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特許異議申立

2022-700811

吸収性物品

審判番号
2022-700811
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-139680
登録番号
7022179
請求日
2022年08月17日
審決日
2022年12月09日
公報発行日
2023年01月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】花王株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【異議申立人】久門 享
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 當間 庸裕
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-Y (A61F) / P1651.121-Y (A61F) / P1651.537-Y (A61F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7022179号発明「吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7022179号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7022179号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年8月20日の出願であって、令和4年2月8日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和4年2月17日)がされ、その後、その特許に対し、令和4年8月17日に特許異議申立人久門享(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~10に、それぞれ記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 廃棄形態を維持するための廃棄用テープが物品本体部分の外面に配された吸収性物品であって、 前記廃棄用テープは、前記物品本体部分の外面に固定されている固定部と、伸長部と、止着部とが、この順で該廃棄用テープの長手方向に沿って配されているとともに、折り畳まれた状態で前記物品本体部分の外面に設けられており、 前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸縮可能であり、 前記止着部は、前記折り畳まれた状態を解除した状態において前記物品本体部分の外面側を向く本体対向面に、粘着面を有しており、 前記伸長部は、前記長手方向への伸長後に収縮させることにより、該長手方向と直交する幅方向の断面形状が前記本体対向面とは反対の面側が凸状の湾曲形状を有する、湾曲部を生じるようになされている、吸収性物品。 【請求項2】 前記伸長部は、少なくとも、300%伸長後に自然状態としたときに、前記湾曲部を生じるようになされており、300%伸長後に自然状態としたときの前記湾曲部は、投影幅に対する高さの比率が0.2以上である、請求項1に記載の吸収性物品。 【請求項3】 前記伸長部は、少なくとも、300%及び400%伸長後に自然状態としたときに、前記湾曲部を生じるようになされており、400%伸長後に自然状態としたときの前記湾曲部は、投影幅に対する高さの比率が、300%伸長後に自然状態としたときの前記湾曲部の、投影幅に対する高さの比率よりも大きい、請求項1又は2に記載の吸収性物品。 【請求項4】 前記伸長部は、少なくとも、300%又は400%伸長後に自然状態としたときに、前記湾曲部が生じるようになされており、該湾曲部は、前記幅方向の一端部又は両端部が、前記湾曲部の投影幅の範囲より内側に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項5】 前記伸長部は、300%伸長後に自然状態としたときの残留歪みが150%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項6】 前記伸長部は、収縮性の異なる複数の層を備えている、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項7】 前記廃棄用テープは、三つ折り状態で前記外面に保持されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項8】 吸収性コアを含む吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配されて該吸収性本体を固定している外装体とを備え、 前記物品本体部分の外面は、前記外装体の外面であり、 前記廃棄用テープは、前記伸長部と前記固定部の境界部が、前記外装体における前記吸収性コアと重ならない領域に位置している、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。 【請求項9】 前記物品本体部分に固定されている前記廃棄用テープの前記固定部と重なり、前記吸収性コアとは重ならない領域における、前記外装体の前記外面を形成している外層シートよりも肌対向面側に、物品幅方向に伸長可能な弾性体を備えている、請求項8項に記載の吸収性物品。 【請求項10】 吸収性コアを含む吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配されて該吸収性本体を固定している外装体とを備え、 前記物品本体部分の外面は、前記外装体の外面であり、 前記外装体は、前記外装体の外面を形成している外層シートと、該外層シートよりも肌対向面側に位置する内層シートとを含んで構成されており、 前記物品本体部分に固定されている前記廃棄用テープの前記固定部のうち、前記伸長部と前記固定部の境界部側の部分と重なる領域に、弾性糸が、前記外層シートと前記内層シートとの間に挟まれた状態で、物品幅方向に伸長可能に配されており、 前記弾性糸は、前記廃棄用テープの前記固定部と重なる領域においては、前記外層シートと非接合であるか又は前記外層シートと一部のみが接合している、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸収性物品。」 第3 申立理由の概要 申立人は、以下の証拠を提出し、概略、次のとおり、特許を取り消すべきものである旨を主張している(なお、甲第1号証等を以下「甲1」等という。また、特許異議申立書を以下「申立書」といい、行数に空行は含まない。)。 1 申立理由1(新規性) (1)本件発明1~9は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。(申立書36ページ下から4行~41ページ13行) (2)本件発明1~9は、甲2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。(申立書41ページ14行~46ページ8行) (3)本件発明1~9は、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。(申立書46ページ9行~51ページ3行) 2 申立理由2(進歩性) (1)本件発明1~10は、甲1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。(申立書51ページ4行~55ページ2行) (2)本件発明1~10は、甲2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。(申立書55ページ3行~58ページ下から5行) (3)本件発明1~10は、甲3に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。(申立書58ページ下から4行~62ページ下から7行) 3 申立理由3(サポート要件) 本件発明1、3、5~10は、従来技術に比して自着しにくくなり廃棄形態にする動作をスムーズに行える程度の凸状の湾曲部がどのような湾曲部であるかについてなんら特定されておらず、発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。(申立書62ページ下から6行~63ページ下から9行) 4 申立理由4(明確性) 本件特許は、次のとおり、本件発明1~10が明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)請求項1の「生じるようになされている」とは、伸長部の構成によって実現されることを示しているのか、伸長と収縮をさせる外力によって実現されることを示しているのか不明である。(申立書63ページ下から7行~64ページ1行) (2)請求項6における伸長部が、高収縮の伸縮フィルムと低収縮の伸縮フィルムを含む中間部用シート片以外に、中間部用シート片に粘着剤層を単に適用した積層構成も包含するのか不明である。また、請求項6における伸長部には、伸縮時に凸状となって湾曲部を形成し得ない、層構造が対称の中間部用シート片も包含され得て、発明特定事項に技術的な不備がある。(申立書64ページ2行~65ページ下から6行) <引用文献等一覧> 甲1:特開2019-30634号公報 甲2:特開2019-187717号公報 甲3:特開2019-187718号公報 甲4:特開2013-118923号公報 甲5:特開2005-270181号公報 第4 当審の判断 事案に鑑み、申立理由3(サポート要件)、申立理由4(明確性)、申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)の順に判断する。 1 申立理由3(サポート要件)について (1)発明の詳細な説明の記載 本件発明が解決しようとする課題に関して、本件特許明細書には次の記載がある(下線は当審が参考のために付し、「・・・」は文の省略を意味する。以下同じ。)。 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1に記載の廃棄用テープによれば、使用前は折り畳まれてコンパクトな廃棄用テープでありながら、使用時には伸長部の伸長に起因してその長さが増加することで、丸めたおむつの周囲に十分に巻き付けることができ、そのおむつを丸めた廃棄状態に維持し易い。しかしながら、一度の巻き付け操作でコンパクトな廃棄状態にできるとは限らず、よりコンパクトに纏めるために、巻きかけの廃棄用テープを一度ほどき、おむつをコンパクトに丸め直してから、再度廃棄用テープを伸長させて巻き付けるという操作がしばしば行われる。この時、廃棄用テープは伸長や収縮が繰り返されることになるが、収縮後において、伸長部に弛みが生じて止着部の粘着面が伸長部に自着してしまい、これを無理にはがすと廃棄用テープが破壊して使用不能となってしまう場合がある。 また、おむつをコンパクトに丸め直す際に、一度伸ばした廃棄用テープから指を放してしまう場合もあり、このような場合にも、廃棄用テープが不用意に折れ曲がってしまって、止着部の粘着面が伸長部に自着してしまう場合が生じ得る。 【0005】 本発明の課題は、前述した欠点を解消し得る吸収性物品を提供することにある。」 「【0033】 おむつ1を図4に示す廃棄形態に維持するために、廃棄用テープ10を伸長方向X1Aに引っ張って展開状態にしたのち、廃棄用テープ10に対して図5(b)に示すような伸長動作と、引っ張る力を弱めることで、廃棄用テープ10を図5(c)に示すように収縮させる収縮動作とが、繰り返されることがある。このような伸縮動作が繰り返されると、図6に示すように、伸長部15は、収縮時において伸長部15の残留歪み分、初期状態よりも引き延ばされて薄くなって、伸長部15に弛みが生じるとともに剛性が低下し、折れ曲がりやすくなってしまう。一旦このような状態になってしまうと、おむつ1を再度丸め直して廃棄用テープ10を巻きつける過程において、伸長部15が折れ曲がりやすくなってしまうことに起因して伸長部15と止着部18に設けられた粘着面20とが自着してしまうことがある。このように伸長部15と止着部18が自着してしまうと、廃棄用テープ自体を上手く、おむつ1に巻き付けることが困難となり、場合によっては廃棄状態に保持できないことが起こり得る。 また、おむつ1をコンパクトに丸め直す際に、一度伸ばした廃棄用テープ10の止着部18から手を放してしまう場合もあり、このような場合には廃棄用テープ10が不用意に折れ曲がってしまって、止着部18の粘着面20が伸長部15に自着してしまう場合も生じ得る。」 このような課題を解決するための手段に関して、本件特許明細書には次の記載がある。 「【0034】 そこで、本実施形態に斯かるおむつ1における伸長部15は、図5(b)、図5(c)に示すように、長手方向X1への伸長後に収縮させることにより、長手方向X1と直交する幅方向Y1の断面形状が本体対向面dとは反対の面u側が凸状の湾曲形状を有する、湾曲部22を生じるようになされている。湾曲部22は、例えば、伸長後に引っ張る力を解除して自然状態としたときに生じる。 湾曲部22の湾曲形状は、より詳細には、本体対向面d側が凹状で、該本体対向面dとは反対の面u側が凸状となるように湾曲した形状である(図8参照)。 ・・・ 【0035】 このように、伸長部15が、長手方向X1と直交する幅方向Y1の断面形状が、一面が凹状、他面が凸状となるように湾曲した形状の湾曲部22を生じることで屈折しにくくなり、テープ収縮時に伸長部15と止着部18が自着しにくくなる。また、伸長部15は収縮時に湾曲形状を有し、且つ、伸縮性のある材質で構成されていることから、湾曲した伸長部15が曲がるような変形を受けたとしても、反発して元に戻ろうとする作用が働き、伸長部はまっすぐな状態に復元しようとする。このような作用からも、テープ収縮時に伸長部が屈折して伸長部15と止着部18が自着する事が生じにくくなる。このため、廃棄用テープ10の不具合が発生し難く、おむつ1を廃棄形態にする動作をスムーズに行える。 【0036】 さらに、本実施形態では伸長部15の長手方向X1と直交する幅方向Y1の断面形状が、本体対向面dとは反対の面uが凸状の湾曲形状を有する湾曲部22を生じるようになされていることから、仮に廃棄用テープ10が折れ曲がる場合に、止着部18の粘着面20が相対するのは伸長部15の凸状の面とは反対の面となる。この場合、止着部18の粘着面20に接するのは伸長部15の側縁部のみとなり、凸状の湾曲した面と相対する場合に比して、止着部18の粘着面に接する伸長部15の面積は小さくすみ、接着しにくく、仮に接着してしまった場合にも剥がす時に廃棄用テープが破壊しにくい。このため、なお一層、廃棄用テープ10の不具合が発生し難く、おむつ1を廃棄形態にする動作をスムーズに行うことができる。」 (2)判断 本件発明1は、「廃棄形態を維持するための廃棄用テープが物品本体部分の外面に配された吸収性物品であって、前記廃棄用テープは、前記物品本体部分の外面に固定されている固定部と、伸長部と、止着部とが、この順で該廃棄用テープの長手方向に沿って配されているとともに、折り畳まれた状態で前記物品本体部分の外面に設けられており、前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸縮可能であり、前記止着部は、前記折り畳まれた状態を解除した状態において前記物品本体部分の外面側を向く本体対向面に、粘着面を有して」いる吸収性物品において、「前記伸長部は、前記長手方向への伸長後に収縮させることにより、該長手方向と直交する幅方向の断面形状が前記本体対向面とは反対の面側が凸状の湾曲形状を有する、湾曲部を生じるようになされている」ことを発明特定事項としている。上記(1)に示した本件特許明細書の記載を総合すると、これら発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができるといえる。 よって、本件発明1~10は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (3)申立人の主張について 申立人は、本件発明1、3、5~10は、従来技術に比して自着しにくくなり廃棄形態にする動作をスムーズに行える程度の凸状の湾曲部がどのような湾曲部であるかについてなんら特定されていないため、出願時の技術常識からしても課題を解決し得ないことが明らかな緩やかな凸状の湾曲部も包含しており、本件特許明細書には、このような緩やかな凸状の湾曲形状を有する湾曲部を採用したときに課題を解決し得ることについては何ら記載も示唆もなく、課題を解決するための手段として、特定の湾曲部を採用する手段が記載されるのみである旨主張している。(申立書62ページ下から6行~63ページ下から9行) そこで上記主張について検討する。 伸縮可能な伸長部が伸長後に収縮させることにより湾曲部を生じることで、本件特許明細書に示されるとおり、伸長部は、屈折しにくくなり、曲がるような変形を受けてもまっすぐな状態に復元しようとし(【0035】)、止着部の粘着面に接する面積が小さくすみ(【0036】)、止着部の粘着面が伸長部に自着し難くなるという効果を奏し、本件発明の課題を解決することが理解できる。そして、申立人が主張するような緩やかな凸状の湾曲部であっても、湾曲部が生じている以上、湾曲部が生じていないものに比べて、上記効果が生じることは明らかである。 また、本件特許明細書には、「湾曲部22の、投影幅Wに対する高さD1の比率が0.2以上である」(【0046】)態様や、「伸長部15は、400%伸縮後、少なくとも湾曲部22におけるテープ幅方向Y1の端部16c、16d(最内端16ca、16da)が、湾曲部22の投影幅W内に位置する端面形状である」(【0051】)態様が記載されている。これらの態様は「より屈折しにくくなって伸長部15と止着部18の自着を防止できるので好ましい」ものとして記載されており、必ずしもこれらの態様でなくても上記効果を生じ、本件発明の課題を解決することが理解できる。そのため、湾曲部がこれら特定の湾曲部の態様のものであることは、本件発明の課題を解決するための手段として必須のものであるとはいえない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 2 申立理由4(明確性)について (1)判断 本件発明1の特定事項により、本件発明1は、少なくとも「廃棄形態を維持するための廃棄用テープが物品本体部分の外面に配された吸収性物品」であって、「前記廃棄用テープは、前記物品本体部分の外面に固定されている固定部と、伸長部と、止着部とが、この順で該廃棄用テープの長手方向に沿って配されて」おり、「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸縮可能であり」、「前記伸長部は、前記長手方向への伸長後に収縮させることにより、該長手方向と直交する幅方向の断面形状が前記本体対向面とは反対の面側が凸状の湾曲形状を有する、湾曲部を生じるようになされている」ものである。よって、伸縮可能である伸長部が長手方向への伸長後に収縮させることにより湾曲部を生じるようになされていることは明確であり、不明瞭とするところはない。 また、本件発明6の特定事項により、本件発明6は、「前記伸長部は、収縮性の異なる複数の層を備えている」ものであり明確であって、不明瞭とするところはない。 よって、本件発明1~10は明確である。 (2)申立人の主張について ア 申立人は、本件発明1の「生じるようになされている」とは、伸長部の構成によって実現されることを示しているのか、伸長と収縮をさせる外力によって実現されることを示しているのか不明である旨主張している。(申立書63ページ下から7行~64ページ1行) そこで上記主張について検討する。 本件発明1では、「伸長部」は、「伸縮可能であ」ることが特定され、その上で、「前記長手方向への伸長後に収縮させることにより、・・・湾曲部を生じるようになされている」ことが特定されている。そのため、本件発明1において、湾曲部を「生じるようになされている」とは、伸縮可能な伸長部が伸長後に収縮されることによって実現されることを示していることが明らかである。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 イ 申立人は、本件発明6における伸長部が、高収縮の伸縮フィルムと低収縮の伸縮フィルムを含む中間部用シート片以外に、中間部用シート片に粘着剤層を単に適用した積層構成も包含するのか不明である旨主張している。(申立書64ページ2行~65ページ3行) そこで上記主張について検討する。 本件発明6は、「前記伸長部は、収縮性の異なる複数の層を備えている」ことが特定されている。したがって、当該特定事項には、申立人の主張における「中間部用シート片に粘着剤層を単に適用した積層構成」のうち「中間部用シート片」と「粘着剤層」との収縮性が異なるものが包含されることが明らかである。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 ウ 申立人は、本件発明6における伸長部には、伸縮時に凸状となって湾曲部を形成し得ない、層構造が対称の中間部用シート片も包含され得て、発明特定事項に技術的な不備がある旨主張している。(申立書65ページ4行~下から6行) そこで上記主張について検討する。 本件発明6は、「前記伸長部は、収縮性の異なる複数の層を備えている、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品」と特定されるとともに、本件発明6が引用する本件発明1のとおり、「前記伸長部は、前記長手方向への伸長後に収縮させることにより、該長手方向と直交する幅方向の断面形状が前記本体対向面とは反対の面側が凸状の湾曲形状を有する、湾曲部を生じるようになされている」と特定されている。すなわち、本件発明6の伸長部は、伸縮時に凸状となって湾曲部を形成することが特定されているといえる。したがって、本件発明6に、申立人の主張における「伸縮時に凸状となって湾曲部を形成し得ない、層構造が対称の中間部用シート片」が包含されないことは明らかである。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 4 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)について (1)刊行物の記載 ア 甲1について (ア)甲1に記載された事項 甲1には、次の記載がある。 「【請求項1】 ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を有し、着用状態において着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部を備えたパンツ型使い捨ておむつであって、 前記使い捨ておむつの外面に、該使い捨ておむつの廃棄形態を維持するための廃棄用テープが設けられており、 前記廃棄用テープは、前記使い捨ておむつの外面に固定されている固定部と、伸長部と、止着部とが、この順で該廃棄用テープの長手方向に沿って配置されているとともに、この順で積層された三つ折り状態になっており、 ・・・パンツ型使い捨ておむつ。」 「【0017】 廃棄用テープ10における止着部18は、おむつ1の外面における任意の位置に止着可能になっており、おむつ1の廃棄形態を廃棄用テープ10で維持するときに、廃棄用テープ10の先端域をおむつ1の外面に止着するための部位である。止着部18は止着部用シート片19を有している。止着部用シート片19は、先に述べた固定部用シート片13及び/又は伸長部用シート片16と同じ長さ及び/又は同じ幅であってもよく、あるいはそうでなくてもよい。止着部用シート片19は、第1面19a及び第2面19bを有している。また止着部18は止着部用粘着部20を有している。止着部用粘着部20は、止着部用シート片19の第2面19bに設けられている。止着部用粘着部20は、三つ折り状態になっている廃棄用テープ10における止着部18と伸長部15との間を剥離可能に接合し、且つ止着部18をおむつ1の外面における任意の位置に確実に止着するものである。この観点から止着部用粘着部20の粘着性の程度が決定されることが好ましい。」 「【0024】 伸長部15が上述の引張強度や伸び量を有するためには、伸長部15を構成する伸長部用シート片16として、適切な材料を選択すればよい。具体的には、伸長部用シート片16の構成材料として、例えば伸長可能なフィルムを用いることができる。そのようなフィルムとしては、例えば単一層フィルム、及び共押出しフィルムのような多層フィルムが挙げられる。また、伸長可能なフィルムを構成する材料としては、例えば線状低密度ポリエチレンなどのポリオレフィンが好ましい。また、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種の材料も好ましい。更に、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利である。」 「【0041】 図3には本実施形態のおむつ1を廃棄するときの様子が示されている。同図に示すとおり、おむつ1を廃棄するときには、おむつ1における腹側部Aが内向きになるように、おむつ1を股下部Cからウエスト開口部1Wに向けて巻き上げていき、巻き上げ形態を作る。巻き上げ形態の完成状態では、背側部Bに設けられている廃棄用テープ10が露出している。この状態下、廃棄用テープ10の摘まみ片21を指で把持して引っ張り、廃棄用テープ10の三つ折りを解除して直線状に展開しつつ、伸長部15を伸長させる。上述のとおり、伸長部15は容易に且つ長く伸長する。次いで図4に示すとおり、長く伸びた廃棄用テープ10によって巻き上げ形態のおむつを巻き付け、廃棄用テープ10の先端域に位置する止着部18の止着部用粘着部20を、おむつ1の外面に止着して巻き上げ形態、すなわち廃棄形態を維持する。」 「【図1】 [図:0001393121000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001393121000002.jpg] 」 「【図3】 [図:0001393121000003.jpg] 」 「【図4】 [図:0001393121000004.jpg] 」 (イ)甲1発明 上記(ア)に示した事項を総合すると、甲1には、以下の「甲1発明」が記載されている。 「使い捨ておむつの外面に、該使い捨ておむつの廃棄形態を維持するための廃棄用テープ10が設けられているパンツ型使い捨ておむつであって、 前記廃棄用テープ10は、前記使い捨ておむつの外面に固定されている固定部と、伸長部15と、止着部18とが、この順で該廃棄用テープ10の長手方向に沿って配置されているとともに、この順で積層された三つ折り状態になっており、 前記伸長部15は、三つ折りを解除して直線状に展開しつつ、伸長させられ、伸長部15を構成する伸長部用シート片16の構成材料として、少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利であり、 前記止着部18は、止着部用粘着部20を有し、止着部用粘着部20は、止着部用シート片19の第2面19bに設けられており、長く伸びた廃棄用テープ10によって巻き上げ形態のおむつを巻き付け、止着部用粘着部20を、おむつ1の外面に止着する、使い捨ておむつ。」 イ 甲2について (ア)甲2に記載された事項 甲2には、次の記載がある。 「【請求項1】 ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を有し、着用状態において着用者の腹側に配される腹側部、股間部に配される股下部及び背側に配される背側部を備えたパンツ型使い捨ておむつであって、 前記使い捨ておむつの外面に、廃棄用テープが設けられており、 前記廃棄用テープは、前記使い捨ておむつの外面に固定されている固定部と、伸長部と、止着部とが、この順で該廃棄用テープの長手方向に沿って連結されているとともに、この順で積層された三つ折り状態になっており、 三つ折り状態になっている前記廃棄用テープは、前記止着部と前記伸長部との間が剥離可能に接合されているとともに、前記伸長部と前記固定部との間も剥離可能に接合されており、 前記伸長部は、三つ折り状態を解除した展開状態において前記廃棄用テープの長手方向に伸長可能であり、 ・・・パンツ型使い捨ておむつ。」 「【0018】 おむつ1の背側部Bには、図1に示すように、廃棄用テープ10が設けられている。廃棄用テープ10は、おむつ1の廃棄形態を維持するために用いられるものである。廃棄用テープ10は、おむつ1の背側部Bにおける横方向Yの略中央部に位置している。また廃棄用テープ10は、その長手方向がおむつ1の縦方向Xに一致するように設けられている。」 「【0024】 廃棄用テープ10における止着部18は、おむつ1の外面における任意の位置に止着可能になっており、おむつ1の廃棄形態を廃棄用テープ10で維持するときに、おむつ1の外面に止着される部位である。止着部18は廃棄用テープ10の先端域を形成しており、止着部用シート片19を有している。止着部用シート片19は、固定部用シート片13又は伸長部用シート片16と同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。また、止着部用シート片19は、固定部用シート片13又は伸長部用シート片16と同じ幅であってもよく、異なる幅であってもよい。止着部用シート片19は、第1面19a及び第2面19bを有している。三つ折り状態になっている廃棄用テープ10において止着部用シート片19は、第2面19bが伸長部15と対向している。また止着部18は止着部用粘着部20を有している。止着部用粘着部20は、止着部用シート片19の第2面19bに設けられている。止着部用粘着部20は、三つ折り状態になっている廃棄用テープ10における止着部18と伸長部15との間を剥離可能に接合し、且つ止着部18をおむつ1の外面における任意の位置に確実に止着するものである。この観点から止着部用粘着部20の粘着性の程度が決定されることが好ましい。」 「【0062】 伸長部15が伸長可能であるためには、伸長部15を構成するシート片16として、適切な材料を選択すればよい。具体的には、これらシート片16の構成材料として、例えば伸長可能なフィルムを用いることができる。そのようなフィルムとしては、例えば単一層フィルム、及び共押出しフィルムのような多層フィルムが挙げられる。また、伸長可能なフィルムを構成する材料としては、例えば線状低密度ポリエチレンなどのポリオレフィンが好ましい。また、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種の材料も好ましい。更に、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利である。」 「【図1】 [図:0001393121000005.jpg] 」 「【図3】 [図:0001393121000006.jpg] 」 「【図4】 [図:0001393121000007.jpg] 」 「【図5】 [図:0001393121000008.jpg] 」 (イ)甲2発明 上記(ア)に示した事項を総合すると、甲2には、以下の「甲2発明」が記載されている。 「使い捨ておむつの外面に、廃棄用テープ10が設けられており、廃棄用テープ10は、おむつ1の廃棄形態を維持するために用いられるものである、パンツ型使い捨ておむつであって、 前記廃棄用テープ10は、前記使い捨ておむつの外面に固定されている固定部と、伸長部15と、止着部18とが、この順で該廃棄用テープ10の長手方向に沿って連結されているとともに、この順で積層された三つ折り状態になっており、 前記伸長部15は、三つ折り状態を解除した展開状態において前記廃棄用テープ10の長手方向に伸長可能であり、伸長部15を構成するシート片16の構成材料として、少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利であり、 前記止着部18は、止着部用粘着部20を有し、止着部用粘着部20は、止着部用シート片19の第2面19bに設けられており、止着部18をおむつ1の外面に止着する、パンツ型使い捨ておむつ。」 ウ 甲3について (ア)甲3に記載された事項 甲3には、次の記載がある。 「【請求項1】 ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を有し、着用状態において着用者の腹側に配される腹側部、股間部に配される股下部及び背側に配される背側部を備えたパンツ型使い捨ておむつであって、 前記使い捨ておむつの外面に、廃棄用テープが設けられており、 前記廃棄用テープは、前記使い捨ておむつの外面に固定されている固定部と、伸長部と、止着部とが、この順で該廃棄用テープの長手方向に沿って配置されているとともに、この順で積層された三つ折り状態になっており、 三つ折り状態になっている前記廃棄用テープは、前記止着部と前記伸長部との間が剥離可能に接合されているとともに、前記伸長部と前記固定部との間も剥離可能に接合されており、 前記伸長部は、三つ折り状態を解除した展開状態において前記廃棄用テープの長手方向に伸長可能であり、 ・・・パンツ型使い捨ておむつ。」 「【0018】 おむつ1の背側部Bには、図1に示すように、廃棄用テープ10が設けられている。廃棄用テープ10は、おむつ1の廃棄形態を維持するために用いられるものである。廃棄用テープ10は、おむつ1の背側部Bにおける横方向Yの略中央部に位置している。また廃棄用テープ10は、その長手方向がおむつ1の縦方向Xに一致するように設けられている。」 「【0024】 廃棄用テープ10における止着部18は、おむつ1の外面における任意の位置に止着可能になっており、おむつ1の廃棄形態を廃棄用テープ10で維持するときに、おむつ1の外面に止着される部位である。止着部18は廃棄用テープ10の先端域を形成しており、止着部用シート片19を有している。止着部用シート片19は、固定部用シート片13又は伸長部用シート片16と同じ長さであってもよく、異なる長さであってもよい。また、止着部用シート片19は、固定部用シート片13又は伸長部用シート片16と同じ幅であってもよく、異なる幅であってもよい。止着部用シート片19は、第1面19a及び第2面19bを有している。三つ折り状態になっている廃棄用テープ10において止着部用シート片19は、第2面19bが伸長部15と対向している。また止着部18は止着部用粘着部20を有している。止着部用粘着部20は、止着部用シート片19の第2面19bに設けられている。止着部用粘着部20は、三つ折り状態になっている廃棄用テープ10における止着部18と伸長部15との間を剥離可能に接合し、且つ止着部18をおむつ1の外面における任意の位置に確実に止着するものである。この観点から止着部用粘着部20の粘着性の程度が決定されることが好ましい。」 「【0052】 伸長部15が伸長可能であるためには、伸長部15を構成するシート片16として、適切な材料を選択すればよい。具体的には、これらシート片16の構成材料として、例えば伸長可能なフィルムを用いることができる。そのようなフィルムとしては、例えば単一層フィルム、及び共押出しフィルムのような多層フィルムが挙げられる。また、伸長可能なフィルムを構成する材料としては、例えば線状低密度ポリエチレンなどのポリオレフィンが好ましい。また、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリビニルアルコールからなる群から選択される少なくとも1種の材料も好ましい。更に、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利である。」 「【図1】 [図:0001393121000009.jpg] 」 「【図3】 [図:0001393121000010.jpg] 」 「【図4】 [図:0001393121000011.jpg] 」 「【図6】 [図:0001393121000012.jpg] 」 (イ)甲3発明 上記(ア)に示した事項を総合すると、甲3には、以下の「甲3発明」が記載されている。 「使い捨ておむつの外面に、廃棄用テープ10が設けられており、廃棄用テープ10は、おむつ1の廃棄形態を維持するために用いられるものである、パンツ型使い捨ておむつであって、 前記廃棄用テープ10は、前記使い捨ておむつの外面に固定されている固定部と、伸長部15と、止着部18とが、この順で該廃棄用テープ10の長手方向に沿って配置されているとともに、この順で積層された三つ折り状態になっており、 前記伸長部15は、三つ折り状態を解除した展開状態において前記廃棄用テープ10の長手方向に伸長可能であり、伸長部15を構成するシート片16の構成材料として、少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利であり、 前記止着部18は、止着部用粘着部20を有し、止着部用粘着部20は、止着部用シート片19の第2面19bに設けられており、止着部18をおむつ1の外面に止着する、パンツ型使い捨ておむつ。」 (2)判断 ア 本件発明1について (ア)甲1発明を主引例とする場合 a 対比 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲1発明の「廃棄用テープ10」は、本件発明1の「廃棄用テープ」に相当し、以下同様に、「使い捨ておむつの外面」は「物品本体部分の外面」に、「パンツ型使い捨ておむつ」は「吸収性物品」に、「固定部」は「固定部」に、「伸長部15」は「伸長部」に、「止着部18」は「止着部」に、「三つ折り状態」は「折り畳まれた状態」に、「止着部用シート片19の第2面19b」は「本体対向面」に、「止着部用粘着部20」は「粘着面」に、それぞれ相当する。 また、甲1発明の「前記伸長部15は、三つ折りを解除して直線状に展開しつつ、伸長させられ、伸長部15を構成する伸長部用シート片16の構成材料として、少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利であ」ることと、本件発明1の「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸縮可能であ」ることとは、「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸長可能であ」ることという限りで一致する。 したがって、両者の間には、次の一致点、相違点がある。 【一致点】 「廃棄形態を維持するための廃棄用テープが物品本体部分の外面に配された吸収性物品であって、 前記廃棄用テープは、前記物品本体部分の外面に固定されている固定部と、伸長部と、止着部とが、この順で該廃棄用テープの長手方向に沿って配されているとともに、折り畳まれた状態で前記物品本体部分の外面に設けられており、 前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸長可能であり、 前記止着部は、前記折り畳まれた状態を解除した状態において前記物品本体部分の外面側を向く本体対向面に、粘着面を有している、吸収性物品。」 【相違点1-1】 「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸長可能であ」ることに関して、本件発明1では「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸縮可能であ」るのに対して、甲1発明では「前記伸長部15は、三つ折りを解除して直線状に展開しつつ、伸長させられ、伸長部15を構成する伸長部用シート片16の構成材料として、少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利であ」る点。 【相違点1-2】 本件発明1では「前記伸長部は、前記長手方向への伸長後に収縮させることにより、該長手方向と直交する幅方向の断面形状が前記本体対向面とは反対の面側が凸状の湾曲形状を有する、湾曲部を生じるようになされている」のに対して、甲1発明ではそのような特定がない点。 b 相違点の判断 事案に鑑み、相違点1-2から判断する。 (a)新規性についての判断 本件特許明細書には、展開状態とされた伸長部15が、本体対向面とは反対の面(第2の面16b)側が凸状となるように湾曲する原理について、【0039】~【0044】において、凹状となる第1の面16aの収縮性が、凸状となる第2の面16bの収縮性よりも強くなるようにすることや、収縮性の違いを出す種々の方法が記載され、その方法の一つに、第2の面16bに可塑剤の配合されていない粘着剤を塗布する例が記載されている(【0044】)。 これに対して、甲1(【0015】、【0027】、【図2】を参照。)には、伸長部15が有する伸長部用シート片16の第2面16bに、ゴム系粘着剤等が使用される伸長部用粘着部17が設けられることが記載されている。そのため、甲1の当該記載と本件特許明細書の上記例とは、伸長部15が、本体対向面とは反対の面に粘着剤が設けられるものである点で共通する。しかしながら、甲1には、そのように構成された伸長部15について、「前記長手方向への伸長後に収縮させることにより、該長手方向と直交する幅方向の断面形状が前記本体対向面とは反対の面側が凸状の湾曲形状を有する、湾曲部を生じるようになされている」ことは何ら記載されていない。すなわち、甲1には、第2面16b側が凸状に湾曲することについて記載がないばかりか、伸長部の15の第1面16aと第2面16bとの間にどのような収縮性の関係があるか(第1面16a側の収縮性が第2面16b側よりも強いのか、弱いのか、同じなのか)についても記載されていない。また、これらの事項が甲1に記載されているに等しいといえる根拠も見いだせない。 したがって、相違点1-2は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明ではない。 (b)進歩性についての判断 上記(a)のとおり、甲1には、伸長部15を湾曲させることについて記載がなく、甲1発明において、伸長部が湾曲部を生じるようになす動機付けがあるとはいえない。 甲4、甲5にも、本件発明1の相違点1-2に係る構成は記載されていない。 そして、本件発明1は、当該構成を有することで、伸長部が、屈折しにくくなり、曲がるような変形を受けてもまっすぐな状態に復元しようとし(【0035】)、止着部の粘着面に接する面積が小さくすみ(【0036】)、止着部の粘着面が伸長部に自着し難くなるという顕著な効果を奏するものである。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)甲2発明を主引例とする場合 a 対比 本件発明1と甲2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 甲2発明の「廃棄用テープ10」は、本件発明1の「廃棄用テープ」に相当し、以下同様に、「使い捨ておむつの外面」は「物品本体部分の外面」に、「パンツ型使い捨ておむつ」は「吸収性物品」に、「固定部」は「固定部」に、「伸長部15」は「伸長部」に、「止着部18」は「止着部」に、「三つ折り状態」は「折り畳まれた状態」に、「止着部用シート片19の第2面19b」は「本体対向面」に、「止着部用粘着部20」は「粘着面」に、それぞれ相当する。 また、甲2発明の「前記伸長部15は、三つ折り状態を解除した展開状態において前記廃棄用テープ10の長手方向に伸長可能であり、伸長部15を構成するシート片16の構成材料として、少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利であ」ることと、本件発明1の「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸縮可能であ」ることとは、「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸長可能であ」ることという限りで一致する。 したがって、両者の間には、上記(ア)aの一致点及び相違点1-2の他に、次の相違点2-1がある。 【相違点2-1】 「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸長可能であ」ることに関して、本件発明1では「前記伸長部は、前記折り畳まれた状態を解除して前記長手方向に伸縮可能であ」るのに対して、甲2発明では「前記伸長部15は、三つ折り状態を解除した展開状態において前記廃棄用テープ10の長手方向に伸長可能であり、伸長部15を構成するシート片16の構成材料として、少なくとも70%の永久変形を有する材料を用いることも有利であ」る点。 b 相違点の判断 事案に鑑み、相違点1-2から判断する。 (a)新規性についての判断 上記(ア)b(a)と同様に、甲2にも、伸長部15が有する伸長部用シート片16の第2面16bに、ゴム系粘着剤等が使用される伸長部用粘着部17が設けられることが記載されているものの(【0022】、【0064】、【図4】を参照。)、甲2には、第2面16b側が凸状に湾曲することも、伸長部の15の第1面16aと第2面16bとの間にどのような収縮性の関係があるかについても記載されていない。また、これらの事項が甲2に記載されているに等しいといえる根拠も見いだせない。 したがって、相違点1-2は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明ではない。 (b)進歩性についての判断 上記(ア)b(b)と同様に、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)甲3発明を主引例とする場合 a 対比 本件発明1と甲3発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、上記(イ)aと同様に、両者の間には、上記(ア)aの一致点及び相違点1-2、並びに上記(イ)aの相違点2-1がある。 b 相違点の判断 事案に鑑み、相違点1-2から判断する。 (a)新規性についての判断 上記(ア)b(a)と同様に、甲3にも、伸長部15が有する伸長部用シート片16の第2面16bに、ゴム系粘着剤等が使用される伸長部用粘着部17が設けられることが記載されているものの(【0022】、【0054】、【図4】を参照。)、甲3には、第2面16b側が凸状に湾曲することも、伸長部の15の第1面16aと第2面16bとの間にどのような収縮性の関係があるかについても記載されていない。また、これらの事項が甲3に記載されているに等しいといえる根拠も見いだせない。 したがって、相違点1-2は実質的な相違点であるから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明ではない。 (b)進歩性についての判断 上記(ア)b(b)と同様に、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~10について 本件発明2~10は、直接的あるいは間接的に本件発明1を引用するものである。そうすると、本件発明1に特定事項を付加し、限定した本件発明2~10は、上記アに示したように、甲1発明ないし甲3発明ではなく、また、甲1発明ないし甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700811

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