特許異議申立
2022-700716
低欠陥多孔性研磨パッド
- 審判番号
- 2022-700716
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-148993
- 登録番号
- 7010619
- 請求日
- 2022年07月26日
- 審決日
- 2023年06月06日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】弁理士法人 津国
- 【異議申立人】猪狩 充
- 審判長/審判官
- 審判長 見目 省二
- 審判官 鈴木 貴雄
- 審判官 大山 健
- 分類
- P1651.121-YAA(B24B) / P1651.536-YAA(B24B) / P1651.537-YAA(B24B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7010619号発明「低欠陥多孔性研磨パッド」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7010619号の特許請求の範囲を、令和5年2月16日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7010619号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7010619号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年8月1日(パリ条約による優先権主張 2016年(平成28年)8月4日 (US)アメリカ合衆国)に出願され、令和4年1月17日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月26日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和4年 7月26日(受付日:令和4年7月27日)
特許異議申立人 猪狩 充(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
(2)令和4年11月16日付け(発送日:令和4年11月21日)
取消理由の通知
(3)令和5年 2月16日(受付日:令和5年2月17日)
特許権者による意見書(以下「権者意見書」という。)及び訂正請求書(以下単に「訂正請求書」という。)の提出
(4)令和5年 4月10日(受付日:令和5年4月11日)
申立人による意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容について
特許権者は、訂正請求書により、当該訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、特許請求の範囲の訂正(以下「本件訂正」という。)を求めているところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記複数の溝内の複数の突出ランド領域」
とあるのを、
「前記複数の溝と隣接する複数の突出ランド領域」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記複数の突出ランド領域が、テーパー状支持構造を有し、」
との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に
「前記複数の突出ランド領域が、下部の前記複数の突出ランド領域から外側かつ下側に伸長するテーパー状支持構造で支えられ」
とあるのを、
「前記複数の突出ランド領域が、前記研磨表面の外周から前記複数の突出ランド領域の下部まで外側かつ下側に伸長する前記テーパー状支持構造で支えられ」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に
「錐形または非尖形上部」
とあるのを、
「非尖形上部」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に
「前記複数の溝の平均幅を下回る平均幅」
とあるのを、
「前記複数の溝の平均幅を下回る前記研磨表面の平均幅」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に
「前記突出ランド領域が、半球形、錐形-ピラミッド形、錐形-台形およびそれらの組み合わせから選択される形状を有し」
とあるのを、
「前記突出ランド領域が、四角錐台の形状を有し」
に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあって、訂正事項1~5によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~4〕について請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、独立特許要件について
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「前記複数の溝内の複数の突出ランド領域」と、「複数の溝」と「複数の突出ランド領域」との関係が不明瞭である記載を、「前記複数の溝と隣接する複数の突出ランド領域」と訂正することで、その関係を明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件特許の明細書、特許請求の範囲または図面(以下「本件特許明細書等」という)の段落【0016】及び【0070】の記載、並びに、【図7A】及び【図7B】からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、発明特定事項をより明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(2)訂正事項2
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に「前記複数の突出ランド領域が、テーパー状支持構造を有し、」との記載を追加することで、「複数の突出ランド領域」と「テーパー状支持構造」との関係を明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件特許明細書等の段落【0016】の記載、並びに、【図5A】、【図5B】、【図7A】及び【図7B】からみて、「テーパー状支持構造」は「複数の突出ランド領域」の一部として「複数の突出ランド領域」を支えるための構造であることが明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、発明特定事項をより明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(3)訂正事項3
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、本件訂正前の請求項1の「前記複数の突出ランド領域が、下部の前記複数の突出ランド領域から外側かつ下側に伸長するテーパー状支持構造で支えられ」と、「下部の」との語が何を修飾し何を特定するのか不明瞭であった記載を、「前記複数の突出ランド領域が、前記研磨表面の外周から前記複数の突出ランド領域の下部まで外側かつ下側に伸長する前記テーパー状支持構造で支えられ」と訂正することで明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件特許明細書等の段落【0016】の記載、並びに、【図5A】、【図5B】、【図7A】及び【図7B】からみて、「テーパー状支持構造」は「複数の突出ランド領域」の一部として「複数の突出ランド領域」を支えるための構造であって、「研磨表面の外周」から「複数の突出ランド領域の下部」まで「外側かつ下側に伸長」することが明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、発明特定事項をより明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(4)訂正事項4
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1の「錐形または非尖形上部」との選択的記載から「錐形」を削除することにより、「非尖形上部」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、「錐形」を削除し、「非尖形上部」に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、「錐形」を削除し、「非尖形上部」に限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(5)訂正事項5
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、本件訂正前の請求項1の「前記複数の溝の平均幅を下回る平均幅」が「複数の突出ランド領域」のいずれの位置の平均幅であるのか明確化するために、「前記複数の溝の平均幅を下回る前記研磨表面の平均幅」と訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件特許明細書等の段落【0018】の記載から、「複数の溝の平均幅を下回る平均幅」とは、「複数の突出ランド領域」のうち、「半導体基板」等に接して研磨する部分である「研磨表面の平均幅」を指すことが明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、発明特定事項をより明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(6)訂正事項6
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、本件訂正前の請求項4の「半球形、錐形-ピラミッド形、錐形-台形およびそれらの組み合わせから選択される形状」との選択的記載から「半球形、錐形-ピラミッド形、・・・およびそれらの組み合わせから選択される形状」を削除するとともに、「錐形-台形」との記載を、より明確な表現である「四角錐台」として記載するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」、及び同条同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項6は、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、「半球形、錐形-ピラミッド形、・・・およびそれらの組み合わせから選択される形状」を削除し、「錐形-台形」との記載を「四角錐台」との記載に明確化するものであって、本件特許明細書等の【図5A】、【図5B】、【図7A】及び【図7B】からみて、「突出ランド領域」が「四角錐台」の形状を有していることが明らかであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、「錐形-台形」との記載をより明確な「四角錐台」との記載で特定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
(7)独立特許要件
本件特許異議の申立ては、全ての請求項1~4を対象としているので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項4及び6に関して、第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 申立人の訂正要件に対する主張について
申立人は、申立人意見書において、訂正事項1~3、5について、訂正要件違反である旨、主張する(第2~11ページ、3-2.)が、上記3(1)~(3)、(5)に示したとおりであるから、訂正事項1~3、5が訂正要件に違反しているとまではいえない。
5 小括
上記3のとおり、訂正事項1~6に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~4に係る発明は、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つを、研磨流体ならびに研磨パッドと前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つとの間の相対運動で研磨するまたは平坦化するのに好適な前記研磨パッドであって、:
開口セルポリマーマトリックス、研磨表面および厚さを有する研磨層であって、
前記開口セルポリマーマトリックスが垂直孔と、前記開口セルポリマーマトリックス内の前記垂直孔を連通接続する開口チャネルと、を有し、
前記開口チャネルが、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を有する、
前記研磨層と;
前記研磨層内の複数の溝であって、
前記複数の溝が、前記研磨表面に隣接して計測された平均幅を有し、
前記複数の溝が、固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝の前記幅にわたって通過する研磨くず除去滞留時間を有する、
前記複数の溝と;
前記複数の溝と隣接する複数の突出ランド領域であって、
前記複数の突出ランド領域が、テーパー状支持構造を有し、
前記複数の突出ランド領域が、前記研磨表面の外周から前記複数の突出ランド領域の下部まで外側かつ下側に伸長する前記テーパー状支持構造で支えられ、
前記複数の突出ランド領域が、前記垂直孔を含有する前記ポリマーマトリックスから前記研磨表面を形成する非尖形上部を有し、
前記複数の突出ランド領域が、前記固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝と隣接する前記複数の突出ランド領域にわたって通過する研磨滞留時間を有し、
前記複数の突出ランド領域が、前記突出ランド領域の前記研磨滞留時間を低減させ、溝領域の前記研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、前記複数の溝の平均幅を下回る前記研磨表面の平均幅を有する、
前記複数の突出ランド領域と
を含む研磨パッド。
【請求項2】
前記垂直孔が平均高さを有し、前記複数の溝が、前記垂直孔の前記平均高さより大きい平均深さを有する、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記垂直孔が、前記研磨表面の下で増加する平均直径を有する、請求項1記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記突出ランド領域が、四角錐台の形状を有し、前記複数の溝が、前記突出ランド領域間に直線的に伸長する、請求項1記載の研磨パッド。」(以下、本件訂正後の請求項1~4に係る発明を、それぞれ「本件訂正発明1」~「本件訂正発明4」という。)
第4 当審より通知した取消理由について
本件特許の本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が令和4年11月16日付け取消理由通知書(以下単に「取消理由通知書」という。)にて特許権者に通知した取消理由1~3は、次のとおりである。
1 理由1(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
2 理由2(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
3 理由3(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 本件訂正発明1~4に対する当審の判断
上記第2のとおり本件訂正は認められたところ、上記第3に示した本件訂正発明1~4に係る特許が上記第4で示した取消理由1~3によって取り消されるべきものであるかについて、以下検討する。
1 取消理由1(特許法第36条第4項第1号:実施可能要件)について
・請求項1~4について
(1)請求項1に記載された各用語について
ア 請求項1に記載された「開口セルポリマーマトリックス」、「研磨表面」、「研磨層」、「垂直孔」、「開口チャネル」、「前記研磨表面に隣接して計測された平均幅」、「突出ランド領域」、「テーパー状支持構造」、「前記複数の溝の平均幅を下回る平均幅」との各用語について、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とで用語が統一されていないため、取消理由通知書にて対応関係の説明を求めたところ、権者意見書において、以下の用語が同じものを示す旨、説明がされた(権者意見書にて併記された本件特許明細書等の段落番号の転記は省略する。)。
(ア)「開口セルポリマーマトリックス」
「ポリマーマトリックス」、「ポリウレタンマトリックス」、「多孔性マトリックス」、「マトリックス」
(イ)「研磨表面」
「上部研磨表面」、「上方表面」、「その表面」、「上部表面」
(ウ)「研磨層」
「多孔性研磨層」、「ナップ層」
(エ)「垂直孔」
「より大きい孔」、「垂直孔配向」、「大孔」、「開口垂直孔」、「開ロセル垂直孔」、「一次孔」
(オ)「開口チャネル」
「より小さい孔」、「連通接続孔」、「小孔」、「側孔」、「二次孔」
(カ)「前記研磨表面に隣接して計測された平均幅」
「複数の溝の平均幅」、「溝幅」
(キ)「突出ランド領域」
「ランド領域」、「ピロー」、「ピロー構造」、「ピロー構成」
(ク)「テーパー状支持構造」
「テーパー状表面構造」、「下向きに傾斜した側壁」、「下向きに傾斜した側面」、「テーパー状側壁」
(ケ)「前記複数の溝の平均幅を下回る平均幅」
「ピロー幅」
イ また、取消理由通知書にて、請求項1に記載された上記アの各用語がどの部分に該当するか、図5A~7B、概略図を用いた説明を求めたところ、権者意見書において、以下の説明がされた。
(ア)概略図
「
[図:0001401638000001.jpg]
」
(イ)図5A
「
[図:0001401638000002.jpg]
」
(ウ)図5B
「
[図:0001401638000003.jpg]
」
(エ)図6A
「
[図:0001401638000004.jpg]
」
(オ)図6B
「
[図:0001401638000005.jpg]
」
ウ 上記ア及びイによる説明は、何ら不自然な点は見られず、本件特許明細書等の記載を総合してみれば、全体として平仄のとれたものであって、特許請求の範囲の記載と明細書及び図面との対応関係についても明らかとなったため、本件特許の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
(2)請求項1の「開口チャネルが、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を有する」点について
ア 取消理由通知書にて、請求項1の「開口チャネルが、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を有する」との記載と、発明の詳細な説明における記載との対応関係、及び、「開口チャネル」の役割について確認したところ、権者意見書にて以下の旨の説明がなされた。
(ア)「開口チャネル」は、上記(1)ア(オ)のとおり。
(イ)発明の詳細な説明(例えば段落【0020】)に記載された「純水」は、「研磨流体(スラリー)」に含まれるもの。「研磨流体(スラリー)」が「砥粒」と「純水から作られる液体」とを含むことは、当業者にとって技術常識である。
(ウ)段落【0020】の「大孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する連通接続された側孔」との記載から、「連通接続された側孔」(「開口チャネル」)」の「平均直径」とは、研磨の際に「研磨流体(スラリー)」に含まれている「純水から作られる液体」が「側孔」(「開口チャネル」)を通って「大孔」(「垂直孔」)の間を流れることができるような寸法を意味していることを理解できる。
(エ)以上の記載から、請求項1の「流体の輸送を可能にするのに十分な直径」とは、「開口チャネル」の「平均直径」が「純水から作られる研磨液体」を通すのに十分な大きさであり、「砥粒」を通すには不十分な大きさであることを、当業者は理解できる。
(オ)「開口チャネル」の役割は、段落【0020】に「側壁で孔を開口したままにしておくことは、研磨くずの自由流動を可能にし、欠陥のさらなる減少を容易にする。好ましくは、多孔性ポリウレタン研磨パッドは、大孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する連通接続された側孔を含有する」と記載されるように、
例えば、ある「大孔」に「研磨くず」が入った場合、「研磨くず」の体積分だけ「大孔」内の「研磨流体」(スラリー)を排出する必要があるところ、「開口チャネル」の「平均直径」が、純水から作られる液体を通すのに十分な大きさであることにより、「研磨流体」(スラリー)に含まれる純水の大孔の間ヘの流動を可能にすることで、「研磨くずの自由流動を可能にし、欠陥のさらなる減少を容易にする」ことと理解できる。
イ 上記アによる説明は、本件特許明細書等の記載を総合してみれば、全体として平仄のとれたものであって、特許請求の範囲の記載と明細書及び図面との対応関係についても明らかとなったため、本件特許の発明の詳細な説明は、本件訂正発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。
(3)小括
よって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件訂正発明1~4を当該記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく実施することができる程度に記載されたものであるといえるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているため、取消理由通知書に記載した取消理由1により、本件訂正発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(特許法第36条第6項第1号:サポート要件)について
・請求項1~4について
(1)「複数の溝」と「複数の突出ランド領域」との関係について
取消理由通知書にて、本件訂正前の請求項1における「前記複数の溝内の複数の突出ランド領域」との記載が本件特許明細書等の記載と整合していない旨、通知をしたところ、
当該記載は、上記第2の1(1)のとおり「前記複数の溝と隣接する複数の突出ランド領域」に訂正され、発明の詳細な説明の記載と整合された。
(2)「突出ランド領域」と「テーパー状支持構造」との関係について(その1)
取消理由通知書にて、本件訂正前の請求項1における「前記複数の突出ランド領域が、下部の前記複数の突出ランド領域から外側かつ下側に伸長するテーパー状支持構造で支えられ、」との記載が本件特許明細書等の記載と整合していないとも解し得る旨、通知をしたところ、
上記第2の1(2)の「前記複数の突出ランド領域が、テーパー状支持構造を有し」との記載を追加する訂正をするとともに、上記第2の1(3)のとおり、本件訂正前の上記記載を「前記複数の突出ランド領域が、前記研磨表面の外周から前記複数の突出ランド領域の下部まで外側かつ下側に伸長する前記テーパー状支持構造で支えられ、」に訂正することで、発明の詳細な説明の記載と整合された。
(3)「突出ランド領域」と「テーパー状支持構造」との関係について(その2)
取消理由通知書にて、本件訂正前の請求項1における上記(2)の記載と「前記複数の突出ランド領域が、前記垂直孔を含有する前記ポリマーマトリックスから前記研磨表面を形成する錐形または非尖形上部を有し、」との記載から、本件訂正前の請求項1に係る発明は、テーパー状に伸長した突出ランド領域の下部から外側かつ下側に更に伸長したテーパー状支持構造を有する態様を包含するとも解し得るため、本件特許明細書等の記載と整合していない旨、通知をしたところ、
上記第2の1(4)のとおり、当該記載のうち、選択的事項であった「錐形」を削除して「前記複数の突出ランド領域が、前記垂直孔を含有する前記ポリマーマトリックスから前記研磨表面を形成する非尖形上部を有し、」に訂正されたため、発明の詳細な説明の記載と整合された。
(4)「突出ランド領域」の「研磨表面」を形成する「形状」について
取消理由通知書にて、以下のア~イの場合:
ア 本件訂正前の請求項1における上記(3)の「前記複数の突出ランド領域が、前記垂直孔を含有する前記ポリマーマトリックスから前記研磨表面を形成する錐形または非尖形上部を有し、」との記載のうち、選択的事項が「錐形」である場合、及び、
イ 本件訂正前の請求項4における「前記突出ランド領域が、半球形、錐形-ピラミッド形、錐形-台形およびそれらの組み合わせから選択される形状を有し、」との記載のうち、選択的事項が「半球形」、「錐形-ピラミッド形」、「それらの組合せ」である場合、
本件特許明細書等には、実施の形態として記載されておらず、また、本件特許明細書等の段落【0008】、【0012】に記載された「パッド誘発性欠陥を低減し、研磨速度を増加させる」との課題を解決できるともいえない旨、通知をしたところ、
上記アに関しては、上記第2の1(4)のとおり、当該記載のうち、選択的事項であった「錐形」を削除して「前記複数の突出ランド領域が、前記垂直孔を含有する前記ポリマーマトリックスから前記研磨表面を形成する非尖形上部を有し、」に訂正され、
上記イに関しては、上記第2の1(6)のとおり、当該記載のうち、選択的事項であった「半球形、錐形-ピラミッド形、・・・およびそれらの組み合わせから選択される形状」を削除して「前記突出ランド領域が、四角錐台の形状を有し」に訂正されたため、発明の詳細な説明の記載と整合された。
(5)小括
よって、本件訂正発明1~4は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているため、取消理由通知書に記載した取消理由2により、本件訂正発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由3(特許法第36条第6項第2号:明確性要件)について
3-1 請求項1~4について
(1)突出ランド領域の「平均幅」について(その1)
ア 取消理由通知書にて、本件訂正前の請求項1において「前記複数の突出ランド領域が、・・・前記複数の溝の平均幅を下回る平均幅を有する」と発明を特定するところ、本件訂正前の請求項4の記載から、例えば、突出ランド領域が「半球形」の場合、幅としては、直径や任意の弦の長さを想定し得るところ、上部と下部で幅(直径や任意の弦の長さ)が異なり、突出ランドが「錐形」である四角錐の場合、幅としては、辺の長さや対角線の長さ等を想定し得るところ、上部と下部で幅(辺の長さや対角線の長さ等)が異なるため、突出ランド領域の「平均幅」とは、突出ランド領域のいずれの位置の幅を示すのか不明である、旨の通知をした。
イ 特許権者は、上記アの通知を受け、本件訂正により、
(ア)上記第2の1(4)のとおり、請求項1において「前記複数の突出ランド領域が、前記垂直孔を含有する前記ポリマーマトリックスから前記研磨表面を形成する非尖形上部を有し、」と、錐形を除く訂正をし、
(イ)上記第2の1(6)のとおり、請求項4において「前記突出ランド領域が、四角錐台の形状を有し」と、半球形、錐形-ピラミッド形、およびそれらの組み合わせを除く訂正をし、さらに、
(ウ)上記第2の1(5)のとおり、請求項1において「前記複数の突出ランド領域が、・・・前記複数の溝の平均幅を下回る前記研磨表面の平均幅」と、訂正した。
ウ 本件訂正により、本件訂正発明1~4における突出ランド領域は、半球形や錐形の形状である態様が除外されるとともに、突出ランド領域の平均幅は、突出ランド領域の非尖形上部の研磨表面における平均幅であることが明確化された。
(2)突出ランド領域の「平均幅」について(その2)
ア 取消理由通知書にて、本件訂正前の請求項1において、突出ランド領域は、ポリマーマトリックス(例えば、本件特許明細書の段落【0012】に記載されるポリウレタン)から形成されている場合、研磨加工時には研磨パッドが被研磨物に押圧され、その圧力により研磨表面は被研磨物の形状に沿って平坦化し、突出ランド領域の表面幅が大きくなり得るため、非研磨加工時と研磨加工時、あるいは、研磨加工時における設定圧力等に応じて、突出ランド領域の幅は変化すると解されるところ、本件訂正前の請求項1において、測定条件が特定されていないため、突出ランド領域の「平均幅」とは、どのような条件における突出ランド領域の幅を示すのか不明である、旨の通知をした。
イ 特許権者は、上記アの通知を受け、本件訂正により、上記(1)イの訂正をするとともに、権者意見書において、「複数の突出ランド領域」の「非尖形上部」は、研磨加工時ではないときに、突出ランド領域の「非尖形上部」の幅として、「平均幅」を有し、「複数の突出ランド領域」の「平均幅」とは、研磨加工時の条件下において測定した平均幅ではなく、研磨加工時ではないときに測定した「平均幅」である旨、説明した。
ウ 上記イの権者意見書による説明は、一見、本件訂正後の請求項1における「前記突出ランド領域の前記研磨滞留時間を低減させ、溝領域の前記研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるため」との記載と直接的には整合しない、すなわち、「研磨滞留時間」や「研磨くず除去滞留時間」は、「固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点」が「通過する」のに要する時間であることから、突出ランド領域の「平均幅」は「研磨加工時」の幅に関連するとも解される。
しかしながら、
(ア)「溝領域の前記研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させる」ためには、研磨加工時の「溝の幅」が研磨加工時の「突出ランド領域の研磨表面の幅」よりも大きくなる必要があること、
(イ)研磨加工時の「突出ランド領域の研磨表面の幅」は研磨加工時ではないときの「突出ランド領域の研磨表面の幅」よりも大きく(上記アを参照)なると解されること、
(ウ)相対的に、研磨加工時の「溝の幅」は研磨加工時ではないときの「溝の幅」よりも小さく(上記アを参照)なると解されること、
からみて、研磨加工時に「溝領域の前記研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させる」ためには、研磨加工時はもちろんのこと、その前段階である研磨加工時ではないときであっても「溝の幅」が「突出ランド領域の研磨表面の幅」よりも大きい必要があることは、明らかである。
エ してみると、本件訂正発明1の「複数の突出ランド領域」の「平均幅」とは、研磨加工時ではないときに測定した「平均幅」の条件を特定しようとするものであり、「前記突出ランド領域の前記研磨滞留時間を低減させ、溝領域の前記研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるため」という研磨時の作用に係る特定事項とも両立するため、本件訂正発明1~4は、明確であり、また、発明の詳細な説明の記載とも整合しているといえる。
(3)「研磨くず除去滞留時間」について
ア 本件訂正前の請求項1における「研磨くず除去滞留時間」とは、文言上、研磨くずが除去されるまでにどの程度滞留しているかによって決まる時間を意味しており、必ずしも半導体基板上の点が複数の溝の平均幅を通過する時間とは一致しないと解されるところ、取消理由通知書にて、「固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝の前記幅にわたって通過する研磨くず除去滞留時間」と定義したことの意図や、測定方法について不明である旨、通知をした。
イ 上記アの通知に対し、特許権者は権者意見書において、「固定された速度で回転する前記半導体基板・・・上の点が前記複数の溝の前記幅にわたって通過する・・・時間」が、主に研磨くず除去に寄与する時間であることから、「研磨くず除去滞留時間」を当該回転する速度と複数の溝の平均幅とに基づいて計算される時間として定義したものであって、複数の溝の平均幅を「研磨くず除去滞留時間」という別の表現形式としたもの、との当審の見解のとおりである旨、説明した。
ウ そして、特許権者の上記イの説明を踏まえれば、「研磨くず除去滞留時間」について、「固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝の前記幅にわたって通過する・・・時間」であるとの定義自体は明確であり、またその時間を演算するための「速度」及び「溝の幅」も明確であることから、「研磨くず除去滞留時間」は明確である、といえる。
(4)「研磨滞留時間」について
ア 本件訂正前の請求項1における「研磨滞留時間」とは、文言上、研磨の何かが滞留する時間を意味しており、必ずしも半導体基板上の点が前記複数の溝と隣接する前記複数の突出ランド領域にわたって通過する時間とは一致しないと解されるところ、取消理由通知書にて、「固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝と隣接する前記複数の突出ランド領域にわたって通過する研磨滞留時間」と定義したことの意図や、測定方法について不明である旨、通知をした。
イ 上記アの通知に対し、特許権者は権者意見書において、「固定された速度で回転する前記半導体基板・・・上の点が前記複数の溝と隣接する前記複数の突出ランド領域にわたって通過する・・・時間」が、主に研磨に寄与する時間であることから、「研磨滞留時間」を当該回転する速度と複数の突出ランド領域の平均幅とに基づいて計算される時間として定義したものであって、複数の突出ランド領域の平均幅を「研磨滞留時間」という別の表現形式としたもの、との当審の見解のとおりである旨、説明した。
ウ そして、特許権者の上記イの説明を踏まえれば、「研磨滞留時間」について、「固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝と隣接する前記複数の突出ランド領域にわたって通過する・・・時間」であるとの定義自体は明確であり、またその時間を演算するための「速度」及び「突出ランド領域(の研磨加工時の幅;上記(2)ウを参照。)」も明確であることから、「研磨滞留時間」は明確である、といえる。
3-2 請求項4について
<錐形-台形について>
取消理由通知書にて、本件訂正前の請求項4における「錐形-台形」が一般的な用語ではない旨、通知をしたところ、
当該記載は、上記第2の1(6)のとおり幾何学的に一般的な「四角錐台」との用語に訂正されたため、本件訂正発明4は明確となった。
3-3 小括
よって、本件訂正発明1~4は、明確であるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているため、取消理由通知書に記載した取消理由3により、本件訂正発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。
第6 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立ての理由について
1 申立書による申立ての理由と、当審より通知した取消理由との関係
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の取消理由を申立てているところ、その一部については、上記第4及び第5に示したとおり、当審より取消理由を通知し、本件訂正又は権者意見書での説明により、取消理由を解消している。
(1)理由1(第8~9ページ)
実施可能要件違反、サポート要件違反
上記第5の2(1)に示したとおり、本件特許は、サポート要件を満たすものである。また、実施可能要件を満たすことも明らかである。
(2)理由2(第9~10ページ)
実施可能要件違反、サポート要件違反
上記第5の2(2)に示したとおり、本件特許は、サポート要件を満たすものである。また、実施可能要件を満たすことも明らかである。
(3)理由3(第10~11ページ)
実施可能要件違反、サポート要件違反
上記第5の2(3)に示したとおり、本件特許は、サポート要件を満たすものである。また、実施可能要件を満たすことも明らかである。
(4)理由4(第11~12ページ)
実施可能要件違反、サポート要件違反
上記第5の2(4)に示したとおり、本件特許は、サポート要件を満たすものである。また、実施可能要件を満たすことも明らかである。
(5)理由5(第12~13ページ)
明確性要件違反
上記第5の3の3-1(1)及び(2)に示したとおり、本件特許は、明確性要件を満たすものである。
(6)理由6(第13ページ)
明確性要件違反
上記第5の3の3-2に示したとおり、本件特許は、明確性要件を満たすものである。
(7)理由7(第13~15ページ)
実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性要件違反
上記第5の3の3-1(3)及び(4)に示したとおり、本件特許は、明確性要件を満たすものである。また、実施可能要件及びサポート要件を満たすことも明らかである。
(8)理由8(第15ページ)
実施可能要件違反、サポート要件違反、明確性要件違反
上記第5の1(1)及び(2)に示したとおり、本件特許は、実施可能要件を満たすものである。また、実施可能要件及び明確性要件を満たすことも明らかである。
(9)理由9(第15~68ページ)
進歩性欠如
申立人は、甲1号証(及び技術常識/周知技術を示す文献としての甲2号証~甲19号証)に基づく進歩性欠如を、取消理由として申し立てているが、当審より取消理由を通知していないところ、以下、当審の判断を示す。
2 取消理由通知に採用しなかった理由9(進歩性欠如)について
(1)はじめに
上記第2のとおり、本件訂正は認められ、また上記第3のとおり、本件訂正発明2~4は本件訂正発明1を引用する発明であることから、まず、本件訂正発明1が、以下の甲1号証に記載された発明、及び、甲2号証~甲19号証に示される技術常識/周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるかについて、以下検討する。
甲1号証:特開2015-199144号公報
甲2号証:ポリウレタン樹脂ハンドブック,昭和62年9月25日発行
甲3号証:「ポリウレタンのスポンジ構造」,昭和57年9月発行
(高分子論文集, Vol.39,No.9,pp. 543‐548)
甲4号証:特公昭40-20273号公報
甲5号証:特開2012-96344号公報
甲6号証:国際公開第2014/051104号
甲7号証:特開2011-148082号公報
甲8号証:特開2013-123780号公報
甲9号証:特開2013-208703号公報
甲10号証:特開2006-62058号公報
甲11号証:特開2009-83014号公報
甲12号証:詳説半導体CMP技術,平成13年1月10日発行
甲13号証:特開2004-358584号公報
甲14号証:特許第4948935号公報,平成24年6月6日発行
甲15号証:特許第5274286号公報,平成25年8月28日発行
甲16号証:特許第5297096号公報,平成25年9月25日発行
甲17号証:特開2014-79877号公報
甲18号証:特開2014-79878号公報
甲19号証:特許第5274285号公報,平成25年8月28日発行
(以下「甲1号証」等を「甲1」等という。)
(2)本件訂正発明1の認定
本件訂正発明1は、上記第3に示した、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
(3)甲1発明の認定
ア 甲1に記載された事項
甲1には、申立人が申立書の第15~26ページに摘記した事項(段落【0001】~【0002】、【0008】、【0012】~【0013】、【0029】~【0034】、【0036】~【0050】、【0053】~【0057】、【0060】~【0063】、【図1】~【図2】)がそれぞれ記載又は図示されるところ、特に、実施例の「研磨パッドB」に関して、【図2】に断面図が示されるとともに、段落【0054】には次のとおり記載されている(下線は当審にて付した。)。
(ア)段落【0054】
「【0054】
(研磨パッドB)
30質量%のポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂(100%モジュラス:3.5MPa)のDMF溶液100質量部に対して、粘度調整用のDMFの43部を混合し樹脂溶液を調製した。得られた樹脂溶液を用い、基材に樹脂溶液を塗布するときの塗布厚を1.30mmとして形成された成膜基材を、温度35℃の凝固液(水)中に30分浸漬することにより、成膜基材上に発泡ウレタンシートを作製した。成膜基材を剥離して得られた発泡ウレタンシートのスキン層側をバフ処理量0.12mmとしバフ番手♯180のサンドペーパーを使用してバフ処理を行った後、支持基材として厚み188μmのポリエチレンテレフタレート製の基材を貼りつけ、溝幅を1mm、溝間隔を3mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を、エンボス加工(加工圧力4.5MPa、加工(金型)温度145℃、加工時間120秒)により形成した。エンボス加工がされていない面に研磨定盤に固定するための両面テープを貼り合わせて研磨パッドBを製造した。」
(イ)【図2】
「
[図:0001401638000006.jpg]
」
イ 甲1に記載された事項からわかること
甲1に記載された事項のうち、上記アから次のことがわかる(なお、当審による以下の認定は、申立人の申立書第27~28ページに記載された認定と異なる点を含む。)。
(ア)上記ア(イ)の【図2】からみて、垂直孔を含有する発泡ウレタンシートは、上に向かって凸形状の研磨表面を有しており、上記ア(ア)の段落【0054】における格子パターンの溝をエンボス加工で形成するとの記載を併せてみれば、発泡ウレタンシートは、複数の溝(【図2】では図左右端の位置にそれぞれ「溝」が看取できる。)と、研磨表面を形成する凸形状上部を有する複数の領域(以下「領域A」という。【図2】では、図中央位置に1つの「領域A」が看取できる。)と、を含むことがわかる。
(イ)また【図2】からみて、当該領域Aは、当該領域Aの上部である凸形状の研磨表面から、外側かつ下側に伸長する円弧状支持構造を有することがわかる。補足すれば、上記ア(ア)の段落【0054】には、格子パターンの溝を形成するにあたり、その溝の断面が矩形状となるようにエンボス加工によって形成することが記載されることからみて、当該円弧状支持構造は、上記凸形状の研磨表面から連続して弧状を有し、溝の底部付近では、底面に対してほぼ垂直の方向に伸長しているといえる。
他方、凸形状の研磨表面と円弧状支持構造は連続しており、その境界を示す記載等はないことから、領域Aのうち、どの部分が研磨表面(領域Aの上部)で、どの部分が円弧状支持構造であるかを認定し得る根拠は見当たらない。
(ウ)ここで、申立人は申立書において、以下の説明図を示しつつ(申立書第28ページ)、発泡ウレタンシートが、「研磨表面を形成する非尖形上部」に相当する部位(説明図の実線枠部分)と、「テーパー状支持構造」に相当する部位(説明図の破線枠部分)とを有する領域を含む(申立書第27ページ)旨、説明している。
しかしながら、説明図から実線枠及び破線枠を除去した元の図である上記ア(イ)の【図2】をみると、領域Aの上部は、全体として上に凸の形状を有しており、研磨表面が説明図の実線枠で示された中央部に限定されると判断すべき合理的な理由がなく(例えば、甲1の段落【0029】には、「発泡ウレタンシートが、ネック部を有する気泡を含んでいると、あたかも折り目がついたように、積極的及び安定的にネック部近傍の気泡及び樹脂壁が変形し、研磨荷重に対する緩衝性が高まることにより、研磨加工時に研磨パッドが変形し易く、研磨時の摩擦抵抗を下げることができ、研磨安定性を高めることができる。」とも記載されていることからすれば、領域Aは変形し易いため、説明図の実線枠のみが研磨表面であると一意に特定することはできない。)、その中央部も、周囲から連続して上に凸形状を有している(尖形である)ことを否定する、明示的な記載や示唆があるともいえない。また、外側かつ下側に伸長する支持構造の部位も、所定の勾配を有するいわゆるテーパー形状ではなく、上記(イ)のとおり円弧形状を有しているといえる。
<申立人説明図>(申立書第28ページ)
「
[図:0001401638000007.jpg]
」
(エ)上記ア(ア)の段落【0054】の「溝幅を1mm、溝間隔を3mmとした断面矩形状で格子パターンの溝」との記載、及び、上記ア(イ)の【図2】からみて、甲1に記載の発泡ウレタンシートにおいて、複数の溝が何かしらの平均幅を有すること、また、領域Aの上部である凸形状の研磨表面が何かしらの平均幅を有することがわかる。
(オ)ここで、申立人は申立書において、前述の説明図をもとに、溝間隔3mmのうち、「研磨表面を形成する非尖形上部」に相当する部位(説明図の実線枠部分)は1/4程度であるから、「複数の突出ランド領域」の「研磨表面の平均幅」に相当する幅は、0.75mm程度であり、溝間隔3mmのうち、「テーパー状支持構造」に相当する部位(説明図の破線枠部分)は残りの3/4程度であり、「複数の溝の平均幅」に相当する幅は、溝幅1mmに「テーパー状支持構造」に相当する部位の幅2.25mmを加えた、3.25mm程度ある旨、主張する(申立書第28ページ)。
しかしながら、上記(ア)及び(ウ)のとおり、甲1においては、領域Aのうち、どこまでが研磨表面として作用するのか明示的な記載がなく、研磨表面が説明図の実線枠で示された中央部に限定されると判断する合理的な理由がないことから、複数の溝の平均幅と、複数の領域Aの研磨表面の平均幅との大小関係については不明である。
ウ 甲1発明
申立人が申立書にて摘記した事項(上記アを参照)、及び、上記イに示した事項からみて、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。なお、甲1発明は、申立人が申立人意見書の3.の3-4.の(2)の(2-2)(第23~24ページ)にて主張する、甲1’発明に基づいて認定しているが、甲1’発明と異なる認定をした事項については下線を付した。
「半導体デバイスなどの材料を、スラリーならびに研磨パッドと前記半導体デバイスとの間の相対運動で研磨するまたは平坦化するのに好適な前記研磨パッドであって、:
開口セル発泡ウレタンシート、研磨表面および厚さを有する研磨層であって、
前記開口セル発泡ウレタンシートが垂直孔と、前記開口セル発泡ウレタンシート内の前記垂直孔の壁面に、開口チャネルと、を有する
前記研磨層と;
前記研磨層内の複数の溝であって、
前記複数の溝が、前記研磨表面に隣接して計測された平均幅を有する、
前記複数の溝と、;
前記複数の溝に隣接して存在する複数の凸形状上部を有する領域Aであって、
領域Aが、円弧状支持構造を有し、
前記複数の凸形状上部を有する領域Aが、前記複数の凸形状上部の前記研磨表面の外周から外側かつ下側に伸長する前記円弧状支持構造で支えられ、
前記複数の凸形状上部を有する領域Aが、前記垂直孔を合有する前記開口セル発泡ウレタンシートから前記研磨表面を形成する凸形状上部を有し、
前記複数の凸形状上部を有する領域Aが、前記研磨表面の平均幅を有する、
前記複数の凸形状上部を有する領域Aと
を含む研磨パッド。」
(4)本件訂正発明1と甲1発明との対比
本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、以下の相違点1~2、5~6(申立人意見書第25~26ページに記載の相違点1~2、5~6に対応)のほか、以下の相違点4’、相違点4”及び相違点7’でも相違し、その余の点で一致する。
<相違点>
ア 相違点1
本件訂正発明1においては、「開ロセルポリマーマトリックス内の垂直孔を連通接続する開口チャネル」を有するのに対し、
甲1発明においては、「開口チャネル」を有する(上記(3)ア(イ)の【図2】における、無数の小さな斑点模様を参照)ものの、これが発泡ウレタンシート内の垂直孔(上記(3)ア(イ)の【図2】、及び、摘記を省略した甲1の段落【0029】~【0030】に記載の、涙形状の気泡を参照。)を連通接続するかは不明である点。
イ 相違点2
本件訂正発明1においては、「開口チャネルが、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を有する」のに対し、
甲1発明の「開口チャネル」の直径の程度は不明である点。
ウ 相違点4’
本件訂正発明1においては、「複数の吐出ランド領域」が、「テーパー状支持構造を有し」、「テーパー状支持構造で支えられ」るのに対し、
甲1発明においては、「複数の凸形状上部を有する領域A」が、「円弧状支持構造を有し」、「円弧状支持構造で支えられ」る点。
エ 相違点4”
本件訂正発明1においては、「複数の吐出ランド領域」が、「垂直孔を含有するポリマーマトリックスから研磨表面を形成する非尖形上部を有し」ているのに対し、
甲1発明においては、「複数の凸形状上部を有する領域A」が、「垂直孔を合有する開口セル発泡ウレタンシートから研磨表面を形成する凸形状上部を有している点。
オ 相違点5
本件訂正発明1においては、「複数の溝が、固定された速度で回転する半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が複数の溝の幅にわたって通過する研磨くず除去滞留時間を有する」のに対し、
甲1発明においては、当該事項を有するか、不明である点。
カ 相違点6
本件訂正発明1においては、「複数の突出ランド領域が、固定された速度で回転する半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が複数の溝の幅と隣接する複数の突出ランド領域にわたって通過する研磨滞留時間を有する」のに対し、
甲1発明においては、当該事項を有するか、不明である点。
キ 相違点7’
本件訂正発明1においては、「複数の突出ランド領域が、突出ランド領域の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、前記複数の溝の平均幅を下回る前記研磨表面の平均幅を有する」のに対し、
甲1発明においては、「複数の凸形状非尖形上部を有する領域Aが、研磨表面の平均幅を有する」ものの、その平均幅が「複数の溝の平均幅を下回る」かは不明であり、「研磨滞留時間」を低減させ、「研磨くず除去滞留時間」を「研磨滞留時間」より大きい値まで増加させるために、平均幅が設定されるのかも不明である点。
(5)判断
事案に鑑み、まず、相違点7’について検討する。
ア 本件訂正発明1における、「研磨くず除去滞留時間」及び「研磨滞留時間」との発明特定事項は、上記第4の3の3-1の(3)及び(4)のとおり、それぞれ、半導体基板等上の任意の点が「溝の幅」及び「突出ランド領域の幅」を通過するために要する時間、すなわち、「溝の幅」及び「突出ランド領域の幅」を半導体基板等の回転する速度で除した時間であって、速度が固定であることから、「溝の幅」及び「突出ランド領域の幅」に相関する値であることがわかる。
そして、それぞれの「幅」は、半導体基板等上の任意の点が固定の速度で回転する時の「溝の幅」及び「突出ランド領域の幅」を通過するために要する時間を算出するためのパラメータであることから、研磨加工時における「幅」であることは、上記第4の3の3-1の(2)ウのとおりである。
その上で、本件訂正発明1において特定される「複数の溝の平均幅」と「研磨表面の平均幅」との大小関係は、非研磨加工時における「研磨表面の平均幅」が「複数の溝の平均幅」よりも単に小さいだけでは、こと足りず、研磨加工時における突出ランド領域の変形等も考慮して「突出ランド領域の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させる」関係となる程度に、非研磨加工時における「前記複数の溝の平均幅」を下回る「前記研磨表面の平均幅を有する」ことを特定するものであると解するのが妥当である。
イ 他方、甲1発明においては、研磨加工時の「溝の幅」を「領域Aの研磨表面の幅」よりも大きくすることについて、甲1に記載も示唆もされておらず、むしろ、段落【0029】の「研磨加工時に研磨パッドが変形し易く」との記載や、段落【0054】の「溝幅を1mm、溝間隔を3mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を、エンボス加工・・・により形成した」との記載からみて、研磨加工時においても領域Aの幅が溝の幅よりも大きくなることを想定しているものであるとも解される。
ウ そして、甲2~甲19のいずれにも、「複数の突出ランド領域が、突出ランド領域の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、前記複数の溝の平均幅を下回る前記研磨表面の平均幅を有する」に相当する技術思想が開示されておらず、また、当該技術思想が技術常識であるとも、周知技術であるとも裏付ける根拠がない。また、仮にそのような技術思想が公知であったとしても、甲1発明において、研磨加工時の「溝の幅」が「領域Aの研磨表面の幅」よりも大きくなるような、相違点7’に係る当該技術思想を適用することを動機付ける記載や示唆は見当たらない。
エ この点に関し、申立人は、申立人意見書において、相違点7として、「甲1には、複数の非尖形上部を有する領域が、複数の溝の平均幅を下回る平均幅を有することは開示されている」(第26ページ)としたうえで、相違点7に対する意見として、「複数の非尖形上部を有する領域(突出ランド領域)が、複数の溝の平均幅を下回る研磨表面の平均幅を有する」ならば、必然的に「複数の突出ランド領域が、突出ランド領域の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させる」との目的が達成されるから、実質的な相違点ではない(第30ページ)旨、主張する。
しかしながら、
(ア)上記(3)イ(ウ)及び(オ)に記載したように、甲1発明において、「複数の非尖形上部を有する領域(突出ランド領域)の研磨表面の平均幅」が、「複数の溝の平均幅」を下回るかは、定かではなく、
(イ)仮に、甲1発明において「複数の非尖形上部を有する領域(突出ランド領域)の研磨表面の平均幅」が、「複数の溝の平均幅」を下回るものであったとしても、単に下回るだけではこと足らず、上記アのとおり、研磨加工時において「突出ランド領域の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させる」関係となる程度に、非研磨加工時において「前記複数の溝の平均幅を下回る前記研磨表面の平均幅を有する」点については、記載も示唆もされていない。
そのため、申立人の主張については、採用することができない。
オ 以上のとおりであるから、本件訂正発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、上記相違点7’の点で、甲1発明、並びに、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
(6)本件訂正発明2~4について
本件訂正発明2~4は本件訂正発明1を引用する発明であって、本件訂正発明1の発明特定事項を全て含むから、本件訂正発明1と同様に、本件訂正発明2~4についても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(7)小括
よって、本件訂正発明1~4は、甲1に記載された発明、並びに甲2~甲19に記載された周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、本件訂正発明1~4に係る特許は、申立書に記載した理由9によっては取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件訂正発明1~4に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700716