特許異議申立
2022-700798
硬化性樹脂組成物、接着剤、接着フィルム、回路基板、層間絶縁材料、及び、プリント配線板
- 審判番号
- 2022-700798
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-519337
- 登録番号
- 7018942
- 請求日
- 2022年08月12日
- 審決日
- 2023年09月28日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】小林 均
- 【権利者代理人】林 司
- 【権利者代理人】弁理士法人WisePlus
- 【異議申立人】斎藤 敏子
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 細井 龍史
- 審判官 藤原 浩子
- 分類
- P1652.113-YAA(C08L) / P1652.121-YAA(C08L) / P1652.537-YAA(C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7018942号発明「硬化性樹脂組成物、接着剤、接着フィルム、回路基板、層間絶縁材料、及び、プリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7018942号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。
特許第7018942号の請求項1ないし3、6、8ないし16に係る特許を維持する。
特許第7018942号の請求項4及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7018942号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし16に係る特許についての出願は、平成31年3月15日(優先権主張 平成30年3月28日 平成30年5月18日)に国際出願された特願2019-519337号であって、令和4年2月3日にその特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年同月14日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月12日に斎藤 敏子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし4、6ないし16)がされたものである。
その後、令和5年2月9日付けで取消理由通知が通知された後、その指定期間内である同年4月6日付けで特許権者である積水化学工業株式会社(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされるとともに意見書が提出され、その後、同年同月27日付けで特許法第120条の5第5項の通知を行ったが、申立人より何ら応答がなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年4月6日付けの訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(13)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の
「末端に架橋性官能基を有する脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含み、前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族卜リアミン残基含有イミドオリゴマーは、分子量が5000以下であり、」との記載を、
「末端に架橋性官能基を有する脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含み、前記架橋性官能基は、酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種であり、前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、分子量が5000以下であり、」と訂正する。
請求項1の記載を引用する他の請求項も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(5)訂正事項5
上記訂正事項2および3に伴い、特許請求の範囲の請求項6の「請求項1、2、3、4又は5記載の硬化性樹脂組成物。」との記載を、「請求項1、2又は3記載の硬化性樹脂組成物。」と訂正する。
(6)訂正事項6
上記訂正事項2~4に伴い、特許請求の範囲の請求項8の「請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の硬化性樹脂組成物。」との記載を、「請求項1、2、3又は6記載の硬化性樹脂組成物。」と訂正する。
(7)訂正事項7
上記訂正事項2~4に伴い、特許請求の範囲の請求項9の「請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の硬化性樹脂組成物。」との記載を、「請求項1、2、3、6又は8記載の硬化性樹脂組成物。」と訂正する。
(8)訂正事項8
上記訂正事項2~4に伴い、特許請求の範囲の請求項10の「請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の硬化性樹脂組成物。」との記載を、「請求項1、2、3、6、8又は9記載の硬化性樹脂組成物。」と訂正する。
(9)訂正事項9
上記訂正事項2~4に伴い、特許請求の範囲の請求項11の「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の硬化性樹脂組成物。」との記載を、「請求項1、2、3、6、8、9又はl0記載の硬化性樹脂組成物。」と訂正する。
(10)訂正事項10
上記訂正事項2~4に伴い、特許請求の範囲の請求項12の「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤。」との記載を、「請求項1、2、3、6、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤。」と訂正する。
(11)訂正事項11
上記訂正事項2~4に伴い、特許請求の範囲の請求項13の「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる接着フィルム。」との記載を、「請求項1、2、3、6、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる接着フィルム。」と訂正する。
(12)訂正事項12
上記訂正事項2~4に伴い、特許請求の範囲の請求項14の「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を有する回路基板。」との記載を、「請求項1、2、3、6、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を有する回路基板。」と訂正する。
(13)訂正事項13
上記訂正事項2~4に伴い、特許請求の範囲の請求項15の「請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁材料。」との記載を、「請求項1、2、3、6、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる層間絶縁材料。」と訂正する。
2 一群の請求項について
訂正前の請求項1~16について、請求項2~16は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~16に対応する訂正後の請求項1~16は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
したがって、訂正事項1による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1による訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、架橋性官能基を「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」と限定することで、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
当該架橋性基については、本件特許明細書の段落【0022】に記載されている。
そうすると、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし16も同様である。
(2)訂正事項2による訂正について
訂正事項2による請求項4についての訂正は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、さらに願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3による訂正について
訂正事項3による請求項5についての訂正は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、さらに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4による訂正について
訂正事項4による請求項7についての訂正は、訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、さらに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5ないし13による訂正について
訂正事項5ないし13は、上記訂正事項2ないし4により訂正前の請求項4、5及び7が削除されたことに伴い、これらの請求項を引用していた請求項6及び8ないし15について、他の請求項の引用形式を整理したものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、又は同第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないため、同法同条第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものであり、さらに願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
4 本件訂正後の独立特許要件について
特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし4、6ないし16に対してされているので、当該請求項における訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
そして、上記「第1 手続の経緯」で述べたとおり、本件特許異議の申立ては請求項5に対しては申立てられていない。
しかしながら、請求項5は、訂正事項3により削除されていることから、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
5 むすび
以上のとおり、請求項1ないし16についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-16〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし16に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし16を総称して「本件特許発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
硬化性樹脂と、イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、
前記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、かつ、末端に架橋性官能基を有する脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含み、
前記架橋性官能基は、酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、分子量が5000以下であり、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基である硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記イミドオリゴマー全体の有する多価アミン残基中における前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基の割合が5モル%以上である請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、主鎖に置換されていてもよい芳香族テトラカルボン酸残基を有する請求項1又は2記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、融点が120℃以下である請求項1、2又は3記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
前記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含む請求項1、2、3又は6記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
硬化前のガラス転移温度が0℃以上25℃未満である請求項1、2、3、6又は8記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
硬化物のガラス転移温度が100℃以上250℃未満である請求項1、2、3、6、8又は9記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
硬化物のポリイミドに対する初期接着力が3.4N/cm以上であり、かつ、200℃で100時間保管した後の硬化物のポリイミドに対する接着力が3.4N/cm以上である請求項1、2、3、6、8、9又は10記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1、2、3、6、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物からなる接着剤。
【請求項13】
請求項1、2、3、6、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる接着フィルム。
【請求項14】
請求項1、2、3、6、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物の硬化物を有する回路基板。
【請求項15】
請求項1、2、3、6、8、9、10又は11記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる層間絶緑材料。
【請求項16】
回路晶板と、該回路基板上に配置された複数の絶縁層と、該複数の絶縁層間に配置された金属層とを有し、前記絶縁層は、請求項15記載の層間絶縁材料の硬化物からなる多層プリント配線板。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由、証拠方法及び取消理由の概要
1 申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
・申立理由1-1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という 。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・申立理由1-2(甲5を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし11、13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲5に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・申立理由1-3(甲6を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし11、13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲6に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・申立理由1-4(甲7を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲7に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
・申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は以下のとおり(申立書89~92、97ページ)。
ア「本件明細書の実施例で使用された「脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」(イミドオリゴマー組成物A~K及びO~Q)に関し、合成例1~11及び15~17(本件明細書の段落【0097】~【0107】及び【0112】~【0114】)に記載の式の構造から、それぞれ、末端に有する架橋性官能基は、「酸無水物基」(イミドオリゴマー組成物A~J)、「フェノール性水酸基」(イミドオリゴマー組成物K、O)及び「活性エステル基」(ベンゾイルオキシフェニル基)(イミドオリゴマー組成物P、Q)のいずれかのみである。」
イ「本件明細書の実施例で使用された「硬化性樹脂」は、「エポキシ樹脂」の1種のみである。
官能基の反応性はその種類によって異なるから、樹脂組成物の発明において、各成分が有する官能基の種類や量によって、組成物ないし硬化物の特性が異なるものとなるところ、本件特許発明において、例えば、「脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」が末端に有する「架橋性官能基」が「エポキシ基と反応し得る官能基」であっても、「硬化性樹脂」は「エポキシ基を有しないアクリル樹脂Jであった場合等に、本件明細書に記載の実施例の組成物とは硬化機構が異なることは明らかであるから、本件特許発明と同様の効果を奏するとは直ちにいうことができないだけでなく、その技術的根拠が本件明細書に示されているともいえない。」
ウ「本件明細書のすべての実施例において、「硬化性樹脂」及び「イミドオリゴマーを含む硬化剤」以外に、「硬化促進剤としてイミダゾール化合物」及び「流動性調製剤ないし無機充填剤としてシリカ」が配合されており、上記課題を解決できることが確認された態様は、本件特許発明1の成分以外に、「硬化促進剤」及び「流動性調製剤ないし無機充填剤」を含む態様のみに留まる。」
エ「本件特許発明1においては、「硬化性樹脂」と「イミドオリゴマーを含む硬化剤」とを含むことだけが記載され、両者の配合量(配合比)についてはなんら規定されていない。
樹脂組成物の発明において、その物性が配合される成分及びその割合の影響を受けることは出願時の技術常識であるところ、本件明細書の実施例では、特定の量比で「硬化性樹脂」及び「イミドオリゴマーを含む硬化剤」を含有し、本件特許発明1の成分以外に、「硬化促進剤」及び「流動性調製剤ないし無機充填剤」を含有するものが、上記課題を解決できることが示されているのみである。
また、本件特許発明7について検討してみても、実施例1~16(本件明細書の表1~3)では、「硬化性樹脂とイミドオリゴマーを含む硬化剤との合計100重量部中における前記イミドオリゴマーの含有量」が種々の割合の組成が開示されているものの、これらの組成に対して評価がなされているのは、「硬化前のガラス転移温度」、「(硬化前の)可撓性」、「(硬化前の)加工性」、「硬化物のガラス転移温度」、「接着性」、「耐熱分解性(5%重量減少温度)」及び「長期耐熱性」(本件明細書の段落【0119】~【0125】)であって、本件特許発明が課題の一つとしている「誘電特性」については評価がされていない。一方、実施例17~26(本件明細書の表5~6)では、「可撓性」、「誘電特性」、「デスミア性(ビア底の残査の除去性)」及び「めっき密着性」(本件明細書の段落【0131】~【0138】)について評価がなされているものの、「硬化性樹脂とイミドオリゴマーを含む硬化剤との合計100重量部中における前記イミドオリゴマーの含有量」は、「13~35重量部」の範囲内であって、本件特許発明7の「5重量部以上85重量部以下」という広範な範囲に渡って、上記本件特許発明のすべての課題を解決し得ることはなんら示されていないし、その技術的根拠が本件明細書に示されているともいえない。」
・申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は、以下のとおり(申立書92~97ページ)。
「硬化性樹脂とイミドオリゴマーを含む硬化剤との合計100重量部中におけるイミドオリゴマーの含有量(重量部)」の値が、b算出方法による実施例12及び13と、a算出方法による実施例12及び13以外の実施例及び比較例とにおいて、異なる方法で算出されており、本件明細書を参照しても当該値の算出方法が多義的であって当該値の意味するところが明確でない。」
2 証拠方法
申立人は、申立書に添付して、以下の証拠を提出している。
甲第1号証:国際公開第2017/027482号及び抄訳文
甲第1-1号証:米国特許第7157587号明細書及び抄訳文
甲第1-2号証:米国特許第7208566号明細書及び抄訳文
甲第2号証:特開2013-199645号公報
甲第3号証:イミド拡張型ービスマレイミド製品情報、[online]、デジグナーモレキュールズ社、[令和4年7月28日検索]、インターネット
<https://www.designermoleculesinc.com/products.cfm>及び抄訳文
甲第4号証:“BUILD PERFORMANCE AND COST-EFFICIENCY INTO YOUR FORMULATION Selector guide for formulators”、[online]、ハンツマンコーポレーション社、[令和4年7月28日検索]、インターネット
<https://huntsman-pimcore.equisolve-dev.com/Documents/Huntsman_Selector_guide _for_formulators.pdf>
甲第5号証:国際公開第2016/114286号
甲第6号証:特開2016-131243号公報
甲第7号証:特開2014-194013号公報
以下、順に、「甲第1号証」等を「甲1」等という。
3 取消理由の概要
令和5年2月9日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
(1)取消理由1-1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由1-2(甲5を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし15に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)取消理由1-3(甲6を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし15に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)取消理由1-4(甲7を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の請求項1ないし4、6ないし16に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(5)取消理由2(明確性要件)
本件特許の請求項7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は、上記1「申立理由3(明確性要件)」と同旨。
第5 取消理由についての当審の判断
取消理由1-1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)は、申立理由1-1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)と同旨であり、取消理由1-2(甲5を主引用文献とする新規性・進歩性)は、申立理由1-2(甲5を主引用文献とする新規性・進歩性)と同旨であり、取消理由1-3(甲6を主引用文献とする新規性・進歩性)は、申立理由1-3(甲6を主引用文献とする新規性・進歩性)と同旨であり、取消理由1-4(甲7を主引用文献とする新規性・進歩性)は、申立理由1-4(甲7を主引用文献とする新規性・進歩性)と同旨であり、また、取消理由2(明確性要件) は、申立理由3(明確性要件)と同旨であるから、以下、取消理由と同旨である申立理由についても併せて検討する。
1 取消理由1-1及び申立理由1-1(甲1を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲1発明
甲1の「以下を含む硬化可能な接着剤組成物:
(a) 少なくとも1つのマレイミドを含んでいるマレイミド成分;
(b) 少なくとも1つのエポキシを含んでいるエポキシ成分;および
(c) 少なくとも1つの陰イオン性硬化触媒、
(d) ただし組成物はフリーラジカルイニシエーターを全く含まない。」(【請求項1】 当審注:記載事項は、翻訳(甲1のパテントファミリーである特表2018-531317号公報を参照。また、記載箇所も当該公報の段落番号にならった。以下、同様。))の具体的な接着剤組成物として、例2に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「以下を含む硬化可能な接着剤組成物。
(a)下記の構造を有するR1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)85重量%、75重量%、65重量%
(b)ARALDITE(登録商標)MY-510エポキシ(Huntsman Corporation:The Woodlands,TX)15重量%、25重量%、35重量%
(c)CUREZOL(登録商標)1-B2MZ 4重量%
[図:0001404757000001.jpg]
」(以下、「甲1例2発明」という。)
また、甲1の例6に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「以下を含む硬化可能な接着剤組成物。
(a)下記の構造を有するマレイミド末端ポリイミド(BMI-1500):80重量%
(b)ビスフェノールAのジグリシジルエーテル20重量%
(c)CUREZOL(登録商標)1-B2MZ 5重量%
[図:0001404757000002.jpg]
」(以下、「甲1例6発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
(ア)甲1例2発明との対比
本件特許発明1と甲1例2発明とを対比する。
a 甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」は、その構造式から「主鎖にイミド骨格」を有するものである。
b 甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」は、その構造式から「C36H72」の「ジアミン残基」を有するものである。ここで、甲1の段落【0081】には、「本明細書に使用される時、「C36」は、36の炭素を有するあらゆる構造異性体を含み、バックボーン中の3つまでの炭素炭素二重結合を備えた、分岐した異性体および環式の異性体を含む脂肪族の部位を指す。「C36」の定義が指す部位の非制限的な1つの例は、以下の構造式によって示されるされるような、シクロヘキサンに基づいたコアおよびコアに付加した4つの長い「アーム」を含む部位である
「【化9】
[図:0001404757000003.jpg]
」と定義され、また段落【0150】の「
[図:0001404757000004.jpg]
」の「ダイマージアミンのビスマレイ(ミド)」の示す構造式から、マレイミドを生成する無水マレイン酸と反応するジアミンが「ダイマージアミン」であることが把握でき、「ダイマージアミン」は「オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸から誘導される化合物である。」ことが甲2の段落【0020】に記載されている。
そうすると、上記「C36H72」は「炭素数36の脂肪族」炭化水素であって、「ダイマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基」といえる。
c 本件特許発明1の「架橋性官能基」について、本件特許明細書の段落【0022】に、「上記架橋性官能基は、エポキシ基と反応し得る官能基であることが好ましい。上記架橋性官能基としては、具体的には例えば、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基、不飽和基、活性エステル基、マレイミド基等が挙げられる。」と、「マレイミド基」が例示されているところ、甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」も末端に「マレイミド基」を有するものである。そうすると、甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」も「末端に架橋性官能基を有」するものといえる。
d 本件特許発明1の「分子量」について、本件特許明細書に、「なお、本明細書において上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、数平均分子量を用いて表す場合がある。」と記載されている。
一方、甲1には、甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」の分子量について明記されていないものの、甲5の段落[0154]を参照すると、甲1例2発明と同じ製品について、「(2)BMI-1700[Mw:約1700、Designer Molecules Inc.製、商品名]」と記載されていることから、「Mw」すなわち「重量平均分子量」が約1700であることが読み取れる。そして、「重量平均分子量」が「数平均分子量」がよりも大きな値となることは当業者の技術常識であるから、甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」の「数平均分子量」は、重量平均分子量である1700よりも小さい、すなわち本件特許発明1の分子量が「5000以下」である事項を充足する。また、その分子量からみて、イミド骨格のn(繰り返し数)の平均値が1より大きくなることは明らかであるから、甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」は、「オリゴマー」であるといえる。
e 上記aないしdをまとめると、甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」は、本件特許発明1の「主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有」し、「前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基」であり、「分子量が5000以下」である「脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」に相当する。
f 本件特許発明1の「硬化性樹脂」について、本件明細書の段落【0060】において「上記硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。なかでも、上記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。」と記載されている。
甲1例2発明の「ARALDITE(登録商標)MY-510エポキシ(Huntsman Corporation:The Woodlands,TX)」は、「エポキシ」と記載され、また甲4を参照すると、当該商品は、「グリシジルアミン型エポキシ樹脂」の一種であることが見て取れることから、本件特許発明1の「硬化性樹脂」に相当する。
g 上記cでも述べたように、甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」も末端に架橋性官能基である「マレイミド基」を有するものである。そして、本件特許明細書の段落【0022】に、「上記架橋性官能基は、エポキシ基と反応し得る官能基であることが好ましい。上記架橋性官能基としては、具体的には例えば、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、フェノール性水酸基、不飽和基、活性エステル基、マレイミド基等が挙げられる。」と記載されている。そして、甲1の段落【0161】には、「特定の理論によって拘束されることは望まないが、いくつかの証拠は、陰イオン性硬化イニシエーター(たとえばイミダゾール)がマレイミド部位と複合体を形成することがあり、それはエポキシの反応触媒として働く両性イオンの種となることができる。」と記載され、「マレイミド基」が「エポキシ樹脂」の硬化剤となることが記載されている。
そうすると、甲1例2発明の「R1191(BMI1700;デジグナーモレキュール社)」は、本願発明1の「イミドオリゴマーを含む硬化剤」に相当する。
h 甲1例2発明の「硬化可能な接着剤組成物」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
よって、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
硬化性樹脂と、イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、
前記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、かつ、末端に架橋性官能基を有する脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含み、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、分子量が5000以下であり、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基である硬化性樹脂組成物。
<相違点1-1>
架橋性官能基が、本件特許発明1は、「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲1例2発明は、「マレイミド基」である点
そこで、上記相違点について検討する。
まず、上記相違点は、実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲1例2発明ではなく、新規性を有する。
ついで、本件特許発明1の進歩性について検討する。
甲1の【特許請求の範囲】には、
「【請求項1】
以下を含む硬化可能な接着剤組成物:
(a) 少なくとも1つのマレイミドを含んでいるマレイミド成分;
(b) 少なくとも1つのエポキシを含んでいるエポキシ成分;および
(c) 少なくとも1つの陰イオン性硬化触媒、
(d) ただし組成物はフリーラジカルイニシエーターを全く含まない。
【請求項2】
少なくとも1つの充填剤、少なくとも1つの反応性希釈剤またはその組み合わせをさらに含む、請求項1記載の組成物。
・・・
【請求項8】
マレイミド成分は、二無水物とジアミンとを接触して得られる縮合物であるマレイミド末端ポリイミドから成る、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
マレイミドが以下の構造を有するマレイミド末端ポリイミドである、請求項8記載の組成物:
【化3】
[図:0001404757000005.jpg]
式中、R’はHおよびメチルから成る群から選択され、RおよびQは各々独立して置換されるか非置換である、脂肪族、脂環、芳香族、ヘテロアロマティック、ポリエーテルまたはシロキサン部位であり、nは1~約10である。」と記載されている。
すなわち、甲1に開示される接着剤組成物は、エポキシ成分の硬化剤としてマレイミド末端ポリイミド、すなわち、架橋性官能基として「マレイミド基」を必須とするものである。
また、甲1には、イミドオリゴマーを含む硬化剤において、末端に「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」の架橋性官能基を有するものは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1例2発明において、架橋性官能基である「マレイミド基」を他の置換基に変更する動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、「硬化前は可撓性及び加工性に優れ、硬化後は接着性、耐熱性、及び、誘電特性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。」(【0095】)という効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲1例2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(イ)甲1例6発明との対比
本件特許発明1と甲1例6発明とを対比する。
a 甲1例6発明の「(b)ビスフェノールAのジグリシジルエーテル」は、「エポキシ樹脂」であることから、本件特許発明1の「硬化性樹脂」に相当する。
b 甲1例6発明の「(a)下記の構造を有するマレイミド末端ポリイミド(BMI-1500)」は、上記甲1例2発明で検討したのと同様、その構造式から、本件特許発明1の「主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有」し、「前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基」である「脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」「を含む硬化剤」に相当する。
c 甲5の段落[0154]を参照すると、甲1例6発明と同じ製品について、「(1)BMI-1500[Mw:約1500、Designer Molecules Inc.製、商品名]」と記載されていることから、「Mw」すなわち「重量平均分子量」が約1500であることが読み取れる。そして、「重量平均分子量」が「数平均分子量」がよりも大きな値となることは当業者の技術常識であるから、甲1例6発明の「マレイミド末端ポリイミド(BMI-1500)」の「数平均分子量」は、重量平均分子量である1500よりも小さい、すなわち本件特許発明1の分子量が「5000以下」である事項を充足する。
d 甲1例6発明の「硬化可能な接着剤組成物」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
そうすると、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
硬化性樹脂と、イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、
前記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、かつ、末端に架橋性官能基を有する脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含み、
前記架橋性官能基は、酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、分子量が5000以下であり、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基である硬化性樹脂組成物。
<相違点1-1’>
架橋性官能基が、本件特許発明1は、「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲1例6発明は、「マレイミド基」である点
そこで、上記相違点について検討するに、<相違点1-1’>は上記(ア)の<相違点1-1>と実質同じである。
そうすると、上記(ア)で説示したのと同様、本件特許発明1は、甲1例6発明ではないし、また、甲1例6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
よって、上記(ア)及び(イ)で説示したように、本件特許発明1は、甲1に記載された発明ではないし、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2、3、6、8ないし16について
本件特許発明2、3、6、8ないし16は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2、3、6、8ないし16は、甲1に記載された発明ではないし、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)取消理由1-1及び申立理由1-1についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、6、8ないし16は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1ないし3、6、8ないし16は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、6、8ないし16に係る特許は、取消理由1-1及び申立理由1-1によっては取り消すことはできない。
2 取消理由1-2及び申立理由1-2(甲5を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲5発明
甲5の「マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物を含有する、樹脂組成物。」([請求項1])の具体的な組成物として、実施例5に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]16.8質量部
[化29]
[図:0001404757000006.jpg]
(B)成分 BMI-1000[ビス(4-マレイミドフェニル]メタン、大和化成工業株式会社製、商品名)4.0質量部
エポキシ樹脂 NC-3000H[ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、商品名]4.0質量部
フェノール樹脂 KA1165[ノボラック型フェノール樹脂、DIC株式会社製、商品名]4.0質量部
シリカスラリー [球状溶融シリカ、表面処理:フェニルアミノシランカップリング剤(1質量%/スラリー中の全固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)、固形分濃度:70質量%、平均粒子径:0.5μm、密度:2.2g/cm3、株式会社アドマテックス製、商品名「SC-2050KNK」]104.4質量部
触媒 パーヘキシン25B[2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、日油株式会社製、商品名]0.42質量部及び2E4MZ[2-エチル-4メチル-イミダゾール、四国化成工業株式会社製、商品名]0.11質量部
並びに
溶媒 トルエン8.9質量部及びメチルエチルケトン2.4質量部
を含有する、樹脂組成物。」(以下、「甲5発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲5発明とを対比する。
(ア)甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]は、その構造式から「主鎖にイミド骨格」を有するものである。
(イ)「ダイマージアミン」は「オレイン酸等の不飽和脂肪酸の二量体であるダイマー酸から誘導される化合物である。」ことが甲2の段落【0020】に記載されている。また、甲1の段落【0150】の「
[図:0001404757000007.jpg]
」の「ダイマージアミンのビスマレイ(当審注:「ビスマレイミド」の誤記と認められる。)の記載からみて、甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]は、「置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し」、「ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基」を有するといえる。
(ウ)本件特許発明1の「架橋性官能基」について、本件特許明細書の段落【0022】に「マレイミド基」が例示されているところ、甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]」も末端に「マレイミド基」を有するものである。そうすると、甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]」も「末端に架橋性官能基を有する」ものといえる。
(エ)甲5発明は、「Mw:約3000」と記載されていることから、「Mw」すなわち「重量平均分子量」が約3000であることが読み取れる。そして、「重量平均分子量」が「数平均分子量」がよりも大きな値となることは当業者の技術常識であるから、甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]」の「数平均分子量」は、重量平均分子量である3000よりも小さい、すなわち本件特許発明1の分子量が「5000以下」である事項を充足する。また、その分子量からみて、イミド骨格のn(繰り返し数)の平均値が1より大きくなることは明らかであるから、甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]」は、「オリゴマー」であるといえる。
(オ)上記(ア)ないし(エ)をまとめると、甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]」は、本件特許発明1の「主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有」し、「前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基」であり、「分子量が5000以下」である「脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」に相当する。
(カ)甲5発明の「エポキシ樹脂 NC-3000H[ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、商品名]」は、本件特許発明1の「硬化性樹脂」に相当する。
(キ)上記(ウ)でも述べたように、甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]」も末端に架橋性官能基である「マレイミド基」を有するものである。 そうすると、上記1(2)ア(ア)で説示したのと同様、甲5発明の「(A)成分 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]」は、本件特許発明1の「イミドオリゴマーを含む硬化剤」に相当する。
(ク)甲5発明の「樹脂組成物」は、その後、硬化して多層プリント配線板等を作製していることから、本件特許発明1の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
よって、両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
硬化性樹脂と、イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、
前記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、かつ、末端に架橋性官能基を有する脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含み、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、分子量が5000以下であり、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基である硬化性樹脂組成物。
<相違点1-5>
架橋性官能基が、本件特許発明1は、「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲5発明は、「マレイミド基」である点
そこで、上記相違点について検討する。
まず、上記相違点は、実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲5発明ではなく、新規性を有する。
ついで、本件特許発明1の進歩性について検討する。
甲5の請求の範囲には、
「[請求項1] マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物を含有する、樹脂組成物。
[請求項2] 前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
[化1]
[図:0001404757000008.jpg]
[式(I)中、R1は4価の有機基を示す。]」と記載されている。
すなわち、甲5に開示される樹脂組成物は、「マレイミド基」有する化合物を必須とするものである。
また、甲5には、イミドオリゴマーを含む硬化剤において、末端に「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」の架橋性官能基を有するものは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲5発明において、架橋性官能基である「マレイミド基」を他の置換基に変更する動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、「硬化前は可撓性及び加工性に優れ、硬化後は接着性、耐熱性、及び、誘電特性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。」(【0095】)という効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲5発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲5に記載された発明ではないし、また、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2、3、6、8ないし16について
本件特許発明2、3、6、8ないし16は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2、3、6、8ないし16は、甲5に記載された発明ではないし、また、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)取消理由1-2及び申立理由1-2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、6、8ないし16は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1ないし3、6、8ないし16は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、6、8ないし16に係る特許は、取消理由1-2及び申立理由1-2によっては取り消すことはできない。
3 取消理由1-3及び申立理由1-3(甲6を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲6発明
甲6の調製例5の「樹脂ワニス」に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「ビスマレイミド化合物 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]20.8質量部
【化11】
[図:0001404757000009.jpg]
エポキシ樹脂 NC-3000H[ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、商品名]4.0質量部
フェノール樹脂 KA1165[ノボラック型フェノール樹脂、DIC株式会社製、商品名]1.6質量部
シリカスラリー [球状溶融シリカ、表面処理:フェニルアミノシランカップリング剤(1質量%/スラリー中の全固形分)、分散媒:メチルイソブチルケトン(MIBK)、固形分濃度:70質量%、平均粒子径:0.5μm、密度:2.2g/cm3、株式会社アドマテックス製、商品名「SC-2050KNK」]104.4質量部
触媒 パーヘキシン25B[2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、日油株式会社製、商品名]0.42質量部及び2E4MZ[2-エチル-4メチル-イミダゾール、四国化成工業株式会社製、商品名]0.11質量部
並びに
溶媒 トルエン8.9質量部及びメチルエチルケトン2.4質量部
を含有する、樹脂ワニス。」(以下、「甲6発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
甲6発明は、上記2(1)の甲5発明と同じく、「ビスマレイミド化合物 BMI-3000[Mw:約3000、Designer Molecules Inc.製、商品名]」と「エポキシ樹脂 NC-3000H[ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、商品名]」とを有するものである。
そうすると両者は、上記2(2)で示したのと同様、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
硬化性樹脂と、イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、
前記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、かつ、末端に架橋性官能基を有する脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含み、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、分子量が5000以下であり、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基である硬化性樹脂組成物。
<相違点1-6>
架橋性官能基が、本件特許発明1は、「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲6発明は、「マレイミド基」である点
そこで、上記相違点について検討する。
まず、上記相違点は、実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲6発明ではなく、新規性を有する。
ついで、本件特許発明1の進歩性について検討する。
甲6の請求の範囲には、
「【請求項1】
マレイミド基、少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基及び飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を有する化合物を含有する高多層印刷配線板製造用の樹脂フィルム。
【請求項2】
前記少なくとも2つのイミド結合を有する2価の基が、下記式(I)で表される基である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【化1】
[図:0001404757000010.jpg]
[式(I)中、R1は4価の有機基を示す。]」と記載されている。
すなわち、甲6に開示される樹脂フィルムは、「マレイミド基」有する化合物を必須とするものである。
また、甲6には、イミドオリゴマーを含む硬化剤において、末端に「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」の架橋性官能基を有するものは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲6発明において、架橋性官能基である「マレイミド基」を他の置換基に変更する動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、「硬化前は可撓性及び加工性に優れ、硬化後は接着性、耐熱性、及び、誘電特性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。」(【0095】)という効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2、3、6、8ないし16について
本件特許発明2、3、6、8ないし16は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2、3、6、8ないし16は、甲6に記載された発明ではないし、また、甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)取消理由1-3及び申立理由1-3についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、6、8ないし16は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1ないし3、6、8ないし16は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、6、8ないし16に係る特許は、取消理由1-3及び申立理由1-3によっては取り消すことはできない。
4 取消理由1-4及び申立理由1-4(甲7を主引用文献とする新規性・進歩性)について
(1)甲7発明
甲7の「(A)プレート型銀微粒子と、(B)前記(A)成分以外の平均粒子径が0.5~30μmである銀粉と、(C)熱硬化性樹脂と、を含み、前記(A)成分の銀微粒子と前記(B)成分の銀粉の合計量を100質量部としたとき、前記(C)成分が1~20質量部配合されていることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物」(【請求項1】)の具体的な組成物として、実施例3の樹脂ペーストに着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「(A):プレート型銀微粒子(トクセン工業(株)製、商品名:M13;中心粒子径:2μm、厚み:50nm以下)30質量部
(B):銀粉(福田金属箔粉工業(株)製、商品名:AgC-212D;平均粒子径:5μm) 70質量部
(C2):イミド拡張型ビスマレイミド(デジグナーモレキュールズ社製、商品名:BMI-1500;数平均分子量 1500)5質量部
(C3):ジアリルビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:RE-810NM;エポキシ当量 223、加水分解性塩素 150ppm(1N KOH-エタノール、ジオキサン溶媒、還流30分)5質量部
重合開始剤:ジクミルパーオキサイド(日本油脂(株)製、商品名:パークミルD;急速加熱試験における分解温度:126℃)1質量部
(D):リンゴ酸(東京化成工業(株)製)0.1質量部
(E):ジエチレングリコール(東京化成工業(株)製)10質量部
を含む熱硬化性樹脂組成物。」(以下、「甲7発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
甲7発明の「(C3):ジアリルビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、商品名:RE-810NM;エポキシ当量 223、加水分解性塩素 150ppm(1N KOH-エタノール、ジオキサン溶媒、還流30分)」は、本件特許発明1の「熱硬化性樹脂」に相当する。
甲7発明の「イミド拡張型ビスマレイミド(デジグナーモレキュールズ社製、商品名:BMI-1500;数平均分子量 1500)」は、上記1(2)ア(イ)で検討したように、本件特許発明1の「主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有」し、「前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基」であり、分子量が5000以下」である「脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」「を含む硬化剤」に相当する。
そうすると両者は、上記1(2)ア(イ)と同様、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
<一致点>
硬化性樹脂と、イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、
前記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、かつ、末端に架橋性官能基を有する脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含み、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーは、分子量が5000以下であり、
前記脂肪族ジアミン残基及び/又は前記脂肪族トリアミン残基は、ダイマー酸及び/又はトリマー酸から誘導される脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基である硬化性樹脂組成物。
<相違点1-7>
架橋性官能基が、本件特許発明1は、「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」であるのに対し、甲7発明は、「マレイミド基」である点
そこで、上記相違点について検討する。
まず、上記相違点は、実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲7発明ではなく、新規性を有する。
ついで、本件特許発明1の進歩性について検討する。
甲7発明の成分である(C3)のエポキシ樹脂に関し、甲7の段落【0036】には、「エポキシ樹脂を硬化させる目的で硬化剤を使用するが、エポキシ樹脂の硬化剤としては、例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂などが挙げられる。・・・」と記載され、硬化剤として、酸無水物やフェノール樹脂が例示されている。
しかしながら、甲7には、イミドオリゴマーを含む硬化剤において、末端に「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」の架橋性官能基を有するものは記載も示唆もされていない。
そうすると、甲7発明において、架橋性官能基である「マレイミド基」を他の置換基に変更する動機付けはない。
そして、本件特許発明1は、「硬化前は可撓性及び加工性に優れ、硬化後は接着性、耐熱性、及び、誘電特性に優れる硬化性樹脂組成物を提供することができる。」(【0095】)という効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(ウ)小括
したがって、本件特許発明1は、甲7に記載された発明ではないし、また、甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2、3、6、8ないし16について
本件特許発明2、3、6、8ないし16は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、本件特許発明2、3、6、8ないし16は、甲7に記載された発明ではないし、また、甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)取消理由1-4及び申立理由1-4についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3、6、8ないし16は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、本件特許発明1ないし3、6、8ないし16は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3、6、8ないし16に係る特許は、取消理由1-4及び申立理由1-4によっては取り消すことはできない。
5 取消理由2及び申立理由3(明確性要件)について
上記第2及び第3に示されるように、本件訂正により、取消理由及び申立理由の対象であった請求項7が削除された。
よって、当該取消理由及び申立理由は解消された。
第6 取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由2(サポート要件)のみであるため、これについて以下検討する。
1 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)検討
ア 本件特許発明の課題
本件特許発明の課題は、本件特許明細書の段落【0006】等からみて、「硬化前は可撓性及び加工性に優れ、硬化後は接着性、耐熱性、及び、誘電特性に優れる硬化性樹脂組成物を提供すること」と認められる。
イ 発明の詳細な説明の一般的な記載事項について
本件特許明細書の段落【0008】及び【0009】には、「本発明者らは、特定の構造を有し、かつ、分子量が特定値以下であるイミドオリゴマーを硬化剤として用いることにより、硬化前(Bステージ)は可撓性及び加工性に優れ、硬化後は接着性、耐熱性、及び、誘電特性に優れる硬化性樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の硬化性樹脂組成物は、イミドオリゴマーを含む硬化剤を含有する。
上記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有し、かつ、分子量が5000以下である脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含む。以下、該脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを「本発明にかかるイミドオリゴマー」ともいう。
本発明にかかるイミドオリゴマーを含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化前は可撓性及び加工性に優れ、硬化後は接着性、耐熱性、及び、誘電特性に優れるものとなる。」と記載され、また、段落【0029】に「本発明にかかるイミドオリゴマーの分子量の上限は5000である。上記分子量が5000以下であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の硬化物が耐熱性に優れるものとなる。」と記載されている。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の一般的な記載より、「硬化性樹脂と、イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、上記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有し、かつ、分子量が5000以下である脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマーを含む硬化性樹脂組成物」である技術的事項により本件特許発明の課題を解決しようとすることがうかがえる。
ウ 実施例について
本件特許明細書には、発明を実施するための形態として、実施例1~24の24個の実施例と比較例1~7の7個の比較例が示されている。
そこで、【表1】~【表4】に示される実施例1~16と比較例1~5を比較してみる。
実施例1~16はいずれも、硬化剤として「主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有し、かつ、分子量が5000以下である脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」を使用するもので、硬化前の「可撓性」及び「加工性」が「○」か「△」と優れたものであり、硬化後の「接着性」、「長期耐熱性」が「◎」か「○」と優れたものである。一方、比較例2~5は、硬化剤であるイミドオリゴマーとして、「芳香族ジアミン残基」を使用するもので、硬化前の「可撓性」及び「加工性」が「×」と劣ったものとなっている。また、比較例1は、イミドオリゴマーの「分子量」が「5500」と、5000以上のものを使用しているところ、硬化後の接着性及び長期耐熱性が「×」と劣ったものとなっている。
ついで、【表5】及び【表6】に示される実施例17~24と比較例6及び7についても比較してみる。
実施例17~24はいずれも、硬化剤として「主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有し、かつ、分子量が5000以下である脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」を使用するもので、硬化前の「可撓性」が「○」か「△」と優れたものであり、硬化後の「誘電特性(誘電正接)」が「○」か「△」と優れたものである。一方、比較例6は、硬化剤としてイミドオリゴマーを使用しないものであるところ、硬化前の「可撓性」が「×」と劣ったものとなっている。また、比較例7は、硬化剤であるイミドオリゴマーとして、「芳香族ジアミン残基」を使用するもので、硬化前の「可撓性」及び硬化後の「誘電特性(誘電正接)」が「×」と劣ったものとなっている。
そうすると、上記に示した実施例及び比較例の対比より、硬化性樹脂に対し、「硬化剤として、イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、上記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有し、かつ、分子量が5000以下である脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」を使用することにより本件特許発明の課題を解決し得るものと認められ、発明の詳細な説明の一般的な記載事項が裏付けられているといえる。
エ 小括
本件件特許発明1は、上記イ、ウで示した課題を解決するための具体的手段である上記技術的事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できるものである。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし3、6、8ないし16についても同様である。
(3)申立人の主張について
申立人は、上記第4 1において、具体的にアないしエの主張をしているので、以下検討する。
ア 末端に有する架橋性官能基について
本件特許発明1は、訂正により、末端に有する架橋性官能基が、実施例に記載される「酸無水物基」(イミドオリゴマー組成物A~J)、「フェノール性水酸基」(イミドオリゴマー組成物K、O)及び「活性エステル基」(ベンゾイルオキシフェニル基)(イミドオリゴマー組成物P、Q)に限定された。
よって、申立人の主張アは解消された。
イ 硬化性樹脂について
本件特許発明1は、硬化性樹脂の種類は特定されていない。
一方、硬化性樹脂について、本件特許明細書の段落【0060】には、「本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。なかでも、上記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。また、これらの硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が混合して用いられてもよい。
また、上記硬化性樹脂は、フィルム加工する場合等の加工性をより良好にするために、25℃において液状又は半固形状であることが好ましく、液状であることがより好ましい。」と記載され、実施例で使用されるエポキシ樹脂のほかにも、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、マレイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の様々な樹脂が挙げられている。
そして、上記(2)で説示したように、本件特許発明の課題を解決するための具体的手段は、硬化剤として、「イミドオリゴマーを含む硬化剤とを含有し、上記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド骨格及び置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族ジアミン残基及び/又は置換されていてもよい炭素数4以上の脂肪族トリアミン残基を有し、末端に架橋性官能基を有し、かつ、分子量が5000以下である脂肪族ジアミン残基及び/又は脂肪族トリアミン残基含有イミドオリゴマー」を使用することにあるため、硬化性樹脂は、当該硬化剤と反応して硬化する樹脂であれば、その種類は問わないものである。そうであれば、「硬化性樹脂」が、例えば、「アクリル樹脂」のようなものであった場合にも、「硬化性樹脂」が、硬化剤が有する架橋性末端である「酸無水物基、フェノール性水酸基、及び、活性エステル基からなる群より選択される少なくとも1種」と反応する官能基を有すると解するのが相当である。
また、申立人は、「官能基の反応性はその種類によって異なるから、樹脂組成物の発明において、各成分が有する官能基の種類や量によって、組成物ないし硬化物の特性が異なるものとなる」と一般的な技術的事項を述べるにとどまり、具体的な証拠をもって、本件特許発明が本件特許発明の課題を解決し得ないことを立証していない。
よって、申立人の主張イは首肯できない。
ウ 流動性調製剤及び無機充填剤について
無機充填剤について、本件特許明細書の段落【0065】に、「本発明の硬化性樹脂組成物は、無機充填剤を含有することが好ましい。上記無機充填剤を含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、優れた接着性及び長期耐熱性を維持したまま、吸湿リフロー耐性、めっき耐性、及び、加工性により優れるものとなる。」と記載され、流動性調製剤について、段落【0071】に、「本発明の硬化性樹脂組成物は、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の目的で流動調整剤を含有してもよい。」と記載されている。
すなわち、無機充填剤や流動性調製剤の役割は、より本件特許発明の効果を高めるものと解される。
そして、申立人は、流動性調製剤及び無機充填剤を配合しない場合に、本件特許発明が本件特許発明の課題を解決し得ないことを、具体的な証拠をもって立証していない。
よって、申立人の主張ウは首肯できない。
エ 配合量について
申立人は、「樹脂組成物の発明において、その物性が配合される成分及びその割合の影響を受けることは出願時の技術常識である」と一般的な技術的事項を述べるにとどまり、具体的な証拠をもって、本件特許発明が本件特許発明の課題を解決し得ないことを立証していない。
よって、申立人の主張エは首肯できない。
(5)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし3、6、8ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由2によっては取り消すことはできない。
第7 むすび
上記第5及び第6のとおり、本件特許の請求項1ないし3、6、8ないし16に係る特許は、当審が通知した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項1ないし3、6、8ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項4及び7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700798