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特許異議申立

2021-700964

遷移金属/ゼオライトSCR触媒

審判番号
2021-700964
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-220918
登録番号
6855432
請求日
2021年10月07日
審決日
2023年09月26日
公報発行日
2023年12月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
  • 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
  • 【異議申立人】森田 弘潤
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 後藤 政博
  • 審判官 増山 淳子
分類
P1651.121-YAA(B01J) / P1651.16 -YAA(B01J) / P1651.536-YAA(B01J) / P1651.537-YAA(B01J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第184条の4第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第184条の4第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6855432号発明「遷移金属/ゼオライトSCR触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6855432号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕、〔10~13〕について訂正することを認める。 特許第6855432号の請求項1~13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 経緯 特許第6855432号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、以下の出願A~Dの順でそれぞれ特許出願とされたもののうちの出願Dであって、令和3年3月19日に特許の設定登録がされ、同年4月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1~13に係る特許に対して、同年10月7日に特許異議申立人 森田弘潤(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 (出願A)2008年(平成20年)4月24日(パリ条約による優先権主 張外国庁受理 2007年4月26日 英国)を国際出願日とする特願2 010-504833号 (出願B)出願Aの一部を平成26年9月11日に新たな特許出願とした特 願2014-185086号 (出願C)出願Bの一部を平成28年9月26日に新たな特許出願とした特 願2016-187204号 (出願D)出願Cの一部を平成30年11月27日に新たな特許出願とし た特願2018-220918号 本件特許異議の申立ての後の経緯は、次のとおりである。 令和 4年 2月16日付け 取消理由通知 同年 4月28日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出 同年 7月 5日 異議申立人による意見書の提出 同年 9月 6日付け 取消理由通知(決定の予告) 同年12月13日 特許権者による意見書の提出 第2 訂正の適否について 1 訂正請求の趣旨 令和4年4月28日に提出された訂正請求書による訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9及び10~13について訂正することを求めることを趣旨とする。 2 訂正事項について 2-1 請求項1~9について (1) 訂正の内容 ア 特許請求の範囲の請求項1において、「一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための少なくとも一つの白金族金属を含む酸化触媒が、流れる排気ガスに窒素系還元剤を計量するための手段の上流に配置されている、」と記載されているのを、「一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための少なくとも一つの白金族金属を含む酸化触媒が、流れる排気ガスに窒素系還元剤を計量するための手段の上流に配置されていて、白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである、」に訂正する。(以下、「訂正事項A」という。) イ 特許請求の範囲の請求項5において、「フロースルーモノリス基材またはフィルターモノリス基材」と記載されているのを、「フロースルーモノリス基材又はフィルターモノリス基材」とする。(以下、「訂正事項B」という。)(上記ア、イにおいて、下線部は、訂正箇所である。) (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項Aについて (ア)訂正の目的について 「酸化触媒」について、訂正前は「少なくとも一つの白金族金属を含む」ものであったのを、訂正後に「少なくとも一つの白金族金属を含む」ことに加えて当該「白金族金属」が「白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである」ことを特定するものであって、「白金族金属」をより限定的に特定するものといえる。 したがって、訂正事項Aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の規定に適合する。 (イ)新規事項の有無について 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許明細書等」ともいう。)の【0068】には「酸化触媒は、フロースルーモノリス基材上に塗布された、少なくとも一種の白金族金属(またはそれらの幾つかの組合せ)、例えば白金、パラジウムまたはロジウム、を含むことができる。一実施態様では、少なくとも一種の白金族金属は、白金、パラジウムまたは白金とパラジウムの組合せである。白金族金属は、高表面積ウォッシュコート成分、例えばアルミナ、ゼオライト、例えばアルミノケイ酸塩ゼオライト、シリカ、非ゼオライトシリカアルミナ、セリア、ジルコニア、チタニアまたはセリアとジルコニアの両方を含む混合または複合酸化物、上に担持することができる。」と記載されている。 上記箇所の記載からは、「少なくとも一種の白金族金属(またはそれらの幾つかの組合せ)」の例として「白金、パラジウムまたはロジウム」を含み、また、その「一実施態様」として「少なくとも一種の白金族金属」は「白金、パラジウム、または白金とパラジウムの組合せ」を採用し得ることが理解される(下線は当審が付記した。)。 そうすると、訂正後の「白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである」ことは、本件特許明細書等に記載されていたといえる。 したがって、訂正事項Aは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項Aは「白金族金属を含む酸化触媒」について、「白金族金属」をより限定的に特定したにすぎないから、発明のカテゴリーや対象、目的を拡張又は変更する訂正ではないといえる。 したがって、訂正事項Aは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 イ 訂正事項Bについて 訂正事項Bは、「または」を「又は」に訂正するもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないことも明らかであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3) 一群の請求項について 訂正事項A及びBに係る訂正前の請求項1~9について、請求項2~9は、直接又は間接的に請求項1を引用するから、請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、請求項〔1~9〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 2-2 請求項10~13について (1) 訂正の内容 ア 特許請求の範囲の請求項10において、「排気ガス中の一酸化窒素が、合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒の上流に位置する、少なくとも1つの白金族金属を含む酸化触媒を使用して二酸化窒素に酸化され、その後、得られたガスが窒素系還元剤と混合され、それから混合物が合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒に供給される、」と記載されているのを、「排気ガス中の一酸化窒素が、合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒の上流に位置する、少なくとも1つの白金族金属を含む酸化触媒を使用して二酸化窒素に酸化され、その後、得られたガスが窒素系還元剤と混合され、それから混合物が合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒に供給され、白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである、」に訂正する。(以下、「訂正事項C」という。) イ 特許請求の範囲の請求項10において、「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライトがモノリス基材上にコーティングされ、」と記載されているのを、「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒がモノリス基材上にコーティングされ、」に訂正する。(以下、「訂正事項D」という。) ウ 特許請求の範囲の請求項12において、「請求項10または11に記載の方法」と記載されているのを、「請求項10又は11に記載の方法」に訂正する。(以下、「訂正事項E」という。) (上記ア~ウにおいて、下線部は、訂正箇所である。) (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項Cについて 訂正事項Cは、訂正事項Aと同様の訂正であるから、「(ア)訂正の目的について」、「(イ)新規事項の有無について」及び「(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について」の判断については、上記「2-1(2) ア 訂正事項Aについて」と同様である。 したがって、訂正事項Cは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正でもないから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、同条第9項で準用する同法第126条第5及び第6項の規定に適合する。 イ 訂正事項Dについて (ア)訂正の目的について 訂正前の請求項10は「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒の存在下で、窒素酸化物を窒素系還元剤と接触させることにより車両リーンバーン内燃機関における燃料の燃焼に由来する排気ガス中の窒素酸化物を窒素に変換する方法であって、・・・ 合成アルミノシリケート小細孔ゼオライトがモノリス基材上にコーティングされ、排気ガス中の一酸化窒素が、合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒の上流に位置する、少なくとも1つの白金族金属を含む酸化触媒を使用して二酸化窒素に酸化され、その後、得られたガスが窒素系還元剤と混合され、それから混合物が合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒に供給される、方法。」と記載され、モノリス基材上にコーティングされる「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト」が触媒であることが明瞭でなかったところを、「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」と訂正して、他の「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」の記載との整合を図るものである。 したがって、訂正事項Dは、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号の規定に適合する。 (イ)新規事項の有無について 訂正事項Dは「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト」を「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」と訂正するものであり、「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」という記載は訂正前に既に請求項10に記載されていたものである。 したがって、訂正事項Dは、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項Dは「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト」を「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」として、既にあった記載に整合させるものにすぎないから、発明のカテゴリーや対象、目的を拡張又は変更する訂正ではないといえる。 したがって、訂正事項Dは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。 ウ 訂正事項Eについて 訂正事項Eは、「または」を「又は」に訂正するもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないことも明らかであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号、同条第9項で準用する同法第126条第5及び第6項の規定に適合する。 (3) 一群の請求項について 訂正事項C~Eに係る訂正前の請求項10~13について、請求項11~13は、直接又は間接的に請求項10を引用するから、請求項10に連動して訂正されるものである。 したがって、請求項〔10~13〕は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、請求項〔1~9〕について、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、また、請求項〔10~13〕について、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、訂正後の請求項〔1~9〕、〔10~13〕について訂正するこ とを認める。 第3 本件発明について 本件訂正請求により特許請求の範囲に記載された請求項は、訂正後の請求項〔1~9〕、〔10~13〕に訂正されたので、本件の特許請求の範囲の請求項1~13に係る発明は、以下に示す訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13に記載されるとおりのものである(以下、請求項の番号に則して「本件発明1」~「本件発明13」、総称して「本件発明」と記すことがある。下線部は、本件訂正請求により訂正された箇所を示す。)。 「【請求項1】 車両リーンバーン内燃機関のための排気システムであって、 流れる排ガスを通過させる導管と、 窒素系還元剤の供給源と、 8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、8個の四面体原子による最大環サイズを含み、CHA骨格型コードであり、銅からなる少なくとも一つの遷移金属を含み、排ガスの流路中に配置されたモノリス基材上にコートされた、合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒と、 窒素系還元剤の供給源から、合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒の上流で流れる排気ガス中に窒素系還元剤を計量供給するための手段を備え、 一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための少なくとも一つの白金族金属を含む酸化触媒が、流れる排気ガスに窒素系還元剤を計量するための手段の上流に配置されていて、白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである、排気システム。 【請求項2】 CHA骨格型コード合成アルミノシリケート小細孔ゼオライトが、SSZ-13である、請求項1に記載の排気システム。 【請求項3】 合成アルミノシリケート小細孔ゼオライトがイオン交換銅を含む、請求項1又は2記載の排気システム。 【請求項4】 触媒中に存在する総銅金属が、合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒の総重量に基づいて、0.01から20重量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の排気システム。 【請求項5】 合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒が、フロースルーモノリス基材又はフィルターモノリス基材上にコーティングされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の排気システム。 【請求項6】 合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒が望ましい効率以上でNOx還元を触媒できると判断された場合にのみ、流れる排気ガスに窒素系還元剤が計量供給されるように、使用時に計量手段を制御する手段を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の排気システム。 【請求項7】 酸化触媒と合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒との間にフィルター基材が配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の排気システム。 【請求項8】 車両のリーンバーンエンジンと、請求項1から7のいずれか一項に記載の排気システムとを含む装置。 【請求項9】 エンジンが、ディーゼルエンジン、リーンバーンガソリンエンジン又は液化石油ガスもしくは天然ガスで作動するエンジンである、請求項8に記載の装置。 【請求項10】 合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒の存在下で、窒素酸化物を窒素系還元剤と接触させることにより車両リーンバーン内燃機関における燃料の燃焼に由来する排気ガス中の窒素酸化物を窒素に変換する方法であって、 合成アルミノシリケート小細孔ゼオライトが、8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、8つの四面体原子の最大環サイズを含み、CHA骨格型コードであり、銅からなる少なくとも1つの遷移金属を含み、合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒がモノリス基材上にコーティングされ、 排気ガス中の一酸化窒素が、合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒の上流に位置する、少なくとも1つの白金族金属を含む酸化触媒を使用して二酸化窒素に酸化され、その後、得られたガスが窒素系還元剤と混合され、それから混合物が合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒に供給され、白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである、方法。 【請求項11】 CHA骨格型コード合成アルミノシリケート小細孔ゼオライトが、SSZ-13である、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 窒素酸化物が、少なくとも100℃の温度で窒素系還元剤で還元される、請求項10又は11に記載の方法。 【請求項13】 合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒入口でのNH3が、1:1NH3/NO及び4:3NH3/NO2において計算される理論アンモニアの60%から200%になるように制御されるように、窒素系還元剤の添加が制御される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。」 第4 特許異議の申立てについて 異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証~甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲7」という。)を提出し、以下の理由により、設定登録時の請求項1~13に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。 1 申立理由1(実施可能要件違反) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、設定登録時の請求項1~13に係る発明に記載される「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」を生産でき、かつ、システムとして使用することができるように具体的に記載されていない。特に「8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)」を有する同「ゼオライト触媒」についての記載がないことから、当該触媒を生産 しシステムとして使用できるためには当業者に過度の試行錯誤を強いるものであるといえる。 したがって、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合しないから、設定登録時の請求項1~13に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (特許異議申立書18~20頁) 2 申立理由2(サポート要件違反) 本件特許の設定登録時の請求項1~13に係る発明の課題は、(i)熱水耐久性の向上(つまり、エージング後変換活性の向上)と(ii)窒素SCRプロセスにおけるN2への選択性の向上(つまり、N2O形成の減少)といえるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明には上記課題が解決できると具体的に評価された実施例等の記載がない。特に「8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)」を有する同「ゼオライト触媒」についての記載がない。 したがって、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、設定登録時の請求項1~13に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるものであるとはいえない。 よって、本件の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しないから、設定登録時の請求項1~13に係る特許は同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (特許異議申立書20~21頁) 3 申立理由3(進歩性欠如) 本件特許の設定登録時の請求項1~13に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 (特許異議申立書21~47頁) 甲1:特表2007-501353号公報 甲2:国際公開第2005/092499号 甲2-2:特表2007-529300号公報 (甲2の日本語パテントファミリー) 甲3:特開2002-1067号公報 甲4:特開2007-100508号公報 甲5:特開2006-132393号公報 甲6:特開2007-85247号公報 4 申立理由4(拡大先願要件違反) 本件特許の設定登録時の請求項1~13に係る発明は、本件特許の優先日前を優先日とする外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、本件特許の優先日後に国際公開がされた下記の外国語特許出願(以下、「先願」ということがある。)の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその優先日前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。 したがって、本件特許の設定登録時の請求項1~13に係る発明は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(特許異議申立書47~63頁) 先願:PCT/US2008/055140号 (国際公開第2008/106519号 特表2010-519038号公報(甲7)) 第5 取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由通知(決定の予告) 当審が特許権者に通知した、令和4年9月6日付けの取消理由(決定の予告)の概要は、申立理由4と同趣旨のものであって、次のとおりである。 本件発明1~13は、本件特許の優先日前を優先日とする外国語特許出願(特許法第184条の4第3項の規定により取り下げられたものとみなされたものを除く。)であって、本件特許の優先日後に国際公開がされた以下の外国語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその優先 日前の外国語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記外国語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。 したがって、本件発明1~13は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 先願:PCT/US2008/055140号 (国際公開第2008/106519号 特表2010-519038号公報(甲7)) 2 取消理由(決定の予告)についての当審の判断 (1) 甲7の記載事項 上記先願(PCT/US2008/055140号)は、2008年2月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2007年2月27日 米国(US))を国際出願日として出願され、本件特許の出願日(分割出願の遡及日2008年4月24日)後の2008年9月4日に国際公開され(国際公開第2008/106519号)、その後、特許法184条の4第1項に規定する翻訳文が提出された国際特許出願であって、その国際出願日における明細書、請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 そして、以下の事項は、先願において優先権主張の基礎となる米国特許出願60/891835号(2007年2月27日出願(以下、「基礎出願」という。))の出願当初明細書又は図面にも記載されている。 また、本件特許の発明者が先願に係る発明をした者と同一の者ではなく、また本件特許の出願の時にその出願人が先願の出願人と同一の者でもない。 以下に記載した先願明細書等に記載された事項については、先願明細書等の翻訳文が記載されている特表2010-519038号公報(甲7)の該当箇所を【・・・】と訳文をもって示し、先願明細書等である国際公開第2008/106519号における該当する記載箇所を括弧書き([・・・])で示し、基礎出願における該当する記載箇所を(<・・・>)で示した。 例.「【0006】・・・ 」([0006])(<0005>) 「【0006】 要約 本発明は・・・CHA結晶構造を有するゼオライト、このようなゼオライトを含む触媒、及びこのような触媒を組込んだ排気ガス処理(装置)に関する。この触媒は、排気ガス流(特にガソリン又はディーゼルエンジンから放出される排気ガス流)を処理するために使用される排気ガス処理システムの一部であって良い。」([0006])(<0005>) 「【0007】 本発明の一実施の形態は、銅CHA触媒及び(酸化窒素を還元するために設計されたもののような)排気ガスシステムにおける、その使用に関する。特定の実施の形態では、(NOXの改良されたNH3SCRを示す)新規の銅菱沸石触媒が提供される。本発明の一つ以上の実施の形態に従い製造された銅菱沸石触媒は、熱水での卓越した安定性、及び広い温度範囲における高い触媒活性を示す触媒材料を提供する。」([0007])(<0006>) 「【0019】 本発明の一実施の形態では、菱沸石等のCHA構造を有するゼオライトが提供される。一つ以上の実施の形態では、CHA結晶構造を有し、シリカのアルミナに対するモル割合が約15を超え、そして銅のアルミニウムに対する原子割合が約0.25を超えるゼオライトが提供される。特定の実施の形態では、シリカのアルミナに対するモル割合が約30であり、そして銅のアルミニウムに対する原子割合が約0.40である。CHA構造を有する他のゼオライトは、SSZ-13、LZ-218、LindeD、LindeR、Phi、ZK-14及びZYT-6を含むが、これらに限定されるものではない。」([0031])(<0018>) 「【0023】 本発明の実施の形態は、内燃式エンジンによって生成された、排気ガス流中のNOXを、シリカのアルミナに対するモル割合が約15を超え、及び銅のアルミニウムに対する原子割合が約0.25を超えるCuCHAゼオライト触媒を使用して低減する方法に関する。・・・」([0035])(<0020>) 「【0025】 本発明の実施の形態が特定の原理と結び付いているわけではないが、CHAの通路開口(channel opening)が比較的少ないと、ディーゼル燃料では代表的な高分子量の炭化水素(HC)が入り込めず、そしてCuCHA構造内 に吸収することができないと信じられている。Beta又はZSM5のような他のゼオライトとは異なり、本発明の実施の形態に従い製造されたCHA触媒は、これらの分子量が大きなHC種を吸着するのに親和力(affinity)が比較的低い。このこおとは、選択的触媒還元(SCR)触媒に使用するのに、有利な特性である。」([0037])(<0022>) 「【0032】 基材 触媒組成物は、基材に設けられる。基材は、触媒を製造するために使用される如何なるものであっても良く、そして通常、セラミック又は金属ハニカム構造を含む。適切な如何なる基材も使用して良く、例えば入口から出口面まで伸びる微細で平行なガス流通路(該ガス流通路は開口しており、流体が通路を流れることができる)を有するモノリス基材(ハニカム流通基材と称される)を使用して良い。その流体入口から流体出口までを実質的にまっすぐに伸びる通路は、壁部によって規定されており、この壁部に触媒材料がワッシュコートとして堆積され、これにより通路を流れるガスが触媒材料と接触する。モノリス基材の流体通路は薄壁の流路(通路:channel)であり、該流路は、台形、長方形、四角形、正弦曲線、六角形、長円形、円形等の適切な如何なる断面形状と大きさを有していても良い。このような構造は、断面の1平方インチ当たり、約60~約400又はそれ以上の入口開口部(すなわちセル)を含んでいても良い。」([0043]、[0044])(<0028>、<0029>) 「【0033】 基材は、流路が交互に閉塞されており、そして一方向(入口方向)から流路に入るガス状流を、流路壁を通って流し、そして他方向(出口方向)から、流路から出す後構成の壁流フィルタ基材も可能である。AMOX及び/又はSCR触媒組成物は、流通(貫流)又は壁流フィルターに被覆することができる。壁流基材が使用された場合、得られるシステムは、ガス状汚染物質の他に、粒子状物質も除去することができる。壁流フィルター基材は、コージライト、アルミニウムチタネート又はシリコンカーバイド等のこの技術分野では公知の材料から作ることができる。壁流基材に触媒組成物を積載することは、基材の特性、例えば多孔度(多孔率)及び壁の厚さに依存し、そして一般的には、その積載量は、流通基材への積載量よりも少ない。」([0045])(<0030>) 「【0050】 実施例1 (シリカ/アルミナモル割合が30の)100gのNH4+状CHAを400mLの1.0Mの銅(II)サルフェート溶液と混合することにより、CuCHA粉末触媒を製造した。硝酸で、pHを3.5に調節した。スラリーを80℃で1時間攪拌させて、NH4+状CHAと銅イオンとの間のイオン交換反応を行った。得られた混合物を次にろ過し、800mLの脱イオン水で、ろ液が透明で無色になるまで(3箇所で)洗浄した。このことは、溶解性又は遊離銅がサンプル内に実質的に残っていないことを示す。そして洗浄したサンプルを90℃に乾燥した。イオン交換、ろ過、洗浄及び乾燥を含む上述した工程を、もう一度繰り返した。」([0062])(<0047>) 「【0051】 次に得られたCuCHA生成物を、640℃で6時間か焼した。得られたCuCHA触媒は、ICP分析で測定して、CuOを2.41%含んでいた。90gの上述したCuCHAを、215mLの脱イオン水(純水)と混合させることにより、CuCHAスラリーを製造した。混合物をボールミル(粉砕)した。稀酢酸中の15.8gのシツコニウムアセテート(30%のZrO2を含む)を、スラリーに攪拌させながら加えた。」([0063])(<0048>) 「【0052】 セル密度が400cpsi(平方インチ当たりのセル)及び壁厚が6.5ミルの1”Dx3”Lセル状セラミックコアにスラリーを被覆した。被覆したコア(核)を110℃で3時間乾燥し、そして400℃で1時間か焼した。被覆工程をもう一度繰り返し、2.4g/in3のワッシュコートの目標積載量を得た。」([0064])(<0049>) 「【0053】 500ppmのNO、500ppmのNH3、10%O2、5%H2OのN2でバランスした供給ガス混合物を、1”Dx3”L触媒コアを含む定常状態の反応器に加えることにより、新しい触媒コアの窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)の効率と選択性を測定した。150℃~460℃の温度範囲にわたり、空間速度80,000hr-1で、反応を行った。」([0065])(<0050>) 「【0054】 10%H2Oの存在下に、800℃で5時間、触媒コアを熱水的に熟成(老化)させ、触媒の熱水の安定性を測定し、次に新しい触媒コア上のSCR評価について上述したものと同一の工程により窒素酸化物のSCR効率と選択性を測定した。」([0066])(<0051>)(当審注:なお、先願明細書等及び基礎出願の明細書には、「800℃で5時間」の該当箇所は、「at 800℃ for 50 hours」と記載。) 「【0055】 図1は、このサンプルについて、NOX変換とN2O製造又は形成の温度との関係を示したグラフである。結果を表1に示す。」([0067])(<0052>) 「【0126】 図10A、10B及び10Cに、排気ガス処理システムの実施例を示す。11Aとして示した、本発明の排気ガス処理システムの一実施の形態を図10Aに概略的に示した。ガス状汚染物質(未燃焼炭化水素、一酸化炭素及びNOXを含む)及び粒子状物質が、エンジン19から排気ガスシステムの下流側の箇所に運ばれ、この箇所で、還元剤、すなわち、アンモニア又はアンモニア前駆体が排気ガス流に加えられる。還元剤は、ノズル(図示せず)から、スプレー(噴霧)として排気ガス流に注入される。ライン25で示した水性ウレアは、アンモニア前駆体として作用でき、この水性ウレアは、混合ステーション24で、他のライン26で示した空気と混合させることができる。水性ウレア(該水性ウレアは、排気ガス流内でアンモニアに変換される)を正確に計量導入するために、バルブ23を使用することができる。」([0132])(<0097>) 「【0127】 アンモニアが加えられた排気ガス流は、一つ以上の実施の形態に従い、CuCHAを含むSCR基材12(該SCR基材12は、請求項では、「第1の基材」に対応する。)に運ばれる。第1の基材12を通過する際、排気ガス流のNOX成分は、(NOXをNH3で選択的に触媒還元することによって、)N2及びH2Oに変換される。更に、入口領域から出てくる過剰のNH3は、下流側のアンモニア酸化触媒(該触媒もCuCHAを含んでいる)で酸化することによって、N2とH2Oに変換可能である。第1の基材は、代表例では、流通モノリス基材である。」([0133])(<0098>) 「【0128】 11Bとして示した、排気ガス処理システムの他の実施の形態を、図10Bに示す。この実施の形態では、NH3インジェクターと第1の基材12との間に第2の基材27が配置されている。この実施の形態では、第2の基材がSCR触媒組成物で被覆されている。該SCR触媒組成物は、第1の基材12を被覆するために使用されるものと同様の組成物であっても良く、又は異なる組成物であっても良い。この実施の形態の有利な点は、基材を被覆するのに使用されるSCR触媒組成物を、(排気ガスシステムに沿った箇所の特徴的な運転操作条件について、)NOX変換を最適化するために選択できるということである。例えば、排気ガスシステムの上流部分で生じる、より高い運転温度(操作温度)のために、より適切なSCR触媒組成物で、第2の基材を被覆することができ、一方、第1の基材(すなわち、第1の基材の入口領域)を被覆するのに、排気ガスシステムの下流側部分で生じる、より低音の排気ガス温度に、より適切な他のSCR組成物を使用することができる。」([0134])(<0099>) 「【0129】 図10Bに示した実施の形態では、第2の基材27は、ハニカム流通基材、連続気泡フォーム基材、又はハニカム壁流基材のいずであっても良い。第2の基材が壁流基材又は高効率連続気泡フォームフィルターである、この実施の形態の構成では、システムは、粒子状物質(粒子状物質は、煤部分及びSOFを含む)を80%以上除去することができる。SCRで被覆された壁流基材及びNOXと粒子状物質を還元(除去)するためのその使用が、例えば、同時係属のU.S.特許出願Ser.No.10/634,659(出願日2003年8月5日)に記載されており、(これにより)この文献はここに導入される。」([0135])(<0100>) 「【0130】 ある適用例では、アンモニア/アンモニア前駆体注入の箇所の上流側に酸化触媒を含めることが有利であって良い。例えば、図10Cに示された実施の形態では、酸化触媒が触媒基材34に配置される。排気ガス処理システム11は、第1の基材12を備え、及び任意に第2の基材27を含む。この実施の形態では、排気ガス流は、最初に触媒基材34に運ばれ、触媒基材34で、ガス状炭化水素、CO及び粒子状物質が、少なくとも部分的に燃焼され、無害の物質とされる。更に、排気ガスのNOX成分のNOの相当量がNO2に変換される。NOX成分中のNO2の量が多いと、下流側に配置されたSCR触媒でNOXをN2とH2Oに還元することが容易になる。図10Cに示した実施の形態において、第1の基材12は、触媒化煤フィルターが可能であり、及びSCR触媒を、触媒化煤フィルターに設けることができる。他の実施の形態では、SCR触媒を含む第2の基材27を、触媒基材34の上流側に配置しても良い。」([0136])(<0101>) 「【図1】 [図:0001404724000001.jpg] 」 (FIG.1)<FIG.1> 「【図10C】 [図:0001404724000002.jpg] 」 (FIG.10C)<FIG.7C> (2) 先願明細書等に記載された発明(先願発明) ア 【0126】~【0130】を参酌して【図10C】をみてみる。 イ 同図には、「エンジン19」から排出された「ガス状汚染物質(未燃焼炭化水素、一酸化炭素及びNOXを含む)及び粒子状物質」が「排気ガス処理システム」の「下流側の箇所に運ばれ」るから、そのための「ガス状汚染物質」の「通路」が当然に存在するといえる。 ウ 上記「排気ガス処理システム」において、「エンジン19」から排出された「ガス状汚染物質」は、上記「通路」で後述する各装置を順に通り下流へと運ばれるところ、「触媒基材34」を通り過ぎたところで、「SCR基材12」に導入される前に、「バルブ23」から「アンモニア前駆体」である「水性ウレア」が導入され、最終的に「SCR基材12」を通過していくことが見て取れる。 エ そして、【0130】から、「触媒基材34」は「酸化触媒」であり、「NOX成分中のNO2の量が多いと、下流側に配置されたSCR触媒でNOXをN2とH2Oに還元することが容易になる」ので、同「酸化触媒」で「ガス状汚染物質」中の「NOX成分のNOの相当量」を「NO2に変換」している。 オ また、【0126】から、「アンモニア前駆体」である「水性ウレア」は「混合ステーション24」から「水性ウレア(該水性ウレアは、排気ガス流内でアンモニアに変換される)を正確に計量導入するために、バルブ23を使用する」ものである。 カ さらに、【0127】から、「SCR基材12」は「CuCHA」を含むものであり、同「CuCHA」と「アンモニアに変換され」た「水性ウレア」により「第1の基材12を通過する際、排気ガス流のNOX成分は、(NOXをNH3で選択的に触媒還元することによって、)N2及びH2Oに変換される」ものである。 キ なお、同図には「第2の基材27」が見て取れるが、【0128】から同基材は「SCR基材12」と同様又は異なる組成物を有し、「SCR基材12」と共にNOX変換を最適化するためのもので、状況に応じて使用されるから必須ではない。 ク ここで【0128】から「この実施の形態では、第2の基材がSCR触媒組成物で被覆されている。該SCR触媒組成物は、第1の基材12を被覆するために使用されるものと同様の組成物であっても良く」とあることから、「基材12」は上記カで見た機能を持つ「SCR触媒組成物」である「CuCHA」で「被覆」されているものであり、「実施例1」(【0050】~【0055】)の【0051】【0052】から、「SCR基材12」は「セル密度が400cpsi(平方インチ当たりのセル)及び壁厚が6.5ミルの1”Dx3”Lセル状セラミックコア」に合成された「CuCHA」を含む「スラリーを被覆」したものとすることができるものといえる。 ケ さらに、上記「実施例1」の【0050】から、「CuCHA」は、「シリカ/アルミナモル割合が30」の「NH4+状CHA」を「銅イオンとの間のイオン交換反応」して得られたもので、【0023】から「ゼオライト」である。 コ 上記「排気ガス処理システム」の「エンジン19」は【0006】から「ディーゼルエンジン」であるということができる。 サ 以上のことから、先願明細書等には、次の「排気ガス処理システム」に係る発明(以下、「甲7先願発明1」という。)が記載されていると認められる。 「ディーゼルエンジンのための排気ガス処理システムであって、 ガス状汚染物質の通路と、 アンモニア前駆体である水性ウレアの混合ステーションと、 シリカ/アルミナモル割合が30で、銅イオンとの間のイオン交換反応で得られた銅を含むCuCHAゼオライトであるSCR触媒組成物のスラリーが、SCR基材になる6.5ミルの1”Dx3”Lセル状セラミックコアに被覆されたSCR触媒組成物と、 アンモニア前駆体である水性ウレアの混合ステーションから、SCR触媒組成物の上流を通るガス状汚染物質にアンモニア前駆体である水性ウレアを正確に計量導入するためのバルブを備え、 NOX成分のNOの相当量をNO2に変換するための酸化触媒である触媒基材が、SCR触媒組成物の上流を通るガス状汚染物質にアンモニア前駆体である水性ウレアを正確に計量導入するためのバルブの上流に配置されている、排気ガス処理システム。」 シ また、以上のことから、先願明細書等には、次の「NOx成分をN2及びH2Oに変換する方法」に係る発明(以下、「甲7先願発明2」という。)が記載されていると認められる。 「SCR触媒組成物の存在下で、NOX成分を水性ウレアから変換されたアンモニアと接触させることによりディーゼルエンジンにおけるガス状汚染物質中のNOX成分をN2及びH2Oに変換する方法であって、 SCR触媒組成物が、シリカ/アルミナモル割合が30であり、銅イオンとの間のイオン交換反応で得られた銅を含むCuCHAゼオライトであって、6.5ミルの1”Dx3”Lセル状セラミックコアに被覆され、 ガス状汚染物質中のNOX成分のNOの相当量が、SCR触媒組成物の上流に位置する、酸化触媒である触媒基材によってNO2に酸化され、その後、得られたNOX成分が水性ウレアから変換されたアンモニアと混合されて、SCR触媒組成物に供給される、方法。」 (3) 本件発明1について ア 対比 (ア)甲7先願発明1の「ウレア」は「尿素」のことであり、「尿素」は「NH2CONH2」と表され、熱分解してアンモニア(NH3)を生成するから、甲7先願発明1の「アンモニア前駆体である水性ウレア」は、本件発明1の「窒素系還元剤」に相当する。 そうすると、甲7先願発明1の「ディーゼルエンジンのための排気ガス処理システム」、「ガス状汚染物質の通路」、「アンモニア前駆体である水性ウレアの混合ステーション」は、それぞれ、本件発明1の「車両内燃機関のための排気システム」、「流れる排ガスを通過させる導管」、「窒素系還元剤の供給源」に相当する。 (イ)甲7先願発明1の「SCR触媒組成物」は、「シリカ/アルミナモル割合が30」のCuCHAゼオライトであり、シリカとアルミナを有し合成されているから、本件発明1の「アルミノシリケートゼオライト触媒」であるといえる。 そうすると、甲7先願発明1の「シリカ/アルミナモル割合が30」、「銅イオンとの間のイオン交換反応で得られた銅を含むCuCHAゼオライト」、「SCR触媒組成物」は、それぞれ、本件発明1の「8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)」、「CHA骨格型コードであり、銅からなる少なくとも一つの遷移金属を含み」、「アルミノシリケートゼオライト触媒」に相当する。 (ウ)甲7先願発明1の「SCR基材になる6.5ミルの1”Dx3”Lセル状セラミックコアに被覆された」は、本件発明1の「排ガスの流路中に配置されたモノリス基材上にコートされた」に相当する。 (エ)甲7先願発明1の「アンモニア前駆体である水性ウレアの混合ステーションから、SCR触媒組成物の上流を通るガス状汚染物質にアンモニア前駆体である水性ウレアを正確に計量導入するためのバルブを備え」は、本件発明1の「窒素系還元剤の供給源から、アルミノシリケートゼオライト触媒の上流で流れる排気ガス中に窒素系還元剤を計量供給するための手段を備え」に相当する。 (オ)甲7先願発明1の「NOX成分のNOの相当量をNO2に変換するための酸化触媒である触媒基材が、SCR触媒組成物の上流を通るガス状汚染物質にアンモニア前駆体である水性ウレアを正確に計量導入するためのバルブの上流に配置されている」は、本件発明1の「一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒が、流れる排気ガスに窒素系還元剤を計量するための手段の上流に配置されている」に相当する。 (カ)以上から、本件発明1と甲7先願先願発明1とは、以下の一致点を有し、以下の一応の相違点を有する。 (一致点) 「車両内燃機関のための排気システムであって、 流れる排ガスを通過させる導管と、 窒素系還元剤の供給源と、 8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、CHA骨格型コードであり、銅からなる少なくとも一つの遷移金属を含み、排ガスの流路中に配置されたモノリス基材上にコートされた、アルミノシリケートゼオライト触媒と、 窒素系還元剤の供給源から、アルミノシリケートゼオライト触媒の上流で流れる排気ガス中に窒素系還元剤を計量供給するための手段を備え、 一酸化窒素を二酸化窒素に酸化するための酸化触媒が、流れる排気ガスに窒素系還元剤を計量するための手段の上流に配置されている、排気システム。」 (相違点) (相違点1)「アルミノシリケートゼオライト」について、本件発明1では「合成」されたものであるのに対して、甲7先願発明1では「合成」されたものであるのか不明である点。 (相違点2)「排気システム」の対象である「車両内燃機関」について、本件発明1では「車両リーンバーン内燃機関」であるのに対して、甲7先願発明1では「ディーゼルエンジン」である点。 (相違点3)NOX還元のための「触媒」について、本件発明1では「小細孔」で「8個の四面体原子による最大環サイズを含」むのに対して、甲7先願発明1では不明である点。 (相違点4)「酸化触媒」の材料について、本件発明1では「少なくとも一つの白金族金属を含む」もので、「白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである」ものであるのに対して、甲7先願発明1では不明である点。 イ 相違点についての検討 事案に鑑み、上記相違点4について検討する。 本件発明1の「白金族金属を含む酸化触媒」は、SCR(ゼオライト)触媒に入る「ガス流のNO対NO2の比が、体積で約4:1~約1:3の範囲になるように適合させるものであって(本件明細書【0067】、【0068】、【0075】~【0077】)、当該酸化触媒は、「白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである」ことが特定されたものである。 ここで、本件発明1と同様に窒素系還元剤(アンモニア又はアンモニア前駆体)とSCR触媒の上流側で、NO対NO2の比を調整する酸化触媒として、「白金族金属」を用いることは、以下の甲1、3、4、5に記載されているように周知技術である。 甲1(特表2007-501353号公報) 白金、パラジウム又はロジウムを含有する白金族成分(【0052】、【 0053】) 甲3(特開2002-1067号公報) 白金触媒(【0015】【0016】) 甲4(特開2007-100508号公報) 白金(【0026】【0035】) 甲5(特開2006-132393号公報) 白金(【0021】) また、「白金とパラジウムの組合せ」であるとしても、例えば、令和4年9月6日付けの取消理由通知(決定の予告)で示した以下の文献a1)~a5)に記載されている。 a1)特開昭63-236522号公報 (請求項1、7~10、5頁左上欄5~11行、5頁右上欄15~ 1 7行) a2)特表2003-525380号公報 (【0002】【0003】【0009】) a3)特表2001-525241号公報 (【0036】【0063】) a4)特開2004-84666号公報 (【0021】【0043】【0044】) a5)特表2002-539348号公報 (【0009】【0027】) そこで、甲7先願発明1の「酸化触媒」についてみると、甲7の先願明細書等には、アンモニアを酸化するための触媒は、Ptなどの白金属金属成分を使用することが記載されているものの(甲7:請求項16~請求項20([Claim16~20])(<Claim16~20>)、【0045】([0057])(<0042>)、SCRの上流の「酸化触媒」について使用する材料については何ら記載されていない。 同先願明細書等においては、酸化触媒は、ガス状炭化水素、COを酸化し、排気ガスのNOx成分をNOの相当量をNO2に変換するとされているから(甲7:【0130】、([0136])(<0101>))、本件発明1の触媒と同じ機能を想定していると認められる。 しかし、同先願明細書等において、酸化触媒(DOC)は、排ガスが低温の場合、NOのNO2への酸化性能を失うものとされているところ(【0027】)、このような酸化触媒として白金ベースの酸化触媒の材料を想定しているのかは何ら明らかにされていない。 一応、文献a2)において、酸化触媒は200℃以下の温度で一酸化窒素NOからの二酸化窒素NO2の生成率が著しく減少することが記載されており(【0005】)、白金ベースの酸化触媒を想定している(【0009】)と認められるが、下流のSCR触媒の材料はゼオライトではない。 また、「酸化触媒」としては、上記周知技術として示した白金族金属だけではなく、周知の卑金属からなる組成物も想定される(甲1:【0052】)。 そうすると、同先願明細書等において、上記低温でNO2への酸化性能を失うとされる甲7先願発明1の「酸化触媒」が具体的に明らかにされておらず、また、ゼオライトSCR触媒の上流に酸化触媒の材料として、必ずしも白金族金属を選択するとはいえない以上、同先願明細書等の記載及びさらには周知技術として示した文献を参照しても、直ちに甲7先願発明1の「酸化触媒」が「白金族金属」であり「白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである」とまではいえない。 したがって、上記相違点4は、実質的な相違点である。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲7先願発明1と同一であるとはいえない。 (4) 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明2~9と甲7先願発明1とをそれぞれ対比すると、少なくとも上記(3)ア(カ)と同じ相違点で相違するから、当該相違点についての判断も上記(3)イと同様である。 したがって、本件発明2~9は、甲7先願発明1と同一であるとはいえない。 (5) 本件発明10について 本件発明10と甲7先願発明2とを対比する。 本件発明10は、本件発明1と同じく「少なくとも1つの白金族金属を含む酸化触媒」について「白金族金属が、白金、パラジウム、ロジウム、又は白金とパラジウムの組合せである」ことが特定され、さらに排気ガス中の一酸化窒素を当該酸化触媒を使用して二酸化窒素に酸化することが特定されているのに対して、甲7先願発明2は、甲7先願発明1と同様に「酸化触媒」がNOx成分をNO2に酸化することが規定されており、少なくとも上記(3)ア(カ) と同じ相違点で相違するから、当該相違点についての判断も上記(3)イと同様である。 したがって、本件発明10は、甲7先願発明2と同一であるとはいえない。 (6) 本件発明11~13について 本件発明11~13は、本件発明10を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明11~13と甲7先願発明2とをそれぞれ対比すると、少なくとも本件発明10と同じ相違点で相違するから、当該相違点についての判断も本件発明10と同様である。 したがって、本件発明11~13は、甲7先願発明2と同一であるとはいえない。 (7) 小括 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由には理由がない。 第6 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由1(実施可能要件違反)について 申立理由1は、本件明細書の例2(【0079】)に、市販のSSZ-13に銅を添加したことが開示されているが、SAR値は不明であり、また、具体的な本件発明のSAR値を満たす触媒の製造方法や排ガス浄化の実験条件が記載されていないから、発明の詳細な説明は当業者が本件発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないというものである。 しかし、本件明細書の記載から、市販のSSZ-13が使用されたことが記載され、脱アルミニウムの手段も周知であるから、本件発明に係る触媒が調製できないということはない。 また、ディーゼルエンジン等の車両リーンバーン内燃機関の排ガスを模擬して実験することは周知慣用技術であるから、各ゼオライト触媒について、同等の試験条件において比較検討することは、当業者であれば容易に実施し得るといえる。 したがって、申立理由1には理由がない。 2 申立理由2(サポート要件違反)について 申立理由2は、本件発明の課題は、(i)熱水耐久性の向上(つまり、エージング後変換活性の向上)と(ii)窒素SCRプロセスにおけるN2への選択性の向上(つまり、N2O形成の減少)といえるところ、特に実施例に、「8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)」を有する「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」についての記載がないことから、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないというものである。 しかし、本件発明に係る「8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)」を有し、CHA骨格型コードであり、銅を含む触媒については、本件明細書にその概要が説明されており(表2、【0043】、【0047】、【0056】)、熱安定性を改良するには高いSARが好ましいとされ、遷移金属交換とのバランスがとれるようにSARを考慮することとされている(【0043】)。 確かに、本件明細書の「実施例」の欄に記載された「Cu/SSZ-13」の例(例10~13(図13~16))は、本件発明で特定する「CHA骨格型コー ドであり、銅を含む合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」に該当するが、そのSARの値は明らかではない。 しかし、例10~13(図13~16)によると、Cu/SSZ-13による触媒は、比較的良好な低温SCR活性を有し、N2に対する選択性が比較的高く(N2O形成が少なく)、熱的耐久性が比較的良好であることを把握することができる。 そして、SARが高いとゼオライト触媒の熱安定性が向上することは技術常識であって、本件発明のSARの上限150は、格別高い値ではなく、また、銅イオン交換を阻害するという根拠もない。 そうすると、本件発明は、課題を解決できる範囲のものであるということを当業者は理解することができる。 したがって、申立理由2には理由がない。 3 申立理由3(進歩性欠如)について (1) 各甲号証の記載事項 ア 甲1の記載事項 「【請求項1】 NOxおよび粒状物を含有する排気流れを処理するに適した排気処理システムであって、 a)酸化用触媒、 b)前記酸化用触媒と流体伝達状態でそれの下流に位置していてアンモニアまたはアンモニア前駆体を前記排気流れに定期的に計量して入れる注入器 、および c)前記注入器と流体伝達状態でそれの下流に位置する壁流式モノリス、を含んで成るが、 前記壁流式モノリスは多数の縦方向に伸びる通路を有していて、前記多数の縦方向に伸びる通路は、前記通路に境界をつけそれを限定している縦方向に伸びる壁で形成されており、ここで、前記通路は、開放された入り口末端部と封鎖された出口末端部を有する入り口通路および封鎖された入り口末端部と開放された出口末端部を有する出口通路を含んで成り、ここで、 前記壁流式モノリスは前記壁に少なくとも1.3g/立方インチの濃度で染み込んでいるSCR触媒組成物を含んで成っていて前記壁流式モノリスが有する壁間隙率が少なくとも50%で平均孔径が少なくとも5ミクロンである、 排気処理システム。 ・・・ 【請求項3】 前記酸化用触媒と流体伝達状態でそれの上流に位置するディーゼルエン ジンも更に含んで成る請求項1記載の排気処理システム。 【請求項4】 NOxおよび粒状物を含有する排気流れの中の生じた排気物を処理する方法であって、 (a)前記排気流れを酸化用触媒に通すことでNOの実質的な部分に酸化を受けさせてNO2を生じさせることでNO2が豊富な排気流れを生じさせ、 (b)アンモニアまたはアンモニア前駆体を前記NO2が豊富な排気流れに定期的な間隔で計量して入れた後、 (c)前記排気流れを壁流式モノリスに通すことで粒状物を濾過で除去しかつNOxの実質的な部分に還元を受けさせてN2を生じさせる、 ことを含んで成るが、 前記壁流式モノリスは多数の縦方向に伸びる通路を有していて、前記多数の縦方向に伸びる通路は、前記通路に境界をつけそれを限定している縦方向に伸びる壁で形成されており、ここで、前記通路は、開放された入り口末端部と封鎖された出口末端部を有する入り口通路および封鎖された入り口末端部と開放された出口末端部を有する出口通路を含んで成り、ここで、 前記壁流式モノリスは前記壁に少なくとも1.3g/立方インチの濃度で染み込んでいるSCR触媒組成物を含んで成っていて前記壁流式モノリスが有する壁間隙率が少なくとも50%で平均孔径が少なくとも5ミクロンである、 方法。 【請求項5】 銅および鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分およびゼオライトを含んで成る請求項1または4記載のSCR触媒組成物。 【請求項6】 前記ゼオライトが有するアルミナに対するシリカの比率が少なくとも約10である請求項5記載のSCR触媒組成物。 【請求項7】 前記ゼオライトがベータゼオライトである請求項6記載のSCR触媒組成物。 ・・・ 【請求項10】 前記酸化用触媒と流体伝達状態でそれの上流に位置するディーゼルエンジンも更に含んで成る請求項4記載の方法。」 「【0038】 前記組成物で用いるゼオライトは硫黄毒に耐性があり、SCR過程で高いレベルの活性を維持しかつ余分なアンモニアを酸素で酸化させる能力を有する。そのようなゼオライトの孔径は、短期の硫黄毒作用の結果としてもたらされる酸化硫黄分子および/または長期の硫黄毒作用の結果としてもたらされる硫酸塩付着物が存在していても反応体分子であるNOおよびNH3が孔系の中に入りそして生成物分子であるN2およびH2Oが孔系から出る移動が適切に起こることを可能にするに充分な大きさである。適切な大きさの孔系が結晶の三次元の全部で相互連結している。ゼオライト技術分野の技術者に良く知られているように、ゼオライトの結晶構造は多少とも規則的に繰り返し存在する連結部、交点などを有する複雑な孔構造を示す。特別な特徴を有する、例えば所定範囲の直径または断面形態などを有する孔が、他の同様な孔と一緒に交差していない場合、そのような孔は一次元であると記述される。そのような孔が所定面のみで他の同様な孔と交差している場合、そのような特徴を有する孔は(結晶学的に)二次元で交差していると記述される。そのような孔が同じ面および他の面の両方で他の同様な孔と交差している場合、そのような孔は三次元で相互連結している、即ち「三次元的」であると記述される。硫酸塩毒に高い耐性を示しかつSCR過程および酸素によるアンモニアの酸化の両方に良好な活性を示しかつ高温、水熱条件および硫酸塩毒にさらされた時でも良好な活性を保持するゼオライトは少なくとも約7オングストロームの孔径を示しかつ三次元で相互連結している孔を有するゼオライトであることを見いだした。如何なる特別な理論でも範囲を限定することを望むものでないが、直径が少なくとも7オングストロームの孔が三次元で相互連結していると硫酸塩分子がゼオライト構造全体に渡って良好に移動し得ることで硫酸塩分子が触媒から放出され、それによって、反応体であるNOxおよびNH3分子および反応体であるNH3およびO2分子用として利用される吸着部位が多数解放されると考えている。この上に示した判断基準を満たす如何なるゼオライトも本発明の実施で用いるに適するが、そのような判断基準を満たす特定のゼオライトはUSY、ベータおよびZSM-20である。また、他のゼオライトも上述した判断基準を満足させる可能性がある。」 「【0057】 以下に示す実施例で本発明のさらなる説明を行うが、勿論、決して本発明の範囲を限定するとして解釈されるべきではない。 【実施例1】 【0058】 セラミック製壁流式濾過器の被覆 寸法が5.66x6インチで壁厚が0.012インチで平均孔径が25ミクロンで壁間隙率が60%のコージライトセラミック製壁流式濾過器基質(商品名C611、NGK Insulators,Ltd.)を用いて、触媒で覆われた煤濾過器を生じさせた。 【0059】 銅による交換を受けさせておいたベータゼオライト(銅含有量が2重量%)と追加的CuSO4(銅を9.5重量%与えるに充分な量)と7重量%の量のZrO2と脱イオン水(ベータゼオライトの重量を基準にした重量%)を用いて固体含有量が27重量%の触媒スラリーを生じさせた。前記銅による交換を受けさせておいたベータゼオライトの調製を米国特許第5,516,497号に示されているようにして実施した。 【0060】 同じ手順を用いて本発明の好適な態様に従う濾過器基質を2個調製した。その壁流式基質に下記を受けさせた: (1)前記基質を前記スラリーの中に1つの方向から前記基質の軸の長さ全体に沿って前記基質の溝が被覆されるに充分な深さに浸漬し、 (2)前記基質に前記被覆方向とは反対側(即ち乾燥している側)からエアナイフによる処理を受けさせ(air-knifed)、 (3)前記被覆側から真空をかけ、 (4)乾燥を93℃の空気流中で1時間そして焼成を400℃で1時間受けさせ、 (5)次に、段階(1)から(4)を反対側から繰り返した。 【0061】 これらの濾過器基質(触媒A1およびA2と表示)が含有する触媒の充填率は2.1g/立方インチであった。これらの触媒が含有する銅の量は約0.2g/立方インチであった。 【0062】 前記基質の片側のみに段階(1)から(4)に従う被覆を受けさせることで別の濾過器基質(触媒B1と表示)を生じさせた。触媒充填率が触媒1Aと同じ充填率に到達するように、スラリーの固体含有量を38%にまで高くした。この触媒の組成は同じままであった。触媒B1の触媒充填率は2.0g/立方インチであった。この触媒が含有する銅の量もまた0.2g/立方インチであった。 【0063】 参考サンプルである触媒D1の調製をフロースルー型触媒として実施した。この種類の触媒の調製では、この上に記述した種類の濾過器基質の一方の末端部に位置するプラグの深さの直ぐ下の所を直径を横切るように切断し た。このようにして、前記壁流式濾過器を前方領域の半分が有効に遮断されているフロースルー式基質に変えた。この基質に前記銅による交換を受けさせておいた交換ベータゼオライト触媒組成物による被覆を受けさせることで2.0g/立方インチの触媒充填率を得た。」 イ 甲2の記載事項 甲2の記載事項を日本語パテントファミリーの甲2-2の記載をもって示し、甲2の該当する記載箇所を(<・・・頁・・・行>)で示す。 「【請求項1】 自動車の排ガスフロー中のNOx浄化用触媒であって、アルミニウム、ケイ素またはチタン(酸化物)で柱状化した、ベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、ならびにそれらの混合物を含む群から選択される変性粘土鉱物を含むことを特徴とする触媒。 【請求項2】 天然のイオン交換したおよび/または合成したゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ヒューランダイト、クリノプチロライト、チャバサイト、エリオナイト、モルデナイト、フェリエライト、MFI(ZSM-5)、ゼオライト-βフォージャサイト、モルデナイトまたはそれらの混合物を含む群から選択されるゼオライトを含むことを特徴とする請求項1に記載の触媒。 ・・・ 【請求項5】 Ag、Ce、Fe、Cu、La、Pr、Th、In、Nd、Cr、Mn、CoおよびNi、ならびにそれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい酸化性作用金属イオンを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の触媒。」<18頁4行~19頁13行> 「【0002】 EUIVガイドラインにおける汚染物質制限値が、将来大幅に低減されることが既に法律で制定されている。 過剰空気で運転される内燃機関の排ガス中のNOx含有量削減に関して、選択接触還元法(SCR法)と呼ばれる方法が知られている。この方法は、選択的に作用する還元剤が、触媒の上流の位置で主に注入を通して排ガスに供給され、この還元剤により、排ガス中に含まれるNOxを、SCR触媒中で化学反応によって環境的に中性な成分(N2、O2、H2O)に転換させることができる。この既知の方法は、現在既に高荷重(トラック)分野のディーゼルエンジンに応用されおり、しばしば尿素水溶液(質量基準で32.5%、「AdBlue」という名称で知られている)あるいはペレットまたは粉末形態の固体尿素が使用されている。 【0003】 特に積極的な効果を示す還元剤は、例えば、尿素、尿素-水溶液、固体カルバミン酸アンモニウム、気体アンモニアなど、中間的にそれからアンモニアを放出することのできる還元剤である。前記還元剤は、(バナジウム酸化物を含有する)触媒を用いて、たとえ非化学量論的投入量であっても、窒素酸化物を95%以上削減することができる。この方法は、アンモニア(NH3)を還元剤として、窒素酸化物の削減のために発電所において数十年間成功裏に使用されている。」<1頁9行~2頁4行> 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明の目的は、迅速に生成できそれ故安価で、可能であれば、PGM(白金族金属)または(カリウムまたはバナジウムなどの)高温領域で揮発性の金属の使用を避け、信頼性があり、非常に効果的で、迅速なNOx削減が実現できる、自動車に利用可能なシンプルな触媒を提供することである。」<4頁17行~24行> 「【0012】 触媒が、ゼオライトと粘土鉱物とを含む場合、ゼオライトの含有率は、好ましくは≧10%(重量%)、より好ましくは≧20%(重量%)、より好ましくは≧30%(重量%)以上、さらに最も好ましくは≧40%(重量%)以上であり、同様に粘土鉱物の含有量は、好ましくは≧10%(重量%)、より好ましくは≧20%(重量%)、より好ましくは≧30%(重量%)、さらに最も好ましくは≧40%(重量%)である。 【0013】 このためには、自動車中で利用可能な(直接のまたは最初に「改質」された)炭化水素、および/またはCO、および/またはH2が、実際の還元剤として利用される。 ・・・ 【0014】 本発明による触媒の好ましい実施形態は、触媒が、同一の鉱物上にもまたは異なる鉱物(粘土鉱物、ゼオライト)上のいずれにも、要望どおり形成できる酸化性および還元性領域を含有していることを特徴とする。特に有効なNOの還元は、初めにNOの一部がNO2に酸化され、さらに他のNOの部分が炭化水素を用いてNH3へと還元された時に常に起こる。次に、触媒上に吸着された幾つかの物質の再結合によって、N2および水が生成される。」<5頁15行~6頁19行> 「【0020】 本発明の構成において、特に好ましい触媒のさらなる実施形態は、例えばゼオライトを含む少なくとも1つの酸化性領域と、粘土鉱物によって形成することのできる還元性領域とを含む。ゼオライトの既知の形態選択性を考慮すると、これらは特にNOの酸化にだけ適しているが、しかし一方、その寸法のため、炭化水素は、ゼオライトの反応センターにかなり遅れて達するので、それ故実際には酸化されない。しかしながら、粘土鉱物は、その実質上の二次元細孔システムのため、適切な炭化水素の吸着に特に適している。 【0021】 本発明による触媒の好ましい実施形態は、触媒が、天然のイオン交換したおよび/または合成したゼオライトA、ゼオライトX、ゼオライトY、ヒューランダイト、クリノプチロライト、チャバサイト、エリオナイト、モルデナイト、フェリエライト、MFI(ZSM-5)、ゼオライト-βフォージャサイト、モルデナイト、またはそれらの混合物を含む群から選択されるゼオライトを含むことを特徴とする。 【0022】 さらに、本発明の構成において使用可能なゼオライトは、ゼオライトA、ゼオライトX、Yおよび/またはヒューランダイトを含む群から選択することができる。さらに、クリノプチロライト、チャバサイト、エリオナイト、モルデナイト、フェリエライト、MFI(ZSM-5)および同様にゼオライト-βの使用が好ましい。後者のゼオライト構造は、より低いAl含有量を特徴とし、イオン交換能力は低下するが、温度安定度が高い(連続運転で550℃まで安定)という利点を有する。」<8頁5行~9頁6行> 「【0029】 本発明による触媒の好ましい実施形態は、触媒中の銅および/または鉄の百分率含有量が、全触媒の重量ベースで測定して、≧0重量%と≦25重量%の間、好ましくは≧0.01重量%と≦20重量%の間、より好ましくは≧0.05重量%と≦15重量%の間、さらに最も好ましくは≧0.1重量%と≦10重量%の間にあることを特徴とする。鉄および銅は、それらの触媒活性によって、さらなる効率向上効果を有する。これらに加えて適した金属は、とりわけ、銀、セリウム、マンガン、インジウムおよび/または白金で、後者よりも前者が好ましい。」<11頁11行~22行> 「【0035】 上述のように、(Cu/ZSM-5など)銅を含有するゼオライトは、脱NOxプロセスにおける活性触媒として基本的に既に知られている。しかしながら、実際の排ガス条件(温度800℃まで、水、硫黄成分を20容積%まで含む)において十分に安定した形態を形成することには成功していない。重要な共カチオン安定化機能は、場合により粘土鉱物に帰属する。これに特に適しているのは、(PILCと呼ばれる、イオン交換し柱状化した粘土の)変性粘土鉱物、あるいはクリノプチロライトおよび/またはモルデナイトなどの天然ゼオライトである。 【0036】 触媒中の(元素)銅の重量百分率含有量は、全触媒の重量ベースで測定して、好ましくは≧0.01%と≦25%の間、好ましくは≧0.1%と≦20%の間、より好ましくは≧1%と≦15%の間、さらに最も好ましくは≧2%と≦10%の間にある。これらのデーターは、共カチオンとして作用する活性金属、すなわち鉄にも適用され、両金属の混合物が積極的に試験された。活性度の改善は、Tiおよび/またはAg、Ceの添加および/またはLaの添加および/またはCa、Co、Ni、In、CrおよびMnの微量添加を通して実現することができ、それ故これらは同じく好ましい添加である。粘土鉱物の場合は、Al、Siを用いて、および/またはTiおよび/またはCu、Feを用いて柱状化したイオン交換したサンプルが特に有効であり、上記のようなことから好ましい。」<13頁12行~14頁6行> ウ 甲3の記載事項 「【0025】図1には、本発明による方法に適した排ガス浄化系の構造が略示されている。この排ガス浄化系は、酸化触媒(1)および後接続された還元触媒(2)からなる。酸化触媒中には、内燃機関から来る排ガスが侵入し、この場合この排ガスは、なかんずく一酸化窒素および酸素を含有する。酸化触媒中で一酸化窒素の一部は、二酸化窒素に酸化され、したがって一酸化窒素と二酸化窒素とからなる混合物は、酸化触媒を去る。このガス混合物には、還元触媒中への侵入前にアンモニアが還元剤として0.6~1.6のモル比NH3/NOXで供給される。還元触媒中で、このガス混合物は、窒素対水に変換される。モル比NH3/NOXは、以下α-値(α)とも呼称される。 【0026】図2は、図1の排ガス浄化系の1つの変法である。アンモニアの代わりに、排ガスには、酸化触媒系の後方でアンモニアに分解可能な化合物、例えば尿素が添加される。アンモニアの放出のために、還元触媒の前方 には尿素-加水分解触媒(3)が排ガス流中に配置されており、この尿素-加水分解触媒は、尿素をアンモニア、二酸化炭素および水に分解する。」 エ 甲4の記載事項 「【0024】 1.排気浄化装置 (1)内燃機関 排気ガスを排出する内燃機関50としては、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンが典型的であるが、排気浄化装置の取り付けが必須であるばかりか、その再生が必須のディーゼルエンジンを対象とすることが適している。 また、図1や図2中に示される、内燃機関の運転状態検出手段53は、内燃機関51の回転数や、燃焼温度、燃料噴射タイミング等を検知する手段であって、当該検出結果をも考慮して、後述する還元剤噴射量を制御できるように構成してあることが好ましい。このような運転状態検出手段を備えることにより、後述する測定手段によって算出された、SCR触媒に流入する排気ガス中のNO濃度及びNO2濃度の値の信頼性を高めることができるためである。 また、本発明を実施することにより、排気ガス中のNOXを効率的に浄化することができるが、内燃機関における、燃料の噴射タイミングを遅らせるように制御するなどして、排気ガスに含まれるNOX以外のPM等の含有量を効果的に減少させることができる。 【0025】 (2)排気通路 また、排気通路20は、内燃機関の排気口に接続されており、その途中に、酸化触媒11やSCR触媒13が配設される。かかる排気通路20の断面形状は、円形、楕円、あるいは角柱の排気通路20であれば特にその形態は特に制限されるものではない。 【0026】 (3)酸化触媒 内燃機関50から排出された排気ガスの排気通路20中に配置される酸化触媒11は、特に制限されるものではなく、公知のもの、例えば、アルミナに白金を担持させたものに、所定量のセリウム等の希土類元素を添加したものを用いることができる。 【0027】 (4)SCR触媒 また、SCR触媒13は、酸化触媒11の下流側に配置され、排気ガスに含まれるNOXを、還元剤としての尿素等を用いて浄化するためのNOX触 媒を含む排気浄化手段である。すなわち、排気ガス中に含まれるNOやNO2を触媒に吸着させるとともに、当該NOやNO2に対して尿素等の還元剤を噴射して、窒素(N2)と水(H2O)とに分解して排出する。 かかるSCR触媒13に使用されるNOX触媒についても特に制限されるものではなく、公知のもの、例えば、多孔質担体上に、活性成分としてのストロンチウム又はバリウム、及びマグネシウム等のアルカリ土類金属や、セリウムとランタン等の希土類金属、白金とロジウム等の貴金属等を含むものを用いることができる。 また、SCR触媒13においてNOやNO2に対して噴射される還元剤としての尿素についても特に制限されるものではなく、主として、尿素水、尿素粉末、アンモニアガス、アンモニウム塩等を好適に使用することができる。 さらに、これらの尿素を、上述のNOX触媒に対して噴射する際の噴射手段についても、インジェクタをはじめとして、公知のものを使用することができる。」 オ 甲5の記載事項 「【0006】 上記した目的を達成するために、請求項1の内燃機関の排気浄化装置では、内燃機関の排気系に設けられた酸化触媒と、該酸化触媒の排気下流側に排気流路を縮小するよう形成された絞り部と、該絞り部の近傍で還元剤を排ガス中に添加する還元剤添加手段と、前記絞り部の排気下流側に設けられ前記還元剤により排ガス中のNOxを選択還元するNOx触媒と、前記酸化触媒と前記絞り部と前記還元剤添加手段と前記NOx触媒を内部に有するケースとを備えたことを特徴としている。」 「【0021】 ここで、排気浄化装置30について詳しく説明する。 図2に示すように、排気浄化装置30は円筒状のケース32内部の排気 上流側に酸化触媒34を、排気下流側にSCR触媒36(NOx触媒)が配設されている。 酸化触媒34は、例えばハニカム構造のセラミックス製の触媒担体上に白金(Pt)等の触媒金属を担持して構成されており、排ガス中の炭化水素(HC)と一酸化炭素(CO)を二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に変えるとともに、NOxのうち一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に効率よく変化させ、NOxのNOとNO2との割合をおよそ等しくするものである。」 カ 甲6の記載事項 「【請求項1】 排気入口から排気出口へ至る排気経路が少なくとも一回折り返されるように内部を仕切ったケーシングと、 液体還元剤を前記排気経路の排気中に噴射するノズルと、 前記排気経路における前記ノズルよりも排気下流に配置され、前記液体還元剤により窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、 前記排気経路における前記ノズルよりも排気上流又は前記還元触媒よりも排気下流に配置され、排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、 を含んで構成されることを特徴とする排気浄化装置。 ・・・ 【請求項3】 前記排気経路における前記ノズルよりも排気上流に配置され、排気中の一酸化窒素を二酸化窒素に酸化する酸化触媒をさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の排気浄化装置。」 「【0011】 図1から図5に、本発明の実施形態を各種例示している。 各実施形態に係るSCR式の排気浄化装置は、尿素水溶液等の液体還元剤を貯蔵したタンク1から適量の液体還元剤をノズル2へ供給するための添加装置3と、排気温度やエンジン4のECU5から得られるエンジン回転速度等に応じて添加装置3の供給制御を行うECU6と、を備えている。また、タンク1内における測定に適した位置、たとえばタンク底面近傍には液体還元剤の濃度センサ7が垂下され、ECU6へ測定信号を出力している。」 「【0016】 図1に示す第1実施形態のケーシング10では、仕切壁13による折返部位14よりも上流側の排気経路15に、上流から下流へ順に酸化触媒20とフィルタ23が直列配置されている。また、仕切壁13による折返部位14よりも下流側の排気経路16には、上流から下流へ順に還元触媒21とアンモニア酸化触媒22が直列配置されている。そして、この第1実施形態の場合のノズル2は、折返部位14の上流寄りに配設されて、還元触媒21の排気上流に液体還元剤を噴射する。 ・・・ 【0018】 図2に示す第2実施形態のケーシング10では、折返部位14よりも上流 側の排気経路15に、上流から下流へ順に酸化触媒20と還元触媒21が直列配置されている。また、折返部位14よりも下流側の排気経路16には、上流から下流へ順にフィルタ23とアンモニア酸化触媒22が直列配置されている。そしてノズル2は、上流側の排気経路15における酸化触媒20と還元触媒21との間に配設されている。」 (2) 甲1に記載された発明 甲1の上記(1) ア の記載事項によると、甲1には、次の「排気処理システム」に係る発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されていると認められる。 「ディーゼルエンジンの排気流れを処理する排気処理システムであって、 a)酸化触媒 b)前記酸化触媒とその下流に位置するアンモニア又はアンモニア前駆体を前記排気流れに計量して入れる注入器、及び c)注入器の下流に位置する壁流式モノリス、 を含み、 前記壁流式モノリスはSCR触媒組成物を含んで成っていて、 前記SCR触媒組成物は、銅及び鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分及びゼオライトを含んで成る、 排気処理システム。」 また、甲1には、次の「排気物を処理する方法」に係る発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されていると認められる。 「NOxを含有するディーゼルエンジンの排気流れの中の生じた排気物を処理する方法であって、 (a)前記排気流れを酸化用触媒に通すことでNOの実質的な部分に酸化を受けさせてNO2を生じさせることでNO2が豊富な排気流れを生じさせ、 (b)アンモニア又はアンモニア前駆体を前記NO2が豊富な排気流れに定期的な間隔で計量して入れた後、 (c)前記排気流れを壁流式モノリスに通すことでNOxの実質的な部分に還元を受けさせてN2を生じさせる、 ことを含んで成り、 前記壁流式モノリスは多数の縦方向に伸びる通路を有していて、前記多数の縦方向に伸びる通路は、前記通路に境界をつけそれを限定している縦方向に伸びる壁で形成されており、 壁流式モノリスはSCR触媒組成物を含んで成っていて、 前記SCR触媒組成物は、銅及び鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分及びゼオライトを含んで成る、 方法。」 (3) 本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、ゼオライト触媒に関して、本件発明1は、「8から150のシリカ対アルミナ比(SAR)を有し、8個の四面体原子による最大環サイズを含み、CHA骨格型コードであり、銅からなる少なくとも一つの遷移金属を含」む「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」が特定されているのに対して、甲1発明1は「SCR触媒組成物は、銅及び鉄成分の中の1種以上から選択される卑金属成分及びゼオライトを含んで成る」ことが規定されている点で少なくとも相違している。 イ 相違点についての検討 上記相違点について、異議申立人は、以下のように主張している。 甲2には、クリノプチロライト、チャバサイト、エリオナイト、モルデナイト、フェリエライト、MFI(ZSM-5)及び同様にゼオライト-βの使用が好ましく、後者のゼオライト構造は、より低いAl含有量を特徴とし、イオン交換能力は低下するが、温度安定度が高い(連続運転で550℃まで安定)という利点を有することが記載されており(甲2-2の【0022】)、さらに、鉄及び銅は、それらの触媒活性によって、さらな効率向上効果を有することや、銅にイオン交換した合成チャバサイトをSCR触媒に用いることも示唆されている(甲2-2の【0035】)。 また、温度安定度が高いゼオライトの例にチャバサイトが記載されており、より低いAl含有量を特徴とし、イオン交換能力は低下するが、温度安定度が高い(連続運転で550℃まで安定)との記載から、シリカ対アルミナ比が高い材料を用いることの示唆があるといえる。さらに、イオン交換したゼオライトの例示と、銅又は鉄が触媒活性の点で好ましいことも示唆されている。 したがって、高温耐性と触媒活性という課題を持つ甲1に記載された発明に、同様の課題を持つ甲2に示唆された構成を適用して、相違点に係る設定登録時の請求項1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 上記主張を踏まえて、上記相違点について検討する。 甲1発明1において想定する「ゼオライト」は、甲1の記載を参照すると、具体的には、硫酸塩毒に高い耐性を示しかつSCR過程及びアンモニアの酸化の両方に良好な活性を示し、孔径が7オングストロームの孔径を示す、 USY、ベータ及びZSM―20が挙げられ(甲1の【0038】)、好適には、銅による交換をしたベータゼオライトであるといえる(請求項5~7、実施例)。 一方、甲2は、自動車の排ガスフロー中のNOx浄化用触媒に関する文献であり、ベントナイト等から選択される変性粘土鉱物と天然のイオン交換した及び/又は合成したゼオライトとを含むNOx浄化用触媒について記載され(請求項1、2)、上記NOx浄化用触媒に銅を含むものである(請求項5、6)。 しかし、当該NOx浄化用触媒は、還元剤として「炭化水素、および/またはCO、および/またはH2」を用いるものであり(【0013】)、しかも、ゼオライトは、NOを酸化する酸化性領域であることを想定している(【0020】)。 また、「チャバサイト」は、単にゼオライトの多数の選択肢のうちの1つとして挙げられたものであり、甲2に記載のNOx浄化用触媒の使用に特に適したゼオライトでもない。 そうすると、アンモニアを還元剤として用いるSCR触媒組成物を含む甲1発明1に係る排気処理システムにおいて、甲2に記載されたチャバザイトを選択するという動機付けは存在しない。 さらに、甲3~甲6は、SCR触媒を用いた排気システムについて開示する文献であって、これらの記載事項を検討しても、上記相違点に係る判断が左右されるものではない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明1及び甲2~6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4) 本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであって、本件発明2~9と甲1発明1とをそれぞれ対比すると、上記(3)アと同じ相違点で相違するから、当該相違点についての判断も上記(3)イと同様である。 したがって、本件発明2~9は、甲1発明1及び甲2~6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5) 本件発明10について 本件発明10と甲1発明2とを対比すると、本件発明10は、本件発明1と同様に「合成アルミノシリケート小細孔ゼオライト触媒」を特定するのに対して、甲1発明2は、甲1発明1と同様にSCR触媒組成物を規定する点でそれぞれ共通するものであり、少なくとも上記(3)アと同じ相違点で相違するから、当該相違点についての判断も上記(3)イと同様である。 したがって、本件発明10は、甲1発明2及び甲2~6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6) 本件発明11~13について 本件発明11~13は、本件発明10を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明11~13と甲1発明2とをそれぞれ対比すると、少なくとも本件発明10と同じ相違点で相違するから、当該相違点についての判断も上記本件発明10と同様である。 したがって、本件発明11~13は、甲1発明2及び甲2~6に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (7) 小括 以上のとおりであるから、申立理由3には理由がない。 第7 むすび 以上のとおり、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700964

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