特許異議申立
2022-700926
工場内ライン負荷予測モデル作成方法、工場内ライン負荷予測モデル、工場内ライン生産計画作成方法、工場内ライン負荷予測モデル作成プログラム、工場内ライン負荷予測モデル作成装置、及び工場内ライン生産計画作成装置
- 審判番号
- 2022-700926
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-187015
- 登録番号
- 7040506
- 請求日
- 2022年09月22日
- 審決日
- 2023年09月28日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】JFEスチール株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】中川 賢治
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 奥隅 隆
- 審判官 大山 健
- 分類
- P1651.537-YAA(G05B) / P1651.121-YAA(G05B) / P1651.536-YAA(G05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第126条第7項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7040506号発明「工場内ライン負荷予測モデル作成方法、工場内ライン負荷予測モデル、工場内ライン生産計画作成方法、工場内ライン負荷予測モデル作成プログラム、工場内ライン負荷予測モデル作成装置、及び工場内ライン生産計画作成装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7040506号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4、6~7〕、〔5、8〕、〔9~10〕、〔11~12〕、13について訂正することを認める。
特許第7040506号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7040506号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和元年10月10日(優先権主張 平成30年10月19日)に出願され、令和4年3月14日にその特許権の設定登録がされ、同年3月23日に特許掲載公報が発行された。
その特許に対し、令和4年9月22日に特許異議申立人 中川 賢治(以下「申立人」という。)により、請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立てがされ、当審は、令和5年1月4日付けで審尋し、特許権者 JFEスチール株式会社(以下「特許権者」という。)はその指定期間内である同年1月23日に回答書を提出した。その後、当審は、令和5年3月15日付けで取消理由を通知し、特許権者はその指定期間内である同年5月18日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。
そして、当審は、申立人に対して令和5年6月22日付けで訂正の請求があった旨の通知をし、申立人は同年7月27日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 本件訂正の内容
令和5年5月18日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線部は、訂正事項について特許権者が付したものである。)。
【請求項〔1~4、6~7〕について】
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「を含む」
との記載を、
「を含み、
前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
前記学習データ作成ステップは、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する、」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2~4、6~7も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2の
「前記学習データは、ライン負荷を予測するための状態量と目的量とを組とするデータであり、
前記状態量は、前記遡り単位時間だけ遡った時間までの、単位時間ごとの投入材料の特徴量」
との記載を、
「前記学習データは、ライン負荷を予測するための前記状態量と前記目的量とを組とするデータであり、
前記状態量は、前記遡り単位時間だけ遡った時間までの、時間単位ごとの投入材料の特徴量」
に訂正する。
【請求項〔5、8〕について】
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5の
「前記工場内ライン負荷予測モデルは、予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データをもとに作成される、」
との記載を、
「前記工場内ライン負荷予測モデルの生成に用いる学習データは、
予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データであって、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記デ―夕作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組作成され、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組作成される、」
に訂正する。
請求項5の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。
【請求項〔9~10〕について】
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9の
「実行させる」
との記載を、
「実行させ、
前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
前記学習データ作成ステップは、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する、」
に訂正する。
請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。
【請求項〔11~12〕について】
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11の
「を備える」
との記載を、
「を備え、
前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
前記学習データ作成部は、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する、」
に訂正する。
請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。
【請求項13について】
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項13の
「前記工場内ライン負荷予測モデルは、予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データをもとに作成される、」
との記載を、
「前記工場内ライン負荷予測モデルの生成に用いる学習データは、
予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データであって、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組作成され、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組作成される、」
に訂正する。
【明細書の訂正】
(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0026】に記載された「単位時間」を「時間単位」に、「遡り時間」を「遡り単位時間」に訂正する。
(8)訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0027】に記載された「単位時間」を「時間単位」に訂正する。
(9)訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0031】に記載された「単位時間」を「時間単位」に訂正する。
(10)訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0032】に記載された「単位時間」を「時間単位」に訂正する。
(11)訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0037】に記載された「単位時間」を「時間単位」に訂正する。
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0038】に記載された「単位時間」を「時間単位」に訂正する。
(13)訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0051】に記載された「単位時間」を「時間単位」に訂正する。
2 一群の請求項についての説明
(1)請求項〔1~4、6~7〕
本件訂正前の請求項1~4、6~7について、本件訂正前の請求項2~4、6~7は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~4、6~7に対応する本件訂正後の請求項1~4、6~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)請求項〔5、8〕
本件訂正前の請求項5、8について、本件訂正前の請求項8は、請求項5を引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項5、8に対応する本件訂正後の請求項5、8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(3)請求項〔9~10〕
本件訂正前の請求項9~10について、本件訂正前の請求項10は、請求項9を引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項9に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項9~10に対応する本件訂正後の請求項9~10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(4)請求項〔11~12〕
本件訂正前の請求項11~12について、本件訂正前の請求項12は、請求項11を引用しているものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項11に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項11~12に対応する本件訂正後の請求項11~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正事項が全ての訂正要件に適合しているかについて
【請求項〔1~4、6~7〕について】
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項1に係る特許発明は、「学習データ作成ステップ」について、予測モデルを作成するための学習データを作成するものであることを特定している。
これに対して、本件訂正後の請求項1は、「前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
前記学習データ作成ステップは、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する、」との記載の付加により、本件訂正後の請求項1に係る発明における学習データ作成ステップの動作をより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、本件訂正後の請求項2~4、6~7は、本件訂正後の請求項1の上記記載を引用することにより、本件訂正後の請求項2~4、6~7に係る発明における学習データ作成ステップの動作をより具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アから明らかなように、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「学習データ作成ステップ」という発明特定事項を概念的により下位にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の記載を引用する本件訂正前の請求項2~4、6~7の記載についても実質的に訂正するものであるところ、訂正事項1は、本件訂正前の請求項2~4、6~7との関係においても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項1は、以下のとおり、明細書記載の一実施形態に基づいて導き出される構成である。
すなわち、この一実施形態に係る説明として、本件明細書等の段落【0026】には、「学習データは、ライン負荷を予測するための状態量と目的量とを組とするデータである。本実施の形態において、状態量は、ユーザによって設定された、過去又は現在の任意の日時(時刻t)から、任意に指定された日時(時刻t-T:Tは遡り単位時間)までの、単位時間(当審注:後述の(7)~(8)のとおり、「単位時間」は「時間単位」の誤記と認める。第2欄において以下同様。)ごとの投入材料の特徴量(以下、投入材料特徴量ともいう)、ラインにおける特徴量(以下、ライン特徴量ともいう)である。また、目的量は、時刻t+1のラインにおける特徴量である。目的量は、現在時刻よりも先の(未来の)時刻における特徴量、又は生産データ蓄積部11に生産実績が蓄積されていない時刻における特徴量である。」と記載されており、訂正事項1における
「前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、」の事項が記載されている。なお、時刻tの符号は、t’に置き換えられているが、実質的な内容が変わるものではない。
また、段落【0030】には、「学習データ作成部12は、まず、データ作成開始時刻tを決定する(ステップS101)。学習データ作成部12は、入力部15を介して入力された時刻に基づいて、データ作成開始時刻tを決定する。」と記載され、段落【0031】には、「また、学習データ作成部12は、投入材料等の実績値を抽出するための単位時間を決定する(ステップS102)。学習データ作成部12は、入力部15を介して入力された時間に基づいて、単位時間を決定する。ここでは、単位時間を1として説明する。」と記載され、段落【0032】には、「また、学習データ作成部12は、データ作成開始時刻tからの遡り単位時間Tを決定する(ステップS103)。学習データ作成部12は、入力部15を介して入力された時間に基づいて、遡り単位時間Tを決定する。」と記載されており、訂正事項1における
「前記学習データ作成ステップは、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、」の事項が記載されている。
また、段落【0033】には、「学習データ作成部12は、学習データの作成条件を決定した後、時刻(t-T)から時刻tまでの学習データを作成する(ステップS104)。学習データ作成部12は、生産データ蓄積部11を参照して、時刻t´=(t-T)の学習データを作成する。」と記載され、訂正事項1における
「前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、」の事項が記載されている。
また、段落【0035】には、「その後、学習データ作成部12は、時刻t´=t´+1に更新する(ステップS106)。」と記載され、段落【0036】には、「学習データ作成部12は、更新後の時刻t´について、生産実績等の実績データが存在するか否かを、生産データ蓄積部11を参照して判断する(ステップS107)。学習データ作成部12は、更新後の時刻t´について、生産実績等の実績データが存在すると判断した場合(ステップS107:Yes)、ステップS104に移行して、更新後の時刻t´について上述した処理を繰り返す。これに対し、学習データ作成部12は、更新後の時刻t´について、生産実績等の実績データが存在しないと判断した場合(ステップS107:No)、学習データ作成処理を終了する。」と記載されており、訂正事項1における
「前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、」の事項が記載されている。
また、段落【0037】には、「以上説明した学習データ作成処理により、例えば、実績データが存在する時刻(t-T)から時刻tまでの間に単位時間で区切った時刻がN個存在する場合、N組の状態量(投入材料特徴量及びライン特徴量)が作成される。」と記載されており、訂正事項1における
「前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する、」の事項が記載されている。
したがって、上記訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~4、6~7に係る訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項2における「状態量と目的量」との記載を「前記状態量と前記目的量」にする訂正は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い請求項2の状態量と目的量が請求項1の状態量と目的量に対応することを明確にするための訂正である。また、請求項1には「時間単位」と記載されているところ、本件訂正前の請求項2に記載された「単位時間」は、請求項1の記載と整合しておらず、「時間単位」の誤記である。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、及び、同第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アから明らかなように、訂正事項2は、請求項2の状態量と目的量が請求項1の状態量と目的量に対応することを明確にするものであり、また、「単位時間」は「時間単位」の誤記であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件明細書等、及び、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項2は、請求項2の状態量と目的量が請求項1の状態量と目的量に対応することを明確にするための訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。また、特許請求の範囲の請求項1に記載されている「時間単位」という正しい記載に基づいて誤記を訂正するものであるから、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正である。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項2に係る訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
【請求項〔5、8〕について】
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項5に係る特許発明は、「工場内ライン負荷予測モデル」について、予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データをもとに作成されることを特定している。
これに対して、本件訂正後の請求項5は、「前記工場内ライン負荷予測モデルの生成に用いる学習データは、
予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データであって、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記デ―夕作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組作成され、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組作成される、」との記載の付加により、本件訂正後の請求項5に係る発明における工場内ライン負荷予測モデルの作成方法をより具体的に特定し、更に限定するものである。すなわち、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、本件訂正後の請求項8は、本件訂正後の請求項5の上記記載を引用することにより、本件訂正後の請求項8に係る発明における工場内ライン負荷予測モデルの作成方法をより具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アから明らかなように、訂正事項3は、本件訂正前の請求項5における「工場内ライン負荷予測モデル」という発明特定事項を概念的により下位にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
訂正事項3は、本件訂正前の請求項5の記載を引用する本件訂正前の請求項8の記載についても実質的に訂正するものであるところ、訂正事項3は、本件訂正前の請求項8との関係においても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項3は、明細書記載の一実施形態に基づいて導き出される構成であり、上記(1)ウからも明らかなように、上記訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項5、8に係る訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
【請求項〔9~10〕について】
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
本件訂正後の請求項9は、上記(1)アと同様の記載により、本件訂正後の請求項9に係る発明における学習データ作成ステップの動作をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、本件訂正後の請求項10は、本件訂正後の請求項9の上記記載を引用することにより、本件訂正後の請求項10に係る発明における学習データ作成ステップの動作をより具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アから明らかなように、訂正事項4は、「学習データ作成ステップ」という発明特定事項を概念的により下位にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
訂正事項4は、本件訂正前の請求項9の記載を引用する本件訂正前の請求項10の記載についても実質的に訂正するものであるところ、、訂正事項4は、本件訂正前の請求項10との関係においても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項4は、明細書記載の一実施形態に基づいて導き出される構成であり、上記(1)ウからも明らかなように、上記訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項9~10に係る訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
【請求項〔11~12〕について】
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的について
本件訂正後の請求項11は、上記(1)アと同様の記載により、本件訂正後の請求項11に係る発明における学習データ作成部の動作をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、本件訂正後の請求項12は、本件訂正後の請求項11の上記記載を引用することにより、本件訂正後の請求項12に係る発明における学習データ作成部の動作をより具体的に特定し、更に限定するものであるため、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アから明らかなように、訂正事項5は、「学習データ作成部」という発明特定事項を概念的により下位にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
訂正事項5は、本件訂正前の請求項11の記載を引用する本件訂正前の請求項12の記載についても実質的に訂正するものであるところ、訂正事項5は、本件訂正前の請求項12との関係においても、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項5は、明細書記載の一実施形態に基づいて導き出される構成であり、上記(1)ウからも明らかなように、上記訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項11~12に係る訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
【請求項13について】
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
本件訂正後の請求項13は、上記(3)アと同様の記載により、本件訂正後の請求項13に係る発明における工場内ライン負荷予測モデルの作成方法をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アから明らかなように、訂正事項6は、「工場内ライン負荷予測モデル」という発明特定事項を概念的により下位にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項6は、明細書記載の一実施形態に基づいて導き出される構成であり、上記(1)ウからも明らかなように、上記訂正事項6は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項13に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
【明細書の訂正】
(7)訂正事項7
ア 訂正の目的について
明細書の段落【0026】には、「時間単位」と「単位時間」の両方の記載があるところ、両者は同じ意味をあらわすものとして使用されており、また、請求項1には「時間単位」と記載されているから、「単位時間」との記載は「時間単位」の誤記である。同様に、明細書の段落【0026】には、「遡り単位時間」と「遡り時間」の両方の記載があるところ、両者は同じ意味をあらわすものとして使用されており、「遡り時間」は「遡り単位時間」の誤記である。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アから明らかなように、「単位時間」は「時間単位」の誤記であり、また、「遡り時間」は「遡り単位時間」の誤記であるから、訂正事項7に係る明細書の訂正により、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないから、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項7は、本件当初明細書の段落【0026】や特許請求の範囲の請求項1に記載されている「時間単位」及び「遡り単位時間」という正しい記載に基づいて、明細書中の誤記を訂正するものである。したがって、訂正事項7は、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~13に係る訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(8)訂正事項8~13
ア 訂正の目的について
明細書の段落【0027】、【0031】~【0032】、【0037】~【0038】、【0051】に記載された「単位時間」は、「時間単位」の誤記である。
したがって、訂正事項8~13は、上記(7)アと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
上記アから明らかなように、「単位時間」は「時間単位」の誤記であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
ウ 本件当初明細書等記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項8~13は、上記(7)ウと同様の理由により、本件当初明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
エ 特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて
本件においては、本件訂正前の全ての請求項1~13について特許異議の申立てがされているので、本件訂正前の請求項1~13に係る訂正事項8~13に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 本件訂正に対する申立人の主張
(1)申立人の主張の概要
申立人は、令和5年7月27日提出の意見書において、本件訂正により付加された構成は本件明細書等に記載されたものではないことを主張しているところ、その概要は以下とおりである。
ア 請求項1、5、9、11、13に「生産ライン」との記載が追加されたが、本件明細書等には、「製造ライン」とは記載されているものの、「生産ライン」との記載は存在しないから、本件訂正は本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではない。
イ 請求項1、5、9、11、13に、状態量が「生産ラインの特徴量」であることが特定されたが、本件明細書等には、状態量が「単位時間ごとの投入材料の特徴量」と「ラインにおける特徴量」の2つにより構成されることは記載されているものの、状態量として「ラインの特徴量」のみを用いた態様は開示も示唆もされていなから、本件訂正は本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではない。
ウ 請求項1、5、9、11、13に、学習データが「少なくともN組」作成されることが特定されたが、本件明細書等には、N組より多い学習データを作成することは記載されていないから、本件訂正は本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではない。
エ 「データ作成開始時刻(t)」は、実績データが存在する最新の時刻、つまり「現在時刻」と解されるところ、本件明細書等には、「データ作成開始時刻(t)」を「任意の時刻」とすることは記載されていないから、本件訂正は本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正ではない。
(2)申立人の主張に対する判断
ア 明細書の段落【0004】の「製品を生産するライン」との記載に鑑みれば、訂正事項1、3~6における「生産ライン」が段落【0026】の「ライン」と同じ意味であることは明らかであるから、申立人の上記(1)アの主張は採用できない。
イ 訂正事項1、3~6における訂正では、状態量が生産ラインの特徴量「のみ」で構成されることまでは特定されていないから、申立人の上記(1)イの主張は採用できない。
ウ 明細書の段落【0037】には、N組の学習データを作成することが記載されており、段落【0038】には、「また、時刻t+2の予測を行う際には、予測済みの時刻t+1におけるラインの状態量の予測値(ラインの状態量予測値:目的量に相当)が、学習データとして追加される。」と記載されているから、N組の学習データに対してさらに学習データを追加すること、すなわち、N組より多い学習データを作成することが記載されていると認められる。したがって、申立人の上記(1)ウの主張は採用できない。
エ 訂正事項1には、「前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、前記学習データ作成ステップは、データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、」との事項が特定されているところ、当該事項は、学習データの状態量が、任意の時刻(t’)から時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量であることと、学習データ作成ステップが、データ作成開始時刻(t)から時刻(t-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、当該データ開始時刻(t)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とする学習データを作成することが特定されているのであって、データ作成開始時刻(t)を任意の時刻とすることは特定されていない。訂正事項3~6についても同様である。したがって、申立人の上記(1)エの主張は採用できない。
5 小括
したがって、上記の訂正事項1~13は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~4、6~7〕、〔5、8〕、〔9~10〕、〔11~12〕、13について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許発明
本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件特許発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
過去の生産実績を含む工場内の生産データを蓄積する生産データ蓄積ステップと、
蓄積された前記生産データのうち、予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの生産データをもとに学習用の学習データを作成する学習データ作成ステップと、
前記学習データ作成ステップで作成された学習データに基づき、機械学習によって、生産に関する負荷の予測モデルを作成する、予測モデル作成ステップと、
を含み、
前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
前記学習データ作成ステップは、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する、
ことを特徴とする工場内ライン負荷予測モデル作成方法。
【請求項2】
前記学習データは、ライン負荷を予測するための前記状態量と前記目的量とを組とするデータであり、
前記状態量は、前記遡り単位時間だけ遡った時間までの、時間単位ごとの投入材料の特徴量、および、処理工程ごとの処理特性に基づく製造ラインの特徴量であり、
前記目的量は、現在時刻よりも先の時刻における処理工程ごとの製造ラインの特徴量、または、生産実績が蓄積されていない時刻における処理工程ごとの製造ラインの特徴量である、
ことを特徴とする請求項1に記載の工場内ライン負荷予測モデル作成方法。
【請求項3】
請求項1に記載の工場内ライン負荷予測モデル作成方法により作成されたことを特徴とする工場内ライン負荷予測モデル。
【請求項4】
前記負荷の予測モデルは、ローカルに構築された計算機上もしくは、クラウドを含む外部ネットワーク上に存在する機械学習サーバの何れかによって作成されることを特徴とする請求項3に記載の工場内ライン負荷予測モデル。
【請求項5】
予測開始時刻と、予測終了時刻と、予測開始時刻以降の生産計画を入力する入力ステップと、
前記入力ステップで入力された、前記予測開始時刻、及び前記予測開始時刻以降の生産計画と、少なくとも前記予測開始時刻を含む過去の工場ラインの状態に関する情報をもとに、前記予測終了時刻までの、工場内のラインの負荷を、機械学習された工場内ライン負荷予測モデルを用いて予測する負荷予測ステップと、
前記負荷予測ステップで得られた結果をもとに生産計画を修正する生産計画修正ステップと、
を含み、
前記工場内ライン負荷予測モデルの生成に用いる学習データは、
予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データであって、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組作成され、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組作成される、
ことを特徴とする工場内ライン生産計画作成方法。
【請求項6】
前記学習データ作成ステップで作成される学習データは、少なくとも製造された製品のサイズ、品種に関する情報と、予測する設備の処理量および在庫情報とを含む、時系列のデータであることを特徴とする請求項1に記載の工場内ライン負荷予測モデル作成方法。
【請求項7】
前記予測モデル作成ステップで機械学習によって作成される予測モデルを複数有することを特徴とする請求項1に記載の工場内ライン負荷予測モデル作成方法。
【請求項8】
前記工場内ライン負荷予測モデルを複数有し、
前記負荷予測ステップで予測される負荷は、複数の前記工場内ライン負荷予測モデルの各予測値うち、少なくとも一つの予測値、又は平均値、最大値、最小値であることを特徴とする請求項5に記載の工場内ライン生産計画作成方法。
【請求項9】
過去の生産実績を含む工場内の生産実績データを蓄積する生産データ蓄積ステップと、
蓄積された前記生産実績データのうち、予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの生産データをもとに学習用のデータを作成する学習データ作成ステップと、
前記学習データ作成ステップで作成された学習データに基づき、機械学習によって、生産に関する負荷の予測モデルを作成する、予測モデル作成ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
前記学習データ作成ステップは、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する、
ことを特徴とする工場内ライン負荷予測モデル作成プログラム。
【請求項10】
前記予測モデル作成ステップは、ローカルに構築された計算機上もしくは、クラウドを含む外部ネットワーク上に存在する機械学習サーバの何れかによって前記負荷の予測モデルを作成することを特徴とする請求項9に記載の工場内ライン負荷予測モデル作成プログラム。
【請求項11】
過去の生産実績を含む工場内の生産実績データを蓄積する生産データ蓄積部と、
蓄積された前記生産実績データのうち、予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの生産データをもとに学習用のデータを作成する学習データ作成部と、
前記学習データ作成部で作成された学習データに基づき、機械学習によって、生産に関する負荷の予測モデルを作成する、予測モデル作成部と、
を備え、
前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
前記学習データ作成部は、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する、
ことを特徴とする工場内ライン負荷予測モデル作成装置。
【請求項12】
前記予測モデル作成部は、前記生産データ蓄積部及び前記学習データ作成部と同じシステム内、又は、クラウドを含む外部ネットワーク上に設けられることを特徴とする請求項11に記載の工場内ライン負荷予測モデル作成装置。
【請求項13】
予測開始時刻と、予測終了時刻と、予測開始時刻以降の生産計画を入力する入力部と、
前記入力部で入力された、前記予測開始時刻、及び前記予測開始時刻以降の生産計画と、少なくとも前記予測開始時刻を含む過去の工場ラインの状態に関する情報をもとに、前記予測終了時刻までの、工場内のラインの負荷を、機械学習された工場内ライン負荷予測モデルを用いて予測する負荷予測部と、
前記負荷予測部で得られた結果をもとに生産計画を修正する生産計画修正部と、
を備え、
前記工場内ライン負荷予測モデルの生成に用いる学習データは、
予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データであって、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、
データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組作成され、
前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組作成される、
ことを特徴とする工場内ライン生産計画作成装置。」
第4 取消理由通知書にて通知した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~13に係る特許に対して、当審において令和5年3月15日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
理由1.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2.(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)理由1(明確性)について
本件訂正前の請求項1、9、11には、「予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの生産データをもとに学習用の学習データを作成する」と記載されている(下線は当審で付したものである。以下同様。)。
しかし、「予測する時間単位」及び「遡り単位時間」との用語は、それぞれどのような時間又は単位を意味しているのか不明である。
すなわち、発明の詳細な説明の段落【0026】には「ここで、単位時間は、製造ラインの状態変化を予測したい最少時間とし、遡り単位時間Tは、プロダクトミックスの変化の前後を捉えやすい単位で決定する。」と記載されており、段落【0031】には「投入材料等の実績値を抽出するための単位時間を決定する・・・ここでは、単位時間を1として説明する。」と記載されているが、この「単位時間」と、上記請求項1、9、11の「時間単位」は同じ意味であるのか違う意味であるのか不明瞭であり、発明の詳細な説明を参酌しても、「予測する時間単位」とはどのような意味であるのか不明瞭である。
また、「遡り単位時間」についても、上記段落【0026】の記載から、製造ラインの状態変化を予測したい最少時間であって、プロダクトミックスの変化の前後を捉えやすい単位として決定されるものと一応理解できるものの、定義が必ずしも明確でないため、「遡り単位時間までの生産データ」とは、いつの時点からいつの時点までの生産データであるのかが不明である。
さらに、発明の詳細な説明の段落【0026】や回答書には「遡り時間」とも記載がされているが、「遡り単位時間」と「遡り時間」とが同じ意味であるのか違う意味であるのかも不明瞭である。
また、本件訂正前の請求項5、13の「前記工場内ライン負荷予測モデルは、予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの工場内の生産データをもとに作成される」との記載についても同様に不明瞭である。
よって、本件訂正前の請求項1、5、9、11、13に係る発明、及び、本件訂正前の請求項1、5、9、11の記載を引用する本件訂正前の請求項2~4、6~8、10、12に係る発明は明確でない。
(2)理由2(サポート要件)について
本件訂正前の請求項1~13には、時刻t’から繰り返し学習データを作成することも、学習データを複数作成することも特定されておらず、単一の学習データから予測モデルを作成するものまでを含み得るものとなっている。
そうすると、本件訂正前の請求項1~13に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。
2 取消理由についての判断
(1)理由1について
本件訂正により、「単位時間」は「時間単位」に訂正されたことにより、「予測する時間単位」は、明細書の段落【0031】で説明されるものであることが明確に特定できる。また、「遡り時間」は「遡り単位時間」に訂正され、学習データ又は生産データは、「任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組」とすることを特定する訂正がされたことにより、学習データ又は生産データが、いつの時点からいつの時点までのデータであるのかが明確に特定できるから、理由1は解消したものと認められる。
(2)理由2について
本件訂正により、複数の学習データを作成することを特定する訂正がされたことにより、単一の学習データから予測モデルを作成するものは除外されたから、理由2は解消したものと認められる。
3 小括
したがって、本件特許発明1~13について、取消理由通知の取消理由である理由1~2はいずれも解消したから、本件特許発明1~13に係る特許は、通知した取消理由により取り消すことはできない。
第5 当審が取消理由通知で採用しなかった特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由についての判断
1 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由の概要及び証拠
(1)特許法第29条第2項(進歩性)に係る理由
本件特許発明1~13は、甲第1号証~甲第5号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。
(2)申立人が提出した証拠
甲第1号証:中国特許出願公開第106295995号明細書
甲第2号証:特開2012-153512号公報
甲第3号証:特開2019-53634号公報
甲第4号証:国際公開第2019/012654号
甲第5号証:国際公開第2018/151215号
甲第6号証:特願2019-187015号の令和3年3月22日付け拒絶理由通知書
甲第7号証:特願2019-187015号の令和3年5月18日に提出された手続補正書
甲第8号証:特願2019-187015号の令和3年5月18日に提出された意見書
(以下、各甲号証を「甲1」などという。)
(3)特許法第36条第6項第2号(明確性)に係る理由
ア 本件特許発明1の「ロット単位の変化時間」は、どのような時間を意味するのか不明である。
イ 本件特許発明1において、「遡り単位時間」を、「予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上」に設定することの技術的意義が不明確である。また、「遡り単位時間」の上限が特定されていないから、「遡り単位時間」の範囲が不明確である。
ウ 本件特許発明1の「遡り単位時間までの生産データ」は、どのような期間の生産データであるのか不明確である。
エ よって、本件特許発明1~13は不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない。
(4)特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)に係る理由
ア 本件特許明細書には、「遡り単位時間」を、「予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上」に設定することの技術的意義が記載されておらず、発明の効果を奏するように遡り単位時間を定めることができないから、実施可能要件に違反する。
イ 本件特許明細書には、「遡り単位時間」の上限が規定されていないことの技術的意義が記載されていないから、当業者が実施できる程度に記載されていない。
ウ よって、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号の要件を満たしていない。
2 当審における判断
(1)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 甲1発明
甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「生産対象の所定履歴時間枠内における生産データを周期的に取得し蓄積する蓄積ステップと、
前記蓄積ステップで蓄積された所定履歴時間枠内における生産データをもとに学習用の学習データを作成する学習データ作成ステップと、
前記学習データ作成ステップで作成された学習データに基づき、機械学習によって、履歴時間枠内の生産データの変化傾向を分析することにより構築された製品生産能力負荷の予測モデルを作成する、予測モデル作成ステップと、
を含む完成品又は半製品の単位時間当たりの生産能力負荷の予測モデル作成方法。」
イ 本件特許発明1と甲1発明の対比・判断
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、本件特許発明1の学習データ作成ステップは、蓄積された生産データのうち、予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定される遡り単位時間までの生産データをもとに学習用の学習データを作成するものであって、「前記学習データは、任意の時刻(t’)から、該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、前記学習データ作成ステップは、データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し、前記任意の時刻(t’)に時間単位を加算して更新した時刻を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成することを繰り返しながら複数組の学習データを作成し、前記データ作成開始時刻(t)に対して前記遡り単位時間(T)により定まる時刻(t-T)までの時間単位で区切った時刻の数をNとした場合、少なくともN組の学習データを作成する」ものであるのに対し、甲1発明の学習データ作成ステップは、このような学習データを作成していない点(以下「相違点」という。)で本件特許発明1と相違している。
上記相違点について検討する。
上記相違点に係る構成は、甲1の記載から明らかなものではなく、申立人が提示した甲2~5のいずれにも記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、甲1発明、及び、甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件特許出願の審査書類である甲6~8の記載内容を参酌しても同様である。
そして、本件特許発明1は、上記相違点に係る構成を備えることにより、ロットの切り替わりを超えた時刻のデータを含めて作成された学習データに基づいて予測モデルを作成することができるため、プロダクトミックスに対応したモデルを作成することができるという効果を奏する。
ウ 本件特許発明2~13について
本件特許発明5、9、11、13についても、上記相違点と同様の点で甲1発明と相違しているから、甲1発明、及び、甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、請求項1、5、9、11の記載を引用する本件特許発明2~4、6~8、10、12についても同様である。
エ 小括
上記ア~ウのとおり、本件特許発明1~13は、甲1発明、及び、甲2~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。また、本件特許出願の審査書類である甲6~8の記載内容を参酌しても同様である。
よって、請求項1~13に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
(2)特許法第36条第6項第2号(明確性)について
ア 本件特許発明1の「ロット単位の変化時間」は、「あるロットの製品を製造し始めてから、別のロットの製品の製造に切り替わるまでの期間」を意味することは明らかである。
イ 本件特許発明1は、上記(1)イでも説示したとおり、遡り単位時間を予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上で設定することにより、ロットの切り替わりを超えた時刻のデータを含めて作成された学習データに基づいて予測モデルを作成することができるため、プロダクトミックスに対応したモデルを作成することができるという効果を奏するという技術的意義を有することは明らかである。また、遡り単位時間が長くなっても当該効果を奏することは明らかであるから、遡り単位時間の上限値を特定する必要がないことも明らかである。
ウ 本件特許発明1の生産データは、「該時刻(t’)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t’-T)までの期間の生産ラインの特徴量である状態量と、前記任意の時刻(t’)より先の時刻の生産ラインの特徴量である目的量とを組とし、」及び「前記学習データ作成ステップは、データ作成開始時刻(t)、前記時間単位、前記遡り単位時間(T)を決定し、前記データ作成開始時刻(t)から前記遡り単位時間(T)だけ遡った時刻(t-T)を前記任意の時刻(t’)とする学習データを作成し」との記載から、時刻(t-2T)から時刻tまでの期間の生産データであることは明らかである。
エ 小括
上記ア~ウのとおり、本件特許発明1~13は明確であるから、請求項1~13に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。。
(3)特許法第36条第4項第1号(サポート要件)について
ア 上記(2)イのとおり、「遡り単位時間」を、「予測する時間単位の2倍以上かつロット単位の変化時間の半分以上」に設定することの技術的意義は明らかである。
イ 上記(2)イのとおり、本件特許発明1~13は、遡り単位時間が長くなっても発明の効果を奏することは明らかであるから、「遡り単位時間」の上限値を特定する必要がないことは明らかである。
ウ 小括
上記ア~イのとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているから、請求項1~13に係る本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
3 まとめ
したがって、当審が取消理由通知で採用しなかった特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によって、本件特許発明1~13を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知書により通知した取消理由1~2及び特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~13に係る特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700926