特許異議申立
2022-700574
熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法
- 審判番号
- 2022-700574
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-176566
- 登録番号
- 6989675
- 請求日
- 2022年07月01日
- 審決日
- 2023年03月29日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】デクセリアルズ株式会社
- 【権利者代理人】野口 信博
- 【権利者代理人】穂谷野 聡
- 【異議申立人】増山 美紀
- 【異議申立人】吉澤 悦子
- 審判長/審判官
- 審判長 瀧内 健夫
- 審判官 恩田 春香
- 審判官 小田 浩
- 分類
- P1651.161-YAA(H01L) / P1651.113-YAA(H01L) / P1651.121-YAA(H01L) / P1651.537-YAA(H01L) / P1651.536-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条の2、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6989675号発明「熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6989675号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、12〕、〔8-11〕について訂正することを認める。
特許第6989675号の請求項1-3、5-12に係る特許を維持する。
特許第6989675号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6989675号の請求項1~12に係る特許についての出願は、令和2年10月21日に出願され、令和3年12月6日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月5日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 4年 7月 1日 :特許異議申立人増山美紀による特許異議の申立て
令和 4年 7月 4日 :特許異議申立人吉澤悦子による特許異議の申立て
令和 4年10月12日付け:取消理由通知書
令和 4年12月14日 :特許権者による意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)
令和 5年 1月 4日付けで、本件訂正請求に対して、特許異議申立人増山美紀及び特許異議申立人吉澤悦子それぞれに、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人増山美紀及び特許異議申立人吉澤悦子からは何らの応答もない。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)一群の請求項1~7、12に係る訂正
ア 訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1に「熱伝導性シートにおいて、上記第1の熱伝導性フィラーが」とあるのを、「熱伝導性シートにおいて、上記バインダー樹脂がシリコーン樹脂であり、上記第1の熱伝導性フィラーが」(下線は、訂正箇所。以下同じ。)と訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5~7、12も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1に「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有し」とあるのを、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25体積%であり、」と訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5~7、12も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項1-3
特許請求の範囲の請求項1に「ランダム配向する熱伝導性シート」とあるのを、「ランダム配向し、厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である、熱伝導性シート」と訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、5~7、12も同様に訂正する。)
ウ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
エ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」と訂正する(請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6、7、12も同様に訂正する。)。
オ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項」とあるのを、「請求項1~3、5のいずれか1項」と訂正する(請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7、12も同様に訂正する。)。
カ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれか1項」とあるのを、「請求項1~3、5、6のいずれか1項」と訂正する(請求項7の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。
キ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1~4のいずれか1項」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」と訂正する。
訂正事項1-1~訂正事項6は、一群の請求項〔1~7、12〕に対して請求されたものである。
(2)一群の請求項8~11に係る訂正
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項8に「とを有し、上記第1の熱伝導性フィラーが」とあるのを、「とを有し、上記硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂であり、上記第1の熱伝導性フィラーが」と訂正する(請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。)
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項8に「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有し」とあるのを、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25体積%であり、」と訂正する(請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項7-3
特許請求の範囲の請求項8に「ランダム配向する、熱伝導性シートの製造方法」とあるのを、「ランダム配向し、厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である、熱伝導性シートの製造方法」と訂正する(請求項8の記載を直接又は間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。)。
訂正事項7-1~訂正事項7-3は、一群の請求項〔8~11〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1-1~訂正事項1-3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1-1は、熱伝導性シートが含有するバインダー樹脂について、「上記バインダー樹脂がシリコーン樹脂であり」と限定する訂正である。
訂正事項1-2は、第2の熱伝導性フィラ-について、訂正前の「窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有する」ものを、訂正後の「窒化アルミニウムとアルミナ粒子であ」るものに限定するとともに、窒化アルミニウム原子の含有量とアルミナ粒子の含有量を、「上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25体積%であり」と限定する訂正である。
訂正事項1-3は、熱伝導性シートについて、「厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項1-1~訂正事項1-3は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項1-1の「上記バインダ樹脂がシリコーン樹脂であ」ることは、本件の特許明細書(以下、「特許明細書」という。)の段落【0019】に基づくものである。
訂正事項1-2の「記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であ」ることは、特許明細書の段落【0029】に基づくものであり、訂正事項1-2の「上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25体積%であ」ることは、特許明細書の段落【0031】に基づくものである。
訂正事項1-3の「厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」ことは、特許明細書の段落【0013】、【0074】~【0077】に基づくものである。
よって、訂正事項1-1~訂正事項1-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1ー1~訂正事項1-3は、訂正前の請求項1の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項1-1~訂正事項1-3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項1については特許異議の申立てがされているので、訂正事項1-1~訂正事項1-3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項4については特許異議の申立てがされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項3は、訂正前の請求項5に「請求項1~4のいずれか1項に記載の」とあるのを、訂正後の請求項5の「請求項1~3のいずれか1項に記載の」に訂正するものであり、訂正事項2に伴い、引用請求項のうち、請求項4の記載を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項5については特許異議の申立てがされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項6に「請求項1~5のいずれか1項に記載の」とあるのを、訂正後の請求項6の「請求項1~3、5のいずれか1項に記載の」に訂正するものであり、訂正事項2に伴い、引用請求項のうち、請求項4の記載を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項6については特許異議の申立てがされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項7に「請求項1~6のいずれか1項に記載の」とあるのを、訂正後の請求項7の「請求項1~3、5、6のいずれか1項に記載の」に訂正するものであり、訂正事項2に伴い、引用請求項のうち、請求項4の記載を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項7については特許異議の申立てがされているので、訂正事項5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、訂正前の請求項12に「請求項1~7のいずれか1項に記載の」とあるのを、訂正後の請求項12の「請求項1~3、5、7のいずれか1項に記載の」に訂正するものであり、訂正事項2に伴い、引用請求項のうち、請求項4の記載を引用するものを削除するとともに、引用請求項のうち、請求項6の記載を引用するものを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び同法同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項6は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項12については特許異議の申立てがされているので、訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(7)訂正事項7-1~訂正事項7-3について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7-1は、硬化性樹脂組成物について、「上記硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂であり」と限定する訂正である。
訂正事項7-2は、第2の熱伝導性フィラ-について、訂正前の「窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有する」ものを、訂正後の「窒化アルミニウムとアルミナ粒子であ」るものに限定するとともに、窒化アルミニウム原子の含有量とアルミナ粒子の含有量を、「上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25体積%であり」と限定する訂正である。
訂正事項7-3は、熱伝導性シートについて、「厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」と限定する訂正である。
したがって、訂正事項7-1~訂正事項7-3は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無
訂正事項7-1の「上記硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂であ」ることは、特許明細書の段落【0019】に基づくものである。
訂正事項7-2の「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であ」ることは、特許明細書の段落【0029】に基づくものであり、訂正事項7-2の「上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25体積%であ」ることは、特許明細書の段落【0031】に基づくものである。
訂正事項7-3の「厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」ことは、特許明細書の段落【0013】、【0074】~【0077】に基づくものである。
よって、訂正事項7-1~訂正事項7-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項7-1~訂正事項7-3は、訂正前の請求項8の発明特定事項を概念的により下位の内容とするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
よって、訂正事項7-1~訂正事項7-3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
エ 独立特許要件の適否
本件においては、訂正前の請求項8については特許異議の申立てがされているので、訂正事項7-1~訂正事項7-3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
(8)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7、12〕、〔8~11〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~12に係る発明(以下、順に「本件発明1」~「本件発明12」という。また、本件発明1~本件発明12をまとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
バインダ樹脂と、鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散する熱伝導性シートにおいて、
上記バインダ樹脂がシリコーン樹脂であり、
上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であり、
上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、
上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25体積%であり、
上記熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向し、上記熱伝導性シートの面内方向に上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向し、
厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である、
熱伝導性シート。
【請求項2】
上記バインダ樹脂が、シリコーン主剤と硬化剤との2液性の付加反応型液状シリコーン樹脂であり、
上記シリコーン主剤と上記硬化剤との質量比(シリコーン主剤:硬化剤)が5:5~7:3である、請求項1に記載の熱伝導性シート。
【請求項3】
上記第1の熱伝導性フィラーのアスペクト比(長軸/短軸)が10~100である、請求項1又は2に記載の熱伝導性シート。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
上記第1の熱伝導性フィラー及び上記第2の熱伝導性フィラーの総含有量が70体積%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項6】
シート表面に、互いに直交しない辺を有する模様を有する請求項1~3、5のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項7】
厚みが1~2mmである、請求項1~3、5、6のいずれか1項に記載の熱伝導性シート。
【請求項8】
鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを硬化性樹脂組成物に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
上記硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂であり、
上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であり、
上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、
上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25体積%であり、
上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向し、面内方向では上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向し、
厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である、
熱伝導性シートの製造方法。
【請求項9】
上記工程Bでは、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を、ダイ又は金型に形成され互いに直交しない辺を有する開口部に通過させる、請求項8に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項10】
上記開口部は、多角形状又は円形状である請求項9に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項11】
上記工程Cでは、上記成形体ブロックを、上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物の押し出し方向に対して略垂直方向にスライスして熱伝導性シートを得る、請求項8~10のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項12】
発熱体と、
放熱体と、
発熱体と放熱体との間に配置された請求項1~3、5、7のいずれか1項に記載の熱伝導性シートとを備える、電子機器。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~12に係る特許に対して、当審が令和4年10月12日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)理由1(拡大先願)本件特許の請求項1~8、11、12に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項1~8、11、12に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)理由2(新規性)本件特許の請求項1~12に係る発明は、文献1及び文献2に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)理由3(進歩性)本件特許の請求項1~12に係る発明は、文献1に記載された発明、及び文献6に記載された技術、並びに、文献2に記載された発明、及び文献6に記載された技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
(4)理由4(明確性)請求項1~12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 引用文献の記載と引用発明
(1)先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載、先願物発明、先願方法発明
ア 先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載
取消理由通知において引用した先願1(特許異議申立人増山美紀(以下、「申立人増山」という。)提出の甲第1号証:特願2020-18476号(特開2021-123661号)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願1明細書等」という。))には、以下の事項が記載されている(下線は合議体が付加した。以下同じ。)。
「【0001】
本発明は、熱伝導性樹脂シートに関する。」
「【0006】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、柔軟であり、かつ圧縮率が変動した場合であっても、安定した放熱性能を示す熱伝導性樹脂シートを提供することを目的とする。」
「【0022】
(熱伝導性フィラー)
本発明の熱伝導性樹脂シートは、熱伝導性フィラーを含有することが好ましい。熱伝導性フィラーは熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分中に分散され、熱抵抗値が低くなる。
熱伝導性フィラーの平均粒子径は、好ましくは0.1~300μm、より好ましくは0.5~100μm、更に好ましくは5~50μmである。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により粒度分布を測定して求めることができる。
【0023】
熱伝導性フィラーは、球状フィラーでも非球状フィラーでもよいが、熱伝導性樹脂シートの熱抵抗値及び熱抵抗値変化率を低くする観点から、非球状フィラーを少なくとも含有することが好ましい。なお、熱伝導性フィラーは、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0024】
非球状フィラーとしては、例えば、鱗片状、薄片状などの板状フィラー、針状フィラー、繊維状フィラー、樹枝状フィラー、不定形状フィラー、凝集フィラーなどが挙げられる。中でも、熱伝導性樹脂シートの熱伝導性を良好とする観点から、板状フィラーが好ましい。
ここで、「球状」とはアスペクト比が1.0~2.0、好ましくは1.0~1.5の形状であることを意味し、必ずしも真球であることを意味しない。なお、球状フィラーの場合のアスペクト比は、長径/短径比を意味する。また、「非球状」とは上記球状以外の形状、すなわちアスペクト比が2を超える形状を意味する。
【0025】
熱伝導性フィラーのアスペクト比は、熱抵抗値変化率を低くする観点から、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、そして通常は200以下である。
なお、2種以上の熱伝導性フィラーを用いる場合は、上記アスペクト比は、それぞれの熱伝導性フィラーのアスペクト比を加重平均して算出した、平均アスペクト比とする。
・・・
【0028】
熱伝導性フィラーの材質としては、例えば、炭化物、窒化物、酸化物、水酸化物、金属、炭素系材料などが挙げられる。
炭化物としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどが挙げられる。
窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどが挙げられる。
酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)(酸化アルミニウムの水和物(ベーマイトなど)を含む。)、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。また、酸化物として、チタン酸バリウムなどの遷移金属酸化物などや、さらには、金属イオンがドーピングされている、例えば、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズなどが挙げられる。
【0029】
水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
金属としては、例えば、銅、金、ニッケル、錫、鉄、または、それらの合金が挙げられる。
炭素系材料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンド、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、ナノホーン、カーボンマイクロコイル、ナノコイルなどが挙げられる。
上記以外の熱伝導性フィラーとして、ケイ酸塩鉱物であるタルクを挙げることができる。
これら熱伝導性フィラーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
これらの中でも、熱抵抗値変化率を低くする観点から、窒化ホウ素、水酸化マグネシウム、及び酸化マグネシウムが好ましく、窒化ホウ素がより好ましい。
【0031】
熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは150~700質量部であり、より好ましくは200~600質量部であり、更に好ましくは230~450質量部である。150質量部以上であると、熱伝導性樹脂シートの熱抵抗値が低くなる。また、700質量部以下であると、熱伝導性樹脂シートの柔軟性が良好となりやすい。
熱伝導性フィラー中の非球状フィラーの含有量は、熱伝導性フィラー全量基準で、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。」
「【0032】
(配向)
熱伝導性樹脂シートにおいて、熱伝導性フィラーの配向角度は45°より大きいことが好ましく、50°以上がより好ましく、70°以上がさらに好ましく、80°以上がさらに好ましい。ここで、配向角度とは、熱伝導性フィラーの長軸の、熱伝導性樹脂シートの表面であるシート面に対する角度である。なお、熱伝導性フィラーの長軸は、前記した熱伝導性フィラーの最大長さと方向が一致している。
熱伝導性フィラーの配向角度が上記範囲であると、熱抵抗値変化率を低くすることができる。この理由については、次のように推察される。一般に熱伝導性樹脂シートを圧縮して厚みを薄くすると、熱抵抗値は低下する。これに対して、熱伝導性フィラーが上記のとおりの配向角度であると、圧縮することによる熱抵抗値の降下と、圧縮することによる熱伝導性フィラーの配向の乱れに起因する熱抵抗値の上昇との両方の寄与により、結果として、熱抵抗値変化率が低くなると考えられる。
【0033】
上記配向角度は、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより測定できる。・・・」
「【0034】
(樹脂)
本発明の熱伝導性樹脂シートは、樹脂を含有し、その樹脂の種類は、特に制限されないが、柔軟性を良好とする観点から、エラストマー樹脂、シリコーン樹脂、及びアクリル樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。
・・・
【0036】
シリコーン樹脂の種類としては、例えば、縮合反応型シリコーン樹脂、付加反応型シリコーン樹脂、シリコーンオイルなどが挙げられる。シリコーン樹脂は、固体状のシリコーン樹脂であっても、液状シリコーン樹脂であってもよいが、熱伝導性樹脂シートの柔軟性を高める観点から、液状シリコーン樹脂が好ましい。
・・・」
「【0041】
(積層体)
・・・
【0042】
熱伝導性樹脂シート1の厚み(すなわち、シート面5とシート面5との間の距離)は特に限定されないが、例えば、0.1~30mmの範囲とすることができる。」
「【0045】
(積層体の製造方法)
本発明の積層体からなる熱伝導性樹脂シートの製造方法は、特に限定されないが、以下に説明するように、混練工程、積層工程、さらに必要に応じてスライス工程を含む方法により製造することができる。
【0046】
<混練工程>
熱伝導性フィラーと樹脂とを混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製する。
前記の混練は、例えば、熱伝導性フィラーと樹脂とを、プラストミル等の二軸スクリュー混練機や二軸押出機等を用いて、加熱下において混練することが好ましく、これにより、熱伝導性フィラーが樹脂中に均一に分散された熱伝導性樹脂組成物を得ることができる。
次いで、該熱伝導性樹脂組成物をプレスすることにより、シート状の樹脂層(熱伝導性樹脂層)を得ることができる。
【0047】
<積層工程>
積層工程では、前記混練工程で得た樹脂層を積層してn層構造の積層体を作成する。積層方法としては、例えば、混練工程で作製した樹脂層をxi分割して積層し、xi層構造の積層体を作製後、必要に応じて、熱プレスを行い、その後、更に、必要に応じて、分割と積層と前記の熱プレスを繰り替えして、幅がDμmでn層構造の積層体を作製する方法を用いることができる。
・・・」
「【0048】
(スライス工程)
前記積層工程で得た積層体を積層方向に対して平行方向にスライスすることにより、熱伝導性樹脂シートを作製することができる。」
「【実施例】
【0051】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0052】
以下の実施例及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。
樹脂
・液状エラストマー1:液状ポリブタジエンゴム、株式会社クラレ社製、商品名「L-1203」
・シリコーン樹脂:2液硬化型のシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン製、商品名「SEMICOSIL 962TC」混合比はA材:B材=1:1)
・アクリル樹脂:ナガセケムテックス社製、商品名「SG-280 EK23」
【0053】
(2)熱伝導性フィラー
(a-1)アルミナ
HUBER社製、商品名「TM2410」
アスペクト比:1.5
(b-1)窒化アルミニウム-1
トクヤマ社製、商品名「HF-01D」
アスペクト比:1.5
(b-2)窒化アルミニウム-2
トクヤマ社製、商品名「HF-05」
アスペクト比:1.5
(c-1)水酸化アルミニウム-1
日本軽金属株式会社製、商品名「BF013」
アスペクト比:1.5
(d-1)水酸化マグネシウム-1
協和化学工業社製、商品名「HeaCon-H」
アスペクト比:14
(d-2)水酸化マグネシウム-2
神島化学工業社製、商品名「マグシーズW-H4」
アスペクト比:1.5
(e-1)酸化マグネシウム-1
協和化学工業社製、商品名「HeaCon-X」
アスペクト比:12
(f-1)窒化ホウ素-1(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT100」
アスペクト比:81
(f-2)窒化ホウ素-3(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT120」
アスペクト比:6
(f-3)窒化ホウ素-4(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT140」
アスペクト比:45
(f-4)窒化ホウ素-5(鱗片状)
MOMENTIVE社製、商品名「PT160」
アスペクト比:48
(f-5)窒化ホウ素-7(凝集)
MOMENTIVE社製、商品名「PT180」
アスペクト比:7」
イ 先願1明細書等に記載の技術事項
上記アの記載事項から、先願1明細書等には、以下の技術事項が記載されている。
(ア)先願1明細書等に記載された技術は、熱伝導性樹脂シートに関するものであり(【0001】)、柔軟であり、かつ圧縮率が変動した場合であっても、安定した放熱性能を示す熱伝導性樹脂シートを提供することを目的とすることを課題とすること(【0006】)。
(イ)熱伝導性樹脂シートは、熱伝導性フィラーと樹脂を含有し、熱伝導性フィラーは、熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分に分散し、二種類以上を併用してもよく、熱伝導性フィラーとして、球状フィラーと鱗片状フィラーを含有すること(【0022】~【0023】、【0034】)。
(ウ)樹脂として、シリコーン樹脂が挙げられること(【0034】、【0036】)。
(エ)鱗片状フィラーとして、窒化ホウ素が挙げられ、球状フィラーとして、窒化アルミニウムとアルミナ粒子が挙げられること(【0024】、【0028】、【0053】)。
(オ)熱伝導性樹脂シートにおいて、熱伝導性フィラーの長軸の、熱伝導性樹脂シートの表面であるシート面に対する角度である、熱伝導性フィラーの配向角度は、80°以上がさらに好ましく、上記配向角度は、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより測定できること(【0032】、【0033】)。
(カ)熱伝導性樹脂シートの製造方法であって、熱伝導性フィラーと樹脂とを混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製し、これにより熱伝導性フィラーが樹脂中に分散された熱伝導性樹脂組成物を得て、次いで、該熱伝導性樹脂組成物をプレスすることにより、シート状の樹脂層(熱伝導性樹脂層)を得ること(【0022】~【0024】、【0046】)。
(キ)熱伝導性樹脂シートの製造方法であって、混練工程で得た樹脂層を積層して積層体を作成し、得られた積層体を積層方向に対して平行方向にスライスすることにより、熱伝導性樹脂シートを作製すること(【0047】、【0048】)。
(ク)熱伝導性樹脂シートが含有する好ましい樹脂として、シリコーン樹脂が挙げられており(【0034】)、実施例で使用されるシリコーン樹脂は、「2液硬化型のシリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン製、商品名「SIMICOSIL 962TC]であること(段落【0052】)。
ウ 先願物発明
上記イ(ア)~(オ)から、先願1明細書等には、次の発明(以下、「先願物発明」という。)が記載されている。
「熱伝導性フィラーと樹脂を含有する熱伝導性樹脂シートであって、
熱伝導性フィラーは、熱伝導性樹脂シート中の樹脂成分に分散し、二種類以上を併用してもよく、熱伝導性フィラーとして、球状フィラーと鱗片状フィラーを含有し、
樹脂として、シリコーン樹脂が挙げられ、
鱗片状フィラーとして、窒化ホウ素が挙げられ、球状フィラーとして、窒化アルミニウムとアルミナ粒子が挙げられ、
熱伝導性樹脂シートにおいて、熱伝導性フィラーの長軸の、熱伝導性樹脂シートの表面であるシート面に対する角度である、熱伝導性フィラーの配向角度は、80°以上がさらに好ましく、
上記配向角度は、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより測定できる、熱伝導性樹脂シート。」
エ 先願方法発明
上記イ(イ)~(ク)から、先願1明細書等には、次の発明(以下、「先願方法発明」という。)が記載されている。
「熱伝導性樹脂シートの製造方法であって、
熱伝導性フィラーと樹脂とを混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製し、これにより熱伝導性フィラーが樹脂中に分散された熱伝導性樹脂組成物を得て、
次いで、該熱伝導性樹脂組成物をプレスすることにより、シート状の樹脂層(熱伝導性樹脂層)を得て、
混練工程で得た樹脂層を積層して積層体を作成し、
得られた積層体を積層方向に対して平行方向にスライスすることにより、熱伝導性樹脂シートを作製する、熱伝導性樹脂シートの製造方法であって、
樹脂は、2液硬化型のシリコーン樹脂を使用し、
熱伝導性樹脂シートは、熱伝導性フィラーと樹脂を含有し、熱伝導性フィラーは、二種類以上を併用してもよく、熱伝導性フィラーとして、球状フィラーと鱗片状フィラーを含有し、
鱗片状フィラーとして、窒化ホウ素が挙げられ、球状フィラーとして、窒化アルミニウムとアルミナ粒子が挙げられ、
熱伝導性樹脂シートにおいて、熱伝導性フィラーの長軸の、熱伝導性樹脂シートの表面であるシート面に対する角度である、熱伝導性フィラーの配向角度は、80°以上がさらに好ましく、上記配向角度は、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより測定できる、熱伝導性樹脂シートの製造方法。」
(2)文献1の記載、文献1物発明、文献1方法発明
ア 文献1の記載
取消理由通知において引用した文献1(申立人増山提出の甲第2号証:国際公開第2011/158942号)には、以下の事項が記載されている。
「[0026] (熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法)
本発明の熱伝導性シートの製造方法は、押出成形工程と、硬化工程と、切断工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
・・・
[0029] ここで、本発明の熱伝導性シートの製造方法は、図1に示すように、押出し、成形、硬化、切断(スライス)などの一連の工程を経て製造される。
[0030] 図1に示すように、まず、ポリマー、異方性熱伝導性フィラー及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を調製する。次に、調製した熱伝導性組成物を押し出し成形する際に、複数のスリットを通過させることで熱伝導性組成物中に配合された異方性熱伝導性フィラーを熱伝導性シートの厚み方向に配向させる。次に、得られた成形体を硬化させた後、硬化物11を前記押出し方向に対し垂直方向に超音波カッターで所定の厚みに切断することにより、切断面の表面粗さが小さいので界面での熱抵抗が低くなり、シートの厚み方向の熱伝導性が高い熱伝導性シートが作製できる。
・・・
[0032] <押出成形工程>
前記押出成形工程は、ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、前記異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形する工程である。
[0033] -ポリマー-
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、熱伝導性シートに要求される性能に応じて適宜選択することができ、例えば熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーが挙げられる。
・・・
[0039] これらの中でも、成形加工性、耐候性に優れると共に、電子部品に対する密着性及び追従性の点から、シリコーン樹脂が特に好ましい。
[0040] 前記シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば付加反応型液状シリコーンゴム、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、電子機器の放熱部材としては、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、付加反応型液状シリコーンゴムが特に好ましい。
[0041] -異方性熱伝導性フィラー-
前記異方性熱伝導性フィラーの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば鱗片状、板状、円柱状、角柱状、楕円状、扁平形状などが挙げられる。これらの中でも、異方性熱伝導性の点で扁平形状が特に好ましい。
[0042] 前記異方性を有するフィラーとしては、例えば窒化ホウ素(BN)粉末、黒鉛、炭素繊維などが挙げられる。これらの中でも、異方性熱伝導性の点で炭素繊維が特に好ましい。
・・・
[0049] 前記異方性熱伝導性フィラーの前記熱伝導性組成物中の含有量は、15体積%~26体積%が好ましい。前記含有量が、15体積%未満であると、成形体に十分な熱伝導性を付与することができないことがあり、26体積%を超えると、成形性及び配向性に影響を与えてしまうことがある。
[0050] -充填剤-
前記充填剤としては、その形状、材質、平均粒径などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば球状、楕円球状、塊状、粒状、扁平状、針状などが挙げられる。これらの中でも、球状、楕円形状が充填性の点から好ましく、球状が特に好ましい。
[0051] 前記充填剤の材質としては、例えば窒化アルミニウム、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、チタニア、ガラス、酸化亜鉛、炭化ケイ素、ケイ素(シリコン)、酸化珪素、酸化アルミニウム、金属粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、シリカが好ましく、熱伝導率の点からアルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましい。
・・・
[0055] 前記充填剤の前記熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好ましい。
・・・
[0057] 前記熱伝導性組成物は、前記ポリマー、前記異方性熱伝導性フィラー、及び前記充填剤、更に必要に応じて前記その他の成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製することができる。
[0058] 次に、前記熱伝導性組成物をポンプ、押出機等を用いて、型3内に押出し成形する(図1参照)。押出機の押出口には複数のスリットが設けられており、これにより、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に配向される。
[0059] 前記スリットの形状、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記スリットの形状としては、例えば平板状、格子状、ハニカム状などが挙げられる。前記スリットの大きさ(幅)としては、0.5mm~10mmが好ましい。」
「[0070] <切断工程>
・・・
[0076] 前記第1の形態の切断工程によると、硬化反応が完了した硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断することにより、異方性熱導電性フィラー(例えば炭素繊維、鱗片状粒子)が熱伝導性シートの厚み方向に配向(垂直配向)した熱伝導性シートを得ることができる。」
「[請求項1] ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、前記異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形する押出成形工程と、
前記押出成形物を硬化させて硬化物とする硬化工程と、
前記硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する切断工程と、を少なくとも含むことを特徴とする熱伝導性シートの製造方法。」
「[請求項8] 上記ポリマーがシリコーン樹脂である請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の熱伝導性シートの製造方法。」
「[請求項9] 請求項1から8のいずれかに記載の熱伝導性シートの製造方法により製造されたことを特徴とする熱伝導性シート。」
イ 文献1に記載の技術事項
上記アの記載事項から、文献1には、以下の技術事項が記載されている。
(ア)ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用して製造した熱伝導性シートであって、ポリマーがシリコーン樹脂であり、異方性熱伝導性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填剤の形状は、球状が特に好ましいこと([請求項1]、[請求項8]、[請求項9]、[00030]、[0041]、[0050]、[0057])。
(イ)異方性を有するフィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましく、充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好ましいこと([0042]、[0051]、[0055])。
(ウ)ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する熱伝導性シートの製造方法、及び、該製造方法により得られる熱伝導性シート([請求項1]、[請求項9])。
ウ 文献1物発明
上記イ(ア)~(ウ)から、文献1には、次の発明(以下、「文献1物発明」という。)が記載されている。
「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用して製造した熱伝導性シートであって、
ポリマーがシリコーン樹脂であり、
異方性熱伝導性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填剤の形状は、球状が特に好ましく、
異方性を有するフィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましく、
充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好ましく、
ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する製造方法により得られる熱伝導性シート。」
エ 文献1方法発明
上記イ(ア)~(ウ)から、文献1には、次の発明(以下、「文献1方法発明」という。)が記載されている。
「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用する熱伝導性シートの製造方法であって、
ポリマーがシリコーン樹脂であり、
異方性熱伝導性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填剤の形状は、球状が特に好ましく、
異方性を有するフィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましく、
充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好ましく、
ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する熱伝導性シートの製造方法。」
(3)文献2に記載の技術事項、文献2物発明、文献2方法発明
ア 文献2に記載の技術事項
取消理由通知において引用した文献2(特許異議申立人吉澤悦子(以下、「申立人吉澤」という。)提出の甲第1号証:特開2012-23335号公報)の記載からみて、文献2には、以下の技術事項が記載されている。
(ア)ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用して製造した熱伝導性シートであって、ポリマーがシリコーン樹脂であり、異方性熱伝導性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填剤の形状は、球状が特に好ましいこと(【請求項1】、【請求項8】、【請求項9】、【0014】、【0023】、【0026】、【0029】)。
(イ)異方性を有するフィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好まししく、充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好ましいこと(【0023】、【0026】、【0027】)。
(ウ)ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する熱伝導性シートの製造方法、及び、該製造方法により得られる熱伝導性シート(【請求項1】、【請求項9】)。
イ 文献2物発明
上記ア(ア)~(ウ)から、文献2には、次の発明(以下、「文献2物発明」という。)が記載されている。
「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用して製造した熱伝導性シートであって、
ポリマーがシリコーン樹脂であり、
異方性熱伝導性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填剤の形状は、球状が特に好ましく、
異方性を有するフィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましく、
充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好ましく、
ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する製造方法により得られる熱伝導性シート。」
ウ 文献2方法発明
上記ア(ア)~(ウ)から、文献2には、次の発明(以下、「文献2方法発明」という。)が記載されている。
「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用する熱伝導性シートの製造方法であって、
ポリマーがシリコーン樹脂であり、
異方性熱伝導性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填剤の形状は、球状が特に好ましく、
異方性を有するフィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましく、
充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好ましく、
ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する熱伝導性シートの製造方法。」
3 当審の判断
(1)理由1(拡大先願)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と先願物発明とを対比する。
a 先願物発明の「熱伝導性樹脂シート」、「樹脂」、「鱗片状フィラー」、「球状フィラー」は、それぞれ本件発明1の「熱伝導性シート」、「バインダ樹脂」、「鱗片状の第1の熱伝導性フィラー」、「非鱗片状の第2の熱伝導性フィラー」に相当する。
b 先願物発明は、「樹脂として、シリコーン樹脂が挙げられ」るものであるから、本件発明1と先願物発明とは、「上記バインダ樹脂がシリコーン樹脂」である点で一致する。
c 先願物発明は、「熱伝導性フィラーとして、球状フィラーと鱗片状フィラーを含有し」、「鱗片状フィラーとして、窒化ホウ素が挙げられ、球状フィラーとして、窒化アルミニウムとアルミナ粒子が挙げられ」、「熱伝導性樹脂シートにおいて、熱伝導性フィラーの長軸の、熱伝導性樹脂シートの表面であるシート面に対する角度である、熱伝導性フィラーの配向角度は、80°以上がさらに好ましく、上記配向角度は、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより測定できる」ものである。
したがって、本件発明1と先願物発明とは、「上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であ」る点で一致し、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子」とを含有する点で共通する。
また、先願物発明は、「鱗片状フィラー」の長軸の、シート面に対する角度は80°以上がさらに好ましいものであるといえるから、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向に鱗片状フィラーの長軸が配向しているといえる。
したがって、本件発明1と先願物発明とは、「熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向」しているものである点で一致する。
d 以上のことから、本件発明1と先願物発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「バインダ樹脂と、鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散する熱伝導性シートにおいて、
上記バインダ樹脂がシリコーン樹脂であり、
上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であり、
上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有し、
上記熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向する、熱伝導性シート。」
<相違点A>
第2の熱伝導性フィラーについて、本件発明1では、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25%であ」るのに対し、先願物発明では、「球状フィラーとして、窒化アルミニウムとアルミナ粒子が挙げられ」ているものの、本件発明1の上記のような特定はなされていない点。
<相違点B>
本件発明1は、「上記熱伝導性シートの面内方向に上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向する」のに対し、先願物発明では、「鱗片状フィラー」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点C>
本件発明1では、「厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」のに対し、先願物発明では、そのような特定はなされていない点。
(イ)判断
a 上記相違点Aについて検討する。
上記2(1)アに摘記のとおり、先願1明細書等の段落【0031】には、以下のとおり記載されている。
「【0031】
熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは150~700質量部であり、より好ましくは200~600質量部であり、更に好ましくは230~450質量部である。150質量部以上であると、熱伝導性樹脂シートの熱抵抗値が低くなる。また、700質量部以下であると、熱伝導性樹脂シートの柔軟性が良好となりやすい。
熱伝導性フィラー中の非球状フィラーの含有量は、熱伝導性フィラー全量基準で、60質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが更に好ましい。」
したがって、先願1明細書等には、熱伝導性フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは150~700質量部であり、非球状フィラー以外である球状フィラーの含有量は、熱伝導性フィラーの全基準で、40質量%未満であることが好ましいこと、すなわち、球状フィラーの含有量は、樹脂100質量部に対して、700×0.4=280質量部未満が開示されているといえる。
一方、本件発明1は、「上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25%であ」る。
したがって、先願1明細書等には、相違点Aに係る本件発明1の構成は記載されておらず、相違点Aは、実質的な相違点である。
b よって、相違点B、Cについて検討するまでもなく、本件発明1は先願物発明と同一であるとはいえない。
イ 本件発明2、3、5~7、12について
本件発明2、3、5~7、12も、本件発明1の「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25%であ」ることと同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2、3、5~7、12は、先願物発明と同一であるとはいえない。
ウ 本件発明8、11について
(ア)本件発明8について
a 対比
本件発明8と先願方法発明とを対比する。
(a)先願方法発明の「熱伝導性樹脂シート」、「熱伝導性樹脂組成物」、「鱗片状フィラー」、「球状フィラー」は、それぞれ本件発明8の「熱伝導性シート」、「熱伝導性シート形成用の樹脂組成物」、「鱗片状の第1の熱伝導性フィラー」、「非鱗片状の第2の熱伝導性フィラー」に相当する。
(b)先願方法発明において、「熱伝導性フィラーと樹脂とを混練して、熱伝導性樹脂組成物を作製し、これにより熱伝導性フィラーが樹脂中に分散された熱伝導性組成物を得て」、「樹脂は、2液硬化型のシリコーン樹脂を使用し、熱伝導性樹脂シートは、二種類以上を併用してもよく、熱伝導性フィラーとして、球状フィラーと鱗片状フィラーを含有し、鱗片状フィラーとして、窒化ホウ素が挙げられ、球状フィラーとして、窒化アルミニウムとアルミナ粒子が挙げられ」るから、鱗片状フィラーと球状フィラーとを2液硬化型のシリコーン樹脂に分散させることにより、熱伝導性樹脂組成物を得る工程を有するといえる。
また、先願方法発明の「樹脂」は、「2液硬化型のシリコーン樹脂を使用」するから、本件発明8の「硬化性樹脂組成物」に相当する。
したがって、本件発明8と先願方法発明とは、「鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを硬化性樹脂組成物に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程A」を有し、「上記硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂であり」、「上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であ」る点で一致し、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有」するものである点で共通する。
(c)先願方法発明において、「次いで、該熱伝導性樹脂組成物をプレスすることにより、シート状の樹脂層(熱伝導性樹脂層)を得て、混練工程で得た樹脂層を積層して積層体を作成し、得られた積層体を積層方向に対して平行方向にスライスすることにより、熱伝導性樹脂シートを作製する」ものであり、「積層体」は、本件発明8の「成形体ブロック」に対応するといえるから、本件発明8と先願方法発明とは、「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有」する点で一致する。
(d)先願方法発明では、「熱伝導性フィラーとして、球状フィラーと鱗片状フィラーを含有し」、「熱伝導性樹脂シートにおいて、熱伝導性フィラーの長軸の、熱伝導性樹脂シートの表面であるシート面に対する角度である、熱伝導性フィラーの配向角度は、80°以上がさらに好ましく、上記配向角度は、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより測定できる」ものであるところ、「鱗片状フィラー」の長軸の、シート面に対する角度は80°以上がさらに好ましいものであるといえるから、先願方法発明では、熱伝導性樹脂シートの厚さ方向に鱗片状フィラーの長軸が配向しているといえる。
したがって、本件発明8と先願方法発明とは、「熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向」しているものである点で一致する。
(e)以上のことから、本件発明8と先願方法発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを硬化性樹脂組成物に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
上記硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂であり、
上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であり、
上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有し、
上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向する、熱伝導性シートの製造方法。」
<相違点D>
第2の熱伝導性フィラーについて、本件発明8では、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25%であ」るのに対し、先願方法発明では、「球状フィラーとして、窒化アルミニウムとアルミナ粒子が挙げられ」ているものの、本件発明8の上記のような特定はなされていない点。
<相違点E>
熱伝導性シートについて、本件発明8は、「面内方向では上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向する」のに対し、先願方法発明では、「熱伝導性樹脂シート」が含有する「鱗片状フィラー」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点F>
本件発明8では、「厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」のに対し、先願方法発明では、そのような特定はなされていない点。
b 判断
(a)上記相違点Dについて検討する。
相違点Dは、上記ア(ア)dに記載の相違点Aと同じであるから、上記ア(イ)aで相違点Aについて検討したのと同じ理由で、相違点Dは、実質的な相違点であるといえる。
したがって、相違点E、Fについて検討するまでもなく、本件発明8は先願方法発明と同一であるとはいえない。
(イ)本件発明11について
本件発明11は、本件発明8を直接又は間接的に引用するものであり、本件発明8の「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25%であ」ることと同一の構成を備えるものであるから、本件発明8と同じ理由により、本件発明11は、先願方法発明と同一であるとはいえない。
エ 理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3、5~8、11、12は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項1~3、5~8、11、12に係る特許を、理由1によって取り消すことはできない。
(2)理由2(新規性)、理由3(進歩性)(その1)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と文献1物発明とを対比する。
a 文献1物発明の「熱伝導性シート」、「ポリマー」、「異方性熱伝導性フィラー」、「充填剤」は、それぞれ本件発明1の「熱伝導性シート」、「バインダ樹脂」、「第1の熱伝導性フィラー」、「第2の熱伝導性フィラー」に相当する。
また、文献1物発明において、「ポリマーがシリコーン樹脂であ」るから、本件発明1と文献1物発明とは、「前記バインダ樹脂がシリコーン樹脂であ」る点で一致する。
b 文献1物発明において、「異方性熱伝導性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填剤の形状は、球状が特に好ましく、異方性を有するフィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好まし」いものであるから、本件発明1と文献1物発明とは、「バインダ樹脂と、鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを含有」する点、及び、「上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であ」る点で一致し、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有」する点で共通する。
c 文献1物発明の熱伝導性シートは、「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用して製造した熱伝導性シート」であって、「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する製造方法により得られる」ものであるから、異方性熱伝導性フィラーと充填剤は当然にポリマーに分散しているといえる。
したがって、本件発明1と文献1物発明とは、「上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散する」点で一致する。
d 文献1物発明の「熱伝導性シート」は、「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する製造方法により得られる」ものであるから、熱伝導性シートにおける、異方性熱伝導性フィラーの長軸は、押出機による押出しにより、押出し方向、すなわち、垂直方向に配向しているといえる。
したがって、本件発明1と文献1物発明とは、「熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向する」ものである点で一致する。
e 以上のことから、本件発明1と文献1物発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「バインダ樹脂と、鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを含有し、上記第1の熱伝導性フィラーと上記第2の熱伝導性フィラーとが上記バインダ樹脂に分散する熱伝導性シートにおいて、
上記バインダ樹脂がシリコーン樹脂であり、
上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であり、
上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有し、
上記熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向する、熱伝導性シート。」
<相違点G>
第2の熱伝導性フィラーについて、本件発明1では、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25%であ」るのに対し、文献1物発明では、「充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましく、充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好まし」いものの、本件発明1の上記のような特定はなされていない点。
<相違点H>
本件発明1は、「上記熱伝導性シートの面内方向に上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向する」のに対し、文献1物発明では、「異方性熱伝導性フィラー」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点I>
本件発明1では、「厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」のに対し、文献1物発明では、そのような特定はなされていない点。
(イ)判断
a 事案に鑑み、まず、上記相違点G及び相違点Iについて、まとめて検討する。
理由2(新規性)について検討する。
上記相違点Iに係る本件発明1の構成について、文献1には、記載も示唆もされていない。また、上記相違点Gに係る本件発明1の構成についても、文献1物発明では、「充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましく、充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好まし」いものの、文献1には、上記相違点Iに係る本件発明1の構成について明記されていない。
したがって、相違点Hについて検討するまでもなく、本件発明1は文献1物発明と同一であるとはいえない。
b 次に、理由3(進歩性)について検討する。
相違点G及び相違点Iに係る本件発明1の構成に、当業者であれば容易に想到できたか否かについて検討する。
本件発明1は、従来の熱伝導性シートにおいては、熱伝導性シートに対する荷重を増加させていくと、ある時点で熱伝導性フィラー(窒化ホウ素)が倒れることで急激に熱伝導率が低下するとの課題を有し、荷重が増加した場合においても熱伝導率の減少幅を小さくできる熱伝導性シート及び熱伝導性シートの製造方法を提供するものである(本件特許明細書の段落【0006】、【0007】)。
そして、本件発明1は、「バインダ樹脂と、鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと、非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを含有」する熱伝導性シートにおいて、「上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であり、上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり」、「上記熱伝導性シートの厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向し、上記熱伝導性シートの面内方向に上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向し、厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」点を備えるものである。
一方、文献1物発明は、「異方性熱伝導性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填剤の形状は、球状が特に好ましく、異方性を有するフィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好まし」いものであり、文献1には、異方性熱伝導性フィラーとして、鱗片状の窒化ホウ素は明記されておらず、また、充填剤に窒化アルミニウムとアルミナとの2種を併用した例として、文献1に具体的に記載された例は、実施例13の炭素繊維とアルミナ粒子と窒化アルミニウムを配合した例のみであり(段落[0126])、文献1には、異方性熱伝導性フィラーを鱗片状の窒化ホウ素とし、充填剤を窒化アルミニウム及びアルミナ粒子とする点は記載されていない。
そして、文献1には、異方性熱伝導性フィラーとして、鱗片状の窒化ホウ素を用いるとともに、充填剤として、窒化アルミニウムとアルミナ粒子を用いた場合において、本件発明1と同様の効果を奏することは記載されておらず、一方、熱伝導性シートに対する荷重が増加した場合においても熱伝導率の減少幅を小さくできるとの本件発明1の有する効果は、文献1物発明の有する効果とは異質なものであり、この効果が本件の出願時の技術水準から当業者が予測できたものとは認められない。
したがって、文献1物発明において、異方性熱伝導性フィラーとして、鱗片状の窒化ホウ素を選択するとともに、充填剤として、窒化アルミニウムとアルミナ粒子を選択し、厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である熱伝導性シートとする動機付けが当業者にはなく、相違点G及び相違点Iに係る本件発明1の構成に、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
c よって、相違点Hについて検討するまでもなく、本件発明1は、文献1物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2、3、5~7、12について
本件発明2、3、5~7、12も、上記相違点G及び相違点Iに係る本件発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2、3、5~7、12は、文献1物発明と同一であるとはいえず、また、文献1物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明8~11について
(ア)本件発明8について
a 対比
本件発明8と文献1方法発明とを対比する。
(a)文献1方法発明の「熱伝導性シート」、「ポリマー」、「異方性熱伝導性フィラー」、「充填剤」は、それぞれ本件発明8の「熱伝導性シート」、「バインダ樹脂」、「第1の熱伝導性フィラー」、「第2の熱伝導性フィラー」に相当する。
また、文献1方法発明において、「ポリマーがシリコーン樹脂であ」るから、本件発明8と文献1方法発明とは、「前記バインダ樹脂がシリコーン樹脂であ」る点で一致する。
(b)文献1方法発明において、「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用する熱伝導性シートの製造方法であって、異方性熱電性フィラーの形状として、鱗片状が挙げられ、充填材の形状は、球状が特に好ましく、異方性フィラーとして、窒化ホウ素(BN)粉末が挙げられ、充填材の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好まし」いものであるから、異方性熱伝導性フィラーと充填剤とを当然にポリマーに分散させることにより、熱伝導性組成物を調製しているといえる。
したがって、本件発明8と文献1方法発明とは、「鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを硬化性樹脂組成物に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程A」を有し、「上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であ」る点で一致し、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有」するものである点で共通する。
(c)文献1方法発明は、「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する成分を、ミキサー等を用いて混合することにより調製した熱伝導性組成物を使用して製造した熱伝導性シート」であって、「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する熱伝導性シートの製造方法」であるから、本件発明8と文献1方法発明とは、「上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有」する点で一致する。
(d)文献1方法発明は、「ポリマー、異方性熱伝導性フィラー、及び充填剤を含有する熱伝導性組成物を押出機で押出して、異方性熱伝導性フィラーが押出し方向に沿って配向した押出成形物を成形し、押出成形物を硬化させて硬化物とし、硬化物を、超音波カッターを用いて前記押出し方向に対し垂直方向に所定の厚みに切断する熱伝導性シートの製造方法」であるから、熱伝導性シートにおける、異方性熱伝導性フィラーの長軸は、押出機による押出しにより、押出し方向、すなわち、垂直方向に配向しているといえる。
したがって、本件発明8と文献1方法発明とは、「熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向」しているものである点で一致する。
(e)以上のことから、本件発明8と文献1方法発明との一致点と相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「鱗片状の第1の熱伝導性フィラーと非鱗片状の第2の熱伝導性フィラーとを硬化性樹脂組成物に分散させることにより、熱伝導性シート形成用の樹脂組成物を調製する工程Aと、
上記熱伝導性シート形成用の樹脂組成物から成形体ブロックを形成する工程Bと、
上記成形体ブロックをシート状にスライスして熱伝導性シートを得る工程Cとを有し、
上記硬化性樹脂組成物がシリコーン樹脂であり、
上記第1の熱伝導性フィラーが窒化ホウ素であり、
上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子とを含有し、
上記熱伝導性シートは、厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向する、熱伝導性シートの製造方法。」
<相違点J>
第2の熱伝導性フィラーについて、本件発明8では、「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25%であ」るのに対し、文献1方法発明では、「充填剤の材質について、2種以上を併用してもよく、アルミナ、窒化アルミニウムが特に好ましく、充填剤の熱伝導性組成物中の含有量は、40体積%~60体積%が好まし」いものの、本件発明8の上記のような特定はなされていない点。
<相違点K>
本件発明8は、「面内方向では上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向する」のに対し、文献1方法発明では、「異方性熱伝導性フィラー」について、そのような特定はなされていない点。
<相違点L>
本件発明8では、「厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」のに対し、文献1方法発明では、そのような特定はなされていない点。
b 判断
(a)事案に鑑み、まず、上記相違点J及び相違点Lについて、まとめて検討する。
相違点J及び相違点Lは、上記ア(ア)eに記載の相違点G及び相違点Iと同じであるから、上記ア(イ)aで相違点G及び相違点Iについて検討したのと同様な理由で、本件発明8は文献1方法発明と同一であるとはいえない。
(b)また、上記ア(イ)bで相違点G及び相違点Iについて検討したのと同様な理由で、文献1方法発明において、異方性熱伝導性フィラーとして、鱗片状の窒化ホウ素を選択するとともに、充填剤として、窒化アルミニウムとアルミナ粒子を選択し、厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である熱伝導性シートとする動機付けが当業者にはなく、相違点J及び相違点Lに係る本件発明8の構成に、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(c)よって、相違点Kについて検討するまでもなく、本件発明8は、文献1方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明9~11について
本件発明9~11は、本件発明8を直接又は間接的に引用するものであり、上記相違点J及び相違点Lに係る本件発明8の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明8と同じ理由により、本件発明9~11は、文献1方法発明と同一であるとはいえず、また、文献1方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 理由2、理由3(その1)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3、5~12は、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項1~3、5~12に係る特許を、文献1を主引例とする理由2、理由3(その1)によって取り消すことはできない。
(3)理由2(新規性)、理由3(進歩性)(その2)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と文献2物発明とを対比する。
文献2物発明は、上記2(3)イに記載のとおりであり、上記2(2)ウに記載の文献1物発明と同一である。
よって、本件発明1と文献2物発明との一致点と相違点は、上記(2)ア(ア)eに記載の<一致点>及び<相違点G>~<相違点I>と同一となる。
(イ)判断
したがって、上記(2)ア(イ)で検討したのと同じ理由で、本件発明1は文献2物発明と同一であるとはいえない。
また、本件発明1は、文献2物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2、3、5~7、12について
本件発明2、3、5~7、12も、上記相違点G及び相違点Iに係る本件発明1のの構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2、3、5~7、12は、文献2物発明と同一であるとはいえず、また、文献2物発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明8~11について
(ア)本件発明8について
a 対比
本件発明8と文献2方法発明とを対比する。
文献2方法発明は、上記2(3)ウに記載のとおりであり、上記2(2)エに記載の文献1方法発明と同一である。
よって、本件発明8と文献2方法発明との一致点と相違点は、上記(2)ウ(ア)eに記載の<一致点>及び<相違点J>~<相違点L>と同一となる。
b 判断
したがって、上記(2)ウ(ア)bで検討したのと同じ理由で、本件発明8は文献2方法発明と同一であるとはいえない。
また、本件発明8は、文献2方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)本件発明9~11について
本件発明9~11は、本件発明8を直接又は間接的に引用するものであり、上記相違点J及び相違点Lに係る本件発明8の構成と同一の構成を備えるものであるから、本件発明8と同じ理由により、本件発明9~11は、文献2方法発明と同一であるとはいえず、また、文献2方法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
エ 理由2、理由3(その2)についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3、5~12は、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、請求項1~3、5~12に係る特許を、文献2を主引例とする理由2、理由3(その2)によって取り消すことはできない。
(4)理由4(明確性)について
ア 本件特許の請求項1、8の「上記熱伝導性シートの面内方向に上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向する」との記載について
本件発明1は、「短軸がランダム配向」している状態を測る指標として、厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下であることを規定したものあり、これにより、厚み方向に対して0.5~3kgf/cm2の荷重を加えたときに、実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下であることを通して、「短軸がシート面方向にランダム配向」とはどのような状態であるか理解できる。
よって、本件発明1、8及び請求項1、8を引用して特定された本件発明2、3、5~7、9~12は、明確である。
イ 本件訂正後の請求項1の「実効熱伝導率の最大値と最小値の差が1.5W/m・K以下である」との記載について
請求項1に記載された「実効熱伝導率」について、特許明細書の段落【0074】には、「熱伝導性シートの実効熱伝導率(W/m・K)は、ASTM-D5470に準拠した熱抵抗測定装置を用いて、所定の荷重(0.5kgf/cm2、1.0kgf/cm2、2.0kgf/cm2又は3.0kgf/cm2)をかけたときの熱伝導性シートの厚み方向について測定した。」と記載されており、特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識を参酌すると、「実効熱伝導率」は、“effective thermal conductivity, κEFF”であり、「実効熱伝導率」が如何なる物性値なのか、明確であり、また、「ASTM-D5470」に準拠した方法で測定できるのが「実効熱伝導率」であることは、本件特許出願時の技術常識である。また、特許明細書の記載及び本件特許出願時の技術常識を参酌すると、「実効熱伝導率」の測定方法は明確である。
よって、本件発明1及び請求項1を引用して特定された本件発明2、3、5~7、12は、明確である。
ウ 理由4についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~3、5~12の特許は、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、請求項1~3、5~12に係る特許を、理由4によって取り消すことはできない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人増山申立ての特許異議申立理由について
(1)申立人増山は、申立人増山提出の特許異議申立書32ページ等において、本件訂正前の請求項9、10に係る発明は、本件出願の日前の特許出願であって、本件出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた先願1の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、請求項9、10に係る特許は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない旨を主張する。
(2)本件発明9、10は、本件発明8の「上記第2の熱伝導性フィラーが窒化アルミニウムとアルミナ粒子であり、上記窒化アルミニウム粒子の含有量は10~25体積%であり、上記アルミナ粒子の含有量は10~25%であ」ることと同一の構成を備えるものであるから、上記第4 3(1)ウ(ア)で、本件発明8について、対比・検討したのと同じ理由により、本件発明9、10は、先願方法発明と同一であるとはいえず、特許法第29条の2の規定に違反したものではない。
したがって、申立人増山の上記主張は、採用することができない。
2 申立人吉澤申立ての特許異議申立理由について
(1)サポート要件違反について
ア 申立人吉澤は、申立人吉澤提出の特許異議申立書37ページにおいて、「ランダム配向」については、正面から測定したXRD信号面1bから測定したXRD信号強度比と、側面1c~測定したXRD信号強度比の値の差が(以下、「信号強度比の差」という。)が大きい場合にランダム配向と推測されることから、「差が大きい」について、技術常識的に決まった定義がない以上、配向性が高い場合も、本件特許にかかる「ランダム配向」に該当する。したがって、本件訂正前の、請求項1及び8、請求項1を直接若しくは間接的に引用する請求項2~7、12、並びに請求項8を直接もしくは間接的に引用する請求項9~11にかかる発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない旨を主張する。
イ しかしながら、上記第4 3(4)アで、検討したように、「ランダム配向」は明確であるから、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たす。
(2)実施可能要件違反について
ア 申立人吉澤は、申立人吉澤提出の特許異議申立書38ページにおいて、本件発明における「ランダム配向」が不明である以上、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、「厚み方向に上記第1の熱伝導性フィラーの長軸が配向し、上記熱伝導性シートの面内方向に上記第1の熱伝導性フィラーの短軸がランダム配向する」熱伝導性シートを取得すること、かつ、熱伝導性シートを生産することは、当業者に期待し得る超える試行錯誤や複雑高度な実験等を必要とするものであるから、発明の詳細な説明の記載は、本件発明を当業者が実施できる程度に明確にかつ十分に記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しなう旨を主張する。
イ しかしながら、上記第4 3(4)アで、検討したように、「ランダム配向」は明確であるから、発明の詳細な説明は、本件発明を当業者が実施できる程度に明確にかつ十分に記載されており、特許法第36条第4項第1号の要件を満たす。
(3)申立人吉澤申立ての特許異議申立理由についてのまとめ
したがって、申立人吉澤の上記主張は、いずれも採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人増山提出の特許異議申立書及び申立人吉澤提出の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~3、5~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~3、5~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項4に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人増山及び申立人吉澤による特許異議の申立てについて、請求項4に係る申立ては、申立ての対象となる請求項が存在しないものとなったため,特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700574