特許異議申立
2022-700741
ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板
- 審判番号
- 2022-700741
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-564653
- 登録番号
- 7015972
- 請求日
- 2022年08月01日
- 審決日
- 2023年03月28日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】旭化成株式会社
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】中村 和広
- 【権利者代理人】齋藤 都子
- 【権利者代理人】三間 俊介
- 【権利者代理人】明石 尚久
- 【異議申立人】野田 澄子
- 【異議申立人】宇佐川 ゆり子
- 審判長/審判官
- 審判長 山崎 勝司
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 當間 庸裕
- 分類
- P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7015972号発明「ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7015972号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~30〕、〔31~35〕について訂正することを認める。
特許第7015972号の請求項1~16、18~35に係る特許を維持する。
特許第7015972号の請求項17に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7015972号の請求項1~35に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)10月11日(優先権主張 令和3年4月9日)を国際出願日とする特許出願であって、令和4年1月26日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月3日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年 8月 1日 :特許異議申立人野田澄子(以下「申立人1」という。)による請求項1~35に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年 8月 2日 :特許異議申立人宇佐川ゆり子(以下「申立人2」という。)による請求項1~35に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年10月 4日付け:取消理由通知書
令和4年12月 5日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年 1月12日 :申立人1による意見書の提出
令和5年 1月12日 :申立人2による意見書の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下である」を、
「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下であり、かつ、前記ガラスクロスの誘電正接が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下である、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~16、18~30も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項17を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項18に記載された「請求項1~17のいずれか一項」を、
「請求項1~16のいずれか一項」に訂正する(請求項18の記載を直接的又は間接的に引用する請求項19~30も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項19に記載された「請求項1~18のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18のいずれか一項」に訂正する(請求項19の記載を直接的又は間接的に引用する請求項20~30も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項20に記載された「請求項1~19のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18、19のいずれか一項」に訂正する(請求項20の記載を直接的又は間接的に引用する請求項21~30も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項21に記載された「請求項1~20のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~20のいずれか一項」に訂正する(請求項21の記載を直接的又は間接的に引用する請求項22~30も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項22に記載された「請求項1~21のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~21のいずれか一項」に訂正する(請求項22の記載を直接的又は間接的に引用する請求項23~30も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項23に記載された「請求項1~22のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~22のいずれか一項」に訂正する(請求項23の記載を直接的又は間接的に引用する請求項24~30も同様に訂正する)。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項24に記載された「請求項1~23のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~23のいずれか一項」に訂正する(請求項24の記載を直接的又は間接的に引用する請求項25~30も同様に訂正する)。
(10)訂正事項10
本件訂正前の請求項25に記載された「請求項1~24のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~24のいずれか一項」に訂正する(請求項25の記載を直接的又は間接的に引用する請求項26~30も同様に訂正する)。
(11)訂正事項11
本件訂正前の請求項26に記載された「請求項1~25のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~25のいずれか一項」に訂正する(請求項26の記載を直接的又は間接的に引用する請求項27~30も同様に訂正する)。
(12)訂正事項12
本件訂正前の請求項27に記載された「請求項1~26のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~26のいずれか一項」に訂正する(請求項27の記載を直接的又は間接的に引用する請求項28~30も同様に訂正する)。
(13)訂正事項13
本件訂正前の請求項28に記載された「請求項1~27のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~27のいずれか一項」に訂正する(請求項28の記載を直接的又は間接的に引用する請求項29、30も同様に訂正する)。
(14)訂正事項14
本件訂正前の請求項29に記載された「請求項1~28のいずれか一項」を、
「請求項1~16、18~28のいずれか一項」に訂正する(請求項29の記載を引用する請求項30も同様に訂正する)。
(15)訂正事項15
本件訂正前の請求項31に記載された
「下記一般式(1):」を、
「ガラスクロスを600℃~1000℃の任意の温度で加熱して脱糊する加熱脱糊工程、並びに
下記一般式(1):」に訂正し、
同じく、「前記洗浄した後の、」を、
「前記洗浄した後の、前記ガラスクロスをメタノールで抽出したときの総炭素抽出量が0超え0.25%以下であり、」に訂正する(請求項31の記載を直接的又は間接的に引用する請求項32~35も同様に訂正する)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~30は、請求項2~30が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあり、本件訂正前の請求項31~35は、請求項32~35が、本件訂正前の請求項31の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~30〕、〔31~35〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「ガラスクロス」について、「誘電正接が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下である」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件特許の明細書の【0007】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項17を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3~14について
訂正事項3~14は、本件訂正前の請求項18~29について、訂正事項2によって請求項17が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項2によって削除された請求項17を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項3~14は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項15について
訂正事項15は、本件訂正前の請求項31に記載された「ガラスクロスの製造方法」について、「ガラスクロスを600℃~1000℃の任意の温度で加熱して脱糊する加熱脱糊工程」を追加し、また、「前記洗浄した後の、ガラスクロス」について「メタノールで抽出したときの総炭素抽出量が0超え0.25%以下であ」ると限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項15は、本件特許の明細書の【0029】、【0056】、【0064】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項15は、本件訂正前の請求項31に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4 本件訂正の適否のまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~30〕、〔31~35〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~16、18~35に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~16、18~35を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~16、18~35に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~16、18~35の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成るガラスクロスであって、前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされており、前記ガラスクロスをメタノールで抽出したときの総炭素抽出量が0超え0.25%以下であり、かつ、前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下であり、かつ、前記ガラスクロスの誘電正接が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下である、ガラスクロス。
【請求項2】
前記ガラス糸のケイ素(Si)含量が、二酸化ケイ素(SiO2)換算で、95質量%~100質量%である、請求項1に記載のガラスクロス。
【請求項3】
前記ガラス糸のSi含量が、SiO2換算で、99.0質量%~100質量%である、請求項1又は2に記載のガラスクロス。
【請求項4】
前記ガラス糸のSi含量が、SiO2換算で、99.9質量%~100質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項5】
前記表面処理剤が、下記一般式(1):
X(R)3-nSiYn ・・・(1)
(式(1)中、Xは、ラジカル反応性を有する不飽和二重結合基、及びアミノ基の少なくとも一方を有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基、及びフェニル基から成る群より選ばれる基である)
で示される前記シランカップリング剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項6】
前記一般式(1)中のXが、イオン性化合物と塩を形成していない有機官能基である、請求項5に記載のガラスクロス。
【請求項7】
前記一般式(1)中のXが、アミンもしくは、アンモニウムカチオンを含まない、請求項5又は6に記載のガラスクロス。
【請求項8】
前記一般式(1)中のXが、メタクリロキシ基、又はアクリロキシ基を1つ以上有する有機官能基である、請求項5~7のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項9】
前記総炭素抽出量が0.20%以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項10】
前記総炭素抽出量が0.10%以下である、請求項9に記載のガラスクロス。
【請求項11】
前記総炭素抽出量が0.08%以下である、請求項10に記載のガラスクロス。
【請求項12】
前記総炭素抽出量が0.05%以下である、請求項11に記載のガラスクロス。
【請求項13】
前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて2.0×10-3以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載のガラスクロス。
【請求項14】
前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.7×10-3以下である、請求項13に記載のガラスクロス。
【請求項15】
前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.5×10-3以下である、請求項14に記載のガラスクロス。
【請求項16】
前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.2×10-3以下である、請求項15に記載のガラスクロス。
【請求項18】
メタノール抽出後のガラスクロスの総炭素量が0.010%~0.380%である、請求項1~16のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項19】
メタノール抽出後のガラスクロスの総炭素量が0.013%~0.250%である、請求項1~16、18のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項20】
メタノール抽出後のガラスクロスの総炭素量が0.015%~0.180%である、請求項1~16、18、19のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項21】
メタノール抽出後のガラスクロスの総炭素量が0.018%~0.150%である、請求項1~16、18~20のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項22】
メタノール抽出後のガラスクロスの総炭素量が0.020%~0.100%である、請求項1~16、18~21のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項23】
メタノール抽出前のガラスクロスの総炭素量が0.020%~0.500%である、請求項1~16、18~22のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項24】
メタノール抽出前のガラスクロスの総炭素量が0.022%~0.400%である、請求項1~16、18~23のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項25】
メタノール抽出前のガラスクロスの総炭素量が0.023%~0.300%である、請求項1~16、18~24のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項26】
メタノール抽出前のガラスクロスの総炭素量が0.024%~0.200%である、請求項1~16、18~25のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項27】
メタノール抽出前のガラスクロスの総炭素量が0.025%~0.100%である、請求項1~16、18~26のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項28】
プリント配線板基材用である、請求項1~16、18~27のいずれか一項に記載のガラスクロス。
【請求項29】
請求項1~16、18~28のいずれか1項に記載のガラスクロスと、熱硬化性樹脂とを含有する、プリプレグ。
【請求項30】
請求項29に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。
【請求項31】
ガラスクロスを600℃~1000℃の任意の温度で加熱して脱糊する加熱脱糊工程、並びに
下記一般式(1):
X(R)3-nSiYn ・・・(1)
{式(1)中、Xは、ラジカル反応性を有する不飽和二重結合基、及びアミノ基の少なくとも一方を有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基、及びフェニル基から成る群より選ばれる基である}
で示される表面処理剤で表面処理されたガラスクロスを有機溶媒で洗浄する工程を含み、
前記洗浄した後の、前記ガラスクロスをメタノールで抽出したときの総炭素抽出量が0超え0.25%以下であり、前記ガラスクロスのガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下である、ガラスクロスの製造方法。
【請求項32】
前記一般式(1)中のXが、イオン性化合物と塩を形成していない有機官能基である、請求項31に記載のガラスクロスの製造方法。
【請求項33】
前記一般式(1)中のXが、アミン、もしくはアンモニウムカチオンを含まない、請求項31又は32に記載のガラスクロスの製造方法。
【請求項34】
前記一般式(1)中のXが、メタクリロキシ基、又はアクリロキシ基を1つ以上有する有機官能基である、請求項31~33のいずれか1項に記載のガラスクロスの製造方法。
【請求項35】
前記有機溶媒がメタノールである、請求項31~34のいずれか1項に記載のガラスクロスの製造方法。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、請求項1~35に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項31~35に係るガラスクロスの製造方法によって得られるガラスクロスには、本件発明が解決しようとする課題を解決したとはいえないものも含まれており、請求項31~35は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えている。
(2)取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)
ア 下記申立1甲1を主引用例とする新規性、進歩性
請求項1~3、5~30に係る発明は、申立1甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3、5~30に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1~35に係る発明は、申立1甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 下記申立1甲2を主引用例とする新規性、進歩性
請求項1~21、23~26、28~30に係る発明は、申立1甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~21、23~26、28~30に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1~21、23~26、28~35に係る発明は、申立1甲2に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~21、23~26、28~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
ウ 下記申立1甲3を主引用例とする新規性、進歩性
請求項1~21、23~26、28~30に係る発明は、申立1甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~21、23~26、28~30に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1~21、23~26、28~35に係る発明は、申立1甲3に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~21、23~26、28~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
エ 下記申立2甲1を主引用例とする新規性、進歩性
請求項1、5~12、17~35に係る発明は、申立2甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、5~12、17~35に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1~35に係る発明は、申立2甲1に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
申立1甲1:特開2018-127747号公報
申立1甲2:特開2018-127750号公報
申立1甲3:特開2018-127752号公報
申立1甲8:鈴木芳治、ほか3名、“アクリルシランの吸着挙動がガラスクロス積層材料の力学的性質に及ぼす影響”、SEN-I GAKKAISHI(報文)、社団法人繊維学会、1993年(平成5年)、Vol.49、No.2、85~90ページ
申立2甲1:特開2009-263569号公報
申立2甲2:岡慎司、“こんなところに複合材料-その優れた電気・機械特性で数々の電波通信機器へ-”、社団法人日本複合材料学会、1999年(平成11年)、第25巻、第4号、156~159ページ
2 当審の判断
(1)取消理由1(サポート要件)について
ア 本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「ガラスのバルク誘電正接に近い誘電正接を有するガラスクロス、並びにそれを用いるプリプレグ、及びプリント配線板を提供すること」(【0006】)である。
イ 判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0010】~【0013】、【0018】~【0020】、【0029】、【0030】、【0035】の記載を参照すると、本件課題である、「ガラスのバルク誘電正接に近い誘電正接を有する」ことに関して、「表面処理ガラスクロスの構成が、0.25%以下のメタノール抽出量により特定され」(【0011】)ることが記載され、そのための「メタノール抽出量」としては、「0.25%未満である」こと、「下限値は、・・・0%を超えてよい」(【0012】)ことが記載されている。
ここで、本件発明31~35は、本件訂正により、「前記ガラスクロスをメタノールで抽出したときの総炭素抽出量が0超え0.25%以下であ」ることを発明特定事項としていることから、本件課題を解決できることを当業者が認識できるものといえる。
ウ 取消理由1のまとめ
よって、本件発明31~35は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(2)申立1甲1を主引例とする取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
ア 引用発明
申立1甲1には、特に実施例4に着目すると次の発明が記載されていると認められる(申立1甲1の【0006】、【0012】、【0016】、【0024】~【0028】、【0030】、【0031】、【0043】~【0048】、【0051】、【0052】、【0054】、【0055】を参照)。
「SiO2が99.5質量%のガラスフィラメントからなるガラス糸を製織してなるガラスクロス(ガラスフィラメントの平均フィラメント径9μm、フィラメント数100本、経糸の打ち込み密度54本/inch、緯糸の打ち込み密度54本/inch、厚さ78μm、質量69g/m2)を、ガラスクロスのガラス糸を表面処理するためのシランカップリング剤であるN-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(東レダウコーニング株式会社製;Z6032)を水に分散させた処理液に浸漬し、加熱乾燥し、次にスプレーで高圧水開繊を実施し、加熱乾燥したガラスクロスであって、マッフル炉での625℃、20分の加熱による強熱減量値が0.13wt%のガラスクロス。」(以下「申立1甲1発明」という。)
「SiO2が99.5質量%のガラスフィラメントからなるガラス糸を製織してなるガラスクロス(ガラスフィラメントの平均フィラメント径9μm、フィラメント数100本、経糸の打ち込み密度54本/inch、緯糸の打ち込み密度54本/inch、厚さ78μm、質量69g/m2)を、ガラスクロスのガラス糸を表面処理するためのシランカップリング剤であるN-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(東レダウコーニング株式会社製;Z6032)を水に分散させた処理液に浸漬し、加熱乾燥し、次にスプレーで高圧水開繊を実施し、加熱乾燥するガラスクロスの製造方法であって、マッフル炉での625℃、20分の加熱による強熱減量値が0.13wt%のガラスクロスの製造方法。」(以下「申立1甲1方法発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
申立1甲1発明の「ガラスフィラメント」は本件発明1の「ガラスフィラメント」に相当し、以下同様に、「ガラス糸」は「ガラス糸」に、「ガラスクロス」は「ガラスクロス」に、「経糸」は「経糸」に、「緯糸」は「緯糸」に、「シランカップリング剤」は「シランカップリング剤」に相当する。
申立1甲1発明の「ガラスフィラメント」は「フィラメント数100本」からなり、申立1甲1発明の「ガラス糸」は、本件発明1の「ガラス糸」が「複数本のガラスフィラメントから成る」態様を備えている。
以上のことから、本件発明1と申立1甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点1]
「複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成るガラスクロスであって、前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされているガラスクロス。」
[相違点1-1]
本件発明1は「前記ガラスクロスをメタノールで抽出したときの総炭素抽出量が0超え0.25%以下であ」るのに対して、申立1甲1発明はそのようなものか不明である点。
[相違点1-2]
本件発明1は「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下であ」るのに対して、申立1甲1発明はそのようなものか不明である点。
[相違点1-3]
本件発明1は、「前記ガラスクロスの誘電正接が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下である」のに対して、申立1甲1発明はそのようなものか不明である点。
(イ)新規性の判断
事案に鑑み相違点1-3について検討するに、相違点1-3は実質的な相違点であるから、本件発明1は申立1甲1発明ではない。
(ウ)進歩性の判断
引き続き、相違点1-3について検討する。
シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされているガラスクロスにおいて、ガラスクロスの誘電正接を10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下とすることは、申立1甲1及び他の証拠に記載も示唆もされておらず、出願前において周知技術であるともいえない。
そうすると、申立1甲1発明において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が申立1甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明2~16、18~30について
本件発明2~16、18~30は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イ(イ)と同様の理由により、本件発明2、3、5~16、18~30は申立1甲1発明ではない。
また、上記イ(ウ)と同様の理由により、本件発明2~16、18~30は、当業者が申立1甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 本件発明31について
(ア)対比
申立1甲1方法発明の「シランカップリング剤であるN-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(東レダウコーニング株式会社製;Z6032)」は本件発明31の「下記一般式(1):
X(R)3-nSiYn ・・・(1)
{式(1)中、Xは、ラジカル反応性を有する不飽和二重結合基、及びアミノ基の少なくとも一方を有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基、及びフェニル基から成る群より選ばれる基である}
で示される表面処理剤」に相当する。
そうすると、本件発明31と申立1甲1方法発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点2]
「下記一般式(1):
X(R)3-nSiYn ・・・(1)
{式(1)中、Xは、ラジカル反応性を有する不飽和二重結合基、及びアミノ基の少なくとも一方を有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基、及びフェニル基から成る群より選ばれる基である}
で示される表面処理剤で表面処理されたガラスクロスを洗浄する工程を含む、ガラスクロスの製造方法。」
[相違点2-1]
本件発明31は、「ガラスクロスを600℃~1000℃の任意の温度で加熱して脱糊する加熱脱糊工程」を含むのに対して、申立1甲1方法発明はそのような加熱脱糊工程を含まない点。
[相違点2-2]
「洗浄する工程を含む」ことに関して、本件発明31は「表面処理剤で表面処理されたガラスクロスを有機溶媒で洗浄する工程を含」むのに対して、申立1甲1方法発明は「スプレーで高圧水開繊を実施」する点。
[相違点2-3]
本件発明31は「有機溶媒で」「洗浄した後の、前記ガラスクロスをメタノールで抽出したときの総炭素抽出量が0超え0.25%以下であ」るのに対して、申立1甲1方法発明はそのようなものか不明である点。
[相違点2-4]
本件発明31は「前記洗浄した後」の「前記ガラスクロスのガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下である」のに対して、申立1甲1方法発明はそのようなものか不明である点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点2-3について検討する。
申立1甲1方法発明における「強熱減量値」は「マッフル炉での625℃、20分の加熱による」ものであって、「強熱減量値により、ガラスクロスのシランカップリング剤処理量を定義する」(申立1甲1の【0031】)ものであるところ、本件発明31における「総炭素抽出量」は、「低減されるのが好ましい不要成分(例えば、サイジング剤に由来する成分、又はガラスと化学的に結合していないシランカップリング剤に由来する成分)」(本件特許明細書の【0011】)である。そうすると、申立1甲1方法発明における「強熱減量値」から本件発明31の「総炭素抽出量」を推測することはできない。
また、申立1甲8には、アクリルシラン表面処理水溶液に、ガラスクロスを浸漬させ、乾燥させ、ガラス繊維上の物理吸着シラン剤を除去するために、メタノール溶媒で洗浄することが記載されている(86ページ左欄下から8行~右欄2行)ものの、そのようにして洗浄した後の、ガラスクロスをメタノールで抽出したときの総炭素抽出量が0超え0.25%以下とすることは、申立1甲1、申立1甲8及び他の証拠に記載も示唆もされておらず、出願前において周知技術であるともいえない。
そうすると、申立1甲1方法発明において、相違点2-3に係る本件発明31の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本件発明31は、当業者が申立1甲1方法発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
オ 本件発明32~35について
本件発明32~35は、本件発明31の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記エ(イ)と同様の理由により、本件発明32~35は、当業者が申立1甲1方法発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立1甲2を主引例とする取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
本件発明1~16、18~30と申立1甲2に記載された発明(申立1甲2の【請求項3】、【0006】~【0008】、【0042】~【0046】、【0048】、【0049】、【0061】~【0064】、【0070】を参照)は、少なくとも上記相違点1-3と同じ点で相違し、上記(2)イ(イ)、(ウ)で説示したとおりであり、本件発明31~35と申立1甲2に記載された発明は、少なくとも上記相違点2-3と同じ点で相違し、上記(2)エ(イ)で説示したとおりである。
したがって、本件発明1~16、18~26、28~30は、申立1甲2に記載された発明ではなく、また、本件発明1~16、18~35は、当業者が申立1甲2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、申立人1は申立1甲2を主引例とした場合について、本件発明22は新規性、進歩性がなく、本件発明27は進歩性がない旨を主張しているため、これら理由について取消理由では通知していないが併せて判断した。
(4)申立1甲3を主引例とする取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
本件発明1~16、18~30と申立1甲3に記載された発明(申立1甲3の【0006】、【0007】、【0016】、【0034】~【0038】、【0040】、【0041】、【0060】~【0067】、【0074】~【0076】を参照)は、少なくとも上記相違点1-3と同じ点で相違し、上記(2)イ(イ)、(ウ)で説示したとおりであり、本件発明31~35と申立1甲3に記載された発明は、少なくとも上記相違点2-3と同じ点で相違し、上記(2)エ(イ)で説示したとおりである。
したがって、本件発明1~16、18~26、28~30は、申立1甲3に記載された発明ではなく、また、本件発明1~16、18~35は、当業者が申立1甲3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、申立人1は申立1甲3を主引例とした場合について、本件発明22は新規性、進歩性がなく、本件発明27は進歩性がない旨を主張しているため、これら理由について取消理由では通知していないが併せて判断した。
(5)申立2甲1を主引例とする取消理由2(新規性)、取消理由3(進歩性)について
本件発明1~16、18~30と申立2甲1に記載された発明(申立2甲1の【0001】、【0006】、【0007】、【0017】、【0019】、【0024】、【0052】を参照)は、少なくとも上記相違点1-3と同じ点で相違し、上記(2)イ(イ)、(ウ)で説示したとおりであり、本件発明31~35と申立2甲1に記載された発明は、少なくとも上記相違点2-3と同じ点で相違し、上記(2)エ(イ)で説示したとおりである。
したがって、本件発明1~16、18~35は、申立2甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明1~16、18~35は、当業者が申立2甲1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
なお、申立人2は申立2甲1を主引例とした場合について、本件発明2~4、13~16は新規性がない旨を主張しているため、これら理由について取消理由では通知していないが併せて判断した。
第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 下記申立1甲4を主引例とする新規性、進歩性
(1)申立人1の主張の概要
本件特許の請求項1、5、6、9、13、17~26、28~30に係る発明は、国際公開第2016/175248号(以下「申立1甲4」という。)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、5、6、9、13、17~26、28~30に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、本件特許の請求項1、5~14、17~35に係る発明は、申立1甲4に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5~14、17~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)当審の判断
本件発明1、5~14、18~30と申立1甲4に記載された発明(申立1甲4の[0009]、[0010]、[0017]、[0028]、[0029]、[0032]~[0035]、[0050]~[0053]、[0056]、[0061]、[0062]を参照)は、少なくとも上記相違点1-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)イ(イ)、(ウ)で説示したとおりであり、本件発明31~35と申立1甲4に記載された発明は、少なくとも上記相違点2-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)エ(イ)で説示したとおりである。
したがって、本件発明1、5、6、9、13、18~26、28~30は、申立1甲4に記載された発明ではなく、また、本件発明1、5~14、18~35は、当業者が申立1甲4に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 下記申立1甲5を主引例とする新規性、進歩性
(1)申立人1の主張の概要
本件特許の請求項1、5~8、13、17~25、28~30に係る発明は、特開2020-158364号公報(以下「申立1甲5」という。)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、5~8、13、17~25、28~30に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、本件特許の請求項1、5~14、17~35に係る発明は、申立1甲5に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5~14、17~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)当審の判断
本件発明1、5~14、18~30と申立1甲5に記載された発明(申立1甲5の【0004】、【0005】、【0009】、【0029】、【0050】、【0052】、【0060】~【0062】、【0064】、【0067】~【0074】を参照)は、少なくとも上記相違点1-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)イ(イ)、(ウ)で説示したとおりであり、本件発明31~35と申立1甲5に記載された発明は、少なくとも上記相違点2-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)エ(イ)で説示したとおりである。
したがって、本件発明1、5~8、13、18~25、28~30は、申立1甲5に記載された発明ではなく、また、本件発明1、5~14、18~35は、当業者が申立1甲5に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 下記申立1甲6を主引例とする進歩性
(1)申立人1の主張の概要
本件特許の請求項1、5~14、17~35に係る発明は、特開2019-81987号公報(以下「申立1甲6」という。)に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5~14、17~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)当審の判断
本件発明1、5~14、18~30と申立1甲6に記載された発明(申立1甲6の【0005】、【0010】、【0018】~【0020】、【0022】~【0027】、【0030】~【0032】、【0035】、【0039】、【0040】を参照)は、少なくとも上記相違点1-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)イ(ウ)で説示したとおりであり、本件発明31~35と申立1甲6に記載された発明は、少なくとも上記相違点2-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)エ(イ)で説示したとおりである。
したがって、本件発明1、5~14、18~35は、当業者が申立1甲6に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 下記申立1甲7を主引例とする進歩性
(1)申立人1の主張の概要
本件特許の請求項1、5~14、17、28~35に係る発明は、特開2020-100913号公報(以下「申立1甲7」という。)に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、5~14、17、28~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)当審の判断
本件発明1、5~14、28~30と申立1甲7に記載された発明(申立1甲7の【0005】~【0007】、【0011】~【0013】、【0033】~【0037】、【0044】、【0046】、【0048】、【0058】、【0059】、【0061】、【0035】、【0072】を参照)は、少なくとも上記相違点1-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)イ(ウ)で説示したとおりであり、本件発明31~35と申立1甲7に記載された発明は、少なくとも上記相違点2-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)エ(イ)で説示したとおりである。
したがって、本件発明1、5~14、28~35は、当業者が申立1甲7に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
5 下記申立2甲3を主引例とする進歩性
(1)申立人2の主張の概要
本件特許の請求項1~35に係る発明は、特開2012-97165号公報(以下「申立2甲3」という。)に記載された発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~35に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)当審の判断
本件発明1~16、18~30と申立2甲3に記載された発明(申立2甲3の【0004】、【0010】、【0082】、【0107】を参照)は、少なくとも上記相違点1-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)イ(ウ)で説示したとおりであり、本件発明31~35と申立2甲3に記載された発明は、少なくとも上記相違点2-3と同じ点で相違し、上記第4の2(2)エ(イ)で説示したとおりである。
したがって、本件発明1~16、18~35は、当業者が申立2甲3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~16、18~35に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~16、18~35に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項17は、本件訂正により削除されたため、請求項17に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700741