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特許異議申立

2022-700751

ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板

審判番号
2022-700751
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-564655
登録番号
7015973
請求日
2022年08月02日
審決日
2023年03月29日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】旭化成株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】中村 和広
  • 【権利者代理人】齋藤 都子
  • 【権利者代理人】三間 俊介
  • 【権利者代理人】明石 尚久
  • 【異議申立人】宇佐川 ゆり子
審判長/審判官
  • 審判長 山崎 勝司
  • 審判官 藤井 眞吾
  • 審判官 當間 庸裕
分類
P1651.161-YAA(D06M) / P1651.113-YAA(D06M) / P1651.121-YAA(D06M) / P1651.536-YAA(D06M) / P1651.537-YAA(D06M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7015973号発明「ガラスクロス、プリプレグ、及びプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7015973号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔19、24~44〕、〔20~23〕について訂正することを認める。 特許第7015973号の請求項1~19、21~44に係る特許を維持する。 特許第7015973号の請求項20に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7015973号の請求項1~23に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)10月11日(優先権主張 令和3年4月9日)を国際出願日とする特許出願であって、令和4年1月26日にその特許権の設定登録がされ、令和4年2月3日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和4年 8月 2日 :特許異議申立人宇佐川ゆり子(以下「申立人」という。)による請求項1~23に係る特許に対する特許異議の申立て 令和4年10月 4日付け:取消理由通知書 令和4年12月 5日 :特許権者による意見書の提出 令和4年12月26日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和5年 3月 6日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項19に記載された 「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」のうち、請求項1を引用するものを独立形式に改め、 「複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成るガラスクロスであって、前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされており、スプリットシリンダー共振器を用いて計測される前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下であり、前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%であるガラスクロス。」に訂正する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項20を削除する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項21に記載された 「プリント配線板基材用である、請求項1~20のいずれか1項に記載のガラスクロス。」を、 「プリント配線板基材用である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正する(請求項21の記載を直接的又は間接的に引用する請求項22、23も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 本件訂正前の請求項22に記載された 「請求項1~21のいずれか1項に記載のガラスクロスと、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを含有する、プリプレグ。」を、 「請求項1~18、21のいずれか1項に記載のガラスクロスと、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを含有する、プリプレグ。」に訂正する(請求項22の記載を引用する請求項23も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて、上記訂正事項1により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて8.0×10-4以下である、請求項19に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項24とする。 (6)訂正事項6 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項2を引用する請求項3を引用するものについて、上記訂正事項5により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて6.0×10-4以下である、請求項24に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項25とする。 (7)訂正事項7 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項3を引用する請求項4を引用するものについて、上記訂正事項6により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて4.0×10-4以下である、請求項25に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項26とする。 (8)訂正事項8 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項4を引用する請求項5を引用するものについて、上記訂正事項7により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて2.0×10-4以下である、請求項26に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項27とする。 (9)訂正事項9 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項1~5を引用する請求項6を引用するものについて、上記訂正事項1、5~8により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のケイ素(Si)含量が、二酸化ケイ素(SiO2)換算で、95質量%~100質量%である、請求項19、24~27のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項28とする。 (10)訂正事項10 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項1~6を引用する請求項7を引用するものについて、上記訂正事項1、5~9により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のSi含量が、SiO2換算で、99.0質量%~100質量%である、請求項19、24~28のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項29とする。 (11)訂正事項11 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項1~7を引用する請求項8を引用するものについて、上記訂正事項1、5~10により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のSi含量が、SiO2換算で、99.9質量%~100質量%である、請求項19、24~29のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項30とする。 (12)訂正事項12 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項1~8を引用する請求項9を引用するものについて、上記訂正事項1、5~11により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下である、請求項19、24~30のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項31とする。 (13)訂正事項13 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項1~9を引用する請求項10を引用するものについて、上記訂正事項1、5~12により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記表面処理剤が、下記一般式(1): X(R)3-nSiYn ・・・(1) (式(1)中、Xは、アミノ基、及びラジカル反応性を有する不飽和二重結合基の少なくとも一方を有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基、及びフェニル基から成る群より選ばれる基である) で示される前記シランカップリング剤を含む、請求項19、24~31のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項32とする。 (14)訂正事項14 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項10を引用する請求項11を引用するものについて、上記訂正事項1、5~13により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記一般式(1)中のXが、イオン性化合物と塩を形成していない有機官能基である、請求項32に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項33とする。 (15)訂正事項15 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項10又は11を引用する請求項12を引用するものについて、上記訂正事項1、5~14により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記一般式(1)中のXが、アミンもしくは、アンモニウムカチオンを含まない、請求項32又は33に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項34とする。 (16)訂正事項16 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項10~12を引用する請求項13を引用するものについて、上記訂正事項1、5~15により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記一般式(1)中のXが、メタクリロキシ基、又はアクリロキシ基を1つ以上有する有機官能基である、請求項32~34のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項35とする。 (17)訂正事項17 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項9を引用する請求項14を引用するものについて、上記訂正事項1、5~12により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて2.0×10-3以下である、請求項31に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項36とする。 (18)訂正事項18 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項14を引用する請求項15を引用するものについて、上記訂正事項1、5~12、17により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.7×10-3以下である、請求項36に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項37とする。 (19)訂正事項19 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項15を引用する請求項16を引用するものについて、上記訂正事項1、5~12、17、18により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.5×10-3以下である、請求項37に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項38とする。 (20)訂正事項20 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項16を引用する請求項17を引用するものについて、上記訂正事項1、5~12、17~19により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.2×10-3以下である、請求項38に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項39とする。 (21)訂正事項21 本件訂正前の請求項19に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項17を引用する請求項18を引用するものについて、上記訂正事項1、5~12、17~20により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.0×10-3以下である、請求項39に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項40とする。 (22)訂正事項22 本件訂正前の請求項20に、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.1%である、請求項1~19のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項19を引用するものについて、上記訂正事項1、5~21により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.1%である、請求項19、24~40のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項41とする。 (23)訂正事項23 本件訂正前の請求項21に、「プリント配線板基材用である、請求項1~20のいずれか1項に記載のガラスクロス。」とあるうち、請求項19を引用するものについて、上記訂正事項1、5~22により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「プリント配線板基材用である、請求項19、24~41のいずれか1項に記載のガラスクロス。」に訂正し、新たに請求項42とする。 (24)訂正事項24 本件訂正前の請求項22に、「請求項1~21のいずれか1項に記載のガラスクロスと、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを含有する、プリプレグ。」とあるうち、請求項19を引用するものについて、上記訂正事項1、5~23により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「請求項19、24~42のいずれか1項に記載のガラスクロスと、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを含有する、プリプレグ。」に訂正し、新たに請求項43とする。 (25)訂正事項25 本件訂正前の請求項23に、「請求項22に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。」とあるうち、請求項19を引用するものについて、上記訂正事項1、5~24により請求項1を引用する請求項19を独立形式に改めたうえで、「請求項43に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。」に訂正し、新たに請求項44とする。 2 一群の請求項、及び別の訂正単位とする求め (1)一群の請求項 本件訂正前の請求項19~23は、請求項20~23が、本件訂正前の請求項19の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔19~23〕について請求されている。 (2)別の訂正単位とする求め 本件訂正後の請求項〔19、24~44〕に係る訂正について、特許権者は、当該訂正が認められるときに請求項〔20~23〕とは別の訂正単位として扱われることを求めている。 3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項19について、独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。 また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項20を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3、4について 訂正事項3、4は、それぞれ本件訂正前の請求項21、22について、訂正事項2によって請求項20が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項2によって削除された請求項20を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項3、4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項5~21について 訂正事項5~21は、それぞれ本件訂正前の請求項2~18を引用する請求項19について、請求項間の引用関係を解消するとともに、引用する請求項を整合させるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、訂正事項5~21は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項22~25について 訂正事項22~25は、それぞれ本件訂正前の請求項20~23について、訂正事項5~21に伴い引用する請求項を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、訂正事項22~25は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 4 本件訂正の適否のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔19、24~44〕、〔20~23〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~19、21~44に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~19、21~44を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~19、21~44に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~19、21~44の記載は、次のとおりである。 【請求項1】 複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成るガラスクロスであって、前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされており、スプリットシリンダー共振器を用いて計測される前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下であるガラスクロス。 【請求項2】 前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて8.0×10-4以下である、請求項1に記載のガラスクロス。 【請求項3】 前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて6.0×10-4以下である、請求項2に記載のガラスクロス。 【請求項4】 前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて4.0×10-4以下である、請求項3に記載のガラスクロス。 【請求項5】 前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて2.0×10-4以下である、請求項4に記載のガラスクロス。 【請求項6】 前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のケイ素(Si)含量が、二酸化ケイ素(SiO2)換算で、95質量%~100質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項7】 前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のSi含量が、SiO2換算で、99.0質量%~100質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項8】 前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のSi含量が、SiO2換算で、99.9質量%~100質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項9】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項10】 前記表面処理剤が、下記一般式(1): X(R)3-nSiYn ・・・(1) (式(1)中、Xは、アミノ基、及びラジカル反応性を有する不飽和二重結合基の少なくとも一方を有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基、及びフェニル基から成る群より選ばれる基である) で示される前記シランカップリング剤を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項11】 前記一般式(1)中のXが、イオン性化合物と塩を形成していない有機官能基である、請求項10に記載のガラスクロス。 【請求項12】 前記一般式(1)中のXが、アミンもしくは、アンモニウムカチオンを含まない、請求項10又は11に記載のガラスクロス。 【請求項13】 前記一般式(1)中のXが、メタクリロキシ基、又はアクリロキシ基を1つ以上有する有機官能基である、請求項10~12のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項14】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて2.0×10-3以下である、請求項9に記載のガラスクロス。 【請求項15】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.7×10-3以下である、請求項14に記載のガラスクロス。 【請求項16】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.5×10-3以下である、請求項15に記載のガラスクロス。 【請求項17】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.2×10-3以下である、請求項16に記載のガラスクロス。 【請求項18】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.0×10-3以下である、請求項17に記載のガラスクロス。 【請求項19】 複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成るガラスクロスであって、前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされており、スプリットシリンダー共振器を用いて計測される前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下であり、前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.5%であるガラスクロス。 【請求項21】 プリント配線板基材用である、請求項1~18のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項22】 請求項1~18、21のいずれか1項に記載のガラスクロスと、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを含有する、プリプレグ。 【請求項23】 請求項22に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。 【請求項24】 前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて8.0×10-4以下である、請求項19に記載のガラスクロス。 【請求項25】 前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて6.0×10-4以下である、請求項24に記載のガラスクロス。 【請求項26】 前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて4.0×10-4以下である、請求項25に記載のガラスクロス。 【請求項27】 前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて2.0×10-4以下である、請求項26に記載のガラスクロス。 【請求項28】 前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のケイ素(Si)含量が、二酸化ケイ素(SiO2)換算で、95質量%~100質量%である、請求項19、24~27のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項29】 前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のSi含量が、SiO2換算で、99.0質量%~100質量%である、請求項19、24~28のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項30】 前記ガラスクロスを構成する、ガラス糸のSi含量が、SiO2換算で、99.9質量%~100質量%である、請求項19、24~29のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項31】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて0超え2.5×10-3以下である、請求項19、24~30のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項32】 前記表面処理剤が、下記一般式(1): X(R)3-nSiYn ・・・(1) (式(1)中、Xは、アミノ基、及びラジカル反応性を有する不飽和二重結合基の少なくとも一方を有する有機官能基であり、Yは、各々独立して、アルコキシ基であり、nは、1以上3以下の整数であり、Rは、各々独立して、メチル基、エチル基、及びフェニル基から成る群より選ばれる基である) で示される前記シランカップリング剤を含む、請求項19、24~31のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項33】 前記一般式(1)中のXが、イオン性化合物と塩を形成していない有機官能基である、請求項32に記載のガラスクロス。 【請求項34】 前記一般式(1)中のXが、アミンもしくは、アンモニウムカチオンを含まない、請求項32又は33に記載のガラスクロス。 【請求項35】 前記一般式(1)中のXが、メタクリロキシ基、又はアクリロキシ基を1つ以上有する有機官能基である、請求項32~34のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項36】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて2.0×10-3以下である、請求項31に記載のガラスクロス。 【請求項37】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.7×10-3以下である、請求項36に記載のガラスクロス。 【請求項38】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.5×10-3以下である、請求項37に記載のガラスクロス。 【請求項39】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.2×10-3以下である、請求項38に記載のガラスクロス。 【請求項40】 前記ガラス糸を構成するガラスのバルク誘電正接が、10GHzにおいて1.0×10-3以下である、請求項39に記載のガラスクロス。 【請求項41】 前記ガラスクロスの総炭素量が0.02%~0.1%である、請求項19、24~40のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項42】 プリント配線板基材用である、請求項19、24~41のいずれか1項に記載のガラスクロス。 【請求項43】 請求項19、24~42のいずれか1項に記載のガラスクロスと、熱硬化性樹脂と、無機充填剤とを含有する、プリプレグ。 【請求項44】 請求項43に記載のプリプレグを含む、プリント配線板。 第4 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審において、請求項1~18、21~23に係る特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (拡大先願)本件特許の請求項1~18、21~23に係る発明は、その優先日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の先願1の願書に最初に添付された明細書又は特許請求の範囲(以下「先願1明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 先願1:特願2020-104456号(特開2021-195689号(甲第1号証)) 甲第2号証:岡慎司、“こんなところに複合材料-その優れた電気・機械特性で数々の電波通信機器へ-”、社団法人日本複合材料学会、1999年(平成11年)、第25巻、第4号、156~159ページ(以下「甲2」という。) 2 当審の判断 (1)引用文献等の記載及び引用発明 ア 先願1明細書等の記載 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 石英ガラスクロスに熱処理が施されたアニールド石英ガラスクロスであって、 SiO2含有量が99.5質量%以上で、10GHzでの誘電正接が0.0010未満であり、引張強さがクロス重量(g/m2)当たり1.0N/25mm以上のものであることを特徴とするアニールド石英ガラスクロス。 【請求項2】 前記誘電正接が0.0008以下であることを特徴とする請求項1に記載のアニールド石英ガラスクロス。」 「【背景技術】 【0002】 現在、5Gなどの高速通信化に伴い、ミリ波などの高周波を使用しても伝送損失の少ない高速通信基板やアンテナ基板が強く望まれている。またスマートフォン等の情報端末においては配線基板の高密度実装化や極薄化が著しく進行している。 【0003】 現在、5Gなどの高速通信向けにはDガラス、NEガラス、Lガラスなどの低誘電ガラスクロスに、フッ素樹脂やポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂、更には低誘電エポキシ樹脂や低誘電マレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させて得られるプリプレグを積層して加熱加圧硬化させた積層板が広く使用されている。 なお、信号の伝送損失はEdward A. Wolff式:伝送損失∝√ε×tanδ、が示すように、誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)が小さい材料ほど改善されることが知られている。 ・・・ 【0007】 更に特許文献1では、石英ガラス繊維中の水分量と誘電正接の関係は示されているが、シラノール量の記載がなく、誘電正接についても石英ガラス繊維とPTFEを用いたプリント基板で測定した値であるため、シラノール量とガラス繊維の誘電正接の相関については明らかにされていない。また、1200℃以上で焼成を行うと糸強度(引張強さ)が急激に低下すると記載はあるが強度回復について全く記載されていない。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 従来技術では、5Gなどの高速通信化に伴って要求される誘電特性と引張強さを共に満足する低誘電正接ガラスクロスを得ることができないといった問題がある。 本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、誘電正接が低く、引張強さにも優れたアニールド石英ガラスクロスと、高温加熱処理後に強度が回復するアニールド石英ガラスクロスの製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 上記課題を解決するために、本発明では、石英ガラスクロスに熱処理が施されたアニールド石英ガラスクロスであって、SiO2含有量が99.5質量%以上で、10GHzでの誘電正接が0.0010未満であり、引張強さがクロス重量(g/m2)当たり1.0N/25mm以上、即ち引張強さはクロス重量(g/m2)×1.0N/25mm以上のものであることを特徴とするアニールド石英ガラスクロスを提供する。 【0013】 このようなアニールド石英ガラスクロスであれば、誘電正接が低く、かつ、引張強さにも優れるものである。 【0014】 ここで、前記誘電正接が0.0008以下であることが好ましい。 【0015】 本発明は、このようにアニールド石英ガラスクロスの誘電正接を本来の石英のレベルに近づけて0.0010未満とすることができる。」 「【発明の効果】 【0034】 以上のように、本発明のアニールド石英ガラスクロスであれば、誘電正接が低く、引張強さも高いため、樹脂を含浸した通信基板は伝送損失の少ない理想的な基板を作製することができる。また、本発明のアニールド石英ガラスクロスの製造方法であれば、高温加熱処理後のエッチング処理によって強度を回復できるため、誘電正接が低く、引張強さにも優れたアニールド石英ガラスクロスを確実に得ることができ、生産性にも優れる。そして、本発明のアニールド石英ガラスクロスは、更に柔軟性にも優れるため、高速通信の分野等において利用価値が高い。」 「【0039】 本発明のアニールド石英ガラスクロスは、石英ガラスクロスに熱処理(500~1500℃)が施されたものであって、誘電正接(10GHz)が0.0010未満であり、好ましくは誘電正接が0.0008以下、より好ましくは0.0005以下、更に好ましくは0.0002以下であり、引張強さがクロス重量(g/m2)当たり1.0N/25mm以上であり、好ましくはクロス重量(g/m2)当たり1.2N/25mm以上であるものである。 また、上記アニールド石英ガラスクロスは、SiO2の含有量が99.5質量%以上のものであり、これよりSiO2の含有量が少ないと、加熱処理をしても石英並みの低誘電正接が得られない。 なお、本発明でいうアニールド石英ガラスクロスとは、石英ガラスクロスに500℃以上1500℃以下の熱処理が施されたものをいい、後述するように石英ガラスクロスそのものに対して特に熱処理を加えたものである。従って、いわゆる溶融法石英ガラスや、ゾルゲル法シリカを高温処理して得た石英ガラスのようなガラスクロス自体の製造工程において高温処理されたものとは明確に異なるものである。以下では、アニールド石英ガラスクロスを単に石英ガラスクロスという場合がある。 また、後述するように、誘電正接の測定は、誘電率測定用SPDR(Split post dielectric resonators)誘電体共振器周波数10GHzを用いて測定することができ、引張強さの測定は、JIS R3420:2013「ガラス繊維一般試験方法」の「7.4引張強さ」に準拠して測定する。」 「【0043】 なお、本明細書では、上述した石英糸を引き伸ばして得られる細い糸状の単繊維を石英ガラスフィラメント、石英ガラスフィラメントを束ねたものを石英ガラスストランド、石英ガラスフィラメントを束ねて更に撚りをかけたものを石英ガラスヤーンと定義する。 ・・・ 【0046】 また、本発明におけるアニールド石英ガラスクロスは前述した石英ガラスヤーンやストランドを製織して製造することができる。 【0047】 本発明において、石英ガラスヤーンの撚り数は特に制限はないが、撚り数が少ないとガラスクロスとした後の開繊工程でクロスの厚さを薄くしやすく、かつ通気度を下げやすい。また、撚り数が多いとヤーンの収束性が高まり、破断や毛羽立ちは発生しづらい。前記石英ガラスヤーンを、たて糸およびよこ糸の織り密度をそれぞれ10本/25mm以上、好ましくは30本/25mm以上、より好ましくは50本/25mm以上、及び120本/25mm以下、好ましくは110本/25mm以下、より好ましくは100本/25mm以下の範囲で製織してガラスクロスとする。」 「【0053】 本発明のアニールド石英ガラスクロスの製造方法は、石英ガラスクロスを500℃~1500℃の温度で加熱処理した後、前記加熱処理した石英ガラスクロスの表面をエッチング液でエッチング処理して、10GHzでの誘電正接が0.0010未満で引張強さがクロス重量(g/m2)当たり1.0N/25mm以上のアニールド石英ガラスクロスとすることを特徴とする。この製造方法は、例えば前述の方法で製造した石英ガラスクロスを(1)高温(500~1500℃)で加熱処理することで石英中に存在するシラノール基(Si-OH)を除去し、誘電率を低下させる工程(熱処理工程)、(2)高温処理中に発生した石英ガラス表面の歪層をエッチングにより溶解除去することで、石英ガラスの引張強さを向上させる工程(強度回復工程)、並びに必要ならば(3)カップリング剤などで石英ガラスクロス表面を処理する工程(カップリング剤処理工程)を含む。また、必要に応じて、これら以外の洗浄、乾燥工程などを任意の順で含んでもよい。」 「【0063】 この熱処理工程により石英ガラスクロスの誘電正接(10GHz)を0.0010未満、好ましくは0.0008以下、より好ましくは、0.0005以下、更には0.0002以下にすることができる。」 「【0075】 [(3)カップリング剤処理工程] カップリング剤処理工程は、必要に応じて行われる工程であり、カップリング剤などで石英ガラスクロス表面を処理する工程である。カップリング剤は、特に限定されないが、シランカップリング剤が好ましい。 【0076】 シランカップリング剤による表面処理は、高温処理、エッチング処理した石英ガラスクロスを洗浄乾燥したのち、ガラスクロスの表面をシランカップリング剤で被覆することでガラスクロスやヤーンの滑り性や濡れ性を高め、ガラスクロスの引張強さを1.5~2.5倍程度まで高める効果がある。またプリプレグ等を製造する際に、樹脂とガラスクロス表面の接着を強固にする効果がある。 【0077】 シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができるが、アルコキシシランが好ましく、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種又は2種以上がより好ましい。更にアミノ系アルコキシシランがより好ましい。 【0078】 上記シランカップリング剤の濃度は通常0.1質量%~5質量%の間の希薄水溶液で使用されるが、特に0.1質量%~1質量%の間で使用するのが効果的である。本発明によるクロスを用いることで、上記シランカップリング剤が均一に付着しガラスクロス表面に対して、より均一な保護作用をもたらし引張強さが向上することから取扱がし易くなるばかりでなく、プリプレグ等を製作する際に用いられる樹脂に対しても均一でムラのない塗布が可能となる。 【0079】 以上のようにして、低誘電正接(10GHzで0.0010未満)であり、高引張強さ(クロス重量(g/m2)当たり1.0N/25mm以上)である本発明のアニールド石英ガラスクロスを得ることができる。 更に、本発明のアニールド石英ガラスクロスは、上記強度回復工程を経ていることから、引張強さのみならず、柔軟性(しなやかさ)にも優れている。 本発明のアニールド石英ガラスクロスは、JIS K 5600-5-1の塗料一般試験方法の耐屈曲性に準拠して、直径2.5mm以上のマンドレルで石英ガラスクロスを折り曲げるか、または180度折りたたんだときに、破断及び折り曲げ痕がないことが好ましい。このようなものであれば、低誘電正接と高引張強さを有し、かつ柔軟性にも優れるため付加価値が高まる。 なお、柔軟性(しなやかさ)の測定は、上記規格に準拠して、適当な直径の円柱を用意し、石英ガラスクロスを各円柱に沿って曲げるか、または、円柱を用いず石英ガラスクロスを180°折り曲げて行うことができる。」 「【0089】 (調製例1:石英ガラスクロス(SQ1)の製造例) 石英ガラス糸をバーナー火炎中に投入し、延伸しながら石英ガラス繊維用集束剤を塗布し、直径7.0μmの石英ガラスフィラメント200本からなる石英ガラスストランドを作製した。次に、得られた石英ガラスストランドに25mmあたり0.2回の撚りをかけ石英ガラスヤーンを作製した。 得られた石英ガラスヤーンをエアージェット織機にセットし、たて糸密度が60本/25mm、よこ糸密度が58本/25mmの平織の石英ガラスクロスを製織した。石英ガラスクロスは厚さ0.086mm、クロス重量が85.5g/m2であった。 この石英ガラスクロスを400℃で10時間加熱処理することで繊維用集束剤を除去した。除去後の石英ガラスクロスの誘電正接(10GHz)は0.0011、引張強さは80N/25mmであった。表1に調製例に記載した石英ガラスクロスの基本物性を示す。 なお、上記石英ガラスクロス中のアルカリ金属の総和は0.5ppm、P(リン)は0.1ppm、UおよびThの含有量はそれぞれ0.1ppbであった。各元素の含有量は原子吸光法により測定した(質量換算)。」 「【0095】 (実施例4) 調製例1で製造した幅1.3mで長さ2000mの石英ガラスクロス(SQ1)を管壁に穴があいた石英管にロール状に巻いた状態で700℃に設定された電気炉に入れ5時間加熱を行った。加熱後、8時間かけて室温まで冷却した。 その後、pH13のアルカリ電解水を入れ、70℃に加熱したエッチング槽に上記した石英ガラスクロスをロールから解きほぐしながらクロスを24時間かけて浸漬させて通過することでエッチング処理を行った。エッチング槽には超音波発振装置が設置されており、超音波を印加して行った。 エッチング後連続してイオン交換水で満たされた洗浄槽を通し、乾燥させ石英管に再度巻き取ることで低誘電、高強度のアニールド石英ガラスクロスを作製した。 上記アニールド石英ガラスクロスの誘電正接(10GHz)は0.0001で引張強さは105N/25mmであった。また、アニールド石英ガラスクロスを180°折り曲げても折り目もつかず破断もしなかった。 上記アニールド石英ガラスクロスを0.5質量%のKBM-903(商品名:信越化学工業(株)製、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)水溶液に10分間浸漬し、次いで110℃/20分加熱乾燥させて表面処理した。表面処理したアニールド石英ガラスクロスの引張強さを含め、測定した諸物性(誘電正接、引張強さ、柔軟性)を表4に示す。」 「【0104】 【表4】 [図:0001398278000001.jpg] 」 イ 先願1発明 先願1明細書等には、【0089】、【0095】の実施例4に着目すると、次の発明が記載されている。 「石英ガラス糸をバーナー火炎中に投入し、延伸しながら石英ガラス繊維用集束剤を塗布し、直径7.0μmの石英ガラスフィラメント200本からなる石英ガラスストランドを作製し、次に、得られた石英ガラスストランドに25mmあたり0.2回の撚りをかけ石英ガラスヤーンを作製し、 得られた石英ガラスヤーンをエアージェット織機にセットし、たて糸密度が60本/25mm、よこ糸密度が58本/25mmの平織の石英ガラスクロスを製織し、 この石英ガラスクロスを400℃で10時間加熱処理することで繊維用集束剤を除去し、 幅1.3mで長さ2000mの石英ガラスクロスを管壁に穴があいた石英管にロール状に巻いた状態で700℃に設定された電気炉に入れ5時間加熱を行い、加熱後、8時間かけて室温まで冷却し、 その後、pH13のアルカリ電解水を入れ、70℃に加熱したエッチング槽に上記した石英ガラスクロスをロールから解きほぐしながらクロスを24時間かけて浸漬させて通過することでエッチング処理を行い、エッチング槽には超音波発振装置が設置されており、超音波を印加して行い、 エッチング後連続してイオン交換水で満たされた洗浄槽を通し、乾燥させ石英管に再度巻き取ることで低誘電、高強度のアニールド石英ガラスクロスを作製し、 上記アニールド石英ガラスクロスの誘電正接(10GHz)は0.0001で引張強さは105N/25mmであり、 上記アニールド石英ガラスクロスを0.5質量%のKBM-903(商品名:信越化学工業(株)製、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)水溶液に10分間浸漬し、次いで110℃/20分加熱乾燥させて表面処理した、表面処理後アニールド石英ガラスクロス。」(以下「先願1発明」という。) (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と先願1発明とを対比する。 先願1発明の「石英ガラスフィラメント」は本件発明1の「ガラスフィラメント」に相当し、以下同様に、「石英ガラスヤーン」は「ガラス糸」に、「表面処理後アニールド石英ガラスクロス」、「アニールド石英ガラスクロス」、「クロス」及び「石英ガラスクロス」は「ガラスクロス」に、「KBM-903(商品名:信越化学工業(株)製、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)」は「シランカップリング剤を含む表面処理剤」に、「たて糸」は「経糸」に、「よこ糸」は「緯糸」に、それぞれ相当する。 先願1発明の「石英ガラスヤーン」は「石英ガラスフィラメント200本」からなり、本件発明1の「ガラス糸」が「複数本のガラスフィラメントから成る」態様を備えている。 先願1発明の「上記アニールド石英ガラスクロスを0.5質量%のKBM-903(商品名:信越化学工業(株)製、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)水溶液に10分間浸漬し、次いで110℃/20分加熱乾燥させて表面処理した」ことは、本願発明1の「前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされて」いることに相当する。 そうすると、本件発明1と先願1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点1] 複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成るガラスクロスであって、前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされているガラスクロス。 [相違点1] 本件発明1は「スプリットシリンダー共振器を用いて計測される前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下である」のに対して、先願1発明はそのようなものか不明である点。 イ 判断 相違点1について検討する。 先願1発明は、エッチング処理後の誘電正接(10GHz)は0.0001であるものの(【0053】、【0063】、【0095】、【0104】【表4】)、先願明細書等には、表面処理後の誘電正接について記載されていない。 なお、先願明細書等には、「【0079】以上のようにして、低誘電正接(10GHzで0.0010未満)であり、高引張強さ(クロス重量(g/m2)当たり1.0N/25mm以上)である本発明のアニールド石英ガラスクロスを得ることができる。」(以下「記載事項A」という。)と記載され、「上記アニールド石英ガラスクロスを0.5質量%のKBM-903(商品名:信越化学工業(株)製、3-アミノプロピルトリメトキシシラン)水溶液に10分間浸漬し、次いで110℃/20分加熱乾燥させて表面処理した。表面処理したアニールド石英ガラスクロスの引張強さを含め、測定した諸物性(誘電正接、引張強さ、柔軟性)を表4に示す。」(【0095】)としているが、表4には、エッチング処理後の誘電正接(10GHz)について、0.0001が記載され、シランカップリング剤処理後については、引張強さと柔軟性について記載はあるものの、誘電正接について示されていない。また、誘電正接は、シランカップリング剤処理後には、その値が増大するものである(甲2の石英ガラス(バルクに相当)誘電正接0.0001(10GHz)に対して、国際公開第2019/065940号(以下「甲4」という。)[0158]においてシランカップリング剤で表面処理された石英ガラスクロスの誘電正接が0.0015になっていること。特許権者が令和5年3月6日に提出した意見書に添付した乙1(旭化成株式会社従業者が作成した実験成績証明書)の実験1、2、3におけるエッチング後の誘電正接から表面処理後の誘電正接の値の増加結果。)。 以上を踏まえると、先願明細書等の記載事項Aが、メタノールにより洗浄を行うことにより、シランカップリング剤処理後のガラスクロスの誘電正接を0.0010未満にした石英ガラスクロスの発明が実質的に記載されたものと理解することができない。 そうすると、先願1発明に係る表面処理後アニールド石英ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差も不明であるから、相違点1は実質的な相違点である。 よって、本件発明1と先願1発明とは同一ではない。 (3)本件発明2~18、21~23について 本件発明2~18、21~23は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、先願1明細書等に記載された発明と同一ではない。 (4)本件発明19、24~44について 申立人は、本件訂正前の請求項19に係る発明についても、先願明細書等に記載された発明と同一である旨を述べているので、本件発明19、24~44について検討する。 本件発明19、24~44は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、先願1明細書等に記載された発明と同一ではない。 第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった、特許異議申立理由の概要、及び本件発明1~19、21~44に関する当該理由に対する当審の判断は次のとおり。 1 下記甲3を主引例とする新規性、進歩性 (1)申立人の主張の概要 本件特許の請求項1~5、10、11、13、21~23に係る発明は、特開2007-262632号公報(以下「甲3」という。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、請求項1~23に係る発明は、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)当審の判断 ア 引用発明 甲3には、特に実施例(a)に着目すると次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる(甲3の【0008】、【0019】~【0022】を参照)。 「低誘電率ガラス組成のガラス繊維からなり、澱粉系のサイズ剤がガラス繊維に対し、1.0重量%付着したガラス繊維織物(IPCクロススタイル2116使用糸:NCE2501/00.7Z)を、低誘電率ガラス繊維織物とし、 低誘電率ガラス繊維織物を、ガラス繊維織物表面の雰囲気温度が540℃になるように設定した加熱炉に90秒間通し予備ヒートクリーニングして、有機物の付着量をガラス繊維に対し0.1重量%に減じ、次いでガラス繊維織物の巻体を、雰囲気温度400℃の加熱炉に入れ、バッチ式で20時間加熱処理し、ガラス繊維織物(a)を得て、 ガラス繊維織物(a)を、0.4重量%のアミノプロピルトリメトキシシラン水溶液に浸漬し、絞液・乾燥した、ガラス繊維織物。」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点2] 「ガラスクロス。」 [相違点2-1] 本件発明1は、「複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成る」のに対して、甲3発明は、そのようなものであるか不明である点。 [相違点2-2] 本件発明1は、「前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされて」いるのに対して、甲3発明は、「ガラス繊維織物(a)を、0.4重量%のアミノプロピルトリメトキシシラン水溶液に浸漬し、絞液・乾燥した」点。 [相違点2-3] 本件発明1は、「スプリットシリンダー共振器を用いて計測される前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下である」のに対して、甲3発明は、そのようなものであるか不明である点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点2-3について検討する。 「スプリットシリンダー共振器を用いて計測される前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下」とすることについて、甲3及び他の証拠には記載も示唆もされておらず、出願前において周知技術であるともいえない。 そうすると、甲3発明において、相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明ではなく、当業者が甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~19、21~44について 本件発明2~19、21~44は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、本件発明2~5、10、11、13、21~23は、甲3に記載された発明ではなく、また、本件発明2~19、21~44は、当業者が甲3発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 甲4を主引例とする進歩性 (1)申立人の主張の概要 本件特許の請求項1~23に係る発明は、甲4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)当審の判断 ア 引用発明 甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる(甲4の[0158]を参照)。 「分子中にメタクリル基を有するシランカップリング剤で表面処理された石英ガラスクロス(信越化学工業株式会社製のSQF1078C-04、#1078タイプ、比誘電率:3.5、誘電正接:0.0015、通気度:25cm3/cm2/秒)。」 イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点3] 「ガラスクロスであって、前記ガラスクロスの表面が、シランカップリング剤を含む表面処理剤で表面処理をされているガラスクロス。」 [相違点3-1] 本件発明1は、「複数本のガラスフィラメントから成るガラス糸を経糸及び緯糸として製織して成る」のに対して、甲4発明は、そのようなものであるか不明である点。 [相違点3-2] 本件発明1は、「スプリットシリンダー共振器を用いて計測される前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下である」のに対して、甲4発明は、そのようなものであるか不明である点。 (イ)判断 事案に鑑み、相違点3-2について検討する。 甲4の[0104]の記載によると、甲4発明における誘電正接は10GHzにおける値であり、また、石英ガラスの誘電正接(tanδ)が10GHzにおいて0.0001であることは周知である(甲2の157ページ表1)ことから、甲4発明のガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差は、10GHzにおいて0.0014(=0.0015-0.0001)となり、1.0×10-3を超える。 ここで、「スプリットシリンダー共振器を用いて計測される前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下」とすることについて、甲4及び他の証拠には記載も示唆もされておらず、出願前において周知技術であるともいえない。 そうすると、甲4発明において、相違点3-2に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が甲4発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 本件発明2~19、21~44について 本件発明2~19、21~44は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記イで検討したのと同じ理由により、当業者が甲4発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 3 サポート要件 (1)申立人の主張の概要 ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が10GHzにおいて0.00087を超え0.0010の範囲において本件発明の課題が解決できず、ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下の範囲において、本件発明の課題を解決できると認識できないため、本件発明1~4、6~23の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 したがって、本件発明1~4、6~23が発明の詳細な説明に記載したものでなく、本件特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)当審の判断 ア 発明の詳細な説明の記載 本件発明が解決しようとする課題は、「基盤配線の緻密化と、高速通信と、等によって増加する発熱に起因する該界面の剥離による絶縁信頼性の低下」を改善し、「優れた耐熱性を示すガラスクロス、並びにそれを用いるプリプレグ、及びプリント配線板を提供すること」(【0006】)(以下「本件課題」という。)である。 本件課題を解決する手段に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。 「本発明者らは、サイジング剤の変性物は公知の条件では十分に低減できない事、ガラス表面と化学結合を形成できなかったシランカップリング剤は疎水性が強いために公知の方法である水洗では十分に低減できない事を見出した。更に、本発明者らは、上記の付着有機物の残存はガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接の差を特定することにより比較可能であることを見出し、以上の知見を総合して、本発明に至った。」(【0007】) 「本実施形態に係るガラスクロスの上記で説明された効果を奏する構成が、下記式: |ガラスクロスの誘電正接-バルク誘電正接|@10GHz≦1.0×10-3 を満たす関係により特定される。」(【0011】) イ 判断 本件発明は、「前記ガラスクロスの誘電正接とバルク誘電正接との差が、10GHzにおいて0超え1.0×10-3以下である」ことを発明特定事項としており、上記アに示した発明の詳細な説明の記載を総合すると、当該発明特定事項により、付着有機物の残存を低減でき、本件課題を解決できることが当業者であれば認識することができるといえる。 ウ 小括 よって、本件発明1~19、21~44は、発明の詳細な説明に記載したものである。 4 実施可能要件 (1)申立人の主張の概要 バルク誘電正接が0.00010のガラスクロスにおいて、ガラスクロスの誘電正接-バルク誘電正接が、0を超えて0.00012未満、バルク誘電正接が0.00150のガラスクロスにおいて、ガラスクロスの誘電正接-バルク誘電正接が、0を超えて0.00023未満の範囲について、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許の明細書の記載及び出願時の技術常識に基づき、請求項1~23に記載される「ガラスクロス」を生産できるように記載されているとはいえないため、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1~23の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、本件特許は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (2)当審の判断 本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(【0006】)、当該課題を解決するための手段(【0007】)、本件発明の効果(【0008】)、本件発明を実施するための形態(【0009】~【0055】)、実施例(【0056】~【0081】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~19、21~44の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 第6 むすび 取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1~19、21~44に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1~19、21~44に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 さらに、本件特許の請求項20は、本件訂正により削除されたため、請求項20に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700751

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