特許異議申立
2022-700579
熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法
- 審判番号
- 2022-700579
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-152686
- 登録番号
- 6987941
- 請求日
- 2022年07月04日
- 審決日
- 2023年03月29日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デクセリアルズ株式会社
- 【権利者代理人】野口 信博
- 【権利者代理人】穂谷野 聡
- 【異議申立人】吉澤 悦子
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 小田 浩
- 分類
- P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6987941号発明「熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6987941号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5、13〕、〔6-12〕について訂正することを認める。
特許第6987941号の請求項1、2、4-9、11-13に係る特許を維持する。
特許第6987941号の請求項3、10に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6987941号の請求項1~13に係る特許についての出願は、令和2年9月11日に出願され、令和3年12月3日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月5日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年 7月 4日 :特許異議申立人吉澤悦子(以下、「申立人吉澤」という。)による特許異議の申立て
令和 4年10月12日付け:取消理由通知
令和 4年12月12日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
令和 5年 2月13日 :申立人吉澤による意見書の提出
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)一群の請求項1~5、13に係る訂正
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「配向しており、」とあるのを、「配向しており、上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であり、」(下線は、訂正箇所。以下同じ。)と訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4、5、13も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「当該熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下」とあるのを、「当該熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下」と訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4、5、13も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に「7.0以下である、熱伝導性シート」とあるのを、「7.0以下であり、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シート」と訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、4、5、13も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
オ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれか1項」とあるのを、「請求項1又は2」と訂正する(請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5、13も同様に訂正する。)。
カ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1~5のいずれか1項」とあるのを、「請求項1、2、4、5のいずれか1項」と訂正する。
訂正事項1-1~訂正事項4は、一群の請求項〔1~5、13〕に対して請求されたものである。
(2)一群の請求項6~12に係る訂正
ア 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項6に「とを有し、上記熱伝導性シートは」とあるのを、「とを有し、上記熱伝導性シート中、上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であり、上記熱伝導性シートは」と訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~9、11、12も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項6に「上記熱伝導性シートの比誘電率が7.0以下」とあるのを、「上記熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下」と訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~9、11、12も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項5-3
特許請求の範囲の請求項6に「比誘電率が7.0以下である、熱伝導性シートの製造方法」とあるのを「比誘電率が7.0以下であり、上記熱伝導性シートの厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シートの製造方法」と訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7~9、11、12も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10を削除する。
オ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11に「請求項6~10のいずれか1項」とあるのを、「請求項6~9のいずれか1項」と訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。
訂正事項5-1~訂正事項7は、一群の請求項〔6~12〕に対して請求されたものである。
(3)訂正事項5
明細書の段落0058に「JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」と記載されているのを、「熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1-1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-1は、異方性充填材及び非異方性充填材について、それぞれ「上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり」、「上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であり」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1-1の「上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であ」ることは、本件の特許明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0030】、【0034】に基づくものである。
よって、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-1は、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1-1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項1については特許異議の申立てがされているので、訂正事項1-1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項1-2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-2は、熱伝導性シートの比誘電率について、「厚み方向の比誘電率」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1-2の「当該熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下」であることは、特許明細書の段落【0014】に基づくものである。
よって、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-2は、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1-2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項1については特許異議の申立てがされているので、訂正事項1-2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項1-3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-3は、熱伝導性シートについて、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項1-3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1-3の「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」ことは、特許明細書の段落【0051】及び図1に基づくものである。
よって、訂正事項1-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1-3は、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1-3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項1については特許異議の申立てがされているので、訂正事項1-3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項3については特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項4に「請求項1~3のいずれか1項に記載の」とあるのを、訂正後の請求項4の「請求項1又は2に記載の」に訂正するものであり、訂正事項2に伴い、引用請求項のうち、請求項3の記載を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項4については特許異議の申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項13に「請求項1~5のいずれか1項に記載の」とあるのを、訂正後の請求項13の「請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の」に訂正するものであり、訂正事項2に伴い、引用請求項のうち、請求項3の記載を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項13については特許異議の申立てがされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(7)訂正事項5-1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5-1は、異方性充填材及び非異方性充填材について、「上記熱伝導性シート中、上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、「上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であり」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項5-1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5-1の「上記熱伝導性シート中、上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であ」ることは、特許明細書の段落【0030】、【0034】に基づくものである。
よって、訂正事項5-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5-1は、訂正前の請求項6の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項5-1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項6については特許異議の申立てがされているので、訂正事項5-1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(8)訂正事項5-2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5-2は、熱伝導性シートの比誘電率について、「厚み方向の比誘電率」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項5-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5-2の「当上記熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下」であることは、特許明細書の段落【0014】に基づくものである。
よって、訂正事項5-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5-2は、訂正前の請求項6の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項5-2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項6については特許異議の申立てがされているので、訂正事項5-2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(9)訂正事項5-3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5-3は、熱伝導性シートについて、「上記熱伝導性シートの厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項5-3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5-3の「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」ことは、特許明細書の段落【0050】~【0053】及び図1に基づくものである。
よって、訂正事項5-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5-3は、訂正前の請求項6の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項5-3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項6については特許異議の申立てがされているので、訂正事項5-3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(10)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項6は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、訂正前の請求項10を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項10については特許異議の申立てがされているので、訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(11)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7は、訂正前の請求項11に「請求項6~10のいずれか1項に記載の」とあるのを、訂正後の請求項11の「請求項6~9のいずれか1項に記載の」に訂正するものであり、訂正事項6に伴い、引用請求項のうち、請求項10の記載を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項7は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項11については特許異議の申立てがされているので、訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(12)訂正事項8について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項8は、請求項1に記載された「比誘電率」に関し、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
具体的には、特許明細書の段落0058における「JIS K6911に準じた方法」という記載内容が、「熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率(30GHz)」という他の記載との関係において不合理を生じていたため、その記載を正すものである。また、訂正事項8は、特許明細書の段落0058における「熱伝導性シートの」「面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。」という記載内容が、特許明細書の段落0014における「熱伝導性シート1の比誘電率は、絶縁性を高める観点では低いほど好ましく、例えば、厚み方向Bの比誘電率が7.0以下であり、・・・であってもよい。」という他の記載や、特許明細書の段落0060の表1における実施例1~4の比誘電率の測定結果との関係において不合理を生じているため、その記載を正すものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項8は、特許明細書の段落【0014】、【0058】、【0060】の表1の実施例1~4に基づいて導き出される構成であって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
訂正事項8は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、訂正事項8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(13)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5、13〕、〔6~12〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正請求による訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~13に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シートであって、上記異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、
上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、
上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であり、
当該熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、
当該熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、
当該熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下であり、
厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シート。
【請求項2】
上記異方性充填材が窒化ホウ素である、請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
上記非異方性充填材が、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
【請求項5】
上記非異方性充填材が、アルミナと窒化アルミニウムとを含む、請求項4に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
上記熱伝導性シート中、上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であり、
上記熱伝導性シートは、上記異方性充填材が上記熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、上記熱伝導性シートの比重が2.7未満であり、上記熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であり、上記熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下であり、上記熱伝導性シートの厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シートの製造方法。
【請求項7】
上記熱伝導性シートの表面が、上記工程Cでスライスした面である、請求項6に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項8】
上記熱伝導性シートの表面が、上記工程Cでスライスした後にプレスした面である、請求項6に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項9】
上記異方性充填材が窒化ホウ素である、請求項6~8のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項10】
(削除)
【請求項11】
上記非異方性充填材が、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム及び酸化亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6~9のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項12】
上記非異方性充填材が、アルミナと窒化アルミニウムとを含む、請求項11に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項13】
発熱体と、
放熱体と、
発熱体と放熱体との間に配置された請求項1、2、4、5のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~13に係る特許について、当審が令和4年10月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)(新規性)本件特許の請求項1~7、9~13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~7、9~13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、本件特許の請求項1、2、4、6、7、9、11~13は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、4、6、7、9、11~13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2-1)(進歩性)本件特許の請求項1~7、9~13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項8~12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術に基いて、本件特許出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2-2)(進歩性)本件特許の請求項1~3、6、7に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項4、5に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項8、9に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明10は、甲第2号証に記載された発明、又は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、若しくは、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術、又は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項12に係る発明は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項13に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)(明確性)請求項1~13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 甲号証の記載と甲号証に記載された発明
(1)甲第1号証の記載、甲1物発明、甲1方法発明
ア 甲第1号証の記載
取消理由通知において引用した甲第1号証(申立人吉澤提出の甲第1号証:国際公開第2020/105601号)には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審において付した。以下、同じ。)
「[0012] 以下、本発明の実施形態に係る熱伝導性シートについて詳しく説明する。
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の熱伝導性シートを示す。第1の実施形態に係る熱伝導性シート10は、それぞれがシリコーン樹脂11と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層13を備える。複数の単位層13は、面方向に沿う一方向(すなわち、厚さ方向zに垂直な一方向であり、「積層方向x」ともいう)に沿って積層されており、隣接する単位層13同士が互いに接着されている。各単位層13において、シリコーン樹脂11は、熱伝導性充填材を保持するマトリクス成分となるものであり、シリコーン樹脂11には、熱伝導性充填材が分散するように配合される。
[0013] 熱伝導性シート10は、熱伝導性充填材として、異方性充填材14と、非異方性充填材15とを含有する。異方性充填材14は、シート10の厚さ方向zに配向している。すなわち、各単位層13の面方向の一方向に沿って配向している。熱伝導性シート10は、シートの厚さ方向zに配向する異方性充填材14を含有することで、厚さ方向zの熱伝導性が向上する。また、熱伝導性シート10は、さらに非異方性充填材15を含有することでも熱伝導性がさらに向上する。」
「[0019] (異方性充填材)
異方性充填材14は、形状に異方性を有する充填材であり、配向が可能な充填材である。異方性充填材14としては、繊維状材料、鱗片状材料などが挙げられる。異方性充填材14は、一般的にアスペクト比が高いものであり、アスペクト比が2を越えるものであり、5以上であることがより好ましい。アスペクト比を2より大きくすることで、異方性充填材14を厚さ方向zに配向させやすくなり、熱伝導性シート10の熱伝導性を高めやすい。
[0020] また、アスペクト比の上限は、特に限定されないが、実用的には100である。
なお、アスペクト比とは、異方性充填材14の短軸方向の長さに対する長軸方向の長さの比であり、繊維状材料においては、繊維長/繊維の直径を意味し、鱗片状材料においては鱗片状材料の長軸方向の長さ/厚さを意味する。
・・・
[0023] また、異方性充填材14が鱗片状材料である場合、その平均粒径は、10~400μmが好ましく、15~300μmがより好ましい。・・・
・・・
[0025] 異方性充填材14としては、具体的には、炭素繊維、鱗片状炭素粉末で代表される炭素系材料、金属繊維で代表される金属材料や金属酸化物、窒化ホウ素や金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維等が挙げられる。これらの中では、炭素系材料は、比重が小さく、シリコーン樹脂11中への分散性が良好なため好ましく、中でも熱伝導率が高い、黒鉛化炭素材料がより好ましい。また、窒化ホウ素、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール繊維は絶縁性を有する観点から好ましく、中でも窒化ホウ素がより好しい。窒化ホウ素は、特に限定されないが、鱗片状材料として使用されることが好ましい。鱗片状の窒化ホウ素は、凝集されてもよいし、凝集されていなくてもよいが、一部又は全部が凝集されていないことが好ましい。
・・・
[0032] 異方性充填材14は、各単位層において熱伝導性シートの厚さ方向zに配向している。異方性充填材14の厚さ方向zの配向をより具体的に説明すると、熱伝導性充填材14が繊維状充填材であるときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して繊維状充填材の長軸のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
また、異方性充填材14が鱗片状充填材であるときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して鱗片状状充填材の鱗片面のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超えるものとすることができる。換言すれば、熱伝導性シートのシート面(x-y面)に対して、鱗片面の法線方向のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
なお、異方性充填材14の配向方向は、熱伝導率を高める観点からは厚さ方向zに対する長軸のなす角度または鱗片面のなす角度を0°以上5°未満とすることが好ましい。一方、熱伝導性シート10を圧縮したときの荷重を低くすることができるという点で、5°以上30°未満の範囲で傾斜させることもできる。なお、これら角度は、一定数(例えば、任意の異方性充填材14を50個)の異方性充填材14の配向角度の平均値である。
さらに異方性充填材14は、熱伝導性充填材14が繊維状または鱗片状のいずれでもないときは、熱伝導性シート10の厚さ方向zに対して異方性充填材14の長軸のなす角度が30°未満の異方性充填材の数の割合が、異方性充填材全量に対して、50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超えるものとする。
[0033] また、異方性充填材14が鱗片状材料である場合、異方性充填材14は、さらに、鱗片面の法線方向が所定方向を向くことが好ましく、具体的には、複数の単位層13の積層方向xに向くことが好ましい。このように法線方向が積層方向xに向くことで、熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導性が向上する。また、熱伝導性シート10の面方向に沿い、かつ積層方向xに直交する方向の熱伝導性も向上する。
なお、鱗片面の法線方向が積層方向xに向くとは、積層方向xに対して法線方向のなす角度が30°未満の炭素繊維粉末の数の割合が50%を超える状態にあることをいい、該割合は、好ましくは80%を超える。
なお、異方性充填材14は、鱗片状材料である場合には、後述する製造方法で述べるように、剪断力を付与しながらシート状に成形することで、鱗片面の法線方向が積層方向xに向くことになる。」
「[0034] <非異方性充填材>
非異方性充填材15は、異方性充填材14とは別に熱伝導性シート10に含有される熱伝導性充填材であり、異方性充填材14とともに熱伝導性シート10に熱伝導性を付与する材料である。本実施形態では、非異方性充填材15が含有されることで、配向した異方性充填材14の間の隙間に充填材が介在し、熱伝導率の高い熱伝導性シート10が得られる。
・・・
[0037] 非異方性充填材15の具体例は、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、炭素材料、金属以外の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。また、非異方性充填材14の形状は、球状、不定形の粉末などが挙げられる。
非異方性充填材15において、金属としては、アルミニウム、銅、ニッケルなど、金属酸化物としては、アルミナに代表される酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛など、金属窒化物としては窒化アルミニウムなどを例示することができる。金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムが挙げられる。さらに、炭素材料としては球状黒鉛などが挙げられる。金属以外の酸化物、窒化物、炭化物としては、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素などが挙げられる。
これらの中でも、酸化アルミニウムやアルミニウムは、熱伝導率が高く、球状のものが入手しやすい点で好ましく、水酸化アルミニウムは入手し易く熱伝導性シートの難燃性を高めることができる点で好ましい。
絶縁性を有する非異方性充填材15としては、上記した中でも、金属酸化物、金属窒化物、金属水酸化物、金属炭化物が挙げられるが、特に酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムが好ましい。
非異方性充填材15は、上記したものを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。」
「[0041] (熱伝導性シート)
熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導率は、例えば5W/(m・K)以上であり、7W/(m・K)以上とすることが好ましく、9W/(m・K)以上がより好ましい。これら下限値以上とすることで、熱伝導性シート10の厚さ方向zにおける熱伝導性を優れたものにできる。上限は特にないが、熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導率は、例えば50W/(m・K)以下である。なお、熱伝導率はASTM D5470-06に準拠した方法で測定するものとする。」
「[0046] <熱伝導性シートの製造方法>
次に、上記した第1の実施形態に係る熱伝導性シートの製造方法の一例について図2を参照しながら説明する。本製造方法は、それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する1次シート準備工程と、1次シートにVUVを照射するVUV照射工程と、VUVを照射した1次シートを積層して積層ブロックを得る積層工程と、積層ブロックを切断して熱伝導性シートを得る切断工程とを備える。以下、各工程について詳細に説明する。
[0047] (1次シート準備工程)
1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製する。液状組成物は、通常スラリーとなる。液状組成物には必要に応じて適宜添加成分がさらに混合されてもよい。ここで、液状組成物を構成する各成分の混合は、例えば公知のニーダー、混練ロール、ミキサーなどを使用するとよい。
・・・
[0050] 次に、液状組成物を、剪断力を付与しながらシート状に成形することにより、異方性充填材14をシート面と平行な方向(すなわち、面方向)に配向させる。ここで、液状組成物は、例えば、バーコータ又はドクターブレード等の塗布用アプリケータ、もしくは、押出成形やノズルからの吐出等により、基材フィルム上に塗工するとよく、このような方法により、液状組成物の塗工方向に沿った剪断力を与えることができる。この剪断力を受けて、液状組成物中の異方性充填材14は塗工方向に配向する。
[0051] 次に、シート状に成形された液状組成物を硬化させ、1次シートを得る。1次シートでは、上記のとおり、面方向に沿って異方性充填材が配向される。液状組成物の硬化は、液状組成物に含まれる硬化性シリコーン組成物を硬化することで行う。液状組成物の硬化は、加熱により行うとよいが、例えば、50~150℃程度の温度で行うとよい。また、加熱時間は、例えば10分~3時間程度である。
なお、液状組成物に溶剤が配合される場合には、溶剤は硬化時の加熱により揮発させるとよい。
・・・
[0054](VUV照射工程)
次に、硬化された1次シートの少なくとも一方の面に対して、VUV照射を行う。VUVとは、真空紫外線であり、波長が10~200nmの紫外線を意味する。VUVの光源としては、エキシマXeランプ、エキシマArFランプなどが挙げられる。
硬化された1次シートは、上記したようにシリコーン樹脂(オルガノポリシロキサン)を含むものであり、VUVを照射すると、VUVが照射された面は活性化される。1次シートは、後述するように、その活性化された一方の面が重ね合わせ面となるように、他の1次シートと重ね合わせることで、1次シート間が強固に接着されることになる。
・・・
[0055](積層工程)
次に、複数の1次シート21を、図2(a)及び(b)に示すように、異方性充填材14の配向方向が同じになるように積層する。ここで、各1次シート21は、上記したとおり、互いに接触する重ね合わせ面のいずれか一方の面が、予めVUV照射されていればよい。一方の面がVUV照射されていることで、その活性化された一方の面により隣接する1次シート21、21同士が接着される。また、接着性をより向上させる観点から、重ね合わせ面の両方がVUV照射されていることが好ましい。
・・・
[0057](切断工程)
次に、図2(c)に示すように、刃物18によって、積層ブロック22を1次シート21の積層方向xに沿って切断し、熱伝導性シート10を得る。この際、積層ブロック22は、異方性充填材14の配向方向と直交する方向に切断するとよい。刃物18としては、例えば、カミソリ刃やカッターナイフ等の両刃や片刃、丸刃、ワイヤー刃、鋸刃等を用いることができる。積層ブロック22は、刃物18を用いて、例えば、押切、剪断、回転、摺動等の方法により切断される。」
「[請求項9] それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含む、複数の1次シートを用意する工程と、
前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、
前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、
前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように切断して熱伝導性シートを得る工程と
を備える熱伝導性シートの製造方法。
[請求項10] 前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向され、
前記積層ブロックは、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断される
請求項9に記載の熱伝導性シートの製造方法。」
図1、2は、以下のとおりのものである。
[図:0001399362000001.jpg]
[図:0001399362000002.jpg]
イ 甲第1号証に記載の技術事項
甲第1号証の記載からみて、甲第1号証には、以下の技術事項が記載されている。
(ア)それぞれがシリコーン樹脂11と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層13を備える熱伝導性シート10であって、複数の単位層13は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、隣接する単位層13同士が互いに接着されており、熱伝導性シート10は、熱伝導性充填材として、異方性充填材14と、非異方性充填材15とを含有し、異方性充填材14は、シート10の厚さ方向zに配向している、熱伝導性シート([0012]、[0013]、[0032]、[図1])。
(イ)異方性充填材14としては、窒化ホウ素がより好ましいこと([0025])。
(ウ)非異方性充填材15として、アルミナ、窒化アルミニウムが挙げられ、非異方性充填材15は、2種以上を併用してもよいこと([0037])。
(エ)熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導率は、7W/(m・K)以上とすることが好ましいこと([0041])。
(オ)それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含み、前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程と、前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断して熱伝導性シートを得る工程とを備える熱伝導性シートの製造方法([0046]、[請求項9]、[請求項10]、[図2])。
(カ)1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材14、非異方性充填材15)とを混合して液状組成物を調製すること([0047])。
ウ 甲1物発明
上記イ(ア)~(エ)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1物発明」という。)が記載されている。
「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備える熱伝導性シートであって、
複数の単位層は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、隣接する単位層同士が互いに接着されており、
熱伝導性シートは、熱伝導性充填材として、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有し、異方性充填材は、シートの厚さ方向zに配向しており、
異方性充填材としては、窒化ホウ素がより好ましく、
非異方性充填材として、アルミナ、窒化アルミニウムが挙げられ、非異方性充填材は、2種以上を併用してもよく、
熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導率は、7W/(m・K)以上とすることが好ましい、熱伝導性シート。」
エ 甲1方法発明
上記イ(イ)~(カ)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されている。
「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含み、前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程と、
前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、
前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、
前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断して熱伝導性シートを得る工程と
を備える、熱伝導性シートの製造方法であって、
1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材、非異方性充填材)とを混合して液状組成物を調製し、
異方性充填材としては、窒化ホウ素がより好ましく、
非異方性充填材として、アルミナ、窒化アルミニウムが挙げられ、非異方性充填材は、2種以上を併用してもよく、
熱伝導性シート10の厚さ方向zの熱伝導率は、7W/(m・K)以上とすることが好ましい、熱伝導性シートの製造方法。」
(2)甲第2号証の記載、甲2物発明、甲2方法発明
甲第2号証(申立人吉澤提出の甲第2号証:特開2012-201106号公報)には、以下の事項が記載されている。
ア 甲第2号証の記載
「【請求項1】
六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。
【請求項2】
六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断することを特徴とする熱伝導性成形体。」
「【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用される熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムをあげることができる。これらのうち、窒化ホウ素は鱗片状粒子の長さ方向の熱伝導性が極めて高く、その特徴をうまく利用すれば高熱伝導性を付与することができるので、本発明には特に好適なものである。また、その窒化ホウ素粒子としては、粉末X線解析法による黒鉛指数(GI)が2.5以下の高結晶性のものが望ましい。」
「【0025】
本発明の熱伝導性成形体の製造方法の一例を示す。付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整した。このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断する方法があげられる。」
「【0030】
このコンパウンドをスリット(1mm×60mm)付きダイスの固定されたシリンダー構造金型内に充填し、ピストンで圧力をかけながらスリットから押し出して、シリコーン樹脂組成物の未硬化の薄板(グリーンシート)を作製した。
【0031】
厚さ1mm、幅60mm、長さ120mmのグリーンシート25枚から縦横の長さが50mmの正方形となるようにカッターでグリーンシートを切り出した。そして、正方形のグリーンシート同士の各角を合わせつつ、50mmの高さになるまで50層積層した。その後、乾燥機を用いて150℃で22時間加熱硬化させて、シリコーン積層体を作製した。この1辺の長さが50mmの立方体であるシリコーン積層体をカッターでグリーンシートを重ねた面に対して垂直であり、その辺に対して平行に刃を下ろしながら切断し、本発明のシート状熱伝導性成形体(1mm)を作製した。」
イ 甲第2号証に記載の技術事項
甲第2号証の記載からみて、甲第2号証には、以下の技術事項が記載されている。
(ア)六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)、又は、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断する熱伝導性成形体であって、付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、調製されたシリコーン樹脂組成物のコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断して製造された、熱伝導性成形体(【請求項1】、【請求項2】、段落【0025】)。
(イ)熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムをあげることができ、これらのうち、窒化ホウ素は鱗片状粒子が特に好適なものであること(段落【0009】)。
(ウ)未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断して製造された、熱伝導性成形体は、シート状熱伝導性成形体であること(段落【0030】、【0031】)。
(エ)熱伝導性成形体の製造方法であって、付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整し、このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断する製造方法であり、熱伝導性成形体は、六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)、又は、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断するものである、熱伝導性成形体の製造方法(【請求項1】、【請求項2】、段落【0025】)。
ウ 甲2物発明
上記イ(ア)~(ウ)から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2物発明」という。)が記載されている。
「六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)、又は、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断するシート状熱伝導性成形体であって、
熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムをあげることができ、これらのうち、窒化ホウ素は鱗片状粒子が特に好適なものであり、
付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、調製されたシリコーン樹脂組成物のコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断して製造された、シート状熱伝導性成形体。」
エ 甲2方法発明
上記イ(イ)~(エ)から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2方法発明」という。)が記載されている。
「シート状熱伝導性成形体の製造方法であって、
付加反応型液状シリコーン及び熱伝導性フィラーを室温下で混合して、シリコーン樹脂組成物のコンパウンドを調整し、このコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断する方法であり、
シート状熱伝導性成形体は、六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)、又は、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1の熱伝導性フィラー40~70体積%含有してなるシリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断するものであり、
熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムをあげることができ、これらのうち、窒化ホウ素は鱗片状粒子が特に好適なものである、シート状熱伝導性成形体の製造方法。」
3 当審の判断
(1)理由1(新規性)、理由2-1(進歩性)(甲第1号証を主たる引用文献とする新規性及び進歩性)について
ア 請求項1に係る発明について
(ア)対比
請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。また、請求項2に係る発明~請求項13に係る発明を順に「本件発明2」~「本件発明13」という。)と甲1物発明とを対比する。
a 甲1物発明は、「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備える熱伝導性シートであって、複数の単位層は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されて」いるから、本件発明1と甲1物発明とは、「シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シート」である点で一致する。
b 甲1物発明において、「異方性充填材は、シートの厚さ方向zに配向して」いるから、本件発明1と甲1物発明とは、「上記異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向して」いるものである点で一致する。
c 甲1物発明において、「熱伝導性シートの厚さ方向zの熱伝導率は、7W/(m・K)以上とすることが好ましい」から、本件発明1と甲1物発明とは、「当該熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であ」る点で一致する。
d 以上のことから、本件発明1と甲1物発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シートであって、上記異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、
当該熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上である、熱伝導性シート。」
<相違点A>
本件発明1では、「上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であ」るのに対し、甲1物発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点B>
本件発明1では、「当該熱伝導性シートの比重が2.7未満であ」るのに対し、甲1物発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点C>
本件発明1では、「当該熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下である」のに対し、甲1物発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点D>
本件発明1では、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、甲1物発明は、「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備える熱伝導性シートであって、複数の単位層は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、隣接する単位層同士が互いに接着されて」いるものであり、本件発明1の上記のようなものではない点。
(イ)判断
a 事案に鑑み、まず、上記相違点Dについて検討する。
b 甲1物発明は、「それぞれがシリコーン樹脂と、熱伝導性充填材とを含有する複数の単位層を備える熱伝導性シートであって、複数の単位層は、シートの厚さ方向zに垂直な一方向に沿って積層されており、隣接する単位層同士が互いに接着されて」いるものであるところ、シートの厚さ方向zに垂直な一方向、すなわち、シートの厚さ方向zに直交する方向に、複数の単位層が積層されて、隣接する単位層同士が互いに接着されているものであるから、相違点Dは、実質的なものである。
したがって、相違点A~相違点Cについて検討するまでもなく、本件発明1は甲1物発明であるとはいえない。
c 次に、相違点Dに係る本件発明1の構成に、当業者であれば容易に想到できたか否かについて検討する。
シートの厚さ方向zに直交する方向に、複数の単位層が積層されて、隣接する単位層同士が互いに接着されている、甲1物発明において、熱伝導性シートを「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」ものとすることは、阻害要因があるから、甲1物発明において、相違点Dに係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、相違点A~相違点Cについて検討するまでもなく、本件発明1は、甲1物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2、4、5、13について
本件発明2、4、5、13は、上記相違点Dに係る本件発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲1物発明であるとはいえず、また、甲1物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明6~9、11、12について
(ア)本件発明6について
a 対比
本件発明6と甲1方法発明とを対比する。
(a)甲1方法発明において、「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含み、前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程」を備え、「1次シート準備工程では、まず、シリコーン樹脂の原料である硬化性シリコーン組成物と、熱伝導性充填材(すなわち、異方性充填材、非異方性充填材)とを混合して液状組成物を調製」するところ、「硬化性シリコーン組成物」は、本件発明6の「シリコーン樹脂」に相当するから、本件発明6と甲1方法発明とは、「シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程A」を有する点で一致する。
(b)甲1方法発明は、「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含み、前記熱伝導性充填材が、異方性充填材を含み、前記1次シートではその面方向に沿って異方性充填材が配向された複数の1次シートを用意する工程と、前記1次シートの少なくとも一方の面に真空紫外線を照射する工程と、前記複数の1次シートを、真空紫外線が照射された前記一方の面を他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程と、前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように、前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断して熱伝導性シートを得る工程とを備える、熱伝導性シートの製造方法」であるから、本件発明6と甲1方法発明とは、「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有」する点で一致する。
(c)甲1方法発明において、「前記異方性充填材が配向する方向に直交する方向に切断して熱伝導性シートを得る工程」とを備えるから、本件発明6と甲1方法発明とは、「上記熱伝導性シートは、上記異方性充填材が上記熱伝導性シートの厚み方向に配向して」いるものである点で一致する。
(d)甲1方法発明において、「熱伝導性シートの厚さ方向zの熱伝導率は、7W/(m・K)以上とすることが好ましい」から、本件発明6と甲1方法発明とは、「当該熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であ」る点で一致する。
(e)以上のことから、本件発明6と甲1方法発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
上記熱伝導性シートは、上記異方性充填材が上記熱伝導性シートの厚み方向に配向しており、上記熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上である、熱伝導性シートの製造方法。」
<相違点E>
本件発明6では、「上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であ」るのに対し、甲1方法発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点F>
本件発明6では、「当該熱伝導性シートの比重が2.7未満であ」るのに対し、甲1方法発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点G>
本件発明6では、「当該熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下である」のに対し、甲1方法発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点H>
本件発明6では、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」のに対し、甲1方法発明は、「それぞれがシリコーン樹脂を含み、かつ少なくとも1つの1次シートが熱伝導性充填材を含」む「複数の1次シートを用意する工程」と、「前記複数の1次シート」を、「他の1次シートに接触させるようにして積層することで、複数の1次シートを接着させて積層ブロックを形成する工程」と、「前記積層ブロックを積層方向に沿ってシート状になるように」、「切断して熱伝導性シートを得る工程」とを備えるものであり、本件発明6の上記のようなものではない点。
b 判断
(a)事案に鑑み、まず、上記相違点Hについて検討する。
(b)相違点Hは、上記ア(ア)dに記載の相違点Dと同じであるから、上記ア(イ)aで相違点Dについて検討したのと同様な理由で、本件発明6は甲1方法発明であるとはいえない。
(c)また、上記ア(イ)bで相違点Dについて検討したのと同様な理由で、甲1方法発明において、相違点Hに係る本件発明6の構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、相違点E~相違点Gについて検討するまでもなく、本件発明6は、甲1方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明7~9、11、12について
本件発明7、9、11、12は、本件発明6を直接又は間接的に引用するものであり、上記相違点Hに係る本件発明6の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明6と同じ理由により、甲1方法発明であるとはいえず、また、甲1方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明8、9、11、12は、甲1方法発明及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 理由1、理由2-1(甲第1号証を主たる引用文献とする新規性及び進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、2、4~7、9、11~13は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえず、本件発明1、2、4~9、11~13は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項1、2、4~9、11~13に係る特許を、理由1、理由2-1によって取り消すことはできない。
(2)理由1(新規性)、理由2-2(進歩性)(甲第2号証を主たる引用文献とする新規性及び進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2物発明とを対比する。
a(a)甲2物発明の「シート状熱伝導性成形体」は、本件発明1の「熱伝導性シート」に相当する。
(b)甲2物発明の「シート状熱伝導性成形体」は、「調製されたシリコーン樹脂組成物のコンパウンド」を、「未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後」、「切断して製造された」ものであるから、甲2物発明において、「加熱硬化させた後」の「シリコーン樹脂組成物」は、本件発明1の「シリコーン樹脂」に相当する。
(c)また、甲2物発明では、「熱伝導性フィラーとしては、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウムをあげることができ、これらのうち、窒化ホウ素は鱗片状粒子が特に好適なものであ」るところ、特許明細書の段落【0026】には、「異方性充填材3は、形状に異方性を有する熱伝導性フィラーである。異方性充填剤3としては、長軸と短軸と厚みとを有する熱伝導性フィラー、例えば、鱗片状の熱伝導性フィラーが挙げられる。」と記載されているから、甲2物発明において、「六方晶窒化ホウ素粉末(A)」は、「熱伝導性フィラー」としての「鱗片状粒子」である「窒化ホウ素」であり、異方性充填材であるといえる。
また、特許明細書の段落【0031】には、「非異方性充填剤4は、上述した異方性充填剤3以外の熱伝導性フィラーであり、形状に異方性を有しない熱伝導性フィラーである。例えば、非異方性充填剤4には、球状、粉末状、顆粒状などの熱伝導性フィラーが含まれる。非異方性充填剤4の材質は、・・・具体例としては、酸化アルミニウム(アルミナ、サファイア)、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、ジルコニア、炭化ケイ素などが挙げられる。」と記載されているから、甲2物発明において、「酸化アルミニウム粉末(B)」は、「熱伝導性フィラー」としての「酸化アルミニウム」であり、非異方性充填材であるといえる。
(d)したがって、本件発明1と甲2物発明とは、「シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シート」である点で一致する。
b 甲2物発明は、「シリコーン樹脂組成物を積層したシリコーン積層体を、積層方向から切断するシート状熱伝導性成形体であって」、「調製されたシリコーン樹脂組成物のコンパウンドをピストン式又はスクリュー式の押し出し機で押し出して、未硬化の薄板(グリーンシート)に仮成形した後、それを積層し加熱硬化させた後、積層方向から所望の幅に切断して製造された」ものであるところ、甲2物発明の「シート状熱伝導性成形体」は、その「製造」方法から、厚み方向に直交するあらゆる方向に単層であるといえる。
したがって、本件発明1と甲2物発明とは、「厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である」点で一致する。
c 以上のことから、本件発明1と甲2物発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「シリコーン樹脂と、異方性充填材と、非異方性充填材とを含有する熱伝導性シートであって、
厚み方向に直交するあらゆる方向に単層である、熱伝導性シート。」
<相違点I>
本件発明1では、「上記異方性充填材が当該熱伝導性シートの厚み方向に配向して」いるのに対し、甲2物発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点J>
本件発明1では、「上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であ」るのに対し、甲1物発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点K>
本件発明1では、「当該熱伝導性シートの比重が2.7未満であ」るのに対し、甲2物発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点L>
本件発明1では、「当該熱伝導性シートの熱伝導率が7.0W/m・K以上であ」るのに対し、甲2物発明では、そのような特定はなされていない点。
<相違点M>
本件発明1では、「当該熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率が7.0以下である」のに対し、甲2物発明では、そのような特定はなされていない点。
(イ)判断
a 事案に鑑み、まず、上記相違点Jについて検討する。
b 甲2物発明は、六方晶窒化ホウ素粉末(A)と酸化アルミニウム粉末(B)(又は、窒化アルミニウム粉末(B))の「(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1」であるから、六方晶窒化ホウ素粉末(A)が酸化アルミニウム粉末(B)(又は、窒化アルミニウム粉末(B))よりも非常に多いものである。
一方、本件発明1は、「上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下」であり、異方性充填材と非異方性充填材が同等の体積割合であるか、非異方性充填材の体積割合が異方性充填材の体積割合よりも多いものである。
したがって、相違点Jは、実質的なものであり、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2物発明であるとはいえない。
c 次に、相違点Jに係る本件発明1の構成に、当業者であれば容易に想到できたか否かについて検討する。
六方晶窒化ホウ素粉末(A)と酸化アルミニウム粉末(B)(又は、窒化アルミニウム粉末(B))の「(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1」である、甲2物発明において、異方性充填材(六方晶窒化ホウ素粉末(A))の含有量を「20体積%以上35体積%以下」とし、非異方性充填材(酸化アルミニウム粉末(B)(又は、窒化アルミニウム粉末(B)))の含有量を「20体積%以上40体積%以下」とする動機付けは、当業者にないから、甲2物発明において、相違点Jに係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2、4、5、13について
本件発明2、4、5、13は、上記相違点Jに係る本件発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2、4、13は甲2物発明であるとはいえず、また、本件発明2は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明4、5は、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明13は、甲第2号証に記載された発明及び甲第5号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明6~9、11、12について
(ア)本件発明6について
a 本件発明6は、上記第3のとおり、「上記熱伝導性シート中、上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であり」、一方、甲2方法発明は、上記第4 2(3)のとおり、「熱伝導性シートの製造方法」に係る発明であり、「六方晶窒化ホウ素粉末(A)の平均粒子径が20~50μmであり、酸化アルミニウム粉末(B)、又は、窒化アルミニウム粉末(B)の平均粒子径が0.5~5μmであり、(A):(B)の配合割合が体積比で7:3~9:1」である。
したがって、本件発明6と甲2方法発明とは、少なくとも次の点で相違する。
<相違点N>
本件発明6では、「上記熱伝導性シート中、上記異方性充填材の含有量が20体積%以上35体積%以下であり、上記非異方性充填材の含有量が20体積%以上40体積%以下であ」るのに対し、甲2方法発明では、そのような特定はなされていない点。
b 相違点Nは、上記ア(ア)cに記載の相違点Jと同じであるから、上記ア(イ)aで相違点Jについて検討したのと同様な理由で、本件発明6は甲2方法発明であるとはいえない。
c また、上記ア(イ)bで相違点Jについて検討したのと同様な理由で、甲2方法発明において、熱伝導性シート中、異方性充填材(六方晶窒化ホウ素粉末(A))の含有量を「20体積%以上35体積%以下」とし、非異方性充填材(酸化アルミニウム粉末(B)(又は、窒化アルミニウム粉末(B)))の含有量を「20体積%以上40体積%以下」とする動機付けは、当業者にないから、甲2方法発明において、相違点Nに係る本件発明6の構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲2方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明7~9、11、12について
本件発明7~9、11、12は、本件発明6を直接又は間接的に引用するものであり、上記相違点Nに係る本件発明6の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明6と同じ理由により、本件発明7、9、11、12は、甲2方法発明であるとはいえず、また、本件発明7は、甲2方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明8、9は、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明11は、甲第2号証に記載された発明、若しくは、甲第2号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された技術、又は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、本件発明12は、甲第2号証に記載された発明並びに甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 理由1、理由2-2(甲第2号証を主たる引用文献とする新規性及び進歩性)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1、2、4、6、7、9、11~13は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるとはいえず、本件発明1、2、4~9、11~13は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項1、2、4~9、11~13に係る特許を、理由1、理由2-2によって取り消すことはできない。
(3)理由3(明確性)について
理由3(明確性)は、請求項1及び請求項6には、「比誘電率」と記載されているが、どのようなものであるのかが明確でないから、本件特許請求の範囲の請求項1及び請求項6の記載は明確でないというものである。
しかしながら、請求項1及び請求項6は、本件訂正により、「厚み方向の比誘電率」との記載となり、本件特許における比誘電率の測定手法が不明瞭であるといえず、また、特許明細書の表1に記載の比誘電率は、厚み方向の比誘電率であることが明確となり、本件特許請求の範囲の請求項1及び6の記載は明確である。
よって、本件発明1及び6並びに請求項1及び6のいずれかを引用して特定された本件発明2、4、5、7~9、11~13は、明確である。
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1、2、4~9、11~13に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、請求項1、2、4~9、11~13に係る特許を、理由3によって取り消すことはできない。
(4)申立人吉澤の意見について
ア 申立人吉澤は、令和5年2月13日に提出した意見書において、訂正前の明細書の段落0058における記載を訂正した、訂正事項5について、「30GHzでの比誘電率の測定をJIS K6911に準じた方法(甲8の表6に記載された11種類の測定回路のいずれか)で測定したものと解するのが想到であると考える。」(4ページ下から6~4行)、「願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるとは到底いえない。」(5ページ5~6行)と主張し、本件訂正は、少なくとも、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当せず、また、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合しない旨を主張する。
イ しかしながら、甲8の32ページには、備考2.に「誘電率及び誘電正接の測定は、表6に規定する測定回路のうち、いずれか一つの方法によることができる。」と記載されており、表6に記載された複数の測定回路それぞれの適用周波数範囲は、いずれもMHzオーダの範囲である。
したがって、「30GHzでの比誘電率の測定をJIS K6911に準じた方法(甲8の表6に記載された11種類の測定回路のいずれか)で測定したものと解するのが想到であると考える。」との申立人吉澤の上記主張は根拠がない。
そして、願書に添付した明細書の段落【0058】の「JIS K6911に準じた方法で、熱伝導性シートの厚み方向及び面方向の比誘電率(30GHz)を測定した。結果を表1に示す。」との記載は不明瞭であり、「JIS K6911に準じた方法で、比誘電率(30GHz)を測定した」と解することはできず、比誘電率(30GHz)の測定をJIS K6911に準じた方法で測定したことが開示されていたということはできない。
したがって、本件訂正により、段落【0058】において、「JIS K6911に準じた方法で、」及び「及び面方向」との記載を削除して、上記記載を「熱伝導性シートの厚み方向の比誘電率(30GHz)を測定した。結果を表1に示す。」とすることは、何ら新たな技術思想を追加するものではなく、また、段落【0014】、【0060】の表1、【0061】の記載とも矛盾するものではないものであるから、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
したがって、申立人吉澤の上記意見は、採用することができない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人吉澤提出の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4~9、11~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、4~9、11~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項3及び10に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人吉澤による特許異議の申立てについて、請求項3及び10に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700579