特許異議申立
2023-700026
アクセサリ、カメラボディ及び電子機器
- 審判番号
- 2023-700026
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-237572
- 登録番号
- 7099303
- 請求日
- 2023年01月12日
- 審決日
- 2024年02月09日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニコン
- 【権利者代理人】西澤 和純
- 【権利者代理人】大浪 一徳
- 【権利者代理人】小林 淳一
- 【異議申立人】丸山 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 波多江 進
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P1652.113-YAA(G03B) / P1652.121-YAA(G03B) / P1652.537-YAA(G03B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7099303号発明「アクセサリ、カメラボディ及び電子機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7099303号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第7099303号の請求項1、2、5、7-10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7099303号(以下「本件特許」という。)の請求項1-10に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)8月16日を出願日とする出願である特願2018-153307号(以下「原出願」という。)の一部を2018年(平成30年)12月19日に新たな特許出願としたものであって、令和4年7月4日にその特許権の設定登録がされ、同月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、令和5年1月12日に特許異議申立人丸山美穂(以下「申立人」という。)により請求項1、2、5、7-10に対して特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て後の手続の経緯は次のとおりである。
令和5年 4月28日付け :取消理由通知書
同年 7月 3日 :訂正請求書・意見書(特許権者)
同年 8月24日 :意見書(申立人)
同年 9月29日付け :取消理由通知書(決定の予告)
同年12月 1日 :訂正請求書・意見書(特許権者)
なお、当審は、申立人に対して令和5年12月1日に提出された訂正請求書による訂正に係る請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をするとともに期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人は意見書を提出しなかった。
第2 本件訂正の適否について
1 本件訂正の内容
令和5年12月1日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下「本件訂正」といい、本件訂正に係る請求を「本件訂正請求」という。)は、本件特許の特許登録時の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1-10を本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正するものであって、本件訂正により請求項1-10を訂正する事項(以下「訂正事項1」等という。)は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を示すものとして当合議体が付した。)。
なお、本件訂正請求は、一群の請求項である訂正後の請求項1-10について請求するものである。
(1) 訂正事項1
請求項1における「前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子」との記載を、
「前記カメラボディとの通信の可否を前記カメラボディに示すために用いられるレディ端子」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、5、7-10も同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
請求項1における「第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなる」との記載を、
「第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、
前記第1の通信の開始時に入力される前記第1データ信号の一定の信号列を識別して、前記第1の通信のクロック周波数を求める制御部、を備える」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、5、7-10も同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
請求項2における「請求項1に記載のアクセサリにおいて、
第1の通信を行う端子は、」との記載を、
「請求項1に記載のアクセサリにおいて、
前記第1データ信号には、前記カメラボディへの送信指令が含まれ、
第1の通信を行う端子は、」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項5、7-10も同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
請求項3における「請求項1または請求項2に記載のアクセサリにおいて、」との記載を、
「カメラボディに着脱可能なアクセサリであって、
前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子と、
前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、
前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、
を有し、
第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、」に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項5、7-10も同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
請求項3における「設置端子」との記載を、「前記接地端子」に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項5、7-10も同様に訂正する。
(6) 訂正事項6
請求項4における「請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、」との記載を、
「カメラボディに着脱可能なアクセサリであって、
前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子と、
前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、
前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、
を有し、
第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5、7-10も同様に訂正する。
(7) 訂正事項7
請求項6における「請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、」との記載を、
「カメラボディに着脱可能なアクセサリであって、
前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子と、
前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、
前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、
を有し、
第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、」に訂正する。
請求項6の記載を引用する請求項7-10も同様に訂正する。
(8) 訂正事項8
請求項10における「請求項1から10のいずれかに記載のアクセサリを取り付け可能なカメラボディ」との記載を、「請求項1から8のいずれかに記載のアクセサリを取り付け可能なカメラボディ」に訂正する。
2 本件訂正の適否についての当審の判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における「前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子」について、前記カメラボディとの通信の可否を「前記カメラボディに」示すために用いられることに限定するものである。
よって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
本件特許の願書に添付した特許登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の【0028】には「ボディ側制御部23は、コマンドデータ通信の開始時(T1)に、まずRDY(B)端子の信号レベルを確認する。RDY(B)端子の信号レベルはレンズ側制御部33のコマンドデータ通信の可否を表している。レンズ側制御部33は、コマンドデータ通信を行えない状態である場合には、RDY(L)端子の信号レベル(電位)をハイレベル(Hレベル)にする。レンズ側制御部33は、コマンドデータ通信を行える状態である場合には、レンズ側通信部34を介してRDY(L)端子の信号レベル(電位)をローレベル(Lレベル)にする。」と、記載されている。
よって、訂正事項1による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張変更の有無
訂正事項1は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項1の小括
よって、訂正事項1による訂正は、訂正要件を満たす。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1における「アクセサリ」について、「前記第1の通信の開始時に入力される前記第1データ信号の一定の信号列を識別して、前記第1の通信のクロック周波数を求める制御部、を備える」ことに限定するものである。
よって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
本件特許明細書等の【0099】には「コマンドデータ通信の開始時に、ボディ側通信部24からDATAB(B)端子及びDATAB(L)端子を介してレンズ側通信部34Aが受信する信号列は一定である。このため、レンズ側制御部33Aは、コマンドデータ通信の開始時にボディ側通信部24から受信した信号列を識別し、コマンドデータ通信によるデータ送受信の同期に必要な周期タイミング及びクロック周波数を求めることが可能である」と、【0100】には「第2の実施の形態に係る交換レンズ3Aは、コマンドデータ通信によるデータ送受信の同期に必要な周期タイミング及びクロック周波数を求めるための専用の回路を有するASIC(application specific integrated circuit)を備えてもよい」と、及び、【0104】には「コマンドデータ通信の開始時にボディ側通信部24から受信した信号列を識別して求めた周期タイミング及びクロック周波数を用いて、DATAB(L)端子を介したボディ側通信部34からのボディ側コマンド信号の受信、及び、DATAL(L)端子を介したボディ側通信部34へのレンズ側データ信号の送信を行う」と、それぞれ記載されている。
よって、訂正事項2による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張変更の有無
訂正事項2は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項2の小括
よって、訂正事項2による訂正は、訂正要件を満たす。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、本件訂正前の請求項2の「第1データ信号」に関して、「前記第1データ信号には、前記カメラボディへの送信指令が含まれ[る]」ことに限定するものである。
よって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
本件特許明細書等の【0027】には「ボディ側制御部23は、ボディ側通信部24およびレンズ側通信部34を介して、コマンドデータ通信により交換レンズ3に種々の制御指令、制御内容を送信し、交換レンズ3から応答内容やその他のデータ等を受信することにより交換レンズ3との間で種々の情報を送受信する。ここでいう制御指令とは、例えばレンズ情報の送信指令である。」と、記載されている。
よって、訂正事項3による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張変更の有無
訂正事項3は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項3の小括
よって、訂正事項3による訂正は、訂正要件を満たす。
(4) 訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、本件訂正前の請求項1又は2の記載を引用する請求項3のうち、請求項1の記載を引用する請求項3を独立形式の請求項にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項4は、上記アで述べたとおり、本件訂正前の請求項3のうち、請求項1の記載を引用する請求項3を独立形式の請求項に変更するものである。
よって、訂正事項4による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張変更の有無
訂正事項4は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
訂正事項4は、請求項3に係る特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、請求項3については特許異議の申立てがなされていないことから、請求項3に係る訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。
しかしながら、請求項3で特定する「前記カメラボディから電源電圧が供給される電源端子と、前記電源端子の接地電位として用いられる接地端子と、を有し、前記第1データ端子及び前記第2データ端子と、前記電源端子及び設置端子とは、前記レディ端子の反対側に配置される」については、申立人が提出した甲第1号証に記載も示唆もなく、他に証拠を発見しない。
そして、請求項3に係る発明について、新規性や進歩性以外の独立特許要件違反となる理由も発見しない。
よって、請求項3に係る訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
オ 訂正事項4の小括
よって、訂正事項4による訂正は、訂正要件を満たす。
(5) 訂正事項5について
ア 訂正の目的
訂正事項5は、本件訂正前の請求項3における「設置端子」との誤記を、「前記接地端子」と改める訂正である。
よって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項5は、上記アのとおり誤記を訂正するものである。
よって、訂正事項5による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張変更の有無
訂正事項5は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
訂正事項5は、請求項3に係る誤記の訂正を目的とするものであるところ、請求項3については特許異議の申立てがなされていないことから、請求項3に係る訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。
しかしながら、上記(4)エに記載したとおり、請求項3に係る発明について、独立特許要件違反となる理由を発見しない。
よって、請求項3に係る訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
オ 訂正事項5の小括
よって、訂正事項5による訂正は、訂正要件を満たす。
(6) 訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、本件訂正前の請求項1から請求項3のいずれか一項の記載を引用する請求項4のうち、請求項1の記載を引用する請求項4を独立形式の請求項にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項6は、上記アで述べたとおり、本件訂正前の請求項4のうち、請求項1の記載を引用する請求項6を独立形式の請求項に変更するものである。
よって、訂正事項6による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張変更の有無
訂正事項6は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
訂正事項6は、請求項4に係る特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、請求項4については特許異議の申立てがなされていないことから、請求項4に係る訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。
しかしながら、請求項4で特定する「前記カメラボディに第3データ信号を出力する第3データ端子と、前記カメラボディにクロック信号を出力するクロック端子と、を有し、前記第3データ端子及び前記クロック端子を用いて第2の通信を行う」ことについては、申立人が提出した甲第1号証に記載も示唆もなく、他に証拠を発見しない。
そして、請求項4に係る発明について、新規性や進歩性以外の独立特許要件違反となる理由も発見しない。
よって、請求項4に係る訂正事項6による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
オ 訂正事項6の小括
よって、訂正事項6による訂正は、訂正要件を満たす。
(7) 訂正事項7について
ア 訂正の目的
訂正事項7は、本件訂正前の請求項1から請求項5のいずれか一項の記載を引用する請求項6のうち、請求項1を引用する請求項6を独立形式の請求項にする訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項7は、上記アで述べたとおり、本件訂正前の請求項6のうち、請求項1の記載を引用する請求項6を独立形式の請求項に変更するものである。
よって、訂正事項7による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張変更の有無
訂正事項7は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件について
訂正事項7は、請求項6に係る特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、請求項6については特許異議の申立てがなされていないことから、請求項6に係る訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件が課されることになる。
しかしながら、請求項6で特定する「カメラボディが備える、クロック信号を出力可能な端子と接触する端子を持たない」ことについては、申立人が提出した甲第1号証に記載も示唆もなく、他に証拠を発見しない。
そして、請求項6に係る発明について、新規性や進歩性以外の独立特許要件違反となる理由も発見しない。
よって、請求項6に係る訂正事項7による訂正は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
オ 訂正事項7の小括
よって、訂正事項7による訂正は、訂正要件を満たす。
(8) 訂正事項8について
ア 訂正の目的
訂正事項8は、本件訂正前の請求項10に「請求項1から10のいずれかに記載のアクセサリ」と記載されていたところ、請求項9はアクセサリではなくカメラボディであり、請求項10はアクセサリではなく電子機器でありかつ自項である点で明瞭でない記載であった本件訂正前の請求項10の記載を、「請求項1から8のいずれかに記載のアクセサリ」と訂正することで明瞭とするものである。
よって、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項追加の有無
訂正事項8は、上記アで述べたとおり、「請求項1から10のいずれか」を引用するものであった本件訂正前の請求項10を、「請求項1から8のいずれか」を引用するものとする訂正である。
よって、訂正事項8による訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の実質的拡張変更の有無
訂正事項8は、上記ア及びイに照らせば、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項8の小括
よって、訂正事項8による訂正は、訂正要件を満たす。
3 訂正の適否についてまとめ
以上のとおり、本件訂正は、訂正要件を満たすものである。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められたところ、本件訂正後の請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」-「本件発明10」という。)は、本件訂正後の請求項1-10の記載により特定されるとおりのものであり、その請求項1-10の記載は次のとおりのものである。
「【請求項1】
カメラボディに着脱可能なアクセサリであって、
前記カメラボディとの通信の可否を前記カメラボディに示すために用いられるレディ端子と、
前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、
前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、
を有し、
第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、
前記第1の通信の開始時に入力される前記第1データ信号の一定の信号列を識別して、前記第1の通信のクロック周波数を求める制御部、を備えるアクセサリ。
【請求項2】
請求項1に記載のアクセサリにおいて、
前記第1データ信号には、前記カメラボディへの送信指令が含まれ、
第1の通信を行う端子は、前記カメラボディからクロック信号を受信しないアクセサリ。
【請求項3】
カメラボディに着脱可能なアクセサリであって、
前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子と、
前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、
前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、
を有し、
第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、
前記カメラボディから電源電圧が供給される電源端子と、
前記電源端子の接地電位として用いられる接地端子と、
を有し、
前記第1データ端子及び前記第2データ端子と、前記電源端子及び前記接地端子とは、
前記レディ端子の反対側に配置されるアクセサリ。
【請求項4】
カメラボディに着脱可能なアクセサリであって、
前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子と、
前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、
前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、
を有し、
第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、
前記カメラボディに第3データ信号を出力する第3データ端子と、
前記カメラボディにクロック信号を出力するクロック端子と、
を有し、
前記第3データ端子及び前記クロック端子を用いて第2の通信を行うアクセサリ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、
前記第1の通信は、全二重通信であるアクセサリ。
【請求項6】
カメラボディに着脱可能なアクセサリであって、
前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子と、
前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、
前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、
を有し、
第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、
カメラボディが備える、クロック信号を出力可能な端子と接触する端子を持たないアクセサリ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のアクセサリにおいて、
前記第1データ信号は、前記カメラボディで生成されるクロック信号に同期して前記カメラボディから出力される信号であるアクセサリ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のアクセサリは、交換レンズである。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のアクセサリを取り付け可能なカメラボディ。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のアクセサリと、請求項1から8のいずれかに記載のアクセサリを取り付け可能なカメラボディとを備える電子機器。」
第4 証拠方法
申立人が提出した証拠方法は次のとおりである。
甲第1号証:特開2017-181980号公報
第5 取消理由(決定の予告)及び取消理由の概要
1 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正前の令和5年7月3日に提出された訂正請求書により訂正された請求項1、2、5、7-10に係る特許に対して、当審において令和5年9月29日付け取消理由通知書(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(進歩性)本件特許の請求項1、2、5、7-10に係る発明は、原出願の出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 取消理由の概要
本件特許の特許登録時の請求項1、2、5、7-10に係る特許に対して、当審において令和5年4月28日付け取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由1(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
理由2(進歩性)本件特許の請求項1、2、5、7-10に係る発明は、原出願の出願前日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第6 当審の判断
第6-1 取消理由通知(決定の予告)で通知した進歩性の取消理由について
1 甲第1号証に記載された事項及び甲第1号証に記載された発明
以下、甲第1号証を「甲1」という。
(1) 甲1に記載された事項
原出願の出願前日本国内又は外国において発行された甲1には、下記の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。)。
ア 特許請求の範囲
「【請求項1】
撮像装置に取り外し可能に装着されるアクセサリ装置であって、
前記撮像装置との間に、前記撮像装置から前記アクセサリ装置への通知に用いられる通知チャネルと、前記アクセサリ装置から前記撮像装置へのデータ送信に用いられる第1のデータ通信チャネルと、前記撮像装置から前記アクセサリ装置へのデータ送信に用いられる第2のデータ通信チャネルとから構成される3つのチャネルを設けるアクセサリ通信部、及び前記アクセサリ通信部の制御を行うアクセサリ制御部を有し、
前記アクセサリ制御部は、前記通知チャネルを介して送信要求信号を受信することに応じて、前記第1のデータ通信チャネルを介して前記撮像装置に対してデータを送信し、
前記アクセサリ制御部は、前記撮像装置に対して送信するデータに、前記撮像装置から前記アクセサリ装置に対して前記送信要求信号が送信されないようにするための通信待機要求を選択的に付加することを特徴とするアクセサリ装置。」
「【請求項5】
前記アクセサリ制御部は、前記撮像装置と調歩同期式の通信を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアクセサリ装置。」
「【請求項9】
前記アクセサリ装置は、クロック信号と同期したクロック同期式の通信方式と、調歩同期式の通信方式の間で通信方式を切り替えて前記撮像装置と通信可能であり、
前記アクセサリ制御部は、前記クロック同期式の通信において、前記通知チャネルを介して前記撮像装置から送信される前記クロック信号を受信し、前記調歩同期式の通信において、前記通知チャネルを介して前記送信要求信号を受信することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のアクセサリ装置。」
イ 【0001】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に通信が可能な撮像装置と交換レンズ等のアクセサリ装置に関する。」
ウ 【0014】-【0037】
「【0014】
以下、本発明のアクセサリ装置としての交換レンズ及び撮像装置としてのカメラ本体における通信制御方法について、添付の図面に基づいて詳細に説明する。まず、本実施例における用語の定義について説明する。
【0015】
「通信フォーマット」は、カメラ本体と交換レンズとの間の通信全体の取り決めを示す。「通信方式」はクロック同期式と調歩同期式を意味し、クロック同期式を通信方式A、調歩同期式を通信方式Bとする。「データフォーマット」は通信待機要求信号(BUSY信号)の付加の可否を示し、BUSY信号の付加を許可するデータフォーマットを「フォーマットF1」とし、BUSY信号の付加を禁止するデータフォーマットを「フォーマットF2」とする。
【0016】
「通信モード」は、通信方式とデータフォーマットの組み合わせを意味し、本実施例では以下の3つの通信モードについて説明する。「通信モードM1」は通信方式AかつフォーマットF1の通信モードであり、「通信モードM2」は通信方式BかつフォーマットF1の通信モードである。また、「通信モードM3」は通信方式BかつフォーマットF2の通信モードである。
・・・(中略)・・・
【0019】
図1には、本発明の実施例1である撮像装置としてのカメラ本体200とこれに取り外し可能に装着されたアクセサリ装置としての交換レンズ100とを含む撮像システム(以下、カメラシステムという)の構成を示している。
【0020】
カメラ本体200と交換レンズ100は、それぞれが有する通信部を介して制御命令や内部情報の伝送を行う。また、それぞれの通信部は複数の通信フォーマットをサポートしており、通信データの種類や通信目的に応じて互いに同期して同一の通信フォーマットに切り替えることにより、様々な状況に対する最適な通信フォーマットを選択することが可能となっている。
【0021】
まず、交換レンズ100とカメラ本体200の具体的な構成について説明する。交換レンズ100とカメラ本体200は、結合機構であるマウント300を介して機械的および電気的に接続されている。交換レンズ100は、マウント300に設けられた不図示の電源端子を介してカメラ本体200から電力の供給を受け、後述する各種アクチュエータやレンズマイクロコンピュータ(以下、レンズマイコンという)111の制御を行う。また、交換レンズ100とカメラ本体200は、マウント300に設けられた通信端子(図2に示す)を介して相互に通信を行う。
・・・(中略)・・・
【0025】
レンズマイコン111は、交換レンズ100内の各部の動作を制御するアクセサリ制御部である。レンズマイコン111は、アクセサリ通信部としてのレンズ通信部112を介して、カメラ本体200から送信された制御コマンドを受信し、レンズデータの送信要求を受ける。また、レンズマイコン111は、制御コマンドに対応するレンズ制御を行い、レンズ通信部112を介して送信要求に対応するレンズデータをカメラ本体200に送信する。
【0029】
カメラ本体200は、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子201と、A/D変換回路202と、信号処理回路203と、記録部204と、カメラマイクロコンピュータ(以下、カメラマイコンという)205と、表示部206とを有する。
・・・(中略)・・・
【0033】
次に、図2を用いてカメラ本体200と交換レンズ100との間で構成される通信回路とこれらの間で行われる通信制御について説明する。カメラマイコン205は、レンズマイコン111との間での通信フォーマットを管理する機能と、レンズマイコン111に対して送信要求等の通知を行う機能とを有する。また、レンズマイコン111は、レンズデータを生成する機能と該レンズデータを送信する機能とを有する。
【0034】
カメラマイコン205とレンズマイコン111は、マウント300に設けられた通信端子とそれぞれに設けられた通信インタフェース回路208a、112aを介して通信を行う。ここで、通信インタフェース回路208aとカメラデータ送受信部208bを合わせてカメラ通信部208と呼び、通信インタフェース回路112aとレンズデータ送受信部112bを合わせてレンズ通信部112と呼ぶ。
【0035】
本実施例では、カメラマイコン205とレンズマイコン111は、3つのチャネルを用いた3線式の通信方式A及び通信方式Bによるシリアル通信を行う。
【0036】
上記3つのチャネルのうちの1つは、通信方式Aではクロックチャネルとなり、通信方式Bでは送信要求チャネルとなる通知チャネルである。他の2つのチャネルのうち1つは、レンズマイコン111からカメラマイコン205へのレンズデータ送信に用いられる第1のデータ通信チャネルである。もう1つのチャネルは、カメラマイコン205からレンズマイコン111へのカメラデータ送信に用いられる第2のデータ通信チャネルである。
【0037】
第1のデータ通信チャネルでレンズマイコン111からカメラマイコン205に信号として送信されるレンズデータを、レンズデータ信号DLCという。また、第2のデータ通信チャネルでカメラマイコン205からレンズマイコン111に信号として送信されるカメラデータを、カメラデータ信号DCLという。」
エ 【0050】-【0054】
「【0050】
次に、通信方式Bでの通信について説明する。ここでは通信方式Bを用いてフォーマットF1により通信を行う通信モードM2についても併せて説明する。図4には、通信モードM2においてカメラマイコン205とレンズマイコン111との間でやり取りされる通信信号の波形を示している。先に述べたように、フォーマットF1では、レンズデータ信号DLCにBUSYフレームが選択的に付加される。
【0051】
通信方式Bにおいて、送信要求チャネルは、通信マスタであるカメラマイコン205から通信スレーブとしてのレンズマイコン111へのレンズデータの送信要求等の通知に用いられる。送信要求チャネルでの通知は該送信要求チャネルでの信号のレベル(電圧レベル)をHigh(第1のレベル)とLow(第2のレベル)との間で切り替えることで行う。以下の説明では、通信方式Bにおいて送信要求チャネルに供給される信号を送信要求信号RTSという。
【0052】
第1のデータ通信チャネルは、通信方式Aと同様に、レンズマイコン111からカメラマイコン205への各種データを含むレンズデータ信号DLCの送信に用いられる。第2のデータ通信チャネルも、通信方式Aと同様に、カメラマイコン205からレンズマイコン111への制御コマンドや送信要求コマンド等を含むカメラデータ信号DCLの送信に用いられる。
【0053】
通信方式Bでは、通信方式Aと異なり、カメラマイコン205とレンズマイコン111は、共通のクロック信号に同期してデータの送受信を行うのではなく、予め通信速度を設定し、この設定に基づいた通信ビットレートで送受信を行う。通信ビットレートとは、1秒間に転送することができるデータ量を示し、単位はbps(bit per second)で表される。
【0054】
なお、本実施例では、この通信方式Bにおいても、通信方式Aと同様に、カメラマイコン205とレンズマイコン111は相互に送受信を行う全二重通信方式(フルデュープレックス方式)で通信を行う。」
オ 【0092】-【0097】
「【0092】
次に、図6を用いて、カメラマイコン205とレンズマイコン111の間で行われる通信フォーマットの決定手順について説明する。カメラマイコン205及びレンズマイコン111は、コンピュータプログラムである通信制御プログラムに従って、図6、図7のフローチャートに示す通信制御を行う。なお図6、7において「S」はステップ意味する。
【0093】
まず、カメラ本体200に交換レンズ100が装着されると、ステップS100、ステップS200において、カメラマイコン205及びレンズマイコン111は、通信フォーマットを、通信の成立が保障された初期通信フォーマットに設定する。ここで、初期通信フォーマットは、本実施例で開示した通信方式とデータフォーマットの組み合わせでもよいし、それ以外の通信フォーマットでもよい。なお、初期通信フォーマットとして調歩同期式の通信フォーマットが選択されるときには、どのようなカメラと交換レンズが組み合わされても通信が実行できるようにBUSY識別位置Pを設定することが好ましい。
【0094】
続いて、ステップS101において、カメラマイコン205は、カメラ本体200において対応可能な通信フォーマットを表すカメラ識別情報をレンズマイコン111に送信する。また、ステップS202において、レンズマイコン111は、交換レンズ100において対応可能な通信フォーマットを表すレンズ識別情報をカメラマイコン205に送信する。
【0095】
ここで、「識別情報」には、クロック同期式と調歩同期式のいずれの通信方式に対応しているのかを示す情報や、対応可能な通信ビットレートの範囲を示す情報が含まれる。BUSY識別位置Pを示す情報も識別情報に含まれる。
【0096】
カメラマイコン205は、ステップS102においてレンズ識別情報を受信する。レンズマイコン111は、ステップS201においてカメラ識別情報を受信する。ここで、図6のフローチャートでは、カメラ識別情報が送信された後にレンズ識別情報が送信されているが、カメラ識別情報の送信とレンズ識別情報の送信は同時であってもよい。また、レンズ識別情報が送信された後にカメラ識別情報が送信されるようにしてもよい。
【0097】
続いて、ステップS103、ステップS203において、以降の通信における通信フォーマットの設定が行われる。具体的には、カメラマイコン205とレンズマイコン111は、互いに対応可能な通信ビットレートのうち最速レートを通信ビットレートとして決定する。また、互いに対応可能なBUSY識別位置のうちストップビットSPから最も近い位置をBUSY識別位置に設定する。」
カ 【図1】
「
[図:0001410189000001.jpg]
」
キ 【図2】
「
[図:0001410189000002.jpg]
」
ク 図6
「
[図:0001410189000003.jpg]
」
(2) 図2から読み取れる事項
【0021】の「交換レンズ100とカメラ本体200は、マウント300に設けられた通信端子(図2に示す)を介して相互に通信を行う」という記載及び【0035】の「カメラマイコン205とレンズマイコン111は、3つのチャネルを用いた3線式の通信方式A及び通信方式Bによるシリアル通信を行う」という記載と併せて図2を見れば、マウントには3つのチャネルに対応して通信端子が設けられていることが読み取れる。
(3) 甲1に記載された発明
上記(1)及び(2)を踏まえると、甲1には、下記の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(参考までに、認定の根拠とした箇所である甲1の段落等を括弧内に記載する。)。
<甲1発明>
「撮像装置に取り外し可能に装着されるアクセサリ装置であって、
前記撮像装置との間に、前記撮像装置から前記アクセサリ装置への通知に用いられる通知チャネルと、前記アクセサリ装置から前記撮像装置へのデータ送信に用いられる第1のデータ通信チャネルと、前記撮像装置から前記アクセサリ装置へのデータ送信に用いられる第2のデータ通信チャネルとから構成される3つのチャネルを設けるアクセサリ通信部、及び前記アクセサリ通信部の制御を行うアクセサリ制御部を有し、
前記アクセサリ制御部は、前記通知チャネルを介して送信要求信号を受信することに応じて、前記第1のデータ通信チャネルを介して前記撮像装置に対してデータを送信し、
前記アクセサリ制御部は、前記撮像装置に対して送信するデータに、前記撮像装置から前記アクセサリ装置に対して前記送信要求信号が送信されないようにするための通信待機要求を選択的に付加し(【請求項1】)、
前記アクセサリ制御部は、前記撮像装置と調歩同期式の通信を行い(【請求項5】)、
前記アクセサリ制御部は、前記調歩同期式の通信において、前記通知チャネルを介して前記送信要求信号を受信し(【請求項9】)、
アクセサリ装置は交換レンズであり、撮像装置はカメラ本体であり、(【0014】)
「通信方式」はクロック同期式と調歩同期式を意味し、クロック同期式を通信方式A、調歩同期式を通信方式Bとし、(【0015】)
交換レンズとカメラ本体は、マウントに設けられた通信端子を介して相互に通信を行い、(【0021】)
レンズマイコンは、交換レンズ内の各部の動作を制御するアクセサリ制御部であり、(【0025】)
カメラ本体は、カメラマイコンを有し、(【0029】)
カメラマイコンとレンズマイコンは、マウントに設けられた通信端子とそれぞれに設けられた通信インタフェース回路を介して通信を行い、(【0034】)
カメラマイコンとレンズマイコンは、3つのチャネルを用いた3線式の通信方式A及び通信方式Bによるシリアル通信を行い、(【0035】)
マウントには3つのチャネルに対応して通信端子が設けられており、(上記(2))、
通信方式Bでは、カメラマイコンとレンズマイコン111は、予め通信速度を設定し、この設定に基づいた通信ビットレートで送受信を行い、(【0053】)
撮像装置とアクセサリ装置は相互に送受信を行う全二重通信方式(フルデュープレックス方式)で通信を行い、(【0054】)
カメラマイコンは、カメラ本体において対応可能な通信フォーマットを表すカメラ識別情報をレンズマイコンに送信し、(【0094】)
識別情報には、対応可能な通信ビットレートの範囲を示す情報が含まれ、(【0095】)
カメラマイコンとレンズマイコンは、互いに対応可能な通信ビットレートのうち最速レートを通信ビットレートとして決定する、(【0097】)
アクセサリ装置。」
2 対比・判断
(1) 本件発明1について
ア 対比
(ア) 甲1発明の「カメラ本体」である「撮像装置」は、本件発明1の「カメラボディ」に、甲1発明の「交換レンズ」である「アクセサリ装置」は、本件発明1の「アクセサリ」にそれぞれ相当する。
(イ)a 甲1発明の「アクセサリ通信部」は、「撮像装置との間に、前記撮像装置から前記アクセサリ装置への通知に用いられる通知チャネルと、前記アクセサリ装置から前記撮像装置へのデータ送信に用いられる第1のデータ通信チャネルと、前記撮像装置から前記アクセサリ装置へのデータ送信に用いられる第2のデータ通信チャネルとから構成される3つのチャネルを設ける」ものであるところ、交換レンズであるアクセサリ装置とカメラ本体である撮像装置が取り外し可能に装着され、「マウントには3つのチャネルに対応して通信端子が設けられ」、「交換レンズとカメラ本体は、マウントに設けられた通信端子を介して相互に通信を行[う]」から、マウントに3つのチャネルに対応して設けられた通信端子は、本件発明1のアクセサリが有する「端子」に相当するといえる。
b ここで、甲1発明の「撮像装置との間に、前記撮像装置から前記アクセサリ装置への通知に用いられる通知チャネル」は、「アクセサリ制御部」が、「前記通知チャネルを介して送信要求信号を受信することに応じて、前記第1のデータ通信チャネルを介して前記撮像装置に対してデータを送信し[ている]」から、通知チャネルに係るアクセサリ装置側の端子は、本件発明1の「カメラボディとの通信の可否を前記カメラボディに示すために用いられるレディ端子」と、「カメラボディとの通信の可否を」「示すために用いられるレディ端子」である点で共通する。
c また、甲1発明の「前記撮像装置から前記アクセサリ装置へのデータ送信に用いられる第2のデータ通信チャネル」に係るアクセサリ装置側の端子は、本件発明1の「カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子」に相当する。
d さらに、甲1発明の「アクセサリ装置から前記撮像装置へのデータ送信に用いられる第1のデータ通信チャネル」に係るアクセサリ装置側の端子は、本件発明1のカメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子」に相当する。
e また、甲1発明の通信端子が通信を行うことは自明であり、当該通信が本件発明1の「第1の通信」に相当する。
f したがって、本件発明1と甲1発明は、「前記カメラボディとの通信の可否を」「示すために用いられるレディ端子と、前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、を有し、第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からな[る]」点で共通する。
(ウ) 甲1発明の「レンズマイコン111」である「アクセサリ制御部」は、本件発明1の「制御部」に相当する。
(エ) 上記(ア)~(ウ)での検討によれば、本件発明1と甲1発明とは、
「カメラボディに着脱可能なアクセサリであって、
前記カメラボディとの通信の可否を示すために用いられるレディ端子と、
前記カメラボディから第1データ信号が入力される第1データ端子と、
前記カメラボディに第2データ信号を出力する第2データ端子と、
を有し、
第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、
制御部を備えるアクセサリ。」
である点で一致するとともに、以下の相違点1及び2の点で相違する。
<相違点1>
「カメラボディとの通信の可否を」「示すために用いられるレディ端子」が、本件発明1は、カメラボディとの通信の可否を「カメラボディに」示すために用いられるのに対して、甲1発明は、「前記通知チャネルを介して送信要求信号を受信する」点。
<相違点2>
制御部について、本件発明1は、「前記第1の通信の開始時に入力される前記第1データ信号の一定の信号列を識別して、前記第1の通信のクロック周波数を求める」のに対して、甲1発明の「アクセサリ制御部」は、「撮像装置と調歩同期式の通信を行い、」「前記調歩同期式の通信において、前記通知チャネルを介して前記送信要求信号を受信し」、「「通信方式」はクロック同期式と調歩同期式を意味し、クロック同期式を通信方式A、調歩同期式を通信方式Bとし」、「カメラマイコンとレンズマイコンは、3つのチャネルを用いた3線式の通信方式A及び通信方式Bによるシリアル通信を行い」、「通信方式Bでは、カメラマイコンとレンズマイコンは、予め通信速度を設定し、この設定に基づいた通信ビットレートで送受信を行い」、「カメラマイコンは、カメラ本体において対応可能な通信フォーマットを表すカメラ識別情報をレンズマイコンに送信し」、「識別情報には、対応可能な通信ビットレートの範囲を示す情報が含まれ」、「カメラマイコン205とレンズマイコン111は、互いに対応可能な通信ビットレートのうち最速レートを通信ビットレートとして決定する」ものである点。
イ 判断
相違点1について検討する。
甲1発明の通知チャネルは、「カメラ制御部」が、「前記通知チャネルを介して送信要求信号を前記アクセサリ装置に送信」するために用いるのであり、撮像装置からアクセサリ装置への通知を前提としているから、当該通知チャネルに係る通信端子を用いて撮像装置との通信の可否を撮像装置に示すことはできない。
また、甲1発明の「アクセサリ制御部」は、第1のデータ通信チャネルを用いて「前記撮像装置に対して送信するデータに、前記撮像装置から前記アクセサリ装置に対して前記送信要求信号が送信されないようにするための通信待機要求を選択的に付加」するのであるから、撮像装置との通信の可否を撮像装置に示すために、通知チャネルの通信方向をアクセサリ装置から撮像装置への通信とする動機は存在しない。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
相違点1に係る本件発明1の構成は、本件訂正により訂正されたものであるところ、本件訂正後に申立人に意見書を提出する機会を与えたが、前記第1に記載したとおり、申立人は意見書を提出しなかった。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上検討のとおり、甲1発明において相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2) 本件発明2、5、7-10について
本件発明2、5、7-10は、本件発明1を引用する発明であるから、本件発明2、5、7-10は、本件発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定した発明である。
よって、本件発明2、5、7-10は、本件発明1と同様に、当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
3 小括
よって、当審が通知した進歩性の取消理由(決定の予告)は解消している。
第6-2 取消理由通知で通知した明確性の取消理由について
1 本件訂正の訂正事項8により、請求項10における「請求項1から10のいずれかに記載のアクセサリを取り付け可能なカメラボディ」との記載が、「請求項1から8のいずれかに記載のアクセサリを取り付け可能なカメラボディ」に訂正された。
したがって、取消理由における、理由1の「特許請求の範囲の請求項10は、自項を引用するため記載が明確ではない。」との取消理由は解消された。
2 本件訂正の訂正事項2により、請求項1における「第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなる」との記載が、「第1の通信を行う端子は、前記レディ端子、前記第1データ端子及び前記第2データ端子からなり、前記第1の通信の開始時に入力される前記第1データ信号の一定の信号列を識別して、前記第1の通信のクロック周波数を求める制御部、を備える」に訂正され、アクセサリにおいて、カメラボディで生成されるクロック信号に同期できる構成であることが明確となった。
したがって、取消理由における、理由1の「請求項2を直接的あるいは間接的に引用する請求項7は、カメラボディからクロック信号を受信しないにもかかわらず同期することとなり、どのような構成を特定するのか明確ではない。」との取消理由は解消された。
第6-3 取消理由通知(決定の予告)及び取消理由通知において採用しなかった特許異議申立の理由に対する当審の判断
申立人は、本件特許の請求項1、2、5、7-10に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該各請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである旨主張している。
しかしながら、上記第6-1で検討したとおり、本件発明1、2、5、7-10と甲1発明は、少なくとも相違点1及び2で相違するから、本件発明1、2、5、7-10が甲1に記載された発明であるとはいえない。
したがって、本件発明1、2、5、7-10は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえないから、特許異議申立書における上記申立の理由は理由がない。
第7 むすび
以上によれば、取消理由通知(決定の予告)及び取消理由通知で通知した取消理由並びに特許異議申立理由によっては、本件発明1、2、5、7-10に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明1、2、5、7-10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700026