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特許異議申立

2022-700703

電力変換装置

審判番号
2022-700703
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-078467
登録番号
7009292
請求日
2022年07月22日
審決日
2022年12月26日
公報発行日
2023年02月24日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】サンデン株式会社
  • 【権利者代理人】雨笠 敬
  • 【異議申立人】角田 朗
審判長/審判官
  • 審判長 須田 勝巳
  • 審判官 山澤 宏
  • 審判官 篠原 功一
分類
P1652.121-Y (H02M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7009292号発明「電力変換装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7009292号の請求項1-2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7009292号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成30年4月16日に出願され、令和4年1月14日にその特許権の設定登録がされ、同年1月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年7月22日に特許異議申立人 角田 朗により特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年9月30日に取消理由を通知した。それに対し、特許権者は、令和4年11月25日に意見書を提出した。 第2 本件発明 特許第7009292号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 直流電源から供給される直流電圧をインバータ回路のスイッチングにより任意の周波数の交流電圧に変換して負荷に供給する電力変換装置において、 前記負荷からグランドに流れる漏れ電流を検出するためのコモンモードコイルと、前記漏れ電流を打ち消すように、当該漏れ電流とは逆相の補償電流を流すための補償電流供給回路を有するアクティブEMIフィルタ回路を備え、 前記補償電流供給回路は、共通接続されたベースと共通接続されたエミッタを有するコンプリメンタリトランジスタと、 前記直流電源を分圧して前記コンプリメンタリトランジスタを構成する各トランジスタのエミッタ-コレクタ間にそれぞれ印加するための抵抗分圧回路と、 前記直流電源と前記各トランジスタのコレクタ間にそれぞれ接続されたカップリングコンデンサを有することを特徴とする電力変換装置。 【請求項2】 前記コンプリメンタリトランジスタは、NPN型の正側トランジスタとPNP型の負側トランジスタから成り、 前記正側トランジスタのコレクタが前記カップリングコンデンサを介して前記直流電源の正側電源ラインに接続され、前記負側トランジスタのコレクタが前記カップリングコンデンサを介して前記直流電源の負側電源ラインに接続されており、 前記正側電源ライン及び前記負側電源ラインと前記各トランジスタのエミッタ間に前記抵抗分圧回路がそれぞれ接続され、各抵抗分圧回路を構成する複数の抵抗の接続点が前記各トランジスタのコレクタと前記カップリングコンデンサとの接続点にそれぞれ接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人は、請求項1、2に係る特許は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2―7号証に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1、2に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。 < 引用文献等一覧 > 甲第1号証:特表2004-534500号公報 甲第2号証:特開2010-266260号公報 甲第3号証:特許第3058900号公報 甲第4号証:特許第6264491号公報 甲第5号証:特許第3147642号公報 甲第6号証:特許第3912096号公報 甲第7号証:特許第4122689号公報 第4 引用文献の記載事項 1 甲第1号証 (1)甲第1号証の記載事項 甲第1号証には、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。以下、同じ)。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 主電源と連結されており、各巻線に異なる方向の電流(ノーマルモード電流)が流れる場合、磁束を相殺し、同じ方向の電流(コモンモード電流)が流れる場合、インダクタとして作用するコモンモードインダクタ; 電源側のコモンモード電流を検出するために、同一マグネチックコアに設けられた付加巻線; 前記付加巻線に入力端が連結された増幅器; 前記増幅端の電源として前記主電源と別個の増幅器直流電源; 前記増幅器の出力と接地の間に設けられる出力端キャパシタ;及び 前記増幅器直流電源と主電源の間に設けられ、機器により生成される高い周波数のコモンモード電流に対しては主電源とフィルタ回路の間に低いインピーダンス経路を提供し、低い周波数においては主電源とフィルタ回路を分離させるカップリングキャパシタを含むことを特徴とする能動形コモンモードEMIフィルタ。」 イ 「【背景技術】 【0002】 電磁機器から発生する高周波電流は同じ電源に接続される異なる機器に電気的外乱として影響を与えるだけでなく、漏洩電流の場合、その電流が大地を通じて電源に還元されるので、正常的な動作電流についてアンテナとして作用して外部機器に電磁気的干渉現象である電磁気障害(Electromagnetic Interference:EMI)を発生させる。 【0003】 先ず、電磁機器から発生する漏洩電流を例えて説明し、これを除去するための従来技術を説明する。 【0004】 図1は、単相交流入力に連結されたPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)インバーターシステムにおける漏洩電流を説明するための図面である。図1は、単相交流システムに連結されたPWM インバーターの一般的な形態である。図1において、電源高調波に対する規制を満足させるために一般的に力率補償器(Power Factor Corrector: PFC)が単相ダイオード整流器と一緒に用いられる。PWM インバーターの負荷機器として交流電動機が使用される。電動機駆動システムにおいてPWMインバーターは通常1~20kHzのスイッチング周波数で運転され、電力素子としてFETまたはIGBT が用いられる。FETまたはIGBTが速くスイッチングする場合、システムの寄生成分(Parasitic Components)と結合されて所望しない高周波電圧電流が発生することになる。具体的にはFETまたはIGBT のスイッチングにより高い電圧パルス波形がa地点、b地点及びc地点に存在することになるが、図1において交流機器は接地gに連結されてはいないが、システムと接地の間の寄生キャパシタンス(Clg,Csg)のため、高いパルス形態の電圧が加えられる場合、大地を通じて電源に還元される漏洩電流が発生することになる。図1において電動機中性点sとDC電源の中性点nの間の電圧は図2においてvsg のように測定され、それに従う漏洩電流isg が図2のように測定される。 【0005】 このような漏洩電流を抑制するための従来技術として、システムの電源入力或いは出力に図3のような受動形コモンモードフィルタを用いた。図3に示されたコモンモードチョーク(choke) は漏洩電流の経路の直列インピーダンスを増加させ、cyはシステムから発生された漏洩電流がシステム内部で容易に循環できるように高周波の漏洩電流に対して低いインピーダンスを有する経路を提供する。しかし、図3に図示された受動形フィルタだけで漏洩電流を抑制する場合、減衰率を大きくするためにフィルタのLC値を増加させなければならないが、特定分野においては安全問題によって用いられるcyの値に制限がある。この場合、フィルタの減衰率を増加させるためにコモンモードチョークのインダクタンス値を増加させなければならなので全体システムの体積及び価格上昇の直接的な原因になって来た。 【0006】 このような受動形フィルタの問題点を解決するために、能動形コモンモードEMIフィルタに対する研究が進められてきた。 【0007】 図4は、従来技術による能動形コモンモードEMIフィルタの概念図である。 能動形コモンモードEMIフィルタはスイッチング電源により発生される電流或いは電圧のリップルを能動的に抑制するためのものでスイッチング電流或いは電圧を検出して、ここに-Aに該当する利得をかけて電流或いは電圧を補償して電源側では結果的にスイッチングリップルを抑制されるようにするものである。元々差動モードノイズに対して考案されたものであるが、コモンモードノイズの場合にも類似に適用することが出来る。 【0008】 図5は、PWMインバーターシステムに対して考案された能動形コモンモードEMIフィルタを図示したものである。図5a及び図5bは電圧検出、電圧補償の能動形コモンモード EMI フィルタであり、図5cは電流検出、電流補償の能動形コモンモードEMIフィルタである。 【0009】 図5a及び図5bはPWMインバーターにより生成されたコモンモード電圧を測定してプッシュプルアンプを用いて反対の電圧を印加してコモンモード電圧が“0”となるように操作する回路である。しかし、電流電源の電圧が高くなると、耐圧性のよいpnpトランジスタが求め難いので、図5aのような回路具現が難しくなる。従って、図5bにおいては別途の直流電源(50V)を用いてこの問題を解決したのである。 【0010】 図5cは電流検出、電流補償方式として、入力される漏洩電流であるコモンモード電流を検出して反対方向の電流を出力して漏洩電流を相殺させる回路である。図5cは図5a と同じく耐圧性のよい pnp トランジスタを使用しなければならないという問題点がある。一方、一般的に同じ電流容量を有するトタンジスタにおいて耐圧が高くなるほど帯域幅が制限されるので、漏洩電流 の容量が大きい場合、漏洩電流が相殺される周波数帯域幅が減る問題があった。」 ウ 「【0016】 図6は、本発明による能動形コモンモードEMIフィルタの概念図である。 【0017】 図6において、LCMは電源(vs)の形態によりマグネチックコアに二線(単相交流或いは直流)、三線(3相交流)、または多重の入力巻線を同じ方向に設けて各巻線に異なる方向の電流(ノーマルモード電流)が流れる場合、互いに磁束を相殺し、同じ方向の電流(コモンモード電流)が流れる場合、一般的なインダクタで作用するコモンコードインダクタである。ここに負荷の巻線(60)を反対方向に設けて増幅器(61)の入力にする。増幅器の出力は出力端キャパシタ(Cc) を介して大地に接地されている。増幅器の電源は別途の直流電源(vc) が用いられる。増幅器電源(vc)と主電源(vs)の間に設けられるカップリングキャパシタ(C0) は低い周波数信号に対しては回路が断絶されて主電源(vs)を分離し、高い周波数信号では回路が連結されるようにする。 【0018】 さらに詳細に説明すると、LCM はコモンモード電流が流れる場合にのみインダクタで作用し、コモンモード電流に比例する磁束がマグネチックコアに形成される。この磁束は反対方向に設けられた付加巻線に起電力を誘起させて、誘起された起電力はトランスーコンダクタンス増幅器を駆動させる。増幅器の出力はコモンモード電流による補償電流を出力端キャパシタ(Cc) を介して供給することになる。 【0019】 一方、カップリングキャパシタ(C0) は高い周波数でシステムとフィルタの電源端の間を短絡させて高い周波数で漏洩電流の閉回路を構成することになる。また、インダクタ(LCM )は高い周波数で電源からのインピーダンスを増加させて、結局、システムにより発生された高い周波数のコモンモード電流はカップリングキャパシタ(C0) 、増幅器、出力端キャパシタ(Cc) を通じてシステム内部にのみ循環することになり、電源(vs) から流入される漏洩電流の量は減少することになる。」 エ 「【0020】 図7乃至図11は、上述した本発明による能動形EMIフィルタの具体的な具現例を図示したものである。 【0021】 図7は、本発明による能動形EMIフィルタの具現例として単相交流機器または直流機器のフィルタの例である。即ち、図7は単相交流または直流機器の入力端に本発明による能動形EMIフィルタを装着した例である。インダクタLCMが電源入力と機器の間に設けられ、カップリングキャパシタ(C0) が機器入力端に連結されており、機器は大地に接地されている。本発明によるフィルタはインダクタLCMを介して流れるコモンモード漏洩電流を検出して増幅器をしてカップリングキャパシタ(C0) 、出力端キャパシタ(Cc)を介して反対方向の補償電流を発生させて機器の接地と考案された回路の間にのみ漏洩電流が循環するようにし、電源からの漏洩電流の流入を抑制する。カップリングキャパシタ(C0) は機器入力の電源端電源と増幅器の電源電圧の間に、低い周波数では高いインピーダンスを提供して増幅器電源を入力電源と分離し、高い周波数では低いインピーダンスを提供して漏洩電流の閉回路を構成するようにする。」 オ 「【0028】 図13は、本実験で用いられた本発明による能動形コモンモードEMIフィルタである。実験対象システムの定数及び運転条件は次の表1の通りである。 【0029】 【表1】 [図:0001394017000001.jpg] 【0030】 図13に図示された本発明による能動形コモンモードEMIフィルタにおいては、電源電流リップルを感知するリップル電流を除去する技法に基づいており、フィルタ回路で生じる相遅延を最小化するために単一ステージプッシュープル増幅器を使用し、増幅器の電源として12Vの直流電圧を使用した。」 カ 「【図1】 [図:0001394017000002.jpg] 」 キ 「【図5a】 [図:0001394017000003.jpg] 」 ク 「【図5b】 [図:0001394017000004.jpg] 」 ケ 「【図5c】 [図:0001394017000005.jpg] 」 コ 「【図6】 [図:0001394017000006.jpg] 」 サ 「【図7】 [図:0001394017000007.jpg] 」 シ 「【図8】 [図:0001394017000008.jpg] 」 ス 「【図9】 [図:0001394017000009.jpg] 」 セ 「【図10】 [図:0001394017000010.jpg] 」 (2)引用発明 ア 甲第1号証の上記(1)エ、図7(上記(1)サ)には、能動型EMIフィルタを直流機器の入力端に装着した装置が記載され、また、直流機器が直流電源に接続されていることは明らかである。 ここで、一般に(例えば、上記(1)イ、図1(上記(1)カ)、図5c(上記(1)ケ)等参照)、能動型EMIフィルタは、直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータ回路に装着し、負荷機器から大地に流れる漏洩電流を相殺する逆位相の電流を供給する回路である。してみると、図7における直流機器は、直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータ回路を含んでいるといえる。 してみると、甲第1号証には、“直流電源から供給される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータ回路と、インバータ回路の入力端に装着される能動型EMIフィルタとからなり、能動型EMIフィルタが負荷機器から大地に流れる漏洩電流を相殺する逆位相の電流を供給する装置”が記載されているといえる。 イ 甲第1号証の上記(1)ウの段落【0017】には図6の能動型EMIフィルタの「LCM」に関して、「LCMは電源(vs)の形態によりマグネチックコアに二線(単相交流或いは直流)、三線(3相交流)、または多重の入力巻線を同じ方向に設けて各巻線に・・・同じ方向の電流(コモンモード電流)が流れる場合、一般的なインダクタで作用するコモンコードインダクタである」こと、さらに、図6の能動型EMIフィルタに関して、「ここに負荷の巻線(60)を反対方向に設けて増幅器(61)の入力にする。増幅器の出力は出力端キャパシタ(Cc) を介して大地に接地されている」ことが記載され、また、段落【0018】には、「さらに詳細に説明すると、LCM はコモンモード電流が流れる場合にのみインダクタで作用し、コモンモード電流に比例する磁束がマグネチックコアに形成される。この磁束は反対方向に設けられた付加巻線に起電力を誘起させて、誘起された起電力はトランスーコンダクタンス増幅器を駆動させる。増幅器の出力はコモンモード電流による補償電流を出力端キャパシタ(Cc) を介して供給することになる」と記載されている。 してみると、甲第1号証には、“能動型EMIフィルタは、マグネチックコアに電源(vs)の形態に合わせた多重の入力巻線が同じ方向に設けられたものであるインダクタLCMに、コモンモード電流(各巻線に同じ方向の電流)が流れる場合にのみインダクタとして作用し、コモンモード電流に比例する磁束をマグネチックコアに形成し、この磁束が反対方向に設けられた付加巻線に起電力を誘起し、誘起した起電力で増幅器が駆動され、増幅器の出力がコモンモード電流による補償電流として出力端キャパシタ(Cc) を介して大地に出力する”ことが記載されているといえる。 また、上記(1)エによれば、図7(上記(1)サ)のものは図6(上記(1)コ)の能動形EMIフィルタを直流機器のフィルタとした具体的な具現例であるから、図7における「LCM」では、図6の「マグネチックコア」の「電源(vs)の形態に合わせた多重の入力巻線」が、「2重の入力巻線」になっているものと認められる。 してみると、甲第1号証には、“能動型EMIフィルタは、マグネチックコアに2重の入力巻線が同じ方向に設けられたものであるインダクタLCMに、コモンモード電流(各巻線に同じ方向の電流)が流れる場合にのみインダクタとして作用し、コモンモード電流に比例する磁束をマグネチックコアに形成し、この磁束が反対方向に設けられた付加巻線に起電力を誘起し、誘起した起電力で増幅器が駆動され、増幅器の出力がコモンモード電流による補償電流として出力端キャパシタ(Cc) を介して大地に出力”することが記載されている。 ウ 図7(上記(1)サ)によれば、“増幅器は、共通接続されたベースと共通接続されたエミッタを有するnpnトランジスタとpnpトランジスタで構成されている”ことが看取できる。 エ 甲第1号証の上記(1)ウの段落【0017】には図6の能動型EMIフィルタに関して、「増幅器の電源は別途の直流電源(vc) が用いられる」と記載され、そして、図6の能動型EMIフィルタを具体化した図7においては、“「直流電源(vc)」に対応するのは、「直流電源(vfs)」である”ことが看取できる。 また、甲第1号証の上記(1)ウの段落【0017】には図6の能動型EMIフィルタに関して、“増幅器電源(vc)と主電源(vs)の間にカップリングキャパシタ(C0)が設けられる”ことが記載され、図7によれば、増幅器の「直流電源(vfs)」と主電源の間にはコンデンサが設けられており、図6の「カップリングキャパシタ(C0)」に対応するものと認められる。 したがって、甲第1号証には、“増幅器の電源は別途の直流電源(vfs) が用いられ、増幅器電源(vfs)と主電源(vs)の間にカップリングキャパシタ(C0)が設けられる”ことが記載されているといえる。 オ 上記ア乃至エの記載内容からすると、上記甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「直流電源から供給される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータ回路と、インバータ回路の入力端に装着される能動型EMIフィルタとからなり、能動型EMIフィルタが負荷機器から大地に流れる漏洩電流を相殺する逆位相の電流を供給する装置において、 能動型EMIフィルタは、マグネチックコアに2重の入力巻線が同じ方向に設けられたものであるインダクタLCMに、コモンモード電流(各巻線に同じ方向の電流)が流れる場合にのみインダクタとして作用し、コモンモード電流に比例する磁束をマグネチックコアに形成し、この磁束が反対方向に設けられた付加巻線に起電力を誘起し、誘起した起電力で増幅器が駆動され、増幅器の出力がコモンモード電流による補償電流として出力端キャパシタ(Cc) を介して大地に出力し、 増幅器は、共通接続されたベースと共通接続されたエミッタを有するnpnトランジスタとpnpトランジスタで構成され、 増幅器の電源は別途の直流電源(vfs) が用いられ、増幅器電源(vfs)と主電源(vs)の間にカップリングキャパシタ(C0)が設けられる、 装置。」 2 甲第2号証 (1)甲第2号証の記載事項 甲第2号証には、図面とともに以下の各記載がある。 ア 「【0016】 以下、この先願発明の概要を説明する。 図11において、10は位相が90度異なる二相のアナログ信号を出力するエンコーダ、20は電源線、信号線、接地線からなるケーブル、310はエンコーダ10の出力信号を処理してエンコーダ10の異常やケーブル20を含む配線系統の異常を検出する制御装置である。 【0017】 エンコーダ10は、電動機出力軸等の回転体の回転により、位相が90度異なる二つの相対的な位置検出信号(A相信号及びB相信号)を発生する光学センサを備え、A相信号及びB相信号は、コンプリメンタリ構成のトランジスタTr1,Tr2のベースにそれぞれ入力されている。 一方のトランジスタTr1のコレクタは電源端子Vc(電源電圧もVcと表記する)に接続され、他方のトランジスタTr2のコレクタはグランド端子Mに接続されている。また、トランジスタTr1,Tr2同士の接続点は、制限抵抗R1を介してA相信号端子A、B相信号端子Bにそれぞれ接続される。 【0018】 エンコーダ10には、制御装置310からケーブル20を介して電源電圧Vcが供給されており、エンコーダ10の各部の電気信号は制御装置310と共通の電位を基準としている。なお、制御装置310内の電源回路は図示を省略する。 通常は、ノイズによる影響を防ぐために、図11におけるA相信号端子A、B相信号端子B等でフォトカプラや絶縁アンプによりエンコーダ10と制御装置310とを電気的に絶縁することがあるが、ここでは、説明を簡単にするためにエンコーダ10と制御装置310とを同電位としている。 【0019】 次に、制御装置310において、電源端子Vc、A相信号端子A、グランド端子Mの相互間、及び、電源端子Vc、B相信号端子B、グランド端子Mの相互間には、バイアス発生手段としての分圧抵抗Rx,Ryがそれぞれ接続されている。 エンコーダ10から出力されるA相信号が「H」レベル(トランジスタTr1がオンし、トランジスタTr2がオフしている状態)の場合、制御装置310により検出されるA相信号端子Aのアナログ電圧Vadet(図11におけるアナログ信号SigAanaの電圧に相当)は、トランジスタTr1のオン電圧降下を無視すると、数式1によって表される。 【0020】 【数1】 [図:0001394017000011.jpg] 【0021】 一方、A相信号が「L」レベル(トランジスタTr1がオフし、トランジスタTr2がオンしている状態)の場合、A相信号端子Aのアナログ電圧Vadetは、トランジスタTr2のオン電圧降下を無視すると、数式2によって表される。 【0022】 【数2】 [図:0001394017000012.jpg] 【0023】 すなわち、エンコーダ10に故障がなくケーブル20に断線や短絡、地絡等がない正常時には、図12に示すように、アナログ電圧Vadetとして、A相信号が「H」レベルの時には、電源電圧Vcからバイアス分を減算したアナログハイレベル(Ry・Vc/(R1+Ry)が検出される。また、A相信号が「L」レベルの時には、グランド電圧にバイアス分を加算したアナログローレベル(R1・Vc/(R1+Rx))が検出される。 なお、数式1,2は、B相信号端子Bのアナログ電圧についても同様に成立する。」 イ 「【図11】 [図:0001394017000013.jpg] 」 ウ 「【図12】 [図:0001394017000014.jpg] 」 3 甲第3号証 (1)甲第3号証の記載事項 甲第3号証には、図面とともに以下の各記載がある。 ア 「ここで、第1図における減電圧回路を従来例の回路(第5図)と比較すると、従来(第5図)は直流電圧+B2の端子44と出力段トランジスタ50の間に、抵抗53とコンデンサ54の並列回路と抵抗52とを直列に接続する構成であったが、本発明の第1図では直流電圧+B2の端子44と基準電位点との間挙に抵抗64とコンデンサ65による電圧分割回路(ブリーダー回路)を設け、抵抗64とコンデンサ65の接続点を抵抗52を介して出力段トランジスタ50のエミッタに接続している。従って、減電圧用平滑コンデンサ65の両端電圧即ち出力段トランジスタ50,51に供給される電圧は抵抗64の抵抗値の選定によって比較的容易に変えることができ、出力段トランジスタ50,51に供給される電圧を低めに設定可能である。出力段トランジスタ50,51のベースバイアス電圧は分圧抵抗45を介して減電圧回路から供給されるため第5図に比べて相対的に電源電圧を下げたことになる。その分出力段トランジスタ50,51のエミッタ・コレクタ間の電圧を下げることができる。これに対して、従来例(第5図)では、抵抗53と平滑コンデンサ54の並列回路と抵抗52は前述したとおりトランジスタ50のベース電圧に対してエミッタ電圧を逆方向バイアスするように動作する、つまり、単にクリップ機能を得るに過ぎない。トランジスタ51のコレクタに供給される電圧についても同様である。」(公報4頁左欄18-40行) イ 「【第1図】 [図:0001394017000015.jpg] 」 4 甲第4号証 (1)甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、図面とともに以下の各記載がある。 ア 「【図1】 [図:0001394017000016.jpg] 」 5 甲第5号証 (1)甲第5号証の記載事項 甲第5号証には、図面とともに以下の各記載がある。 ア 「【図36】 [図:0001394017000017.jpg] 」 6 甲第6号証 (1)甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、図面とともに以下の各記載がある。 ア 「【0052】 この実施形態におけるトランジスタTr1,Tr2の動作電圧(コレクタ-エミッタ間電圧)はコンデンサC0のリプル電圧相当でよく、一般的な電力変換装置では数[V]~数10[V]の値となる。従って、仮にトランジスタTr1,Tr2の動作電圧を数10[V]とした場合には、ツェナーダイオードZD1,ZD2のツェナー電圧を(インバータ回路3の直流電圧Vdc-数10[V])に設定すれば、第1実施形態と同様に低耐圧のトランジスタTr1,Tr2を使用しながらノイズ補償電流iC2を流すことができる。 【0053】 なお、図4(a),(b)は、ノイズ補償電流供給回路における直流定電圧源としてのツェナーダイオードの他の接続例を示している。 前述した第1実施形態、第2実施形態では、トランジスタTr1,Tr2の両方にツェナーダイオードZD1,ZD2を接続しているが、図4(a)に示すようにトランジスタTr2のみにツェナーダイオードZD2を接続するか、または、図4(b)に示すようにトランジスタTr1のみにツェナーダイオードZD1を接続する構成であってもよい。」 イ 「【0055】 上記実施形態において、インバータ回路3の半導体スイッチング素子Q1~Q6としてIGBTの代わりにバイポーラトランジスタを用い、ノイズ補償電流供給回路6A,6Bの電流制御素子としてバイポーラトランジスタTr1,Tr2の代わりにFET(電界効果トランジスタ)を用いても良い。 また、一方向のノイズ電流iCのみを低減させれば足りる場合には、ノイズ補償電流供給回路6A,6BにおいてトランジスタTr1、ツェナーダイオードZD1のみ、または、トランジスタTr2、ツェナーダイオードZD2のみを設ければ良い。 更に、ノイズ補償電流供給回路6A,6B内の直流定電圧源は、ツェナーダイオード以外に直流電源でも良い。」 ウ 「【図3】 [図:0001394017000018.jpg] 」 7 甲第7号証 (1)甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、図面とともに以下の各記載がある。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項 1】 電位の異なる電源線の間に、pnpトランジスタ及びnpnトランジスタをそれぞれエミッタフォロアとなるようコンプリメンタリに接続し、前記pnpトランジスタのエミッタと前記npnトランジスタのエミッタの間に出力を設け、 前記pnpトランジスタ及びnpnトランジスタのベース・エミッタ間のビルトイン電圧を補償して、入力と前記出力の電位差が等しくなるよう前記pnpトランジスタ及びnpnを動作させるよう、ビルトイン電圧補償用のデバイスを前記pnpトランジスタ及びnpnの各々のベースと前記入力の間に接続し、 前記pnpトランジスタ及びnpnトランジスタの各々のベースと前記各々の電源線の間に抵抗体を接続し、 前記入力と前記出力の電位差が、前記ビルトイン電圧補償用のデバイスで補償されて前記pnpトランジスタ及びnpnが動作する電圧よりも大きな、所定のビルトイン電圧が追加された電圧を超えると、前記pnpトランジスタと前記npnトランジスタのうちの対応するベース電流を増加させるように動作するトランジスタを、前記抵抗体の各々に並列に接続するバッファ回路。」 イ 「【0014】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施例を説明する全図において、同一の機能を有するものには同一の符号をつける。 (実施例1) 図1を用いて第1の実施例の回路構成を説明する。それぞれ電位の異なる電源線90と電源線91の間に、NPN型のトランジスタ1とPNP型のトランジスタ2をエミッタフォロアの形で、コンプリメンタリに接続する。電源線90の方が電源線91より電位が高い。トランジスタ1のベースとバッファ回路の入力60の間はビルトイン補償用ダイオード3を介して接続する。同様に、トランジスタ2のベースと入力60の間もビルトイン補償用ダイオード4を経由して接続する。さらに、トランジスタ1のベースは抵抗体7を介して電源線90に接続される。抵抗体7には並列にNPN型のスピードアップトランジスタ9が接続され、トランジスタ9のベースは入力60に接続される。トランジスタ2のベースは抵抗体8を介して電源線91に接続される。抵抗体8には並列にPNP型のスピードアップトランジスタ10が接続され、トランジスタ10のベースは入力に接続される。一方、トランジスタ1とトランジスタ2の各エミッタ間は出力に接続され、出力には容量性負荷81を接続する。 【0015】 次に、動作について説明する。 【0016】 まず、入力60の電位が出力61の電位より高くなった状況を想定する。入力60の電位が出力61の電位より高くなると、トランジスタ1及びスピードアップトランジスタ9はオン状態、トランジスタ2とスピードアップトランジスタ10はオフ状態となる。抵抗体7の抵抗値が大きくても、スピードアップトランジスタ9を経由してトランジスタ1に豊富にベース電流が供給されるので、トランジスタ1を経由して大電流により急速に容量性負荷81を充電でき、出力61の電位を入力60の電位に瞬時に制御することが可能である。次に、入力60の電位が出力61の電位より低くなった状況を想定する。トランジスタ2とスピードアップトランジスタ10はベース電位がエミッタ電位よりも低いのでオン状態となり、トランジスタ1及びスピードアップトランジスタ9はオフ状態となる。抵抗体8の抵抗値が大きくても、スピードアップトランジスタ10を経由してトランジスタ2に豊富にベース電流が供給されるので、トランジスタ2を経由して大電流により急速に容量性負荷81の電荷を放電でき、出力61の電位を入力60の電位に瞬時に制御することが可能である。 【0017】 一方、入力60と出力61の電位差が小さい時(入力60と出力61の電位差がトランジスタ9もしくはトランジスタ10のベース-エミッタ間のビルトイン電圧より小さい時)は、スピードアップトランジスタ9とスピードアップトランジスタ10はオフ状態となるので、電源線90からダイオード3とダイオード4を経由して電源線90に流れる電流は、抵抗体7と抵抗体8を経由するごくわずかな電流である為、発生する損失も少ない。また、ごくわずかではあるが、電源線91から抵抗体7,ダイオード3,ダイオード4,抵抗体8を経由して電源線91に流れる電流が存在するので、ダイオード3やダイオード4のインピーダンスがトランジスタ9やトランジスタ10のベース・エミッタ間のインピーダンスより小さくなるので、ダイオード3やダイオード4のビルトイン電圧がトランジスタ1及びトランジスタ2のベース-エミッタ間電圧のビルトイン電圧を補償して、入力60の電位と出力61の電位を極めて小さい誤差の範囲内にそろえることができる。 (実施例2) 図7を用いて第2の実施例の回路構成を説明する。それぞれ電位の異なる電源線90と電源線91の間に、トランジスタ1とトランジスタをエミッタフォロアの形で、コンプリメンタリに接続する。電源線90の方が電源線91より電位が高い。トランジスタ1のベースと入力の間は、ビルトイン補償用トランジスタ5のエミッタとベースを介して接続する。ビルトイン補償用トランジスタ5のコレクタは電源線91に接続される。同様に、トランジスタ2のベースと入力の間もビルトイン補償用トランジスタ6のエミッタとベースを経由して接続する。ビルトイン補償用トランジスタ6のコレクタは電源線90に接続される。さらに、トランジスタ1のベースは抵抗体7を介して電源線90に接続される。抵抗体7には並列にスピードアップトランジスタ9が接続され、トランジスタ9のベースは入力に接続される。トランジスタ2のベースは抵抗体8を介して電源線91に接続される。抵抗体8には並列にスピードアップトランジスタ10が接続され、トランジスタ10のベースは入力に接続される。」 ウ 「【図1】 [図:0001394017000019.jpg] 」 第5 当審の判断 1 申立理由について (1)本件発明1の進歩性についての判断 ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 A 引用発明の「インバータ回路」は、本件発明1の「インバータ回路」に相当する。 また、通常、インバータ回路は、直流電圧をスイッチングにより任意の周波数の交流電圧に変換して負荷に供給するものである。 してみると、引用発明の「直流電源から供給される直流電圧を交流電圧に変換して負荷に供給するインバータ回路と、インバータ回路の入力端に装着される能動型EMIフィルタとからなり、能動型EMIフィルタが負荷機器から大地に流れる漏洩電流を相殺する逆位相の電流を供給する装置」は、本件発明1の「直流電源から供給される直流電圧をインバータ回路のスイッチングにより任意の周波数の交流電圧に変換して負荷に供給する電力変換装置」に相当する。 B 引用発明の「能動型EMIフィルタ」は、「負荷機器から大地に流れる漏洩電流を相殺する逆位相の電流を供給する」ものであって、「マグネチックコアに2重の入力巻線が同じ方向に設けられたものであるインダクタLCMに、コモンモード電流(各巻線に同じ方向の電流)が流れる場合にのみインダクタとして作用し、コモンモード電流に比例する磁束をマグネチックコアに形成し、この磁束が反対方向に設けられた付加巻線に起電力を誘起し、誘起した起電力で増幅器が駆動され、増幅器の出力がコモンモード電流による補償電流として出力端キャパシタ(Cc) を介して大地に出力」するものであり、ここで、「コモンモード電流(各巻線に同じ方向の電流)」がいわゆるコモンモードノイズであって「負荷機器から大地に流れる漏洩電流」であることは明らかであるから、引用発明の「能動型EMIフィルタ」は、負荷機器から大地に流れる漏洩電流をインダクタLCM及び付加巻線で検出し、漏洩電流を打ち消すように、当該漏洩電流とは逆相の補償電流を増幅器から大地に出力するものといえる。 してみると、引用発明の「インダクタLCM及び付加巻線」は、本件発明1の「コモンモードコイル」に相当し、さらに、引用発明の「能動型EMIフィルタ」は、本件発明1の「漏れ電流を打ち消すように、当該漏れ電流とは逆相の補償電流を流すための補償電流供給回路」に相当する回路を有するものであって、引用発明の「能動型EMIフィルタ」は、本件発明1の「前記負荷からグランドに流れる漏れ電流を検出するためのコモンモードコイルと、前記漏れ電流を打ち消すように、当該漏れ電流とは逆相の補償電流を流すための補償電流供給回路を有するアクティブEMIフィルタ回路」に相当する。 C 引用発明の「能動型EMIフィルタ」の「増幅器」の「npnトランジスタとpnpトランジスタ」は、「共通接続されたベースと共通接続されたエミッタを有する」ものであって、また、増幅器の「共通接続されたベースと共通接続されたエミッタを有する」極性の違うトランジスタが、いわゆるコンプリメンタリトランジスタであることは明らかであるから、引用発明の「npnトランジスタとpnpトランジスタ」は、本件発明1の「共通接続されたベースと共通接続されたエミッタを有するコンプリメンタリトランジスタ」に相当する。 D 引用発明の「直流電源(vfs)」は、「増幅器の電源」であり、「npnトランジスタとpnpトランジスタ」に全体に電圧を印加するものである。 一方、本件発明1の「抵抗分圧回路」は、「前記コンプリメンタリトランジスタを構成する各トランジスタのエミッタ-コレクタ間にそれぞれ印加する」電圧を、「前記直流電源」の電圧からそれぞれ「分圧」し、それぞれに印加するものである。 また、引用発明の「直流電源(vfs)」は、「別途」の電源であり、「インバータ回路」に供給される「直流電源」とは「別途」のものであるが、「直流電源」を分圧したものではない。 してみると、引用発明の「直流電源(vfs)」と、本件発明1の「前記直流電源を分圧して前記コンプリメンタリトランジスタを構成する各トランジスタのエミッタ-コレクタ間にそれぞれ印加するための抵抗分圧回路」とは、後記の点で相違するものの、“前記直流電源とは異なる電圧を前記コンプリメンタリトランジスタを構成するトランジスタに印加するための回路”の点では共通する。 E 引用発明の「カップリングキャパシタ(C0)」は、「増幅器電源(vfs)と主電源(vs)の間」に設けられるものであって、そして、「増幅器電源(vfs)」は、「npnトランジスタとpnpトランジスタ」間に電圧を印加するものであり、「npnトランジスタ」のコレクタと「pnpトランジスタ」のコレクタ間に接続されているといえ、「主電源(vs)」は「インバータ回路」に供給される直流電源であることは明らかであるから、引用発明の「カップリングキャパシタ(C0)」は、「インバータ回路」に供給される直流電源と「npnトランジスタ」のコレクタ及び「pnpトランジスタ」のコレクタ間にそれぞれ接続されているといえる。 したがって、引用発明の「カップリングキャパシタ(C0)」は、本件発明1の「前記直流電源と前記各トランジスタのコレクタ間にそれぞれ接続されたカップリングコンデンサ」に相当する。 F そして、上記C-Eで検討した、引用発明の「npnトランジスタとpnpトランジスタ」、「直流電源(vfs)」、「カップリングキャパシタ(C0)」は、上記Bで検討した、引用発明における本件発明1の「漏れ電流を打ち消すように、当該漏れ電流とは逆相の補償電流を流すための補償電流供給回路」に相当する回路を構成していることは明らかである。 したがって、本件発明1と引用発明との間には、以下の一致点と相違点とがある。 〈一致点〉 「直流電源から供給される直流電圧をインバータ回路のスイッチングにより任意の周波数の交流電圧に変換して負荷に供給する電力変換装置において、 前記負荷からグランドに流れる漏れ電流を検出するためのコモンモードコイルと、前記漏れ電流を打ち消すように、当該漏れ電流とは逆相の補償電流を流すための補償電流供給回路を有するアクティブEMIフィルタ回路を備え、 前記補償電流供給回路は、共通接続されたベースと共通接続されたエミッタを有するコンプリメンタリトランジスタと、 前記直流電源とは異なる電圧を前記コンプリメンタリトランジスタを構成するトランジスタに印加するための回路、 前記直流電源と前記各トランジスタのコレクタ間にそれぞれ接続されたカップリングコンデンサを有することを特徴とする電力変換装置。」 <相違点> 「前記直流電源とは異なる電圧」が、本件発明1では、「前記直流電源を分圧し」たものであって、さらに、「印加するための回路」が「前記コンプリメンタリトランジスタを構成する各トランジスタのエミッタ-コレクタ間にそれぞれ印加するための抵抗分圧回路」であるのに対して、引用発明では、「別途の直流電源(vfs)」であって、さらに、「npnトランジスタとpnpトランジスタ」の全体に印加する回路である点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 甲第2-7号証の記載によれば、装置の主電源の電圧を抵抗で分圧することで、装置を構成する回路に主電源の電圧より低い電圧を供給することは周知の技術と認められるが、上記相違点に係る構成のように、主電源から、コンプリメンタリトランジスタを構成する各トランジスタのエミッタ-コレクタ間にそれぞれ印加するためのそれぞれの電圧を分圧することが周知の技術であったとは認められない。そして、上記相違点に係る構成は、当業者にとって自明のものでもない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2-7号証に記載の周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 異議申立人の主張について 異議申立人は、上記相違点に係る構成について、甲第2号証及び甲第3号証に記載されている旨主張するが、両書証には、上記相違点に係る構成、すなわち、主電源から、コンプリメンタリトランジスタを構成する各トランジスタのエミッタ-コレクタ間にそれぞれ印加するためのそれぞれの電圧を分圧することまでは開示されていない。また、異議申立人の主張する甲第4-7号証に記載された周知技術を踏まえても、上記相違点に係る構成を、当業者が容易に想到し得たものということはできない。 したがって、異議申立人の主張はいずれも採用できない。 (2)本件発明2の進歩性についての判断 本件発明2は請求項1を引用するものであって、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2-7号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。 2 当審が通知した取消理由について 当審において、請求項1に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1(進歩性) 請求項1に係る発明は、下記の引用文献1に記載の発明、及び引用文献2に記載された周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 引用文献1:特表2004-534500号公報(甲第1号証) 引用文献2:特許第3058900号公報(甲第3号証) (2)取消理由について 上記取消理由は、本件発明1が、特許異議の申立てに係る甲第1号証と甲第3号証とにより、当業者が容易に発明し得たものである、という趣旨のものであるが、これらの文献によっては、本件発明1の進歩性を否定できないことは、上記1(1)イのとおりであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、当審が通知した取消理由によっては、取り消すことができない。 第6 むすび したがって、請求項1及び2に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700703

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