特許異議申立
2022-700657
熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法
- 審判番号
- 2022-700657
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-151082
- 登録番号
- 6999003
- 請求日
- 2022年07月15日
- 審決日
- 2023年03月29日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デクセリアルズ株式会社
- 【権利者代理人】野口 信博
- 【権利者代理人】穂谷野 聡
- 【異議申立人】吉澤 悦子
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 小田 浩
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6999003号発明「熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6999003号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11、15〕、〔12-14〕について訂正することを認める。
特許第6999003号の請求項1-15に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6999003号の請求項1~15に係る特許についての出願は、令和2年9月9日に出願され、令和3年12月23日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月18日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年 7月15日 :特許異議申立人吉澤悦子(以下、「申立人吉澤」という。)による特許異議の申立て
令和 4年10月12日付け:取消理由通知
令和 4年12月12日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
令和 5年 1月 4日付けで、本件訂正請求に対して、申立人吉澤に、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、申立人吉澤からは何らの応答もない。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)一群の請求項1~11、15に係る訂正
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「配向した熱伝導性シート」とあるのを、「配向し、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シート」(下線は、訂正箇所。以下同じ。)と訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2~11、15も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11に「上記第1の熱伝導性フィラーの長軸の配向方向における実効熱伝導率が、上記第1の熱伝導性フィラーの長軸の非配向方向における実効熱伝導率」とあるのを、「当該熱伝導性シートの厚み方向における実効熱伝導率が、上記厚み方向に直交する方向における実効熱伝導率」と訂正する(請求項11の記載を引用する請求項15も同様に訂正する。)。
訂正事項1及び訂正事項2は、一群の請求項〔1~11、15〕に対して請求されたものである。
(2)一群の請求項12~14に係る訂正
ア 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項12に「アスペクト比が10以上50以下であり上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向している、熱伝導性シートの製造方法」とあるのを、「アスペクト比が10以上50以下であり、上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向し、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シートの製造方法」と訂正する(請求項12の記載を直接又は間接的に引用する請求項13、14も同様に訂正する。)
訂正事項3は、一群の請求項〔12~14〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、熱伝導性シートについて、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1の「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」ことは、本件の特許明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0050】~【0053】及び図1に基づくものである。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項1については特許異議の申立てがされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項11には、「上記第1の熱伝導性フィラーの長軸の配向方向における実効熱伝導率が、上記第1の熱伝導性フィラーの長軸の非配向方向における実効熱伝導率」と記載されているところ、特許明細書の段落【0035】の「熱伝導性シート1は、第1の熱伝導性フィラー3の配向方向(例えば、熱伝導性シート1の厚み方向B)における実効熱伝導率が、第1の熱伝導性フィラー3の非配向方向(例えば、熱伝導性シート1の面方向A)における実効熱伝導率の1.8倍以上であってもよい。」には、「熱伝導性シート」の実効熱伝導率について記載されており、訂正前の請求項11の上記記載は明確ではなく、加えて、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえなかったものを、訂正前の当該記載を「当該熱伝導性シートの厚み方向における実効熱伝導率が、上記厚み方向に直交する方向における実効熱伝導率」に訂正し、発明の詳細な説明の記載との関係における不合理を生じさせないようにその記載を正して明確な記載とするものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、特許明細書の段落【0035】及び図1に基づいて導き出される構成であって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項5については特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3のうち、訂正前の請求項12に「50以下であり上記熱伝導性シートは」との記載を「50以下であり、上記熱伝導性シートは」とする訂正事項は、読点を追加して明確化するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3のうち、訂正前の請求項12に「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」との記載を追加する訂正事項は、熱伝導性シートについて、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」と限定する訂正であり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3の「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」ことは、特許明細書の段落【0050】~【0053】及び図1に基づくものである。
よって、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、訂正前の請求項12の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項12については特許異議の申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11、15〕、〔12~14〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~15に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明15」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
バインダ樹脂と、鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、
上記第1の熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上50以下であり、
当該熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向し、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シート。
【請求項2】
上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素を含有する、請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
上記第2の熱伝導性フィラーが、窒化アルミニウム粒子と、アルミナ粒子とを含有する、請求項2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】
当該熱伝導性シートの厚み方向の実効熱伝導率が7W/m・Kを超える、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
上記第1の熱伝導性フィラーの平均粒径が10~100μmである、請求項2~4のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%である、請求項2~5のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項7】
上記アルミナ粒子の平均粒径が1~3μmである、請求項3に記載の熱伝導性シート。
【請求項8】
上記アルミナ粒子の含有量が10~25体積%である、請求項3又は7に記載の熱伝導性シート。
【請求項9】
上記窒化アルミニウム粒子の平均粒径が1~5μmである、請求項3、7、8のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項10】
上記窒化アルミニウム粒子の含有量の合計が10~25体積%である、請求項3、7~9のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項11】
当該熱伝導性シートの厚み方向における実効熱伝導率が、上記厚み方向に直交する方向における実効熱伝導率の1.8倍以上である、請求項2~10のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項12】
鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして、熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
上記第1の熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上50以下であり、
上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向し、
厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シートの製造方法。
【請求項13】
上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、押出成形法又は金型成形法により成形体ブロックを形成する、請求項12に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項14】
上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、押出成形法により成形体ブロックを形成し、
上記工程Cでは、上記成形体ブロックをシート状にスライスする際のスライス方向が、上記押出成形法の押出し方向に対して60~120度とする、請求項12又は13に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項15】
発熱体と、
放熱体と、
発熱体と放熱体との間に配置された請求項1~11のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。」
第4 甲号証の記載と甲号証に記載された発明
1 甲第1号証の記載、甲1物発明、甲1方法発明
(1)甲第1号証の記載
取消理由通知において引用した甲第1号証(申立人吉澤提出の甲第1号証:国際公開第2020/105601号)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付した。以下、同じ。)
「[0012] 以下、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートについて詳しく説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の熱伝導性シートを示す。第1の実施形態に係る熱伝導性シート10は、それぞれがシリコーン樹脂11と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層13を備える。複数の単位層13は、面方向に沿う一方向(すなわち、厚さ方向zに垂直な一方向であり、「積層方向x」ともいう)に沿って積層されており、隣接する単位層13同士が互いに接着されている。各単位層13において、シリコーン樹脂11は、熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであり、シリコーン樹脂11には、熱伝導性充填材が分散するように配合される。
[0013] 熱伝導性シート10は、熱伝導性充填材として、異方性充填材14と、非異方性充填材15とを含有する。異方性充填材14は、シート10の厚さ方向zに配向している。すなわち、各単位層13の面方向の一方向に沿って配向している。熱伝導性シート10は、シートの厚さ方向zに配向する異方性充填材14を含有することで、厚さ方向zの熱伝導性が向上する。また、熱伝導性シート10は、さらに非異方性充填材15を含有することでも熱伝導性がさらに向上する。」
「[0019] (異方性充填材)
異方性充填材14は、形状に異方性を有する充填材であり、配向が可能な充填材である。異方性充填材14としては、繊維状材料、鱗片状材料などが挙げられる。異方性充填材14は、一般的にアスペクト比が高いものであり、アスペクト比が2を越えるものであり、5以上であることがより好ましい。アスペクト比を2より大きくすることで、異方性充填材14を厚さ方向zに配向させやすくなり、熱伝導性シート10の熱伝導性を高めやすい。
[0020] また、アスペクト比の上限は、特に限定されないが、実用的には100である。
なお、アスペクト比とは、異方性充填材14の短軸方向の長さに対する長軸方向の長さの比であり、繊維状材料においては、繊維長/繊維の直径を意味し、鱗片状材料においては鱗片状材料の長軸方向の長さ/厚さを意味する。
・・・
[0023] また、異方性充填材14が鱗片状材料である場合、その平均粒径は、10~400μmが好ましく、15~300μmがより好ましい。・・・
・・・
[0025] 異方性充填材14としては、具体的には、炭素繊維、鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられる。これらの中では、炭素系材料は、比重が小さく、シリコーン樹脂11中への分散性が良好なため好ましく、中でも熱伝導率が高い、黒鉛化炭素材料がより好ましい。また、窒化ホウ素、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維は絶縁性を有する観点から好ましく、中でも窒化ホウ素がより好しい。窒化ホウ素は、特に限定されないが、鱗片状材料として使用されることが好ましい。鱗片状の窒化ホウ素は、凝集されてもよいし、凝集されていなくてもよいが、一部又は全部が凝集されていないことが好ましい。
・・・
[0032] 異方性充填材14は、各単位層において熱伝導性シートの厚さ方向zに配向している。異方性充填材14の厚さ方向zの配向をより具体的に説明すると、熱伝導性充填材14が繊維状充填材であるときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して繊維状充填材の長軸のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
また、異方性充填材14が鱗片状充填材であるときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して鱗片状状充填材の鱗片面のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超えるものとすることができる。換言すれば、熱伝導性シートのシート面(x-y面)に対して、鱗片面の法線方向のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
なお、異方性充填材14の配向方向は、熱伝導率を高める観点からは厚さ方向zに対する長軸のなす角度または鱗片面のなす角度を0°以上5°未満とすることが好ましい。一方、熱伝導性シート10を圧縮したときの荷重を低くすることができるという点で、5°以上30°未満の範囲で傾斜させることもできる。なお、これら角度は、一定数(例えば、任意の異方性充填材14を50個)の異方性充填材14の配向角度の平均値である。
さらに異方性充填材14は、熱伝導性充填材14が繊維状または鱗片状のいずれでもないときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して異方性充填材14の長軸のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超えるものとする。
[0033] また、異方性充填材14が鱗片状材料である場合、異方性充填材14は、さらに、鱗片面の法線方向が所定方向を向くことが好ましく、具体的には、複数の単位層13の積層方向xに向くことが好ましい。このように法線方向が積層方向xに向くことで、熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導性が向上する。また、熱伝導性シート10の面方向に沿い、かつ積層方向xに直交する方向の熱伝導性も向上する。
なお、鱗片面の法線方向が積層方向xに向くとは、積層方向xに対して法線方向のなす角度が30°未満の炭素繊維粉末の数の割合が50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
なお、異方性充填材14は、鱗片状材料である場合には、後述する製造方法で述べるように、剪断力を付与しながらシート状に成形することで、鱗片面の法線方向が積層方向xに向くことになる。」
「[0034] <非異方性充填材>
非異方性充填材15は、異方性充填材14とは別に熱伝導性シート10に含有される熱伝導性充填材であり、異方性充填材14とともに熱伝導性シート10に熱伝導性を付与する材料である。本実施形態では、非異方性充填材15が含有されることで、配向した異方性充填材14の間の隙間に充填材が介在し、熱伝導率の高い熱伝導性シート10が得られる。
・・・
[0037] 非異方性充填材15の具体例は、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。また、非異方性充填材14の形状は、球状、不定形の粉末などが挙げられる。
非異方性充填材15において、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなど、金属酸化物としては、アルミナに代表される酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛など、金属窒化物としては窒化アルミニウムなどを例示することができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、炭素材料としては球状黒鉛などが挙げられる。金属以外の酸化物、窒化物、炭化物としては、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素などが挙げられる。
これらの中でも、酸化アルミニウムやアルミニウムは、熱伝導率が高く、球状のものが入手しやすい点で好ましく、水酸化アルミニウムは入手し易く熱伝導性シートの難燃性を高めることができる点で好ましい。
絶縁性を有する非異方性充填材15としては、上記した中でも、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物が挙げられるが、特に酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
非異方性充填材15は、上記したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」
「[0046] <熱伝導性シートの製造方法>
次に、上記した第1の実施形態に係る熱伝導性シートの製造方法の一例について図2を参照しながら説明する。本製造方法は、それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する1次シート準備工程と、1次シートにVUVを照射するVUV照射工程と、VUVを照射した1次シートを積層して積層ブロックを得る積層工程と、積層ブロックを切断して熱伝導性シートを得る切断工程とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
[0047] (1次シート準備工程)
1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製する。液状組成物は、通常スラリーとなる。液状組成物には必要に応じて適宜添加成分がさらに混合されてもよい。ここで、液状組成物を構成する各成分の混合は、例えば公知のニーダー、混練ロール、ミキサーなどを使用するとよい。」
「[請求項9] それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する工程と、
前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、
前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、
前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断して熱伝導性シートを得る工程と
を備える熱伝導性シートの製造方法。
[請求項10] 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向され、
前記積層ブロックは、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断される
請求項9に記載の熱伝導性シートの製造方法。」
図1、2は、以下のとおりのものである。
[図:0001399367000001.jpg]
[図:0001399367000002.jpg]
(2)甲第1号証に記載の技術事項
甲第1号証の記載からみて、甲第1号証には、以下の技術事項が記載されている。
ア それぞれがシリコーン樹脂11と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層13を備える熱伝導性シート10であって、複数の単位層13は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、隣接する単位層13同士が互いに接着されており、シリコーン樹脂11には、熱伝導性充填材が分散するように配合され、熱伝導性シート10は、熱伝導性充填材として、異方性充填材14と、非異方性充填材15とを含有し、異方性充填材14は、シート10の厚さ方向zに配向している、熱伝導性シート([0012]、[0013]、[0032]、[図1])。
イ 異方性充填材14として、鱗片状材料が挙げられ、アスペクト比が2を越えるものであり、以上であることがより好ましく、アスペクト比の上限は、特に限定されないが、実用的には100であること([0019]、[0020])。
ウ 異方性充填材14としては、鱗片状材料として使用される窒化ホウ素が好ましいこと([0025])。
エ 非異方性充填材15として、アルミナ、窒化アルミニウムが挙げられ、非異方性充填材の形状として、球状が挙げられ、非異方性充填材15は、2種以上を併用してもよいこと([0037])。
オ それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含み、前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程と、前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断して熱伝導性シートを得る工程とを備える熱伝導性シートの製造方法([0046]、[請求項9]、[請求項10]、[図2])。
カ 1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製し、シリコーン樹脂11には、熱伝導性充填材が分散するように配合されること([0012]、[0047])。
(3)上記(2)ア~エから、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1物発明」という。)が記載されている。
「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備える熱伝導性シートであって、
複数の単位層は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、隣接する単位層同士が互いに接着されており、
シリコーン樹脂には、熱伝導性充填材が分散するように配合され、
熱伝導性シートは、熱伝導性充填材として、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有し、異方性充填材は、シートの厚さ方向zに配向しており、
異方性充填材は、鱗片状材料であり、アスペクト比が2を越えるものであり、5以上であることがより好ましく、アスペクト比の上限は、特に限定されないが、実用的には100であり、
異方性充填材としては、鱗片状材料として使用される窒化ホウ素が好ましく、
非異方性充填材として、アルミナ、窒化アルミニウムが挙げられ、非異方性充填材の形状として、球状が挙げられ、非異方性充填材は、2種以上を併用してもよい、熱伝導性シート。」
(4)上記(2)イ~カから、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されている。
「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含み、前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程と、
前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、
前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、
前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断して熱伝導性シートを得る工程と
を備える、熱伝導性シートの製造方法であって、
1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材、非異方性充填材)とを混合して液状組成物を調製し、シリコーン樹脂には、熱伝導性充填材が分散するように配合され、
異方性充填材は、鱗片状材料であり、アスペクト比が2を越えるものであり、以上であることがより好ましく、アスペクト比の上限は、特に限定されないが、実用的には100であり、
異方性充填材としては、鱗片状材料として使用される窒化ホウ素が好ましく、
非異方性充填材として、アルミナ、窒化アルミニウムが挙げられ、非異方性充填材の形状として、球状が挙げられ、非異方性充填材は、2種以上を併用してもよい、熱伝導性シートの製造方法。」
2 甲第2号証の記載、甲2物発明、甲2方法発明
甲第2号証(申立人吉澤提出の甲第2号証:再公表特許第2017/135237号)には、以下の事項が記載されている。
(1)甲第2号証の記載
「【請求項1】
樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含み、
前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており、
前記樹脂がシリコーン樹脂、アクリルゴム又はフッ素ゴムであり、
前記第二熱伝導性フィラーが5W/mK超の熱伝導率を有すること、
を特徴とする熱伝導性樹脂成形品。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載されている熱伝導性樹脂シートにおいては、その製造工程に電圧の印加や静電植毛等の電気的な相互作用を利用しており、大量生産して安価に供給することが必要な用途には適していない。
【0008】
また、用いることができる熱伝導性フィラーの種類やその体積充填率等が制限されるため、得られる熱伝導率が十分なではなく、各種電子機器等で求められる放熱特性を完全には満たしていないという問題があった。
【0009】
以上のような従来技術における問題点に鑑み、本発明の目的は、安価に大量生産が可能な、高充填による内部熱抵抗の低減と、カット精度向上による界面熱抵抗の低減と、により低い熱抵抗値を発揮する熱伝導性樹脂成形品を提供することにある。」
「【0015】
本発明における「熱伝導性樹脂成形品」とは、押出成形した後のブロック状物、又は、当該ブロック状物を適宜切断して得られる切断物(スライスしたシート状物を含む)のいずれも含む概念である。また、熱伝導性フィラーの「粒径」とは、粒度分布測定における平均粒径という概念であり、レーザー回折散乱法という方法により測定されるものである。」
「【0019】
本実施形態の熱伝導性樹脂シートは、樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含み、前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂シートの略厚み方向に配向しており、前記樹脂がシリコーン樹脂、アクリルゴム又はフッ素ゴムである。
【0020】
つまり、本実施形態の熱伝導性樹脂シートは、第一熱伝導性フィラーと、第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーと、と熱伝導性フィラーとして含む。即ち、第一熱伝導性フィラーの粒径D1と、第二熱伝導性フィラーの粒径D2とが、D1>D2の関係を有している。なお、本発明の効果を損なわない範囲で、第一熱伝導性フィラー及び第二熱伝導性フィラー以外の熱伝導性フィラーを用いてもよい。
【0021】
ここで、図1は、本実施形態の熱伝導性樹脂シートの製造方法を説明するための概念図であり、押出機の先端部分及びTダイの断面概略図が示されている。押出機のTダイは、連続する上下方向の隙間Xの第一ギャップ、上下方向の隙間Yの第二ギャップ、及び、第一ギャップと第二ギャップとの間にある流路の上下側面少なくとも一方に傾斜面を有している。
【0022】
熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物は、スクリュー2によって撹拌・混練され、流路8に沿って第一ギャップ4(隙間X)に導入される。樹脂組成物の流れは第一ギャップ4によって押出機内の流れ方向に対して上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれ、薄い帯状となる。第一ギャップ4を通過する際、樹脂組成物にせん断力が作用し、樹脂中に混合されている熱伝導性フィラーが樹脂組成物の流れ方向に配向することとなる。この場合、熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート前駆体の面方向に配向する。
【0023】
第一ギャップ4の隙間は、適宜調整すればよいが、例えば0.5mm以上5.0mm以下である。第一ギャップ4の隙間が0.5mmよりも小さいと、押出し圧力が不必要に上昇するだけでなく、樹脂組成物が詰まってしまう。一方、第一ギャップ4の隙間が5.0mmよりも大きいと、熱伝導性樹脂シート前駆体の面方向に対する熱伝導性フィラーの配向度が減少する結果となる。
【0024】
樹脂組成物の流れ方向に熱伝導性フィラーが配向された厚さの薄い樹脂成形品前駆体が、第一ギャップ4を完全に通過すると、流路8の断面積が拡大し、上下方向の長さが長くなるため、樹脂成形品前駆体の流れは上下方向に変化する。続いて、当該樹脂シート前駆体は、第一ギャップ4の下流側(傾斜面を有する流路内)において、第一ギャップ4における流れの方向に対して略垂直な方向に折り畳まれ、帯状の樹脂成形品前駆体が混ざり合って融着し、集束一体化した状態で第二ギャップ6の先端部から連続的に押出されることにより、本発明の熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)が製造される。この場合、熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)の略厚さ方向に配向する。
【0025】
その後、架橋処理を施した当該熱伝導性成形品(ブロック状物)を、熱伝導性フィラーの配向方向に対して垂直方向にスライス加工して、均等な厚さに揃えることにより、本発明の熱伝導性樹脂成形品(シート)が製造される。」
「【0030】
次に、第一熱伝導性フィラー及び前記第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーについて説明する。本発明における熱伝導性フィラーとしては、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の材料を用いることができ、例えば、窒化ホウ素(BN)、黒鉛、炭素繊維、雲母、アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、銅、アルミニウムなどが挙げられる。
【0031】
熱伝導性フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば鱗片状、板状、膜状、塊状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状等が挙げられる。粒径の大きい第一熱伝導性フィラーの間隙に粒径の小さい第二熱伝導性フィラーが分散して熱伝導パスを形成し易く、また、第一熱伝導性フィラーが樹脂中で配向し易いという観点から、第一熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上であることが好ましい。
【0032】
また、樹脂と、粒径の小さい第二熱伝導性フィラーとを混合してコンパウンドとすることでマトリックスの熱伝導率を向上させるという観点から、粒径の小さい第二熱伝導性フィラーの熱伝導率は5W/mK超であるのが好ましい。なお、第二熱伝導性フィラーの熱伝導率 上限は200W/mKであればよい。当該熱伝導率は、レーザーフラッシュ法という方法で測定されるものである。第二熱伝導性フィラーに用いる材料としては、例えば、窒化ホウ素(BN)、窒化アルミニウム、炭化珪素、アルミナ、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。」
「【実施例】
【0037】
<<実施例1>>
表1に記載の配合にて、シリコーン樹脂成分に架橋剤及び熱伝導性フィラーを2本ロールで練り込み、リボンシート(前駆体としての組成物)を得た。シリコーン樹脂成分としては、東レダウコーニング(株)製の「シリコーンゴムDY32 1005U」、難燃剤成分及び可塑剤成分を用い、熱伝導性フィラーとしては、Momenntive社製の「PT110」(板状窒化ホウ素、平均粒径45μm)及びデンカ(株)製の「DAW-03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた。また、架橋剤としては、東レダウコーング(株)製の「RC-4」及び「MR-53」を用い、難燃剤成分としては、酸化鉄等の金属化合物を含有したものが好ましく、Momenntive社製の「ME-41F」及び「XC87‐905」を用いた。可塑剤成分としては、シリコーンゴムと同骨格を有し、100csから10000csの粘度を要するシリコーンオイルが好ましく、信越化学工業(株)製の「KF-96-3000CS」を用いた。
・・・
【0040】
<<実施例2>>
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)及び「DAW-03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0041】
<<実施例3>>
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「SGPS」(塊状窒化ホウ素、平均粒径12μm)及び「DAW-03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0042】
<<実施例4>>
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)及び「SGPS」(塊状窒化ホウ素、平均粒径12μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。
【0043】
<<実施例5>>
熱伝導性フィラーとしてデンカ(株)製の「XGP」(板状窒化ホウ素、平均粒径35μm)、「SGPS」(塊状窒化ホウ素、平均粒径12μm)及び「DAW‐03」(アルミナ、平均粒径3μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱伝導性樹脂シート2を作製し、評価を行った。結果を表1に示した。」
(2)上記(1)の【請求項1】、段落【0015】、【0022】、【0024】、【0025】、【0031】から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2物発明」という。)が記載されている。
「樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含み、
前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており、
前記樹脂がシリコーン樹脂、アクリルゴム又はフッ素ゴムであり、
前記第二熱伝導性フィラーが5W/mK超の熱伝導率を有する、シート状の熱伝導性樹脂成形品であって、
前記熱伝導性フィラーの形状としては、例えば鱗片状、板状、膜状、塊状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平状等が挙げられ、
熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物は、スクリュー2によって撹拌・混練され、流路8に沿って第一ギャップ4(隙間X)に導入され、樹脂組成物の流れは第一ギャップ4によって押出機内の流れ方向に対して上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれ、薄い帯状となり、第一ギャップ4を通過する際、樹脂組成物にせん断力が作用し、樹脂中に混合されている熱伝導性フィラーが樹脂組成物の流れ方向に配向し、
樹脂組成物の流れ方向に熱伝導性フィラーが配向された厚さの薄い樹脂成形品前駆体が、第一ギャップ4を完全に通過すると、流路8の断面積が拡大し、上下方向の長さが長くなるため、樹脂成形品前駆体の流れは上下方向に変化し、続いて、当該樹脂シート前駆体は、第一ギャップ4の下流側(傾斜面を有する流路内)において、第一ギャップ4における流れの方向に対して略垂直な方向に折り畳まれ、帯状の樹脂成形品前駆体が混ざり合って融着し、集束一体化した状態で第二ギャップ6の先端部から連続的に押出されることにより、熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)が製造され、熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)の略厚さ方向に配向され、
その後、架橋処理を施した当該熱伝導性成形品(ブロック状物)を、熱伝導性フィラーの配向方向に対して垂直方向にスライス加工して、均等な厚さに揃えることにより、製造される、シート状の熱伝導性樹脂成形品。」
(3)上記(1)の【請求項1】、段落【0022】、【0024】、【0025】の記載から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2方法発明」という。)が記載されている。
「樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含み、
前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており、
前記樹脂がシリコーン樹脂、アクリルゴム又はフッ素ゴムであり、
前記第二熱伝導性フィラーが5W/mK超の熱伝導率を有すし、シート状の熱伝導性樹脂成形品の製造方法であって、
前記第一熱伝導性フィラー及び前記第二熱伝導性フィラーの形状としては、例えば鱗片状、板状、膜状、塊状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平状等が挙げられ、
熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物は、スクリュー2によって撹拌・混練され、流路8に沿って第一ギャップ4(隙間X)に導入され、樹脂組成物の流れは第一ギャップ4によって押出機内の流れ方向に対して上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれ、薄い帯状となり、第一ギャップ4を通過する際、樹脂組成物にせん断力が作用し、樹脂中に混合されている熱伝導性フィラーが樹脂組成物の流れ方向に配向し、
樹脂組成物の流れ方向に熱伝導性フィラーが配向された厚さの薄い樹脂成形品前駆体が、第一ギャップ4を完全に通過すると、流路8の断面積が拡大し、上下方向の長さが長くなるため、樹脂成形品前駆体の流れは上下方向に変化し、続いて、当該樹脂シート前駆体は、第一ギャップ4の下流側(傾斜面を有する流路内)において、第一ギャップ4における流れの方向に対して略垂直な方向に折り畳まれ、帯状の樹脂成形品前駆体が混ざり合って融着し、集束一体化した状態で第二ギャップ6の先端部から連続的に押出されることにより、熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)を製造し、熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)の略厚さ方向に配向され、
その後、架橋処理を施した当該熱伝導性成形品(ブロック状物)を、熱伝導性フィラーの配向方向に対して垂直方向にスライス加工して、均等な厚さに揃えることにより、熱伝導性樹脂成形品(シート)を製造する、シート上の熱伝導性樹脂成形品の製造方法。」
3 甲第3号証の記載
取消理由通知において引用した甲第3号証(申立人吉澤提出の甲第3号証:特表2015-529280号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0010】
六方晶BNの結晶構造を図1に示す。a-b結晶面は、緊密な、共有結合で結合したホウ素および窒素原子でできている。a-b面は、弱いファンデルワールス力によって保持されたc方向に沿って繰り返される。この結晶構造のために、六方晶BN粒子の天然の粒子形状は小板状であり、通常、アスペクト比(約10-50)を有する。
【0011】
異方性が許容される場合、BNの大きいアスペクト比は利点になり得る。通常、他がすべて等しければ、アスペクト比が大きいほど熱伝導率は高い。」
(4)甲第4号証の記載
取消理由通知において引用した甲第4号証(申立人吉澤提出の甲第4号証:特開2013-225636号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【0011】
本発明の熱伝導性材料は、前記したように、板状粒子および粘着性樹脂を必須成分として含有する熱伝導性材料であり、球状粒子を板状粒子1質量部あたり500質量部以下の量で含有し、粘着性樹脂(固形分)100質量部あたりの板状粒子と球状粒子との合計量が1~600質量部であることを特徴とする。」
「【0014】
板状粒子としては、例えば、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、グラファイト、アルミニウム、亜鉛、スズなどの典型金属、鉄、ニッケル、銅、マンガン、銀、白金などの遷移金属などの金属からなる板状金属粒子;アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素、シリコンカーバイド、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレイ、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂などの無機材料からなる板状無機粒子;ラウロイルタウリンカルシウム、ラウロイルリジンなどの有機材料からなる板状有機粒子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの板状粒子は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。板状粒子のなかでは、熱伝導性を向上させる観点から、アルミニウム、銀、銅またはそれらの合金からなる板状粒子、窒化ホウ素からなる板状粒子、グラファイトからなる板状粒子、アルミナからなる板状粒子、タルクおよびマイカが好ましく、アルミニウム、銀、銅またはそれらの合金からなる板状粒子、窒化ホウ素からなる板状粒子、グラファイトからなる板状粒子およびアルミナからなる板状粒子がより好ましく、アルミニウム、銀、銅またはそれらの合金からなる板状粒子、窒化ホウ素からなる板状粒子およびグラファイトからなる板状粒子がさらに好ましく、窒化ホウ素、アルミニウム、銀、銅またはそれらの合金からなる板状粒子がさらに一層好ましく、窒化ホウ素またはアルミニウムからなる板状粒子が特に好ましい。前記板状粒子は、いずれも、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。」
「【0018】
板状粒子のアスペクト比は、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上であり、粘着性樹脂と板状粒子とを混合したときに経時とともに増粘することを抑制する観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは80以下である。」
第5 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~15に係る特許に対して、当審が令和4年10月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(新規性)本件特許の請求項1~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)理由2(進歩性)本件特許の請求項1~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)理由3(サポート要件)請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
(4)理由4(明確性)請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 当審の判断
(1)理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
ア 請求項1に係る発明について
(ア)対比
本件発明1と甲1物発明とを対比する。
a 甲1物発明の「熱伝導性シート」、「シリコーン樹脂」、「異方性充填材」、「非異方性充填材」は、それぞれ本件発明1の「熱伝導性シート」、「バインダ樹脂」、「第1の熱伝導性フィラー」、「第2の熱伝導性フィラー」に相当する。
b 甲1物発明は、「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備える熱伝導性シートであって、複数の単位層は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、シリコーン樹脂には、熱伝導性充填材が分散するように配合され」、「異方性充填材は、鱗片状材料であり」、「非異方性充填材の形状として、球状が挙げられ」るから、「非異方性充填材」は非鱗片状であるといえる。
したがって、本件発明1と甲1物発明とは、「バインダ樹脂と、鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シート」である点で一致する。
c 甲1物発明において、「異方性充填材は、シートの厚さ方向zに配向しており、異方性充填材は、鱗片状材料であり」、また、甲第1号証の段落[0032]には、「異方性充填材14が鱗片状充填材であるときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して鱗片状状充填材の鱗片面のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超えるものとすることができる。・・・なお、異方性充填材14の配向方向は、熱伝導率を高める観点からは厚さ方向zに対する長軸のなす角度または鱗片面のなす角度を0°以上5°未満とすることが好ましい。」と記載されているから、「異方性充填材」は、長軸がシートの厚さ方向に配向するものであるといえる。
したがって、本件発明1と甲1物発明とは、「熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向した」ものである点で一致する。
d 以上のことから、本件発明1と甲1物発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「バインダ樹脂と、鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、
上記熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向した熱伝導性シート。」
<相違点A>
本件発明1では、「上記第1の熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上50以下であ」るのに対し、甲1物発明では、異方性充填材のアスペクト比について、そのような特定はなされていない点。
<相違点B>
本件発明1では、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、甲1物発明は、「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備える熱伝導性シートであって、複数の単位層は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、隣接する単位層同士が互いに接着されて」いるものであり、本件発明1の上記のようなものではない点。
(イ)判断
a 事案に鑑み、まず、上記相違点Bについて検討する。
b 甲1物発明は、「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備える熱伝導性シートであって、複数の単位層は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、隣接する単位層同士が互いに接着されて」いるものであるところ、シートの厚さ方向zに垂直な一方向、すなわち、シートの厚さ方向zに直交する方向に、複数の単位層が積層されて、隣接する単位層同士が互いに接着されているものであるから、相違点Bは、実質的なものである。
したがって、相違点Aについて検討するまでもなく、本件発明1は甲1物発明と同一であるとはいえない。
c 次に、相違点Bに係る本件発明1の構成に、当業者であれば容易に想到できたか否かについて検討する。
シートの厚さ方向zに直交する方向に、複数の単位層が積層されて、隣接する単位層同士が互いに接着されている、甲1物発明において、熱伝導性シートを「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」ものとすることは、阻害要因があるから、甲1物発明において、相違点Bに係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
d よって、相違点Aについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1物発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2~11、15について
本件発明2~11、15は、上記相違点Bに係る本件発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲1物発明と同一であるとはいえず、また、甲1物発明並びに甲3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明12~14について
(ア)本件発明12について
a 対比
本件発明12と甲1方法発明とを対比する。
(a)甲1方法発明の「熱伝導性シート」、「硬化性シリコーン組成物」、「異方性充填材」、「非異方性充填材」は、それぞれ本件発明12の「熱伝導性シート」、「バインダ樹脂」、「第1の熱伝導性フィラー」、「第2の熱伝導性フィラー」に相当する。
(b)甲1方法発明において、「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含み、前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程」を備え、「1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材、非異方性充填材)とを混合して液状組成物を調製し、シリコーン樹脂には、熱伝導性充填材が分散するように配合され」、「異方性充填材は、鱗片状材料であり」、「非異方性充填材の形状として、球状が挙げられ」るから、「非異方性充填材」は非鱗片状であるといえる。
したがって、本件発明12と甲1方法発明とは、「鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程A」を有する点で一致する。
(c)甲1方法発明は、「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含み、前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程と、前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断して熱伝導性シートを得る工程とを備える、熱伝導性シートの製造方法」であるから、本件発明12と甲1方法発明とは、「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有」する点で一致する。
(d)甲1方法発明において、「前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程」を備え、「異方性充填材は、鱗片状材料であり」、また、甲第1号証の段落[0032]には、「異方性充填材14が鱗片状充填材であるときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して鱗片状状充填材の鱗片面のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超えるものとすることができる。・・・なお、異方性充填材14の配向方向は、熱伝導率を高める観点からは厚さ方向zに対する長軸のなす角度または鱗片面のなす角度を0°以上5°未満とすることが好ましい。」と記載されているから、「異方性充填材」は、長軸がシートの厚さ方向に配向するものであるといえる。
したがって、本件発明12と甲1方法発明とは、「上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向している」ものである点で一致する。
(e)以上のことから、本件発明12と甲1方法発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとをバインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向している、熱伝導性シートの製造方法。」
<相違点C>
「熱伝導性シート」について、本件発明12は、「上記第1の熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上50以下であ」るのに対し、甲1方法発明では、異方性充填材のアスペクト比について、そのような特定はなされていない点。
<相違点D>
本件発明12では、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、甲1方法発明は、「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含」む「複数の1次シートを用意する工程」と、「前記複数の1次シート」を、「他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程」と、「前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように」、「切断して熱伝導性シートを得る工程」とを備えるものであり、本件発明12の上記のようなものではない点。
b 判断
(a)事案に鑑み、まず、上記相違点Dについて検討する。
(b)相違点Dは、上記ア(ア)dに記載の相違点Bと同じであるから、上記ア(イ)aで相違点Bについて検討したのと同様な理由で、本件発明12は甲1方法発明と同一であるとはいえない。
(c)また、上記ア(イ)bで相違点Bについて検討したのと同様な理由で、甲1方法発明において、相違点Dに係る本件発明12の構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
(d)よって、相違点Cについて検討するまでもなく、本件発明12は、甲1方法発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明13、14について
本件発明13、14は、本件発明12を直接又は間接的に引用するものであり、上記相違点Dに係る本件発明12の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明12と同じ理由により、甲1方法発明と同一であるとはいえず、また、甲1方法発明並びに甲第3号証及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 理由1、理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~15は、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項1~15に係る特許を、理由1、理由2によって取り消すことはできない。
(2)理由4(明確性)について
理由4(明確性)は、請求項4には、「当該熱伝導性シートの厚み方向の実効熱伝導率が7W/m・Kを超える。」と記載されているが、「実効熱伝導率」が、どのようなものであるのかが明確でないから、本件特許請求の範囲の請求項4の記載は明確でないというものである。
しかしながら、本件特許請求の範囲の請求項4に記載された「実効熱伝導率」について、特許明細書の段落【0058】には、「ASTM-D5470に準拠した熱抵抗測定装置を用いて、荷重1kgf/cm2をかけて熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の実効熱伝導率(W/m・K)をそれぞれ測定した。」と記載されており、「ASTM-D5470に準拠した熱抵抗測定装置」で直接測定されるのは、本件発明4における「実効熱伝導率」である。
そして、「ASTM-D5470」に準拠した方法で測定できるのは、“effective thermal conductivity, κEFF”であることが、本件特許出願時の技術常識である。
したがって、特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識を参酌すると、本件発明4における「実効熱伝導率」は、“effective thermal conductivity, κEFF”であることが、明確であり、また、特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識を参酌すると、「実効熱伝導率」の測定方法は、明確である。
よって、本件発明4及び請求項4を引用して特定された本件発明5、6、11、15は、明確である。
以上のとおりであるから、本件発明4~6、11、15の特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、請求項4~6、11、15に係る特許を、理由4によって取り消すことはできない。
(3)理由3(サポート要件)、理由4(明確性)について
理由3(サポート要件)、理由4(明確性)は、請求項11には「上記第1の熱伝導性フィラーの長軸の配向方向における実効熱伝導率が、上記第1の熱伝導性フィラーの長軸の非配向方向における実効熱伝導率の1.8倍以上」と記載されているが、特許明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識を参酌しても、「実効熱伝導率」が如何なる物性値であるのか、不明であるから、本件特許請求の範囲の請求項11の記載は明確でない、また、請求項11の上記記載は、発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない、というものである。
しかしながら、上記(2)のとおり、「実効熱伝導率」は明確であり、また、本件訂正により、請求項11の上記記載は、「当該熱伝導性シートの厚み方向における実効熱伝導率が、上記厚み方向に直交する方向における実効熱伝導率」と訂正された結果、理由3、理由4は解消した。
よって、本件発明11及び請求項11を引用して特定された本件発明15は、明確である。また、本件発明11及び請求項11を引用して特定された本件発明15は、発明の詳細な説明に記載したものである。
以上のとおりであるから、本件発明11、15の特許は、特許法第36条第6項第1項、第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、請求項11、15に係る特許を、理由3、理由4によって取り消すことはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由1-2
申立人吉澤は、特許異議申立書54~65ページにおいて、「申立理由1-2(甲2を主たる引用文献とする新規性及び進歩性欠如)」について、本件訂正前の請求項1、2、12~15に係る発明は、甲第2号証に記載の発明と同一であるか、もしくは同発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項3~8、10に係る発明は、甲第2号証に記載の発明と同一であるか、もしくは同発明及び甲第5号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前の請求項9に係る発明は、甲第2号証に記載の発明及び甲第5号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件訂正前の請求項11に係る発明は、甲第2号証に記載の発明と同一であるか、もしくは同発明及び甲第5号証~甲第8号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~15に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、もしくは、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである旨を主張する。
2 申立理由1-2について
上記「申立理由1-2」について、以下において検討する。
(1)甲第2号証の記載、甲2物発明、甲2方法発明
甲第2号証の記載、甲2物発明、甲2方法発明は、上記第4 2のとおりである。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2物発明とを対比する。
(ア)甲2物発明の「シート状の熱伝導性成形品」、「樹脂」、「第一熱伝導性フィラー」、「第二熱伝導性フィラー」は、それぞれ本件発明1の「熱伝導性シート」、「バインダ樹脂」、「第1の熱伝導性フィラー」、「第2の熱伝導性フィラー」に相当する。
(イ)甲2物発明は、「樹脂と、第一熱伝導性フィラー及び前記第一熱伝導性フィラーより小さい粒径を有する第二熱伝導性フィラーを含む熱伝導性フィラーと、を含み、前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており」、「熱伝導性フィラーを含む樹脂組成物は、スクリュー2によって撹拌・混練され、流路8に沿って第一ギャップ4(隙間X)に導入され、樹脂組成物の流れは第一ギャップ4によって押出機内の流れ方向に対して上下方向(厚さ方向)にしぼり込まれ、薄い帯状となり、第一ギャップ4を通過する際、樹脂組成物にせん断力が作用し、樹脂中に混合されている熱伝導性フィラーが樹脂組成物の流れ方向に配向し、樹脂組成物の流れ方向に熱伝導性フィラーが配向された厚さの薄い樹脂成形品前駆体が、第一ギャップ4を完全に通過すると、流路8の断面積が拡大し、上下方向の長さが長くなるため、樹脂成形品前駆体の流れは上下方向に変化し、続いて、当該樹脂シート前駆体は、第一ギャップ4の下流側(傾斜面を有する流路内)において、第一ギャップ4における流れの方向に対して略垂直な方向に折り畳まれ、帯状の樹脂成形品前駆体が混ざり合って融着し、集束一体化した状態で第二ギャップ6の先端部から連続的に押出されることにより、本発明の熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)が製造され、熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂成形品(ブロック状物)の略厚さ方向に配向され、その後、架橋処理を施した当該熱伝導性成形品(ブロック状物)を、熱伝導性フィラーの配向方向に対して垂直方向にスライス加工して、均等な厚さに揃えることにより、製造される」ものであるところ、甲2物発明の「シート状の熱伝導性樹脂成形品」は、その「製造」方法から、第一熱伝導性フィラーと第二熱伝導性フィラーが当然に樹脂に分散しており、また、当該シート状の熱伝導性成形品の厚み方向に第一熱伝導性フィラーが配向し、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層であるといえる。
したがって、本件発明1と甲2物発明とは、「バインダ樹脂と、第1の熱伝導性フィラーと、第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シート」であって、「上記第一の熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上であり、当該熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーが配向し、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」点で共通する。
(ウ)以上のことから、本件発明1と甲2物発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「バインダ樹脂と、第1の熱伝導性フィラーと、第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、
上記第1の熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上であり、
当該熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーが配向し、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シート。」
<相違点E>
「第1の熱伝導性フィラー」について、本件発明1では、「鱗片状の第1の熱伝導性フィラー」で、「上記第1の熱伝導性フィラーのアスペクト比が10以上50以下であり」、「当該熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向」するのに対し、甲2物発明では、「前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており」、「前記熱伝導性フィラーの形状としては、例えば鱗片状、板状、膜状、塊状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平状等が挙げられる」ものの、第一熱伝導性フィラーについて、アスペクト比の上限値が特定されておらず、配向について、厚み方向に第一熱伝導性フィラーの長軸が配向しているか不明であり、形状について、「鱗片状」は例示の一つであり、「鱗片状」との特定はなされていない点。
<相違点F>
「第2の熱伝導性フィラー」について、本件発明1では、「非鱗片状」であるのに対し、甲2物発明では、第二熱伝導性フィラーがそのようなものであるか不明である点。
イ 判断
(ア)甲第2号証には、相違点Eに係る本件発明1の構成について、記載も示唆もされていない。
したがって、相違点Fについて検討するまでもなく、本件発明1は甲2物発明と同一であるとはいえない。
(イ)次に、相違点Eに係る本件発明1の構成に、当業者であれば容易に想到できたか否かについて検討する。
上記ア(ウ)に記載の<相違点E>のとおり、甲2物発明では、第一熱伝導性フィラーの配向について、厚み方向に第一熱伝導性フィラーの長軸が配向しているか不明であり、甲第2号証には、第一熱伝導性フィラーが、「鱗片状」であり、その長軸が、シート状の熱伝導性樹脂成形品の厚み方向に配向しているとの構成は記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明2~11、15について
ア 本件発明2~11、15も、上記相違点Eに係る本件発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2~11、15は、甲2物発明と同一であるとはいえない。
イ そして、甲第5号証(申立人吉澤提出の甲第5号証:特開2012-23335号公報)、甲第6号証(申立人吉澤提出の甲第6号証:特開2007-305700号公報)、甲第7号証(申立人吉澤提出の甲第7号証:特開2011-012193号公報)、甲第8号証(申立人吉澤提出の甲第8号証:特開2010-001402号公報)には、第一熱伝導性フィラーが、「鱗片状」であり、その長軸が、シート状の熱伝導性樹脂成形品の厚み方向に配向しているとは、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明2~11、15は、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証~甲第8号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件発明12~14について
ア 本件発明12について
本件発明12は、上記第3のとおり、「熱伝導性シートの製造方法」に係る発明であり、「上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向し」ているものであり、甲2方法発明は、上記第4 2(3)のとおり、「前記第一熱伝導性フィラーが10以上のアスペクト比を有するとともに前記熱伝導性樹脂成形品の略厚み方向に配向しており」、「前記熱伝導性フィラーの形状としては、例えば鱗片状、板状、膜状、塊状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平状等が挙げられる」ものの、甲2方法発明では、第一熱伝導性フィラーの配向について、厚み方向に第一熱伝導性フィラーの長軸が配向しているか不明であり、また、甲第2号証には、第一熱伝導性フィラーが、「鱗片状」であり、その長軸が、シート状の熱伝導性樹脂成形品の厚み方向に配向しているとの構成は記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明12は、甲2方法発明と同一であるとはいえず、また、甲2方法発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明13、14について
本件発明13、14は、本件発明12を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明12と同じ理由により、甲2方法発明と同一であるとはいえず、また、甲2方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)申立人吉澤申立ての特許異議申立理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~15は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、また、特許法第29条第2項の規定に違反したものではない。
したがって、申立人吉澤の上記主張は、採用することができない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人吉澤提出の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700657