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特許異議申立

2022-700718

テーパー状ポロメリック研磨パッド

審判番号
2022-700718
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-148994
登録番号
7011419
請求日
2022年07月26日
審決日
2023年11月21日
公報発行日
2024年02月22日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
  • 【権利者代理人】弁理士法人 津国
  • 【異議申立人】猪狩 充
審判長/審判官
  • 審判長 渋谷 善弘
  • 審判官 鈴木 貴雄
  • 審判官 大山 健
分類
P1651.537-YAA(B24B) / P1651.536-YAA(B24B) / P1651.55 -YAA(B24B) / P1651.121-YAA(B24B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7011419号発明「テーパー状ポロメリック研磨パッド」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7011419号の特許請求の範囲を、令和5年9月6日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7011419号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許掲載公報の発行までの経緯 特許第7011419号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成29年8月1日(パリ条約による優先権主張 2016年(平成28年)8月4日 (US)アメリカ合衆国)に出願され、令和4年1月18日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月26日に特許掲載公報が発行された。 2 特許異議の申立て以降の経緯 本件特許についての本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。 (1)令和4年 7月26日(受付日:令和4年7月27日) 特許異議申立人 猪狩 充(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て (当該申立てのために提出した特許異議申立書を以下単に「申立書」という。) (2)令和4年11月16日付け(発送日:令和4年11月21日) 取消理由の通知 (通知した取消理由通知書を以下単に「取消理由通知」という。) (3)令和5年 2月16日(受付日:令和5年2月17日) 特許権者による意見書(以下「権者意見書1」という。)及び訂正請求書(以下「訂正請求書1」という。)の提出 (4)令和5年 4月10日(受付日:令和5年4月11日) 申立人による意見書(以下「申立人意見書1」という。)の提出 (5)令和5年 6月14日付け(発送日:令和5年 6月20日) 取消理由の通知(決定の予告) (通知した取消理由通知書(決定の予告)を以下単に「決定の予告」という。) (6)令和5年 9月 6日(受付日:令和5年9月7日) 特許権者による意見書(以下「権者意見書2」という。)及び訂正請求書(以下「訂正請求書2」という。)の提出 (7)令和5年10月20日(受付日:令和5年10月23日) 申立人による意見書(以下「申立人意見書2」という。)の提出 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容について 特許権者は、訂正請求書2により、当該訂正請求書2に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、特許請求の範囲の訂正(以下「本件訂正」という。)を求めているところ、本件訂正の内容は、以下のとおりである(訂正箇所に下線を付して示す。なお、訂正請求書1による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「研磨表面」及び「前記研磨表面」 とあるのを、 「上部研磨表面」及び「前記上部研磨表面」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「前記小孔が前記大孔の間を連通接続し」 との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に 「上部研磨表面」 とあるのを、 「前記上部研磨表面」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に 「前記開口したチャネル」 とあるのを、 「前記小孔」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1に 「前記小孔が、前記大孔の平均直径より小さい平均直径を有し」 との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項1に 「前記下向きに傾斜した側壁が、前記各ピロー構造のすべての側面から伸長し」 とあるのを、 「前記下向きに傾斜した側壁が、前記各ピロー構造のすべての側壁に相当し」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項1に 「前記傾斜した側壁により直角の方向に前記垂直の方向から10~60度オフセットする」 とあるのを、 「前記下向きに傾斜した側壁に開口する前記大孔の方向が、前記下向きに傾斜した側壁に対して、より直角の方向になるように、前記垂直の方向から10~60度オフセットする」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項2に 「前記下向きに傾斜した側壁が、前記研磨表面から前記下向きに傾斜した側壁の方向に導かれるように計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する」 とあるのを、 「前記下向きに傾斜した側壁が、前記上部研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有し、前記最初のテーパー区域は前記上部研磨表面に隣接する」 に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4に 「前記連通接続された小孔が、前記垂直な各孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する」 とあるのを、 「連通接続された前記小孔が、前記大孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する」 に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項1に 「前記各ピロー構造が、前記研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、前記上部研磨表面から下向きの表面を有し」 とあるのを、 「前記各ピロー構造が、前記上部研磨表面に対して30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、前記上部研磨表面に対して下向きの表面を有し」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項1に 「を含む」 とあるのを、 「前記ピロー構造間に直線的に伸長する複数の溝と; を含み、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項1に 「前記多孔性ポリウレタン研磨パッドが、半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つを、研磨流体ならびに前記多孔性ポリウレタン研磨パッドと前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つとの間の相対運動で研磨するまたは平坦化するための前記多孔性ポリウレタン研磨パッドであり、」 との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項1に 「前記複数の溝が、前記上部研磨表面に隣接して計測された平均幅を有し、」 との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項1に 「前記複数の溝が、固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝の前記幅にわたって通過する研磨くず除去滞留時間を有し、」 との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項1に 「前記一連のピロー構造が、前記上部研磨表面を形成する非尖形上部を有し、」 との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項1に 「前記一連のピロー構造が、前記固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝と隣接する前記一連のピロー構造にわたって通過する研磨滞留時間を有し、」 との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項1に 「前記一連のピロー構造が、前記一連のピロー構造の前記研磨滞留時間を低減させ、溝領域の前記研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、前記一連のピロー構造の前記上部研磨表面が、前記複数の溝の前記平均幅を下回る前記上部研磨表面の平均幅を有する」 との記載を追加する訂正をする(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項1に 「連通接続され;」、「開口し;」及び「ピロー構造であって;」 とある記載において、セミコロン「;」を読点「、」に変更し、 「連通接続され、」、「開口し、」及び「ピロー構造であって、」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項1に 「前記ピロー構造と、」 とある記載において、読点「、」をセミコロン「;」に変更し、 「前記ピロー構造と;」 に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。)。 2 一群の請求項について 本件訂正前の請求項2~4は、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあって、訂正事項1~7及び10~19によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項〔1~4〕について請求されたものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、独立特許要件について (1)訂正事項1 ア 訂正の目的の適否 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「研磨表面」及び「前記研磨表面」との記載を、請求項1における用語を統一するために、「上部研磨表面」及び「前記上部研磨表面」と訂正して明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである(下線は当審にて付した。以下同様。)。 イ 新規事項の有無 訂正事項1は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、本件特許の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という)の、例えば段落【0019】の「ピロー構造は、研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、上部研磨表面からの下向きの表面を有する」との記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、発明特定事項をより明瞭にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的の適否 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に「前記小孔が前記大孔の間を連通接続し」との記載を追加することで、本件訂正前の請求項1に「前記大孔が小孔と連通接続され」と特定されていた事項における「大孔」と「小孔」との関係について、小孔が大孔の間を連通接続すると限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等には、「開口セルポリマーマトリックスが垂直孔を有し、開口チャネルが垂直孔を連通接続する。好ましくは、開口セルポリマーマトリックスは、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を持つ連通接続孔を有する。」(段落【0015】)、「多孔性ポリウレタン研磨パッドは、大孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する連通接続された側孔を含有する。」(段落【0020】)、「大孔は、より小さい孔と連通接続される。」(段落【0021】)、「好ましくは、小孔は、垂直孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な直径を有する。」(段落【0024】)、「二次孔に連通接続された大孔を形成するために水がコーティングに拡散する複数の凝固槽を通過する。」(段落【0028】)、及び、「大孔プラス連通接続するより小さい孔の組み合わせを維持した。」(段落【0069】)と記載されるように、請求項1における「大孔」は、本件特許明細書等では「垂直孔」とも表現され、同様に「小孔」は、「開口チャネル」、「連接続孔」、「側孔」、「より小さい孔」及び「二次孔」とも表現されており、大孔の間を純水(流体)が流動することができるように、小孔が大孔の間を連通接続していることが本件特許明細書等を通じて全体として平仄のとれたものとして記載されていることが明らかである。よって、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的の適否 訂正事項3は、訂正事項1に伴って、本件訂正前の請求項1の「上部研磨表面」との記載を「前記上部研磨表面」と訂正することで、訂正事項1にて訂正された事項との関係を明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項3は、「前記」を追加する形式的なものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、「前記」を追加する形式的なものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的の適否 訂正事項4は、本件訂正前の請求項1の「前記開口したチャネル」との記載を「前記小孔」と訂正するものであって、請求項1における用語を統一して明確化するものであることから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項4の、本件訂正前の請求項1における「開口したチャネル」との発明特定事項は、令和3年11月29日提出の手続補正書による補正により特定された事項であって、同日提出の意見書にて、段落【0015】の「開口セルポリマーマトリックスは、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を持つ連通(相互)接続孔を有する。」との記載を補正の根拠とすることが説明され、また同段落の当該記載の前文には「開口セルポリマーマトリックスが垂直孔を有し、開口チャネルが垂直孔を連通(相互)接続する。」とも記載されている(なお、同手続補正書による補正により、段落【0015】に記載の「相互接続」との記載は「連通接続」に補正された。)。 してみると、本件訂正前の請求項1における「開口したチャネル」とは、「連通(相互)接続孔」を意図しており、その「連通(相互)接続」する孔を「開口チャネル」と表現していたことに基づく記載であったと理解できる。 そして、上記(2)イに示したように、本件特許明細書等においては「小孔」と「開口チャネル」とは、文言上表現が異なるものの、大孔を連通接続する同じ部位を指すことが明らかであるから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項4は、「明瞭でない記載の釈明」を目的として、本件訂正前の「開口したチャネル」との用語を、請求項1に前記された「小孔」との用語に統一するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的の適否 訂正事項5は、本件訂正前の請求項1に「前記小孔が、前記大孔の平均直径より小さい平均直径を有し」との記載を追加することで、本件訂正前の請求項1における「大孔」と「小孔」との平均直径の大小関係を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等の段落【0015】には、上記(4)イに示した事項に続いて、「これらの連通接続孔は、垂直孔の平均直径よりずっと小さい平均直径を有する。」とも記載されており、また、上記(2)イのとおり、本件特許明細書等では「連通接続孔」は「小孔」を、「垂直孔」は「大孔」を指すことが明らかであるから、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は、本件訂正前の請求項1における「大孔」と「小孔」との平均直径の大小関係を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的の適否 訂正事項6は、本件訂正前の請求項1の「前記下向きに傾斜した側壁が、前記各ピロー構造のすべての側面から伸長し」との記載では、「ピロー構造のすべての側面」がピロー構造のどの部位を指しているか必ずしも明確ではなく、そのため「側面から伸長」する態様も明確であったとはいえないところ、「前記下向きに傾斜した側壁が、前記各ピロー構造のすべての側壁に相当し」と訂正することで、「ピロー構造」における「すべての側壁」が「下向きに傾斜した側壁」であることを明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等の段落【0019】には、「ピロー構造は、研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、上部研磨表面からの下向きの表面を有する。ピロー構造は、研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、上部研磨表面からの下向きの表面を有する。下向きに傾斜した側壁は、ピロー構造のすべての側面から伸長する。・・・好ましくは、下向きに傾斜した側面は、ポリウレタンマトリックスの水平溝下部で終端し、溝下部がピロー構造を下回る多孔質を有する。」との記載、並びに【図5A】、【図5B】、【図7A】及び【図7B】からみて、ピロー構造のすべての側壁が下向きに傾斜した側壁であることが開示されているとわかることから、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、「ピロー構造」における「すべての側壁」が「下向きに傾斜した側壁」であることを明確化するものであり、下向きの表面(側面)を含めて「下向きに傾斜した側壁」が形成されるとの技術的事項が、本件訂正前の請求項1に包含されていたといえるから、訂正事項6は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的の適否 訂正事項7は、本件訂正前の請求項1における「下向きに傾斜した側壁に開口している大孔が・・・前記傾斜した側壁により直角の方向に前記垂直の方向から10~60度オフセットする」との記載において、特に「前記傾斜した側壁により直角の方向」とはいかなる方向であるか不明確であったところ、「前記下向きに傾斜した側壁に開口する前記大孔の方向が、前記下向きに傾斜した側壁に対して、より直角の方向になるように、前記垂直の方向から10~60度オフセットする」と訂正することで、その記載を明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項7は、「明瞭でない記載の釈明」を目的として、発明を正確に特定するために、その記載を明確にしたものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的の適否 訂正事項8は、本件訂正前の請求項2の「前記下向きに傾斜した側壁が、前記研磨表面から前記下向きに傾斜した側壁の方向に導かれるように計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する」との記載が、特に下線部の意味を明確に把握できず、不明確であったため、「前記下向きに傾斜した側壁が、前記上部研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有し、前記最初のテーパー区域は前記上部研磨表面に隣接する」と、より明確に記載するものであって、また、訂正事項1と同様に「上部研磨表面」に用語を統一するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項8は、本件特許明細書等の段落【0019】に「ピロー構造は、研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、上部研磨表面からの下向きの表面を有する。下向きに傾斜した側壁は、ピロー構造のすべての側面から伸長する。好ましくは、下向きに傾斜した側壁は、下向きに傾斜した側壁に通じる、研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する。」と記載されていることからみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項8は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (9)訂正事項9 ア 訂正の目的の適否 訂正事項9は、本件訂正前の請求項4の「前記連通接続された小孔」との記載を「連通接続された前記小孔」と「前記」の位置を適切にするための形式的な訂正をするとともに、「前記垂直な各孔」との用語を「前記大孔」と訂正することで、請求項4が引用する請求項1の記載と用語を統一して明確化するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項9のうち、本件訂正前の「前記垂直な各孔」との用語を「前記大孔」と用語を統一する訂正については、上記(2)イに示したとおり、本件特許明細書等では「大孔」は「垂直孔」とも表現されているところ、「垂直な各孔」が「垂直孔」を意図していることも令和3年11月29日提出の手続補正書による補正の経緯からみて明らかである。また、大孔の間を純水(流体)が流動することができるように、小孔が大孔の間を連通接続していることが本件特許明細書等を通じて全体として平仄のとれたものとして記載されていることも、上記(2)イにて述べたとおりである。してみると、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項9は、「明瞭でない記載の釈明」を目的として、「前記」の位置を形式的に訂正し、また、請求項1及び4における用語の統一を図るものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (10)訂正事項10 ア 訂正の目的の適否 訂正事項10のうち、本件訂正前の「前記研磨表面」との記載を「前記上部研磨表面」に変更する訂正は、訂正事項1による訂正と同様の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 また、本件訂正前の請求項1の「前記各ピロー構造が、前記研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、前記上部研磨表面から下向きの表面を有し」との記載における、下線部の「から」との記載により、 (ア)「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」は「(上部)研磨表面」から「(上部研磨表面に連続して)形成される」ことを特定するものであるのか、 (イ)「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」と「(上部)研磨表面」との間に、「最初のテーパー区域」が介在する請求項2のような構成を含み得るものであるのか、 いずれを意図しているのか不明であって、請求項1における「上部研磨表面」と「側壁」との関係が如何なるものであるのか、明確でなかったところ、訂正事項10により、 「前記上部研磨表面に対して30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、前記上部研磨表面に対して下向きの表面を有し」 と特定されることで、「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁」とが連続して形成されることに限定して解釈される(上記(ア))ものではなく、「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁」との間に「研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する」ことを含み得る(上記(イ))ことを明らかにするものであって、「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁」との関係をより明確にするための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等の段落【0019】に「ピロー構造は、研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、上部研磨表面からの下向きの表面を有する。下向きに傾斜した側壁は、ピロー構造のすべての側面から伸長する。好ましくは、下向きに傾斜した側壁は、下向きに傾斜した側壁に通じる、研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する。」と記載され、「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁」との間に「研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する」ことができる点が記載されているといえる。また、当該態様は、図5Aからも看取されるといえることから、訂正事項10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 本件訂正前の「前記各ピロー構造が、前記研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、前記上部研磨表面から下向きの表面を有し」との記載における下線部の「から」との記載が、上記アの(ア)とも(イ)とも解釈され得たため、「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁」との関係が明確でなかったところ、訂正事項10により、(イ)のように解釈される意図であったことが明確にされた。そして、本件特許明細書等の段落【0019】の記載や図5A等を考慮すれば、本件訂正前の請求項1が当該(イ)のようにも解釈し得たことは、決定の予告にて後述の第5の3の3-1に示す取消理由(上記アと同旨)が通知されたことからも明らかであるから、訂正事項10は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (11)訂正事項11、13及び14 ア 訂正の目的の適否 訂正事項11は、本件訂正前の請求項1の「多孔性ポリウレタン研磨パッド」が、「前記ピロー構造間に直線的に伸長する複数の溝」を有することを追加して特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、訂正事項13は、訂正事項11にて追加された「前記複数の溝」が「前記上部研磨表面に隣接して計測された平均幅を有」することを追加して特定し、訂正事項14は、同じく「前記複数の溝」が「固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝の前記幅にわたって通過する研磨くず除去滞留時間を有」することを追加して特定するものであるから、それぞれ、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等の段落【0016】には「通常、突出ランド領域は、複数の溝が突出ランド領域間に直線的に伸長する」と記載され、当該「突出ランド領域」が請求項1における「ピロー構造」と同じ部位を指すことは、段落【0016】及び【0019】等を含む本件特許明細書等を通じて全体として平仄のとれたものとして記載されている。また、同段落には、「溝は、研磨表面に隣接して計測された平均幅を有する」、及び、「複数の溝は、固定された速度で回転する半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が複数の溝の幅にわたって通過する研磨くず除去滞留時間を有する」とも記載されている。 よって、訂正事項11、13及び14は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてする訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項11、13及び14は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (12)訂正事項12 ア 訂正の目的の適否 訂正事項12は、本件訂正前の請求項1の「多孔性ポリウレタン研磨パッド」が「半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つを、研磨流体ならびに前記多孔性ポリウレタン研磨パッドと前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つとの間の相対運動で研磨するまたは平坦化するため」のものであることを追加して特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等の段落【0015】には、「本発明の研磨パッドは、半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つを、研磨流体ならびに研磨パッドと半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つとの間の相対運動で研磨するまたは平坦化するのに好適である。」と記載されている。 したがって、訂正事項12は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (13)訂正事項15 ア 訂正の目的の適否 訂正事項15は、本件訂正前の請求項1における「一連のピロー構造」の「上部研磨表面」が「非尖形上部」として形成されていることを追加して特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等の段落【0016】には、「複数のランド領域は、垂直孔を含有するポリマーマトリックスから研磨表面を形成する錐形または非尖形上部を有する。」と記載されている。ここで、「研磨表面」が「上部研磨表面」を指すことは、上記(1)にて示したとおりであり、「ランド領域」が「突出ランド領域」を意味し(段落【0016】)、よって「ピロー構造」と同じ部位を指すことも上記(11)にて示したとおりである。また、本件特許明細書等の段落【0016】に記載の「ポリマーマトリックス」が、請求項1における「多孔性ポリウレタンマトリックス」を意図することも、段落【0009】及び【0016】を含む本件特許明細書等を通じて全体として平仄のとれたものとして記載されているとわかる。 したがって、訂正事項15は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項15は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (14)訂正事項16 ア 訂正の目的の適否 訂正事項16は、本件訂正前の請求項1における「一連のピロー構造」が「前記固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝と隣接する前記一連のピロー構造にわたって通過する研磨滞留時間を有」することを追加して特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等の段落【0018】には、「複数の突出ランド領域は、固定された速度で回転する半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が複数の突出ランド領域にわたって通過する研磨滞留時間を有する。」と記載されている。ここで、「突出ランド領域」が「ピロー構造」と同じ部位を指すことは上記(11)にて示したとおりである。 したがって、訂正事項16は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項16は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (15)訂正事項17 ア 訂正の目的の適否 訂正事項17は、本件訂正前の請求項1における「上部研磨表面」の「平均幅」を、訂正事項13により追加して特定された「複数の溝」の「平均幅」と関係付けて特定するものであって、訂正事項14により追加して特定された「研磨くず除去滞留時間」と訂正事項16により追加して特定された「研磨滞留時間」との関係として、「前記一連のピロー構造が、前記一連のピロー構造の前記研磨滞留時間を低減させ、溝領域の前記研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、前記一連のピロー構造の前記上部研磨表面が、前記複数の溝の前記平均幅を下回る前記上部研磨表面の平均幅を有する」とさらに限定して特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書等の段落【0018】には、「複数の突出ランド領域は、突出ランド領域の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、複数の溝の平均幅を下回る平均幅を有する。」と記載されている。ここで、「突出ランド領域」が「ピロー構造」と同じ部位を指すことは上記(11)にて示したとおりである。 したがって、訂正事項17は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項17は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (16)訂正事項18及び19 ア 訂正の目的の適否 訂正前の請求項1の「多孔性ポリウレタン研磨パッド」は、「多孔性ポリウレタンマトリックス」及び「ピロー構造」を含み、「多孔性ポリウレタンマトリックス」及び「ピロー構造」の各構成の記載の最後にのみセミコロン「;」を付すべきところ、 (ア)「多孔性ポリウレタンマトリックス」及び「ピロー構造」の構成の記載の最後ではないところにセミコロン「;」が付され、 (イ)「ピロー構造」の構成の記載の最後にセミコロン「;」を付すべきところが、読点「、」が付されているため、 訂正事項18は、上記(ア)のセミコロン「;」を読点「、」に変更し、「連通接続され、」、「開口し、」及び「ピロー構造であって、」に訂正するものであり、訂正事項19は、上記(イ)の読点「、」をセミコロン「;」に変更し、「前記ピロー構造と;」に訂正するものである。 したがって、訂正事項18及び19は、内容の変更を伴わない誤記を訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項18は、セミコロン「;」を読点「、」に変更する訂正であり、訂正事項19は、読点「、」をセミコロン「;」に変更する訂正であって、訂正前の請求項1の内容を変更する訂正ではない。 したがって、訂正事項18及び19は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項18は、セミコロン「;」を読点「、」に変更する訂正であり、訂正事項19は、読点「、」をセミコロン「;」に変更する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。 (17)独立特許要件 本件特許異議の申立ては、全ての請求項1~4を対象としているので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項2、5及び11~17、並びに、誤記又は誤訳の訂正を目的とする訂正事項18~19に関して、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 4 申立人の訂正要件に対する主張について 申立人は、申立人意見書1において、訂正事項2、4、6及び9について、訂正要件違反である旨、主張する(第2~8ページ、3-2.)が、上記3(2)、(4)、(6)及び(9)に示したとおりであるから、訂正事項2、4、6及び9が訂正要件に違反しているとまではいえない。 また、申立人は、申立人意見書2において、訂正事項10について、訂正前の請求項1に係る発明の内容を実質的に拡張または変更するものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものではなく、訂正要件違反である旨、主張する(第2~6ページ、3-2.)が、上記3(10)ウに示したとおりであるから、訂正事項10が訂正要件に違反しているとまではいえない。 5 小括 上記3のとおり、訂正事項1~19に係る本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書2に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~4に係る発明は、訂正請求書2に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された、以下の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 多孔性ポリウレタン研磨パッドであって、: ベース表面から上向きに伸長し、上部研磨表面に開口している大孔を有する多孔性ポリウレタンマトリックスであって、 前記多孔性ポリウレタンマトリックス内で前記大孔が小孔と連通接続され、 前記小孔が前記大孔の間を連通接続し、 前記大孔の一部分が前記上部研磨表面に開口し、 前記小孔が、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を有し、 前記小孔が、前記大孔の平均直径より小さい平均直径を有し、 前記大孔が、垂直な配向を有して前記上部研磨表面に伸長する、 前記多孔性ポリウレタンマトリックスと; 前記大孔および前記小孔を包含する前記多孔性ポリウレタンマトリックスから形成された一連のピロー構造であって、 前記各ピロー構造が、前記上部研磨表面に対して30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、前記上部研磨表面に対して下向きの表面を有し、 前記下向きに傾斜した側壁が、前記各ピロー構造のすべての側壁に相当し、 前記大孔の一部分が、前記下向きに傾斜した側壁に開口しており、 前記下向きに傾斜した側壁に開口している前記大孔が、前記上部研磨表面に開口している前記大孔より垂直ではなく、前記下向きに傾斜した側壁に開口する前記大孔の方向が、前記下向きに傾斜した側壁に対して、より直角の方向になるように、前記垂直の方向から10~60度オフセットする 前記ピロー構造と; 前記ピロー構造間に直線的に伸長する複数の溝と; を含み、 前記多孔性ポリウレタン研磨パッドが、半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つを、研磨流体ならびに前記多孔性ポリウレタン研磨パッドと前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つとの間の相対運動で研磨するまたは平坦化するための前記多孔性ポリウレタン研磨パッドであり、 前記複数の溝が、前記上部研磨表面に隣接して計測された平均幅を有し、 前記複数の溝が、固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝の前記幅にわたって通過する研磨くず除去滞留時間を有し、 前記一連のピロー構造が、前記上部研磨表面を形成する非尖形上部を有し、 前記一連のピロー構造が、前記固定された速度で回転する前記半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が前記複数の溝と隣接する前記一連のピロー構造にわたって通過する研磨滞留時間を有し、 前記一連のピロー構造が、前記一連のピロー構造の前記研磨滞留時間を低減させ、溝領域の前記研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、前記一連のピロー構造の前記上部研磨表面が、前記複数の溝の前記平均幅を下回る前記上部研磨表面の平均幅を有する多孔性ポリウレタン研磨パッド。 【請求項2】 前記下向きに傾斜した側壁が、前記上部研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有し、前記最初のテーパー区域は前記上部研磨表面に隣接する、請求項1記載の多孔性ポリウレタン研磨パッド。 【請求項3】 前記下向きに傾斜した側壁が、前記多孔性ポリウレタンマトリックスの水平な溝の下部で終端し、前記溝の下部が、前記各ピロー構造を下回る多孔質を有する、請求項1記載の多孔性ポリウレタン研磨パッド。 【請求項4】 連通接続された前記小孔が、前記大孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する、請求項1記載の多孔性ポリウレタン研磨パッド。」 (以下、本件訂正後の請求項1~4に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。) 第4 当審より通知した取消理由について 1 本件特許の本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が取消理由通知にて特許権者に通知した取消理由1~2は、次のとおりである。 (1)理由1(実施可能要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)理由2(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 また、訂正請求書1に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される請求項1~4に係る特許に対して、当審が決定の予告にて特許権者に通知した取消理由A~Bは、次のとおりである。 (1)理由A(明確性要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)理由B(進歩性欠如)訂正請求書1に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される発明1~4は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の<証拠方法>に示す甲1号証に記載された発明、及び、例えば甲2号証~甲22号証に記載された技術常識又は周知技術に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 <証拠方法> 甲1号証:特開2015-199144号公報 甲2号証:ポリウレタン樹脂ハンドブック,昭和62年9月25日発行 甲3号証:「ポリウレタンのスポンジ構造」,昭和57年9月発行 (高分子論文集, Vol.39,No.9,pp. 543‐548) 甲4号証:特公昭40-20273号公報 甲5号証:特開2012-96344号公報 甲6号証:国際公開第2014/051104号 甲7号証:特開2011-148082号公報 甲8号証:特開2013-123780号公報 甲9号証:特開2013-208703号公報 甲10号証:特開2006-62058号公報 甲11号証:特開2009-83014号公報 甲12号証:詳説半導体CMP技術,平成13年1月10日発行 甲13号証:特開2004-358584号公報 甲14号証:特許第4948935号公報,平成24年6月6日発行 甲15号証:特許第5274286号公報,平成25年8月28日発行 甲16号証:特許第5297096号公報,平成25年9月25日発行 甲17号証:特開2014-79877号公報 甲18号証:特開2014-79878号公報 甲19号証:特許第5274285号公報,平成25年8月28日発行 甲20号証:特開2001-15461号公報 甲21号証:特許第3438410号公報,平成15年8月18日発行 甲22号証:特許第3311203号公報,平成14年8月5日発行 (以下「甲1号証」等を「甲1」等という。) 第5 取消理由通知及び決定の予告に基づく本件発明1~4に対する当審の判断 上記第2のとおり本件訂正は認められたところ、上記第3に示した本件発明1~4に係る特許が上記第4で示した取消理由1~2及び取消理由A~Bによって取り消されるべきものであるかについて、以下検討する。 1 取消理由1(特許法第36条第4項第1号:実施可能要件)について ・請求項1~4について (1)請求項1に記載された各用語について ア 本件訂正前の請求項1に記載された「研磨表面」、「多孔性ポリウレタンマトリックス」、「大孔」、「小孔」、「上部研磨表面」、「開口したチャネル」、「ピロー構造」、「下向きに傾斜した側壁」、「ピロー構造のすべての側面」、請求項3に記載された「溝」、請求項4に記載された「前記垂直な各孔」との各用語について、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とで用語が統一されていないため、取消理由通知にて対応関係の説明を求めたところ、権者意見書1において、以下の用語が同じものを示す旨、説明がされた(権者意見書1にて併記された本件特許明細書等の段落番号の転記は省略する。)。 (ア)「上部研磨表面」 「研磨表面」、「上方表面」、「その表面」、「上部表面」 (イ)「多孔性ポリウレタンマトリックス」 「開口セルポリマーマトリックス」、「ポリマーマトリックス」、「ポリウレタンマトリックス」、「多孔性マトリックス」、「マトリックス」 (ウ)「大孔」 「垂直な各孔」、「より大きい孔」、「垂直孔配向」、「垂直孔」、「開口垂直孔」、「開ロセル垂直孔」、「一次孔」 (エ)「小孔」 「開口したチャネル」、「開口チャネル」、「より小さい孔」、「連通接続孔」、「側孔」、「二次孔」 (オ)「ピロー構造」 「突出ランド領域」、「ランド領域」、「ピロー」、「ピロー構成」 (カ)「下向きに傾斜した側壁」 「テーパー状表面構造」、「下向きに傾斜した側面」、「テーパー状側壁」 (キ)「ピロー構造のすべての側面」 「ピロー構造のすべての側壁」 (ク)「溝」 「溝チャンネル」、「溝領域」、「連通接続溝」、「テーパー状溝」、「下部溝」 イ また、取消理由通知にて、請求項1に記載された上記アの各用語がどの部分に該当するか、図5A~7B、概略図を用いた説明を求めたところ、権者意見書1において、以下の図を用いた説明がされた。 (ア)概略図 「 [図:0001406670000001.jpg] 」 (イ)図5A 「 [図:0001406670000002.jpg] 」 (ウ)図5B 「 [図:0001406670000003.jpg] 」 (エ)図6A 「 [図:0001406670000004.jpg] 」 (オ)図6B 「 [図:0001406670000005.jpg] 」 ウ 上記ア及びイによる説明は、何ら不自然な点は見られず、本件特許明細書等の記載を総合してみれば、全体として平仄のとれたものであって、特許請求の範囲の記載と明細書及び図面との対応関係についても明らかとなったため、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。 (2)請求項1の「開口したチャネルが、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を有し」の点について ア 取消理由通知にて、本件訂正前の請求項1の「開口したチャネル」とは何か、「開口したチャネル」が「流体の輸送を可能にする」とはいかなることか、「十分な直径」とはいかなる直径か、「開口チャネル」の役割を含めて、発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づく説明を求めたところ、権者意見書1にて以下の旨の説明がなされた。 (ア)「開口したチャネル」は、上記(1)ア(エ)のとおり、発明の詳細な説明における「開口チャネル」、「小孔」、「側孔」と同じ部位を指す。 (イ)「流体」とは、発明の詳細な説明の例えば段落【0009】の記載から、「研磨流体」を意味し、「流体の輸送」とは研磨の際の「研磨流体の流れ」を意味する。また、請求項4及び段落【0020】に記載の「純水」は、「研磨流体(スラリー)」に含まれるものであり、「研磨流体(スラリー)」が「砥粒」と「純水から作られる液体」とを含むことは、当業者にとって技術常識である。 (ウ)「十分な直径」とは、段落【0020】の「大孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する連通接続された側孔」との記載から、「連通接続された側孔」(「開口したチャネル」、「小孔」)」の「平均直径」とは、研磨の際に「研磨流体(スラリー)」に含まれている「純水から作られる液体」が「側孔」(「開口したチャネル」、「小孔」)を通って「大孔」の間を流れることができるような寸法を意味していることを理解できる。 (エ)以上の記載から、請求項1の「開口したチャネルが、流体の輸送を可能にするのに十分な直径」とは、「小孔」の「平均直径」が「純水から作られる研磨液体」を通すのに十分な大きさであり、「砥粒」を通すには不十分な大きさであることを、当業者は理解できる。 (オ)「開口したチャネル(小孔)」の役割は、段落【0020】に「側壁で孔を開口したままにしておくことは、研磨くずの自由流動を可能にし、欠陥のさらなる減少を容易にする。好ましくは、多孔性ポリウレタン研磨パッドは、大孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する連通接続された側孔を含有する」と記載されるように、例えば、ある「大孔」に「研磨くず」が入った場合、「研磨くず」の体積分だけ「大孔」内の「研磨流体」(スラリー)を排出する必要があるところ、「開口したチャネル(小孔)」の「平均直径」が、純水から作られる液体を通すのに十分な大きさであることにより、「研磨流体」(スラリー)に含まれる純水の大孔の間ヘの流動を可能にすることで、「研磨くずの自由流動を可能にし、欠陥のさらなる減少を容易にする」ことと理解できる。 イ 上記アによる説明は、上記第2の3(2)に示した「前記小孔が前記大孔の間を連通接続し」との記載を追加する訂正事項2の訂正要件(特にイ欄)の判断、同(4)に示した「開口したチャネル」を「小孔」に訂正する訂正事項4の訂正要件(特にイ欄)の判断、並びに、同(5)及び(9)に示した「小孔」の「直径」及び「平均直径」に係る訂正についての訂正事項5及び訂正事項9の訂正要件(特にイ欄)の判断として示したように、本件特許明細書等の記載を総合してみれば、全体として平仄のとれたものであって、特許請求の範囲の記載と明細書及び図面との対応関係についても明らかとなったため、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1~4を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえる。 (3)小括 よって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~4を当該記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく実施することができる程度に記載されたものであるといえるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているため、取消理由通知にて示した取消理由1により、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由2(特許法第36条第6項第2号:明確性要件)について 2-1 請求項1~4について (1)「前記開口したチャネル」について ア 取消理由通知にて、本件訂正前の請求項1における「前記開口したチャネル」との記載について「開口したチャネル」が前記されておらず、何を指し示すのか明らかでない、旨の通知をした。 イ 特許権者は、本件訂正の訂正事項4(上記第2の1(4))のとおり、請求項1において「前記開口したチャネル」とあるのを「前記小孔」と訂正した。 ウ 本件訂正により、本件発明1~4では「小孔」との用語で統一されたことにより、発明が明確化された(上記第2の3(4)ア)。 (2)「大孔」と「小孔」との関係について ア 取消理由通知にて、「大孔」と「小孔」とは、孔のサイズに基づいて区別されるのか、研磨表面に開口している孔を「大孔」と称し、「大孔」を連通接続した孔を「小孔」と称して区別されるのか、明らかでない、旨の通知をした。 イ 特許権者は、本件訂正の訂正事項2(上記第2の1(2))にて、小孔が大孔の間を連通接続することを特定するとともに、訂正事項5(上記第2の1(5))にて、小孔が、大孔の平均直径より小さい平均直径を有していることを特定する訂正をした。 ウ 本件訂正により、本件発明1~4における「大孔」と「小孔」との関係が明確化された。 (3)「前記傾斜した側壁により直角の方向」との記載について ア 取消理由通知にて、「前記傾斜した側壁により直角の方向」とはいかなる方向であるのか、日本語の表現として不適当である旨の通知をした。 イ 特許権者は、本件訂正の訂正事項7(上記第2の1(7))にて、「下向きに傾斜した側壁に開口する大孔の方向」が、「下向きに傾斜した側壁に対して、より直角の方向になるように、垂直の方向から10~60度オフセットする」と、発明を正確に特定するために、その記載を訂正した。 ウ 本件訂正により、本件発明1~4において「下向きに傾斜した側壁に開口する大孔の方向」が明確化された(上記第2の3(7)ア、イ)。 2-2 請求項2における「最初のテーパー区域」について ア 取消理由通知にて、請求項2の「前記下向きに傾斜した側壁が、前記研磨表面から前記下向きに傾斜した側壁の方向に導かれるように計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する」との記載が、日本語の表現として不適当である旨の通知をした。 イ 特許権者は、本件訂正の訂正事項8(上記第2の1(8))にて、「前記下向きに傾斜した側壁が、前記上部研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有し、前記最初のテーパー区域は前記上部研磨表面に隣接する」と訂正をした。 ウ 本件訂正により、本件発明2において、下向きに傾斜した側壁が、上部研磨表面に隣接する位置に「最初のテーパー区域」を有するものであり、記載が明確化された(上記第2の3(8))。 2-3 小括 よって、本件発明1~4は、明確であるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているため、取消理由通知にて示した取消理由2により、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 3 取消理由A(特許法第36条第6項2号:明確性要件)について 3-1 請求項1における「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」との関係について ア 決定の予告にて、訂正請求書1による訂正後の請求項1の「前記各ピロー構造が、前記上部研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、前記上部研磨表面から下向きの表面を有し」と記載される事項に関して、 下線部の「から」との記載により、 (ア)「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」は「(上部)研磨表面」から「(上部研磨表面に連続して)形成される」ことを特定するものであるのか、 (イ)「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」と「(上部)研磨表面」との間に、「最初のテーパー区域」が介在する請求項2のような構成を含み得るものであるのか、 いずれを意図しているのか不明であって、請求項1における「上部研磨表面」と「側壁」との関係が明確でない旨の通知をした。 イ 特許権者は、本件訂正の訂正事項10(上記第2の1(10))にて、「前記各ピロー構造が、前記上部研磨表面に対して30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、前記上部研磨表面に対して下向きの表面を有し」と訂正をした。 ウ 本件訂正により、「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」との間に「最初のテーパー区域」を有するものを含み得ること、すなわち、上記ア(ア)及び(イ)の関係を含むことが明らかとなった(上記第2の3(10))。 3-2 請求項2における「上部研磨表面」、「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」、及び「5~30度の最初のテーパー区域」との関係について ア 決定の予告にて、訂正請求書1による訂正後の請求項2の「前記下向きに傾斜した側壁が、前記上部研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有し、前記最初のテーパー区域は前記上部研磨表面に隣接する」と記載される事項に関して、上記3-1のアと同様の理由により、「上部研磨表面」と「側壁」(「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」、及び、側壁が有する「5~30度の最初のテーパー区域」)との関係が明確でない旨の通知をした。 イ 特許権者は、本件訂正の訂正事項10により、上記3-1のイの訂正をした。 ウ 本件訂正により、本件発明1が、「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」との間に「5~30度の最初のテーパー区域」を含み得ることが明らかとなった。 エ 本件発明2は、訂正事項8により、「上部研磨表面」と「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」との間に「5~30度の最初のテーパー区域」を有することが特定されているところ、本件発明1とも整合し、上記3-1と同様の理由により明確である。 3-3 請求項1の記載を引用する請求項3~4について 請求項1の記載を引用する請求項3~4についても、本件訂正の訂正事項10により訂正された。 3-4 小括 よって、本件発明1~4は、明確であるから、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているため、決定の予告にて示した取消理由Aにより、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 4 取消理由B(特許法第29条第2項:進歩性欠如)について(1)本件発明1の認定 本件発明1は、上記第3に示した、訂正請求書2に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)甲1発明の認定 ア 甲1に記載された事項 甲1には、申立人が申立書の第13~24ページに摘記した事項(段落【0001】~【0002】、【0008】、【0012】~【0013】、【0029】~【0034】、【0036】~【0050】、【0053】~【0057】、【0060】~【0063】、【図1】~【図2】)がそれぞれ記載又は図示されるところ、特に、実施例の「研磨パッドB」に関して、【図2】に断面図が示されるとともに、段落【0054】には次のとおり記載されている。 (ア)段落【0054】 「【0054】 (研磨パッドB) 30質量%のポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ポリウレタン樹脂(100%モジュラス:3.5MPa)のDMF溶液100質量部に対して、粘度調整用のDMFの43部を混合し樹脂溶液を調製した。得られた樹脂溶液を用い、基材に樹脂溶液を塗布するときの塗布厚を1.30mmとして形成された成膜基材を、温度35℃の凝固液(水)中に30分浸漬することにより、成膜基材上に発泡ウレタンシートを作製した。成膜基材を剥離して得られた発泡ウレタンシートのスキン層側をバフ処理量0.12mmとしバフ番手♯180のサンドペーパーを使用してバフ処理を行った後、支持基材として厚み188μmのポリエチレンテレフタレート製の基材を貼りつけ、溝幅を1mm、溝間隔を3mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を、エンボス加工(加工圧力4.5MPa、加工(金型)温度145℃、加工時間120秒)により形成した。エンボス加工がされていない面に研磨定盤に固定するための両面テープを貼り合わせて研磨パッドBを製造した。」 (イ)【図2】 「 [図:0001406670000006.jpg] 」 イ 甲1に記載された事項からわかること 甲1に記載された事項から、次のことがわかる (ア)甲1の段落【0008】、【0013】、【0054】の記載、【図2】から、甲1には、研磨層としての発泡ポリウレタンシートを表面に備える「研磨パッドB」が記載されていることがわかる。 (イ)甲1の研磨パッドB(段落【0054】、【図2】)は、研磨パッドA(段落【0030】、【0053】、【図1】)と同様に、その上部の表面が「研磨面」として機能するものである(段落【0030】)。また、研磨パッドBの研磨層としての発泡ウレタンシートには、研磨パッドAの「表面(研磨面)から裏面(定盤貼り付け側の面)に向かって延びる(又は垂下する)気泡」(段落【0030】、【図1】)と同様の涙形状の「気泡」を有していることがわかる(段落【0029】、【図2】)。そして、当該「気泡」は、段落【0030】の上記記載、及び、【図2】(申立人が作成した以下の<図2-説明1>を参照。)に基づき、「基材表面から上向きに伸長し、上部の研磨面に開口している」とともに、「垂直な配向を有して上部の研磨面に伸長する」ともいえる。 <図2-説明1>(申立書25ページ) 「 [図:0001406670000007.jpg] 」 (ウ)甲1の【図2】(上記の<図2-説明1>、及び、申立人が作成した以下の<図2-説明2>を参照。)から、甲1の研磨パッドBの発泡ウレタンシートは、その内部に、「微細孔」を備えることが看取され(<図2-説明1>の「斑点」を参照)、当該「微細孔」は「気泡」の壁面にも形成されるといえる(例えば、<図2-説明2>の「小孔」を参照)。また、研磨パッドBの発泡ウレタンシートは、ウレタン樹脂含有溶液が塗布された基材を凝固液に浸漬・凝固して得られる(段落【0044】~【0046】の工程(c)、【0054】)ことから、「気泡」とともに無数の「微細孔」が当然に形成されるといえる。 してみると、甲1の発泡ウレタンシートは、その内部で「気泡が微細孔と連通接続され」るものといえる。 <図2-説明2>(申立人意見書19ページ) 「 [図:0001406670000008.jpg] 」 (エ)甲1の研磨パッドBの発泡ウレタンシートにおける「微細孔」の平均直径が気泡の平均直径よりも小さいことは、【図2】をみるまでもなく自明である。 (オ)甲1の段落【0054】の記載から、甲1の研磨パッドBは、エンボス加工により、発泡ウレタンシートに格子パターンの溝を形成するものであって、【図2】からみて、当該溝と溝との間には、その上部の表面が「研磨面」として機能する(上記(イ)を参照)枕型の領域(以下「枕型状構造」という。)が形成されていることが看取される。また、溝が格子状パターンで形成されることからみて、当該「枕型状構造」が発泡ウレタンシート上に一連となって複数形成されること、及び、当該「溝」が「枕型状構造」間に直線的に伸長することを理解できる。 (カ)甲1の【図2】から、甲1の「枕型状構造」の上部の研磨面は、凸形状を有するとともに、当該凸形状の研磨面に対して連続して弧状の下向きに傾斜した部分(以下「側方弧状壁」という。)を形成するために、研磨面に対して下向きの表面を有していることが看取できる。 また、甲1においては、凸形状の研磨面と側方弧状壁とは連続して形成されていて、その境界位置は不明であるものの、申立人が申立書において、以下の<図2-説明3>を用いて主張するように、研磨面に対して「30~60度の範囲を含む角度で」下向きに傾斜する側方弧状壁を形成したものが記載されていることがわかる。 補足すれば、甲1の段落【0054】には、格子パターンの溝を形成するにあたり、その溝の断面が矩形状となるようにエンボス加工によって形成することが記載されることからみて、当該側方弧状壁は、上記凸形状の研磨面から連続して弧状を有し、溝の底部付近では、底面に対してほぼ垂直の方向に伸長しているといえる。他方、凸形状の研磨面と側方弧状壁とは連続しており、その境界を示す記載等はないことから、枕型状構造のうち、どの部分が研磨面(枕型状構造の上部)で、どの部分が側方弧状壁であるかを認定し得る根拠は見当たらない。 <図2-説明3>(申立書26ページ) 「 [図:0001406670000009.jpg] 」 (キ)甲1の【図2】、並びに、上記(オ)及び(カ)によれば、甲1の発泡ウレタンシートに形成される溝は格子パターンであることから、四方の溝に隣接して形成される「枕型状構造」の「側方弧状壁」は、上部の凸形状の「研磨面」から四方すべての溝に向かってそれぞれ形成されていることが理解できる。そのため、甲1には、「下向きに傾斜した側方弧状壁が、各枕型状構造のすべての側方弧状壁に相当」することが記載されている、といえる。 (ク)甲1の【図2】(申立人が作成した以下の<図2-説明4>を参照。)によれば、甲1の気泡の一部分は、下向きに傾斜した側方弧状壁に開口していることがわかる(上記(カ)のとおり、凸形状の研磨面と側方弧状壁との境界位置は不明であるものの、例えば、50°の説明が付された「気泡」は、「研磨面」ではなく「側方弧状壁」に開口していると理解できる。)。 <図2-説明4>(申立書27ページ) 「 [図:0001406670000010.jpg] 」 (ケ)上記(イ)のとおり「上部の研磨面に開口している気泡」は、垂直な配向を有して上方に伸長している(【図2】、<図2-説明4>の垂直孔の説明が付された気泡を参照。)のに対し、甲1の【図2】から、上記(ク)の「側方弧状壁に開口している気泡」は、垂直ではなく斜めの方向に開口している(【図2】、<図2-説明4>の23°、27°、50°の説明が付された各気泡を参照。)ことがわかる。また、側方弧状壁に開口する気泡の方向は、側方弧状壁に対して、より直角の方向になるように伸長しており、「上部の研磨面に開口している気泡」の伸長する垂直の方向(【図2】の上下方向)からは斜めにオフセットしていることがわかる。 (コ)甲1の段落【0054】の「溝幅を1mm、溝間隔を3mmとした断面矩形状で格子パターンの溝」との記載、及び、甲1の【図2】からみて、甲1に記載の発泡ウレタンシートにおいて、複数の溝が何かしらの平均幅を有すること、また、枕型状構造の上部である凸形状の研磨面が何かしらの平均幅を有することがわかる。 ただし、甲1においては、枕型状構造のうち、どの範囲までが研磨面として作用するのか明示的な記載がないことから、複数の溝の平均幅と、複数の枕型状構造の研磨面の平均幅との大小関係については不明である。 ウ 甲1発明 甲1に記載された事項(上記アに示した段落番号、図番号等を参照)、及び、上記イに示した事項を本件発明1に倣って整理すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる(なお、括弧内には相当関係にある本件発明1の発明特定事項、甲1又は上記イの参照箇所を示している。)。 「研磨層としての発泡ウレタンシートを表面に備えた研磨パッドB(多孔性ポリウレタン研磨パッド)であって(上記イ(ア))、: 基材(ベース)表面から上向きに伸長し、上部の研磨面(上部研磨表面)に開口している気泡(大孔)を有する発泡ウレタンシート(多孔性ポリウレタンマトリックス)であって(上記イ(イ))、 前記発泡ウレタンシート(多孔性ポリウレタンマトリックス)内で前記気泡(大孔)が微細孔(小孔)と連通接続され(上記イ(ウ))、 前記気泡(大孔)の一部分が前記上部の研磨面(研磨表面)に開口し(上記イ(イ))、 前記微細孔(小孔)が、前記気泡(大孔)の平均直径より小さい平均直径を有し(上記イ(エ))、 前記気泡(大孔)が、垂直な配向を有して前記上部の研磨面(上部研磨表面)に伸長する(上記イ(イ))、 前記発泡ウレタンシート(多孔性ポリウレタンマトリックス)と; 前記気泡(大孔)および前記微細孔(小孔)を包含する前記発泡ウレタンシート(多孔性ポリウレタンマトリックス)から形成された一連の枕型状構造(ピロー構造)であって(上記イ(オ))、 前記各枕型状構造(ピロー構造)が、前記上部の研磨面(上部研磨表面)に対して30~60度の範囲を含む角度(30~60度の角度)で下向きに傾斜した側方弧状壁(側壁)を形成するために、前記上部の研磨面(上部研磨表面)に対して下向きの表面を有し(上記イ(カ))、 前記下向きに傾斜した側方弧状壁(側壁)が、前記各枕型状構造(ピロー構造)のすべての側方弧状壁(側壁)に相当し(上記イ(キ))、 前記気泡(大孔)の一部分が、前記下向きに傾斜した側方弧状壁(側壁)に開口しており(上記イ(ク))、 前記下向きに傾斜した側方弧状壁(側壁)に開口している前記気泡(大孔)が、前記上部の研磨面(上部研磨表面)に開口している前記気泡(大孔)より垂直ではなく、前記下向きに傾斜した側方弧状壁(側壁)に開口する前記気泡(大孔)の方向が、前記下向きに傾斜した側方弧状壁(側壁)に対して、より直角の方向になるように、前記垂直の方向からオフセットする(上記イ(ケ)) 前記枕型状構造(ピロー構造)と; 前記枕型状構造(ピロー構造)間に直線的に伸長する複数の溝(上記イ(オ))と; を含み、 前記研磨パッドB(多孔性ポリウレタン研磨パッド)が、半導体デバイスなどの材料(半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つ)を、スラリー(研磨流体)ならびに前記研磨パッドB(多孔性ポリウレタン研磨パッド)と前記半導体デバイスなどの材料(半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つ)との間の相対運動で研磨するまたは平坦化するための前記研磨パッドB(多孔性ポリウレタン研磨パッド)であり(段落【0002】、【0054】)、 前記複数の溝が、前記上部の研磨面(上部研磨表面)に隣接して計測された平均幅を有し(上記イ(コ))、 前記一連の枕型状構造(ピロー構造)が、前記上部の研磨面(上部研磨表面)を形成する凸形状上部を有し(上記イ(カ))、 前記一連のピロー構造の前記上部研磨表面が、前記上部研磨表面の平均幅を有する(上記イ(コ)) 研磨層としての発泡ウレタンシートを表面に備えた研磨パッドB(多孔性ポリウレタン研磨パッド)。」 (3)本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下の相違点1~7で相違し、その余の点で一致する。 <相違点> ア 相違点1 本件発明1においては、小孔が「大孔の間」を連通接続しているのに対して、 甲1発明においては、微細孔(小孔)が「気泡(大孔)」に連通接続しているものの、「気泡(大孔)の間」を連通接続しているかまでは、不明である点。 イ 相違点2 本件発明1においては、小孔が、「流体の輸送を可能にするのに十分な直径」を有しているのに対して、 甲1発明においては、微細孔(小孔)の直径がどの程度であるのか、不明である点。 ウ 相違点3 本件発明1においては、側壁に開口する大孔の方向が、「垂直の方向から10~60度オフセット」しているのに対して、 甲1発明においては、側方弧状壁(側壁)に開口する気泡(大孔)の方向が、側方弧状壁(側壁)に対して、より直角の方向になるように、前記垂直の方向からオフセットしているものの、そのオフセットされた角度が本件発明1にて特定される数値範囲に含まれるか、不明である点。 エ 相違点4 本件発明1においては、「複数の溝」が、固定された速度で回転する半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が複数の溝の幅にわたって通過する「研磨くず除去滞留時間」を有するのに対し、 甲1発明においては、「研磨くず除去滞留時間」を有するか、不明である点。 オ 相違点5 本件発明1においては、「一連のピロー構造」が、上部研磨表面を形成する「非尖形上部」を有しているのに対し、 甲1発明においては、「一連の枕型状構造(ピロー構造)」が、上部の研磨面(上部研磨表面)を形成する「凸形状上部」を有している点。 カ 相違点6 本件発明1においては、「一連のピロー構造」が、固定された速度で回転する半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が複数の溝の幅と隣接する一連のピロー構造にわたって通過する「研磨滞留時間」を有するのに対し、 甲1発明においては、「研磨滞留時間」を有するか、不明である点。 キ 相違点7 本件発明1においては、「一連のピロー構造」が、「前記一連のピロー構造の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるため」に、「複数の溝の平均幅を下回る上部研磨表面の平均幅」を有するのに対し、 甲1発明においては、凸形状上部を有する「一連の枕型状構造(ピロー構造)」が、何かしらの「上部の研磨面の平均幅」を有するものの、その平均幅が「複数の溝の平均幅を下回る」かは不明であり、「研磨滞留時間」を低減させ、「研磨くず除去滞留時間」を「研磨滞留時間」より大きい値まで増加させるために、平均幅が設定されるのかも不明である点。 (4)当審の相違点に対する判断 事案に鑑み、まず、相違点7について検討する。 ア 本件発明1における、「研磨くず除去滞留時間」及び「研磨滞留時間」との発明特定事項は、それぞれ、半導体基板等上の任意の点が「溝の幅」及び「ピロー構造の上部研磨表面の幅」を通過するために要する時間、すなわち、「溝の幅」及び「ピロー構造の上部研磨表面の幅」を半導体基板等の回転する速度で除した時間であって、速度が固定であることから、「溝の幅」及び「ピロー構造の上部研磨表面の幅」に相関する値であることがわかる。 そして、それぞれの「幅」は、半導体基板等上の任意の点が固定の速度で回転する時の「溝の幅」及び「ピロー構造の上部研磨表面の幅」を通過するために要する時間を算出するためのパラメータであることから、研磨加工時における「幅」であることがわかる。 その上で、本件発明1において特定される「複数の溝の平均幅」と「上部研磨表面の平均幅」との大小関係は、非研磨加工時における「上部研磨表面の平均幅」が「複数の溝の平均幅」よりも単に小さいだけでは、こと足りず、研磨加工時におけるピロー構造の変形等も考慮して「一連のピロー構造の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させる」関係となる程度に、非研磨加工時における「前記複数の溝の平均幅」を下回る「前記上部研磨表面の平均幅を有する」ことを特定するものであると解するのが妥当である。 イ 他方、甲1発明においては、研磨加工時の「溝の幅」を「枕型状構造(ピロー構造)の上部の研磨面(上部研磨表面)の幅」よりも大きくすることについて、甲1に記載も示唆もされておらず、むしろ、段落【0029】の「研磨加工時に研磨パッドが変形し易く」との記載や、段落【0054】の「溝幅を1mm、溝間隔を3mmとした断面矩形状で格子パターンの溝を、エンボス加工・・・により形成した」との記載からみて、研磨加工時においても枕型状構造(ピロー構造)の上部の研磨面(上部研磨表面)の幅が溝の幅よりも大きくなることを想定しているものであるとも解される。 ウ そして、甲2~甲22のいずれにも、「一連のピロー構造が、一連のピロー構造の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を前記研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、前記複数の溝の平均幅を下回る前記上部研磨表面の平均幅を有する」に相当する技術思想が開示されておらず、また、当該技術思想が技術常識であるとも、周知技術であるとも裏付ける根拠がない。また、仮にそのような技術思想が公知であったとしても、甲1発明において、研磨加工時の「溝の幅」が「一連のピロー構造の上部の研磨面の幅」よりも大きくなるようにするという、相違点7に係る本件発明1の当該技術思想を適用することを動機付ける記載や示唆は見当たらない。 エ 以上のとおりであるから、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、少なくとも上記相違点7の点で、甲1発明、並びに、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 (5)本件発明2~4について 本件発明2~4は、本件訂正後の請求項1の記載を引用する発明であって、本件発明1の発明特定事項を全て含むから、本件発明1と同様に、本件発明2~4についても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)小括 よって、本件発明1~4は、甲1に記載された発明、並びに甲2~甲22に記載された周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、決定の予告にて示した取消理由Bにより、本件発明1~4に係る特許を取り消すことはできない。 第6 申立人が主張するその他の申立ての理由について 1 申立書による申立ての理由 申立人は、申立書において、以下の取消理由を申立てているところ、上記第2及び第5に示したとおり、理由がない。 (1)理由1(第6~9ページ) 明確性要件違反、実施可能要件違反、新規事項の追加、及びサポート要件違反 上記第5の1(1)及び(2)に示したとおり、本件特許は、実施可能要件を満たすものである。また、上記第2の2(2)イ及び(4)イに示したように、新規事項の追加に該当せず、サポート要件を満たすものでもある。さらに、上記第5の2の2-1(1)に示したように、明確性要件を満たすことも明らかである。 (2)理由2(第9~11ページ) 実施可能要件違反、サポート要件違反、及び明確性要件違反 上記第5の1(1)に示したとおり、本件特許は、実施可能要件を満たすものである。また、上記第2の2(2)イに示したようにサポート要件を満たすものであり、さらに、上記第5の2の2-1(1)に示したように、明確性要件を満たすものでもある。 (3)理由3(第11~12ページ) 明確性要件違反 上記第5の2の2-1(3)に示したとおり、本件特許は、明確性要件を満たすものである。 (4)理由4(第12~13ページ) 新規事項の追加、明確性要件違反、実施可能要件違反、及びサポート要件違反 上記第2の2(8)イに示したように、本件特許は、新規事項の追加に該当せず、サポート要件を満たすものでもある。また、上記第5の2の2-2のとおり、請求項2の記載は明確化され、実施可能要件も満たすものである。 (5)理由5(第13~68ページ) 進歩性欠如 上記第5の4のとおり、本件訂正後の本件発明1~4は、甲1に記載された発明、並びに甲2~甲22に記載された周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。 2 申立人意見書1による申立ての理由 申立人は、申立人意見書1において、訂正請求書1による訂正により、以下の新たな取消理由を申立てているところ、上記第5に示したとおり、理由がない。 (1)訂正事項8により生じる新たな理由(第15~16ページ、3-4.) 明確性要件違反 上記第5の3の3-2に示したように、本件発明2は明確であるから、本件特許は、明確性要件を満たすものである。 3 申立人意見書2による申立ての理由 申立人は、申立人意見書2において、訂正請求書2による本件訂正により、以下の新たな取消理由を申立てているところ、以下のとおり、理由がない。 (1)訂正事項10により生じる新たな理由(第6~7ページ、3-4.(2)) サポート要件違反 ア 申立人は、訂正事項10が許容される場合、訂正後の請求項1においては、「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」と「上部研磨表面」との間に、請求項2において規定する「5~30度の最初のテーパー区域」が存在することを許容するだけではなく、それ以外の様々な形状の領域(様々な角度のテーパー領域あるいは弧状領域)を様々な長さにおいて含む態様を許容するものとなる。その場合、「パッド誘発性欠陥をさらに低減させ研磨速度を増加させる」(段落【0008】)との本件発明が解決しようとする課題を解決し得ない態様が本件発明1の発明の範囲に含まれることとなるから、サポート要件を満たさない旨、主張する。 イ しかしながら、請求項1における訂正事項10に係る発明特定事項は、「上部研磨表面」に対して「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁」を形成することを特定し明確にしているにすぎず、本件発明が解決しようとする課題を解決できないような「30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁(下向きの表面)」と「上部研磨表面」との間の様々な形状・長さを特定するものではないことは本件特許明細書等を参酌すれば明らかである。してみると、当該訂正事項10に係る発明特定事項にて請求項1を特定したことをもって、本件発明1が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである、とはいえない。 (2)訂正事項6及び10により生じる新たな理由(第7~8ページ、3-4.(3)) 明確性要件違反 ア 申立人は、訂正事項6及び10により、本件発明1は「前記上部研磨表面に対して30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁が、前記各ピロー構造のすべての側壁に相当し」なる記載に訂正されたことに等しいものの、訂正事項10では、「5~30度の最初のテーパー区画」等を含む側壁を有する態様を許容しており、両者は矛盾することから本件発明1及び2は明確でない旨、主張する。 イ しかしながら、上記第5の3-2で示したとおり、本件発明1と本件発明2は整合し、本件発明1~2は明確であるから、本件特許は、明確性要件を満たすものである。 (3)訂正事項10及び15により生じる新たな理由(第8~10ページ、3-4.(4)) 明確性要件違反 ア 申立人は、次の旨を主張する。 「訂正事項15により、本件発明1は「上部研磨表面」が「非尖形上部」を有すると訂正している。一般的に「非尖形」とは「先端・先が尖った形」(甲23-1、甲23-2)ではないことを意味することから、断面が曲線で構成される、半球形、ドーム型、あるいは弧状形状といった形状が「非尖形」に含まれることとなる。他方、訂正事項10は、「上部研磨表面」に対して「下向きに傾斜した側壁」が30~60度の角度であることを規定することから、所定の角度を決める基準となる「上部研磨表面」は平面であると考えられるところ、「上部研磨表面」は平面であるのか、非尖形であるのか不明である。」 イ しかしながら、以下の点を総合してみれば、本件訂正後の請求項1における「非尖形上部」とは、先が尖った形ではない上部であって、実質的に平面形状を意味するものと解釈することができるから、明確でないとはいえない。 (ア)本件特許明細書等の段落【0016】の「複数の溝内の複数の突出ランド領域は、複数の突出ランド領域の研磨表面の上部または平面から外側かつ下側に伸長するテーパー状支持構造で支えられる。好ましくは、研磨表面の平面から計測された30~60度の傾斜である。」との記載を参酌すれば、「上部研磨表面」に対して「下向きに傾斜した側壁」が30~60度の角度を有することを特定している本件発明1の「上部研磨表面」は、実質的に平面形状であるといえること。 (イ)本件特許明細書等の段落【0018】の「複数の突出ランド領域は、突出ランド領域の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、複数の溝の平均幅を下回る平均幅を有する。」との記載を参酌すれば、「上部研磨表面」は所定の幅を有することが規定されるところ、仮に甲1の図2のように、上部研磨表面と側壁とが連続した曲線である場合に、「上部研磨表面」の「幅」を特定することができないこと。 (ウ)本件特許明細書等の段落【0019】の「好ましくは、下向きに傾斜した側壁は、下向きに傾斜した側壁に通じる、研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する。」との記載を参酌すれば、「上部研磨表面」は5度(最初のテーパー区域)よりも小さな傾きであり、実質的に平面形状であるといえること。 (エ)本件特許明細書等の段落【0016】に「複数のランド領域は、垂直孔を含有するポリマーマトリックスから研磨表面を形成する錐形または非尖形上部を有する。通常、突出ランド領域は、複数の溝が突出ランド領域間に直線的に伸長する、半球形、錐形-ピラミッド形、錐形-台形およびそれらの組み合わせから選択される形状を有する。」と記載されるところ、本件訂正の訂正事項15は、本件特許の関連特許である特許7010619号に対する特許異議申立事件(異議2022-700716号)において訂正事項4として訂正された内容に準じて訂正されたものである。当該異議事件では、訂正事項4として、「錐形または非尖形上部」との選択事項から「非尖形上部」に限定し、合わせて訂正事項6として、「半球形、錐形-ピラミッド形、錐形-台形およびそれらの組み合わせ」との選択事項から「錐形-台形」に対応する「四角錐台」のみに限定し、「半球形」等をその対象から削除していることからみても、「非尖形上部」に「半球形」を含まないことを意図していた、といえること。 (オ)権者意見書2において、甲1の図2に示されるような凸形状が、本件発明1の「上部研磨表面」とは異なることを主張していること。 ウ なお、申立人は申立人意見書2の第9~10ページにおいて、図5Aの研磨パッドと、当該図5Aを左右反転させた図とを重ね合わせた以下の説明図をもって、上部研磨表面がどの部分に相当するか不明であり、中央部分が「尖形」状であるようにもみえる旨の指摘をするものの、当該図は申立人が仮定したものにすぎず、特許請求の範囲や発明の詳細な説明には、上部研磨表面が非尖形であることが明記され、上述のとおり実質的に平面形状を意味するものと解されることから、当該説明図に基づく主張に首肯することはできない。 <申立人意見書2説明図>(申立人意見書2の第10ページ) 「 [図:0001406670000011.jpg] 」 エ したがって、本件訂正の訂正事項10と訂正事項15とは矛盾するものではなく、本件発明1における「上部研磨表面」は非尖形であって平面であることが明確であるから、本件発明1は明確であり、本件特許は、明確性要件を満たすものである。 第7 むすび 以上のとおり、請求項1~4に係る特許は、取消理由通知及び決定の予告に記載した取消理由、並びに、特許異議申立書及び申立人意見書1~2に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700718

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同じ当事者の審決35件(ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド、猪狩 充)
  • 2022-700716異議申立 / 2023-06-06 / 訂正認容低欠陥多孔性研磨パッド
    同じ当事者: ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド、猪狩 充
  • 2022-701115異議申立 / 2026-04-15 / 訂正認容ポリイミドフィルム
    同じ当事者: 猪狩 充
  • 2025-700697異議申立 / 2026-04-06 / 訂正認容調味組成物
    同じ当事者: 猪狩 充
  • 2024-700189異議申立 / 2025-03-28 / 訂正認容ビールテイスト飲料
    同じ当事者: 猪狩 充
  • 2023-700986異議申立 / 2024-03-22 / 訂正認容ビールテイスト飲料
    同じ当事者: 猪狩 充
同じ論点・分野の審決(審決分類)117件(121・B24B、536・B24B、537・B24B ほか)
  • 2023-017342拒絶査定不服審判 / 2025-03-19 / 原査定取消(特許/登録すべき)基板処理システムのための平坦化膜および方法
    共通の審決分類: 121・B24B、536・B24B、537・B24B、55・B24B
  • 2025-700131異議申立 / 2025-11-18 / 訂正認容研磨パッド、その製造方法、及び研磨加工物の製造方法
    共通の審決分類: 121・B24B、536・B24B、537・B24B
  • 2024-701070異議申立 / 2025-11-13 / 訂正認容研磨パッド、その製造方法、及び研磨加工物の製造方法
    共通の審決分類: 121・B24B、536・B24B、537・B24B
  • 2023-701381異議申立 / 2025-09-17 / 訂正認容保持パッド及びその製造方法
    共通の審決分類: 121・B24B、536・B24B、537・B24B
  • 2023-701112異議申立 / 2024-07-16 / 訂正認容保持パッド及びその製造方法
    共通の審決分類: 121・B24B、536・B24B、537・B24B

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