特許異議申立
2022-700683
バイオマス由来オレフィンと化石燃料由来オレフィンとを含むオレフィン混合物から得られるプロピレン系重合体、および該プロピレン系重合体の製造方法
- 審判番号
- 2022-700683
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-160468
- 登録番号
- 7004864
- 請求日
- 2022年07月20日
- 審決日
- 2023年11月21日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社プライムポリマー
- 【権利者代理人】弁理士法人エスエス国際特許事務所
- 【異議申立人】中川 賢治
- 【異議申立人】加藤 浩志
- 【異議申立人】上原 洋子
- 【異議申立人代理人】青木 篤
- 【異議申立人代理人】三橋 真二
- 【異議申立人代理人】鶴田 準一
- 【異議申立人代理人】南山 知広
- 【異議申立人代理人】渡辺 陽一
- 【異議申立人代理人】中村 和広
- 【異議申立人代理人】関根 宣夫
- 【異議申立人】竹口 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 近野 光知
- 審判官 細井 龍史
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1651.121-ZAA(C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条の2、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7004864号発明「バイオマス由来オレフィンと化石燃料由来オレフィンとを含むオレフィン混合物から得られるプロピレン系重合体、および該プロピレン系重合体の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7004864号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、14-20〕、〔8-13〕について訂正することを認める。
特許第7004864号の請求項2ないし7、9ないし11及び13ないし20に係る特許を取り消す。
特許第7004864号の請求項1、8及び12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7004864号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし20に係る特許についての出願は、令和3年9月30日に出願された特願2021-160468号であって、令和4年1月6日にその特許権の設定登録(請求項の数20)がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月20日に中川 賢治(以下、「申立人1」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし20)がされるとともに、加藤 浩志(以下、「申立人2」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし20)がされ、また、同年同月21日に上原 洋子(以下、「申立人3」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし20)がされるとともに、竹口 美穂(以下、「申立人4」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし20)がされたものである。
その後、令和4年11月24日付けで取消理由が通知され、令和5年1月17日に特許権者である株式会社プライムポリマー(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされると共に意見書が提出され、同年同月26日付けで特許法第120条の5第5項の通知がされ、申立人1ないし申立人3から同年3月3日に意見書が提出された。なお、申立人4から意見書の提出はなかった。
その後、令和5年5月8日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月11日に特許権者から訂正請求がされると共に意見書が提出され、同年同月27日付けで特許法第120条の5第5項の通知がされ、申立人3より同年8月29日に、申立人1、申立人2から同年8月30日に意見書が提出された。なお、申立人4より意見書の提出はなかった。
令和5年1月17日にされた訂正請求は、同年7月11日に新たな訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和5年7月11日付けの訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)ないし(13)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
(訂正事項2-1)
特許請求の範囲の請求項2に「前記プロピレン系重合体が」と記載されているのを、「プロピレン系重合体が」に訂正し、同請求項2に「請求項1に記載のプロピレン系重合体」と記載されているのを、「プロピレン系重合体」に訂正し、請求項1を引用する請求項2を独立形式にあらためる。
(訂正事項2-2)
請求項2が引用する請求項1に「(I)プロピレン系重合体の原料に含まれるプロピレン、エチレン、および炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(a)が、バイオマス由来オレフィン(a1)0.2重量%以上99重量%以下と化石燃料由来オレフィン(a2)1重量%以上99.8重量%以下とを含むオレフィン混合物である(バイオマス由来オレフィン(a1)と化石燃料由来オレフィン(a2)の合計を100重量%とする)。」と記載されているのを、「プロピレン系重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)。」に訂正する。
(訂正事項2-3)
請求項2が引用する請求項1に「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上99.0pMC(%)以下である。」と記載されているのを、「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下である。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上99%以下の」と記載されているのを、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上10%以下の」に訂正する。
(4)訂正事項4
(訂正事項4-1)
特許請求の範囲の請求項4に「前記プロピレン系重合体が」と記載されているのを、「プロピレン系重合体が」に訂正し、同請求項4に「請求項1に記載のプロピレン系重合体」と記載されているのを、「プロピレン系重合体」に訂正し、請求項1を引用する請求項4を独立形式にあらためる。
(訂正事項4-2)
請求項4に「(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上99重量%以下と化石燃料由来プロピレンが1重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」と記載されているのを、「(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」に訂正する。
(訂正事項4-3)
請求項4が引用する請求項1に「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上99.0pMC(%)以下である。」と記載されているのを、「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下であり、」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上99%以下の」と記載されているのを、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上10%以下の」に訂正する。
(6)訂正事項6
(訂正事項6-1)
特許請求の範囲の請求項6に「前記プロピレン系重合体が」と記載されているのを、「プロピレン系重合体が」に訂正し、同請求項6に「請求項1に記載のプロピレン系重合体」と記載されているのを、「プロピレン系重合体」に訂正し、請求項1を引用するものを独立形式にあらためる。
(訂正事項6-2)
請求項6に「(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上99重量%以下と化石燃料由来プロピレンが1重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」と記載されているのを、「(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」に訂正する。
(訂正事項6-3)
請求項6が引用する請求項1に「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上99.0pMC(%)以下である。」と記載されているのを、「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.1pMC(%)以下であり、」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%~99%」と記載されているのを、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%~10%」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
(訂正事項9-1)
特許請求の範囲の請求項9に「前記のプロピレン系重合体が」と記載されているのを、「プロピレン系重合体が」に訂正し、同請求項9に「請求項8に記載のプロピレン系重合体」と記載されているのを、「プロピレン系重合体」に訂正し、請求項8を引用する請求項9を独立形式にあらためる。
(訂正事項9-2)
請求項9に「(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上99重量%以下と化石燃料由来プロピレンが1重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物である(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」と記載されているのを、「(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」に訂正する。
(訂正事項9-3)
請求項9が引用する請求項8に「バイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上99.0pMC(%)以下である、」と記載されているのを、「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下である、」に訂正する。
(10)訂正事項10
(訂正事項10-1)
特許請求の範囲の請求項10に「前記プロピレン系重合体が」と記載されているのを、「プロピレン系重合体が」に訂正し、同請求項10に「請求項8に記載のプロピレン系重合体」と記載されているのを、「プロピレン系重合体」に訂正し、請求項8を引用する請求項10を独立形式にあらためる。
(訂正事項10-2)
請求項10が引用する請求項8に「該原料に含まれるプロピレン、エチレン、および炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(a)が、バイオマス由来オレフィン(a1)0.2重量%以上99重量%以下と化石燃料由来オレフィン(a2)1重量%以上99.8重量%以下とを含むオレフィン混合物である(バイオマス由来オレフィン(a1)と化石燃料由来オレフィン(a2)の合計を100重量%とする)」と記載されているのを、「該原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」に訂正する。
(訂正事項10-3)
請求項10が引用する請求項8に「バイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上99.0pMC(%)以下である、」と記載されているのを、「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下である、」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11が引用する請求項10において、上記訂正事項(10-2)の訂正が行われるため、同請求項11に「重合器に供給される原料が、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上99重量%以下と化石燃料由来プロピレン1重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)を含む」と記載されているのを削除する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(13)訂正事項13
(訂正事項13-1)
特許請求の範囲の請求項13に「請求項12に記載のプロピレン系重合体」と記載されているのを、「プロピレン系重合体」に訂正し、同請求項13が引用する請求項12の要件である
「プロピレン系重合体が、プロピレン・エチレンブロック共重合体であり、
該プロピレン・エチレンブロック共重合体が、
プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなり、下記(v)
(v) 極限粘度[η]が0.8(dl/g)以上3.0(dl/g)を満たす結晶性プロピレン系重合体(c)55重量%以上95重量%と、
プロピレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%以下とエチレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%とを含み、下記(vi)
(vi)極限粘度[η]が1.0(dl/g)以上10.0(dl/g)
を満たすプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)5重量%以上45重量%以下とを含有し、
プロピレン、またはプロピレンおよびエチレンを含む原料(1)を重合器に供給して、重合触媒により重合して、
プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%末満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなる結晶性プロピレン系重合体成分(c)を作製する工程(α)、および
プロピレンおよびエチレンを含む原料(2)を重合器に供給して、重合触媒により重合して、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)を作製する工程(β)を含み、」を追加し、請求項8および12を引用する請求項13を独立形式にあらためる。
(訂正事項13-2)
請求項13に「重合器に供給される原料(1)および(2)に含まれるプロピレンが、バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上99重量%以下と化石燃料由来プロピレンが1重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)である」と記載されているのを、「重合器に供給される原料(1)および(2)に含まれるプロピレンが、バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレン90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)であり」に訂正する。
(訂正事項13-3)
請求項13が引用する請求項12において、当該請求項12が引用する請求項8に「バイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上99.0pMC(%)以下である、」と記載されているのを、「(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.1pMC(%)以下である、」に訂正する。
2 一群の請求項について
訂正事項1ないし7による訂正は、訂正前の請求項1ないし7及び当該請求項を直接又は間接的に引用する請求項14ないし20を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項2ないし7及び当該請求項を直接又は間接的に引用する請求項14ないし20は、訂正請求の対象である請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項1ないし7及び当該請求項を直接又は間接的に引用する請求項14ないし20は一群の請求項であって、訂正事項1ないし7による訂正は、一群の請求項〔1-7、14-20〕について請求されたものである。
また、訂正事項8ないし13による訂正は、訂正前の請求項8ないし13を訂正するものであるところ、本件訂正前の請求項9ないし13は、訂正請求の対象である請求項8の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前の請求項8ないし13は一群の請求項であって、訂正事項8ないし13による訂正は、一群の請求項〔8-13〕について請求されたものである。
なお、本件訂正の請求において、訂正事項2、4、6、9、10及び13により、他の請求項の記載を引用する請求項2、4、6、9、10及び13の記載を、当該他の記載を引用しないものとする訂正が行われたが、別の訂正単位とする求めはない。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、8及び12による訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正、訂正事項8による請求項8についての訂正及び訂正事項12による請求項12についての訂正は、特許請求の範囲の請求項を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項1、8及び12は、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2による訂正について
訂正事項2-1による請求項2についての訂正は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2-2による請求項2についての訂正は、「バイオマス由来プロピレン」の含有量の上限値を「99重量%」から「10重量%」に下げると共に、「化石燃料由来プロピレン」の含有量の下限値を「0.2重量%」から「90重量%」に上げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項2-3による請求項2についての訂正は、「プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度」の上限値を「99.0pMC(%)」から「10.0pMC(%)」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項2-2及び訂正事項2-3は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3による訂正について
訂正事項3による請求項3についての訂正は、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度」の上限値を「99%」から「10%」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項3は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項4による訂正について
訂正事項4-1による請求項4についての訂正は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項4-2による請求項4についての訂正は、「バイオマス由来プロピレン」の含有量の上限値を「99重量%」から「10重量%」に下げると共に、「化石燃料由来プロピレン」の含有量の下限値を「0.2重量%」から「90重量%」に上げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項4-3による請求項4についての訂正は、「プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度」の上限値を「99.0pMC(%)」から「10.0pMC(%)」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項4-2及び訂正事項4-3は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(5)訂正事項5による訂正について
訂正事項5による請求項5についての訂正は、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度」の上限値を「99%」から「10%」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項5は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項6による訂正について
訂正事項6-1による請求項6についての訂正は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項6-2による請求項6についての訂正は、「バイオマス由来プロピレン」の含有量の上限値を「99重量%」から「10重量%」に下げると共に、「化石燃料由来プロピレン」の含有量の下限値を「0.2重量%」から「90重量%」に上げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項6-3による請求項6についての訂正は、「プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度」の上限値を「99.0pMC(%)」から「10.1pMC(%)」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項6-2及び訂正事項6-3は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項7による訂正について
訂正事項7による請求項7についての訂正は、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度」の上限値を「99%」から「10%」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項7は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項9による訂正について
訂正事項9-1による請求項9についての訂正は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項9-2による請求項9についての訂正は、「バイオマス由来プロピレン」の含有量の上限値を「99重量%」から「10重量%」に下げると共に、「化石燃料由来プロピレン」の含有量の下限値を「0.2重量%」から「90重量%」に上げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項9-3による請求項9についての訂正は、「プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度」の上限値を「99.0pMC(%)」から「10.0pMC(%)」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項9-2及び訂正事項9-3は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(9)訂正事項10による訂正について
訂正事項10-1による請求項10についての訂正は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項10-2による請求項10についての訂正は、「バイオマス由来プロピレン」の含有量の上限値を「99重量%」から「10重量%」に下げると共に、「化石燃料由来プロピレン」の含有量の下限値を「0.2重量%」から「90重量%」に上げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項10-3による請求項10についての訂正は、「プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度」の上限値を「99.0pMC(%)」から「10.0pMC(%)」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項10-2及び訂正事項10-3は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(10)訂正事項11による訂正について
訂正前の請求項11は請求項10の記載を引用するものであるところ、訂正事項11による請求項11についての訂正は、訂正事項10により請求項10においてランダム共重合体の原料に関する発明特定事項が減縮されたことに伴い、重複する発明特定事項である「重合器に供給される原料が、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上99重量%以下と化石燃料由来プロピレン1重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)を含む」を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、訂正事項11は、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
(11)訂正事項13による訂正について
訂正事項13-1による請求項13についての訂正は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」又は同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項13-2による請求項13についての訂正は、「バイオマス由来プロピレン」の含有量の上限値を「99重量%」から「10重量%」に下げると共に、「化石燃料由来プロピレン」の含有量の下限値を「0.2重量%」から「90重量%」に上げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
さらに、訂正事項13-3による請求項13についての訂正は、「プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度」の上限値を「99.0pMC(%)」から「10.1pMC(%)」に下げるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、訂正事項13-2及び訂正事項13-3は、実施例に記載されているため、本件特許の明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲の拡張し、又は変更するものではない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件訂正は適法なものであり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、14-20〕〔8-13〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められるため、本件特許の請求項1ないし20に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし20を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体であり、
下記(I-1)および(II)を満たし、
プロピレン系重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)。
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下である。
該プロピレン単独重合体が下記(i)~(ii)を満たす、プロピレン系重合体。
(i) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロー・レート(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下
(ii) アイソタクチックペンタッド分率が90.0%以上99.9%以下
【請求項3】
ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上10%以下のプロピレン単独重合体である、請求項2に記載のプロピレン系重合体。
【請求項4】
プロピレン系重合体が、プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体であり、
該ランダム共重合体は、プロピレンから導かれる構成単位90.0重量%以上99.9重量%以下と、オレフィン(b)から導かれる構成単位0.1重量%以上10.0重量%以下とを含み、
該ランダム共重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)、
(II)該ランダム共重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下であり、
かつ下記(iii)~(iv)を満たす、プロピレン系重合体。
(iii) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロー・レート(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下
(iv)融点が100℃以上160℃以下
【請求項5】
ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上10%以下のプロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体である、請求項4に記載のプロピレン系重合体。
【請求項6】
プロピレン系重合体が、プロピレン・エチレンブロック共重合体であり、
該プロピレン・エチレンブロック共重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)、
(II)該プロピレン・エチレンブロック共重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.1pMC(%)以下であり、
該プロピレン・エチレンブロック共重合体が、
プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなり、下記(v)
(v) 極限粘度[η]が0.8(dl/g)以上3.0(dl/g)
を満たす結晶性プロピレン系重合体成分(c)55重量%以上95重量%と、
プロピレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%以下とエチレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%とを含み、下記(vi)
(vi) 極限粘度[η]が1.0(dl/g)以上10.0 (dl/g)
を満たすプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)5重量%以上45重量%以下とを含有する、プロピレン系重合体。
【請求項7】
ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%~10%である、プロピレン・エチレンブロック共重合体である、請求項6に記載のプロピレン系重合体。
【請求項8】
(削除)
【請求項9】
プロピレン系重合体が下記(i)~(ii)を満たすプロピレン単独重合体であり;
(i) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロー・レート(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下
(ii) アイソタクチックペンタッド分率が90.0%以上99.9%以下
原料であるプロピレンを重合器に供給し、重合触媒により重合する工程を含み、
該原料が、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と、化石燃料由来プロピレン90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)、
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下である、
プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項10】
プロピレン系重合体が、下記(iii)~(iv)を満たす、プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体であり、
(iii) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロー・レート(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下
(iv) 融点が100℃以上160℃以下
重合器に供給される原料が、プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とを含み、
該原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と、化石燃料由来プロピレン90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)、
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下である、
プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項11】
前記ランダム共重合体が、プロピレンから導かれる構成単位90.0重量%以上99.9重量%以下と、少なくとも1種のオレフィン(b)から導かれる構成単位0.1重量%以上10.0重量%以下とを含む、請求項10に記載のプロピレン系重合体の製造方法。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
プロピレン系重合体が、プロピレン・エチレンブロック共重合体であり、該プロピレン・エチレンブロック共重合体が、
プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなり、下記(v)
(v) 極限粘度[η]が0.8(dl/g)以上3.0(dl/g)
を満たす結晶性プロピレン系重合体成分(c)55重量%以上95重量%と、
プロピレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%以下とエチレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%とを含み、下記(vi)
(vi)極限粘度[η]が1.0(dl/g)以上10.0(dl/g)
を満たすプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)5重量%以上45重量%以下とを含有し、
プロピレン、またはプロピレンおよびエチレンを含む原料(1)を重合器に供給して、重合触媒により重合して、
プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなる結晶性プロピレン系重合体成分(c)を作製する工程(α)、および
プロピレンおよびエチレンを含む原料(2)を重合器に供給して、重合触媒により重合して、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)を作製する工程(β)を含み、
重合器に供給される原料(1)および(2)に含まれるプロピレンが、バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレン90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)であり、
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.1pMC(%)以下である、
プロピレン系重合体の製造方法。
【請求項14】
請求項2または3に記載のプロピレン単独重合体を含む樹脂組成物。
【請求項15】
請求項4または5に記載のプロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体を含む樹脂組成物。
【請求項16】
請求項6または7に記載のプロピレン・エチレンブロック共重合体を含む樹脂組成物。
【請求項17】
請求項2または3に記載のプロピレン単独重合体からなる成形体。
【請求項18】
請求項4または5に記載のプロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体からなる成形体。
【請求項19】
請求項6または7に記載のプロピレン・エチレンブロック共重合体からなる成形体。
【請求項20】
請求項14~16のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形体。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由、証拠方法等及び取消理由の概要
1 申立人1が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
申立人1が提出した特許異議申立書(以下、「申立書1」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由1-1(甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は下記甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という 。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由1-2(甲第2号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は下記甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由1-3(甲第3号証ないし甲第7号証のいずれかを主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし20に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証ないし甲第7号証のいずれかに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(4)申立理由1-4(サポ-ト要件)
本件特許の請求項6、7、12、13、16及び19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由は、以下のとおり。
発明の詳細な説明(例えば、参考例3、実施例7~9に関する表3など)には、プロピレン・エチレンブロック共重合体の結晶性プロピレン系重合体成分(c)の極限粘度[η]について具体的に示されておらず、本件特許発明6、7、12、13、16、19に係るプロピレン・エチレンブロック共重合体を構成する結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体(結晶性プロピレン系重合体成分(c)が得られているのか不明である。
してみると、本件特許発明6、7、12、13、16、19は、発明の詳細な説明に記載されていない。
(5)証拠方法
ア 申立書1に添付された証拠方法
甲第1号証:平成20年度~平成24年度成果報告書 新エネルギ-技術研究開発 バイオマスエネルギ-等高効率転換技術開発(先導技術開発) 「バイオポリオレフィン等のバイオマス由来度の測定・試験方法の研究開発」、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 平成25年3月 (公開日:2014年6月13日)p.1~12、28~30(以下、「甲1-1」という。)
甲第1号証の2:成果報告書概要 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 [on line][令和4年5月16日検索]、インタ-ネット <URL:https://seika.nedo.go.jp/pmg/PMG01B/PMG01BG02>
甲第2号証:特開2017-186443号公報(以下、「甲1-2」という。)
甲第3号証:特開平8-73529号公報(以下、「甲1-3」という。)
甲第4号証:特開平9-272718号公報(以下、「甲1-4」という。)
甲第5号証:特開2000-313777号公報(以下、「甲1-5」という。)
甲第6号証:特開2008-239971号公報
甲第7号証:特開2005-146160号公報
参考資料1:「新版ポリプロピレンハンドブック」 日刊工業新聞社、
2013年6月7日初版2刷発行、p.372~373
イ 令和5年3月3日付け意見書に添付された証拠方法
甲第8号証:杉山英路ら、地球環境にやさしい「サトウキビ由来のポリエチレン」、コンバーテック2009年8月号、株式会社加工技術研究会 2009年8月15日、63~67頁(以下、「甲1-8」という。)
ウ 令和5年8月30日付け意見書に添付された証拠方法
甲第9号証:特開2021-80463号公報
甲第10号証:特開2020-189641号公報
2 申立人2が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
申立人2が提出した特許異議申立書(以下、「申立書2」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由2-1(甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし20に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由2-2(甲第2号証に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1~7、及び14~20に係る発明は、本件特許の出願の出願前の特許出願であって、その出願後に公開がされた下記の甲第2号証に示される出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)証拠方法
ア 申立書2に添付された証拠方法
甲第1号証:LyondellBasell Industriesの「CirculenRenew」に関するウェブサイト<URL:https://www.lyondellbasell.com/circulen>(印刷日時 2022年7月4日11時8分) 及び抄訳
甲第2号証:特願2020-161351号(特開2022-054266号公報)
参考文献1: グンゼ株式会社の「マスバランス方式のバイオマスフィルム「GB50」の上市について」に関するウェブサイト<URL:https://www.gunze.co. jp/plastic/detail/118#:~:text>(印刷日時 2022年7月4日10時37分)
参考文献2: LyondellBasell Industriesの「LyondellBasell and Neste announce commercial-scale production of bio-based plastic from renewable materials」に関するウェブサイト(June 18, 2019) (印刷日時 2022年7月4日10時18分)及び抄訳
参考文献3: CirculenRenew C14 EP348UのSDS(改定日2020年4月6日)及び抄訳
参考文献4: CirculenRenew C14 HP456JのSDS(改定日2021年9月15日)及び抄訳
参考文献5: JIS K6921-1:1997 プラスチック-ポリプロピレン(PP)成形用及び押出用材料-第1部:呼び方のシステム及び仕様表記の基礎、231-237頁(2015年1月30日発行)
イ 令和5年3月3日付け意見書に添付された証拠方法
参考文献6:Advancing PP recycling in Rigid Packaging, in the European Circular Economy frame(2019年開催のグローバル プラスチック サミットにおける発表にて使用されたスライド資料)及び抄訳
参考文献7: Moplen EP540PのSDS(改訂日2020年5月25日)及び抄訳
3 申立人3が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
申立人3が提出した特許異議申立書(以下、「申立書3」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由3-1(甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし20に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし20に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立書3に添付された証拠方法
甲第1号証:特表2013-512969号公報(以下、「甲3-1」という。)
甲第2号証:特表2010-511634号公報(以下、「甲3-2」という。)
甲第3号証:米国特許公開第2015/0141605号明細書(以下、「甲3-3」という。)及び部分訳
甲第4号証:特開2002-302825号公報
甲第5号証:特開平9-278954号公報
4 申立人4が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
申立人4が提出した特許異議申立書(以下、「申立書4」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
(1)申立理由4-1(甲第1号証を主引用文献とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3、14、17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は本件特許の請求項1ないし20に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立書4に添付された証拠方法
甲第1号証:特開2013-76192号公報(以下、「甲4-1」という。)
甲第2号証:特開2021-91881号公報
5 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要
当審が令和5年5月8日付けの取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由4(各甲1-3ないし甲1-5を主引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項2ないし7、9ないし11、13ないし20に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1-3ないし甲1-5のいずれかに記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第5 取消理由についての当審の判断
当審は、以下に述べるように、取消理由4(各甲1-3ないし甲1-5を主引用文献とする進歩性)は依然として解消しておらず、本件発明2ないし7、9ないし11、13ないし20に係る特許を取り消すべきであると判断する。
(1)証拠に記載された事項等
ア 甲1-3に記載された事項及び甲1-3発明
(ア)甲1-3に記載された事項
甲1-3には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】 (1)メルトインデックスが0.5~5g/10分であること、(2)同位体炭素による核磁気共鳴分光(13C-NMR)により求められるペンタッド分率fmmmmが92~98モル%であること、(3)示差走査型熱量計(DSC)で測定した融解エンタルピーΔHが98J/g以上であること、(4)溶融粘弾性測定から得られる角周波数ωが10-1/secの緩和時間τが3sec以下であること、及び(5)固体粘弾性測定から得られる23℃での弾性率(E'23)に対する120℃での弾性率(E'120)の保持率(E'120/E'23 ×100)が14%以上であることを特徴とするプロピレン単独重合体。
【請求項2】 請求項1記載のプロピレン単独重合体を製膜、延伸してなる延伸フィルム。
【請求項3】 二軸延伸フィルムである請求項2記載の延伸フィルム。」
「【0005】本発明のプロピレン単独重合体は以下に示す性状を有する。まず、(1)メルトインデックス(MI)が0.5~5g/10分の範囲にあることが必要である。このMIが0.5/10分未満では、成形時の吐出量が著しく低下して生産性が悪いし、5g/10分を超えると、二軸延伸フィルムを製膜した場合、延伸後のフィルムの厚みの均一性が低下する。生産性及び延伸後のフィルムの厚みの均一性の面から、MIの好ましい範囲は0.8~4.5g/10分であり、より好ましくは1~4g/10分である。なお、このMIは、JIS K-7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。
【0006】また、(2)同位体炭素による核磁気共鳴分光(13C-NMR)により求められるペンタッド分率fmmmmが92~98モル%の範囲にあることが必要である。このペンタッド分率が92モル%未満では、得られるフィルムの剛性が不充分であるし、98モル%を超えると、横延伸時の応力が高くなり延伸切れが生じやすくなる。なお、このペンタッド分率は「マクロモレキュルズ(Macromolecules)」第8巻,第687ページ(1975年)記載の方法に従い、13C-NMR〔日本電子(株)製JNM EX-400〕により400MHzで測定した値である。」
「【0010】本発明のプロピレン単独重合体は、立体規則性が高いため、結晶性及び融点が高いものを用いることにより、得られるフィルムの剛性及び耐熱性が改良され、また、高分子量成分が少ない(分子量分布が狭い)ため、緩和しやすいものを用いることにより、横延伸性が改良される。本発明のプロピレン単独重合体の製造方法については、前記要件を満たすプロピレン単独重合体が得られる方法であればよく、特に制限されず、様々な方法を用いることができる。例えば、(a)(イ)マグネシウム,チタン,ハロゲン原子及び電子供与体からなる固体触媒成分、及び必要に応じて用いられる(ロ)結晶性ポリオレフィンから構成される固体成分と、(b)有機アルミニウム化合物と、通常用いられる(c)電子供与性化合物とからなる触媒系の存在下、プロピレンを単独重合させることにより、製造することができる。」
「【0027】重合形式としては、特に制限はなく、スラリー重合,気相重合,バルク重合,溶液重合などが用いられる。気相重合により重合を行う場合の重合条件については、重合圧力は通常10~45kg/cm2G、好ましくは20~30kg/cm2G、重合温度は通常40~90℃、好ましくは60~75℃の範囲で適宜選ばれる。重合体の分子量調節は、公知の手段、例えば、重合器中の水素濃度を調節することにより行うことができる。重合時間は反応温度によって左右され、一概に定めることはできないが、5分~10時間程度で充分である。
【0028】重合に際しては、触媒系を構成する各成分、すなわち、(a)~(c)成分を所定の割合で混合し、接触させたのち、ただちに原料モノマーを導入し、重合を開始してもよく、あるいは接触後0.2~3時間程度熟成させたのち、モノマーを導入してもよい。さらに、この触媒成分は不活性溶媒などに懸濁して供給することができる。本発明においては、重合後の後処理は常法により行うことができる。すなわち、気相重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマー粉体に、その中に含まれるモノマーなどを除くために、窒素気流などを通過させてもよい。また、所望に応じて押出機によりペレット化してもよく、その際、触媒を完全に失活させるために、少量の水、アルコールなどを添加することもできる。また、バルク重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマーから完全にモノマーを分離したのち、ペレット化することもできる。
【0029】本発明はまた、前記プロピレン単独重合体からなる延伸フィルムをも提供するものである。本発明の延伸フィルムは一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよいが、特に二軸延伸フィルムが好適である。次に、この二軸延伸フィルムの作製方法について説明する。まず、該プロピレン単独重合体に、所望に応じ公知の各種添加剤、例えば、酸化防止剤,耐候剤,熱安定剤,帯電防止剤,防曇剤,アンチブロッキング剤,中和剤,滑剤,造核剤,着色剤,無機又は有機充填剤などを配合し、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合するか、又は混合後さらに単軸押出機や多軸押出機を用いて溶融混練造粒するか、あるいはニーダー,バンバリミキサーなどで溶融混練造粒することにより、ポリプロピレン樹脂組成物を調製する。」
「【0030】次に、このポリプロピレン樹脂組成物を、例えば、押出機を用い、T型ダイスから押出してシートを成形する。この際の樹脂温度は通常220~300℃、好ましくは240~280℃である。次いで、このシートを、通常110~160℃、好ましくは130~150℃の温度で、延伸倍率3~7倍程度に縦方向に延伸処理したのち、通常130~170℃、好ましくは145~165℃の温度で、延伸倍率7~12倍程度に横方向に延伸処理して、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製する。このようにして得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みは、通常5~100μmの範囲である。本発明においては、所望に応じ、延伸フィルムの表面を処理し、表面エネルギーを大きくしたり、表面を極性にしたりしてもよい。この表面処理により、コーティング,ラミネート,印刷などにおいて接着力が向上する。この表面処理方法は、表面の酸化法と表面の凹凸化法に大別することができ、表面の酸化法としては、例えば、コロナ放電処理,クロム酸処理,火炎処理,熱風処理,オゾンや紫外線照射などの方法が挙げられ、表面の凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法,溶剤処理法などが挙げられる。」
「【0031】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、ポリプロピレン樹脂のMI,ペンタッド分率fmmmm,融解エンタルピーΔH,緩和時間τ及び弾性率の保持率(E'120/E'23 ×100)は、前述した方法に従って測定した。また、フィルムの物性は以下に示す要領に従って測定した。
(1)横延伸荷重
テーブルテンターで横延伸する際の降状荷重で示す。
(2)ヘイズ値
JIS K-7105に準じて測定した。
(3)引張弾性率
JIS K-113に準じて測定した。
【0032】実施例1
(1)マグネシウム化合物の調製
内容積12リットルの撹拌機付きのガラス製反応器を窒素ガスで充分に置換したのち、エタノール約4,860g,ヨウ素32g及び金属マグネシウム320gを投入し、撹拌しながら還流条件下で反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応生成物を含む反応液を減圧下で乾燥させることにより、マグネシウム化合物(固体生成物)を得た。
(2)固体触媒成分の調製窒素ガスで充分に置換した内容積5リットルのガラス製三つ口フラスコに、上記(1)で得られたマグネシウム化合物(粉砕していないもの)160g,精製ヘプタン800ミリリットル,四塩化珪素24ミリリットル及びフタル酸ジエチル23ミリリットルを加えた。系内を90℃に保ち、撹拌しながら四塩化チタン770ミリリットルを投入して110℃で2時間反応させたのち、固体成分を分離して80℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタン1,220ミリリットルを加え、110℃で2時間反応させたのち、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分を得た。
【0033】(3)重合前処理
内容積500リットルの撹拌翼付き反応槽に、n-ヘプタン230リットルを投入し、さらに、前記(2)で得られた固体触媒成分25kgを加え、次いで、この固体触媒成分中のTi1g原子に対し、トリエチルアルミニウムを0.6モル及びシクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.4モルの割合で加えたのち、プロピレンをプロピレン分圧で0.3kg/cm2Gになるまで導入し、20℃で4時間反応させた。反応終了後、固体触媒成分をn-ヘプタンで数回洗浄し、二酸化炭素を供給し24時間撹拌した。
(4)プロピレンの重合
内容積200リットルの撹拌翼付き重合槽に、上記(3)の処理済の固体触媒成分をTi原子に換算して3ミリモル/hrで、トリエチルアルミニウムを0.37ミリモル/hrで、シクロヘキシルメチルジメトキシシランを95ミリモル/hrでそれぞれ供給し、重合温度80℃、プロピレン圧力28kg/cm2Gで反応させた。この際、所定の分子量になるように水素ガスを供給した。このようにして得られたポリプロピレン樹脂の性状を第1表に示す。」
(イ)甲1-3発明
甲1-3に記載された事項について、請求項1を整理すると、甲1-3には次の発明が記載されていると認める。
「(1)メルトインデックスが0.5~5g/10分であること、(2)同位体炭素による核磁気共鳴分光(13C-NMR)により求められるペンタッド分率fmmmmが92~98モル%であること、(3)示差走査型熱量計(DSC)で測定した融解エンタルピ-ΔHが98J/g以上であること、(4)溶融粘弾性測定から得られる角周波数ωが10-1/secの緩和時間τが3sec以下であること、及び(5)固体粘弾性測定から得られる23℃での弾性率(E'23)に対する120℃での弾性率(E'120)の保持率(E'120/E'23 ×100)が14%以上であることを特徴とするプロピレン単独重合体。」(以下、「甲1-3-A発明」という。)
また、甲1-3-A発明の製造方法について、甲1-3の段落【0028】を整理すると、甲1-3には次の発明が記載されていると認める。
「重合器に触媒系を構成する各成分を混合し、接触させたのち、ただちに原料モノマ-を導入し、重合を開始する工程を含む、甲1-3-A発明であるプロピレン単独重合体の製造方法。」(以下、「甲1-3-B発明」という。)
さらに、甲1-3の段落【0029】のポリプロピレン樹脂組成物を調製する旨の記載、段落【0030】のポリプロピレン樹脂組成物を、例えば、押出機を用い、T型ダイスから押出してシートを成形する旨の記載、「【請求項2】請求項1記載のプロピレン単独重合体を製膜、延伸してなる延伸フィルム」の記載から、甲1-3には次の発明が記載されていると認める。
「甲1-3-A発明であるプロピレン単独重合体に、所望に応じ公知の各種添加剤を配合し混合することにより得られるポリプロピレン樹脂組成物。」(以下、「甲1-3-C発明」という。)
「甲1-3-A発明であるプロピレン単独重合体、又は、甲1-3-C発明であるポリプロピレン樹脂組成物を製膜、延伸してなる延伸フィルム。」(以下、「甲1-3-D発明」という。)
イ 甲1-4に記載された事項及び甲1-4発明
(ア)甲1-4に記載された事項
甲1-4には、次の事項が記載されている。
「【0045】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。まず、樹脂特性の評価方法、フィルムの製膜方法及びフィルムの品質の評価方法について、説明する。
(ア)樹脂特性の評価方法
1) 共重合体中のエチレン単位の含有量(χ(wt%))
エチレン含有量は以下の条件にて300 μm 厚のシートを作成し、日本分光製FT/IR5300を用い718 、733 cm-1の吸光度から次式により計算した。
【0046】
・シート成形条件
プレス温度:220 ℃ ; 加・冷圧時の圧締圧: 50 kg/cm2G
余熱:5 min ; 加圧:5 min ; 冷圧:3 min
・IR測定条件
積算回数: 20 回 ; 分解能:4 cm-1
エチレン含量(χ(wt%))
χ1 =0.599 ×(A733 /d・l)-0.161 ×( A718 /d・l)
χ2 =0.599 ×(A718 /d・l)-0.161 ×(A733 /d・l)
χ=0.809 ×(χ1 +χ2 )
但し、A718 :718 cm-1の吸光度、A733 :733 cm-1の吸光度、
d:0.9 、l:試料の厚さ。
【0047】
2) メルトインデックス(MI(g/10min) )
JIS K7210に従い、温度230 ℃、荷重2160gで測定した。
3) 沸騰ジエチルエーテル抽出量(E(wt%))
1 mmφメッシュパスの大きさに粉砕したペレットを円筒濾紙に3 g 、抽出溶剤のジエチルエーテルを平底フラスコに160 ml入れ、リフラックス頻度を1 回/5min 程度にしてソックスレー抽出器で 10 時間抽出する。抽出後、ジエチルエーテルをエバポレーターで回収し、さらに真空乾燥器で、恒量になるまで乾燥し、その重量から沸騰ジエチルエーテル抽出量を求めた。
【0048】4) 示差走査型熱量計で測定した共重合体の融点(Tm ( ℃))
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて、あらかじめ試料 10 mgを窒素雰囲気下230 ℃で3 min 溶融した後、 10 ℃/minで 40 ℃まで降温する。この温度で3 min 保持した後、 10 ℃/minで昇温させて得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピークトップを融点とした。
【0049】5) 13C-NMRで測定した共重合体、及びフィルムのPPP連鎖部のアイソタクチックトライアッド分率(mm (mol %))
プロピレン系共重合体のPPP連鎖部のアイソタクチックトライアッド分率は、共重合体分子鎖のPPP連鎖におけるトライアッド単位のアイソタクチック分率 であり、13C-NMRスペクトルから求めることができる。プロピレン単独重合体の場合は、次の式(a) でそれを計算できる。
【0050】
【数1】
[図:0001409065000001.jpg]
但し、Imm、Imr及びIrrは、13C-NMRスペクトルでメチル炭素領域をmm、mr及びrrの3領域に区分けしたときの、それぞれの領域のピーク強度を示す。mm領域は化学シフトで21.4~22.2ppm、mr領域は化学シフトで20.6~21.4ppm、rr領域は化学シフトで19.8~20.6ppmである。プロピレン系ランダム共重合体の場合は、エチレン単位に隣接するプロピレン単位のメチル炭素の吸収位置がエチレン単位により影響を受ける。具体的には、EPE連鎖中のプロピレン単位のメチル炭素の吸収ピークは、rr領域に現れ、PPE連鎖の中央のプロピレン単位のメチル炭素の吸収ピークはmr領域に現れる。このEPE連鎖中のプロピレン単位のメチル炭素の吸収ピーク強度は、Tδδ(33.3ppm)のピーク強度で代用ができる。また、このPPE連鎖中のプロピレン単位のメチル炭素の吸収ピーク強度は、Sαγ(38.0ppm)のピーク強度で代用ができる。
【0051】そこで、プロピレン系ランダム共重合体のPPP連鎖のアイソタクチックトライアッド分率を求めるには、次の式(b) を用いる。
【0052】
【数2】
[図:0001409065000002.jpg]
13C-NMRスペクトルは、日本電子社製のJNM-EX400型NMR装置を用いて測定した。測定条件は、以下のとおりである。
試料濃度 : 220mg/NMR溶媒 3 ml
NMR溶媒 : 1,2,4- トリクロロベンゼン/重ベンゼン(90/10vol%)
測定温度 : 130℃
パルス幅 : 45°
パルス繰返し時間 : 4 秒
積算回数 : 4000 回
【0053】6) 緩和時間τ
レオメトリクス社製回転型レオメーターにおいて、コーンプレート(直径25.0mm 、コーンアングル 0.10 ラジアン)を用い、温度175 ℃において周波数分散測定を行なったときの周波数ω0 =100 rad/sec における緩和時間τ (sec) であり、以下のようにして、計算した。複素弾性率G* (iω) を応力σ* とひずみγ* によりσ* /γ* で定義したとき、G* (iω) は、
G* (iω) =σ* /γ* =G'(ω) +iG"(ω)
であり、τ (ω) は、
τ (ω) =G'(ω) /ωG"(ω)
但し、ω:周波数 (rad/sec) 、G' :貯蔵弾性率、G" :損失弾性率である。
【0054】(イ)フィルムの製膜方法
以下の実施例及び比較例で得たプロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン重合体のペレットから、三菱重工製 75 mmφ成形機を用い、膜厚 30 μm 又は25μm のフィルムを以下の成形条件で製膜した (膜厚は押出量で調整した) 。
加工温度 :265 ℃
チルロール温度: 25 ℃
引取速度 :150 m/min
【0055】(ウ)フィルムの品質の評価方法
フィルムの品質は全て試料を温度23±2 ℃、湿度50±10 %で、 16 時間以上状態調節した後、同じ温度、湿度条件下にて、測定を行った。
【0056】7) ヒートシール特性
JIS K-1707に準拠して測定した。融着条件を以下に記す。なお、ヒートシールバーの温度は表面温度計により較正されている。シール後、室温で一昼夜放置し、その後室温で剥離速度を 200 mm/min にしてT型剥離法で剥離強度を測定した。ヒートシール温度は剥離強度が300 g/15mmになる温度をシール強度-剥離強度曲線から計算して求めた。
シール時間:2 sec
シール面積:15×10 mm
シール圧力:5.3 kg/cm2
シール温度:ヒートシール温度を内挿できように数点。
【0057】8) 引張弾性率
JIS K7127に準拠した引張試験により測定した。測定条件は以下のとおりとした。また、50℃、60℃及び70℃でそれぞれ1週間保管した後の引張弾性率も同様にして測定した。
クロスヘッド速度 : 500 mm/min
測定方向 :マシン方向(MD方向)
ロードセル : 10 kg
【0058】9) アンチブロッキング性
重ね合わせた二枚のフィルムについて以下の4つの条件で密着させた後の引剥強度により評価した。
条件1 温度:60℃ 時間: 3 hr 荷重: 36 g/cm2
条件2 温度:50℃ 時間: 1週間 荷重: 15 g/cm2
条件3 温度:60℃ 時間: 1週間 荷重: 15 g/cm2
条件4 温度:70℃ 時間: 1週間 荷重: 15 g/cm2
【0059】引剥試験の条件は次のとおりである。
テストスピード : 20 mm/min
ロードセル : 2 kg
【0060】10) スリップ性
フィルムを張ったスレットを、フィルムを張ったガラス板の上に静置した後、ガラス板を傾けていきスレットが滑り出したときの傾き角θのtanで評価する。東洋精機製作所製の摩擦角測定機を用い、以下の条件にて測定した。
測定面 :金属ロール面/金属ロール面
傾斜速度 :2.7 °/sec
スレッド重量 :1 kg
スレッド断面積:65 cm2
面間圧力 :15 g/cm2
【0061】11) 透明性(ヘイズ)
JIS K7105に従い測定した。また、50℃、60℃及び70℃でそれぞれ1週間保管した後の透明性(ヘイズ)も同様にして測定した。
12) 耐衝撃性(フィルムインパクト)
東洋精機製作所製フィルムインパクトテスターにおいて1/2 インチ衝撃ヘッドを用いた衝撃破壊強度により評価した。また、50℃、60℃及び70℃でそれぞれ1週間保管した後の耐衝撃性(フィルムインパクト)も同様にして測定した。
【0062】〔実施例1〕
(1)マグネシウム化合物の調整
攪拌機付き反応槽(内容積500 リットル) 窒素ガスで充分に置換し、エタノール 97.2 kg、ヨウ素640 g 、及び金属マグネシウム6.4 kgを投入し、攪拌しながら還流条件下で系内から水素ガスの発生が無くなるまで反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応生成物を含む反応液を減圧乾燥させることにより目的のマグネシウム化合物(固体触媒の担体)を得た。
(2)固体触媒成分の調整
窒素ガスで充分に置換した攪拌機付き反応槽(内容積500 リットル)に、前記マグネシウム化合物(粉砕していないもの) 30 kg、精製ヘプタン(n-ヘプタン)150 リットル、四塩化ケイ素 4.5 リットル、及びフタル酸ジ-n-ブチル 5.4 リットルを加えた。系内を 90 ℃に保ち、攪拌しながら四塩化チタン144 リットルを投入して110 ℃で2 時間反応させた後、固体成分を分離して 80 ℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタン228 リットルを加え、110 ℃で2 時間反応させた後、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分を得た。
【0063】(3)前処理
内容積500 リットルの攪拌機付き反応槽に精製ヘプタン230 リットルを投入し、前記の固体触媒成分を 25 kg、トリエチルアルミニウムを固体触媒成分中のチタン原子に対して1.0 mol/mol 、ジシクロペンチルジメトキシシランを1.8 mol/mol の割合で供給した。その後、プロピレンをプロピレン分圧で 0.3 kg/cm2Gになるまで導入し、 25 ℃で4 時間反応させた。反応終了後、固体触媒成分を精製ヘプタンで数回洗浄し、更に二酸化炭素を供給し 24 時間攪拌した。
(4)重合
内容積200 リットルの攪拌機付き重合装置に前記処理済の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3 m mol/hrで、トリエチルアルミニウムを4 m mol/ kg-PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを1 m mol/ kg-PPでそれぞれ供給し、重合温度 80 ℃、重合圧力(全圧)28kg/cm2G でプロピレンとエチレンを反応させたこの時、重合装置内のエチレン濃度を、0.7 mol %、水素濃度を、3.4 mol %とし、所望のエチレン含有量及び分子量となるようにした。
【0064】(5)添加剤処方
こうして得たプロピレン系共重合体パウダーに以下の添加剤を処方し、混練機にて押出造粒した。
1) 酸化防止剤
チバガイギー社製のイルガノックス1010:1000 ppm
及びチバガイギー社製のイルガフォス 168:1000 ppm
2) 中和剤 ステアリン酸カルシウム:1000 ppm
3) アンチブロッキング剤 シリカ系:2000 ppm
4) スッリプ剤 エルカ酸アミド:1000 ppm
こうして得たプロピレン系ランダム共重合体ペレットの樹脂特性を上記の(ア)の方法で評価した。また、上記の(イ)の方法で製膜し、そのフィルム品質は(ウ)の方法で評価した。その結果は第2表に示す。
【0065】〔実施例2、3〕重合時のエチレン濃度及び水素濃度を第1表のように設定して、エチレン含量及び分子量を調節した以外は全て実施例1と同様にして行なった。その結果は第2表に示す。
【0066】〔比較例1〕重合時にエチレンを供給せず、プロピレン単独で重合を行った以外は実施例1と同様にして行なった。その結果は第2表に示す。
【0067】〔比較例2〕フタル酸ジ-n-ブチルの代わりにフタル酸ジエチルを、ジシクロペンチルジメトキシシランの代わりにシクロヘキシルメチルジメトキシシランを使用し、重合装置内のエチレン濃度を 1.5 mol%、水素濃度を 3.6 mol%として行った以外は実施例1と同様にして行なった。その結果は第2表に示す。
【0068】〔比較例3〕フタル酸ジ-n-ブチルの代わりにフタル酸ジエチルを、ジシクロペンチルジメトキシシランの代わりにシクロヘキシルメチルジメトキシシランを使用し、重合時にシクロヘキシルメチルジメトキシシランを0.1 mmol/kg-PPで供給し、さらにエチレンを供給せず、プロピレン単独で重合を行った以外は実施例1と同様にして行なった。その結果は第2表に示す。
【0069】
【表1】
[図:0001409065000003.jpg]
【0070】
【表2】
[図:0001409065000004.jpg]
」
(イ)甲1-4発明
甲1-4に記載された事項について、実施例1を整理すると、甲1-4には次の発明が記載されていると認める。
「プロピレン含量が99.0wt%、エチレン含量が1.0wt%であり、メルトインデックス 7.0g/10min(JIS K7210に従い、温度230 ℃、荷重2160gで測定した。)、融点155.5℃であるプロピレン系ランダム共重合体。」(以下、「甲1-4-A発明」という。)
また、甲1-4-A発明の製造方法について、段落【0062】、【0063】を整理すると、甲1-4には次の発明が記載されていると認める。
「攪拌機付き反応槽(内容積500 リットル) 窒素ガスで充分に置換し、エタノール 97.2 kg、ヨウ素640 g 、及び金属マグネシウム6.4 kgを投入し、攪拌しながら還流条件下で系内から水素ガスの発生が無くなるまで反応させ、固体状反応生成物を得、この固体状反応生成物を含む反応液を減圧乾燥させることにより目的のマグネシウム化合物(固体触媒の担体)を得、窒素ガスで充分に置換した攪拌機付き反応槽(内容積500 リットル)に、前記マグネシウム化合物(粉砕していないもの) 30 kg、精製ヘプタン(n-ヘプタン)150 リットル、四塩化ケイ素 4.5 リットル、及びフタル酸ジ-n-ブチル 5.4 リットルを加え、系内を 90 ℃に保ち、攪拌しながら四塩化チタン144 リットルを投入して110 ℃で2 時間反応させた後、固体成分を分離して 80 ℃の精製ヘプタンで洗浄し、さらに、四塩化チタン228 リットルを加え、110 ℃で2 時間反応させた後、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分を得、内容積500 リットルの攪拌機付き反応槽に精製ヘプタン230 リットルを投入し、前記の固体触媒成分を 25 kg、トリエチルアルミニウムを固体触媒成分中のチタン原子に対して1.0 mol/mol 、ジシクロペンチルジメトキシシランを1.8 mol/mol の割合で供給し、その後、プロピレンをプロピレン分圧で 0.3 kg/cm2Gになるまで導入し、 25 ℃で4 時間反応させ、反応終了後、固体触媒成分を精製ヘプタンで数回洗浄し、更に二酸化炭素を供給し 24 時間攪拌し、内容積200 リットルの攪拌機付き重合装置に前記処理済の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3 m mol/hrで、トリエチルアルミニウムを4 m mol/ kg-PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを1 m mol/ kg-PPでそれぞれ供給し、重合温度 80 ℃、重合圧力(全圧)28 kg/cm2G でプロピレンとエチレンを反応させた、甲1-4-A発明であるプロピレン系ランダム共重合体の製造方法。」(以下、「甲1-4-B発明」という。)
さらに、甲1-4の段落【0064】のプロピレン系ランダム共重合体ペレットの記載、段落【0054】のフィルムの記載から、甲1-4には次の発明が記載されていると認める。
「甲1-4-A発明であるプロピレン系共重合体パウダ-に以下の添加剤を処方し、混練機にて押出造粒したプロピレン系ランダム共重合体ペレット
1) 酸化防止剤
チバガイギー社製のイルガノックス1010:1000 ppm
及びチバガイギー社製のイルガフォス 168:1000 ppm
2) 中和剤 ステアリン酸カルシウム:1000 ppm
3) アンチブロッキング剤 シリカ系:2000 ppm
4) スッリプ剤 エルカ酸アミド:1000 ppm」(以下、「甲1-4-C発明」という。)
「甲1-4-A発明であるプロピレン系ランダム共重合体、又は、甲1-4-C発明であるプロピレン系ランダム共重合体のペレットから、三菱重工製 75 mmφ成形機を用い、以下の成形条件で製膜した (膜厚は押出量で調整した) 膜厚 30 μmのフィルム
加工温度 :265 ℃
チルロ-ル温度: 25 ℃
引取速度 :150 m/min」(以下、「甲1-4-D発明」という。)
ウ 甲1-5に記載された事項及び甲1-5発明
(ア)甲1-5に記載された事項
甲1-5には、次の事項が記載されている。
「【0060】本発明のプロピレン系共重合体は、他のポリプロピレン系樹脂と配合して使用することができる。他のポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン単独重合体、プロピレン以外のα-オレフィン含有量(α-オレフィンは、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の1種類以上からなる)が15wt%以下のポリプロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、または、プロピレンブロック共重合体、ランダムブロック共重合体などが挙げられる。また、配合に際しては、必要に応じて従来のポリオレフィンに用いられている公知の酸化防止剤や中和剤、帯電防止剤、耐候剤、アンチブロッキング剤等を添加することができる。
[II] 成形体
本発明の成形体は、前記のプロピレン系共重合体を、射出成形や押出成形や熱成形など各種成形法により成形して得られる成形体である。成形体としては、特にフィルム、シート、繊維が柔軟性や良好な透明性を有しており、好適である。また、成形体には、二次加工として延伸処理等を行ってもよい。例えば、延伸処理を行った成形体としては、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、繊維などが挙げられる。本発明におけるフィルムは、前記のプピレン系共重合体を製膜して得られるフィルムであり、透明性に優れるという利点がある。本発明におけるフィルムは、通常、ヘイズが15%以下である。好ましくは、ヘイズが10%以下である。フィルムの製造方法としては特に制限はなく、通常のTダイキャスト製膜法等が挙げられる。すなわち、前記のプロピレン系共重合体のパウダーに必要に応じて各種の添加剤を処方し、混練機にて押出し造粒し、ペレット化し、Tダイキャスト製膜することができる。通常、本発明のプロピレン系共重合体を、Tダイキャスト製膜法により、引取速度が50m/minまたはこれ以上の高速製膜条件においても、厚みが10~500μmのフィルムを得ることができる。また、前述の好ましい特性を有することから、共押出製膜法による積層フィルムの製造に際して、その少なくとも一層成分としても好適に使用できる。また、他の樹脂との押出ラミネーションあるいは共押出成形等により複層化して使用することもできる。製膜法は、大型製膜機により高速製膜が実施されるTダイキャスト製膜法が好ましいが、特にこれに限らず、溶融押出成形法によりフィルムを製造できる方法であれば、どのような製膜法でもよい。
【0061】添加剤処方の具体例としては、下記の例を挙げることができる。
添加剤処方例(A)
○1(当審注:○は丸付き文字を表す。以下、同様。)酸化防止剤
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガノックス1010:1000ppm
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガフォス168:1000ppm
○2中和剤
ステアリン酸カルシウム:1000ppm
○3アンチブロッキング剤
富士シリシア社のシリカ系アンチブロッキング剤:1000ppm
○4スリップ剤
エルカ酸アミド:250ppm
添加剤処方例(B)
○1酸化防止剤
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガノックス1010:1000ppm
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガフォス168:1000ppm
○2中和剤
ステアリン酸カルシウム:1000ppm
○3アンチブロッキング剤
富士シリシア社のシリカ系アンチブロッキング剤:2300ppm
○4スリップ剤
エルカ酸アミド:500ppm
【0062】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。最初に、本発明における測定方法について述べる。本発明の実施例及び比較例にて用いる測定方法は、以下の「樹脂特性評価法」及び「フィルム品質の評価法」である。
「樹脂特性評価法」
○113C-NMRによるα及びPの測定
13C-NMRのスペクトルは日本電子社製のJNM-EX400型NMR装置を使用し、以下の条件にて測定した。
<NMR測定条件>
試料濃度:220mg/NMR溶媒3ml
NMR溶媒:1、2、4-トリクロロベンゼン/ベンゼン-d6=90/10(体積比)
測定温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算回数:4000回
得られたプロピレン系ランダム共重合体の各シグナルの帰属を表1に示す。なお、Pはプロピレン単位、Eはエチレン単位を示す。従って、PPPは、プロピレン単位が3個連続していることを、また、EEEは、エチレン単位が3個連続していることを示している。
【0063】
【表1】
[図:0001409065000005.jpg]
【0064】プロピレン系ランダム共重合体中のエチレン単位の含有量(α(重量%))は各シグナル強度から次式に従い算出した。
α=2X/(300―X)
X=Et/S×100
Et=IEEE +2/3 (IPEE +IEPE )+1/3 (IPPE +IPEP )
S=IEPE +IPPE +IEEE +IPPP +IPEE +IPEP
IEPE =I(4) IPPP =I(8)
IPPE =I(5) IPEE =I(9)
IEEE =I(7) /2+I(6) /4 IPEP =I(10)
但し、例えばI(1) は表1におけるシグナル番号1のシグナル強度である。また、立体規則性指標(P(モル%))は次式から算出した。
P=I(11)/(I(11 )+I(12)+I(13)-I(4) -I(5)) ×100
このP値は共重合体分子鎖のプロピレン連鎖領域におけるトライアッド単位のアイソタクチック分率である。なお、この式においてはmr領域に現れるPPE連鎖の中央のプロピレン単位のメチル炭素のシグナル強度をTβδ(5番のシグナル)のシグナル強度により、rr領域に現れるEPE連鎖中のプロピレン単位のメチル炭素のシグナル強度をTδδ(4番のシグナル)のシグナル強度により代用している。
昇温分別クロマトグラフ(TREF)
温度135℃に調節したTREFカラムに試料溶液を導入し、次いで速度5℃/hrにて徐々に0℃まで降温し、試料を充填剤に吸着させる。その後カラムを速度40℃/hrにて135℃まで昇温し、溶出曲線を得た。溶出量がピークを示すときの温度をTpとした。Wp、W0 は得られた溶出曲線から求めた。以下に測定装置、及び測定条件を示す。
【0065】1)測定装置
TREFカラム:GLサイエンス社製シリカゲルカラム(4.6φ×150mm)
フローセル:GLサイエンス社製 光路長 1mm KBrセル
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC-3100ポンプ
バルブオーブン:GLサイエンス社製 MODEL554オーブン
TREFオーブン:GLサイエンス社製
二系列温調器:理学工業社製 REX-C100温調器
検出器:液体クロマトグラフィー用赤外検出器
FOXBORO社製 MIRAN 1A CVF
10方バルブ:バルコ社製 電動バルブ
ループ:バルコ社製 500μリットルループ
2)測定条件
溶媒:オルトジクロルベンゼン
試料濃度:7.5g/リットル
注入量:500μリットル
ポンプ流量:2.0ミリリットル/分
検出波数:3.41μm
カラム充填剤:クロモソルブP(30~60メッシュ)
カラム温度分布:±2.0℃以内
○3極限粘度[η]
135℃、テトラリン溶媒中にて測定した。
【0066】重合体[B]の[η]B は、以下の計算式により算出した。
[η]B =([η]H -[η]A ×WA )/(1-WA )
ただし、重合体[A]の極限粘度[η]A は、サンプリングした試料を前記のように測定した。重合体[A]の重量分率WA は収量から計算して求めた。重合体[B]の重量分率(1-WA )は、収量から計算して求めた。プロピレンブロック共重合体の極限粘度[η]H は、最終生成物について前記のように測定した。
「フィルム品質の評価法」製膜したフィルムは全て温度40℃にて24時間のアニール処理を行い、更に温度23±2℃、湿度50±10%で16時間以上の状態調節した後に同じ温度、湿度条件下で測定を行った。
○1透明性(ヘイズ)
JIS K7105に従い測定した。
○2耐衝撃性
東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターにおいて1/2インチ衝撃頭を用いた衝撃破壊強度により評価した。結果は、○は優れている、△は普通、×は劣ると表記して示した。
○3引張弾性率
JIS K7127に準拠した引張試験により以下の条件にて測定した。
【0067】クロスヘッド速度:500mm/ min
ロードセル:10Kg
測定方向:マシン方向(MD)
○4べたつき
触感で評価した。結果は、○は優れている、△は普通、×は劣ると表記して示した。
〔実施例1~5〕
(固体触媒成分の調整)窒素で置換した内容積5Lの攪拌器付三つ口フラスコにジエトキシマグネシウム160gを投入し、更に脱水処理したオクタンを600ml加えた。40℃に加熱し、四塩化珪素24mlを加え20分攪拌し、ジブチルフタレートを16ml加えた。溶液を80℃まで昇温し、引き続き四塩化チタンを滴下ロートを用いて770ml滴下した。内温を125℃とし2時間接触反応させた。その後、125℃の脱水オクタンを用いて充分洗浄を行った。更に四塩化チタンを1220ml加え、内温を125℃とし2時間接触反応させた。その後125℃の脱水オクタンを用いて充分洗浄を行い固体成分[A]を得た。
(予備重合)窒素で置換した内容積1Lの攪拌器付三つ口フラスコに固体成分[A]を48g投入し、更に脱水処理したヘプタンを400ml加えた。40℃に加熱しトリエチルアルミニウム2.0mlとイソブチル-n-プロピルジメトキシシランを5.9ml加えた。これにプロピレンを常圧で流通させ2時間反応させた。その後、脱水オクタンを用いて充分洗浄を行い触媒成分を得た。
(プロピレンブロック共重合体の製造)内容積5リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブに、ポリプロピレンエチレンランダム共重合体パウダーを30g投入し、系内を窒素ガスで充分置換した後、トリエチルアルミニウム2.0ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.5ミリモル及び前記固体触媒成分をチタン原子換算で0.01ミリモル投入し、水素1.0kg/cm2G、及びエチレンとプロピレンを表2に示した容積比でフィードし、全圧を15.0kg/cm2Gとし、70℃にて60分間重合を行い、プロピレン共重合体[A]を製造した。引き続き、系内の反応ガスをパージした後、[η]測定用のサンプリングを行い、水素1.0kg/cm2G及びエチレンとプロピレンを表2に示した容積比でフィードし、全圧を15.0kg/cm2Gとし、70℃にて表2に示した共重合量比になるように重合時間を調節してプロピレン共重合体[B]を製造し、プロピレンブロック共重合体を得た。前記の「樹脂特性評価法」に従い測定した。
【0068】得られたポリプロピレン共重合体を20mmφ押出機でペレット化し、続いて、20mmφでCPPフィルムを成形した。前記の「フィルム品質の評価法」に従い測定した。得られた結果を表2及び表3に示した。
〔比較例1~3〕
(固体触媒成分の調整)窒素で置換した内容積5Lの攪拌器付三つ口フラスコにジエトキシマグネシウム160gを投入し、更に脱水処理したヘプタンを60ml加えた。40℃に加熱し四塩化珪素24mlを加え、20分攪拌し、ジエチルフタレートを25ml加えた。溶液を80℃まで昇温し、引き続き四塩化チタンを滴下ロートを用いて470ml滴下した。内温を110℃とし2時間接触反応させた。その後、90℃の脱水ヘプタンを用いて充分洗浄を行った。更に四塩化チタンを770ml加え、内温を110℃とし2時間接触反応させた。その後90℃の脱水ヘプタンを用いて充分洗浄を行い固体成分[B]を得た。
(予備重合)窒素で置換した内容積1Lの攪拌器付三つ口フラスコに固体成分[B]を48g投入し、更に脱水処理したヘプタンを400ml加えた。10℃に加熱しトリエチルアルミニウム2.7mlとシクロヘキシルメチルジメトキシシランを2.0ml加えた。これにプロピレンを常圧で流通させ2時間反応させた。その後、脱水ヘプタンを用いて充分洗浄を行い触媒成分を得た。
(プロピレンブロック共重合体の製造)内容積5リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブに、ポリプロピレンエチレンランダム共重合体パウダーを30g投入し、系内を窒素ガスで充分置換した後、トリエチルアルミニウム2.0ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.5ミリモル及び前記固体触媒成分をチタン原子換算で0.01ミリモル投入し、エチレンとプロピレンを表4に示した容積比でフィードし、全圧を15.0kg/cm2Gとし、70℃にて60分間重合を行い、プロピレン共重合体[A]を製造した。引き続き、系内の反応ガスをパージした後、[η]測定用のサンプリングを行い、水素1.0kg/cm2G及びエチレンとプロピレンを表4に示した容積比でフィードし、全圧を15.0kg/cm2Gとし、70℃にて表4に示した共重合量比になるように重合時間を調節してプロピレン共重合体[B]を製造し、プロピレンブロック共重合体を得た。前記の「樹脂特性評価法」に従い測定した。
【0069】得られたポリプロピレン共重合体を20mmφ押出機でペレット化し、続いて、20mmφでCPPフィルムを成形した。前記の「フィルム品質の評価法」に従い測定した。得られた結果を表4及び表5に示した。
〔比較例4,5〕
(プロピレンブロック共重合体の製造)内容積5リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブに、ポリプロピレンパウダーを30g投入し、系内を窒素ガスで充分置換した後、トリエチルアルミニウム2.0ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.5ミリモル及び比較例1,2と同様の固体触媒成分をチタン原子換算で0.01ミリモル投入し、水素5.0kg/cm2G及びプロピレン23.0kg/cm2Gを導入し、全圧28.0kg/cm2G、70℃において45分間重合を行い、プロピレン単独重合体を製造した。引き続き、系内の反応ガスをパージした後、[η]測定用のサンプリングを行い、水素3.0kg/cm2G及びエチレンとプロピレンを表4に示した容積比でフィードし、全圧を15.0kg/cm2Gとし、70℃にて表4に示した共重合量比になるように重合時間を調節してプロピレン共重合体[B]を製造し、プロピレンブロック共重合体を得た。前記の「樹脂特性評価法」に従い測定した。
【0070】得られたポリプロピレン共重合体を20mmφ押出機でペレット化し、続いて、20mmφでCPPフィルムを成形した。前記の「フィルム品質の評価法」に従い測定した。得られた結果を表4及び表5に示した。
〔比較例6〕
(プロピレンランダム共重合体の製造)内容積5リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブに、ポリプロピレン-エチレンランダム共重合体パウダーを30g投入し、系内を窒素ガスで充分置換した後、トリエチルアルミニウム2.0ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.5ミリモル及び実施例1と同様の固体触媒成分をチタン原子換算で0.01ミリモル投入し、水素1.0kg/cm2G及びエチレンとプロピレンを表4に示した容積比でフィードし、全圧15.0kg/cm2G、70℃において60分間重合を行い、プロピレン共重合体[A]を製造した。前記の「樹脂特性評価法」に従い測定した。
【0071】得られたポリプロピレン共重合体を20mmφ押出機でペレット化し、続いて、20mmφでCPPフィルムを成形した。前記の「フィルム品質の評価法」に従い測定した。得られた結果を表4及び表5に示した。
【0072】
【表2】
[図:0001409065000006.jpg]
【0073】
【表3】
[図:0001409065000007.jpg]
【0074】
【表4】
[図:0001409065000008.jpg]
【0075】
【表5】
[図:0001409065000009.jpg]
」
(イ)甲1-5発明
甲1-5に記載された事項について、実施例2の表2の記載を整理すると、甲1-5には次の発明が記載されていると認める。
「エチレン含有量4wt%、プロピレン含有量96wt%、極限粘度[η]1.96dl/gであるプロピレン共重合体A 67.7wt%と、エチレン含有量23.5wt%、プロピレン含有量76.5wt%、極限粘度[η]2.09dl/gであるプロピレン共重合体B 32.3wt%からなるプロピレンブロック共重合体。」(以下、「甲1-5-A発明」という。)
また、甲1-5-A発明の製造方法について、段落【0067】を整理すると、甲1-5には次の発明が記載されていると認める。
「窒素で置換した内容積5Lの攪拌器付三つ口フラスコにジエトキシマネシウム160gを投入し、更に脱水処理したオクタンを600ml加え、40℃に加熱し、四塩化珪素24mlを加え20分攪拌し、ジブチルフタレ-トを16ml加え、溶液を80℃まで昇温し、引き続き四塩化チタンを滴下ロ-トを用いて770ml滴下し、内温を125℃とし2時間接触反応させ、その後、125℃の脱水オクタンを用いて充分洗浄を行い更に四塩化チタンを1220ml加え、内温を125℃とし2時間接触反応させ、その後125℃の脱水オクタンを用いて充分洗浄を行い固体成分[A]を得た後、窒素で置換した内容積1Lの攪拌器付三つ口フラスコに固体成分[A]を48g投入し、更に脱水処理したヘプタンを400ml加え、40℃に加熱しトリエチルアルミニウム2.0mlとイソブチル-n-プロピルジメトキシシランを5.9ml加え、これにプロピレンを常圧で流通させ2時間反応させ、その後、脱水オクタンを用いて充分洗浄を行い触媒成分を得た後、内容積5リットルの攪拌機付きステンレス製オ-トクレ-ブに、ポリプロピレンエチレンランダム共重合体パウダ-を30g投入し、系内を窒素ガスで充分置換した後、トリエチルアルミニウム2.0ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.5ミリモル及び前記固体触媒成分をチタン原子換算で0.01ミリモル投入し、水素1.0kg/cm2 G、及びエチレンとプロピレンを12/1(プロピレン/エチレン)の容積比でフィ-ドし、全圧を15.0kg/cm2 Gとし、70℃にて60分間重合を行い、プロピレン共重合体[A]を製造し、引き続き、系内の反応ガスをパ-ジした後、[η]測定用のサンプリングを行い、水素1.0kg/cm2 G及びエチレンとプロピレンを2/1(プロピレン/エチレン)容積比でフィ-ドし、全圧を15.0kg/cm2 Gとし、70℃にて共重合量比(プロピレン共重合体B 32.3wt%)になるように重合時間を調節してプロピレン共重合体[B]を製造し、プロピレンブロック共重合体を得る、甲1-5-A発明であるプロピレンブロック共重合体の製造方法。」(以下、「甲1-5-B発明」という。)
さらに、甲1-5の段落【0060】の「本発明のプロピレン系共重合体は、他のポリプロピレン系樹脂と配合して使用することができる。・・・また、配合に際しては、必要に応じて従来のポリオレフィンに用いられている公知の酸化防止剤や中和剤、帯電防止剤、耐候剤、アンチブロッキング剤等を添加することができる。」との記載から、「樹脂組成物」についての次の発明が記載されていると認める。
「甲1-5-A発明であるプロピレンブロック共重合体を他のポリプロピレン系樹脂と配合し、必要に応じて従来のポリオレフィンに用いられている公知の酸化防止剤や中和剤、帯電防止剤、耐候剤、アンチブロッキング剤等を添加してなる樹脂組成物。」(以下、「甲1-5-C発明」という。)
そして、甲1-5の段落【0060】の「本発明の成形体は、前記のプロピレン系共重合体を、射出成形や押出成形や熱成形など各種成形法により成形して得られる成形体である。」の記載から、甲1-5には次の発明が記載されていると認める。
「甲1-5-A発明であるプロピレン系ランダム共重合体、又は、甲1-5-C発明である樹脂組成物を射出成形や押出成形や熱成形など各種成形法により成形して得られる成形体。」(以下、「甲1-5-D発明」という。)
エ 甲1-1の記載事項
本件特許の出願前に公知となった甲1-1には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。以下、同様。
a「1-1-1. バイオマスラスチック
・・・
バイオマスより生産されたバイオエタノ-ルから生産されたバイオポリオレフィンと化石燃料から生産されたオイルポリオレフィンは、分子量や微細構造が同じであれば、全く同じ物理化学的性質を持ち、簡単な方法では区別することができない。」(第1ペ-ジ第3行~第2ペ-ジ第3行)
b「2-4-3. バイオポリプロピレンのバイオマス炭素含有率
(イ)チ-ムから平成24年度にバイオポリプロピレンの提供を受けた。この時点では十分なバイオプロピレンが生産できていないため、原料の半分がバイオエタノ-ルで残りはナフサ由来のプロピレンで製造したとのことである。この放射性炭素14濃度測定によるバイオマス度の測定結果を表2-8に示す。同じ設備で製造したナフサ由来のポリプロピレンの提供も受けたので、この測定結果も表中に示した。バイオポリプロピレンは3回測定した結果を示した。バイオマス度は、表2-10に示したバイオエタノ-ルのpMC値で規格化して求めた。ナフサ由来のポリプロピレンでは、pMCはAMS測定の限界値 0.12%未満で測定できなかった。バイオポリプロピレンの測定結果は非常に安定しており、平均値はほぼ50%で、標準偏差は0.08%と非常に小さかった。バイオエタノ-ルを原料とするバイオポリプロピレンについても、AMSによる炭素14濃度測定によりバイオマス由来度が精度良く測定できることを確認した。また、この結果から、バイオポリプロピレンの原料は、正しくバイオエタノ-ル50%にナフサ由来プロピレン50%であり、これ以外のものが混入している可能性がかなり低いことが確認できた。
[図:0001409065000010.jpg]
」(第29ペ-ジ下から12行~第30ペ-ジ)
オ 甲1-2の記載事項
本件特許の出願前に公知となった甲1-2には、次の事項が記載されている。
「【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は、地球環境を温暖化するガス、すなわち温室効果ガスの一つとして知られており、人による産業活動とともに、産業革命以後、急増し続けている。そして、最近の異常気象や海面上昇による自然災害の頻発は、温室効果ガスの増加に原因があると考えられ、人の生存が持続可能な地球環境を維持するために、地球の海や大気に循環する二酸化炭素の総量を現在以上に増やさない理念が共有されている。
【0003】
二酸化炭素の増加の原因として、化石燃料、または化石燃料由来の化合物を出発原料とする製品を燃焼させることにより、地中深くに固定され、大気中には存在しなかった炭素を、二酸化炭素として急激に大気中に放出することになるため、大気中の二酸化炭素が大きく増加し、地球温暖化の原因となる。一方、地球環境内において循環する二酸化炭素を、吸収したり有機物に変化させたりして育つ生物(植物、動物)を、地球の大気で燃やして二酸化炭素を発生しても、地球環境内に存在する二酸化炭素の循環であるため、その二酸化炭素を構成する炭素の総量には変化がない。
【0004】
そこで、サトウキビやトウモロコシ等のバイオマス原料から発酵を経て得られたポリオレフィンを、バイオマス由来のポリオレフィンと呼び、燃焼させても地球環境内に存在する二酸化炭素を増減させない、いわゆるカーボンニュートラル材料として採用することが望まれている。」
カ 甲1-8の記載事項
本件特許の出願前に公知となった甲1-8には、次の事項が記載されている。
「3.サトウキビ由来ポリエチレンの同等性
当社とBraskem社は共同でトリウンフォ工場内の研究開発センターで図2にある試験設備により同等性を評価した。
(1)エチレン
試験設備にバイオマス由来エタノールを導入し、出来上がったエチレンの成分分析を行った結果、従来の石油由来エチレンとの品質同等性を確認した。
(2)ポリエチレン
試験重合機に石油系エチレンとバイオマス系エチレンをそれぞれ投入し、同一条件でポリエチレン重合し、出来上がったポリマーの同等性を検討した。この結果を表1に示す。多少の数値上の差異はあるが、テスト重合機の条件設定に影響されていると考えられ、基本的にはいずれの用途グレードとも石油系、バイオマス系の品質は同等であることが確認できた。」(第63ページ右欄第4~24行)
「
[図:0001409065000011.jpg]
」(第64ページ表1)
キ 甲3-1の記載事項
本件特許の出願前に公知となった甲3-1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
不飽和カルボン酸またはその官能性誘導体、4~10の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸およびそれ官能性誘導体、不飽和カルボン酸のC1~C8アルキルエステルまたは不飽和カルボン酸のグリシジルエステル誘導体または不飽和カルボン酸の金属塩の中から選択される少なくとも一つのグラフトモノマーがグラフトされたプロピレンのポリマーにおいて、
再生可能な原料に由来する炭素の量(この再生可能な原料に由来する炭素の量はASTM規格 D 6866-06で測定する)がプロピレンポリマーの炭素の総重量に対して20重量%以上、好ましくは50重量%以上であることを特徴とするグラフトしたプロピレンのポリマー。」
ク 甲3-2の記載事項
本件特許の出願前に公知となった甲3-2には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
(i)再生可能な天然原料の残渣に含まれるリグノセルロ-ス材料及び/又は他の有機成分のガス化反応によって、一酸化炭素及び水素の混合物(合成ガス)を生成するステップ、
(ii)ステップ(i)で発生した合成ガスからメタノ-ルを形成するステップ
、並びに
(iii)ステップ(ii)で得られたメタノ-ルを、中間体であるジメチルエ-テルから直接又は間接的に1つ又は複数のオレフィンに変換するステップを含む、少なくとも1つの再生可能な天然原料の残渣の使用に基づくことを特徴とする、1つ又は複数のオレフィンの生成方法。
・・・
【請求項6】
前記1つ又は複数のオレフィンが、プロピレン並びに任意選択でエチレン及びブチレンを含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
・・・
【請求項25】
ASTM D6866-06標準に従う試験法によって決定して、再生可能な天然源からの炭素を少なくとも50%含むことを特徴とする、請求項1から24までのいずれか一項に記載の方法によって生成されるオレフィン。
【請求項26】
ASTM D6866-06標準に従う試験法によって決定して、再生可能な天然源からの炭素を少なくとも80%含むことを特徴とする、請求項25に記載のオレフィン。
【請求項27】
ナフサ、天然ガス、石炭、再生プラスチック及び熱電力発生設備からの燃焼ガスなどの、非天然(化石)由来の原材料の供給源を使用することを特徴とする、請求項25又は請求項26に記載のオレフィン。
・・・
【請求項29】
請求項25から28までのいずれか一項に定義のオレフィンに由来することを特徴とするポリマ-。」
「【0008】
一方、再生可能な供給源由来の有機生成物への世界的な関心は、近年、特にプラスチックにおいて非常に高まっている。原料の化石供給源から得られる生成物よりも好ましい、天然産物から得られる生成物の使用は、増大しつつある大気中の二酸化炭素濃度を低減し、それによって温室効果の増大に効果的に対抗する実行可能な形態を構成するものとして、次第に広く受け入れられてきている。天然材料から得られる生成物は、技術標準ASTM D6866-06、「放射性炭素及び同位体比質量分析を使用して天然範囲の材料のバイオ系含有物を決定するための標準試験法(Standard Test Methods for Determining the Biobased Content of Natural Range Materials Using Radiocarbon and Isotope Ratio Mass Spectrometry Analysis)」に記載の方法論に従って、それらの再生可能な炭素含有量に関して認証することができる。」
「【0084】
本発明による方法によって生成したプロピレン、エチレン及びブチレンは、それらの公知の誘導体を得るために、好ましくはポリプロピレン及びそのコポリマ-並びにポリエチレン及びそのコポリマ-を生成するために使用することができ、再生可能な天然源からの原料及び残渣のみを使用する本発明の最も好ましい実施形態が適用される場合、その組成が、ASTM D6866-06標準による試験法で決定して、再生可能な天然源からの炭素を100%含むポリマ-が得られる。他の補完的な一代替は、中でも、例えばナフサ、天然ガス、石炭、再生プラスチック及び熱電力発生設備からの燃焼ガスなどの合成ガス生成のための非天然(化石)由来の他の原料を使用することにあり、但しASTM D6866-06標準による試験法で決定して、最終生成物(オレフィン及びそれらの公知の誘導体、並びにポリエチレン及びそのコポリマ-、ポリプロピレン及びそのコポリマ-、並びにPVCなどのポリマ-)が、再生可能な天然源からの炭素を少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%含む。」
ケ 甲3-3の記載事項
本件特許の出願前に公知となった甲3-3には、次の事項が記載されている。なお、下記には、当審による翻訳を示す。
「[0023] プロピレンの製造方法を開示する。この方法は、メタノ-ルをメタノ-ルからオレフィンヘの合成に供して、主としてエチレン及びプロピレンを含む反応混合物を形成すること、及びエチレンをプロピレンから分離することを含む。エチレンの一部はオレフィンニ量化を受けてブチレンを形成し、 1-ブチレンが形成される場合、それは異性化されて2-ブチレン(シス及びトランス異性体、これら両方ともオレフィンメタセシス反応に関与することができる)を形成することができる。エチレン及び2-ブチレンはオレフィンメタセシスに供されて、プロピレンに富む生成物混合物を形成し得、次いで、このプロピレンは蒸留によって単離され得る。
[0024] 一実施形態では、最初のオレフィン混合物を生成するために使用されるメタノ-ルが、すべて又は部分的に、再生可能な材料から誘導される。例えば、木、草等のようなリグノセルロ-ス材料をガス化して、合成ガスを生成することができる。合成ガスは、一酸化炭素及び水素の比を最適化するために任意に合成ガス浄化及び水-ガスシフト化学の後で、メタノ-ルに変換され得る。
[0025] 本方法によって製造されたプロピレンは必要に応じて、石油系供給源から誘導されたプロピレンとブレンドして、又はそれ単独で使用して、ポリプロピレンを製造することができる。この方法で製造されたポリプロピレンは、炭素14のフットプリントが完全に異なる点で、原油から製造されたポリプロピレンと、容易に区別できる。したがって、この方法から製造される生成物は、従来のポリプロピレンとは異なり、バイオベ-スの材料として識別可能である。
[0026] さらに、プロピレンは、他のモノマ-、例えば、エチレン、ブチレン、スチレン、ブタジェン、アクリロニトリル、アクロレイン、(メチル)アクリレ-ト、(メチル)メタクリレ-ト、マレイン酸、リンゴ酸、無水マレイン酸などと組み合わせて、所望のコポリマ-及びタ-ポリマ-化学ビルディングブロックを製造することができる。」
コ 甲4-1の記載事項
本件特許の出願前に公知となった甲4-1には、次の事項が記載されている。
「【0017】
なお、本発明における複合繊維中の放射性炭素(炭素14)測定によるところのバイオマス由来炭素の存在割合は70%以上であることが好ましい。70%未満であると、従来の石油系資源からなる素材をバイオマス由来の素材に置き換えることで、合成繊維全体としてのカ-ボンニュ-トラルを達成するという本発明の主旨にそぐわないものとなり好ましくない。また、バイオマス由来炭素の存在割合が、70%以上100%未満のポリオレフィンの製造方法としては、バイオマス由来のオレフィンと石油系素材のみからなるオレフィンを重合させることで製造してもよいし、また、バイオマス由来のポリオレフィンチップと石油系素材のみからなるポリオレフィンチップをブレンドすることで製造してもよい。上記のポリオレフィン系ポリマ-には、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤、蛍光増白剤、安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、着色のための各種顔料などが含有されていてもよい。これらの各種の添加剤はポリオレフィンの製造時や複合繊維を紡糸する直前に添加しても良い。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1-3-A発明とを対比する。
甲1-3-A発明のプロピレン単独重合体における「メルトインデックスが0.5~5g/10分」は、甲1-3の段落【0005】より、「このMI(メルトインデックス)は、JIS K-7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した値である。」との記載より、本件特許発明2のプロピレン単独重合体における「(i) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロ-・レ-ト(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下」と重複一致する。
また、甲1-3-A発明のプロピレン単独重合体における「同位体炭素による核磁気共鳴分光(13C-NMR)により求められるペンタッド分率fmmmmが92~98モル%」は、本件特許発明2のプロピレン単独重合体における「(ii) アイソタクチックペンタッド分率が90.0%以上99.9%以下」と重複一致する。
そのため、両者は、以下の
<一致点>
「プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体であり、
該プロピレン単独重体が下記(i)~(ii)を満たす、プロピレン系重合体。
(i) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロー・レート(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下
(ii) アイソタクチックペンタッド分率が90.0%以上99.9%以下」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-3-2>
本件特許発明2は、「プロピレン系重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)。
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下」であるのに対し、甲1-3-A発明がそのようなものでない点
そこで、上記<相違点1-3-2>について検討する。
温室効果ガスである二酸化炭素の排出による地球温暖化を防止するために、ポリプロピレン等のプラスチックにおいて、「化石燃料由来の材料」を、カーボンニュートラルな「バイオマス由来の材料」で代替しようとすることは、本件特許出願前に周知の課題(甲1-2の段落【0004】、甲3-2の段落【0008】等を参照。)であって、プラスチックがポリプロピレンの場合においては、その具体的手段として、モノマーを「化石燃料由来プロピレン」に代えて「バイオマス由来プロピレン」とすること、さらにそれにより製造されたプロピレン系重合体を、石燃料由来ポリプロピレンと区別し、「バイオマス由来の材料」の利用度合いを「バイオマス由来炭素濃度」である「pMC(%)」、あるいは「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度」で規定することは本件特許出願前に周知の技術(甲1-1の記載事項である上記エb、甲3-1の【請求項1】、甲3-2の段落【0084】、甲3-3の段落[0025]、甲4-1の段落【0017】を参照。)である。
そうすると、甲1-3-A発明において、本件特許出願前に上記周知の課題を解決するために、上記周知技術を適用して、プロピレン系重合体の原料に含まれるプロピレンの一部を、バイオマス由来プロピレンで代用することは、当業者が容易に想到し得たことであり、その程度は、地球温暖化の防止効果とコストを勘案して当業者が適宜設定することである。さらに、これにより得られたプロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度を、上記周知の方法である「pMC(%)」で表記することも当業者が適宜行うことにすぎない。
そうであれば、甲1-3-A発明において、「プロピレン系重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)。
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下である。」と特定することは当業者が容易に想到し得たことである。
ついで、本件特許発明2の効果について検討する。
ア)本件特許発明2の効果は、本件特許明細書の段落【0035】より、「本発明のプロピレン系重合体および該重合体の製造方法によれば、ライフサイクルにおける環境負荷(温室効果ガス発生)を低減でき、プロピレン系重合体中のバイオマス由来オレフィン量の調整などのために、バイオマス由来プロピレン系重合体と化石燃料由来プロピレン系重合体とを混合する設備・工程を追加で必要としない。また、本発明のプロピレン系重合体および該重合体の製造方法によれば、所望のバイオマス由来炭素濃度を有し、同等の性能を有するプロピレン系重合体が作製可能となり、市場ニ-ズなどを考慮した、コストを抑えた、かかるプロピレン系重合体の普及を促進できる。」というものである。
このうち、「ライフサイクルにおける環境負荷(温室効果ガス発生)を低減でき」ることは、バイオマス由来プロピレンを用いる本来の目的及び効果であるし、「(化石燃料由来プロピレン系重合体と)同等の性能を有するプロピレン系重合体が作製可能」なことは、上記「エ 甲1-1の記載事項」のa「バイオマスより生産されたバイオエタノールから生産されたバイオポリオレフィンと化石燃料から生産されたオイルポリオレフィンは、分子量や微細構造が同じであれば、全く同じ物理化学的性質を持ち、簡単な方法では区別することができない。」と記載されているように、本件特許出願時の技術常識である。
また、甲1-1の上記記載のように、化石燃料由来プロピレンとバイオマス由来プロピレンを用いて重合する方法は、組成物とは異なり、化石燃料由来プロピレン系重合体に、後からバイオマス由来プロピレン系重合体を混合する設備・工程を追加で必要としないのであるから、本件発明の「混合する設備・工程を追加で必要としない」という効果は、当業者が予測し得ることである。
さらに、複数の成分に原料コストの差がある場合に、高コスト原料の比率を下げることで、原料全体のコストを抑えられることも当業者に自明であり、本件特許発明の「市場ニーズになどを考慮した、コストを抑えた」ポリプロピレン系重合体を提供するという効果も、当業者が予測し得ることである
上記周知の技術から当然に予測し得るものである。
イ)ついで、「プロピレン系重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)。
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下である。」とした数値限定の臨界的意義について検討する。
本件特許明細書の【実施例】について見てみるに、【表1】には、「化石燃料由来プロピレン」と「バイオマス由来プロピレン」との割合(重量%)が、それぞれ100:0の参考例1、90:10の実施例1、70:30の実施例2、35:65の実施例3が示されている。
訂正により、実施例2及び3は、本件特許発明2の範囲外となったが、実施例1ないし実施例3において、環境負荷低減効果は、いずれの実施例も「有り」であり、また、フィルム物性についても、いずれの実施例もほぼ同じ値となり、同等の性質を示すものである。
そうすると、上記数値限定による臨界的意義は認められない。
ウ)よって、本件特許発明2の効果は、甲1-3-A発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別顕著なものではない。
したがって、本件特許発明2は、甲1-3-A発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1-4-A発明とを対比する。
甲1-4-A発明の「プロピレン系ランダム共重合体」は、「プロピレン含量が99.0wt%、エチレン含量が1.0wt%」であるから、本件特許発明4の「プロピレン系重合体が、プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体であり、該ランダム共重合体は、プロピレンから導かれる構成単位90.0重量%以上99.9重量%以下と、オレフィン(b)から導かれる構成単位0.1重量%以上10.0重量%以下とを含」む事項を充足する。
また、甲1-4-A発明の「プロピレン系ランダム共重合体」は、「メルトインデックス 7.0g/10min(JIS K7210に従い、温度230 ℃、荷重2160gで測定した。)」であるから、本件特許発明4のランダム共重合体の「(iii) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロ-・レ-ト(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下」の範囲と重複一致する。
そして、甲1-4-A発明の「プロピレン系ランダム共重合体」は、「融点155.5℃」であるから、本件特許発明4のランダム共重合体の「(iv) 融点が100℃以上160℃以下」の範囲と重複一致する。
そのため、両者は、以下の
<一致点>
「プロピレン系重合体が、プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体であり、
該ランダム共重合体は、プロピレンから導かれる構成単位90.0重量%以上99.9重量%以下と、オレフィン(b)から導かれる構成単位0.1重量%以上10.0重量%以下とを含み、
かつ下記(iii)~(iv)を満たす、プロピレン系重合体。
(iii) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロー・レート(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下
(iv) 融点が100℃以上160℃以下」
で一致するのに対し、以下の相違点で相違する。
<相違点1-4-4>
本件特許発明4は、「ランダム共重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)、
(II)該ランダム共重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下」であるのに対し、甲1-4-A発明がそのようなものであるか不明である点
そこで、上記<相違点1-4-4>について検討する。
上記<相違点1-4-4>は、上記<相違点1-3-2>と実質同じであるから、上記アで述べたのと同様、甲1-4-A発明において、本件特許出願前に上記周知の課題を解決するために、上記周知技術を適用して、上記<相違点1-4-4>に係る事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件特許発明4は、甲1-4-A発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1-5-A発明とを対比する。
甲1-5-A発明の「プロピレンブロック共重合体」の「プロピレン共重合体A」は、「エチレン含有量4wt%、プロピレン含有量96wt%」であり、「極限粘度[η]1.96dl/g」であり、ポリエチレン、ポリプロピレンは従来から「結晶性」樹脂としてよく知られているものであることから、本件特許発明6の「プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなり、下記(v)
(v) 極限粘度[η]が0.8(dl/g)以上3.0(dl/g)
を満たす結晶性プロピレン系重合体成分(c)」に相当する。
また、甲1-5-A発明の「プロピレンブロック共重合体」における「プロピレン共重合体B」は、「エチレン含有量23.5wt%、プロピレン含有量76.5wt%」であり、「極限粘度[η]2.09dl/g」であることから、本件特許発明6の「プロピレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%以下とエチレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%とを含み、下記(vi)
(vi) 極限粘度[η]が1.0(dl/g)以上10.0(dl/g)を満たすプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)」に相当する。
そして、甲1-5-A発明の「プロピレンブロック共重合体」は、「プロピレン共重合体A 67.7wt%」と「プロピレン共重合体B32.3wt%」からなるものであるから、本件特許発明6の「結晶性プロピレン系重合体成分(c)55重量%以上95重量%」と「プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)5重量%以上45重量%以下とを含有する」事項も充足する。
そのため、両者は、以下の
<一致点>
「プロピレン系重合体が、プロピレン・エチレンブロック共重合体であり、
該プロピレン・エチレンブロック共重合体が、
プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなり、下記(v)
(v) 極限粘度[η]が0.8(dl/g)以上3.0(dl/g)を満たす結晶性プロピレン系重合体成分(c)55重量%以上95重量%と、
プロピレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%以下とエチレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%とを含み、下記(vi)
(vi) 極限粘度[η]が1.0(dl/g)以上10.0(dl/g)を満たすプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)5重量%以上45重量%以下とを含有する、プロピレン系重合体。」
で一致するのに対し、以下の相違点で相違する。
<相違点1-5-6>
本件特許発明6は、「プロピレン系重合体の原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)。
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.1pMC(%)以下」であるのに対し、甲1-5-A発明がそのようなものであるか不明である点
そこで、上記<相違点1-5-6>について検討する。
上記<相違点1-5-6>は、上記<相違点1-3-2>と実質同じであるから、上記アで述べたのと同様、甲1-5-A発明において、本件特許出願前に上記周知の課題を解決するために、上記周知技術を適用して、上記<相違点1-5-6>に係る事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件特許発明6は、甲1-5-A発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 本件特許発明3、5及び7について
本件特許発明3、5及び7と、甲1-3-A発明、甲1-4-A発明及び甲1-5-A発明とをそれぞれ併せて対比すると、両者は、上記<相違点1-3-2>ないし<相違点1-5-2>に加え、下記相違点で相違する。
<相違点1-3-3>
本件特許発明3は、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上10%以下」であるのに対し、甲1-3-A発明はそのようなものであるか不明である点
<相違点1-4-5>
本件特許発明5は、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上10%以下」であるのに対し、甲1-4-A発明はそのようなものであるか不明である点
<相違点1-5-7>
本件特許発明7は、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%~10%」であるのに対し、甲1-5-A発明はそのようなものであるか不明である点
そこで、上記<相違点1-3-3>ないし<相違点1-5-7>を併せて検討する。
上記アで示したように、モノマーをである「化石燃料由来のプロピレン」に代えて「バイオマス由来プロピレン」とすを用いること、さらにそれにより製造されたプロピレン系重合体が「バイオマス由来の材料」を利用したことを表現するために、化石燃料由来ポリプロピレンと区別し、「バイオマス由来の材料」の利用度合いを「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度」で規定することは本件特許出願前に周知の技術(甲1-1の記載事項である上記エb、甲3-1の【請求項1】、甲3-2の段落【0084】、甲3-3の段落[0025]、甲4-1の段落【0017】を参照。)であることから、各甲1-3-A発明ないし甲1-5-A発明において、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上10%以下」とすることは当業者が容易に想到し得たことであり、当該数値限定による臨界的意義は認められない。
よって、本件特許発明3、5及び7は、各甲1-3-A発明、甲1-4-A発明、甲1-5-A発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
オ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲1-3-B発明を対比する。
本件特許発明9は、「プロピレン系重合体が・・・プロピレン単独重合体・・・の製造方法」であり、「プロピレン単独重合体」について本件特許発明2と同じ特定を有するものである。そして、甲1-3-B発明の「プロピレン単独重合体の製造方法」は、甲1-3-A発明の「プロピレン単独重合体」を引用するものであるため、上記アの本件特許発明2と甲1-3-A発明で対比し相当した「プロピレン単独重合体」に関する事項は、本件特許発明9と甲1-3-B発明の対比においても同様に当てはめることができる。
また、甲1-3-B発明は、プロピレンを含む原料を重合器に供給し、重合触媒により重合する工程を含むものである。
そうすると、両者は、以下の
<一致点>
「プロピレン系重合体が下記(i)~(ii)を満たすプロピレン単独重合体であり;
(i) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロー・レート(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下
(ii) アイソタクチックペンタッド分率が90.0%以上99.9%以下
原料であるプロピレンを重合器に供給し、重合触媒により重合する工程を含む、
プロピレン系重合体の製造方法。」
で一致するのに対し、以下の相違点で相違する。
<相違点1-3-9>
本件特許発明9は、「該原料が、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と、化石燃料由来プロピレン90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)、
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下」であるのに対し、甲1-3-B発明はそのようなものであるか不明である点
そこで、上記<相違点1-3-9>について検討する。
上記<相違点1-3-9>は、上記アの<相違点1-3-2>と実質同じである。
そうすると、上記アで述べたのと同様の理由により、上記<相違点1-3-9>に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件特許発明9の効果は、本件特許発明2の効果と同じであるから、甲1-3-B発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。
よって、本件特許発明9は、甲1-3-B発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
カ 本件特許発明10について
本件特許発明10と甲1-4-B発明を対比する。
本件特許発明10は、「プロピレン系重合体が・・・プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体・・・の製造方法」であり、「ランダム共重合体」について本件特許発明4と同じ特定を有するものである。そして、甲1-4-B発明の「プロピレン系ランダム共重合体の製造方法」は、甲1-4-A発明の「プロピレン系ランダム共重合体」を引用するものであるため、上記イの本件特許発明4と甲1-4-A発明で対比し相当した「ランダム共重合体」に関する事項は、本件特許発明10と甲1-4-B発明の対比においても同様に当てはめることができる。
そして、甲1-4-B発明は、プロピレンを含む原料を重合器に供給し、重合触媒により重合する工程を含むものである。
そうすると、両者は、以下の
<一致点>
「プロピレン系重合体が、下記(iii)~(iv)を満たす、プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体であり、
(iii) 230℃、2.16kg荷重におけるメルト・フロー・レート(MFR)が0.01g/10分以上2,000g/10分以下
(iv) 融点が100℃以上160℃以下重合器に供給される原料が、プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とを含む、
プロピレン系重合体の製造方法。」
で一致するのに対し、以下の相違点で相違する。
<相違点1-4-10>
本件特許発明10は、「該原料に含まれるプロピレンが、(I-1)バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と、化石燃料由来プロピレン90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物であり(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)、
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下」であるのに対し、甲1-4-B発明はそのようなものであるか不明である点
そこで、上記<相違点1-4-10>について検討する。
上記<相違点1-4-10>は、上記アの<相違点1-3-2>と実質同じである。
そうすると、上記アで述べたのと同様の理由により、上記<相違点1-4-10>に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件特許発明10の効果は、本件特許発明2の効果と同じであるから、甲1-4-B発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。
よって、本件特許発明10は、甲1-4-B発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
キ 本件特許発明11について
本件特許発明11と甲1-4-B発明を対比する。
甲1-4-B発明の「プロピレン系ランダム共重合体」は、「プロピレン含量が99.0wt%、エチレン含量が1.0wt%」であるから、本件特許発明11のランダム共重合体が「プロピレンから導かれる構成単位90.0重量%以上99.9重量%以下と、少なくともオレフィン(b)から導かれる構成単位0.1重量%以上10.0重量%以下とを含」む事項を充足する。
よって、上記相違点以外に新たな相違点はない。
そうすると、上記アで述べたのと同様の理由により、本件特許発明11は、甲1-4-B発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ク 本件特許発明13について
本件特許発明13と甲1-5-B発明とを対比する。
本件特許発明13は、「プロピレン系重合体が・・・プロピレン・エチレンランダム共重合体・・・の製造方法」であり、「プロピレン・エチレンランダム共重合体」について本件特許発明6と同じ特定を有するものである。そして、甲1-5-B発明の「プロピレン・エチレンランダム共重合体の製造方法」は、甲1-5-A発明の「プロピレン・エチレンランダム共重合体」を引用するものであるため、上記ウの本件特許発明6と甲1-5-A発明で対比し相当した「プロピレン・エチレンランダム共重合体」に関する事項は、本件特許発明13と甲1-5-B発明の対比においても同様に当てはめることができる。
また、甲1-5-B発明の「トリエチルアルミニウム2.0ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.5ミリモル及び前記固体触媒成分をチタン原子換算で0.01ミリモル投入し、水素1.0kg/cm2 G、及びエチレンとプロピレンを12/1(プロピレン/エチレン)の容積比でフィ-ドし、全圧を15.0kg/cm2 Gとし、70℃にて60分間重合を行い、プロピレン共重合体[A]を製造」する工程は、本件特許発明13の「プロピレン、またはプロピレンおよびエチレンを含む原料(1)を重合器に供給して、重合触媒により重合して、プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなる結晶性プロピレン系重合体成分(c)を作製する工程(α)」に相当する。
そして、甲1-5-B発明の「引き続き、系内の反応ガスをパ-ジした後、[η]測定用のサンプリングを行い、水素1.0kg/cm2 G及びエチレンとプロピレンを2/1(プロピレン/エチレン)容積比でフィ-ドし、全圧を15.0kg/cm2 Gとし、70℃にて共重合量比(プロピレン共重合体B 32.3wt%)になるように重合時間を調節してプロピレン共重合体[B]を製造」する工程は、本件特許発明13の「プロピレンおよびエチレンを含む原料(2)を重合器に供給して、重合触媒により重合して、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)を作製する工程(β)」に相当する。
そうすると、両者は、以下の
<一致点>
「プロピレン系重合体が、プロピレン・エチレンブロック共重合体であり、該プロピレン・エチレンブロック共重合体が、
プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなり、下記(v)
(v) 極限粘度[η]が0.8(dl/g)以上3.0(dl/g)
を満たす結用性プロピレン系重合体成分(c)55重量%以上95重量%と、プロピレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%以下とエチレンから導かれる構成単位20重量%以上80重量%とを含み、下記(vi)
(vi) 極限粘度[η]が1.0(dl/g)以上10.0(dl/g)を満たすプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)5重量%以上45重量%以下とを含有し、
プロピレン、またはプロピレンおよびエチレンを含む原料(1)を重合器に供給して、重合触媒により重合して、
プロピレン単独重合体またはプロピレンから導かれる構成単位95重量%以上100重量%未満とエチレンから導かれる構成単位5重量%以下とを含む結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体からなる結晶性プロピレン系重合体成分(c)を作製する工程(α)、および
プロピレンおよびエチレンを含む原料(2)を重合器に供給して、重合触媒により重合して、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(d)を作製する工程(β)を含む、
プロピレン系重合体の製造方法。」
で一致するのに対し、以下の相違点で相違する。
<相違点1-5-13>
本件特許発明13は、「重合器に供給される原料(1)および(2)に含まれるプロピレンが、バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレン90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンとの合計を100重量%とする)であり、
(II)プロピレン系重合体のバイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.1pMC(%)以下である」のに対し、甲1-5-B発明はそのようなものであるか不明である点
そこで、上記<相違点1-5-13>について検討する。
上記<相違点1-5-13>は、上記アの<相違点1-3-2>と実質同じである。
そうすると、上記アで述べたのと同様の理由により、上記<相違点1-5-13>に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
また、本件特許発明13の効果は、本件特許発明2の効果と同じであるから、甲1-5-B発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。
よって、本件特許発明13は、甲1-5-B発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ケ 本件特許発明14について
本件特許発明14と甲1-3-C発明とを対比すると、本件特許発明14は、本願発明2または3を引用し、甲1-3-C発明は甲1-3-A発明を引用するものであるから、両者は上記ア、エで検討したのと同様、「プロピレン単独重合体を含む樹脂組成物」において一致し、上記<相違点1-3-2>及び<相違点1-3-3>でのみ相違する。
そうすると、上記ア及びエで述べたのと同様の理由により、本件特許発明14は、甲1-3-C発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
コ 本件特許発明15について
本件特許発明15と甲1-4-C発明とを対比すると、本件特許発明15は、本願発明4又は5を引用し、甲1-4-C発明は甲1-4-A発明を引用するものであるから、両者は上記イ、エで検討したのと同様、「プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体を含む樹脂組成物」において一致し、上記<相違点1-4-4>及び<相違点1-4-5>でのみ相違する。
そうすると、上記イ及びエで述べたのと同様の理由により、本件特許発明15は、甲1-4-C発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
サ 本件特許発明16について
本件特許発明16と甲1-5-C発明とを対比すると、本件特許発明16は、本願発明6または7を引用し、甲1-5-C発明は甲1-5-A発明を引用するものであるから、両者は上記ウ、エで検討したのと同様、「プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む樹脂組成物」において一致し、上記<相違点1-5-6>及び<相違点1-5-7>でのみ相違する。
そうすると、上記ウ及びエで述べたのと同様の理由により、本件特許発明16は、甲1-5-C発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
シ 本件特許発明17について
本件特許発明17と甲1-3-D発明とを対比すると、本件特許発明17は、本願発明2または3を引用し、甲1-3-D発明は甲1-3-A発明を引用するものであるから、両者は上記ア、エで検討したのと同様、「プロピレン単独重合体からなる成形体」において一致し、上記<相違点1-3-2>及び<相違点1-3-3>でのみ相違する。
そうすると、上記ア及びエで述べたのと同様の理由により、本件特許発明17は、甲1-3-D発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ス 本件特許発明18について
本件特許発明18と甲1-4-D発明とを対比すると、本件特許発明18は、本願発明4または5を引用し、甲1-4-D発明は甲1-4-A発明を引用するものであるから、両者は上記イ、エで検討したのと同様、両者は「プロピレンとエチレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくと
も1種のオレフィン(b)とのランダム共重合体からなる成形体」において一致し、上記<相違点1-4-4>及び<相違点1-4-5>でのみ相違する。
そうすると、上記イ及びエで述べたのと同様の理由により、本件特許発明18は、甲1-4-D発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
セ 本件特許発明19について
本件特許発明19と甲1-5-D発明とを対比すると、本件特許発明19は、本願発明6または7を引用し、甲1-5-D発明は甲1-5-A発明を引用するものであるから、両者は上記ウ、エで検討したのと同様、両者は「プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる成形体」である限りにおいて一致し、上記<相違点1-5-6>及び<相違点1-5-7>でのみ相違する。
そうすると、上記ウ及びエで述べたのと同様の理由により、本件特許発明19は、甲1-5-D発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ソ 本件特許発明20について
本件特許発明20と各甲1-3-D発明ないし甲1-5-D発明とを対比すると、本件特許発明20は、本願発明14ないし16を引用し、甲1-3-D発明ないし甲1-5-D発明は甲1-3-A発明ないし甲1-5-A発明を引用するものであるから、両者は上記アないしサで検討したのと同様、両者は「樹脂組成物からなる成形体」において一致し、上記<相違点1-3-2>、<相違点1-3-3>、<相違点1-4-4>、<相違点1-4-5>、<相違点1-5-6>及び<相違点1-5-7>でのみ相違する。
そうすると、上記アないしサで述べたのと同様の理由により、本件特許発明20は、各甲1-3-D発明ないし甲1-5-D発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)特許権者の主張の検討
特許権者は、令和5年7月11日に提出した意見書において、「市場ニーズを考慮し、コストを抑えた所望のバイオマス由来炭素濃度を有するバイオマス由来ポリプロピレン系重合体を得るためには、どのような条件が必要であるのかに関しては、甲1-1、甲1-2、甲3-1、甲3-2、甲3-3、甲4-1には記載も示唆もなく・・・したがって、上述した甲1-1、甲1-2、甲3-1、甲3-2、甲3-3、甲4-1を考慮しても、プロピレン系重合体の原料であるプロピレンを、「バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」とすることによって、この原料プロピレンを用いて得られたプロピレン系重合体において、「バイオマス由来炭素濃度が0.2pMC(%)以上10.0pMC(%)以下」であるようにすること、また好適には、「ASTM D 6866に準拠したバイオマス度が1%以上10%以下」であるようにすること、は周知であるとまではいえない。
このようなことが周知ではない以上、甲1-3、甲1-4、甲1-5に対して本件特許発明が進歩性を有することは明らかである。」と主張している。
そこで、上記特許権者の主張について検討する。
「バイオマス由来プロピレン0.2重量%以上10重量%以下と化石燃料由来プロピレンが90重量%以上99.8重量%以下とを含むプロピレン混合物(バイオマス由来プロピレンと化石燃料由来プロピレンの合計を100重量%とする)」とする具体的な数値については申立書に添付されたいずれの証拠にも記載されていないものの、上記(2)アで説示したように、「化石燃料由来のプロピレン」から「バイオマス由来プロピレン」への代替割合は、「環境温暖化の防止効果」と「コスト」を勘案して当業者が適宜設定し得ることであって、「コスト」を抑えたいのであれば、「コスト」の高いバイオマス由来プロピレンへの代替割合を10重量%以下とすることは当業者が容易に想到し得たものである。そして、当該数値に「コスト」を抑えられること以外の技術的な臨界的意義を見いだせない以上、本件特許発明は容易に想到し得たものといわざるを得ない。
また、本件特許明細書を参酌しても、「市場ニーズを考慮し、コストを抑えた所望のバイオマス由来炭素濃度を有するバイオマス由来ポリプロピレン系重合体を得るため」に特別な条件が必要であることを読み取ることはできない。
よって、特許権者の上記主張は首肯できない。
(4)まとめ
以上検討したように、本件特許発明2ないし7、9ないし11及び13ないし20は、各甲1-3、甲1-4又は甲1-5に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
上記第2のとおり、本件特許の請求項1、8及び12は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項1、8及び12に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
また、上記第5のとおり、本件特許の請求項2ないし7、9ないし11及び13ないし20に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700683