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特許異議申立

2022-700480

熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法

審判番号
2022-700480
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-149489
登録番号
6976393
請求日
2022年06月02日
審決日
2023年04月05日
公報発行日
2023年08月25日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】デクセリアルズ株式会社
  • 【権利者代理人】野口 信博
  • 【権利者代理人】穂谷野 聡
  • 【異議申立人】吉澤 悦子
  • 【異議申立人】増山 美紀
審判長/審判官
  • 審判長 恩田 春香
  • 審判官 河本 充雄
  • 審判官 棚田 一也
分類
P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L) / P1651.841-YAA(H01L) / P1651.851-YAA(H01L) / P1651.853-YAA(H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第1項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6976393号発明「熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6976393号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11、18〕、〔12~17〕について訂正することを認める。 特許第6976393号の請求項1、3、4、6~9、11~18に係る特許を維持する。 特許第6976393号の請求項2、5、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6976393号の請求項1~18に係る特許についての出願は、令和2年9月4日(優先権主張 令和2年5月15日(以下、「本件特許出願の優先日」という。))に出願され、令和3年11月11日にその特許権の設定登録がされ、同年12月8日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 6月 2日:特許異議申立人 吉澤 悦子(以下、「申立人吉澤」という。)による請求項1~18に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 6月 7日:特許異議申立人 増山 美紀(以下、「申立人増山」という。)による請求項1~18に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 9月26日付け:取消理由通知 同年11月28日:特許権者による意見書(以下、「特許権者意見書」という。)、訂正請求書の提出 令和5年 2月 8日:申立人増山による意見書の提出 同年 2月13日:申立人吉澤による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。) 令和4年11月28日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項1-1 特許請求の範囲の請求項1に「鱗片状の熱伝導性フィラー及び/又は繊維状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」とあるのを、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」と訂正する。 (2)訂正事項1-2 特許請求の範囲の請求項1に「熱伝導性シートであって、 当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる、熱伝導性シート。」とあるのを、「熱伝導性シートであって、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり、 上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、 上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であり、 当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、 厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シート。」に訂正する。 (3)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (4)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2記載の熱伝導性シート。」とあるのを、「請求項1に記載の熱伝導性シート。」に訂正する。 (5)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項2又は3に記載の熱伝導性シート。」とあるのを、「請求項3に記載の熱伝導性シート。」に訂正する。 (6)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (7)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 (8)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項11に「請求項1~10のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。」とあるのを、「請求項1、3、4、6~9のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。」に訂正する。 (9)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項18に「請求項1~11のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。」とあるのを、「請求項1、3、4、6~9、11のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。」に訂正する。 (10)訂正事項9 明細書の【0059】に「JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」とあるのを、「熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」に訂正する。 (11)訂正事項10-1 特許請求の範囲の請求項12に「鱗片状の熱伝導性フィラー及び/又は繊維状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」とあるのを、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」に訂正する。 (12)訂正事項10-2 特許請求の範囲の請求項12に「上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シートを得る工程Cとを有する、熱伝導性シートの製造方法。」とあるのを、「上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり、 上記熱伝導性シート中、上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である、熱伝導性シートの製造方法。」に訂正する。 なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~11、18〕、及び、一群の請求項〔12~17〕ごとにされたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1-1、10-1について 訂正事項1-1、10-1による訂正は、訂正前の請求項1、12の「第1の熱伝導性フィラー」について、「鱗片状の熱伝導性フィラー及び/又は繊維状の熱伝導性フィラーからなる」ものを、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項1-2、10-2について 訂正事項1-2、10-2による訂正は、訂正前の請求項1、12における「第1の熱伝導性フィラー」を「鱗片状の窒化ホウ素であり」と限定し、「第1の熱伝導性フィラーの含有量」を「20~35体積%であり」と限定し、「第2の熱伝導性フィラーの含有量」を「20~40体積%であり」と限定し、「熱伝導性シート」を「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1-2、10-2のうち、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり」との事項は、本件明細書等の【請求項2】に記載されており、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり」との事項は、本件明細書等の【0025】に記載されており、「上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であり」との事項は本件明細書等の【0028】に記載されており、「熱伝導性シート」が、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」との事項は、本件明細書等の【0049】、【図1】の記載から導き出せるものであるから、訂正事項1-2、10-2による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項2、5、6 訂正事項2、5、6による訂正は、請求項2、5、10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項3、4 訂正事項3、4による訂正は、訂正事項2による訂正により請求項2を削除したことに伴い、請求項3、4の引用請求項から請求項2を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項7、8 訂正事項7、8による訂正は、訂正事項2、5、6による訂正により請求項2、5、10を削除したことに伴い、請求項11、18の引用請求項から請求項2、5、10を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、明瞭でない釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項9 訂正事項9による訂正は、本件明細書等の【0059】における「JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」との記載において、「JIS K6911に準じた方法」との記載が、「(30GHz)」との記載との関係において不合理を生じている記載を正すものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 理由は以下のとおりである。なお、特許権者が提出した乙第1号証の1~乙第27号証を、以下、「乙1-1」~「乙27」という。 ア 本件訂正前の請求項1及び12には、「当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる」との記載がある。 そして、当該「比誘電率」については、本件明細書等の【0059】には、「JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」と記載されている。 ここで、JIS K6911(申立人吉澤が提出した甲第6号証)には、以下の記載がある。 「 [図:0001400445000001.jpg] [図:0001400445000002.jpg] 」 イ 本件明細書等の【0059】の記載について 上記アに示したJIS K6911の32ページ下から4~3行には、「2. 誘電率及び誘電正接の測定は,表6に規定する測定回路のうち,いずれか一つの方法によることができる。」と記載されており、33ページの表6には、11種類の誘電率試験の測定回路と適用周波数範囲が記載されている。 しかし、上記表6の適用周波数範囲は最大で50MHzであって、適用周波数が30GHzにおける誘電率試験の測定回路は記載されていないから、本件訂正前の請求項1及び12に記載の「比誘電率」は、上記表6に記載されている11種類の測定回路のうち、どの測定回路を用いて測定された値なのか不明である。 そして、一般に、測定回路が違えば、得られる誘電率の値も異なるものであるから、本件訂正前の請求項1及び12に記載の「比誘電率」の値は一義的に決まらない。 したがって、本件明細書等の【0059】において、「JIS K6911に準じた方法」との記載は、「比誘電率(30GHz)」との記載との関係において不合理を生じているものといえる。 ウ 本件特許の出願時の技術常識について (ア)特許権者が提出した乙24~乙27には、以下の記載がある。 a 乙24(特開2011-249614号公報) 「【0044】 [誘電率測定] アジレントテクノロジー(株)製のネットワークアナライザ 8722D(発信機、検出器)、材料定数測定ソフト85071関東電子製)、Xバンド測定用冶具(WSH1-X)による導波管で、Sパラ法により、誘電率を測定。」 b 乙25(特開2015-168731号公報) 「【0100】 ・・・誘電特性(比誘電率ε、誘電正接tanδ、比誘電率の温度係数、共振周波数の温度係数)の測定はJIS R 1641に準拠し、12GHzの空洞共振器をネットワークアナライザ(Agi1ent社製8720ES Sパラメータ・ベクトル・ネットワーク・アナライザ)に接続し、空洞共振器で測定した。」 c 乙26(特開2007-124638号公報) 「【0130】 上記で得られたシールド層13について、同軸管法によりその材料定数(複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”、複素比誘電率の実数部ε’および虚数部ε”を測定した。具体的には、シールド層13と同一構成である外形が7mmかつ内径が3mmのリング状試料を作成し、試料の同軸管内部への接触部分に導電性塗料を塗布および乾燥し、同軸管部分を、同軸ケーブルを介してアジレント社製のネットワークアナライザー8720ESに接続し、S11(反射減衰強度)およびS21(透過減衰強度)を測定し、ここから複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”を決定した。また複素比誘電率の実数部ε’および複素比誘電率の虚数部ε”は、複素比透磁率の実数部μ’および虚数部μ”と同様にして測定される。・・・」 d 乙27(特開平1-112792号公報) 「誘電率:1KHz及び1MHzはASTM標準D150-81により測定し、8.5ないし11.5GHzは、導波管を有したHP8410Bネットワークアナライザ-のSパラメータ-測定値から評価(電場は繊維方向)。」 (イ)以上の記載によれば、ネットワークアナライザ及び導波管を用いてSパラメータ方式により被測定物の誘電率を測定することは、本件特許の出願時において技術常識であったといえる。 エ 熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)について (ア)乙1-1~乙2(当審注:摘記は省略した。以下に示す乙3-1~乙23-2も同様である。)によれば、KEYSIGHT社製のネットワークアナライザ「PNA Network Analyzer N5227B 10MHz-67GHz」は、遅くとも本件特許の出願日前である2018年7月には特許権者が保有していたといえる。 また、乙3-1~乙7によれば、KEYCOM社製の導波管「WR28(26.5GHz-40GHz)」は、遅くとも本件特許の出願日前である2018年7月には特許権者が保有していたといえる。 (イ)熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)の測定方法について a 上記ウで検討したとおり、ネットワークアナライザ及び導波管を用いてSパラメータ方式により被測定物の誘電率を測定することは、本件特許の出願時において技術常識であるところ、熱導電性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率の測定方法について、特許権者は、特許権者意見書の8ページ下から6行~9ページにおいて以下のとおり主張している。 「次に、以下の図を用いて、Sパラメータ方式による熱伝導性シートの厚み方向と面方向の比誘電率の測定方法を説明します。熱伝導性シートの面方向の比誘電率は、本件特許明細書の段落0049で得られた成形体ブロックを、鱗片状の窒化ホウ素の長軸方向に沿ってシート状にスライスすることにより、窒化ホウ素がシートの厚み方向と直交する方向(面方向)に配向した熱伝導性シートを得て、これを測定しました。 [図:0001400445000003.jpg] 」 b 以上の説明によれば、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率の測定方法は、いずれも妥当なものであるといえる。 (ウ)熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)の値について 特許権者意見書の12ページ8~12行の記載によれば、乙8-1は、本件明細書等の【0060】の【表1】(以下、「本件明細書等【表1】」という。)における実施例1の厚み方向の比誘電率(30GHz)の結果の基になるSパラメータ方式による測定データであり、乙8-2は、乙8-1の測定データをエクセルに読み込ませ、グラフ化したものであるところ、乙8-2の「測定周波数」が「30010」のときの「誘電率(実部)」の値は「5.57613953」となっており、本件明細書等【表1】の実施例1の厚み方向の比誘電率(30GHz)の値である「5.6」と整合している。 また、特許権者意見書の12ページ13~17行の記載によれば、乙10-1は、本件明細書等【表1】における実施例1の面方向の比誘電率(30GHz)の結果の基になるSパラメータ方式による測定データであり、乙9-2は、乙9-1の測定データをエクセルに読み込ませ、グラフ化したものであるところ、乙9-2の「測定周波数」が「30010」のときの「誘電率(実部)」の値は「4.773318」となっており、本件明細書等【表1】の実施例1の面方向の比誘電率(30GHz)の値である「4.8」と整合している。 同様に、乙9-2~乙23-2の「測定周波数」が「30010」のときの「誘電率(実部)」の値は、いずれも、本件明細書等【表1】の実施例2~実施例6、比較例1~比較例3の厚さ方向及び面方向の比誘電率(30GHz)の値と整合している。 (エ)以上によれば、本件明細書等【表1】における熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)は、KEYSIGHT社製のネットワークアナライザ「PNA Network Analyzer N5227B 10MHz-67GHz」及び、KEYCOM社製の導波管「WR28(26.5GHz-40GHz)」を用いたSパラメータ方式により、上記(イ)における方法によって、それぞれ測定したものと推認できる。 オ そうすると、訂正事項9による訂正は、本件明細書等の【0059】の「JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」との記載を、「熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」に訂正するものであり、上記イにおいて示した不合理を生じている記載を正すものであるといえる。 したがって、訂正事項9による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 申立人の主張について (ア)申立人吉澤は、令和5年2月13日付け意見書の5ページ8~23行において、本件発明の比誘電率は、【0059】の記載から、JISK6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定したものであり、そして、30GHzでの測定については、【0033】及び表1の記載とも矛盾するものではないから、30GHzでの比誘電率の測定をJISK6911に準じた方法(甲6の表6に記載されている11種類の測定回路のいずれか)で測定したものと解するのが相当であり、したがって、訂正事項9で「JISK6911に準じた方法で、」を削除すると、比誘電率の測定方法が単に30GHzで行われたものとなり、30GHzで行う比誘電率の測定方法であればいかなるものも意味することとなり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるとはいえない旨主張する。 (イ)しかし、上記ア~オで検討したとおり、本件明細書等の【0059】において、「JIS K6911に準じた方法」との記載は、「比誘電率(30GHz)」との記載との関係において不合理を生じているものであり、訂正事項9による訂正は、当該不合理を生じている記載を正すものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、また、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、申立人吉澤の上記主張は採用できない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11、18〕、〔12~17〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~18に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明18」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 バインダ樹脂と、鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり、 上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、 上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であり、 当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、 厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シート。 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 上記第2の熱伝導性フィラーが、窒化アルミニウム粒子と、球状のアルミナ粒子とを含有する、請求項1に記載の熱伝導性シート。 【請求項4】 上記第1の熱伝導性フィラーの平均粒径が20~100μmである、請求項3に記載の熱伝導性シート。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 上記球状のアルミナ粒子の平均粒径が1~3μmである、請求項3に記載の熱伝導性シート。 【請求項7】 上記球状のアルミナ粒子の含有量が10~25体積%である、請求項3又は6に記載の熱伝導性シート。 【請求項8】 上記窒化アルミニウム粒子の平均粒径が1~5μmである、請求項3、6又は7に記載の熱伝導性シート。 【請求項9】 上記窒化アルミニウム粒子の含有量が10~25体積%である、請求項3、6~8のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。 【請求項10】 (削除) 【請求項11】 上記第1の熱伝導性フィラーの配向方向における熱伝導率が、上記第1の熱伝導性フィラーの非配向方向における熱伝導率の2倍以上である、請求項1、3、4、6~9のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。 【請求項12】 鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、 上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、 上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり、 上記熱伝導性シート中、上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である、熱伝導性シートの製造方法。 【請求項13】 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、押出成形法又は金型成形法により成形体ブロックを形成する、請求項12に記載の熱伝導性シートの製造方法。 【請求項14】 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、押出成形法により成形体ブロックを形成し、 上記工程Cでは、上記成形体ブロックをシート状にスライスする際のスライス方向が、上記押出成形法の押出し方向に対して60~120度である、請求項12又は13に記載の熱伝導性シートの製造方法。 【請求項15】 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から未硬化状態のグリーンシートを作製し、該グリーンシートを積層させることで上記成形体ブロックを形成する、請求項12に記載の熱伝導性シートの製造方法。 【請求項16】 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、バーコーターを用いて上記グリーンシートを作製する、請求項15に記載の熱伝導性シートの製造方法。 【請求項17】 上記工程Bでは、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から、ダイヘッドを用いて得られたシートを積層させることで上記成形体ブロックを形成する、請求項12に記載の熱伝導性シートの製造方法。 【請求項18】 発熱体と、 放熱体と、 発熱体と放熱体との間に配置された請求項1、3、4、6~9、11のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 訂正前の請求項1~18に係る特許に対して、当審が令和4年9月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。なお、申立人吉澤が提出した甲第1号証~甲第5号証を、以下、「甲1-1」~「甲1-5」という。 1 取消理由1(拡大先願) 本件請求項1~18に係る発明は、その出願の日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた甲1-1の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。 2 取消理由2(拡大先願) 本件請求項1~18に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲1-2の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 3 取消理由3(新規性) 本件請求項1、2、4、5、11~15、17、18に係る発明は、甲1-3に記載された発明であり、又は、本件請求項1、3、5、6、8、10~14、18に係る発明は、甲1-4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1~6、8、10~15、17、18に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 4 取消理由4(進歩性) 本件請求項1、2、12~15、17に係る発明は、甲1-3に記載された発明に基いて、本件発明3、6~10に係る発明は、甲1-3に記載された発明及び甲1-5に記載された事項に基いて、本件請求項4、5、11に係る発明は、甲1-3に記載された発明に基いて、若しくは、甲1-3に記載された発明及び甲1-5に記載された事項に基いて、又は、本件請求項1、3、5~14、18に係る発明は、甲1-4に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 5 取消理由5(明確性) 本件請求項1~18に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 甲1-1:PCT/JP2019/045144(国際出願日:2019年11月18日、国際公開第2020/105601号参照) 甲1-2: 特願2019-179010号(出願日:2019年9月30日、国際公開第2021/065522号参照) 甲1-3:特開2012-201106号公報 甲1-4:特開2017-38086号公報 甲1-5:特開2012-23335号公報 第5 取消理由1、2(拡大先願)について 1 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明 (1)甲1-1:PCT/JP2019/045144(国際出願日:2019年11月18日、国際公開第2020/105601号参照) ア 甲1-1の国際出願の明細書、請求の範囲又は図面(以下、「甲1-1明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「発明を実施するための形態 [0012] 以下、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートについて詳しく説明する。 [第1の実施形態] 図1は、第1の実施形態の熱伝導性シートを示す。第1の実施形態に係る熱伝導性シート10は、それぞれがシリコーン樹脂11と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層13を備える。複数の単位層13は、面方向に沿う一方向(すなわち、厚さ方向zに垂直な一方向であり、「積層方向x」ともいう)に沿って積層されており、隣接する単位層13同士が互いに接着されている。各単位層13において、シリコーン樹脂11は、熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであり、シリコーン樹脂11には、熱伝導性充填材が分散するように配合される。 ・・・ [0019](異方性充填材) 異方性充填材14は、形状に異方性を有する充填材であり、配向が可能な充填材である。異方性充填材14としては、繊維状材料、鱗片状材料などが挙げられる。異方性充填材14は、一般的にアスペクト比が高いものであり、アスペクト比が2を越えるものであり、5以上であることがより好ましい。アスペクト比を2より大きくすることで、異方性充填材14を厚さ方向zに配向させやすくなり、熱伝導性シート10の熱伝導性を高めやすい。 [0020] また、アスペクト比の上限は、特に限定されないが、実用的には100である。 なお、アスペクト比とは、異方性充填材14の短軸方向の長さに対する長軸方向の長さの比であり、繊維状材料においては、繊維長/繊維の直径を意味し、鱗片状材料においては鱗片状材料の長軸方向の長さ/厚さを意味する。 [0021] 熱伝導性シートにおける異方性充填材14の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して10~500質量部であることが好ましく、50~350質量部であることがより好ましい。また、異方性充填材14の含有量は、体積基準の充填率(体積充填率)で表すと、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%、より好ましくは8~30体積%である。 異方性充填材14の含有量を10質量部以上とすることで、熱伝導性を高めやすくなり、500質量部以下とすることで、後述する液状組成物の粘度が適切になりやすく、異方性充填材14の配向性が良好となる。 ・・・ [0023] また、異方性充填材14が鱗片状材料である場合、その平均粒径は、10~400μmが好ましく、15~300μmがより好ましい。また、20~200μmが特に好ましい。平均粒径を10μm以上とすることで、熱伝導性シート10において異方性充填材14同士が接触しやすくなり、熱の伝達経路が確保され、熱伝導性シート10の熱伝導性が良好になる。一方、平均粒径を400μm以下とすると、異方性充填材14の嵩が低くなり、シリコーン樹脂11中の異方性充填材14を高充填にすることが可能になる。 ・・・ [0025] 異方性充填材14としては、具体的には、炭素繊維、鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられる。これらの中では、炭素系材料は、比重が小さく、シリコーン樹脂11中への分散性が良好なため好ましく、中でも熱伝導率が高い、黒鉛化炭素材料がより好ましい。また、窒化ホウ素、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維は絶縁性を有する観点から好ましく、中でも窒化ホウ素がより好しい。窒化ホウ素は、特に限定されないが、鱗片状材料として使用されることが好ましい。鱗片状の窒化ホウ素は、凝集されてもよいし、凝集されていなくてもよいが、一部又は全部が凝集されていないことが好ましい。 ・・・ [0034]<非異方性充填材> 非異方性充填材15は、異方性充填材14とは別に熱伝導性シート10に含有される熱伝導性充填材であり、異方性充填材14とともに熱伝導性シート10に熱伝導性を付与する材料である。本実施形態では、非異方性充填材15が含有されることで、配向した異方性充填材14の間の隙間に充填材が介在し、熱伝導率の高い熱伝導性シート10が得られる。 非異方性充填材15は、形状に異方性を実質的に有しない充填材であり、後述する剪断力作用下など、異方性充填材14が所定の方向に配向する環境下においても、その所定の方向に配向しない充填材である。 ・・・ [0037] 非異方性充填材15の具体例は、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。また、非異方性充填材14の形状は、球状、不定形の粉末などが挙げられる。 非異方性充填材15において、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなど、金属酸化物としては、アルミナに代表される酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛など、金属窒化物としては窒化アルミニウムなどを例示することができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、炭素材料としては球状黒鉛などが挙げられる。金属以外の酸化物、窒化物、炭化物としては、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素などが挙げられる。 これらの中でも、酸化アルミニウムやアルミニウムは、熱伝導率が高く、球状のものが入手しやすい点で好ましく、水酸化アルミニウムは入手し易く熱伝導性シートの難燃性を高めることができる点で好ましい。 絶縁性を有する非異方性充填材15としては、上記した中でも、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物が挙げられるが、特に酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが好ましい。 非異方性充填材15は、上記したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 [0038] 非異方性充填材15の平均粒径は0.1~50μmであることが好ましく、0.5~35μmであることがより好ましい。また、1~15μmであることが特に好ましい。平均粒径を50μm以下とすることで、異方性充填材14の配向を乱すなどの不具合が生じにくくなる。また、平均粒径を0.1μm以上とすることで、非異方性充填材15の比表面積が必要以上に大きくならず、多量に配合しても液状組成物の粘度は上昇しにくく、非異方性充填材15を高充填しやすくなる。 なお、非異方性充填材15の平均粒径は、電子顕微鏡等で観察して測定できる。より具体的には、前記異方性充填材における測定と同様に電子顕微鏡や光学顕微鏡、X線CT装置を用いて、任意の非異方性充填材50個の粒径を測定して、その平均値(相加平均値)を平均粒径とすることができる。 [0039] 熱伝導性シート10における非異方性充填材15の含有量は、シリコーン樹脂100質量部に対して、50~1500質量部の範囲であることが好ましく、200~800質量部の範囲であることがより好ましい。50質量部以上とすることで、異方性充填材14同士の隙間に介在する非異方性充填材15の量が一定量以上となり、熱伝導性が良好になる。一方、1500質量部以下とすることで、含有量に応じた熱伝導性を高める効果を得ることができ、また、非異方性充填材15により異方性充填材14による熱伝導を阻害したりすることもない。 また、200~800質量部の範囲内にすることで、熱伝導性シート10の熱伝導性に優れ、液状組成物の粘度も好適となる。 なお、非異方性充填材15の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましく、30~60体積%がより好ましい。 なお、本実施形態において各単位層13は、実質的に同一の組成を有する。したがって、各単位層における異方性充填材、非異方性充填材、及びシリコーン樹脂の含有量は、熱伝導性シートにおける含有量と同様であり、各単位層における異方性充填材、非異方性充填材及びシリコーン樹脂の含有量も、上記で述べたとおりとなる。 ・・・ [0041](熱伝導性シート) ・・・ [0045] 熱伝導性シート10は、電子機器内部などにおいて使用される。具体的には、熱伝導性シート10は、発熱体と放熱体との間に介在させられ、発熱体で発した熱を熱伝導して放熱体に移動させ、放熱体から放熱させる。ここで、発熱体としては、電子機器内部で使用されるCPU、パワーアンプ、電源などの各種の電子部品が挙げられる。また、放熱体は、ヒートシンク、ヒートポンプ、電子機器の金属筐体などが挙げられる。熱伝導性シート10は、両面10A、10Bそれぞれが、発熱体及び放熱体それぞれに密着し、かつ圧縮して使用される。」 「[0046]<熱伝導性シートの製造方法> 次に、上記した第1の実施形態に係る熱伝導性シートの製造方法の一例について図2を参照しながら説明する。本製造方法は、それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する1次シート準備工程と、1次シートにVUVを照射するVUV照射工程と、VUVを照射した1次シートを積層して積層ブロックを得る積層工程と、積層ブロックを切断して熱伝導性シートを得る切断工程とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。 [0047](1次シート準備工程) 1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製する。液状組成物は、通常スラリーとなる。 液状組成物には必要に応じて適宜添加成分がさらに混合されてもよい。ここで、液状組成物を構成する各成分の混合は、例えば公知のニーダー、混練ロール、ミキサーなどを使用するとよい。 ・・・ [0050] 次に、液状組成物を、剪断力を付与しながらシート状に成形することにより、異方性充填材14をシート面と平行な方向(すなわち、面方向)に配向させる。ここで、液状組成物は、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工するとよく、このような方法により、液状組成物の塗工方向に沿った剪断力を与えることができる。この剪断力を受けて、液状組成物中の異方性充填材14は塗工方向に配向する。 [0051] 次に、シート状に成形された液状組成物を硬化させ、1次シートを得る。1次シートでは、上記のとおり、面方向に沿って異方性充填材が配向される。液状組成物の硬化は、液状組成物に含まれる硬化性シリコーン組成物を硬化することで行う。液状組成物の硬化は、加熱により行うとよいが、例えば、50~150℃程度の温度で行うとよい。また、加熱時間は、例えば10分~3時間程度である。 なお、液状組成物に溶剤が配合される場合には、溶剤は硬化時の加熱により揮発させるとよい。 ・・・ [0054](VUV照射工程) 次に、硬化された1次シートの少なくとも一方の面に対して、VUV照射を行う。VUVとは、真空紫外線であり、波長が10~200nmの紫外線を意味する。VUVの光源としては、エキシマXeランプ、エキシマArFランプなどが挙げられる。 硬化された1次シートは、上記したようにシリコーン樹脂(オルガノポリシロキサン)を含むものであり、VUVを照射すると、VUVが照射された面は活性化される。1次シートは、後述するように、その活性化された一方の面が重ね合わせ面となるように、他の1次シートと重ね合わせることで、1次シート間が強固に接着されることになる。 その原理は定かではないが、シリコーン樹脂は、VUVが照射されると、オルガノポリシロキサンのC-Si結合が、Si-OHなどのSi-O結合に変化し、そのSi-O結合により、1次シート間が強固に接着されると推定される。すなわち、1次シートと1次シート(単位層13、13)は、オルガノポリシロキサンの分子間で結合が生じることで接着される。 VUV照射条件は、1次シートの表面を活性化できる条件であれば特に限定されないが、例えば積算光量が5~100mJ/cm2、好ましくは積算光量が10~50mJ/cm2となるようにVUVを照射するとよい。 ・・・ [0057](切断工程) 次に、図2(c)に示すように、刃物18によって、積層ブロック22を1次シート21の積層方向xに沿って切断し、熱伝導性シート10を得る。この際、積層ブロック22は、異方性充填材14の配向方向と直交する方向に切断するとよい。刃物18としては、例えば、カミソリ刃やカッターナイフ等の両刃や片刃、丸刃、ワイヤー刃、鋸刃等を用いることができる。積層ブロック22は、刃物18を用いて、例えば、押切、剪断、回転、摺動等の方法により切断される。 [0058] なお、以上の製造方法では、シリコーン樹脂の原料として、加熱することで硬化される硬化性シリコーン組成物を使用した例を説明したが、シリコーン樹脂の原料は硬化性を有するものに限定されず、硬化性を有しないものを使用してもよい。そのような場合には、液状組成物は、シリコーン樹脂、熱伝導性充填材、及びその他必要に応じて配合される添加成分の混合物を有機溶剤で希釈したものを使用するとよい。有機溶剤で希釈された液状組成物は、シート状に成形して、乾燥することで1次シートとして、その乾燥により得られた1次シートに対して、VUV照射を行うとよい。」 「[0075](実施例6) 異方性充填材を窒化ホウ素(非凝集鱗片状材料、平均粒径40μm、アスペクト比4~8、熱伝導率100W/m・K)に変更し、さらに添加部数を180質量部に変更した点を除いて実施例1と同様に実施した。 得られた熱伝導性シートは厚さが2mmで、各単位層の厚さは500μmであった。異方性充填材の充填率が26体積%、非異方性充填材の充填率が41体積%であり、シリコーン樹脂の充填率が33体積%であった。なお、異方性充填材は、鱗片面の法線方向が積層方向に向いていた。」 「[請求項1] それぞれがシリコーン樹脂を含む複数の単位層を備え、かつ前記複数の単位層が互いに接着するように積層される熱伝導性シートであって、 前記複数の単位層のうち、少なくとも1つが熱伝導性充填材を含み、 前記複数の単位層が互いに接着する接着面に対して垂直方向から0.276MPaで圧縮したときの圧縮率が20~65%である、熱伝導性シート。 ・・・ [請求項3] 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含有する請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。 [請求項4] 前記熱伝導性充填材が、さらに非異方性充填材を含有する請求項3に記載の熱伝導性シート。 [請求項5] 前記異方性充填材が、シートの厚さ方向に配向される請求項3又は4に記載の熱伝導性シート。 ・・・ [請求項9] それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する工程と、 前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、 前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、 前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断して熱伝導性シートを得る工程と を備える熱伝導性シートの製造方法。 [請求項10] 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向され、 前記積層ブロックは、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断される 請求項9に記載の熱伝導性シートの製造方法。」 「[図1] [図:0001400445000004.jpg] [図2] [図:0001400445000005.jpg] 」 イ 甲1-1明細書等に記載された発明 (ア)先願甲1-1物発明 a 上記アの[請求項1]、[請求項3]、[請求項4]、[請求項5]には、 それぞれがシリコーン樹脂を含む複数の単位層を備え、かつ前記複数の単位層が互いに接着するように積層され、 前記複数の単位層のうち、少なくとも1つが熱伝導性充填材を含み、 前記複数の単位層が互いに接着する接着面に対して垂直方向から0.276MPaで圧縮したときの圧縮率が20~65%であり、 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含有し、 前記熱伝導性充填材が、さらに非異方性充填材を含有し、 前記異方性充填材が、シートの厚さ方向に配向される熱伝導性シートが記載されている。 そして、上記アの[0012]には、熱伝導性シートは、それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備えることが記載されているから、上記「それぞれがシリコーン樹脂を含む複数の単位層を備え」、「前記複数の単位層のうち、少なくとも1つが熱伝導性充填材を含み」は、「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備え」と言い換えることができる。 b 上記アの[0012]には、各単位層において、シリコーン樹脂は、熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであり、シリコーン樹脂には、熱伝導性充填材が分散するように配合されることが記載されている。 c 上記アの[0025]には、異方性充填材としては、具体的には、炭素繊維、鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられ、鱗片状の窒化ホウ素が好ましいことが記載されている。 d 上記アの[0037]には、非異方性充填材は、金属、金属酸化物としてアルミナ、金属窒化物として窒化アルミニウム、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられ、上記したものを2種以上併用してもよいこと、非異方性充填材の形状は球状、不定形の粉末などが挙げられることが記載されている。 e 上記アの[0023]には、異方性充填材は、鱗片状材料である場合、平均粒径は10~400μmが好ましいことが記載されている。 f 上記アの[0021]には、異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%であることが記載されている。 g 上記アの[0038]には、非異方性充填材の平均粒径は0.1~50μmが好ましいことが記載されている。 h 上記アの[0039]には、非異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましいことが記載されている。 i 上記アの[0045]には、熱伝導性シートは、電子機器内部などにおいて使用され、具体的には、熱伝導性シート10は、発熱体と放熱体との間に介在させられることが記載されているから、電子機器は、発熱体と、放熱体と、発熱体と放熱体の間に介在させられた熱伝導シートを備えているといえる。 j 上記アの[0046]には、それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する1次シート準備工程と、1次シートにVUVを照射するVUV照射工程と、VUVを照射した1次シートを積層して積層ブロックを得る積層工程と、積層ブロックを切断する切断工程とにより熱伝導性シートが得られることが記載されている。 k 以上によれば、甲1-1明細書等には、以下の発明が記載されていると認められる。 「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備え、かつ前記複数の単位層が互いに接着するように積層され、 前記複数の単位層が互いに接着する接着面に対して垂直方向から0.276MPaで圧縮したときの圧縮率が20~65%であり、 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含有し、 前記熱伝導性充填材が、さらに非異方性充填材を含有し、 前記異方性充填材が、シートの厚さ方向に配向される熱伝導性シートであって、 各単位層において、前記シリコーン樹脂は、前記熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであり、前記シリコーン樹脂には、前記熱伝導性充填材が分散するように配合され、 前記異方性充填材としては、具体的には、炭素繊維、鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられ、鱗片状の窒化ホウ素が好ましく、 前記非異方性充填材は、金属、金属酸化物としてアルミナ、金属窒化物として窒化アルミニウム、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられ、上記したもの2種以上を併用してもよく、前記非異方性充填材の形状は球状、不定形の粉末などが挙げられ、 前記異方性充填材は、鱗片状材料である場合、平均粒径は10~400μmが好ましく、 前記異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%であり、 前記非異方性充填材の平均粒径は0.1~50μmが好ましく、 前記非異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましく、 それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する1次シート準備工程と、1次シートにVUVを照射するVUV照射工程と、VUVを照射した1次シートを積層して積層ブロックを得る積層工程と、積層ブロックを切断する切断工程とにより得られる、熱伝導性シート。」(以下、「先願甲1-1物発明A」という。) 「発熱体と、放熱体と、発熱体と放熱体の間に介在させられた先願甲1-1物発明Aの熱伝導シートを備える、電子機器」(以下、「先願甲1-1物発明B」という。) (イ)先願甲1-1方法発明 a 上記アの[請求項9]、[請求項10]には、 それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する工程と、 前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、 前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、 前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断して熱伝導性シートを得る工程と を備え、 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向され、 前記積層ブロックは、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断される熱伝導性シートの製造方法が記載されている。 b 上記アの[0047]には、1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製すること、同[0050]には、液状組成物を、剪断力を付与しながらシート状に成形することにより、異方性充填材をシート面と平行な方向(すなわち、面方向)に配向させ、ここで、液状組成物は、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工するとよいことが記載されている。 ここで、1次シート準備工程は、上記aの「1次シートを用意する工程」に対応するものといえる。 c 上記アの[0058]には、シリコーン樹脂の原料は硬化性を有するものに限定されず、硬化性を有しないものを使用してもよいことが記載されている。 d 上記アの[0012]には、各単位層において、シリコーン樹脂は、熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであり、シリコーン樹脂には、熱伝導性充填材が分散するように配合されることが記載されている。 ここで、上記アの[0054]に「1次シートと1次シート(単位層13、13)」と記載されていることからすると、上記各単位層は、各1次シートであるといえる。 e 上記a~d及び上記(ア)c、d、f、hによれば、甲1-1明細書等には、以下の発明が記載されていると認められる。 「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する工程と、 前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、 前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、 前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断して熱伝導性シートを得る工程と を備え、 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向され、 前記積層ブロックは、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断される熱伝導性シートの製造方法であって、 前記1次シートを用意する工程は、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材、非異方性充填材)とを混合して液状組成物を調製し、前記液状組成物を、剪断力を付与しながらシート状に成形することにより、異方性充填材をシート面と平行な方向(すなわち、面方向)に配向させ、ここで、液状組成物は、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工するとよく、 前記シリコーン樹脂の原料は硬化性を有するものに限定されず、硬化性を有しないものを使用してもよく、 各1次シートにおいて、前記シリコーン樹脂は、前記熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであり、前記シリコーン樹脂には、前記熱伝導性充填材が分散するように配合され、 前記異方性充填材としては、具体的には、炭素繊維、鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられ、鱗片状の窒化ホウ素が好ましく、 前記非異方性充填材は、金属、金属酸化物としてアルミナ、金属窒化物として窒化アルミニウム、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられ、上記したもの2種以上を併用してもよく、前記非異方性充填材の形状は球状、不定形の粉末などが挙げられ、 前記異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%であり、 前記非異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましい、熱伝導性シートの製造方法。」(以下、「先願甲1-1方法発明」という。) (2)甲1-2:特願2019-179010号(出願日:2019年9月30日、国際公開第2021/065522号参照) ア 甲1-2の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「甲1-2明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 「背景技術 ・・・ [0003] 熱伝導性シートは、一般的には、高分子マトリクスと、高分子マトリクス中に分散された熱伝導性充填材とを含有する。また、熱伝導性シートは、特定の方向の熱伝導性を高めるために、形状に異方性を有する熱伝導性繊維のような異方性充填材を一方向に配向させることがある。」 「発明を実施するための形態 [0012] 以下、本発明の実施形態(本実施形態)に係る熱伝導性シートについて詳しく説明する。 ・・・ [0015] 図1に、本実施形態の熱伝導性シートの一例を示す。図1の熱伝導性シート10は、高分子マトリクス11中に鱗片状充填材12と繊維状充填材13とを含み、鱗片状充填材12の鱗片面の長軸方向と、繊維状充填材13の繊維軸方向とが同じ方向、具体的には厚さ方向(第1の方向)に配向している。熱伝導シート10は後述の製造方法により、複数の単位層14からなり、それぞれの単位層14が、鱗片状充填材12と繊維状充填材13とを含み、シート10の面方向に沿う一方向(第1の方向に垂直な方向:第3の方向)に沿って積層されている。 ・・・ [0018] 以下、本実施形態に係る熱伝導性シートを構成する各材料などについて説明する。 ・・・ [0027](鱗片状充填材) 鱗片状充填材は、シートの厚さ方向に配向させやすくして熱伝導性を高める観点から、アスペクト比が、3以上であることが好ましく、6~50であることがより好ましく、8~15であることがさらに好ましい。 アスペクト比は、鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向の長さ/厚さを意味する。 [0028] また、鱗片状充填材の平均粒径(平均長軸長)は、10~400μmが好ましく、15~300μmがより好ましい。また、20~200μmが特に好ましい。平均粒径を10μm以上とすることで、熱伝導性シートにおいて充填材同士が接触しやすくなり、熱の伝達経路が確保され、熱伝導性シートの熱伝導性が良好になる。一方、平均粒径を400μm以下とすると、鱗片状充填材の嵩が低くなり、マトリックス中の高充填にすることが可能になる。 なお、鱗片状充填材の平均粒径は、顕微鏡で観察して長軸方向の長さを直径として算出することができる。より具体的には、電子顕微鏡や光学顕微鏡、X線CT装置を用いて、任意の鱗片状充填材50個の長軸方向の長さを測定して、その平均値(相加平均値)を平均粒径とすることができる。 また、鱗片状充填材の厚さについても同様に電子顕微鏡や光学顕微鏡、X線CT装置を用いて測定することができる。 [0029] 鱗片状充填材としては、鱗片状炭素粉末、鱗片状炭化ケイ素粉末、鱗片状窒化アルミニウム粉末、鱗片状窒化ホウ素粉末、鱗片状酸化アルミニウム粉末等が挙げられる。なかでも、鱗片状黒鉛粉末が好ましい。 鱗片状黒鉛粉末は、グラファイトの結晶面が鱗片面の面内方向に連なっており、その面内方向に高い熱伝導率を備える。そのため、その鱗片面を所定の方向に揃えることで、特定方向の熱伝導率を高めることができる。鱗片黒鉛粉末は、高い黒鉛化度をもつものが好ましい。 [0030](繊維状充填材) 繊維状充填材は、その繊維軸方向をシートの厚さ方向に配向させやすくして熱伝導性を高める観点から、アスペクト比が、4以上であることが好ましく、7~100であることがより好ましく、15~50であることがさらに好ましい。 アスペクト比は、繊維状充填材の繊維軸方向の長さ(繊維長)/繊維の直径を意味する。 ・・・ [0032] 繊維状充填材としては、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられる。なかでも炭素繊維が好ましい。 炭素繊維としては、黒鉛化炭素繊維が好ましい。黒鉛化炭素繊維は、グラファイトの結晶面が繊維軸方向に連なっており、その繊維軸方向に高い熱伝導率を備える。そのため、その繊維軸方向を所定の方向に揃えることで、特定方向の熱伝導率を高めることができる。黒鉛化炭素繊維は、高い黒鉛化度をもつものが好ましい。 ・・・ [0036] 熱伝導性シートにおける鱗片状充填材と繊維状充填材との合計含有量は、マトリクスの前駆体である樹脂100質量部に対して10~500質量部であることが好ましく、50~350質量部であることがより好ましい。また、上記の合計含有量は、体積基準の充填率(体積充填率)で表すと、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%、より好ましくは8~30体積%である。 合計含有量を10質量部以上とすることで、熱伝導性を高めやすくなり、500質量部以下とすることで、後述する液状組成物の粘度が適切になりやすく、各充填材の配向性が良好となる。 ・・・ [0042](非異方性充填材) 本実施形態においては、マトリクス中に鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材を含有してもよい。当該非異方性充填材は、鱗片状充填材及び繊維状充填材とともに熱伝導性シートに熱伝導性を付与する材料である。非異方性充填材が含有されることで、配向した鱗片状充填材及び繊維状充填材の間に当該充填材が介在し、熱伝導率のより高い熱伝導性シートが得られる。 非異方性充填材は、形状に異方性を実質的に有しない充填材であり、後述する剪断力作用下など、鱗片状充填材及び繊維状充填材が所定の方向に配向する環境下においても、その所定の方向に配向しない充填材である。 ・・・ [0045] 非異方性充填材は、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。また、非異方性充填材の形状は、球状、不定形の粉末などが挙げられる。 非異方性充填材において、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなど、金属酸化物としては、アルミナに代表される酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛など、金属窒化物としては窒化アルミニウムなどを例示することができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、炭素材料としては球状黒鉛などが挙げられる。金属以外の酸化物、窒化物、炭化物としては、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素などが挙げられる。 これらの中でも、酸化アルミニウムやアルミニウムは、熱伝導率が高く、球状のものが入手しやすい点で好ましく、水酸化アルミニウムは入手し易く熱伝導性シートの難燃性を高めることができる点で好ましい。 絶縁性を有する非異方性充填材としては、上記した中でも、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物が挙げられるが、特に酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが好ましい。 非異方性充填材は、上記したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 [0046] 非異方性充填材の平均粒径は0.1~50μmであることが好ましく、0.5~35μmであることがより好ましい。また、1~15μmであることが特に好ましい。平均粒径を50μm以下とすることで、鱗片状充填材及び繊維状充填材の配向を乱すなどの不具合が生じにくくなる。また、平均粒径を0.1μm以上とすることで、非異方性充填材の比表面積が必要以上に大きくならず、多量に配合しても液状組成物の粘度は上昇しにくく、非異方性充填材を高充填しやすくなる。 なお、非異方性充填材の平均粒径は、電子顕微鏡等で観察して測定できる。より具体的には、鱗片状充填材及び繊維状充填材における測定と同様に電子顕微鏡や光学顕微鏡、X線CT装置を用いて、任意の非異方性充填材50個の粒径を測定して、その平均値(相加平均値)を平均粒径とすることができる。 [0047] 熱伝導性シートにおける非異方性充填材の含有量は、高分子マトリクスの前駆体である樹脂100質量部に対して、50~1500質量部の範囲であることが好ましく、200~800質量部の範囲であることがより好ましい。50質量部以上とすることで、鱗片状充填材及び繊維状充填材の隙間に介在する非異方性充填材の量が一定量以上となり、熱伝導性が良好になる。一方、1500質量部以下とすることで、含有量に応じた熱伝導性を高める効果を得ることができ、また、非異方性充填材により鱗片状充填材及び繊維状充填材による熱伝導を阻害したりすることもない。また、200~800質量部の範囲内にすることで、熱伝導性シートの熱伝導性に優れ、液状組成物の粘度も好適となる。 なお、非異方性充填材の含有量は、体積%で表すと、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましく、30~60体積%がより好ましい。 なお、図1における各単位層14は、実質的に同一の組成を有する。したがって、各単位層における鱗片状充填材、繊維状充填材、非異方性充填材、及び高分子マトリクスの前駆体である樹脂の含有量は、熱伝導性シートにおける含有量と同様であり、各単位層における鱗片状充填材、繊維状充填材、非異方性充填材、及び高分子マトリクスの前駆体である樹脂の含有量も、上記で述べたとおりとなる。 ・・・ [0052] 本実施形態の係る熱伝導性シートは、電子機器内部などにおいて使用される。具体的には、熱伝導性シートは、発熱体と放熱体との間に介在させられ、発熱体で発した熱を熱伝導して放熱体に移動させ、放熱体から放熱させる。ここで、発熱体としては、電子機器内部で使用されるCPU、パワーアンプ、電源などの各種の電子部品が挙げられる。また、放熱体は、ヒートシンク、ヒートポンプ、電子機器の金属筐体などが挙げられる。熱伝導性シートは、その両面それぞれが、発熱体及び放熱体それぞれに密着し、かつ圧縮して使用される。」 「[0053]<熱伝導性シートの製造方法> 本発明の熱伝導性シートの製造方法は、高分子マトリクス中に鱗片状充填材と繊維状充填材とを含む熱伝導性シートの製造方法であって、高分子マトリクスの前駆体である樹脂と鱗片状充填材と繊維状充填材とを含む混合物を調製する混合物調製工程と、前記混合物を所定形状にする際に流動配向処理により、前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させる配向処理工程とを含む熱伝導性シートの製造方法である。当該製造方法では、前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させるために流動配向を用いているため、磁場配向よりも確実に所望の配向状態を得ることができる。 なお、上記「所定形状」とはシート状、柱状等の特定の形状をいう。また、高い熱伝導性を得る観点から、鱗片状充填材と繊維状充填材との質量割合(鱗片状充填材/繊維状充填材)は55/45以上とすることが好ましい。 [0054] 当該熱伝導性シートの製造方法における好ましい態様としては、下記の第1~第8の方法が挙げられる。 ・・・ [0058](第4の方法) 第4の方法は、前記混合物をシート状にする際に流動配向処理により、前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させる際に、混合物を成形ダイス内に設けられた配向部と圧縮部を通過させて熱伝導性シートとする熱伝導性シートの製造方法である。具体的には、複数の構造からなるダイスに通過させて、配向成形を行うものである。混合物はダイス内に設けられた複数のスリット又は円、又は多角形形状を持つ流路を通過することで混合物に配合された鱗片状充填材及び繊維状充填材をシートの厚さ方向に配向させ、引き続き、構成されたダイス内に設けた圧縮エリアを通過することで異方性を有する無機粒子の配向状態を乱すことなく成形させた後、金型出口よりブロック体として押し出される。成形体は樹脂に適した方法で硬化させた後、シートの幅方向で切断することで、熱伝導性シートが製造される。 ・・・ [0062](第8の方法) 第8の方法は、連続する上下方向の隙間Xの第一ギャップ及び上下方向の隙間Yの第二ギャップを有するTダイを用い(ただし、X<Y)、厚み方向に鱗片状充填材及び繊維状充填材が配向した熱伝導性シートの製造方法である。具体的には、混合物を、前記第一ギャップ通過させて、鱗片状充填材及び繊維状充填材面方向に配向した樹脂成形前駆体を得る第一工程と、第二ギャップにおいて、第一ギャップを通過した樹脂成形前駆体を、押出方向に対して略垂直な方向に折り畳みながら融着させて樹脂成形品を得る第二工程と、を有する熱伝導性シートの製造方法である。ここで、記第一ギャップは0.5mm以上5.0mm以下であることが好ましく、第二ギャップは前記第一ギャップの2倍以上20倍以下であることが好ましい。 ・・・ [0067] 次に、液状組成物を、剪断力を付与しながらシート状に成形することにより、鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、繊維状充填材の繊維軸方向とをシート面と平行な方向(すなわち、面方向)に配向させる。ここで、液状組成物は、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工するとよく、このような方法により、液状組成物の塗工方向に沿った剪断力を与えることができる。この剪断力を受けて、液状組成物中の鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、繊維状充填材の繊維軸方向は塗工方向に配向する。 ・・・ [0074](切断工程) 次に、図2(c)に示すように、刃物18によって、積層ブロック22を1次シート21の積層方向xに沿って切断し、熱伝導性シート10を得る。この際、積層ブロック22は、鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、繊維状充填材の繊維軸方向との配向方向と直交する方向に切断するとよい。刃物18としては、例えば、カミソリ刃やカッターナイフ等の両刃や片刃、丸刃、ワイヤー刃、鋸刃等を用いることができる。積層ブロック22は、刃物18を用いて、例えば、押切、剪断、回転、摺動等の方法により切断される。 [0075] なお、以上の製造方法では、シリコーン樹脂の原料として、加熱することで硬化される硬化性シリコーン組成物を使用した例を説明したが、シリコーン樹脂の原料は硬化性を有するものに限定されず、硬化性を有しないものを使用してもよい。そのような場合には、液状組成物は、シリコーン樹脂、鱗片状充填材、繊維状充填材、及びその他必要に応じて配合される添加成分の混合物を有機溶剤で希釈したものを使用するとよい。有機溶剤で希釈された液状組成物は、シート状に成形して、乾燥することで1次シートとして、その乾燥により得られた1次シートに対して、VUV照射を行うとよい。」 「[0083][実施例1] 硬化性シリコーン組成物として、アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(主剤)とハイドロジェンオルガノポリシロキサン(硬化剤)(合計で100質量部、体積充填率40体積%)と、鱗片状充填材として鱗片状黒鉛粉末(平均長軸長80μm、アスペクト比4~8、熱伝導率400W/m・K)71.5質量部(体積充填率12体積%)と、繊維状充填剤として黒鉛化炭素繊維(平均繊維長100μm、アスペクト比10、熱伝導率500W/m・K)58.5質量部(体積充填率10体積%)と、酸化アルミニウム(球状、平均粒径3μm、アスペクト比1.0)400質量部(体積充填率39体積%)と、を混合して、スラリー状の液状組成物(混合物)を得た。液状組成物の25℃における粘度は245Pa・sであった。」 「[請求項1] 高分子マトリクス中に鱗片状充填材と繊維状充填材とを含む熱伝導性シートであって、 前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、前記繊維状充填材の繊維軸方向とが同じ方向に配向しており、 鱗片状充填材と繊維状充填材との質量割合(鱗片状充填材/繊維状充填材)が55/45以上である熱伝導性シート。 ・・・ [請求項9] 高分子マトリクス中に鱗片状充填材と繊維状充填材とを含む熱伝導性シートの製造方法であって、 高分子マトリクスの前駆体である樹脂と鱗片状充填材と繊維状充填材とを含む混合物を調製する混合物調製工程と、 前記混合物をシート状にする際に流動配向処理により、前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させる配向処理工程と、 前記配向処理工程を経て得られた1次シートを複数用意し、前記複数の1次シートを積層させて積層ブロックを形成する工程と、 前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断する切断工程と、を含む熱伝導性シートの製造方法。」 「[図1] [図:0001400445000006.jpg] [図2] [図:0001400445000007.jpg] 」 イ 甲1-2明細書等に記載された発明 (ア)先願甲1-2物発明 a 上記アの[請求項1]には、高分子マトリクス中に鱗片状充填材と繊維状充填材とを含み、 前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、前記繊維状充填材の繊維軸方向とが同じ方向に配向しており、 鱗片状充填材と繊維状充填材との質量割合(鱗片状充填材/繊維状充填材)が55/45以上である熱伝導性シートが記載されている。 b 上記アの[0015]には、熱伝導性シートは、高分子マトリクス中に鱗片状充填材と繊維状充填材とを含み、鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、繊維状充填材の繊維軸方向とが同じ方向、具体的には厚さ方向(第1の方向)に配向していることが記載されているから、上記aの「同じ方向」は、熱伝導性シートの厚さ方向であるといえる。 また、同[0015]には、熱伝導シートは、複数の単位層からなり、それぞれの単位層が、鱗片状充填材と繊維状充填材とを含み、シートの面方向に沿う一方向に沿って積層されていることが記載されている。 c 上記アの[0042]には、マトリクス中に鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材を含有してもよいことが記載されている。 d 上記アの[0029]には、鱗片状充填材としては、鱗片状炭素粉末、鱗片状炭化ケイ素粉末、鱗片状窒化アルミニウム粉末、鱗片状窒化ホウ素粉末、鱗片状酸化アルミニウム粉末等が挙げられることが記載されている。 e 上記アの[0032]には、繊維状充填材としては、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられ、なかでも炭素繊維が好ましいことが記載されている。 f 上記アの[0045]には、非異方性充填材は、金属、金属酸化物としてアルミナ、金属窒化物として窒化アルミニウム、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられ、上記したもの2種以上を併用してもよく、前記非異方性充填材の形状は球状、不定形の粉末などが挙げられることが記載されている。 g 上記アの[0028]には、鱗片状充填材の平均粒径は、10~400μmが好ましいことが記載されている。 h 上記アの[0036]には、鱗片状充填材と繊維状充填材との合計含有量は、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%であることが記載されている。 i 上記アの[0046]には、非異方性充填材の平均粒径は0.1~50μmが好ましいことが記載されている。 j 上記アの[0047]には、非異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましいことが記載されている。 k 上記アの[0052]には、熱伝導性シートは、電子機器内部などにおいて使用され、具体的には、熱伝導性シートは、発熱体と放熱体との間に介在させられることが記載されているから、電子機器は、発熱体、放熱体、発熱体と放熱体との間に介在させられる熱伝導性シートを備えているといえる。 l 以上によれば、甲1-2明細書等には以下の発明が記載されていると認められる。 「高分子マトリクス中に鱗片状充填材と繊維状充填材とを含み、 前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、前記繊維状充填材の繊維軸方向とが同じ方向に配向しており、 複数の単位層からなり、それぞれの単位層が、鱗片状充填材と繊維状充填材とを含み、シートの面方向に沿う一方向に沿って積層されており、 鱗片状充填材と繊維状充填材との質量割合(鱗片状充填材/繊維状充填材)が55/45以上である熱伝導性シートであって、 前記同じ方向は、前記熱伝導性シートの厚さ方向であり、 前記高分子マトリクス中に鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材を含有してもよく、 前記鱗片状充填材としては、鱗片状炭素粉末、鱗片状炭化ケイ素粉末、鱗片状窒化アルミニウム粉末、鱗片状窒化ホウ素粉末、鱗片状酸化アルミニウム粉末等が挙げられ、 前記繊維状充填材としては、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられ、なかでも炭素繊維が好ましく、 前記非異方性充填材は、金属、金属酸化物としてアルミナ、金属窒化物として窒化アルミニウム、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられ、上記したもの2種以上を併用してもよく、前記非異方性充填材の形状は球状、不定形の粉末などが挙げられ、 前記鱗片状充填材の平均粒径は、10~400μmが好ましく、 前記鱗片状充填材と繊維状充填材との合計含有量は、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%であり、 前記非異方性充填材の平均粒径は0.1~50μmが好ましく、 前記非異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましい、熱伝導性シート。」(以下、「先願甲1-2物発明A」という。) 「発熱体、放熱体、発熱体と放熱体との間に介在させられた先願甲1-2物発明Aの熱伝導性シートを備える、電子機器。」(以下、「先願甲1-2物発明B」という。) (イ)先願甲1-2方法発明 a 上記アの[請求項9]には、高分子マトリクスの前駆体である樹脂と鱗片状充填材と繊維状充填材とを含む混合物を調製する混合物調製工程と、 前記混合物をシート状にする際に流動配向処理により、前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させる配向処理工程と、 前記配向処理工程を経て得られた1次シートを複数用意し、前記複数の1次シートを積層させて積層ブロックを形成する工程と、 前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断する切断工程と、を含む熱伝導性シートの製造方法が記載されている。 b 上記アの[0042]には、マトリクス中に鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材を含有してもよいことが記載され、同[0083]には、硬化性シリコーン組成物と、鱗片状充填材と、繊維状充填剤と、酸化アルミニウム(球状、平均粒径3μm、アスペクト比1.0)と、を混合して、スラリー状の液状組成物(混合物)を得ることが記載されている。 ここで、酸化アルミニウム(球状、平均粒径3μm、アスペクト比1.0)は、球状であるから、上記非異方性充填材に対応するものである。また、スラリー状の液状組成物(混合物)を得ることは、上記aの「混合物調製工程」に対応するものといえる。 そうすると、上記「混合物調製工程」は、高分子マトリクスの前駆体である樹脂と鱗片状充填材と繊維状充填材と非異方性充填材とを含む混合物を調製しているといえる。 c 上記アの[0067]には、液状組成物を、剪断力を付与しながらシート状に成形することにより、鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、繊維状充填材の繊維軸方向とをシート面と平行な方向(すなわち、面方向)に配向させ、ここで、液状組成物は、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工するとよく、このような方法により、液状組成物の塗工方向に沿った剪断力を与えることができ、この剪断力を受けて、液状組成物中の鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、繊維状充填材の繊維軸方向は塗工方向に配向することが記載されている。 ここで、上記「液状組成物」は、同[0083]の「液状組成物(混合物)」を参酌すると、上記aの「混合物」であるといえる。 そうすると、混合物を、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工することによって、液状組成物中の鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と、繊維状充填材の繊維軸方向は塗工方向に配向するものであるから、上記「混合物を、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工する」との工程は、上記aの「配向処理工程」に対応するといえる。 また、上記アの[0058]には、鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させる際に、成形ダイスを用いること、同[0062]には、Tダイを用いることが記載されているから、上記aの「配向処理工程」において、成形ダイス又はTダイを用いているといえる。 d 上記アの[0075]には、シリコーン樹脂の原料は硬化性を有するものに限定されず、硬化性を有しないものを使用してもよいことが記載されている。 ここで、シリコーン樹脂は、上記aの「高分子マトリクスの前駆体である樹脂」に対応するといえる。 e 上記a~d及び上記(ア)b、d~f、h、jによれば、甲1-2明細書等には、以下の発明が記載されていると認められる。 「高分子マトリクスの前駆体である樹脂と鱗片状充填材と繊維状充填材と非異方性充填材とを含む混合物を調製する混合物調製工程と、 前記混合物をシート状にする際に流動配向処理により、前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させる配向処理工程と、 前記配向処理工程を経て得られた1次シートを複数用意し、前記複数の1次シートを積層させて積層ブロックを形成する工程と、 前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断する切断工程と、を含む熱伝導性シートの製造方法であって、 前記配向処理工程において、前記混合物を、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工し、また、成形ダイス又はTダイを用い、 前記高分子マトリクスの前駆体である樹脂は、硬化性を有するものに限定されず、硬化性を有しないものを使用してもよく、 前記同じ方向は、前記熱伝導性シートの厚さ方向であり、 前記鱗片状充填材としては、鱗片状炭素粉末、鱗片状炭化ケイ素粉末、鱗片状窒化アルミニウム粉末、鱗片状窒化ホウ素粉末、鱗片状酸化アルミニウム粉末等が挙げられ、 前記繊維状充填材としては、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられ、なかでも炭素繊維が好ましく、 前記非異方性充填材は、金属、金属酸化物としてアルミナ、金属窒化物として窒化アルミニウム、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられ、上記したもの2種以上を併用してもよく、前記非異方性充填材の形状は球状、不定形の粉末などが挙げられ、 前記鱗片状充填材と繊維状充填材との合計含有量は、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%であり、 前記非異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましい、熱伝導性シートの製造方法。」(以下、「先願甲1-2方法発明」という。) 2 甲1-1明細書等に記載された発明を先願発明とした取消理由1について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と先願甲1-1物発明Aとを対比する。 (ア)先願甲1-1物発明Aの「シリコーン樹脂」は、「前記熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであ」るから、本件発明1の「バインダ樹脂」に相当する。 (イ)先願甲1-1物発明Aの「熱伝導性充填材」が含有する「異方性充填材」は、「具体的には、炭素繊維、鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられ、鱗片状の窒化ホウ素が好まし」いものであり、鱗片状のものであるといえるから、本件発明1の「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」に相当する。 (ウ)先願甲1-1物発明Aの「熱伝導性充填材」が含有する「非異方性充填材」は、その「形状」として「球状、不定形の粉末などが挙げられ」るものであり、非鱗片状かつ非繊維状であるといえるから、本件発明1の「非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」に相当する。 (エ)先願甲1-1物発明Aにおいて、「前記異方性充填材としては」、「鱗片状の窒化ホウ素が好まし」いものであり、(イ)の検討を参酌すると、先願甲1-1物発明Aと本件発明1とは、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であ」る点で共通する。 (オ)先願甲1-1物発明Aにおいて、「前記異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%であり」、上記(イ)の検討を参酌すると、先願甲1-1物発明Aと本件発明1とは、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であ」る点で共通する。 (カ)先願甲1-1物発明Aにおいて、「前記非異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましい」ものであり、上記(ウ)の検討を参酌すると、先願甲1-1物発明Aと本件発明1とは、「上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であ」る点で共通する。 (キ)上記(ア)~(ウ)の検討を参酌すると、先願甲1-1物発明Aの「前記シリコーン樹脂には、前記熱伝導性充填材が分散するように配合され」ることは、本件発明1の「上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している」ことに相当する。 (ク)先願甲1-1物発明Aの「熱伝導性シート」は、「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する1次シート準備工程と、1次シートにVUVを照射するVUV照射工程と、VUVを照射した1次シートを積層して積層ブロックを得る積層工程と、積層ブロックを切断する切断工程とにより得られる」ものであるから、本件発明1の「熱伝導性シート」のように、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」とはいえない。 (ケ)先願甲1-1物発明Aの「熱伝導性シート」は、本件発明1の「熱伝導性シート」に相当する。 (コ)以上によれば、本件発明1と先願甲1-1物発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「バインダ樹脂と、鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり、 上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、 上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である、熱伝導性シート。」 <相違点> 相違点1-1:本件発明1は、「当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる」のに対し、先願甲1-1物発明Aは、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点1-2:本件発明1は、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、先願甲1-1物発明Aは、そのような構成を有していない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1-2から検討する。 上記ア(ク)で検討したとおり、先願甲1-1物発明Aの「熱伝導性シート」は、本件発明1の「熱伝導性シート」のように、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」とはいえない。 したがって、相違点1-2は実質的な相違点である。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく本件発明1は、先願甲1-1物発明Aと同一ではない。 (2)本件発明3、4、6~9、11、18について 本件発明3、4、6~9、11は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点1-2に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(1)イで検討したのと同様の理由により、本件発明3、4、6~9、11は、先願甲1-1物発明Aと同一ではない。 また、本件発明18は、本件発明1の熱伝導性シートを備える電子機器の発明であり、相違点1-2に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(1)イで検討したのと同様の理由により、本件発明18は、先願甲1-1物発明Bと同一ではない。 (3)本件発明12について ア 対比 本件発明12と先願甲1-1方法発明とを対比する。 (ア)上記(1)ア(ア)~(ウ)で検討したのと同様に、先願甲1-1方法発明の「シリコーン樹脂」、「熱伝導性充填材」に含まれる「異方性充填材」、「熱伝導性充填材」に含まれる「非異方性充填材」は、本件発明12の「バインダ樹脂」、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」、「非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」に相当する。 (イ)先願甲1-1方法発明において、「前記シリコーン樹脂には、前記熱伝導性充填材が分散するように配合され」るものであるから、「1次シートを用意する工程」における「シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材、非異方性充填材)とを混合して液状組成物を調製」する工程は、熱伝導性樹脂材料を、シリコーン樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製しているといえる。 そして、上記(ア)の検討を参酌すると、先願甲1-1方法発明の「シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材、非異方性充填材)とを混合して液状組成物を調製」する工程は、本件発明12の「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程A」に相当する。 (ウ)上記(イ)の検討を参酌すると、先願甲1-1方法発明の「シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材、非異方性充填材)とを混合して液状組成物を調製」する工程を含む「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する工程」によって得られた「1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、 前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程」は、本件発明12の「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程B」に相当する。 (エ)上記(ウ)の検討を参酌すると、先願甲1-1方法発明の「前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断して熱伝導性シートを得る工程」と、本件発明12の「上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シートを得る工程C」とは、「前記成形体ブロックをシート状にスライスして」「熱伝導性シートを得る工程C」である点で共通する。 しかし、甲1-1方法発明の「熱伝導性シート」は、「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する工程と、 前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、 前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、 前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断して熱伝導性シートを得る工程と」により製造されるものであるから、本件発明12の「熱伝導性シート」のように、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」とはいえない。 (オ)先願甲1-1方法発明において、「前記異方性充填材としては」、「鱗片状の窒化ホウ素が好まし」いものであり、上記(ア)の検討を参酌すると、先願甲1-1方法発明と本件発明12とは、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であ」る点で共通する。 (カ)上記(1)ア(オ)、(カ)で検討したのと同様に、本件発明12と先願甲1-1方法発明とは、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であ」る点、及び、「上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である」点で共通する。 (キ)先願甲1-1方法発明の「熱伝導性シートの製造方法」は、本件発明12の「熱伝導性シートの製造方法」に相当する。 (ク)以上によれば、本件発明12と先願甲1-1方法発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、 上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、 上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり、 上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である、熱伝導性シートの製造方法。」 <相違点> 相違点1-3:本件発明12は、「厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シート」であるのに対し、先願甲1-1方法発明は、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 相違点1-4:本件発明12は、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、先願甲1-1方法発明は、そのような構成を備えていない点 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点1-4から検討する。 上記ア(エ)で検討したとおり、甲1-1方法発明の「熱伝導性シート」は、本件発明12の「熱伝導性シート」のように、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」とはいえない。 したがって、相違点1-4は実質的な相違点である。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、先願甲1-1方法発明と同一ではない。 (4)本件発明13~17について 本件発明13~17は、本件発明12を減縮した発明であり、いずれも相違点1-4に係る本件発明12の構成を有するものであるから、上記(3)イで検討したのと同様の理由により、本件発明13~17は、先願甲1-1方法発明と同一ではない。 3 甲1-2明細書等に記載された発明を先願発明とした取消理由2について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と先願甲1-2物発明Aとを対比する (ア)先願甲1-2物発明Aの「高分子マトリクス」は、本件発明1の「バインダ樹脂」に相当する。 (イ)先願甲1-2物発明Aの「鱗片状充填材と繊維状充填材」について、「前記鱗片状充填材としては、鱗片状炭素粉末、鱗片状炭化ケイ素粉末、鱗片状窒化アルミニウム粉末、鱗片状窒化ホウ素粉末、鱗片状酸化アルミニウム粉末等が挙げられ」、「前記繊維状充填材としては、炭素繊維、金属繊維、セラミックス繊維、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられ」るから、上記「鱗片状充填材と繊維状充填材」とは、いずれも、熱伝導性フィラーであるといえる。 したがって、先願甲1-2物発明Aの「鱗片状充填材と繊維状充填材」は、本件発明1の「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」に相当する。 (ウ)先願甲1-2物発明Aの「鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材」の「形状は球状、不定形の粉末などが挙げられ」るから、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーであるといえる。 したがって、先願甲1-2物発明Aの「鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材」は、本件発明1の「非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」に相当する。 (エ)上記1(2)アにおける甲1-2明細書等の[0003]には、背景技術として「熱伝導性シートは、一般的には、高分子マトリクスと、高分子マトリクス中に分散された熱伝導性充填材とを含有する」と記載されていることからすると、先願甲1-2物発明Aの「鱗片状充填材と繊維状充填材」及び「鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材」も、高分子マトリクス中に分散しているといえる。 そうすると、上記(ア)~(ウ)の検討を参酌すると、先願甲1-2物発明Aと本件発明1とは、「上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している」点で共通する。 (オ)先願甲1-2物発明Aにおいて、「前記鱗片状充填材としては」、「鱗片状窒化ホウ素粉末」が挙げられるものであり、上記(イ)の検討を参酌すると、先願甲1-2物発明Aと本件発明1とは、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素を含有する」点で共通する。 (カ)先願甲1-2物発明Aにおいて、「前記鱗片状充填材と繊維状充填材との合計含有量は、熱伝導性シート全量に対して、好ましくは2~40体積%」であり、上記(イ)の検討を参酌すると、先願甲1-2物発明Aと本件発明1とは、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であ」る点で共通する。 (キ)先願甲1-2物発明Aにおいて、「前記非異方性充填材の含有量は、熱伝導性シート全量に対して、10~75体積%が好ましい」ものであり、上記(ウ)の検討を参酌すると、先願甲1-2物発明Aと本件発明1とは、「上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であ」る点で共通する。 (ク)先願甲1-2物発明Aの「熱伝導性シート」は、「複数の単位層からなり、それぞれの単位層が、鱗片状充填材と繊維状充填材とを含み、シートの面方向に沿う一方向に沿って積層されて」いるものであるから、本件発明1の「熱伝導性シート」のように、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」とはいえない。 (ケ)先願甲1-2物発明Aの「熱伝導性シート」は、本件発明1の「熱伝導性シート」に相当する。 (コ)以上によれば、本件発明1と先願甲1-2物発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「バインダ樹脂と、鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり、 上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、 上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である、伝導性シート。」 <相違点> 相違点2-1:本件発明1は、「当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる」のに対し、先願甲1-2物発明Aは、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点2-2:本件発明1は、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、先願甲1-2物発明Aは、そのような構成を有していない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み相違点2-2から検討する。 上記ア(ク)で検討したとおり、先願甲1-2物発明Aの「熱伝導性シート」は、本件発明1の「熱伝導性シート」のように、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」とはいえない。 したがって、相違点2-2は実質的な相違点である。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、先願甲1-2物発明Aと同一ではない。 (2)本件発明3、4、6~9、11、18について 本件発明3、4、6~9、11は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点2-2に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(1)イで検討したのと同様の理由により、本件発明3、4、6~9、11は、先願甲1-2物発明Aと同一ではない。 また、本件発明18は、本件発明1の熱伝導性シートを備える電子機器の発明であり、相違点2-2に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(1)イで検討したのと同様の理由により、本件発明18は、先願甲1-2物発明Bと同一ではない。 (3)本件発明12について ア 対比 本件発明12と先願甲1-2方法発明とを対比する。 (ア)上記(1)ア(ア)~(ウ)で検討したのと同様に、先願甲1-2方法発明の「高分子マトリクス」、「鱗片状充填材と繊維状充填材」、「鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材」は、それぞれ、本件発明12の「バインダ樹脂」、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」、「非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」に相当する。 (イ)上記(1)ア(エ)で検討したのと同様に、先願甲1-2方法発明の「高分子マトリクス中」に含まれる「鱗片状充填材と繊維状充填材」及び「鱗片状充填材及び繊維状充填材以外の非異方性充填材」は、高分子マトリクス中に分散しているといえるから、先願甲1-2方法発明において、「高分子マトリクスの前駆体である樹脂と鱗片状充填材と繊維状充填材と非異方性充填材とを含む混合物を調製する混合物調製工程」は、鱗片状充填材と繊維状充填材と非異方性充填材とを高分子マトリクスの前駆体である樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製しているといえる。 そして、上記(ア)の検討を参酌すると、先願甲1-2方法発明の「高分子マトリクスの前駆体である樹脂と鱗片状充填材と繊維状充填材と非異方性充填材とを含む混合物を調製する混合物調製工程」は、本件発明12の「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程A」に相当する。 (ウ)上記(イ)の検討を参酌すると、先願甲1-2方法発明の「前記混合物をシート状にする際に流動配向処理により、前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させる配向処理工程と、 前記配向処理工程を経て得られた1次シートを複数用意し、前記複数の1次シートを積層させて積層ブロックを形成する工程」は、本件発明12の「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程B」に相当する。 (エ)上記(ウ)の検討を参酌すると、先願甲1-2方法発明の「前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断する切断工程」と、本件発明12の「上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シートを得る工程C」とは、「前記成形体ブロックをシート状にスライスして」「熱伝導性シートを得る工程C」である点で共通する。 しかし、先願甲1-2方法発明の「熱伝導性シート」は、高分子マトリクスの前駆体である樹脂と鱗片状充填材と繊維状充填材と非異方性充填材とを含む混合物を調製する混合物調製工程と、 前記混合物をシート状にする際に流動配向処理により、前記鱗片状充填材の鱗片面の長軸方向と前記繊維状充填材の繊維軸方向とを同じ方向に配向させる配向処理工程と、 前記配向処理工程を経て得られた1次シートを複数用意し、前記複数の1次シートを積層させて積層ブロックを形成する工程と、 前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断する切断工程と」により製造されるものであるから、本件発明12の「熱伝導性シート」のように、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」とはいえない。 (オ)上記(1)ア(カ)、(キ)で検討したのと同様に、本件発明12と先願甲1-2方法発明とは、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であ」る点、及び、「上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である」点で共通する。 (カ)先願甲1-2方法発明の「熱伝導性シートの製造方法」は、本件発明12の「熱伝導性シートの製造方法」に相当する。 (キ)以上によれば、本件発明12と先願甲1-2方法発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、 上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、 上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であり、 上記熱伝導性シート中、上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である、熱伝導性シートの製造方法。」 <相違点> 相違点2-3:本件発明12は、「厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シート」であるのに対し、先願甲1-2方法発明は、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 相違点2-4:本件発明12は、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、先願甲1-2方法発明は、そのような構成を備えていない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み相違点2-4から検討する。 上記ア(エ)で検討したとおり、先願甲1-2方法発明の「熱伝導性シート」は、本件発明12の「熱伝導性シート」のように、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」とはいえない。 したがって、相違点2-4は、実質的な相違点である。 よって、本件発明12は、先願甲1-2方法発明と同一ではない。 (4)本件発明13~17について 本件発明13~17は、本件発明12を減縮した発明であり、いずれも相違点2-4に係る本件発明12の構成を有するものであるから、上記(3)イで検討したのと同様の理由により、本件発明13~17は、先願甲1-2方法発明と同一ではない。 4 小括 以上のとおり、本件発明1、3、4、6~9、11~18は、甲1-1明細書等に記載された発明と同一ではなく、また、甲1-2明細書等に記載された発明と同一ではないから、本件請求項1、3、4、6~9、11~18に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえない。 したがって、取消理由1、2には理由がない。 第6 取消理由3(新規性)、取消理由4(進歩性)について 1 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明 (1)甲1-3(特開2012-201106号公報) ア 甲1-3には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。 【請求項2】 六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。」 「【背景技術】 【0002】 トランジスタ、サイリスタ、CPU等の発熱性電子部品においては、使用時に発生する熱を如何に除去することが重要な問題となっている。従来、このような除熱方法としては、発熱性電子部品を電気絶縁性の放熱シートを介して放熱フィンや金属板に取り付け、熱を逃がすことが一般的に行われており、その放熱シートとしてはシリコーンゴムに熱伝導性フィラーを分散させたものが使用されている。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、高い熱伝導性を有し、特に電子部品用放熱部材として好適な熱伝導性成形体を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。 (1)六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。 (2)六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。 ・・・」 「【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、高熱伝導性を示す熱伝導性成形体を提供することができる。」 「【発明を実施するための形態】 【0009】 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明で使用される熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムをあげることができる。これらのうち、窒化ホウ素は鱗片状粒子の長さ方向の熱伝導性が極めて高く、その特徴をうまく利用すれば高熱伝導性を付与することができるので、本発明には特に好適なものである。また、その窒化ホウ素粒子としては、粉末X線解析法による黒鉛指数(GI)が2.5以下の高結晶性のものが望ましい。 ・・・ 【0025】 本発明の熱伝導性成形体の製造方法の一例を示す。付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整した。このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断する方法があげられる。 ・・・ 【0027】 本発明の熱伝導性成形体は、発熱性電子部品又は熱熱性電子部品の搭載された回路基板と冷却装置との間に挟みこんで使用されるものであるが、冷却装置にあらかじめ貼り付け一体化するなどして電子部品用放熱部材として供給することも可能である。冷却装置としては、例えばヒートシンク、放熱フィン、金属又はセラミックスのケース等があげられ、またはそのセラミックスとしては窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素、酸化アルミニウム等があげられる。 【0028】 また、上記電子部品用放熱部材が使用される電子機器としては、パーソナルコンピューター、家庭用ゲーム機、電源、自動車、プロジェクター等をあげることができる。」 「【実施例】 【0029】 実施例1~30 比較例1~18 熱伝導性フィラーとして表1に示される六方晶窒化ホウ素粉末5種類、酸化アルミニウム粉末5種類、窒化アルミニウム粉末5種類、付加反応型シリコーンとして、表2にしめされるD液5種類(白金触媒を含有したビニル基を有するオルガノポリシロキサン)、E液5種類(H-Si基を有するオルガノポリシロキサン及びビニル基を有するオルガノポリシロキサン)、F液5種類(ビニル基を有するオルガノポリシロキサン)を室温下で表3~7に示す配合(体積%)で、自転・公転ミキサーであるシンキー社製「あわとり練太郎」を用いて、回転速度2000rpmで10分混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを作製した。 【0030】 このコンパウンドをスリット(1mm×60mm)付きダイスの固定されたシリンダー構造金型内に充填し、ピストンで圧力をかけながらスリットから押し出して、シリコーン樹脂組成物の未硬化の薄板(グリーンシート)を作製した。 【0031】 厚さ1mm、幅60mm、長さ120mmのグリーンシート25枚から縦横の長さが50mmの正方形となるようにカッターでグリーンシートを切り出した。そして、正方形のグリーンシート同士の各角を合わせつつ、50mmの高さになるまで50層積層した。その後、乾燥機を用いて150℃で22時間加熱硬化させて、シリコーン積層体を作製した。この1辺の長さが50mmの立方体であるシリコーン積層体をカッターでグリーンシートを重ねた面に対して垂直であり、その辺に対して平行に刃を下ろしながら切断し、本発明のシート状熱伝導性成形体(1mm)を作製した。」 イ 甲1-3に記載された発明 (ア)甲1-3物発明 a 上記アの【請求項1】及び【請求項2】には、六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断する熱伝導性成形体が記載されている。 b 上記アの【0009】には、窒化ホウ素は鱗片状粒子が特に好適なものであることが記載されている。 c 上記アの【0031】には、「シート状熱伝導性成形体(1mm)を作製した」と記載されているから、熱伝導性成形体はシート状であるといえる。 d 上記アの【0027】には、熱伝導性成形体は、発熱性電子部品の搭載された回路基板と冷却装置との間に挟みこんで使用されるものであることが記載されており、同【0028】には、電子機器に上記電子部品用放熱部材が使用されることが記載されているから、電子機器は、冷却装置と、発熱性電子部品の搭載された回路基板と、冷却装置と発熱性電子部品の搭載された回路基板との間に挟みこまれた熱伝導性成形体を備えているといえる。 e 以上によれば、甲1-3には、以下の発明が記載されていると認められる。 「六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断するシート状熱伝導性成形体であって、 前記窒化ホウ素は鱗片状粒子が特に好適なものである、シート状熱伝導性成形体。」(以下、「甲1-3物発明A」という。) 「冷却装置と、発熱性電子部品の搭載された回路基板と、冷却装置と発熱性電子部品の搭載された回路基板との間に挟みこまれた甲1-3物発明Aのシート状熱伝導性成形体を備える、電子機器。」(以下、「甲1-3物発明B」という。) (イ)甲1-3方法発明 a 上記アの【0025】には、熱伝導性成形体の製造方法の一例として、付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整し、このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断する方法が記載されている。 b 上記アの【0030】には、シリコーン樹脂組成物の未硬化の薄板(グリーンシート)の作製は、コンパウンドをスリット(1mm×60mm)付きダイスの固定されたシリンダー構造金型内に充填し、ピストンで圧力をかけながらスリットから押し出すことが記載されている。 ここで、上記「シリコーン樹脂組成物の未硬化の薄板(グリーンシート)の作製」は、上記aの「未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形」する方法に対応する。 c 上記a、b及び上記(ア)a~cによれば、甲1-3には以下の発明が記載されていると認められる。 「付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整し、このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させてシリコーン積層体を作製した後、積層方向から所望の幅に切断するシート状熱伝導性成形体の製造方法であって、 上記未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形する方法は、上記コンパウンドをスリット(1mm×60mm)付きダイスの固定されたシリンダー構造金型内に充填し、ピストンで圧力をかけながらスリットから押し出すものであり、 上記シリコーン樹脂組成物は、六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の前記熱伝導性フィラー40~70体積%含有し、 前記窒化ホウ素は鱗片状粒子が特に好適なものである、シート状熱伝導性成形体の製造方法。」(以下、「甲1-3方法発明」という。) (2)甲1-4(特開2017-38086号公報) ア 甲1-4には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 バインダ樹脂と、絶縁皮膜により被覆された炭素繊維とを含有する熱伝導性樹脂組成物が硬化されたシート本体を有し、 前記シート本体の表面に露出した前記炭素繊維は、前記絶縁皮膜により被覆されておらず、且つ前記バインダ樹脂の成分によって被覆されており、 前記バインダ樹脂は主剤と硬化剤の成分比率が55:45~65:35である2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂であり、 ASTM-D2240の測定方法によるショアOO硬度が70以下である熱伝導シート。 ・・・ 【請求項5】 前記シート本体が、熱伝導性フィラーを含有する請求項1~4のいずれか1項に記載の熱伝導シート。 ・・・ 【請求項12】 半導体素子と、 前記半導体素子の発する熱を放熱するヒートスプレッダと、 前記ヒートスプレッダに配設され、前記ヒートスプレッダと前記半導体素子との間に挟持される請求項1~6のいずれか1項に記載の熱伝導シートとを有する半導体装置。」 「【背景技術】 ・・・ 【0003】 半導体素子にヒートシンクを取り付けて冷却する場合、半導体素子の熱を効率よく放出させるために、半導体素子とヒートシンクとの間に熱伝導シートが設けられている。熱伝導シートとしては、シリコーン樹脂に熱伝導性フィラー〔例えば、鱗片状粒子(窒化ホウ素(BN)、黒鉛等)、炭素繊維等〕を分散含有させたものが広く用いられている(特許文献1参照)。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかし、熱伝導性に優れるが導電性をも備えた炭素繊維等の熱伝導性フィラーを用いた熱伝導シートでは、熱伝導シートが半導体素子周辺の回路に接触した場合や、シートに欠損が生じて回路に落下した場合に、シート表面に露出した熱伝導性フィラーによってショートが生じる等、電子機器の故障を招くことが懸念される。 【0007】 一方で、熱伝導シートの電気的な絶縁性を確保するために、熱伝導性フィラーをシート本体に埋没させると熱伝導性フィラーによる高い熱伝導率の効果を損なってしまう。 【0008】 そこで、本発明は、熱伝導シートの接触等の不測の事態においても、電気的な絶縁性を確保するとともに、高い熱伝導率を維持することができる熱伝導シート、熱伝導シートの製造方法、放熱部材及び半導体装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 上述した課題を解決するために、本発明に係る熱伝導シートは、バインダ樹脂と、絶縁皮膜により被覆された炭素繊維とを含有する熱伝導性樹脂組成物が硬化されたシート本体を有し、 前記シート本体の表面に露出した前記炭素繊維は、前記絶縁皮膜により被覆されておらず、且つ前記バインダ樹脂の成分によって被覆されているものである。 【0010】 また、本発明に係る熱伝導シートの製造方法は、バインダ樹脂と、絶縁皮膜により被覆された炭素繊維とを含有する熱伝導性樹脂組成物を所定の形状に成型して硬化することにより、前記熱伝導性樹脂組成物の成型体を得る工程と、 前記成型体をシート状に切断し、シート本体を得る工程と、 前記シート本体の表面に露出した前記炭素繊維を、前記バインダ樹脂の成分で被覆する工程とを有し、 前記シート本体を得る工程において、前記シート本体の表面に露出する前記炭素繊維を被覆する前記絶縁皮膜が除去されるものである。」 「【0024】 炭素繊維11の熱伝導シート1中の含有量は、少なすぎると熱伝導率が低くなり、多すぎると粘度が高くなる傾向があるので、好ましくは16体積%~40体積%である。」 「【0029】 [熱伝導性フィラー] なお、炭素繊維11の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状フィラー、板状フィラー、鱗片状フィラー、球状フィラー等の熱伝導性フィラーを併用することができる。 【0030】 熱伝導性フィラーとしては、例えば、金属(例えば、ニッケル、鉄等)、ガラス、セラミックス〔例えば、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等)、窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等)、ホウ化物(例えば、ホウ化アルミニウム等)、炭化物(例えば、炭化ケイ素等)等の非金属系無機繊維〕等の各種フィラーを挙げることができる。 【0031】 特に、炭素繊維11の熱伝導性樹脂組成物中での二次凝集の抑制という観点から、0.1μm~10μm径の球状フィラー(好ましくは球状アルミナや球状窒化アルミ)を、炭素繊維11を100質量部に対し、好ましくは50質量部~900質量部併用することが好ましい。」 「【0048】 [熱伝導シートの製造工程] 本発明の熱伝導シート1は、以下の工程(A)~(D)を有する製造方法によって製造することができる。以下、工程毎に詳細に説明する。 【0049】 <工程A> まず、絶縁皮膜12によって被覆された炭素繊維11及び適宜添加される熱伝導性フィラーをバインダ樹脂に分散させることにより熱伝導シート1形成用の熱伝導性樹脂組成物を調製する。この調製は、炭素繊維11及び熱伝導性フィラーとバインダ樹脂と必要に応じて配合される各種添加剤や揮発性溶剤とを公知の手法により均一に混合することにより行うことができる。 【0050】 <工程B> 次に、調製された熱伝導性樹脂組成物から、押出し成型法又は金型成型法によりブロック状の樹脂成型体9を形成する。 ・・・ 【0052】 押出し成型法において、熱伝導性樹脂組成物をダイより押し出す際、あるいは金型成型法において、熱伝導性樹脂組成物を金型へ圧入する際、バインダ樹脂が流動し、その流動方向に沿って一部の炭素繊維11が配向するが、多くは配向がランダムになっている。 ・・・ 【0055】 <工程C> 次に、形成された樹脂成型体9をシート状にスライスする。これによりシート本体7が得られる。このシート本体7は、スライスにより得られるシートの表面(スライス面)に炭素繊維11が露出する。このとき、樹脂成型体9とともに炭素繊維11もカットされることから、シート表面に露出された炭素繊維11を被覆する絶縁皮膜12が除去される(即ち、シート表面に露出された炭素繊維11は、絶縁皮膜12によって被覆されていない)。したがって、熱伝導シート1は厚さ方向に亘って良好な熱伝導率を維持することができる。 【0056】 スライスする方法としては特に制限はなく、樹脂成型体9の大きさや機械的強度により公知のスライス装置13(好ましくは超音波カッターやかんな)の中から適宜選択することができる。樹脂成型体9のスライス方向としては、成型方法が押出し成型方法である場合には、押出し方向に配向しているものもあるために押出し方向に対して60度~120度、より好ましくは70度~100度の方向である。特に好ましくは90度(垂直)の方向である。」 イ 甲1-4に記載された発明 (ア)甲1-4物発明 a 上記アの【請求項1】、【請求項5】には、バインダ樹脂と、絶縁皮膜により被覆された炭素繊維とを含有する熱伝導性樹脂組成物が硬化されたシート本体を有し、 前記シート本体の表面に露出した前記炭素繊維は、前記絶縁皮膜により被覆されておらず、且つ前記バインダ樹脂の成分によって被覆されており、 前記バインダ樹脂は主剤と硬化剤の成分比率が55:45~65:35である2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂であり、 ASTM-D2240の測定方法によるショアOO硬度が70以下である熱伝導シートであって、 前記シート本体が、熱伝導性フィラーを含有する、熱伝導シートが記載されている。 b 上記アの【0024】には、炭素繊維の熱伝導シート中の含有量は、好ましくは16体積%~40体積%であることが記載されている。 c 上記アの【0029】には、炭素繊維の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状フィラー、板状フィラー、鱗片状フィラー、球状フィラー等の熱伝導性フィラーを併用できることが記載されているから、上記aの「熱伝導性フィラー」は、繊維状フィラー、板状フィラー、鱗片状フィラー、球状フィラー等の熱伝導性フィラーであるといえる。 また、上記アの【0030】には、熱伝導性フィラーとしては、例えば、金属(例えば、ニッケル、鉄等)、ガラス、セラミックス〔例えば、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等)、窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等)、ホウ化物(例えば、ホウ化アルミニウム等)、炭化物(例えば、炭化ケイ素等)等の非金属系無機繊維〕等の各種フィラーを挙げることができること、同【0031】には、特に、炭素繊維の熱伝導性樹脂組成物中での二次凝集の抑制という観点から、0.1μm~10μm径の球状フィラー(好ましくは球状アルミナや球状窒化アルミ)を、炭素繊維を100質量部に対し、好ましくは50質量部~900質量部併用することが好ましいことが記載されている。 d 上記アの【0050】、【0055】には、熱伝導性樹脂組成物から、押出し成型法又は金型成型法によりブロック状の樹脂成型体9を形成し、形成された樹脂成型体9をシート状にスライスすることによりシート本体7が得られることが記載されている。 e 上記アの【請求項12】には、半導体素子と、 前記半導体素子の発する熱を放熱するヒートスプレッダと、 前記ヒートスプレッダに配設され、前記ヒートスプレッダと前記半導体素子との間に挟持される熱伝導シートとを有する半導体装置が記載されている。 f 以上によれば、甲1-4には、以下の発明が記載されていると認められる。 「バインダ樹脂と、絶縁皮膜により被覆された炭素繊維とを含有する熱伝導性樹脂組成物が硬化されたシート本体を有し、 前記シート本体の表面に露出した前記炭素繊維は、前記絶縁皮膜により被覆されておらず、且つ前記バインダ樹脂の成分によって被覆されており、 前記バインダ樹脂は主剤と硬化剤の成分比率が55:45~65:35である2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂であり、 ASTM-D2240の測定方法によるショアOO硬度が70以下である熱伝導シートであって、 前記炭素繊維の熱伝導シート1中の含有量は、好ましくは16体積%~40体積%であり、 前記シート本体が、繊維状フィラー、板状フィラー、鱗片状フィラー、球状フィラー等の熱伝導性フィラーを含有し、 前記熱伝導性フィラーとしては、例えば、金属(例えば、ニッケル、鉄等)、ガラス、セラミックス〔例えば、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等)、窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等)、ホウ化物(例えば、ホウ化アルミニウム等)、炭化物(例えば、炭化ケイ素等)等の非金属系無機繊維〕等の各種フィラーを挙げることができ、特に、1μm~10μm径の球状フィラー(好ましくは球状アルミナや球状窒化アルミ)を、炭素繊維を100質量部に対し、好ましくは50質量部~900質量部併用することが好ましく、 シート本体7は、熱伝導性樹脂組成物から、押出し成型法又は金型成型法によりブロック状の樹脂成型体9を形成し、形成された樹脂成型体9をシート状にスライスすることにより得られる、熱伝導シート。」(以下、「甲1-4物発明A」という。) 「半導体素子と、 前記半導体素子の発する熱を放熱するヒートスプレッダと、 前記ヒートスプレッダに配設され、前記ヒートスプレッダと前記半導体素子との間に挟持される甲1-4物発明Aの熱伝導シートとを有する半導体装置」(以下、「甲1-4物発明B」という。) (イ)甲1-4方法発明 a 上記アの【0048】には、熱伝導シートは、以下の工程(A)~(D)を有する製造方法によって製造することができること、同【0049】には、工程Aとして、絶縁皮膜によって被覆された炭素繊維及び適宜添加される熱伝導性フィラーをバインダ樹脂に分散させることにより熱伝導シート形成用の熱伝導性樹脂組成物を調製すること、同【0050】には、工程Bとして、次に、調製された熱伝導性樹脂組成物から、押出し成型法又は金型成型法によりブロック状の樹脂成型体を形成すること、同【0055】には、工程Cとして、次に、形成された樹脂成型体をシート状にスライスし、これによりシート本体が得られることが記載されている。 b 上記アの【0052】には、押出し成型法において、熱伝導性樹脂組成物をダイより押し出す際、あるいは金型成型法において、熱伝導性樹脂組成物を金型へ圧入する際、バインダ樹脂が流動し、その流動方向に沿って一部の炭素繊維が配向するが、多くは配向がランダムになっていること、同【0056】には、樹脂成型体のスライス方向としては、成型方法が押出し成型方法である場合には、押出し方向に配向しているものもあるために押出し方向に対して60度~120度、より好ましくは70度~100度の方向であり、特に好ましくは90度(垂直)の方向であることが記載されている。 c 上記a、b及び上記(ア)cによれば、甲1-4には以下の発明が記載されていると認められる。 「絶縁皮膜によって被覆された炭素繊維及び適宜添加される繊維状フィラー、板状フィラー、鱗片状フィラー、球状フィラー等の熱伝導性フィラーをバインダ樹脂に分散させることにより熱伝導シート形成用の熱伝導性樹脂組成物を調製する工程Aと、 次に、調製された熱伝導性樹脂組成物から、押出し成型法又は金型成型法によりブロック状の樹脂成型体を形成する工程Bと、 次に、形成された樹脂成型体をシート状にスライスし、これによりシート本体7を得る工程Cとを含む熱伝導シートの製造方法であって、 前記押出し成型法において、前記熱伝導性樹脂組成物をダイより押し出す際、あるいは前記金型成型法において、前記熱伝導性樹脂組成物を金型へ圧入する際、バインダ樹脂が流動し、その流動方向に沿って一部の炭素繊維が配向するが、多くは配向がランダムになっており、 前記樹脂成型体のスライス方向としては、成型方法が押出し成型方法である場合には、押出し方向に配向しているものもあるために押出し方向に対して60度~120度、より好ましくは70度~100度の方向であり、特に好ましくは90度(垂直)の方向であり、 前記熱伝導性フィラーとしては、例えば、金属(例えば、ニッケル、鉄等)、ガラス、セラミックス〔例えば、酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素等)、窒化物(例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等)、ホウ化物(例えば、ホウ化アルミニウム等)、炭化物(例えば、炭化ケイ素等)等の非金属系無機繊維〕等の各種フィラーを挙げることができ、特に、1μm~10μm径の球状フィラー(好ましくは球状アルミナや球状窒化アルミ)を、炭素繊維を100質量部に対し、好ましくは50質量部~900質量部併用することが好ましい、熱伝導シートの製造方法。」(以下、「甲1-4方法発明」という。) (3)甲1-5(特開2012-23335号公報) ア 甲1-5には、以下の事項が記載されている。 「【課題を解決するための手段】 【0009】 前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、異方性熱伝導性フィラー及び充填剤を含有してなる熱伝導性組成物を、複数のスリットを通過させることで熱伝導性組成物内に配合された異方性熱伝導性フィラーを熱伝導性シートの厚み方向に配向させ、異方性熱伝導性フィラーの配向状態を乱すことなく成形させた後、型出口よりブロック体として押出し成形する。そして、得られた成形体を硬化させた後、硬化物を押出し方向に対し垂直方向に超音波カッターで所定の厚みに切断することにより、切断面の表面粗さが小さいので界面での熱抵抗が低くなり、厚み方向の熱伝導性が高くなり、各種熱源(例えばCPU、トランジスタ、LED等の各種デバイス)と放熱部材との間に挟持させて好適に用いられる熱伝導性シートが得られることを知見した。・・・」 「【0023】 -異方性熱伝導性フィラー- 前記異方性熱伝導性フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば鱗片状、板状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状などが挙げられる。これらの中でも、異方性熱伝導性の点で扁平形状が特に好ましい。 前記異方性を有するフィラーとしては、例えば窒化ホウ素(BN)粉末、黒鉛、炭素繊維などが挙げられる。これらの中でも、異方性熱伝導性の点で炭素繊維が特に好ましい。 前記炭素繊維としては、例えばピッチ系、PAN系、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法(化学気相成長法)、CCVD法(触媒化学気相成長法)等で合成されたものを用いることができる。これらの中でも、熱伝導性の点からピッチ系炭素繊維が特に好ましい。」 「【0026】 -充填剤- 前記充填剤としては、その形状、材質、平均粒径などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状などが挙げられる。これらの中でも、球状、楕円形状が充填性の点から好ましく、球状が特に好ましい。 前記充填剤の材質としては、例えば窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコン)、酸化珪素、酸化アルミニウム、金属粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、熱伝導率の点からアルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましい。」 イ 以上によれば、甲1-5には、異方性熱伝導性フィラー及び充填剤を含有してなる熱伝導性組成物を、複数のスリットを通過させることで熱伝導性組成物内に配合された異方性熱伝導性フィラーを熱伝導性シートの厚み方向に配向させ、異方性熱伝導性フィラーの配向状態を乱すことなく成形させた後、型出口よりブロック体として押出し成形し、得られた成形体を硬化させた後、硬化物を押出し方向に対し垂直方向に超音波カッターで所定の厚みに切断することにより、切断面の表面粗さが小さいので界面での熱抵抗が低くなり、厚み方向の熱伝導性が高くなり、各種熱源(例えばCPU、トランジスタ、LED等の各種デバイス)と放熱部材との間に挟持させて好適に用いられる熱伝導性シートが得られ、 前記異方性熱伝導性フィラーとしては、鱗片状の窒化ホウ素(BN)粉末、黒鉛、炭素繊維が挙げられ、これらの中でも、異方性熱伝導性の点で炭素繊維が特に好ましく、 前記充填剤の形状としては、充填性の点から球状が特に好ましく、 前記充填剤の材質としては、例えば窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコン)、酸化珪素、酸化アルミニウム、金属粒子などが挙げられ、これらは、2種以上を併用してもよいこと(以下、「甲1-5に記載された事項」ともいう。)が記載されている。 2 甲1-3に記載された発明を主引用発明とした取消理由3、4について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1-3物発明Aとを対比する。 (ア)甲1-3物発明Aの「シリコーン樹脂組成物」は、本件発明1の「バインダ樹脂」に相当する。 (イ)甲1-3物発明Aの「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」は、「熱伝導性フィラー」であるところ、「前記窒化ホウ素は鱗片状粒子が特に好適なものである」から、本件発明1の「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」とは、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」であり、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であ」る点で共通する。 (ウ)甲1-3物発明Aの「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」は「熱伝導性フィラー」であるところ、「平均粒子径が0.5~5μm」であるから、非鱗片状かつ非繊維状であるといえる。 そうすると、甲1-3物発明Aの「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」は、本件発明1の「非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」に相当する。 (エ)上記1(1)アにおける甲1-3の【0002】には【背景技術】として「放熱シートとしてはシリコーンゴムに熱伝導性フィラーを分散させたものが使用されている」と記載されていることからすると、甲1-3物発明Aの「熱伝導性フィラー」である「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」と「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」も「シリコーン樹脂組成物」に分散しているといえる。 そうすると、上記(ア)~(ウ)の検討を参酌すると、甲1-3物発明Aと本件発明1とは、「上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している」点で共通する。 (オ)甲1-3物発明Aにおいては、「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」:「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」の「配合割合が体積比で7:3~9:1」であるから、「シリコーン樹脂組成物」中の「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」の含有量が20~35体積%であり、かつ、「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」の含有量が20~40体積%であることはあり得ない。 (カ)甲1-3物発明Aの「シート状熱伝導性成形体」は、「シリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断する」ものであるから、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層であるとはいえない。 (キ)甲1-3物発明Aの「シート状熱伝導性成形体」は、本件発明1の「熱伝導性シート」に相当する。 (ク)以上によれば、本件発明1と甲1-3物発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「バインダ樹脂と、鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素である、熱伝導性シート。」 <相違点> 相違点3-1:本件発明1は、「当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる」のに対し、甲1-3物発明Aは、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点3-2:本件発明1は、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であ」るのに対し、甲1-3物発明Aは、そのような構成を有していない点。 相違点3-3:本件発明1は、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、甲1-3物発明Aは、そのような構成を有していない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3-2から検討する。 (ア)新規性について 上記ア(オ)で検討したとおり、甲1-3物発明Aにおいては、「シリコーン樹脂組成物」中の「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」の含有量が20~35体積%であり、かつ、「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」の含有量が20~40体積%であることはあり得ない。 したがって、相違点3-2は実質的な相違点である。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-3物発明Aではない。 (イ)進歩性について 上記1(1)アにおける甲1-3の【0006】、【0007】の記載によれば、甲1-3物発明Aにおいて、「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」:「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」の「配合割合が体積比で7:3~9:1」とすることは、課題を解決するための手段であるといえるから、当該体積比を変更すること、すなわち、相違点3-2に係る本件発明1の構成とすることには阻害要因がある。 したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1-3物発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明4、6~9、11、18について ア 本件発明4、6~9、11は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点3-2に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(1)イ(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明4、11は、甲1-3物発明Aではない。 また、上記1イ(イ)で検討したとおり、甲1-3物発明Aにおいて、相違点3-2に係る本件発明1の構成とすることには阻害要因がある。このことは、甲1-5に記載された事項に左右されるものでない。 したがって、相違点3-2に係る本件発明1の構成を有する本件発明4、6~9は、甲1-3物発明A及び甲1-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件発明11は、甲1-3物発明Aに基づいて、又は、甲1-3物発明A及び甲1-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明18は、本件発明1の熱伝導性シートを備える電子機器の発明であり、相違点3-2に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(1)イで検討したのと同様の理由により、本件発明18は、甲1-3物発明Bではない。 また、相違点3-2に係る本件発明1の構成を有する本件発明18は、上記アで検討したのと同様の理由により、甲1-3物発明Bに基づいて、又は、甲1-3物発明B及び甲1-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明12について ア 対比 本件発明12と甲1-3方法発明とを対比する。 (ア)甲1-3方法発明の「付加反応型液状シリコーン」は、本件発明12の「バインダ樹脂」に相当する。 (イ)上記(1)ア(イ)、(ウ)で検討したのと同様に、甲1-3方法発明の「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」は、本件発明12の「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」であり、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であ」る点で共通し、甲1-3方法発明の「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」は、本件発明12の「非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」に相当する。 (ウ)上記(1)ア(エ)で検討したのと同様に、甲1-3方法発明の「熱伝導性フィラー」である「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」と「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」も「付加反応型液状シリコーン」に分散しているといえるから、甲1-3方法発明において、「付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整」する工程は、六方晶窒化ホウ素粉末(A)と酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)とを付加反応型液状シリコーンに分散させることにより、熱伝導性シート形成用のシリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調製しているといえる。 そうすると、上記(ア)の検討を参酌すると、甲1-3方法発明の「シリコーン樹脂組成物のコンパウンド」は、本件発明12の「熱伝導性シート形成用の樹脂組成物」に相当し、また、甲1-3方法発明の「付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整」する工程は、本件発明12の「鱗片状の熱伝導性フィラー」「からなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程A」に相当する。 (エ)上記(ウ)の検討を参酌すると、甲1-3方法発明の「このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させてシリコーン積層体を作製」する工程は、本件発明12の「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程B」に相当する。 (オ)甲1-3方法発明の「積層方向から所望の幅に切断する」工程は、「シート状熱伝導性成形体」を製造するものであるから、上記(エ)の検討を参酌すると、本件発明12の「上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シートを得る工程C」とは、「前記成形体ブロックをシート状にスライスして」「熱伝導性シートを得る工程C」である点で共通する。 しかし、甲1-3方法発明の「シート状熱伝導性成形体」は、「付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整し、このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させてシリコーン積層体を作製した後、積層方向から所望の幅に切断する」ものであるから、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層であるとはいえない。 (カ)甲1-3方法発明においては、「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」:「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」の「配合割合が体積比で7:3~9:1」であるから、「シリコーン樹脂組成物」中の「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」の含有量が20~35体積%であり、かつ、「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」の含有量が20~40体積%であることはあり得ない。 (キ)甲1-3方法発明の「シート状熱伝導性成形体の製造方法」は、本件発明12の「熱伝導性シートの製造方法」に相当する。 (ク)以上によれば、本件発明12と甲1-3方法発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、 上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、 上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、 上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素である、熱伝導性シートの製造方法。」 <相違点> 相違点3-4:本件発明12は、「厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シート」であるのに対し、甲1-3方法発明は、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 相違点3-5:本件発明12は、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であ」るのに対し、甲1-3方法発明は、そのような構成を有していない点。 相違点3-6:本件発明12は、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、甲1-3方法発明は、そのような構成を有していない点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3-5から検討する。 (ア)新規性について 上記ア(カ)で検討したとおり、甲1-3方法発明においては、「シリコーン樹脂組成物」中の「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」の含有量が20~35体積%であり、かつ、「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」の含有量が20~40体積%であることはあり得ない。 したがって、相違点3-5は実質的な相違点である。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲1-3方法発明ではない。 (イ)進歩性について 上記(1)イ(イ)で検討したのと同様に、甲1-3方法発明においても、「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」:「酸化アルミニウム粉末又は窒化アルミニウム粉末(B)」の「配合割合が体積比で7:3~9:1」とすることは、課題を解決するための手段であるから、当該体積比を変更すること、すなわち、相違点3-5に係る本件発明12の構成とすることには阻害要因がある。 したがって、その他の相違点について判断するまでもなく、本件発明12は、甲1-3方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明13~17について 本件発明13~17は、本件発明12を減縮したものであり、いずれも相違点3-5に係る本件発明12の構成を有するものであるから、上記(3)イで検討したのと同様の理由により、本件発明13~15、17は、甲1-3方法発明ではなく、また、本件発明13~17は、甲1-3方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 甲1-4に記載された発明を主引用発明とした取消理由3、4について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1-4物発明Aとを対比する。 (ア)甲1-4物発明Aの「バインダ樹脂」は、本件発明1の「バインダ樹脂」に相当する。 また、甲1-4物発明Aの「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」は、熱伝導性のフィラーといえるから、本件発明1の「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」とは、「第1の熱伝導性フィラー」である点で共通する。 (イ)甲1-4物発明Aの「熱伝導性フィラー」は、「板状フィラー」、「球状フィラー」であるから、本件発明1の「非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」に相当する。 (ウ)上記1(2)アにおける甲1-4の【0003】には、背景技術として、「熱伝導シートとしては、シリコーン樹脂に熱伝導性フィラー〔例えば、鱗片状粒子(窒化ホウ素(BN)、黒鉛等)、炭素繊維等〕を分散含有させたものが広く用いられている」と記載されていることからすると、甲1-4物発明Aの「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」及び「熱伝導性フィラー」も、「バインダ樹脂」に分散しているといえる。 そうすると、上記(ア)及び(イ)の検討を参酌すると、甲1-4物発明Aと本件発明1とは、「上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している」点で共通する。 (エ)甲1-4物発明Aにおいて、「熱伝導シート」の「シート本体7」は、「熱伝導性樹脂組成物から、押出し成型法又は金型成型法によりブロック状の樹脂成型体9を形成し、形成された樹脂成型体9をシート状にスライスすることにより得られる」ものであるから、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層であるといえる。 したがって、甲1-4物発明Aと本件発明1とは、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」点で共通する。 (オ)甲1-4物発明Aの「熱伝導性シート」は、本件発明1の「熱伝導性シート」に相当する。 (カ)以上によれば、本件発明1と甲1-4物発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「バインダ樹脂と、第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、 厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シート。」 <相違点> 相違点4-1:「第1の熱伝導性フィラー」について、本件発明1は、「鱗片状の熱伝導性フィラーからな」り、「鱗片状の窒化ホウ素であ」るのに対し、甲1-4物発明Aは、「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」である点。 相違点4-2:本件発明1は、「当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる」のに対し、甲1-4物発明Aは、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点4-3:本件発明1は、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であ」るのに対し、甲1-4物発明Aは、そのような構成を有していない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点4-1について a 新規性について 「第1の熱伝導性フィラー」について、本件発明1は、「鱗片状の熱伝導性フィラーからな」り、「鱗片状の窒化ホウ素であ」るのに対し、甲1-4物発明Aは、「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」であるから、相違点4-1は実質的な相違点である。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-4物発明Aではない。 b 進歩性について 上記1(2)アにおける甲1-4の【0006】~【0010】の記載によれば、甲1-4物発明Aにおいて、「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」を用いることは、課題を解決するための手段あるといえるから、当該「炭素繊維」を、「鱗片状の窒化ホウ素」に変更すること、すなわち、相違点4-1に係る本件発明1の構成とすることには阻害要因がある。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-4物発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3、6~8、11、18について 本件発明3、6~8、11は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点4-1に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(1)イで検討したのと同様の理由により、本件発明3、6、8、11は、甲1-4物発明Aではなく、また、本件発明3、6~9、11は、甲1-4物発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明18は、本件発明1の熱伝導性シートを備える電子機器の発明であり、相違点4-1に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(1)で検討したのと同様の理由により、本件発明18は、甲1-4物発明Bではなく、また、甲1-4物発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明12について ア 対比 本件発明12と甲1-4方法発明とを対比する。 (ア)上記(1)ア(ア)、(イ)で検討したのと同様に、甲1-4方法発明の「バインダ樹脂」、「熱伝導性フィラー」は、それぞれ、本件発明12の「バインダ樹脂」、「非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」に相当する。 また、甲1-4方法発明の「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」と、本件発明12の「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラー」とは、「第1の熱伝導フィラー」である点で共通する。 (イ)上記(ア)の検討を参酌すると、甲1-4方法発明の「絶縁皮膜によって被覆された炭素繊維及び適宜添加される繊維状フィラー、板状フィラー、鱗片状フィラー、球状フィラー等の熱伝導性フィラー熱伝導性フィラーをバインダ樹脂に分散させることにより熱伝導シート形成用の熱伝導性樹脂組成物を調製する工程A」は、本件発明12の「繊維状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程A」に相当する。 (ウ)上記(イ)の検討を参酌すると、甲1-4方法発明の「調製された熱伝導性樹脂組成物から、押出し成型法又は金型成型法によりブロック状の樹脂成型体を形成する工程B」は、本件発明12の「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程B」に相当する。 (エ)甲1-4方法発明の「シート本体7を得る工程C」は、「調製された熱伝導性樹脂組成物から、押出し成型法又は金型成型法によりブロック状の樹脂成型体を形成」し、「形成された樹脂成型体をシート状にスライス」することにより得られるものであるから、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層であるといえる。 したがって、上記(ウ)の検討を参酌すると、甲1-4方法発明の「シート本体7を得る工程C」と本件発明12の「工程C」とは、「上記成形体ブロックをシート状にスライスして」、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程C」である点で共通する。 (オ)甲1-4方法発明の「熱伝導シートの製造方法」は、本件発明12の「熱伝導性シートの製造方法」に相当する。 (カ)以上によれば、本件発明12と甲1-4方法発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、 上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、 上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程Cとを有する、熱伝導性シートの製造方法。」 <相違点> 相違点4-4:「第1の熱伝導性フィラー」について、本件発明12は、「鱗片状の熱伝導性フィラーからな」り、「鱗片状の窒化ホウ素であ」るのに対し、甲1-4方法発明は、「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」である点。 相違点4-5:本件発明12は、「厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる熱伝導性シート」であるのに対し、甲1-4方法発明は、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 相違点4-6:本件発明12は、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であ」るのに対し、甲1-4方法発明は、そのような構成を有していない点。 イ 相違点についての判断 (ア)相違点4-4について a 新規性について 「第1の熱伝導性フィラー」について、本件発明12は、「鱗片状の熱伝導性フィラーからな」り、「鱗片状の窒化ホウ素であ」るのに対し、甲1-4方法発明は、「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」であるから、相違点4-4は実質的な相違点である。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲1-4方法発明ではない。 b 進歩性について 上記(1)イ(ア)bで検討したのと同様に、甲1-4方法発明においても、「絶縁皮膜により被覆された炭素繊維」を用いることは、課題を解決するための手段あるといえるから、当該「炭素繊維」を、「鱗片状の窒化ホウ素」に変更すること、すなわち、相違点4-4に係る本件発明12の構成とすることには阻害要因がある。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲1-4方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本件発明13、14について 本件発明13、14は、本件発明12を減縮した発明であり、いずれも相違点4-4に係る本件発明12の構成を有するものであるから、上記(3)イで検討したのと同様の理由により、本件発明13、14は、甲1-4方法発明ではなく、また、甲1-4方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 小括 以上のとおり、本件発明1、4、11~15、17、18は、甲1-3に記載された発明ではなく、また、本件発明1、3、4、6~9、11~18は、甲1-3に記載された発明に基づいて、若しくは、甲1-3に記載された発明及び甲1-5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明1、3、6、8、11~14、18は、甲1-4に記載された発明ではなく、また、本件発明1、3、6~9、11~14、18は、甲1-4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 したがって、本件請求項1、3、4、6、8、11~15、17、18に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。 また、本件請求項1、3、4、6~9、11~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 よって、取消理由3、4には理由がない。 第7 取消理由5(明確性)について 1 訂正後の請求項1、12の記載について 訂正後の請求項1、12には、「当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なる」との記載がある。 そして、当該「比誘電率」については、訂正明細書の【0059】に「熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」と記載されている。 そして、上記第2 2(6)エで検討したのと同様に、訂正明細書の【0059】及び【0060】の【表1】における熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)は、KEYSIGHT社製のネットワークアナライザ「PNA Network Analyzer N5227B 10MHz-67GHz」及び、KEYCOM社製の導波管「WR28(26.5GHz-40GHz)」を用いたSパラメータ方式により、上記第2(6)エ(イ)における方法によって、それぞれ測定したものと推認できる。 そうすると、訂正後の請求項1、12に記載の「比誘電率」の値は一義的に決まるものであるから、当該「比誘電率」との記載は明確である。 また、訂正後の請求項1、12において他に不明瞭な記載はない。 したがって、訂正後の請求項1、12の記載は明確である。 2 訂正後の請求項3、4、6~9、11、18の記載について また、訂正後の請求項3、4、6~9、11、18は、請求項1の記載を引用するものであり、また、訂正後の請求項13~17は、請求項12の記載を引用するものであるところ、請求項3、4、6~9、11、13~18の記載は、いずれも明確である。 3 小括 以上のとおり、訂正後の請求項1、3、4、6~9、11~18の記載は明確であるから、本件請求項1、3、4、6~9、11~18に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 したがって、取消理由5には理由がない。 第8 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人吉澤による特許異議申立理由について (1)取消理由通知において採用しなかった、申立人吉澤が主張する特許異議申立理由は、以下のとおりである。 申立理由1-1(新規性):本件請求項3、6~10、16に係る発明は、甲1-3に記載された発明であり、本件請求項7、9に係る発明は、甲1-4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項3、6~10、16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)甲1-3に記載された発明を主引用発明とした申立理由1-1について ア 本件発明3、6~9について (ア)甲1-3物発明Aは、上記第6 1(1)イ(ア)cで認定したとおりである。 また、上記第6 2(1)で検討したとおり、本件発明1と甲1-3物発明Aとは、相違点3-1~相違点3-3を有し、相違点3-2は実質的な相違点あるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-3物発明Aではない。 (イ)本件発明3、6~9は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点3-2に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明3、6~9は、甲1-3物発明Aではない。 イ 本件発明16について (ア)甲1-3方法発明は、上記第6 1(1)イ(イ)cで認定したとおりである。 また、上記第3 2(3)で検討したとおり、本件発明12と甲1-3方法発明とは、相違点3-4~相違点3-6を有し、相違点3-5は実質的な相違点あるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲1-3方法発明ではない。 (イ)本件発明16は、本件発明12を減縮したものであり、相違点3-5に係る本件発明12の構成を有するものであるから、上記(ア)で検討したのと同様の理由により、本件発明16は、甲1-3方法発明ではない。 (3)甲1-4に記載された発明を主引用発明とした申立理由1-1について ア 甲1-4物発明Aは、上記第6 1(2)イ(ア)fで認定したとおりである。 また、上記第6 3(1)で検討したとおり、本件発明1と甲1-4物発明Aとは、相違点4-1~相違点4-3を有し、相違点4-1は実質的な相違点あるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-4物発明Aではない。 イ 本件発明7、9は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点4-1に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記アで検討したのと同様の理由により、本件発明7、9は、甲1-4物発明Aではない。 (4)小括 以上のとおり、本件発明3、6~9、16は、甲1-3に記載された発明ではなく、また、本件発明7、9は、甲1-4に記載された発明ではない。 したがって、申立人吉澤が主張する申立理由1-1には理由がない。 2 申立人増山による特許異議申立理由について (1)取消理由通知において採用しなかった、申立人増山が主張する特許異議申立理由は、以下のとおりである。なお、申立人増山が提出した甲第1号証、甲第2号証を、以下、「甲2-1」、「甲2-2」という。 ア 申立理由2-1(拡大先願) 本件請求項1~18に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた甲2-1の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 イ 申立理由2-2(新規性)、申立理由2-3(進歩性) 本件請求項1~18に係る発明は、甲2-2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するか、甲2-2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1~18に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 甲2-1:特願2020-18476号(出願日:2020年2月6日、特開2021-123661号公報参照) 甲2-2:再公表特許第2018/101445号 (2)申立理由2-1(拡大先願)について ア 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明 (ア)甲2-1:特願2020-18476号(出願日:2020年2月6日、特開2021-123661号公報参照) a 甲2-1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「甲2-1明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 以下の式(1)で示される熱抵抗値変化率Aが15%以下であるか、又は以下の式(2)で示される熱抵抗値変化率Bが7.5%以下であり、30%圧縮強度が2000kPa以下である、熱伝導性樹脂シート。 |(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2) ・・・ 【請求項4】 熱伝導性フィラーを含有する、請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。 ・・・ 【請求項7】 前記熱伝導性フィラーの配向角度が45°より大きい、請求項4~6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。 【請求項8】 前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して150~700質量部である、請求項4~7のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。 【請求項9】 エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の樹脂を含有する、請求項1~8のいずれかに記載の熱伝導性樹脂シート。」 「【0022】 (熱伝導性フィラー) 本発明の熱伝導性樹脂シートは、熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分中に分散され、熱抵抗値が低くなる。 熱伝導性フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.1~300μm、より好ましくは0.5~100μm、更に好ましくは5~50μmである。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により粒度分布を測定して求めることができる。 【0023】 熱伝導性フィラーは、球状フィラーでも非球状フィラーでもよいが、熱伝導性樹脂シートの熱抵抗値及び熱抵抗値変化率を低くする観点から、非球状フィラーを少なくとも含有することが好ましい。なお、熱伝導性フィラーは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。 【0024】 非球状フィラーとしては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状フィラー、針状フィラー、繊維状フィラー、樹枝状フィラー、不定形状フィラー、凝集フィラーなどが挙げられる。中でも、熱伝導性樹脂シートの熱伝導性を良好とする観点から、板状フィラーが好ましい。 ここで、「球状」とはアスペクト比が1.0~2.0、好ましくは1.0~1.5の形状であることを意味し、必ずしも真球であることを意味しない。なお、球状フィラーの場合のアスペクト比は、長径/短径比を意味する。また、「非球状」とは上記球状以外の形状、すなわちアスペクト比が2を超える形状を意味する。 ・・・ 【0028】 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。 炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。 窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。 酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)(酸化アルミニウムの水和物(ベーマイトなど)を含む。)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。また、酸化物として、チタン酸バリウムなどの遷移金属酸化物などや、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。 【0029】 水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。 金属としては、例えば、銅、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。 炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。 上記以外の熱伝導性フィラーとして、ケイ酸塩鉱物であるタルクを挙げることができる。 これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができる。 【0030】 これらの中でも、熱抵抗値変化率を低くする観点から、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、及び酸化マグネシウムが好ましく、窒化ホウ素がより好ましい。」 「【0041】 (積層体) 本発明の熱伝導性樹脂シートは単層でもよいし、積層体でもよい。熱伝導性を良好とする観点から、樹脂及び非球状フィラーを含む樹脂層が積層された積層体が好ましい。・・・」 「【0044】 [熱伝導性樹脂シートの製造方法] 本発明の熱伝導性樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、単層の熱伝導性樹脂シートを製造する場合は、例えば、非球状の熱伝導性フィラー、樹脂、及び必要に応じて添加剤を押出機に供給し溶融混練して得た混合物を、押出機からシート状に押出すことによって熱伝導性樹脂シートを成形すればよい。」 「【0050】 本発明の熱伝導性樹脂シートは、柔軟性であり、かつ圧縮率が変動した場合であっても、安定した放熱性能を示すものである。本発明の熱伝導性樹脂シートは、例えば、電子機器内部の発熱体と放熱体の間に配置させることで、発熱体から放熱体への熱放散を促進させることができる。・・・」 b 甲2-1明細書等に記載された発明 (a)先願甲2-1物発明 上記aの【請求項1】、【請求項4】、【請求項7】~【請求項9】、【0022】~【0024】、【0028】、【0029】、【0041】及び【0050】の記載によれば、甲2-1明細書等には、以下の発明が記載されていると認められる。 「以下の式(1)で示される熱抵抗値変化率Aが15%以下であるか、又は以下の式(2)で示される熱抵抗値変化率Bが7.5%以下であり、30%圧縮強度が2000kPa以下であり、 熱伝導性フィラーを含有し、 前記熱伝導性フィラーの配向角度が45°より大きく、 前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して150~700質量部であり、 エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の樹脂を含有する、熱伝導性樹脂シートであって、 熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分中に分散され、 熱伝導性フィラーは、球状フィラーでも非球状フィラーでもよく、 非球状フィラーとしては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状フィラー、針状フィラー、繊維状フィラー、樹枝状フィラー、不定形状フィラー、凝集フィラーなどが挙げられ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、 窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、 これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ、 熱伝導性樹脂シートは単層でもよい、熱伝導性樹脂シート。 |(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2)」(以下、「先願甲2-1物発明A」という。) 「発熱体と放熱体の間に配置させた先願甲2-1物発明Aの熱伝導性樹脂シートを内部に備える、電子機器。」(以下、「先願甲2-1物発明B」という。) (b)先願甲2-1方法発明 上記aの【請求項1】、【請求項4】、【請求項7】~【請求項9】、【0022】~【0024】、【0028】、【0029】、【0041】及び【0044】の記載によれば、甲2-1明細書等には、以下の発明が記載されていると認められる。 「以下の式(1)で示される熱抵抗値変化率Aが15%以下であるか、又は以下の式(2)で示される熱抵抗値変化率Bが7.5%以下であり、30%圧縮強度が2000kPa以下であり、 熱伝導性フィラーを含有し、 前記熱伝導性フィラーの配向角度が45°より大きく、 前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して150~700質量部であり、 エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の樹脂を含有し、 熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分中に分散され、 熱伝導性フィラーは、球状フィラーでも非球状フィラーでもよく、 非球状フィラーとしては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状フィラー、針状フィラー、繊維状フィラー、樹枝状フィラー、不定形状フィラー、凝集フィラーなどが挙げられ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、 窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、 これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ、 熱伝導性樹脂シートは単層でもよい、熱伝導性樹脂シートの製造方法であって、 単層の熱伝導性樹脂シートを製造する場合は、例えば、非球状の熱伝導性フィラー、樹脂、及び必要に応じて添加剤を押出機に供給し溶融混練して得た混合物を、押出機からシート状に押出すことによって熱伝導性樹脂シートを成形する、熱伝導性樹脂シートの製造方法。 |(1-10%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (1)|(1-40%圧縮時の熱抵抗値/30%圧縮時の熱抵抗値)×100| (2)」(以下、「先願甲2-1方法発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と先願甲2-1物発明Aとを対比する。 a 先願甲2-1物発明Aの「エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の樹脂」は、本件発明1の「バインダ樹脂」に相当する。 b 先願甲2-1物発明Aは、「熱伝導性フィラーを含有し」、「前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して150~700質量部であり」、「熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分中に分散され」、「熱伝導性フィラーは、球状フィラーでも非球状フィラーでもよく、 非球状フィラーとしては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状フィラー、針状フィラー、繊維状フィラー、樹枝状フィラー、不定形状フィラー、凝集フィラーなどが挙げられ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、 窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、 これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ」と特定されているものの、熱伝導性フィラーを2種類併用する際に、各熱伝導性フィラーについて、どのような形状及び材質を選択するかについての具体的な特定はされていないし、各熱伝導性フィラーの含有量についても具体的な特定はされていない。 そうすると、本件発明1と先願甲2-1物発明Aとは、2種類の熱伝導性フィラーを含有し、2種類の熱伝導性フィラーがバインダ樹脂に分散している点で共通するといえるものの、各熱伝導性フィラーの形状及び材質並びに含有量については相違する。 c 先願甲2-1物発明Aの「熱伝導性樹脂シート」は、「前記熱伝導性フィラーの配向角度が45°より大きく」、「単層でもよい」ものであるから、熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層であるといえる。 したがって、本件発明1と先願甲2-1物発明Aとは、「比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」点で共通する。 d 先願甲2-1物発明Aの「熱伝導性樹脂シート」は、本件発明1の「熱伝導性シート」に相当する。 e 以上によれば、本件発明1と先願甲2-1物発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「バインダ樹脂と、2種類の熱伝導性フィラーとを含有し、上記2種類の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、 当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、 厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シート。」 <相違点> 相違点5-1:本件発明1は、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーとを含有し」ているのに対し、先願甲2-1物発明Aは、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 相違点5-2:本件発明1は、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であ」るのに対し、先願甲2-1物発明Aは、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 相違点5-3:本件発明1は、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であ」るのに対し、先願甲2-1物発明Aは、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 (イ)相違点についての判断 相違点5-1~相違点5-3は、いずれも熱伝導性フィラーに関するものであるから、まとめて検討する。 上記(ア)bで検討したとおり、本件発明1と先願甲2-1物発明Aとは、2種類の熱伝導性フィラーを含有し、2種類の熱伝導性フィラーがバインダ樹脂に分散している点で共通するといえるものの、各熱伝導性フィラーの形状及び材質並びに含有量については相違する。 したがって、相違点5-1~相違点5-3は、いずれも実質的な相違点である。 よって、本件発明1は、先願甲2-1物発明Aと同一ではない。 ウ 本件発明3、4、6~9、11、18について 本件発明3、4、6~9、11は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点5-1~相違点5-3に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、本件発明3、4、6~9、11は、先願甲2-1物発明Aと同一ではない。 また、本件発明18は、本件発明1の熱伝導性シートを備える電子機器の発明であり、相違点5-1~相違点5-3に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、本件発明18は、先願甲2-1物発明Bと同一ではない。 エ 本件発明12について (ア)対比 本件発明12と先願甲2-1方法発明とを対比する。 a 先願甲2-1方法発明の「エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される少なくとも1種以上の樹脂」は、本件発明12の「バインダ樹脂」に相当する。 b 先願甲2-1方法発明は、「熱伝導性フィラーを含有し」、「前記熱伝導性フィラーの含有量が、樹脂100質量部に対して150~700質量部であり」、「熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分中に分散され」、「熱伝導性フィラーは、球状フィラーでも非球状フィラーでもよく、 非球状フィラーとしては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状フィラー、針状フィラー、繊維状フィラー、樹枝状フィラー、不定形状フィラー、凝集フィラーなどが挙げられ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、 窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、 これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ」と特定されているものの、熱伝導性フィラーを2種類併用した際に、各熱伝導性フィラーについて、どの形状及び材質を選択するかについての具体的な特定はされていないし、各熱伝導性フィラーの含有量についても具体的な特定はされていない。 そして、先願甲2-1方法発明は、「単層の熱伝導性樹脂シートを製造する場合は、例えば、非球状の熱伝導性フィラー、樹脂、及び必要に応じて添加剤を押出機に供給し溶融混練して得た混合物を、押出機からシート状に押出すことによって熱伝導性樹脂シートを成形する」ものである。 そうすると、本件発明12と先願甲2-1方法発明とは、2種類の熱伝導性フィラーを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性樹脂シート用の樹脂組成物を調製する工程Aを有している点で共通するといえるものの、各熱伝導性フィラーの形状及び材質並びに含有量については相違する。 c 先願甲2-1方法発明において、「熱伝導性樹脂シート」は、「前記熱伝導性フィラーの配向角度が45°より大きく」、「単層でもよい」ものであるから、熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性樹脂シートを得る工程を有しているといえる。 したがって、本件発明12と先願甲2-1方法発明とは、「厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程Cとを有し」ている点で共通する。 d 先願甲2-1方法発明の「熱伝導性樹脂シートの製造方法」は、本件発明12の「熱伝導性シートの製造方法」に相当する。 e 以上によれば、本件発明12と先願甲2-1方法発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「2種類の熱伝導性フィラーを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、 上記成形体ブロックをシート状にスライスして、厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程Cとを有する、熱伝導性シートの製造方法。」 <相違点> 相違点5-4:2種類の鱗片状の熱伝導性フィラーについて、本件発明12は、「第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」とからなるのに対し、先願甲2-1方法発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点5-5:本件発明12は、「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程B」を有しているのに対し、先願甲2-1方法発明は、そのような構成を有していない点。 相違点5-6:「厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程C」について、本件発明12は、「上記成形体ブロックをシート状にスライスして」いるのに対し、先願甲2-1方法発明は、そのような構成を有していない点。 相違点5-7:本件発明12は、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であ」るのに対し、先願甲2-1方法発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点5-8:本件発明12は、「上記熱伝導性シート中、上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である」のに対し、先願甲2-1方法発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 (イ)相違点についての判断 相違点5-4、相違点5-7、相違点5-8は、相違点5-1~相違点5-3と同じ内容であるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、相違点5-4、相違点5-7、相違点5-8は、いずれも実質的な相違点である。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、先願甲2-1方法発明と同一ではない。 オ 本件発明13~17について 本件発明13~17は、本件発明12を減縮した発明であり、いずれも相違点5-4、相違点5-7、相違点5-8に係る本件発明12の構成を有するものであるから、上記エ(イ)で検討したのと同様の理由により、本件発明13~17は、先願甲2-1方法発明と同一ではない。 カ 小括 以上のとおり、本件発明1、3、4、6~9、11~18は、甲2-1明細書等に記載された発明と同一ではないから、本件請求項1、3、4、6~9、11~18に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものとはいえない。 したがって、申立人増山が主張する申立理由2-1には理由がない。 (3)申立理由2-2(新規性)、申立理由2-3(進歩性)について ア 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明 (ア)甲2-2:再公表特許第2018/101445号 a 甲2-2には以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 体積割合が30~70%のエラストマー樹脂と、体積割合が30~70%の熱伝導性フィラーとを含む熱伝導シートであって、前記エラストマー樹脂の25℃での粘度が3000Pa・s以下で、かつ前記エラストマー樹脂のラメラ長が20mm以上である、初期のアスカーC硬度が50以下の熱伝導シート。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 特許文献1に記載の熱伝導シートは、アスカーC硬度が45以下であり柔軟性が良好であるものの、熱伝導シートを発熱体と放熱体の間に圧縮して導入した後に、残留応力が低減せず、そのため復元力が強い傾向にあった。 一般に、熱伝導シートは、半導体パッケージ等の発熱体と放熱体の間に配置された際に、復元力が強いと、圧力に弱い電子部品等の発熱体に対して用いる場合には、発熱体を破損するおそれがある。 すなわち、発熱体と放熱体との間に導入する際には、形状追従性を良好とする程度の柔軟性を有し、かつ、一定時間経過後は、電子部品等の発熱体の破損を防止するため、残留応力が低減する熱伝導シートが求められている。 本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、形状追従性を良好とする程度の初期の柔軟性を有し、かつ圧力を加え圧縮した後には、残留応力が低下する熱伝導シートを提供することを目的とする。」 「【0014】 (熱伝導性フィラー) 本発明の熱伝導シートを構成する熱伝導性フィラーは、熱伝導シート全体における体積割合は30~70%である。体積割合が30%未満であると、熱伝導シートの熱伝導性が不十分となり、70%を超えると、柔軟性が悪くなる。 熱伝導シート全体における熱伝導性フィラーの体積割合は、好ましくは35~65%であり、より好ましくは40~60%であり、更に好ましくは45~55%である。熱伝導性フィラーの体積割合は、比重が既知であることより、質量により算出することができる。 熱伝導性フィラーの熱伝導率は、熱伝導性を向上させる観点から、好ましくは8W/m・K以上であり、より好ましくは20W/m・K以上である。 【0015】 熱伝導性フィラーの形状は、特に限定されず、例えば、球状フィラー、破砕フィラー、板状フィラーなどを用いることができるが、この中でも、熱伝導シートの熱伝導性を向上させる観点から板状フィラーを用いることが好ましい。板状フィラーの場合において、表面を構成する各面のうち、面積が最大である面をXY平面とし、XYもしくはYZ平面を構成する辺の最小寸法を厚みと定義した場合に、XY平面の長手方向寸法/厚み>2.0の形状を有することが好ましい。 ・・・ 【0017】 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。 炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。 窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。 酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)(酸化アルミニウムの水和物(ベーマイトなど)を含む。)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。また、酸化物として、チタン酸バリウムなどの遷移金属酸化物などや、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。 【0018】 水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。 金属としては、例えば、銅、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。 炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。 【0019】 上記以外の熱伝導性フィラーとして、ケイ酸塩鉱物であるタルクを挙げることができる。 これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができる。熱伝導性フィラーは、熱伝導性の観点からは、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、タルク、窒化アルミニウム、グラフェン、窒化ホウ素ナノチューブ、カーボンナノチューブ、ダイヤモンドの少なくとも何れかであることが好ましく、窒化ホウ素、グラフェンの少なくとも何れかであることがより好ましい。さらに電気絶縁性が要求される用途では、窒化ホウ素がより好ましい。」 「【0021】 (積層体) 本発明の熱伝導シートはエラストマー樹脂及び熱伝導性フィラーを含む単層でもよいし、エラストマー樹脂及び熱伝導性フィラーを含む樹脂層が積層された積層体でもよい。・・・ 【0022】 熱伝導シート1の厚み(すなわち、シート面5とシート面5との間の距離)は特に限定されないが、例えば、0.1~30mmの範囲とすることができる。 樹脂層2の1層の厚み(樹脂層幅)は特に限定されないが、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは100μm以下であり、そして、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上とすることができる。このように厚みを調整することにより、熱伝導性を高めることができる。 樹脂層2は、熱伝導性フィラー6を含有する熱伝導性樹脂層7である。熱伝導性樹脂層7は、エラストマー樹脂8中に熱伝導性の熱伝導性フィラー6を分散させた構造を有する樹脂層2である。 【0023】 熱伝導性フィラーの種類は、特に限定されないが、図1、2に示すように、板状フィラーを用いることが好ましく、板状フィラーの長軸が、シート面に対して45°以上の角度であることが好ましく、より好ましくは50°以上、更に好ましくは60°以上、更に好ましくは70°以上、更に好ましくは80°以上略垂直に配向していることが好ましい。板状フィラーがこのような配向をしている場合は、熱伝導シートの熱伝導率が向上する。これは、おそらく、熱伝導シート内で、発熱体から放熱体方向への熱伝導パスが形成されるからと考えられる。」 「【0029】 [熱伝導シートの製造方法] 本発明の熱伝導シートの製造方法は、特に限定されないが、熱伝導性フィラー、エラストマー樹脂、及び必要に応じて添加剤を押出機に供給し溶融混練して、押出機からシート状に押出すことによって熱伝導シートを成形すればよい。」 「【実施例】 【0035】 本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。 以下の実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。 (1)エラストマー樹脂 (i)液状アクリロニトリルブタジエンゴム1 JSR株式会社製、商品名「N231L」 (ii)アクリロニトリルブタジエンゴム2 下記(A)7.2体積%と下記(B)40.8体積%との混合物 (A)アクリロニトリルブタジエンゴム JSR株式会社製、商品名「N280」 (B)液体アクリロニトリルブタジエンゴム JSR株式会社製、商品名「N231L」 (iii)アクリロニトリルブタジエンゴム3 下記(A)38体積%と下記(B)10体積%との混合物 (A)アクリロニトリルブタジエンゴム JSR株式会社製、商品名「N280」 (B)液体アクリロニトリルブタジエンゴム JSR株式会社製、商品名「N231L」 (iv)液状イソプレンゴム1 株式会社クラレ製、商品名「LIR-30」 (v)液状イソプレンゴム2 株式会社クラレ製、商品名「KL-10」 (vi)液状シリコーン 東レダウコーニング株式会社製、商品名「SE 1720CV」 (vii)液状EPDM(液状エチレン-プロピレン-ジエンゴム)三井化学株式会社製、商品名「PX-068」 (viii)アクリロニトリルブタジエンゴム4 下記(A)14.4体積%と下記(B)33.6体積%との混合物 (A)アクリロニトリルブタジエンゴム JSR株式会社製、商品名「N280」 (B)液体アクリロニトリルブタジエンゴム JSR株式会社製、商品名「N231L」 (vx)液状イソプレンゴム3 液状イソプレンゴム1(株式会社クラレ製、商品名「LIR-30」)14.4体積%と液状イソプレンゴム2(株式会社クラレ製、商品名「KL-10」)33.6体積%との混合物 (2)熱伝導性フィラー (i)窒化ホウ素 デンカ社製、商品名「SGP」 形状;板状フィラー 長辺方向熱伝導率;250W/m・K 厚み:1μm (ii)グラフェン ブリヂストンケービージー社製、商品名「WGNP」 形状;板状フィラー 長辺方向熱伝導率;1000W/m・K 厚み;2μm ・・・ 【0037】 実施例1 液状アクリロニトリルブタジエンゴム1(JSR株式会社製、N231L)48体積%と、窒化ホウ素52体積%とからなる混合物を溶融混練後、プレスすることにより厚さ0.5mm、幅80mm、奥行き80mmのシート状の樹脂層を得た。次に積層工程として、得られた樹脂層を16等分して重ねあわせて総厚さ8mm、幅20mm、奥行き20mmの16層からなる積層体を得た。次いで積層方向に平行にスライスし、厚さ2mm、幅8mm、奥行き20mmの熱伝導シートを得た。この場合、積層体を構成する樹脂層の1層の厚みは0.5mm(500μm)である。この熱伝導シートを断面方向(厚さ方向)から熱性能、硬度、圧縮強度を測定した。 【0038】 実施例2~8、比較例1~2 配合を表1に記載のとおり変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂発泡シートを得た。評価結果を表1に示す。 【0039】 【表1】 [図:0001400445000008.jpg] 」 b 甲2-2に記載された発明 (a)甲2-2物発明 上記aの【請求項1】、【0004】、【0015】、【0017】、【0019】及び【0021】~【0023】の記載によれば、甲2-2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「体積割合が30~70%のエラストマー樹脂と、体積割合が30~70%の熱伝導性フィラーとを含む熱伝導シートであって、前記エラストマー樹脂の25℃での粘度が3000Pa・s以下で、かつ前記エラストマー樹脂のラメラ長が20mm以上である、初期のアスカーC硬度が50以下であり、 熱伝導性フィラーの形状は、例えば、球状フィラー、破砕フィラー、板状フィラーなどを用いることができ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、 窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、 熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ、 熱伝導シートはエラストマー樹脂及び熱伝導性フィラーを含む単層でもよく、 エラストマー樹脂中に熱伝導性フィラーを分散させた構造を有し、 熱伝導性フィラーの種類は、板状フィラーを用いることが好ましく、板状フィラーの長軸が、シート面に対して45°以上の角度であることが好ましい、熱伝導シート。」(以下、「甲2-2物発明A」という。) 「半導体パッケージ等の発熱体と放熱体の間に配置された甲2-2物発明Aの熱伝導性樹脂シートを備える、装置。」(以下、「甲2-2物発明B」という。) (b)甲2-2方法発明 上記aの【請求項1】、【0015】、【0017】、【0019】、【0021】~【0023】及び【0029】の記載によれば、甲2-2には、以下の発明が記載されていると認められる。 「体積割合が30~70%のエラストマー樹脂と、体積割合が30~70%の熱伝導性フィラーとを含む熱伝導シートであって、前記エラストマー樹脂の25℃での粘度が3000Pa・s以下で、かつ前記エラストマー樹脂のラメラ長が20mm以上である、初期のアスカーC硬度が50以下の熱伝導シートであって、 熱伝導性フィラーの形状は、例えば、球状フィラー、破砕フィラー、板状フィラーなどを用いることができ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、 熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ、 熱伝導シートはエラストマー樹脂及び熱伝導性フィラーを含む単層でもよく、 エラストマー樹脂中に熱伝導性フィラーを分散させた構造を有し、 熱伝導性フィラーの種類は、板状フィラーを用いることが好ましく、板状フィラーの長軸が、シート面に対して45°以上の角度であることが好ましい、熱伝導シートの製造方法であって、 熱伝導性フィラー、エラストマー樹脂、及び必要に応じて添加剤を押出機に供給し溶融混練して、押出機からシート状に押出すことによって熱伝導シートを成形する、熱伝導シートの製造方法。」(以下、「甲2-2方法発明」という。) イ 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2-2物発明Aとを対比する。 a 甲2-2物発明Aの「エラストマー樹脂」は、本件発明1の「バインダ樹脂」に相当する。 b 甲2-2物発明Aは、「体積割合が30~70%のエラストマー樹脂と、体積割合が30~70%の熱伝導性フィラーとを含」み、「熱伝導性フィラーの形状は、例えば、球状フィラー、破砕フィラー、板状フィラーなどを用いることができ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、 窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、 熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ」、「エラストマー樹脂中に熱伝導性フィラーを分散させた構造を有する」と特定されているものの、熱伝導性フィラーを2種類併用する際に、各熱伝導性フィラーについて、どのような形状及び材質を選択するかについての具体的な特定はされていないし、各熱伝導性フィラーの含有量についても具体的な特定はされていない。 そうすると、本件発明1と甲2-2物発明Aとは、2種類の熱伝導性フィラーを含有し、2種類の熱伝導性フィラーがバインダ樹脂に分散している点で共通するといえるものの、各熱伝導性フィラーの形状及び材質並びに含有量については相違する。 c 甲2-2物発明Aの「熱伝導シート」は、「熱伝導性フィラーの種類は、板状フィラーを用いることが好ましく、板状フィラーの長軸が、シート面に対して45°以上の角度であることが好まし」く、「単層でもよい」ものであるから、熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層であるといえる。 したがって、本件発明1と甲2-2物発明Aとは、「比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」点で共通する。 d 甲2-2物発明Aの「熱伝導シート」は、本件発明1の「熱伝導性シート」に相当する。 e 以上によれば、本件発明1と甲2-2物発明Aとの一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「バインダ樹脂と、2種類の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散している熱伝導性シートであって、 当該熱伝導性シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、 厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シート。」 <相違点> 相違点6-1:2種類の熱伝導性フィラーについて、本件発明1は、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」とからなるのに対し、甲2-2物発明Aは、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 相違点6-2:本件発明1は、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であ」るのに対し、甲2-2物発明Aは、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 相違点6-3:本件発明1は、「上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%であ」るのに対し、甲2-2物発明Aは、そのような構成を備えているかどうか不明である点。 (イ)相違点についての判断 相違点6-1~相違点6-3は、いずれも熱伝導性フィラーに関するものであるから、まとめて検討する。 a 新規性について 上記(ア)bで検討したとおり、本件発明1と甲2-2物発明Aとは、2種類の熱伝導性フィラーを含有し、2種類の熱伝導性フィラーがバインダ樹脂に分散している点で共通するといえるものの、各熱伝導性フィラーの形状及び材質並びに含有量については相違する。 したがって、相違点6-1~相違点6-3は実質的な相違点である。 よって、その他の相違点について検討するまでもなく本件発明1は、甲2-2物発明Aではない。 b 進歩性について 甲2-2物発明Aは、「熱伝導性フィラー」について、「体積割合が30~70%」であり、「熱伝導性フィラーの形状は、例えば、球状フィラー、破砕フィラー、板状フィラーなどを用いることができ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ」との特定がされている。 そうすると、甲2-2物発明Aの「熱伝導性フィラー」として、板状(本件発明1の「鱗片状」に相当)の窒化ホウ素である熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、球状(本件発明1の「非鱗片状かつ非繊維状」に相当)の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーが選択肢のうちの一つとして特定されているといえる。 しかし、甲2-2の実施例(上記ア(ア)aの【0035】~【0039】)には、熱伝導性フィラーとして、形状が板状フィラーである窒化ホウ素又はグラフェンが、それぞれ記載されているにすぎず、2種類の熱伝導性フィラーを用いた実施例はない。 また、甲2-2には、2種類の熱伝導性フィラーとして具体的な組合せは記載も示唆もされていない。 そうすると、甲2-2物発明Aにおいて、「2種類」の「熱伝導性フィラー」として、板状の窒化ホウ素である熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、球状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーを優先的に選択すべき事情があるとはいえない。 さらに、甲2-2物発明Aにおいて、「2種類」の「熱伝導性フィラー」として、板状の窒化ホウ素である熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、球状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーを優先的に選択できたとしても、甲2-2物発明Aには、「熱伝導性フィラー」の「体積割合」について「30~70%」であることしか特定されておらず、甲2-2には、板状の窒化ホウ素である熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーの含有量を20~35体積%とするとともに、球状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーの含有量を20~40体積%とすることは、記載も示唆もされていない。 したがって、甲2-2物発明Aにおいて、「2種類」の「熱伝導性フィラー」として、板状の窒化ホウ素である熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、球状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラーを選択するとともに、前記第1の熱伝導性フィラーの含有量を20~35体積%とするとともに、前記第2の熱伝導性フィラーの含有量を20~40体積%とすること、すなわち、相違点6-1~相違点6-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たこととはいえない。 したがって、本件発明1は、甲2-2物発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明3、4、6~9、11、18について 本件発明3、4、6~9、11は、本件発明1を減縮した発明であり、いずれも相違点6-1~相違点6-3に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、本件発明3、4、6~9、11は、甲2-2物発明Aではなく、また、甲2-2物発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、本件発明18は、本件発明1の熱伝導性シートを備える電子機器の発明であり、相違点6-1~相違点6-3に係る本件発明1の構成を有するものであるから、上記イ(イ)で検討したのと同様の理由により、本件発明18は、甲2-2物発明Bではなく、また、甲2-2物発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明12について (ア)対比 本件発明12と甲2-2方法発明とを対比する。 a 甲2-2方法発明の「エラストマー樹脂」は、本件発明12の「バインダ樹脂」に相当する。 b 甲2-2方法発明は、「体積割合が30~70%の熱伝導性フィラーとを含」み、「熱伝導性フィラーの形状は、例えば、球状フィラー、破砕フィラー、板状フィラーなどを用いることができ、 熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられ、窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられ、 熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができ」と特定されているものの、熱伝導性フィラーを2種類併用する際に、各熱伝導性フィラーについて、どのような形状及び材質を選択するかについての具体的な特定はされていないし、各熱伝導性フィラーの含有量についても具体的な特定はされていない。 そして、甲2-2方法発明は、「熱伝導シートはエラストマー樹脂及び熱伝導性フィラーを含む単層でもよく、エラストマー樹脂中に熱伝導性フィラーを分散させた構造を有し」、「熱伝導性フィラー、エラストマー樹脂、及び必要に応じて添加剤を押出機に供給し溶融混練して、押出機からシート状に押出すことによって熱伝導シートを成形する」ものである。 そうすると、本件発明12と甲2-2方法発明とは、2種類の熱伝導性フィラーを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aを有している点で共通するといえるものの、各熱伝導性フィラーの形状及び材質並びに含有量については相違する。 c 甲2-2方法発明において、「熱伝導シート」は、「エラストマー樹脂及び熱伝導性フィラーを含む単層でもよく」、「熱伝導性フィラーの種類は、板状フィラーを用いることが好ましく、板状フィラーの長軸が、シート面に対して45°以上の角度であることが好ましい」ものであるから、熱伝導シートの厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導シートを得る工程を有しているといえる。 したがって、本件発明12と甲2-2方法発明とは、「厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程Cとを有し」ている点で共通する。 d 甲2-2方法発明の「熱伝導シートの製造方法」は、本件発明12の「熱伝導性シートの製造方法」に相当する。 e 以上によれば、本件発明12と甲2-2方法発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「2種類の熱伝導性フィラーを、バインダ樹脂に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、 厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程Cとを有する、熱伝導性シートの製造方法。」 <相違点> 相違点6-4:2種類の熱伝導性フィラーについて、本件発明12は、「鱗片状の熱伝導性フィラーからなる第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状かつ非繊維状の熱伝導性フィラーからなる第2の熱伝導性フィラー」とからなるのに対し、甲2-2方法発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点6-5:本件発明12は、「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程B」を有しているのに対し、甲2-2方法発明は、そのような構成を有していない点。 相違点6-6:「厚み方向と面方向とで、比誘電率及び熱伝導率が異なり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である熱伝導性シートを得る工程C」について、本件発明12は、「上記成形体ブロックをシート状にスライスして」いるのに対し、甲2-2方法発明は、そのような構成を有していない点。 相違点6-7:本件発明12は、「上記第1の熱伝導性フィラーが、鱗片状の窒化ホウ素であ」るのに対し、甲2-2方法発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 相違点6-8:本件発明12は、「上記熱伝導性シート中、上記第1の熱伝導性フィラーの含有量が20~35体積%であり、上記第2の熱伝導性フィラーの含有量が20~40体積%である」のに対し、甲2-2方法発明は、そのような構成を有しているかどうか不明である点。 (イ)相違点についての判断 a 新規性について 相違点6-4、相違点6-7、相違点6-8は、相違点6-1~相違点6-3と同じ内容であるから、上記イ(イ)aで検討したのと同様の理由により、実質的な相違点である。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲2-2方法発明ではない。 b 進歩性について 相違点6-4、相違点6-7、相違点6-8は、相違点6-1~相違点6-3と同じ内容であるから、上記イ(イ)bで検討したのと同様の理由により、甲2-2方法発明において、相違点6-4、相違点6-7、相違点6-8に係る本件発明12の構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たこととはいえない。 したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明12は、甲2-2方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件発明13~17について 本件発明13~17は、本件発明12を減縮した発明であり、いずれも相違点6-4、相違点6-7、相違点6-8に係る本件発明12の構成を有するものであるから、上記エ(イ)で検討したのと同様の理由により、本件発明13~17は、甲2-2方法発明ではなく、また、甲2-2方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 カ 小括 以上のとおり、本件発明1、3、4、6~9、11~18は、甲2-2に記載された発明ではなく、また、甲2-2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件請求項1、3、4、6~9、11~18に係る特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 したがって、申立人増山が主張する申立理由2-2、申立理由2-3には理由がない。 第9 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、3、4、6~9、11~18に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、3、4、6~9、11~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項2、5、10は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2、5、10に対して、申立人吉澤及び申立人増山がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700480

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