特許異議申立
2022-700691
包装材料及び包装製品
- 審判番号
- 2022-700691
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-026415
- 登録番号
- 7008278
- 請求日
- 2022年07月21日
- 審決日
- 2023年03月31日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】宮嶋 学
- 【権利者代理人】堀田 幸裕
- 【権利者代理人】塙 和也
- 【権利者代理人】高田 泰彦
- 【権利者代理人】柏 延之
- 【異議申立人】服部 道俊
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 茂夫
- 審判官 石田 智樹
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1652.121-YAA(B32B) / P1652.161-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7008278号発明「包装材料及び包装製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7008278号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、7~10〕について訂正することを認める。
特許第7008278号の請求項1、7~10に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7008278号(以下「本件特許」という。)の請求項1、7~10に係る特許についての出願は、平成30年2月16日の出願であって、令和4年1月13日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月25日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和4年 7月21日 :特許異議申立人服部道俊(以下「申立人」と
いう。)による本件特許に対する特許異議の
申立て
同 年11月18日付け:取消理由通知書
令和5年 1月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、当審から令和5年2月1日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人からは応答がなかった。
第2 本件訂正
1 本件訂正の内容
令和5年1月20日に提出された訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)により、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「前記印刷層の前記多官能アルコールおよび前記多官能カルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が化石燃料由来であり、」を、
「前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であり、前記多官能アルコールは、ポリプロピレングリコール又はブチレングリコールであり、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~10も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、7~10は、請求項7~10が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1、7~10〕について請求されたものである。
3 本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正前の請求項1に記載された「前記印刷層の前記多官能アルコールおよび前記多官能カルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が化石燃料由来であ」ることを「前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であ」ることに限定し、多官能アルコールを「ポリプロピレングリコール又はブチレングリコール」に限定するものであるから、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正前の請求項1に記載された「前記印刷層の前記多官能アルコールおよび前記多官能カルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が化石燃料由来であ」ることを「前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であ」ることに限定する点については、本件特許の願書に添付した明細書には、
「【0074】
〔ポリエステルポリオール〕
ポリエステルポリオールがバイオマス由来成分を含む場合、多官能アルコールおよび多官能カルボン酸の少なくともいずれか一方がバイオマス由来成分を含む。バイオマス由来成分を含むポリエステルポリオールとして以下の例を挙げることができる。
・バイオマス由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・化石燃料由来の多官能アルコールとバイオマス由来の多官能カルボン酸との反応物
・バイオマス由来の多官能アルコールと化石燃料由来の多官能カルボン酸との反応物」(下線は、強調のため当審が付与した。)と記載されており、多官能アルコールを「ポリプロピレングリコール又はブチレングリコール」に限定する点については、
「【0075】
バイオマス由来の多官能アルコールとしては、トウモロコシ、サトウキビ、キャッサバ、およびサゴヤシ等の植物原料から得られる脂肪族多官能アルコールを用いることができる。バイオマス由来の脂肪族多官能アルコールとしては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、ポリプロピレングリコール(PPG)、ネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、ブチレングリコール(BG)、ヘキサメチレングリコール等があり、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。
【0076】
バイオマス由来のポリプロピレングリコールは、植物原料を分解してグルコースが得られる発酵法により、グリセロールから3-ヒドロキシプロピルアルデヒド(HPA)を経て製造される。上記発酵法のようなバイオ法で製造されたポリプロピレングリコールは、EO製造法のポリプロピレングリコールと比較し、安全性面から乳酸等の有用な副生成物が得られ、しかも製造コストも低く抑えることが可能であることも好ましい。
バイオマス由来のブチレングリコールは、植物原料からグリコールを製造し発酵することで得られたコハク酸を得て、これを水添することによって製造することができる。
バイオマス由来のエチレングリコールは、例えば、常法によって得られるバイオエタノールからエチレンを経て製造することができる。」(下線は、強調のため当審が付与した。)と記載されているから、訂正事項1は、本件特許の明細書等に記載した事項の範囲内の事項である。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)小括
上記のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、7~10について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件特許の請求項1、7~10に係る発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、7~10(以下「本件発明1」等という。)に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、7~10に記載された次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
少なくとも、基材層、印刷層、接着樹脂層、中間層及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着樹脂層は、前記中間層に接しており、
前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であり、
前記多官能アルコールは、ポリプロピレングリコール又はブチレングリコールであり、
前記基材層は、化石燃料由来のポリエステルを含む第1基材フィルムを有し、
前記中間層は、金属箔を有する、包装材料。
【請求項7】
前記印刷層の前記イソシアネート化合物がバイオマス由来成分を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項8】
前記シーラント層は、オレフィンを含むモノマーの重合体であるポリオレフィンを含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の包装材料。
【請求項9】
前記シーラント層は、バイオマス由来のエチレンを含むモノマーの重合体であるバイオマスポリオレフィンを含む、請求項8に記載の包装材料。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の包装材料を備える、包装製品。」
第4 令和4年11月18日付け取消理由通知の概要
理由(進歩性)
本件特許の請求項1及び7~10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消されるべきものである。
記
以下甲第1号証~甲第4号証を甲1~甲4という。
甲1:特開2013-176951号公報
甲2:特開2011-225863号公報
甲3:特開2017-109497号公報
甲4:特開2015-38162号公報
引用文献1:特開2016-150943号公報(特許異議申立書記載の周知技術を示す文献)
引用文献2:特開2017-39835号公報(特許異議申立書記載の周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2017-48360号公報(当審が発見した文献)
第5 取消理由(進歩性)についての当審の判断
1 甲1に記載された事項及び甲1発明並びに、甲2~4、引用文献1~3に記載された事項
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
甲1には、以下の記載がある。下線は強調のために当審が付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。
「【請求項1】
少なくとも基材フィルムとシーラントフィルムとからなる積層フィルムであって、
該基材フィルムは、植物由来原料からなるポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリ乳酸フィルムであり、
該シーラントフィルムは、
(a)植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン20~70質量%、
(b)密度0.920~0.933kg/m3及びMFR0.5~3.5g/10分の物性を有する、非植物由来の低密度ポリエチレン15~65質量%、
(c)エチレンと炭素数6のα-オレフィンとの共重合にて得られ、且つ、密度0.914~0.937kg/m3及びMFR0.9~3.0g/10分の物性を有する、非植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン15~65質量%、並びに
(d)添加剤0~20質量%、
からなり、ここで、(a)~(d)の合計は100質量%である樹脂組成物からなるポリエチレンフィルムであることを特徴とする、
上記積層フィルム。」
「【0004】
本発明は、上記の問題点を解決し、優れた手切れ性及び耐衝撃性を示し、且つ、フィルム全体として少なくとも20%の高いバイオマス度を示すことから環境への負荷が低減された積層フィルムを提供することを目的とする。」
「【0029】
<VII>基材フィルム
本発明において、シーラントフィルムは、植物由来または非植物由来の任意の基材フィルムと積層することができる。
特に、一層高いバイオマス度を達成するために、基材フィルムとして、植物由来の原料からなるPETフィルム、または、植物由来のPLAからなるPLAフィルムを使用することが好ましい。
本発明において、基材フィルムは、用途に応じて任意の厚さであってよい。
また、本発明の積層フィルムが、全体として高いバイオマス度を達成できるように、基材フィルム自体は、少なくとも15%のバイオマス度を示すことが好ましい。」
「【0037】
<IX>積層
前記シーラントフィルムと、前記基材フィルムとを積層することにより、本発明の積層フィルムを得ることができる。
フィルム間の接着は、接着剤を介して、ドライラミネート法で貼り合わせることができる。これにより、優れた接着強度及び引き裂き性が得られる。使用する接着剤としては、例えば、ドライラミネート用の二液硬化型ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
また、接着層を介して押出ラミネート法(所謂サンドイッチラミネート法)により貼り合わせることもできる。この場合は、接着層として、ポリオレフィン系の熱接着性樹脂、例えば、LDPEのほか、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等の単体、またはこれらにハードレジン等の接着性向上剤をブレンドした樹脂等を使用することができる。また、本発明のシーラントフィルムを構成する樹脂組成物を使用して、バイオマス度をさらに向上させてもよい。
さらに、基材フィルム上に、シーラントを構成する樹脂組成物を押出コーティングすることにより積層することもできる。
【0038】
本発明の更なる態様において、基材フィルムとシーラントフィルムとの間に、バリア層を設けてもよい。
バリア層としては、アルミニウム箔等の金属箔のほか、アルミニウム等の金属やアルミニウム酸化物、珪素酸化物等の無機酸化物を蒸着基材上に蒸着した蒸着フィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等を使用することができる。
特に、バリア層として蒸着フィルムを用いる場合、蒸着基材として、上述の植物由来PETフィルムまたは植物由来PLAフィルムを用いることにより、バイオマス度をさらに高めることができる。
基材フィルムとバリア層、及び、バリア層とシーラントとは、上記の基材フィルムとシーラントとの接着と同様に、ドライラミネート法、押出ラミネート法、押出コーティング法等で積層することができる。
【0039】
いずれの場合も、積層面にアンカーコート剤を予め塗布しておくか、コロナ処理等の前処理を施しておくことにより、層間の接着強度を高めることができる。
本発明の更なる態様において、基材フィルム上またはシーラントフィルムと基材フィルムとの間の任意の位置に、文字、図形、記号、絵柄等の印刷層を設けてもよい。
上記で使用する接着剤や印刷インキとして、植物由来樹脂を含むものを使用することにより、バイオマス度をさらに高めることもできる。また、基材として紙を用いた場合にも、バイオマス度の高い積層体を得ることができる。
【0040】
<X>包装材
本発明の積層フィルムは、蓋材や包装袋等の包装材として、好適に使用することができる。・・・したがって、詰め替え用のシャンプーやリンス、食品等を密封包装する詰め替えパウチのシーラントフィルムとしても好適に使用することができる。」
【0037】、【0038】の記載から、バリア層を設けた場合、基材フィルムとバリア層とは、樹脂を使用した接着層を介して積層されることから、樹脂を使用した接着層はバリア層に接することが看取できる。
甲1の上記記載から、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
甲1発明
「基材フィルム、印刷層、樹脂を使用した接着層、バリア層及びシーラントフィルムを含む包装材であって、
前記樹脂を使用した接着層は、前記バリア層に接しており、
前記印刷層は、植物由来樹脂を含み、
前記基材フィルムは、植物由来のPETフィルムであり、
前記バリア層は、金属箔を有する、包装材。」
(2)甲2に記載された事項
甲2には、以下の記載がある。
「【請求項1】
植物由来の短鎖ジオール成分(a)と、石油由来のカーボネート成分(b)又は植物由来のカルボン酸成分(c)とを用いて合成されてなる、バイオポリカーボネートポリオール(A)又はバイオポリエステルポリオール(B)、植物由来の短鎖ジオール成分(a)を用いて合成されてなるバイオポリエーテルポリオール(C)、のいずれかのポリオールと、イソシアネート成分(d)とを反応させてなるバイオポリウレタン樹脂であって、上記バイオポリウレタン樹脂100質量%に対して植物由来成分の含有量が28~95質量%であることを特徴とするバイオポリウレタン樹脂。」
「【0014】
以上のように、本発明によれば、植物由来の原材料を高い比率で使用したバイオポリウレタン樹脂(以下、バイオウレタン樹脂とも呼ぶ)において、これを適用した場合に、各種コーティング剤、各種塗料、印刷インキ、成形体、フィルム、シート類に要求されている耐久性や、その性能などを向上させることができ、しかも、環境問題に対する対応策ともなるエコロジー素材であるバイオポリウレタン樹脂が提供される。」
「【0021】
本発明のバイオポリウレタン樹脂は、少なくとも、上記に挙げたポリオール(A)、(B)および(C)から選ばれるいずれかを用いて合成されてなるが、上記した通り、これらのポリオール成分は、いずれも植物由来の短鎖ジオール成分(a)成分などを原料としており、植物由来の成分である。植物由来の短鎖ジオール成分(a)としては、例えば、下記のような方法によって植物原料から得られる、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールなどがあるが、いずれも使用し得る。これらは、単独で用いても併用してもよい。」
「【0025】
バイオポリエステルポリオールであるポリオール(B)は、上記した短鎖ジオール(a)と共に、植物由来のカルボン酸成分(c)を原料として得られる。前記カルボン酸成分(c)としては、セバシン酸、コハク酸、乳酸、グルタル酸、ダイマー酸などが挙げられる。例えば、セバシン酸は、ひまし油(トウゴマの種子より抽出)から得られるリシノール酸をアルカリ熱分解することにより、ヘプチルアルコールを副生成物として生成される。」
(3)甲3に記載された事項
甲3には、以下の記載がある。
「【請求項1】
少なくとも2層を有する積層体であって、
第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなり、
第2の層が、化石燃料由来の原料を含む樹脂材料からなることを特徴とする、積層体。」
「【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の積層体からなる、包装用袋。」
(4)甲4に記載された事項
甲4には、以下の記載がある。
「【0048】
第2の本発明のポリエステル樹脂は、ジカルボン酸(a)、ジオール(b)及び多官能単量体(c)を必須成分とし、ジカルボン酸由来骨格は、コハク酸及び/又はセバシン酸単位を有し、ジオール由来骨格は、1,4-ブタンジオール及び/又は1,3-プロパンジオールを有し、植物由来の原料を全樹脂原料に対して40~95質量%の割合で含有し、かつ、非晶性のポリエステル樹脂である。」
「【0050】
第2の本発明のポリエステル樹脂の原料となる単量体成分のうち、コハク酸、1,4-ブタンジオール、1,3-プロパンジオールは、現在、工業的には石油原料を用いたものも多く販売されている。しかし、他方では、植物由来の合成方法が確立されており、よって、植物由来の原料として容易に入手可能な化合物である。本発明においては、植物由来の原料を全樹脂原料に対して40~95質量%の割合で含有するものであることから、このような植物由来の原料から合成することが容易である単量体を主成分として使用することが重要となる。」
「【0074】
(塗料組成物)
上述した本発明の第1及び第2のポリエステル樹脂は、塗料組成物における樹脂バインダーとして使用することができる。より具体的には、ポリエステル樹脂(A)、硬化剤(B)及び必要に応じて使用する水酸基含有アクリル樹脂(C)を含有する塗料組成物におけるポリエステル樹脂(A)成分として使用することができる。」
「【0076】
上記硬化剤(B)としては特に限定されず、水酸基、カルボキシル基等と反応を生じる官能基を2以上有する化合物を使用することができる。このような化合物としては例えば、ポリイソシアネート;メラミン樹脂等のアミノ樹脂等を挙げることができる。
【0077】
上記ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族のもの;イソホロンジイソシアネート等の脂環族のもの;その単量体及びそのビュレットタイプ、ヌレートタイプ、アダクトタイプ等の多量体等を挙げることができる。」
「【0141】
(末端水酸基を有する樹脂組成物)
本発明は、上述したポリエステル樹脂(A)とポリイソシアネート(B-1)とを反応させることによって得られた末端水酸基を有する樹脂組成物でもある。このような樹脂組成物は、主に印刷用インクに使用することができるものである。このような樹脂の製造方法は特に限定されるものではないが、有機溶剤中でポリエステル樹脂(A)とポリイソシアネート(B-1)とを水酸基過剰となる混合割合で混合して反応させる方法等を挙げることができる。
【0142】
(印刷インキ組成物)
本発明は、上述した末端水酸基を有する樹脂組成物を含有する印刷インキ組成物でもある。上記印刷インキ組成物は、上記末端水酸基を有する樹脂組成物に、各種顔料および溶剤を加え、必要に応じてブロッキング防止剤、可塑剤などの添加剤、流動性および分散性を改良するための顔料分散剤、繊維素樹脂、マレイン酸樹脂、ポリビニルブチラール等の樹脂を併用し、サンドミルなどの公知公用の顔料分散機を用いて製造することができる。」
(5)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の記載がある。
「【0012】
本発明におけるポリウレタンウレア樹脂は、高分子ポリオールと、ジイソシアネートとを反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、有機ジアミンと反応させてなる。つまり、ポリウレタンウレア樹脂の合成法は、まずプレポリマー反応として高分子ポリオールとジイソシアネート化合物を、必要に応じイソシアネート基に不活性な溶媒を用い、また、更に必要であれば触媒を用いて10~100℃の温度で反応させ、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造し、次いで、鎖延長反応としてウレタンプレポリマーと有機ジアミンとを、10~80℃で反応させる。プレポリマー反応および鎖延長反応の終点は、粘度測定、IR測定によるNCOピーク、滴定によるアミン価測定等により判断される。」「【0030】
本発明におけるグラビア印刷インキには、顔料として無機系顔料および有機系顔料を使用できる。・・・」
「【0036】
本発明において、1液型印刷インキ組成物として使用してもよいし、イソシアネート系硬化剤を添加し、2液型印刷インキ組成物として使用することもできる。・・・」
(6)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の記載がある。
「【0010】
本発明は、ウレア結合を含有するポリウレタン樹脂(A)、ブロックイソシアネート化合物(B)、着色剤(C)および有機溶剤(D)を含有することを特徴とする軟包装用ラミネートインキ組成物である。」
「【0014】
本発明の軟包装用ラミネートインキ組成物で使用するポリウレタン樹脂(A)に必要に応じて使用される併用ポリオールとしては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知のポリオールを用いることができ、1種または2種以上を併用してもよい。例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体のポリエーテルポリオール類(1);エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4―ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどの飽和または不飽和の低分子ポリオール類(2);これらの低分子ポリオール類(2)と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、こはく酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸あるいはこれらの無水物とを脱水縮合または重合させて得られるポリエステルポリオール類(3);環状エステル化合物、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類、を開環重合して得られるポリエステルポリオール類(4);前記低分子ポリオール類(2)などと、例えばジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネートポリオール類(5);ポリブタジエングリコール類(6);ビスフェノールAに酸化エチレンまたは酸化プロピレンを付加して得られるグリコール類(7);1分子中に1個以上のヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られるアクリルポリオール(8)などが挙げられる。」
「【0021】
次に、本発明に使用されるブロックイソシアネート化合物(B)に関し説明する。
前記ブロックイソシアネート化合物(B)とは、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビューレット型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネートの末端イソシアネート基をブロック剤でマスクしたものである。ブロックタイプのイソシアネートを使用することにより、ポリエチレン押出し強度が飛躍的に向上する。また、現状においては、ポリエチレン押出しラミネート強度を向上させるために、ノンブロックタイプのイソシアネートを併用し、所謂2液タイプのインキを使用し対応しているが、ノンブロックタイプの場合は、2液後の経時変化が、激しく使用後の残インキを再利用できないなどの課題がある。一方で、ブロックタイプのイソシアネート化合物の場合は、経時変化が極めて少ない為に、2液化の配合が不要でかつ、残インキの棄却といった課題がなく、1液タイプのインキと同様の取り扱いで、良好なポリエチレン押出し強度を得ることが可能となる。」
(7)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の記載がある。
「【0014】
以下に、本発明の好ましい実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。本発明の接着剤組成物は、植物由来成分を有する芳香族ポリエステルウレタンポリオール(A)を主剤とし、多官能イソシアネート化合物(H)を硬化剤として構成された二液硬化型ポリエステルウレタン接着剤組成物(S)であり、特にその主剤である植物由来成分を有する芳香族ポリエステルウレタンポリオール(A)に特徴がある。・・・」
「【0035】
本発明では、多官能イソシアネート化合物(H)として、上記の他、植物由来のイソシアネートを用いることもできる。植物由来のポリイソシアネートは、植物由来の二価カルボン酸を酸アミド化、還元することで末端アミノ基に変換し、さらに、ホスゲンと反応させ、該アミノ基をイソシアネート基に変換することにより得られる。植物由来のポリイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。・・・」
2 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「基材フィルム」は本件発明1の「基材層」に相当し、以下同様に、「樹脂を使用した接着層」は「接着樹脂層」に、「バリア層」は「中間層」に、「シーラントフィルム」は「シーラント層」に、「包装材」は「包装材料」に、それぞれ相当する。
甲1発明が「前記印刷層は、植物由来樹脂を含」むことは、印刷層が、バイオマス由来の樹脂を含む限りにおいて、本件発明1の「前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であり、
前記多官能アルコールは、ポリプロピレングリコール又はブチレングリコールであ」ることと一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、相違点1、2で相違する。
(一致点)
少なくとも、基材層、印刷層、接着樹脂層、中間層及びシーラント層を含む包装材料であって、
前記接着樹脂層は、前記中間層に接しており、
前記印刷層は、バイオマス由来の樹脂を含み、
前記中間層は、金属箔を有する、包装材料。
(相違点1)
印刷層が、バイオマス由来の樹脂を含むことについて、本件発明1では、「前記印刷層は、着色剤と、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物とを含み、前記ポリオールまたは前記イソシアネート化合物の少なくともいずれかがバイオマス由来成分を含み、
前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、
前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であり、
前記多官能アルコールは、ポリプロピレングリコール又はブチレングリコールであ」るのに対して、甲1発明では、印刷層が植物由来の樹脂を含むものの、その樹脂の構成や印刷層の樹脂以外の組成物について特定されていない点。
(相違点2)
基材層について、本件発明1では、「前記基材層は、化石燃料由来のポリエステルを含む第1基材フィルムを有し」ているのに対して、甲1発明では、基材フィルムが、植物由来のPETフィルムである点。
(3)判断
まず、相違点1について検討する。
甲4(【0074】、【0076】、【0141】、【0142】)、引用文献1(【0012】、【0030】、【0036】)、引用文献2(【0010】、【0014】、【0021】)の記載から、印刷インキに、着色剤と、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を用いることは、周知技術(以下「周知技術1」という。)である。
また、甲2(【請求項1】、【0014】、【0021】、【0025】)、甲3(【請求項1】、【請求項12】)、甲4(【0048】、【0050】)の記載から、ポリエステルのジオール成分とジカルボン酸成分の、一部または全部にバイオマス由来の材料を使用することは、周知技術(以下「周知技術2」という。)であるといえる。
さらに、甲3には、「前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステル」(甲3の請求項1)が記載されている。
しかし、本件発明1の「前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であり、前記多官能アルコールは、ポリプロピレングリコール又はブチレングリコールであ」ることは、上記周知技術1、2に該当せず、甲2~4、引用文献1~3には記載も示唆もされていない。
したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明、甲2~4に記載された事項及び引用文献1~3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本件発明7~10について
本件発明7~10は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記2で検討したものと同じ理由により、甲1発明、甲2~4に記載された事項及び引用文献1~3に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由(甲5を主引用例とした拡大先願に係る申立理由)について
申立人は、申立書において、
「(要件(C)について)
甲第5号証には、 ポリオールが、 ポリオールとポリカルボン酸との反応物であるポリエステルポリオールであることが記載され(段落0025)、ポリオールとポリカルボン酸それぞれについて、多数の化合物が例示され、バイオマス由来のものも使用できることも記載されている (段落0027、0028)。
これらの化合物は、バイオマス由来との断りのない限り、通常、化石燃料由来のものである。
したがって、ポリオール、ポリカルボン酸それぞれについて、化石燃料由来のものと、バイオマス由来のものとを組み合わせることができるし、ポリオールとポリカルボン酸のいずれか 一方がバイオマス由来成分で、他方が化石燃料由来である組合せも、当然、示されていると言える。
それゆえ、要件(C)は、甲第5号証に記載されていることである。」(申立書の第27ページ下から第10行~第28ページ第3行)(当審注:要件(C)とは、本件訂正前の本件特許の請求項1に係る発明の特定事項である、「前記印刷層の前記ポリオールは、多官能アルコールと多官能カルボン酸との反応物のポリエステルポリオールであり、前記印刷層の前記多官能アルコールおよび前記多官能カルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が化石燃料由来であり、」である。)、
「〇2(当審注:〇の中に数字の2を代用。)甲第5号証における実施例の記載との対比
甲第5号証の実施例には、 以下の記載がある。・・・
そして、表15中、実施例32では、印刷インキとして、以下のものが使用されている。
第1ユニット B1 (ポリウレタンウレアとして PUU5 使用)
第2ユニット C4 (ポリウレタンウレアとして PUU22 使用)
第3ユニット R8 (ポリウレタンウレアとして PUU24 使用)
第4ユニット Y4 (ポリウレタンウレアとして PUU20 使用)
第5ユニット W3 (ポリウレタンウレアとして PUU13 使用)
ポリウレタンウレア(PUU)の成分、特に、ポリエステルジオールとイソシアネートは、以下のとおりである。
[図:0001399371000001.jpg]
したがって、第1~5ユニットのいずれの印刷インキも、ポリウレタンウレアの原料であるポリエステルジオールは、ジオールとジカルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が石油由来である」(申立書の第28ページ下から第9行~第29ページ下から第6行)として、本件発明1は、甲第5号証(特願2017-126910号(特開2018-62642号公報)。以下「甲5」という。)に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と実質的に同一であると主張する。
しかし、甲5の実施例32の印刷インキである第1~5ユニットは、それぞれが「ジオールとジカルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が石油由来である」ものの、これらのユニットを使用して印刷層を形成した場合、その印刷層は、第1ユニット~第5ユニットを混合したものからなり、ジオールとジカルボン酸は、共にバイオマス由来成分及び石油由来成分を含み、「前記印刷層の前記多官能アルコールおよび前記多官能カルボン酸の一方がバイオマス由来成分を含み、他方が化石燃料由来で」はない。さらに、甲5の実施例32は、本件発明1のように、「前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であり、前記多官能アルコールは、ポリプロピレングリコール又はブチレングリコールで」もない。また、甲5には、「前記印刷層の前記多官能アルコールがバイオマス由来成分を含み、前記多官能カルボン酸が化石燃料由来であり、前記多官能アルコールは、ポリプロピレングリコール又はブチレングリコールであ」ることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、甲5に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と実質的に同一ではない。
本件発明7~10は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、同様に、甲5に係る特許出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と実質的に同一ではない。
よって、上記申立人の上記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1、7~10に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1、7~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-700691