないと判断する。その理由は、以下のとおりである。
1 申立ての理由1、2について
(1) 証拠の記載事項
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
ア-1
「【請求項1】
アミンアダクト(A)と低分子アミン化合物(B)を主成分とするエポキシ樹脂用硬化剤であって、アミンアダクト(A)の重量平均分子量が200以上15000以下であり、重量平均分子量と数平均分子量の比として定義される分子量分布が1を超えて7以下にあって、かつ、低分子アミン化合物(B)の含有量がアミンダクト(A)100質量部に対して0.000001質量部以上0.001質量部未満であることを特徴とするエポキシ樹脂用硬化剤。
・・・
【請求項4】
低分子アミン化合物(B)がイミダゾール類であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項5】
請求項1~4のエポキシ樹脂用硬化剤よりなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアの表面を合成樹脂および/または無機酸化物からなるシェルによって被覆されている構造を持つことを特徴とするマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項6】
マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)は、請求項1~4のエポキシ樹脂用硬化剤よりなる群より選ばれる少なくとも1種のエポキシ樹脂用硬化剤(C)からなるコアを、イソシアネート化合物(G)と活性水素化合物(H)の反応により得られた皮膜(c1)および/またはエポキシ樹脂用硬化剤(C)とエポキシ樹脂(N)の反応より得られた皮膜(c2)からなるシェルで被覆した、波数1630~1680cm-1の赤外線を吸収する結合基(x)と波数1680~1725cm-1の赤外線を吸収する結合基(y)を少なくとも表面に有することを特徴とするマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項7】
エポキシ樹脂(N)の全塩素量が2500ppm以下であることを特徴とする請求項6に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤。
【請求項8】
10~50000重量部のエポキシ樹脂(E)に請求項1~4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤(C)および/または請求項5~7のいずれか1項に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)を、エポキシ樹脂用硬化剤(C)および/または(D)として100重量部を配合したことを特徴とするマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
・・・
【請求項10】
エポキシ樹脂(E)の全塩素量が2500ppm以下であることを特徴とする請求項8または9に記載のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物。
・・・
【請求項15】
エポキシ樹脂(J)100質量部に対して、請求項1~11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物から選ばれる少なくとも1種を0. 1~1000質量部含有し、それらを主成分とすることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項16】
エポキシ樹脂(J)100質量部に対して、酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、およびグアニジン類よりなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(K)を1~200質量部と、請求項1~11のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂用硬化剤、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物から選ばれる少なくとも1種を、0.1~200質量部を含有し、それらを主成分とするエポキシ樹脂組成物。
・・・
【請求項22】
請求項15~19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
・・・
【請求項32】
請求項15~19のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含有することを特徴とするプリプレグ。」
ア-2
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温硬化性に優れ、極めて高い貯蔵安定性を有するエポキシ樹脂用硬化剤、およびエポキシ樹脂組成物、そして、高温でも極めて貯蔵安定性が高く、低温あるいは短時間の硬化条件であっても、高い接続信頼性、高い封止性が得られる接着材料、導電材料、絶縁材料、封止材料、コーティング材料、塗料組成物、プリプレグ、構造用接着剤、熱伝導性材料等を提供することを目的とする。」
ア-3
「【0020】
尿素化合物としては、例えば、尿素、メチル尿素、ジメチル尿素、エチル尿素、t-ブチル尿素等が挙げられる。
エポキシ樹脂(a1)としては、モノエポキシ化合物、多価エポキシ化合物のいずれか又はそれらの混合物が用いられる。モノエポキシ化合物としては、ブチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、パラ-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、パラキシリルグリシジルエーテル、グリシジルアセテート、グリシジルブチレート、グリシジルヘキソエート、グリシジルベンゾエート等を挙げることができる。 多価エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
・・・
【0022】
エポキシ樹脂(a1)の全塩素量は、硬化性と貯蔵安定性のバランスの取れたエポキシ樹脂組成物を得るためには、2500ppm以下が好ましい。
より好ましくは2000ppm以下であり、より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは180ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
・・・
【0051】
本発明に記載のマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)のシェルとして、エポキシ樹脂用硬化剤(C)とエポキシ樹脂(N)との反応生成物からなる反応生成物を用いる場合の反応は、通常10℃~150℃、好ましくは20℃~100℃の温度範囲で、3~168時間、好ましくは5時間~72時間の反応時間で行われ、分散媒中で行なうこともできる。分散媒としては、溶媒、可塑剤等が例示される。また、エポキシ樹脂(N)自体を分散媒として用いることもできる。また、この場合、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)におけるエポキシ樹脂(E)と、シェル形成反応に用いるエポキシ樹脂(N)は、同じエポキシ樹脂であってもよい。
・・・
【0054】
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤(C)の表面を被覆するシェルの厚みは、平均層厚で5~1000nmが好ましい。5nm以上で貯蔵安定性が得られ、1000nm以下で、実用的な硬化性が得られる。ここでいう層の厚みは、透過型電子顕微鏡により観察される。特に好ましいシェルの厚みは、平均層厚で50~700nmである。
本発明のエポキシ樹脂(N)については本発明の目的とする効果を損なわない範囲内において特に制限されない。そのようなエポキシ樹脂(N)の一例を挙げると、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂等のグリシジル型エポキシ樹脂と、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。
これらエポキシ樹脂は単独で使用しても併用しても良い。
【0055】
本発明のエポキシ樹脂(N)の全塩素量は2500ppm以下が好ましい。より好ましくは2000ppm以下であり、より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは180ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。全塩素量が2500ppm以下で硬化性と貯蔵安定性のバランスの高いエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
・・・
【0058】
本発明のマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)の全塩素量は、高い硬化性と貯蔵安定性の両立のためには、2500ppm以下であることが望ましい。
より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
エポキシ樹脂(E)の全塩素量は、高い硬化性と貯蔵安定性の両立のためには、2500ppm以下であることが望ましい。
より好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは800ppm以下であり、より好ましくは400ppm以下であり、より好ましくは200ppm以下であり、より好ましくは100ppm以下であり、より好ましくは80ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以下である。
・・・
【0067】
本発明のエポキシ樹脂組成物に用いられるエポキシ樹脂(J)は、平均して1分子当たり2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、エポキシ樹脂(E)と同じであってもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA等のビスフェノール類をグリシジル化したビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン等のその他の2価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4-(1-(4-(1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール等のトリスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;1,1,2,2,-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のテトラキスフェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のノボラック類をグリシジル化したノボラック型エポキシ樹脂等;多価フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂;グリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールをグリシジル化した脂肪族エーテル型エポキシ樹脂;p-オキシ安息香酸、β-オキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸をグリシジル化したエーテルエステル型エポキシ樹脂;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸をグリシジル化したエステル型エポキシ樹脂;4,4-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノール等のアミン化合物のグリシジル化物やトリグリシジルイソシアヌレート等のアミン型エポキシ樹脂と、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキサイド等が例示される。」
ア-4
「【0069】
本発明に用いられるエポキシ樹脂用硬化剤(C)、マイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)から選ばれる少なくとも1種は、酸無水物類、フェノール類、ヒドラジド類、およびグアニジン類よりなる群より選ばれる少なくとも1種の硬化剤(K)を併用する事ができる。
酸無水物類としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水-3-クロロフタル酸、無水-4-クロロフタル酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水ジメチルコハク酸、無水ジクロールコハク酸、メチルナジック酸、ドテシルコハク酸、無水クロレンデックク酸、無水マレイン酸等;フェノール類としては、例えば、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック等;ヒドラジン類としては、例えば、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドテレフタル酸ジヒドラジド、p-オキシ安息香酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、フェニルアミノプロピオン酸ヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド等;グアニジン類としては、例えば、ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン等が例示される。
【0070】
硬化剤(K)の中で好ましいのは、グアニジン類および酸無水物類である。さらに好ましくは、ジシアンジアミド、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水メチルナジック酸である。」
ア-5
「【0071】
本発明に用いられるマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物(F)には、所望によって、増量剤、補強材、充填材、導電微粒子、顔料、有機溶剤、反応性希釈剤、非反応性希釈剤、樹脂類、結晶性アルコール、カップリング剤等を添加することができる。・・・
【0072】
本発明に用いられるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂用硬化剤(C)および/またはマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤(D)とエポキシ樹脂(E)と、必要に応じてエポキシ樹脂(J)および硬化剤(K)が主成分である。・・・
【0073】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、接着剤および/または接合用ペースト、接合用フィルムの他に、導電材料、異方導電材料、絶縁材料、封止材、コーティング材、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性材料等として有用である。・・・
【0078】
プリプレグの製造方法としては、例えば、特開平09-71633号、WO98/44017号などに記載された方法のように、エポキシ樹脂組成物を補強基材に含浸し、加熱して得ることができる。なお、含浸させるワニスの溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、エチルセルソルブ、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどがあげられ、これらの溶剤はプリプレグ中に残存しないことが好ましい。なお、補強基材の種類は特に限定しないが、例えば、紙、ガラス布、ガラス不織布、アラミド布、液晶ポリマーなどが例としてあげられる。樹脂組成物分と補強基材の割合も特に限定されないが、通常、プリプレグ中の樹脂分が20~80重量%となるように調製するのが好ましい。」
ア-6
「【0087】
(16)一液性エポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性
実施例または比較例で製造したマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤(F)30部をエポキシ樹脂(M)100部と混合、一液性エポキシ樹脂組成物を製造し、50℃で1週間貯蔵し、貯蔵後の粘度を貯蔵前粘度割った値(以下粘度倍率と称す)により貯蔵安定性を評価した。粘度倍率が1.5倍未満を◎、2倍未満を○、2倍以上3倍未満を△、3倍以上を×、貯蔵途中でゲル化したものを××とした。
【0088】
[製造例1]
(アミンアダクト(A-1)の製造)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/当量、全塩素量1900ppm:以下エポキシ樹脂a1-1と称す)1.5当量と、2-メチルイミダゾール1当量(活性水素換算)を、n-ブタノールとトルエンの1/1混合溶媒中(樹脂分50%)、80℃で反応させた。その後減圧下で2-メチルイミダゾール(2MZ)の含有量が5ppm未満になるまで溶剤と共に留去し、25℃で固体状のアミンアダクトA-1を得た。得られたアミンアダクトの重量平均分子量は3800、分子量分布は3.7であった。
【0089】
[製造例2]
(アミンアダクト(A-2)の製造)
以下エポキシ樹脂a1-1を1当量とビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量470g/当量、全塩素量1300ppm:以下エポキシ樹脂a1-2と称す)1当量と、トリエチレンテトラミン2当量を2-プロパノールとキシレンの1/2混合溶媒中(樹脂分50%)、80℃で反応させた。その後、減圧下で溶剤と未反応低分子アミン化合物を留去し、トリエチレンテトラミン(TETA)が10ppm未満になった時点で蒸留を終了し、25℃で固体状のアミンアダクトA-2を得た。得られたアミンアダクトの重量平均分子量は2500、分子量分布は1.9であった。
【0090】
[製造例3]
(アミンアダクト(A-3)の製造)
エポキシ樹脂a1-2を1当量とクレゾールノバラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215g/当量、全塩素量1500ppm:以下エポキシ樹脂a1-3と称す)0.5当量と、N―メチルピペラジン1.5当量とした以外は製造例2と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA-3を得た。得られたアミンアダクトに含有されるN-メチルピペラジン(NP)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は2800、分子量分布は2.1であった。
【0091】
[製造例4]
(アミンアダクト(A-4)の製造)
エポキシ樹脂a1-1を1当量と、2-メチルイミダゾール0.7当量とし、溶剤を製造例1と同様にした以外は製造例2と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA-4を得た。得られたアミンアダクトに含有される2-メチルイミダゾール(2MZ)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は4100、分子量分布は3.9であった。
【0092】
[製造例5]
(アミンアダクト(A-5)の製造)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量165g/当量、全塩素量300ppm :以下エポキシ樹脂a1-4と称す)1.5当量と、2-メチルイミダゾール1当量を、製造例4と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA-5を得た。得られたアミンアダクトに含有される2-メチルイミダゾール(2MZ)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は3200、分子量分布は3.1であった。
【0093】
[製造例6]
(アミンアダクト(A-6)の製造)
エポキシ樹脂a1-1を2当量と、2-メチルイミダゾール1当量を、製造例4と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA-6を得た。得られた
アミンアダクトに含有される2-メチルイミダゾール(2MZ)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は7400、分子量分布は6.2であった。
【0094】
[製造例7]
(アミンアダクト(A-7)の製造)
エポキシ樹脂a1-1を5当量と、2-メチルイミダゾール1当量を、製造例4と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA-7を得た。得られたアミンアダクト100質量部に含有される2-メチルイミダゾール(2MZ)は10ppm未満で、アミンアダクトの重量平均分子量は19000、分子量分布は9.5であった。
【0095】
[製造例8]
(アミンアダクト(A-8)の製造)
エポキシ樹脂a1-1を1当量と、2-メチルイミダゾール2.5当量を、製造例4と同様に反応させた後、蒸留留去して25℃で固体状のアミンアダクトA-8を得た。得られたアミンアダクトに含有される2-メチルイミダゾール(2MZ)は8部で、アミンアダクトの重量平均分子量は1500、分子量分布は1.5であった。
【0096】
[実施例1]
製造例1で得たアミンアダクトA-1((B)成分の2MZ5ppm未満残留)の100質量部を溶融し、これに3ppmの2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)を均一に混合し、室温に冷却後粉砕して、25℃で固体状の平均粒径2.5μmのエポキシ樹脂用硬化剤C-1を得た。200質量部のエポキシ樹脂E-1に、エポキシ樹脂用硬化剤C-1を100質量部、水1.5質量部、トリレンジイソシアネート5質量部を加えて、40℃で攪拌しながら4時間反応を続けた。その後、シェル形成反応を50℃で12時間行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-1を得た。
【0097】
マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-1からキシレンを用いてマイクロカプセル型エポキシ樹脂用硬化剤を分離し、FT-IR測定により、結合基(x)、(y)、(z)を有することが確認された。
更に、100部のエポキシ樹脂(M)に、得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-1を30部配合したときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。得られた結果を表-1に示す。
【0098】
[実施例2~6]
製造例2~6で得たアミンアダクトA-2~6((B)成分の各アミン化合物10ppm残留)を粉砕して、表-1記載のエポキシ樹脂用硬化剤C-2~6を得た。得られたエポキシ樹脂用硬化剤の特性を表-1に示す。
更に、表-1で示した配合で、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2~6を得た。何れも実施例1と同様にして結合基(x)、(y)、(z)を有することを確認し、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2~6を硬化剤としたときの一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。評価結果を表-1に示す。
【0099】
[実施例7]
製造例4で得たアミンアダクトA-4を粉砕して25℃で固体状の平均粒径2.4μmのエポキシ樹脂用硬化剤C-4を得た。得られたエポキシ樹脂用硬化剤C-4を100質量部、水1.5質量部、MR-200を5質量部加えて、40℃で攪拌しながら4時間反応を続けた。その後、環状ホウ酸エステル化合物(L)を0.07部加えて、さらにシェル形成反応を50℃で12時間行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-7を得た。製造例4で得たアミンアダクトA-4を粉砕して得られたエポキシ樹脂用硬化剤C-4を用いて、表-1で示した配合で、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-7を得た。実施例1と同様にして結合基(x)、(y)、(z)を有することを確認し、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-7の一液性エポキシ樹脂組成物の硬化性と貯蔵安定性を評価した。評価結果を表-1に示す。」
ア-7
「【0103】
【表1】
[図:0001398288000001.jpg]
・・・
【0109】
【表2】
[図:0001398288000002.jpg]
」
ア-8
「【0110】
[導電性フィルムの作製の実施例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER-2603)15部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、商品名「BRG-558」)6部、合成ゴム(日本ゼオン社製商品名「ニポール1072」、重量平均分子量30万)4部を、メチルエチルケトンとブチルセロソルブアセテートの1:1(重量比)混合溶剤20部に溶解した。この溶液に銀粉末74部を混合し、さらに三本ロールにより混練した。これにさらに実施例2で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2を30部加えて、さらに均一に混合させて、導電性接着剤を得た。得られた導電性接着剤を用いて、厚さ40μm のポリプロピレンフィルム上にキャストして、80℃で60分間、乾燥半硬化させ厚さ35μm の導電性接着剤層を有する導電性フィルムを得た。この導電性フィルムを用い、80℃のヒートブロック上でシリコンウェハー裏面に導電性接着剤層を導電性フィルムを転写させた。さらにシリコンウェハーをフルダイシングし、ヒートブロック上でリードフレームに導電性接着剤付半導体チップを、200 ℃、2分間の条件で接着硬化させたところ、チップの導電性の問題がなかった。
【0111】
[導電性ペーストの作製の実施例]
・・・
【0112】
[異方導電性フィルムの作製の実施例]
・・・
【0113】
[異方導電性ペーストの作製の実施例]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER6091、エポキシ当量480g/eq)50重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER2603)50重量部と導電粒子としてミクロパールAu-205(積水化学製、比重2.67)5重量部を混合後、実施例2で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2を30部加えて、さらに均一に混合させて、異方導電性ペーストを得た。得られた異方導電性ペーストを、ITO電極を有する低アルカリガラス上に塗布した。230℃のセラミックツールで、30秒間、2MPaの圧力にて試験用TAB(Tape Automated Bonding)フィルムと圧着し貼り合わせを行った。隣接するITO電極間の抵抗値を測定したところ、異方導電性ペーストとして有用であった。
・・・
【0114】
[絶縁性ペーストの作製の実施例]
・・・
【0115】
[絶縁性フィルムの作製の実施例]
・・・
【0116】
[封止材の作製の実施例]
・・・
【0117】
[コーティング材の作製の実施例]
・・・
【0118】
[塗料組成物の作製の実施例]
・・・
【0119】
[プリプレグの作製の実施例]
プリプレグの実施例
130℃のオイルバス中のフラスコ内にノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業製のEPICLON N-740)を15部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(JER製のエピコート4005)を40部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER2603)30部を溶解・混合し80℃まで冷やす。さらに実施例1で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤組成物F-1を15部加えて、十分、攪拌して混合する。室温に冷ました前記樹脂組成物を離型紙上にドクターナイフを用いて樹脂目付162g/m2で塗布し、樹脂フィルムとした。次にこの樹脂フィルム上に弾性率24トン/mm2の炭素繊維を12.5本/インチで平織りした三菱レイヨン製CFクロス(型番:TR3110、目付200g/m2)を重ねて樹脂組成物を炭素繊維クロスに含浸させた後、ポリプロピレンフィルムを重ねて表面温度90℃のロール対の間を通して、クロスプリプレグを作製した。樹脂の含有率は45重量%だった。得られたプリプレグを、繊維方向を揃えてさらに積層し、硬化条件150℃×1時間で成形を行い、炭素繊維を補強繊維とするFRP成形体を得ることができ、作製したプリプレグは有用なものであった。
・・・
【0120】
[熱伝導性エポキシ樹脂組成物の作製の実施例]
・・・
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明によれば、低温硬化性と極めて高い貯蔵安定性を両立し、更に電気特性、機械的強度、耐熱性、耐湿性等の性能もバランス良く有する硬化物を与えるエポキシ樹脂組成物が得られる。本発明のカプセル型硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物は、接着剤、封止材、充填材、絶縁材料、導電材料、プリプレグ、フィルム状接着剤、異方導電性フィルム、異方導電性ペースト、絶縁接着フィルム、絶縁接着ペースト、アンダーフィル材、ポッティング材、ダイボンディング材、導電ペースト、ソルダーレジスト等として優れた性能を発揮する。」
イ 甲2の記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
イ-1
「【請求項1】 全塩素量が0.5重量%以上のビスフエノールA型液状エポキシ樹脂と、粒径44μm以下の微粉末を50重量%以上含む鉄粉とを含有してなり、かつ鉄粉の割合が全樹脂組成物に対して60~80重量%であることを特徴とするエポキシ樹脂硬化剤により硬化せしめる注型用エポキシ樹脂組成物。」
イ-2
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、貯蔵や輸送中の鉄粉の沈降分離を起さず、冬期の樹脂の結晶化を起さず、硬化性にも優れた注型用エポキシ樹脂組成物を提供しようとするものである。
・・・
【0005】通常のビスフエノールA型液状エポキシ樹脂には、エポキシ基への未閉環に起因する可けん化塩素原子が0.1重量%程度含まれており、全塩素量が0.2重量%程度である。本発明においては、ビスフエノールA型液状エポキシ樹脂として、特に全塩素量が0.5重量%以上、好ましくは1~3重量%のものを使用する。その全塩素量が少なすぎると、得られるエポキシ樹脂組成物は、冬期における結晶化を防止する効果、及び鉄粉の沈降分離を防止する効果が不充分になってくる。
【0006】本発明で使用する全塩素量が0.5重量%以上のビスフエノールA型液状エポキシ樹脂は、通常のエポキシ樹脂製造工程においてエポキシ基の閉環条件をゆるやかにすることにより容易に製造することができる。
【0007】本発明のエポキシ樹脂組成物は、そのエポキシ樹脂の全量を前記の全塩素量が0.5重量%以上のビスフエノールA型液状エポキシ樹脂で充当させるのが望ましいが、比較的に少量(たとえばエポキシ樹脂全量に対して10重量%以下)であれば他の液状エポキシ樹脂を併用することも可能である。」
イ-3
「【0012】本発明の注型用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂硬化剤を用いて硬化させるが、そのエポキシ樹脂硬化剤としては、一般に知られているような硬化剤はすべて使用できる。その硬化剤の具体例としては、アミン類、変性アミン類、ポリアミド樹脂、酸無水物類、及びイミダゾール類などがあげられるが、特にポリアミド樹脂は室温硬化性に優れているので好ましい。エポキシ樹脂硬化剤は、1種類を用いてもよいし、2種以上を適宜に併用してもよい。
【0013】本発明の注型用エポキシ樹脂硬化剤は、通常、注型用樹脂組成物に混合して用いられるが、室温硬化性の硬化剤の場合には、注型用樹脂組成物の使用直前に混合するようにするのが望ましい。」
イ-4
「【0016】実施例1
ビスフエノールAジグリシジルエーテル(油化シエルエポキシ株式会社商品名エピコート828XA 全塩素量1.5重量%)250g、及び鉄粉(44μm以下の微粉の含量75重量%)750gをニーダーで混合し組成物とした。
【0017】この組成物100gに硬化剤としてポリアミド樹脂(富士化成工業株式会社商品名 トーマイド2500)14gを加え、均一に混合し、室温で3日間硬化させた。硬化剤混合前の組成物の貯蔵安定性、硬化剤混合後の組成物の硬化性、及びその硬化物の硬度を試験した結果は表1に示すとおりであった。」
イ-5
「【0022】
【表1】
[図:0001398288000003.jpg]
【0023】表1の注:
*1・・・25℃で1ケ月貯蔵後の沈降の有無
*2・・・50℃で3ケ月貯蔵後の結晶化の有無
*3・・・1000グラムスケールでの発熱ピーク時間と最高発熱温度
*4・・・シヨアD硬度」
ウ 甲3の記載事項
甲3には、以下の事項が記載されている。
ウ-1
「【0002】
半導体素子や液晶表示素子用の接着剤としては、接着性に優れ、かつ高い信頼性を示すエポキシ樹脂等を含む熱硬化性樹脂組成物が用いられている。上記接着剤の構成成分としては、エポキシ樹脂、該エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、該エポキシ樹脂と該硬化剤との反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は、接着剤の硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性及び加熱時の硬化速度の観点から、種々の化合物が用いられている(例えば、特許文献1参照)。これらの特徴を活かして、エポキシ樹脂組成物を保存安定性に優れた異方性導電膜に使用される(例えば、特許文献2参照)。」
ウ-2
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、特に電子機器分野において、回路の高密度化や接続信頼性の向上に対応するため、あるいはモバイル機器の軽量化として耐熱性の低い材料を使用する目的で、また、生産性を大幅に改善する目的で、接続材料の一つとして用いられるエポキシ樹脂組成物に対して、硬化剤の貯蔵安定性を損なわずに、組成物の硬化性を一層向上することが強く求められている。しかしながら、特許文献2に記載されているようなエポキシ樹脂を用いた接着剤は、近年の低温かつ短時間における圧着性、接続信頼性の要求に対しては不十分である。
【0005】
そこで、本発明は、例えば、溶剤を使用してフィルム化したときにも保存安定性が良好で、硬化性に優れるエポキシ樹脂用硬化剤を含んだ接続信頼性の高い接着フィルム用エポキシ樹脂組成物を提供することを目的とする。」
エ 甲4の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
エ-1
「【0264】
〔低温短時間硬化性〕
エポキシ樹脂組成物(M)50質量部に対して、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成イーマテリアルズ社製、「AER2603」、エポキシ当量:189g/eq、全塩素量:1800ppm、加水分解性塩素量:50ppm、粘度:12000mPa・s)150質量部を均一に混合させて熱硬化性樹脂組成物を得た。・・・」
(2) 証拠に記載された発明
ア 甲1に記載された発明
甲1には、段落【0110】(前記(1)アのア-8を参照。)に「導電性フィルムの作製の実施例」が記載されており、導電性フィルムの作製の過程で以下の導電性接着剤を製造したことが記載されている。
「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER-2603)15部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、商品名「BRG-558」)6部、合成ゴム(日本ゼオン社製商品名「ニポール1072」、重量平均分子量30万)4部を、メチルエチルケトンとブチルセロソルブアセテートの1:1(重量比)混合溶剤20部に溶解し、この溶液に銀粉末74部を混合し、さらに三本ロールにより混練し、これにさらにマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2を30部加えて、さらに均一に混合させて、導電性接着剤」
また、「実施例2で得られたマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2」について、「表-1で示した配合で、実施例1と同様にしてマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2~6を得た。」(段落【0098】(前記(1)アのア-6を参照。))と記載されており、
実施例1(段落【0096】(前記(1)アのア-6を参照。))は、「製造例1で得たアミンアダクトA-1((B)成分の2MZ5ppm未満残留)の100質量部を溶融し、これに3ppmの2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)を均一に混合し、室温に冷却後粉砕して、25℃で固体状の平均粒径2.5μmのエポキシ樹脂用硬化剤C-1を得た。200質量部のエポキシ樹脂E-1に、エポキシ樹脂用硬化剤C-1を100質量部、水1.5質量部、トリレンジイソシアネート5質量部を加えて、40℃で攪拌しながら4時間反応を続けた。その後、シェル形成反応を50℃で12時間行い、マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-1を得た。」というものであり、
「マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2」の配合は、【表-1】(段落【0103】(前記(1)アのア-7を参照。)を参照すると、エポキシ樹脂用硬化剤C-2を100部、エポキシ樹脂E-2を200部、イソシアネート化合物MR-200を4部、水(活性水素化合物)を1部配合したものであって、全塩素量が1400ppmであるものである。
また、エポキシ樹脂E-2は、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量165g/当量、ジオール末端不純成分/基本構造成分=0.12、全塩素量:1300ppm)であり(表1の脚注参照)、
MR-200は、日本ポリウレタン社製ポリメチレンフェニレンポリイソシアネートであり(表1の脚注参照)、
エポキシ樹脂用硬化剤C-2について、「製造例2~6で得たアミンアダクトA-2~6((B)成分の各アミン化合物10ppm残留)を粉砕して、表-1記載のエポキシ樹脂用硬化剤C-2~6を得た。」(段落【0098】(前記(1)アのア-6を参照。)と記載されている。
そして、【表-1】を参照すると、エポキシ樹脂用硬化剤C-2の配合は、アミンアダクトA-2とTETA(トリエチレンテトラミン)を配合したものであり、平均粒径が「2.0μ」であるものであり、
製造例2で得たアミンアダクトA-2については、「(アミンアダクト(A-2)の製造)
以下エポキシ樹脂a1-1を1当量とビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量470g/当量、全塩素量1300ppm:以下エポキシ樹脂a1-2と称す)1当量と、トリエチレンテトラミン2当量を2-プロパノールとキシレンの1/2混合溶媒中(樹脂分50%)、80℃で反応させた。その後、減圧下で溶剤と未反応低分子アミン化合物を留去し、トリエチレンテトラミン(TETA)が10ppm未満になった時点で蒸留を終了し、25℃で固体状のアミンアダクトA-2を得た。得られたアミンアダクトの重量平均分子量は2500、分子量分布は1.9であった。」(段落【0089】(前記(1)アのア-6を参照。)と記載されている。
また、「エポキシ樹脂a1-1」は、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/当量、全塩素量1900ppm)」(段落【0088】(前記(1)アのア-6を参照。)というものである。
以上によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」ともいう。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER-2603)15部、フェノールノボラック樹脂(昭和高分子社製、商品名「BRG-558」)6部、合成ゴム(日本ゼオン社製商品名「ニポール1072」、重量平均分子量30万)4部を、メチルエチルケトンとブチルセロソルブアセテートの1:1(重量比)混合溶剤20部に溶解し、この溶液に銀粉末74部を混合し、さらに三本ロールにより混練し、これにさらにマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2を30部加えて、さらに均一に混合させて得た、導電性接着剤であって、
前記マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2は、
200質量部のエポキシ樹脂E-2(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量165g/当量、ジオール末端不純成分/基本構造成分=0.12、全塩素量:1300ppm))に、エポキシ樹脂用硬化剤C-2を100質量部、イソシアネート化合物MR-200(日本ポリウレタン社製ポリメチレンフェニレンポリイソシアネート)を4部、水(活性水素化合物)を1部を、40℃で攪拌しながら4時間反応を続けた後、シェル形成反応を50℃で12時間行って得た、全塩素量が1400ppmのマスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2であり、
エポキシ樹脂用硬化剤C-2は、
アミンアダクトA-2の100質量部を溶融し、これに3ppmのトリエチレンテトラミン(TETA)を均一に混合し、室温に冷却後粉砕して得た、25℃で固体状の平均粒径2.0μmのエポキシ樹脂用硬化剤C-2であり、
アミンアダクトA-2は、
エポキシ樹脂a1-1(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量185g/当量、全塩素量1900ppm))を1当量とビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量470g/当量、全塩素量1300ppm:以下エポキシ樹脂a1-2と称す)1当量と、トリエチレンテトラミン2当量を2-プロパノールとキシレンの1/2混合溶媒中(樹脂分50%)、80℃で反応させた。その後、減圧下で溶剤と未反応低分子アミン化合物を留去し、トリエチレンテトラミン(TETA)が10ppm未満になった時点で蒸留を終了して得た、25℃で固体状であり、重量平均分子量は2500、分子量分布は1.9である、アミンアダクトA-2を粉砕して得たものである。」
イ 甲2に記載された発明
甲2には、請求項1の記載に基づき、以下の発明(以下、「甲2発明」ともいう。)が記載されていると認められる。
<甲2発明>
「全塩素量が0.5重量%以上のビスフエノールA型液状エポキシ樹脂と、粒径44μm以下の微粉末を50重量%以上含む鉄粉とを含有してなり、かつ鉄粉の割合が全樹脂組成物に対して60~80重量%であることを特徴とするエポキシ樹脂硬化剤により硬化せしめる注型用エポキシ樹脂組成物。」
(3) 本件発明1について
ア 甲1を主引用例とする検討
(ア) 本件発明1と甲1発明の対比
甲1発明の「導電性接着剤」は、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER-2603)」と、「マスターバッチ型エポキシ樹脂用硬化剤F-2」を含有する組成物であるから、甲1発明は、本件発明1の「エポキシ樹脂と硬化剤成分とを含む、接着剤用エポキシ樹脂組成物」を充足する。
甲1発明の「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭化成ケミカルズ製AER-2603)」は、旭化成イーマテリアルズ社製の市販品であって、そのエポキシ当量が189g/当量、全塩素量が1800ppm、粘度が12000mPa・sである(必要であれば、前記(1)エ-1に摘記した甲第4号証の段落【0264】を参照。)から、本件発明1の「全塩素量が1000ppm以上であり、且つ粘度が30000mPa・s以下であるエポキシ樹脂」に相当する。
甲1発明の「エポキシ樹脂E-2(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量165g/当量、ジオール末端不純成分/基本構造成分=0.12、全塩素量:1300ppm))」は、本件発明1の「ビスフェノール型エポキシ樹脂」に相当する。
甲1発明の「エポキシ樹脂用硬化剤C-2」は、「アミンアダクトA-2の100質量部を溶融し、これに3ppmのトリエチレンテトラミン(TETA)を均一に混合し、室温に冷却後粉砕して得た、25℃で固体状の平均粒径2.0μmのエポキシ樹脂用硬化剤C-2」ものであるから、粉状であるといえる。また、アミンアダクトは、一般に潜在性硬化剤である。
そうすると、甲1発明の「アミンアダクトA-2」は、本件発明1の「潜在性硬化剤」に相当し、甲1発明の「トリエチレンテトラミン(TETA)」は、本件発明1の「粉末状硬化剤」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「エポキシ樹脂と硬化剤成分とを含む、接着剤用エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂が、
ビスフェノール型エポキシ樹脂と、
全塩素量が1000ppm以上であり、且つ粘度が30000mPa・s以下であるエポキシ樹脂と、を含み、
前記硬化剤成分が、
粉末状硬化剤と、
それ以外の潜在性硬化剤と、を含む、
接着剤用エポキシ樹脂組成物。」
<相違点1>
本件発明1の「エポキシ樹脂組成物」は、その用途が、「構造接着剤用」に特定されているとともに、その特性について、「30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差が、20個以下であり」と特定されているのに対して、甲1発明の用途は、「導電性接着剤」であり、かつ、特性に関する特定を備えていない点
(イ) 相違点1について
甲1には、発明が解決しようとする課題について、「本発明は、低温硬化性に優れ、極めて高い貯蔵安定性を有するエポキシ樹脂用硬化剤、およびエポキシ樹脂組成物、そして、高温でも極めて貯蔵安定性が高く、低温あるいは短時間の硬化条件であっても、高い接続信頼性、高い封止性が得られる接着材料、導電材料、絶縁材料、封止材料、コーティング材料、塗料組成物、プリプレグ、構造用接着剤、熱伝導性材料等を提供することを目的とする」(前記(1)アのア-2を参照。)と記載されている。また、導電性フィルム、導電性ペースト、異方性導電性フィルム、異方性導電性ペースト、絶縁性ペースト、絶縁性フィルム、封止材、コーティング材、塗料組成物、プリプレグ、熱伝導性エポキシ樹脂組成物を具体的に作製したこと(前記(1)アのア-8を参照。)が記載されている。
しかしながら、これらの記載は、甲1の特許請求の範囲に記載された発明には様々な具体的な態様が包含されていて、その用途として、接着材料、導電材料、絶縁材料、封止材料、コーティング材料、塗料組成物、プリプレグ、構造用接着剤、熱伝導性材料等が例示できる旨説明しているだけであって、導電性接着剤を構造用接着剤としても使用可能であることを実証しているわけではない。
また、一般に、導電性接着剤といえるものであれば、構造用接着剤としても好ましく使用することができるといった技術常識はない。
さらに、甲1には、構造用接着剤が備えているべき(備えていると好ましい)特性等に関する記載や示唆もないし、「30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差」に関する記載もない。
そして、甲2、3を見ても、甲1発明の接着剤用エポキシ樹脂組成物の用途を構造用接着剤に変更するとともに、その特性を「30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差が、20個以下であり」と特定することを動機づけるような記載や示唆はない。
そうすると、当業者といえども、甲1発明の接着剤用エポキシ樹脂組成物の用途を構造用接着剤に変更するとともに、その特性を「30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差が、20個以下であり」と特定することを容易になし得たとは認められない。
(ウ) 効果について
本件発明1は、「100μm以上の粒数の差が20個以下であることにより、組成物を構造接着剤として使用したとき接着面の硬化ムラが抑えられ、接着物を保管した後におけるせん断接着強度の低下が抑えられる。」(本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0014】)という効果を奏するものであり、この効果は、当業者といえども予測することができないものであると認められる。
(エ) まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではないし、甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
イ 甲2を主引用例とする検討
(ア) 本件発明1と甲2発明の対比
甲2発明は、「エポキシ樹脂硬化剤により硬化せしめる」「エポキシ樹脂組成物」であるから、組成物を構成する成分として「エポキシ樹脂硬化剤」を含んでいないと認められる。
そうすると、本件発明1と甲2発明の一致点、相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「エポキシ樹脂を含む、エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂が、
ビスフェノール型エポキシ樹脂と、
を含む、
エポキシ樹脂組成物。」
<相違点2>
本件発明1の「エポキシ樹脂組成物」は、その用途が、「構造接着剤用」に特定されているとともに、その特性について、「30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差が、20個以下であり」と特定されているのに対して、甲2発明の用途は、「注型用」であり、かつ、特性に関する特定を何も備えていない点
<相違点3>
本件発明1は、「硬化剤成分」を含むとともに、「前記硬化剤成分が、粉末状硬化剤と、それ以外の潜在性硬化剤と、を含む」と特定されているのに対して、甲2発明は、硬化剤を含まないものである点
<相違点4>
「エポキシ樹脂」について、本件発明1は、「ビスフェノール型エポキシ樹脂と、全塩素量が1000ppm以上であり、且つ粘度が30000mPa・s以下であるエポキシ樹脂と、を含み」と特定されているのに対して、甲1発明では「全塩素量が0.5重量%以上のビスフエノールA型液状エポキシ樹脂」と特定されている点
(イ) 相違点2について
甲2には、甲2発明の用途を「注型用」から構造用接着剤に変更することを動機づけるような記載や示唆が何もない。
また、一般に、注型用エポキシ樹脂組成物といえるものであれば、構造用接着剤としても好ましく使用することができるといった技術常識はない。
また、甲2には、「30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差」に関する記載もない。
また、甲1、3を見ても、甲2発明の注型用エポキシ樹脂組成物の用途を構造用接着剤に変更するとともに、その特性を「30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差が、20個以下であり」と特定することを動機づけるような記載や示唆はない。
そうすると、当業者といえども、甲2発明の接着剤用エポキシ樹脂組成物の用途を構造用接着剤に変更するとともに、その特性を「30℃、90RH%の条件下、30日間経過前後で、粒ゲージ測定を行ったときに100μm以上の粒数の差が、20個以下であり」と特定することを容易になし得たとは認められない。
したがって、相違点3、4について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明に基づいて当業者が容易に発明できた発明ということはできない。
(ウ) 効果について
本件発明1は、「100μm以上の粒数の差が20個以下であることにより、組成物を構造接着剤として使用したとき接着面の硬化ムラが抑えられ、接着物を保管した後におけるせん断接着強度の低下が抑えられる。」(本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0014】)という効果を奏するものであり、この効果は、当業者といえども予測することができないものであると認められる。
(エ) まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2に記載された発明ではないし、<相違点3>及び<相違点4>について検討するまでもなく、甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
(4) 本件発明2~7について
本件発明2~7は、いずれも、本件発明1を直接または間接的に引用し、さらに限定した発明であるところ、前記(3)のとおり、本件発明1は、甲1又は2に記載された発明ではないし、甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。
そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明2~7も、本件発明1と同様の理由により、甲1又は2に記載された発明ではないし、甲1~3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。
(5) 申立ての理由1、2についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立ての理由1、2によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。
2 申立の理由3について
(1) 申立の理由3の概要
申立の理由3の概要は、要するに、
「請求項1の「全塩素量が1000ppm以上であり、且つ粘度が30000mPa・s以下であるエポキシ樹脂」は、「全塩素量」について上限値が規定されておらず、また、「粘度」については、下限値が規定されていない広い範囲が特定されているが、それぞれ2点でしか効果があることを確認していないので、その効果が全く確認されていない実施例の内容を、本件特許発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。」(以下、「申立の理由3-1」ともいう。)、
「請求項4の「全塩素量が、1000ppm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造接着剤用エポキシ樹脂組成物」は、「全塩素量」について上限値が規定されていないが、6つの実施例のうち、「全塩素量」が最大(12000ppm)の実施例4は、DSC発熱量変化が27%であって、他の実施例(いずれも1桁)よりも相当に大きな値であり、かつ、比較例2の7.6%よりも大きいから、その効果が全く確認されていない実施例の内容を、本件特許発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえない。」(以下、「申立の理由3-2」ともいう。)、
というものである(異議申立書43~45頁)。
(2) 判断手法
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである〔知財高裁、平成17年(行ケ)10042号判決参照。〕。
(3) 検討
本件発明1が解決しようとする課題は、「金属、特に、アルミ及び/又は銅との接着力が高く、且つ、接着力のばらつきが小さい構造接着剤用エポキシ樹脂組成物を提供すること」(本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の段落【0007】)であると認められる。また、本件発明1について実施例が5例(実施例1~4、6)記載されており、これらの組成物について接着力とそのばらつきが評価され、その課題を解決できるものであることが確認されているから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
また、申立人の主張は、いずれも、要するに、本件発明1には、実施例よりも効果が劣る態様が含まれていることを主張するだけであって、そもそも、サポート要件違反を主張する内容(当該態様が、課題を解決することができないものであることに関する主張・立証)が含まれていない。
以上のとおりであるから、申立の理由3-1、3-2は、いずれも採用できない。
3 申立の理由4について
(1) 申立の理由4の概要
申立の理由4の概要は、要するに、
「請求項1の「粉末状硬化剤」は、段落32に例示されているもの以外にどのような硬化剤が含まれるのか、その範囲を明確に把握できない。」(以下、「申立の理由4-1」ともいう。)、
「請求項1の「それ以外の潜在性硬化剤」は、段落28に例示されているもの以外にどのような硬化剤が含まれるのか、その範囲を明確に把握できない。」(以下、「申立の理由4-2」ともいう。)、
というものである(異議申立書45~47頁)。
(2) 判断手法
一般に『法36条6項2号は,特許請求の範囲の記載に関し,特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は,仮に,特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には,特許の付与された発明の技術的範囲が不明確となり,第三者に不測の不利益を及ぼすことがあり得るので,そのような不都合な結果を防止することにある。そして,特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術的常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない。』とされているところ〔知財高裁平成21年(行ケ)第10434号、平成22年8月31日判決言渡。〕、このような観点に基づいて、本件特許の明確性要件の適否を以下に検討する。
(3) 検討
請求項1の「粉末状硬化剤」は、その定義が段落31に記載されているので、その技術的な意味は明確であり、「段落32に例示されているもの以外にどのような硬化剤が含まれるのか、その範囲を明確に把握できない」などということはない。
また、請求項1の「それ以外の潜在性硬化剤」は、請求項1の「粉末状硬化剤」とは異なる硬化剤であって、潜在性硬化剤といえるものを意味する技術用語であり、潜在性硬化剤は、当業界で汎用されている技術用語であって、あらかじめエポキシ樹脂に混合した状態で長期間保存でき、熱・光・圧力・湿気などの刺激が与えられると硬化反応を開始する硬化剤のことであるから、その意味は明確である。また、当業者であれば、段落28に例示されていないものであっても、「それ以外の潜在性硬化剤」といえるものであれば、あらゆる剤が含まれていると明確に理解することができるから、「段落28に例示されているもの以外にどのような硬化剤が含まれるのか、その範囲を明確に把握できない」などということはない。
したがって、請求項1の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないから、申立の理由4-1、4-2は、いずれも採用できない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7の特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-701205