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特許異議申立

2023-700721

発泡性接着シートおよび物品の製造方法

審判番号
2023-700721
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-038255
登録番号
7204971
請求日
2023年07月12日
審決日
2023年12月14日
公報発行日
2024年01月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】山下 昭彦
  • 【権利者代理人】岸本 達人
  • 【異議申立人】服部 道俊
審判長/審判官
  • 審判長 門前 浩一
  • 審判官 塩見 篤史
  • 審判官 亀ヶ谷 明久
分類
P1652.121-Y (C09J) / P1652.536-Y (C09J) / P1652.537-Y (C09J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7204971号発明「発泡性接着シートおよび物品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7204971号の請求項1~4、6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7204971号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和4年3月11日の出願であって、令和5年1月5日に特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行された。その後、令和5年7月12日に特許異議申立人である服部 道俊(以下「申立人」という。)により、請求項1~4、6に係る特許について特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件発明と本件明細書等の記載 1 本件特許の請求項1~4、6に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」、「本件発明6」といい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~4、6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第一接着層と、基材と、第二接着層と、をこの順に有する発泡性接着シートであって、 前記第一接着層の組成と前記第二接着層の組成とが異なり、 前記第一接着層および前記第二接着層が、熱硬化型接着剤を含有し、 前記第一接着層および前記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有し、温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後の前記発泡性接着シートのカールの曲率半径が15mm以上であり、 ループスティフネスが、45mN/10mm以上である、発泡性接着シート。 【請求項2】 前記第一接着層および前記第二接着層が前記発泡剤を含有する、請求項1に記載の発泡性接着シート。 【請求項3】 前記基材の厚さが、前記第一接着層の厚さおよび前記第二接着層の厚さよりも薄い、請求項1または請求項2に記載の発泡性接着シート。 【請求項4】 前記第一接着層のタックが、0gf以上、10gf未満であり、前記第二接着層のタックが、10gf以上、500gf以下である、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の発泡性接着シート。」 「【請求項6】 第一部材および第二部材の間に、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の発泡性接着シートを配置する配置工程と、 前記発泡性接着シートを加熱して発泡硬化させ、前記第一部材および前記第二部材を接着する接着工程と、 を有する、物品の製造方法。」 2 本件特許の願書に添付した明細書及び図面(以下「本件明細書等」という。)には、次の記載がある。 「【0009】 しかしながら、発泡性接着シートにおいて、2つの接着層が異なる場合、カールが発生することがある。特に、発泡性接着シートの厚さを薄くすると、カールが発生しやすくなる。この場合、部材への発泡性接着シートの貼り付けを妨げたり、発泡性接着シートに浮きや剥がれが生じたりするという問題がある。このような場合には、発泡硬化後の接着性が低下し、信頼性が低くなる。 【0010】 また、発泡性接着シートの厚さが薄いと、発泡性接着シートの搬送時に、発泡性接着シートが自重で垂れ下がりやすくなる。例えば、発泡性接着シートを吸着搬送する場合、発泡性接着シートの厚さが薄いと、発泡性接着シートの両端が自重で垂れ下がった形状になりやすい。そのため、発泡性接着シートを吸着搬送して、部材に貼り付ける場合には、貼り付け時に、発泡性接着シートの折れ、よれ、たわみ、気泡のかみ込み等が生じるという問題がある。さらに、発泡性接着シートがこのような不具合がある状態で部材に貼り付けられると、発泡性接着シートに隆起が生じるため、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが貼り付けられた他方の部材を挿入する際に、発泡性接着シートが擦れてしまい、剥がれが生じるという問題もある。このような場合においても、発泡硬化後の接着性が低下し、信頼性が低くなる。 【0011】 本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、カールを抑制することが可能であり、貼り付け性に優れる発泡性接着シートを提供することを主目的とする。」 「【0032】 1.特性 本開示における発泡性接着シートにおいては、温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が、15mm以上であり、好ましくは20mm以上であり、より好ましくは25mm以上である。上記曲率半径が上記範囲であることにより、カールを抑制することができる。そのため、例えば、2つの部材の間に発泡性接着シートを挿入する際、一方の部材の穴や溝等に発泡性接着シートを配置した後、発泡性接着シートが配置された一方の部材の穴や溝等に他方の部材を挿入する際、他方の部材に発泡性接着シートを配置した後、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが配置された他方の部材を挿入する際に、挿入性を良くすることができる。また、例えば、第一接着層のタックが第二接着層のタックよりも低い場合において、第二接着層のタックを利用して、発泡性接着シートの第二接着層の面を部材に貼り付ける場合には、部材に対する発泡性接着シートの浮き、剥がれを抑制することができる。また、上記の場合、貼り付け時に、発泡性接着シートの折れ、よれ、たわみ、気泡のかみ込み等が生じるのを抑制することができる。よって、発泡硬化後の接着不良を抑制することができる。一方、上記曲率半径が大きいほど、カールが小さくなるため、上記曲率半径の上限は、特に限定されない。 【0033】 なお、発泡性接着シートを、例えば、モータにおけるコイルおよびステータの接着や、埋込磁石型モータにおけるロータおよび永久磁石の接着に用いる場合、発泡性接着シートの長さは100mm程度とすることが多い。そのため、本開示においては、発泡性接着シートの試験片の長さを100mmとしたとき、試験片が長さ方向に1周しない程度であれば実用可能であるとし、上記曲率半径を15mm以上とした。 【0034】 また、熱硬化型接着剤においては、硬化の過程で、硬化収縮および熱収縮の収縮が生じる。この収縮よりカールが生じる。一般的に、熱硬化型接着剤は、60℃程度であれば、収縮しはじめると考えられる。そのため、熱硬化型接着剤の主な収縮要因は熱であるので、湿度の影響を除外するために、本開示においては、60℃、15時間という条件とし、湿度は10%RH以下とした。」 「【0037】 次に、カール測定用の試験片を、温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置する。この際、第一接着層および第二接着層の少なくともいずれか一方が粘着性を有する場合、カール測定用の試験片は、粘着性を有する接着層の面が周囲に触れない状態とする。中でも、カール測定用の試験片は、カール方向に自重がかからない状態とすることが好ましい。次いで、図2(b)に示すような、カール測定用の試験片のカールの弦長dを測定する。そして、下記式を用いて、曲率半径rを算出する。 L=r×θ d=2×r×sin(θ/2) (上記式中、Lは弧長、dは弦長、rは曲率半径、θは中心角を表す。) なお、弦長dは、弦長dの方向を、MD方向、TD方向、およびMD方向に対して45°方向とした場合のそれぞれについて測定し、曲率半径rを算出する。そして、これらの場合における曲率半径rのうち、最も小さい値を採用する。弦長dの方向をMD方向またはTD方向とする場合は、弧長Lは50mmとなる。また、弦長dの方向をMD方向に対して45°方向とする場合は、弧長Lは、L=50×√2=70.7mmとなる。 【0038】 本開示において、上記の発泡性接着シートのカールの曲率半径は、例えば、各層の厚さおよび硬さを調整することにより、制御することができる。例えば、基材の厚さが厚いと、曲率半径が大きくなる傾向にある。また、例えば、基材の硬さが高いと、曲率半径が大きくなる傾向にある。また、例えば、第一接着層の硬さが第二接着層の硬さよりも高い場合には、第二接着層の厚さが厚くなるほど、曲率半径が大きくなる傾向にある。また、第一接着層および第二接着層の硬さが同程度である場合には、第一接着層および第二接着層の厚さを同程度とすると、曲率半径が大きくなる傾向にある。 【0039】 なお、第一接着層および第二接着層の硬さは、第一接着層および第二接着層の組成を調整することにより、制御することができる。また、第一接着層および第二接着層においては、タックが低いと、硬さが高くなり、タックが高いと、硬さが低くなる傾向がある。また、第一接着層および第二接着層においては、貯蔵弾性率が高いと、硬さが高くなり、貯蔵弾性率が低いと、硬さが低くなる傾向がある。また、第一接着層および第二接着層においては、鉛筆硬度が高いと、硬さが高くなり、鉛筆硬度が低いと、硬さが低くなる傾向がある。また、第一接着層および第二接着層においては、静摩擦係数が低いと、硬さが高くなり、鉛筆硬度が高いと、硬さが低くなる傾向がある。 【0040】 本開示における発泡性接着シートにおいては、ループスティフネスが、45mN/10mm以上であり、好ましくは75mN/10mm以上、より好ましくは100mN/10mm以上である。ループスティフネスとは、上述したように、フィルムまたはシートのコシの強さを表すパラメータである。発泡性接着シートのループスティフネスが上記範囲であることより、発泡性接着シートのコシを強くすることができる。そのため、2つの部材の間に発泡性接着シートを配置する際、挿入性を良くすることができる。また、例えば、発泡性接着シートを吸着搬送して、部材に貼り付ける際に、発泡性接着シートが自重により垂れ下がるのを抑制することができ、貼り付け性を良くすることができる。一方、ループスティフネスの上限は、特に限定されない。」 「【0052】 本開示において、発泡性接着シートのループスティフネスは、例えば、各層の厚さおよび硬さを調整することにより、制御することができる。例えば、基材の厚さが厚いと、ループスティフネスが大きくなる傾向にある。また、例えば、基材の硬さが高いと、ループスティフネスが大きくなる傾向にある。また、例えば、第一接着層の硬さが第二接着層の硬さよりも高い場合には、第一接着層の厚さが厚くなるほど、ループスティフネスが大きくなる傾向にある。また、第一接着層および第二接着層の硬さが高いと、ループスティフネスが大きくなる傾向にある。」 「【0070】 一方、第一接着層と第二接着層とで、タックが同じであってもよい。 【0071】 また、第一接着層および第二接着層のタックはいずれも低くてもよい。この場合、第一接着層および第二接着層のタックはそれぞれ、例えば、0gf以上、10gf未満であることが好ましい。この場合、第一接着層および第二接着層のタックはそれぞれ、例えば、5gf以下であってもよく、2gf以下であってもよい。第一接着層および第二接着層のタックがそれぞれ上記範囲内であることにより、第一接着層および第二接着層を実質的に非粘着性(タックフリー)とすることができ、滑り性が良好な第一接着層および第二接着層とすることができる。そのため、例えば、2つの部材の間に発泡性接着シートを挿入する際、一方の部材の穴や溝等に発泡性接着シートを配置した後、発泡性接着シートが配置された一方の部材の穴や溝等に他方の部材を挿入する際、他方の部材に発泡性接着シートを配置した後、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが配置された他方の部材を挿入する際に、挿入性を向上させることができる。これにより、発泡性接着シートの剥がれや位置ずれを抑制することができる。また、一方の部材に対して他方の部材を動かして部材同士の位置合わせを行う際には、2つの部材の間に発泡性接着シートを配置した状態で一方の部材に対して他方の部材をスムーズに動かすことができ、位置合わせを容易に行うことができる。また、第一接着層および第二接着層のタックがそれぞれ上記範囲内であることにより、耐ブロッキング性も良好な第一接着層および第二接着層とすることができる。よって、発泡性接着シートの取扱性も良くすることができる。」 第3 申立の理由及び証拠方法 申立人は、請求項1~4、6に係る発明の特許を取り消すべきであると主張し、その理由として、後記1の申立ての理由を主張し、また、後記2の証拠方法を提出している。 また、申立ての理由1は、主たる刊行物等として甲第1号証又は甲第6号証を引用するものである。 1 申立ての理由 (1)申立ての理由1-1(甲1号証を主引用例とする場合) 本件発明1~4、6は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)申立ての理由1-2(甲6号証を主引用例とする場合) 本件発明1~4、6は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その出願前日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)申立ての理由2(実施可能要件) 本件明細書等の記載は、当業者が本件発明1~4、6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないため、本件発明1~4、6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (4)申立ての理由3(サポート要件) 本件発明1~4、6は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるため、本件発明1~4、6に係る特許は、特許法第36条第6項第1項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (5)申立ての理由4(明確性要件) 本件発明1~4、6における「前記第一接着層および前記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有し、温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後の前記発泡性接着シートのカールの曲率半径が15mm以上」は不明確であって、本件発明1~4、6に係る特許は、特許法第36条第6項第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2 証拠方法 特許異議申立人は、次の甲第1号証~甲第6号証を提出した。甲第1号証~甲第6号証を、以下「甲1」~「甲6」ともいう。 甲第1号証:特開2012-44831号公報 甲第2号証:特開2015-151401号公報 甲第3号証:特開2014-133811号公報 甲第4号証:特開2019-166844号公報 甲第5号証:特開2020-104341号公報 甲第6号証:特開2021-127371号公報 また、当審において以下の文献を新たに参考文献として引用した。 文献A:国際公開第03/072639号 第4 当審の判断 1 証拠の記載事項 (1) 甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 イミド変性不飽和ポリエステル樹脂と比誘電率が2以下の低誘電フィラーとを有するコイル接合用樹脂層と、 アミン硬化型ゴム分散エポキシ樹脂と膨張フィラーとを有するステータコア接合用樹脂層と、 を有することを特徴とするコイル固定用絶縁樹脂シート。 【請求項2】 請求項1に記載のコイル固定用絶縁樹脂シートにおいて、 前記コイル接合用樹脂層は、さらに膨張フィラーを含むことを特徴とするコイル固定用絶縁樹脂シート。 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載のコイル固定用絶縁樹脂シートにおいて、 前記コイル接合用樹脂層と前記ステータコア接合用樹脂層との間に、耐熱フィルムが設けられていることを特徴とするコイル固定用絶縁樹脂シート。」 「【請求項8】 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のコイル固定用絶縁樹脂シートのステータコア接合用樹脂層が、ステータコアのスロットの内壁面に接するように、予め前記コイル固定用絶縁樹脂シートをスロット形状に折り曲げ成形して、スロット内に挿入し、 複数のコイル導体間が絶縁されて形成されたコイル導体群を、前記コイル固定用絶縁樹脂シートのコイル接合用樹脂層に接するように挿入し、 加熱してコイル固定用絶縁樹脂シートを膨張および硬化させ、コイル導体群の外周面と前記コイル固定用絶縁樹脂シートとの間およびスロットの内壁面と前記コイル固定用絶縁樹脂シートとの間を固着させることを特徴とするモータ用ステータの製造方法。」 「【0017】 耐熱フィルムを前記コイル接合用樹脂層と前記ステータコア接合用樹脂層との間に設けることにより、コイル固定用絶縁樹脂シートの剛性が担保される。」 「【0033】 図3に示す樹脂シート100bは、図2に示す樹脂シート100aのコイル接合用樹脂層20aとステータコア接合用樹脂層30aとの間に、耐熱フィルム40が設けられ、耐熱フィルム40の一面にコイル接合用樹脂層20aが、耐熱フィルム40の他面にステータコア接合用樹脂層30aが貼り合わされている。これにより、樹脂シート100bの剛性が担保される。 【0034】 また、図4に示す樹脂シート100cは、イミド変性不飽和ポリエステル樹脂22と比誘電率が2以下の低誘電フィラー24と膨張フィラー34とを有するコイル接合用樹脂層20bと、アミン硬化型ゴム分散エポキシ樹脂32と膨張フィラー34とを有するステータコア接合用樹脂層30aとを有し、コイル接合用樹脂層20aとステータコア接合用樹脂層30aがそれぞれ一面で張り合わされている。これにより、コイル接合用樹脂層20bに膨張フィラー34が含まれるので、ステータコア接合用樹脂層30aに含まれる膨張フィラー34とともに、熱等により膨張し、コイル導体群の外周面と樹脂シート100cとの間およびスロットの内壁面と樹脂シート100cとの間が隙間無く固着させることができる。 【0035】 また、図5に示す樹脂シート100dは、図4に示す樹脂シート100cのコイル接合用樹脂層20bとステータコア接合用樹脂層30aとの間に、耐熱フィルム40が設けられ、耐熱フィルム40の一面にコイル接合用樹脂層20bが、耐熱フィルム40の他面にステータコア接合用樹脂層30aが貼り合わされている。これにより、樹脂シート100dの剛性が担保される。」 「【0041】 ここで膨張フィラーは、無機系や有機系の化学膨張剤と、マイクロカプセル系の物理膨張剤との2つに大別される。無機系や有機系の化学膨張剤は、熱分解によりガス化して膨張するものである。そして、上記2種類の膨張剤は、様々な種類があり、また様々製法により製造されるが、例えば、樹脂の硬化性や物性に与える影響、膨張の均一性等を考慮し、背反が少ない点から、マイクロカプセル系の物理膨張剤の一種である、熱膨張性マイクロカプセルが好適である。また、マイクロカプセル系の物理膨張剤の一種の熱膨張性マイクロカプセルは、液状の低沸点物質を、熱可塑性ポリマーからなるポリマーシェルで包み込んだマイクロカプセルであって、ポリマーシェルの軟化点近傍、或いは、それ以上の温度で気化し、熱膨張するものである。」 「【0047】 本実施の形態におけるコイル接合用樹脂層20a,20b,20cの膜厚は、12~250μmであり、好ましくは30~125μmである。コイル接合用樹脂層20a,20bの膜厚が125μmを越えると、樹脂シートの膜厚が厚くなり、スロット内のコイル導線の占積率が向上しない。一方、コイル接合用樹脂層20a,20b,20cの膜厚が30μm未満の場合には、コイル接合用樹脂層20a,20b,20cにおける所定の低誘電性が得られない。 【0048】 本実施の形態におけるステータコア接合用樹脂層30a,30bの膜厚は、12~250μmであり、好ましくは30~125μmである。ステータコア接合用樹脂層30a,30bの膜厚が125μmを越えると、樹脂シートの膜厚が厚くなり、スロット内のコイル導線の占積率が向上しない。一方、ステータコア接合用樹脂層30a,30bの膜厚が30μm未満の場合には、ステータコア接合用樹脂層30a,30bとスロット内壁面との固着性が低下する可能性が高い。 【0049】 本実施の形態における耐熱フィルムとして、例えば、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer、LCP)、アラミド紙(ノーメックペーパー等)、LPC紙などが用いられる。本実施の形態における耐熱フィルムの厚みは、12~250μm、好ましくは50~125μmである。耐熱フィルムの厚みが125μmを越えると、樹脂シートの膜厚が厚くなり、スロット内のコイル導線の占積率が向上しない。一方、耐熱フィルムの厚みが12μm未満の場合には、樹脂シートに剛性が付与されない。」 「【0066】 註)*4:スロットとコイル導線の隙間の充填性は、樹脂シートの熱による膨張前のスロットとコイル導線の最大隙間を基に判定し、最大隙間が0.3mm未満までの隙間であれば充填性を確保できるため「○」とし、0.3mm以上の場合は充填性が確保できないため「×」とした。 *5:樹脂シートの脆さは、膨張後の外観について評価し、膨張し過ぎて樹脂が手で触れた時に剥げ落ちる場合には「×」とし、一方、剥げ落ちない場合には「○」とした。」 「【図3】 [図:0001405832000001.jpg] 」 「【図5】 [図:0001405832000002.jpg] 」 (2)甲2の記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「【0004】 しかしながら、従来の接着シートは、部材間の隙間が狭いと、その部材間に入れ難い場合がある。具体的には、この隙間に接着シートを入れる際に、接着シートの粘接着性により不意に接着シートが部材に粘接着し、この隙間へ接着シートを入れる作業を中断し、もしくはやり直しすることが必要となる場合がある。そこで、接着シートがすべり性に優れた接着シートが要望されている。 【0005】 また、狭い隙間への挿入を容易にさせるべく単に接着シートの厚さを薄くすることも考え得るが、その場合には接着シートが強度不足となるおそれを有する。 本発明は、上記要望点に鑑み、接着性に優れていても、すべり性と強度とに優れた接着シートを提供することを課題とする。」 「【0010】 本実施形態の接着シートは、被着体に接着される接着シートである。 また、本実施形態の接着シートは、基材層と、該基材層に積層され、前記被着体に接着される接着層たる表面層とを有する。 前記接着層は、樹脂及び発泡剤を含有し、加熱によって発泡膨張することにより、前記被着体に接着される層である。」 「【0012】 前記接着シートは、通常、厚さが0.015~3mmであり、0.050~1mmであることが好ましい。 また、前記接着シートは、狭い隙間への挿入を容易にする点で、引張弾性率と厚さとの積が30MPa・mm以上であることが重要であり、50~5000MPa・mmであることが好ましい。該積が30MPa・mm以上であることにより、接着シートの剛性が十分となり、容易に狭い隙間へ接着シートを挿入することできる。また、該積が5000MPa・mm以下であることにより、接着シートが硬くなりすぎず、接着シートの折り曲げ加工などの作業がしやすくなるという利点がある。 また、前記接着シートは、引張弾性率が500~5000MPaであることが好ましい。 前記接着シートの引張弾性率については、接着シートから15mm幅×100mm長さの試験片を作製し、JIS K7161-1994に基づき、23℃において、引張速度200mm/min、チェック間距離50mmで引張試験を行い、引張荷重5~10Nにおける傾きより初期弾性率(MPa)を測定し、この初期弾性率を引張弾性率とする。 前記接着シートの厚さは、JIS K7130:1999に基づき、ダイヤルゲージなどよって求めることができる。」 (3)甲3の記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【0006】 従来、両面接着シートとして、接着力が両面で異なるものが知られている。しかしながら、フィルム等の第1の被着体と電子部品等の第2の被着体とを従来の両面接着シートによって接着する場合、接着時に反りが発生しやすい。また、両面接着シートには、接着層の表面に細かな凹凸が発生しておらず、また接着剤が流れ出さずに接着層が所定の形状に形成され、外観が良好であることも求められる。」 「【0015】 第1の接着層3の厚さは、第2の接着層4の厚さの2~10倍である。第1の接着層3の厚さを第2の接着層4の厚さの2~10倍とすることで、両面接着シート1の外観および埋め込み性を良好にでき、また接着時の反りも抑制できる。第1の接着層3の厚さが第2の接着層4の厚さの2倍未満であると、両面接着シート1の外観または埋め込み性が良好でなくなるおそれがあり、また接着時の反りが大きくなるおそれがある。一方、第1の接着層3の厚さが第2の接着層4の厚さの10倍を超えると、両面接着シート1の製造に用いられる部材のハンドリング性が良好でなくなるおそれがあり、また接着時の反りが大きくなるおそれがある。」 「【0017】 第1の接着層3の形成に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、該熱硬化性樹脂組成物の全体中、質量平均粒子径5~30μmの無機充填材を50~80質量%含有する。また、第2の接着層4の形成に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、該熱硬化性樹脂組成物の全体中、質量平均粒子径5μm未満の無機充填材を15~30質量%含有する。第1の接着層3および第2の接着層4のそれぞれに特定の質量平均粒子径を有する無機充填材を特定の含有量で含有させることで、両面接着シート1の外観および埋め込み性を良好にでき、接着時の反りも抑制できる。」 「【0047】 第1の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の弾性率が10~20GPaであることが好ましい。弾性率が10GPa未満であると、第1の接着層3が強度不足となるおそれがある。一方、弾性率が20GPaを超えると、第1の接着層3の剛性が増して、電子部品等の被着体との剥離等が発生するおそれがある。 【0048】 第2の接着層用の熱硬化性樹脂組成物は、硬化物の弾性率が1~10GPaであることが好ましい。弾性率を1~10GPaとすることで、フィルム、シート、筐体等の被着体への良好な接着性を持たせることができる。」 (4)甲4の記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 ポリイミドフィルムの片面又は両面に、含フッ素共重合体(A)を含む含フッ素樹脂層が直接積層してなり、 前記含フッ素共重合体(A)は、融点が280℃以上320℃以下であり、溶融成形が可能であり、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有し、 前記含フッ素樹脂層の厚みが1~20μmであることを特徴とする接着フィルム。」 「【0001】 本発明は、接着フィルム及びフレキシブル金属積層板に関する。」 「【0035】 含フッ素樹脂層は、ポリイミドフィルムの片面のみに積層しても両面に積層してもよい。接着フィルムの反りを抑制する、電気的信頼性に優れる両面金属フレキシブル積層体を得る等の点では、ポリイミドフィルムの両面に含フッ素樹脂層が積層していることが好ましい。 ポリイミドフィルムの両面に含フッ素樹脂層が積層する場合、各含フッ素樹脂層の組成(含フッ素共重合体(A)の種類、任意成分の種類及び含有量等)や厚みは同じでも異なってもよい。接着フィルムの反りの抑制の点では、各含フッ素樹脂層の組成や厚みは同じであることが好ましい。」 (5)甲5の記載事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 着色基材、粘着剤層、および粘着剤層に隣接して配置される剥離ライナーをこの順に有する加飾シートであって、 前記着色基材側表面の鏡面光沢度Gs(60°)が80%以上であり、 前記剥離ライナーが、粘着剤層側から第1のポリオレフィン系樹脂層、プラスチックフィルムからなる支持基材、および第2のポリオレフィン系樹脂層の順に積層されてなる積層体であり、 前記第1のポリオレフィン系樹脂層の粘着剤層側表面が凸部を有し、 前記第1のポリオレフィン系樹脂層および前記第2のポリオレフィン系樹脂層の少なくとも一方が極性基を含有するポリオレフィン樹脂を含む、加飾シート。」 「【0001】 本発明は、加飾シートに関する。 【背景技術】 【0002】 加飾シートは、装飾を付与することを目的として、粘着剤によって被着体に貼付されるシート体である。加飾シートは、自動車、家電、家具等の表面の塗装に代るもので、塗装工数削減と外観向上等を目的としている。」 「【0056】 第2のポリオレフィン系樹脂層は、第1のポリオレフィン系樹脂層と凸部を有しないこと以外、同じ組成であっても異なる組成であってもよい。剥離ライナーのカールの抑制という観点からは、第2のポリオレフィン系樹脂層は、第1のポリオレフィン系樹脂層と同じ組成であることが好ましい。 【0057】 また、第2のポリオレフィン系樹脂層は単層であっても複数層であってもよい。例えば、第2のポリオレフィン系樹脂層は、異なる密度のポリオレフィン系樹脂層の積層体であってもよい。なお、カール抑制の観点からは、第1のポリオレフィン系樹脂層が複数層である場合、第2のポリオレフィン系樹脂層は支持基材を中心として、積層形態が対称であることが好ましい。例えば、第1のポリオレフィン系樹脂層がABの積層構造である場合、AB(第1のポリオレフィン系樹脂層)-支持基材-BA(第2のポリオレフィン系樹脂層)という構成を採ることが好ましい。」 (6)甲6の記載事項 甲6には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 熱膨張性、且つ熱硬化性の接着シートであって、 基材と、 前記基材の少なくとも一方の面に設けられる第1の層と、を備え、 前記第1の層は、 熱膨張性の第1の粒子を有する接着材部と、 前記第1の粒子とは異なる材質の第2の粒子と、を備え、 前記第2の粒子は、前記第1の粒子に比して大きい、接着シート。」 「【請求項8】 前記第1の層は、前記基材の前記一方の面に設けられ、 前記基材の他方の面には、20℃での粘着性を有する第3の層が設けられている、請求項1~4の何れか一項に記載の接着シート。」 「【0009】 本発明の実施形態について詳述する。以下では、接着シートをモータに適用した例を説明する。モータのステーター本体は、円筒形状を有しており、円筒の内周に沿って複数のスロットを有している。スロット内には、モータ用のコイルが配置されている。一般的に、ステーター本体とコイルとは互いに接着されており、かつ両者の間は電気的に絶縁されている。 【0010】 従来は、ステーター本体とコイルの間に絶縁体を挟み、さらに液状の接着材を隙間に侵入させることで各部材を接着し、固定していた。被接着部材であるモータのステーター本体とコイルの間には、接着シートが配置し、接着シートの接着力により2つの被接着部材が結合している。2つの被接着部材の接着面の間には所定の隙間が設けられており、その隙間には接着シートが配置されている。 【0011】 ステーター本体とコイルの接着時には、まず、接着シートが接着力を発揮する前の状態、即ちタックフリーの状態の接着シートを準備し、接着シートを被接着部材の接着面の間に配置する。このとき接着シートの厚みは、被接着部材同士の隙間よりもわずかに狭いことが好ましい。そして接着シートを所定位置に配置した後、接着シートを加熱することで接着シートはタックフリーの状態から、表面に接着力を有する状態に遷移する。 【0012】 図1は、接着シートの構成を示す断面図である。より具体的には図1は、接着シートが接着力を発揮する前、即ちタックフリーの状態における、接着シートの断面図である。図1に示すようにタックフリーの状態における接着シート1は、プレート状の基材3と、第1の層4と、第2の層6と、を備えている。第1の層4は、基材3の一方の主面3aに設けられる。第2の層6は、基材3の他方の主面3bに設けられる。第1の層4は、接着材部11と、第2の粒子12と、を備える。第2の層6は、接着材部13と、接着材透過層14と、を備える。 【0013】 基材3は、接着材部11,13を形成するためのベースとなる部分であると共に、実質的に接着シート1の接着面の大きさを規定する部材である。基材3としては、強度、耐熱性、絶縁性等を考慮して、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いてよい。ただし、接着シート1の製造段階において接着材部11,13を形成するためのベースとして機能すれば足りるため、接着材部11,13を支持できるだけの強度を有し、かつ加熱時に接着材部11,13を構成する接着材の接着力を低下させない材料であればどのような材料を使用しても良い。基材3の厚さは、被接着物の隙間を考慮して調整しても良い。即ち、接着シート1は被接着物であるモータのステーター本体とコイルとを接着する役割に加えて、被接着部材同士の隙間を生める役割も果たすため、隙間が大きい場合には基材3の厚みを増加させて隙間を好適に埋められるようにすることができる。 【0014】 第1の層4の接着材部11は、基材3の一方の主面3aに形成された熱膨張性の接着材の層である。接着材部11の厚みは、10μm以上、300μm以下に設定される。接着材部11は、接着組成物21と、第1の粒子22と、を有する。なお、本明細書では、粘着材も接着材の一種である。 【0015】 接着組成物21としては、室温においてほぼ固形状態であり、加熱により流動性をもち、冷却した場合に硬化するものを用いることができる。このような接着組成物21としては、熱硬化性エポキシ系接着組成物を用いることができる。」 「【0019】 第1の粒子22は、接着組成物21内に含まれる熱膨張性の粒子である。第1の粒子22は、接着組成物21内に略均等に混合された状態で存在する。第1の粒子22は、加熱されることによって、熱膨張する。第1の粒子22が熱膨張することによって、接着材部11全体の体積が増加する(図2参照)。第1の粒子22の粒径は、50μmより小さくてよく、更に40μmより小さくてよい。なお、粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって決められる。第1の粒子22の材質として、熱可塑性樹脂として塩化ビニリデン重合体、アクリロニトリル共重合体、アクリル重合体などを外殼とし、発泡剤としてイソブタンやイソペンタンなどを内部に封入したカプセル構造を有するものなどが挙げられる。 【0020】 第1の層4の第2の粒子12は、接着材部11内に配置され、第1の粒子22とは異なる材質の粒子である。第2の粒子12の一部は、接着材部11が熱膨張する前段階(図1の状態)では、接着材部11の表面11aから突出する。これにより、第2の粒子12は、接着材部11の表面11aを被接着部材から離間させる部材として機能する。また、接着材部11の熱膨張時には、接着組成物21は、複数の第2の粒子12間の隙間から溢れ出す。これにより、第2の粒子12は、接着材部11の表面11aが被接着部材に対して露出する(図2に示す状態)ことを許容する。具体的に、接着材部11の厚みを「t」とし、第2の粒子12の外側の端部(最も突出した箇所)と基材3の主面3aとの間の距離を「L」とする。この場合、「L>t」の関係が成り立つ。このとき、第2の粒子12の突出量は「Rz(=L-t)」となる。突出量Rzは、6μmより大きくてよく、60μmより小さくてよい。なお、以降の説明において、特段の説明がない場合は、接着材部11が熱膨張する前の状態(図1に示す状態)について説明を行っているものとする。」 「【0024】 第2の層6の接着材部13は、第1の層4の接着材部11と同趣旨の構成を有する。 【0025】 第2の層6の接着材透過層14は、接着材部13の第1の粒子22が膨張した際に、接着組成物21を接着材透過層14の一方の主面側から他方の主面側に透過させる。より具体的には、接着材透過層14は、少なくとも、一方の主面から他方の主面に貫通する複数の孔を有する構造を備えている。接着材透過層14を複数の孔を有する構造とすることにより、加熱前には接着材透過層14の一方の主面にしか接していない接着組成物21が膨張した際に、接着組成物21を、孔を通して接着材透過層14の他方の主面上にまで到達させることができる。また、接着材透過層14を構成する材料としては、ガラス転移温度が、接着組成物21の硬化開始温度よりも高い材料が選択される。具体的に接着材透過層14として用いることができる材料としては、天然繊維、化学繊維又はそれらの混合物のベースの不織布を用いることができ、代表的なものとしてセルロースベースの不織布がある。このような不織布は、内部に多数の貫通孔を有しているため、一方の主面に接している接着組成物21が、一定の条件下で不織布内部を通過して他方の主面に到達することができる。」 「【0043】 第1の層は、基材の一方の面に設けられ、基材の他方の面には、20℃での粘着性を有する第3の層が設けられてよい。第3の層は、20℃で粘着性(初期タックあり)を有する粘着材を含む。この第3の層を有する場合、被着体に第3の層側を接合した状態で、第1の層側を滑らせながら他の被着体との間に差し込んだ後、加熱することで第1の層側が膨張かつ硬化して被着体と他の被着体とを接合することが可能になる。第3の層が室温での粘着性と熱硬化性とを兼ね備えていてもよく、この場合には、加熱時に第1の層側の膨張及び熱硬化と共に、第3の層側も熱硬化することで接合強度を高めることができる。第3の層が露出していてもよく、その外側にライナーが設けられていてもよい。」 「【0048】 上述のように準備された15グラムの接着材溶液Aを225mlのガラス容器で計量した。そして、2グラムのSE-050T(平均粒径43μmの第2の粒子)(根上工業社製)をガラス容器に加え、自動公転攪拌機で2000rpmにて2分間混ぜて、接着材溶液Aと第2の粒子との溶液(接着材溶液Bといってもよい)を得た。この溶液をTeonex Q51(東洋紡フィルムソリューション社製)(75μmのPENフィルム)に塗布し、接着コーティングの重量が約51g/SQMとなるように乾燥させた。コーティングされたライナーを65℃で3分間乾燥し、100℃で3分間乾燥した。」 「【図1】 [図:0001405832000003.jpg] 」 (7)文献Aの記載事項 文献Aには、以下の事項が記載されている。 「ここでカールの測定はフレキシブル金属張積層体(サンプルサイズ:10cm×10cm)を図1に示すような、フリーな状態(カール方向に自重がかからない状態)で放置し、フレキシブル金属張積層体サンプル100の湾曲により垂直面から離れた両端102、102’の間の距離(R)と垂直面から両端102、102’までの距離hを測定し、次式により曲率半径rを求めることにより行う。 曲率半径(r)=(h/2)+(1/8)×(R2/h)」(第20頁第26行~第21頁第3行) 「[カール曲率半径] フレキシブル金属張積層体(サンプルサイズ:10cm×10cm)を図1に示すような、フリーな状態(カール方向に自重がかからない状態)で放置し、フレキシブル金属張積層体サンプル100の湾曲により垂直面から離れた両端102、102’の間の距離(R)と垂直面から両端102、102’までの距離hを測定し、次式により曲率半径rを求めた。 曲率半径(r)=(h/2)+(1/8)×(R2/h)」(第28頁第29行~第29頁第6行) 「 [図:0001405832000004.jpg] 」(図1) 2 証拠に記載された発明 (1) 甲1に記載された発明 ア 甲1(上記1(1)参照。)の請求項1を引用する請求項2を引用する請求項3には、「イミド変性不飽和ポリエステル樹脂と比誘電率が2以下の低誘電フィラーとを有するコイル接合用樹脂層と、アミン硬化型ゴム分散エポキシ樹脂と膨張フィラーとを有するステータコア接合用樹脂層と、を有することを特徴とするコイル固定用絶縁樹脂シート」であって、コイル固定用絶縁樹脂シートにおいて、「前記コイル接合用樹脂層は、さらに膨張フィラーを含むこと」、「前記コイル接合用樹脂層と前記ステータコア接合用樹脂層との間に、耐熱フィルムが設けられていること」が記載されている。 イ すると、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲1発明) 「イミド変性不飽和ポリエステル樹脂と比誘電率が2以下の低誘電フィラーと、膨張フィラーを有するコイル接合用樹脂層と、アミン硬化型ゴム分散エポキシ樹脂と膨張フィラーとを有するステータコア接合用樹脂層と、を有するコイル固定用絶縁樹脂シートであって、 コイル接合用樹脂層とステータコア接合用樹脂層との間に、耐熱フィルムが設けられているコイル固定用絶縁樹脂シート」 (2) 甲6に記載された発明 ア 甲6(上記1(6)参照。)の請求項1を引用する請求項8には、「熱膨張性、且つ熱硬化性の接着シートであって、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に設けられる第1の層と、を備え、前記第1の層は、熱膨張性の第1の粒子を有する接着材部と、前記第1の粒子とは異なる材質の第2の粒子と、を備え、前記第2の粒子は、前記第1の粒子に比して大きい、接着シート」であって、接着シートにおける「前記第1の層は、前記基材の前記一方の面に設けられ、前記基材の他方の面には、20℃での粘着性を有する第3の層が設けられている」ことが記載されている。 イ すると、甲6には次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。 (甲6発明) 「熱膨張性、且つ熱硬化性の接着シートであって、基材と、前記基材の一方の面に設けられる第1の層と、基材の他方の面に設けられた、20℃での粘着性を有する第3の層、を備え、 前記第1の層は、熱膨張性の第1の粒子を有する接着材部と、前記第1の粒子とは異なる材質の第2の粒子と、を備え、 前記第2の粒子は、前記第1の粒子に比して大きい、接着シート」 3 申立ての理由1-1について(甲1を主引用例とする場合) (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「コイル接合用樹脂層」、「ステータコア接合用樹脂層」、「耐熱フィルム」はそれぞれ、本件発明1の「第一接着層」、「第二接着層」、「基材」に相当する。 甲1発明の「コイル接合用樹脂層」は「イミド変性不飽和ポリエステル樹脂と比誘電率が2以下の低誘電フィラーと、膨張フィラー」を含有し、「ステータコア接合用樹脂層」は、「アミン硬化型ゴム分散エポキシ樹脂と膨張フィラー」を含有していることから、「コイル接合用樹脂層」と「ステータコア接合用樹脂層」のそれぞれに含有される成分が異なる。よって、甲1発明の「コイル接合用樹脂層」および「ステータコア接合用樹脂層」は、本件発明1の「前記第一接着層の組成と前記第二接着層の組成とが異なり」を充足している。 甲1発明の「イミド変性不飽和ポリエステル樹脂」、「アミン硬化型ゴム分散エポキシ樹脂」はいずれも、本件発明1の「熱硬化型接着剤」に相当することから、甲1発明の「コイル接合用樹脂層」および「ステータコア接合用樹脂層」は、本件発明1の「前記第一接着層および前記第二接着層が、熱硬化型接着剤を含有し」を充足する。 甲1発明の「膨張フィラー」は、甲1の段落【0041】に記載されているように、粒子内で気化することにより膨張するものであるから、本件発明1の「発泡剤」に相当し、甲1発明の「膨張フィラー」は「コイル接合用樹脂層」、「ステータコア接合用樹脂層」のいずれにも含有されていることから、甲1発明の「コイル接合用樹脂層」および「ステータコア接合用樹脂層」は、本件発明1の「前記第一接着層および前記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有し」を充足する。 甲1発明の「コイル固定用絶縁樹脂シート」は、基材の両面に「接合用樹脂層」を有していることから「接着シート」であり、これらの「接合用樹脂層」には「膨張フィラー」が含有されていることから「発泡性シート」であるから、本件発明1の「発泡性接着シート」に相当する。また、甲1発明の「コイル固定用絶縁樹脂シート」は「コイル接合用樹脂層とステータコア接合用樹脂層との間に、耐熱フィルムが設けられている」ことから、甲1発明の「コイル固定用絶縁樹脂シート」は、本件発明1の「第一接着層と、基材と、第二接着層と、をこの順に有する発泡性接着シート」を充足している。 すると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「第一接着層と、基材と、第二接着層と、をこの順に有する発泡性接着シートであって、前記第一接着層の組成と前記第二接着層の組成とが異なり、前記第一接着層および前記第二接着層が、熱硬化型接着剤を含有し、前記第一接着層および前記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有する、発泡性接着シート。」 <相違点1> 本件発明1では、発泡性接着シートについて、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が15mm以上」であるのに対し、甲1発明では特定されていない点 <相違点2> 本件発明1では、発泡性接着シートについて、「ループスティフネスが、45mN/10mm以上」であるのに対し、甲1発明では特定されていない点 イ 相違点1について検討する。 甲3(上記1(3)参照。)の段落【0006】には、「両面接着シートとして、接着力が両面で異なるもの」によって、接着する場合、「接着時に反りが発生しやすい」ことが記載されており、同段落【0015】、【0017】には、「接着層の厚さ」や「接着層の形成に用いられる熱硬化性樹脂組成物」中の「無機充填剤の含有量」を調整することにより、「接着時の反りも抑制することができる」ことが記載されている。甲4(上記1(4)参照。)の段落【0035】には、「ポリイミドフィルムの両面に含フッ素樹脂層が積層する場合」、「接着フィルムの反りの抑制の点では、各含フッ素樹脂層の組成や厚みは同じであることが好ましい」ことが記載されている。甲5(上記1(5)参照。)の段落【0057】には、「カール抑制の観点からは、第1のポリオレフィン系樹脂層が複数層である場合、第2のポリオレフィン系樹脂層は支持基材を中心として、積層形態が対象であることが好ましい」ことが記載されている。しかしながら、甲3~甲5には、積層シートの反りについて、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカール曲率半径が15mm以上」といった室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径が特定値以上とすることについて記載も示唆もなく、当該数値範囲に限定する動機付けとなる記載も示唆もない。 また、甲2(上記1(2)参照。)の段落【0012】には、「接着シートの剛性が十分」となると「容易に狭い隙間へ接着シートを挿入することができる」ことが記載されており、甲6(上記1(6)参照。)の段落【0011】には、「ステーター本体とコイルの接着時には、まず、接着シートが接着力を発揮する前の状態、即ちタックフリーの状態の接着シートを準備し、接着シートを被接着部材の接着面の間に配置」した後、「接着シートを加熱することで接着シートはタックフリーの状態から、表面に接着力を有する状態に遷移」することでステーター本体とコイルを接着することが記載されている。しかしながら、甲2、甲6には、接着シートの反りについての記載も示唆もなく、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカール曲率半径が15mm以上」といった室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径が特定値以上とする動機付けとなる記載も示唆もない。 そして、本件発明1は、本件明細書等の段落【0034】には、「熱硬化型接着剤においては、硬化の過程で、硬化収縮および熱収縮が生じ」、「この収縮によりカールが生じる」ことから、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後」という条件としたことが記載され、同段落【0032】には、「発泡性接着シートにおいては、温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が、15mm以上」であることにより、カールを抑制することができ、シートを配置した部材を他の部材に挿入する際の挿入性を良くすることができること、また、シートの貼り付け時に、発泡性接着シートの折れ、よれ、たわみ、気泡のかみ込み等が生じるのを抑制することができ、発泡硬化後の接着不良を抑制することができることが記載されている。 そうすると、当業者といえども、甲1発明のコイル固定用絶縁樹脂シートについて、室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径が特定値以上とすることを着想し、その範囲を「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が15mm以上」に特定することは容易になし得たとはいえない。 してみると、前記相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人は、異議申立書の4-3.(1)(1-4)において、「甲1の実施例1~3の記載の基材のない樹脂シートでさえ、カールによる阻害なく0.3mm未満の隙間を充填できるのであるから、基材を有する甲1樹脂シートであれば、なおさらカールは生じない」とし、「甲1の樹脂シートにおいても、相違点1に係るカールの曲率半径は15mm以上であると推認できるから、相違点1は実質的な相違点ではない」と主張している。しかしながら、甲1の実施例1~3の樹脂シートが0.3mm未満の隙間に充填できる程度にカールの曲率半径を有するものであっても、熱硬化型樹脂は加熱により硬化収縮および熱収縮を生じることから、室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径と同程度であるとはいえず、甲1の実施例1~3の樹脂シートについて仮に基材がある場合であっても、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が15mm以上」を充足することを推認するためのその他の具体的な根拠は示されていない。よって、上記主張は採用することはできない。 また、異議申立書の4-3.(1)(1-4)において、「甲3~甲5に関する4-2(6)項での説明のとおり、基材の両面に積層された2つの層を含む積層体において、当該2つの層が材料、厚さ及び層構成の点などで互いに異なることにより生じるカールを、当該2つの層それぞれの材料、厚さ及び層構成を個別に調整して抑制することは、当業者にとって自明の課題である」ことから、「甲1樹脂シートにおいて、当該2つの樹脂層が異なることにより生じるカールを抑制するために、樹脂層それぞれの材料、厚さ及び層構成を個別に調整して、カールの曲率半径を15mm以上にすることは、当業者が容易に想到し得たことである」と主張している。しかしながら、上記イでの検討のとおり、甲3~甲5には、積層シートの反りについて、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカール曲率半径が15mm以上」といった室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径が特定値以上とすることについて記載も示唆もなく、当該数値範囲に限定する動機付けとなる記載も示唆もないことから、仮にカールを抑制するという課題が自明であったとしても、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカール曲率半径が15mm以上」にすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。よって、上記主張は採用することはできない。 エ 以上のとおり、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。 (2)本件発明2~4、6について 本件発明2~4、6は、いずれも、本件発明1を直接または間接的に引用し、さらに限定した発明であるところ、前記(1)のとおり、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。 そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明2~4、6も、本件発明1と同様の理由により、甲1発明および甲2~6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。 (3)申立ての理由1-1についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立ての理由1によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。 4 申立ての理由1-2について(甲6を主引用例とする場合) (1)本件発明1について ア 本件発明1と甲6発明を対比すると、甲6発明の「第1の層」、「第3の層」、「基材」はそれぞれ、本件発明1の「第一接着層」、「第二接着層」、「基材」に相当する。 甲6発明の「熱膨張性の第1の粒子」について、甲6の段落【0019】には、「第1の粒子22は、加熱されることによって、熱膨張する」こと、「第1の粒子22の材質として、・・・発泡剤としてイソブタンやイソペンタンなどを内部に封入したカプセル構造を有するもの」が記載されていることから、甲6発明の「熱膨張性の第1の粒子」は本件発明1の「発泡剤」に相当する。そして、甲6発明の「第1の層」は「膨張性の第1の粒子」を有していることから、本件発明1の「前記第一接着層および前記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有し」を充足する。 甲6発明の第1の層に備えられた「熱膨張性の第1の粒子を有する接着材部」について、甲6の段落【0014】~【0015】には、「接着材部11は、接着組成物21と第1の粒子22と、を有する」こと、「接着組成物21としては、熱硬化性エポキシ系接着組成物を用いることができる」ことが記載されていることから、甲6発明の「第1の層」は本件発明1の「前記第一接着層が、熱硬化型接着剤を含有し」を充足する。また、甲6発明の「20℃での粘着性を有する第3の層」について、甲6の段落【0043】には、「第3の層は、20℃で粘着性(初期タックあり)を有する粘着剤を含む」こと、「第3の層が室温での粘着性と熱硬化性を兼ね備えていてもよく」、「第3の層側も熱硬化することで接合強度を高めることができる」ことが記載されており、甲6発明の第3の層が20℃での粘着性と熱硬化性を有する粘着材を有しているといえることから、甲6発明の「第3の層」は本件発明1の「前記第二接着層が、熱硬化型接着剤を含有し」を充足する。 甲6発明の「第1の層」は「熱膨張性の第1の粒子を有する接着剤部と、前記第1の粒子とは異なる材質の第2の粒子」を備え、「第3の層」は「20℃での粘着性を有する」層であることから、「第1の層」と「第3の層」のそれぞれに含有される成分が異なる。よって、甲6発明の「第1の層」および「第3の層」は、本件発明1の「前記第一接着層の組成と前記第二接着層の組成とが異なり」を充足している。 甲6発明の「接着シート」は、基材の一方の面に設けられた「第1の層」に「熱膨張性の第1の粒子」を含有していることから、本件発明1の「発泡性接着シート」に相当する。また、甲6発明の「接着シート」は、基材の一方の面に「第1の層」、基材の他方の面に「第3の層」を有していることから、本件発明1の「第一接着層と、基材と、第二接着層と、をこの順に有する発泡性接着シート」を充足している。 すると、本件発明1と甲6発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「第一接着層と、基材と、第二接着層と、をこの順に有する発泡性接着シートであって、前記第一接着層の組成と前記第二接着層の組成とが異なり、前記第一接着層および前記第二接着層が、熱硬化型接着剤を含有し、前記第一接着層および前記第二接着層の少なくとも一方が、発泡剤をさらに含有する、発泡性接着シート。」 <相違点3> 本件発明1では、発泡性接着シートについて、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が15mm以上」であるのに対し、甲6発明では特定されていない点 <相違点4> 本件発明1では、発泡性接着シートについて、「ループスティフネスが、45mN/10mm以上」であるのに対し、甲6発明では特定されていない点 イ 相違点3について検討する。 甲2~甲5には、上記3(1)イでの検討のとおり、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカール曲率半径が15mm以上」といった室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径が特定値以上とすることについて記載も示唆もなく、当該数値範囲に限定する動機付けとなる記載も示唆もない。 また、甲1(上記1(1)参照。)の段落【0066】には、「スロットとコイル導線の隙間の充填性」について、「最大隙間が0.3mm未満までの隙間であれば充填性が確保できる」と評価し、実施例1~3において充填性が確保できるという評価が得られた複数の接着シートが記載されているが、甲1には接着シートの反りについての記載も示唆もなく、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカール曲率半径が15mm以上」といった室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径が特定値以上とすることについて記載も示唆もなく、当該数値範囲に限定する動機付けとなる記載も示唆もない。 そして、本件発明1は、上記3(1)イでの検討のとおり、「発泡性接着シートにおいては、温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が、15mm以上」であることにより、カールを抑制することができ、シートを配置した部材を他の部材に挿入する際の挿入性を良くすることができること、また、シートの貼り付け時に、発泡性接着シートの折れ、よれ、たわみ、気泡のかみ込み等が生じるのを抑制することができ、発泡硬化後の接着不良を抑制することができることが記載されている。 そうすると、当業者といえども、甲6発明の接着シートについて、室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径が特定値以上とすることを着想し、その範囲を「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が15mm以上」に特定することは容易になし得たとはいえない。 してみると、前記相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明及び甲1~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 ウ 申立人は、異議申立書の4-4.(1)(1-4)において、「本件特許発明において、カールの曲率半径について「15mm以上」は、部材への発泡性接着シートの貼り付けを妨げたり、発泡性接着シートに浮きや剥がれが生じたりするという問題(a)が生じない程度の範囲を表し」、甲6では、「被着体に第3の層側を接合した状態で、第1の層側を滑らせながら他の被着体との間に差し込むことができるように構成され」ており、上記問題(a)が生じていれば、「他の被着体との間に差し込むことはできない」ことから、甲6発明において、「上記問題(a)が生じないようにすることは前提」であり、「カールの曲率半径は当然に15mm以上になる」と主張している。しかしながら、甲6発明の接着シートが「他の被着体との間に差し込むことができる」程度にカールの曲率半径を有するものであっても、熱硬化型樹脂は加熱により硬化収縮および熱収縮を生じることから、室温以上の特定の温度、特定の湿度環境下で特定の時間静置した後のカールの曲率半径と同程度であるとはいえず、甲6発明の接着シートが「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後のカールの曲率半径が15mm以上」を充足することを推認するためのその他の具体的な根拠は示されていない。よって、上記主張は採用することはできない。 エ 以上のとおり、相違点4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明及び甲1~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。 (2)本件発明2~4、6について 本件発明2~4、6は、いずれも、本件発明1を直接または間接的に引用し、さらに限定した発明であるところ、前記(1)のとおり、本件発明1は、甲6発明及び甲1~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められないものである。 そうすると、さらに検討するまでもなく、本件発明2~4、6も、本件発明1と同様の理由により、甲6発明および甲1~5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることはできないから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえない。 (3)申立ての理由1-2についてのまとめ 以上のとおりであるから、申立ての理由1-2によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。 5 申立ての理由2について (1)申立人の主張2-1及び判断 ア 申立人の主張2-1 申立人は、異議申立書の4-5において、「このように、本件特許発明におけるカールの曲率半径及びループスティフネスは、各層の厚さ及び硬さを調整することにより制御されるものであるにもかかわらず、本件特許明細書からは、カール曲率半径及びループスティフネスをそれぞれ特定の範囲に設定できる基材、第一接着層及び第二接着層それぞれの厚さ及び硬さの範囲並びにそれらの具体的な相互の関係を理解できない。したがって、基材の材料の種類及び厚さ、第一接着層及び第二接着層それぞれの樹脂、硬化剤、発泡剤などの材料及び各接着層の厚さ、並びに、中間層の有無、材料の種類及びその厚さなどのパラメータの無限にある組み合わせの中から、カールの曲率及びループスティフネスをそれぞれ特定の範囲に設定できる特定の組み合わせを見出し、各層の厚さ及び硬さを調整するために、当業者は、期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験などをする必要がある。」ことから、「当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない」と主張している。 イ 当審の判断 本件明細書等の段落【0038】には、「発泡性接着シートのカールの曲率半径は、例えば、各層の厚さおよび硬さを調整することにより、制御することができる。例えば、基材の厚さが厚いと曲率半径が大きくなる傾向にある。また、例えば、基材の硬さが高いと、曲率半径が大きくなる傾向にある」こと、「第一接着層の硬さが第二接着層の硬さよりも高い場合には、第二接着層の厚さが厚くなるほど、曲率半径が大きくなる傾向にある」ことが記載されている。また、本件明細書等の段落【0052】には、「発泡性接着シートのループスティフネスは、例えば、各層の厚さおよび硬さを調整することにより、制御することができる。例えば、基材の厚さが厚いと、ループスティフネスが大きくなる傾向にある。また、例えば、基材の硬さが高いと、ループスティフネスが大きくなる傾向にある。また、例えば、第一接着層の硬さが第二接着層の硬さよりも高い場合には、第一接着層の厚さが厚くなるほど、ループスティフネスが大きくなる傾向にある。また、第一接着層および第二接着層の硬さが高いと、ループスティフネスが大きくなる傾向にある。」ことが記載されている。そして、発泡性接着シートの具体例として、第一接着層の硬さが第二接着層の硬さよりも高い場合の発泡性接着シートについて、第一接着層及び第二接着層の厚みを変えることで、カールの曲率半径及びループスティフネスの値の異なる複数の実施例及び比較例が記載されている。ここで、本件明細書等の実施例及び比較例はいずれも第一接着層及び比較例の組成が同じものであり、また、いずれも基材と第一接着層の間に中間層を有する発泡性接着シートであるところ、層の厚さを調整することで、本件発明1のカールの曲率半径及びループスティフネスを満たすものを作製しうることが理解できており、本件明細書等の段落【0038】、【0052】等の記載も参酌すると、第一接着層及び第二接着層の組成が他の組み合わせの場合についても層の厚さを調整することで、所望のカールの曲率半径及びループスティフネスの値に近づけることができるといえる。また、中間層を有しない発泡性接着シートの場合についても、第一接着層の組成を調整するとともに、第一接着層及び第二接着層の厚さを調整することで、所望のカールの曲率半径及びループスティフネスの値に近づけることができるといえる。よって、申立人の主張2-1は採用できない。 (2)申立人の主張2-2及び判断 ア 申立人の主張2-2 申立人は、異議申立書の4-6において、「「第一接着層および第二接着層の少なくともいずれか一方が粘着性を有する場合、カール測定用の試験片は、粘着性を有する接着層の面が周囲に触れない状態にする」とあるが、両面に粘着性(タック)がある場合にどのように接着シートを静置するのか説明がなく、粘着性を有する両面に全く触れず、どのように接着シートを静置するのか理解できない。むしろ、技術常識に照らせば、シートの両面に全く触れず、接着シートを静置することは不可能である。本件特許明細書の記載に従い、接着シートを静置して曲率半径を測定しようとしても、シートの静置面に接する層にわずかでもタックがあれば、静置面とのタックがカールに影響し、第一接着面及び第二接着層の組成の違いによるカールの真の曲率半径を測定できないことは明らかである。実施例においては、片面がタックフリーの例しかなく、実施例を参酌しても、両面に粘着性がある場合に接着シートをどのように静置するのか不明である。このように、両面の接着層が粘着性を有する場合に、接着シートの特定の曲率半径を確認し実現することが不可能であり、そのような実施不可能な発明特定事項を有する本件特許発明1は実施不可能なものである。」と主張している。 イ 当審の判断 両面に粘着性(タック)がある場合にどのように接着シートを静置するのかについて、本件明細書等の段落【0037】には、「中でも、カール測定用の試験片は、カール方向に自重がかからない状態とする」方法が記載されており、両面に粘着性がある場合であっても、カール方向に自重がかからない状態に接着シートを静置することによって、自重によるカールへの影響をなくすことができるものであると理解できる。また、自重のかからない状態とする方法について、文献A(上記1(7)参照。)の図1に記載されたように試験片を垂直に立てらせる方向でカール方向に自重がかからないフリーな状態に放置することで実現可能である。すると、両面の接着層が粘着性を有する場合についても、カールの真の曲率半径を測定することが可能であり、接着シートの特定の曲率半径を確認し実現することができるといえる。よって、申立人の主張2-2は採用できない。 (3)小括 したがって、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4、6に係る特許を申立ての理由2によって取り消すべきものとすることはできない。 6 申立ての理由3について 申立人の主張3-1及び判断 ア 申立人の主張3-1 申立人は、異議申立書の4-5において、「加えて、カールの曲率半径及びループスティフネスをそれぞれ特定の範囲に設定できる基材、第一接着層及び第二接着層それぞれの厚さ及び硬さの範囲並びにそれらの具体的な相互の関係を理解できないから、発明の課題を解決できると理解できる範囲は実施例に開示された範囲であり、実施例の内容を本件特許発明1の範囲にまで拡張ないし一般化できない。」と主張している。 イ 当審の判断 本件発明の課題は、「発泡性接着シートにおいて、2つの接着層が異なる場合、カールが発生することがある。」「この場合、部材への発泡性接着シートの貼り付けを妨げたり、発泡性接着シートに浮きや剥がれが生じたりという問題がある。」(【0009】)、「また、発泡性接着シートの厚さが薄いと、発泡性接着シートの搬送時に、発泡性接着シートの自重で垂れ下がりやすくなる。」「そのため、発泡性接着シートを吸着搬送して、部材に貼り合わせる場合には、貼り付け時に、発泡性接着シートの折れ、よれ、たわみ、気泡のかみ込み等が生じるという問題がある。」(【0010】)ことから、「カールを抑制することが可能であり、貼り付け性に優れる発泡性接着シートを提供することを主目的とする。」(【0011】)ものである。 本件明細書等の段落【0038】、【0052】等の記載、並びに、実施例及び比較例の記載から、上記5(1)イでの検討のとおり、第一接着層及び第二接着層の組成が実施例及び比較例の組み合わせと異なる場合についても層の厚さを調整することで、所望のカールの曲率半径及びループスティフネスの値に近づけることができるといえる。また、本件明細書等の段落【0023】には、発泡性接着シートのカールの曲率半径が本件発明1の特定の数値範囲内である場合、「第一接着層および第二接着層の組成が異なる場合において、発泡性接着シートが薄い場合であっても、カールを抑制することができる」こと、「一部の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが配置された他方の部材を挿入する際に、挿入性を良くすることができる」こと、「貼り付け時に、発泡性接着シートの折れ、よれ、たわみ、気泡のかみ込み等が生じるのを抑制することができる」ことが記載されており、本件明細書等の段落【0027】には、発泡性接着シートのループスティフネスが所定の値以上である場合、「コシを強くすることができる」こと、「発泡性接着シートの搬送時に、発泡性接着シートが自重により垂れ下がるのを抑制することができる」こと、「発泡性接着シートを吸着搬送して、部材に貼り付ける場合には、貼り付け時に、発泡性接着シートの折れ、よれ、たわみ、気泡のかみ込み等が生じるのを抑制することができる」ことが記載されており、さらに、カールの曲率半径及びループスティフネスの値が本件発明1に係る特定の数値範囲内である実施例の発泡性接着シートが良好な貼り付け性を有することが記載されている。すると、本件発明1の発泡性接着シートの基材、第一接着層及び第二接着層のそれぞれの厚さ及び硬さとカール曲率半径及びループスティフネスとの関係が理解できるものであり、仮にその関係がすべての接着層で同様でなかったとしても、発泡性接着シートのカールの曲率半径及びループスティフネスがそれぞれ、「温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置した後の前記発泡性接着シートのカールの曲率半径が15mm以上」、及び、「ループスティフネスが、45mN/10mm以上」の範囲において、本件発明の課題が解決できることが、本件明細書等から読み取れる。よって、申立人の主張3-1は採用できない。 (2)申立人の主張3-2及び判断 ア申立人の主張3-2 申立人は、異議申立書の4-7において、「実施例において、当該課題が解決できることが実証された接着シートは、第一接着層のタック0gfであり、第二接着層のタックが62~191gfである場合のみである」、段落0064および実施例の貼り付け性の評価手法の記載から、「接着層のタックが0gf超の所定の範囲であることで、部材との密着性が良好となり、貼り付け性に優れる発泡性接着シートが得られるのであるから、第一接着層のタックが0gfであり、第二接着層のタックが62~191gfである場合以外のあらゆる場合において、貼り付け性に優れる発泡性接着シートを提供するという課題を解決できるとは言えない。」と主張している。 イ 当審の判断 本件明細書等の段落【0070】、【0071】には、「第一接着層と第二接着層とで、タックが同じであってもよい」こと、「第一接着層および第二接着層のタックはいずれも低くてもよい」こと、「この場合、第一接着層および第二接着層のタックはそれぞれ、例えば、0gf以上、10gf未満であることが好ましい」こと、「第一接着層および第二接着層のタックがそれぞれ上記範囲内であることにより、第一接着層および第二接着層を実質的に非粘着性(タックフリー)とすることができ、滑り性が良好な第一接着層および第二接着層とすることができる」こと、そのため、「他方の部材に発泡性接着シートを配置した後、一方の部材の穴や溝等に、発泡性接着シートが配置された他方の部材を挿入する際に、挿入性を向上させることができる」こと、「発泡性接着シートの剥がれや位置ずれを抑制することができる」こと、また、「第一接着層および第二接着層のタックがそれぞれ上記範囲内であることにより、耐ブロッキング性も良好な第一接着層および第二接着層とすることができる」ことが記載されている。すると、発泡性接着シートについて、第一接着層のタックが0gfであり、第二接着層のタックが62~191gfである場合以外であっても、本件発明の課題が解決できることが、本件明細書等から読み取りとれる。よって、申立人の主張3-2は採用できない。 (3)小括 したがって、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4、6に係る特許を申立ての理由3によって取り消すべきものとすることはできない。 7 申立ての理由4について (1)申立人の主張 申立人は、異議申立書の4-8において、「カール測定に関し、本件特許明細書には、「カール測定用の試験片は、カール方向に自重がかからない状態とすることが好ましい。」(段落0037)との記載があり、カール方向に自重がかかる状態でカール測定を行うことが許容されている。しかしながら、自重の有無によりカール曲率半径が変化することは明白であり、結果、一義的な曲率半径を導出できない。」と主張している。 (2)当審の判断 上記(1)の主張について、本件明細書等の段落【0037】の記載は、温度60℃、湿度10%RH以下で15時間静置する際に、第一接着層および第二接着層の粘着性の有無による静置時の試験片の状態について説明したものであり、両面とも粘着性を有する場合には、「中でも、カール測定用の試験片は、カール方向に自重がかからない状態とする」方法を選択することで、自重によるカールへの影響をなくすことができるものであると理解できる。本件明細書等においてカール方向に自重がかかる状態でカール測定を行うことが許容されているのは、どうしても前記方法が選択できないときのためと解される。このような例外的な方法を定めたことにより、本件発明1が不明確になるということはできない。よって、申立人の主張は採用できない。 したがって、本件発明1及び本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~4、6に係る特許を申立ての理由4によって取り消すべきものとすることはできない。 第5 むすび したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~4、6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~4、6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700721

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    共通の審決分類: 121・C09J、536・C09J、537・C09J
  • 2024-700608異議申立 / 2026-02-04 / 訂正認容活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物、粘着剤層、積層体
    共通の審決分類: 121・C09J、536・C09J、537・C09J
  • 2024-701045異議申立 / 2025-11-18 / 訂正認容粘着剤及び粘着テープ
    共通の審決分類: 121・C09J、536・C09J、537・C09J

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