特許異議申立
2022-700709
レンズ鏡筒及びカメラ
- 審判番号
- 2022-700709
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-527628
- 登録番号
- 7006595
- 請求日
- 2022年07月25日
- 審決日
- 2023年01月26日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニコン
- 【権利者代理人】関口 正夫
- 【権利者代理人】仲野 孝雅
- 【異議申立人】丸山 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P1652.121-YAA(G02B) / P1652.537-YAA(G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7006595号発明「レンズ鏡筒及びカメラ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7006595号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
特許第7006595号の請求項1、4、5及び9に係る特許を維持する。
特許第7006595号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続きの経緯
特許第7006595号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、平成29年(2017年)7月12日に出願され(パリ条約による優先権主張 日本国特許庁受理 2016年7月15日)、令和4年1月11日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月24日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和4年 7月25日 :特許異議申立人 丸山美穂(以下、単に
「申立人」という。)による特許異議の申立て
令和4年 9月15日付け:取消理由通知書
令和4年11月17日 :特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
なお、令和4年11月17日になされた訂正により、訂正後の請求項1は訂正前の請求項2と同じ構成となったところ、当該訂正前の請求項2については、特許異議申立書では、特許法第29条第1項第3号及び同法第2項についての申し立てがなされておらず、また、特許法第36条第6項第1号についての申し立ては、訂正後の請求項1は訂正前の請求項2と同じ構成であって申し立ての理由が変わることはないため、特許法第120条の5第5項に定める「特許異議申立人に意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別な事項があるとき」に該当するから、特許異議申立人に対し、当該訂正についての意見を求めなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「を備え」とあるのを、「前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する第1検出部と、を備え」に訂正する。
請求項1の記載を引用する各請求項も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「請求項2に記載の」とあるのを、「請求項1に記載の」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1から請求項3の何れか一項に記載の」とあるのを、「請求項1又は請求項3に記載の」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1から請求項8の何れか一項に記載の」とあるのを、「請求項1、請求項3から請求項8の何れか一項に記載の」に訂正する。
(6)本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項1~9について請求されたものである。
2 訂正についての当審の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に、訂正前の請求項2の構成である「前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する第1検出部」を備える、との構成を付加することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項2の構成である「前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する第1検出部」を備える、を付加する訂正であるから、当該訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項2の構成である「前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する第1検出部」を備える、を付加する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
エ 独立特許要件について
請求項1は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、請求項2を削除することで、特許請求の範囲を減縮するものであるから、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であるから、当該訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
エ 独立特許要件について
請求項2は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正事項1で、訂正前の請求項2の構成を付加する訂正をするとともに、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項2を請求項1に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項3は、訂正事項1で、訂正前の請求項2の構成を付加する訂正をするとともに、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項2を請求項1に訂正するものであるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項3は、訂正事項1で、訂正前の請求項2の構成を付加する訂正をするとともに、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項2を請求項1に訂正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
特許異議の申立てがされていない請求項3に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項から請求項2を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項4は、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項から請求項2を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項4は、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項から請求項2を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
請求項4は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項から請求項2を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項5は、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項から請求項2を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書等に記載した範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項5は、訂正事項2で請求項2を削除することに伴って、引用する請求項から請求項2を削除する訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
請求項5は、特許異議申立てがなされた請求項であるから、第120条の5第9項で読み替えて準用する第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許第7006595号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の請求項
本件訂正により訂正された訂正後の請求項1ないし9は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
第1フォーカスレンズを保持する第1レンズ保持枠と、
電力によって駆動し、前記第1レンズ保持枠を光軸方向に直接移動させる第1駆動部と、
第2フォーカスレンズを保持する第2レンズ保持枠と、
電力によって駆動し、前記第2レンズ保持枠を光軸方向に直接移動させる第2駆動部と、
前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する第1検出部と、
を備え、
前記第1レンズ保持枠は、前記第2レンズ保持枠の内周側に配置され、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とは径方向に重複し、
前記第1フォーカスレンズ及び前記第2フォーカスレンズは、フォーカス動作を行うと、前記第1駆動部及び前記第2駆動部の各々によって光軸方向に移動するレンズ鏡筒。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記第1検出部は、被検出部を含み、
前記被検出部は、前記第2レンズ保持枠と係合する第1係合部に沿って前記第1レンズ保持枠に保持される
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第1駆動部又は前記第2駆動部を保持する筒と、
前記第2レンズ保持枠と前記筒との位置関係を検出する第2検出部と、を備える
請求項1から請求項3の何れか一項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記第1レンズ保持枠に挿入されるガイドバーを備える
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1レンズ保持枠は、前記第2レンズ保持枠と係合する第1係合部と前記ガイドバーが挿入される第1穴部とを有し、
前記第1係合部の光軸方向の長さは、前記第1穴部の光軸方向の長さより長い
請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記第1駆動部又は前記第2駆動部を保持する筒を備え、
前記第2レンズ保持枠は、前記筒と係合する第2係合部を有する
請求項5又は請求項6に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第2レンズ保持枠に挿入されるガイドバーを備え、
前記第2レンズ保持枠は、前記ガイドバーが挿入される第2穴部を有し、
前記第2係合部の光軸方向の長さは、前記第2穴部の光軸方向の長さより長い
請求項7に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項1、請求項3から請求項8の何れか一項に記載のレンズ鏡筒を備える撮像装置。」
第4 特許異議の申立てについての判断
1 本件発明
上記第2で示したように訂正が認められるから、本件請求項1ないし請求項9に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記第3参照)
2 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)訂正前の請求項1、4、5及び9に係る特許に対して、当審が令和4年9月15日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
[理由1](新規性)
訂正前の請求項1、5、9に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、取り消されるべきものである。
[理由2](進歩性)
訂正前の請求項1、5、9に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、また、訂正前の請求項1、4、9に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)甲号証
甲第1号証:特開2015-49334号公報
甲第2号証:特開2006-292959号公報
(3)当審の判断
訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1に、訂正前の請求項2の構成である「前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する第1検出部」を備える、との構成を付加したものである。
これに対して、訂正前の請求項2は、上記構成を備えることにより、甲1発明あるいは甲2発明ではなく、また、甲1発明あるいは甲2発明から容易に想到し得たとはいえないものである。
したがって、訂正後の請求項1に係る発明は、甲1発明あるいは甲2発明ではなく、また、甲1発明あるいは甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議の申立ての理由について
(1)特許異議申立書に記載された理由
訂正前の請求項1及び2について
申立人は、特許異議申立書において、下記各理由により、訂正前の請求項1及び2に対応する発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨を主張している(第13頁第17行~第15頁第17行)。
ア 訂正前の請求項1に係る発明の課題および作用効果について、本件特許明細書及び図面には明示も示唆もされておらず、訂正前の請求項1がどのような課題を解決する(どのような効果が得られる)発明なのかを当業者は全く理解することができない点。
イ 訂正前の請求項2に係る発明は、第1検出部について、「前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する」としか特定しておらず、実施形態の構成を特定したものとなっていない、比較形態の構成も含んだものとなっており、課題を解決するための手段を特定していないから、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである点。
(2)当審の判断
ア 上記(1)アの申立てについて
訂正後の請求項1は、訂正前の請求項1に、訂正前の請求項2の構成である「前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する第1検出部」を備える、との構成を付加したものであるから、訂正前の請求項2に相当するものであって、訂正前の請求項1は、訂正の結果、実質的に削除されたと認められる。
したがって、申立人の上記(1)アの申立ては理由がないものとなった。
イ 上記(1)イの申立について
訂正後の請求項1に係る発明の「第1検出部」は、「前記第1レンズ保持枠は、前記第2レンズ保持枠の内周側に配置され、前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠とは径方向に重複し」ている構成(以下「構成A」という。)を備えることを前提に、「前記第1レンズ保持枠と前記第2レンズ保持枠との位置関係を検出する」ものであるから、訂正後の請求項1に係る発明は、このような構成Aを備えない「比較形態」(【0035】~【0040】及び図4)の構成を含まず、第1実施形態(【0006】~【0030】、図1及び2)の構成を特定したものである。
したがって、申立人の上記(1)イの理由は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、令和4年9月15日付け取消理由通知の理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由によっては、訂正後の請求項1、4、5及び9に係る特許を取り消すことはできない。そして、他に訂正後の請求項1、4、5及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項2に係る特許は、訂正により削除されたため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、この特許についての特許異議の申立ては却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700709