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特許異議申立

2022-700746

塗料組成物及び塗装品

審判番号
2022-700746
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-174565
登録番号
7051971
請求日
2022年08月02日
審決日
2023年11月21日
公報発行日
2024年02月22日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社オリジン
  • 【権利者代理人】岡田 賢治
  • 【権利者代理人】畑 雅明
  • 【権利者代理人】田中 真理
  • 【権利者代理人】今下 勝博
  • 【異議申立人】森山 涼子
  • 【異議申立人】中川 賢治
審判長/審判官
  • 審判長 塩見 篤史
  • 審判官 門前 浩一
  • 審判官 関根 裕
分類
P1651.121-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7051971号発明「塗料組成物及び塗装品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7051971号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、〔4-8〕について訂正することを認める。 特許第7051971号の請求項1-6、8に係る特許を維持する。 特許第7051971号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7051971号の請求項1~8に係る特許(以下、「本件特許」ともいう。)についての出願は、令和2年10月16日の出願であって、令和4年4月1日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行された。その後、同年8月2日に特許異議申立人 森山 涼子(以下「申立人A」という。)により、請求項1~3に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、同年9月16日に特許異議申立人 中川 賢治(以下「申立人B」という。)により、請求項1~8に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。 その後、当審は、令和5年2月16日付けで取消理由を通知し(発送は同年同月21日)、この取消理由通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年4月19日に意見書の提出及び訂正の請求を行った。当審は、同年5月11日付けで申立人A及び申立人Bに訂正請求があった旨を通知したが(発送は同年同月16日)、この通知に対し、申立人A及び申立人Bは、いずれも、その指定期間内に意見書を提出しなかった。 第2 本件訂正請求について 1 請求の趣旨 令和5年4月19日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」ともいう。)の請求の趣旨は、「特許第7051971号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める。」というものである。 2 本件訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」ともいう。)の内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項1、4、5、7及び、明細書の訂正に係る以下の訂正事項2、3、6からなるものである。なお、訂正請求書の「7 請求の理由」の項には、訂正事項7に関する記載がないが、訂正特許請求の範囲の記載に基づき、以下のとおりに認定する。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~19質量%である」と記載されているのを、「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%である」に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項2、3も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の段落【0007】に記載された2箇所の「1~19質量%」を「1~9.30質量%」にそれぞれ訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0043】及び段落【0050】の【表1】に記載された「実施例7」を「参考例7」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「該平滑層は、アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有し、前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であり、かつ、前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである2液系の塗料組成物の硬化物からなることを特徴とする塗装品。」と記載されているのを、「該平滑層は、アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有し、前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であり、かつ、前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである2液系の塗料組成物の硬化物からなり、 前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%であることを特徴とする塗装品。」に訂正する。 請求項4の記載を引用する請求項5、6、8も同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0011】に記載された「2液系の塗料組成物の硬化物からなることを特徴とする。本発明に係る塗装品では、前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が500~1000であり、かつ、前記ポリカーボネートジオールの水酸基価が100~230mgKOH/gであることが好ましい。本発明に係る塗装品では、前記塗料組成物の固形分濃度は、50~60質量%であることが好ましい。本発明に係る塗装品では、前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~19質量%であることが好ましい。」を「2液系の塗料組成物の硬化物からなり、前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%であることを特徴とする。本発明に係る塗装品では、前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が500~1000であり、かつ、前記ポリカーボネートジオールの水酸基価が100~230mgKOH/gであることが好ましい。本発明に係る塗装品では、前記塗料組成物の固形分濃度は、50~60質量%であることが好ましい。」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に「請求項4~7のいずれか一つに記載の塗装品。」と記載されているのを、「請求項4~6のいずれか一つに記載の塗装品。」に訂正する。 3 訂正の適否 (1)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~3について、請求項2、3はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項1~3に対応する本件訂正後の請求項1~3は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、本件訂正前の請求項4~8について、請求項5~8はそれぞれ請求項4を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正前の請求項4~8に対応する本件訂正後の請求項4~8は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 また、訂正事項2、3は、塗料組成物に関する説明が記載されている段落【0007】、【0043】、【0050】の記載を、訂正事項1による訂正後の請求項1の記載と整合するように訂正するものであるから、請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、3に関連する訂正事項であり、訂正事項6は、塗装品に関する説明が記載されている段落【0011】の記載を、訂正事項4による訂正後の請求項4の記載と整合するように訂正するものであるから、請求項4及び請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5~8に関連する訂正事項であるが、本件訂正は、全ての請求項である請求項1~8について請求されている。 したがって、本件訂正請求は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。 (2)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1の「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量」の範囲を、「1~19質量%」から「1~9.30質量%」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことが明らかであるから、特許法第120条の5第9項により準用する同法第126条第6項の規定に適合する。 また、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」ともいう。)には、「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量」の範囲について、「本実施形態に係る塗料組成物では、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量は、1~19質量%であることが好ましく、2~15質量%であることがより好ましく、5~10質量%であることがより更に好ましい。1質量%未満では、基材又は上塗りとの密着性に劣る場合がある。19質量%を超えると、乾燥性が劣る場合がある。」(段落【0022】)、「(実施例2) 主剤の調製において、アクリルポリオール(アクリディックA-859B、DIC社製;重量平均分子量3000、水酸基価138mgKOH/g、固形分濃度75質量%)を、アクリルポリオール(アクリディックWNU-533、DIC社製;重量平均分子量7000、水酸基価70mgKOH/g、固形分濃度65質量%)に変更し、塗料組成物の調製において、主剤に、ポリイソシアネート(ポリハードZP-100、オリジン社製)を12質量部と希釈溶媒(オリジンシンナー#210NO.2、オリジン社製)を10部とを配合して、塗料組成物の固形分濃度を53.9質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして塗装品を得た。主剤において、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量(表中、ポリカーボネートジオール 含有率と示す。)は、9.30質量%であった。」(段落【0038】)と記載されている。なお、下線は当審による。 そうすると、訂正事項1は、本件特許明細書又は、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第120条の5第9項により準用する同法第126条第5項の規定に適合する。 (3)訂正事項2、3について 訂正事項2、3は、塗料組成物に関する説明が記載されている段落【0007】、【0043】、【0050】の記載を、訂正事項1による訂正後の請求項1の記載と整合するように、訂正事項1と同様の訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項2、3は、訂正事項1と同様の訂正するものであるから、訂正事項1と同様の理由で、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5、6項に適合する。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項4の「2液系の塗料組成物」についてさらに「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%である」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4の内容は、訂正事項1と同様のものであるから、訂正事項1と同様の理由で、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5、6項に適合する。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項7を削除するものであるから、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことも明らかであり、したがって、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5、6項に適合する。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、塗装品に関する説明が記載されている段落【0011】の記載を、訂正事項4による訂正後の請求項4の記載と整合するように、訂正事項4と同様の訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項6は、訂正事項4と同様の訂正するものであるから、訂正事項4と同様の理由で、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5、6項に適合する。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、本件訂正前の請求項8が請求項4~7を引用する形式で記載されていたところ、引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項7は、引用する請求項から請求項7を削除するものであるから、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではないことも明らかであり、したがって、特許法第120条の5第9項により準用する第126条第5、6項に適合する。 (8) 独立特許要件について 本件訂正においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~8に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用する特許法第126条第7項の規定は課されない。 (9) 本件訂正の適否についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1、3号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項により準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを認める。 第3 本件特許発明など 1 本件特許発明 上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1~8に係る発明は、その特許の特許請求の範囲の請求項1~8に記載された以下のとおりのものである(請求項1~8に係る発明を、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明8」といい、まとめて「本件特許発明」ともいう。)。 「【請求項1】 アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有する2液系の塗料組成物において、 前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であり、かつ、 前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gであり、 前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%であることを特徴とする塗料組成物。 【請求項2】 前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が500~1000であり、かつ、前記ポリカーボネートジオールの水酸基価が100~230mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。 【請求項3】 前記塗料組成物の固形分濃度は、50~60質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗料組成物。 【請求項4】 炭素繊維強化プラスチック製の基材と、該基材の表面上に設けられた塗膜と、を備える塗装品において、 前記塗膜は、前記基材の表面上又は前記基材の表面上に設けられたアンダーコート層の表面上に設けられた平滑層を有し、 該平滑層は、アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有し、前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であり、かつ、前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである2液系の塗料組成物の硬化物からなり、 前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%であることを特徴とする塗装品。 【請求項5】 前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量が500~1000であり、かつ、前記ポリカーボネートジオールの水酸基価が100~230mgKOH/gであることを特徴とする請求項4に記載の塗装品。 【請求項6】 前記塗料組成物の固形分濃度は、50~60質量%であることを特徴とする請求項4又は5に記載の塗装品。 【請求項7】(削除) 【請求項8】 前記塗膜は、前記平滑層の表面上に設けられた意匠層を更に有することを特徴とする請求項4~6のいずれか一つに記載の塗装品。」 2 本件特許明細書の記載 本件特許明細書には、以下の記載がある。 (1)「【0027】 本実施形態に係る塗装品は、炭素繊維強化プラスチック製の基材と、基材の表面上に設けられた塗膜と、を備える塗装品において、塗膜は、基材の表面上又は基材の表面上に設けられたアンダーコート層の表面上に設けられた平滑層を有し、平滑層は、本実施形態に係る塗料組成物の硬化物からなる。 ・・・ 【0029】 平滑層は、本実施形態に係る塗料組成物の硬化物であり、膜状をなす。この硬化物は、主剤のアクリルポリオールと硬化剤のポリイソシアネートとが反応・硬化することによって形成されたアクリルウレタン系樹脂からなる。平滑層は、着色剤を含有しないクリア層であるか、又は着色剤を含有するカラー層であってもよい。平滑層は、基材の表面上に直接設けられてもよいし、基材の表面上に設けられたアンダーコート層などの下塗りの表面上に設けられてもよい。」 (2)「【0033】 本実施形態に係る塗装品では、塗膜は、平滑層の表面上に設けられた意匠層を更に有することが好ましい。 【0034】 意匠層の材質は特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂又はアクリルシリコン系樹脂である。意匠層は、着色剤を含有しないクリア層であるか、又は着色剤を含有するカラー層であってもよい。意匠層がクリア層であることで、CFRP成形品の有する繊維の素材感を活かした用途に好適である。また、意匠層がカラー層であることで、CFRPの有する強度などの物性を活かした自動車のボディーなどの多岐にわたる用途に適用できる。」 (3)「【0037】 (実施例1) (主剤の調製) 主剤として、アクリルポリオール(アクリディックA-859B、DIC社製;重量平均分子量3000、水酸基価138mgKOH/g、固形分濃度75質量%)を75質量部と、ポリカーボネートジオール(デュラノールT5651、旭化成社製;数平均分子量1000、水酸基価110mgKOH/g、固形分濃度100質量%)を5質量部と、紫外線吸収剤(チヌビン400、BASF社製)を2.4質量部と、光安定剤(チヌビン292、BASF社製)を1.2質量部と、消泡剤(BYK-392、BYK社製)を0.4質量部と、レベリング剤(BYK-302、BYK社製)を0.1質量部と、酢酸ブチルを7質量部と、プロピオン酸3-エトキシエタノール(ユーカエステルEEP、DOW CHEMICAL社製)を6.9質量部と、硬化触媒(ジラウリン酸ジブチルスズ、東京化成工業製、固形分濃度100質量%)を0.02質量部と、を配合した。主剤において、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量(表中、ポリカーボネートジオール含有率と示す。)は、8.16質量%であった。 (塗料組成物の調製) 得られた主剤100質量部に対して、硬化剤としてポリイソシアネート(ポリハードZP-100、オリジン社製)を25質量部と、希釈溶媒(オリジンシンナー#210NO.2、オリジン社製)を30質量部とを配合して、塗料組成物とした。この塗料組成物の固形分濃度は55.6質量%であった。 (塗装品の形成) 得られた塗料組成物を、CFRP製基材(チャレンヂ社製、縦200mm、横200mm、厚さ1mm)の表面上にスプレー塗装し、80℃で30分間乾燥させた。1回のスプレー塗装で得られた塗膜の厚さは、45μmであった。スプレー塗装及び乾燥を3回繰り返し、合計で厚さ135μmの塗膜(平滑層)を形成し、塗装品を得た。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由など 1 取消理由の概要 当審が令和5年2月16日付けで通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 取消理由 (進歩性) 本件特許発明1~8は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 2 甲号証の一覧 申立人A及び申立人Bが提示した証拠は、次のとおりである。以下、申立人Aの提示した甲第1号証を「甲A1」などといい、申立人Bの提示した甲第1号証を「甲B1」などという。 甲A1:特開2020-100783号公報 甲A2:特開2019-178214号公報 甲A3:特表2001-525883号公報 甲A4:旭化成のポリカーボネートジオール(PCD) 特長と用途、[online]、令和4年7月19日検索、 インターネットURL<http://www.asahi-kasei.co.jp/pcdlhp/characteristics.html> 甲B1:特開2018-59072号公報 甲B2:特開2020-59777号公報 3 甲号証の記載 各甲号証には、以下の記載がある。 (1)甲A1の記載 ア「【請求項1】 塗膜形成樹脂として、水酸基含有アクリル樹脂(c-1)と、非水分散型アクリル樹脂(c-2)と、ジオール樹脂(c-3)と、ポリイソシアネート化合物(c-4)とを含むクリヤー塗料組成物であって、 前記水酸基含有アクリル樹脂(c-1)は、水酸基価が80mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が4,000以上10,000以下であり、及びガラス転移温度が30℃以上60℃以下であり、 前記非水分散型アクリル樹脂(c-2)はコアシェル構造を有し、前記コア部の水酸基価は100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、及び前記コア部のガラス転移温度は40℃以上80℃以下であり、 前記ジオール樹脂(c-3)は、水酸基価が80mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、かつ、前記ジオール樹脂(c-3)は、ポリカーボネートジオール樹脂、ポリエーテルジオール樹脂、ポリエステルジオール樹脂及びポリカプロラクトンジオール樹脂から選択される少なくとも1種を含む、 クリヤー塗料組成物。 ・・・ 【請求項14】 被塗物に、請求項1~13のいずれかに記載のクリヤー塗料組成物を塗装し、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、及び、 未硬化のクリヤー塗膜を加熱硬化させ、クリヤー塗膜を形成する工程を含む、クリヤー塗膜の形成方法。」 イ「【0023】 [クリヤー塗料組成物] 本開示のクリヤー塗料組成物は、塗膜形成樹脂として、水酸基含有アクリル樹脂(c-1)と、非水分散型アクリル樹脂(c-2)と、ジオール樹脂(c-3)と、ポリイソシアネート化合物(c-4)とを含む。 【0024】 水酸基含有アクリル樹脂(c-1) 水酸基含有アクリル樹脂(c-1)は、水酸基価が80mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が4,000以上10,000以下であり、およびガラス転移温度が30℃以上60℃以下である。 【0025】 本発明において「アクリル樹脂」とは、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステルのうちの少なくとも一つのモノマーを含むモノマー組成物を重合して得られるポリマーを指す。 【0026】 水酸基含有アクリル樹脂(c-1)は、水酸基価(OHV)が80mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であり、ある態様において、水酸基価は80mgKOH/g以上210mgKOH/g以下であり、例えば、水酸基価は80mgKOH/g以上205mgKOH/g以下である。別の態様においては、水酸基価は110mgKOH/g以上180mgKOH/g以下である。 水酸基価がこのような範囲内であることにより、クリヤー塗膜に良好な架橋密度を付与でき、クリヤー塗膜および複層塗膜に優れた耐ガソホール性及び耐候性等を付与できる。さらに、塗膜の親水化を抑制でき、クリヤー塗膜および複層塗膜に優れた耐水性、耐湿性を有することができる。 なお、水酸基価は、JIS K 0070に記載されている水酸化カリウム水溶液を用いる中和滴定法により求めることができる。 【0027】 水酸基含有アクリル樹脂(c-1)の重量平均分子量は、4,000以上10,000以下であってよく、ある態様においては4,000以上8,000以下であり、別の態様において、4,000以上6,000以下、例えば4,000以上5,500以下である。 水酸基含有アクリル樹脂(c-1)の重量平均分子量がこのような範囲内であることにより、例えば、クリヤー塗膜形成組成物をベース塗膜上又は未硬化のベース塗膜上に塗装したときに、クリヤー塗膜形成組成物とベース塗膜との混相の発生を抑制でき、良好なクリヤー塗膜の外観(仕上がり外観)を得ることができる。また、クリヤー塗膜形成組成物の速乾性を向上させることが出来る。 その上、クリヤー塗料組成物は適度な粘度を有することができ、クリヤー塗膜形成組成物の塗装時の粘度を低下させる溶剤の使用を低減でき、揮発性有機化合物(VOC)の増加を抑制できる。さらに、得られた塗膜は、優れた耐ガソホール性、耐候性および外観を有することができる。 【0028】 本明細書における重量平均分子量は、東ソー株式会社製 HLC-8200を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した値である。測定条件は以下の通りである。 カラム TSgel Super Multipore HZ-M 3本 展開溶媒 テトラヒドロフラン カラム注入口オーブン 40℃ 流量 0.35ml 検出器 RI 標準ポリスチレン 東ソー株式会社製PSオリゴマーキット」 ウ「【0067】 (ジオール樹脂(c-3)) 本発明に係るクリヤー塗料組成物は、塗膜形成樹脂としてジオール樹脂(c-3)を含む。ジオール樹脂(c-3)は、水酸基価が80mgKOH/g以上200mgKOH/g以下である。更に、ジオール樹脂(c-3)は、ポリカーボネートジオール樹脂、ポリエーテルジオール樹脂、ポリエステルジオール樹脂及びポリカプロラクトンジオール樹脂から選択される少なくとも1種を含む。ジオール樹脂は、室温20℃で液状であることが好ましい。 ジオール樹脂(c-3)が、このような特性を有することにより、クリヤー塗料組成の焼付後の硬化塗膜(クリヤー塗膜)は、優れた塗膜性能と、デュポン衝撃強度とを確保できる。例えば、より優れた、低温でのデュポン衝撃強度を備えることができる。 また、低粘度のためフロー性向上、外観向上を図ることができる。 【0068】 ある態様において、ジオール樹脂(c-3)の水酸基価は80mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であり、例えば、水酸基価は80mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である。別の態様において、ジオール樹脂(c-3)の水酸基価は90mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であり、例えば、ジオール樹脂(c-3)の水酸基価は90mgKOH/g以上170mgKOH/g以下である。 ジオール樹脂(c-3)の水酸基価がこのような範囲内であることにより、クリヤー塗料組成の焼付後の硬化塗膜(クリヤー塗膜)は、より優れた塗膜性能と、デュポン衝撃強度とを確保できる。例えば、より優れた、低温でのデュポン衝撃強度を備えることができる。」 エ「【0073】 (ポリイソシアネート化合物(c-4)) 本発明に係るクリヤー塗膜(c)は、塗膜形成樹脂として、ポリイソシアネート化合物(c-4)を含む。ポリイソシアネート化合物(c-4)を用いることにより、クリヤー塗料組成物の硬化反応速度を向上させることができる。 例えば、非水分散型アクリル樹脂(c-2)のコア部が水酸基含有アクリル酸エステルモノマーを含む場合、ポリイソシアネート化合物(c-4)を用いることにより、クリヤー塗料組成物の硬化反応速度を更に向上できる。」 オ「【0113】 (被塗物) 被塗物は、用途、機能などに応じて適宜選択できる。 ・・・ 【0114】 ある態様において、被塗物としてプラスチック基材を用いることができる。例えば、自動車用部品に使用する、プラスチック基材であってよい。例えば、プラスチック基材は、ポリプロピレンやポリオレフィンまたはエラストマー変性ポリプロピレン樹脂を含む。エラストマー変性ポリプロピレン樹脂は、特に限定されず、公知の市販のものを使用することができる。更に、樹脂以外に必要に応じて添加剤を添加したものであってもよい。また、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂製の被塗物を用いてもよい。」 カ「【実施例】 【0116】 以下、本発明を実施例によって説明する。実施例中、配合割合において%とあるのは特に言及がない限り質量%を意味する。本発明は以下に記載した実施例に限定されるものではない。 【0117】 (合成例C-1-1) 水酸基含有アクリル樹脂Ac(1)の製造 温度調節器、攪拌翼、還流管、窒素導入口を備えた2Lのセパラブルフラスコに、酢酸ブチル444.27gを仕込み、フラスコ内部を窒素雰囲気下にした後、温度を130℃に昇温して一定に保った。一方、スチレン(ST)255g、メタクリル酸(MAA)8.5g、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)394.4g、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)117.47g、メタクリル酸イソブチル(iBMA)74.72g、およびカヤエステルO 102gの混合液を滴下ロートに入れて、3時間かけて滴下した。次いで、1時間反応を継続した後、後開始剤として、酢酸ブチル204g、カヤエステルO 20.4gの混合液を30分間かけて滴下し、更に1時間反応を継続して固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂Ac(1)を得た。水酸基含有アクリル樹脂Ac(1)の配合量および物性を表1に示す。 【0118】 (合成例C-1-2~C-1-9) 水酸基含有アクリル樹脂Ac(2)~Ac(9)の合成 合成例(C-1-1)で用いた設備と同様の設備を用いて、表1に記載の配合量となるように溶剤、モノマー、開始剤、重合温度に変更した以外は合成例(C-1-1)の合成手順、操作と同様の合成手順、操作を行い、表1に記載の水酸基含有アクリル樹脂Ac(2)~Ac(9)を得た。物性も合わせて表1に示す。 【0119】 (水酸基価(OHV)) 水酸基価は、JIS K 0070に記載されている水酸化カリウム水溶液を用いる中和滴定法により求めた。 【0120】 (ガラス転移温度) 水酸基含有アクリル樹脂Ac(1)~Ac(9)のガラス転移温度(Tg)は、下記方法で測定した。即ち、重合によって得られた水酸基含有アクリル樹脂から溶剤を減圧蒸留して除去した後、示差走査熱量計(DSC)(セイコー電子工業株式会社製;熱分析装置SSC/5200H)を用いて下記工程1~3 第1工程:20℃→100℃(昇温速度10℃/min) 第2工程:100℃→-50℃(降温速度10℃/min) 第3工程:-50℃→100℃(昇温速度10℃/min) を行い、第3工程の昇温時から水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度を、特開2015-168693号公報に記載の方法により測定した。 【0121】 (重量平均分子量) 水酸基含有アクリル樹脂Ac(1)~Ac(9)の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した値であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。 【0122】 (固形分酸価(AV)の測定) 酸価の測定は、JIS.K.5601-2-1に則して測定した。 【0123】 【表1】 [図:0001406672000001.jpg] 【0124】 (合成例C-2-1) 非水分散型アクリル樹脂(NAD-1)の製造 非水分散型アクリル樹脂のシェル部(非水分散型樹脂シェルAc(1))の合成 温度調節器、攪拌翼、還流管、窒素導入口を備えた1Lのセパラブルフラスコに、酢酸ブチル376.8gを仕込み、フラスコ内部を窒素雰囲気下にした後、温度を110℃に昇温して一定に保った。一方、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル9.36g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル91g、メタクリル酸ラウリル100g、メタクリル酸メチル55g、メタクリル酸4g、メタクリル酸イソボロニル140.64g、およびカヤエステルO 12gの混合液を滴下ロートに入れて、3時間かけて滴下した。 次いで、1時間反応を継続した後、後開始剤として、酢酸ブチル40g、カヤエステルO 4.8gの混合液を30分間かけて滴下し、更に1時間反応を継続して固形分50%の非分散樹脂シェルAc(1)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は20,000であった。 【0125】 非水分散型アクリル樹脂(NAD(1))の合成 温度調節器、攪拌翼、還流管、窒素導入口を備えた500mLのセパラブルフラスコに、上記で調製した非水分散型樹脂シェルAc(1)133.33g、酢酸ブチル174.98gを仕込み、フラスコ内部を窒素雰囲気下にした後、温度を110℃に昇温して一定に保った。 次に、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)39.44g、スチレン(ST)2.83g、メタクリル酸メチル(MMA)52.5g、アクリル酸-2-エチルヘキシル(EHA)4.59g、アクリル酸(AA)0.64g、およびカヤエステルO 1.0gの混合液を滴下ロートに入れて、3時間かけて滴下した。 次いで、1時間反応を継続した後、後開始剤として、酢酸ブチル10g、カヤエステルO 0.1gの混合液を30分間かけて滴下し、更に1時間反応を継続して固形分50%の非水分散型アクリル樹脂(NAD(1))を得た。得られた非水分散型アクリル樹脂(NAD-1)に凝集物は見られなかった。非水分散型アクリル樹脂(NAD(1))の配合量および物性を表2に示す。 【0126】 (合成例C-2-2~合成例C-2-9) 合成例(C-2-1)で用いた設備と同様の設備を用いて、表2に記載の配合量となるように分散樹脂、溶剤、モノマー、開始剤、重合温度を変更する以外は合成例(C-2-1)の合成手順、操作と同様の合成手順、操作を行い、表2に記載の非水分散型アクリル樹脂(NAD(2))~非水分散型アクリル樹脂(NAD(9))を得た。また、非水分散型アクリル樹脂(NAD(2))~非水分散型アクリル樹脂(NAD(9))の物性を表2に示す。 表2中、4HBAは、アクリル酸4-ヒドロキシブチルを意味する。また、プラクセルFM1は、(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)である。これらは、いずれも、水酸基を有し、エステル部位の炭素数が4以上、12以下である、水酸基含有アクリル酸エステルモノマーを示す。 非水分散型アクリル樹脂(NAD(1))~非水分散型アクリル樹脂(NAD(9))のガラス転移温度、水酸基価、および酸価は、水酸基含有アクリル樹脂と同様にして測定した。 【0127】 【表2】 [図:0001406672000002.jpg] 【0128】 (実施例1) (クリヤー塗膜の形成) 以下の表3に記載した配合であり、酢酸ブチルを用いて希釈したクリヤー塗料組成物を、スプレーガン(アネスト岩田株式会社製;W-101-134G)を用いて、乾燥膜厚が35μmになるように、ポリプロピレン基材上に塗装し、試験片は、温度20±5℃、相対湿度78%以下の塗装環境下で10分間放置した。実施例1で用いたジオール樹脂(c-3)は、ベッコライトWHF348(DIC社製、ポリエステルジオール樹脂)であり、水酸基価110mg KOH/g、ガラス転移温度(Tg)は室温(20℃)以下であった。 ポリイソシアネート化合物として、N3300(コベストロ社製、NCO%=22)を用いた。 次いで、乾燥機を用いて素材が80℃まで昇温後、80℃下で、10分間乾燥及び加熱硬化させて、基材とクリヤー塗膜とを有する試験片を得た。 得られたクリヤー塗膜に関する配合、各種物性、評価結果を表3に示す。 【0129】 (実施例2~11、比較例1~13) 実施例1で用いた成分以外に、実施例及び比較例において用いた各成分の詳細は、次のとおりである。 【0130】 合成例(C-3-1)3官能ポリオールの製造 温度調節器、攪拌翼、還流管、窒素導入口を備えた1Lのセパラブルフラスコにトリメチロールプロパン36.8g、ε-カプロラクトン563.2g、ジブチル錫ラウレート0.3gを仕込み、160℃で6時間反応を継続した。得られた樹脂の分岐数は3、水酸基当量は730で、室温20℃で液状であった。 【0131】 ジオール成分 ・クラレポリオールP-1010(株式会社クラレ社製)(P-1010)分子量1000のポリエステルジオール、水酸基価110mg KOH/g、融点-71℃ ・クラレポリオールP-2010(株式会社クラレ社製)(P-2010)分子量2000のポリエステルジオール、水酸基価55mg KOH/g、融点-67℃ ・プラクセル210(株式会社ダイセル社製)(PCL-210) 分子量1000のポリカプロラクトンジオール、水酸基価110mg KOH/g、ガラス転移温度(Tg)は20℃以下 ・デュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651) 数平均分子量1000のポリカプロラクトンジオール、水酸基価110mg KOH/g、融点-5℃以下 【0132】 セルロース誘導体 ・イーストマンCAB 551-0.01(イーストマンケミカル社製) 分子量16000のブチル化53%のセルロース誘導体 【0133】 (塗装物品の物性評価) 表3に示す配合で、実施例2~11のクリヤー塗料組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にクリヤー塗膜を形成した。 また、表4に示す配合で、比較例1~13の塗料組成物を調製したこと以外は、実施例1と同様にクリヤー塗膜を形成した。・・・」 キ「【0141】 【表3】 [図:0001406672000003.jpg] 」 ク「【産業上の利用可能性】 【0147】 本発明のクリヤー塗料組成物は、例えば、自動車車両、自動車用部品において好適に使用することができる。」 (2)甲A2の記載 ア「【0031】 本発明において使用されるポリカーボネートジオールとしては、通常、公知のジオールとカルボニル化剤とを重縮合反応させることにより得られる化合物を挙げることができる。具体的には、例えば、・・・、旭化成株式会社製の「デュラノール T5652」、「デュラノール T5651」、「デュラノール T5650J」、「デュラノール 5650E」、「デュラノール G4672」、「デュラノール T4671」、「デュラノール T4692」、「デュラノール T4691」、「デュラノール G3450J」等を挙げることができる。・・・」 (3)甲A3の記載 ア「【特許請求の範囲】 1.ヒドロキシ価が75~300mg KOH/g固体樹脂であるヒドロキシ基含有フィルム形成性ポリマー、ポリイソシアネート化合物、および一般式HO-CH2-CR(C2H5)-CH2-OH(Rは、炭素数3~6のアルキル基である)のジオールを含むコーティング組成物。 ・・・ 3.ヒドロキシ基含有フィルム形成性ポリマーが、ヒドロキシ基含有ポリアクリレートである、請求項1または2に記載のコーティング組成物。 ・・・ 7.コーティング組成物がクリアコート組成物である、請求項1~6のいずれか1つに記載のコーティング組成物。 8.請求項1~7のいずれか1つに記載のコーティング組成物を基体に施与することを含むコーティング方法。 ・・・ 12.基体が請求項8~11のいずれか1つの方法に従ってコーティングされていることを特徴とするコーティングされた基体。 13.基体が自動車、または列車、バスおよび飛行機および他の大型輸送車両であることを特徴とする請求項12に記載のコーティングされた基体。」 イ「好ましくは、コーティング組成物は、組成物全体に基づいて500g/リットル未満、より好ましくは480g/リットル未満、最も好ましくは420g/リットル未満の揮発性有機溶媒を含む。固形含量は好ましくは、50重量%より高く、より好ましくは52重量%より高く、最も好ましくは58重量%より高い。」(第11頁第6~10行) (4)甲A4の記載 ア「 [図:0001406672000004.jpg] 」(第1頁第3~4行) イ「 [図:0001406672000005.jpg] 」(第1頁第11~19行) (5)甲B1の記載 ア「【0058】 <用途> 本実施形態の塗料組成物は、耐傷付き性、傷回復性に優れるため、自動車外装用クリア塗料、自動車内装用塗料として好適に使用される。・・・」 イ「【0069】 [実施例1] 水酸基含有アクリル樹脂として、Nuplex社製Setalux1152(キシレン/メトキシプロピルアセテート混合溶液、固形分61質量%、固形分換算水酸基価139mgKOH/g、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量3000)を295g、ポリカーボネートポリオールPC-1を20g、レベリング剤BYK-331(BYKケミカル社製)2.06g、ジブチル錫ジラウレート(Air Product社製)1.2g、及びシンナーとしてキシレン/酢酸ブチル(70/30)の混合溶媒を添加して撹拌今後し、固形分50質量%の塗料主剤を得た(溶剤を除く主剤中のポリカーボネートポリオールの割合は10%)。これに硬化剤としてデュラネートTKA-100(旭化成株式会社社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型硬化剤、NCO含量=21.8wt%、1分子中のイソシアネート基:3)をNCO/OHモル比=1.0/1.0となる様添加し、混合して塗料組成物を作製した。上記方法にてペンドラム硬度、耐傷付き性、傷回復性を評価し結果を表1に示した。」 ウ「【0076】 [比較例2、3] 実施例1のポリカーボネートポリオールPC-1の替わりに旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)、T5652(数平均分子量2000、1分子中の平均水酸基価数2.0)を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法にて塗料組成物を作製した。塗膜性能を評価し結果を表1に示した。」 エ「【0078】 【表1】 [図:0001406672000006.jpg] 」 オ「【産業上の利用可能性】 【0079】 本実施形態の塗料組成物は、傷回復塗料として、自動車の外装、内装、家電製品、OA製品、皮革の表面処理、合成皮革の表面処理等に好ましく用いることができる。」 (6)甲B2の記載 ア「【請求項1】 有機系硬化剤、前記有機系硬化剤と反応性を有するバインダー樹脂、樹脂粒子、無機酸化物および溶剤を含有する、塗装下地処理材組成物。 ・・・ 【請求項3】 前記有機系硬化剤は、イソシアネート系硬化剤である、請求項1または2に記載の塗装下地処理材組成物。 ・・・ 【請求項5】 前記バインダー樹脂は、アクリルポリオール樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の塗装下地処理材組成物。 ・・・ 【請求項15】 基材と、前記基材表面の凹部内に充填された請求項1~14のいずれか1項に記載の塗装下地処理材組成物からなる硬化物と、を有する、部品。 【請求項16】 前記基材は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)である、請求項15に記載の部品。」 イ「【0002】 近年、自動車分野では、軽量化による燃費向上の期待から、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の自動車部品への適用が検討されている。一般的に、CFRPは、炭素繊維に樹脂を含浸させ、樹脂を硬化させることにより成形される。成形されたCFRPは、素材保護の観点から塗装が施され、自動車部品に使用される。」 ウ「【0088】 [塗装下地処理材組成物の製造方法] 本発明の組成物の製造方法は、特に制限されないが、有機硬化剤以外の成分を順次にまたは一括で混合して主剤を得た後、有機系硬化剤を混合する方法が好ましい。当該方法において、施工直前(組成物を凹部に充填させる直前)に有機系硬化剤を混合することで、有機系硬化剤と反応性バインダー樹脂との反応の進行を防止することができる。ゆえに、組成物は凹部の形状に沿った形で硬化することになり、凹部の充填性が向上する。」 エ「【0090】 <部品> 本発明は、基材と、前記基材表面の凹部内に充填された上記の塗装下地処理材組成物からなる硬化物と、を有する、部品についても提供する。当該部品を研磨すると、硬化物中の充填材の欠落や摩耗が生じにくいため、平滑な表面が得られる。ゆえに、研磨後の当該部品にクリア塗装を施すと、ピンホールの発生が抑制される。すなわち、当該部品によれば、クリア塗装回数を削減することができる。 【0091】 [基材] 本発明の部品において、基材は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)であることが好ましい。表面に凹部を有するCFRPを基材として使用することで、クリア塗装後のピンホールの発生を抑制し、クリア塗装回数を削減でき、自動車部品への適用が好適となる。 【0092】 CFRPは、主に炭素繊維に樹脂を含浸させて得られる。炭素繊維としては、レーヨン系炭素繊維、ポリアクリルニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等が挙げられる。また、樹脂としては、エポキシ樹脂等が挙げられる。 【0093】 CFRPの成形方法は、特に制限されないが、意匠性が求められる自動車の部品への適用を考慮すると、オートクレーブ工法が好ましい。すなわち、本発明の一実施形態において、基材は、オートクレーブ工法で成形されたCFRPである。オートクレーブ工法については、上述したとおりである。 【0094】 [部品の製造方法] 本発明の部品の製造方法は、特に制限されないが、例えば、ウェス、刷毛、ローラー等の塗布手段を用いて、上記の塗装下地処理材組成物を基材に塗布した後、基材表面に残存する組成物を拭き取り、基材を乾燥する方法が挙げられる。余剰の組成物を拭き取ることで、色ムラが抑制され、クリア塗装後の外観が向上する。なお、上記の塗布-拭き取り-乾燥の工程は、1回のみ行ってもよいし、複数回行ってもよい。 【0095】 乾燥条件は、組成物中の溶剤を除去できる条件であれば特に制限されないが、例えば、50~120℃で、5~60分行う。 【0096】 上記のようにして得られた本発明の部品は、研磨処理、プライマー処理、クリア塗装、着色塗装等を施すことにより、自動車部品等に適用することができる。」 オ「【実施例】 【0097】 本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「重量%」および「重量部」を意味する。 【0098】 <塗装下地処理材組成物の製造> 表1に示した配合量(質量部)で各成分を混合し、ディゾルバーを用いて室温で60分間撹拌して主剤を得た後、当該主剤に対して有機系硬化剤を混合し、塗装下地処理材組成物を得た。この際、当該主剤に含まれるアクリルポリオール樹脂と有機系硬化剤との混合比率が、NCO/OH比で1.0となるよう、混合した。また、有機系硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体(東ソー株式会社製コロネート(登録商標)HX)を使用した。なお、主剤の製造に使用した成分は以下のとおりである。 【0099】 [反応性バインダー樹脂] ・アクリルポリオール樹脂A:ヒタロイド(登録商標)3020B(日立化成株式会社製;ガラス転移温度50~60℃、重量平均分子量36,000、ワニス(樹脂溶液)の水酸基価50mgKOH/g、ワニス(樹脂溶液)の酸価6~8mgKOH/g) ・アクリルポリオール樹脂B:6KW-083E(大成ファインケミカル株式会社製;ガラス転移温度40℃、重量平均分子量25,000、ワニス(樹脂溶液)の水酸基価10mgKOH/g、ワニス(樹脂溶液)の酸価3.0mgKOH/g) ・アクリルポリオール樹脂C:6AN-6000(大成ファインケミカル株式会社製;ガラス転移温度70℃、重量平均分子量31,000、ワニス(樹脂溶液)の水酸基価48mgKOH/g、ワニス(樹脂溶液)の酸価5.7mgKOH/g) ・アクリルポリオール樹脂D:6KW-700(大成ファインケミカル株式会社製;ガラス転移温度100℃、重量平均分子量65,000、ワニス(樹脂溶液)の水酸基価10mgKOH/g、ワニス(樹脂溶液)の酸価2.7mgKOH/g) ・アクリルポリオール樹脂E:6AN-7000(大成ファインケミカル株式会社製;ガラス転移温度96℃、重量平均分子量65,000、ワニス(樹脂溶液)の水酸基価30mgKOH/g、ワニス(樹脂溶液)の酸価3.0mgKOH/g) [樹脂粒子] ・真球状架橋アクリル樹脂粒子(φ100):ガンツパール(登録商標)特注品(アイカ工業株式会社製;平均一次粒径100μm、真密度1.21g/cm3) ・真球状架橋アクリル樹脂粒子(φ20):ガンツパール(登録商標)GM-20(アイカ工業株式会社製;平均一次粒径20μm、真密度1.21g/cm3) ・真球状架橋アクリル樹脂粒子(φ10):ガンツパール(登録商標)GM-10(アイカ工業株式会社製;平均一次粒径10μm、真密度1.21g/cm3) ・真球状架橋アクリル樹脂粒子(φ5):ガンツパール(登録商標)GM-05(アイカ工業株式会社製;平均一次粒径5μm、真密度1.21g/cm3) ・真球状架橋ウレタン樹脂粒子(φ22):アートパール(登録商標)C-300(根上工業株式会社製;平均一次粒径22μm、真密度1.16g/cm3) ・真球状架橋ウレタン樹脂粒子(φ10):アートパール(登録商標)C-600(根上工業株式会社製;平均一次粒径10μm、真密度1.16g/cm3) [無機酸化物] ・沈降性湿式シリカ:カープレックス#67(DSLジャパン株式会社製、平均一次粒径6.5μm、真密度2.0g/cm3) ・珪石粉:雪印珪石特級No.4(丸釜釜戸陶料株式会社製、平均一次粒径6.2μm、真密度2.2g/cm3) ・カオリンクレー:カオリンクレー特月印(フジライト工業株式会社製、平均一次粒径1μm、真密度2.6g/cm3) [溶剤] ・3-メトキシブチルアセテート(株式会社ダイセル製;沸点174℃) [グルコース系粒子] ・澱粉質:コーンスターチ(日本食品化工株式会社製;平均一次粒径20μm、真密度1.5g/cm3)。 【0100】 <性能評価> [ピンホール] オートクレーブ工法で製造したCFRP板A4相当(20cm×30cm×厚さ0.1cm)の表面をアセトンで脱脂した後、ウェスを用いて上記の各塗装下地処理材組成物を摺り込むように塗布し、表面の余剰の組成物を清浄なウェスで拭き取った。この塗板を100℃で10~20分乾燥後、空砥ペーパー(以下省略)#320~800を用いて表面の余剰物を研削除去した。次に、2液アクリルウレタンクリア(日本ペイントオートモーティブコーティング株式会社製R-2810)をスプレー塗布で乾燥膜厚45μmとなるよう塗装し、80℃で30分乾燥させた。塗装面のピンホールの数を目視で確認し、以下の判定基準で評価した: ○:ピンホール数が300個以下 △:ピンホール数が300個超400個以下 ×:ピンホール数が400個超。」 カ「【0107】 【表1】 [図:0001406672000007.jpg] 」 4 甲A1を主引例とした取消理由について (1)甲A1発明の認定 ア 甲A1には、塗膜形成樹脂として、水酸基含有アクリル樹脂(c-1)と、非水分散型アクリル樹脂(c-2)と、ジオール樹脂(c-3)と、ポリイソシアネート化合物(c-4)とを含むクリヤー塗料組成物であって、前記水酸基含有アクリル樹脂(c-1)は、水酸基価が80mgKOH/g以上220mgKOH/g以下であり、重量平均分子量が4,000以上10,000以下であり、及びガラス転移温度が30℃以上60℃以下であり、前記非水分散型アクリル樹脂(c-2)はコアシェル構造を有し、前記コア部の水酸基価は100mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、及び前記コア部のガラス転移温度は40℃以上80℃以下であり、前記ジオール樹脂(c-3)は、水酸基価が80mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であり、かつ、前記ジオール樹脂(c-3)は、ポリカーボネートジオール樹脂、ポリエーテルジオール樹脂、ポリエステルジオール樹脂及びポリカプロラクトンジオール樹脂から選択される少なくとも1種を含む、クリヤー塗料組成物が記載されている(前記3(1)の摘記ア(請求項1)参照)。 イ 甲A1には、被塗物としてプラスチック基材を用いることができ、例えば、自動車用部品に使用するプラスチック基材であってよい旨、本発明のクリヤー塗料組成物は、例えば、自動車車両、自動車用部品において好適に使用することができる旨が記載されている(前記3(1)の摘記オ(段落【0114】)、摘記ク(段落【0147】)参照)。 ウ 甲A1の実施例10で調製されるクリヤー塗料組成物は、酢酸ブチルを用いて希釈して得られたものであり、水酸基含有アクリル樹脂(c-1)としてAc(3)を75質量部、非水分散型アクリル樹脂(c-2)としてNAD(1)を25質量部、ジオール樹脂(c-3)としてデュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651)を5.5質量部、ポリイソシアネート化合物(c-4)としてN3300(コベストロ社製、NCO%=22)を含んでいる(前記3(1)の摘記カ、キ(特に段落【0128】~【0129】、【0131】、【0133】、表3)参照)。 エ 甲A1の実施例10において、水酸基含有アクリル樹脂(c-1)として配合されるAc(3)は、合成例(C-1-3)で得られたものであり、その水酸基価(OHV)は150mgKOH/g、重量平均分子量Mwは4,000である(前記3(1)の摘記カ、キ(特に表1、3)参照)。 オ 甲A1にはAc(3)の固形分に関する具体的な記載がないが、Ac(1)の固形分は60%であって合成例(C-1-1)で得たものであり、Ac(3)は、合成例(C-1-1)で用いた設備と同様の設備を用いて、表1に記載の配合量となるように溶剤、モノマー、開始剤、重合温度に変更した以外は合成例(C-1-1)の合成手順、操作と同様の合成手順、操作を行って得たものである(前記3(1)の摘記カ(特に段落【0117】~【0118】)参照)。 また、合成例(C-1-1)における溶剤、モノマー、開始剤の合計の配合量は、1620.71(=444.27+255+394.4+74.72+117.47+8.5+102+20.4+204)であり、このうち、固形分となる成分(モノマー、開始剤)の合計の配合量は、974.44(=255+394.4+74.72+117.47+8.5+102+20.4)であるから、その比は60%(=974.44/1620.71×100)であって、水酸基含有アクリル樹脂Ac(1)の固形分が60%である旨の記載と整合している。 そこで、水酸基含有アクリル樹脂Ac(3)の固形分を、その溶剤、モノマー、開始剤の配合量に基づき計算すると60%(=(170+295.8+282.29+93.42+8.5+102+20.4)/(444.27+170+295.8+282.29+93.42+8.5+102+20.4+204))となる。 カ 甲A1の実施例では、クリヤー塗料組成物をポリプロピレン基材上に塗装し、乾燥及び加熱硬化させて、基材とクリヤー塗膜とを有する試験片を得ている(前記3(1)の摘記カ(特に段落【0128】、【0133】)参照)。 キ そうすると、甲A1の実施例10を中心として、甲A1から次の発明(以下、「甲A1発明a」、「甲A1発明b」という。)が認定できる。 ク 甲A1発明a 「水酸基含有アクリル樹脂(c-1)としてAc(3)(固形分60%)を75質量部、非水分散型アクリル樹脂(c-2)としてNAD(1)を25質量部、ジオール樹脂(c-3)としてデュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651)を5.5質量部、ポリイソシアネート化合物(c-4)としてN3300(コベストロ社製、NCO%=22)を含み、酢酸ブチルを用いて希釈して得られたクリヤー塗料組成物であって、 前記水酸基含有アクリル樹脂(c-1)として配合されるAc(3)の水酸基価(OHV)は150mgKOH/g、重量平均分子量Mwは4,000である、クリヤー塗料組成物。」 ケ 甲A1発明b 「ポリプロピレン基材とクリヤー塗膜とを有する物品であって、 前記クリヤー塗膜は、甲A1発明aのクリヤー塗料組成物をポリプロピレン基材上に塗装し、乾燥及び加熱硬化させて得られたものである、物品。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 甲A1発明aと本件特許発明1を対比する。 (ア)甲A1発明aの「水酸基含有アクリル樹脂(c-1)としてAc(3)」、「ポリイソシアネート化合物(c-4)としてN3300(コベストロ社製、NCO%=22)」は、それぞれ、本件特許発明1の「アクリルポリオール」、「ポリイソシアネート」に相当する。 (イ)本件特許発明1の「ポリカーボネートジオール」は、本件明細書に実施例として挙げられた「ポリカーボネートジオール(デュラノールT5651、旭化成社製;数平均分子量1000、水酸基価110mgKOH/g、固形分濃度100質量%)」(前記第3 2の摘記(1)(段落【0037】)参照)を含む概念であるから、甲A1発明aの「デュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651)」は、本件特許発明1の「ポリカーボネートジオール」に相当する。 なお、甲A1の段落【0131】には、「・デュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651)数平均分子量1000のポリカプロラクトンジオール、水酸基価110mg KOH/g、融点-5℃以下」との記載があるものの(前記3(1)の摘記カ参照)、この「ポリカプロラクトンジオール」との記載は、甲A2の「・・・ポリカーボネートジオールとしては、通常、公知のジオールとカルボニル化剤とを重縮合反応させることにより得られる化合物を挙げることができる。具体的には、例えば、・・・、旭化成株式会社製の・・・、「デュラノール T5651」、・・・等を挙げることができる。・・・」との記載(前記3(2)の摘記ア(段落【0031】)参照)、甲A4の「ポリカーボネートジオール(PCD:PolyCarbonateDiol)」、「当社PCD「デュラノールTM」」、「T5651」との記載(前記3(4)の摘記ア、イ参照)、及び甲B1の「旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)」との記載(前記3(5)の摘記ウ(段落【0076】)参照)を踏まえれば、「ポリカプロラクトンジオール」は誤りで、正しくは「ポリカーボネートジオール」であると解される。 (ウ)甲A1発明aにおいて、「前記水酸基含有アクリル樹脂(c-1)として配合されるAc(3)の水酸基価(OHV)は150mgKOH/g、重量平均分子量Mwは4,000である」から、本件特許発明1の「前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であり、かつ、前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gであり」を充足する。 イ 一致点及び相違点 そうすると、甲A1発明aと本件特許発明1は、 「アクリルポリオール、ポリカーボネートジオール、及びポリイソシアネートを含有する塗料組成物において、 前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であり、かつ、 前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである、塗料組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件特許発明1は、「主剤」として「アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有」し、「硬化剤」として「ポリイソシアネートを含有する」、「2液系」の塗料組成物であるのに対し、甲A1発明aは、「主剤」と「硬化剤」とを含有する「2液系」の塗料組成物であるか不明な点 <相違点2> 本件特許発明1の塗料組成物は、「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%である」と限定されているのに対し、甲A1発明aは、「水酸基含有アクリル樹脂(c-1)」である「Ac(3)」と「ジオール樹脂(c-3)」である「デュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651)」の合計質量に対する、「デュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651)」の質量割合は、{5.5/(75×0.6+5.5)}×100=10.9質量%である点 ウ 相違点2の検討 事案に鑑み、相違点2から検討する。 甲A1にはアクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量に着目し、その範囲を限定することについて記載も示唆もない。また、甲B1、甲B2にも、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量に着目し、その範囲を限定することを動機づけるような記載も示唆もない。 そうすると、当業者といえども、甲A1発明aにおいてアクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量の範囲を限定することを着想し、その量を1~9.30質量%に特定することを容易になし得たとはいえない。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A1発明a及び甲B1、甲B2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 (3) 本件特許発明2~3について 本件特許発明2~3は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に相当するところ、上記(2)のとおり、本件特許発明1は、甲A1発明a及び甲B1、甲B2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないものである。そうすると、本件特許発明2~3についても本件特許発明1と同様の理由により、甲A1発明a及び甲B1、甲B2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 (4) 本件特許発明4について ア 対比 甲A1発明bと本件特許発明4を対比する。 (ア)甲A1発明bの「ポリプロピレン基材」と、本件特許発明4の「炭素繊維強化プラスチック製の基材」は、いずれも「プラスチック基材」である点で共通する。 (イ)甲A1発明bの「クリヤー塗膜」は、「甲A1発明aのクリヤー塗料組成物をポリプロピレン基材上に塗装し、乾燥及び加熱硬化させて得られたもの」であるから、本件特許発明4の「基材の表面上に設けられた塗膜」かつ「基材の表面上・・・に設けられた平滑層」に相当し、「平滑層は、・・・塗料組成物の硬化物からなる」を充足する。 (ウ)甲A1発明bの「物品」は、「ポリプロピレン基材とクリヤー塗膜とを有する」から、本件特許発明4の「塗装品」に相当する。 イ 一致点及び相違点 前記ア及び前記(2)ア(ア)~(ウ)の対比より、甲A1発明bと本件特許発明4は、 「プラスチック基材と、該基材の表面上に設けられた塗膜と、を備える塗装品において、 前記塗膜は、前記基材の表面上又は前記基材の表面上に設けられたアンダーコート層の表面上に設けられた平滑層を有し、 該平滑層は、アクリルポリオール、ポリカーボネートジオール、及びポリイソシアネートを含有し、前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であり、かつ、前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである塗料組成物の硬化物からなる、塗装品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 「プラスチック基材」が、本件特許発明4は「炭素繊維強化プラスチック製の基材」であるのに対し、甲A1発明bは「ポリプロピレン基材」である点。 <相違点4> 「平滑層」を形成するための「塗料組成物」が、本件特許発明4は、「主剤」として「アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有」し、「硬化剤」として「ポリイソシアネートを含有する」、「2液系」の塗料組成物であるのに対し、甲A1発明bは、「主剤」と「硬化剤」の「2液系」であるか不明な点。 <相違点5> 「平滑層」を形成するための「塗料組成物」について、本件特許発明4は、「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%である」と限定されているのに対し、甲A1発明bは、「水酸基含有アクリル樹脂(c-1)」である「Ac(3)」と「ジオール樹脂(c-3)」である「デュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651)」の合計質量に対する、「デュラノールT5651(旭化成社製)(T-5651)」の質量割合は、{5.5/(75*0.6+5.5)}×100=10.9質量%である点 ウ 相違点5の検討 事案に鑑み、相違点5から検討すると、相違点5は、実質的に相違点2と同じものであるから、相違点2と同様の理由により、当業者といえども、甲A1発明bにおいてアクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量を最適化することを着想し、その量を1~9.30質量%に特定することを容易になし得たとはいえない。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点3、4について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲A1発明b及び甲B1、甲B2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 (5) 本件特許発明5、6、8について 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明4を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に相当するところ、上記(4)のとおり、本件特許発明4は、甲A1発明b及び甲B1、甲B2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないものである。そうすると、本件特許発明5、6、8についても本件特許発明4と同様の理由により、甲A1発明b及び甲B1、甲B2の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 5 甲B1を主引例とした取消理由について (1)甲B1発明の認定 ア 甲B1の比較例2で作製される塗料組成物は、水酸基含有アクリル樹脂として、Nuplex社製Setalux1152(キシレン/メトキシプロピルアセテート混合溶液、固形分61質量%、固形分換算水酸基価139mgKOH/g、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量3000)を295g、旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)を20g、レベリング剤BYK-331(BYKケミカル社製)2.06g、ジブチル錫ジラウレート(Air Product社製)1.2g、及びシンナーとしてキシレン/酢酸ブチル(70/30)の混合溶媒を添加して撹拌混合し、固形分50質量%の塗料主剤を得た(溶剤を除く主剤中のポリカーボネートポリオールの割合は10%)後、これに硬化剤としてデュラネートTKA-100(旭化成株式会社社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型硬化剤、NCO含量=21.8wt%、1分子中のイソシアネート基:3)をNCO/OHモル比=1.0/1.0となる様添加し、混合して得られたものである(前記3(5)の摘記イ~エ参照)。 イ 甲B1に開示される塗料組成物は、自動車外装用クリア塗料、自動車内装用塗料として好適に使用されるものである(前記3(5)の摘記ア、オ参照)。 ウ そうすると、甲B1の比較例2を中心として、甲B1から次の発明(以下、「甲B1発明a」、「甲B1発明b」という。)が認定できる。 エ 甲B1発明a 「水酸基含有アクリル樹脂として、Nuplex社製Setalux1152(キシレン/メトキシプロピルアセテート混合溶液、固形分61質量%、固形分換算水酸基価139mgKOH/g、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量3000)を295g、旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)を20g、レベリング剤BYK-331(BYKケミカル社製)2.06g、ジブチル錫ジラウレート(Air Product社製)1.2g、及びシンナーとしてキシレン/酢酸ブチル(70/30)の混合溶媒を添加、撹拌混合して得られる、固形分50質量%の塗料主剤に、硬化剤としてデュラネートTKA-100(旭化成株式会社社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型硬化剤、NCO含量=21.8wt%、1分子中のイソシアネート基:3)をNCO/OHモル比=1.0/1.0となる様添加、混合して得られる、塗料組成物。」 オ 甲B1発明b 「甲B1発明aの塗料組成物を適用した、自動車外装材又は自動車内装材。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 甲B1発明aと本件特許発明1を対比する。 (ア)甲B1発明aの「塗料主剤」に含まれる「水酸基含有アクリル樹脂として、Nuplex社製Setalux1152(キシレン/メトキシプロピルアセテート混合溶液、固形分61質量%、固形分換算水酸基価139mgKOH/g、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量3000)」、「旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)」は、それぞれ、本件特許発明1の「アクリルポリオール」、「ポリカーボネートジオール」に相当する。 (イ)甲B1発明aの「硬化剤としてデュラネートTKA-100(旭化成株式会社社製:ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型硬化剤、NCO含量=21.8wt%、1分子中のイソシアネート基:3)」は、本件特許発明1の「ポリイソシアネートを含有する硬化剤」に相当する。 (ウ)甲B1発明aの塗料組成物は、「塗料主剤」に「硬化剤」を添加、混合して得られるものであるから、「2液系」といえる。 (エ)甲B1発明aの「水酸基含有アクリル樹脂として、Nuplex社製Setalux1152(キシレン/メトキシプロピルアセテート混合溶液、固形分61質量%、固形分換算水酸基価139mgKOH/g、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量3000)」は、本件特許発明1の「前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gであり」を充足する。 イ 一致点及び相違点 そうすると、甲B1発明aと本件特許発明1は、 「アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有する2液系の塗料組成物において、 前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである、塗料組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点6> 本件特許発明1は、「前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であ」るのに対し、甲B1発明aの「水酸基含有アクリル樹脂」は、その数平均分子量が3000である一方、その重量平均分子量は不明な点 <相違点7> 本件特許発明1の塗料組成物は、「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%である」と限定されているのに対し、甲B1発明aは、「水酸基含有アクリル樹脂として、Nuplex社製Setalux1152(キシレン/メトキシプロピルアセテート混合溶液、固形分61質量%、固形分換算水酸基価139mgKOH/g、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量3000)」と「旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)」の合計質量に対する、「旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)」の質量割合は、固形分基準で{20/(295×0.61+20)}×100=10質量%である点 ウ 相違点7の検討 事案に鑑み、相違点7から検討する。 甲B1にはアクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量に着目し、その範囲を限定することについて記載も示唆もない。また、甲A1にも、甲B1発明aにおいてアクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量に着目し、その範囲を限定することを動機づけるような記載も示唆もない。 そうすると、当業者といえども、甲B1発明aにおいてアクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量の範囲を限定することを着想し、その量を1~9.30質量%に特定することを容易になし得たとはいえない。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点6について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲B1発明a及び甲A1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 (3) 本件特許発明2~3について 本件特許発明2~3は、本件特許発明1を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に相当するところ、上記(2)のとおり、本件特許発明1は、甲B1発明a及び甲A1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないものである。そうすると、本件特許発明2~3についても本件特許発明1と同様の理由により、甲B1発明a及び甲A1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 (4)本件特許発明4について ア 対比 甲B1発明bと本件特許発明4を対比する。 (ア)甲B1発明bの「塗料組成物を適用した、自動車外装材又は自動車内装材」は、本件特許発明4の「基材と、該基材の表面上に設けられた塗膜と、を備える塗装品」に相当する。 (イ)前記(2)ア(ア)~(エ)の対比も踏まえると、甲B1発明bにおいて、「甲B1発明aの塗料組成物を適用し」て形成される塗膜は、本件特許発明4の「基材の表面上・・・に設けられた平滑層」に相当し、「平滑層は、アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有し、・・・、前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである2液系の塗料組成物の硬化物からなる」を充足する。 イ 一致点及び相違点 そうすると、甲B1発明bと本件特許発明4は、 「基材と、該基材の表面上に設けられた塗膜と、を備える塗装品において、 前記塗膜は、前記基材の表面上又は前記基材の表面上に設けられたアンダーコート層の表面上に設けられた平滑層を有し、 該平滑層は、アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有し、前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである2液系の塗料組成物の硬化物からなる、塗装品。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点8> 本件特許発明4では、「基材」が「炭素繊維強化プラスチック製の基材」であるのに対し、甲B1発明bでは、「自動車外装材又は自動車内装材」の基材の材質が不明である点 <相違点9> 本件特許発明4では、塗料組成物中の「アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であ」るのに対し、甲B1発明bで適用される塗料組成物に含まれる「水酸基含有アクリル樹脂」は、その数平均分子量が3000である一方、その重量平均分子量は不明な点 <相違点10> 「平滑層」を形成するための「塗料組成物」について、本件特許発明4は、「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%である」と限定されているのに対し、甲B1発明bは、「水酸基含有アクリル樹脂として、Nuplex社製Setalux1152(キシレン/メトキシプロピルアセテート混合溶液、固形分61質量%、固形分換算水酸基価139mgKOH/g、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量3000)」と「旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)」の合計質量に対する、「旭化成株式会社製ポリカーボネートジオールT5651(数平均分子量1000、1分子中の平均水酸基価数2.0)」の質量割合は、固形分基準で{20/(295×0.61+20)}×100=10質量%である点 ウ 相違点10の検討 事案に鑑み、相違点10から検討すると、相違点10は、実質的に相違点7と同じものであるから、相違点7と同様の理由により、当業者といえども、甲B1発明bにおいてアクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量の範囲を限定することを着想し、その量を1~9.30質量%に特定することを容易になし得たとはいえない。 エ 小括 以上のとおりであるから、相違点8、9について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲B1発明b及び甲A1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 (5) 本件特許発明5、6、8について 本件特許発明5、6、8は、本件特許発明4を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に相当するところ、上記(4)のとおり、本件特許発明4は、甲B1発明b及び甲A1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないものである。そうすると、本件特許発明5、6、8についても本件特許発明4と同様の理由により、本件特許発明5、6、8は、甲B1発明b及び甲A1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 第5 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立の理由について 1 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立の理由の概要 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立の理由は、申立人Bによる以下の申立理由1、2である。 申立理由1(進歩性) 本件特許発明4~8は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。 申立理由2(明確性要件) 本件特許の特許請求の範囲の請求項4~8の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、それらの請求項に係る特許は、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。 2 申立理由1について (1) 申立理由1の概要 申立理由1は、甲B2を主たる引用文献等、甲B1を従たる引用文献等とするものであり、甲B2には以下の発明(以下、「甲B2発明」ともいう。)が記載されているといえる、また、本件特許発明4と甲B2発明を対比するとその相違点は、下記の点(以下、「相違点B2」ともいう。)であるが、相違点B2に係る構成を備えるものとすることは、甲B1の記載に基づき当業者であれば容易になし得る、というものである。 <甲B2発明> 「炭素繊維強化プラスチック製の基材と、該基材の表面上に設けられた塗膜と、を備える塗装品において、 前記塗膜は、前記基材の表面上に設けられた下地処理剤の層の表面上に設けられた1層又は2層以上のクリア塗装層を有し、 前記クリア塗装層は、2液アクリルウレタンクリアを塗装して形成した層である塗装品。」 <相違点B2> 平滑層を構成する2液系の塗料組成物について、本件特許発明4は、「アクリルポリオールとポリカーボネートジオールとを含有する主剤と、ポリイソシアネートを含有する硬化剤と、を含有し、前記アクリルポリオールの重量平均分子量が3000~7000であり、かつ、前記アクリルポリオールの水酸基価が70~170mgKOH/gである2液系の塗料組成物」であると特定されているのに対し、甲B2発明では「2液アクリルウレタンクリア」である点 (2) 検討 ア 甲B1、甲B2に記載されている事項は、上記第4 3(5)、(6)のとおりであり、仮に、申立人Bが主張するとおり、甲B2には甲B2発明が記載されていると認定することができ、かつ、仮に、本件特許発明4と甲B2発明の相違点が上記相違点B2のみであるとしても、上記第2のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許発明4と甲B2発明は、下記の点(以下、「相違点11」ともいう。)でも相違すると認められる。 <相違点11> 本件特許発明4の塗料組成物は、「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%である」と限定されているのに対し、甲B2発明は、そのような限定を備えていない点 イ そして、相違点11は、相違点2と同様のものであるが、上記第4 4(2)ウのとおり、甲B1、甲B2のいずれも、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールの合計質量に対するポリカーボネートジオールの含有量に着目し、その範囲を限定することについて記載も示唆もないから、当業者といえども、甲B2発明において、「前記アクリルポリオール及び前記ポリカーボネートジオールの合計質量に対する前記ポリカーボネートジオールの含有量は、1~9.30質量%である」を充足するものに限定することを動機づけられることはないといえる。 ウ そうすると、本件特許発明4は、甲B2発明及び甲B1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 エ また、本件特許発明5、6、8は、本件特許発明4を直接又は間接的に引用しさらに限定した発明に相当するところ、上記ウのとおり、本件特許発明4は、甲B2発明及び甲B1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められないものである。そうすると、本件特許発明5、6、8についても本件特許発明4と同様の理由により、本件特許発明5、6、8は、甲B2発明及び甲B1の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができないものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとは認められない。 オ なお、上記第1のとおり、当審は、同年5月11日付けで申立人A及び申立人Bに訂正請求があった旨を通知した(発送は同年同月16日)が、この通知に対し、申立人A及び申立人Bは、いずれも、その指定期間内に意見書を提出しなかった。 カ 申立理由1についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立理由1によって本件特許発明4~6、8の特許を取り消すべきものとすることはできない。 3 申立理由2について (1) 申立理由2の概要 申立理由2は、本件特許発明4の「平滑層」及び本件特許発明8の「意匠層」の概念が不明確である、というものである。 (2) 検討 本件特許発明4の「平滑層」について、本件特許明細書の【0029】(前記第3の2(1)参照。)には「平滑層は、本実施形態に係る塗料組成物の硬化物であり、膜状をなす。」と記載され、「平滑層」は、本件特許発明の塗料組成物の硬化物であり、膜状をなす層を意味することが明らかである。また、「平滑層」は、その記載に基づき、平滑層を設けることによってその表面がより平滑になる層を意味すると理解できる。 また、本件特許発明8の「意匠層」について、本件特許明細書の【0033】及び【0034】(前記第3の2(2)参照。)には「塗膜は、平滑層の表面上に設けられた意匠層を更に有することが好ましい。」「意匠層は、着色剤を含有しないクリア層であるか、又は着色剤を含有するカラー層であってもよい。」と記載され、「意匠層」は、本件特許発明の塗料組成物の硬化物の表面上に設けられたクリア層又はカラー層を意味することが明らかである。また、「意匠層」は、その記載に基づき、意匠を付与するために設ける層を意味すると理解できる。 そうすると、本件特許発明4の「平滑層」は、例えば、平滑層を設けることによってその表面がどの程度平滑になるかや、平滑層が設けられている位置が最外層であるか否かなどが特定されなくとも明確であり、本件特許発明8の「意匠層」は、例えば、意匠層の材質や着色の有無や、意匠層が設けられている位置が最外層であるか否かなどが特定されなくとも明確である。 したがって、本件特許発明4及び本件特許発明4を直接又は間接的に引用する本件特許発明5、6、8に係る特許を、申立理由2によって取り消すべきものとすることはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~6、8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~6、8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件請求項7に係る特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700746

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